1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :
2007/11/23(金) 19:34:56.27 ID:tFMaYbuf0 ここは筆力のある人・ない人がお題をもらって自由に小説を書き、それぞれの筆力を向上させるスレです
※※※お題をもらわないでの小説投下はスレの主旨と違いますのでご遠慮下さい※※※
各まとめ入口:
http://bnsk.daa.jp/ まとめwikiコラム:
http://wing2.jp/~bnsk/index.php?%A5%B3%A5%E9%A5%E0 初心者の方は上記のまとめwikiコラムの他、掲示板を一度ご覧下さい。
小説を書く際の禁則やテクニック等が具体例付で説明されています
(三行テンプレート)
1:お題をもらう(安価より「↓」を推奨)
2:もらったお題に沿った作品を書いて、完成させる。
3:「投下します」と宣言し、作品投下。メール欄は無記入、名前欄には「もらったお題」を表記する。タイトルは無くても可。
・1レスは30行、4096バイトまで、一行は全角128文字まで(読みやすさの為に50〜60文字推奨)
・書きながらの投下は禁止
・お題をもらっていない作品はたとえ投下されてもまとめサイトには掲載されません
詳細は
>>2-3 辺りをご覧下さい
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:35:08.93 ID:KBukxjTK0
皆様が2getをしようとする気持ち私にも痛いくらい分かるのですが 2というのはそのスレの流れを決める大事なレス番号です。 だからつまらない書き込みで2getをしないで頂きたい。 2get!!だけなんてもっての他。 そこの所よく考えて2getをお願いします。 メモ ◎メイショウサムソン ○ポップロック ▲アドマイヤムーン
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:35:17.09 ID:tFMaYbuf0
まずはお題をもらいましょう。基本的に過疎スレなので↓でもらうと良いです →人のお題を使って書くのもありです。作品がたくさん投下されればスレも盛り上がります ▽投下の際の注意点 ・投下宣言は「投下してもいいですか?」ではなく「投下します」。投下宣言が被らない限り、許可はいりません ・投下する人は最後に「終」「完」「了」など、投下完了の合図をお願いします ・名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』 (例:『BNSK(お題:文才) 1/5』)を書いて下さい ・まとめる際にコピペがしづらいので、メール欄は空にして投下してください。 ・作品を投下する際は、テキストエディタで仕上げてから、完成品をまとめて投下して下さい ▽読み手の方へ ・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい ▽保守について ・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です ・落ちた場合は立てられる人が新スレを立てて下さい。人がいる時間を目安に ▽その他 ・通常作品でもトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:35:37.00 ID:tFMaYbuf0
▲週末品評会 毎週木曜日の夜〜土曜日の午前中に、お題が出されます 作品は土曜日の0:00から日曜日の23:30までの間に投稿してください その後それぞれに評価をして頂き、月曜日の0:00から火曜日の24:00まで投票を受け付けます ▽作品投稿 ・ジャンルは自由、時間を過ぎての投稿も選考外ではありますがまとめサイトに掲載します ・スムーズな流れを保つため、メモ帳等の機能を使って全部書き終わってから投下するようにお願いします ・優勝時の本人確認のため、週末品評会参加者は出来れば酉を付けて下さい(酉は名前欄に#と自由な文字列) →毎回同じコテや酉で出続けると周囲にわかりやすいです ・作品のタイトルは現在レス数/総レス数、酉を除いて、全角二十文字以内にしてください。 ▽締め切り間際の作品投稿について 週末品評会では、投下締切時間の間際に集中的に投下が起こります。 それを無管理で放っておくと大変な事になるので、23時から「予約」という形を取り、運営の指示に従って順番に投下してもらいます。 予約締切は23:30で、以降は時間外の扱いになります ▽投票 ・本スレへの書き込みでお願いします(複数選択可) ・ぜひ書き手の方も他の人への感想や投票を行って下さい ・簡単でよいので、感想、批評等書いて下さい。書き手の次への糧になります! ・投票は投票用テンプレを使うか、【投票】と書いて書き込んで下さい ▽優勝者特権 ・投票で一番支持を得た作品の作者の方には、次回品評会のお題決定権が与えられます ・投票数が同数の場合は、気になった作品の投票数の差で決定します ・お題の発表時間は優勝者に一任されますが、遅くても土曜日の午前中には提示して下さい
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:35:59.33 ID:tFMaYbuf0
474 名前: ◆QIrxf/4SJM 投稿日: 2007/11/22(木) 01:35:40.51 ID:RZKN3LfS0 “I'm off again in my World”アヴリルは歌う。 わたしはちょっとだけ微笑んで、目をつむった。 人口が五千人の町の中で、わたしは芝を刈るアルバイトをして、男の子をぶん殴ってる。 「世界の終わりは そこで待ってる」チバが歌う。 俺は頷いて、目を瞑った。 パンを焼きながら待ち焦がれてる。それは俺だ。 「スナイパー ふちどったその世界に何が見えるって言うんだ 狙う前に触りたいな」 僕はピロウズを聴きながら、大島行きの最終電車に乗っていた。 目を瞑る。体が揺れている。足元のヒーターがあったかい。 僕は、心の声で散弾銃のように唄い続けた。 【第86回週末品評会】 - 空想 - 規制事項:5レスまで 禁止ワード:世界、おっぱい 投稿期間: 2007/11/24(土) 00:00〜2007/11/25(日) 23:30 宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。 ※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※ 投票期間: 2007/11/26(月) 00:00〜2007/11/27(火) 24:00 ※品評会に参加した方は、出来る限り投票しなくてはなりません※
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:37:42.41 ID:ilVtoRjsO
乙でござるよ
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:39:42.04 ID:mxxOFXld0
>>いちくんおつー
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:42:57.56 ID:VeomSC2u0
乙一
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:46:54.23 ID:dbRvqsiOO
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 19:57:07.01 ID:mxxOFXld0
しかしなんと流れのはやいことか!
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:10:06.21 ID:mxxOFXld0
おちるよおちるよ
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:12:48.06 ID:qz2Nli6m0
age忘れ
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:13:07.01 ID:3bg0ExIq0
乙様です
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:22:51.10 ID:5Ph7i6Qu0
おっぱい!
おっぱい! おっぱい!
おっぱい おっぱい! おっぱい!
おっぱい! ∩ ∩ ノ) おっぱい!
おっぱい! 川 ∩ 川彡'三つ おっぱい!
>>1 乙
おっぱい! ⊂ミ∩、⊂ミ∩彡⊃ おっぱい!
おっぱい!⊂三ミ( ゚∀゚)彡三彡三⊃ おっぱい!
おっぱい! ⊂彡川⊂彡川ミ⊃ おっぱい!
おっぱい!⊂彡川∪⊃ U川彡⊃ おっぱい!
おっぱい! (ノ ∪ 川 ∪ミ) おっぱい!
おっぱい! ∪ おっぱい!
おっぱい! おっぱい! おっぱい!
おっぱい! おっぱい!
おっぱい!
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:25:56.19 ID:ML9Ns+600
前スレまでの通常作品、過去スレ、過去ログ、全て編集完了致しました。 ∧,,∧ 総作品数:3909作品 ≡(´・ω・)つ 二三) 総スレ数:378スレ ≡(つ 二三) 二三) 現 在 :379スレ目 ≡し'⌒ ´ 二三) 備 考 :いよいよ3900作品を超えました。年内にも4000作品になるでしょうか
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:26:58.07 ID:qz2Nli6m0
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:27:57.88 ID:heBWhbOr0
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:28:26.09 ID:3bg0ExIq0
>>16 見事な蹴りですね、お疲れさんです。
つ旦
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:29:01.19 ID:VeomSC2u0
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:30:48.52 ID:mxxOFXld0
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:32:36.68 ID:VeomSC2u0
もう今日はだめだ書けない
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:41:02.65 ID:heBWhbOr0
今週はもう駄目だな
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:43:38.17 ID:T7wyRhLEO
愛してるよ、
>>1 >>16 。本当だ。
保守も味気ないので、皆のBNSK歴を聞きたい。
俺は結構な老害だが
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:47:31.80 ID:VeomSC2u0
先週着たとこだが
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:57:06.23 ID:heBWhbOr0
『結構な老舗』に見えた
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 20:58:29.87 ID:gorOTwAF0
乙
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:11:07.31 ID:mxxOFXld0
初期の頃からときどき
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:11:08.10 ID:qz2Nli6m0
79回から参加
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:17:47.41 ID:qz2Nli6m0
ほ
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:18:46.46 ID:oaNqsC3B0
参加回数とか実年齢とか、なんとなく言いたくないよな
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:22:27.89 ID:T7wyRhLEO
特定されたくないもんな 変なこと聞いてすまんかった
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:29:58.04 ID:CG45F/VQO
『おっぱい』が禁止された時点で、今週の僕にとっての品評会は終了しました。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:37:03.44 ID:3bg0ExIq0
突拍子な質問なんだけど、通常作品に酉つける メリットてなにかなあ? 俺には全然思いつかないんだが
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:37:07.69 ID:oaNqsC3B0
>>32 いや、気持ちは分かる
特定云々もあるけど、そういうのは例えば誰かが何度も優勝した時とかに
「この人どういう人なんだろ」みたいな形で初めて、晒される意味が出てくると個人的に思う
あれ、なんかこれはこれで発想が週刊誌的で悪趣味かな。いやよくわかんないけど
実は何気に海外在住で参加してる奴もいるんじゃないかと予想
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:40:03.88 ID:otnuFMCA0
>>35 自分が書いたのを保存しない人はwikiで酉検索すると自分のが読める
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:40:33.05 ID:7rLj8txy0
ダメ大学生は俺だけか
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:41:29.56 ID:heBWhbOr0
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:41:48.11 ID:PfI1oFYQ0
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:43:15.08 ID:dbRvqsiOO
>>35 中には過去の作品まで見直して感想くれる人もいる。
酉個人の癖や成長なんかがわかったりするから意外とオヌヌメ
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:43:19.53 ID:T7wyRhLEO
>>35 感想書く人に覚えられたら全体的な作風を通しての感想が貰える。
しかし大体は馴れ合いで酷評が貰えない。初心者にはお勧め出来ない。
>>36 俺は何となく初期からの参加組がどれくらい居るのか気になってなあ。
毎回酉変えてる人やROM専も含めて。
新規さんがどれくらい居るのかも
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:44:38.05 ID:caEKlxOz0
>>42 たまに血を吐きそうになるくらいの酷評をくれるお方もいるがな
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:48:01.30 ID:3bg0ExIq0
>>37 ,41,42
ddd
なるほど、そういうメリットがあるのか
今回は
>>42 の意見を尊重して
酉はやめておくかな
俺もまだ初心者に近い存在だしね
品評で8票ぐらいもらえたらつけよう……まだまだだけど
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:52:00.42 ID:eYS43YmC0
>>42 初代スレからここにいるけど、もう長いことスレで作品出してないな
通常作品と、まれに品評会作品に感想付けるくらいで、後はお題泥棒か
俺みたいなヤツが他に何人かいるみたいだね
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:52:16.20 ID:caEKlxOz0
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:53:04.65 ID:heBWhbOr0
8票とか普通に優勝だろ……
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:56:58.29 ID:3bg0ExIq0
>>46 いやいや、品評ではきちんと酉つけますよww
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:59:25.27 ID:Exar/6we0
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 21:59:47.84 ID:mxxOFXld0
8票もらえたらまず優勝だろ…
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:02:42.20 ID:T7wyRhLEO
>>45 >>49 おお、居た。
そういう人達から見た、このスレで読んだ今までで一番面白かった作品を教えて欲しかったり。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:07:35.53 ID:heBWhbOr0
これは保守間隔縮めんとやばいかもわからんね
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:08:53.32 ID:Exar/6we0
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:09:26.98 ID:otnuFMCA0
レスの時間規制なくなったの?
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:11:16.64 ID:7bgfuQQeO
お題くれ
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:12:32.36 ID:Exar/6we0
「落ち葉」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:12:56.51 ID:T7wyRhLEO
コーラメントス
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:14:04.49 ID:T7wyRhLEO
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:14:19.71 ID:7bgfuQQeO
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:17:29.12 ID:qz2Nli6m0
落ちるの早いね
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:18:07.08 ID:1BPQ/7HY0
日本一決定戦やってるからなあ
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:18:07.89 ID:caEKlxOz0
どーでもいいんだが小説各段階の人物設定って面白くね?
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:19:40.13 ID:eYS43YmC0
なんかの祭り中なのか
>>51 難しいことをさらりと言ってのけるとは
総合力なら「となり」は出色だけど、となりが投下されたときに「二次創作は評価したくない」とか
ほざいていた俺がそれを勧めていいかは疑問だ。
って書いていたら
>>53 がお前それどんな俺状態。
落語的といえば、狛犬のやつも好きだった。
ただ作品をみて、これは好き、これは苦手とは言えるけど、一番は決められないな。
お勧めをピックアップするにも作品がありすぎるしw
役立たずでごめんよ。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:19:44.87 ID:Exar/6we0
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:20:44.55 ID:caEKlxOz0
>>64 登場人物の設定とか諸々
まさかこんなことしてるのは俺だけとは言わんよな……?
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:23:50.60 ID:Exar/6we0
>>63 >「二次創作は評価したくない」とかほざいていた
おまえかーいw
狛犬の、あったなあ。
また読んでみよ
>>65 「各段階の」っていうのがよく分からんのだけど……
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:24:37.69 ID:PfI1oFYQ0
>>65 それをひけらかしすぎると設定厨と呼ばれる諸刃の剣
それとなく文章に埋め込むことの難しさよ
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:25:06.00 ID:3bg0ExIq0
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:25:07.93 ID:qz2Nli6m0
>>66 きっと「書く段階」だと思うよ
書き始める前の設定を考えるとかいう段階じゃない?
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:25:54.93 ID:7rLj8txy0
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:26:03.36 ID:Exar/6we0
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:26:20.79 ID:caEKlxOz0
今気づいた 各段階× 書く段階○ なんかいろいろサーセン
>>65 キャラのプロフィールは結構詳細に決める方だが、それを文に盛り込むのは稀だな
つーか上手く使えない
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:30:23.52 ID:qz2Nli6m0
プロフィールってどれくらいのレベル? 俺はキャラの外見を表記しない時は考えもしないんだけど。 名前を出す必要もない時は考えないし。 書いててそれぞれ必要性が出てきたら、後から登場シーンに付け足したり。 もしかして異端ですか。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:31:37.77 ID:KL9y4WTx0
お題ください
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:31:51.89 ID:T7wyRhLEO
>>63 狛犬は衝撃的だったな。個人的に初めて文才感じた作品だったり
あと個人的には蜘蛛の回の蜘蛛まつりが好きだ。何故か異常に記憶に残ってる。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:32:28.56 ID:qz2Nli6m0
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:33:41.27 ID:T7wyRhLEO
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:35:30.93 ID:Exar/6we0
>>74 俺もー
とりあえず書き上がるまで主人公のポジションがはっきりしなかったり
っていうかさいきん書いてないけどな
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:36:48.39 ID:dnUf1m5KO
>>74 名前は必要に応じてだが、外見、大まかな性格、行動原理
ぐらいは決めてる
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:41:27.15 ID:qz2Nli6m0
>>79 他にもいた。
一人称が多いから、主人公の役割はある程度決まってるかな。
>>80 性格は俺も決めてたな、そういえば。
役どころによって決まるだけだけど。口調とか。
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:41:28.90 ID:1BPQ/7HY0
ストーリーに必要な人間置くだけで、別にキャラとかはどうでもいいなあ めんちー
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:45:20.81 ID:3VnB0VJ/O
キャラにこだわるか否か その辺がラノベ作家寄りかどうかに関わってくるんだろうな
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:47:06.42 ID:56XuRpft0
いつもは書いてる最中にストーリーが浮かぶんだが 今回は珍しくもうプロットと話のオチがひらめいてしまった 今回は自己最高の作品が出来るかもしれん
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:48:15.97 ID:oalUhBF3O
キャラ設定ほとんど考えないけど 前に女子高生の一人称で書いたら異様なくらい楽しかった このスレでじゃないが
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:49:53.59 ID:3VnB0VJ/O
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:50:47.04 ID:qz2Nli6m0
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:53:53.52 ID:qz2Nli6m0
風呂前保守
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:54:30.53 ID:uYEGYKRc0
むしろ今回プロットも何も思いうかばねー
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:55:38.30 ID:Exar/6we0
日を当てるスレで「裸の王様」が推薦されてるんだけど そのうち推薦しようと思ってた「NSKにようこそ」と芸風がちょっと似ててびっくりした 同じ作者だろうか
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 22:59:45.05 ID:Exar/6we0
いや、言うほど似てないな……。なんかごめん。 気にせず推薦しよっと
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:05:28.22 ID:otnuFMCA0
俺のも推薦されてるんだ。お題間違ってるけど
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:06:53.35 ID:Exar/6we0
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:07:32.02 ID:PfI1oFYQ0
品評会お題むつかしい……なんでおっぱい禁止なんだ orz
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:13:38.95 ID:KL9y4WTx0
>>77 >>78 遅くなりましたが了
今適当におっさんのプロフィールを並べてたら纏まりつかなくなってきた。名残雪は入れられるかわかりません
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:15:31.46 ID:oaNqsC3B0
ネタかマジか知らんが、おっぱいNGで困ってる奴いったい何人いるんだよww
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:17:46.31 ID:mxxOFXld0
おっぱいを小説に入れる必然性がわからんw
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:18:02.24 ID:5Ph7i6Qu0
おっぱいってやっぱりいいよね おっぱい嫌いな男なんているのかね
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:18:21.81 ID:si6VQWI70
俺は世界NGがきつい。 …俺だけ?
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:23:07.56 ID:dbRvqsiOO
おっぱいが好きです でも 平らなおっぱいの方がもーっと好きです
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:25:35.58 ID:5Ph7i6Qu0
幼女でもないのに平らな人は嫌いです 平らが許されるのは幼女だけなんです
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:26:23.57 ID:mxxOFXld0
幼女でもないのに平らだから、「いい」んじゃあないか
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:26:28.86 ID:PfI1oFYQ0
幼女とかいってると アレが来るぞ……
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:26:57.06 ID:CG45F/VQO
恥の多い生涯を送って来ました。 ↓ おっぱい。恥の多い生涯を送って来ました。 おっぱいがついただけで印象が随分違う。
お題 「4次元」
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:27:46.15 ID:ZQocgVm50
>>103 ,. - ─── - 、
/ , `ヽ.
/〃//,. ,ィl/|l ト、 !、 、 ヽ
ー'´| | l |1 | !l. l| ! | l.|ヽ ! !、 ', おじちゃんたち
YレV!ヒエ「! |l.「_ト!Ll」| l l l どうしてはたらかないの?
! lハイJ | ´|_jヽ. リ,! ! l. l |
|l |l.} ー , L _,ハl.lトl l. | l
|l ilト、 n '' ,1l|ィ| |l l |
_ 二,ニ^tュ--ェ_t1」l.|l !リ|_lノ
r7´ f r┐| 〔/ミヽ>,-、 ̄´
Y ー个‐'t ハ-、_'ゝ、
ヽ ._・ rく ̄ヽト-'丿 ヽ l
/ (・__,)ゝi┬'´ハ` '`|
|ヽ, イ ノ┴くヽヽ、 /
`´ ゝ┬ヘ`ヽ | `ー‐1
ゝノ-‐^ー'一''丶 ヽ ヽ
ト、_ `ーァ'¨不ヽ
| | 「 ̄「 ̄l ̄ト、,イトヒi′
l l. l l ! !└' l |
└ L 」_,|__l_l.__L.l′
| | | |
l l ! !
l l. l l
ト--┤ !--‐1
f‐t央j. ト央ァヘ
| 甘l、 / 甘 |
l ,.-‐ヽ レ'⌒ヽ/
`く.__ ノ ゝ--‐′
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:30:25.01 ID:qz2Nli6m0
俺の品評会作品の半分近くにおっぱいが出演していた
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:30:31.50 ID:mxxOFXld0
>>103 〜 〜
(Φ Φ ) よんだ?
\く /
|д|
\\
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:30:32.21 ID:1BPQ/7HY0
>>106 〜 〜
(Φ Φ ) な、なによあんた!呼ばれてるのは私よ!
\く /
|д|
\\
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:31:41.31 ID:PfI1oFYQ0
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:32:45.74 ID:otnuFMCA0
, - ― ― - 、 _ /:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :ヽ ゝ-ゝ-、:: :: :: :: :: :/i: :: |ヽ:: :: :: :: :ヽ /:: ::ゝ- ':: :: :: :: :::/ l:: ::| ヽ:: ::ヽ:: :: ヽ /:: :: :: :: /:: :: :: :: : ::/- l:: :| ヽ:: ヽ_:: ::ヽ こんばんはー :: :: :: :: /:: :: :: :: i:: / l:: | ヽ:: ハ:: :: ヽ :: :: :: :/:: :: :: :::/l::/ ヽ| ヽ|ヽ:: ::|ヽ :: :: ::/:: :: :: :|:/ |/ , -`、 rヽヽ:: ::| :: :: /:: :: ::イl/ /l:::::ヽ、 /ゝヽヽ:::| ::イ/:: :: :::ゝ/ l l:::::::::::l l:::::| r、| / ヽ::r´'ヽ ヽ - ' ヽ ' l l , , , 、 ,,, | ヽ / `r:ヽ / レ´レヽ _ イ ____|__ ` − - ' /; r ‐´; ; ; ヽ / /; ; ; /; ; ; ; ヽ|ヽ /; ; ; ;/; ; - ' ; ; ; ; ヽ、 /; ; ;i;/´; ; ; ; ; ; ; ; ;/l;ヽ
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:32:45.79 ID:dbRvqsiOO
幼女帰れwww
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:33:20.04 ID:mxxOFXld0
>>112 〜 〜
(Φ Φ ) まあそう邪険になさらずに
\く /
|д|
\\
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:34:03.23 ID:5Ph7i6Qu0
パイズリってあるけど、板ズリっていうのがあると思った でも貧乳は幼女に限る。これは譲れない
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:36:18.20 ID:ilVtoRjsO
さくやさん……
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:36:43.38 ID:3bg0ExIq0
どの部分が何を表しているかわからんww だれか俺にわかるように説明してくれw
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:36:45.01 ID:PfI1oFYQ0
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:48:03.61 ID:ilVtoRjsO
守り神
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 23:55:15.03 ID:Exar/6we0
ほ
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:00:02.37 ID:6AELu94T0
,ハ,,,ハ ( ・ω・) 品評会開始。 〜 。(_ ゚T゚ . ゚ ゚̄
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:00:03.51 ID:grsR4rvg0
,ハ,,,ハ ( ・ω・) 品評会 。 〜 。(_ ゚T゚ . ゚ ゚̄
122 :
◆BNSK/DqMrY :2007/11/24(土) 00:01:56.57 ID:JNL4dcst0
BNSKer総員 傾注! 諸君 土曜が来た 無得票の敗残兵諸君 最古参の新兵諸君 万願成就の土曜が来た 戦争の週末へ ようこそ! 筆を執れ! 戦争の濁流の筆を執れ! 諸君!! 第一目標は週末品評会全域! 文才無いけど小説書くスレ! うpロダ! 斬捨御免!!まとめ掲示板! 通常作品まとめWIKI! 過去ログ群! パツキンが無給で!? ステーキの宮! テンプレ嫁! CGIチャット別宮! 長編隔離板! 機動編集! サルガッソー本庁! ポロロッカ会議局! パラライカ寺院! ガチホモ ソーロー ペドフェリア ヴィッパー 全て燃やせ 沖平政府院! BNSK運営連隊本部施設! カオスキング大聖堂! 『優勝者殿! カオスティックピープルは?』 爆破しろ! 当然だ 不愉快極まる 欠片も残すな 『お題はいかがしますか優勝者殿!』 空想だ それ以外は倒せ 妄想 SF 仮想 全部投票外にしろ 不愉快だ 『NGワードは?』 世界 おっぱいもだ 歌の様に 『これら守れない奴はどうしましょうか』 爆破しろ かまうものか 目についた物は 片端から酷評し 目についた者は 片端から保守れ 存分に書き 存分に読め この人口800万のスレは 今宵 諸君らの 週末品評会と成り果てるのだ さあ! 諸君!! 書いたり書かれたり 投下したり投下されたりしよう さあ 執筆をしよう 宴は遂に 今宵・此の時より開かれたのだ 『BNSK!! BNSK!!』
品評会終わり
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:02:47.18 ID:oDfIKdp+0
さあ来週のお題はー
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:03:09.06 ID:6AELu94T0
SFもなのかwww
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:03:46.27 ID:WteNX/HL0
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:04:12.37 ID:Z6/xEXbi0
アナウンス乙 投下一番乗りを目指していたが……間に合わなかった……
128 :
◆BNSK/DqMrY :2007/11/24(土) 00:05:33.91 ID:JNL4dcst0
ああすまん、適当に改変するためにSFとか妄想とか書いたけど 基本的には大丈夫なはずwwww ややこしくてゴメンネ 死んでくる
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:15:42.53 ID:Dm6RckqXO
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:17:29.67 ID:IzY3JsPiO
投下します
131 :
お題:落ち葉+コーラメントス 1/3 :2007/11/24(土) 00:19:31.49 ID:IzY3JsPiO
十一歳の誕生日に、少年は自分が落ち葉であると知ってしまった。 少年は落胤であった。とある権力者が若い母を無理やり手篭めにして産ませた子供が、その少年であった。 誕生日ケーキを眺め回して、有頂天になってうるさくはしゃいでいた少年に、彼にいつも冷たく当たっている育ての父親が暴露したのである。 そのときまでは、いくら無愛想でも自分の父親なんだから、心の底では愛しているだろうという考えにより、少年は父からどのような仕打ちを受けたとしても彼を慕い続けていた。 けれども、実際のところ父と少年との間には血のつながりなどなかった。 それどころか、父は少年を憎んでいた。いつも無愛想なのは、断じて照れ隠しなどではなく、剥きだしにした憎悪からきたものだった。 楽しかったはずの誕生会の席で、少年は知りたくもなかった真実を押し付けられた。 少年の母は泣いていた。育ての父親は、意地悪が功を奏したのに得意になって口元をにやつかせていた。 今思い出してみると、物心付いてこのかた、義父がした数々の仕打ちは、決して愛情なんてものではなしに、生意気な糞餓鬼への憤激と、顔も知らぬ本当の父への嫉妬による八つ当たりだということに少年は気が付いた。 少年は何もかも信じられなくなった。義父はもとより、今まで嘘をついていた母さえ信用できなくなった。 少年の周りは敵だらけになった。どこへ行っても油断ならなくなった。 学校へ行くとなると、いつ自分が父なし子であると友人達にばれるかわからない。暑苦しい善意を押し付けてくる担任に相談できるはずもない。 父方の祖父母など、恐ろしくてたまらなかった。本当の父親を探すことなど、その日その日を過ごすことに精いっぱいな少年には思いもよらなかった。 それ以来、家庭の食卓は白々しいものになった。見かけ上は、知る前と後とで特に変わりはなかったが、親子三人の心の底に渦巻いている思惑は、それぞれに対する怒りだったり、こんな関係の馬鹿馬鹿しさだったり、後ろめたさだったりした。
132 :
お題:落ち葉+コーラメントス 2/3 :2007/11/24(土) 00:21:41.60 ID:IzY3JsPiO
少年は子供であった。だから、周りの人間に自分の心変わりを隠し通すには経験不足であった。 義父の態度はますます刺々しいものになり、母はときどき、少年が寝静まると一人すすり泣くようになった。 父方の、ずるがしこい老婆はこれ見よがしに義父と囁き合い、玩具を買ってくれたこともあった祖父は、わけも無しに癇癪を起こして少年を折檻した。 家の中に居場所が無くなった少年は、自然、外に出て夕暮れまで遊ぶことが多くなった。 遊びの内容は、荒んだ少年に相応しいもので、取り巻く悪童たちとともに、落書きや、万引きや、物を壊すなど、様々な悪事を毎日のようにやらかしていた。 ある日、一人の悪童が、どこで覚えてきたのか、コーラにメントスを入れる遊びをしようと提案した。 彼曰く、ダイエットコーラにメントスを入れると、噴水のように中身が吹き出るらしかった。 少年達はさっそく公園の真ん中で、実験を開始した。 ペットボトルの中にせっせとメントスの粒を次々入れていると、突然、液体が細かく粟立ち、飲み口から黒ずんだ泡が噴水のように飛び出した。 少年たちは実験の成功に有頂天になり、手を叩いてはしゃぎあった。 この年頃の少年によくあるものだが、きちがいみたく騒ぎ立て、辺りを駆け回り、獣のような笑い声を立てて歓喜を表現した。 ひとしきり落ち着くと、誰かが、一緒に食べたらどうなるんだろう、と言った。 胃袋が爆発するんじゃない、ということで彼らの見解は一致した。 試してみない、と先ほどの悪童が提案した。 落ち葉の少年は、俺がやってみると胸を叩いて立候補した。 それは、いくぶんやけっぱちな、自傷衝動のような気持ちからだった。 たとえ少年の腹が破裂したとしても、彼の死を悲しんでくれるような身内は居ないのであった。
133 :
お題:落ち葉+コーラメントス 3/3 :2007/11/24(土) 00:25:09.11 ID:IzY3JsPiO
実験の決行は翌日になった。少年は大量のコーラとメントスを買うための金を確保すべく、箪笥から、母の古びた財布を取り出して、一万円札を一枚くすねた。 あくる日、少年たちは連れ立ってコンビニに向かった。籠の中に、ありったけのメントスとダイエットコーラを放り込んで、いぶかしむ定員をよそに、一万円札を差し出してそれらを購入した。 残った金は、みんなで山分けすることになった。 前日と同じ公園で、悪童たちははやる気持ちを抑えながら、少年による人体実験の始まりを待った。 千五百ミリリットルのペットボトルを二本空にすると、少年は先に包みを取っておいたメントスを腹の中に飲み込んだ。 そして、手拍子をする悪童たちとともに、胃袋の内容物を撹拌するべく、飛び跳ねて踊った。 しばらくすると、少年の動きが止まった。胃袋の中に、なにかしらの異常を感じたからだった。 数瞬遅れて、少年の咽喉の奥に凄まじい奔流が叩きつけられた。 口から、鼻から、目からも少年は泡を吹き出した。 悪童たちはそんな少年の姿が面白くて、腹を抑えて笑い転げた。 一旦、こげ茶色の泡が収まっても、またほんの少し経つと、少年はしゃっくりをするみたいに泡を吐き出すのだった。 咽喉を掻き毟りながら、地面に倒れこんで身をよじってもだえるような仕草も、悪童たちの笑いに一役買っていた。 しばらくすると、悪童たちは痙攣する少年の様子が心配になり始めた。先ほどまで演技していたと思われた彼の顔が青ざめていたからだった。 とっくに泡が飛び出なくなっても、コーラでどろどろかゆになった野面に寝転がる少年は動かなかった。 少年は咽喉を詰まらせて窒息死したのだった。 彼の通夜の日、彼の両親は、安心して次の子供作りに精を出した。 肉の愛情というものは、身内が無くなって悲しんでいるときほど強く結びつくのである。 十ヶ月後に生まれた落ち葉ではない娘は両親に愛されて育った。
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:25:40.39 ID:IzY3JsPiO
以上です。
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:26:32.09 ID:JNL4dcst0
保守代わりに パイズリより板ズリ派な僕が今回のお題「妄想」をぶちまけましょう 板ズリっていうのは快楽的気持ちよさより 無いもので必死にしようとする姿を楽しむものだと思うんだ スポーツブラとひんぬうの間や、スク水とひんぬうの間に無理矢理 ポコティーヌを挿し込まれ、うまく出来ない口惜しさと羞恥心に染まる表情 そのシチュをこう、だね おや、こんな時間にパトカーが…
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:32:41.08 ID:b2SYg9P10
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:33:23.99 ID:R1q9qN+Y0
妄想じゃなくて空想です
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:35:45.32 ID:OLzFdIRb0
その妄想を読んでこんにゃくの宮を思い出した
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:37:14.95 ID:eFXOdybtO
もう寝よう明日書こう
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:37:42.16 ID:b2SYg9P10
>>131 -
なんだろうこの後味の悪さは。
コーラメントスの描写でげらげら笑ってしまったからか
オチで凄まじい後ろめたさを感じた
小説読んで後ろめたくなることもあるんだねえ
新鮮だ
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:43:39.15 ID:E5re/QgB0
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:50:20.17 ID:b2SYg9P10
h
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 00:58:06.74 ID:BbV0/BSB0
>>141 すげえええええええええええええええええ
誰がしゃべってんだ!
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:05:46.80 ID:JNL4dcst0
メディアプレイヤー開くのマンドクセ
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:05:53.89 ID:dtzI94AY0
そろそろお題もらってもいいでしょうか?
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:09:38.42 ID:Z6/xEXbi0
>>145 品評会のまっただ中に通常のお題を選ぶあなたに敬意を表して
「おっぱい」
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:12:53.01 ID:dtzI94AY0
>>146 連休中に書けるように頑張ってみます。ありがとうございます。
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:28:57.85 ID:b2SYg9P10
h
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:39:38.46 ID:b2SYg9P10
h
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:44:38.29 ID:Ew1CFTIh0
h
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 01:57:47.88 ID:b2SYg9P10
あぶねーぞコラ
152 :
◆E9DH6CrGjo :2007/11/24(土) 01:58:49.30 ID:Z6/xEXbi0
品評会作品投下しますー 「僕は空想ができない」2レス
153 :
僕は空想ができない 1/2 ◆E9DH6CrGjo :2007/11/24(土) 02:00:33.07 ID:Z6/xEXbi0
僕は空想ができない。 いわゆる「想像力の欠如」というわけではない。たぶん人並み、もしかしたらそれ以上に色々なことを思い浮 かべることはできると思う。問題は、それがすべて現実になることだ。 この能力が僕のものになったのは、小学四年生のとき。いじめっ子に殴られながら「こいつら全員死ねばいい のに」と思ったその日の夕方、工事現場の鉄骨の下敷きになって、いじめっ子グループが全員死んだ。僕は、天 罰が下ったんだ、いい気味だ、とその程度にしか考えていなかったけれど、そのうち誰かが「あいつをいじめて いたから死んだんだ」と言い始めた。根も葉もない噂ではあったけれど、どちらかと言えば内気だった僕のイメー ジにはぴったりだったようで、最後には「あいつに関わると死ぬぞ」となって、数少ない友人も僕のもとを去っ ていった。もうこんな奴らと一緒にいたくない、そう思った次の日、父の転勤が決まって僕は県外に引っ越すこ とになった。 転校先では明るいキャラを作って、すぐにみんなと打ち解けた。友達も増え、再び順調な日々が過ぎていった。 次に大きな事件が起きたのは、六年生のとき。成績のことで初めて母と大げんかをした。あんなババアのいる 家、二度と帰るもんか。死んじまえ――友人の家に上がり込んでゲームをしていると、オバさんがものすごい顔 をして部屋に飛び込んできた。クラスの連絡網が回ってきて、母が交通事故で死んだというのだ。僕は何がなん だかわからないままオバさんの車に乗せられて、母が運ばれたという病院に向かった。病院には父が先にきてい て、僕が霊安室に入るのを止めた。僕を探しまわっている時に、信号無視のトラックにひかれたらしい。バカだ な、本当に死ななくたっていいのに……自分勝手だったと今ならわかるけど、その時の僕は、死んでしまった母 にやりきれない怒りをぶつけていた。 葬式が終わって落ち着いたころ、僕は私立中学の受験を決めた。普通に入れば公立よりも高くつくけど、特待 生で入れば費用が全部タダになる。母のパート収入が無くなって家計が辛いのは僕にもよくわかったし、最後に 母と成績のことで喧嘩したのが心に引っかかっていた。いい成績を取って母を安心させたいと、どこかでそう思っ ていたのかもしれない。周りの誰もが僕には無理だと言ったけれど、何故だか僕は落ちる気がしなくて――そし て実際、合格した。今思えばあれは僕の実力でもなんでもなくて、僕が「合格する」と思ったから合格しただけ なんだろう。
154 :
僕は空想ができない 2/2 ◆E9DH6CrGjo :2007/11/24(土) 02:01:16.70 ID:Z6/xEXbi0
中学に入って最初の日、僕は体育館裏に呼び出された。一目惚れした隣のクラスの女子だった。お互いの名前 を初めて知ったその日に、僕は告白された。返事は明日でいいから、と背中を向けて駆け出した彼女の後ろ姿を 見ながら、口元が緩んでいった感覚を今でも覚えている。 有頂天のまま帰ったその夜、僕は覚えたばかりのエロ知識を総動員して妄想にふけった。次の日の放課後、暗 くなった公園で僕たちは肩を寄せ合い、そして……妄想は残らず現実のものになった。その日は父が遅番で、誰 もいなくなった僕の家で二人一緒に夜を明かした。 寝息を立てる彼女を腕に抱きながら、僕は恐ろしさを覚えていた。なんでも思う通りになるじゃないか。今こ こにいる彼女だって、僕の思う通りに動いているだけで、彼女は僕を求めているわけじゃないんだ。そんなのっ て、ズルい。 その夜は眠れなかった。明け方、彼女がモゾモゾと動き出したとき、僕は思わず寝たふりをした。それに気づ いたかどうかはわからないけど、彼女は枕元にメモを残して静かに家を出て行った。 『ごめんなさい。あなたとは相性が良くないみたい』 そう書かれたメモには何の意味もなくて、僕が望んだから彼女は僕のもとを離れていったんだ。今日のことは 忘れて、彼女の意思で生きてほしい。そう思った。 そしてその日から、僕は空想をやめた。学校というのは意外に忙しくて、いろんな仕事を引き受ければ、目の 前のことをこなすだけで手一杯になる。空想なんてしている暇はなくて、僕は充実した毎日を過ごしている。 だけど、今でもたまに思う。僕にも空想ができればいいのに。そうしたら自由に、色んなことを思い浮かべら れるのに。ああ、空想ができればなあ……。 [了]
以上です。初1番乗りげとー
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 02:12:24.26 ID:b2SYg9P10
お前ら……保守に対して無関心すぎるだろ……
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 02:13:09.72 ID:JNL4dcst0
158 :
【品評会】痛み醒めてその後僕は 0/4 ◆ZRkX.i5zow :2007/11/24(土) 02:21:16.12 ID:tFJy3gUX0
投下
159 :
【品評会】痛み醒めてその後僕は 1/4 ◆ZRkX.i5zow :2007/11/24(土) 02:21:31.92 ID:tFJy3gUX0
僕がその子と出会ったのは、黄色い満月の出た、馬鹿に虫がうるさい夜だった。その日は昼から特に暑くて、夜になってもそれは変わらず、 あまりの暑さに僕は懐中電灯と一緒に家をこっそりと抜け出した。雲は一切月にかかってなくて、なのにじめじめとした空気は僕を一層うだら せた。光を前に差し出して、僕は夜の道をある場所に行こうと街灯もない田舎道を歩く。前を向いても横を向いても木が生い茂ってるそれは、 当たり前だけど昼間とは全く違って、夜にあまり出歩かない僕にとって、不安と恐怖、それと少しばかりの冒険心とが響く。まるで全てから見 放されたかのような闇夜は、必ずしも切なさだけを生み出さなかった。それは多分、昆虫達の声と手に持った光源が僕をこの世に引き止めてい る最後の証としてあるからだろう。それらを踏みしめながら、空がちょっと傾いた頃、僕は錆びた看板の脇から道なき道へ入った。いよいよも って人工物は僕ただ一人になって、そこをしばらく行くと、二つのレールが現れた。そこは僕が生まれる前に廃線になった鉄道の後らしくて、 七十メートルくらいの線路の間にたった一つ、駅のホームだけがポツンと置かれているのだ。その手の人には結構な名所らしく、カメラを抱え た人をこの辺でよく見かけたりする。今の時期はその機会も多いけれど、さすがにこの時間じゃ誰もいないだろう。何も好きなのはよそ者だけ とは限るまい。地元民の僕だってお気に入りの場所だったりする。もっとも、僕以外に知り合いがわざわざここを歩いているのを見たことがな いけれど。ただでさえ静かな町の、更に寂れた、誰もいない所。もしかして僕だけの場所――そう思うと愛着もわいた。やがて暗がりに駅が見 えた。やっぱり駅も夜に見るとフインキが違うな、とライトを構内へ向けると、 ビクリとした。 人がいる。ライトを左から右に流す時に照った人影。闇に慣れた僕の目は、改めてライトを向けないでもちゃんと分かった。確かに人がいる。 ホームの端に座っていて、足をぶらんぶらんと揺らしている。恐る恐る、もう一度ライトを向けると、その人影は僕と同い年くらいの子供だった。 しかもただの子ではない。その子もこちらを向いていて、更にビクリとしたけれど、ぼんやりと際立つ青い瞳に耳がぎりぎり隠れるかくらいの、 外国の子だ。パッと見て僕は西欧らへんの子かな、とか、そして何でここに、こんな時間に人が、とそういうさまざまな疑問が錯綜して、混乱 して、けれど向こうは実に落ちついた風に、座っている隣を手のひらでタンタン、とたたいた。その物腰からは、その子の様相も相まって、男 なのか女なのかさえ僕は悟れなかった。何故か自分の呼吸が震えていることにようやく気付き、僕はいろいろな曖昧さを胸に抱え、その子の隣に おずおずと座った。コンクリートはひんやりと気持ちよく、そして、先客に悪いかな、と思って懐中電灯をパチリと消した。
160 :
【品評会】痛み醒めてその後僕は 2/4 ◆ZRkX.i5zow :2007/11/24(土) 02:21:56.09 ID:tFJy3gUX0
しばらく彼、あるいは彼女は、おそらく僕がここに来るずっと前からそうしていたのだろう、ただ足をぶらんぶらんと振って、真正面の、本来 なら緑が見えるはずの闇を見据えていた。僕はそんな姿を見ていると、この子に話しかけることが野暮な事に思えて(そもそもこの子が日本語を 解すのかというのもあったけど)、その間、この子が長袖長ズボンを着ているのは虫刺され対策かな、ああ、そういや僕は虫除けスプレーも何も してこなかったな、とかそんな事ばかり考えていた。すると、やがて向こうから何ともなしに「僕はね」と話しかけてきた。 「僕はね、悩んでいるんだ」 それはとてもきれいな発音で、掠れたような、でも澄んだ声だった。僕はその日本語を聞くと、この子は本当に外国人なのだろうか、と変な 事を思ってしまう。 「何を?」と僕は聞き返す。 そこでその子は一度「うーん」と少し考え込んで、「例えばね」と続けた。 「もし、僕が君をこっからいきなり突き落としたとして、列車が突っ込んできたら君は死んでしまうけど、今はもう列車は来ない。けど、頭を 打っちゃって死んじゃうことがあるかもしれない。それって、確率は違うけど同じことなんじゃないかなあ、ってそんな悩み」 「……随分と哲学的なことを考えるんだね」 「まあね」 その子はあっさりと自分が哲学してると認め、僕自身、言いだしっぺなのに哲学とは何か、なんて知らないから、ただ黙るしかなかった。 けれど、ふと僕はちょっとした反論を思うついて、浅はかにも言ってみる。 「でもさ、残された人の恨みつらみとか、そんな違いがあるんじゃないの?」 「それもまた、同じじゃないかな」 「どうして?」 「なら、君の死を悲しむ家族や友人や恋人がいたとして――いや、ごめん、悲しむ人がいるけれど、その人達が死んじゃったら誰が君の死を 悲しむのさ。君は曾お爺さんの死を知っているかい? 僕は知らない」 僕はうなった。 「そんな事を考えても仕方ないじゃないか。何の為のお墓さ」 「うん、仕方ないね」とまた、その子はあっさりと肯定した。「リンゴは何故リンゴジュースになるのとか、アップルパイになるのとか、 そんな疑問はしょうがないけれど、でもやっぱり、どっかのインベーダーが『ニンゲンは増えすぎた』とかそんな理由で地球を滅ぼしても、 何ら変わらないと思うと、僕は悲しいなあ。うん、悲しい」
161 :
【品評会】痛み醒めてその後僕は 3/4 ◆ZRkX.i5zow :2007/11/24(土) 02:22:17.22 ID:tFJy3gUX0
最後は深く自分に言い聞かせたようにその子は言った。僕はこの子は何を言っているのだろう、と思うと同時に、そんな事を考えること 自体悲しくないかい、なんて失礼な疑問が浮かんだ所で、その子はクスクスと笑い出した。 「君は、僕が『君の生み出した幻なんだ』と言ったら言ったら多分信じちゃうだろうな」 「何で」 「そりゃあそのままじゃ信じないけれど、君が僕に触れられない、幽霊みたいにすり抜けちゃったら絶対信じるだろう」 「よく僕のことを知っているんだね、会ったばかりなのに」 「勘さ、勘」その子は手元に転がっていた石ころを一つ、線路に放り投げた。その石はやっぱり闇に消える。「けれど、まあ、僕の予想は 大抵外れるんだけどね。サッカー観戦とか、じゃんけんとか、明日は晴れだとか、予想すると外れてしまう」 「それって、あれじゃないの、勝った喜びより負けた悔しさの方が大きいから、強く印象に残っているだけとか」 「ああ、そうかもねー」その子は空を仰いで笑った。「僕はネガティブだ。悲しいことがあればどん底だ」 「誰だってそうだと思うな」 僕がそういうと、いきなり冗談めかし、気取ったように言うのだった。 「果たしてそうかな? なら戦争なんて起こらないと思うけども」 僕はこの子と話していると、何ともいえない、奇妙な気持ちになってきた。つかめない雲の上に無理やり乗せられてしまったような、 そんな感じ。実際僕は、この子の悩みだとか性格とかにさほどの興味も、理解もないけれど、真っ暗な駅で交わす会話は居心地が良かった。 あるいは、こんなフインキだからこそ、僕の冒険心はまだうずいているのかもしれない。 僕はふと手に当たった、コンクリートのすき間から生えた雑草をブチリと手でちぎった。 「まさか涼みに出たくらいでそんな事を聞かされるなんて思いもよらなかったな」言って、僕はその草をサラサラと手の間から落とす。 「僕はね」いつの間にか足をピタリと止めていることに僕は気付く。「忘れっぽいんだ、いろんな事を。うーん、多分僕は本当に君が生み 出した幻なのかも知れないけれど、その事にさえ忘れている、気付いていないような……」 「君の生まれた場所は?」 「覚えているよ、はっきりと」 「ならそれで良いじゃない」
162 :
【品評会】痛み醒めてその後僕は 4/4 ◆ZRkX.i5zow :2007/11/24(土) 02:22:51.56 ID:tFJy3gUX0
「うーん……」この子は本当に、それが人生にとって重大な悩みのように、しきりに考え込む。「僕は昨日食べた食事のぬくもりを覚えて いない。覚えようとしても、すぐに忘れてしまって、そんな僕が電車に轢かれようと、君に頭を殴られようと、インベーダーが地球を滅ぼ されようと、変わりないんじゃないかなあって……」 その子がそこまで言った時、僕は肩を反射的に上げた。その子が僕に思い切り寄りかかってきたからだ。僕が線路に飛び降りたら、その ままコテン、と倒れてしまいそうなくらいに。 「そ、それは」と僕は言った。「やっぱり誰だってそうじゃないか」 「君は今、『冬ってどんな寒さ?』と聞かれたらどうする?」 「え……、手がかじかんで、足先は靴下を履いてても冷たくて……」 「僕はそれが思い出せない。それがどんな感覚なのか、『今この状態』しか分からない」 少しだけ風が吹いた。ぬるい風が僕らを通り越して、風上に座っていたその子の髪が僕の顔をくすぐった。匂いというものは何もなくて、 その子の髪がまた重力にしたがった時、虫の声がより大きく聞こえた。僕は手首を腿の上に置いて、自分の指で手遊びをしていたけれど、 やがてそれも退屈に思えてピタリとやめた。月明かりはななめから差し込み、見上げると満月はずっと満月のままだった。僕が幽かに見える レールに目を落とした時、 「だからね、」 頬に一瞬、温かくて柔らかい感触がして、僕はただ目を閉じた。闇は本当の闇になり、音は本当の音になって、やがてそれらもなくなって しまい、じゃあ何があったかと言うと僕は何も覚えてなくて……。再び目を開けると、ほとんど何も変わってなくて、変わったのは空が少し 明るくなったのと、あの子がいない事だけで、けどあの子の金色の髪や青い瞳や長袖長ズボンや声は確かに僕の記憶にあって、そして、 あのぬくもりは、幻なんかでない、どうしようもないくらいの、現実。
163 :
◆ZRkX.i5zow :2007/11/24(土) 02:23:21.95 ID:tFJy3gUX0
終わり
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 02:33:55.15 ID:BbV0/BSB0
ほっしゅ! ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、保守!
