1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
代理
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:02:53.75 ID:utGQuuHkO
乙
でも寝ます
3 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:06:46.93 ID:ACbgZuT7O
>>1 礼を言う。
携帯厨なので、投下が長めになってしまうかも。
※初めに※
◎この作品は、アーマードコア ラストレイヴンの二次創作です。元ネタを知らない人も読めるように工夫はしたつもりですが、元ネタを知っているとやはり楽しめます。
◎地の文が多めなので、そういったものが嫌いな方は読まない事をお勧めします。
ではでは、ぼちぼちいきましょうか。
4 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:07:49.65 ID:ACbgZuT7O
Raven
━━レイヴン
They are mersenaries with firecest humanoid weapon
━━最強の人型兵器’アーマード・コア’を繰り
"Armored Core" who complete their client's request for large reward.
━━多額の報酬と引き換えに依頼を遂行する傭兵
Everything is ruled and controlled in the world,
━━支配という名の権力が横行する世界において
however, they never belong to anything.
━━何にも与することのない例外的な存在である
5 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:08:34.57 ID:ACbgZuT7O
承 前
━━成長する、という事は「可能性」を一つ一つ、潰していく事である。
我々の目の前に広がる無限の未来、その中の一つを我々は選び他のものを捨てて前へ前へと。
その先に何が有るのかも知らずに。
しかし、我々は成長せねばならない。
たとえその先に、何が待ち受けていようとも。
成長する事で、何かを見いだせるかも知れない。
我々には、それしか無いのだから。
( ^ω^)はアフターレイヴンのようです
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:08:59.53 ID:XEKsyuh50
流石携帯厨、やることが厨くせぇ
7 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:09:31.41 ID:ACbgZuT7O
プロローグ
━━世界は混沌としていた。
政府が政府としての機能を失ったこの世界、それに代わる権力を振りかざしていたのは企業。
金と武力。それによって保たれていた治安。
その全てを悉く破壊した、「特攻兵器」と呼ばれる謎の無人兵器の襲来。
さながら旧約聖書の大洪水のごとく無差別に、地上のありとあらゆるものを破壊し尽くした「特攻兵器」の襲来は、現れた時と同じように唐突にその姿を消した。
それによって秩序は打ち壊され、今まで秩序という名の支配を振りかざしていた企業の面々も、失った力を補い合うように連合を組む。
それが、連合統治機構「アライアンス」である。
このアライアンスによって地上には、徐々にではあるが再び秩序が戻りつつあるように見えていた。
そんな矢先の宣戦布告。
声を上げたのは武装集団「バーテックス」。
相手は秩序のお膝元アライアンス。
目的は「レイヴンによる新たな秩序の創設」。
周辺の武装勢力をも巻き込んだ、24時間に及ぶアライアンスとバーテックスの抗争は、双方の保有する主戦力である「レイヴン」の全滅によって、共倒れという形で終結した。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:10:01.28 ID:7fe8Ou+Z0
読み辛い
やめろ
9 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:10:19.36 ID:ACbgZuT7O
バーテックスはその本拠地であるサークシティの壊滅により、事実上瓦解。
アライアンスは物量で勝っていたとはいえ、管轄下の戦術部隊は全滅、切り札の巨大機動兵器「レビヤタン」も全機が撃墜され、その戦力の七割以上を失った。
これにより、連合統治機構としての力を失ったアライアンスに台頭すべく、生き残った各地の武装勢力は互いに争う事になっていく。
再び、世界は混沌の中へと導かれた。
そして、一年後……。
10 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:11:13.60 ID:ACbgZuT7O
第一話 序幕
━━('A`)『ブーン、後ろに一機回ったぞ!』
ドクオの鋭い言葉がスピーカーから飛び出す。
僕は慌ててレバーを倒すと、機体のブースターをふかしてS字旋回の要領で敵がいるであろう位置から、距離をとりつつ機体を旋回させた。
( ^ω^)「討ち漏らし、かお」
目の前のスクリーンには荒野に立つMT。戦車にダチョウの足を生やしたような姿のそいつは、鋼鉄の嘴から僕の機体に向けて鉛弾を吐き出す。
( ^ω^)「ACにそんなちゃちなマシンガン、利くわけないおwww」
再びブースターを機動し、横に機体をスライドさせながら僕はレーザーライフルのトリガーに指をかける。
11 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:12:10.27 ID:ACbgZuT7O
何発かMTの撃ったマシンガンの弾丸が機体をかすったが、構わず僕はトリガーを引いた。
( ^ω^)「身の程をわきまえるお!」
同時に僕の機体が握るレーザーライフルが、紫の光条を放つ。
それは目前のMTを直撃し、橙色の炎に変化した。
黒煙を上げ、炎を巻き上げ、その鳥脚を折るMT。
AC━━アーマードコア━━と違って、コストパフォーマンス優先のMT━━マッスルトレーサー━━は、装甲や武装などがあらゆる点でACに劣る機動兵器だ。
安価で量産の容易な事から、今でも前線においては主戦力として運用されているが、僕はあんな棺桶みたいなものには絶対に乗りたくない。
あんなのに乗っていたら、命がいくつ有っても足りないだろう。
('A`)『だから、油断するなっつってんだよ!』
再びドクオの声がスピーカーから響く。
それと共に、僕の機体の横を高速で弾丸がよぎる。
おそらくは、ドクオのACのスナイパーライフルが放った弾丸だろう。
右斜め後ろから、MTが炎上しているだろう爆発音が聞こえてくる。
それを確認する間もなく、スクリーンに映った緑の巨人がこちらに向けて、ブースターの機動音を響かせ接近してきた。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:12:50.77 ID:/cVftyvxO
俺は面倒臭いことが嫌いなんだよ
だが、支援
13 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:13:24.44 ID:ACbgZuT7O
