1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
番組の最後に素敵なプレゼントのお知らせ
2 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:11:09.78 ID:gi468o3HO
3 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:11:54.92 ID:gi468o3HO
第五話 砂煙、水煙
━━いい天気だ。こんな日には、日がな一日日向で昼寝をしていたいものだ。
( ^ω^)「本日は晴天なり〜」
B32エリアのガレージ。愛機ナイト・ホライズンの肩の上で、僕は生欠伸を一つかく。
そんな僕のくつろぎを邪魔するように、さっきから鉄のぶつかり合う騒々しい音が響いていた。
(´・ω・`)「おおいブーン、君の機体なんだから少しは手伝ってくれよ」
スパナ片手に声を張り上げるショボン。
彼は今、ナイト・ホライズンのコアの周りに張り巡らせた足場の上で、僕の愛機の整備に躍起になっている。
( ^ω^)「戦場に出るのが僕の仕事。整備はショボンの仕事だお」
(´・ω・`)「そうは言うけどさ、前回の戦いで結構あちこち痛んでるんだよ。せめて、剥げかかったエンブレムの塗装ぐらいやってくれないかい?」
その声と一緒に、塗装用スプレーが飛んで来た。それを僕はなんなくキャッチする。
( ^ω^)「それは僕以外には任せられないお」
僕はエンブレムに対して強いこだわりが有る。
プレゼントに期待させてもらう
5 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:12:18.51 ID:gi468o3HO
昔から絵を描くことが好きで、レイヴンになる前は漫画家かイラストレーターを目指していた。
そんなわけで、僕達のチームエンブレムも僕がデザインしたものだし、ドクオの機体のエンブレムも描いたのは僕だ。
勿論、僕の愛機であるナイト・ホライズンもご多分に漏れない。
( ^ω^)「さぁて、では一仕事いきますかお」
起き上がり、近くのタラップへと飛び移る。機体左肩の前へと向かうと、僕は自分の作り上げた作品を見上げた。
確かに、かなり削られて原型が見て取れない。
( ^ω^)「これは酷いお。ショボン、赤の三番を」
僕はショボンに塗装用スプレーの追加を頼むと、早速エンブレムの復元に取り掛かる。
ここまで剥げてしまっていては、一度全部塗装を落としてからの方がいいと思い、僕は腰に下げたスケッパーで装甲の表面を削り始めた。
しばらく削っていくと、その下から薄れかかった何かしらのマークが現れ、僕は思わず手を止める。
( ^ω^)「これは……」
そこに現れたのは、両の翼を広げて今にも飛び立とうする一羽の烏のマーク。
6 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:13:47.81 ID:gi468o3HO
恐らくは、この機体の以前の持ち主の描いたエンブレムなのだろう。
元々この機体は中破し放棄されていたものを、僕達が拾って改修したものだ。
このエンブレムもその時に僕が塗りつぶしていたのだろうが、その時はさして気にも止めなかった。
( ^ω^)「烏、かお」
そこに描かれた烏は、濁った瞳で僕を見つめている。
既に風化していて、その翼は毛羽立っているようにすら見えた。
それを見つめながら僕は、以前のこの機体の持ち主に思いを馳せる。
彼、もしくは彼女はどんな人物だったのか。
どんな依頼を受けて、どんな戦場に立ったのか。
何を思い、あのコクピットに座っていたのか。
そんな事を考えていると、下から塗装用スプレーが飛んできて僕の頭を直撃した。
( ;^ω^)「痛っ!」
思わずしかめ面を作り、下を見下ろす。
(´・ω・`)「ぼーっとしてないで、さっさとやっちまいな。ぶち殺すぞ」
そこには鬼気迫る顔のショボン。
( ;^ω^)「ちょ、ちょっと構図を練ってたんだお」
言い訳一つ、僕は再び正面の烏を見つめる。