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 02:39:02.42 ID:0Gu5oYAz0
通常作、いきます。
166 :
通常作「肩こり」 1/4 :2007/11/24(土) 02:39:48.65 ID:0Gu5oYAz0
両手の指を交互に組み、頭上へかかげる。目をきつく閉じて俺は背筋を伸ばした。 「んっ!」 電気スタンドの明かりが目にきつい。窓の外から犬の遠吠えが聞こえてきた。 「受験勉強もいつまで続けりゃいいんだろ」 後数ヶ月だというのは分かっている。何故か、永遠に続くような錯覚を覚えていた。 腕を下ろして首を左右へ捻ると、鈍い骨の音が響く。 何度目かの捻りで気づいた。窓の向こうに肌色が見える。 「ん? え?」 奥歯を噛み締め、唇に力を入れて俺は窓を凝視した。その形、見覚えがある輪郭だ。 顔の力が一瞬緩む。直後に怒りに近い感情がこみあがってきた。 「岡野! てめぇガキじゃねえんだぞ!」 そう叫びながら俺は立ち上がり、窓へ駆け寄り力いっぱい開く。 すると、そこには小さく震える岡野が立っていた。 セーラー服を全身に貼り付け、シャワーを浴びたかのように顔へ水滴を散らせている。 彼女の足元へ視線を向けると、水溜りの中へ両足を浸らせている。学校指定の白いソック スが灰色に見えた。 そういえば、さっきまで雨が降っていたんだ。 「高橋、相談があるんだけど」 そう言ってから口元をきつく結び、俺の返事を待つ岡野。 「玄関から来い! 玄関から」 怒りの感情はとうに消え去っていた。ただ、何か俺を包み始めた不安を振り払えるよう な気がして、思わず怒鳴ったのだ。 「大きな声出さないで、お願いだから」 今にも消えそうな声で岡野はそう言い、少しずつ表情を沈ませていった。
167 :
通常作「肩こり」 1/4 :2007/11/24(土) 02:40:12.68 ID:0Gu5oYAz0
椅子に座って俺は腕を組んだ。木造平屋建の割には家族の生活音といったものが聞こえ ない。この家は防音がよくできている、俺の怒鳴り声にも家族は気づいていないようだ。 ベッドに座る岡野は、全身を毛布でくるんで小さくなっている。彼女の足元には、水を 吸って重そうなバスタオルが二枚。一枚は無造作に捨て置かれているが、もう一枚は丁寧 に濡れた服を包んでいた。スカートらしきものが少しはみ出している。 俺の両親に見つかりたくないから、と、乾燥機すら拒絶し、さっき俺が背中を見せる向 こうで岡野は濡れた服を脱ぎ、毛布を纏った。 「高橋、あのさ」 うつむき加減の岡野は小さな声で言った。 「なんだよ。小さい頃は窓から出入りしてたけど、もうそんな年でもねえだろ? 何かあ ったのか? そうでもなきゃ俺の部屋なんて」 中学に入ってから、いつの間にかお互いに話をしなくなった。なんとなく気まずいとい うか、気恥ずかしくなって自然とそうなっていったのだ。少なくとも俺はそうだし、多分 岡野もそうだろう。 その気恥ずかしさがどういう感情から生まれるものなのか。もちろん分かっている。 しばらく彼女はおし黙っていたが、何か意を決したように口を開いた。 「肩が。肩こりが、ひどくて」 は? 肩こりって何だそれ。 「俺も結構肩こってるよ? さっきまで勉強してたし、この年で肩こりなんて考えもしな かったけどな」 嘘だ。俺は肩なんてこらない。 「高橋も?」岡野は素早く顔を上げた。「ひょっとして、私だけじゃなかった?」 眉を潜め、どこか不安げな岡野。 「うん、結構いるぞ。まあ日本人の宿命らしいから仕方ないべ」 「そう、なんだ」 岡野の肩が下がり、かすかに彼女のため息が聞こえた。 だが、安心したような表情ではない。どこか悲しそうにも見える。 「お前の第一志望、俺と同じ高校だったよな? 悩むくらいに肩がこるんだから相当勉強 しているだろ。俺ん家、家族で肩をもみあってるからうまいよ、もんでやろうか?」
168 :
通常作「肩こり」 3/4 :2007/11/24(土) 02:40:40.48 ID:0Gu5oYAz0
毛布一枚かけた状態でうつぶせになってもらった。 彼女に覆い被さるよう俺は四つんばいになり、背中と肩をゆっくりと揉み始めた。 もんでいる途中で岡野は何度か寝てしまったようだ。その度に俺はきつく肩を握り込む。 彼女は悲鳴と共に頭を振り上げ、寝ぼけ眼でも一応は俺を睨みつけてきた。 わざとであることが彼女にバレないように、何食わぬ顔を作るのは本当に大変だった。 ちょっとやりすぎかもしれないが、こんなことも今の俺には楽しくて仕方が無い。岡野 の反応がおかしいのではない。彼女と一緒にいるのが物凄く久しぶりだったから、俺は単 純に嬉しかった。 小一時間も揉んでやると、「もういいよ」と岡野はだるそうな表情でそう言い、毛布の 下で仰向けに転がる。 四つんばいの腕と足に彼女の体が当たった。 感電したかのように、思わず俺は膝をついて起き上がった。 「高橋……ありがとね」 胸元の毛布を左手で押さえながら半身を起こし、岡野はセミロングの髪をけだるそうに かき上げた。 俺はベッドから飛び降り、勉強机の椅子へ尻を落とす。腕組みで少し顎を上げ、偉そう な顔を岡野へ見せた。 「おお、いつでも来い。そのかわり今度はお互いに揉みっこだかんな」 そう言うと、岡野は俺から視線を外した。 少し間を空けてから「うん」と小さく頷く。 そして、それまで僅かに緩ませていた唇をきつく結んだ。俺へ素早く顔を向け、かすか に眉を潜める。 俺を射抜くような彼女の視線。そこに何か思いつめたようなものを感じた。 「高橋、あ、あのね」 「な、何だよ」 いつの間にか俺まで緊張していて、少し背を反らせながら答えた。 口を半開きにした岡野は、凍りついたかのように動きを止める。 見詰め合ったまま、俺達の間に沈黙が訪れた。
169 :
通常作「肩こり」 4/4 :2007/11/24(土) 02:41:04.29 ID:0Gu5oYAz0
ふと、どこかから子供の笑い声が聞こえた。 ちらりと窓へ目をやる。漆黒に塗られたような窓ガラスの向こうで、白い綿のようなも のが舞い降りていた。 雪だ。すげえ、今年初めてだ。 「岡野、ほら!」 俺が窓を指差しながら叫んだ、その瞬間。 「うわぁ」 岡野の表情に、まるで雪解けの春を思わせる笑顔が戻っていった。 濡れた服にも関わらず岡野は笑顔で家へ帰っていった。 窓から彼女を見送った後、俺は椅子に座って背もたれへ体重をかけた。両手で後頭部を 支え、天井を仰ぐ。 何となく俺には岡野の目的が読めていた。肩こりの悩み相談でここへ来たのではない。 だが、慌てる必要は無いだろう。最近はろくに話もしなかったことだし、その空白をこ れからゆっくりと埋めていけばいいと思う。 「俺と岡野とのコリも、もみほぐすことができるかな」 沈みがちだった受験勉強も何だかやる気が出てきた。合格すれば岡野と同じ高校だから。 完
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 02:41:48.44 ID:0Gu5oYAz0
2/4を1/4って書いちゃった。ごめんなさい。
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 02:59:33.75 ID:PZTXXs380
h
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 03:11:23.31 ID:4bm8PDqQ0
___ / ..., ___,-‐ ______ー-、__ 丶 ,、 \ / ̄ ̄\ `ヽ l //r-ィ'7/l:::::/ l::l |l:::::::ト、ヘ::..-、__ヽ\l:::} l | | え |`-、_yイ::|l::::| || |::/|- リ \:::|ヘ^ ヽ:::|ヽ::::l-ヾノ ノ | : .| 保 と | | |:::||リr--ソ、_ >i-―-∨ l:::| r―‐'´ .| : .| 守 : .| ,' |l:::::| l l::::l` ´ /::::l ノ ノ:::| ', | : .| : > ,' lヘ:::| ` i::ノ ヽ::ノ l:::::/ ', | : .| / ,' ト、l:::l /// u /::::ハ ', < .| ――‐' i |ルヘ::ヽ /:::/リヘ ', ヽ .| ゝ_ノ ヽ川>、 r‐-、 _<ソ:::| ヽ_ノ \_/
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 03:31:04.29 ID:MesWq0PF0
15歳、本物のゆとりが品評会用初小説を執筆がてら保守
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 03:51:45.61 ID:zxgz6RYu0
>>166-169 貰ったお題は「肩こり」だったのだろうか。乙
そのお題で上手い具合にラヴい話に仕上げてて良きかな思う
寝て向かい合う状態になるところのアイデアはとてもいいです。「俺だったらこういう風になるのが好み・・・(*´д`)ハァハァ」
とか色々考えてしまうくらいいいですw
でも最後の高橋の独り言は狙いすぎな感じがして個人的にですがぶっちゃけクサいですw
とはいえ話の落としどころ(というか結末)としては上手いし、よくまとまってて良いと思いますた
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 04:26:51.86 ID:F/NyqIr40
保守寝
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 05:13:10.04 ID:OLzFdIRb0
30秒ですよ、奥さん
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 05:33:29.79 ID:BbV0/BSB0
大富豪保守
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 05:56:04.82 ID:E+J50BKZ0
富豪保守
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 06:40:45.76 ID:N4f6hJwyO
革命保守
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 07:23:27.30 ID:gfOTyQ100
休日出勤前保守
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 07:51:35.40 ID:k1KL6yyU0
悪戦苦闘中保守
いまおきたほしゅ
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 08:25:46.55 ID:GGJdA9OiO
暇なのでお題を下さい
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 08:33:27.80 ID:eFXOdybtO
流星のロックマンはじまたw
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 09:01:44.71 ID:NGu4WWdyO
ほ
186 :
166 :2007/11/24(土) 09:16:59.65 ID:0Gu5oYAz0
>174 感想ありがとう。 最後クサいのか。以前にも類似の文で指摘されたことがあるんだけど。 もっと間接的な表現で押さえておくべきかな? それとすいません、お題が「肩こり」ですた。
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 09:39:38.03 ID:Dm6RckqXO
188 :
◆NA574TSAGA :2007/11/24(土) 10:05:57.93 ID:4K04ht7c0
品評会投下。4レス
189 :
無限/夢幻アンダーグラウンド 1/4 ◆NA574TSAGA :2007/11/24(土) 10:09:18.50 ID:4K04ht7c0
そしてふと気がつくと、南北線の始発駅・麻生駅の券売機前に俺は立っていた。 小銭は切らしているつもりだったが、財布を開ければ百円玉が二枚と十円玉が四枚、レシートの陰 に隠れて入っていた。 時刻は午前六時二十二分。俺は大通駅へと向かうべく、券売機に二百四十円を投入した。 改札を通り、ホームで電車が来るのを待つ。回送車ゆえ、駅へは一人の乗客も乗せずにやってくる はずだ。周りでは出勤前のサラリーメン(複数形。ただし普段よりも少数)が、電車を待ち疲れたよ うな/あるいは人生に疲れたような表情で、各々列をなしている。そしてその他には誰の姿も見受け られない。 かすかな違和感を覚える。 いつもならば通学途中の高校生や大学生に病院通いの爺さん婆さんも列に加わり、ホームは今とは 比べ物にならないほどに混沌としているはずだ。俺も大学生の端くれとして、毎朝のようにその渦の 一端を担っている。けれど今日は何かが違う。何かが、なにかが……なにが? 数秒悩んだのちに、あわてて携帯を開く。待ち受け画面のディジタル表示は、午前六時半を示して いた。早い。早過ぎる。一限の講義があるときでさえ、こんなに早くは起床しない。ましてやこの時 間、駅のホームに悠々と居ようはずもない。俺は今更のように、自分がどこへ向かおうとしている のかを改めて考えはじめる。 今向かおうとしているのは大通駅。 一方、大学の最寄り駅はそれより手前、北十二条駅だ。 ……待て待て、考えろ。よーく考えてみろ、俺。こんな朝っぱらから大通へ何をしに行くというの か。公園で鳩にトウモロコシでも食わせるつもりか。平和の象徴に「おはよう。今日も良い朝をあり がとう」とか声をかけて、無意味な自己満足に浸るおつもりですか? と、そこへ見計らったようにして電車がやってくる。 さて、こいつに乗るべきか否か。制限時間は五秒間。さあみんなで考え――考える間もなく扉が開 く。「ちょ、やべ」一斉になだれ込むサラリーメンの波。それに押される形で、俺は車内へと強制連 行された。 そんなこんなで、時刻は午前六時四十分。 不本意だが乗ってしまったものは仕方がない。目的がわからない以上途中の駅で降りることも考え たが、せっかく早起きしたんだ。このまま予定通り(?)大通駅で降りて、大通公園で鳩に餌をやる のも、それはそれで悪くない。で、帰りは節約のために歩いて北上して、そして、そして……
190 :
無限/夢幻アンダーグラウンド 2/4 ◆NA574TSAGA :2007/11/24(土) 10:10:05.71 ID:4K04ht7c0
そして、どうすればいいんだ? 帰宅すべきなのか、それとも大学へまっすぐ向かうべきなのか、 わからない。携帯を開いてようやく今日が日曜日であり、大学へ行く必要は無いのだと確認する。 やはり今の俺は何かがおかしい。今日が平日なのか休日なのか、それすらもわからなくなっていた のだから。まるで記憶喪失にでもなったみたいじゃないか。 プシャー。 「あっ」扉が閉まる音で、俺は我に返る。『次は、すすきの、すすきの』 何てこったい。悩んでいる間に大通駅を乗り過ごしてしまっていた。さっきまで混雑していた車内 も、オフィス街を過ぎたためか、だいぶ人影が減っているようだった。 というより、誰も居ない。立ち上がって辺りを見渡す。周りには俺以外、乗客は一人も居なかった。 ……まあ乗っていたのはサラリーマンばかりだったからな、そんなこともあるだろうさ。そう自分 を納得させて、座席へと戻る。都会育ちの長い俺にとって、誰も居ない電車に乗るというのは記憶す る中ではこれが初めての経験だった。 電車はあっという間に次の駅へと到着し、そしてすぐに動き出す。しかし俺は降りようとはしなか った。靴を脱いで、座席へと横になる。もともと目的なんてはっきりしていなかったんだから、今更 どこで降りようと関係ないだろう。レールに乗った人生なんてまっぴらだぜ……って何うまいことを 言ったつもりでいるんだ俺は。 このまま乗り続ければ終点は真駒内駅。その後電車は回送車へと変わる。 真駒内駅、という駅名に俺は懐かしさを覚える。昔は祖父の墓参りへ行く際などによく利用してい た。けれどそのうち面倒になって、墓参りは両親だけが行くようになった(スマン、祖父よ)。 しかしそう考えてみると、すすきのより南の駅に来るのは何年ぶりだろう。考えながらふと窓の外 を見る。地下を走っているのだから当然真っ暗だ。そういえば小さい頃の俺は、そんな当然のことが 不思議でたまらなかったっけなあと思い返す。 『どうして外は真っ暗なの? さっきまで昼だったのに』 地下鉄に乗るたび、そう母親に何度も尋ね、その度に周りの乗客からは笑いが起きたあの頃。母親 が何度説明をしてもその小さな哲学者は納得せず、靴を脱いでいつまでも窓の外を眺めていた。 そう、ちょうど今の俺のように。 俺は視線を窓の外から進行方向へと変える。もう二駅で、電車は終点へと到着する。 あの頃もう一つだけ、地下鉄に乗ってて不思議だったことがある。『終点を過ぎた電車は、どこに 消えていくのか?』一度確かめるべく、終点後も車内に留まろうとしたことがある。当然ホームに居た
191 :
無限/夢幻アンダーグラウンド 3/4 ◆NA574TSAGA :2007/11/24(土) 10:11:04.79 ID:4K04ht7c0
駅員に降ろされてしまい、その時は失敗に終わった試み。今なら確かめられるだろうかとふと思った。 試しに車内を巡ってみる。隠れる場所がないかを探してみる。しかし案の定、死角はどこにもない。 もしそんなものが一箇所でもあれば、すぐに爆弾の一つでも仕掛けられておしまいだろう。 そう、『おしまい』だ。誰も居ない座席へと再び横になる。子どもの頃の俺は『終わり』という言葉が 何故かとても怖かった。終点後、電車がどこへ向かうのか――それが気になって仕方がなかった。当 時の俺にとって真駒内駅は、祖父の墓のある霊園への入り口であり、そして霊園は『てんごく』と同 義。祖父のように電車も終点を過ぎて天国に向かうのだろうかと、闇へと走り去るうしろ姿を眺めな がら、子ども心に何度も考えたものだった。 今となってはそんな疑問に答えを出すのも簡単だ。電車は死なないし、終わらない。ぐるりと回っ て進行方向を北へと変える。ただそれだけのこと。何とも夢の無い話だった。 終点が近づく。『レール』を少し外れた旅も、そこで一旦終わり。乗り換えのために電車から降り なければならない。このままここに留まって、電車の行く先をこの目で確かめたい――そんな衝動に 駆られるが、おそらくそれは叶わないだろう。頭ではわかっている。この先には天国も何も無い。け れど子どもの頃に考えた終点の先は天国だけじゃない。他にもロボットの秘密基地やら、宇宙人のア ジトやら、いろいろな説を考えた。それらは国家機密であって、駅員はみんなその事実をひた隠しに している。そんな話が一つくらいあってもいいじゃないかと、未だに心のどこかで考えている自分が居た。 夢からはいつか覚めないといけない。そこが夢の終点。そうとわかりつつも俺は、その『続き』へ 行くことを、願わずにはいられなかった。 「お客さん、お客さん」 「…………うあ」 駅員に起こされて、俺はあたりを見渡した。電車は寝ている間に終点へと達していたらしい。 駅員に一礼して車外へと出ると、ホームはサラリーマンや学生の姿でごった返していた。時計を見 れば午前七時半を回ったところだった。 ――ちょっと寝過ぎじゃないのか、と疑問には思った。 無人の電車が走り去っていく。そしてその車体の向こうから、駅名の書かれたプレートが姿を見せ たとき、俺の疑問は驚きへと変わった。 『麻生駅』 ……ん、あれ? 目をこすってもう一度確かめてみる。しかし何度見てもプレートの表示は変わら
192 :
無限/夢幻アンダーグラウンド 4/4 ◆NA574TSAGA :2007/11/24(土) 10:12:05.59 ID:4K04ht7c0
ない。さて、真駒内駅はいったいどこへ行ってしまったのか。 「もしかして、行けちまったのか? 終点を乗り過ごして、そのまま回送車に乗ったまま……」 記憶を辿ってみるが、やはり電車を降りた記憶はない。電車の遠ざかる音は、やがて周囲の喧騒へ と飲まれて消えていった。 不意に笑いがこみ上げてくる。 あの日行けなかった『天国』へと、いとも簡単に到達し、そして帰還することに成功してしまった のだから、当然だ。今笑わずに、いつ笑えというのか。 妙な記憶喪失も、この出来事のための伏線だったと思えば、もはやどうでも良いことだった。 ……いや、良くもないか。曜日もまともに思い出せないようでは、やはり問題だろう。一応病院に 行っておくべきかなどと考えながら、改札を通ろうとする。 ピンポーン。 警告音がしてゲートが閉まった。そうだ、そういえばこの切符はもともと大通へ行くのに買ったも のだった。そう思い出した瞬間、 前方の電光掲示板に、メッセージが表示される。 『スベテ ワスレナサイ』 そしてふと気がつくと、南北線の始発駅・麻生駅の券売機前に俺は立っていた。 小銭は切らしているつもりだったが、財布を開ければ百円玉が二枚と十円玉が四枚、レシートの陰 に隠れて入っていた。 時刻は午前六時二十二分。俺は大通駅へと向かうべく、券売機に二百四十円を投入した。 〜ねばーえんど〜
193 :
◆NA574TSAGA :2007/11/24(土) 10:13:33.75 ID:4K04ht7c0
以上。 寝る。 保守よろしく。
194 :
サルスベリ(空想) ◆Ac4gAnQEkA :2007/11/24(土) 10:20:48.33 ID:FiMIHdKs0
投下します。 昨日別スレで発表したものですが、こちらのお題にも沿っていたので、 参加させていただきます。よろしくお願いします。
195 :
サルスベリ(空想)1/3 ◆Ac4gAnQEkA :2007/11/24(土) 10:22:59.57 ID:FiMIHdKs0
サルスベリ ジリジリと照りつける太陽に僕の体は少しでも抵抗することができるのだろうか? 道を行く少年は真っ黒になりながら蝉を追い回している。 ガタリと音のした方を見ると喜美枝がちょうど部屋にはいってくるところだった。彼女は少し前から僕の元に通ってくれる数少ない友人だ。 「孝夫さん。今日も暑いわね」 そういってニコリと笑う喜美枝のワンピースは彼女の表情をそのまま映し出しかのようにフワリとたなびいた。 「あぁ。知ってるよ。だから、こうしててエアコンの効いた部屋にいるんだ。文明って関心しちゃうよな」 「……そういうの、世間じゃ引きこもりって言うのよ」 「知ってるさ。でも無理に外に出る必要もないよ。こうして、部屋の中で本を読むことは人生を豊かにするのに役立つ。 もちろん外を眺めているだけだって学ぶ事は多いんだからね」 「そうはいっても、外に出ないと学べない事も多いわ。ここから見える景色なんて限られたものだもの」 「限られたものから多くを想像すればいいのさ。まぁ、そのうち気が向いたら外出ることもあるよ」 僕は、話を無理やり終わらせて持っている本に目をおとした。喜美枝もしばらくふくれっ面をしていたが、 そのうちまた、たわいもない世間話を始めた。 これが僕の日常。変わりばえしないかわりに、壊れることなく続く幸せな日常。
196 :
サルスベリ(空想)2/3 ◆Ac4gAnQEkA :2007/11/24(土) 10:25:53.02 ID:FiMIHdKs0
「だから!! 早く外に出てって言ってるじゃない!」 喜美枝の怒号に僕の体はビクリと反応した。 「毎日毎日毎日毎日毎日毎日……毎日毎日外に出てって言ってるのに! なんででないのよ!!」 「ど、、どうしたんだよ……喜美枝、そんな大きな声をだして君らしくもない」 僕の言葉に喜美枝は信じられないというように目を丸くしたかと思うと、僕を再び睨みつけた。 「どうして? あなたには、わからないわけ? なんで私が怒ってるのかもわからない? 本当、駄目な人」 吐き捨てるように喜美枝の言葉はつづく。 「きっと私が言うことなんて何も聞いていないんでしょうね。私の話の意味なんて何にもわかってないんでしょう? 馬鹿みたい。あなたじゃなくてね。毎日何も聞いてない駄目な孝夫さんにダラダラ話しかけてきた私が馬鹿みたいよ」 そういって、飽きる事なく僕を睨みつづける。僕はといえば、落ち着いたものである。 怒鳴られた時の一瞬の驚きはあったものの、聞き流す準備なんてものはすぐに出来るものだ。 少しの間、相槌でも打っていれば何時もの喜美枝に戻るだろうとタカをくくっていたせいもある。 僕は、ぼんやりと喜美枝を見つめた。 そんな態度が気に入らないのか喜美枝は、延々と僕を罵る言葉を吐き出し続けている。 さすがにウンザリした僕は大きくため息をついてから喜美枝の言葉を遮ることにした。 「……いい加減にしてくれよ。喜美枝。いいかい、君の言うことに意味なんてないだろう。そうだ意味なんてないはずだ、だって君は」 「嫌! やめて! 聞きたくない!!」 はっとしたように喜美枝が慌てて叫びだす。ヤレヤレ、と外国人よろしく両手を上げてポーズをとってから、僕は魔法の言葉を口にする。 「──君は、僕の空想なんだから…‥」 僕の部屋に静粛が戻ってくる。僕の愛した静粛。でも時折ちょっと寂しいから僕は喜美枝を作った。可愛い僕好みの、僕だけの喜美枝を。 その喜美枝はもういない。僕が喜美枝の存在を否定したのだから。
197 :
サルスベリ(空想)3/3 ◆Ac4gAnQEkA :2007/11/24(土) 10:27:35.66 ID:FiMIHdKs0
「……少し外にでてみようかな」 そう思いついたのはあの出来事からしばらく経ってからだった。 久しぶりに歩く外の風は以前とは変わり、幾分かの寒さを携えていた。 あれ以来、喜美枝は僕の前に現れることはない。寂しいなと思うこともあるけれど大した事でもない。 元々あるはずのないものを僕の頭が正しく"ない"と認識しただけの事なのだから。 「こんな所にサルスベリなんてあったっけか。……確かに喜美枝の言った通り部屋から出ないと学べないこともあるな」 そう誰に言うでもなく嘆きながらみるサルスベリの花は、季節を終えたせいかほとんどが地面へと落ちていた。 そのうちの一つを拾い上げると、秋の風に少しだけ揺れた花をみて、 僕はふと、喜美枝が笑った時に美しくたなびいていた白いワンピースの裾を思い出した。 サルスベリ 了
198 :
サルスベリ(空想) ◆Ac4gAnQEkA :2007/11/24(土) 10:28:18.11 ID:FiMIHdKs0
以上です。よろしくお願いします。
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 10:53:26.82 ID:qVCq7MDY0
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 10:53:53.46 ID:hdyzxoayO
ほ
201 :
◆Ac4gAnQEkA :2007/11/24(土) 11:04:45.39 ID:O7dSXsj4O
>>199 昨日は支援有難うございました。
新しい作品を書く暇なくて、修正加筆の作品を提出することになってしまいお恥ずかしい限りですorz
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:22:48.93 ID:hdyzxoayO
ほし
203 :
【品評会】「Over!」0/4 ◆L3WBFmE5HM :2007/11/24(土) 11:29:21.48 ID:TNCLDRGr0
投下します。
204 :
【品評会】「Over!」1/4 ◆L3WBFmE5HM :2007/11/24(土) 11:30:09.25 ID:TNCLDRGr0
「頭痛ぇ・・・クソッ。」 まだ時差ボケの抜けぬ身体を引きずり、男臭く暑い休憩室を出る。 ----起床時刻はAM6:00。起きるにはまだ2時間程早いが、この部屋にはいられない。 我が英連邦陸軍、ブライアン・レヴィ大佐率いる特別編成連隊は、中規模テロ鎮圧の任務を受け 東南アジアの特設キャンプに滞在していた。 昨日すべての任務遂行準備が整い、本日より作戦開始となる。 ----そんな朝にこの体調とは。今日の俺は恵まれていない。 その上キャンプ内はどこもかしこも、土と油と汗の匂いで落ち着かない。 見張りの兵に一言かけ、外に出た。異国の地では夜明けの匂いも地元と違ったが、中よりは落ち着いた。 広く何もない地の、肌寒い風を感じながら2、3歩足を進めて、 少し汚れたシートに包まれた物資の上に座る、人影に気付いた。 背中を丸めて、背をこちらへ向けていたが、俺には一目で誰だかわかった。当たり前だ。 姿勢を整え、一度咳払いをし、少し大きな声で呼びかける。 「おはようございます、ブライアン・レヴィ大佐殿!南方所属、カーシー・バーグマン少尉であります! お疲れ様です!」 言い終わると同時にバサバサッと黒いものが空へ浮き上がった。 「・・・・バーグマン少尉、カラスに謝りたまえ。食事中だ。」 「・・・・は、ああ、も、申し訳ありません。」 少し振り返った大佐の手には、喰いかけのパンが握られていた。・・・カラスとの食事中だ。 大佐は握っていたパンをそのまま地面へ放り投げ、カラスは俺を警戒しながら地面へ戻った。
205 :
【品評会】「Over!」2/4 ◆L3WBFmE5HM :2007/11/24(土) 11:31:10.57 ID:TNCLDRGr0
「バーグマン少尉、緊張で眠れなかったのかね。」 少し笑い混じりに大佐が背を向けたまま、俺に話しかけた。 「いえ、その、時差ボケです。地方遠征途中の招集だったため、一昨日の夜、到着したばかりなもので」 「ああ、そうか。そうだったな。」 「はい。大佐殿は、明け方まで準備でありますか。」 俺はぼんやり、佐官は大変だなぁ、などと気の抜けたことを考えつつ、初めて交わす大佐との会話に緊張していた。 「私をなめるなよ、バーグマン少尉。準備は昨日の消灯とともに完璧だ。 ・・・・何、ちょっと考え事を、な。」 「は、すみません。考え事、ですか。」 「ああ。・・・・ところで少尉」 大佐が振り向き、俺をみた。 「カラスは一夫一妻の種族であることを知っているかね。」 俺は、緊張と突然の話題に混乱した。 「はぁ。・・・・いえ。」 「つがいになると相手を固定する一途な鳥なんだ。なんともうらやましいことだと思わんかね。」 俺は適当に返事をし、ああ、この人は俺と違い、士官学校を頭の方でぬけてきたような学者タイプだ、と 少し顔をしかめた。体力と腕っ節だけの俺には苦手に違いない。そう思ったのだ。 「・・・・妻に寄り添い、想い続け、想い続けられる。・・・・私が憧れ、思い描くものだ。いつの日も、な。」 大佐は丸めた背中をまた少し丸め、後ろの俺に声が届くように少し右を向きつつ、うつむいた。 まるで、気の強い俺の母親に叱られている親父のようだった。幼少時何度も目にした光景だ。 俺は思わぬ話題の展開を不思議に思いつつも、じっと話を聞いた。 「・・・・ここへ来る直前、妻に別れを告げられた。もう、待つのは疲れた、・・・そう言われたよ。」 パンを食べ終わったカラスが、無愛想に空へ浮き、どこかへ飛んで入った。
206 :
【品評会】「Over!」3/4 ◆L3WBFmE5HM :2007/11/24(土) 11:32:00.71 ID:TNCLDRGr0
「馬鹿げた話だと思わんか。私が毎日思い描いていたものなど、実現しえぬ想像に過ぎん。軍の大佐 である私にとって、家で妻に寄り添う時間など皆無だ。 ・・・・いくら憧れ、想おうとも、叶いはしない。」 す、と遠くを見つめ直し、淡々と話す大佐を俺は、ただじっと眺めていた。 「だが、これが私の癖なのだ。いつも未来を思い描く。 馬鹿げたこと、ありえないと思うようなことでも、なぜかいつもそうしている。 ・・・・今日からの任務だってそうだ。 君たち部下が活躍すること、私の作戦が成功すること、そして・・・・この地に暮らすものの平和な未来もだ。」 フン、と大佐の鼻が鳴った。 自分で言って可笑しかったのだろう。軍という合法的に暴力行為を行う我らが平和を口にすることが。 俺は大佐の軍服の色を、姿を見せ始めた太陽のおかげで再確認した。 ゆっくりと立ち上がり、正面を見せる大佐の左胸には重そうにぶら下がる称号。 それらはこの人が何度、平和を思い、何度それが「実現しえぬ想像」だと思い知らされたかを 俺に突きつけた。無意識に食いしばった歯が、ガリ、と音を立てた。 そんな俺を見た大佐は、突然ニヤリと笑い、 「私が昇格する未来も、また然り。」 と言った。 俺は一瞬驚いたが、心の中で笑い返しつつ、姿勢を正し、声を上げた。 「大佐殿の奥様のことは、自分は何も出来ませんが、 必ずや手柄を上げ、未だ実現しない将官への昇格の未来は、お手伝いさせていただきます!」 大佐は盛大に笑い、お前の手柄ごときで昇格出来るなら苦労はせん、と言ってキャンプの方へと歩いて行った。 俺はその背中に笑いかけながら、ああ、ブライアン・レヴィ大佐とはこういう人なのだ、と 訳もわからず納得した。
207 :
【品評会】「Over!」4/4 ◆L3WBFmE5HM :2007/11/24(土) 11:32:52.36 ID:TNCLDRGr0
---------AM9:00、大佐の前に全兵が集合。 大佐は先刻まで俺と話していた人とは別人のように、眉間に皺を寄せ、荘厳な顔をしていた。 そして太い声を叩き付ける。 「我が部下に弱卒は要らぬ!!私への忠誠心の前に、覚悟をしろ!」 全兵の「YES、SIR!」の返事の中、俺はひとり、 大佐の直属の部下にあたる護衛のテストを受ける 任務終了後の自分を思い描いた。
208 :
◆L3WBFmE5HM :2007/11/24(土) 11:33:58.31 ID:TNCLDRGr0
END を入れ損ねました。終了です。
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:37:51.45 ID:WteNX/HL0
投下したみんな乙! 自分の下手さに絶望して、筆を執る気力が出ないorz
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:38:15.35 ID:/jpOXjsB0
今回って4レス制限なの!?
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:41:37.64 ID:WteNX/HL0
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:42:05.19 ID:0SN46zOB0
流れとか空気とか読まず通常お題をリクエストしてみる↓
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:43:06.70 ID:Dm6RckqXO
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:44:12.74 ID:0SN46zOB0
把握した。お題泥棒しないようにイッチョやってくるノシ
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:45:59.20 ID:WteNX/HL0
>>213 d。なんだかやる気でた!
どうせ票なんか入りっこないんだ、自分の書きたいものを書きたいだけ書いてやるぜ!
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:59:11.45 ID:eFXOdybtO
まだ2レスじゃあ
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 11:59:20.72 ID:hdyzxoayO
ほ
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 12:15:57.65 ID:hdyzxoayO
ほ
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 12:16:15.63 ID:wYmn605p0
捕手
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 12:34:29.12 ID:hdyzxoayO
ほ
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 12:42:42.17 ID:+Wue3WIXO
お腹空いたでござるよ薫殿
222 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 12:58:24.43 ID:hdyzxoayO
ほ
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:02:09.22 ID:C+cyyXREO
おし、おだいを貰おうか。
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:03:24.58 ID:htAlFLdIO
珊瑚
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:04:41.66 ID:C+cyyXREO
把握。
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:05:46.19 ID:C+cyyXREO
把握。
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:16:13.69 ID:zxgz6RYu0
使ってるノートPCのファンがぶっ壊れて連続稼動制限が約1時間 やってられないので今からノートクーラー買ってくる 帰ってくる頃には品評会のアイデアも出来上がってるはず と信じたい・・・
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:35:19.94 ID:Z6/xEXbi0
ホッシュホシュしてあげる
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:37:12.58 ID:lwDiZdfX0
投下しようと思ったら・・・内容がほぼ同じ作品がもう投下してあった・・・ うわあああああああああああああああああ
230 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:39:05.10 ID:IrtiNh+40
―――― ここまでまとめ済み ―――― 規制解除記念まぴこ
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:43:01.71 ID:hdyzxoayO
>>229 まだ一日半も時間があるじゃないか。
俺なんかカオスの予約中にネタが被ったことあるんだぜ?('A`)
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:49:45.09 ID:lwDiZdfX0
書き直してくるおorz
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:52:40.72 ID:WteNX/HL0
>>232 被っててもいいじゃない。きっと全く同じではないはず。
比較に耐えうる自信があるなら真っ向勝負しれww
234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 13:56:06.37 ID:IrtiNh+40
内容が似てても投下すりゃいいのに。 自分の方が得票数少なければ、何が悪いのかわかりやすいし、 自分の方が得票数多ければ、何がウケルのかわかるし。 どっちも少なければ、ありきたりな話だったと。
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:03:48.76 ID:hHzB+PYv0
「はぶき」と「はぶり」のどっちを使えばいいのか悩んでいるんだが、どっちが主流?
236 :
我ら保守姉妹 :2007/11/24(土) 14:04:54.69 ID:qVCq7MDY0
妹「引き続きBNSKをお楽しみ下さい」 姉「保守っと」
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:05:46.74 ID:qVCq7MDY0
238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:10:39.67 ID:lwDiZdfX0
いや、ネタが被った時点でありきたりな話だと思う。
が、
>>233-234 に煽られて、投下したくなってきた・・・
なんだろうこの気持ち
239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:12:29.54 ID:hdyzxoayO
悩むくらいなら投下しちまえ!
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:14:08.90 ID:Z6/xEXbi0
241 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:24:48.50 ID:WJSOp4OU0
>>238 大丈夫。
流し読みしただけだけど、被ってそうな作品を見つけた俺が言うんだから間違いない。
242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:26:13.16 ID:Dm6RckqXO
なんだこの悲しい流れwwww
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:35:42.18 ID:WteNX/HL0
>>238 どうせだから投下して、もう一本書けばいいんじゃね?
せっかく書いたのに眠らせとくのは損だw
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:36:03.27 ID:IrtiNh+40
結局投下しないんかよwww
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:36:50.39 ID:lwDiZdfX0
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:43:44.05 ID:P7gZ5D9EO
被っている事を気にしているのは、大抵の場合本人だけで、それが評価に直結する事はむしろ稀である。 民明書房巻「包茎だもの」より抜粋
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:47:13.88 ID:IrtiNh+40
>>245 ルール上は有り。
しかしマナーとして作品数が多い場合は、2作品目は自粛するのが好ましい。
忘れられてそうなルールとして、作品数が40を超えた場合は、
どちらの作品かに絞る必要がある。
俺もあまり覚えてないルールなので、40作品じゃなく、50作品だったかもしれんけど。
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 14:54:10.23 ID:lwDiZdfX0
じゃあだいたいの作品数が見えてきたら投下するわ
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 15:13:22.63 ID:grsR4rvg0
ほ
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 15:30:36.66 ID:xL1cjxVE0
も
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 15:36:39.33 ID:R1q9qN+Y0
よ
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 15:50:14.27 ID:Z6/xEXbi0
け
253 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:06:57.76 ID:ZOzuXwkA0
保守
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:24:34.79 ID:hdyzxoayO
ほ
255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:33:59.01 ID:Z6/xEXbi0
も
256 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:36:59.44 ID:IrtiNh+40
が
257 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:37:30.36 ID:itXKWw8M0
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:39:51.40 ID:IrtiNh+40
>>247 592 名前: ◆BNSK/DqMrY :2006/12/11(月) 00:40:11.53 ID:qIKmfHyb0
皆さんの意見が大体わかりました。
次回からは30作品を超える場合、1トリップに対して1つの作品と制限いたします。
トリップごとき、いくらでも作れるので、実際出そうと思えば一作以上出すことは出来ます。
しかし、全作品数が増えれば感想をもらえる可能性が減ることは確実なことです。
作品が増えることはスレにとって喜ばしいことではありますが、品評会を盛り上げていくためにもご協力ください。
全作単独トリップによる全作品数が更に増えるような場合には投票期間を延ばすことも考えます。
とりあえず、今回は火曜日24時までということでご了承ください。
見つけた。
40作品どころか30作品だったw
259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:43:02.97 ID:oHm9P/HGO
引き出し少なくて遅筆の自分には二作書くなんて不可能なんです><
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 16:53:05.49 ID:fO0ufF6G0
俺の携帯小説も書籍化しないかと言われたが、恥ずかしいので断った
261 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 17:01:40.72 ID:IExhv1ix0
>>260 その気持ちわかるぜ。
携帯小説じゃなかったら嬉しいんだがな。
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 17:07:51.64 ID:a6PUFavy0
そういうもんなのかな 自分だったら携帯小説でもなんでも自分の文才が認められたってことだからうれしくて即OKする気がする というか、携帯小説ってそんなにダメなの? コピペで貼られてたひどいやつしか知らないんだけど
263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 17:27:55.63 ID:Dm6RckqXO
ホッ
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 17:37:46.84 ID:fBjafnMl0
俺もブログに書いてた小説書籍化しないかって言われたけど断ったな お見積書が一緒についてきたから
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 17:50:02.99 ID:BbV0/BSB0
j
266 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 17:50:24.53 ID:hfS/VQUVP
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 17:59:14.71 ID:fBjafnMl0
>>266 ちょっと前だから正確に覚えてないけど、
300ページくらいを1000部で100万円だった気がする
268 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:02:00.01 ID:IrtiNh+40
>>267 たけええwwww
俺は自費出版ってか、印刷、製本のみなら1000冊で10万前後って言われた。
文庫本サイズでね。
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:07:40.54 ID:a6PUFavy0
うわ、意外とかかるんだな… 印税とかでチョンチョンくらいかと思ってたけど甘かったw でも10万くらいならバイト代はたいて出したいとも思う
270 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:09:03.61 ID:+wGIMnl60
自費出版って大抵悪徳商法だからやめとけ
271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:10:42.45 ID:fBjafnMl0
>>268 一応、ハードカバーの装丁や、確実に書店に並ぶように手配なんかはやってくれるんだけど、それにしても高すぎるよな
その本が一冊も売れなくても出版社ウハウハだからこそ、ゴミ屑みたいなブログ小説に営業かけてきたんだと思うよ
>>禁止ワード:世界、おっぱい うおーい、おっぱい禁止って・・・ 優勝したらおっぱいをお題にしようと夢見る俺への挑戦か! 何としても優勝せねば、くっ
273 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:41:53.35 ID:OLzFdIRb0
憎しみが詰まった貧乳小説
274 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:51:27.55 ID:+Wue3WIXO
おっぱいを組み込もうとするほうが難しいです
275 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:55:00.96 ID:/jpOXjsB0
でもおっぱいを揉むことの方がもっと難しいです。
276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 18:58:37.18 ID:Z6/xEXbi0
いいえトム、おっぱいを揉むことは簡単です。 しかしそれを許してくれる人を探すのは難しい。
277 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:22:03.94 ID:Z6/xEXbi0
おっぱいおっぱい言ってたら保守してくれる人もいなくなった……か
278 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:22:10.54 ID:hfS/VQUVP
ほ
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:22:36.67 ID:WteNX/HL0
>>276 基本的に1/2の確率で揉める人がいるだろ
280 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:24:13.16 ID:IrtiNh+40
>>279 世界の半分の人は、おっぱいがないと言いたいのか?
みんな他人のおっぱいばかり見ずに、自分のおっぱいも大切にしようぜ
281 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:25:39.11 ID:/jpOXjsB0
>>279 確率はあくまで確率であってだな……分散とかいろいろあるわけだ……
282 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:28:01.38 ID:WteNX/HL0
ごめんね、地球の人口の約半数は女だぜって言いたかっただけなんだ、ごめんね。
男でもおっぱいあるやついるからな 揉みたいとは思わないが
284 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:37:34.05 ID:OLzFdIRb0
おっぱいは好きですか?