人型のシルエットに不釣り合いな鳥のような脚が、ぎりぎりの均衡を保ち同居するそれは、力と破壊の象徴「アーマードコア」。
おそらく、地上に現存するどんな兵器にも勝る、強力な兵器だ。
その最大の強みは、「コアシステム」と呼ばれる各所のパーツを組み替える事により、様々な状況に対応できる汎用性だろう。
今僕の目の前をブースター移動していく緑のAC、ドクオが駆る「バッドエンド」は、瞬発力と空中戦に対応した鳥のような脚部━━逆関節型脚部という━━に、長距離狙撃用のスナイパーライフルを左手に持ち、右肩にはレールガン。
左肩には二段分離式ミサイルを装備し、長距離戦を想定した機体構成のもと組み上げられている。
そして接近された場合の対処として、右手にはショットガンを装備してもいる事から、彼の性格が伺える事はまぁ、余談として。
その機体は今、僕の機体の脇をすり抜けて、後方にいるであろうMTに向かって、中空から右手のショットガンを放とうとしていた。
14 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:14:28.13 ID:ACbgZuT7O
(;^ω^)「油断するなって言ったくせに……」
さっきも述べた通り、ドクオの機体「バッドエンド」は長距離戦を想定して組み上げられた機体だ。
自分から敵に近付いてショットガンを撃つなんてのは、彼こそが油断している事の証にしか僕には思えないんだけど……。
('A`)『なんか言ったか?』
スピーカーからドクオの声が零れる。
レーダーを確認。機体反応は僕の機体以外には、ドクオの機体を示す緑色のマークだけだ。
(;^ω^)「おっおっ!いやぁやっぱりドクオは頼れる2枚目だおね!流石ドックン!クール!渋いお!」
(*'A`)「よせやいwww照れんべwwww」
なんてバカなやり取りも、もう何度繰り返したろう。
僕とドクオの付き合いは長い。俗に言う「幼なじみ」って奴だ。
思えば僕がレイヴンになったのも、ドクオの誘いがあったからだった。
最初はACに乗って戦場を駆けるなんて、とてもじゃないが恐ろしくて考えてもいなかった。
しかし、そこは若さなのだろうか。
気付けば僕達は中破し、乗り捨てられていたACを奪って傭兵稼業…「レイヴン」達の世界へと足を踏み入れていた。
AC<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<MJ
16 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:15:40.40 ID:ACbgZuT7O
ξ゚听)ξ『敵反応消失。作戦成功よ。お疲れ様』
今更のように、オペレーターのツンが戦闘の終了を知らせる。
スピーカーから流れてくるこの声も、やはり昔から馴染みのある声だ。
彼女と、メカニックマンのショボン。僕達四人の幼なじみは、ACチーム「VIP」としてこの混沌とした世界で傭兵稼業を営んでいる。
まだ始めてから数ヶ月くらいしかたたないけれど、この混乱したご時世では依頼に困る事は無い。
一年前のあの戦いで、アライアンスがその支配力を失ってからというもの、各地の武装勢力が横行を繰り返すようになり、治安や秩序というものはほぼ完全に失われた。
武力、そして金、それがものを言う時代。僕達は実にいいタイミングで、レイヴンとしてデビューしたと言えるだろう。
('A`)『おっし、それじゃあ今から帰還するか。ツン、酒の用意頼むぜ』
ξ゚听)ξ『もう…また酒盛り?結構切り詰めてるんだから、ほどほどにしてよね』
('A`)『はいはいツンデレツンデレ』
ξ゚听)ξ『的外れな冗談は嫌いよ』
(;'A`)『サーセンwww』
17 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:16:38.20 ID:ACbgZuT7O
それでも、まだまだ僕達は駆け出しのレイヴン。
消費弾薬を抑えた戦い方や、被弾しない戦い方なんてのはまだまだ出来ていない。
だから、作戦の度にかかる弾薬費や機体修理費を差し引くと、僕らの手元に残る報酬金なんてのはたかが知れているのだ。
まぁ、他の一般人と比べると僕達の方が遥かに高収入なわけだけれど。
('A`)『おい、ブーン、行くぞ』
ドクオの声で我に返る。戦闘が終わった事で、少しぼうっとしていたみたいだ。
( ^ω^)「お?」
('A`)『聞いてねえのかよ。今日は酒盛りだっつってんだぁ』
どうやら、ドクオがまた酒盛りを始めるらしい。また酒か。
しかし作戦が終わった後の酒は、やはり美味い。あまり強い方では無いけれど、僕も密かに楽しみにしている。
( ^ω^)「mjsk!?これはwktkを隠せない!」
('A`)『だからさっさと帰るべ。酒が飲める♪酒が飲める♪酒が飲めるぞー♪っと』
( ^ω^)「音痴自重」
('A`)『ママ、最近みんなが冷たいです』
18 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:17:36.12 ID:ACbgZuT7O
━━(*'A`)「一万年と二千年前から愛してるぅ〜♪」
ξ゚听)ξ「音痴自重」
(;A;)「八千年過ぎた頃からみんな冷たくなったぁ〜♪」
ビールビン片手に歌っていたドクオは、ツンの言葉の暴力に打ちのめされ、撃墜した。
(*^ω^)「ツン、ドクオは繊細な子だお。あまりイジメると、キモい遺書残して自殺しちゃうお」
ξ゚听)ξ「それは大変。稼ぎ頭が消えたら、あたし達どうやって食べて行けばいいの」
(´・ω・`)「ブーンがいるじゃないか」
('A`)「父さん、そっちの暮らしはどうですか?僕に現実は厳しすぎます」
僕達は今、本拠地であるB-32エリアのACガレージにて勝利の祝杯をあげている最中だ。
ドクオの一言でツンが用意した酒は、やはりというか大した量と質では無かったけれど、作戦後の一杯という補正と気の知れた仲間達という援護射撃があれば、世界一の美酒へとその姿を変える。
その証に、ドクオはもう完全に出来上がっているし、顔には出さないがショボンもご機嫌そうだ。
かく言う僕も、いつもより速いペースでグラスを空けている。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:18:31.23 ID:gI12RrUH0
いいぞ、そのままいけ
20 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:18:35.06 ID:ACbgZuT7O
ゆっくりとした気持ちで見渡すガレージ内のブリーフィングルームは、ごちゃごちゃと詰まれた機材や電子機器のせいで雑然としてはいるものの、ここが第二の我が家で有る事を暖かい気持ちと共に僕に教えてくれる。
(*'A`)「ドクオ君、通算50機目のMT撃破おめでとう!」
さっきツンに精神的に撃墜されたドクオも、赤ら顔で騒いでいる。
ξ゚听)ξ「まったく…限度をわきまえなさいよね」
唯一機嫌が悪そうなのは、ツンくらいだ。
(*^ω^)「ツンもせっかくの酒盛りなんだからぐいぐい飲むお」
そう言って、ツンの前にある空のグラスにビールを並々と注ぐ。
あぁ、なんだか僕も完全に酔っ払いだなぁなんて思った。
ξ゚听)ξ「私はいいわよ。それよりブーン、あんた今日の作戦だけど相手がMTだからって油断し過ぎよ。
あんたが乗ってるの、軽量機体なんだからマシンガンでもくらったら危ないんだからね!」
げっ。お小言モード。もしかして、酔ってないのに絡み酒?いや、酔ってるのか?
