1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
(´・ω・`)
小内からの背負いこれ基本ね(´・ω・`)
プロローグ
2ちゃん県、県立武道館。
武道館の入り口にある、看板にはこう書かれていた。柔道、インターハイ予選と。
県内最強の者を決める大会。観客席は既に大きな盛り上がりを見せていた。
プログラムはぞくぞくと進み、決勝が行われようとしている。
なぜだか、今日だけはライトが眩しいと感じていた。
VIP高校対、ラウンジ高校。
つい最近柔道部ができたVIPと、昔から好成績を残し続けているラウンジ。
非対称なふたつの高校の決勝という、なんとも珍しい決勝の舞台となった。
先ほどから、やけにラウンジの応援だけが聞こえていた。
( ゚д゚ )「ラウンジに勝てば、全国への切符が手に入る。絶対、勝とう。行くんだ全国に」
VIPの顧問であろう男が、選手たちに対し激励する。
みな、思い思いの顔をしながらこの場の雰囲気を楽しんでいるようであった。ある、一人以外は。
普段から自信のない顔をしているが、今日は更に拍車をかけていたのが一目でわかった。
不安が募るなか、ついに決勝が行われようとしている。
VIP高校 ラウンジ
先鋒 ドクオ モララー
次鋒 ギコ 弟者
中堅 ジョルジュ クックル
副将 ブーン プギャー
大将 ショボン 兄者
第一話 先鋒、ドクオ
( ゚д゚ )「ドクオ、がんばれ」
ミルナ先生がそう言いながら、俺の背中を優しく押した。
小さく頷くが、頭のなかは既に真っ白で、その言葉が入ることはなかった。
そりゃそうだ。人生初めて立つ、決勝の舞台。
緊張しないほうがおかしかった。
('A`)「はは……は…」
力なく、笑ってみる。幾分楽になるかもしれない。
だが、その幻想はすぐに消えてしまった。
足の、奮えがとまらない。まるで、初めて試合をしたデビュー戦のよう。
柔道着に大量の汗が含んでいくのがわかった。
目の前には、これから戦うであろう対戦相手の姿が見える。
強そうだ。ここは決勝だから、そんなことは当たり前であった。
( ^ω^)「ドクオ、リラックスだおリラックス!!」
('A`)「あぁ、そうだな……」
自分でも、声が震えていることがわかる。ブーンたちにはかえって不安にさせてしまった。
こんな状態で、畳を踏むことはできるのだろうか。
いつになく、いままで慣れ親しんできたこの試合場が広く感じた。
観客席はすでに満員だ。みんな、この決勝を見に来たのだろう。
県内最強の学校を決める戦いをみるために。
その視線は畳に、対戦相手のモララーに、そして俺に注がれている。
その観客席のなかに、きっとカーチャンもいるだろう。
安著したと同時に、緊張も増大してしまった。
('A`)(くそ、くそ、くそッ……!!)
深呼吸をこころみようとした瞬間、試合場中央にいる審判が動いた。
開始線まで入りなさいという、合図であった。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:09:35.71 ID:2+xUBSak0
しぇーん
('A`)(やべぇやべぇやべぇ……。はじまっちまう!!)