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:37:50.33 ID:a6PUFavy0
そう、確かに人類の半分は女性だ だが考えても見てほしい、女性といえど揉めるほどの乳をもtt(ry ところで、Yahoo! JAPAN文学賞に出そうとしてる人っている? あれ、過去受賞者女性ばっかだし、ラノベっぽいのしか書けない自分がだしていいものかと思ってるんだけど
286 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:49:09.27 ID:grsR4rvg0
ほ
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:59:57.45 ID:grsR4rvg0
し
288 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 20:09:58.12 ID:Z6/xEXbi0
い
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 20:19:13.23 ID:htAlFLdIO
逞しい殿方のおっぱいがほしいです><
290 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 20:24:30.84 ID:xL1cjxVE0
五レスに収まらない 会話メインで書くとどうしても行数増えてしまう
291 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 20:34:23.47 ID:eFXOdybtO
まだ2レス……
292 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 20:44:07.40 ID:qtwepF/P0
お前らのおっぱいに対する情熱が良くわかるスレだ
293 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 20:51:48.45 ID:qtwepF/P0
品評会ただいま執筆中
294 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:00:29.61 ID:+Wue3WIXO
おっぱ…… いや、保守
295 :
雲の上に行く夢(0/5) ◆kP2iJ1lvqM :2007/11/24(土) 21:04:36.55 ID:3rgTpH9J0
品評会用作品五レス投下します、おっぱい。
296 :
雲の上に行く夢(1/5) ◆kP2iJ1lvqM :2007/11/24(土) 21:05:32.18 ID:3rgTpH9J0
小学校五、六年の時の担任は漢字が好きだった。 猪瀬先生は定年間近の老教師だった。先生はよく僕たちに、言葉の意味や成り立ちについて、 他の教科なんてそっちのけで教えてくれた。 黒板に台形が描かれていたので、その時は算数の授業だったように思う。先生は書かれてい た数式を惜しげもなく消し、歪んだ四角形の横に「空想」という文字を大きく板書した。 「意味がわかる人は手を上げなさい」 一番早く手を上げた僕が指名された。 「現実ではありえない想像のことです」得意満面、立ち上がって僕は答える。国語は得意科目 だったので、こういう時の僕は水を得た魚だ。 「君は真面目だな」先生は笑って言った。「先生より先生だよ」と。 真面目な僕は、素直に顔を赤らめて着席した。 「だが」と彼は続ける。「僕の意見はちょっと違う。空想っていうのは想像が空を飛ぶことな んだ」 「空を飛ぶ?」教室が首をかしげて、生徒たち全員が片側に寄せられてしまうのではないかと 心配になるくらい、おかしな説明だった。 「そうだ。羽が生えてぱたぱた飛んでいく」 「嘘を教えないでください」むきになって先生を糾弾した。そんなことは辞書には書かれてい ないじゃないか。 「嘘じゃないよ。そのうちわかる。今わからないのは、きっと君たちには当たり前すぎるせい だ」余裕綽々、といった態度だ。 先生の言うことが理解できず、教室の生徒は隣の顔を見やって「困ったね」という顔をした。 こんなふうに、先生は独自の解釈で僕たちを困らせることがあった。が、僕は漢字の授業が 嫌いではなかった。後でよくよく考えてみると「面白いな」と思うことがあったからだ。 ◇ 東京駅から静岡行きの新幹線に乗り込み、席に座って一息ついた時、猪瀬先生の記憶が頭を よぎった。なぜか真っ先に頭に浮かんだのが唐突に始まる国語の授業だった。微笑ましい思い 出だ。 あれからずいぶん時が過ぎた。故郷へ帰るのも、先生の顔を見るのも久しぶりだった。無沙 汰をして申し訳ないという思いと、懐かしい気持ちとが混ざり合い、どんな表情をしていいか 誰かに聞きたくなった。
297 :
雲の上に行く夢(2/5) ◆kP2iJ1lvqM :2007/11/24(土) 21:06:17.13 ID:3rgTpH9J0
スーツの上着を脱いでネクタイを緩める。前の座席の背面に網かごがついていて、その中に 旅行雑誌が収まっていた。手にとってぱらぱらとめくる。温泉旅行の特集を読んでいると、耳 障りな声が聞こえた。 通路を挟んで隣の席に大学生ふうのカップルが並んで腰掛けていた。なにやら言い争いをし ていて、声をひそめていてもこちらまで届いてくる。 「だから言ったじゃない、静岡は雨よ。やっぱり草津にしておけば良かったのに。素敵なホテ ルが雑誌に載ってたわ」女の声だ。 「しょうがないだろ。あのホテルは満室で予約がとれなかったんだから。豪華なホテルじゃな いと嫌だって言ったのは、君じゃないか」 どうやら二人は、雑誌の中から宿泊施設の内装などを見て旅行先を決めたらしい。第一候補 にあがった所は予約がとれず、ホテルごと行き先を変えた。ところがそちらは雨で、女の方は 機嫌が悪いようだ。 そんな大ざっぱな決め方をするからだ、と僕は思った。 ベルが鳴った後で身体が揺れだした。雑誌を網に戻して鞄から問題集を取り出す。遠出の際 に持ち歩くのがふさわしいとは思えない、いかめしくて分厚い本だ。しかし試験のために読ん でおかなくてはならない。 隣ではまだ口喧嘩が続いていた。本を開いても視点が定まらなかった。僕は目を閉じ、浮か んでくる雑念に身を任せようと思った。 ◇ 駅に着くと猪瀬先生が僕を待っていた。「草津で一番健康に良い温泉を知ってるんだ」とい う言葉を信じ、彼の後に続いてタクシーに乗り込んだ。 「仕事は、どうだい。小学校の教師になったんだろ」昔と変わらずはっきり通る声で、先生が 僕に聞いた。 「ええまあ、大変です。今も休み明けのテストを作るのに大わらわで。先生がこんなに苦労な さっていたなんて、全然知らなかった」参考例題集の入った鞄を僕は見る。 「新人のうちは、寝る暇もない」先生が笑う。 「まったく」僕も笑った。 旅館はしなびた感じの古い建物だった。決して悪い意味でなく、歴史を偲ばせる心地よさが ある。着いて早々に二人で浴衣に着替え、露天風呂に向かった。
298 :
雲の上に行く夢(3/5) ◆kP2iJ1lvqM :2007/11/24(土) 21:07:06.28 ID:3rgTpH9J0
「雪になりそうだ」湯船につかりながら先生は言った。 白い息を吐きつつ僕も上を見る。籐を編んだ柵が、灰色の曇天を囲んでいる。 「しかし大きくなった。君が大人になるなんて思いもよらなかった」感慨深げに先生は言った。 「長く教師をやってると、子供が成長したら大人になるってのは悪い冗談みたいに思えてくる。 子供の状態でやってきて、子供のまんま出て行くばかりだからな。僕は空想上の生き物を相手に していたんじゃないかって、今でも不安になるんだよ」 先生は悪い冗談のように告白した。たまに訪ねてくる卒業生がいても、ふとそんな気持ちに なるのかもしれない。 僕は『キングダム』という、デンマークかどこかのドラマを思い出していた。その中に、体 も心も大人の状態で生まれる不気味な赤ん坊が出てくる。 「大人が大人として生まれてきたら、ホラーですよ」 二人で笑った。 露天風呂に他の客はいなかったので、僕は臆面もなく足を伸ばした。こんなにゆったりした 気分になれたのはいつ以来だろう。最近は忙しくて息つく暇もなかった。 「何か悩みがあるんじゃないか」突然、先生が聞いてきた。 どうしてわかるんですかと聞くと、みんな大抵悩んでるよと先生は笑う。顔に出ていたとし たら申し訳ないな、と思った。せっかくの旅行なのに。それとも取れた疲れが湯船に浮かんで いたのか。こいつめ、と白く濁ったお湯を睨む。 「実は」観念して僕は切り出した。「ネグレクトってご存知ですか」 「知りたくなかったけどね。ご存知だよ」先生の顔が歪んだ。 育児放棄。受け持ちのクラスの生徒にそれらしき虐待を受けている女の子がいた。今までは 元気に体育の授業もこなしていたのに、最近急にやせ細ってきたのだ。どうかしたかと心配に なり家に電話をした。すると母親が出て「拒食症になった」と言った。本人は美味しそうに 給食を食べているので、嘘だと丸わかりだ。 「その子は何て?」 「ダイエット中と」親をかばっているに違いなかった。 「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成されるよう努めなければなら ない」児童福祉法第一条の例文を、先生は重々しく吐き出した。「法律違反だ。重罪だ」
299 :
雲の上に行く夢(4/5) ◆kP2iJ1lvqM :2007/11/24(土) 21:07:50.53 ID:3rgTpH9J0
「ええ」僕は頷く。「こんな時、僕に何ができるんでしょう」 「児童相談所に連絡しなさい」即答が返ってくる。 「しました。けど健康状態はそれほどひどく見えないし、本人が虐待を否定していてはどうに もならないと、調べた相談員に言われました」 僕はそれとなく自分のぶんの給食を彼女に分けてやっていた。それがいけなかったのだとし たら、皮肉だ。 「マッチ売りの少女」先生が突然、言った。 「は?」 「いや。マッチ売りの少女みたいに、想像したら好きな食べ物が出てきたらいいだろうなあって ね。こう」先生はマッチを擦る仕草をした。 「はあ。そうですね」訝しく思いながら僕は同意する。 「残念ながらそんなマッチはない」 「ないですよ」 「しかし、想像力は大切だよ。今は駄目でも明日は違う。そうやって生きていける。生きてい ればいつか実現する可能性はある」 なるほど、正しい考えだと思った。 「教師が子供に教えることの一つだと、僕は勝手に思ってる」 何だか道が開けた気がした。打つ手が見つかるまでは、精神面で支えてやるべきなのだ。僕 にだってまだまだやれることはあるじゃないか。 お礼の言葉を繰り返すうちに、頭の中で閃くものがあった。 「国語の授業」僕は言う。「もしかしてあの授業は、想像力を養うためだったんですか」 「さあ。忘れたな。そうだった気もする」先生はとぼけた顔で言った。「ただ、漢字のテスト の成績が、うちのクラスが学年で最下位だったのは確かだ。何とか漢字を好きになってもらお うと、苦心の策を講じる教師がいてもおかしくはない」 なるほど参考になりますと僕は言い、また二人で笑った。
300 :
雲の上に行く夢(5/5) ◆kP2iJ1lvqM :2007/11/24(土) 21:08:43.89 ID:3rgTpH9J0
◇ 「ちょっと、いいですか」 声をかけられてはっとした。僕は窓を見ていた。雨の滴がガラスに当たっている。新幹線が 静岡に入ったのだろう。振り向くとさっきのカップルが僕の横に立っていた。 網かごの旅行雑誌を指差して女が僕に言った。 「その本、私たちのなんです。最初に間違えてこの席に座った後、忘れちゃって。返してもら っていいですか」 ぼんやりしながら「ああ」と言って雑誌を渡してやった。渡す時に中が開き、雪に囲まれた 古い旅館の写真が目に入る。読んでいて一番気に入った所だった。豪華なホテルの写真を見な がらもう一戦交えるつもりなのか、雑誌を持って二人は自分の席へ戻っていく。 膝の上に児童福祉論の問題集が置かれ、事例が載った頁が開かれていた。食事を与えられな い女の子の話だ。虐待を発見した場合に取るべき適切な行動は何か問題は聞いている。 僕が通う福祉専門学校は、夏休みが明けてから試験を行う授業が多い。休暇期間をバイトに 明け暮れた身としては移動中でも気が抜けない、はずだったのだが。 本を閉じて時計を見ると、午後四時だった。東京を発ってから一時間が過ぎていた。長い時 間我を失っていたことに気づき、ふう、と息を吐いた。運動をした後のような疲れと充足感が ある。窓を見て緩んだ黒ネクタイを締めなおす。 温泉か、と僕は思った。先生と行けたらどんなに良かったか。 ここ数年、先生は入退院を繰り返していた。一年前に見舞いに行った時は無数の管が体に 刺さっていて、ろくに話もできなかった。相談したいことがたくさんあった。何か悩みがある 度、「先生ならこう言うだろう」と考える癖がついたのはそれからだ。 雨が激しくなり水滴が窓を塗りつぶす。暗くなる気分を抑えるために白昼夢の教えを実行し た。丸まった背中を見ると叩いて励ましたくなるようなものだ、と。 それにしても、静岡行きの新幹線に乗りながら心は群馬の草津へ行ってしまうとは。あの 雑誌とカップルのせいだろうか。 「確かに空を飛びましたよ」と一人で笑う。 猪瀬先生の通夜は七時からだった。 さようなら。いつか想像の羽が伸びた時に、また。 一足先に、心の中でお別れの挨拶をした。(了)
301 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:10:14.68 ID:3rgTpH9J0
以上、ひさしぶりの品評会でなんか緊張した よろしくお願いしまうー。
302 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:11:00.93 ID:07tslHVI0
しまうーがいると聞いて飛んできました
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:13:11.81 ID:qtwepF/P0
しまうーが大好きです
304 :
お題:夜景 0/3 :2007/11/24(土) 21:14:08.62 ID:4VB0V6HN0
通常作品です。投稿させていただきます。 一応テンプレ通りに書いたつもりですが、 読みづらかったら申し訳ありません。
305 :
お題:夜景 1/3 :2007/11/24(土) 21:14:52.96 ID:4VB0V6HN0
「わぁ〜!すごいキレイだよ〜!」 自転車を止めるなり、ゼェゼェ息を切らせている僕を差し置いて、彼女は小走りに行ってしまった。いくら小 柄だからって、人間を二台に乗せて山道を登ってきたら疲れないはずが無い。 日はとっくに沈んでいて、冬の半ばの身を切る寒さなどお構いなしに僕は汗だくになっていた。 「・・・あんま体乗り出すなよ〜、落ちたら助かんねぇぞ〜」 「わかってるって!それより早く早く!すごいキレイなんだから!」 自転車を押しつつ、彼女が待っていた山道のガードレール側に方を並べる。 「ここは人もあんま来ねぇし、穴場なんだ。すげぇべ?」 僕と彼女の目の前には、僕らの住む街が灯りを灯し、夜の闇と混ざり合っているかのような、幻想的な世界が 広がっていた。 「いつもの街じゃないみたい…」 彼女の吐く白い息が冷たい冬の空気にすっと溶けて消えた。 「去年くらいに見つけてさぁ、それからちょくちょく来てんだけども、 彼女ができたら絶対つれてこようって決めてたんだ」 「…ありがとう、すっごく気に入った」
306 :
お題:夜景 2/3 :2007/11/24(土) 21:15:26.42 ID:4VB0V6HN0
興奮と照れのせいか、ほんのり赤みが差した頬にえくぼを浮かべて彼女が微笑んだ。連れて来てよかった、と僕 の心もじんわり暖かくなった。 「…この光ってさ」 しばらく眺めていたかと思うと、彼女が口を開いた。 「ん?」 「この光って、命の光なんだ」 彼女は目を閉じていた。でもその表情は、やさしく微笑んでいた。 「この光の、一つ一つがある場所には、必ずそれだけ人が居るんだ。その人は、一人で働いているかもしれない。 家族とご飯食べてるかもしれない。 でも、その人たちはきっと、一生懸命生きてるんだ。だからきっと、この景色はこんなにきれいなんだなぁ」 彼女は祈るように、手を合わせた。どこまでも柔らかい声で、言葉をゆっくり紡いでゆく。 「…なら、それを二人っきりで見てる俺らは幸せもんだな」 二人だけで。寒くて凍えそうな山の中。でも空気は澄んでいて、心は暖かかった。 見上げればそれは星空で、星空はどこまでも続いていて。 でもここから見渡せる僕らの住む街も星空に負けないくらいキレイで。 人間と星なんて、大して変わらないんじゃないかって錯覚が起きて。
307 :
お題:夜景 3/3 :2007/11/24(土) 21:16:57.81 ID:4VB0V6HN0
それをただ見つめてる僕たちはたった二人っきりの男女でしかなくて。 自然と繋いだ手で互いの温度を分け合うくらいに幼くて。 それは、すごい、すごいことなんだ。 「…帰ろっか」 「…おー」 しばらく繋がったままにしていた手を離して、僕は自転車にまたがる。彼女が荷台に腰を下ろし、僕の腰に腕を 巻いた。 下り坂は寒くて、凍えそうで、体が触れ合う部分だけが暖かくて。 …また二人だけで来ようね、って小さく約束して。 僕たちは、少し大人になった。 了
308 :
お題:夜景 4/3 :2007/11/24(土) 21:17:51.23 ID:4VB0V6HN0
終了です。 評価お願いします。
309 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:24:56.19 ID:grsR4rvg0
とりあえずほ
310 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:28:07.18 ID:qtwepF/P0
>>308 命の光っていいね。
綺麗なお話。
わざと表現してるんだろうけど、地の文と台詞で
男の子の口調が違いすぎてちょっと興ざめ。
一方をもう一方に近づけた方が良い様な気がする。
>自然と繋いだ手で互いの温度を分け合うくらいに幼くて。
これだけがわからなかった。
幼いという言葉の位置づけが。
311 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:37:14.98 ID:qtwepF/P0
ほ
312 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:46:39.56 ID:grsR4rvg0
し
313 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:47:28.52 ID:qtwepF/P0
の巡りにより今は手直し中です。
314 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:56:20.09 ID:grsR4rvg0
案の定かいwww
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 21:58:50.18 ID:qtwepF/P0
いや、昨日は日付変更を待たずに寝ちゃってw それで今日一日仕事しながら考えてたら、 ちょっと変えた方がいいなーってw
316 :
◆CoNgr1T30M :2007/11/24(土) 22:07:11.85 ID:eFXOdybtO
姉「誠に勝手ながら品評会投下致します」
317 :
【品評会】草原の白い病院1/4 ◆CoNgr1T30M :2007/11/24(土) 22:08:15.20 ID:eFXOdybtO
夕方の学校、一人教室で空を眺める少年が居た。名を山本、彼は朱色に染まった空を見てある空想をする。二度と叶わない幻想、それは遠い夢。少年は“その時”を淡く思い出す。 中学時代、山本という少年の趣味は散歩だった。 中学にもなって趣味が散歩だけあり風変わりな少年で、背も高く顔も悪くなかったが女にはもてなかった。 さて彼の散歩方法は適当なバスに乗り込み、適当に乗換え行き着いた場所をぶらりぶらりと歩くというもので、小遣いのほとんどをバス料金につぎ込んでいた。高校に上がるまで彼は学生らしい遊びに金をかける、といったことはしなかった。 今日もバスを途中下車。この時、彼はバス停に書かれた文字に見向きもしなかった。“森央病院入口”そこにはそう書かれていた。 「自然豊かだなうん」 バスから降りるとそこはまさに森の中だった。辺りは深緑で木々が茂っている。こんな山奥にバスが通っていることに山本は驚き、そして喜んだ。気分を弾ませ、唯一舗装された一本道を歩いて行く。 しばらく歩くと視界がぱあっと開け、黄緑色の草原が広がった場所に着いた。そしてその中央に白い建物がある。ふとその窓から一人の女性が見えたような気がした。 不思議な光景だった。十字架を掲げていることからその建物を山本は大きめの教会だと予想した。興味と好奇心にかられ、その白い建物に近付く。 それは、病院だった。
318 :
【品評会】草原の白い病院2/4 ◆CoNgr1T30M :2007/11/24(土) 22:09:32.62 ID:eFXOdybtO
受付の人は山本に気付いてさえないように無視する。天然の彼も少し戸惑ったが、あの女性がいる部屋を探すことにした。病人ならば励ましてやろう、そんな風に考えていた。 パッとしか見ていないのだがあの女性は綺麗だった。山本も中学生、そういう年頃なのだ。 右往左往し、ようやくそれらしい部屋を発見する。緊張、あせをかいた手をズボンに擦りつけて、その後にノック。ふっと病室の前の名札と目が合う、白麗空、そう書いてあった。 「失礼します。空さんですか?」 他人にも関わらず名前を口にしてしまい少し焦る。彼女の視線は窓の外から山本へと移る。 「人が来るなんて久し振り。えーと……誰かな? 名前知ってるみたいだけど」 見た感じ年上の女性、白くて端麗で、儚くて、山本はそんなイメージを抱いた。 「いえすいません名札を見ただけで……初対面です」 彼女の視線にロマンチックを感じてしまった山本だった。 「あそぉ〜、まぁいいわ人と話すのは久し振りだし。ねね、空っていい名前だと思わない? 青くて広くて大きくて……そんな願いがこもってるんだって」 「ええ、芭蕉さんのお弟子さんみたいで素敵な名前ですね」 あははは、と大笑いする空さん。とても病人には見えない健康さ。これが山本と白麗空のファーストコンタクトだった。
319 :
【品評会】草原の白い病院3/4 ◆CoNgr1T30M :2007/11/24(土) 22:10:45.44 ID:eFXOdybtO
山本はそれ以来、何度も森央病院に足を運んだ。ただ白麗空と話すのが楽しかった。 空気が読めないと定評のあった山本もこれだけは口にしようとしなかった。 「貴方は一体何の病気なんですか?」 なぜベッドの上に居るのか尋ねたくなる程の健康さ。けれどそれは禁忌な気がする。なんというか森央病院には普通の病院とは違う空気が漂っているのだ。 空っぽ、なのだ。患者も病室も医師でさえ気力がない、覇気がない。あの空さんも明るい様に見えてその本質は虚無だ。 死の匂いさえない完全に除菌された綺麗すぎる異質な空間、それが森央病院だった。 それに山本は本能的に気付いていた。だから問わない、問えない。そうすることによって何かが崩れてしまいそうだから、山本は恐れていた。 ある日、白麗空は山本の切ったりんごをかじりつつこう切り出す。 「ねぇ、私ねこんなに元気そうなのに余命がもう長くないんだー」 それは突然で、他人事の様に気軽にそう言った。山本にはそれを返す術はない。 「こんなところに病院があるなんて変でしょ? ここはね諦めの病院なの。みんな長くない、治る見込みのない患者ばかり。そして浄化されたこの空間で、死ぬの」 あはは、と乾いた笑い。山本に死という単語が重く突き刺さる。 「だからね、もういいわ山本君、私嬉しかった。死ぬ前に人間らしく会話出来て、本当よ? ありがとう」 生返事をして山本は病院を後にする。それはあまりに唐突な別れだった。
320 :
【品評会】草原の白い病院4/4 ◆CoNgr1T30M :2007/11/24(土) 22:11:54.98 ID:eFXOdybtO
後日、病室に足を運ぶと白麗空の名札が無くなっていた。病院の空気は変わらない。一人居なくなったからといって病院にはなんの感慨もない。ただ霊柩が一つ増えるだけの話だ。 山本は病院の周りの草原に背中を預け、空を見ていた。 このどこかに空さんはいるのだろうか。空さんの一挙一動が脳内で再生される。 自分が生涯彼女を忘れなければ彼女は自分の中で生き続ける。ならば自分はその短い日々を心に焼き付けよう。大空の下の誓い。太陽が地面に隠れるまで山本は祈っていた。 「う〜ん、やっぱり惚れてたのかなぁ」 がたんと立上がり、思考をやめる。日はすっかり落ちていた。 「綺麗だったしな〜。胸も大きかったし」 学校の外は真っ暗で夜空には大きくぽっかりと月が、砂を撒いた様な星が輝いていた。 「おぉ、アレ北極星かな?」 地面の上の少年は空を見上げる。彼はある女性を思い浮かべ星と星とを線で結んでいた。 了
321 :
◆CoNgr1T30M :2007/11/24(土) 22:13:07.87 ID:eFXOdybtO
妹「スレ汚しごめんね。こんな駄作投下して。引き続きBNSKを楽しんでね」
322 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:15:18.18 ID:eFXOdybtO
山本「保守〜」
323 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:19:34.06 ID:eFXOdybtO
誰もいねぇ……みんな書いてるか
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:20:59.59 ID:qtwepF/P0
書いてるよー
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:24:40.74 ID:eFXOdybtO
今回二作目自重すべきだよな
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:30:45.98 ID:R1q9qN+Y0
好きにすればいい
327 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:32:57.73 ID:eFXOdybtO
なんか駄目みたいな流れじゃなかった?
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:35:14.70 ID:3rgTpH9J0
三十作品超えたらでしょ? まだ七作品だから気にする必要もないと思うが 時間外という手もあるし
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:35:18.45 ID:07tslHVI0
流れなんて無視すればおk
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:36:10.13 ID:qtwepF/P0
30いくかどうか見極める いかなければ投下 いってしまえば別酉で投下 姉妹が出なければわからないんじゃない?ww
331 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:37:31.72 ID:Z6/xEXbi0
日付が変わる前に酉を変えて投下するのだ……!
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:37:51.78 ID:6AELu94T0
むしろ姉妹を出して、「別人だ」で通したら表彰する 俺が
333 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:45:29.37 ID:vNv4nkBe0
じいしきかじょ?
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:53:51.53 ID:grsR4rvg0
結構認知されてる気がするけどw
335 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 22:57:16.93 ID:qtwepF/P0
風呂前保守
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:05:11.83 ID:Z6/xEXbi0
ほっほっ
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:06:43.16 ID:4VB0V6HN0
>>310 評価ありがとうございますw
科白に暖かみがほしくて自分の地方の方言らしくしゃべらせたんで
狙いのつもりでしたが、確かに不自然ですね。
>自然と繋いだ手で互いの温度を分け合うくらいに幼くて。
これも説明不足です。
今更説明してもアレなので流してください。気をつけます;
338 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:14:04.96 ID:ZOzuXwkA0
ho
339 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:15:40.98 ID:eFXOdybtO
書こうかな……
340 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:19:40.74 ID:Z6/xEXbi0
341 :
珊瑚礁 0/4 ◆D8MoDpzBRE :2007/11/24(土) 23:21:36.59 ID:ZOzuXwkA0
品評会作品投下します。 お題:『空想』 タイトル:『珊瑚礁』 レス数:『4』
342 :
珊瑚礁 1/4 ◆D8MoDpzBRE :2007/11/24(土) 23:21:55.79 ID:ZOzuXwkA0
脳は融けはじめています。 夏です。漂ってくるのは焦げた砂浜の匂いです。太陽光は一切の遮蔽を受けません。一直線にこの砂浜を焦が します。水分を蒸気に変えてしまいます。当然ながら、汗も皮膚にこびりつく塩分だけを残して跡形もありません。 水平線が広がります。文字通り、平衡感覚に対する、垂直方向に対する絶対的な水平線です。地球が球である ことを思い出して下さい。球体に対して接線を引くように、水平線は伸びています。 思い出です。恐らく小学生だったころの記憶だと思います。夏の海。再生されるイメージが鮮烈に甦ります。一切 の余計な要素を無意識の内に排除して、私は夏と海だけをスクリーンに投影しました。他の誰も映ってはいません。 私は今、夏の海辺に佇む一人の少女です。 ビーチサンダルを履いていました。私の足の底を守るそれは、細やかに再現されます。こびりつく砂の一粒一粒 を余さずに。足の裏の灼けるような感触も、忘れてはいません。 愛蔵していたレコードに――今や使われなくなった楽曲再生用の黒い円盤のことですが――数十年ぶりに針を かける、あの感覚に似ています。古い音質で再生される懐かしいメロディを、私は古い記憶のスクリーンと重ねて いるのです。 そして、海に向かって走り出します。ああ、あの時のはしゃいだ気持ちまでもが甦るようです! 勢いよく海に飛 び込みます。地球表層を巡る水流は、肌に心地のいい温度です。夏だからと言ってお湯になったりはしません。 波が迫ってきます。白くて高い波が。小さな私の身体ではとても受け止められません。あっという間に呑まれてし まいます。 あっ。 五感から遮断されます。イメージのスクリーンも肌の感触も、全て一瞬のうちに書き換えられます。手品のように。 黒い視界。目を瞑っているのでしょう。あるいは、一緒に鼻も押さえていたかも知れません。一足遅く、海水が鼻 腔に侵入するのを許して、つんと痛みを伴った匂いを嗅いでしまいます。 もがきます。 不安が意識の表面に浮上します。助けて、と言いたかったのかも知れません。海中でしたから、無理です。言葉 は泡になります。肺からありったけの空気を吐き出して、私は空っぽになりました。使い果たします。 楽しい思い出が暗転するシーンです。 潮流に弄ばれて木の葉のように舞うのです。くるくる、くるくると。深海のダンスなのでしょうか? 違います。まだ まだ深海とは距離があるようです。もちろん、行きたいわけなどありません。 しかしながら、私はどんどん流されていきます。遠海へと連れ去られるように。ジタバタしても無駄でした。手足の 動きは悲しいダンスとなります。空虚なステップを踏みます。
343 :
珊瑚礁 2/4 ◆D8MoDpzBRE :2007/11/24(土) 23:22:14.69 ID:ZOzuXwkA0
いやだ……苦しいよ……。 もはや泡すら吐き出すことが出来ません。 しかし、そこでもう一度、重力の法則が書き換えられます。 助かるのです。 ひょいと私を持ち上げる重力。逞しい救世主を予感します。いや、もっと近しい存在です。懐かしさも同居してい ます。 私の背面から私の両脇を抱え上げるようにしていましたから、その人の顔を見ることは適いません。しかしながら、 私はその存在を知っています。安心しきっています。私は、堰を切ったように泣き出します。心の底から安堵して。 お父さん。 あなたはとうに、懐かしい存在になってしまいました。 団欒の場面です。食卓を囲んで。料理の腕を振るうのはお母さん。一人娘だった私は、大切に育てられてきまし た。感謝の思い出です。 貪ります。幼いころのことですから、当然食欲は旺盛です。今思えば、ありがとうの気持ちが少し欠けていたかも 知れません。いい足りなかった言葉を今、私は反芻しています。 ありがとう。 一定の期間、食事は与えられるものでした。空腹を満たしてくれる愛情に寄りかかって、依存して、全身全霊を無 邪気に預けていたのです。 私の人生。成長。人間としての成長は、ゆっくりでしたが確実に進んでいたようです。 中学生にもなると、私は変わります。いえ、蓄積された変化が顕在化する、と言った方が適切かも知れません。 私は興味を持ったのです。母の持っていた魔法に。部屋の片付けや洗濯などは嫌いでしたが、私は料理だけは 好きになれる気がしたのです。料理をしたいと思ったのです。 初めは、人を養おうとか誰かの役に立とうとか、そういう発想はありませんでした。ただ、魅了されていたのです。 魔術に。私の活力の源となっていた料理に、ただひたすら憧れて、蠱惑されていたのでしょう。 だから、嬉しかった。 母から教わった料理を作れるようになったことは、私の人生における最も大きな変化の一つでした。得意料理の レパートリーが増えるたびに、感情は昂揚感で満たされていきます。 そして、その中でも私を最高に驚喜させたもの。それは、隠し味の技術です。 隠し味。それは私と母との間だけで交わされた秘密でした。そう思えたのです。料理を魔法たらしめている裏では、 隠し味という秘術がなされていた!
344 :
珊瑚礁 3/4 ◆D8MoDpzBRE :2007/11/24(土) 23:22:31.85 ID:ZOzuXwkA0
私は魔法の虜になります。時間をかけて、魔法にかかる側から魔法をかける側へ。 時間は加速します。 やがて私は人生の伴侶を得ます。料理を振る舞います。料理は魔法であり、愛情です。 苦手だった掃除、洗濯もこなします。 子供を得ます。女の子です。今までの私の人生が、鏡写しになります。役割を反転して。貪っていた愛情を、分け 与える側に立ちます。尽きぬ愛情を、私は生み出さなければなりません。 永遠の歯車の中で。 視点が変わります。私は閉ざされています。 私は、一人の老人と向かい合っています。ベッドの中で物言わぬ老人と。 痩せていて、穏やかな顔つきです。右の鼻の穴からは栄養の管が入っています。定期的に栄養剤が注入されて いるようです。味は舌の上を転がらずに、喉元を通り抜けていくのです。 長い時間を無言で過ごします。瞬きは、これはします。本能ですから。しかし、それ以外の動作は見られません。 何を思って過ごしているのでしょうか? 表情からは読み取れません。過去を思い出しているのかも知れません し、未来を思い描いているのかも知れません。はたまた、現在とも過去とも未来とも繋がらない別次元に思念を馳 せているのかも知れません。 彼もまた、閉ざされているのでしょう。 暖かい部屋です。病室です。時折、看護師が通り過ぎます。 私の名前が呼ばれます。返事をしなきゃ。そう思います。いつだってそうは思うのです。 出来ません。閉ざされているから。 私もまた、ベッドに横たわっています。暖かい毛布に包まれて、静寂を貫いています。 時間の終着点は、今現在です。細やかな漸進を続ける時間に合わせて、進みます。その点に疑問はありません。 ただ、私は感じ取っています。漸進する現在は近いうちに、停止する現在に変わるでしょう。私の中で。永遠の停 止と、別れです。懐かしい人たちとの再会かも知れませんが。 面会です。一人娘が、孫を連れてきました。小学生の孫が三人います。 娘――孫たちにとってはお母さんですが――に促されて、孫たちは私の手を取ります。小さな手です。それらが、 私の骨張った手を握ります。柔らかく。私は軽く頷き返します。これが精一杯なのです。 日が暮れて、娘たちが帰ります。 私は一人、残されます。夜の病棟に。安眠はありません。いつ眠っているかの自覚は失われています。同時に、 現実と非現実との境界もまた曖昧です。ただ繰り返されるのです。
345 :
珊瑚礁 4/4 ◆D8MoDpzBRE :2007/11/24(土) 23:22:52.89 ID:ZOzuXwkA0
輪廻。未来の広がりは意識されません。予感は、もう長いこと訪れません。 過去をばかり貪って、私はここに縛り付けられています。実を言うと、記憶もかなり侵食されています。だから、思 い出せない過去も沢山あります。 脳は、少しずつ融けはじめています。地底の対流のように。ゆっくりと神経細胞を侵しながら、混ぜこぜになって いくのです。 最後の記憶。ついさっきのことです。娘との会話。孫たちの自慢話でした。 料理のこと。隠し味のこと。器用な孫たちを、おばあちゃんは誇りに思います。 眠りが訪れます。経験したことのない眠りが。深く穏やかな眠りです。 身体が軽くなります。呪縛が解けるように。 誰かが重力の法則を書き換えたのでしょう。懐かしい誰かが。 潮の音が聞こえます。 深海のダンスを踊りましょう。
346 :
珊瑚礁 ◆D8MoDpzBRE :2007/11/24(土) 23:23:11.24 ID:ZOzuXwkA0
以上です。
347 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:25:31.07 ID:eFXOdybtO
誰かshimaiの酉下さいw
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:26:28.39 ID:0DJItz8p0
349 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:28:04.45 ID:6AELu94T0
>>348 shimaiの文字列がある酉が欲しいってことじゃね?
俺は知らない
350 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:29:46.51 ID:eFXOdybtO
351 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:29:50.83 ID:grsR4rvg0
#}KIZzh''
352 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:30:21.81 ID:ZOzuXwkA0
獅子舞なら、時期が良ければ神社とかで見られるんじゃない? 酉ではなく鳥居の向こう側だと思うけれど
353 :
◆2LnorDIhIY :2007/11/24(土) 23:31:52.33 ID:ZOzuXwkA0
tes
354 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:32:13.76 ID:ZOzuXwkA0
ちょwwwwwww
355 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:32:34.39 ID:6AELu94T0
ちょwwwww
356 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:34:31.96 ID:6AELu94T0
これは初見では間違うw
357 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:35:28.60 ID:Dm6RckqXO
吹いたwwwwwww
358 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:36:24.86 ID:eFXOdybtO
今北産業w
sage
360 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:47:14.09 ID:eFXOdybtO
あ
361 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:54:11.40 ID:qtwepF/P0
い
362 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 23:58:54.86 ID:eFXOdybtO
う
363 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:02:14.52 ID:LGmj7+pA0
え
-― ̄ ̄ ` ―-- _ , ´ ......... . . , ~  ̄" ー _ _/...........::::::::::::::::: : : :/ ,r:::::::::::.:::::::::.:: :::.........` 、 , ´ : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::::: : ,ヘ ::::::::::::::::::::::: : ヽ ,/:::;;;;;;;| : ::::::::::::::::::::::::::::::/ /::::::::::::::::::: ● ::::::::::::::::: : : :,/ と,-‐ ´ ̄: ::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::r(:::::::::`'::::::::::::::::::::::く (´__ : : :;;:::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::`(::::::::: ,ヘ:::::::::::::::::::::: ヽ  ̄ ̄`ヾ_::::::::::::::::::::::し ::::::::::::::::::::::: : ●::::::::::::::::::::::: : : :_> ,_ \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: `' __:::::::::-‐ ´ (__  ̄~" __ , --‐一~ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
365 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:03:51.25 ID:uEobEcCbO
メリークリスマス
366 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:04:04.40 ID:DsyHMnWi0
sageるひと何やってるんすかww
367 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:07:25.93 ID:Ars/Bsg/0
368 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:08:35.01 ID:GVjgppMD0
sageる人がニセモノの出現に絶望しているw
まったく偽物が現れるとは……
370 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:12:52.05 ID:+OHp3/kw0
いいなぁ 偽者がでるくらい有名になりたいよ
371 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:18:57.64 ID:DsyHMnWi0
以外とあるもんだな 偽酉
372 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:20:26.39 ID:9Qb+dzj5O
酉はググれば案外出てきたりする 最初の酉バレは中一♀だったか あれはクソワロタが
373 :
◆R8ImotoANE :2007/11/25(日) 00:22:38.28 ID:E1xw1Sbf0
そういやshimai欲しいって言ってた人、これじゃ駄目?
374 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:23:37.08 ID:DsyHMnWi0
>>373 それいいんじゃね?
某ゴッド・カオスさんも思い出すけど
375 :
◆ih5a/uuYUk :2007/11/25(日) 00:24:18.44 ID:Ars/Bsg/0
ググってるんじゃなくて、トリップ検索ソフトだと思うが。
376 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:38:07.89 ID:E1xw1Sbf0
ほ
377 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:45:28.18 ID:9Qb+dzj5O
保守
378 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:50:12.25 ID:LGmj7+pA0
ほっほっ
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:55:11.43 ID:LGmj7+pA0
ほっほっ
380 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:57:04.03 ID:+OHp3/kw0
原住民か
381 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 00:57:57.01 ID:LGmj7+pA0
うー……
382 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 01:08:31.10 ID:LGmj7+pA0
どっかーん
383 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 01:11:01.97 ID:Eyfzzuf+0
書き終わったし寝るか 起きたら推敲だな
384 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 01:23:08.11 ID:LGmj7+pA0
ほ
385 :
◆IPIieSiFsA :2007/11/25(日) 01:25:44.29 ID:GVjgppMD0
ほしの巡りが良いので品評会作品投下します。 相変わらず5レスです。
386 :
I am a woman but I am not tha human 1/5 ◆IPIieSiFsA :2007/11/25(日) 01:27:03.02 ID:GVjgppMD0
――私は夢を見る。 唇を重ね合わせ。舌を絡ませて。お互いの口腔を犯し合う。 首筋に舌を這わされ、キスマークをつけられる。 胸への愛撫、舌先で転がされて乳首を尖らせる。 おへその周り、括れた腰を指で撫で回される――。 登校の途中、彼女はクラスメートの黒田誠一の姿を見つけた。 「せい……」 「おはよう! 誠一」 近づいて声をかけようとしたが、彼女の声は別の声に遮られた。 「ん? おお、おはよ……」 どこか眠たそうな声で誠一が挨拶を返した相手は新井静香。こちらも彼女のクラスメートで、誠一とは恋人同士である。 「なにー? また遅くまでパソコンしてたんでしょ」 少し頬をふくらませて彼氏の夜更かしを咎める静香。それに対して誠一は生返事を返し、今度はそれに不満を持った静香が通学カバンで軽く叩く。そして誠一がそれに抗議する。 端から見ても、仲の良いカップルの朝の風景。他人が声をかけるのが憚られるような雰囲気を醸し出し、じゃれ合いながら二人は学校へと向かう。 と、たまたま後ろに視線をやった静香と彼女の目が合って、静香は二人の後ろを歩く彼女に気づいた。 「あっ、おはよう!」 静香が声をかけたことで、誠一も彼女の方を振り向く。 「おはようございます。誠一さん、静香さん」 彼女は深々と頭を下げて挨拶をした。 「ん。おはよう」 静香とのやり取りで、幾分か頭をスッキリさせた誠一がハッキリした声で挨拶を返した。 「後ろにいたんなら、声をかけてくれたらよかったのに」 三人で並んで歩きながら静香が言う。 「二人のお邪魔をするかと思いまして」 「邪魔なんてことないよ。誠一とは朝の挨拶をしてただけだし」 「カバンで殴るのがお前の挨拶か。よくわかった」 ぶっきらぼうに言う誠一。しかしその顔はどこか笑っているようにも見える。 「愛情でしょ、愛情。愛があるからこそ、叩くんじゃない。わからない?」
387 :
I am a woman but ……. 2/5 ◆IPIieSiFsA :2007/11/25(日) 01:27:54.51 ID:GVjgppMD0
「ハイハイ。ほら、さっさと行かないと遅刻するぞ」 誠一は静香を適当にあしらって、少し歩調を速める。 「待ちなさいよ」 静香も同じく、歩くスピードを上げて横に並ぶ。 彼女は、二人のそんな姿を羨ましく想いながら後からついて行った。 昼休み、彼女は誠一と職員室へと来ていた。 今日の日直である二人は、担任から配布物を取りに来るように言われていた。 「これとこれ、運んだらいいの?」 敬う気持ちがまったくうかがえない誠一の言葉にしかし、担任はにこやかに頷いた。 二人の目の前には特別授業用の冊子と、一辺十五センチくらいの箱が一杯に詰められた段ボール箱が鎮座していた。 「箱の方はだいぶ重いから、お前じゃなくて彼女に持ってもらえ」 担任の言葉に、彼女は段ボール箱へと手を伸ばす。が、誠一が先にそれを持ち上げた。 「……くっ」 思わず声を漏らす誠一。 「誠一さん。私が持ちます」 彼女は受け取るべく、段ボール箱に手を添える。しかし誠一はそれを断る。 「……別に、いい」 「ですが」 「いい、って。重い物を持つのは男って、昔から決まってるんだよ」 「けれど私は……」 「女の子は、力仕事なんてしなくていいんだ。そっちの方だけ、持ってくれ」 彼女が何かを言いかけたのを誠一は遮って、目で冊子の方を示す。 「わかりました」 冊子の束を両手で持つ彼女。 「無理するなよ」 という担任の声を背に、彼女と誠一は職員室を後にした。誠一はそのまま、彼女は一礼して。 二人は職員室のある二階から、自分たちの教室のある三階へと階段を上がる。 彼女は少し頼りない足取りで階段を上る誠一の後について行く。万が一、誠一がふらついたりした場合にすぐに支えられるように。 階段の中程へ来たところで、後方から男子生徒が駆けて来た。五時間目の開始が近づいていたために、急いで教室へ戻ろうとしている。
388 :
I am a woman but ……. 3/5 ◆IPIieSiFsA :2007/11/25(日) 01:28:51.23 ID:GVjgppMD0
普段の彼女なら、見る事無くそれがわかるのだが、誠一の歩調に集中していた所為で彼女は気づいていなかった。 男子生徒も当然、ぶつかろうと思っているわけではない。しかし、階段を駆け上がる男子生徒は彼女や誠一に細心の注意を払っているわけではなく、彼女の脇を駆け抜けようとして、右腕を彼女の左腕にぶつけてしまった。 運悪く次の段へと左足を浮かせていた彼女はバランスを崩す。とっさに左足を戻そうとして下ろすが、崩れたバランスがそれを許さない。元あった、右足の一段下ではなく、もう一段下へと左足を滑らせた。 「あっ」 彼女は小さく叫んだ。 重心が後ろにかかり、彼女は階段から落ちないように手すりに手を伸ばそうとして、抱えた冊子を思い出した。これを放り出すか、自分が落ちるか。 彼女は、落ちる方を選択した。 背中から階段下へと倒れ落ち行く彼女。手にした冊子は、散らばらせないように胸で抱える。視界には、その腕に向かって手を伸ばす誠一の姿が映った。 誠一の手が彼女の腕を掴む。しかし、彼女の自重と勢いには逆らえず、誠一もろとも落下する。 彼女は、抱えた冊子を手放し、誠一の身体を引き寄せる。落下の衝撃から護る為に。 そして甲高い金属音とともに、彼女の身体は廊下に叩きつけられた。 「……つぅ」 顔をしかめて上半身を起こす誠一。そんな誠一に彼女が声をかける。 「大丈夫ですか?」 「……ああ、だいじょう……!」 答えかけた誠一だったが、自分の右手が彼女の胸に触れているのに気づいて、慌てて彼女から離れた。 「急に動くと良くないですよ」 彼女も上半身を起こし、誠一を気遣う。 「……あー。いや、俺は大丈夫。助けようとしたんだが、反対に俺が助けられたな」 照れたように笑う誠一。 「私の体は重いですから」 「まあ、確かに軽いとは言えないな。……それより、こっちの方は大丈夫かな」 誠一は優しい笑みを浮かべて先の言葉を彼女に、後の言葉で自分が放り出した段ボール箱を心配した。 そして彼女も、自分が手放した冊子を拾い集めながら、誠一の背中を見ていた。 ――私は夢を見る。 膣口をなぞっていた彼の指が膣内をかき混ぜる。 勃起したクリトリスを彼に丁寧に弄られて、愛液でしとどに濡れそぼる。 固くいきり立った彼のペニスが挿入されて、激しく子宮を突かれる。 そして体内に彼の精液を感じて、絶頂に達する――。
389 :
I am a woman but ……. 4/5 ◆IPIieSiFsA :2007/11/25(日) 01:29:33.78 ID:GVjgppMD0
「……ん、……さい。……誠一さん、起きてください」 「……ん……んん」 名前を呼ばれて目を覚ました彼は、身動ぎをしようとして、出来ないことに気づく。 両腕は後ろ手に椅子の背もたれに縛られ、両足も椅子の左右の前脚に括られている。 「気がつかれましたか、誠一さん」 「おい! こ……れ……っ!?」 声のした方、正面を向いて彼は驚愕の表情を顔に浮かべた。 目の前には彼女が立っている。一糸纏わぬ姿で。 彼は彼女を見る。いつもと同じ顔でこちらをじっと見つめている。二つの膨らみがあるだけの胸。へそのような窪みのない、なめらかな腹部。陰毛はおろか性器すらない股間。 彼女のその裸身を見て、本当に、彼は理解した。彼女が人間ではなく、造られた存在――ロボットである事を。 「……どういうつもりだ?」 彼女の瞳を真っ直ぐに見据えて彼が問いかける。放課後、彼女と一緒に空き教室に来た彼は、首筋に電気を感じて気を失った。そしてこの状況である。 「……私の裸を見ても、勃起しないのですね」 彼女の視線は彼の股間に向けられており、その言葉どおり、彼の股間は膨らんでいない。 「なに言ってるんだ、お前……」 彼女は問いに答えず、彼に近づくと腰を屈め、 「私は貴方の事が好きです」 そう告げてから、唇を重ね合わせた。 そしてきっちり五秒後に唇を離した彼女。 「……どうしたんだよ、一体」 戸惑いを隠せない彼の言葉に、やはり彼女は答えることなく彼の前に跪くと、ズボンのベルトを外してチャックを下ろした。 「おい! 何するんだよ!」 彼はジタバタと体を動かそうとするが、椅子ごとガタガタと揺れ動くだけで、彼女を止める事は出来ない。 トランクスの隙間から彼の性器を露出させた彼女は、それを手で弄る。 「やめ……ろって……!」 少しだけ、自身を持ち上げる彼の性器。しかし、それ以上持ち上がることも、大きくなることもなかった。 だから、彼女は性器を咥えた。知識として知っていた上に、性器も、人が排泄をする為の穴も彼女は持っていない。彼女が彼を迎え入れる穴は、そこしかなかった。
390 :
I am a woman but ……. 5/5 ◆IPIieSiFsA :2007/11/25(日) 01:30:08.03 ID:GVjgppMD0
彼女の口内に舌は無く、口を窄めて頭を上下に動かすだけのフェラチオ。 「おい……ほんと、に……やめろ……!」 しかし経験の無い彼にはそれだけでも十分で、性器は次第に固さを増して膨張していく。 再三の彼の制止の声も彼女には届かず、快感がピークに達した彼は精子を彼女の口腔に放出した。 口内に彼の精液を溜めた彼女は、彼の性器から顔を離し立ち上がる。 「……これで満足か?」 彼が彼女を見る。しかしその目に侮蔑の色は無い。 彼女は傍らの机の上に置いていた自分のスカートからティッシュを取り出し、彼の性器を丁寧に拭く。そしてそのまま、彼の戒めを解く。 自由になった彼は、性器をしまってから立ち上がり、彼女と同じ目線で見詰め合う。 「……俺は、お前の事は好きだ。でも、それは友達としてであって、女としてじゃない。静香っていう……恋人もいるし」 彼の言葉に彼女は僅かに瞳を大きくする。 「……これでも、私の事を女性として見てくれるのですか?」 「当たり前だろ。お前はお前。女であることに変わりはないだろ」 「……ありがとうございます。……すみませんでした」 「気にするな。俺も、できるだけ気にしないようにするから。……また明日、笑って話そうぜ」 彼は踵を返して教室を出ようとする。 「……風邪引くから、早く服を着ろよ!」 そう言い残して、彼は教室から出て行った。 残された彼女はしばらく、見えない彼の後姿を見送っていたが、視線を外して下を向くと、右手を口元に当てた。 そして離された彼女の右手には彼の精液。 彼女には、口の中の物を嚥下する機能はついていない。彼女は食事を必要としないから。 右手の精液を見つめ、そしてそれを自らの股間に擦り付ける。まるでそれが正しい行為であるかのように。 だが彼女の股間には何も無く、なめらかな表面に精液が付着し、垂れるだけ。 しかしその姿はまるで、膣内に精液を出された跡の様に見えた。 ――私は夢を見た。 彼との子供を抱く、女性が描くありきたりな幸せ。けれど、私は人間ではない。 I am a woman but I am not the human.――。 ―完―
391 :
◆IPIieSiFsA :2007/11/25(日) 01:30:57.36 ID:GVjgppMD0
以上です。お付き合いありがとうゴザイマシタ。 1レス目タイトル間違えたので自分でまとめたいと思います。
392 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 01:34:28.62 ID:GVjgppMD0
393 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 01:36:04.38 ID:mLktPURD0
これは・・・・・・ゴクリ・・・
394 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 01:50:37.41 ID:LGmj7+pA0
ほ
お題をおひとつ
396 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 01:57:13.15 ID:iuM6e96Z0
蟷螂拳法
398 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:01:44.39 ID:+OHp3/kw0
とりあえず予測を言ってみな!
辞書で調べた 把握
>>398 かまかまきりきり
最初蜥蜴と読んでしまたよ
401 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:06:50.99 ID:+OHp3/kw0
虫とか漢字難しいものなぁ 精霊飛蝗とかどんな厨二病だよ
402 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:17:23.13 ID:+PafNOTeO
まったく読めねぇw
403 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:31:15.34 ID:OKIMXe8UO
薄馬鹿下郎
404 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:34:28.75 ID:UPGrQYEh0
誰か居たらお題お願いします
405 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:34:37.24 ID:LGmj7+pA0
薄羽蜉蝣カワイソスwwwww
406 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:35:41.24 ID:LGmj7+pA0
407 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:38:21.16 ID:UPGrQYEh0
>>406 ありがとうございます。
頂いてきますね
408 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 02:41:24.02 ID:+OHp3/kw0
こんな過疎でもレスが被るんだなぁ
409 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:10:32.71 ID:+PafNOTeO
保
410 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:28:41.65 ID:wueu3X/t0
hっほおほほほほほほおっほほおhhhhhhhhhhhhhh
411 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:35:15.71 ID:iuM6e96Z0
保守
412 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:38:49.76 ID:vTyx4xGT0
品評会、ずっと考えてるんだけどまったく、話が沸いてこない。
413 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:40:08.97 ID:+OHp3/kw0
俺は書く気にならない
414 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:43:13.75 ID:vTyx4xGT0
(´・ω・`)次がんばる
415 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:49:57.44 ID:KdmifAPB0
俺もやる気でなかったんだけど、酒の勢いに任せて落書きのつもりで殴り書きしたら、 これを清書すればそれなりのものが出来るんじゃないかと思えるようになった。 ちゃんと話考えて、設定作って、綺麗に描写して・・・って考えると遥か遠い行程に見えて気力を削がれるけど、 とりあえずの形さえ見えてこれば案外楽に思えてきたぜ!
416 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:52:59.22 ID:VtDJfSlHO
お題ちょうだい
417 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 03:59:20.53 ID:Si+J/Mn8O
スナイパー
418 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 04:01:02.25 ID:VtDJfSlHO
419 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 04:34:49.89 ID:7IzfTnYT0
毎週品評会に投下する!って自分で決めたのにサボってはや一月 話がまったく浮かばない…orz 話が浮かばん発想が沸かんなんてぬるいこといってるからだろうか やはりどうにか搾り出してでも書いていかないと書けるようにならんのかなぁ
420 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 04:49:06.44 ID:KdmifAPB0
話に対する自分のハードルが高すぎるんじゃね? 俺は正直、発想だけで品評会で票取れるような話を思いつくことは諦めてる。 最低限の起承転結さえ用意できればいいや、まずはシンプルな展開を無難に書けるようになろう、 そういう練習のつもりでこだわりを捨てれば妥協点は見つかるんじゃね?
421 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 05:09:42.08 ID:KdmifAPB0
なんか的外れなことかいてるなorz さすが流れぶった切りに定評のある俺。。
422 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 05:38:54.62 ID:KdmifAPB0
ほしゅ
423 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 06:07:55.24 ID:UPGrQYEh0
穂
424 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 06:33:49.86 ID:vTyx4xGT0
空想で夢オチしか思いつきません
今品評会お題知った。今日はいろいろ用事がある 品評会出せるか……?