少しの逡巡の後、僕は白の塗装用スプレーでそれを塗り潰した。
7 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:15:13.17 ID:gi468o3HO
━━ベッドの上に広げた雑誌「ウィークリーレイヴンズ」の一ページを見つめながら、俺は深い溜め息をついた。
(*'A`)「クーちゃん、可愛いよ……ハァハァ」
そこに見開き一ページを使って堂々と写っているのは、レイヴン界に咲いた一輪の花、“クーちゃん”ことクール・ブルー嬢。
凄腕のレイヴンとして名高く、未だ依頼に失敗した事の無い新人レイヴンで、俺は密やかながら彼女の一ファンだ。
(*'A`)「密着、期待の新人レイヴンの一日に迫る、か」
見開きで載せられた後ろ姿の脇に書かれた申し訳程度の記事に、俺は目を走らせる。
('A`)「何々、“デビュー数ヶ月でこれだけの活躍をしてのけた彼女の強さの秘密に迫るため、我々取材班は戦場で彼女にインタビューを試みた”ほうほう。これは期待」
('A`)「“が、彼女は取材を断固拒否。カメラマンが彼女の弾丸の餌食となり、取材は残念ながら断念”……って何やってんだよバンキシャ!根性見せろよ!」
思わず雑誌をベッドに叩きつけ、寝転がる。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/15(木) 23:16:16.76 ID:m/BvP8US0
支援
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/15(木) 23:16:36.20 ID:+bWySOfh0
支援
10 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:17:19.58 ID:gi468o3HO
実際、戦場を駆け回って様々なクライアントからの依頼を果たすレイヴンにとって、取材などは営業妨害以外の何ものでも無いだろう。
本来ならこの雑誌も、俺達が暮らしているここから遥か遠くの地で行われている、アリーナと呼ばれる「競技」としてのAC戦を取り扱ったレイヴンを主に取り上げる雑誌なのだ。
だが、そんな雑誌ですら特集を組んで取り上げる程、彼女の腕は凄まじいものが有るのだろう。
(*'A`)「憧れるなぁ……クーちゃん」
また、溜め息。
実はブーン達にも話していない事なのだが、俺がレイヴンになろうと思ったきっかけは、彼女の影響でもある。
その昔、故郷の近くで起こった武装勢力同士の小競り合い。
それを単機で鎮圧したのが、彼女の駆る「インディゴミスト」だった。
迫り来る二機のACを相手に、互角以上に渡り合ったその機体は、あれよあれよと言う間に敵機を撃破。
(*'A`)「格好良かったなぁ……」
そうして全てが終わった後に機体から降りて来たのは、絶世の美少女。
11 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:17:53.23 ID:gi468o3HO
真っ直ぐな黒髪が、白く繊細な横顔にかかっては揺れて。
その匂いが、遠くの岩陰で見つめる俺自身にまで届いてきたような錯覚までした。
そこまで思い出すと俺は辛抱堪らなくなり、ベッドの上で海老反りになって飛び跳ねた。
(*'A`)「うひょー!クーちゃーん!」
そこへ突然開け放たれるドア。
('A`)「あ」
硬直したまま顔だけをそっちに向けると、掃き溜めのどぶネズミを見るような目で、ツンがこちらを見ていた。
ξ゚听)ξ「……あんた、大丈夫?」
慌てて雑誌をベッドの下に放り、居住まいを正す俺。
(;'A`)「はい、いつも通り元気が有り余っております、お嬢」
ξ゚听)ξ「そう。どうでもいいけど、気持ち悪かったよ、あんた」
その言葉が、胸に刺さる。“キモい”じゃなくて、“気持ち悪い”。言い方を変えただけで、なんだか人として扱って貰えてないような。そんな響きがあった。
(゚A゚)「……」
ベッドの上で、俺は膝を抱えて放心する。
何だか、一気に生きる気力が無くなってしまった。
お父さん、そっちの暮らしはどうですか?
