1 :
◆YnecR1MhsM :
2 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:11:50.27 ID:YFKrH/cs0
七
プロレス観戦から十日が過ぎたが、しぃに関する事柄は、全く進展がないままだった。
それらしい手掛かりの一つさえつかめないまま、俺は電車にゆられながら、
少し離れた県の、海岸沿いに面したとある旅館へと向かっていた。
春休みの最後、しぃたち親子3人が、一泊二日で泊まり込んだ旅館だ。
('A`)「で、何で君はここに座るかな?」
俺のひざの上にちょこんと座っているしぃに尋ねた。
(*゚ー゚)「だって、もう1時間も立ちっぱなしなんですよ。さすがに疲れました。
あー、やっぱり電車は座って乗る物ですよねー」
しぃはそう言って、俺のひざの上で「うーん」と伸びをした。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:12:00.73 ID:RqFo6KJg0
おいおい今日は投下禁止デーだぜ?
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:12:47.72 ID:YeBTrAbD0
5 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:13:30.13 ID:YFKrH/cs0
('A`)「その意見には俺も同意してもいいけどね。
あくまでそれは座席の上って事であって、他人のひざの上に座るのはいかがなものかと思うんだけど?」
(*゚ー゚)「だって、他に空いてる席がないんだから、仕方がないじゃないですか。
あっ、見てください! ほら、海が見えてきましたよ!」
俺のひざの上でしぃがきゃっきゃとはしゃぐ。
座席が空いてないのは認めよう。
俺のとなりの窓際の席も、出張の帰りだろうか、疲れた顔で眠るスーツ姿の禿げた中年男が座っていた。
だが、座席が空いてないからといって、俺の上に座ってもいいという道理はない。
('A`)「ちょっと重いからどいてもらいたあたっ!」
(*゚ー゚)「重くないです! レディに対して失礼ですよ!」
しぃが俺のももを抓った。
('A`)「あのね、レディは男の人のひざの上に、安易に座ったりなんかしないと思うんだけど?」
(*゚ー゚)「わー、ホントにいい天気ですねー」
すっぱり無視された。
いいだろう。そっちがその気ならこちらにも考えがある。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:14:58.20 ID:YC02YY/VO
支援
7 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:16:12.88 ID:YFKrH/cs0
('A`)「あのね、君は知らないかもしれないけど、健康な成人男性は、
ひざの上に若い女の子が座るとね、非常にファンタスティックな気分になるんだよ」
(*゚ー゚)「それは良かったです。
それを聞いて私も気兼ねなくくつろぐことができます」
しぃはそれなりに成長したようで、俺の口撃をすんなり躱した。
('A`)「むう、一カ月前なら顔を真っ赤にしてどいてくれたはずなのに」
(*゚ー゚)「ふっふっふ。人は成長する生き物なのですよ」
しぃは胸を張りながら、俺を下から見上げた。
しぃは気づいていないようだが、この位置だと、しぃのお気に入りとなった浅葱色のワンピースの下につけている
花柄のブラが、俺には丸見えになっている。
('A`)「うん、成長したね。
でも、個人的にはその花柄模様に包まれたふくらみの方も、もうすこし成長しあがっ!」
(*゚ー゚)「変態!」
しぃは俺の顎に強烈な頭突きを見舞うと、ワンピースの胸を押さえながら、飛び退いた。
確かに少しは成長したようであるが、まだまだ修行が足りないようだ。
俺は口を尖らせて睨みつけてくるしぃにさわやかな笑顔を返しつつ、重しから解放された足を存分に伸ばして見せた。
9 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:19:03.77 ID:YFKrH/cs0
※ ※ ※
「鬱田ドクオ様ですね。当旅館にようこそいらっしゃいました。
従業員一同、心よりおもてなしをさせていただきますので、滞在中はごゆるりとお過ごしくださいませ」