モララーが試合場に入る。体格がひと回りも、ふた回りも違う。
そりゃそうだ。相手のモララーは73キロ級。俺は60キロ級。
二階級上の相手なのだから。
しかもモララーは常にベスト4に入る強者である。
自分の階級でさえベスト8止まりの俺にとって、この上なくつらい壁が目の前に立ちはだかっていた。
負ける、という危険な思考が張り巡らされているのがわかった。
この状態で畳を踏めば負けてしまう。しかし、進まざるおえなかった。
開始線まで進み、審判、そして対戦相手に対し礼をする。
それを確認した審判が、この会場を響き渡るくらい大きな声で、「始め!!」と言った。
試合が、始まってしまった。
目の前で改めて見ると、本当に大きいことがわかった。
いつものように、いつのように。そう心のなかで呟きながら、足を動かす。
軽量級の選手が自分より上の階級の相手と戦うときの基本は、とにかく動き回り相手を撹乱させることだ。
重い足を無理に上げ、一歩踏み込もうとした瞬間。
一瞬、相手の右手が大きくなる。
自分の襟が掴まれたことに気づくのに、一瞬遅れてしまった。
その一瞬でモララーは袖をも持ち、懐に入られてしまう。
――――やばい。
その言葉が脳裏によぎり、モララーが右足を大きく振り上げる。
大外狩りだ。このまま直撃で喰らったら一発で持っていかれてしまう。
すぐさま避けようとするが、その大外狩りはいまだかつて経験したことがない重さであった。
相手は自分より二階級上であることを、忘れていた自分を憎んだ。
(;'A`)「ぐおッ!!」
畳みにすぐさま手のひらを打ち、受身を取る。
少しでも逃げようとしたおかげであろうか、有効で済んだのは不幸中の幸いであった。
しかし、そんなことを幸いだと思っている時間はなかった。
寝技がくる。
自分の横襟を抑え、中に相手の手を入れさせない防御体制をとる。
しかしモララーは、横に上に縦に振り、おかまいなしといった感じに揺さぶってくる。
耐えなければならない。引っくり返ってしまったら、逃げることは不可能だ。
こんなことで、初めての決勝を終わらせたくなかった。
審判「止めッ!!」
耐えた。俺はモララーの猛攻を耐えたのだ。
どうだ、俺は耐えたぞ。ざまぁみろ。
笑みを浮かべながらモララーの顔を覗くと、奴も笑っていた。それは不敵な笑み。
次はないぞ、そう言わんばかりの顔で、俺を見ていた。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:18:03.28 ID:zmzFlje40
帯ギュ支援
(;'A`)(なにを考えているんだ俺は……!!)
情けなくて、情けなくて、ただ情けなくて。唇を血が滲むくらい、噛んでいた。
俺は、こんなことをするためにこの、決勝の畳に立っているのではない。
( ゚д゚ )「ドクオッ!!」
外から聞こえる、ミルナ先生の声。観客席から聞こえる歓声よりも大きな声。
じっと立っている先生の顔を、見る。
('A`)「せ、先生……」
( ゚д゚ )「お前がしたい柔道は、そんなものなのか?
お前が望んでいた相手は、目の前にいる。戦うんだ、ドクオ」
振り向くと、そこには悠然と構えているモララーの姿。
そうだ、奴こそ俺が望んでいた相手なのだ。俺はそんなことも忘れていたのか。
ミルナ先生に向け、笑いかける。俺はもう、きっと大丈夫だ。
あの頃の、弱い俺ではないのだから。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:19:16.20 ID:KMF9pp81O
支援
※
いつも、そうだった。
どんなにクラスメイトが変わっても、先生が変わっても。
俺に対する境遇が変わることはなかった。
机の上には死んでもいないのに花瓶が置かれていた。
花瓶に入れられている花は、枯れてしまっていた。
その花瓶をどけると同時に、首謀者が駆け寄ってくる。
(・∀ ・)「おいおいドクオー!お前死んだんじゃないのかよーww」
( ´ー`)「ついつい花を添えてしまったじゃねーかヨ」
('A`)「………」
俺は、なにも言い返すことができずにただただ黙っていた。
そんな俺を見て、目の前の二人は指を指しながら笑っていた。
幾度となく続く陰湿な虐め。日があたることはなく、影しか視界には映らなかった。
何度も死のうとは思ったが、そんな勇気はなく不登校になる勇気もなく。
ただただ淡々と学校に通い続けた。
俺にとって、学校に行くということは虐められに行くということと同義であった。
ただ、おとなしく迷惑かけることなく暮らしていたのに。
クラスのガキ大将に目をつけられたのが運のつきであった。
そんな自分を、恨んだりもした。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:24:25.56 ID:gKg8EZSsO