vipでパート以外のACスレはじめて見た
13 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:19:20.59 ID:gi468o3HO
ξ゚听)ξ「そんな事より、緊急の依頼よ。直ぐに準備して」
そんな俺の事など、さして気にもせずにツンは言う。
その一言で、俺は正気を取り戻した。
('A`)「緊急の依頼?クライアントは?」
ξ゚听)ξ「それが自分たちの事は詮索するなって。わかっている事は、私達の戦う相手がアライアンスだって事よ」
(;'A`)「アライアンスだぁ!?ちょっと待て、流石にそれは不味くないか?」
アライアンス。古き秩序のお膝元。一年前、バーテックスと世界の覇権をかけて争った連合統治機構。つまりは世界を統べる政府のようなものだ。
現在ではその力も衰え見る影も無いというが、今だにその組織力は健在だと聞く。
事実、野放しの武装勢力も少しずつとはいえ、アライアンスによって粛清されている所が有るという。
ξ゚听)ξ「でも、向こうは僚機もつけるっていうし、何より報酬が凄いのよ」
そう言って、ツンは携帯端末を開いて俺に見せる。
ずらりと並ぶ0。その数や、俺達が十回以上のミッションをこなしても手の届かない額だ。
14 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:19:49.48 ID:gi468o3HO
(;'A`)「これは……しかし……」
素性の知れない依頼主。敵は秩序の番人アライアンス。そして異常なまでに高額の報酬。
なんだか焦臭い。出来すぎている。あまりにも。
ξ゚听)ξ「いいから、つべこべ言わずに準備して。せっかくのチャンスよ。逃がすわけにはいかないわ。それに……」
そこでツンは意味深な笑みを浮かべる。
('A`)「それに?」
ξ゚听)ξ「成功したらあんたの大好きな酒と煙草、好きなだけ買うことを許可するわ」
その一言で、俺の理性は吹き飛んだ。
('A`)「ぼやぼやすんな、いくぞツン」
パイロットスーツをひっつかみ、部屋を飛び出す俺。
ξ゚听)ξ「……やれやれ。なんでうちの男共は、ああも即物的なのかしら」
━━━━
機体のブースターを響かせ僕たちは死者の埋葬所、通称“ガラブ砂漠”の上を砂塵を立てて疾駆する。
見渡す限りの砂、砂、砂。そこに有るのは、死の臭いと戦士達の亡骸だけ。不毛な土地だ。
( ^ω^)「こんな所に基地を作るなんて、よっぽど後ろめたい事でもあるのかお?」
15 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:21:17.46 ID:gi468o3HO
スピーカーが通信を知らせる。回線を開く。ツンだ。
ξ゚听)ξ『今回の作戦の確認を行うわよ。私達の目的は、ここより北西に位置する依頼主の所有する基地を守り抜くことよ。
敵はあのアライアンス。緊急時態という事であまり詳しくは書かれていなかったけど、あの切迫ぶりからして敵にACが居る事は確実ね』
( ^ω^)「またACかお……」
こうも立て続けにレイヴンと戦う事になると、気が滅入る。
まだ僕は駆け出しのレイヴンなのだ。
ξ゚听)ξ『安心して、今回も僚機が居るわ。それもかなりの凄腕らしいし、大丈夫よ』
そう言って、ツンは通信を切った。
なんだか、戦場でのツンはいつもよりも優しい気がする。
気のせいだろうか。
('A`)『凄腕レイヴンが僚機について、あの報酬か……なんだか、胡散臭いと思うのはオレだけか?』
ドクオが個人回線で僕に話しかけてきた。
( ^ω^)「うーん、確かに僕もそこが引っかかっていたお。でも、僕達は与えられた依頼をこなすだけだお。今は、集中するお」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/15(木) 23:21:28.86 ID:12mUu9iN0
支援
17 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:22:16.67 ID:gi468o3HO
('A`)『でもよぉ……アライアンスだぜ?アライアンスが狙っている勢力っつったら、なんかやばそうな気がするんだが……』
( ^ω^)「気にしてたらきりが無いお。そろそろつくから、気を引き締めるお」
その僕の言葉に、ドクオも不承不承といった感じで通信を切った。
( -ω-)「……実際、僕だって不安だお」
誰も聞いていないコクピットの中、僕は呟く。
既に目標の基地らしきものは、僕のコクピット内からでも目視できる距離に迫ってきていた。
ミサイルやその他諸々の重火器の立てる爆音が、スピーカー越しにやかましくがなり立てる。