426 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 07:12:42.51 ID:3/rXQlQ+0
保守しとくお
427 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 07:52:42.51 ID:uEobEcCbO
428 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 08:18:10.00 ID:REgNmuw5O
ほ
429 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 08:18:15.75 ID:E1xw1Sbf0
430 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 08:24:33.23 ID:uEobEcCbO
431 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 08:47:24.03 ID:E1xw1Sbf0
ほ
432 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 08:50:04.06 ID:uEobEcCbO
ちょ待ってくれ
433 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 08:58:34.19 ID:lkx+3eK00
434 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 09:16:58.49 ID:E1xw1Sbf0
ほ
435 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 09:34:29.61 ID:uEobEcCbO
ありがとうございます
436 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 09:40:01.14 ID:M7F+lG7o0
今回レベル高いな。投票したいのがもう2つもあるぜ保守
437 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 09:43:36.13 ID:uEobEcCbO
438 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 09:46:36.05 ID:E4Nw4+1W0
品評会作品投下します。 「とう、ひこう」4レスです。
439 :
とお、ひこう1/4 ◆uOb/5ipL.. :2007/11/25(日) 09:47:23.95 ID:E4Nw4+1W0
ひとつふたつと数えながら空を想像する。みっつよっつと数えながら空を創造する。 だから、いつつむっつと背後から続きが聞こえたときは驚いた。始業式真っ只中の体育 館裏にまさか人が居るとは思わなかったから、背後を振り返る。 「サボリとは感心しないな、とおちゃん」大きな桜の木の下、一人の女の子が立っていた。 黒髪のボブ、愛らしい瞳、漂う気品がお嬢様を思わせる。この子は去年私と同じクラス だったマヤという子だ。この学校で変わり者として通っている私によく話しかけてきた、 変わり者だったはず。 私の苗字は遠野で、皆からとおちゃんと呼ばれていた。スプレー缶片手に校内を歩き、 勝手に校舎の色んな所に絵を描くので教師からは非行少女として認識され、級友からは変 わり者として認識されている。 そんな私の行動がさして問題にならないのは、私が美術部に所属しコンクールで何回も 賞を取っているからだろう。部の顧問も私の味方をしてくれている。 「相変わらず凄い絵を描くね……なんで絵を描いてる時、いっつも数を数えてるの?」 マヤは、私が水性スプレーという便利なモノで体育館裏に描いた青と白の空を見て、そ う訊いてきた。数を数えてると集中して、思い通りの絵が描けるから。もう癖になってる。 そう答えると、マヤは私の描いた現実には存在しない、私の頭の中だけに在る空を見なが らへえ、と嬉しそうに笑った。そして、私も使ってみよう、と呟く。 「こんな絵が描けるんだから、将来は画家?」その質問に私は肩を竦めた。絵は道楽で描 いているだけだ。薦められている美大の話も曖昧にしたままだし。 私はこうして自分の頭の中にだけ存在するモノを描いては、その中に入り浸るのが大好 きだった。現実を見るより自分の絵を見たい。嫌な現実を見るより、幸せに満ち溢れた絵 を見ていたい。自分が欲しい絵を描きたいから、私は厭きもせずこうして絵を描いてる。 「いいなぁ。私も、こんな綺麗な空を描きたいな」私の描いた空を見ながら呟くので、な ら描けばいいじゃない、そう返した私にマヤは困ったように笑った。 「私、こんな風に描けないから」 ああ成る程。それを聞いて理解した。自分の欲しい絵が描けないなら、その絵の中に入 る事は出来ない。だから、マヤは私の描いた空を眺めているのか。きっと、マヤの欲しい 空は私の空に近いんだろう。 私達は無言で、体育館裏に描かれた空を見ていた。静かに、桜の花弁がその空を染めた。 ◇
440 :
とお、ひこう2/4 ◆uOb/5ipL.. :2007/11/25(日) 09:48:13.68 ID:E4Nw4+1W0
何の因果か、私とマヤは今年も同じクラスになった。知った顔もあったが、マヤと同じ クラスという事が、始業式以来、私を不思議な気持ちにさせていた。 そしてマヤは以前同様、いや、前以上に私に話しかけてくるようになった。最初はそれ を鬱陶しく思っていたが、気付けばマヤとの会話を楽しんでいる自分がいた。 絵が苦手というマヤにスプレー缶を貸し、二人で色んな所に絵を描いた。数を数えなが ら、時には笑いながら、体育館裏、外にあるトイレ、校舎裏、色んな所に絵を描いた。 その瞬間の楽しさといったらなく、今まで生きてた中で一番楽しいと思える程だった。 だけどこんな事をしていればマヤの印象が悪くなるのは当然だった。教師に非行少女と して認識されている私と一緒に行動し、一緒にスプレーで校舎に絵を描いているのだ。 マヤも非行少女として認識されるのは当然で、私は今更ながらスプレーでの絵を薦めた 自分の単純さに呆れるしかなかった。 けど当の本人は平然とした様子で、いつも私と一緒に過ごして笑い合っていた。 そんな日常の中でふと疑問に思った事。――何故、マヤは私と一緒に居るのか。 「とおちゃんの絵を初めて見た時驚いたの。こんなにも心に訴えかける絵を描く人が私と 同い年なんて信じられなかったし、校内でも噂の有名人だって聞いて、色々知りたくなっ て。顔も私の好みだったし、話してみたら面白い人だったから、もう……一発で惚れたよ」 私の疑問に、恥ずかしそうにそう答えたマヤ。私まで恥ずかしくなる。顔が熱い……。 しばらく無言で、さっき私が校舎裏に描いた空を二人で眺めていると。 「とおちゃん、夢ってある?」いきなりマヤが切り出してきた。「私、もう少しで自分の 夢が見付けられそうなの。だから、とおちゃんの夢は何かなって思って」 私は自分で描いた空を見ながら口を開く。私は自分の描いた絵の中で楽しく暮らす事か な。辛い事のない、幸せに溢れた絵の中。そこで幸せに暮らすの。校舎裏に描いた空は、 四月に描いた空より断然鮮やかになっていた。私も、私の絵も、マヤと笑い合う事で変わ ってきている。 だがマヤは私の答えに唇を尖らせ、不満気に言う。「私、とおちゃんと一緒に同じ夢を 描きたい。とおちゃんは自分独りがいいの? そんなに、現実を見たくないの?」 夏が始まった日の事だった。マヤに、こんな事を言われたのは……。 ◇
441 :
とお、ひこう3/4 ◆uOb/5ipL.. :2007/11/25(日) 09:49:08.15 ID:E4Nw4+1W0
夏の終わり。私はマヤに全ての鬱陶しさから逃げ出そうと話を持ちかけた。 この頃の私達は付き合っているといっても過言ではなかったし、実際そんな感じだった。 だがそれを良しとしないのが世間の目で、マヤの両親が私に近付かないようにと、マヤ に煩く言っているという事を、親切な級友から聞かされた。 なんでもマヤの両親は金持ちの堅物らしく、一人娘のマヤを溺愛しているらしい。マヤ を見た時に感じたお嬢様という感想は、正解だったようだ。 一方の私にも避けていた進路の話とかが出てきて、もう鬱陶しくなったので、私は受験 勉強の追い込みという名目で何処かに行き、そのまま逃げてしまおう。そうすれば私達は 誰からも文句を言われない、そう短絡的発想をした私はすぐにマヤに電話をかけ、彼女を 学校近くの公園に呼び出した。だがやって来たマヤは、笑顔で私の案を否定した。 「とおちゃん、確かに逃避行は魅力的だけど、此処から逃げ出しても現実からは逃げられ ないんだよ。……とおちゃんはいつも現実から逃げてるよね。絵を描く事もそう。見たく ない現実から目を背ける為に絵を描いて、その中に逃げてる。 けど、私達が生きていくのはこの現実で、絵に描いた現実の中じゃないんだよ」 ――現実から逃げている。私はそう言われ、知らず動揺していた。確かに私は絵を描い てはその中で生きたいと考えていた。絵の中に入り浸ってもいた。でもそれが、見たくな い現実からの逃避行だとは夢にも思わなかった。いつから辛い現実から目を背けて、幸せ に満ち溢れた絵の現実に逃避行をするようになっていたのか。 「とおちゃん、私、両親の希望通り国立大を受ける事にしたの。これは私がとおちゃんと 一緒に居る為に必要な事だから。私達の関係を納得してもらうには、行動で示すしかない でしょ? だから私は示すの。だから、とおちゃんも架空の空じゃなくて、現実の空の下、 逃げないで生きて。……凄い我侭言ってる事は解ってる。でもね、こんな我侭言えるのは とおちゃんだけなの。だって、とおちゃんが大好きだから。ずっと一緒に居たいから。 私ね、夢が見付かったの。それはとおちゃんと一緒に、この現実に、綺麗な空っていう 未来を描いて、その空を二人で自由に飛ぶ事なの。だから、今の空より綺麗な空で飛ぶ為 に、頑張ろう? 架空の空を飛ぶより、現実の空を飛ぼうよ。未来っていう、広い空をさ」 笑顔のマヤ。……なんていう我侭。苦笑するしかない。でも惚れた弱みか、断るなんて 事が出来る訳がない。私は頷き、美大の話を思い出しながら、一つの決断をした。 ずっと一緒に居る為に、一時の別れを。 ◇
442 :
とお、ひこう4/4 ◆uOb/5ipL.. :2007/11/25(日) 09:50:11.36 ID:E4Nw4+1W0
ひとつふたつと数えながら空を想像する。みっつよっつと数えながら空を創造する。 いつつむっつと背後から声が聞こえても、私は驚かなかった。卒業式は終わり、今頃は 皆好き勝手に騒いでいる事だろう。待ち合わせをした訳じゃなかったが、此処に来れば逢 えるという確信があった。 久し振り。桜の幹に背を預けて笑い合う。こうしてマヤと話すのは半年振りだった。 あの日から私達は周囲を誤魔化す為に互いを避けた。そして、夢の為に努力をしてきた。 顔を合わて話すのは四年後。だから、今日もこのまま別れるという事を理解していた。 代わりにそっと互いの指を絡め合う。半年振りのマヤの体温。マヤの、心の体温。 今、私達が見ている景色は違う。私はさっき体育館裏に描いた空。一年前とは比べ物に ならいほど鮮やかになった、空。私も、私の絵も成長出来たのは全てマヤのお蔭。 マヤは自分の眼前に広がる青空を見ているんだろう。 私は力を付ける為に美大へ。マヤは国立大へ。でも、最後に二人が見るのは同じ景色、 二人の幸せな未来という空、そう信じてる。 桜の花弁が静かに舞う中、互いの呼吸を感じながら呟く――それじゃ、お別れだね。 ひとつふたつと二人で数える。まずは四年後、必ず迎えに行くよ。 みっつよっつと二人で数える。思い出が、温もりが優しくて涙が出そうだけど堪える。 いつつむっつと二人で数える。自分の描いた空を見る。私は今から現実の空に飛び立つ。 ……もう逃げないよ。私達は名残惜しげに小指を絡めた。 私とマヤは別々の空へ飛び立つ。飛行する、大きな鳥となって、必ず迎えに行くよ。 ――とお。呟いて、絡めた小指を離し、私達はそれぞれの空へ羽ばたいた。 ◇ 私は体育館裏に広がる極彩色の空を見て苦笑した。四年前とは比べ物にならない程の鮮 やかさ。青と白だけだった空は面影もない。「これが私達の空なんだよ。これが、私の描 きたかった空、私の、私達の夢……」私の手を握り締めて、嬉しそうに彼女が笑う。 新進気鋭の画家と国立大を首席で卒業した女が描く空は、こんなにも奇抜なのか。 ――でも、悪くないかな。高が四年でここまで変わるなら、最後はどうなるのか。 何故か無性に可笑しくて笑い合い、指を絡めて数を数える。あの日は別々の空に羽ばた いたけど、今日は違う。今からこの二人の空、二人の夢、二人の未来に飛び立つのだ。 ――とお。大声で叫んで、私達は未来へ羽ばたいた。未来を飛行する、鳥となって。 了
443 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 09:51:15.16 ID:E4Nw4+1W0
以上です。そして投下中に別の形が浮かんで涙目ww 泣いてきます
444 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 10:17:48.04 ID:E4Nw4+1W0
ほふ
445 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 10:49:57.07 ID:E4Nw4+1W0
ほ
446 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 10:58:31.62 ID:3/rXQlQ+0
まとめておいた
447 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 11:01:11.66 ID:7IzfTnYT0
>>420 たしかにそうだなぁ
俺の場合、何か一つアイデア浮かんでも、
もっと効果的な過程は?何かメッセージ性のある終わりは?全体の整合性は?って気にして結局書けないからなぁ
すべての点において自分にはハイレベルなハードル過ぎるのかもしれん
ちゃんと書きたいことを地道に丁寧に書くことが大事か…
ところで、以前たしかこのスレに貼られてたと思うけど、
芥川龍之介の話に〜を求めても仕方ない、シェークスピアの話に〜を求めても仕方ない…云々
ってコピペ(?)があって、すごく納得したんだけど、今過去ログあさっても見つからない…だれか知ってる人いない?
448 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 11:13:29.61 ID:9Qb+dzj5O
80 ◇2LnoVeLzqY 07/11/06 23:45:20 ID:P72OA33P 総評。たとえば村上春樹や高橋源一郎の小説を「感情移入できないし人間が書けてない!」って批評したらそれは完全にナンセンスだし、 本格推理モノに対して「何だこの小説は! 社会的メッセージが何もないではないか。小説家は同時に社会への批評家でなくてはならないのだ!」って批評してもやっぱりナンセンスだし、 シェイクスピアの戯曲に対して「何だこれは、矛盾だらけじゃないか! この作者は整合性というものを考えたことがないのか!」って批評してももちろんナンセンスだ。 批評の批評はしちゃいけないことになってるけど、何となく、以上品評会の批評の話。 こいつか? これは批評についての話だけど。
449 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 11:15:44.03 ID:uEobEcCbO
2Lかよw
450 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 11:20:48.01 ID:E4Nw4+1W0
451 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 11:36:26.32 ID:NtWSYOio0
品評会4レス投下します
452 :
箱の中(1/4) ◆23s5J0VAck :2007/11/25(日) 11:37:29.58 ID:NtWSYOio0
「おはよう、友香」 牧人くんのその言葉で、一日が始まる。 ドアの閉まる音と、彼がこちらへと歩み寄ってくる音。私の目は光を失ってしまってい るから、牧人くんの姿を見ることはできないけれど、聞こえる音と感じる空気で、私はそ れを知ることができた。 私は牧人くんに返事をしようとしたけれど、私の喉は僅かも動いてくれなかった。 私が体の自由を失ったのは、今から大体一ヶ月ほど前のことだった。全く動くことが出 来なくなった私は、それ以来ベッドの上で寝たきりの状態になっている。そんな私を、夫 の牧人くんは毎日看てくれていた。 今朝も、牧人くんは私が横になっているベッドの縁に腰を下ろして、私の頭を優しく撫 でてくれた。体を動かすことはできないけど、彼の優しい手のひらを感じることはできた。 しばらく、無言の時間が過ぎる。 その間、私はベッドの上でただ仰向けになっているだけだった。はたから見ると、私は ただの命の無い人形に見えるかもしれない。けれど、そんな私を、牧人くんは温かく見守っ てくれていた。二人の間に漂う雰囲気が、それを物語っていた。 毎朝の静かな三十分。それが終わると、牧人くんはもう一度私の頭をゆっくりと撫でて、 ベッドから腰を上げた。そして、「会社に行ってくるね」そう言って、彼は部屋から出て 行った。
453 :
箱の中(2/4) ◆23s5J0VAck :2007/11/25(日) 11:38:10.03 ID:NtWSYOio0
扉が開く音。それに合わせて、牧人くんの声がした。 「ただいま、友香」 そして、朝と同じようにベッドの縁に牧人くんが座る。 「今日は、仕事が多くて大変だったよ。真田先輩が、仕事を押し付けてきてさ――」 朝とは違って、夜の牧人くんはおしゃべりになる。今日あったことを、私に語りかけて くれる。通勤中にあったことや、職場での出来事。誰とどんな話をして、どう感じたのか。 相槌すら打つことのできない私に、それでも楽しそうに話してくれる。 話をしている間、牧人くんはずっと私の手を握っていた。それなのに、私はその手を握 り返すことすらもできない。寂しさの募る、一方通行な会話。 だからせめて想像の中だけでもいいからと、私は心の中で牧人くんと話をする。 「――それでようやく、山田のやつ自分の勘違いに気付いてさ、慌てて課長に謝りに行っ たんだよ」 (山田さんはおっちょこちょいだからね) 「あいつ、ちょっと天然入ってるからな」 (そうだよね。よくぼーっとしてることがあるよね) 「山田の天然エピソード、話したことあったっけ? 缶コーヒーのやつ」 (それなら聞いたことあるよ。コーヒーとコーラを間違えたやつだよね) 「話したことあったな。あ、でもスキーに行った時の話はしてないよな」 (それは知らない。聞かせて牧人くん) ベッドから離れられなくなってからの私の楽しみは、牧人くんのする毎日のお話だけだっ た。けど、このささやかな時間は永遠には続かない。 その日、一日であったことを全て語りつくすと、牧人くんは静かに私の頭に手を乗せて 言う。 「また明日な、友香。おやすみ」 おやすみなさい、牧人くん。 扉が閉まる音と共に、私の一日が終わった。
454 :
箱の中(3/4) ◆23s5J0VAck :2007/11/25(日) 11:38:50.34 ID:NtWSYOio0
仕事が終わり、牧人は家に帰ってきた。玄関を抜けてまず初めに彼が行く場所は、手を 洗うための洗面所でも、夕飯を作るための台所でもなく、彼の妻が待つ寝室だった。 扉を開く。部屋の中は暗かったが、友香は朝と同じように、ベッドの上で横になってい た。 「ただいま、友香」 牧人が部屋の電気を点けると、暗闇に包まれていた友香の体がはっきりと確認できるよ うになった。牧人は彼女の眠るベッドの縁に腰を下ろした。すると、彼の体重でベッドが 歪み、それに合わせて友香の体が僅かに動いた。 友香の顔を見つめ、牧人は今日一日の出来事を語りだす。 体が動かなくなって、一日中この部屋で過ごさなければならなくなった友香は、きっと 退屈に違いない。そう考えた牧人が友香にしてやれる唯一のことが、これだった。体は動 かなくなっているけど、きっと耳は聞こえているはず。だから、自分が面白い話をしてや れば、友香は喜んでくれる。 少しでも友香に楽しい話がしてやれるように、牧人は一日に全神経を集中させた。朝、 家を出て駅へ向かう道すがら。電車の中。会社での同僚の会話。あらゆることを詳細に観 察し、そこから友香が好きそうな笑い話を掬い上げる。相当な精神力と体力が必要になる 作業だったが、友香のためにと、牧人はこの作業を一ヶ月もの間続けていた。 今日もまた、妻のために仕入れたお話を、牧人は語りだす。 ベッドの上の友香は、どんなに愉快な話をしても笑ってくれることはない。返事や相槌 もしてくれない。けれど、友香は喜んでくれているはず。そう信じて――いや、確信して、 牧人は一日の出来事を話した。
455 :
箱の中(4/4) ◆23s5J0VAck :2007/11/25(日) 11:39:30.85 ID:NtWSYOio0
漂う腐臭は気にならない。落ち窪んだ妻の眼窩がたたえている薄闇も、牧人の目には映 らない。腐敗した妻の左手を、構わず牧人は握っていた。 全てを語り終えた牧人は、立ち上がり妻の体を見下ろした。腐朽した妻の体は、現実か ら四角く切り取られた牧人の脳内には映し出されていなかった。 「おやすみ、友香」 部屋に蓋がされ、牧人の一日が終わった。 おわり
456 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 11:53:48.63 ID:OKIMXe8UO
ほ
457 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 12:06:20.66 ID:7IzfTnYT0
>>448 おーそれそれ、って芥川なんて一文字も出てきてないやゴメン
批評のことなんだけど、自分もそういうナンセンスな目で自分の作品見てる気がして
なんでもかんでもすぐ自分に合わないと批判的に見ちゃうもんだからちょっとぐっときたんだ
ありがとう
458 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 12:18:47.79 ID:vTyx4xGT0
OMOITUKANE〜
459 :
【品】SKY-HIGH RENDEZVOUS(0/5) ◆wDZmDiBnbU :2007/11/25(日) 12:27:41.95 ID:JpdDWCPF0
品評会用、投下します。 第86回週末品評会 投稿作品 お題:『空想』 タイトル:『SKY-HIGH RENDEZVOUS』 総レス数:5
460 :
【品】SKY-HIGH RENDEZVOUS(1/5) ◆wDZmDiBnbU :2007/11/25(日) 12:28:42.81 ID:JpdDWCPF0
戦略性が足りない。 雑誌にそう書いてあったから、それだ、と思った。他に思い当たるフシなどなかった。愛嬌 も女らしさもテクニックもたぶん足りている、でも戦略性が不足しているのだから仕方ない。 そんな蠍座のB型であるところの私にも、戦いを余儀なくされる季節がある。人生で二十六回 目の、勝負のとき。猶予はもう、なかった。 イエス生誕まで一ヶ月。 単独飛行には危険すぎる夜。僚機の援護無しには生還も覚束ない。事実、去年は大変だった。 孤軍奮闘。絶望と諦観の中で、気付けば撃墜していたケーキ一ホール。その結果、全盛期を過 ぎた私の肉体には、予想以上のGが加わった。規格外の超重量に、私はブートキャンプからや り直す羽目になった。ひと夏を犠牲にしたものの、でもビリーには、感謝している。 数値は四十キロ代まで回復、職服にもいくらかの余裕ができた。しかし、年齢まではそう上 手くいかない。ビギナーズラックだけで生き延びられる、そんな季節はとうに過ぎた。ここか ら先は、消耗戦になる。ブリーフィングは終了――私は、雑誌を閉じた。同時に、時計の針が 動く。定時が、告げられた。 ――第八十六回BNSK週末品評会 【空戦 SKY-HIGH RENDEZVOUS】 2007/11/24 18:00:00 新宿区市谷加賀町 〔残時間:726h 00m 00s〕―― オフィスビルを出て、十分とかからない。小さな公園で待っていたのは、営業二課の有島く んだ。二十七歳、水瓶座のA型。この職場では私と一番歳が近い。そして本来なら休日出勤に あたる今日、彼に残業はなかった。私は髪を掻き上げて、できる限りの申し訳なさそうな顔を 作る。“ごめん、待ったかな”。“着替えるのに手間取っちゃって”。 「いや、そんなでも」 冷え切った体をかき合わせて、でも少しホッとした様子の有島くん。待たせる時間は十五分 ジャスト、それよりも遅くても早くてもいけない。"でも寒かったでしょ”、という問いに、 「うん、まあ」と鼻をすすり上げる彼。間合いは、まあまあだ。じゃあ早く行こう、と棚上げ くらいは、充分通る。歩き出す二人の間は、一メートルもない。それをゼロにするまで三十日。 夕食の約束を取り付けたのは、全くの偶然だった。 およそ九時間前のこと。なんで土曜日に会議なんてするのか、しかもその準備をなぜ総務課 が。そんな愚痴よりも、もっとどうにもならない問題があった。ビリーの訓練プログラムは文
461 :
【品】SKY-HIGH RENDEZVOUS(2/5) ◆wDZmDiBnbU :2007/11/25(日) 12:29:25.39 ID:JpdDWCPF0
字通り地獄で、さらに独自の食事制限を加えたせいか、私の腕では机が持ち上がらない。そこ に現れたのが、有島くんだ。一見頼りなさそうなその腕は、しかし十分に男性だった。 お礼におごるはずの昼食。その時間が合わないのはわかりきっていた。だから――と、そこ まで理由をつけて、ようやく筋道が見えてきた。彼に恋人がいるという話は聞かない、それが 真実だとしたら。強引に約束を取り付け、そして彼は十五分間待機した。答えは、出た。 彼との距離は、一メートルもない。でも、ロックオンにはまだ遠い。 「寒いから、ラーメンがいい」 それを断るだけの装備はない。机を運んだお礼、その建前上、あまり高いものは不自然だ。 今はそれでいい。残された時間を、フルに使うこと。焦りが、戦略を台無しにする。 豚骨の湯気に、予想通り私のメガネが曇る。彼の笑い声に、少しずつ、近づく。 ――2007/12/1 19:00:00 豊島区池袋 池袋駅付近 〔残時間:557h 00m 00s〕―― “本当は、いっぺん来てみたかった”。 遠慮なんてものは、他の理由で簡単に取り除ける。クリアになった視界に、運ばれるのはグ リーンカレーとトム・ヤム・クン。少し緊張した様子の有島くんは、思った通りの質問をする。 「今日はメガネじゃないんだ」 え、と一拍。変かな、と俯く。「そんなことはないよ」と、気の利くタイプとは言えない彼 から、その先まではまだ引き出せない。でも、いいペースだ。下戸の彼に、ビールを無理に勧 めるのは厳禁。でも、“それじゃ私も飲めないし”と、あくまで冗談ぽく。グラスが二つ運ば れる。揺らめくキャンドルの炎に、いよいよ機影を捉える。ここからだ《TALLY-HO》。 「わりとお酒とか、飲む方なの?」 有島くんのその牽制に、んー、と、考える仕草。“久しぶりかな”。“楽しいときだけ、特 別”。いままで遠慮がちだった彼の、その射程範囲内に、私を収める。戦略性はきっと、まだ 足りない。タイ料理に汗をかいて、少し薄着になるくらいの無自覚。お酒を飲んで、いつもよ り大胆に笑い合う。そこまではまだ、ポジションの奪い合いに過ぎない。 慣れないコンタクトを、薄く積もった雪の中に落とす、帰り道。 凍った雪の夜道を、視界もなく、ヒールで歩く。ふらつくのは、酔いのせいだけでないから。 彼にとってもごく自然に、一メートルがゼロになる。指先のエンゲージ。探り合いは続く。タ クシーを止めて、家の前まで。接触した影が、また離れる。見慣れたいつもの部屋に一人。ベッ
462 :
【品】SKY-HIGH RENDEZVOUS(3/5) ◆wDZmDiBnbU :2007/11/25(日) 12:31:28.33 ID:JpdDWCPF0
ドに身を投げ出して、しばらく待つ。冬の空にもつれ合う思惑。軌跡を描いて、電波が飛ぶ。 “今日はごめんね。でも楽しかった、ありがとう”。 携帯電話のメモリ、そこから呼び出す英字の羅列が、十一桁の数字に変わった。 ――2007/12/13 21:20:00 北区赤羽二丁目 某所 〔残時間:266h 40m 00s〕―― 情報が不足していた。 違う。シークレット・エリアまで辿り着いた。そう前向きに捉えなくてはいけない。いまさ らターゲットの変更はきかない。すでに電話は日課になっていた。“有島くんって、どんな女 の子がタイプ?”。少し強引に踏み込んだその空域には、予想外のものが待ちかまえていた。 「くのいち」 ――蜃気楼を見ていた。 時間がない。作戦の変更はきかない。装備がない。どうにかするしかない。行きの燃料しか 積まなかったことを、迂闊にも後悔するところだった。半ば動揺したまま通話を終えて、呆然 とベッドに視線を投げる。枕元には、あの雑誌。占い師ジョアンの警告が、蘇る。 戦略性が足りない。 まだ、終わったわけじゃない。それに、なにも間違ってはいないはずだ。ただ少し、情報が 不足していただけのこと。テーブルの上のMacBookを開いて、キーボードに文字を躍らせる。 足りなければ、補えばいい。逡巡のあと、押下される――「検索」ボタン。 ネットの海は広大だった。 由美かおる、などという甘い認識はすぐに消えた。弾幕のように押し寄せる、九十三万の検 索結果。青から紫へ、全てのリンクを撃墜してゆく。狂っている、そう思う感覚さえおぼろだ。 想像を、越えていた。妄想ですら、追いつかない。確かに現実と分かたれた、果てのない青 空が、今、目の前にある。それでも、クリックは止まらない。 その行為の無意味さに気付き、Macの電源を落としても。部屋の明かりを消して、ベッドに 潜っても。心に青空だけが残る。夢の中で、それを見上げる。 翼を恐れたのは、初めてのことだ。 ――2007/12/20 12:45:00 新宿区市谷加賀町 〔残時間:107h 15m 00s〕――
463 :
【品】SKY-HIGH RENDEZVOUS(4/5) ◆wDZmDiBnbU :2007/11/25(日) 12:32:01.70 ID:JpdDWCPF0
情報が錯綜し、真実はエアポケットの中。そんな絶望的な、戦況。 昼休み。少し遠くのパスタのお店に、私一人。なにが正しいのかわからない。手にした文庫 本は、山田風太郎。これが正解だとするならば、もう好みのタイプという次元の話じゃない。 というか、間違っている。いろんなものの使い方が、違いすぎる気がする。 着信音。個別に設定したこの音は、間違いなく、彼からのメール。文面を見て、確信する。 退けない。たとえこの先がわからなくても、もう戻るわけには、いかない。文庫本を閉じて、 すぐに返信する。その日は空いてるよ、と、絵文字付きで。その返事は、すぐに来た。 『 じゃあ二十四日の夜七時に。場所はまたあとで!( ゚∀゚)o彡゜ 』 彼が来る。真正面から、全開で。誘いに乗ったのは、どちらだろうか。もうそんなことは、 どうでもよかった。ロック・オン。戦略通りのはずなのに、でもアラートは鳴り止まない。一 人で過ごすことを恐れた、もうそれだけじゃないなんて、なぜそうなるのかが理解できない。 気付けば見つめていた、携帯電話。それを閉じて、ポケットにしまう。代わりに取り出した 手帳の、あの日付の下が、埋まる。描かれた照準は、なぜかハートの形をしていた。この歳に なって、考えられないことだ。覚悟を、決める。もう手段を選んでいる余裕はなかった。彼の 理想に少しでも近づく、その戦略に全てを賭ける。あとは、準備が間に合うかどうか。 Xデイまで、あと少し。自信は失速しても、脈拍の急上昇は、止まらない。 ――2007/12/24 20:30:00 某ビル9Fレストラン〔残時間:003h 30m 00s〕―― 見上げることしかできなかった、小さな空の中に、二人。 一人じゃない。例年の屈辱を、今年は味あわずに済んだ。少し贅沢な料理と、有島くんの笑 顔。当初の目的は、もう果たされたはずだった。仮にその先を望むにしても、慌てる必要はど こにもなかった。あとは、帰投するだけ。戦略に従うなら、それ以外の選択はあり得ない。 ジョアンの言うとおりだった。蠍座のB型には、戦略性が足りない。 建物を出て、タクシーを待つ。ふらつく足下は、酔いのせいじゃない。それどころか、意図 すらしていないことだった。とにかく、寒い。この冬一番の寒波、と、確かにTVは言ってい た。でも、原因はそれだけじゃない。あまりにも頼りない、狐歩き《FOXTROT》。心配そうに 私の肩を抱く、有島くんのその大胆さ。望んだはずなのに、でも怖い。 当初の計画では、私は彼の好みのタイプになっているはずだった。でも今、その自信は全く ない。やれるだけのことは、やってきた。見えない努力も積み重ねた。その時点で、もう戦略
464 :
【品】SKY-HIGH RENDEZVOUS(5/5) ◆wDZmDiBnbU :2007/11/25(日) 12:32:48.33 ID:JpdDWCPF0
なんて消えていた。そしてそのおかげで、底冷えする体の、震えを抑えることが、できない。 タクシーに乗っても、まだ寒い。運転手がなにかを呟きかける。内容はわからなくても、で も動揺しているらしいことだけは、わかった。今の私は、傍目にも相当な状態なのだろう。 病院へ、と言いかける、有島くんの言葉を遮る。それだけは、とすがっても、でも彼は困惑 するばかりだ。やむなく私は、理由を告げる。タクシーの目標地点が、変わった。 狭い裏路地。ところどころに、小さな看板が妖しく光る。空室が見つかったのは、運がよかっ た。担がれるようにして、タクシーを降りる。照明を抑えた室内には、大きなベッド。そこに 倒れ込んでも、寒さは消えない。別の震えまでもが、私を襲う。アンコントローラブル。 普段の彼からは想像もつかない。乱暴とも言える勢いで、脱がされていく私の服。セーター を放り投げたあたりで、彼の手が止まった。薄目に見た彼の顔は、もう表現のしようがない。 「こんなの、どうやって脱がすんだ」 それは、そうだ。私自身、どうやって着たのかも憶えていない。とにかく、必死だった。少 しでも、彼の望む「私」に近づくために。約束を交わしたその日の晩、私がネットで注文した のは、他でもない。彼の本気を誘導する、そのための最終兵器。 本格、本物、と銘打たれた――くさりかたびらだ。 冬の冷気を吸い込んで、完全に冷え切ったそれを、彼が脱がす。複雑すぎる構造に、いくら か手間取りはしたものの――私はようやく、冷たい鉄の檻から解放された。礼を言うべき、そ んな場面だったと思う。でも私には、彼と目を合わせることが、できない。 この選択は、正しかったのか。それとも間違っていて、そして幻滅されたりしないだろうか。 それを訊ねるのが、怖かった。それでもどうにか、おそるおそる目を開けて、彼の表情を伺う。 目が合った、と思ったのは、明らかに気のせいだ。彼の視線は、どう見ても、少し下。 「で、でけえ……」 ゴクリ、という音が聞こえてきそうなほど。彼は素直で、そして正解を示していた。確かに 私は、着やせする方ではあったけれど。でも、好みのタイプよりも、結局は――それか。 悪い気はしない、そう思う自分も、きっと素直なのだろう。彼の首に手をかけ、引き寄せる。 特に意味も意図もない。呼吸ができなくても、もう知らない。とにかく、今の私に重要なのは。 触れ合うこと《BULLSEYE》。その肌の、温もりを追いかけるだけだ。 ――第八十六回BNSK週末品評会 【忍空 SKY-HIGH RENDEZVOUS】 2007/12/24 24:00:00 都内某所 〔残時間:000h 00m 00s〕 OVER ――
465 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 12:33:55.76 ID:JpdDWCPF0
以上です。慣れないことはするものではない。なんかもう、あれだ。 人も少なそうですので、これから自分でまとめてきます。失礼しました。
466 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 12:44:44.63 ID:JpdDWCPF0
467 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 12:49:32.11 ID:mLktPURD0
468 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 13:14:44.77 ID:9Qb+dzj5O
落とす
469 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 13:40:04.82 ID:uEobEcCbO
おーら
470 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 13:50:20.85 ID:wueu3X/t0
h
471 :
◆5GkjU9JaiQ :2007/11/25(日) 13:56:54.50 ID:9Qb+dzj5O
品評会作品投下するよ 多分3レス
472 :
【品評会】背中 1/3 ◆5GkjU9JaiQ :2007/11/25(日) 13:58:20.60 ID:9Qb+dzj5O
走る、走る、走る。 肺が熱い。足が重い。呼吸に掠れたうめきが混じる。 それでも、走る。――走る。 俺って、こんな格好悪かったっけな。曇り空が、やけに鬱陶しい。風が冷たい。そりゃ冬だもんな。 くそ、汗が目に入りやがった。ぎゃあぎゃあ周りがうるせえ。黙って見てろ。 あれ、そういや、俺、走る時、こんな、考え事、してたっけ―― 無意識の内に、あの背中を探していた。 視界の左に、青いユニフォームが見えた。心臓が、大きく跳ね上がる。 誰だ。駄目だ。やめろ。 肺が限界を訴える。足が上がらない。悲鳴に似た音が、喉で鳴り始める。 その青いユニフォームの姿がはっきりと視界に割り込んできた時、自分の中で何かがぽきんと折れるのが分かった。 「入江」 ロッカーの前で汗を拭いていると、コーチが部室の入口に立っていた。 「はい」 「何で、棄権した。別に体調が悪そうには見えないが」 無言で視線をロッカーに移す。 「あの原島が居なきゃ、張り合いがないか?」 原島。中学時代から、ずっと競り続けてきた相手。 ――正確には、常に俺の前を走っていた相手。 「……違います」 掠れた声で答える。顔を露骨に背ける。 コーチは間を置き、溜め息混じりに続ける。 「ともかく、気持ちに整理をつけろ。もう原島はトラックに居ないんだ」
473 :
【品評会】背中 2/3 ◆5GkjU9JaiQ :2007/11/25(日) 13:59:40.94 ID:9Qb+dzj5O
前は単純だった。原島が一番早く走っていれば良かった。つまり、俺はただ原島の背中を追い掛けていれば良かった。 けれど、原島はもう走れない。だから、俺が一番早く走らなければならない。 走るのが息苦しくなったのは、多分それからだろう。原島の居ないトラックで、俺は何を追えば良いのだろう。 「だっせぇ」 ケタケタと笑いながら、背後で原島が言った。俺は黙ったまま、うつ向いて手摺を持っていた。 「もう辞めちまえよ。リタイアなんて、最低じゃねえか」 「それもいいかもな」 そう答えると、車椅子がコンクリートをからからと踏みしめる音が聞こえた。 眼下で、救急車がサイレンを鳴らして発車して行った。 原島は俺の横に並んで、こちらを挑発的に見上げる。 「マジで言ってんの?だったら死んだ方がいいよ、お前」 俺は原島に視線を向ける。 「だせぇつってんだよ。半端な走りしか出来ねぇ癖に、俺と肩並べた気になりやがって」 反射的に、車椅子を思いきり蹴飛ばしていた。 倒れた車椅子の車輪が、からからと無機質な音を立てている。 原島は仰向けに倒れ、しかしそれでもこちらを見てニヤついていた。 「一生、俺のケツを追っかけてろよ」 体が沸騰したように熱くなった。 馬乗りに飛び付き、殴る。何度も殴る。 しかし幾ら殴っても、原島は馬鹿みたいに笑っていた。構わず俺は、殴り続けていた。 ――気付くと、俺は騒ぎを聞き付けたらしい巨躯の看護師に地面に抑えつけられていた。 「甘えてんなよ、入江」 空を仰いだまま、原島が震える声で言った。 遠くで、サイレンが鳴り続けていた。 「お前は、まだ走れるじゃねえか」
474 :
【品評会】背中 3/3 ◆5GkjU9JaiQ :2007/11/25(日) 14:00:42.97 ID:9Qb+dzj5O
シューズの紐を固く結び、立ち上がる。 冬の夜の静謐な空気がグラウンドに張りつめていた。 目を閉じ、深呼吸して思い描く。今はもうない、あの背中を。 結局、抜けなかった。いや、抜こうともしてなかったのかもしれない。 思い描く背中は、もう現実にはない。空想は現実に結びつかない。 だけど、俺は走るしかない。 背中はそこにある。だから、俺はそれに喰いついていかなければならない。 目を開き、白い息を吐き出しきる。そしてゆっくりと、走り始める。 空想となった背中の向こうに、辿り着く為に。 ―了―
475 :
【品評会】背中 ◆5GkjU9JaiQ :2007/11/25(日) 14:01:48.81 ID:9Qb+dzj5O
うい、お疲れ様です。 批評感想随時受け付けておりますよ んじゃセルフでまとめて来ます
476 :
アルバート氏の相続人 ◆cwf2GoCJdk :2007/11/25(日) 14:16:58.61 ID:DsyHMnWi0
品評会投下します 5レス
477 :
アルバート氏の相続人 1/5 ◆cwf2GoCJdk :2007/11/25(日) 14:17:45.68 ID:DsyHMnWi0
某日、アルバート三世死亡。享年七十六歳。同日、机の引き出しから遺書を発見。 『私ももう長くないだろう。――中略――財産はすべて、執事のフリッツ、近侍のグレッグ、ルイーズ、奉公人のフランツ、アデール、カトリーヌ、長年私に付き添ってくれたこの六名に譲渡する――略――』 ※ 「ああ、なんてこと!」 そう言ったのは青い眼が魅力的なカトリーヌだ。 「もう、どうしたらいいのか!」 彼女に密かに想いをよせているフランツが諭す。 「大丈夫だよ。何とかなるよ。大丈夫……」 森林に囲まれた館のなか、アルバートの従者たちは大広間に集まっていた。アルバートに家族はなく、彼の死にもっとも衝撃を受けたのは彼ら召使いだった。 その莫大な財産の分配という名目なのだが、そんなことは誰一人考えていない様子だった。特にカトリーヌとアデールは両親を亡くし、路頭に迷う寸前のところを引き取られ、アルバートを実の父のように慕っていたので、その胸中は察してあまりあるところがあった。 「身寄りのない私たちをあの人は……」 という憔悴しきったアデールに皮肉屋のグレッグが言う。 「感傷に浸るのもいいけどね。早いとこ考えた方がいいんじゃないかな? つまり、これから僕たちがどうするのか」 フランツがグレッグを睨み、何か言いかけたが、フリッツに制止された。一同を見渡して、 「アルバート氏は自分の死を薄々感じていたらしく、生前の問題はほとんど精算していた。僕らがすることなんて、ほとんどない。彼を弔うこと以外は。だけど問題はだ、」 演出効果のために一呼吸置くと、フリッツのリーダー気取りの態度や、回りくどい話し方に心底うんざりしているルイーズが、 「私たちがどうするのか、でしょ? 面倒くさい言い方しないでくれます?」 むっとした様子のフリッツを無視して続ける。 「私はここから、つまりこのお城みたいなとこから、出て行くなんていやです」 これには全員が同意したが、すぐさま、グレッグがいつものにやにや笑いを含ませていった。 「主人のいない従者がなにをするんだろうな。ここにいる奴らはほとんど全部、召使いの根性が染みついてるんだぜ? 他のお偉いさんへ衣替えするのがいいんじゃないか? それがいやなら、そうだな、一生食う分には困らないしな」 フランツが怒ったように、 「俺はここから出て行くのも、ここにいる五人以外と働くのも嫌だぞ」 「あなたはシズクと離れたくないだけでしょ」 ルイーズが呆れたようにそう言った。シズクというのはカトリーヌの別名で、彼らはこちらの名前を好んでいる。 フリッツが両手を挙げた。 「勝手なことばかり言うのはよしてくれ。城から出たくない、働かないのも好ましくない、ここにいる人間が欠けるのも嫌だ、じゃどうしようもない。気持ちはわかるが、これじゃあ、『アルバート氏に代わる主人をつくらなきゃいけなくなる』」 フリッツに視線が集まった。彼は何が何だかわからず、きょろきょろと右へ左へ目線を動かす。 「それだ!」
478 :
アルバート氏の相続人 2/5 ◆cwf2GoCJdk :2007/11/25(日) 14:18:56.11 ID:DsyHMnWi0
と、フランツが机を叩き、アデールが、「なるほど」と感心したように呟いた。口々に「その手があったか」などの声が漏れてくるので、フリッツはとうとうわけがわからなくなった。 「何だって言うんだ! まさかどこかの貴族に、「ここに住んで下さい。私たちが従者です」とでも言うのか? ばかばかしい!」 ルイーズが馬鹿にしたような口調で、 「そんなわけないでしょう……だから、フリッツが自分で言ったように、つくりだすんですよ」 「おい、まさか君たちは唯我論者なのか?」 グレッグも続いて、 「あのな、フリッツ。僕たちが、主人をつくりだせないという理屈が、いったいどこにある?」 放心したように口を半開きにして首を傾けているフリッツを無視して、彼らは議論し始めた。 下男たちの朝は早い。誰よりも早く起床し、睡眠の妨げにならぬよう、しかし迅速に料理、洗濯、掃除をこなす。 カトリーヌが作った料理を食べたい気持ちを押し殺しながら、フランツは主の部屋へ向かう。 いつものように扉の前で息を整えて、きっかり三度、一定の間隔でノックをする。 「朝食です。『エドワード様』」 「うむ」と低く、落ち着いた声が返された エドワードという名前に深い意味はなかった。いかにも貴族を思わせる名前であればよかったのだ。彼らは完璧な主を求めた際、第一に外貌を重視した。 アルバートは考えられないほどの好人物で、誰からも尊敬されるようだったが、小さな眼と不格好な鼻はとても凛々しいとは言えず、なにより年を取りすぎていたのが、口には出さずとも彼らには不満な点だったようだ。 そこで若すぎず、老けすぎず、を満たす年齢を考えに考え、結果三十九歳に落ち着いた。六人の誰と比較しても十以上の年齢差があったし、また、「魅力的に見える範囲」でもあったようだ。 エドワードはときに衒学趣味すら思わせるほど礼儀に重んじ、服装はいつでもキチンとして、整えられたブロンドの髪とキリっとした目元からは知性の輝きを感じさせる。そして(彼らにとってはここが肝心なところとも思えるが)必要以上に従者の手を煩わせない、そんな男だ。 まさに『完璧』な主ではないか。なにせ「自分たちの創造物」なのだ! エドワードはたとえ卵焼きが焦げていても文句すら言わず、それどころか「そんなにも忙しかったのか。気づいてやれずにすまない」と皮肉のような気だてでアデールやカトリーヌを恐縮させるのである。 さらにあろうことか、『従者達があんまり大変だから』という理由で通常なら下男・下女がやるべき仕事すらも進んで(彼らの仕事がなくなってしまうほどだ)やってしまうのである。 どこからどうみても『完璧』であるが、彼らの失敗はここにあった。エドワードは『完璧な人間』であったが、従者達の担うべき役割すらもなくしてしまったのだ。彼らは悩んだ。エドワードは完璧であるが故に『完璧な主』ではなかったのだ。 だからといってエドワードに少々「だらけた」部分を加味しよう、などということは不可能であった。なぜならエドワードの存在は、いまやかなり強固なものとなっていたからだ。そしてエドワードを一度消してしまおう、などというのもできない相談だった。 一度エドワードの存在を消してしまっては、いやそれどころか『そのような発言を誰かがしただけで』彼の存在はものすごく希薄なものになってしまうだろう、というのが散々に繰り返し議論された上で培った定説であった。 そして(なんと問題はまだあるのだ!)なんとも不運というか、カトリーヌがエドワードに恋心を抱いてしまったのだ。これには誰もが閉口した。フランツが悲しみに打ちひしがれたのは言うまでもない。 「早まったことはしてくれるなよ」とグレッグは口癖のように言った。 それでも恋する乙女の心象は複雑なもので、膨らんだものを内包できるはずもなく、ついに爆発してしまった。彼女はエドワードの寝室に行き、愛の告白をし始めたのだ。 そして幸か不幸か、エドワードが人間的に完璧であったために(なにせカトリーヌはまだ少女なのだ)、彼女の求愛を受け入れることはありえなかった。彼は優しく諭すのだが、ついにカトリーヌは我を忘れて自らの主に歩み寄っていった。 その勢いづいた足を止めることができたのは奇跡的ともいえるだろう。彼女は最後の自制心に止められたのだ。
479 :
アルバート氏の相続人 3/5 ◆cwf2GoCJdk :2007/11/25(日) 14:20:27.57 ID:DsyHMnWi0
『抱擁などできるはずがない!』 カトリーヌはほぼ茫然自失の状態で、緊急会議に出席した。グレッグがいつもの調子で、「困ったことをしてくれたね」というと、ルイーズが受けた。 「そんな言い方ないでしょう。どうあれシズクは思いとどまれたんですから」 「そうだ。彼女は悪くない」 フリッツはそう言ったフランツがやけに嬉しそうなのは気のせいだと思うことにして、 「確かに浅薄な行動ではあったろう。気をつけてくれ。……まあもう大丈夫だとは思うが」 アデールが眉をひそめて、 「でも他の問題もあるよ。あの……エドワードの」 一同からため息が漏れた。実際のところ、カトリーヌの素行よりも、完璧なエドワードのほうが手に余る状態なのである。彼らは黙ってしまった。 それぞれが考えを巡らせていると、沈黙を守り続けてきたカトリーヌが口を開いた。 「あの、わたし、もう――」 「おい、まさか――」とグレッグ。 「ちょっとシズク――」とルイーズ。 緊張が張り詰め、 「わたしもう、エドワード様なんかいなくてもいいです!」 「ああ! もう駄目だ!」と誰ともなく言った。次々に、「終わりだ!」「すべてが水の泡に!」との悲壮感溢れる声が響いた。 「どうしてくれるんだ!」とグレッグが怒鳴ると、 「なんの騒ぎだ?」 唖然とした表情の従者達を、不思議そうな表情のエドワードが見つめていた。 もはやエドワードは疑えない存在になっていた。六人の内一人が否定の言葉を口にした程度では、彼らの想像力に打ち勝てなかったのである。六人だからこそ起こったことと言えるだろう。もしも創造したのが一人だったならば、エドワードは消失していたはずである。 つまり、『自分以外の人間も見ている』から、『疑えなくなってしまった』のである。自分一人ならばたとえば『気の迷い』などで片付けられたであろう。忘れてしまうこともできただろう。彼らが強固に、六人で一人を作り上げてしまったための悲劇(あるいは喜劇?)だ。 そしてなにより、カトリーヌも含めて、エドワードに消えて欲しい、などとは誰一人思っていなかったのである。 哀れな従者達はほっと胸をなで下ろしたが、同時に「エドワードをどうすることもできない」という確信もできてしまった。 壮絶な論戦の末に、彼らはもう一人の人間、アリスをつくりだした。アリスはエドワードの婚約者である。アリスは集中力散漫で、召使い達をこき使うような女だが、容貌は美しい、とそんな女だ。 これによってカトリーヌの恋と、六人の『暇』が解消されるだろう、というなんとも幼稚というか、単純というか? 浅はかさを肌で感じられるような考えで、事なきを得るだろう、と予想したのである。 「確かに浅慮のようだがそれでも」という言い訳を前提にして、「有効ではあるだろう」と決着したのだった。 しかしここでも彼らは失敗した。エドワードはアリスに、全然興味を持たなかったのである。ただ婚約者であるだけなのだった。いや、たとえ彼女を『妻』にしていたとしても、エドワードは「妻は妻だが、それだけのことだ」という態度を示しただろう。
480 :
アルバート氏の相続人 4/5 ◆cwf2GoCJdk :2007/11/25(日) 14:21:50.38 ID:DsyHMnWi0
カトリーヌの恋の炎が再び燃え上がり、フランツの嫉妬が表面化するだけには留まらなかった。フランツとは違い誰にも知られてないほど密かに、アデールが好いているグレッグが、アリスに夢中になってしまったのである。 といってもグレッグが夢中になっているのは、アリスの詳細を考える際に彼がこっそりと(それほど一人の想像力というのは影響を及ぼすのだ)『付加』していた、美しい手指なのである。 グレッグは元々はルイーズの手を好んでいた。美しい指の関節ときめ細やかな皮膚は、アリスに負けず劣らずだろう。 ただし彼に言わせると「タイプが違う」ようで、長らく観察していたルイーズのそれとは違い、アリスの手は、例えるなら毎日ステーキを食べ続けていた男に対するフォアグラのようなもの、らしい。 そんな彼の趣向は毛ほども知らないアデールは、アリスとルイーズに嫉妬しながら、悶々と夜ごとうなされるのである。 さらにルイーズはアリスにこれまたこっそりと、「レズビアンの気がある」という性癖を付けていたので期待に胸が膨らんでいたのだが、「自分に気がある」とするのを忘れていたので、アリスはカトリーヌに色目を使い始めてしまった。 そしてそのカトリーヌはアジア風の濃い顔つきで、粘着質な性格のフランツを面には出さずとも嫌っていたのだった。 彼らの恋の糸はもつれ合うのだが、フリッツだけが蚊帳の外であることに気づかれたと思う。だが安心して欲しい。愚かな従者たちはまた過ちを犯すのだから。 なんとかエドワードがアリスに興味を持つようにと『五人』は思うのだが、一向にその気配がない。エドワードの性格からするともはや当然のことでもあった。 そこで一つの考えに思い至った。興味のあるなしはこの際、関係ないのではないか? むしろ大事なのは『既成事実』なのではないか? その結果、なんともはや愚かしいこと極まりないことであるが、彼らは子女をつくりだしたのである。そしてその中でもより愚かしい部類の人間が(たとえばフランツ)、二人を青少年にしてしまったのだ。 こうなるともはや混沌は避けられない。 小さな身体に大きな目を持つ息子、コールはフランツの「お遊び」でゲイになり、フリッツへそれが向いた。 長く真っ直ぐな脚と黒髪の娘、フィリスはフリッツの「まともであってほしい」という願いによって、その年代の少女としてはごくごくまともに、恋をした。フリッツに。 これによって兄妹の諍いがあったことは言うまでもないことだろう。問題はそんなことではなく、それぞれの感情のもつれなのだ。 一向に自分に振り向いてくれないカトリーヌに腹が立ったフランツは、アデールへそれを向けようとし始めたが、当のアデールは一途な女性なので、ころころと考えを変えるフランツを糾弾し始めたのである。 それにもめげずに別の恋を探そうとしたフランツは、残ったのが高飛車で嫌いなルイーズと、『幻覚』だけだと気づいて地団駄踏んだ。 グレッグはとうとう、アリスの手を眺めることに飽きてしまった。 「触れない手なんて、模造品の食料みたいな物じゃないか」 しかしアリスの手は間違いなく絶品なので、その美しい手を愛撫できないことに落胆しながらも、『そんなこと』をして消えてしまうよりはいいか、と独りごちるのだった。 カトリーヌは妻子と仲むつまじく暮らしているエドワードに対して、「もう自分の入り込む余地はない、『けれども』そんなことははじめから分かりきっていたことだし、ひょっとするとこの方が、『それ』を勘定に入れなくとも明らかな分、いいのではないか」と考えた。 結論は、『これなら間違いを起こして消えてしまうこともない』
481 :
アルバート氏の相続人 5/5 ◆cwf2GoCJdk :2007/11/25(日) 14:22:30.99 ID:DsyHMnWi0
ルイーズはカトリーヌに嫉妬したが、敏感にそれを察したアリスがルイーズに甘い言葉を囁くので、そんなことは忘れて恍惚感を得ていた。整った顔、美しい手、悩ましさでむず痒くなるような声、すべてが最高! 「グレッグの性癖を、そこに限っては評価してもいいかな」と思った。 フランツにいらいらしているアデールは、グレッグがアリスの傍にいる頻度が減ってきたことに喜んだ。 「グレッグもようやく自分のナンセンスさに気づいたんだ」と飛び跳ねんばかりだったが、またもや彼がルイーズを見つめているのに気づいて、ため息をするのであった。 そしてレズの子供たちにつきまとわれているフリッツ。 「なんとかホモのコールだけでもフランツかグレッグに渡したい、しかし当面の問題は、コールとフィリスがやたらとボディ・タッチしたがることだ、だがしかし、やはりホモだけは勘弁だ……」とさながら苦労人であった。 ところで、彼ら六人のエドワード一家への考えに変化があるのが分かると思う。以前は「否定の言葉を口にしてはいけない」だったが、現在は誰もがそれを気にしていないのである。 そのかわり、「間違ってもスキンシップなどしてはいけない」という共通観念が見られる。「これだけはやってはいけないこと」となっているのだ。 もし一人でもそうしてしまったら、以前とは逆に、その一人が『創造物だということを否定できないがために』崩壊してしまう、というのだ。 先のカトリーヌの「存在しなくてもいい・彼は想像の結果だ」というのに対し、『想像の結果を否定せざるを得なくなる』からだ。 彼らはエドワードらを見つめているときだけ、現実と夢想の境をなくせるのである。仮に夢を夢だと認識しても、夢を失うことはない、だが叩き起こされてしまったら、もうその夢には戻れない、という理屈なのだ。 それはおそらく正しいだろう。フィリスとコールにしても、『ふり』だけで本気ではない。フリッツが恐れていたのは何かの拍子にそうなってしまうことなのだった。 彼らの恋の歯車は複雑になるばかりだ。なんと彼らはこの後、エドワードの孫娘を二人つくりだすのだ! もはや当初の目的すら希薄になって、欠陥を欠陥で埋めるような愚行をしでかしている。これはもちろん六人のもたらしたことではあるが、どうにも責める気にはなれない。 彼らのしていることは、手に入れた玩具を壊れるまで酷使する子供のようなのである。 六人に増えたエドワード家を交えた騒動を書き記すことはよそう。そんなことにはなんの意味もないように思える。 この物語の従者達はどこの誰でもなく、空想の虜になってしまったのだから。 終
482 :
アルバート氏の相続人 ◆cwf2GoCJdk :2007/11/25(日) 14:23:26.66 ID:DsyHMnWi0
以上です 自分でまとめてみます
483 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 14:39:19.44 ID:9Qb+dzj5O
保守だよー
484 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 14:53:54.07 ID:LGmj7+pA0
ホッシュ! ホアッ! ホアアーッ!