勇気がないか不登校になるんじゃ(ry
俺の父親は既に死んでおり、いわゆる母子家庭であった。
そのことを知った虐めっ子たちは、更に俺を囃し立てた。
授業参観のとき、カーチャンは仕事の合間を縫い作業着で学校に来た。
親の間でも、俺たち親子のことは有名になった。
標的にされている者の情報が流れるのは、あっという間であった。
毎日のように続く自分たち親子への悪口。
自分への暴言は我慢できたが、カーチャンへの暴言だけは我慢できなかった。
ある日、そのことでついに堪忍袋の緒がきれてしまい、殴ってしまった。
俺の暴力を虐めっ子たちは受け続けた。なぜ、反抗しないのだろうと思った。
その現場を見た先生は、俺のことを叱った。殴られた奴らは、わざとらしく先生に泣きついた。
ついに、学校で俺は孤独になってしまった。
中学に上がり、同じ小学校じゃない人たちと積極的に喋った。
その成果もあったのだろうか、何年ぶりかの友達ができようとした矢先。
俺の小学校での噂は広まっていた。ゆっくりと、その友達は俺から離れていった。
あとは、小学校と同じような出来事の繰り返し。
キモイと言われ、寄るなと言われ、触るなと言われ、うざいと言われ。
その暴言に慣れてきている自分に嫌気をさしていた。
ついに、俺は学校に行かなくなっていた。でも、勉強だけは一人でもやり続けた。
教科書はすでに黒ずんでおり、文字が読めなくなった部分があるほどであった。
奴らの目に触れない、遠い学校を選ぶための手段となれば、自然に意欲がわいた。
そしてその願いが叶ったのか、お目当ての学校に行くことができた。
カーチャンは合格したことに喜んでいたが、
お金がないのに自分のためだけに遠い学校を選んでしまったことを、後悔したりもした。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:28:11.77 ID:VvCWfFJz0
>>16 親が怖くて、不登校できない奴もいるんだぜ、俺とか
冬が通り過ぎ、春が訪れるころ。
やっと自分の人生が始まると、胸を膨らませながら行われた入学式。
校長や理事長の他愛のない話も、不思議と耳を傾けていた。
時間は過ぎ、話が全て終わりみんな体育館から出て行く。
そんななか、俺はその足で掲示板へと向かう。
中学校はろくに行かなかったから部活ができなかった。
だから、高校では部活に入りたかった。
('A`)(どの部活に入ろうかな……)
そこには様々な部活のポスターが貼られていた。
サッカー部、野球部、バスケ部、バレー部……。
どれにしようか、迷っているときに視界に入ったものは、柔道部のものであった。
そのポスターだけ、色が塗られていない簡素なものであった。
('A`)(柔道部、か……)
痛いのは嫌いだ。散々無意味な暴力を受け続けてきたから。
だけど、自分自身弱い者でい続けるのは、もっと嫌いであった。
強くなりたい。常々そう思っていた。
だからこれは、チャンスだと感じた。
ポスターには、
『来たれ新入部員!!今年から開設した部活動で共に強くなろう!!』
と書かれていた。先輩がいないというのも地味に嬉しかった。
俺の中で、この部活に入ることは既に決定事項となっていた。
担任からもらった入部届けを握り締め、顧問であるミルナ先生のものへ向かった。
思わずこっちみるなと言いそうになるくらい、優しそうな先生であった。
( ゚д゚ )「柔道部は入部届け受付期間が終わり次第活動する。
だから、それまでに柔道着を買っておいてくれ」
それを聞いた俺は一礼し、職員室から出て行った。
久しぶりに充実した一日であると、感じていた。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:32:13.31 ID:zmzFlje40
支援
学校から帰り、カーチャンの帰宅を待つ。柔道着を買う、お金が欲しいと言うためである。
テレビを見ていたら、扉が開く音が聞こえた。
仕事を終えたカーチャンが、そこにいた。
('A`)「カーチャン、おかえり」
J( 'ー`)し「なんだい、ドクオがおかえりなんて言うのも珍しいねぇ。
なんかあったのかい?」
('A`)「実は俺、柔道部に入ったんだ」
J( 'ー`)し「ほんとかい?カーチャンも若い頃は女三四郎と言われ、恐れられたもんだよ」
カーチャンの冗談を華麗にスルーした俺は、本題を言う決意をした。
断れるかもしれない、だけど言わなければいけない。
('A`)「それで……柔道着を買うお金が欲しいんだ」
カーチャンは靴を脱ぎ、リビングへ向かう。
駄目か、と思った俺に現れたのは、数万円が入っている封筒であった。
使い古された封筒。何年も前から貯めていたことが一目でわかった。