(;^ω^)「それは、まぁ、置いておいて…」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:19:09.05 ID:EbNAUykzO
AC題材のブーン系はこれで2作品目か
22 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:19:43.58 ID:ACbgZuT7O
ξ#゚听)ξ「置いとかない!機体修理費だって、バカにならないんだから!
あんたが機体をぶっ壊す度に、ショボンやあたしが迷惑するのよ!
そこら辺の事もちゃんと考えた上で…」
(;^ω^)「はい…前向きに検討しまs」
こういう時は、聞き流すのが一番。触らぬ神に祟り無し。
ツンのお小言は最早病気だ。僕がレイヴンになる前から、何かって言うと僕の行動に…
ξ#゚听)ξ「聞いてんの!?」
物凄い剣幕でテーブルを叩くツン。
(;^ω^)「は、はひっ!」
ξ#゚听)ξ「まったく……ちょっとぉ、ショボンからも言ってよ!」
そう言って、ツンはショボンの方に向き直る。
グラス片手にドクオの漫談を受け流していたショボンは、怪訝な顔だ。
(´・ω・`)「ん?あぁ、確かにブーンの戦い方は少し雑だね。
軽量機体なんだから、いくらACでももう少し回避運動をしっかりとらないと」
(;^ω^)「うっ……」
(*'A`)「そうだぜおめぇ。あんな攻撃避けられないくらいじゃ、いつかあぼーんしちまわぁ」
そこにドクオも割り込んで、僕は完全に孤立した。
なんという集団イジメ。先生は悲しいです。
23 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:20:46.39 ID:ACbgZuT7O
(;^ω^)「ド、ドクオだって最後のあれは無いお。
前衛は僕に任せるって言ったくせに、わざわざあそこまで出て来て。あまり油断するとあぼんしちまうお」
精一杯の反抗。カーチャン、僕は強くなりました。
(*'A`)「オレはいいんだよ。お前より実力あっからな」
ドクオはそこでゲラゲラと笑う。
何だか悔しい。
(´・ω・`)「おや、随分と自信ありげだね。それじゃあ僕といっちょ や ら な い か ?」
ショボンが目を細める。その口元が僅かにつり上がっていた。
(*'A`)「おぅ、いいだろう。久々にいっちょやってやんよ!成長したオレを見て、腰抜かすなよ!」
(´・ω・`)「ふふ。素面でも勝てなかったのに、今勝てるつもりかい?言っておくけど、手加減はしないよ」
それを合図に二人は立ち上がると、部屋の隅に忘れ去られたように置いてある、VRシミュレーターへと足を向けた。
大昔に存在した、ゲームセンターの大型筐体のようなそれは、頻繁に使われない為うっすらと埃を被っている。
二人がこれから行おうとしているのは、VRバトル。
コンピューターを使って仮想空間の中でACを操作する、いわば訓練みたいなものだ。
24 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:21:44.40 ID:ACbgZuT7O
ショボンは何故かメカニックマンのくせに、このVRシミュレーターでの対戦成績が異常な程高い。
今まで僕とドクオが何度も挑んだけれど、未だかつてショボンに勝てた試しが無い。
これほどの腕が有るんだったら、生のACに乗ったらいいと思うのだが、ショボンは「現実とシミュレーターでは勝手が違う」と言って、戦場にたった事は僕の知る限りでは無い。
(*'A`)「おらおら、二段分離ミサで熱暴走させてやんよwww」
(´・ω・`)「そんなデタラメな攻撃、当たると思ってるのかい?」
既に二人の対戦は始まったようだ。
まぁ、どうせまたドクオが負けて明日の晩飯当番にさせられるんだろう。
ドクオの料理か…これは一大事。今から胃薬の用意をしておかなければ。
ξ゚听)ξ「ブーン」
(;^ω^)「は、はひっ!本当に申し訳有りませんでした!今度からは十分注意した上で、戦闘に望みたいと…」
ξ゚听)ξ「それはもういいんだけど」
(;^ω^)「お?」
何やらツンの表情が暗いような気がする。
さっきまで真っ赤な顔で怒っていたと思えば、これだ。
25 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:22:57.12 ID:ACbgZuT7O
正直、このギャップは反則だと思う。
パラメーター式の乙女ゲーで言えば、チートコード並みの。
ξ゚听)ξ「パルヴァライザー、また出たって」
そのツンの言葉で、思考が一気に反転する。
( ^ω^)「…どこに?」
ξ゚听)ξ「詳しい位置はわからないけど、ガラブ砂漠でキャンプを張っていた隊商の一行が目撃したそうよ」
( ^ω^)「そうかお…」
パルヴァライザー。
一年前のアライアンスとバーテックスの戦いで、突如その姿を現した謎の無人兵器。
戦闘経験の蓄積とその反映、そして驚異的な自己修復機能でどこまでも成長する、最強の自立兵器。
それがパルヴァライザーだ。
一年前の戦いで、とあるレイヴンにより破壊されたという噂があったが、最近になってまたその姿を現したという噂も聞く。
ξ゚听)ξ「最近、この近くでも目撃情報があがってるみたいだけど…」
( ^ω^)「まだ、僕たちじゃ早すぎるお。未だにACと戦った事も無いんだから」
ξ゚听)ξ「…うん」
僕の言葉に、ツンはいくらか安心したのだろうか。
26 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:23:57.26 ID:ACbgZuT7O
少しだけ頬を緩めた。
僕たち「VIP」が結成された本当の理由。目的。
それは、パルヴァライザーの鹵獲。
アライアンスの統治機構としての失墜。
それによって、新たな支配者としてアライアンスに取って代わろうとする輩は、それぞれの戦略で戦力の拡大を図っている。
そこで僕達がとったのは、地上最強と謳われる自立兵器「パルヴァライザー」を鹵獲する事だった。
正直に言って、パルヴァライザーの力で世界をどうこうするつもりは無い。
僕達はそのアライアンスに代わる権力を行使しようと目論む武装勢力に対して、このパルヴァライザーを高額で売り渡す為にこれの鹵獲を計画しているのだ。
一騎当千の力。しかし、実際たった一人のレイヴンによってこれは撃破されている。
それならば、僕達にもこれを打ち倒し鹵獲する事が可能では無いのか。そう思っての計画だ。
しかし、未だ僕達の実力はお世辞にも高いとは言えない。
だから今は泳がせておくしかない。
ξ゚听)ξ「それと、さっきあんた達が帰ってくるあたりに新しい依頼が届いてたわ」