485 :
そして少女は歩き出す ◆TtwtmrylOY :2007/11/25(日) 15:01:55.98 ID:W7/jI0ID0
品評会作品投下します 全5レス
486 :
そして少女は歩き出す 1/5 ◆TtwtmrylOY :2007/11/25(日) 15:03:12.97 ID:W7/jI0ID0
『友達ってなあに? 親友ってなあに? 私はあなたの友達でしょうか? 私は未だに良くわからない。 でも、その言葉はとても重い意味を持つような気がして、ときどき怖くなる。 立ち止まることしかできない私を、こうすることしかできない私を――あなたは許してくれるでしょうか』 先日、サヤからの話を聞き、連れられてきたのはこの巨大な邸宅らしい。 建物全体を軽く見渡す限り、古めかしい和風のお屋敷といったところだろうか。大きな門扉が眼前に悠々と立ちはだかっている。 その門は、私達を待っていたと言うかのように僅かに隙間を覗かせていた。 「これは……入っていいのかな」 「構わないわ」 と、至って簡素にサヤは返答する。今となっては、彼女のこんな所に私は不思議な心地よさすら覚える。 サヤより一歩先におずおずと門を潜ると、家まで続く曲がりくねった道があるばかりだった。道脇に植えられた木々は丁寧に剪定さ れており、庭一帯が見事なまでの調和を成しているように感じた。 辺りを一通り見回した所で後ろに居ると思われるサヤへと向き直る。 すると転んだのだろうか、彼女は門の辺りでしゃがみ込み足の辺りを気にしている風だった。 「わわっ、大丈夫?」 手を差し伸べると、サヤはさして大したこともなさそうに、 「大丈夫」 と答え、手を借りずにすっと立ち上がった。 このように、サヤはあまり人の助けに甘えようとしたりしないことが多々ある。また、繋がりを拒絶するというのだろうか、それに 近い印象を受ける。 こうも一人で何でも済ませてしまおうとするサヤには、私でよければ頼って欲しいなどと思ってしまう。 門を過ぎてからはサヤが私の先を行き、玄関前までたどり着いた。 「お邪魔しまーす」 威勢良くサヤに続いて家に上がると、そこには柔和な表情を浮かべる一人の老人男性が佇んでいた。その顔は幾重にも皺を刻み、白 髪は一糸乱れず生え揃っている。 「サヤちゃんじゃないか。お隣はこの間聞いた……」
487 :
そして少女は歩き出す 2/5 ◆TtwtmrylOY :2007/11/25(日) 15:03:44.03 ID:W7/jI0ID0
「ナナセです」 サヤからは事前に伝えたあったようだ。お客様として招待されるだなんて気持ちは浮き立つばかりだ。 「ねえサヤ、サヤ。この間って凄い気になるんだけどなー」 「な、なんでもないわ」 「まあまあそう言わずに、サヤさん頼みますよぉ」 執拗に食い下がる私に、サヤは眉根を寄せるとぴしゃりと言った。 「いい加減にしなさい」 「でもー」 「そんな顔しても私は折れないわよ」 やや慌てた素振りでたしなめると、そっぽを向いてしまった。 「さて。立ち話もこの辺にして。ささ、上がって上がって」 老人に導かれ、しずしずと家に上がりこむ。案内された先は、三人がくつろぐには広すぎるぐらいの和室だった。 ◇ 「それにしても広いですね、びっくりです」 サヤに続いて、連れてこられた客間の座布団の上にぎこちなく座る。ぐるりと周りを見回すと、大きな窓からは陽光が差し込み、ほ のかな温かみを感じさせた。窓一面に青々と広がる庭園は改めて見直しても、感嘆に尽きる。 「あ、そういえば……これ作ってきたんです」 と、サヤが手提げバッグの中からなにやらがさごそと取り出す。 サヤの華奢な指に包まれて出てきたのは、小さな小包だった。 「何々?それは?」 「どうぞ」 私の問いかけを無視して、サヤが開いた小包の中には、形の良いクッキーがちょこんと乗せられていた。 「これってサヤの手作り?」 「そうよ」 「おお、貰ったっ」 「ナナセっ」 サヤ手作りのクッキーを頬張る私に、サヤから言葉が投げかけられる。 私がいささか不服そうな顔をしてみせると、大きな机の向かい側から、老人の陽気な高笑いが割って入ってきた。 「気にせんで良い。そうだろう?」
488 :
そして少女は歩き出す 3/5 ◆TtwtmrylOY :2007/11/25(日) 15:04:39.18 ID:W7/jI0ID0
「でも……」 「いいのだよ、元気なのは良いことだ」 ややきつめの厳格な顔立ちからは想像もつかないほどの快活さに、私は気圧されてしまった。これが年の功というものだろうか、普 段笑顔を見て感じる暖かさとは違った、妙な安心感すら覚える。 これを皮切りにすっかり打ち解けた私たちは、談笑に興じた。 心のどこかで引っかかる、一抹の違和感を抱えながらも。 ◇ 一段落ついたところで、私は唐突に切り出した。 「あの、一つ聞いてもいいですか?」 「うむ、何でも聞くといい。私が答えられるのならば、だが」 「何故ここに移り住もうと思ったのですか?」 質問を投げかけたとき、老人の目は僅かに見開かれ、驚きの色を隠せないようであった。 そして、くつくつと含み笑いを堪えながらこう言った。 「今しがたそれについて話そうか話すまいか――思案していたところなのだ。これで踏ん切りがついたよ」 そう言い、コーヒーカップを傾けて飲み干すと、淡々と続けた。 「この家を見れば分かるだろうが、私は世間一般で言う金持ちなのだろうね。この通り、自負するに恥じないだけの大きな庭もあれば、 大きな家もある。 越してきた当初、これらを見て『金持ちの道楽だ』と漏らす者も少なくなかったそうだ。もちろん、周囲からの罵詈雑言は覚悟し ているつもりだったがね」 老人は一息に話し終え、ひとまず区切りをつけた。 一方サヤは口を開かず、思案するかのように時々目を瞑り、話に聞き入っている。 「失礼かもしれないが、私のような者がここに家を構えたのはとても奇異に見えたに違いない。 なぜなら、他に住む土地など幾らでもあろうにと思うだろう? 私がこのような土地を選んだのは、君たちと、君たちのような人々と話し、笑いあいたかったのだろう」 ゆったりと間をおくと、笑みを絶やさない老人は再び話し始める。 「私は生まれて数十年、仕事一筋だった。仕事に心血を注ぎ、他のことを顧みる暇すら惜しかった。 働きづめた後、私は気づいた。 なんて不毛なのだろうと。妻を、子供を、父母を置き去りに……何もしてやれなかった。数十年前のあの時妻は何と声を掛けてく れたのだろうか。おそらく私を気遣う言葉だったような、そんな気がする。 それでも、妻は不平の一つも漏らさず黙ってついてきてくれた。そして、この家は私からのせめてもの罪滅ぼし、感謝の気持ちだ。
489 :
そして少女は歩き出す 4/5 ◆TtwtmrylOY :2007/11/25(日) 15:05:13.77 ID:W7/jI0ID0
そして君たちと机を挟んで話している。楽しくて仕方がないんだ、世間一般からしてみれば当たり前のことなのだろう? 私には にわかに信じがたい――」 それからコーヒーを淹れなおす為か、老人は席を立った。 どうも話が難しくてつかみどころが分からない。口にクッキーを頬張り、なまじ真剣に話を聞いている私の横で、サヤが大きくため 息をついた。 「どうしたのさ」 「ああもう……」 「だって、言ってる事が難しくて、よく分からないというか」 私がもう一つクッキーを手に取ると、コーヒーを淹れながら老人は呟いた。 「そう、分からなくていいのだよ。その点君たちは幸せだ」 「はい、サヤは私の親友で、今私は――とても幸せです」 そのとき、老人はコーヒーカップを片手に、唐突に噴き出した。 しかし、老人の目はサヤへとまっすぐに注がれている。サヤはどこか覚束ない表情を浮かべ、一種の迷いすら感じさせる。 「サヤちゃんの心配は無用のようだ。はっはっは」 言うと、老人は周りの目をはばかることなく笑いをこぼした。 ◇ 「お邪魔しましたー」 そういい残し玄関を出ようとした矢先、私は老人に呼び止められた。 サヤは靴を履くと、先に出て行ってしまった。 「ナナセちゃん、ありがとう」 老人は、ほんのりと温かみに包まれた言葉を私に投げかける。 「お礼されるような事なんか一つも……」 「そんなことなかろうに、君になら、安心してサヤを……我が孫を任せられる」 「やっぱり、そうなんですね。サヤとそっくりです」 「君は何処までもお見通しのようだ」 老人は微苦笑を浮かべ、やれやれといった風に肩をすくめて見せる。 「だって、驚いたときの表情といい、立ち振る舞いといい。私のいつも見ているサヤと」 「そうか、そうか。 ときにナナセちゃん、サヤはしっかりしているように見えるだろう? 何でも一人でそつなくこなして、近寄りがたい雰囲気とい えばいいのか、厳しい印象を少なからずとも受けたはずだ。
490 :
そして少女は歩き出す 5/5 ◆TtwtmrylOY :2007/11/25(日) 15:05:56.31 ID:W7/jI0ID0
ああ見えて、サヤはとても脆い。自分の弱い部分をさらけ出したくないが為に、頑なに殻を閉ざす一方なのだ。 きつい性格が災いして、昔からサヤには満足に友達と呼べるだけの人が居なかった。 しかし、サヤは本当に変わった。想像もつかないほどに。 君には――本当に感謝している」 感謝の意と共に、老人は手を差し出してくる。私は何も言わず、それに応じた。 「君の手は、こんなにも暖かい。今なら、遠い昔に見失った何かを取り戻せそうな気がするよ。これで余生も長生きだ、はっはっは」 改めて老人と別れの挨拶を交わし、玄関のドアを引く。すると、そこにはサヤの姿が物寂しげに、ぽつねんと立っていた。 サヤは私を見るなり何も言わずにこちらへと歩み寄ってくる。サヤの顔は、淡い夕日を受けて茜色に染まっていたように見えた。 近づいた途端私の手を取り、顔を合わせることもなくすぐさま踵を返してしまった。 「ちょ、ちょっとサヤ」 サヤはぐいぐいと私を引っ張って歩き出す。 「いつまで待たせるのよ、ナナセったらどうしようもないんだから……」 手を掴んだサヤの表情は分からないが、普段と比べて妙にしおらしい。 「えへへ、ちょっと立ち話が長引いちゃって。ごめんね」 「謝らないで頂戴」 「え、そりゃ何で」 「私が悪いの……、ごめんね」 私には、サヤが謝った意味がいまいち理解できなかった。なぜ彼女が私に謝らなければならないのか、釈然としない思いは心の奥底 にわだかまる。 歯がゆい思いを味わいながらも、それでいいのだと自分に言い聞かせる。終わったことは知る必要が無いのだから、と。 そして遠慮がちに、弱々しく私の手を握るサヤの手を強く握り返した。 「弱く握ってるんじゃ離れちゃうでしょ、サヤっ!」 おしまい
491 :
◆TtwtmrylOY :2007/11/25(日) 15:08:27.80 ID:W7/jI0ID0
以上です
492 :
◆faMW5pWHzU :2007/11/25(日) 15:10:36.18 ID:j5rDAI0a0
じゃあつぎ俺な
493 :
クーソーは、頭のコバヤシです。1/4 ◆faMW5pWHzU :2007/11/25(日) 15:13:51.24 ID:j5rDAI0a0
「うっわ……人、多っ」 駅を出て歩き出すと、道は何の祭りかというほどに多くの人でごった返していた。 「そうかね? こんなもんでしょ」 友人が歩を進めながら飄々と言う。 その隣に俺は並び、人のうねりをなんとか抜けつつ言葉を返す。 「いやいやこれはねーよ。ありえねー。いくらお盆だからってもよ」 「あんたさー、世間知らずだからそう思うんだって。もっと色んなとこ行ってみ」 俺は静かに憤慨した。こともあろうに、こいつに世間知らず扱いされるとは。温室育ちの一人っ子はこれだから困 る。甘やかされて育ったせいで、自分ってものを客観的に見れていないのだ。 「オカルトオタクに言われたくねーな。たまには現実的な話をしろってんだ。幽霊だのUFOだのじゃなくてよ」 「あーそうだ、昨日の心霊特集見た? 霊能力者座談会スペシャル」 人の話を聞け。と口に出すのも面倒臭く、俺は相槌を打った。 「ああ、見たよ。胡散臭かった」 「馬っ鹿あんた、あの胡散臭さが本物の証なんだっての! そりゃ全員じゃないかもしれないけど、少なくともあの うちの四分の一は本物だね」 「おまえも毎度毎度、まるっきり根拠のねえことを自信たっぷりに言うよなあ」 じりじりと差す日差しに辟易し、なるべく日陰を選んで壁沿いに歩く。だが皆考えることは同じようで、壁沿いを キープしようとしても自然と人の波に押し出される。また壁沿いへ近付き、押し出される。それを何度も繰り返しな がら、なんとか前へ進む。 「あーもう、ほんと何なんだよこの人は! マジどっかで祭りでもやってんのか?」 疑問というよりは八つ当たりだった。人の多い場所独特の熱気はなぜか無かったが、それはいいとして純粋にうっ とうしかった。 「こいつら普段どこに隠れてんだ? アレか、隠れ家的バーか。それともゆったり収納空間か」 不機嫌な俺に、友人はなぜだか呆れ顔だった。 「あのねえ、あんたこんくらいでんーなこと言ってたら、東京とか行けねっすよ。大げさすぎ」 「大げさってなあ、おまえ……あ、すんません」 横を向いて話していたら前から来た人と肩がぶつかったので、反射的にあやまった。 顔を上げ、相手を見て――――思わず、ドキッとした。 死んだ人に似ていたから。
494 :
クーソーは、頭のコバヤシです。 2/4 ◆faMW5pWHzU :2007/11/25(日) 15:15:03.46 ID:j5rDAI0a0
「ん、どしたの?」 急に立ち止まった俺に、友人が声を掛けてくる。 「いや、べつに」 友人に言葉を返してから向き直ると、既にさっきの人物は人波に紛れて見えなくなっていた。 「ほら、もうすぐそこだよ。早く行こう」 「ああ」 せかす友人に頷きを返す。 「行くよ。さっさと行って、さっさと帰ろう」 俺は本心から言った。 「うわー、草伸び放題」 墓石の周りは思った通り、酷い有様だった。といってもまあ、一時間もあれば綺麗にできる程度だが。 「あー、すごいね」 なんだか呑気に友人が言う。というか、こいつが言うとどんなことでも呑気に聞こえる。 それにしても、こいつは本当にいい奴だと改めて思う。一応面識があったとはいえ、他人の親の墓参りに付き合わ されても嫌な顔一つしないというのは、俺には無理な芸当だ。 こいつに難点があるとすれば、絵空事が大好きなこと。オカルトだけじゃなく、ファンタジーやSFなんかも大好 物である。暇さえあればそんな話ばかりしている。現実主義者の俺にすれば、まったく馬鹿らしいと思うのだが。 そしてそんな空想の申し子のような奴が、またも得意の話題を唐突に振ってくる。 「ねー、幽霊見れたらさあ、楽しいと思わん?」 「思わん」 「いやいや、もうちょい考えてよ。愛を下さいよ。汝の隣人に愛を」 「だってリアリティねーんだもん。幽霊とか」 「あんたはほんまにロマンがないね。愛とロマンのない男。ヒーロー失格ですよ」 「幽霊なんていねーって。だから霊能者も全部ウソ。インチキ。ペテン。サギ」 「まーそう言わずに、例えばね? 例えば、幽霊見えたら何がしたい? あんたなら」 「んー、まあ、そりゃ……母ちゃんに会う、かなあ? とりあえず」 「おー会え。存分に会って抱きついて、そんで思うさま甘えて頭を撫でくり回されてきなさい」 「おまえ馬鹿にしてますよね? 馬鹿にしてますよね確実に」 墓の前に並んでどうでもいい会話を交わしていると、ふと頭の奥底にあった記憶が蘇った。
495 :
クーソーは、頭のコバヤシです。 3/4 ◆faMW5pWHzU :2007/11/25(日) 15:15:36.88 ID:j5rDAI0a0
「……あー」 「ん? なに、どしたん?」 「そーいや母ちゃんが……霊見えるとかほざいてたような気が……」 「うっそマジ!? ちょっとなにそれ初耳! くわしく! くわしく!」 「いやいや、なにその食いつき。それおかしいから」 がっつくような友人の勢いに苦笑しながら、昔の会話を思い出す。 「んー、だから……なんかちょくちょく、今日は霊が多くてウザかったとかなんとか……そんなことを言ってたよう な覚えがなきにしもあらず」 「すごいじゃん! えー、もっと早くに教えてくれればよかったのにー!」 「そんなもん、わざわざ他人に話す馬鹿いねーっつの。それに、マジなわけねーだろ。相手が子供だと思って適当な 事言ってただけだよ」 「んなことないって! それにもしウソでも、そんなん言う人が近くにいるってだけですごいよ! そんな人会った ことないもん!」 「なんかそれ、また微妙に馬鹿にしてねーか……おまえの価値基準がよくわからんけど、とにかく本当なわけねーっ て。あの人、童話に出てくるよーなホラ吹きだったんだから」 「童話に出てくるやうな……その響きにまた、ロマンがあるような気がしませんかね?」 「しませんねー。まったく」 つまるところ、こいつにかかればなんにでもロマンがあることになるのだろう。たぶん本質的には、霊能力者が本 物だろうと偽者だろうと、どうでもいいのに違いない。 「でもさ、もしあんたのお母さんが霊の見える人だったんなら、あんたも見えてもよさそうなもんじゃない?」 「残念でした見えませんー。これっぽっちも見えません」 幽霊なんてたとえ見えたとしても、今の俺にはどうでもいいことだった。もっと大事なことがいくらでもある。 「うーん。霊能力者の彼氏とか、どうやったらできんのかなー」 友人は眉根を寄せて真剣に言った。 そんな彼女に、俺は笑いかける。 「俺なら霊能力があってもおまえとは付き合わんな。なんか、オモチャにされそう」 「うわめっちゃ失礼。丁重に扱いますよ? それはもう高く積み上がったジェンガのように」 「結局オモチャじゃねーすか」 彼女もまた、笑う。
496 :
クーソーは、頭のコバヤシです。 4/4 ◆faMW5pWHzU :2007/11/25(日) 15:16:19.19 ID:j5rDAI0a0
とりあえず、俺にとって最も大事なことの一つとして、こいつを『友人』ではなくしたいのだが。 さて、どうしようか。 「さて、どうしようか」 「とりあえず水汲んでくる?」 「ん、そうしよ」 連れ立って水汲み場へと持参の桶を持っていき、水道を開ける。 桶に水の溜まる間、なんとはなしに先ほど自分達がいた辺りへ目を向けると、そこにはさっきも会った人がいた。 彼女はこちらを見ていた。 暖かく微笑んでいるように見えた。 それに気づいた俺は彼女に向けて、満面の笑みを返した。 (了)
497 :
◆faMW5pWHzU :2007/11/25(日) 15:17:24.83 ID:j5rDAI0a0
ごめんなさい言い忘れたけど品評会作品ですごめんなさい
498 :
【品】空想です(0/4) ◆AyeEO8H47E :2007/11/25(日) 15:26:47.06 ID:3wtGXXAy0
投下しますよ
499 :
【品】空想です(1/4) ◆AyeEO8H47E :2007/11/25(日) 15:27:35.85 ID:3wtGXXAy0
まな板の上に梅干が乗っている。でもそれは、君のせいではない。 君は水平線に似ている。 君は地平線に似ている。 君はいつも僕に百八十度のコペルニクス的転回を想起させる。 だって、君の背中はあまりにも背中そっくり。 嗚呼。 たまには大きなプリンが食べたいな。 僕がこの詩を朗読するのを黙って聞いていた彼女は、「胸が潰れそうなほど悲しいわ」と言い、 僕は、「なるほど」と、答えた。 かくして僕の大冒険の幕は上がった。僕はプリンを求めて旅立つのだ。 しかし家の外には危険がいっぱいだ。 準備を怠るわけにはいかない。怠るわけにはいかないが、しかし僕は箸より重いものが持てない。 僕に持って行けるのは、せいぜいビーフジャーキー一本くらいのものだ。 僕は冷蔵庫を開けて旅の準備を済ませた。とても手短に。 外はよく晴れていた。旅立ちには絶好の日和だ。 僕はビーフジャーキーを地面に立て、そっと手を離す。 ビーフジャーキーはパタンと倒れた。 「西か……」 僕は西へ向かって歩きだした。
500 :
【品】空想です(2/4) ◆AyeEO8H47E :2007/11/25(日) 15:29:09.76 ID:3wtGXXAy0
コンビニエンスストア。 看板には、そう書いてある。便利な……店? ぼんやりとした名前だ。一体何を売っているのか僕には皆目見当がつかない。 一体誰にとって便利なのか。もしそれが僕にとって便利だということならば、この店には目指すプリンが置いてあるか、 あるいはプリンを探すのに役立つ品が置いてあることになる。これは入ってみる価値がありそうだ。 しかし僕は地球上に住む人類の総数を考えて絶望した。 六十億分の一。 この店が僕にとって便利である確率は、六十億分の一。 この店でプリンが手に入る確率はたった、たったの六十億分の一しかない……! というわけで、僕はコンビニエンスストアに入店した。 「いらっさぃあっせー」 カウンターの男が投げやりな口調で僕を迎える。 僕はこの男を知っている。ポール・マッカートニーだ。 右胸のネームプレートの所に「研修中」と書いてある。 「ポール君」 折角なので名前を呼んでみた。 ポールは明らかに内心眉間にシワを寄せて、「あ?」とか言いながら僕にガンたれたいのを我慢しながら笑顔を浮かべて言った。 「何か御用でしょうか?」 「この店にはプリンはあるかね、ポール君?」 「ありますよ」 ポールが指でぞんざいに指し示したコーナーには、たくさんのプリンが並んでいた。 僕は呆気に取られてしまった。こんな簡単でいいのか。 別に、いいか。 僕はポールに言って、プリンをレジまで運んでもらった。プリンは箸より重かった。 家までは宅配便で送ってもらうことにしよう。
501 :
【品】空想です(3/4) ◆AyeEO8H47E :2007/11/25(日) 15:31:33.45 ID:3wtGXXAy0
「百五十円になります」 この展開はまったく予想していなかった。 まずコートの左右のポケットを探り、内ポケットを探る。 ジーンズのポケットもそれぞれ探り、そして最後に祈るような気持ちで右の尻ポケットをまさぐる。 これは……。 ポールはしばらくカウンターの上のビーフジャーキーを眺めた後、僕がそれ以上ポケットから何も出さないことを確認して、言った。 「百五十円になります」 コンビニエンスストアを出ると、そこには老紳士とおばちゃんが僕を待ち構えていた。 全身黒のスーツで決めた、隙のない佇まいの老人。真っ白な頭髪はビシッと後ろに撫で付けられ、身のこなしに色気がある。 ショートカットにパーマという典型的な髪型に、茶のダウンジャケットを着たおばちゃん。どうしようもないほどに普通のおばちゃんだ。 「誰?」 僕は聞く。 「空想です」 「あなたの」 二人は答える。なるほど。 「あなたはどうもやり方を間違えている」 「比喩を比喩のまま捉えている」 「現実を空想と履き違えている」 「現実が空想であるかのように振舞っている」 二人はあらかじめ台詞が決まっているかのように、交互に喋る。 「そっち側でそんなことをしても無駄です」 「なぜならあなたはこっち側の人間ではないから」 「そっち側では比喩はあくまでも比喩でしかない」 「あなたは比喩の意味を汲み取らなければならない」 ここまで喋ると二人はお互いにチラッと目配せをし、声を揃えて言った。 「なぜならあなたは現実の人間だから」 何となく僕は小学校の卒業式を思い出した。
502 :
【品】空想です(4/4) ◆AyeEO8H47E :2007/11/25(日) 15:32:15.86 ID:3wtGXXAy0
「あなたの彼女の胸は潰れてはいない」 「あなたは箸より重いものを持てる」 「コンビニの店員はポール・マッカートニーではない。似てはいるが」 そしてここで、再び合唱。 「あなたが探しているものはプリンではない」 ポカンと口を開けて黙っている僕に構わず、二人は続ける。 「あなたが向かうべきところは、水平線の向こう」 「あなたが向かうべきところは、地平線の向こう」 二人は謎めいた予言のようなことを言う。 「あなたは旅に出る必要なんかないの。帰りなさい」 おばちゃんが優しく言った。やっと普通に喋ってくれた。 しかし言われなくても僕は帰るしかなかった。財布を忘れてしまったのだから。 家に帰ると、彼女は既にベッドで眠っていた。 僕は彼女の隣に潜り込み、囁く。起こさないよう、静かに。 「ごめんね。見つからなかったよ」 彼女の平べったい、水平線のような、地平線のような胸の向こうには安かな寝顔があった。 瞼が腫れぼったい。ひょっとしたら僕が出て行ってからずっと泣いていたのかもしれない。 ごめんね。僕はもう一度囁いて、そっと彼女の唇にキスをした。 そして僕は、彼女の背中のように平べったい胸に頭を預けて、眠りについた。 その夜、僕はプリンの海で溺れる夢を見た。
503 :
【品】空想です ◆AyeEO8H47E :2007/11/25(日) 15:32:47.99 ID:3wtGXXAy0
異常です
504 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 15:39:21.48 ID:j5rDAI0a0
確かに
505 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 15:40:04.59 ID:3wtGXXAy0
サーセンww
506 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 15:44:31.70 ID:DsyHMnWi0
もう十七か…
507 :
ジュピター/イルカたちの歌を聴け 0/5 ◆2LnoVeLzqY :2007/11/25(日) 15:45:17.42 ID:Aaujq2le0
それじゃぁ、カオスを避けるため早めに投下しますか。品評会作品行きます、5レス予定。
508 :
ジュピター/イルカたちの歌を聴け 1/5 ◆2LnoVeLzqY :2007/11/25(日) 15:47:59.17 ID:Aaujq2le0
二十億光年の孤独に 僕は思はずくしやみをした ――谷川俊太郎『二十億光年の孤独』 日常に不満なんてない。今までもなかったしこれからもないだろう。僕は一介の大学生で、目下フランス語のテストに頭を悩ませるような小さな存在だから。 「テストに出る長文って図書館にある本から出るのよ。ホントに。アタシが言うんだから間違いないわ!」 先輩からそんな眉唾情報を教えてもらった僕は、まぁ一応確認してみるか……本当にそうだったらラッキーだし……ってことで、大学の図書館の、フランス語の棚の前でひとり腕組みをしていた。 ゆっくりと流れる図書館の時間は、僕の足の裏を現実という床の上に貼り付ける。 「っていうか、どれ」 フランス語の本が棚一面にずらっと並んでいた。初級から上級、一般向けから専門書までそれはもうたくさん。どの本ですか先輩……って頭の中で嘆くも意味などなく。 仕方ない、席に戻って素直に教科書と向き合おう。 僕の頭がその結論を弾き出したときだ。すぐ背後から、 「はうぐっ」 という声がした。たぶん女の子。でも人の気配あったっけ? まぁ、どのみち男なら振り向くよねえ。 だから僕はドジっ子丸出しの、その声の主の方へとゆっくり振り向いて、 彼女と、出会った。 「Il n'y a pas de probleme、です」 大丈夫です。彼女は僕に、にっこり笑いながらそう言って……でも頭のてっぺんを片手で撫でていた。若干涙目だし。 床には本が一冊落ちていて、棚の最上段にはちょうど一冊ぶんのスペースがある。それから、相変わらず頭を撫でている彼女の方を向いてみる。身長を僕と比べてみるために。 三段論法が導き出した答えは、やっぱりドジっ子だ。 その本を床から拾って手渡してやる。真っ黒な上着に、同じ色のスカートをはいた彼女は、けれど八重歯を見せながら笑ってそれを拒否した。 「それでは、ないのです」 なるほどこれではないのか……っていやいや。それではないと言われても。僕が行き場を失った本を片手に立ちすくんでいると、彼女は僕に言う。 「それが入ってたところの右隣……取って、もらえるです?」 棚の最上段をせいいっぱい伸ばした指で触れながら。 やっぱり届かないらしい。僕は仕方なく、行き場を失った本を元の場所に戻してやる。それから右隣の本を取って彼女に手渡す。『木星とその衛星たち』 「Merci pour tout!」 いろいろありがとう。彼女は今の本を小脇に抱えると(既に四、五冊抱えていたけど)、ぱたぱたと棚の間をすり抜けて走っていった。 僕は肩をすくめながら、フランス語で木星って何ていうんだろう、って考えながら、カバンを置いてある座席へと戻っていった。
509 :
ジュピター/イルカたちの歌を聴け 2/5 ◆2LnoVeLzqY :2007/11/25(日) 15:50:03.09 ID:Aaujq2le0
そして隣の席にはさっきの女の子が座っている。 カラーの図が載った本とか、白黒で文字ばかりの本とかを交互に眺めながら、しきりに「うーん」とか「ふむぅ」とか唸っている。その全てが木星に関わる本だ。あるいは、その衛星に。 ――木星の衛星について卒論でも書くのかな。 まぁ、卒論を書く年齢には見えないけれど……(むろん修論を書く年齢にだって見えない。っていうか年下にしか見えない)。 僕はフランス語の教科書とノートを開く。勉強しないと単位がマズい。でもやっぱり隣が気になって、だから僕はちょっとだけ、と思って隣をちらりと見たら、 目が合った。 しかも助けてオーラ丸出しだった。某消費者金融のCMのチワワ並みに。 「本棚までついて来てくださいです……いわゆる腐れ縁、ってやつですし……」 ちげぇ。でも僕は断れずに、結局またあの棚に戻る。今度は二人で。 てきぱきと本を棚へ戻した。僕が。彼女じゃなくて僕が。 「えっへん、届かないのです」 知ってるよ。胸張って言うな。むしろ無い胸張るな。 「じゃあ、今度はそれとそれとそれを取ってほしいのです」 戻し終わると矢継ぎ早に彼女が言う。まるで召使いとその主。バロック絵画に描かれた女性たちも、たぶんこのくらい図々しかったんだろうなぁ……。 僕は指定された本を棚から取って、渋々彼女に渡す。……また木星とその衛星絡みだ。 いいかげん、召使い的な僕にも少しぐらい権利があっていいんじゃないかと思った。理由について訊く、権利が。 「木星ばっかり調べてるけどさ、それに関する研究でもしてるの……してるんですか?」 最後の本を彼女に手渡した時に、僕はそう訊いてみた。 口調があいまいなのは彼女の年齢がわからなかったからで、彼女は開口一番「敬語は無用なのです」と言った。 「それに、研究でもないのです。わたしはただ……そう、エウロパに行きたいだけなのです」 変な子に捕まったなぁ……。 そう思う僕を尻目に、けれど彼女は、僕にインターネットの記事を印刷した紙を一枚、手渡してみせる。 >米航空宇宙局NASAは、木星の長年にわたる高度400kmからの調査により、木星の月であるエウロパの厚い氷の層下にいくつかの動きがあることに気がついた。 >伝えられることろによれば、氷に覆われた中から何者かの鳴き声が音センサーに検出されるのだという。 >「データをコンピュータ解析した結果に驚きました。エウロパの海洋から発する音の頻度は、イルカが発する音とほぼ等しく、誤差はたったの0.001%です。」とクラークは語る。 「……木星の衛星に、イルカ?」
510 :
ジュピター/イルカたちの歌を聴け 3/5 ◆2LnoVeLzqY :2007/11/25(日) 15:51:40.74 ID:Aaujq2le0
「Oui! だからわたしは、いろいろ調べているのです。エウロパについて。イルカたちが、いったいどんなところに住んでるのかを」 「でもさ……エウロパにイルカなんて、やっぱりちょっと、ありえないと思うよ」 僕は率直に思ったことを返す。けれど彼女はそんな言葉に、きょとんとした顔をしてみせる。 「どうしてなのですか?」 「ええ? どうしてって言われても……」 と困りながら言う僕に、彼女はにっこり笑いかける。そのとき八重歯がちらっと見えた。その黒い上着の胸元では、イルカのかたちをした銀色のペンダントが光っている。 彼女はまた四、五冊の本を小脇に抱えた。それから棚の間を少しだけ進んで、言い忘れた、とばかりに突然立ち止まると、振り向きざまに、笑いながら、こう僕に言った。 「いないと証明されるまで、誰がいないなんて言い切れるのですか?」 ゆったりとした時間の流れる図書館の中で、そのとき僕はかすかに、波の音を聞いた気がしたのだ。 もちろんフランス語のテストは散々な結果だった。 だいいち辞書持ち込み不可なんて無茶だ。半年そこらの単語力なんてたかが知れている。 空欄を3割も作って提出した僕は、とりあえず単位だけは貰えますように、と窓から見える真昼の月に儚くも祈った。 「諦めろ諦めろ、死亡確定だって。また後期一緒にがんばろうぜ」 そう声を掛けてきたのはこのフランス語クラスで隣の席になった石田って奴で、そう言うからには彼はもちろん死亡確定。 「でも僕はまだ死んだと決まったわけじゃ……」 「はっ、テスト中に窓から空ばっかり見上げる奴なんて余裕で合格か不合格だと相場は決まってるんだよ。諦めて後期ぶんの教材を今から買っておけって」 「うう逃げたい……」 「おう逃げろ逃げろ。大好きなお空の星にでも逃げとけ」 と言って彼は窓越しに空を指さす。僕はなんとなくその指の先を追う。太陽のせいで薄まった、白っぽい青が視界を染める。 「……っていうかお前、ほんと空が好きなんだな」 「いや、そんなことないけど」 と答える僕は、それでもやっぱり空を見ている。より詳しく言えば、木星を、その中に探している。 試験監督の先生はとうに退室していて、生徒たちも徐々に帰りつつある。がやがやという声が遠ざかっていく。 カバンをたすき掛けにした僕は、それがやけに重いな、と感じる。 「あのさ」 「何だ」 「イルカのいる海って、やっぱりキレイなんだろうなぁ」 人の減った教室に、僕の声がやけに大きく響く。
511 :
ジュピター/イルカたちの歌を聴け 4/5 ◆2LnoVeLzqY :2007/11/25(日) 15:53:05.92 ID:Aaujq2le0
「ずいぶん調べたのに、わからないことがたくさんあるです」 彼女は本のページをぺらぺらと捲りながら隣の僕に話しかける。僕は肩をすくめて、そりゃそうだろうね、と返す。 「例えば何がわかんないの? イルカの餌があるかないか、とか?」 けれど彼女は、そんなんじゃないのです、と言う。 「わからないのは、まず空の色なのです」 「……空の色?」 「はい。空が青い理由は、地球の大気と太陽光の波長に関係しているのですが……エウロパの大気の状態がわからない以上、空の色はどうしてもわからないのです」 彼女は眉をひそめて、ちょっとだけ難しい顔をする。 「まぁでも、やっぱりわかんないものはわかんないよ。行ってみればわかると思うけどさ」 「そうなのです」 と言って、そこで彼女は僕の方を向いた。それから本をぱたんと閉じると、とびっきりの笑顔をみせてこう言ったのだ。 「けれどわたしは、やっぱり空には青い色がいちばん似合うと思うです」 大学からの帰り道、気がつけば僕は、ケータイのボタンを押していた。先輩(ちなみに女子専用アパートに一人暮らし)の電話番号を指が勝手に打ち出していく。 「ハーイ、もしもしアタシだけど、ユウくんどしたの?」 気持ちの整理がつかないまま、口が勝手に動いてしまう。 「あの、先輩、一緒に海、行きません?」 一瞬の間。のち、先輩の罵声。 「……はぁ? だってもうすぐ夜の6時だよ!? おまけに冬だし絶対100%間違いなく死ぬってば。どっかの推理小説みたいに情死と勘違いされるの嫌だからねッ」 「………」 「ってユウくん? おーい? もしもーし? 生きてるー? 生き……あー、もうわかったわかった! 10分後にウチの前。晩ごはんとガソリンはそっち持ち! いいわねッ!?」 と言って電話が切れる。人を簡単にこき使う人間がいるのと同じように、世の中には断れない人間というのが、確かに存在している。 「でもさユウくん、何でまた急に海なの? 冬だし夜だからナンパしようにも美女なんて一人もいないんだよ? アタシを除けばだけどさ」 先輩の車の窓の外を、高速道路の街灯がびゅんびゅんと飛んでいく。先輩のその性格が、単調なオレンジの光のリズムが生んだ僕の心細さを少し和らげてくれる。 「何となく、海が見たいな、って思っただけなんです。深い理由はありません」 「うーん、よくわかんないけど、まぁ、いいわ。晩ごはんオゴってもらえるなら、アタシはそれでいいもんね」 車は高速を降りて、一般道を海水浴場へ向かう。空の端に微かに残っていた藍色もすっかり消えて、夜が暗闇を連れてきた。 閉鎖された駐車場の前に路上駐車しても、咎める人間はさすがにいない。風はなく、寒さはあまり気にならなかった。 ロープを乗り越えた僕と先輩を、暗黒の中にたゆたう海が、出迎えた。
512 :
ジュピター/イルカたちの歌を聴け 5/5 ◆2LnoVeLzqY :2007/11/25(日) 15:55:27.05 ID:Aaujq2le0
月がぽっかりと、静かな波の上に浮かんでいる。空には雲ひとつなく、星がいくつもまたたいて見える。 「……キレイね。冬の海も、案外悪くないかも。そう思わない?」 「確かに、キレイだと思います……けれど」 僕は一冊のクロッキー帳を取り出し、その一枚目を開く。 「やっぱり何かが違う」 星の光に照らし出されたそこには、ひとつの絵が描かれている。 色とりどりの色鉛筆で、紙いっぱいに青緑色の海と、水色の空と、七つの大きな月が描かれた絵。 その海では翡翠色の波飛沫を上げて、三頭のイルカが泳いでいる。 「うわぁ、すごい上手! なんかファンタジーって感じ。これユウくんが描いたの? どこの風景?」 絵を覗き込んだ先輩がびっくりしたように言う。僕はそれに首を振った。 「僕が描いたわけじゃありません。これを描いたのは……空想大好きなドジで小さい女の子、って言っておきます。あとこの風景は地球じゃなくて、エウロパっていう星の景色です」 エウロパ。先輩は口に出しながら空を見上げた。木星の衛星だということは知っているらしく、先輩は木星を探しているふうだ。 けれど、星はいくつもあって見つからない。明るいというのはわかりきっているのに、天文の知識がない僕たちには、どれが木星なのかちっともわからない。 先輩は首を揉みながら、再び絵を覗き込む。紙を横断する水平線を指でなぞりながら、時おり、眼前の夜の海と見比べていた。 「やっぱりキレイだなぁ、この絵。それにイルカがかわいいもん。でもさ、さすがにエウロパにイルカなんていないはずだよね。やっぱり、ファンタジーだ」 そう言って先輩は、一面に星のまたたく冬の空を見上げた。空の前ではあまりに小さいその背中に、僕は蚊の鳴くような声で返事をする。 「……いえ。いるんですよ、たぶん。いないと証明されない限りは、誰も否定なんてできないんです」 そう返す僕は、それでもやっぱり4割くらいは、イルカの存在を信じてない。でも残りの6割は、祈って、願っている。その存在を。そんな感情をまとめて押し流すように、真っ黒な海から波の音が聞こえてきた。 クロッキー帳を一枚捲ると、そこにはこんなメッセージが書かれている。 「エウロパに着いたら、合図してみせるです」 そのとき、あっ、と先輩が叫ぶ。僕が慌てて顔を上げると先輩は、届くはずのない空に向かって腕をいっぱいに伸ばして中空を指さしている。 「いますごい光った。あそこ!」 僕はその先を追うけれど、もちろんそんな光なんて見ることはできない。空にはあまりにたくさんの星があって、僕は急に心細くなる。 「あの、先輩。ひとつお願いがあるんですけど」 「ん、なに?」 「空が青くなるまで……夜明けまで、ここにいてくれませんか?」 僕のむちゃくちゃなお願いに、それでも先輩は少し悩んだあとで、親指をぐっ、と立てて答えてくれる。 「でもさでもさ、まず先にどこかにご飯食べに行こうよ。アタシお腹すいちゃったからさ」 そう言って車のドアに手をかける先輩を尻目に、僕はもう一度だけ、真っ黒な海を見る。けれど、イルカなんて泳いでいない。ここは地球の、日本の海で、浮かんでいる月は一個だけだから。 小さくため息をつくと、僕は、晩ごはんを食べに向かう先輩の車に乗り込む。
タニーいいよね 訳とかいいよね
514 :
ジュピター/イルカたちの歌を聴け 0/5 ◆2LnoVeLzqY :2007/11/25(日) 15:57:24.11 ID:Aaujq2le0
>>508-512 以上5レス、品評会用作品でした。まとめの中の人、毎回本当にご苦労さまです。
515 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 16:11:38.05 ID:Aaujq2le0
保守
516 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 16:27:34.20 ID:VwsWI2HNO
ほしゅしたっていいじゃない
517 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 16:36:06.22 ID:j5rDAI0a0
なんでもおまんこなんだよ あっちに見えてるうぶ毛の生えた丘だってそうだよ ――谷川俊太郎『なんでもおまんこ』
518 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 16:55:02.03 ID:VwsWI2HNO
危ない
519 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 16:55:27.99 ID:uEobEcCbO
ほ
520 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:02:31.60 ID:M7F+lG7o0
ほ し ゅ
521 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:20:55.50 ID:VwsWI2HNO
460
522 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:21:06.31 ID:Aaujq2le0
保守
523 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:38:40.64 ID:VwsWI2HNO
ほ
524 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:53:21.10 ID:M7F+lG7o0
し
525 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:56:55.66 ID:vTyx4xGT0
ひ ゅ う ま
526 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:58:38.73 ID:1Vs8z7Bc0
ん
527 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 17:59:56.83 ID:M7F+lG7o0
?
ヤバい焦ってきた
529 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 18:10:29.50 ID:zz/Kt2Z1P
もう投げた
530 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 18:23:28.84 ID:fBNjwcz/0
ほ
531 :
◆R8ImotoANE :2007/11/25(日) 18:28:41.28 ID:uEobEcCbO
品評会投下します 我ら姉妹です え?酉が違うって 何の話ですか?
532 :
【品】我ら空想姉妹〜胸はworldを救う〜1/1 ◆R8ImotoANE :2007/11/25(日) 18:31:57.61 ID:uEobEcCbO
誰も居なくなった放課後の教室、妹が淫らに腰をくねらす。 「お姉ちゃん……ここが熱いの……」 「ここ?」 「んあっ」 全く敏感なんだから……今日は私が攻める番ね……。 「なにしてんの?」 棚からぼたもち上から妹。妹はすぐさま私の執筆していた同人誌を取り上げる。かえしてドージンシ! 「ふーん……どうせなら山本×長戸の誘い受けとかにしたら?」 山本、長戸ともに妹の奴隷の男子生徒。あと腐女子っぽいなー。 「それよかこのお姉ちゃんちょっと胸大きくない? もっと貧乳でしょ?」 そりゃ、あんたよりは胸はないけど貧乳って訳じゃ……。 「返事は?」 「はい……」 それに色々と使っちゃいけない気がする。 「てかなんで私が攻められてんの? 私が攻めであるのはワールドの法則でしょ」 アウトー! いやギリギリセーフか。妹よ、むしろアウトなのは……。 「おかしなもの描いたお仕置はたっぷりしちゃうわよ?」 びしりとムチらしきものを取り出す妹……。 「どう? 自分が攻められる同人誌描かされる気分は?」 とっても新しいプレイだとしか……。すごくいいけど。 「ホラまた胸を大きく描いてる! 駄目でしょ」 あぁ、またお仕置……。だんだんと気
533 :
◆R8ImotoANE :2007/11/25(日) 18:32:37.60 ID:uEobEcCbO
以上 え?二つ投下してる? ご冗談を
534 :
◆daFVkGT71A :2007/11/25(日) 18:35:44.52 ID:25Ox7gP30
品評会作品投下します。おそらく三レス
535 :
微睡みのなかに1/3 ◆daFVkGT71A :2007/11/25(日) 18:36:49.64 ID:25Ox7gP30
警察から帰ってきた榎本は自分の家の前で立ち尽くしていた。息子が生まれたときにローンで購入した家だ。もうすぐ築十年になる。 当時はずいぶん無理をしてこの家を買ったことを覚えている。妻は最後まで反対していたが、榎本は強引に話を進めた。 どうしても息子の誕生に合わせて家を買いたかったのだ。そこで家族三人、小さな家庭を築くことが夢だった。そして、この家に三人の思い出を刻みたかった。 しかし、今彼はその思い出のためにこの家に入れず、かれこれ三十分ほど立ち竦んでいる。木枯らしが吹き、彼の体温を奪っていく。 人通りはあまり無い住宅街だが、それでも幾人かの好奇の視線を受けた。だが、彼はただじっと玄関を見つめていた。 この扉を開けて、誰もいないことを思い知るのが怖かった。過去のものとなってしまった夢を見るのが怖かった。 その日、榎本は残業を言い渡されていた。本来ならそこで家に電話をしていただろうが、そのときは偶然それを忘れてしまった。おそらく疲れていたのだと思う。 全ての仕事を終えて帰途に着くころには夜の九時を回っており、電車に乗ってシートに身を預けてから妻に連絡を入れていない事を思い出した。 慌ててその場で家に電話をしてみたが繋がらず、彼女の携帯電話にも繋がらなかった。おかしいとは思ったが、そのときはそれほど深刻には考え無かった。 しかし、何度時間をおいて電話してみても一向に繋がらないことにようやく不安を感じた。 とにかく早く帰ろう。時間とともに不安はいても立ってもいられなくなるほど増大していき、電車が駅のホームに到着するころにはほとんどそのことしか考えていなかった。 いつの間にか疲れは吹き飛んでおり、駅前の大通りに出ると同時に走り出した。いつもよりも暗く、寒く、人通りの少ないことがそのときの彼には言い知れぬほど不気味だった。 彼はその気味悪さから逃れるように家を目指した。 大丈夫。きっと風呂に入ってるんだ。家に帰れば何食わぬ顔でテレビでも見てて、「遅いじゃない。連絡ぐらいしてよね」とかなんとか文句を言うのだ。 息子は最近遅くまで起きていることが多くなったから、もしかしたらまだ寝ていないかもしれない。そしたらただいまの挨拶とおやすみの挨拶を互いに交し合えばいい。 大丈夫、玄関をくぐればいつもの暖かい日常に戻れるさ。 そう自分に言い聞かせて、それでも必死に走った。大通りを抜け、住宅街に入って、最近めっきり冬っぽくなった風に追い立てられながら玄関に飛び込んだ。 まずは家の電気が点いていることに安心する。しかし、いつもは迎えてくれる二人が全く顔を見せないのをおかしく思う。 二人の靴は玄関にあるし、テレビの音も聞こえるし、微かに味噌汁の匂いもする。二人が家にいるのは確実だった。 「おーい、ただいまー」不安を隠して奥に呼びかける。 「誰もいないのかー」そんなはずは無いと思いつつもとにかく呼びかけた。 「何かあったのかー」自分の声がやけに間抜けに聞こえる。繕ったようなのん気さがある。 榎本には何の返答もない家が寒々しく感じられた。靴を脱いで上がり、激しくなった動悸を懸命に抑えながらリビングへの扉に手をかける。 荒い息を吐きながらドアノブを殊更にゆっくりと回し、その何倍もの時間をかけてドアを押し開いた。 そして、そこに彼が見たのは最悪の想像であり、認めることができない事実だった。
536 :
微睡みのなかに2/3 ◆daFVkGT71A :2007/11/25(日) 18:37:38.89 ID:25Ox7gP30
そこから先はあまりよく覚えていない。思い出したくもない。ただ夢中で救急車を呼び、ずっと妻と息子の名前と叫んでいたような気がする。 救急隊員はすでに二人とも死んでいると言った。警察でもそう言われた。警察はさらに、強盗殺人の可能性が高いとも言っていた。 でも、そんなのは榎本にとってはどうでもいいことだった。犯人への怒りもわかなかったし、悲しみも感じなかった。ただその言葉を信じていなかった。 そして彼は今、家の前で立ち尽くしている。真実を確認することを恐れて。 冷静に考えれば、二人がもうこの世にいないということは分かるはずだった。 リビングでの惨状を直接その目で見たのも、二人の名を必死に叫んでゆすり起こしても反応がなかったことを知っているのも榎本自身だ。 もし仮に生きていたとしても、家の中にいるはずがない。それでも彼はこの家に二人がいると信じていた。いや、願っていた。 きっと生きている。一昨日まで元気だったんだから。大丈夫。こんな風に終わるはずがない。 ただその悲痛な願いを胸にどれぐらいの間躊躇しただろうか、彼は地面に張り付いてしまったようになっている足をゆっくりと動かし始めた。 一歩一歩、その鉛のような足を引きずり玄関を目指す。そこにあの時の焦りはなく、ただ苦痛を堪えるような表情を浮かべていた。 玄関にたどり着いて彼はインターホンを鳴らすかどうかしばし逡巡した。が、やはり鳴らさないことにする。 変わりにズボンのポケットから鍵を取り出す。手が震えてうまく鍵穴に入らない。 「今日は寒いな……」 言い訳がましく言ったその声は自分でも驚くほどか細く、微かに震えていた。 まるで何かつまっているかのように、頑なに拒否する鍵穴に無理矢理鍵を突っ込んだ。そのまま回すと、自分を嘲るような安っぽい音を立てて鍵は開いた。 鍵を抜き取り、家のドアノブを回す。あの時と同じぐらいゆっくりとドアを開けた。 今度は電気も点いていなかった。テレビの音も、味噌汁の匂いもしない。ただ、あの時より何倍も薄ら寒い静寂と何かが欠落したような不完全さがあった。 それを認めた瞬間、彼はなりふり構わずに走り出した。 リビングに入る――誰もいない。冷蔵庫に妻の筆跡でいくつかのメモ書きが貼り付けられている。 寝室に入る――誰もいない。三人が一緒に寝ていたベッドがただ一つあった。布団は綺麗にたたまれている。そこに人の温もりは残っていない。 書斎に入る――誰もいない。妻がコーヒーを入れて持ってきてくれたと思われるコップが残っていた。おそらくずっと戻すのを忘れていたんだろう。 浴室に入る――誰もいない。息子が持ち込んでいた人形があった。無表情にこちらを見つめている。 「嘘だ……」 どの部屋にも二人はいなかった。すでに理解し、それでも拒否し続けていた事実を突きつけられ、彼はその場に崩れ落ちた。 もう諦めてしまっていた。初めから諦めていた。分かっていた。でも認めたくはなかった。 全てがどうでもよくなり、放心して柱にもたれかかる。そしてふと気づく。その柱に身長を測った傷が残っている。息子の成長を一年ごとに刻み付けていったものだ。 この家に家族の思い出として刻みこんだものだ。本当なら、もっともっと上まで続くはずだった。でも、今はその思い出を重ねる人たちがいない。 それは、ひどく悲しいことだった。とても耐えられないことだと思った。たったこれだけで思い出は打ち止めなのだ。もう二度と作れない。 あまりに少ないと思う。まだまだ刻むべき思い出はたくさんあったはずなのに……。
537 :
微睡みのなかに3/3 ◆daFVkGT71A :2007/11/25(日) 18:38:33.05 ID:25Ox7gP30
榎本はしばらくそうして、ただぼうっと虚空を眺めていた。その目には光がなく、生気が失われている。彼は考えることを放棄していた。 何もしたくなかった。ただ、妻と息子に会いたかった。いつの間にか外は暗くなっており、電気の点いていない家の中は暗闇で何も見えなかった。 冬の風が窓を叩き、寂しい音を立てる。何も写していない彼の眼は窓からの光を反射して鈍く光っていた。 今更ながらに二人の死を実感する。かといって何も出来ない。何かをしようとも思わない。ただ、悲しさや悔しさは感じなかった。感覚が麻痺していた。 少し眠ろう。何もかもを忘れたい。 彼はそのまま目を閉じた。そうして少しの眠りに入っていった。 彼は微睡みのなか、妻が自分を呼ぶ声を聞いた。息子が自分の体を揺すって懸命に起こそうとしているような気がする。 朝食の匂いが僅かに鼻をくすぐり、自分がずっと食事を取っていないことを思い出す。 そうだ、早く起きよう。三人で朝ごはんを食べないと。 彼は目を覚ます。そこには息子の顔があり、彼が起きたのを見て微笑した。 「おはよう。お父さん」 妻は味噌汁をかき混ぜている。彼が起きたのを見て、息子同様に言った。 「おはよう。あなた」 彼は違和感を覚えた。自分は何かを忘れていると思った。しかしそれを思い出そうとは思わなかった。自分にとってとても良くないことのような気がしたからだ。 彼は返した。 「おはよう。二人とも」 そこは何故か居心地がよかった。まるで何も悪いことなどないような気がした。きっとこの世は自分のためにあるのだと思った。 どうしてそう感じたのかは分からない。ただ、これ以上に暖かい場所はないということは分かっていた。 そして彼が戻ってくることはなかった。
538 :
◆daFVkGT71A :2007/11/25(日) 18:40:08.47 ID:25Ox7gP30
以上です
539 :
◆R8ImotoANE :2007/11/25(日) 18:41:41.51 ID:uEobEcCbO
切れてるけどまぁこれはこれでいいか
540 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 18:56:42.30 ID:VwsWI2HNO
ほ
541 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:06:11.48 ID:Fb5yW3qe0
何かお題を下さい↓
542 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:08:55.54 ID:iuM6e96Z0
ジャスミン
543 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:10:42.11 ID:yhAH+4ST0
お題をください
544 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:12:08.81 ID:shvuxvuB0
545 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:14:34.66 ID:KdmifAPB0
ここにきて急用orz これはもう時間外かもわからんね・・・ o...rz
546 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:15:42.33 ID:REgNmuw5O
そーいや最近時間外少なくないか?