J( 'ー`)し「カーチャン、柔道着がいくらするかわからないけど……。これでたりるかい?」
カーチャンの優しさに、俺はありがとうと言うことしかできなかった。
そのお金で柔道着を購入し、ついに部活動開始日になった。
('A`)「ここが、柔道場……」
これからここで俺は頑張るのだ。右手で、小さく握りこぶしをつくる。
もうすでに、何人かは来ているようであった。
俺もその輪に混じろうか悩んでいたら、話しかけられてきた。
久しぶりに、他人から声をかけられた。
( ^ω^)「僕はピッツァ中のブーンだお!!これからよろしくだお!!」
少し太り気味の男だと思った。だけど、強そうだとも思った。
鍛えられた身体であることは、すぐにわかったからだ。
('A`)「どど、ドクオと言います……。柔道経験はないですが、頑張ります。
よろしくお願いします……」
(´・ω・`)「柔道経験なんてなくても大丈夫さ。これから一緒にがんばろう」
初めて、友達ができた。それが、なによりも嬉しかった。
(;'A`)「ぜぇ…ハァハァ……うぇっぷ………」
部活が始まった当初は、身体作りが基本であった。
普段走ったり筋トレしたことがない俺にとって、それがなによりもきつかった。
筋肉痛が取れることはなかった。
(;゚∀゚)「きついなぁ……」
俺と同じく、未経験で入部したジョルジュがいたおかげもあるかもしれない。
だからこそ頑張り、互いに切磋琢磨していったのかもしれない。
柔道着を初めて着たのは、六月に入ってからであった。
( ゚д゚ )「よし、お前ら。柔道着を着てみろ」
(*゚∀゚)「いやっほ〜〜〜いwwwwやっと柔道着が着れるぜおっぱい!!」
(*'A`)「やった……」
柔道着を持っていったと同時に、ミルナ先生に取り上げられた。
その日以来見ることがなかった柔道着が、目の前にあった。
( ゚∀゚)「どうだ!?かっこいいか!?」
(,,゚Д゚)「まだまだ華奢な身体だから似合わないなゴルァ」
( ゚∀゚)「うっせーよ!!これから似合うようになるんだよ!!」
ギコが言うように、身体と柔道着が不釣合いに感じた。
だから、その柔道着が似合うようにまだまだ鍛えようと思った。
家に帰っても、タオルを首にかけ筋トレをし続けた。
J( 'ー`)し「ドクオ、頑張ってるねぇ」
('A`)「もっと強くなりたいから。それに、あともう少しで大会もあるし」
J( 'ー`)し「カーチャン、見に行っていいかい?」
(;'A`)「だ、駄目だよ!俺まだ全然弱いし!見に来てもおもしろくないよ!?」
J( 'ー`)し「そんなもんかねぇ……」
(;'A`)「そうだよ!!もっと強くなったら呼ぶから、それまで待っててよ!!」
カーチャンはしぶしぶ了承してくれた。
初めての大会は、一分も持たずに一本負けだった。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:40:13.61 ID:zmzFlje40
支援
( ゚д゚ )「ドクオ、悔しいか?」
試合で負けた直後、ミルナ先生は俺にそう言った。
負けることはわかっていた。
だけど一分も持たずに負けたことは悔しくて、情けなかった。
('A`)「……悔しいです」
( ゚д゚ )「そうか、悔しいか。では、お前の今後の目標はなんだ?」
('A`)「強くなって、勝って、一回戦を突破することです」
( ゚д゚ )「その目標を絶対に忘れるな。頑張れよ」
ミルナ先生は微笑みながら、優しく俺の頭を撫でた。
結局、俺たち一年生軍隊はギコのベスト8が最高で、あとはどっこいどっこいであった。
もっと強くなろう、そう誓った日であった。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:43:50.00 ID:AhsZFNhe0
支援
(;'A`)「オラァッ!!!!」
(;゚∀゚)「ぐお!!」
畳では、ジョルジュが倒れていた。
初めて綺麗に投げれた。この背負い投げは武器になると、そう感じていた。
( ゚д゚ )「お前には速さがある。軽量級でも随一の速さが。それをうまく使えば、お前はどんどん強くなる」
そういわれた日から、ダッシュや反復横とびを中心にしたメニューに切り替えた。
つくづく単純な男だと、自分でも思っていた。
それが功を制したのか、大会でも勝つようになりベスト8に進出するようになった。
だけど、それ以上順位が上がることはなかった。
自分の力に、初めて限界を感じていた。べスト4の壁は厚く、果てしなく高かった。
高校最後の個人戦でも、結局ベスト8に甘んじることしかできなかった。
(;A;)「くそッ!!くそッ!!」
何度も、何度も壁をたたいた。