27 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:25:05.15 ID:ACbgZuT7O
ツンは先程の表情を払拭するように、いつもの口調に戻る。
( ^ω^)「お?どちら様からで?」
ξ゚听)ξ「北東の隊商からで、サークシティまで護衛を頼みたいんだってさ」
( ^ω^)「護衛かお。また随分と簡単な仕事ですおwww」
そう言って僕がへらへらと笑うと、ツンは僕を窘めるような目で睨みつけた。
ξ゚听)ξ「あんた馬鹿ぁ?北東からサークシティに行くとなったら、ベルザ高原を通らなきゃいけないのよ?」
( ^ω^)「それがどうかしましたかお?」
その僕の言葉に、ツンは完全に呆れてしまったようだ。
ため息をつき肩をすくめると、うんざりした感じで口を開いた。
ξ゚听)ξ「ベルザ高原って言ったら、『ステッペンウルフ』の縄張りでしょうが」
( ^ω^)「……ああ!そうでしたお!」
「ステッペンウルフ」。そう言えば聞いた事が有る。
ベルザ高原を縄張りとする野盗集団だ。
ACやMTを乗り回して、近隣を通る人々を無差別に襲っては、その身ぐるみを剥いで生計を立てているたちの悪い武装勢力と聞く。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:26:18.73 ID:byF8fiot0
支援
29 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:26:30.06 ID:ACbgZuT7O
( ^ω^)「ACと戦う事になるのかお…」
幸か不幸か、僕達は今まで一度もACとの交戦経験が無い。正直、不安だ。
ξ゚听)ξ「まぁ、大丈夫でしょ。今まで奴らが襲ったのは大抵が非武装の行商か移民団ばかりだって聞くわ。それを聞けば、奴らの程度が知れるでしょう」
( ^ω^)「……ううむ」
とは言っても。ACだ。MTを相手にするのとはわけが違う。
ξ゚听)ξ「大体、こんな事で弱気になられたらこれから先が不安だわ。さ、今日はきつけの酒でも呑んでさっさと寝なさい。明日は早いわよ」
そう言うと、ツンは飲みかけのビールを僕のグラスに移して、ブリーフィングルームを出ていった。
( ^ω^)「……まぁ、確かに不安になってたってしょうがないお」
グラスを一気に呷る。部屋の隅からは、ドクオとショボンが今だにVRシミュレーターで対戦している音が聞こえてくる。
( ^ω^)「AC……かお」
僕は空になったグラスをそっと流しに置いた。
(*'A`)「くそ…何故、勝てない」
(´・ω・`)「ふふふ…詰めが甘いよ。というわけで、今夜は寝かせないからね」
(;'A`)「アッー!」
どうやら明日はマズい料理を食わなくて済みそうだ。
30 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:27:31.19 ID:ACbgZuT7O
第二話 ステッペンウルフ
━━白と深紫のツートンでカラリーングされた巨人が、今立ち上がろうとしている。
その右手にはレーザーライフル。左手には盾のような形状のレーザーブレード。右肩にはワンロックで同時7発のマイクロミサイルを射出するミサイルポッド。左肩にはレーダー。
その名は「ナイト・ホライズン」。僕の愛機だ。
中世ヨーロッパの騎士を彷彿とさせるそのシルエットは、ここベルザ高原の上に今雄々しく立っているであろう。
そう考えると、いつもの事ながら戦場へ向かう勇気が湧いてくる。
(-@∀@)『それじゃあレイヴン、宜しく頼むぜ』
スピーカーから、隊商の責任者の声が聞こえてきた。
( ^ω^)「任せるお。必ずや、皆さんを安全にサークシティまで送り届けますお」
早朝五時。僕達VIPの面々は、依頼主である北東の隊商の一行と合流した。
現在地はベルザ高原北端。これから、僕達のサークシティへの旅が始まる。
31 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:28:46.51 ID:ACbgZuT7O
('A`)『眠い…だりい…』
ξ゚听)ξ『あんたは男子高校生か』
スピーカー越しに、ドクオとツンのやり取りが聞こえてくる。
('A`)『だって、今日依頼が有るなんて聞いてねぇもん』
ξ゚听)ξ『そう言えばあんたには言ってなかったっけ』
('A`)『もしかして、オレっていじめられてるのかな』
(´・ω・`)『そんな事無いよ。僕はいつでも君の味方さ』
(゚A゚)『アッーバババババ』
昨日、ドクオの身に何が有ったのかは敢えて詮索しないようにしよう。
━━━━
そんなこんなで僕達は、予定通り隊商の一行と共にサークシティ目指し出発した。
隊商の編成は、輸送車が六台に万が一の為の装甲車両が二台の合計八台。それにツンとショボンが乗っているオペレート用の装甲車も追従している。
流石にこれではMT部隊に襲われるだけでも数分と保たないだろう。その為の護衛として僕達がいるわけだけど…。
( ^ω^)「こちらブーン、前方に異常無しだお。どうぞ」
('A`)『こちらドクオ、相変わらずいい天気です。どうぞ』
時刻は正午過ぎくらいだろうか。見渡す限り一面の野原。どこまでも続くかのような緑の海。
こんな晴れた日にはピクニックなんかがうってつけだろう。
32 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:29:46.82 ID:ACbgZuT7O
そんな事を考えてしまう程、僕らの護衛任務は平凡に過ぎていた。
ドクオの機体「バッドエンド」が、輸送車両の遥か後方につき哨戒し、僕の機体「ナイト・ホライズン」が輸送車両の前方及び周辺の警備に当たって、外敵の襲撃に備えている。
それにしても、退屈だ。早くこの時間が過ぎてしまえばいいのに。
何より、この輸送車両というのが遅い。
軽量二脚型ACに乗っている僕からすれば、こんな高原はOB━━オーバードブースト━━でひとっ飛びなのに。
そう考えると、輸送車両のとろとろした速度に余計にやきもきしてしまう。
そのいらいらを我慢できず、僕は隊商の先頭車両へと回線を繋いだ。
( ^ω^)「もう少し、スピードは上げられないのかお?」
少しトゲトゲしい口調だったかも知れない。
(-@∀@)『馬鹿を言っちゃあいけねぇよ。こっちはこれでも全速力さ。ナイーブなもん運んでっから、そこら辺は気ぃつけなきゃな』
だが隊商の責任者は、別段気にした風もなくのんびりとした口調で返してきた。
こういったやり取りは馴れているのだろう。
33 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:30:50.35 ID:ACbgZuT7O