547 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:16:25.32 ID:yhAH+4ST0
548 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:22:30.74 ID:shvuxvuB0
>>544 そのまま読むと、かしま(しい)だけど、女三人が人間ピラミッドしてる(しい)でもなんでも、
そこら辺はお任せします。
550 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:31:06.62 ID:Eyfzzuf+0
収まらん 色々無理無理だ
551 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:31:36.61 ID:eFnF8GAk0
今回はあきらめた。
552 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:40:45.16 ID:VwsWI2HNO
ほ
553 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:41:34.17 ID:VwsWI2HNO
554 :
雑木林のおともだち 0/5 ◆4FsjozWCuk :2007/11/25(日) 19:50:06.09 ID:6Q8fwS5BO
品評会作品投下さます 全5レス
555 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 19:50:41.61 ID:WHlcshSh0
556 :
雑木林のおともだち 1/5 ◆4FsjozWCuk :2007/11/25(日) 19:51:17.45 ID:6Q8fwS5BO
妹の七美には、「さくらちゃん」という友達がいる。 いつも七美は、近所に住む聡くんとその「さくらちゃん」と三人で遊んでいるらしい。 といっても、七美と聡くん以外、誰も「さくらちゃん」の存在を信じていない。 俺たちは十数件の古い家屋が散らばるド田舎の村に住んでいる。 村には老人ばかりで、当然皆顔馴染み。 子供といえば高校生の俺とまだ五歳の七美と聡くんぐらいしかいない。 「さくらちゃん」なんて子供、会ったことも見たこともないからだ。 つまり、「さくらちゃん」とはアレだ。 ──空想のおともだち。 言った通りココはド田舎で、通っている保育園までは車で一時間以上はかかる。 近所で遊べる友達といえば聡くんだけで、お互い淋しかったに違いない。 そんな二人が作り出したおともだちが「さくらちゃん」なのだろう。 幼い子供にはよくあることだ。 俺も小さい頃は「アキラ」という架空の弟を連れて遊び回っていたらしいし。 それに淋しいという気持ちもよく分かる。 同年代の子供が村にいなかった俺は、学校から帰るのを嫌がって先生を困らせたりしたものだ。 きっと七美はもっと大勢と遊びたいのだと、その気持ちを考えると可哀相になる。 だから七美と聡くんの思いは壊したくなかった。 両親や周囲がに「さくらちゃん」を否定しても、俺は信じて聞いてやろうと決めていた。 「そこでね、さとしくんがちょうちょ捕まえたんだよー」 七美はいつも嬉しそうにその日あった出来事を俺に話す。 いつからかの日課だ。 「へぇ、すごいな聡くんは」 それに笑顔で頷くのが毎日の俺の役割だ。 勉強中でも構わず部屋に入り込んで喋り出すのは困りものだが、 やはり年の離れた妹は可愛いもので、煩わしいとは思えない。 「それでねー、ナナはお花をこんくらい取ってねー、さくらちゃんにあげたのよ」 七美は両手をいっぱい広げてその量を伝えようとしている。 「あぁ、七美優しいな」
557 :
雑木林のおともだち 2/5 ◆4FsjozWCuk :2007/11/25(日) 19:52:58.78 ID:6Q8fwS5BO
「今度兄ちゃんにもあげるねー」 「ありがとう」 と言いながらも、大袈裟だなと思った。 七美たちはいつも村外れの雑木林で遊んでいるが、あそこにはあまり花が生えていない。 あっても雑草の小さい花くらいで、両手いっぱいは相当の量摘まなければならない。 こういう子供らしい矛盾を見つけるのも七美の話を聞く楽しみの一つだったりする。 「お花ばたけ、さくらちゃんに教えてもらったんだ」 「そっか、物知りなんだな」 そこまで言って七美はくるりと背を向けてドアへと駆けていった。 どうやら今日の話は終わったらしい。 最後にドアの隙間から顔だけ出して、 「兄ちゃんおやすみなさい」 「おやすみ、七美」 ここまでが毎日の日課だ。 俺は足音が遠ざかるのを確認して、再び宿題に取り掛かった。 あくまで「さくらちゃん」の事は信じているふりをしているだけで、 七美の話を全て鵜呑みにしているわけではない。 しかし、ある時からだんだん「さくらちゃん」の存在に疑問を抱くようになった。 それは翌日、七美が本当に花をいっぱい抱えて帰ってきた事に始まる。 あの雑木林では見た事がないような、大きくて綺麗なコスモスだった。 両親はバカ素直に「まぁ綺麗ねー」なんて言って喜んでいたが、俺はとにかく驚いて、 「どこで採ってきた?」と尋ねると七美は「さくらちゃんとのひみつの場所」と笑うだけ。 そういえば以前も「さくらちゃんがカブトムシがいっぱいいる木を教えてくれた」と言っていた。 「さくらちゃん」とは何者なんだ? コスモス畑やカブトムシの集まる木を見つけたなら、自分で見つけたと言えばいい。 七美や聡くんがそれを「さくらちゃん」の手柄にするメリットは無いし、 まだ五歳なんだからわざわざ現実にいるかのように工作するなんてことはないだろう。 つまり、二人が嘘を吐くとは思えない。 じゃあもしかして、「さくらちゃん」は空想のおともだちなんかじゃなくて、本当に本当のおともだちなんじゃ……。
558 :
雑木林のおともだち 3/5 ◆4FsjozWCuk :2007/11/25(日) 19:54:08.01 ID:6Q8fwS5BO
でも少なくともこの村に「さくらちゃん」という子供はいないはずだ。 隣の村までは子供の足で行き来するには遠すぎる。 それなのにいつも林で七美と聡くんと遊んでいる「さくらちゃん」。 「さくらちゃん」は何者なんだ? 謎めいた「さくらちゃん」の存在は、俺の中で怪しいものとなっていった。 普段何気なく聞いていたはずの七美のお喋りがとても不可解なものに思えて、 玄関に飾られたコスモスが、ひどく不気味なものに見えてきたのだ。 その日は委員会の仕事で、高校からの帰りがいつもより遅かった。 バスを利用しても片道二時間はかかる道のり、お陰で辺りはすっかり暗くなっている。 俺は灯の無い山道を一人トボトボと家路についていた。 本当に、俺は何を考えていたんだろうか。 道の脇の雑木林が目に入った時に、ふとここを抜ければ近道になるんじゃないかと思ったのだ。 あんなに暗かったのに、俺は何の躊躇いもなく雑木林に踏み込んだ。 ただ早く家に帰ることだけを考えていた、勿論「さくらちゃん」のことなどすっかり抜けていた。 明かりも目印も無い闇の中で、家の方向など分かるはずないのに。 後悔するまでにそう時間はかからなかった。 気がつけば周りは木ばっかりで、自分が何処にいるのか全く分からない。 迷子?いや、俺には遭難したような気分だった。 「……どうしよう、か」 内心はとんでもなく焦っているのに意外と身体が冷静だ。 取り敢えず歩き回った方がいいのか、ここに留まるべきか考える。 歩き進めればより深みにハマる気もするが、待っていても携帯の通じないここじゃあ意味が無い。 この雑木林はそう広いわけでもないし、「真っ直ぐ」歩けば外に出られるだろう。 そういう安易な考えから、俺は再び歩き始めた。 既に三十分は歩いている気がする。 勿論、一向に雑木林を抜ける気配はない。 自分が方向感覚に疎いことにもっと早く気付くべきだったが、時すでに遅く、 俺は今完全に「迷子」の状態だった。
559 :
雑木林のおともだち 4/5 ◆4FsjozWCuk :2007/11/25(日) 19:55:23.90 ID:6Q8fwS5BO
「ヤバい…」 いよいよ俺の身体も危機感を感じ始めたようで、手が汗で湿る。 せめて月が出ていれば、と空を見上げたとき、そこで初めて気付いた。 俺の目の前に木が生えてない空間があり、そこだけ丸く吹き抜けになっている。 小さい頃からよくこの林で遊んでいたが、こんな広い場所があるとは全然知らなかった。 しゃがみ込んで足元に触れると、フワリと柔らかいものが手に当たる。 目を凝らすと、やはりそれは、コスモスだった。 ここはコスモス畑だ、あの、七美が言っていた、「あの子」に教えてもらったっていう……。 ──その時だった。 俺は真っ暗な闇の中に、確かに人の気配を感じた。 何も見えない、だけど「その人」がいることだけは、やけにハッキリと分かる。 俺の目の前、コスモス畑の向こう側……。 「さくらちゃん?」 きっと「あの子」に違いない。 不思議とそんな気がした。 いつも七美や聡くんと遊んでいる、いつも雑木林にいる、そして今ここに。 「さくらちゃん……」 もう一度名前を呼ぶと、「さくらちゃん」は林の奥へ入っていった。 俺は黙ってその後を追いかける。 今まで感じていた「さくらちゃん」への不信感は、もう感じなかった。 目の前にいるはずの「その子」が、七美と変わらない女の子だと思ったからだ。 勿論姿は見えないし、声も聞いてないけど、どこか雰囲気が。 危険なものとは思えない、怪しいものとも思えない。 ただそこにいる「さくらちゃん」が、良い子なのだということだけが分かった。 いつの間にか俺たちが雑木林を抜けようとしているのがその証拠だ。 俺をわざわざ雑木林の外まで導いてくれたのだ。 「……ありがとう、さくらちゃん」 俺は「さくらちゃん」に向かって呟いた。 当然その姿は見えないから、どんな表情をしているかは分からない。
560 :
雑木林のおともだち 5/5 ◆4FsjozWCuk :2007/11/25(日) 19:56:41.88 ID:6Q8fwS5BO
ただジッと立っているようだったので、嫌がられてるわけじゃないんだろう、多分。 そう思うとなんだか嬉しい。 「本当にありがとう」 俺は、「さくらちゃん」について分かったことがある。 迷子になってた俺をここまで連れて来てくれた、「さくらちゃん」は普通の優しい子なんだ。 いつも七美や聡くんと遊んでいる、明るい小さな女の子なんだ、と。 ふと、何処からかバイクのエンジン音が聞こえてくる。 きっと父親が俺を心配して探しに来たに違いない。 「さくらちゃん」は俺の傍らから離れて、雑木林の入口で立ち止まった。 こっちを見つめているような気がした。 「また会おうね」 俺が笑って手を振ると、一瞬だけ木の葉が揺れて、「さくらちゃん」は雑木林の闇に姿を消した。 「……またね」 暗闇の向こうに、もう一度呟いた。 雑木林に背を向けて歩き出しながら、俺は考え込む。 一体「さくらちゃん」とは何者なんだろう。 なんで雑木林にいるんだ? どのくらいの女の子? どんな格好をしている? どんな声なんだろう? なんで俺には見えない? 幽霊?妖怪?座敷童子?天使?悪魔?妖精?守り神?死に神? 七美に聞いたら分かるだろうか。 また会いたい、きっとまた会える。 空想であったはずの「彼女」に、俺は出会えたのだから。 ……或いは、これも俺の空想なのかもしれないけれど。 終
561 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:03:46.17 ID:onTP6jZy0
おちるぞあ?
562 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:06:47.82 ID:9Qb+dzj5O
563 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:08:27.25 ID:9Qb+dzj5O
って書いてあるし ゴメソ
564 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:08:36.50 ID:vTyx4xGT0
>>562 最後に空想とかって出てきてるしそうなんじゃね?
565 :
◆4FsjozWCuk :2007/11/25(日) 20:13:21.72 ID:6Q8fwS5BO
品評会作品なんだ、ごめん 携帯だから誰かまとめお願い出来ませんか? お手数かけてすみません
566 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:15:32.48 ID:uEobEcCbO
なんとなくだが空を題材にした作品多かったり?
567 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:17:18.51 ID:80JOivGw0
いまから全感はじめる
568 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:18:19.36 ID:vTyx4xGT0
569 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:27:45.74 ID:VwsWI2HNO
ほ
570 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:28:35.36 ID:9Qb+dzj5O
らめぇ……
571 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:30:00.20 ID:RJYEXo0o0
なんてこった筆が全然進まない。珍しくプロットを速攻で思いついたのに……。
572 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:31:23.20 ID:vTyx4xGT0
573 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:35:05.84 ID:eFnF8GAk0
ほっしゅほしゅにry
575 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:46:03.35 ID:vTyx4xGT0
してやんよ〜
576 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 20:59:16.38 ID:9Qb+dzj5O
らめえええ!!
577 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:04:40.48 ID:80JOivGw0
よいではないか
578 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:05:22.21 ID:M7F+lG7o0
ああれぇ〜
579 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:06:38.24 ID:gyn4NVfY0
ぐるぐるぐるぐるー
580 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:07:47.87 ID:uEobEcCbO
だが断る
581 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:11:26.26 ID:KUzitvRM0
お題下さい ↓
582 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:12:02.70 ID:dKTI7uW90
悪代官
583 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:13:07.15 ID:KUzitvRM0
難しそうですね。 これって今日中じゃなくてもいいんですよね?
584 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:23:15.43 ID:dKTI7uW90
いつでもおk 一年後でもおk
585 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:24:10.38 ID:iuM6e96Z0
スレあればね
586 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:32:09.46 ID:wueu3X/t0
何も思いつかない保守
587 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:34:35.36 ID:uEobEcCbO
もう時間ないな カオスの予感…… ……ざわ……ざわ ざわ……ざわ…… ざわ……ざわ ざわ……ざわ……
588 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:35:22.80 ID:TPYhZnr/0
まだ慌てる時間じゃない
589 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:39:11.85 ID:+PafNOTeO
( ゚д゚ )
590 :
◆hemq0QmgO2 :2007/11/25(日) 21:40:18.31 ID:o/tnFOBqO
三ヶ月ぶりに品評会参加してやるぜ……げひひ…… しかもとんでもなくアホな文章で……げひひ…… というわけで携帯から投下 三レスです
591 :
たるほ(1/3) ◆hemq0QmgO2 :2007/11/25(日) 21:41:40.99 ID:o/tnFOBqO
毎月二十八日の夜にはお酒を飲むことに決めてるの、アル中だった父の月命日だから。 そう言って春野は笑い、外気に晒されて急速にぬるくなった燗を喉の奥にすべらせた。 ぼくにとっては、おそらくは彼女にとっても、どうでもいい話だ。ただ問題は話の内容ではない。 彼女がどんな言葉を求めているのか、どんな言葉を並べれば彼女の布団にもぐり込めるか、それに尽きる。 現代文の記述問題を解くのと同じだ。コンテクストを考慮し、要点をまとめ、 あとはエスプリまがいの刺激物をちりばめて、きわめて軽薄なテクストを提供してやればいい。 ちなみにこの場合、コンテクストとはわれわれ二人を取り巻く状況全てである。 もちろん把握しきれない事象もあるので、特に重要だと思われるものだけを以下にまとめてみる。 『十一月二十八日、平年並みに寒い夜、さびれた屋台の丸椅子に座って飲むアルコール飲料、その量、 春野の社会的・外見的特徴とそこから推測される男性経験及び嗜好 (二十歳、学園系大学の文学部生、喫煙者、身長は高い、目鼻立ちはそこそこに整っている、 輪郭の角度は平均的、やや貧乳、黒のコートに細いジーンズのさばさば系、髪は黒に近い茶のセミロング、 化粧はどちらかと言えば薄め、稲垣足穂と坂口安吾と吉行淳之介とイタロ・カルヴィーノが好き、 太宰はそれほど好きではない、作家の趣味から考えるとおそらくは非処女だがそれほど軽いタイプではない、 経験は二〜三人程度だろう、好きなタイプはある程度知的で文化的なアル中? 少なからずエディプス・コンプレックスの傾向があるようだ)、そして春野とぼくとの関係(大学の友達)』 以上のコンテクストを踏まえると、ぼくが彼女に提供する快楽のテクストはこのようなものになる。 いや、ならざるをえない。もはや語るのはぼくではなく、ディスクールなのだから。 「そうかい、それはかなしいね、親父さんに乾杯、薄荷水で。ところで……今夜は冷えるね。 ええと、ううむ、チョコレット、君はかわいいね。そういえばぼくもアル中なんだ。ぼくと寝てくれ」 「は、はい? 下田くん大丈夫? 酔っ払ってるの?」 「酔っ払ってなど、いません。いたって本気だ。本気で全力のパロールだよ、チョコレット」 「はは、やっぱり酔ってる。顔真っ赤だよ」
592 :
たるほ(2/3) ◆hemq0QmgO2 :2007/11/25(日) 21:42:51.43 ID:o/tnFOBqO
たしかに、ぼくは酔っている。昔から酒に弱いのだ。アル中だなんて、もちろん嘘である。 春野は強い。強い女の子だ。強くて甘い、チョコレットだ。お月さまより強い。愛してるよ……。 全身が重い。特に頭が、鉄球のように重い。ぼくはどこにいるのだ。がたがた揺られて、気分が悪い。 「あ、下田くん、寝てていいよ。今、タクシーで私のアパートに向かってるから」 マイスイートチョコレットの声がする。「とりあえずアパートでやりまくろう」、だって? 「ああ、やりまくろう。猿か、それよりもっと原始的に、文学的に。お月さまに見せつけてやろう」 「ふふ、ホントにお酒弱いんだね。運転手さん、ごめんなさい」 「いえいえ、大丈夫です。もし吐きそうになったら車止めますから、言ってくださいね」 チョコレットはくすくす笑う。なんて甘い匂いだ。かまわず、タクシーは夜を撫で斬る。 街道を行く車の、あるいは街の灯りが流れては消える。頭痛と、快楽の予感だけを残して。 「本当に、申し訳ありませんです」 「いいよいいよ、コーヒー飲む?」 「はい、いただきます」 春野の部屋に文字通り転がり込んだぼくは数杯の水を飲み、直後に胃の中身を便器に盛大にぶちまけて 少しばかり奇妙な官能に浸ると、さらにがぶがぶと水を飲んで、ようやくチョコレット現象に区切りをつけた。 しかしまったく、酒は恐ろしい。徳利で二本ほどしか飲んでいないのに、あれほどしたたかに 文学的虚構を遊べてしまうとは。文学者たちがこぞってアル中になりたがるわけだ。 「入ったよ、ブラックでいい?」 ありがとう、と言ってマグカップを受け取った。紺の肌にミルク色の三日月が描かれている。 「しっかしまあ、下田くんはヘンタイだねえ。普段からあんなことばっか考えてるの? 薄荷水とか、チョコレットとか、お月さまとか。私は正直、ちょっとびびりましたよ」 テーブルの向かいで春野はけたけた笑う。合わせて、右手に握ったカップの中のコーヒーが揺れる。 「あれは、足穂の……」 「ははっ、わかってるわかってる。ただあんまり面白いからさあ、 『寝てくれ』とか『愛してるよ』とか『やりまくろう』とか、ホントびっくりしたよ」 口に出した記憶がない言葉まで、全てだだ漏れである。まったく、びっくりだよなあ。 ぼくも笑う。もはや恥ずかしいとすら思えない。底が抜けてしまったようだ。ただ笑うしかない。
593 :
たるほ(3/3) ◆hemq0QmgO2 :2007/11/25(日) 21:44:09.94 ID:o/tnFOBqO
「ところで」 二人でしこたま笑った後、ガラスの灰皿の中の煙草をいじくりながら春野が言った。 「どこまで本気だったの?」 ひんやりとした風がカーテンを揺らして、春野の髪をさらりと撫でつけた。ほんの少しだけ、戦慄する。 「どこまでって、全部本気だよ」 言い終えるや否や、ぼくは自分でも信じられないほどすばやく身を乗り出してキスをした。 三日月のマグカップが倒れて、コーヒーの残りがカーペットへこぼれ落ちる。かまいもしない。 猿よりも何よりも原始的に、文学的になり、テーブルごとひっくり返してでたらめにだきしめた。 「しりとりしない?」枕元で春野がささやく。 「いいよ」 「じゃあ私からね、しりとり」 「リチャード」 「どんぐり」 「リチャーズ」 「ずんぐりむっくり」 「リチャードソン、あ」 「ふふ、私の勝ち」 「じゃあ、もう一回」 ぼくはまたのしかかる。春野が笑う。「マイ、スイート、チョコレット」、粘っこく、 甘ったるい声でささやく。転がったマグカップのお月さまが遠慮がちに、ぼんやりと光っている。(了)
594 :
◆hemq0QmgO2 :2007/11/25(日) 21:45:25.16 ID:o/tnFOBqO
終了です ああ、この投下後の感覚、久しぶりだぜ……
595 :
うんこ 0/1 ◆fXqZWh/VCo :2007/11/25(日) 21:49:06.11 ID:EQ5BHyx70
品評会投下します 1レス
596 :
うんこ 1/1 ◆fXqZWh/VCo :2007/11/25(日) 21:49:38.56 ID:EQ5BHyx70
うんこが飛んでくる。道行く人々の間を縫うようにではなく、上空を飛んでくる。 臭いはうんこのそれだとはっきり分かる程の強さだが、すぐ傍にある感じはまだしない。遠くから、飛んできている。 臭いを嗅ごうと強く息を吸うと、まるで僕とうんこを繋ぐ糸を鼻から吸い込んでいるような感じがする。分かっている。 うんこが近付いてくるのは、分かっている。 僕は、うんこを待っている。いや、来ないほうがいいのかもしれない。けれども、来る。そして、今の気持ちのまま なら、うんこが来ても大丈夫だと思える。意識を、集中しろ。 アナウンスが鳴り、僕の名前が呼ばれる。僕はアップを脱ぎ、テニスシューズの紐をしっかりと締めてから、コートへと歩き出す。 たくさんの人を避けながら進むうちに、ラケットを握る手の平から汗が出てきた。舞い上がっているのか、頭がうまく 働かない。人ごみを避ける動作が不自然になった。できるだけゆっくりと息を吸う。芝と土の混ざった匂いがする。 うんこは、どこだ。落ち着け。もうすぐ始まる。あるんだ。飛んできている。茶色い物を想像しろ。うんこだ。うんこが、 空を飛んでいる。もううんこからは僕が見えているかもしれない。臭いを嗅げ。よし、ある。臭いがする。うんこ、うんこうんこ うんこ――うんこよ、ずっとそこにいろ。僕の頭の片隅に。 コートを囲む観客の数は、昨日の準決勝の三倍はいた。相手はもうコートの中で待っている。あとは主審が来たら、始まる。 もうここからは、一度も失敗はできない。僕は金網の扉を開け、コートの中へ入った。気を抜くと肩が上がり、体がびくびくと 震えだしそうだったが、僕はただ懸命に頭の中でうんこを思い描いていた。 大会本部のある方向から、スコア表とボールを持った主審がやってきた。うんこは僕のほぼ真上まで来ている。 相手選手がコートの中央へと歩き出した。主審がコートへ入る。僕はラケットを握る力を緩め、ネットとその向こうにいる 相手をしっかりと見据え、コートの中央にうんこを落とした。よし。試合が、始まる。 完
597 :
ツキアカリ ◆1xAfNYTGOo :2007/11/25(日) 21:49:46.23 ID:vTyx4xGT0
品評会、投下しちゃいます〜
598 :
ツキアカリ ◆1xAfNYTGOo :2007/11/25(日) 21:50:24.32 ID:vTyx4xGT0
聞いた、しっかり聞いた。間違いなく私の家の庭を誰かが歩いているのだ。 近隣は寝静まっているのだろう、外は静かで、月の光が優しく照らしている。でも、その静けさを壊す足音 を私は聞いた。スタンドライトをつけて本を読んでいた私は、本を持ったまま足音に聞き耳を立てていた。 あちこち歩き回っているその「誰か」が、玄関を開けようとする音が聞こえた。 ―――泥棒だ。 そう思うと、急に怖くなってきた。全く動けない。背筋が凍る。 「お父さんたちに知らせなきゃ……」 しかし、両親の寝ている部屋は二階、私がいるのは一階。動くのでさえ怖いのに階段を上るなんて到底無 理だと思った。 泥棒の足音は、まだしっかり聞こえていた。ずっと歩き回って進入ルートを探している。 庭に隣接する私の部屋の窓も「ガチャガチャ」という音を立てる。 その時「ドサッ」と、私の足に何かがぶつかった。 「痛ッ!」 持っていた本が私の足に落ちた。窓の音にびっくりして本を落としてしまったのだ。気づかれたかもしれな い、それぐらい大きな音だった。 泥棒の足音はそれでも、止まない。良かった、気づかれなかった。 その安堵と足の痛みからか、私は少しずつ冷静さを取り戻しつつあった。両親に知らせるのが先決だとは思 ったが、それでも階段を上るほどの勇気はない。 まずは武器だ! 武器さえ持てば、もっと心が落ち着くかもしれない。私は、泥棒に気づかれないようにス タンドライトをつけたまま台所へ向かった。 台所は真っ暗で、私の着ている白いパジャマが暗闇に馴染んでいる。まるで、別世界に来たようだ。もうす ぐ冬だということもあり、この部屋はとても寒かった。 まだ、洗われてない晩御飯の食器類たちの中に目当てのものを見つけた。濡れていて、少しキュウリの輪切 りがついている。私はそれを手に取った。 「よし、これで大丈夫だ」と、私は思った。思い込みたかった。
599 :
ツキアカリ 2/4 ◆1xAfNYTGOo :2007/11/25(日) 21:51:06.64 ID:vTyx4xGT0
でも、そんなものはただの気休めでしかないことも分かっていた。足はずっと震えっぱなしだった。怖くな いはずがないのだ。私は中学生で力がない、それなのに一人で泥棒と戦おうとしているのだから。 武器を持ったら恐怖など消えると思っていたが、全く変わらない。 「どうしよう……どうしよう……」 私は焦りだす。この台所からでも足音が聞こえるほど、泥棒は私の近くにいた。 「!!!!!!」 そのとき、私は声にならないほど低い音量で叫びを上げた。 台所から見える大きな窓が開いているのであった。 私はとっさに走り出した。 確かにこの部屋は、寒かった……! 寒すぎた! 何で気づかなかったんだろうか! 「ふぅ……」と、安堵のため息を漏らしながら窓を閉めようとした。 が、私の目の前には「大きな体のシルエット」がカーテンの向こうに月の光に照らされていた。シルエット で分かる――男だった。 私は勇気を出して持ってきた包丁を持ったまま動けなくなった。 窓が開いてることに気づいたのだろう、泥棒はさらにこっちに歩んで来た。私にはまだ、気づいてないんだ ろう。 私のアドバンテージは気づかれていないこと、唯一それだけだ。でも、一つある。一つあるんだ。そう思う と、力が抜けてくる。包丁だってあるんだ、私にだってできる! 私は、窓から死角にあるテレビの裏に隠れた。奇襲をかければ、勝てるかもしれない。 泥棒が、カーテンをくぐる。その巨体が肉眼ではっきり捉えられた。いつも以上に感覚が研ぎ澄まされてい く。大丈夫、まだこっちには気づいてない。 泥棒は、私の家に上がりこむ。よりいっそう背は高く、体は大きく見える。そして、手に光るものを持って いた。 ――よく見ると、そいつの手にはナイフが握られていた。
600 :
ツキアカリ 3/4 ◆1xAfNYTGOo :2007/11/25(日) 21:51:47.77 ID:vTyx4xGT0
銀色に輝く光を見たとき、私は何かが吹っ切れた。 「ウアアアアアアアアァァァァッ!」 私は大声で叫びながら泥棒に飛びかかる。右手に持った包丁を、突き出す。手ごたえがあった。泥棒の背中 に突き刺さった包丁を私は引き抜く。血が噴出す。これは効いたはずだと思った。 しかしそれでも、泥棒は倒れなかった。泥棒は私を見る。 「糞ガキがああああああぁぁぁぁぁっ!」と、泥棒は怒りの声で叫びながらナイフを私のほうに向けて突進し てきた。だが動きが鈍かった、背中の傷が効いているのだ。私は泥棒の突進をヒラリとかわした。 もうここまできたら、殺さなければ殺されるのだ。もう泥棒を殺すことしか頭にはなくなった。 泥棒は、背中を抑えてうずくまっている。かなりの血の量が出ているのだ、動くことさえもかなり痛いはず だろう。 自分が殺人犯になることとか正当防衛のこととか、そういうことは一切考えていなかった。楽しかったのだ 。こんなにスリルのあることなんてめったにない。怖がりの私だけど、どこかでこういうものを求めていたの だと思う。 私の体は夢のように軽かった。私は、うずくまる泥棒に少しずつ歩み寄った。そして、もう一度背中に包丁 を突き刺そうとした。 しかし、泥棒は私の足を掴み思いっきり引っ張った。私は床に転げ落ちた。包丁はしっかりと握ってあった ので、落とすことはなかった。 すぐさま、間をとって立ち上がる。泥棒も苦しげに立ち上がっていた。開いた窓から差す月の光は、二人だ けを照らし出していた。泥棒の目を見る……その目も猟奇的な目をしていた。殺し合いを楽しむような目。 先に動き出したのは私だった。速くはない足で、間をつめる。興奮はしていた、でも冷静だった。泥棒も最 後の力を振り絞り、私を待ち構える。 普通に刺しあっては負ける、向こうが手負いだからといってパワーは段違いなのだ。私なんかは簡単に弾き 飛ばされるだろう。私は、交わる瞬間しゃがみこんだ。大きい体の泥棒には対応できなかったのだろう。私は 泥棒の腹に包丁を突き刺した。勝ったと私は確信した。 泥棒はもう全く動かない。死んだのである。 私は、その場にへたれこんだ。あんなにも私は興奮していたのに、実際の目の前に広がる血の海が恐ろしく 感じたのである。私は意識が朦朧としてきて、いつしか気を失っていた。
601 :
ツキアカリ 4/4 ◆1xAfNYTGOo :2007/11/25(日) 21:52:43.73 ID:vTyx4xGT0
次に意識が戻ったときは、布団の中で寝ていた。頭がぼんやりしている、だけどこびりついてる。昨夜の出 来事が。私は、起きたばかりだというのに急いで台所まで行った。 そこには、何もなかった。血の海も何もなかった。包丁も元の場所に綺麗にそのままあった。 ――なんだ、夢だったんだ。 それにしても、なんて夢を見てしまったんだろう。怖がりの私が人を殺せるわけなんてないのに。 でも、夢の中の私は大胆で聡明だった。 「私も夢の中みたいな自分になれたらいいのになぁ」と、切にそう思った。もちろん、人を殺したいなんて意 味じゃない。 私は、いつも引っ込み思案でなかなか前に出れないところがある。そこを直したいと、ずっと思っていたの だ。私は真っ赤なパジャマを脱いで、制服に着替えた。 そういえば、お母さんもお父さんも起きている時間のはずなのにまったく気配がしない。どうしたんろう、 珍しく二人とも寝坊をしているのだろうか。私は両親を起こすために、階段を上った。 「おはよう」と、扉を開けたのだが誰もいなかった。変だ。何かあって、二人ともでかけたのだろうか。 不思議に思いつつも、下へ降りて歯を磨いた。 さあ、今日から一週間頑張ろう。いつかはきっと、私もクラスの中心になるんだ。靴を履きながら、そんな ことを思っていた。 玄関を開く。外は、綺麗な青空だった。 「今日もいいことがありますように、行ってきます」と、誰もいない家を出た。 すると、両親の乗った車が家に帰ってきた。 「あれ……二人ともどこ行ってたの?」 「ちょっとゴミ出しにね」と、二人が口を揃えて言った。 了
602 :
ツキアカリ ◆1xAfNYTGOo :2007/11/25(日) 21:53:20.97 ID:vTyx4xGT0
終わりです。 自分でまとめてきます。
603 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:55:48.46 ID:80JOivGw0
>>594 申し訳ございません。
まとめに転載する際、1レス目のタイトルちょろっとミスりました。
ごめんなさい。
とりあえずまとめずみ。
604 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:56:59.68 ID:SZMKjASb0
初めて何か書いてみるからお題くれくれ
605 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:58:36.22 ID:80JOivGw0
606 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:59:42.03 ID:SZMKjASb0
>>605 把握
初めてとか言ったけどお題貰って投稿せずに消したのは数知れず…
607 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:00:26.47 ID:vTyx4xGT0
608 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:01:08.55 ID:+zb6a+1i0
あと20行削れば品評会に参加できる…… 誰か応援してくれorz
610 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:02:16.53 ID:9Qb+dzj5O
たたーかうー君ーのうーたをー
611 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:04:32.39 ID:vQsE9XOA0
よし今から書くか
612 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:06:54.48 ID:uEobEcCbO
あと一時間ッ!
613 :
【品評会】空想推理少年 0/5 ◆PaLVwfLMJI :2007/11/25(日) 22:07:59.86 ID:Eyfzzuf+0
戦わないやつらが笑うだろう 品評会投下します
614 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:08:34.32 ID:80JOivGw0
>>608 1行の文字数を縛ってたりはしないかい?
615 :
【品評会】空想推理少年 1/5 ◆PaLVwfLMJI :2007/11/25(日) 22:08:51.71 ID:Eyfzzuf+0
推理をする上で最も重要なのは疑うことだ。それが和弘の持論だった。 姉の影響でジュブナイルミステリを読み始め、和弘は次第に本格ミステリへと傾倒していった。パズルとしての魅力もさることな がら彼を惹き付けたのは、常識をある種の煙幕とした奇抜なトリックの数々だった。常識という枠組みが思索の幅を狭めることを、 ミステリを通し知った。 しかし、小学六年生という年齢はあまりにも幼すぎる。 客観的に物事を捉えるにしても、広角的な視野でもって推断するにしても経験が不足していた。適切な判断を下すには知識に欠け、 和弘の脳が構築するのは推理と呼べる代物ではなかった。観念的な空想を弄んでいるに過ぎない。社会通念には疑念を抱くくせ、自 らの組み立てた推論には分別なく飛び付くのだ。己の思考もまた目を曇らせる色眼鏡になるというのに。 和弘は主観を論拠とし、穿った見方をしているつもりだった。だが、他者と異なる意見を口にして一人悦に入っているだけだ。 つまるところ、思春期心性の発露したごくごく一般的な少年なのだ。「自分は特別である」という誇大妄想にも似た妄念に取りつ かれるのも、その年代にはありがちだ。 和弘は本格ミステリという少し特殊な趣味を持ているというだけだった。 昨夜の強風はすっかり止み、秋の日差しは午睡を誘うように暖かかった。 日直の号令で帰りの会が終わると、途端に教室は放課後の喧騒に包まれた。友人と二人連れ立ち、壮年の担任教諭に「せんせー」 とどこか媚びた声で教示を請う女子。我先にと廊下へ飛び出しグラウンドへと向かう男子のグループ。学習机に腰を下ろし、歓談に 花を咲かせる者もあった。 窓際の席から緩慢な動作で立ち上がった和弘は、大きく伸びをして深呼吸をした。「ふぁーあ」と間の抜けた欠伸を漏らしつつ、 学習机の隙間を縫い教室後方へと向かう。スチール製のロッカーには、ランドセルや給食袋が乱雑に入っている。それらを手に踵を 返し席へと戻った。引き出しから教科書や筆記用具を取り出し荷物をまとめる。 生欠伸を噛み殺し、のろのろと帰り支度をしていた和弘の後頭部が軽く叩かれた。乾いた音が響く。ハンドクラップにも似た軽快 な音だ。 「おう! 帰ろうぜー」 隣のクラスから来た隼人が威勢良く声をかけた。 和弘は立ち上がり「あぁ」と曖昧な返事を返す。ランドセルを背負い肩紐の位置を直していると、廊下に佇む紗枝の姿が目に飛び 込んできた。視線が交差する。紗枝が微笑を浮かべ手を振った。 和弘、隼人、紗枝の三人は家が近くほぼ毎日一緒に下校していた。いわゆる幼馴染だ。思春期ともなれば、お互いに性差を意識し 徐々に疎遠になっていくものだが、彼らがその関係を損なうことはない。肉体的な変化をそれぞれが自覚しているが、幼稚園へ通う 前から仲よくしてきた三人だ。共にいることが当たり前となっている。 紗枝の愛嬌ある笑顔が、朝の集団登校を喚起させた。班長の紗枝は「交通安全」の文字がプリントされた登校旗を持ち十人の児童
616 :
【品評会】空想推理少年 2/5 ◆PaLVwfLMJI :2007/11/25(日) 22:09:35.12 ID:Eyfzzuf+0
を率いていた。コスモスをあしらったバレッタで、シニョンにされた亜麻色の髪。陶磁器のように白くつややかなうなじ。後ろを歩 く和弘は、紗枝が女めいてきたことに気付きどぎまぎとした。 そして隼人は。集団登校の集団にその姿がなかったことに思い当たった。 「朝いなかったけど、遅刻でもしたの?」 「そう。昨日兄貴と映画観に行ったら映画づいてさ。帰りにDVDレンタルして夜遅くまで見てたんだ。そのせいで寝不足」 どこか誇らしそうに隼人が笑う。 肩を並べ二人が教室から出ると、紗枝が近づいてきた。そのまま三人で廊下を歩いていると、聞いてくれよと隼人が話し始めた。 「映画行くとき電車でイヤなことがあったんだ」 「兄妹三人で行ったの?」 「まさか。ホラーを愛が見れるわけないだろ。兄貴と二人でだよ」 愛というのは隼人の年の離れた妹だ。年が開いていると疎ましく感じるものだが、隼人は幼稚園の妹を寵愛していた。その溺愛ぶ りから隼人はシスコン、果てはロリコンではないかという噂が飛び交っていた。しかし、和弘は寛容だ。たとえ、隼人がロリコンで あろうと親友を辞めたりしない。 「ほんと隼人の家は仲いいよね」 「それで、電車での話だけどさ――」 隼人が語ったところによると、幼児をあやす母親に「かわいい子ですね」と話しかけたら睨まれてしまったらしい。挙句、席まで 移動されてしまったとも。 和弘の琴線に触れたのは「母親」という単語だった。 電車に乗り合わせただけの短い時間で、なぜ母親と判断できたのかと首を捻る。 幼児が「ママ」と呼んだからだろうか。だが、年端もいかない幼児が見ず知らずの女性や、知り合いの女性を「ママ」と呼ぶこと など珍しくもない。現に愛は、紗枝のことを「おかーさん」と言う。 電車の中だけでは母親だと確信することは不可能。ならば、隼人は以前からその女性を知っていたとするべきではないか。 しかし、旧知だとすれば齟齬が生じる。女性は知り合いから声をかけられたというのに、逃げるようにして席を立ったのだ。 避けられるからには原因があるのだろう。知人だが何らかの理由で忌避される。そこまで思考し、和弘は一つの結論に達した。 隼人はストーカーに違いない。それは席を移りたくもなるだろう。しかし、和弘は寛容だ。たとえ、隼人がロリコンにしてストー カーであろうと親友を辞めたりしない。 「けど映画いいなー。わたしはうちで法事があったからずっと家にいたよ。カズ君は?」 一人考え込んでいると、昇降口で靴をはき替えながら紗枝が訊いた。 「ぼくはうちで本読んでたよ」 「カズ君最近本読んでばっかりだよね。かまってくれなくてわたし寂しいな」
617 :
【品評会】空想推理少年 3/5 ◆PaLVwfLMJI :2007/11/25(日) 22:10:34.33 ID:Eyfzzuf+0
どこまで本気なのか、紗枝は甘えるようにそう言った。 抜けるような青空の下。三人は飽くことなく喋りながら帰路についた。 丁字路に差しかかった時だった。紗枝が空き地に寄ろうと提案したのは。 遠回りになると渋っていると、紗枝は携帯電話を開き何やら操作した後、ディスプレイを和弘に見せた。 そこに映っていたのはつぶらな瞳の仔犬だった。どうやら芝犬らしくキツネのようでもある。舌を出し、段ボール箱の中からこち らを見上げている構図だ。 「カズヒロは図書委員でこの間いなかったから知らないんだよな」と隼人。 「なにが?」 「この先に空き地あるだろ、駐車場になるとかいう話の出てる。そこに捨て犬がいたんだよ」 「もう誰かが拾っちゃっていないかもしれないけど、見に行こうよ」 紗枝が和弘の手を取り「ねっ」と一生のお願いとでもいうように顔の前に手を立てた。 「ほら行くぞ」と隼人が和弘の背中を叩き催促した。 彼にはやたらと人の体に触る癖があった。妹を安心させるためのボディータッチが身に染み付き、意識せずとも手が動いてしまう といった感じだ。さすがに異性には遠慮が出るが、同性であれば肩や、頭、尻といわず叩きまくっていた。その光景は一部の人間に は奇異に映るらしく、ホモではという風聞もちらほらと。しかし、和弘は寛容だ。たとえ、隼人がホモであろうと親友を辞めたりし ない。 二人にせっつかれる形で和弘は歩き出した。 「もうちっちゃくって可愛いんだよー。お母さんが犬嫌いじゃやなかった飼えるのにな」 「ウチはもう猫が二匹もいるから無理だな」 「ぼくんとこもダメだな。ねーちゃん喘息持ちだし」 などと話し合っている間に件の空き地に着いた。 一昨年までは瓦葺の日本家屋が建っていたが、新居を他の土地に構えたため打ち壊され更地となった。古井戸は残っていたが、そ れも子供が落ちると危ないということで昨年埋められてしまった。セメントの井戸枠は何故か撤去されないままだ。樹齢四十余年と なる柿木が味気ない風景にわずかな彩りを添えている。 空き地に足を踏み入れた時、違和感を覚えた。仔犬が入っていると思しき段ボール箱のせいではない。脳裏に広がる違和は輪郭が 不明瞭で、その正体はようとして知れなかった。 もどかしく感じながらも、紗枝に続き段ボール箱を覗き込む。 そこに仔犬の姿はなかった。底に敷かれた新聞紙の上には、薄汚れたタオルケットがあるだけだ。 「誰かが飼うことにしたのかな」
618 :
【品評会】空想推理少年 4/5 ◆PaLVwfLMJI :2007/11/25(日) 22:11:07.90 ID:Eyfzzuf+0
紗枝は残念そうに口にした。だが、和弘は素直に頷くことが出来なかった。 「普通、連れて帰るなら段ボールも一緒に持ってかないか? それかどこかに捨てるか。こんなとこに放置しとかないだろ」和弘は、 名探偵がするようにタオルケットに手を当てた。「冷たい……。もう大分前にいなくなったみたいだよ。もしかしたら、どこかに歩 いていって事故にでも……」 「カズ君のバカッ!」 そう叫ぶ紗枝を和弘は呆然と眺めていた。紗枝に怒鳴られることなど想像だにしなかった。 「大丈夫だよ。近くにいるって」 妹の世話を焼き慣れているのか、隼人が優しい言葉で紗枝をなだめる。 何も出来ずただ呆けていた和弘の背中が肘で突かれた。 「突っ立ってないで手分けして仔犬探すぞ」 ほら、と促した後、隼人は紗枝と連れ立って空き地から出て行った。 こういう場合名探偵はどうしていただろうか。和弘は灰色の脳細胞を働かせる。むやみに探し回っても発見することは叶わない。 まずは考えることだ。 落ち着ける場所を求め古井戸へと向かう。途中、昨夜の強風で飛ばされたらしい一畳ほどのベニヤ板に足を取られ転びかけた。 井戸枠は和弘の腰くらいの高さで、座るのに丁度よい。後ろ手に掌を乗せて腰掛けると後頭部に柿の葉が触れた。地面に視線を落 とすと、橙に染まり始めた柿がいくつも転がっていた。まだ旬には遠そうだが、いくつかは既にカラスについばまれている。 和弘はいつものように思索に耽り空想を組み上げていく。仔犬の歩いて行ける距離など限られている。早々に紗枝か、隼人が見つ け出し両手で抱いて戻ってくるのではないか。 いや、違う。別の可能性に和弘は気付いた。誰かが意図的に隠していることもあり得る。たとえば、仔犬の発見者となるために。 そこまで考え一気に推論は飛躍した。隼人が自作自演しているのではないかと。 いなくなったと騒ぎ、仔犬を探し出してみれば紗枝の気を引くことが出来る。なにしろ隼人は、ロリコンでストーカーにしてホモ なのだ。そんな回りくどい方法を取っても不思議ではない。しかし、和弘は寛容だ。たとえ、隼人がそんな浅ましい手段に出るよう な少年であろうと親友を辞めたりしない。 仔犬を隠せて、なおかつ見つかりにくい所。灯台もと暗し。頭をよぎった言葉にハッとした。探しに行くと言い空き地を出てしま えば、しばらくは誰も戻ってくることはない。まさに盲点ではないか。 そして何より匿うに相応しい場所がある。そう、古井戸だ。 井戸枠に飛び乗り、中に首を突っ込みつぶさに見まわす。半径一メートル程度の穴は柿の葉とゴミだらけだった。煙草や雑誌の切 れ端、スナックの袋などで埋まっている。膝をつき手を伸ばした。 葉に指先が触れようとした瞬間――何かが蠢き柿の葉がカサカサと音をたてた。思わず手を止め、音のした方に首を向けて目を凝 らす。ゴミの間から覗くのは仔犬の鼻先だった。すぐさま和弘は葉をかき分け仔犬を抱き上げた。
619 :
【品評会】空想推理少年 5/5 ◆PaLVwfLMJI :2007/11/25(日) 22:11:40.77 ID:Eyfzzuf+0
仔犬はひどく弱っているようだ。隼人に、見つけたが衰弱しているとメールで伝えた。 十数分後。コンビニの袋を提げた紗枝と、隼人が現われた。紗枝には隼人から連絡したらしい。 「よかった」と紗枝は安堵したように胸を撫で下ろし、コンビニの袋からドッグフード、ミルク、タオル、紙皿を取り出した。「カ ズ君」と言うのでそっと仔犬を手渡した。 「でかしたぞ」と隼人に繰り返し背中を叩かれた。興奮しているらしく力加減が出来ていない。 「いたいって。もうやめてくれよ」 「あーそうか、すまん」と上機嫌に笑う隼人を見るにつけ、先刻まで胸に渦巻いていた疑念は失せた。 「けどカズヒロ。どこで見つけたんだ?」 「そこの井戸の中にいたよ。なんか柿の葉っぱに埋もれてた」 「おー、なるほど」 「でもさ、どうやって井戸のなかになんて入ったんだろ。とてもじゃないけど、仔犬じゃ登れない高さだよコレ」 「うん? 何言ってんだ。あれだろ」 隼人がベニヤ板を指差した。先ほど和弘がつまずいたものだ。 「えっ?」 「だからさ、よく考えてみろよ。あの板はどこにあった?」 その段になってようやく和弘は、ここへ来た際に抱いた違和感の正体に思い至った。 「井戸に立てかけてあったんだ! じゃあ、なんで井戸に落ちたりなんかしたんだ」 「たぶん、お腹がすいたんじゃないか」 「どういうこと?」 「お前、ちょっとは自分で考えろよ」呆れたように溜息を吐いた後、隼人は解説を続けた。「犬ってのは鼻が利くだろ。だから食べ られそうな柿を見つけ、立てかけてあったベニヤ板を登る。そして枝垂れかかった柿を食べようとして転落、と」 「おぉ! そのあと昨日の風で板は飛ばされ、仔犬は散った柿の葉で隠れちゃったのか」 「そういうこと」 ふと、仔犬を見やると紙皿に注がれたミルクを舐めていた。紗枝が顔を綻ばせ仔犬の背中をさすっている。 「ほら、謝れよ」 和弘は紗枝のそばに歩み寄り「さっきはゴメン」と謝罪を口にして頭を垂れた。 「いいよ、許してあげる。この子見つけてくれたもんね」 紗枝の莞爾とした笑顔が和弘の胸に沁みた。 <了>
620 :
【品評会】空想推理少年 5/5 ◆PaLVwfLMJI :2007/11/25(日) 22:13:15.23 ID:Eyfzzuf+0
以上です なんかいろいろ無理やりだ
621 :
◆QIrxf/4SJM :2007/11/25(日) 22:13:52.34 ID:onTP6jZy0
品評会用投下します
622 :
Candied nights (1/5) ◆QIrxf/4SJM :2007/11/25(日) 22:14:56.41 ID:onTP6jZy0
辺りが歪んで見える。 深夜の路地裏っていうのは、どことなく恐怖を感じさせるものなのだろうが、今の俺にとってはワンダーランドでしかない。 電灯が不規則に点滅している。しかもノの字に曲がっている。やわらかそうに見える。 地面の非現実的なデコボコに、足が思うように動かせない。いつ転ぶかもわからないが、緊張感は無い。楽しむ余裕さえある。 「おおっと、あぶない」 俺がふらふらしているのか、地面がグネグネしてんのかはわからないし、そんなことはどうでもいい。 ただ一つ言える事は、 「今、俺はものすごく酔っ払っている」 この事実がとてつもなく大事だ。言い訳になる日本が大好き。 歪に体をくねらせている二人組みのねーちゃんが、俺の前を歩いている。 キャッキャ騒ぎながら、何かをしゃべっている。片方が赤で、もう片方が白い服を着ていた。それ以外は、よく見えない。 俺は追いかけるときにガードレールに三度体をぶつけて、ねーちゃんに声をかけた。 「よう、これからどっこいっくのん?」 二人は俺を見た。両方とも、三日月みたいな顔をしていやがる。不細工を引いちまった。 「どこにも。じゃあね」 赤いほうの女が素っ気無く言って、そっぽを向いて歩き出した。三日月の模様が、顔面から後姿に変わった。 「けっ、つれねー」 俺は少しだけちょっかいをかけてやろうと思って踏み出した。 が、地面がおそろしくへこんでいた。おれの、たいせいが、みだれる! 「ほがっ」 それは、不意に出た言葉だ。呂律が回っていて素晴らしい。 歪んだ視界が、上方へ流れていく。ふわりと体が浮いているような感覚だ。酒がほんのり回っているときの、あの感じに似ている。 (まあ、いいか)これは言葉にならなかった。 顔面が地面に激突した。 俺は衝撃を和らげるために、体を転がした。 ごーん、と鐘の鳴る音が響いた。あれだ、ガードレールの柱だ。頭をぶつけたんだ。 痛い。純粋な涙が零れ落ちているような気がする。もちろん、鼻の穴から。 「な、なに?」 女が振り向いたようだ。 「ちょ、ちょっと、なにやってんのよ!」
623 :
Candied nights (1/5) ◆QIrxf/4SJM :2007/11/25(日) 22:16:00.20 ID:onTP6jZy0
絶叫している。 「鼻血! 鼻血!」 (喚くな、アホ)これは声にならなかった。 「ティッシュ詰めなきゃ!」 覗きこんできた顔が異様にでかい。ガラス玉越しに見ているような、そんな感じ。満月というには、クレーターが無い。 女が二人して、俺の鼻の穴にティッシュを詰め込んだ。 夜空は夜空のままで、女と視界の端に見える建物が歪んでいる。そして、俺の鼻にはティッシュペーパー。 「ちょっとしっかりしなさいよ!」 女二人に体を持ち上げられた。 俺は両の足をしっかりと地面につけて立ち上がる。 「へへ、悪いな」 ティッシュから滲み出た鼻血が滴り落ちている。 「あんた、酒臭い」 赤い方の女が言うと、白いほうの女がなだめる様に言った。 「でも、救急車とか呼んだほうが――」 目の前では赤と白の女が渦を巻いている。そんな飴、あったような気がする。 「熟したロリポップ」 俺は思わず言ってしまった。酒のせいなのだ。 「なんですか?」 白はかわいい声をしていた。なんというか、優しさがこもっている。聖母というやつだ。 「なんでもねえや」 白の素敵な声を聞いただけで、俺は満足した。 「んじゃ、呼び止めて悪かったな」 「あっそ。もう関わんないで」 赤いほうは俺にポケットティッシュを差し出して、そっぽを向いた。 「あ、あの――」 「じゃあね」 赤が白の言葉を遮る。 「ま、待ってよ」 二人は行ってしまった。
624 :
Candied nights (3/5) ◆QIrxf/4SJM :2007/11/25(日) 22:16:45.09 ID:onTP6jZy0
まず、ここがどこなのかがわからない。 地球は神様によって作られたのだ、とどこかの宗教家が言っていたから、今は神様に絞られている。そんな地面の上を適当に歩いていた。 視界にも慣れてきていた。 ポップな気持ちを抱いて、チッチッと鳴く鳥のような足取りをイメージすれば、まっすぐに歩くことはおよそ不可能ではないのだ。それが他人にとっての真っ直ぐであるかどうかは、問題ではない。 今宵もいつかは終わりが来るように、この酔いもいつかは終わりが来る。 ならば歩き続けるまでだ。 ゲシュタルト崩壊していてよくわからない看板を通り過ぎて、路地裏を進み続けた。 さらなる路地裏を求めて、道ならぬ建物の間に入る。 それは、新たな路地裏につながっていた。 鼻に詰め込まれていたティッシュを捨てて、飛び込んだ。そして転んだ。 「ちょっと、何すんのよ」 聞き覚えのある声だ。 立ち上がって前方を見ると、それぞれ赤と白の服を着た二人の女がいた。 運命的な再会だ。 なんだか面白かったので、女にちょっかいをかけようと近づいた。 その奥に、新芽のゼンマイのような体をした男たちが二人いることに気づく。 「ねーちゃん、遊ぼうよ」 二つのゼンマイはひどく下品な言葉を吐いて、女の腕を引っ張っている。 赤と白、両方が必死に抵抗している様子は、なんだか筆記体のXがくねくね動いているみたいだった。 止めてみたくなったので、女の肩を叩こうとして踏み出した。 今日の地面は、非常にデコボコしている。 要するに、二人の女に割って入るようにして転んでしまったのだ。 「あんた!」 赤のヒステリックな声がする。 「なんだ、てめえ!」 片方のゼンマイが怒ったような声を上げていた。 立ち上がってゼンマイの顔を見た。新芽が開くとどうなるんだっけ? 「何も詰まってなさそう」 思わず声に出してしまった。
625 :
Candied nights (4/5) ◆QIrxf/4SJM :2007/11/25(日) 22:17:25.75 ID:onTP6jZy0
「黙れや!」 ゼンマイの腕はやはりゼンマイだった。それも、ふやふやの新芽である。 それが俺の顔を目掛けて飛んできたのだろうが、その筋はとても歪んで見えたので、難なく避けることができた。 条件反射で、俺も拳を突き出す。地面が歪んでいるおかげで、いつもよりも体重がのっていた。 ゼンマイが倒れると、俺も脚がもつれて転んでしまった。ちょうど、俺の肘がゼンマイの鳩尾にヒットする。 「んぐゎ」 ゼンマイが面白い声を上げた。 立ち上がって、もう片方のゼンマイを見た。 「ひ、ひい」 片方のゼンマイは逃げ出した。 なんだか面白かったので、俺はにやりとして女のほうを振り向いた。 「おっとっと」 わざと転んだふりをして、二人の女に飛び込む。 赤は飛び退いたが、白い方が抱きとめてくれた。 「そ、その。ありがとうございました」 かわいい声だった。 「ちょっと、あんた、鼻血出っ放し」 「おうおう」 俺はティッシュを取り出して、鼻に詰めた。 「こいつも鼻血吹いてる」 残念ながら、そこで伸びている男の分は使い果たしてしまった。 「にしても、ここどこ?」 俺が言うと、赤い方の女がため息を吐いた。 「タクシー呼んであげるから」 「金なんて無いぜ」 「私たちが出すわよ。礼くらいするわ」 俺たちは路地裏を脱出して、大通りに出た。 赤がタクシーを呼び止めて、俺がそれに乗り込む。 「私、付き添いますから」 白の声はまるで鈴の音のようだ。いわゆる女神である。
626 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:17:33.69 ID:zDMeCN1P0
やべぇ、品評会作品間に合わないかもしんねw メモ帳じゃ行数とか字数とかわかんないんだぜ。 誰かお薦めのフリーソフト教えてくれ。
627 :
Candied nights (5/5) ◆QIrxf/4SJM :2007/11/25(日) 22:18:42.50 ID:onTP6jZy0
◇◇◇ 気がつくと、俺はベッドで横になっていた。腹のあたりが少し重い。 時計を見ると、ちょうど朝の七時だった。 記憶がよみがえってくる。 鼻に触れるが、鼻血は出ていない。 あんな酔っ払い方をするものか。 「あまりに空想的」 とりあえず、俺はこの一言で片付けることにした。 俺は上体を起こした。 床にとんぼ座りをした女が、俺の腹に突っ伏して寝ている。 女は白い服を着ていた。 「んん」 顔を上げた白い服の女は、きらきらしたロリポップだった。 「いいや、現実」と俺は言った。
628 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:19:49.96 ID:+zb6a+1i0
>>614 特に縛ってるつもりはないんだ。
単に俺の文才と削りのセンスがないだけなんだ。うん。
629 :
◆QIrxf/4SJM :2007/11/25(日) 22:20:09.55 ID:onTP6jZy0
以上。大いに遊んだw
630 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:21:45.49 ID:zDMeCN1P0
割り込んじまってすまんかった。
631 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:22:57.06 ID:j5rDAI0a0
632 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:27:21.48 ID:Eyfzzuf+0
そろっと読み始めようと思ったが 文章が頭に入らない病を患った
633 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:29:14.59 ID:j5rDAI0a0
>>632 おいしいものたべて
うんこしたらなおるよ!