ξ゚听)ξ『目標を確認出来たようね。まずは味方との接触を優先して』
僕達よりも遥か後方の装甲車から、ツンがオペレートする。
( ^ω^)「了解。それじゃあ行きますかお」
ブースターの速度を更に上げる。
それによって基地との距離が狭まり、僕はその全容をこの目にした。
岩肌を背にして立つ、二階建ての小規模な管制塔。その周りに林立するガレージ。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/15(木) 23:22:19.36 ID:3JCjrLZGO
支援
19 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:23:49.05 ID:gi468o3HO
そこに向かって、アライアンスの戦術部隊のものと思しき可変式の飛行型MT数十機が、怒涛の勢いで攻撃を行っている。
それを迎え撃っているのは、灰と紺のツートンに塗装された軽量二脚型AC一機。
目を見張るべきは、そのACがマシンガンとブレード以外には、レーダーを背負っただけの装備で敵MT二十機余りを相手どって戦っている事だ。
( ;^ω^)「す、すげーお」
思わず、感嘆な声が漏れた。
『やっと到着してくれましたか。ガレージだけは、何があっても死守して下さい。さぁ、早く彼女の援護を』
恐らくはクライアントであろう人物からの通信。
( ^ω^)('A`)『彼女?』
川 ゚ -゚)『お前達が援護のレイヴンか。正直、残弾が危うい。宜しく頼むぞ』
僕達二人が同時に問い掛けた時、ふいに別の回線から入る透き通った声。
遠目に見えるあのACからだろうか。
その声に、ドクオが異常なまでに反応した。
(*゚A゚)『くくく、クーちゃん!?』
見事に上擦った声。ドクオの知り合いなのだろうか。
川 ゚ -゚)『ん、どうした?』
20 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:25:04.08 ID:gi468o3HO
いや、ドクオには僕達以外に友達なんかいないから違うだろう。
(*゚A゚)『あばばば!ええと、その、まさか同じ戦場に立てるとは思いもしてなくてその……』
川 ゚ -゚)『だから何だ』
(;゚A゚)『たたたた大変感動しておりますです!』
そう言って、ドクオは敬礼のポーズでも取ったのだろうか。
回線越しに、コクピットの内壁に何かをぶつける用な音がした。
川 ゚ -゚)『それは光栄だが、とにかく今は一刻も早く援護を開始してくれ。こっちはジリ貧だ』
(*'A`)『は、はひっ!全力で援護させていただきます!あ、オレはドクオって言いまして……』
川 ゚ -゚)『そうか。宜しくな、ドクオ』
(*'A`)『よ、宜しくなんて……フヒヒwwww
ドクオ、バッドエンド、いっきまぁーす!』
スピーカーから思わず耳を覆う程のドクオの声。
それと同時に、僕の機体の横をバッドエンドがフルスピードで駆けていった。
( ;^ω^)「ドクオ、何調子乗ってるんだお……」
そんなバッドエンドの後ろ姿を見ながら、僕もブースターをフルスロットルで起動すると、ミサイルのロック体勢に入る。
21 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:26:24.59 ID:gi468o3HO
どんどん迫ってくる敵の飛行型MT。そのパルスガンの銃口がこちらを向いた瞬間、僕のミサイルが火を噴いた。
連動ミサイルも含めた十一発の弾道が、綺麗な弧を描いて飛んでいく。
ξ゚听)ξ『ブーン、あんた最近ミサイル使いすぎよ。弾薬費も考えてね』
( ^ω^)「サーセンwwwww」
そんな余裕の有る会話をしつつ、僕は戦闘の幕を上げた。
目前の基地上空を飛行するアライアンスのMT達は、一様に僕の方向を向く。
『新手が二機も……やはり、奴らもここを潰されるわけにはいかんということか』
敵のMTパイロットの通信が紛れて聞こえた。
( ^ω^)「お仕事、お仕事」
僕はレーザーライフルを構えると、飛び回る敵MTへと照準を合わせて発射する。
しかし、放たれた紫の光条はそれを貫く事は無かった。
戦闘機に足と腕が生えたような歪なフォルムのそのMTは、思いの他速い動きで、僕を撹乱する。
サイティングの為、機体の首を巡らすも、上へ下へと高速で移動する奴らを捉える事は非常に困難だ。
( ;^ω^)「ミサイル、使いたいけど……」
弾薬費。その単語が、僕に足止めを食わす。
瞬間、響く衝撃。
( ;^ω^)「ひょえっ!」
22 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:27:24.77 ID:gi468o3HO
死角からのパルス光が、僕の機体を直撃したのだろう。