( ^ω^)「ところで、この隊商は何を運んでるんだお?」
敵影も未だ見えず、退屈していた事も有り、僕は退屈しのぎに隊商のおっさんと世間話でも始めようかと聞いた。
(-@∀@)『何だぁ、あんた聞いてねぇのかい。AC用パーツだよ。AC用パーツ』
ハンドルを切りながら煙草でもふかしているのだろうか。
言葉の合間合間に息を吐く音がスピーカー越しに聞こえてくる。
( ^ω^)「お、そうだったのかお。最近じゃ、物質不足で金はあってもパーツが買えないって、うちのメカニックが困ってたお」
機体を旋回させ、ブースターでジャンプ。輸送車両を飛び越えて向こう側に着地。周囲をモニター越しに見渡す。異常無し。
(-@∀@)『そいつは大変だねぇ。それなら、あんたらのとこに特別に訪問販売でもしてやろうか?』
機体を輸送車両と平行に歩かせる。異常なし。
( ^ω^)「それは嬉しい申し出だお!パーツはどこのかお?」
(-@∀@)『うちはジャンク屋さ。そこら辺の戦場を回って、適当にまだ修理すれば使えそうなのを拾ってきて改修、そして販売ってね。
“アサピーズマーケット”って聞いた事ねぇかい?』
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:31:33.15 ID:vE9bwqhEO
投下はやいな
支援
35 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:31:50.02 ID:ACbgZuT7O
長い吐息。煙草を吸い終わったのだろうか。
( ^ω^)「うーん…パーツとか整備の事はまるっきり整備士任せだから……」
(-@∀@)『そいつはいけないねぇ。レイヴンなら、自分の機体の事は愛してやらなきゃ。まぁ、これを機にうち共々、パーツの事を宜しく頼むよ』
( ^ω^)「おっおっ!こちらこそ、訪問販売、宜しく頼むお!」
(-@∀@)『へへっ、あんたらがきっちりとオレ達をサークシティまで送ってってくれたらな』
( ^ω^)「任せるお!」
ブースターを起動。
いや、するまでも無い。
異常なしだ。
━━━━
星が綺麗だ。
モニター越しに見る空でも、星の明るさは変わらないんだと気付く。
全く、平和な1日だった。
現在時刻午前零時。
結局、あれからも平凡で退屈な時間が流れ、僕はあまりの退屈さに現れない敵の機体を想定しながら射撃訓練を行いかけ、弾薬の浪費に厳しいツンによって制止された。
どうせ僕の機体はレーザーライフルとミサイルしか装備してないんだから、ライフルの射撃訓練くらいいいだろうと僕がこぼすと、エネルギーの充電で少なからずバッテリーを使うから駄目だと突っぱねられてしまった。
36 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:32:55.23 ID:ACbgZuT7O
ツン曰わく、僕は経済観念が足りないのだそうだ。
しかも、それを口実とばかりに普段の生活態度、周りが見えていない、気配りが足りない、口が臭い、歯を磨かない、トイレの後始末が汚いなど、述べ数十件に及ぶ余罪を上げられ、長々とお説教を食らってしまった。
おかげで退屈しのぎにもなって、鼓膜が大分麻痺している。
あの甲高いキンキン声で数時間責め立てられると、鼓膜ばかりか他の五感までおかしくなってしまうような気がする。
('A`)『なぁ、ブーン。しりとりしようぜ』
ドクオが突拍子も無いことを言うが、僕も今は賛成せざるを得ない。
( ^ω^)「おk。じゃあ最初は僕からだお。“きわもの”」
この夜中では暗すぎて移動は困難だとして、隊商達は近くの川縁にキャンプを開いてそこで一時休息をとることになったのだ。
僕たちもその近くに機体の戦闘システムを解除し、待機している。
だが、僕達は護衛という依頼上寝るわけにはいかない。
('A`)『の…“ノースコリア”』
だからこうして、眠たい目をこすりACのコクピットに座っているのだ。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:33:08.64 ID:l3biNecbO
ぐああ
38 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:33:54.47 ID:ACbgZuT7O
( ^ω^)「あ、あ、“アライアンス”」
と言っても、こんな暗いコクピットの中にいては夜も昼も無い。
いや、逆に疲れた体にはこのコクピットの暗さは寝るのに調度良すぎる。
('A`)『“スイーツ(笑)”』
そんなわけで、目下の敵は睡魔というわけだ。
( ^ω^)「つ、“ツン”……アッー!」
昼間ありったけ絞られたからだろうか。思わずその名が口をついて出た。
('A`)『“ンジャムジ”』
( ^ω^)「ちょwww何それwww」
('A`)『土人だよ、土人。ほら、“じ”。言っとくけど、また“ん”がついたら今度こそアウトだからな』
土人って…そんな出鱈目言ってまでしりとりを続けたいのか。
だけど僕も他にする事が無いのは事実だ。
( ^ω^)「じ…じ…」
僕が「じ」で始まる単語を思い浮かべてコクピットの中に視線をさまよわせていた、その時である。
スピーカーからスクランブルを告げる警告音が飛び出してきた。
(;^ω^)「おっおっ!敵襲かお!?」
ξ゚听)ξ『よく起きてたわね。そこだけは誉めたげる。十一時の方角に敵襲…あれ?』
39 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:34:49.15 ID:ACbgZuT7O
スピーカー越しのツンの声が途切れる。
それに割り込むようにして混ざるノイズ音。
(;^ω^)「ツン!どうしたお!?ツン!」
ξ;゚听)ξ『敵………よ!…を…けて!』
途切れ途切れの声では、何を言っているのか判断できない。
僕は慌ててブースターを起動させると、武装系統のセーフティーを解除する。
それに続いて、無機質なCOM音声がスピーカーから流れた。
『メインシステム、戦闘モードに移行します』
と同時に、遠くからの銃声。
しまったと思った時には遅かった。
被弾の衝撃で、僕の機体が僅かに揺れる。
(;^ω^)「おっ!おっ!タンマタンマ!」
いきなりの襲撃に、慌てふためく僕は随分と間抜けな言葉を口にしてしまう。
また響く銃声。
僕は機体のブースターをチャージすると、操縦桿を目一杯横に倒した。
ブースターが唸りを上げ、熱をチャージする音が響き、次の瞬間、そのエネルギーを一気に放出する。オーバードブースト。
これにより、僕の機体は大きく右に飛ぶ。
今度は被弾しなかったようだ。
40 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:35:49.13 ID:ACbgZuT7O
