どう考えても詐欺です。
でも、私がそれを指摘すると、運転手の方はいきなり豹変して、私に怒声をぶつけてきました。
うう、相手が女の子だからって怒鳴り散らせば勝てると思ったんでしょうか。理不尽です。
でも、都会は恐ろしいことばかり。新参者がタクシー料金を騙し取られるなんてありえない話じゃないのです。
【シーナ】「……とりあえずここでいいのかな……?」
私が降りた場所は、これまたモンテヴィーノでは見ないおしゃれなお店の前です。
数日前に連絡を取ったヴァレリアさんとは、ここで待ち合わせることになってました。
583 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/03(土) 19:34:17.44 ID:yT7NRBI90
ごめん、飯食ってくる
俺も腹減った気がする
そして娘を布団に横たわらせます
臓物{はらわた}をぶち撒けろ!
587 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/03(土) 20:00:34.74 ID:6ft8vs7y0
10
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
腕時計で時刻を確認してみると、午後の1時を回ったところです。
予定では待ち合わせは1時半ということなので、あと30分は暇を潰さないといけません。
【シーナ】「うーん……」
予定より早く着くことはいい事ですけど、ただぼーっとしているのは、なんだか退屈です。
【シーナ】「でも、下手にうろついちゃうと戻ってこれなさそうだし……」
でも、うっかりしていると道に迷いかねない。それが悩み所です。
【シーナ】「この通りだけなら……迷わないよね?」
一直線に続くこの大通りなら、たとえ横道にでも逸れない限り道に迷うことはありません。
少しばかりお店でも見て回ろうと思い、私は立ち上がりました。
とりあえず、向かいの店に行ってみようかな―――
キキーッ!!
ビービーッ!!
【シーナ】「ひゃああ!?」
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
わわわ、びっくりしました。
道路を越えようと一歩踏み出した瞬間、危うく車にぶつかりそうになったのです。
【シーナ】「ごめんなさいっごめんなさいっ!」
必死に謝ると、車はさも不機嫌そうに走り去って行きます。
ああ危なかった。一瞬の油断は一生の後悔ですね。車に轢かれたら死んじゃいますけど。
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
【シーナ】「ほっ……」
ともあれ私は生きていますおじ様。早くもあなたの後を追わずにすみました。
そう思いつつ、私は胸を撫で下ろします。
さて気を取り直して行きましょう。今度はちゃんと信号を使って―――
―――ドゴォッ!!
【シーナ】「―――へ?」
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
一瞬、何が起こったのか理解できませんでした。
ただわかるのは、私が車にぶつかりそうになったその数秒後に、背後で何かが爆発したみたいだということだけです。
【シーナ】「―――っ!?」
心臓が一段大きく鳴動しました。
私は急いで背後を振り返ってみます。
たった今通り過ぎた車は、木っ端微塵に吹っ飛んでいました。
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
【シーナ】「え、えええええええっ!?」
目の前で起こった出来事に、私はただ大声を出すことしかできません。
何が何だかわかりません。どうしていきなり車が爆発するんですか!?
そうこうしている内にサイレン音がどこからともなく聞こえてきました。
きっと警察の方です。当たり前ですよね。
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
って、呆けてる場合じゃないです!