慌てて機体をブースターで後退させ、敵を照準に収める。
だが、すぐさま視界から消えるMT。
また衝撃。
( ;^ω^)「苛々する奴らだお……」
呟き、武装を変更。
広くなったサイトに、僕の口元は笑みの形につり上がる。
( ^ω^)「ツンには悪いけど……」
トリガーに指をかけた、その瞬間である。
先ほどドクオが“クーちゃん”と呼んだレイヴンの乗る灰色の機体が、僕の目の前を横切った。
川 ゚ -゚)『どうした、こんなのに苦戦して』
23 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:28:04.24 ID:gi468o3HO
川 ゚ -゚)『どうした、こんなのに苦戦して』
青いブースター光を残し、機体は飛翔。
飛行型MTと交錯する瞬間、閃くブレード光。
MTは、彼女の機体が離れたのを確認するかのようにして爆発した。
ふわりと着地するその姿は、ぼんやりとして捉えどころの無い水煙のようで。
( ;^ω^)「空中切り……テラツヨス」
再びそんな感嘆の言葉が漏れていた。
川 ゚ -゚)『ぼやぼやするな、増援が来たぞ』
彼女の言葉に、僕はとっさにレーダーを確認する。
そこに映る三つの赤い光点。
すぐさま機首を巡らすと、後方の砂漠に砂煙を巻き上げて進行する巨大な機影。
全てACだ。
24 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:29:20.90 ID:gi468o3HO
ξ゚听)ξ『やっぱり出たわね……ブーン、ドクオ、迎撃体勢を整えて。アライアンス戦術部隊よ』
戦術部隊。その響きが、耳にこびりついた。
━━━━
飛び回るMTも、俺のスナイパーライフルにかかればそこらの蠅と同じ。
墜落していく歪な機影を見やりながら、俺は機体を旋回させ彼女、クー・ブルー嬢の乗る“インディゴミスト”を向く。
(*'A`)「へへ、どうです僕の腕……」
得意気な笑みをスピーカーに向けたがしかし、返ってきたのはツンの声だった。
ξ゚听)ξ『やっぱり出たわね……ブーン、ドクオ、迎撃体勢を整えて。アライアンス戦術部隊よ』
振り返り、砂漠のその向こうを見据えると、そこには三つの砂煙。
('A`)「AC、か……」
膝が震えるのがわかる。怖い、のか。
そう。結局のところ、俺はブーンと違って直接ACとやり合った事は無い。いつも、遠くからブーンの援護射撃ばかりだった。
('A`)「だが、これはチャンスかも知れねえぞ」
頬を叩く。
正直、やれるかどうかなんてわからない。対AC戦など、VRシミュレーターの中でしか経験した事が無いのだ。
だが、ここで上手くACを撃破できたら。
(*'A`)「クーちゃんに誉めてもらえっかも!」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/15(木) 23:29:23.70 ID:12mUu9iN0
支援
しえん
27 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:29:52.60 ID:gi468o3HO
顔がにやつく。鼻の下も伸びてるだろう。
('A`)「そうだ、ここで活躍するんだドクオ!彼女にいいとこ見してやんなきゃ!」
そんな卑しい妄想に罰が当たったのか。
俺の機体の足元が、突如爆ぜた。
(;'A`)「のわっ!」
崩れた機体の姿勢を慌てて立て直し、ブースターダッシュで後退する。
見ると空高く舞い上がった空色の逆関節型ACが、長大なスナイパーライフルを構えているではないか。
('A`)「狙撃……だと?」
その瞬間、俺の中のちっぽけなプライドが強く拳を握った。
(-_-)『君なら、近付いてこなそうだし……君に、決めた』
スピーカーから流れる陰鬱な声。
それが、俺を狙撃した奴の声なのだろう。
('A`)「オレに狙撃戦か……舐めやがって。受けて立とうじゃねぇか!」
ξ゚听)ξ『敵ACを確認、“ハイドアンドシーク”ね。搭乗者はヒッキー。小型ミサイルに大型レーザースナイパーライフルを装備した逆関節型の、見ての通り狙撃機体よ』
機体の後ろに向いた膝を曲げ大きく跳躍。岩場に乗ると、俺は肩のレールガンを構えた。
('A`)「吹っ飛べや!」
28 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:31:09.04 ID:gi468o3HO
照準を合わせ、レールガンをチャージ。
しかし、それは放たれる事は無かった。
バッドエンドの細いフォルムにもろに直撃するレーザー光。
今まで感じた事の無いような大きな衝撃が、機体と俺の体を揺らす。
(;'A`)「ぐっ!」
(-_-)『君、馬鹿?