血が滲むくらい、痛みを感じなくなるくらい何度も叩き続けた。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 00:44:38.34 ID:zmzFlje40
支援
中学3年の引退試合思い出しちまったじゃねーか
団体戦で俺よりも20〜30kg重い奴とやったのも今では良い思い出か
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 01:48:28.68 ID:z7uLrCKsO
ドクオはまさに今の俺
リア厨で申し訳ないが、60kgで副将やってます。
年明けすぐに大会だよ・・・
とりあえず明日初段とってくる
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 01:51:49.12 ID:4K2TTr5IO
で、続きはまだか
( ゚д゚ )「ドクオ、悔しいか?」
そこには、ミルナ先生が立っていた。あのときと同じように。
ただただ、俺を見据え、その答えを待っていた。
(;A;)「くやしい、です」
( ゚д゚ )「お前にとってベスト4とは何もより高い壁と感じるだろう」
(;A;)「………」
( ゚д゚ )「壁というものは、向こうからやって来ない。超えられる可能性がある者にだけ、現れるのだ。
だから、お前は必ず超えられる。だからこそ、その壁は現れたのだ」
(;A;)「でも、もう俺は……」
( ゚д゚ )「そうだ。お前は個人戦では負けた。超えられなかった。
だけど、明日ある団体戦で勝ち進めば、今日以上の壁が立ちはだかるだろう。
その壁を、越えろ。お前になら、超えられる」
そして今日、俺たちは勝ち進み、念願の決勝の舞台へと辿り着いた。
つい数年前までは柔道部がなかった無名校。それが、決勝の舞台に。
目の前には、敵がいた。超えるべき、壁が。
真っ白になりかけていた景色が、色を取り戻していく。
失速しつつあった足が、軽くなっていく。
もう、自分を出し惜しみにするのは、止めることにした。
そんなことをしては、こいつには勝てないのだから。
('A`)(いくぜ……)
心の中で、小さく呟く。それがギアを入れる合図となる。
いらない柵を全て捨てた足は、誰よりも速かった。
( ゚д゚ )(そうだ、ドクオ。行け)
まずは、相手を霍乱させることだ。細かいステップを刻みながら、相手の隙を見つける。
さっきまではまったくないと思われていた隙が、そこにはあった。
踏み出した相手の足を、払う。バランスを崩したモララーの懐に入るのには十分な時間。
もう、なにも考えない。ただただ、何度も練習し、何度もやり続けた背負い投げをやった。
相手が宙に浮いたのは、なんとなくわかった。
審判「有効!」
技ありだと思っていただけに、その判定は不服であった。
だけど、そんな思考はすぐに捨て去った。
自分の本能が、寝技に行けと告げていたから。
(;^ω^)「ドクオ、返されるのが落ちだお!!寝技は諦めるんだお!!」
(,,゚Д゚)「立ち技で勝負しろゴルァ!!」
( ゚д゚ )「いや、いい。いまは、あいつの思うとおりにさせろ」
ドクオは、隙を見つけるためモララーの襟や帯を持ち動かし続ける。
しかし、相手も伊達に弱くない。隙を見つけるのはなかなか難しかった。
やがて、寝技を辞めるよう審判が止めるよう両者に告げる。
立ち上がったドクオは、やり返したといわんばかりにモララーを睨み付けていた。
(´・ω・`)「あのモララー相手にここまで善戦するとはね。これはもしかすると……」
( ゚∀゚)「ドクオが勝つに決まってるだろ!?」
( ^ω^)「いけードクオー!!」
(,,゚Д゚)「負けるんじゃねぇぞゴルァ!!」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:04:03.80 ID:EuhNBxQP0
最初にドクオが有効取られたときは、誰もが暗い顔をしていた。
だけどいまは、握りこぶしを作りながら応援をしている。
現金な奴らだ。だけど、その応援はなによりもドクオの助けになった。
( ゚д゚ )「だが、相手もそこまで甘くないぞ」
モララーの顔色が変わったのは、傍目でもわかった。
まさかここまでやるとは思っていなかったのであろう。
相手に対し、舐めてかかることで有名な選手であった。
そのモララーの顔から、笑みが消えた。
(,,゚Д゚)「ふん、野郎め……ついに本気を出す気だな」
自分に対する過小評価。これがなによりもドクオを縛り付けていた。
彼は上位に進出するのにふさわしい強さを持っていた。
だけど、何度も挑戦し何度も挫けた。
それは、ドクオ自身自分を過小評価し続けた結果であった。
勝気でいるけれど、無意識のうちに自分は負けると思っていたからだ。
自分はあれが駄目だ、これが駄目だと考える。そうこうしているうちに負ける。