(;^ω^)「ふう…でも、通信が繋がらないって、どういう事なんだお」
オーバードブーストで、隊商のキャンプ地点からかなり離れた草地に着地した僕は、大分冷静さを取り戻していた。
可及的速やかにメインモニターに映る外界を眺め、何が起こったのかを確認しようとする。
見ると、僕の機体が元あった位置から数十キロ程南東に、夜闇で見えづらいながらも、すげ傘を被ったような人型のMTらしき影が二つ程確認できた。
( ^ω^)「狙撃用MT……じゃあ、さっきのノイズはECMのせいかお」
ECM。ロックオン機能やレーダー機能、そして通信機器などのあらゆる電子機器に対して妨害電波を放つ、いやな兵器だ。これを開発した奴は、相当性格が悪いのだろう。
( ^ω^)「でも、ロックオンできないなら……」
ブースターをチャージ。再び、OBの構えをとる。
瞬間、エネルギーの解放。一刹那に跳ね上がる機体スピードと、僕の鼓動。この瞬間は、心が躍る。
⊂二( ^ω^)⊃「ブーン!!」
地上を土煙を巻き上げながら進む僕の機体「ナイト・ホライズン」を思い描く。
目の前には、急接近する僕の機体に面食らって、とっさの判断がきかなくなった狙撃用MTの姿。
41 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:36:45.21 ID:ACbgZuT7O
( ^ω^)「ロックオンできないないなら……」
機体左手に装備した、盾状のレーザーブレードを構え。
( ^ω^)「切り刻めばいいんだお!」
袈裟切りに一閃。
青白いレーザーの光波を剣状に固定したそれが、敵の片口に食い込み鋭い音を立てて脇腹から抜けた。
( ^ω^)「柔らかすぎるお。これがブレードクオリティ」
機体を真っ二つにされた狙撃用MTは、二次破壊の爆音と共に炎上する。
その爆発に巻き込まれないよう、僕は機体を左にスライド移動すると、もう片方の狙撃用MT目掛けて再びそのブレードを振るった。
( ^ω^)「そのECMがなかったら、ラストサムライみたいでカッコイいのに」
長距離戦を想定して、スナイパーライフルとECMしか装備されていない相手のMTは、近づかれると武器の取り回しが効かない。
よって、ブレードで切り裂くのは用意なのだ。
( ^ω^)「お邪魔君は消えてもらうお。なんて、うはwww死亡フラグwwwww」
おどけながらの一閃。それでもやはり相手はMT。為す術もなく、青白い光波に切り裂かれ地に伏した。
42 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:37:46.03 ID:ACbgZuT7O
( ^ω^)「これで、通信も回復するはずだお」
呟きながら、コンソールパネルを一通り見渡す。異常は無い。どうやら、回復したようだ。
( ^ω^)「おっおっ。そう言えば、ドクオの方は大丈夫かな。おーい、ドクオー。聞こえるかおー」
僕の呼び掛けに、ややあって苛立ち混じりの声が返ってくる。
('A`)『あぁ、なんとか無事だ。ロックオンできなくて、相変わらず苛つくけど……よ!』
言葉の尻に、僅かな爆音が混じる。ドクオが被弾していない事を祈ろう。形だけ。
( ^ω^)「そうかお。そっちは何機くらいいるんだお?多すぎるんだったら、かせi」
余裕しゃくしゃくな僕の言葉は、ツンの叫び声にかき消される。
ξ゚听)ξ『ブーン後ろ!』
(;^ω^)「お?」
考える間もなく、機体をジャンプさせる。
次の瞬間、今まで僕の機体が居た位置を、月明かりのような青白い光波が薙いだ。
(;^ω^)「ブレード…!?そんなに接近されてたのかお!?」
上空で機体を旋回させ、カメラを下に向けて相手の姿を確認する。
43 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:38:46.83 ID:ACbgZuT7O
夜闇に溶けるような黒で塗装された人型のそれは、右手に実弾ライフルを持っているように見える。
ξ゚听)ξ『敵ACを確認、“エボニーハウンド”。搭乗者はフサギコ、ステッペンウルフの頭領よ!』
ツンが即席で調べた敵の情報を教えてくれる。
ξ゚听)ξ『ECMメーカーを使用した、近距離でのブレード攻撃に注意して!
奴の装備してるブレードは、あんたのとは桁違いに高出力よ。一撃一撃が重いわ』
ツンの咳を切ったような言葉が終わるか終わらないかのうち、割り込み回線で真下の敵機体「エボニーハウンド」から通信が入った。
ミ,,゚Д゚彡『ほう、避けたかよ。…ったく、今のでやられときゃ楽に逝けたのによ。後悔すんぜ?』
ハスキーなバリトンから、声の主は手錬でありそうな予感を僕は覚えた。
背筋が縮む。
(;^ω^)「そ、そのセリフ、死亡フラグだお」
精一杯の虚勢。だが、声が震える。
ミ,,゚Д゚彡『どうした。声が震えてんぞ』
嘲るようなフサギコの声色。
その声を頭から振り払おうと躍起になっている間も、僕の機体は地上へと降下していく。
44 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:39:45.93 ID:ACbgZuT7O
落下に伴い加わるG。その中で、やっと僕は今確かに戦場に居るんだという事を思い出す。
慌てて操縦桿を握り直すと、機体右手のレーザーライフルを構え、放つ。
だが。
ミ,,゚Д゚彡『お前駆け出しかぁ?そんな馬鹿正直な射撃、当たるかよ』
地上のエボニーハウンドは、レーザーの軌道を見た上でそれをブースター移動でなんなくかわす。
ミ,,゚Д゚彡『笑わせんなよ。こっちは生き死にがかかってんだ』
ライフルを構え、僕の機体目掛けて十発程発砲するエボニーハウンド。
(;^ω^)「おっ!おおっ!?」
動揺が、回避動作を遅れさせる。
自由落下している機体はいい的だ。
十発中十発が僕の機体を直撃し、コックピット内を揺らせた。全弾命中。外部装甲が削れる激しい音がした。
その直後、更に大きな振動がコックピット内に伝わる。
(;^ω^)「おっおっおっ!?」
ξ;゚听)ξ『何やってんのブーン!』
動揺していて、着地後の衝撃をブースターで和らげるのを忘れていたのだ。
衝撃のショックに硬直する機体。
そこに追い討ちをかけるように食らいつくライフルの弾。
ミ,,゚Д゚彡『おやおやぁ、ドッスンですか。ふははは……』
再び嘲りの声が、スピーカーから零れる。
45 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:40:42.85 ID:ACbgZuT7O
ミ,#゚Д゚彡『ふざけるのもいい加減にしろ!何度も言うがこっちは生きるために戦ってんだよ!