中の人は無事なんでしょうか。急いで私は車へと駆け寄ります。
【シーナ】「だ、だだだ大丈夫ですか!?」
未だ炎上を続けている車に向かって私は叫びます。
めらめらと燃え盛る状態で無事とは到底思えませんけども。
【シーナ】「あちちっ」
近づくと、やはり炎の熱がもの凄いです。
これ以上近づけそうにありません。
あと3時間以内にDAT落ちします、多分。
【シーナ】「お〜い、運転手さ〜ん!」
もう一度呼びかけてみますが、やっぱり返事はありません。
あぁなんて不運。ミラリオに着いた初日からこんな事故に遭遇するなんて。
【シーナ】「はぁ……」
私はがっくりうなだれました。
私にはどうすることもできません。ただ、誰かが来てくれるのを待つだけです。
【シーナ】「あれ……?」
ふと、私のそばに鞄が落ちているのが目に入りました。
見てみると、所々黒々と焦げ付いています。おそらく、車の中に入っていたんでしょう。
私はそれを拾い上げてみました。なんとなく、鞄がまだ使えるかどうかを確かめるために。
―――背後で、かちゃり、という金属音がしました。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
【?】「おい……ドタマに噴水作りたくなきゃそいつを渡せ」
【シーナ】「ひっ―――!」
意識が凍りつきます。
凍えるくらい冷え切った声が、私を貫きました。
そして、そんな声よりももっと威圧を感じるもの……。
ぎちぎち、と振り返ると、目の前には拳銃が突きつけられていました。
【?】「聞こえなかったのか?」
【シーナ】「は、はいっ」
どさり。
もう何も考えることができません。
左手ががたがたと震えて、鞄を落としてしまいました。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
【男】「よし……回収しろ」
そんな男の人の声で、また何人かの男の人たちが集まってきます。
丁重に鞄を拾い上げ、何か言葉を交わしているようでした。
【男】「ブツは無事か?」
【男2】「あぁ問題ねェ。ご丁寧に頑丈なモンに入れてたのが救いだったな」
【男】「よし、とっとと持っていけ」
【男2】「わかってるよ。急がねェとあの糞女が追ってくるぜ」
なんの話だか、私には全くわかりません。
銃は未だ私の眼前に突きつけられています。この状態じゃ逃げるに逃げられません。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
辺りからしきりにサイレン音や車の走行音が聞こえてきます。
でも、私の周りにはいつの間にか人がいなくなっています。
さらにどういうわけか、みんな影からこちらを伺っているようでした。
【シーナ】「…………っ」
どうして誰も助けてくれないんでしょうか……?
今男の人が引き金を引けば、本当に私の頭に風穴が空くのに……。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
617 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/03(土) 21:46:19.98 ID:NSkw5gtt0
はぁ?
age
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
【男】「……よぉし」
【シーナ】「―――っ!」
【男】「んじゃ、もう用は済んだからな」
【シーナ】「あ……」
どうやらこの人は、私が拾った鞄が目的だったみたいです。
ということは、私はもう解放されるんでしょうか。
【男】「―――あの世でも拾いモンに気ィつけるんだな」
【シーナ】「な―――っ」
あと2時間以内にDAT落ちします、多分。
あと1時間以内にDAT落ちします、多分。
あと1時間以内にDAT落ちします、多分。
あと1時間以内にDAT落ちします、多分。
かちゃり、ともう一度銃口が私に据えられます。
男の人の目が愉悦に歪み、引き金に指をかけて―――
【?】「オイオイ……いつから的にもならねェトロ女なんざブッ殺すようになったんだ、あぁ?」
【男】「―――っ!?」
バギッ!!
彼方から聞こえてきた声と同時に、私の視界から男の人が消えました。
【?】「ったくケツの穴の小せえ野郎だな。やるんならよ、もっとマトモな事やれってんだよ」
【男】「ク、クレイグっ、テメェ……」
【クレイグ】「何だ?言っとくが、いちいち映画みてェにちんたら撃とうとしてるテメェがワリィんだからな」
あと1時間以内にDAT落ちします、多分。
かろうじて私が理解できたのは、クレイグという人が思いっきり男の人を蹴り飛ばしたということだけでした。
ほんの数秒間のことなのに、なんだか変に長く感じます。
【男】「うるせえッ!」
【クレイグ】「どうでもいいがな、スーツケースはどこだ?テメェらが持ってっただろ」
【男】「ハッ、誰がテメェなんかに教え―――ぐがッ!!」
もう一度クレイグという人が男の人を蹴飛ばします。
今度は踵で鼻を狙ったみたいでした。
【クレイグ】「少しは自分が不利だって立場に気づけクソが。まぁ、テメェに聞いたって無駄骨だけどな」
あと1時間以内にDAT落ちします、多分。
あと1時間以内にDAT落ちします、多分。
【クレイグ】「おいトニオ、聞こえるか?オレだ。フィリップの馬鹿共の車を追え。そいつらがブツを持ってる」
【フィリップ】「テメェ……横取りか」
【クレイグ】「こんなアウトローで何言ってやがる。報酬が手に入んなかったら意味ねぇんだよ」
私はぽかんとその場に立ち尽くすしかできませんでした。
そして、一台の車がこっちに向かってくるのが聞こえました。
キキーッ。
【?】「乗ってクレイグ。追うわよ」
【クレイグ】「あいよっ!」
クレイグという人が颯爽と車に乗り込みます。
それを見ていたフィリップという人が、這いずりながら叫びます。
【フィリップ】「クソッ!!いつか地獄に落としてやるからなヴァレリアッ!!」
【シーナ】「―――えっ!?」
私は、それを聞き逃すことが、できませんでした。
風呂行ってくるー
今日はもう書けないかな……ごめんね