自分の素晴らしい能力よりも、自分の未熟な能力のほうに目を向けていた。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:06:31.15 ID:EuhNBxQP0
そのせいで超えられる壁が高く、厚く感じていたのであろう。
自分は弱く、相手は強い。常にそう思っていたから。
見てみろ、ドクオ。たしかに、壁は高いのかもしれない。
だけど、手を伸ばせば届く位置にあることを。
その壁を越える資格がお前には、ある。
( ゚д゚ )「たまには、自分を過大評価してもいいんじゃないか?」
誰にも聞こえぬよう、小さく呟く。
その瞬間、モララーが動いた。
(;'A`)(………こいつ!!)
速い、速い、速い。本当に自分より二階級上なのであろうか。
そう疑ってしまうほどに、モララーの動きは速かった。
瞬きしたら、投げられる。そう本能が告げていた。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:08:10.39 ID:EuhNBxQP0
その速さは、自分よりももしかしたら上かもしれない。
これが、壁の向こう側にいる者の強さ。
今まで越えられなかった壁。いままで何度負けたことか。
だからこそおもしろい。だからこそ超えがいがある。
そう思うのは、初めてであった。
思わず、笑みがこぼれた。
モララーが、俺の釣手をとろうと手を伸ばしてくる。
掴まれたら、逃げることは難しい。更に、技を受けたら投げられてしまうだろう。
ここは、逃げるべきだ。釣手をとらせないために、襟を引く。
しかし、モララーが狙っていたのは襟ではなく、奥襟であった。
(;'A`)「っな!!」
引き寄らされ、引手もとられてしまう。圧倒的な不利な状況。
モララーがしようとしている技は、内股。この状況でまともに受けると、投げられる。
俺を払おうと、モララーは踏み込み、右足を地を這うようにしてあげてくる。
絶体絶命。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:10:01.84 ID:EuhNBxQP0
しかし、自然に足が動いていた。払おうとしている足を、すかす。
モララーは勢いをつけすぎたせいか右足は宙を蹴り、バランスを崩す。
この勢いを利用し、モララーの身体を回転させようとするが、さすがにできなかった。
だけど、バランスを崩している。あまりにも無防備な状態。
なにも遮るものがない懐に入り込み、右肘をモララーの脇に入れ込む。
あとは、背負うだけ。いままで培ってきたものの全てを、出し切るだけ。
(#'A`)「ぐおおおおおおおおおおおおぉぉぉオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
審判「一本!!それまで!!」
発せられる、審判の声。
短いけど、長い。そんな静寂の時間を打ち破るのには、十分なものであった。
超えられなかった壁を、越えた。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:11:37.31 ID:EuhNBxQP0
(;A;)「はは……やった、やったぞ………」
手の力が、するりと抜け落ちる。本当に勝ったのだろうか、と何度も疑った。
だけど、モララーは畳みに倒れ、審判は天に腕を伸ばしている。
それが、自分が勝ったという証であった。
審判「互いに礼!!」
泣きながら、礼をする。しかし、まだ試合は終わっていない。
次に続くギコの背中を、気合をいれるために叩く。
これから始まる、ギコの試合。
その前にだけ、もう一度だけ勝利を噛み締めたかった。
観客席のどこかにいるであろうカーチャンに対し、強くガッツポーズをした。
危なく寝るとこだった。
読んでくれた人、あざーっす!!そしておやすみなさい。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:13:54.59 ID:SjJzRRMzO
乙
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:14:38.62 ID:wfon2EI/O
これで終わり?
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:16:31.22 ID:z7uLrCKsO
P2みたいな終わり方だな
しかし満足
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:18:25.77 ID:pT5zhHUz0
乙!
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:19:06.54 ID:Sdvyekc40