ハ_ハ
('(゚∀゚∩ なおるよ!
ヽ 〈
ヽヽ_)
634 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:30:48.59 ID:vQsE9XOA0
ネタはあるのに書けないよ〜 る〜る〜らら〜あ〜はぁ〜 寝るか
635 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:32:13.83 ID:DsyHMnWi0
一時間切ったね
636 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:35:16.31 ID:shvuxvuB0
>>633 あーびっくりした。おいしい うんこ という文字列しか目に入らなかったからびっくりした
637 :
◆hOG3FfUkhE :2007/11/25(日) 22:36:12.47 ID:w6TGmXM+0
投下していい?
638 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:37:36.53 ID:uEobEcCbO
品評会か?
639 :
◆hOG3FfUkhE :2007/11/25(日) 22:38:56.31 ID:w6TGmXM+0
640 :
つくりかけのまち ◆hOG3FfUkhE :2007/11/25(日) 22:39:32.40 ID:w6TGmXM+0
ようちえんののそつえん式がおわって、家にかえったボクは、うれしくてしょうがなかった。 小学校の入学いわいにと自転車(かん字もおぼえた)を父さんがプレゼントしてくれたのだ。 おともだちとお別れするのはかなしかったけど、ボクだけの自転車を手に入れたというよろこびの前では かなしさも忘れることができてしまいそう。ボクはその日からまい日、自転車にのるれんしゅうをした。 なんでボクがこんなにがんばって自転車のれんしゅうをするかというと、ボクにはヤボウがあるのだ。 お母さんといっしょにまちにお買いものに行くたび、ボクはとてもふしぎにおもっていた。 こんなにたく山の人がなんでまちを歩いているんだろう?って。 本とうは、みんなあの曲がりかどを曲がったら、いなくなってるんじゃないの? お店のおむかいのあのたてものに入った人は、そこでいなくなってしまうんじゃないの?って。 テレビや本の中には、ボクの行ったことのないまちが、たく山でてくるけど、(ボクはもう本もよめるのだ) ボクは、おばあちゃんの家と、ボクの家と、ちかくのこうえんと、ようちえんとほいくえんと、 お母さんといくデパートと、いつもかい水よくに行く大あらいかい水よくじょうにしか、 行ったことがないのだ。 もしかしたら、ボクが行く前に、だれかがいそいでまちをつくって、たくさんのダレカがそこの人のふりを してるんじゃないのって。 だって、ボクがあそびに行くときは、お母さんに、ぜったいどこにいくのかをいいなさいっていわれてるし、 ひとりで知らないばしょにはぜったい行っちゃいけませんって、お母さんはとってもこわいカオでいうのだ。
641 :
つくりかけのまち2/2 ◆hOG3FfUkhE :2007/11/25(日) 22:40:03.23 ID:w6TGmXM+0
だから、ボクはヤボウがあるのだ。ボクは自転車にのって、だれにも、お母さんにもいわずに、 ボクがまだ行ったことのないばしょに行くのだ。もしかしたら、作りかけのたてものがみられるかも、 まだ人のいないまちがみられるかも。 まい日、自転車のもうれんしゅうをしたボクは、四日かんで一人でホジョリンなしで 自転車にのれるようになった。家のまどから、みていたお母さんが、手をたたいてほめてくれる。 ボクは『いまだ!!』っておもった。いまがヤボウをジツゲンするチャンスなのだ!! ボクはいきなりたちこぎをして、家の前のみちに出て、いつもこうえんに行くみちをもうスピードで走った。 お母さんがオニのようなカオをしておっかけてくる。「どこにいくの! ママに行き先を教えなさい!!」 やっぱり、お母さんはボクにつくりかけのまちをみせたくない、ダレカのなかまなのだ。 いつものこうえんはすぐにみえた。自転車はやっぱりとってもとってもはやい。お母さんやおともだちと 歩いていくと、もっともっとじかんがかかるのに。このはやさだと、まだまちは作りかけにちがいない。 ケイカクドオリだとボクはおもった。あのこうえんの次のカドを、ボクはまだ行ったことがないのだ。 ボクは、もうスピードでこうえんをとおりすぎ、次のカドを曲がった。なにか大きなおとがきこえて、 ふわぁっとカラダがかるくなった。すごい! マックラだ! やっぱりまちはつくりかけだったのだ!
642 :
◆hOG3FfUkhE :2007/11/25(日) 22:40:59.16 ID:w6TGmXM+0
超久しぶりに品評会作品です。以上で終了です 手際悪くて申し訳ない
643 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:51:21.61 ID:9Qb+dzj5O
気を付けよ
644 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:54:26.77 ID:9Qb+dzj5O
>>641 あ、642に言ってるみたいだね
違うので誤解なきよう
645 :
◆7BJkZFw08A :2007/11/25(日) 22:57:40.13 ID:zDMeCN1P0
品評会作品、投下します。
646 :
空想少女 1/5 ◆7BJkZFw08A :2007/11/25(日) 22:58:51.12 ID:zDMeCN1P0
「ねぇねぇ、馬に足が八本あったらどう思います? 気持ち悪いですか? 面白いと思いますか?」 石田大介は学校に向かう途中だった。 そこへ突然現れたのは、最近なぜか大介に付きまとって来る少女だ。 「……西坂さん、毎度のことだけど、空想は頭の中だけに留めておいた方がいいと思うよ。特に西坂さんの場合は」 彼女、西坂さゆりは、空想、それもとびきり妙な空想を突然大介にぶちまけてくるおかしな癖があった。 今年の春に同じクラスになって初めて大介は彼女のことを知ったのだが、その時の第一印象と現在の彼女は大きく異なっていると彼は思う。 最初は、肩のあたりまで伸びた奇麗な髪と、パッチリとした目が印象的な普通の女の子だと大介には感じられたのだが―― クラス替えをして最初の日、担任がくじびきで決めたとか言われる席順が発表された時、大介は彼女の前の席だった。 「石田大介君ですね? よろしくお願いします」 そう言ってペコリと頭を下げた時の彼女には、大介も一瞬ドキリとさせられたものだ。 ところがその日の下校途中、大介が一人になった時に彼女が不意に現れた。 「あの、こんにちは……こんばんは? 石田君?」 「え? あっ、ああ、えーと……西坂、さん?」 歩きながらのぎこちない会話、初対面に近いのだから仕方ないだろう。 「覚えていてくれたんですね、名前」 「あ、うん。席、後ろだしね……あ、大介でいいよ。石田じゃなくて。それで、どうしたの?」 「えっと、あの、その、う、梅干しの種を地面に植えて梅干しの木が生えてきたら、素敵ですよね?」 「ああ……そうかもしれないね」 返事をしてから大介はふと気付いた、この娘今おかしいこと言ったぞ、と。 「えっと……え? 梅干しの木? えー……」 「わかってますよ、そんなものは生えません。空想ですよ」 「あー……なんで俺に?」 「ちょっと、お話したかっただけです。ではまた」 そう言うと彼女はすっと別な道へ入り、大介の視界から消えてしまった。 それから彼女はちょくちょく大介の前に現れるようになった。 主に登校時間と下校時間の間、大介が一人の時を狙ったように現れる。 そしていつもの妙な空想話や、軽い世間話をした後ふいっと消える。 当初大介は、正直頭のアレな人なのかなと考えなくもなかったが、学校での彼女を見ていると至って普通なのだ。
647 :
空想少女 2/5 ◆7BJkZFw08A :2007/11/25(日) 23:00:03.12 ID:zDMeCN1P0
友人と話している姿も見かけるが、例の妙な話はしていないようである。 大介にも特に目立って話しかけてくることはほとんどない。 そんなことを不思議に思いつつも、大介は彼女との少しの会話を楽しんでいる自分に気が付き始めたのだった―― 「で、馬のことですけど、大介君」 と、彼女が再び馬の話を振ってくる。 「ああ、八本足の馬? 神話でそういうの、いたと思うよ? 西坂さんが言ってるのは、それのことかな」 「え、私が最初に思いついたと思ったのに……昔の人の方がずっと先に考えていたんですか……」 「うん、まあ、そういうのはよくあることだよ」 「ええ……すごいですね、昔の人は。ああ、私はそろそろ。ではまた」 そういって彼女は学校へ向かう人ごみの中へ姿を消した。 放課後、大介はある一つの決心をした。 以前からずっと気になっていることを彼女に尋ねてみるのだ。 つまり『どうして自分のそばに現れ、妙な空想話を自分にだけするのか』ということである。 言いようによってはうるさいからどこかへ行ってくれ、というように聞こえるかもしれないが、大介はそれをわかっている。 何とか相手に自分の言いたいことだけが伝わるように大介なりに考えたつもりだ。 気をつけながら下校していると、後ろから西坂さゆりが駆けてきた。 大介に追いつき、何事か口を開きかけたところで――大介は、彼女が言葉を発するより速く、例の質問をぶつけてみた。 彼女は驚いて目を丸くし、開きかけた口を閉じて立ち止まった。 そのまま少し表情をクルクルと変えながら何事か考えていたが――ついに口を開いて、 「大介君、本当にそれを知りたいですか?」 ほんの少しいたずらっぽい笑みを浮かべながら彼女はそう言った。 その表情に一瞬見入ってしまった大介だったが、「ああ、うん」とほとんど反射的に答えた。 「……そうですか。ねぇ大介君、大介君は自分のそばに女の子がいたらなー、って、思ったことあります?」 今まで一度もそんな関係を結んだことはないが、大介とて男である。 「……うん、まぁ、あるよ」
648 :
空想少女 3/5 ◆7BJkZFw08A :2007/11/25(日) 23:00:50.24 ID:zDMeCN1P0
「大介君、今年の春になるまで、私の存在を知ってました?」 「ごめん、知らなかった」 その通りなのだから仕方ないと、大介は正直にそう答えた。 彼女のいたずらっぽい笑みがこころなしか大きくなったような気がする。 「ねぇ大介君、もし大介君のそのほんのちょっとの空想(妄想ですかね)が影響して現れたのが私だとしたら、どうします?」 「……は?」 正直彼女の言っていることがいつも以上にわからない、そう思った。 「俺の空想が、何だって? 西坂さんが、俺の空想の産物? 何を、馬鹿な」 「本当なんですよ、と言ったら? 世の中には、そういうこともごく稀に、本当にごく稀に、起きるとしたら?」 「なぜ、俺が、そんな偶然に恵まれるって言うんだ。大体そんなことがそうそう起きたら苦労しないよ」 「だから、本当にごく稀なことなんです。しかも普通は気が付きません」 「………………もし、本当にそうだとして、それは俺の質問の答えにはなっていない」 「ええ、つまり、こういうことです。大介君が望んだから私は大介君のそばにちょくちょく現れるんです。 空想話は大介君だけが知っている私の秘密の趣味、ということで」 ことここに至って、大介は半ば、もしかしたらそれ以上彼女の言葉を信じていたかもしれない。 だからこそ彼女から伝えられた話を聞いたとき、あんなにも動揺したのだろう。 「でもそれも、そろそろ終わりかもしれません」 「どういうこと?」 「私としても、もうしばらく大介君とお話したかったんですが、所詮私は空想の産物。もう少しで泡のように消えてしまうかもしれません」 「……なんだって?」 彼女は大介から顔をそむけ、こう続けた。 「空想とは所詮幻かもやのようなものです。時間がたてば消えてしまう……仕方ない事なんです」 (西坂さゆりが…消える?) 「えっ、だって、おかしいじゃないか。君には家族もあるし、戸籍とかだってあるだろう? そういうのは……大体、君が空想の産物だってこと自体……」 「全部、私が現れる際にその存在を不自然無くさせるために一緒に現れたものです。私が消えれば、当然無かったことになります」 「……なんて、ことだ」 大介は次の言葉を探ししばし絶句した。 「具体的には、具体的にはいつ頃消えてしまうって言うんだ?」
649 :
空想少女 4/5 ◆7BJkZFw08A :2007/11/25(日) 23:02:33.68 ID:zDMeCN1P0
「さあ……でも、そろそろです。それはわかるんです」 「それを、回避する方法は……無いのか?」 「私には……何とも」 しばらく無言の時が続いた。 最初に口を開いたのは西坂さゆりの方だった。 「私……そろそろ帰らないと。今日はいつもより長く話せました、嬉しかったですよ。では、また」 そういって彼女は大介の視界から消えた。 大介はしばらくそこに佇んでいることしかできなかった。 家に帰った大介は、かなり長い間考え込んだ。 食事もとらずに考えた結果、ついに覚悟を決め、彼女に電話することにした。 プルルルル プルルルル ガチャッ 「はい、西坂です」 「西坂さん? 石田大介です」 「ああ、大介君、どうしたんですか」 「聞いてほしいことが……あるんだけど」 「何ですか?」 「君が近いうちに消えるって言うんなら、それなら……今のうちに、言っておこうと思って」 「……何ですか?」 「その、俺、は……君、のことが、好きなんだ」 電話の向こうで言葉を失った彼女の姿が目に浮かぶようだ。しばらくして彼女が言葉をついだ。 「……これは、予想外の展開です。でも、……嬉しいですよ」 「君が、近いうちに消えてしまうかもしれないなら……」 「あの……そのことなんですが……」 言いにくそうに彼女は言う。
650 :
空想少女 5/5 ◆7BJkZFw08A :2007/11/25(日) 23:03:54.39 ID:zDMeCN1P0
「実は、嘘なんです」 「なっ……! ええ!?」 驚いたのは大介だ。それはそうだ。だって…… 「だってそれなら、俺は……」 「ごめんなさい、もしかして信じてるかなとも思ったのですが、まさか本当にそこまで信じてるとは……その、ちょっとは悪いかなって思ったんです。 たまには、少し……からかってみたくなったというか……」 「な! あ……う……、ええい! 俺は……! でも、さっきのことは……あれは、俺の、本当に……」 「ええ、私も……大介君のことはずっと好きだったんですよ……」 ――彼女、西坂さゆりは、石田大介のことを好いていた。 きっかけは、他人から見ればどうということはないものかもしれない。しかし彼女にとってはそれだけで十分な出来事であった。 彼女は元々そんなに積極的な方ではない、だから大介と同じクラスになるまでは、遠くから見ていることしかしなかった。 しかし大介と同じクラスになった時、さゆりはアクションを起こすことにした。とは言え元々の性格がそう変るはずもなく、大介が一人の時に少しの時間話しかけるのが精いっぱいだった。 そこで大介の気を引くためと、話題づくりのために、空想を利用したのだ。 彼女には元々多少の空想癖があったから、それには苦労しなかった。 そうして大介と打ち解けていくことが、彼女にはたまらなく嬉しかった。 そんなある日、彼女は大介をからかってみたくなり――例の話を、大介にしたのだった。 後に彼女は、 「私の話を聞いてる時の大介君は、なんだか面白くって、途中から顔を見てると笑い出しそうになってしまって……」 とその時のことを語ったらしい。 また、それからしばらくの後、それらの話を聞いた大介は 「全く、彼女には敵わないな……」 と呟いたそうだ―― 完
651 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:04:16.75 ID:bjfQRGEX0
―― 11月25日 午後11時 ―― ┌─┴─‐┐ ─◇ こういうスレならもう一度読みたい 夜が来るたび推敲悩む │| ̄ ̄ ̄|│ / そういう気持ちを忘れずにいたら うまく書き出せるような気がして │|___|│ ♪ スレが落ちて お題出して 今週もあの予約が来る あぁ 日曜日 └───‐┘ ∧_∧ こういうスレならもう一度読みたい カオスの時間も好きになれる (´・ω・)__ __ いっぱい話した黒歴史きらり いつでも蘇らせれる ノ/ ¶/\_\. |[l O | ノ ̄ゝ\/__/ |┌┐| こういうスレだしもう一度書きたい いつか…… | ̄ ̄ ̄| __ll__ .|└┘| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| (セリフ) さて、23時を回りました。 これ以降に品評会作品を投下する方は予約の上、指示に従って投下して下さい。 予約条件は「レス区切りまで終わり、後は投下するだけ」の状態である事。 投下時、メール欄は無記入でお願い致します。 予約締切は23:30です。 では、どうぞ。
652 :
◆7BJkZFw08A :2007/11/25(日) 23:04:49.72 ID:zDMeCN1P0
以上です。 途中errorがたくさん出て焦りました…
653 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:10:40.04 ID:80JOivGw0
>>628 というか、一行は最大128文字らしいので、
見易さや推奨で改行したりしなければ結構入るよ。
>>651 そして心に染みる歌をありがとう。
お疲れ様です。
654 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:11:37.77 ID:eFnF8GAk0
>>652 ちょwww納得できるものが書けなかったから今回投下しないけど
そのタイトル俺も考えてたwww
655 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:16:19.62 ID:DsyHMnWi0
カオスの気配がないのはいいことです
656 :
◆M0e2269Ahs :2007/11/25(日) 23:16:28.44 ID:6rNELnM+0
予約します
657 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:17:56.76 ID:bjfQRGEX0
◆M0e2269Ahs氏、どうぞ。 【順番】 −−−
658 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:17:59.63 ID:ejZb7EJA0
間にあわねぇwwwwwwww
659 :
空想 1/4 ◆M0e2269Ahs :2007/11/25(日) 23:18:24.64 ID:6rNELnM+0
強い風に煽られて、吸っている傍から灰が飛ばされていく。その後を追うようにして、白い煙も飛んでいく。 いったい、どこまで行くのだろう。後を追おうにも、灰は、煙は、闇に吸い込まれていって、すぐに見えなくなってしまった。 ラッキーストライクを吸い込んだ。むせた。 ひとしきりむせった後、何故だか、おかしくなった。ああ、僕はどうして。どうして煙草を吸っているのだろう。 地面に落としたつもりのラッキーストライクは宙を舞って、やがてまた、闇に消えていった。まだ、火がついていたのに。 もしも、誰かの頭の上に落ちて、その人がやけどでもしてしまったら、僕は犯罪者だろうか。 風にはためくコートを押さえつけるようにして、ポケットに手を突っ込んだ。かじかんだ手に、ほんの少しだけ温もりを感じた。 いいや。僕はすでに犯罪者だ。 関係者以外立入禁止と書かれた看板を無視し、ドアノブのカバーを壊して、屋上に侵入した。 これだけで、どれほどの罪になるのか。僕は知らない。いずれにせよ、罪は罪なのだろうとは思う。でも、それももう、どうでもよかった。 ポケットの中から煙草の箱を取り出した。箱を開けると、ライターと煙草が顔を出した。最後の一本だった。 最後の一本。もう、最後の一本か。 ここに来てから、どれほどの時間が経ったのだろう。ライターが入らないくらいには、あったはずの煙草を、僕はここで吸ったのだ。 それほどの時間が経っていた。見れば、足元に捨てたはずの煙草は、黒い消し跡だけを残して、どこかに消えていた。 僕はまた、おかしくなって笑った。ああ、きっと。きっと僕もまた、同じようになる。 自分の笑い声を聞いて、僕はさらにおかしくなって笑った。何がおかしい。わからない。でも、おかしい。僕は笑った。 ふと、声が聞こえたような気がした。僕は、反射的に息を殺して、耳を澄ました。 聞こえてくるのは、吹き付ける冷たい風が、僕のコートをバタバタと鳴らす音だけだった。 気のせいだったろうか。いくら待っても人の声に聞こえるような音は何一つしなかった。最後の一本を口にくわえた。 「例えば君が傷ついて、挫けそうになった時は、必ず僕が傍にいて、支えてあげるよその肩を」 ビルの屋上で唐突に発せられた歌声に、僕は身を隠すようにして屈みこんだ。 「……と、言うわけで、支えに来ましたよ」 男にしては高い、女にしては低い声で、誰かが言った。ああ、誰かに見つかってしまうとは思わなかった。どうすればいいのかわからずに、 僕はそのまま地面にへたり込んだ。が、すぐにその誰かに腕を引っ張られ、その場に立たされてしまった。 目に入ったのは、タキシード姿の男だった。その男は、僕のコートの汚れを手で払い、それを終えると、にこりと微笑んだ。僕は、その間 ずっと言葉を失くして、ただ、作り物のように整った男の顔を見つめていた。 「私が誰なのか、という問いに対する答えは要りませんよね? 今のあなたにとっては」 男の声が耳を通り抜けても、僕はまだ男の顔を見つめていた。男は、少し驚いたように首を傾げて、また微笑んだ。 「私が中学生の頃の話です。お聞きになりますか?」 中学生? 現実離れをしている男の口から発せられた、現実的な言葉に意表をつかれて、僕はまた男に返答できなかった。
660 :
空想 2/4 ◆M0e2269Ahs :2007/11/25(日) 23:19:18.82 ID:6rNELnM+0
男は、小さく首を振って、それでもまた笑ってみせた。 「私が在籍していたクラスに……そうですね、ここではAさんとしておきましょうか。Aさんという女の子がいました。 とても可愛らしい女の子で、男子の間でも人気があったのですが、少し変わった女の子でしてね。例えば、そう。Aさんは自分のことを お姫様だと思っていたようで、彼女はよく、それはもうお姫様のような言葉遣いで会話をされていました。普通ならば、それだけでAさんという 女の子は、敬遠されていた、もしくは苛められていたかもしれません。ですが、そんなことはありませんでした。何故なら、Aさんは本物の お姫様のように美しく、お淑やかなお方だったからです。まさに、お姫様を振舞うにふさわしいお方だった、というわけです」 男は、そこで話を切ると、ぱちんと指を鳴らした。すると、何もなかったはずの屋上に、テーブルと椅子が現れた。テーブルの上には、 湯気を立てているティーカップが置かれていた。あっけに取られている僕に微笑みかけながら、男は椅子を引いた。 「どうぞ、お掛けになってください」 足が動かなかった。それが、警戒心からきているのか、寒さからきているのかはわからなかった。男は不気味なまでに笑顔を崩さず、 僕をじっと見つめていた。油が切れたロボットのように、ぎこちなくも足を動かした。椅子の前に立つと、半ば強制的に、僕は腰を下ろした。 テーブルを回り込んで僕の向かいに座った男は、テーブルの上で湯気を立てているカップをこちらに差し出し、いつのまにか現れていた 角砂糖が入っている瓶も差し出した。 「コーヒーはブラックでしか飲まないのに、ココアには大量に砂糖を入れる、でしたよね?」 そう、それは、僕の小さなこだわりだった。苦くないコーヒーはコーヒーじゃない。甘くないココアはココアじゃないのだ。しかし、それは 誰にも話したことはないことだったから、当然、見ず知らずのこの男が、それを知っているはずがなかった。 いったい、この男は何者なのか。そう思いながらも瓶を受け取り、蓋を外して角砂糖を四つ、ココアに入れた。ソーサーに添えられていた 小さなスプーンでココアを混ぜた。その間、男はじっと、こちらの様子を窺っていて、何とも言えない気まずさが漂った。 「あの」 「はい。何でしょうか」 男は、相変わらず笑みを崩さずにそう言った。 「……あなたは、飲まないんですか?」 何を言っているのかわからないといったふうに、男は少し首を傾げた。が、やはりまた、にこりと笑った。 「どうぞ、お気になさらずに。あなたがあまりにも青ざめた顔をしていたものですから。どうぞ遠慮なく、飲んで下さい。そうですね。では、 話の続きに入りますから、聞きながらでも、温まってください」 震える顎で何度も頷いた。スプーンをソーサーに置いて、カップを両手で包み込むようにして持った。かじかんだ手がじわりした。 「そんなAさんと、ですね。幸運にも席を隣り合わせることができたのです。当然、嬉しかったですよ。それは、もう。あからさまにそんな 素振りは取っていませんでしたが、彼女に想いを寄せていた男子の数は少なくなかったはずです。でなければ、その翌日から私の上履が ゴミ箱の中から見付かったり、教科書に下品な落書きをされたりするわけがありません。ですよね?」 何がおかしいのか、男は首を大げさに横に振って、笑顔を振りまいた。ココアを一口飲んだ。鼻がおかしくなりそうなほど、甘ったるかった。
661 :
空想 3/4 ◆M0e2269Ahs :2007/11/25(日) 23:19:49.79 ID:6rNELnM+0
「しかし、せっかくAさんの隣になることができたというのに、私は積極的に彼女と会話しようとはしませんでした。おそらく、恥ずかしかった のでしょう。女の子と会話するという、たったそれだけのことが。ですから、私とAさんは特に仲を深めることはありませんでした。今、思えば もう少し。少しだけでいいから、彼女と会話してみたかったとも思います。まあ、そのおかげで、私の上履はあるべき所に収まるようになった ので、あれでよかったと言えばよかったのかもしれませんが」 残念なことに落書きは消えませんでしたが、と付け加えて、男はくすくすと笑った。僕はココアを飲んだ。 「そうして、私とAさんの関係が何も進展しないまま、席替えの日を迎えることになりました。何にも進展はなかったとは言え、彼女の隣にいる だけで嬉しかったものですから、その日迎えた席替えというのは、まるで恋人との永遠の別れのようにも感じられました。失って初めて気づく、 とは言いますが、まさにそのような感じで、私は密かにAさんとの別れを惜しみました。その時、でした。Aさんが私に話かけてくれたのです。 きっと、それは初めてのことだったと思います。Aさんは言いました。『私は、人を動物に喩えることが好きなの』と。私は、なんと高尚な趣味 なのだろうと思いました。とても女の子らしく、そして可愛らしい、何よりAさんらしく素晴らしい趣味だと、即座に思ったのです。Aさんは 言いました。『貴方を動物に喩えると、アライグマなのです』と。判断に困りました。ですから、言ったのです。『それは、喜んでもいいので しょうか』。Aさんは『もちろんですわ。私の中では、アライグマは、位の高い動物なのです』と言ってくれました。嬉しかったです。それは、 もう。有頂天になりました。ですから、残念なことに、何故私がアライグマで、何故Aさんの中ではアライグマは位が高いとされているのか。 それを聞くのを忘れてしまったのです。それは、今こうして振り返ってみてもとても残念に思います。何故なら、その答えは、その時にしか 聞けないものだったからです。Aさんが今どこで生きているのかもわかりませんし、私のことを覚えているかもわからない。ましてや、私を アライグマだと言ったことなど、きっと忘れているに違いない。もう一度Aさんに会えたとしても、きっと彼女は、私のことを別の動物に喩える でしょう。それは、すごく残念なことです。どうですか、あなたもそう思いませんか?」 男が話している間に、僕はすっかりとココアを飲み干していた。舌に残った甘ったるい味が僕をむかむかさせて、僕は答えた。 「別に」 男は、眉毛を八の字にして、小さくため息を吐いた。しかし、すぐに笑顔を取り戻した。 「では、もう一つ、お話させてください」 まだ続くのか、と思った瞬間、男はティーカップにコーヒーを注いだ。確かに、コーヒーが飲みたかった。 「私が高校生の頃の話です。中学生の頃から、そういう節はあったのですが、この頃から私は一層人付き合いを苦手とするようになりましてね。 教室内で騒ぎ立てる男女や、我が物顔で知識をひけらかす教師などにうんざりしていたのです。学校生活の殆ど全てが、私にとっては退屈なもの でした。そんな時に、そんな退屈な生活を打開する一つの方法を考え出したのです。それは、ガイコツを見ること、でした。当然ながら、全ての 人間の中には、骨があります。それを想像してやるのです。どうですか? 面白いと思いませんか? 髪を染めて格好つけてる男子も、化粧を 塗りたくっている女子も、得意面で唾を飛ばす教師も、みんなすべて中身はガイコツです。これほど馬鹿らしいことはないですよ。どんな人間も ガイコツまで着飾ることはできませんからね。これが面白い。本当に滑稽です。そんなガイコツたちに対して気落ちしている自分が、馬鹿らしく 思えるほどに、ね。どうですか? あなたもそう思いませんか?」 「別に」
662 :
空想 4/4 ◆M0e2269Ahs :2007/11/25(日) 23:21:20.26 ID:6rNELnM+0
最後の一本のラッキーストライクを、むせ返りながらも吸い終えた。 投げ捨てる前に、ラッキーストライクは一足早く、宙を舞った。 もう、ここで時間を潰すことはできない。アライグマもガイコツも、僕にはもう、何の意味もないものだった。 吹きすさぶ風は一向にやまなくて、僕の髪をくしゃくしゃにして。それも、もう、どうでもよかった。 僕の希望が消え失せたって、この地球は回り続ける。僕が信じなくても、それは間違いないことなのだろう。 ただ、ココアは飲みたいかもしれない。でも、いらない。そうしたらきっと、コーヒーも飲みたくなる。そうしたら、きっと。 暗い路地に飛び込むと、空と地が逆になった。初めて見た景色は、もう少し長く見ていたい景色でもあった。 でも、それも、もう、どうでもいい。 あ、靴を脱ぐのを忘れたな。 でも、それも、もう、どうでもいいか。 おわり
663 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:21:38.62 ID:1YlpY1IL0
何が書いたかより、何が好きかで自分を語れよ!
空気読まないでお題 ↓
665 :
◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:22:56.33 ID:+zb6a+1i0
予約します
666 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:26:03.54 ID:bjfQRGEX0
流れが穏やかです。今回は無事に終わりそうですね ◆xyAZ5VvW6Y氏、どうぞ。 【順番】 −−−
667 :
◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:28:10.98 ID:+zb6a+1i0
行削りぎりぎり間に合った!
>>664 お題出せずすまない
厨房の処女作です。お手柔らかに。
題「臆病な勇者」
668 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:28:38.67 ID:iVSCdyKU0
教室で盛大にゲロ吐いた いつの間にか書籍化だもんなw
669 :
臆病な勇者1/5 ◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:29:05.54 ID:+zb6a+1i0
コロコロと後ろの席から転がってきた消しゴムは、僕の席と僕の右隣の席の間で止まった。それを見た僕の体がビクッとこわばる。 (僕が拾うべきかな……いや、後ろの子は確か女子だ。僕がさわると嫌かもしれない……それに、右側の方が若干近いじゃないか……) 後ろで椅子を引く音がした。そして、続けざまに僕の視界には消しゴムを拾う女子の右手が写った。 (ああ……やっぱり拾ってあげればよかった……) 教室は何事もなかったかのように、しんと静まりかえっている。カリカリと字を書く音がしている中、僕は一人ぎゅっと目をつぶっていた。 ……居眠りしてて、気づかなかったんだ。 学校が終わり、駅まで一人とぼとぼと歩を進めていると、地面にうずくまって何かを必死に探している女性がいた。 何か落とし物でもしたのだろうか。僕の足が止まる。 (一緒に探してあげるべきだろうか……でも周りに人はいるし、そもそも見つかるかどうかわからないし……でも……) 女性は今にも泣きそうな顔で地面とにらめっこしている。周りの人々は、邪魔そうな視線だけを送ると、彼女の横をスッと通り過ぎていく。 しばらく一人で立ちつくしていたような気がしたが、気がつくと僕は駅まで遠回りになる裏路地を早足で歩いていた。 ……今日は少し、歩きたかったんだ。 地元の駅から自宅への帰り道、ふとみると目の前の横断歩道の信号が、点滅していた。 ここの横断歩道は距離と赤が長い事で有名だ。僕は走り出し、長い横断歩道を一気に駆け抜けた。 息を荒げ、膝に手を当てたまま、ふと思い出す。途中、重そうな荷物を持ってゆっくり歩くおばあさんとすれ違ったような気がする。 (まさか。もしそれが本物なら、今おばあさんは道路のど真ん中、車の格好の的じゃないか……それに…………) プー!ププー!! 僕の思考はけたたましいクラクションの音でかき消された。まだ息を荒げ、膝に手を当てたまま、顔だけ振り返る。 道路の真ん中で、おばあさんが大量のクラクションを浴びていた。僕は、荒い息のまま家に向かって走り出す。 ……たまには、早く帰りたかったんだ。 自宅にたどり着き、誰もいない家のドアの鍵を開ける。共働きの両親は、夜中まで帰ってくる事はない。 自分の部屋にたどり着くと、今度は部屋の鍵をかけ、鞄を放り投げ、自分はベットに仰向けに倒れ込む。 最近は毎日この繰り返しだ。学校に行き、学校から帰り、何もすることなく一日を終える。 誰と関わる事もない。誰と会話する事もない。誰かを頼る事もなければ、誰かを助ける事もない。 ……否、自分からそういった事を避けている。 (別にそんなもの、現実に求めなくても……) ベットに横たわったまま、僕はスッと目を閉じた。
670 :
◆to.sab95Jg :2007/11/25(日) 23:29:36.05 ID:wRsqaDVa0
予約します
671 :
◆InwGZIAUcs :2007/11/25(日) 23:29:38.80 ID:wueu3X/t0
予約
672 :
臆病な勇者2/5 ◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:30:05.65 ID:+zb6a+1i0
彼は非常に内気である。重ねて顔見知りが激しく、おまけに臆病だ。 だが、実は非常に心優しい青年なのだ。彼の周りに困っている人が多く現れるのは、決して偶然ではない。 彼が心のどこかで人と関わりたい、誰かの役に立ちたいと思っているが故に、そのような事に敏感に、そして無意識に反応してしまうのだ。 そんな彼の、内気だが、人と関わり合いたい、という願いは、一年程前からある一つの形で実現されている。 「妄想」 つまり、自分が自分で考えた、架空の場所を旅する。 その中なら、なんだってできる。剣を振る事も、手から炎をとばす事も、竹とんぼで空を自由に飛び回る事だってできる。 架空の仲間と語り合い、架空の仲間と笑い合う事も。架空の敵を倒し、架空の絆を結ぶ事も。 自分の頭の中だけで展開するため、どうしてもふれる事だけはできなかったが、それでも彼は、満足していた。 そんなもの悲しい、しかし彼にとって生きる糧でもある重要な儀式が、今日もまた始まろうとしていた。 ――僕はたき火のパチ、パチという音で目が覚めた。 森の中で野宿をしているところで終わったんだよな。今日はいつもより、周りの景色がやけにリアルだ。そう思っていると頭上で声がした。 「お、起きたか。んじゃ、見張り交代な! コレでようやく一眠りできるぜ」 体を起こすと、たき火の前であぐらをかいて座っている剣士の姿が映った。僕と同じくらいの年だけど、僕より体つきが良い。 「だ〜れも目ぇさまさねえからよ、俺、このまま徹夜で見張りかと思ったぜ! 」 剣士はワハハ、と笑う。釣られて僕もアハハ、と笑う。 「全く、いい気なものですね。明日はいよいよ魔王の城に着くというのに…… 自覚って言葉、知ってます? 」 突然左側から声がした。ふと見ると、寝袋が二つ転がっている。その一つから、これまた僕と同じくらいの年の男が一人出てきた。 茶髪で、背も高い。しかも色男。ちなみに、柔術も使える凄腕の魔法使いだ。 「おい!起きてたのかよ!だったら言えよな!俺を寝かせないつもりだったのか!? 」 「いえいえ、今目が覚めたんですよ。それに、変ですねぇ。ついさっきまで、ずっとそこであぐらといびきをかいていたじゃありませんか」 「あ……いや……み…見間違えだろ!!ってか、お前やっぱりもっと前から起きてたんじゃねぇか!」 「そりゃあそうですよ。明日がいよいよ最後なんです。グーグーいびきをかいていられる程、僕の神経はズボラじゃありませんから」 「なんだと!俺がズボラだって言いてぇのか!?」 僕は会話を聞きながら、またアハハと笑った。 「う〜ん……何?なんかうるさいわね……」 もう一つの寝袋から声がした。喧嘩中の二人は気づいていない。 「あ……おはよう。また二人がやらかしてるんだ」 「……やっぱり…」 彼女は僧侶。僕の初恋の人にそっくりな顔をしている。当然だろう? 僕の妄想なんだから。文句あるか?