てめぇみたいな雑魚と遊んでる暇はねぇんだ!このだぼが!』
一転した怒声が、僕の鼓膜と心臓を震わせた。
生きるための戦い。戦い。「戦い」という単語が、僕の脳内を走り回る。
そうだ。これは「戦い」なのだ。これが戦いなのだ。これが、AC同士の戦いなのだ。
生きるか死ぬか。戦いとは、そういったものだったのだ。
(;^ω^)「たた、かい……」
ミ,,゚Д゚彡『てめぇにゃ構ってられねぇ。悪いがもう一機のACの方を先に倒させてもらう』
その言葉が終わらぬうち、目前に立っていたエボニーハウンドは旋回し、ドクオがMT達と戦っている方へと、ブースターを唸らせ駆けていった。
ξ゚听)ξ『ブーン、何ぼうっとしてるのよ!敵ACはドクオの方へと向かっているわ!ドクオはまだMTとk』
命の奪い合い。殺し合い。
(;^ω^)「あ、あうあう」
その認識が、僕の中でまだ欠けていたのだろうか。
いや、欠けていたのだ。ACに乗っていれば、そう簡単には死なない。
そんな事を、僕は考えていたのだろう。
46 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:41:44.25 ID:ACbgZuT7O
甘かった。甘すぎる。
今、フサギコがドクオを標的として選ばなかったら。
その先は考えたくない。
いや、ドクオだ。
フサギコはドクオを標的として選んだ。
ドクオ。ドクオ。今度は親友の名が、僕の脳内を走り回った。
ドクオ。
(;^ω^)「ドクオ!」
僕は慌ててブースターをチャージする。
考えている時間は無い。今は、殺し合いの時間なのだ。
('A`)『うおっ、ACか!?』
スピーカーからドクオの切迫したうめき声。
武装をレーザーライフルからマルチミサイルに変更、直後三度目のオーバードブーストの加速によるGが体を襲う。
( ^ω^)「死なせてたまるかお!」
「殺し合い」を認識した事で冷静になった心が、知らず知らずのうちに震えていた手の動きを修正していた。
いつもの動作で、サイト内に目の前を行くエボニーハウンドの姿を捉える。
ミサイルのロック音がコックピット内に響く中、目の前に広がる戦場を冷静に見渡す。
目の前数キロ先のドクオの機体を取り囲むように、五機ばかりの逆関節型MTと狙撃用MTが立っている。
そこに、フサギコが駆るエボニーハウンドがブースターで迫っていた。
47 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:42:55.10 ID:ACbgZuT7O
( ^ω^)「いくお……」
ミサイルロック完了。両肩の連動ミサイルを展開。発射。
轟音と共に吐き出された11尾の鮫が、目前を行く黒き猟犬に向かって飛びかかる。
ミ,,゚Д゚彡『あんだあ?まだやる気か?』
エボニーハウンドが振り返る。そこに食らいつく獰猛な鮫の群。
猟犬は辛うじてその身をひねるが、かわしきれなかった鮫が数匹食い付いた。
連続する爆音。
ミ,,゚Д゚彡『ちっ…ちょいと甘くみちまったか。そんなに死にてえんなら、相手してやんよ』
エボニーハウンドはライフルを下ろすとその肩部を開き、何やら円盤状の物体を吐き出した。
途端に僕の機体内の計器類が、誤作動を告げる警告音を鳴らす。
( ^ω^)「またECMかお……」
メインモニターに映るロックサイトは、目の前に迫るエボニーハウンドを捉える事も無く、ただただ無情に表示されている。
ロックオン封じ。そして夜闇に紛れた奇襲。そしてツンの言葉。
『今まで奴らが襲ったのは大抵が非武装の行商か移民団ばかりだって聞くわ。それを聞けば、奴らの程度が知れるでしょう』
48 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:43:53.55 ID:ACbgZuT7O
なる程。やはり、実力はそれほどでも無いらしい。
だが、僕も人のことを言えた腕ではない。
( ^ω^)「冷静にやれば、きっと僕でも勝てるはずだお」
エボニーハウンドはコアの背部から、自立型攻撃兵器━━EO(イクシードオービット)━━を分離させる。
次いで構えたライフル。僕の機体は相変わらず標的を捉えられない状態だ。
この場合は、黙って攻撃を避けるのが無難か。
エボニーハウンドの構えたライフルから吐き出される弾丸、それに呼応するかのように、猟犬の頭上のEOが青白いレーザーを放つ。
僕は機体を左右に踊らせるようにして動かし、出来るだけ被弾を避ける。
ミ,,゚Д゚彡『おい、さっきの勢いはどうした?』
嘲るような口調のフサギコ。相手は僕の機体がロックオン出来ないのをいいことに、最早ブースターを起動する事も忘れて迫ってくる。
そうだ、もっと近づけ。
ミ,,゚Д゚彡『逃げてばかりじゃ、大切な物資も守れんぜぇ』
結果的に、その言葉が合図になった。
僕の機体に近寄ったフサギコ。使いものにならないロックオンサイト。
49 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:45:40.75 ID:ACbgZuT7O
そこまできたら、僕が取るべき行動は残りわずかだ。
そんな事にも彼は気付かなかったのだろうか。
ミ,;゚Д゚彡『な、てめ…!』
迸る青き閃光。振りおろされたナイト・ホライズンの左腕。
斬り裂かれた黒き猟犬。
( ^ω^)「笑わせるなお。この距離、その速度、ブレードで捉えられない訳がないんだお」
胴を袈裟切りに真っ二つ。それが、決定打だった。
終わりを告げる黒煙が、エボニーハウンドから昇り始める。
ミ,;゚Д゚彡『くそっ、こんな奴に……死ぬわけには…すまねぇ、お前たち…』
ブースターを起動し、機体をバックさせる。
ややあって、一際高い爆音。
猟犬は、あまりにも呆気なくその牙を折った。
( ^ω^)「……」
爆発の後には、何も残らない。彼が生きた証も、声も。
有るのは機体の残骸と、焦げ痕だけ。
彼は生きるために戦っていると言った。
略奪する事で、その日の糧を得る。
それは、僕達も同じ。僕達の戦いには、正義も何も無い。
ただ、お互いの「戦うべき理由」が有るだけ。
50 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:46:21.58 ID:ACbgZuT7O
( ^ω^)「……」
同情など、するべきでは無いのだろう。
それでも僕は、ほんの少しの間彼の機体が最後に立っていた場所を眺めていた。
そして、ここが戦場だという事を思い出して、ドクオの機体が居る方へと機体を走らせた。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:47:03.34 ID:gI12RrUH0
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:47:18.28 ID:0oKtI9G+O
支援
53 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:48:06.34 ID:ACbgZuT7O
今回の投下分はこれにて終了。