AC戦でレールガンを構えるなんて、よっぽど……なんだね』
スピーカーから聞こえるヒッキーの声。
嘲っているのだろうが、その陰鬱な声色では何を言っても不吉な音色にしか聞こえない。
('A`)「くそっ!これぐらい……」
レールガンの構えをとくと、ミサイルを開く。
空中を飛び回るハイドアンドシークにサイトを合わせる。
二次ロックを告げる連続した電子音が鳴る。
が、それは捉えたと思うとサイト外へと飛び回るハイドアンドシークの動きに、幾度となく遮られてしまう。
(;'A`)「くそっ、ちょこまかと……!」
遠距離FCSの狭いサイトでは、ただでさえロックに時間のかかる二段分離ミサイルを、発射させるまでの間敵機を捕捉している事は困難だった。
そうやって俺が手間取っている間に、奴はスナイパーライフルのリロードを終えたのだろう。
紫の龍が如き光条が俺に向かって飛来する。
29 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:32:04.38 ID:gi468o3HO
動きをとめ、俺は機体を大きく跳躍させた。直後、足元すれすれに突き刺さる光条。
(;'A`)「流石に、あれに当たるのはまずいだろ……」
先の一撃でもって行かれた装甲の量から考えて、奴が振り回しているスナイパーライフルは“Fenril”だ。
レーザースナイパーライフルの中で最高の出力を誇るあの一撃にもし当たれば、大して装甲の厚くないバッドエンドではひとたまりもないだろう。
(;'A`)「油断できねぇな。だが、あれは出力故にリロードが長い。その隙をつければ……」
操縦桿を握る手に、汗が滲む。
見れば、奴は右手のスナイパーライフルを構えたまま所在なげに跳躍と着地を繰り返している。
やはり、リロード待ちか。
('A`)「今度はこっちの番だ。散々いたぶってくれやがって……」
バッドエンドに左手のスナイパーライフルを構えさせる。
('A`)「見てろよ。オレだってやれるんだ……」
俺は、トリガーに指をかけた。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/15(木) 23:32:42.57 ID:12mUu9iN0
支援
31 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:33:16.59 ID:gi468o3HO
━━僕は、目の前に迫りつつある戦車の脚に巨人の上半身を持ったACを見据える。飛行型MTは、もはやその姿も無い。
ξ゚听)ξ『敵ACを確認、“インスパイアーX”よ。搭乗者はモナー。マシンガンにハンドガン、拡散ミサイル、リニアガンを装備したタンク型機体ね』
( ^ω^)「のろまのタンクかお。これはやりやすいお」
僕はブースターを起動すると、レーザーライフルの射程圏まで一気にインスパイアーXへと近付く。
その青くどこかヒロイックな形をした機体は、のろのろとした動作で右肩のリニアガンを構えた。
( ´∀`)『そんな薄っぺらい装甲で僕に挑むモナか?』
敵機からの通信。
その速度で僕に挑むのか。
━━と言い返す間もなく、インスパイアーXのリニアガンが火を噴いた。
続けざまに二発放たれた炎の塊の一つが、ナイト・ホライズンの左肩を直撃する。
( ;^ω^)「ちょ、かわせない!?」
凄まじい揺れ。その衝撃に、軽量機の性かナイト・ホライズンの動きが止まった。
( ´∀`)『ははは、悪いけどタンクだからって侮らないで欲しいモナ。リニアガンの速射性は伊達じゃないモナよ』
32 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:34:02.44 ID:gi468o3HO
更に間髪入れず叩き込まれる砲弾。
揺れる機体。動こうとするも、その度にリニアガンの衝撃でナイト・ホライズンは硬直してしまう。
( ;^ω^)「動け!動けったら!」