673 :
臆病な勇者3/5 ◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:30:45.34 ID:+zb6a+1i0
彼女はもそもそと寝袋からはい出ると、近くの木に立てかけてあった杖を持ち、言い争いをしている二人の頭を叩いた。 「あんたたち、何考えてるの!?状況わかってる!?自覚って言葉知ってる!? 」 鶴の一声とは、まさにこのことだ。ぴたりと声がやんだ。 「少しでも体力回復しておかなきゃいけないんだから!とっとと寝る!」 それだけ言うと、彼女はまた寝袋に入り込んだ。 「…………寝るか」 「あ、じゃあ僕が見張り変わりますから」 「しっかり頼むぜ!」 「へえ、君が言いますか」 「なんだと!?」 「うるさいわよ!」 「…………」 そそくさと寝袋に潜る二人。僕は最後に、一声だけかける。 「おやすみなさい」 「ああ。おやすみ」 皆が寝静まってから、僕はたき火の前に座ったままぼんやりと思った かれこれ一年前くらいからこの旅を続けて、ようやくここまでたどり着いた。けど、魔王を倒したら一体どうなるんだろう? ここは僕の空想なんだから、また一から新しいものを創ればいいのだろう。けど、始まりと終わりの繰り返しだけではなにか物足りない。 せめて、この空想の旅が終わって、新しい旅を創り出す事になるにしても、この旅でなんらかのものを残していく事はできないだろうか。 いや、そもそもいつまでこんな事を続けているのだろう。僕の居場所は、そもそもここじゃないだろう? そこまで考えて、ふと空を見上げる。たくさんの星が頭上で輝いている。すごくきれいだ。 ……やっぱり僕の居場所は、ここだ。そう思った。 次の朝、僕ら一行は魔王の城に足を踏み入れた。 野宿の時は明るかった剣士の表情も、さすがに堅い。魔法使いも皮肉を言っている余裕はなさそうだ。 城の中には棍棒持った一つ目の鬼とか、二十メートルはある真っ赤なワニなど、巨大な化け物がうろうろしていた。 「この先に魔王がいるんですね……」 僕は震える声で、そうつぶやいた。 「ああ。コレが最後だ。一気に行くぜ!気ぃ抜くなよ!」
674 :
臆病な勇者4/5 ◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:31:29.68 ID:+zb6a+1i0
剣士と魔法使いが魔物へと飛びかかる。僕と僧侶はそれを後方で魔法を使い援護する。 僕は一応、魔法戦士なんだ。戦えない訳じゃない。ただ、足手まといになるのが嫌だった。それに、二人はとても強いし、魔物に飛びかかる勇気などあいにく僕は持ち合わせていない。 僕の内気で臆病な性格は、もはや自分の妄想でもどうする事もできないみたいだ。 ボロボロになりながらすべての魔物を倒し終わると、目の前の鏡にドアの模様が出現した。 「どうやら、この奥みたいですね……」 ドアの前に立つと、まがまがしい空気が体中にまとわりつくような気がした、その時。 「きゃあああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」 悲鳴が上がる。振り返ると、真後ろにいたはずの僧侶はなぜか十メートルほど右側の石柱に打ち付けられてぐったりしている。 かわりにいたのは、バカでかいドラゴン。見た瞬間、僕の足が震える。口が渇く。冷や汗が止まらない。 ドラゴンはそんな僕に見向きもせず、大きく鋭い羽で石柱ごと彼女にとどめを刺そうとしていた。 ……助けなきゃ。と思った。が、足の震えが止まらない。ろれつが回らず、魔法も唱えられない。 ドラゴンの羽に雷が落ちる。魔法使いの魔法だ。その隙に剣士が僧侶を救い出す。僕は何もできずに立ちつくす。 激怒したドラゴンは、石柱をぶち壊す。大小様々な石が飛び交い、うち一つが鏡の扉に激突する。ピシッと音がして、鏡に亀裂が入る。 (あぁ……このままじゃマズい…なんとかしなきゃ……でも、僕なんかじゃ……いや…でも……助けなきゃ…たすけ……) 僕の頭が完全にパニックに陥ったときだった。 「二人は、先に行ってください」 どこからか冷静な声がする。 「この鏡が割れてしまえば、魔王にたどり着けません」 誰だろう?見ると剣士と魔法使いの口は、あっけにとられたかのように開きっぱなしだ。まさか…… 「彼女は僕が守ります、だから……」 この声は……僕……? 「行ってください!!! 」 僕の妄想の中だったからなのかもしれない。初恋の子を守る男の使命みたいなものかもしれない。 決して僕の意志ではない。が、確かにその時初めて僕の無意識が『逃げたい』という心ではなく『助けたい』という心を選んだのだ。 僕の決意を聞いた時、一瞬、彼らがふっと笑ったように見えた。 「じゃあ、ここは任せるぜ! 」 「きっと追いついてくださいね! 」 二人は僕に背を向け、ドアの向こうに消えていく。これでいいんだよな……なあ、僕? 僕は震える足を必死に押さえつけながら、今まで一度も使わなかった剣を、初めて抜いた。 「もう逃げないぞ。僕が何とかするんだ。絶対に……絶対に…… 」
675 :
臆病な勇者5/5 ◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:32:35.51 ID:+zb6a+1i0
握りしめた剣が白い光を帯び始めた。ドラゴンが炎を塊を吐き出す。それを剣ではじき飛ばすと、僕は叫んだ。 「絶対に、助けるんだぁ!!!! 」 剣の光がさらに増す。足の震えは止まっていた。僕は地面を思いきり蹴ると、ドラゴンの頭上めがけて、がむしゃらに剣を振り下ろした。 「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!! 」 剣の光が一斉にはじけ飛び、僕の視界一面は真っ白になった―――― ――――気がつくと、周りはうってかわって真っ暗だった。ここはどこだろう。そもそも、何が起こったんだ? 状況が飲み込めず、ぼんやりしゃがみ込んでいると、正面から声がした。 「やったな、やればできるじゃねぇか! 」 顔を上げ、焦点を合わせる。剣士だ。なんでこんな所にいるんだ? 「まったく、本当に世話が焼けましたね」 魔法使いもいる。てことは、魔王は……? 「本当におめでとう! よく頑張ったじゃない! 」 僧侶もいる。無事だった……のか……? 「お前は、人一倍優しいからな。困ってる人を見つける才能があるんだよ」 「これからそんな人を見つけたら、今みたいに助けてあげなさいよ! 」 「面倒な才能ですが、まあ、人を助けられるのですから、無いよりはマシでしょう」 「そうそう。それに、お前はそれだけ強いんだから、恥ずかしがる事なんて無いんだぜ! 最後のお前、ちょっとかっこよかったしよ! 」 はは、何がどうなってるんだ……?それより、なんで僕は泣いてるんだ……? 「とにかく、もうここには来ないでくださいよ?あなたはここに来なくても、現実の世界で絶対に上手くやっていけるはずです」 「そうそう。変に気構える必要はないの。助けたい、と思ったら行動に移す。いいわね? 」 「あ、あと、俺らを創ってくれてありがとな。結構楽しかったぜ!」 視界が涙でグチャグチャだ。僕はよろよろと立ち上がると、剣士とぐっと握手をした。 本来、妄想相手では働かないはずの触覚が、剣士の手のぬくもりを、確かに認識した。 「さて、お別れだ。現実行っても、しっかりやるんだぞ」 僕の頭上から光が差し込む。視界がまた白くなってゆく。言いたい事が山程あるのに、言葉が出てこない。ならば、せめてこれだけは…… 「……みんな……ありがとう! 」 皆笑っている。剣士が何か口を開くが、返事を受け取る前に、僕の体は光の中に消えていった。 「元気でな。優者」
676 :
◆xyAZ5VvW6Y :2007/11/25(日) 23:33:54.86 ID:+zb6a+1i0
以上です。 厨房臭さ満開orz
677 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:34:50.54 ID:bjfQRGEX0
お疲れ様でした。 ◆to.sab95Jg氏、どうぞ。 【順番】 ◆InwGZIAUcs −−−ギリギリで予約するの楽しんでませんか?(´・ω・`)−−−
678 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:35:29.31 ID:DsyHMnWi0
679 :
いつかの夢 ◆to.sab95Jg :2007/11/25(日) 23:35:31.96 ID:wRsqaDVa0
ぎりぎりですいません 2レスです
680 :
いつかの夢1/3 ◆to.sab95Jg :2007/11/25(日) 23:36:31.87 ID:wRsqaDVa0
プシッと音を立てて油圧式の白い扉が開く。続いて中からカインが出てきた。小さい方の太陽がちょうど空の真上に来ていて、カインの体を照らしつけた。 「午後の温度、湿度、気圧、風向、風圧すべて異常なし。天候、いつものことながら晴れ」 カインは手に持った小型の計測器に目をやりながら、一つ一つの項目を読み上げた。いつもとほぼ変わらない数値を確認し終えると計測器を鞄の中に戻し、彼は農場へと向かった。 移民船着陸地点より東へちょうど一キロメートル。広さ、ちょうど五キロメートル四方。白い壁と屋根で囲まれた直方体の建物が、この星で唯一の農場だった。 入り口の横にあるパネルにカインが認証コードとパスワードを入力すると、壁との境界がほとんどわからないドアが音もなく開いた。カインは通路を通ってトウモロコシ畑を目指した。五十に区切ったセクションのうち、もっとも大きな区画を持つエリアだ。 トウモロコシ畑に入ったカインは早速一番手前の畝に近づいた。 「よし、今日はここから収穫だな。計画通りだ」試しにその中の一本を丁寧に折り取り、そのまま齧りつく。「甘い。いい味だ」 にこにこしながら道具入れから農作業道具を取り出し、カインは収穫作業を始めた。 四時間後、およそ百五十キロのトウモロコシの山ができた。カインはそれをすべて貯蔵セクションへ運び、部屋の半分を占める機械の中に次々と放り込んだ。あとはこの機械が穀粒にばらしてそれを粉にし、袋詰めまでオートメーションでやってくれる。 「やはり機械は楽だな。早いところ収穫用の機械も造らないと」 と独りごちて部屋を後にし、次の作業場、小麦畑へ向かった。 「いや、やっぱり農場内を移動する乗り物の方が先だな。毎回の移動に費やす時間を考えると、あまりに非効率だ。穀物運搬用にいっそ各エリアから貯蔵区を結ぶコンベアを作るか」 そんなことを考えながら、休憩を挟みつつ、各エリアで都合八時間の畑仕事を終えたのだった。
681 :
いつかの夢2/3 ◆to.sab95Jg :2007/11/25(日) 23:38:37.98 ID:wRsqaDVa0
移民船へと戻ったカインはパンとジャガイモのスープ、サラダの夕食を摂り、本日の日記兼作業記録をコンピュータにまとめた。それから明日の作業予定表を確認した。 「明日は牧場建設の続きか。実際に安定して家畜を飼育できるようになるのは当分先だな」 牧場完成は長期計画表の「一年以内」の欄に表示されていた。 空に星が輝きだす頃、カインは寝室へ戻りカプセルに横になった。 「おやすみなさい」
682 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:39:43.05 ID:DsyHMnWi0
683 :
ytrewq :2007/11/25(日) 23:41:02.89 ID:wRsqaDVa0
すいません 計算ミスしてました 1行の上限があるんですね… 5レスに収まらないので辞退します こんな形ですいません
684 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:42:33.34 ID:uEobEcCbO
685 :
◆to.sab95Jg :2007/11/25(日) 23:42:36.03 ID:wRsqaDVa0
686 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:43:08.02 ID:p92WYz8/0
531 名前:文才無しさん[] 投稿日:07/11/25(日) 23:29:31 ID:Y4qywJgt 規制中につきこちらに投下 避難所スレにて発見しましたが。転載可否の判断をお願いします。 規制者救済スレじゃないのはなぜだろうw
687 :
◆ZchCtDOZtU :2007/11/25(日) 23:43:40.07 ID:pNoNjJbIO
誰か救済頼みます
688 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:45:37.67 ID:1YlpY1IL0
689 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:46:18.39 ID:p92WYz8/0
カオスタイムだしとりあえずは運営の指示を貰うかと思ってね
690 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:47:20.71 ID:bjfQRGEX0
>>685 2レスと言われてレス数が3だった事にまず驚きましたが
・一レスの限界が30行とは知らなかった
・よって5レスでも収まりきらなくなった
という事でよろしいでしょうか?
とりあえず、◆InwGZIAUcs氏、どうぞ。
【順番】
◆ZchCtDOZtU (時間内ですので大丈夫ですが、次からは規制者用スレをご利用下さいね)
691 :
◆ZchCtDOZtU :2007/11/25(日) 23:49:06.67 ID:pNoNjJbIO
避難所ってあったので間違えました。規制者救済スレは見逃しました。 ダメならイジケます。
692 :
勇気の日 ◆InwGZIAUcs :2007/11/25(日) 23:49:27.54 ID:wueu3X/t0
魔物とは死んだ人間、もしくは動物のなれ果てである。 その見解はどうやら正しいらしい。と、少年は胸中で呟いた。 約十メートル先にいる魔物は、ぎこちなく四肢を動かしながらゆっくりとこちらに近づいている。 (目いっぱい引き付けてから……放つ) 構えるは身長に近い大きさを誇る自前の長弓。 ぼやけた視界を自ら閉ざして、魔物の気配に身を委ねる……が、 周りに茂る木々のざわめきに集中することが中々できない。 もう一度目を開いた。 ただれた肉と異臭を放つ魔物はもう目と鼻の先まで来ている。 「うっ……」 体が震え、言うことを聞かない……頭の中は真っ白になり、胃の奥から恐怖が滲んで広がっていく。 目から零れた涙が落ちるのを待たずに、少年は踵を返し逃げ出していた。 町外れの森に、かん高い悲鳴が木霊した……。 ランスと言う少年は目が悪かった。 魔物に傷つけられた瞳は遠景どころか手元さえあまり鮮明に見ることはできない。 しかし、目が見えなくなってから、見えないものをよく感じるようになったという。 ランスが初めに違和感を抱いたのは、魔物の気配から感じる生きていた頃のぬくもり。 人間の気配を魔物から感じてしまうことだった。 彼は大きく苦悩した。 次に、ふと気づけば隣に小さな龍がいた。 何をするでもなくいつも傍らにいて、何かを言いたそうにモジモジしている。 龍は他の人には見えず、自分だけ見ることができる。 そんな龍を彼は友達と呼び続けていた。 「きっと一人になった僕に、神様が友達を与えてくれたんだ」 ランスに家族はいなかった。 魔物に襲われ彼以外全て殺されてしまったのだ。 目を怪我したのはその時である。 それでも彼は、逞しく生きていた。
693 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:50:07.14 ID:wueu3X/t0
森で動物を狩り、食料を賄い、町に出て毛皮と生活用品を交換し生活をしていた。 そんな、少年であった。 目が見えなくては弓の手入れもままなら無いが、これを欠かすことはできない。 何よりこういった単純な作業は、彼の気持ちを大いに落ち着かせた。 「……いたっ」 手元で削っていた鏃を置き、痛んだ肩に手を添える。 ランスはあちらこちらを枝先に切られ、傷つけられていた。 道を選ばずに森を走ればあっというまに切り傷が増えていく……当然そのことをランスも知っている。 しかしそうせざるを得なかったのは魔物から逃げる一手を打ったからに他ならない。 ランスは逃げ帰ってきたのだ。 「どうしよもなかったんだ」 (そんなことはなかった) 口から出た言葉と胸中の言葉は正反対であった。 魔物が怖い。それは元々魔物は人だから。人を傷つけるのは怖い。だから自分は魔物を殺すことができない。 ランスは自分の不甲斐なさを、そういった人情によるものだと片付ける。 「君もそう思うだろ?」 「……きゅるきゅる」 否定するように小さく鳴いて、首を捻ったのは小さな龍だった。 蛇のように細長い胴を持った伝説の動物。 「僕は……間違ってる?」 「きゅるきゅる」 悲しそうに目を細めた龍は、大きく頷いてみせる。 しかしランスには、何が間違っているのか理解ができなかった。 数日後。 森で小さな女の子が魔物に殺されたと風の便りを聞いた時、 ランスの心臓は握りつぶされたかのような鼓動を刻んだ。
694 :
勇気の日3/5 ◆InwGZIAUcs :2007/11/25(日) 23:50:50.94 ID:wueu3X/t0
記憶の片隅においやった何かが蘇るが、それにもう一度蓋をする。 龍は悲しそうに目を細めていた。 さらに数日後……雨脚の強まった夜のこと。 ランスは湿っぽいベッドに横たわり、寝付けずにいた。 「嫌な夜だね」 傍らでまどろんでいる龍に語りかける。 「きゅる〜」 毛布をかぶり直してもう一度目を閉じたとき、ランスはいつもと違う気配に立ち上がった。 それにならって、龍も警戒するようにランスの腕にサッと絡みつく。 「い……た……い……よ……?」 それは雨に叩かれた窓の音ではない。 誰かが呟きながら……窓を叩いている音だった。 「誰!」 窓を叩く音はどんどん強くなり、終には破られてしまう。 ランスは慌てて弓矢を手にし、窓から侵入してくるソレに感覚を研ぎ澄ました。 感じる気配は人間……だったもの。 ようするに魔物……しかしそれは小さな魔物であった。 (慌てることは無い。小さな魔物だ。僕をどうこうできる筈無い) 目いっぱい弦を広げ、矢先を小さな魔物に向ける。 (仕方ないんだ。家に入ってこられたらどうしようもない……殺すしかないんだ) 「た……す……け……て……」 「――っ!」 その声には聞き覚えがあった。 つい先日森で魔物に襲われ死んでしまった子。 ランスが見殺しにしてしまった子。 無かったことにしてしまった子。 「う、あああぁぁぁぁ!」 肺から息を搾り出すように叫ぶランスの目には、その日の光景が浮かんでいた。
695 :
勇気の日4/5 ◆InwGZIAUcs :2007/11/25(日) 23:52:07.07 ID:wueu3X/t0
助けを求める少女。 弓を持った自分。 恐怖に竦み逃げ出し、体が傷つくのも気にせず走り続けた。 恐怖は家族を殺された日に植えつけられた……その事を否定し続け、 魔物は元々人間だからと言い訳を積み重ねたこと。 全てが混ざり合って、ランスの視界は今涙で歪んでいた。 いつの間にか弓は弧を描くのを止め、矢は地面に落ちていた。 「僕は……僕は悪くない!」 そう、彼は悪くない。彼を咎める人は誰もいない……が、それでも一人だけ、いや、一匹だけいた。 「きゅるきゅる!」 腕にまとわりついた龍が涙を流しながら、ランスの指に噛み付いていた。 「君は……」 自分に嘘をつくのをやめて、前を見ろ! そうランスには聞こえた。 前を見る。 視界は涙でなくてもぼやけていたが、一つ分かったことがあった。 「泣いているの?」 少女だった小さな魔物は、泣いていた。 「た……す……け……」 ランスは何となく彼女の為に泣きたくなった。 すると知らず恐怖から放たれ、体が軽くなるのをランスは感じた。 「ごめん……今度こそ助けてあげるね?」 落ちた矢を拾い上げ、力強く弦を引っ張る。 気配を察するまでも無い距離に彼女はいた。 襲うでもなく、ただその身から開放されるのを待つように。 「さようなら」 矢は放たれた。 魔物の眉間を射抜いた矢は後ろの壁に突き刺さる。 その瞬間、小さな龍が光りだした。 巨大な龍となって天井をつき抜け天に昇っていく。
696 :
勇気の日5/5 ◆InwGZIAUcs :2007/11/25(日) 23:52:54.20 ID:wueu3X/t0
そして確かにランスの耳には龍の言葉が届いていた。 ――ランスに足りなかったのは勇気だよ。自分と向き合う勇気だ。……もう、大丈夫だね。 次いで女の子の声も聞こえる。 ――ありがとう……お兄ちゃん……。 それはランスの見た幻かもしれない。 自分の心を納得させる幻聴かもしれない。 そもそも龍の存在は、ランスの心が生み出していた幻覚だったのかもしれない。 それでもランスにとっては十分だった。 本当の意味で一人になった……ようやく本当の自分が始まる。そう、思えたから。 それからいくらか時間が過ぎた頃。 あの日と同じように森に迷い込んだ少女が魔物に襲われていた。 彼女を助けるのにもう迷いは無い。 ランスは力いっぱい弦を引っ張った。 終わり
697 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:55:19.97 ID:+PafNOTeO
縛られるおっぱい 解 放
698 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:55:38.94 ID:bjfQRGEX0
お疲れ様でした。そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。 さて◆ZchCtDOZtU氏の作品ですが、どなたか代理投下して頂けますか? 【順番】 −−−
699 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:56:07.88 ID:vTyx4xGT0
700 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:56:07.90 ID:p92WYz8/0
では発見者として請け負ってよろしい?
701 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 23:56:37.93 ID:1YlpY1IL0
702 :
殺1/4 ◇ZchCtDOZtU :2007/11/25(日) 23:57:44.60 ID:p92WYz8/0
自宅の洗面所で薬をキメると 頭の中心に快楽の渦が出来あがり、不安は一遍に吹き飛んだ。 何とも言えぬ高揚感が俺を包み込み、俺の嫌な記憶を全て吹っ飛ばしてくれた。最近は薬をキ メるペースが速くなっている。 暫くの間恍惚としていると、洗面台の鏡越しに女が見えた。 薬をキメたときに、必ず出てくる女がいる。何時何処でも、小汚い俺のアパートの一室に出てき て、そして、その女は必ず俺に呟く。 「何で薬を使うの?」 制服を着た、十代半ばくらいの髪の短い女。初恋の女に似ているような気もするし、昔見たお袋 の写真に似ているような気もする。だが、薬に酔った頭では考えが埋まらない。 初めて女が出てきたとき、女は名を名乗らなかった。だから俺も名乗らなかった。女は女である事 意外、全てが謎だった。 「また、逃げてるんでしょ?」女は言った。 そうだ、俺は逃げている。俺は誰かに狙われているんだ、命を。しかたがないだろう。まともな精神 状態でいられるわけが無い、だから薬も使う。 「逃げてばかりじゃ、ダメ」 僕は一体誰に狙われているのか、判らない。でも、命が狙われているのは確実なんだ。恋人の美 香か、親父か、はたまた友人の誰かなのか。判らない。 「どんなに逃げても、逃げ切れない」 どんな方法を使って俺を殺す気なんだ? 絞殺か、刺殺か、撲殺か、毒殺か、射殺か、焼殺か……。 「だから、逃げ切れないならいっそ……」 浮気をした事がバレたのか、はたまた親父とお袋の定期貯金を解約して女に貢いだのがバレたのか、 友人の誰かが俺を妬んだのか……。 「殺せば良いんだよ」 そうだ、殺せばいい。誰を? 俺を狙う暗殺者を。誰だか判っていないのに?
703 :
殺2/4 ◇ZchCtDOZtU :2007/11/25(日) 23:58:15.57 ID:p92WYz8/0
「だから、何度も言ってるじゃない」 そう言って女はニタリと笑みを零した。 「疑わしきは全て……。貴方を知るもの全てを殺せばそれで済むのよ?」 ……あぁそうか。なんでこんな簡単な事に気が付かなかったんだろう? 皆殺せばいいんだ。 「お父さんは睡眠薬入りのお酒を飲ませた後……」顔面を金属バットで思いっきり殴ってやった。 女は次々と 「お母さんは深夜のお風呂場で……」浴槽に張った水の中に顔を突っ込んだ。 俺に殺害方法を 「お友達はみんなまとめて……」飲み会の席でタバコを煮詰めた汁を飲ませてやった。 提示し、俺のあるべき道を示していった。 ほんの一ヶ月間で俺の親族、知人、友人、恋人達は次々に死んでいった。俺が殺した。もちろん、ちょっ としたアクシデントにより女の助言を受ける事もあったが、殆どがうまくいった。その間にも薬をキメるスパ ンは短くなっていった。 二ヶ月もすると俺の事を知っている奴らは、ほぼ全員、一人を残してこの世から消え去った。恋人の美香 だけが殺そうと思ってもその所在がつかめなかった。だが、女のアイツにこの俺が殺せるとは到底思えなかっ た。
704 :
殺3/4 ◇ZchCtDOZtU :2007/11/25(日) 23:58:51.03 ID:p92WYz8/0
俺は殺される心配がなくなった。それと同時に、俺のことを俺だと認識する奴も、全ていなくなった。俺は俺 が俺であると認識しない限り、俺ですらなくなった。何処の誰でもない。俺は俺でしかないにも拘らず、俺は俺 ではなく、俺は俺だった。 薬の量が増えた。 それまでは週に一回程度の服用で済んでいたのに、今では日に一回服用するようになってしまった。 服用の回数が増えるとともに、女が出てくる回数も増えた。 女は出てくるたびに俺に説教を垂れた。 お前は誰だ? 「あら、そんな判りきった事を聞くの?」 ああ、教えてくれ。 「とっくに判ってるって思ってた」 教えてくれ、お前は誰だ? 「私は貴方。女である事を棄てる前の貴方。女だった頃の貴方。乳房を切り取り、男性ホルモンを注射し、女性器 から男性器に乗り換える前の姿」
705 :
殺4/4 ◇ZchCtDOZtU :2007/11/25(日) 23:59:29.05 ID:p92WYz8/0
「どう? キレイでしょ?」と女が言うのを見るや否や、私は駆け出した。 ……嘘だ 嘘だ! 嘘だ!! 私にはそんな記憶が無い。女だったなんて記憶は無いんだ!! そんな馬鹿な!! 「貴方も判ってるでしょ? あの薬には前後の記憶を吹き飛ばす効用があることを。薬の使いすぎね。自分が女で あった事すらも忘れるなんて!!」 頭の奥で女の声が響くと、鏡に映った自分がゆっくりと微笑むのが判った。恐怖が全身を包み、私はアパートの ベランダから飛び出した。 数秒の空白の後、グシャっと身体の芯まで響くような、衝撃音の後。 ものの数秒で全身が焼けるようなそんな感覚。 だがそれは、十秒も続かず私の意識を刈った。 <終>
706 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:00:04.15 ID:iXIk/oPC0
レイアウトなど完全に忠実にコピペしてあるはず。 不備があったら指摘を。以上です
707 :
◆to.sab95Jg :2007/11/26(月) 00:00:29.71 ID:1uf0e58g0
>>690 1レスの上限が30行なのは理解していたのですが
1行が長すぎて容量オーバーしてしまいました
1レス目の書き込み、2レスです、というのはさらなるミスです
ぐだぐだで申し訳ないです
みなさん、すいませんでした
708 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:00:53.02 ID:mXH64w++0
ありがとうございました。
現在、週末品評会86thの投票受付中です。今回の品評会お題は『空想』でした。
投稿された作品は■まとめ
http://yy46.60.kg/bnsk/ -週末品評会86th- にてご覧頂けます。
投票期間は2007/11/27(火)24:00:00までとなっております。
感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)
***********************【投票用紙】***********************
【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
―感想―
<<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
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携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書き途中の方は是非。
それでは、また諸々の機会にお会い致しましょう。
709 :
◆ZchCtDOZtU :2007/11/26(月) 00:05:25.81 ID:SZByxty5O
706氏ありがとうございます。
710 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:09:00.41 ID:in43xRZp0
711 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:10:58.51 ID:APeoS2y00
712 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:11:03.43 ID:Psc9Yncn0
>>708 乙でしたー。
(前回)37作品で155レス
↓
(今回)32作品で127レス
多少読みやすくなったな、量的に
713 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:12:35.27 ID:UzaG4VP80
714 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:17:56.93 ID:iXIk/oPC0
週末品評会86th 「空想」 作品一覧 No.01 僕は空想ができない ◇E9DH6CrGjo No.02 痛み醒めてその後僕は ◇ZRkX.i5zow No.03 無限/夢幻アンダーグラウンド ◇NA574TSAGA No.04 サルスベリ(空想) ◇Ac4gAnQEkA No.05 「Over!」 ◇L3WBFmE5HM No.06 雲の上に行く夢 ◇kP2iJ1lvqM No.07 草原の白い病院 ◇CoNgr1T30M No.08 珊瑚礁 ◇D8MoDpzBRE No.09 I am a woman but ……. ◇IPIieSiFsA No.10 とお、ひこう ◇uOb/5ipL.. No.11 箱の中 ◇23s5J0VAck No.12 SKY-HIGH RENDEZVOUS ◇wDZmDiBnbU No.13 背中 ◇5GkjU9JaiQ No.14 アルバート氏の相続人 ◇cwf2GoCJdk No.15 そして少女は歩き出す ◇TtwtmrylOY
715 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:18:27.26 ID:iXIk/oPC0
No.16 クーソーは、頭のコバヤシです。 ◇faMW5pWHzU No.17 空想です ◇AyeEO8H47E No.18 ジュピター/イルカたちの歌を聴け ◇2LnoVeLzqY No.19 我ら空想姉妹〜胸はworldを救う〜 ◇R8ImotoANE No.20 微睡みのなかに ◇daFVkGT71A No.21 雑木林のおともだち ◇4FsjozWCuk No.22 たるほ. ◇hemq0QmgO2 No.23 うんこ ◇fXqZWh/VCo No.24 ツキアカリ ◇1xAfNYTGOo No.25 空想推理少年 ◇PaLVwfLMJI No.26 Candied nights ◇QIrxf/4SJM No.27 つくりかけのまち ◇hOG3FfUkhE No.28 空想少女 ◇7BJkZFw08A No.29 空想 ◇M0e2269Ahs No.30 臆病な勇者 ◇xyAZ5VvW6Y No.31 勇気の日 ◇InwGZIAUcs No.32 殺 ◇ZchCtDOZtU
716 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:19:20.19 ID:iXIk/oPC0
不備があったら適当になおしてくれ
717 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:19:36.05 ID:Psc9Yncn0
乙様 ここでお題↓
719 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:24:30.82 ID:UzaG4VP80
720 :
通常作:お題「珊瑚(さんご)」 0/4 :2007/11/26(月) 00:26:20.67 ID:vJsZKn3N0
通常作、いきます。
721 :
通常作:お題「珊瑚(さんご)」 1/4 :2007/11/26(月) 00:26:54.18 ID:vJsZKn3N0
小さな桃色珊瑚の枝をポケットへ入れ、俺は洞窟の中で長剣を背負っていた。 疲労で鉛っぽくなった足を引きずる。息を切らせながらうめき声をひとつあげた。 俺が住む村には長老が言うところの『五百年に一度、魔女の子供が生まれる』という伝 説がある。それを確認してから珊瑚を渡す。そのために村からはるか奥地にある山、 そのどてっ腹に穿った穴の中へ村の人たちに押し込まれたのだ。 「くそ。自分達が痛い目に会いたくないからって、なんで俺をわざわざ」 生まれてこのかた十五年、こんな仕打ちを受けるような悪いことをした覚えはない。畑 を耕して生活をしてきた俺に、どうしていきなり長剣なんか背負わせるのだ。 背負い紐をつかみ、少しジャンプする。左手のたいまつから火の粉が飛んだ。着地と同 時に紐がきつく肩に食い込む。 「ぐ」 思わずうめくほどの重さ。俺の身長と同じ長さの剣だ。恐らく同い年の女の子くらいに は重い。 「腹減ったな」 水浸しの中で足を運びながらぼやいた。こんなもの担がされては食料なんぞ持つ余裕は 無い。だから置いてきた。取りに帰りたくても半日ほど歩きつづけたのだ、今更戻る気に もならない。 洞窟の最も奥にいると言われる魔女の背後には、山の向こうへ抜けられる出口があると のことだ。それを信じて先を進もう。そう判断したのだった。 手元のたいまつが消えかかっている。慌てて俺は腰からつるした皮袋へ手を突っ込んだ。 中から新しいたいまつをつかみ出し、火を移した。 どこかで垂れる滴の音に気味悪さを感じる。俺は大きく燃え上がるたいまつの明かりを 心の支えに、奥を目指して進んだ。
722 :
通常作:お題「珊瑚(さんご)」 2/4 :2007/11/26(月) 00:27:47.94 ID:vJsZKn3N0
何気に顔を起こし、たいまつを高くかかげて周囲を眺めた。地面や天井からツララ状の 石が伸びている。先端は僅かに丸く、油でも塗ったように艶やかだ。 足取りとは対象的に、腰元が軽い。予備のたいまつが少ないことを意味している。 一気に心細くなってきた。 何か化け物が出る訳でもない。いっそ何か出てくれれば中途半端な疲労感や恐怖心なん て吹き飛ぶだろう。だが、聞こえてくるのは水音と自分の息遣い、それと足音だけだ。 とにかく無事にここから抜け出せれば、それだけで充分だ。時間の感覚は怪しいが大体 の歩数からすると丸一日くらい歩いている。長老の話では、半日で魔女のもとへたどり着 く、という話だった。 「くそ」 騙されたか。 何かの理由で俺は閉じ込められたのだ。心当たりは全然思い当たらない。いや、唯一の 心当たりは、兄弟や両親がいないことだ。俺が死んでも悲しむ人はいない。 この先は行き止まりかもしれない。単に俺は緩やかに殺されようとしているだけじゃな いのか。腰にあるたいまつが燃え尽きたら行動不能だ。その場で死を待つしかない。 死ぬ、俺は死ぬ。いや、あいつらに殺されるのだ。 「うわああ!」 俺は走った。全力で。 たいまつの火が消えかけたので少し足をゆるめた。勢いが戻ったところで再び走る。ま た消えそうになって再び足を止めた。 「どうしてたいまつにまで、俺の足を引っ張られないといけないんだ!」 もどかしい、いらいらとした感情が俺の全身に血をめぐらせる。 この場で全装備を叩きつけてやりたい。だが、そんなことをすれば本当にここで死ぬ。 「ちくしょう!」 どうしようもない怒りと苛立ち、不安に包まれた俺は目一杯叫んだ。
723 :
通常作:お題「珊瑚(さんご)」 3/4 :2007/11/26(月) 00:28:25.38 ID:vJsZKn3N0
濡れた地面へ座り込み、岩肌にもたれかかって俺はぼうっとしていた。 もはや動く気もしない。 尻が冷たい。水が染み込んでいるのがよく分かる。僅かに泡立つような音が聞こえてき た。川か? だが、今更そんなものはどうでもいい。 どうせ死ぬのだ。 「お前は誰だ」 唐突に、幾分低い女性の声が俺の耳に届いた。 左手を目一杯伸ばしてたいまつを掲げ、俺は素早くあちこちへ視線を走らせた。そして 洞窟のさらに奥から、白い布を纏った初老ほどの女性がこちらへ歩いてくるのが見えた。 「あ、ワッターといいます。どちら様でしょうか」 「誰からも聞いてないか? 私は魔女と呼ばれておるが」 口元をゆがめ目だけで笑う女性は、足を止めずに近づいてくる。 俺の目前で魔女は立ち止まり、両手を腰へ当てた。左肩から白い布をたすき掛けに、ス カート部分まで伸ばすその魔女、皺の多い表情と白髪混じりの長い髪にも関わらず体型が ほっそりとしていて背も高い。 俺は年寄り趣味なんて無いが、それでもその妖艶さを含む美しさのようなものに、どこ か心惹かれるものがあった。 さっきまで俺を覆っていた絶望感や恐怖感は、いつの間にかこの人が剥ぎ取っていた。 「長老から聞いています。お子様が生まれるかも知れない、と」 「もう生まれたよ」 世間話のひとつを語るかのように、気楽な調子で魔女は言った。 「あ、ああ、そうですか。おめでとうございます」 かろうじてそう答え、長老の言いつけどおり、ポケットから桃色珊瑚をつかみ出して魔 女へ差し出した。 俺の手から珊瑚をすばやく奪い取った魔女はそれを魚の骨のようにコリコリと噛み砕い く。喉を鳴らして飲み込み、一歩俺へ近づく。 「子供を産んだ後は、栄養つけなければ」 口から珊瑚のかけらをこぼしながら、魔女は言った。 殆ど顔と顔がくっつくぐらいの距離で俺は思わず背中をそらせた。が、それは背中でつ っかえるもののためにうまくできなかった。
724 :
通常作:お題「珊瑚(さんご)」 4/4 :2007/11/26(月) 00:29:26.66 ID:vJsZKn3N0
魔女は腕を伸ばす。俺の肩を超えた先へ。 急に背中が軽くなった。 俺の目の前に、例の長剣が突きつけられる。たいまつの炎が刃に反射して黄色く見えた。 「疲れたかい? 肉がすっぱそうだ。お前、十五歳だな?」 ここまで来て、自分の運命に気づかない奴はいない。 長老達は、最初から俺を魔女の食料にするつもりだったのだ。奥にある出口の話も恐ら く嘘っぱちだろう。 もう駄目だ。たとえ魔女をなんとかしても洞窟から出る術を知らない。 絶望的だ。 「ああ」 全身から力が蒸発した。俺はその場でへたり込む。尻から水を叩く音が響いた。 「カルシウム豊富な珊瑚、それと十五歳の人肉。子供を産んだ後には一番いい」 魔女は剣の峰に舌先を這わせながら笑みを見せた。 とにかく何か喋ろう。そうしないと気が狂いそうだ。 「あ、あの。どうして十五歳ですか」 「産後には十五歳の肉。私らの定番だ」 「産後には、十五歳。ですか」 「産後、十五」 「なるほど、産後には珊瑚もかかっていますね?」 人差し指を立て、首を傾げながら俺は微笑んだ。 表情のを硬くした魔女は、返事の代わりに長剣をひと振り。 黄色い輝きとともに俺の首元は生ぬるくなり、目前が真っ暗になった。 缶
725 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:37:47.54 ID:Psc9Yncn0
h
726 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:40:13.94 ID:T3M44AqHO
>>715 No.22 たるほ.
の「.」はまとめ時のミスらしいのでよかったら外してあげてください
727 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:48:35.42 ID:Psc9Yncn0
h
728 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 00:53:50.49 ID:itJmUhwGO
全館マダーw
729 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:05:21.46 ID:Psc9Yncn0
h
730 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:13:52.32 ID:RGxWLD8T0
これって参加すると何人くらいから感想もらえる?入賞するようなデキじゃない作品の場合で
731 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:20:08.41 ID:Psc9Yncn0
平均4〜5人くらいじゃない?
732 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:20:19.10 ID:00RpF2KP0
>>730 そんなことわかるわけないだろw
全感書く人が2〜3人とすれば2〜3個くらいは貰えるんじゃないの。
733 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:24:47.35 ID:Thftcaqv0
734 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:27:47.66 ID:88Gob1I00
ダメだ・・・おっぱいでネタを考えたが、どうしても頭のおかしい人の文章にしかならない 新しいお題くれ ↓
735 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:28:16.75 ID:Psc9Yncn0
胸
736 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:29:31.54 ID:RGxWLD8T0
ハト
737 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:33:27.05 ID:88Gob1I00
あれ、おかしいな。もらう前と発想の起点が変わってない気が
とりあえずもらっとく。
>>735-736 とん
738 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 01:47:07.84 ID:Psc9Yncn0
h
投下します、お題は「乙」
スレは、異様な盛り上がりを見せていた。 所狭しと書き綴られる賛美のレスが、スレを埋め尽くしている。見ていて、これほど気持ちの良いものは無い。 ひょんなことから立てたスレだった。 もう一週間も前の事だ。偶然思いついたストーリーを文字に起こすと、中々見栄えの良い物になった。 何百もの駄作が詰め込まれているフォルダの中に眠るのも勿体無いと思ったのだ。 「今日はここまでにします。明日も早いので寝ますね」 俺はスレにこう書き込むと、台所に向かい、コーヒーを淹れた。 季節はもう冬だ。文章を打ち込む手も、時たま震えていた。コーヒーが入った取っ手無いコップは、しばらく掴めなかった。 椅子に腰を掛け、コーヒーをすすりながら、更新ボタンを押した。新着レス、二十。 今では、一つ書き込めば、何十ものレスが返ってくる。リアルタイムに感想が貰えるほど、書き手に取って嬉しいものはない。 「乙! 今後の展開に期待!」 「乙。 明日も楽しみにしておくよ」 乙。お疲れ様、と言う意味だ。乙と言って貰えると、今日一日分書いたことが無駄では無かったと実感出来るし、それなりの充実感も味わえる。 乙と言って貰う為に書いている、と言っても過言では無いのかも知れない。 にんまりとしながら、俺はパソコンの電源を落とした。続きは、どんなことを書こうか。布団の中で、俺はそればかり考えていた。
人間の慣れ、というものは、本当に勿体無いと実感した。 例えば、一般人に一年間、高級料理を毎日振舞ったとしよう。最初の一ヵ月間は、とても幸せだろう。 しかし、時が経つにつれ、その高級料理の味に慣れてしまう。その味が普通、となってしまえば、料理が出た所で大喜びはしないだろう。 新鮮さが欠けてしまったのだ。賛美のレスも、乙のレスも、今では何も感じなくなってしまった。 スレに投下することが、挑戦や希望では無く、作業になってしまっていた。つまらない。それが俺の本音であった。 日に日に、投下の量、そしてペースは落ちていった。それに比例していくように、読者も減り、賛美のレスも無くなった。 やがて、俺は作品を投げ出した。完結などしていない。新しい刺激が欲しくなった俺は、次の作品へと手を出したのだ。 それ以来、長く続いたスレを覗くことは無かった。読者の反応が怖かったからだ。 数日後、新しい作品のおおまかな流れは決まった。 大体の流れを決めて、ある程度まで書き留めて置いてから、少しずつ作品を投下していく。それが、俺のやり方だ。 作品の冒頭部分をコピーして、スレを立てた。勿論、前のスレで使っていた名前は使わない。 新しい名前と、新しい作品と共に、また俺の投下生活は幕を開けたのだ。 投下してすぐ、反応はあった。 「また小説スレか」 「オナニースレはもういいよ」 始めはこんなもんだ。徐々に良作品と言う事をわからせれば、スレの反応も違ってくる。小説スレの定石だ。 俺は自信に満ち溢れていた。過去の栄光があったからだ。俺なら、前のスレ以上に盛り上げることが出来る。そう信じてやまなかった。
だが、現実はそう甘く無かった。 いくら投下しても、以前のような反応は見られなかったのだ。 批評家気取りの叩きレスや、意味の無いくらだらないレスばかり。作品に関するレスなど、一つも無かった。 「つまんね」 「携帯小説より糞だろwwww」 一つ一つの叩きレスが心に響く。手が震えているのは、寒さのせいだけでは無い。 俺にもプライドがあった。過去に何十もスレを続かせたのだ。お前ら見たいな才能の無い人間とは違うんだ! 幾度もの叩きレスが来ようとも、俺は書き続けた。奴らを納得させるだけの力があると思い込んでいたから――。 やがて、スレには叩きレスさえも書き込まれなくなった。 力なく落ちていくスレ。もう、スレに生気など微塵も感じられない。 自分の力の無さを痛感した。所詮、まぐれの一発屋だったのだ。調子に乗ったらこのザマだ。誰も、同情などしてくれないだろう。 俺は、すがるような思いで、dat落ちした前スレを開いた。 自分に向けられた過去の賛美が、とても懐かしく、暖かかった。こんなレスを捨ててまで、新しく始める意味はあったのだろうか? 体の全身の力が抜けていく。何か、とても大切な物を失ったような気がしたから。 「乙」と言うレスで、スレは終わっていた。 それは、もう自分に向けてではないような気がして、とても物悲しかった。 一文が長いので、無理やり改行した部分が多々あります。 2/3の三行目は改行ミスです。申し訳ありません。 酷評お待ちしております。
743 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 02:09:55.93 ID:Xsx1ZzVgO
品評会関係者の皆さん、乙です。
744 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 02:28:08.61 ID:Psc9Yncn0
h
745 :
投票 ◆E9DH6CrGjo :2007/11/26(月) 02:33:58.54 ID:64TCxKQx0
***********************【投票用紙】*********************** 【投票】: No.14 アルバート氏の相続人◆cwf2GoCJdk氏 気になった作品:No.06 雲の上に行く夢◆kP2iJ1lvqM氏 No.09 I am a woman butt …….◆IPIieSiFsA氏 No.12 SKY-HIGH RENDEZVOUS◆wDZmDiBnbU氏 No.28 空想少女◆7BJkZFw08A氏 ******************************************************** 取り急ぎ投票だけ。感想は時間があったら書きます。
746 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 02:52:10.90 ID:in43xRZp0
747 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 02:57:56.21 ID:RGxWLD8T0
まとめ掲示板って携帯から見れないかな・・ PCから読んでると目が疲れる
748 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 02:58:56.30 ID:Psc9Yncn0
749 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 02:59:45.39 ID:yttdlgFz0
一レスモノ用お題くらはい
キャラメル
751 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 03:09:33.76 ID:JHjZcE+L0
>>749 ドラクエ
ドラクエ4にはまって品評会の存在すら忘れてたぜ
752 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 03:09:39.20 ID:RGxWLD8T0
>>748 2chみたいに最後にiつけたら見れるんだねwありがとう
753 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 03:17:21.60 ID:yttdlgFz0
754 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 03:19:48.94 ID:g0fDtDOS0
全然関係ないけどさ、ありがとうっていい言葉だよね 言われると嬉しくなる。そんだけなんだ、ほす
755 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 03:21:15.76 ID:lwRc+8Yo0
***********************【投票用紙】*********************** 【投票】: No.18 ジュピター/イルカたちの歌を聴け ◇2LnoVeLzqY氏 気になった作品:No.07 草原の白い病院 ◇CoNgr1T30M氏 No.09 I am a woman but ……. ◇IPIieSiFsA氏 No.10 とお、ひこう ◇uOb/5ipL..氏 No.14 アルバート氏の相続人 ◇cwf2GoCJdk氏 No.17 空想です ◇AyeEO8H47E氏 No.25 空想推理少年 ◇PaLVwfLMJI氏 ******************************************************** 投票しますね。今週の品評会はいつも以上に楽しませて貰いました。 皆様お疲れ様です。そして良い週末をありがとう。
756 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 03:51:53.32 ID:g0fDtDOS0
投票お疲れ様です ほす
757 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 04:16:11.79 ID:33zitZ100
h
758 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 04:43:46.20 ID:rAD4jL330
保守
759 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 04:53:32.11 ID:+uc6hHMBO
強いて言えば……お題が欲しいな、なんて。
760 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 05:02:00.18 ID:yttdlgFz0
アメ
761 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 05:02:23.81 ID:g0fDtDOS0
ムチ
762 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 05:06:02.66 ID:+uc6hHMBO
サドい人が実は優しい話しか浮かばないが把握
763 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 05:21:23.31 ID:in43xRZp0
セイントテールで欝になった保守
764 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 05:35:24.64 ID:g0fDtDOS0
ツインテール見て躁になった保守!
765 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 05:48:49.39 ID:KGMz7i0QO
鬱だ寝よう
766 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 06:38:13.09 ID:f1ruery20
保守
767 :
お題:キャラメル&ドラクエ 1/1 ◆Op1e.m5muw :2007/11/26(月) 06:38:39.44 ID:yttdlgFz0
サイコロキャラメルを壁に投げつけた。かっ、と乾いた音を立てて床に落ちる。 ふん、いい気味だ。そう思いながら、僕はプレステの電源を入れる。 ファンファーレの序曲を伴って、岩を削りだしたように厚みのある「DRAGON QUEST」の文字が浮かび上がってくるオープニング ――いつもならサビのフレーズが終わるまではゆっくり眺めて気持ちを盛り上げるのだが、今日はそんなことよりとにかく早くゲー ムを始めたかった。スタートボタンで演出を飛ばし、素早く○、○、↓、○ と押して昨日の続きから再開する。 画面は一瞬ブラックアウトして、次いでセーブ地点である教会を中心とした村の様子を映し出す。 たしか、石にされた村人を救うために薬を取ってくるよう村長に依頼されてたはずだ。 昨日のうちにダンジョンからアイテムを取ってくるところまではやったので、あとはそれを渡すだけである。 きっとこのイベントをクリアすればお礼に石版の欠片がもらえるはずだ。次の世界に進むためにこの世界で取得すべき石版は、 あと欠片一つで揃う。イベントをいくつもこなして、ようやくこのイベントに辿り着いたのだ。 今度はどんな世界だろう、村長の家へ向かいながら想像する。 今は過去の世界だから、今度は未来にでも飛ぶのだろうか。それとももっと過去か、もしかしたら全く別の世界かもしれない。 次はどんな冒険が待っているのだろう、考えただけで心が躍る。 まったく、ゲームというのは素晴らしい。 テレビの前に座りながらにして、僕はブラウン管ごしに色んな世界を冒険し、様々な体験をすることができるのだ。 それに比べたら、校舎の周りをひたすらぐるぐる走り続ける10kmマラソンなんて行為に何の価値があるだろう。 この文明社会、10kmも走る必要なんて全く無い。バスや自動車や自転車が、より早くより楽に僕たちを目的地まで運んでくれる。 だから「10kmを完走できるかどうか」、「そのタイムがどれだけか」なんて、それこそ一秒間に何回まばたきできるか位どうでもい い話なのだ。 そんな事もわからずに、女子やお互いへの見栄のために順位を競う男子も、好順位の男子をきゃあきゃあ言う女子も、頭が悪 い。そんな下らない基準で僕のことを馬鹿にしやがって! しまった、考え事をしてたせいで会話を読み飛ばしていた。 どうやら村長との会話も終わったようなので、気を取り直して次の冒険に進もう。 石版の欠片がもらえたことを一応確認しようとアイテム欄を開き――僕は愕然とした。 足りない。石版は未だ一枚足りないままなのである。これでは次の世界に行けないではないか。 おかしい……もう一度村長に話しかけてみてもお礼の言葉を言われるだけで、石版には一切触れていなかった。 それじゃあ一体どこにあるというのだ。ヒントもなにもなしじゃあ、ひたすら歩き回って調べるしかないじゃないか! 僕は、コントローラーをテレビに投げつけた。 がつん、と鈍い音を立てて跳ね返ったコントローラーは、サイコロキャラメルの隣に転がった。
768 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 06:43:15.81 ID:yttdlgFz0
以上です。 文章の練習がてら、1レス作品に挑戦してみました。 誰か文才を分け与えてください
769 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 07:00:01.44 ID:KGMz7i0QO
とりあえず擬音はやめた方がいいかも
770 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 07:05:05.51 ID:yttdlgFz0
>>769 ありがとうございます。
擬音抜きで読者に伝えきる能力がなくてどうしても使っちゃいましたorz
安っぽくならないよう控えめにはしたつもりですが、不充分だろうか。。
771 :
◆ZRkX.i5zow :2007/11/26(月) 07:29:16.19 ID:IXrjCqVS0
全部読み終えて、そしてそれぞれの感想を全て書いて、見直していると、僕はどうしてか恐くなった。 小説について考えることが。もう全て投げ出したくなって、だからもうこれも僕の記憶の中にしまおう。 黒歴史フォルダに、一つ追加しての投票。 ***********************【投票用紙】*********************** 【投票】: No.14 アルバート氏の相続人 ◇cwf2GoCJdk 気になった作品:No.12 SKY-HIGH RENDEZVOUS ◇wDZmDiBnbU ******************************************************** その他、関心候補にNo.18、25、26 頼むから俺はもう小説なんて書かないでくれ、頼むから
772 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 07:52:20.69 ID:oNNWloZUO
さあお題を貰おうか
773 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 07:54:51.83 ID:kYHXjiHu0
774 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 08:08:20.79 ID:64TCxKQx0
775 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 08:17:18.94 ID:kYHXjiHu0
776 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 08:44:11.53 ID:64TCxKQx0
h
777 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 08:48:55.79 ID:00RpF2KP0
お題くれ
778 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 09:05:42.49 ID:fQo4qs9m0
779 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 09:52:56.98 ID:gIyz5+QhO
ほ
780 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 10:09:34.92 ID:gIyz5+QhO
インプレッションのみで偉そうに感想書く。
毎度のことながら、お前が言うなの嵐だ。ごめんなさい。
>>721 語りの明快さも雰囲気の醸し方も、技量は非常に高いと思った。
オチが、ダジャレ。
というのが私の不満の原因じゃなくて
「ファンタジーっぽい雰囲気」として提示されるあいまいな種々の伏線が
回収されていないせいで裏切られたような気分になるからかなあ
と自分では分析した。楽屋落ち風オチも、ダジャレも、決して嫌いではない、のだが。
>>740 話はよくまとまっていて印象がいい。
主人公の作品が過去に賛美され、いままた賛美されなかった理由はなんだったんだろう。
読みながら「ああ、主人公が飽きてしまったように、読み手も飽きてしまったんだな、これはウマイ」
と期待した私は
>所詮、まぐれの一発屋だったのだ
と過去の成功を片付けた主人公に、やや失望を感じてしまった。
>>767 オチにもっと分量を割いたほうがいいんじゃないかなあ
すらすら読めたけど、印象が残らない。
作品が主張している内容も特に目新しいものではないし
もっと強調していいんじゃない?
キャラメルを組み込んだ理由もよく分からない。なくても問題ない。
781 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 11:14:43.87 ID:1G0PKp370
保守
782 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 11:15:25.55 ID:c0OrrPgm0
783 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 12:10:12.61 ID:+F6SUNuY0
お題を頂けないでしょうか?
784 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 12:17:20.93 ID:HC+kgIwi0
砂糖
785 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 12:22:23.49 ID:+F6SUNuY0
786 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 12:44:31.31 ID:in43xRZp0
j
787 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 13:11:26.82 ID:sKcEDbzz0
ほ、保守なんてしないんだから!
788 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 13:31:08.88 ID:kYHXjiHu0
保守
789 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 13:55:20.71 ID:yqWUALzyO
保守をすることに意味などない それはただの自己満足だからだ
!vip2:stop: --- MP50使ってへっぽこの呪文を唱えた このスレは1回目のダメージを受けた (50/500)
791 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:17:26.10 ID:tgT0FmiZ0 BE:1150187377-DIA(406950)
792 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:17:57.24 ID:tgT0FmiZ0 BE:1056294959-DIA(405700)
793 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:20:05.62 ID:tgT0FmiZ0 BE:657250447-DIA(399950)
794 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:20:51.15 ID:tgT0FmiZ0 BE:563357546-DIA(397950)
795 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:21:25.76 ID:scr/bZ8W0 BE:1126714368-DIA(396250)
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796 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:22:31.48 ID:scr/bZ8W0 BE:1126714368-DIA(394250)
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797 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:25:01.97 ID:qSpxtRPx0 BE:422518829-DIA(388500)
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798 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/26(月) 14:26:49.55 ID:qSpxtRPx0 BE:704196465-DIA(384550)
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799 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :
2007/11/26(月) 14:27:39.60 ID:qSpxtRPx0 BE:751142584-DIA(383100) !vip2:stop: --- MP50使ってへっぽこの呪文を唱えた このスレは10回目のダメージを受けた (500/500) このスレは・・・ 停止しました。