これからおまけの機体紹介投下するよー\(^o^)/
54 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:48:58.85 ID:ACbgZuT7O
登場機体紹介(第一話〜第二話)
◎機体名:ナイト・ホライズン
◎搭乗者:ブーン
http://p.pita.st/?m=tkmegpu9 assembly
頭部:アイ4
コア:イカロス
腕:A92XS
脚:ジャガー
ブースター:ガル
FCS:ミロク
ジェネレーター:フドウ
ラジエーター:R92
Ex:フニ
右肩:キンナラ
左肩:WB69RA
右腕:シェイド
左腕:タロス
コアタイプ:OB
本編の主人公であるブーンの搭乗機体。
軽量二脚型機体で、スピードをいかした一撃離脱戦法を得意とする。エネルギー消費にやや難が有るのが泣きどころ。
だが弾薬費の事を考えると、ワンロックミサイルも迂闊に使えないのが目下の悩み。ツンには毎回その事を打診しているが、腕を上げろの一点張りらしい。
55 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:49:51.46 ID:ACbgZuT7O
◎機体名:バッドエンド
◎搭乗者:ドクオ
http://p.pita.st/?m=xy41bzzf assembly
頭:シケイダ2
コア:C75U2
腕:ロリス
脚:ガゼル
ブースター:ガル
FCS:F91DSN
ジェネレーター:コンゴウ
ラジエーター:アナンダ
Ex:E73RM
右肩:ラドン
左肩:ヒドラ2
右腕:WH76S
左腕:WYRM
左腕(格納):エルフ2
コアタイプ:格納
ブーンの幼なじみ兼親友のドクオが駆る機体。
中量逆関節型に無理矢理レールガンを積んでいる為、抗戦地点から離れた場所からの狙撃を主戦術とする。
ただし、敵に囲まれた場合はすぐさまレールガンのパージが必要。
56 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:50:38.91 ID:ACbgZuT7O
◎機体名:エボニーハウンド
◎搭乗者:フサギコ
機体構成提供:ID 7Iw5iTSq0氏
http://p.pita.st/?m=tfirsuz5 assembly
頭:アイ4
コア:ガイア
腕:LANGUR
脚:クーガー2
インサイド:ホンシ
右肩:サイレン
右腕:シャドウ
左腕:ムーンライト
コアタイプ:EO
野盗集団「ステッペンウルフ」の頭領フサギコが駆る機体。
インサイドのECMと闇色に塗装された夜間迷彩機体で、夜襲を得意とする。
パーツ構成は至って基本に忠実。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:52:43.25 ID:GK1GevnDO
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:53:39.50 ID:0oKtI9G+O
エボニーハウンドとバッドエンドの画像が逆になってるよー
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:54:05.38 ID:vE9bwqhEO
これは新しいな
60 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 01:54:22.95 ID:ACbgZuT7O
以上、駄文書きがお送りしました。
質問、突っ込み、改善点などが有りましたらどしどしどうぞ!
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:54:52.74 ID:vsoZTC4rO
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:56:38.04 ID:0oKtI9G+O
乙かれー&作者のIDがAC
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:57:14.28 ID:vsoZTC4rO
>>61の者だえ。見れるようになったどす
( ^ω^)
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 01:57:55.80 ID:GK1GevnDO
とりあえず、乙ッ
おつ
続き楽しみにしとく
66 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 02:01:05.83 ID:ACbgZuT7O
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 02:05:45.46 ID:vE9bwqhEO
乙!
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 02:12:38.75 ID:byF8fiot0
乙。読みにくさ意外は結構好き。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 02:24:21.17 ID:rwT992H4O
乙!
ゲームも興味はあるんだが一つ選ぶなら何がいい?
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 02:28:28.46 ID:GK1GevnDO
>>69 初心者向きなのはAC2とAC3と言われる。
AC2は初代シリーズの続編で、個人的には初代系を先にやってほしい。
AC3は初代に近いから、ACの世界観がわかりやすいかと。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 02:31:44.21 ID:4kEmcSO+0
遅れてすまんが乙
これからも期待しているぞ
72 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 02:32:06.18 ID:ACbgZuT7O
>>68 そう言われると照れるべwww
出来るだけ、短く纏めるように努力するぜ。
>>69 AC2とAC3がおすすめ。
それぞれAC2AA(アナザーエイジ)とAC3SL(サイレントライン)という続編があるが、高難易度で初プレイには向いてないかも
あと、N系(ACNX、ACNB、ACLR)もあるが、熱の管理が難しいからこれもあまりおすすめしない
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 02:40:44.39 ID:rwT992H4O
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/31(水) 02:45:54.15 ID:EbNAUykzO
76 :
◆LDjQ6B8uYg :2007/10/31(水) 02:54:36.63 ID:ACbgZuT7O
AC2AAでやめた旧レイヴンだけど面白かった