乙
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:19:19.21 ID:fiqYkKT+O
乙
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:19:49.79 ID:UNf7C35U0
乙
花束です
まとめてもよろしいでしょうか?
携帯から失礼です。
一応あと四話くらい続きます。
また12時過ぎくらいに投下しますので、見つけたら生暖かい目で読んでください。
まとめ、嬉しい言葉ありがとうです。どうぞまとめてください。
一応トリ晒したほうがいいでしょうか。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:29:42.14 ID:fiqYkKT+O
お昼ってことかい?
トリはどっちでも
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:31:21.01 ID:UNf7C35U0
54 :
◆I40z/j1jTU :2007/12/16(日) 02:36:41.10 ID:1MiKnJemO
夜ですね。来週あたりにでもいきたいです。
ありがとうございます。
トリ晒さないと逃亡しそうで怖いから一応。
これであってるかな。
あってました。
それではおやすみなさい。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:41:33.90 ID:wfon2EI/O
乙
続き楽しみにしてる
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:45:13.89 ID:DmTDxWLOO
やっぱりバトロワかwwww
頑張れよ。乙!
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 02:56:50.39 ID:Sdvyekc40
ペドロリか
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 03:07:19.09 ID:ECZGLHXLO
左足の靭帯切って試合出れなくなった元柔道部の俺が泣いた
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 03:20:35.75 ID:Fd3hyhqjO
乙
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 03:40:17.09 ID:s/VUxrjgO
ま・・・待ってたんだからねっ///
乙!続きwktk
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 04:07:17.30 ID:6/JrymeE0
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 04:20:04.53 ID:6/JrymeE0
読み終わった
よかった
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 04:26:17.12 ID:E2w3ppIjO
乙
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 06:08:35.35 ID:BMzScFMaO
ペドロリおつかれ^^
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 07:41:27.04 ID:C8SO8iOa0
ほ
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 07:43:09.81 ID:z7uLrCKsO
続きあるのか
期待
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 08:33:53.67 ID:C8SO8iOa0
ほ
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 08:50:30.27 ID:ulGNeYo/O
乙でした
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/16(日) 09:29:55.13 ID:hXDZzBKhO
超絶乙。続き待ってる
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
なに