徐々に削られていく装甲。焦る心。止まない衝撃。
( ´∀`)『このままハメ殺してやるモナ〜♪』
このままでは、一歩も動けずにやられてしまう。それはあんまりだ。
何とかしなければ。
( ;^ω^)「やられて、たまるかお!」
必死でOBを起動。ブースターにエネルギーが収束していく音が響く。
その間もリニアガンの嵐は止まない。
焦燥が募る。早く。早く。
エネルギーの解放、押し出されるようにして飛び立つ機体。
インスパイアーXから見て左に大きくスライド。離れた距離。
それでやっと僕の気持ちにも余裕が戻ってきた。
( ^ω^)「さぁ、逆襲だお」
リニアガンの追撃をぎりぎりでかわしながら、レーザーライフルを放つ。
動きの遅いタンク型では、やはりかわせない。連続して吐き出された光条は、その全てが吸い込まれるようにインスパイアーXの機体を貫いた。
( ^ω^)「リニアガンさえ気をつけていれば、お前なんか怖くないお」
33 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:35:15.11 ID:gi468o3HO
狼のように食らいつこうとする砲弾を横跳びで回避しながら、レーザーライフルを放つ。放てば当たる。反撃のリニアガン。だが、そう何度も当たらない。
ある程度距離を開ければ、見切る事も大して難しくは無かった。
( ^ω^)「今度は僕がはめる番だお!さっきのイライラ、お前も知るがいいお」
( ´∀`)『んっふっふっふっ。しょうがないモナねぇ。少し有利になれば、すぐこれだ。宜しい!ならば見せてあげるモナ。インスパイアーXの真髄を!』
モナーのその言葉と共に、今まで地を這うようにしてのろのろと動いていたインスパイアーXが、ブースターを唸らせて上昇を開始した。
( ´∀`)『飛び上がれ♪飛び上がれ♪飛び上がれ♪エッ〜クス♪』
古臭い節でモナーが歌い出す。
( ^ω^)「飛んだからって、何が出来るってんだお……」
相変わらず、僕の放ったレーザーライフルは的を外す事無く、インスパイアーXの装甲を溶かし続けている。
何が目的なのか。
( ´∀`)『せいぜい今を必死に生きるモナ。さぁ、本当の地獄はここからモナよ!』
モナーの一声にインスパイアーXが吠える。
僕はそこで認識を改めなければならなかった。
地獄が、始まる。
34 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/11/15(木) 23:36:01.65 ID:gi468o3HO
━━回避。スナイパーライフルの二点バースト。リロード。二点バースト。リロード。回避。二点バースト。
俺達の戦いは、それの繰り返しだった。
レーザースナイパーライフルは、実弾を使ったスナイパーライフルよりも弾速が若干遅い。
なので距離が離れれば離れる程、その光の軌道は避けやすくなるのだ。
それ故に、今や先手を取られたにも関わらず、狙撃合戦では俺がほんの少し奴に勝っていた。
('A`)「へへっ、狙撃歴が違うんだよ」
(;-_-)『……くそっ』
正直どっちが狙撃歴が長いのかなんてわからないが、奴が悔しがるのなら何度でも言ってやる。
機体の膝を折り曲げ、飛翔。地上で奴も同じ動作。奴が飛び上がる前に、空中からの狙撃。命中。
(;-_-)『……畜生、だから対ACは嫌なんだ……』
('A`)「おやおやぁ、愚痴っすか?それでもレイヴンかよwww」
先に嘲笑された恨みとばかりに、俺はヒッキーを言葉でもいたぶる。
('A`)「ほらほら、そんなにふわふわ浮いてるだけだと、また被弾しちゃいますよwwwあ、わざとっすか?サーセンwwwwww」
(;-_-)『ぐっ、ぐぐぐぐぎぎ……う、ううう』
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/15(木) 23:36:03.25 ID:+bWySOfh0
支援
作者上手くなったな