(;'A`)「ど、どうも」
旅館に入るなり、そんなばか丁寧なあいさつがおかみさんらしき、
腰を深く折った50歳くらいの着物の女性の口から出てきて、俺は思わず立ちすくんでしまった。
基本インドアな生活をしてきたので、こういう場合の対応というのが良く分からないのだ。
('A`)「えーと、すみません。ご迷惑をかけないように頑張りますので、こちらこそよろしくお願い致します」
こちらも負けずと深く腰を折ってそう言うと、数秒の沈黙の後、おかみさんが笑った。
「鬱田様はお客様ですので、そんなに畏まらないでくださいませ」
('A`)「はあ、そうですか」
(*゚ー゚)「ふふっ……」
苦笑いを浮かべる俺の横では、しぃが必死に笑いを堪えていた。
「さあ、長旅でお疲れでしょう。お部屋にご案内致します」
おかみさんの先導でたどり着いたの『松の間』と書かれた部屋だった。
おかみさんがドアを開け、俺を中に招き入れる。
10 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:22:38.27 ID:YFKrH/cs0
「ここが鬱田様のお部屋になります。
昼食は12時。夕食は7時となっておりますが、それでよろしいでしょうか?」
俺はしぃの方を見た。しぃがコクリと頷く。
('A`)「あ、はい。それでいいです」
「それでは、そのお時間になりましたら、お食事はこちらの方に運ばせます。
夜の11時までは、そちらに書かれたお料理の追加オーダーも可能ですので、カウンターの方にお申し付けくださいませ」
おかみさんが「これがこの部屋のカギとなっております」と、俺に部屋のカギを渡した後、
またまた、ばか丁寧な辞去のあいさつをして部屋を去っていった。
下着などが入った小さなバッグをその辺にほうり出すと、俺はベッドに倒れ込む。
('A`)「疲れた……」
(*゚ー゚)「ドクオさんにも苦手なものがあるんですね。ちょっと安心しました」
('A`)「君は一体、人のことを何だと思ってたのかな?
俺だって、苦手なものの一つや二つくらいはあるよ。
特にああいうばか丁寧なのは、どうしていいか分かんなくなるからダメ……」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:23:39.75 ID:msnaBu8uO
あーこれが某スレで、
合作参加者をボロクソにけなしてた奴の作品ね。
12 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:24:58.16 ID:YFKrH/cs0
たったあれだけの会話で、今日一日分の体力を使ってしまった気がする。
出来れば、明日の昼のチェックアウトまでこのまま横になっていたいくらいだ。だが――。
(*゚ー゚)「さあ、ドクオさん。寝てる場合じゃないですよ。早速行動開始です!」
やはり、そういう訳にもいかないようだ。
少しはしゃいだ様子のしぃが、俺の腕をひいて無理やり立ち上がらせる。
('A`)「あのさ、君だけで行ってきなよ。俺はここでお留守番してるから」
(*゚ー゚)「ダメです!」
俺は、柔らかいベッドに未練を残しつつ、しぃに無理やり手を引かれながら『松の間』を後にした。
13 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:27:06.07 ID:YFKrH/cs0
※ ※ ※
しぃに無理やり連れ出された俺は、近くにある神社に来ていた。
('A`)「やっぱり、こういうところは空気が澄んでる気がするね」
清々しい空気を吸って、幾分元気を取り戻した俺とは対照的に、
しぃは先程の元気も完全に消え失せてどんよりとした空気を周囲に放出していた。
(* ー )「私のチョコバナナ……私の焼きトウモロコシ……
私の焼きそば……私のリンゴ飴……」
(;'A`)「あのね、縁日とかお祭りの日じゃないと、出店なんか出ないんだよ。
て言うかね、この後お昼ごはん食べなきゃいけないのに、そんなに食べれるの?」
(* ー )「それは問題ないです。……春休みに実証済みですから。
……私のイカ焼き……私のわたがし……」
すべての食べ物に所有格がついているのがなんとなく怖い。
……それにしても、この娘の胃袋はいったいどうなっているんだろうか?
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:27:12.57 ID:HSWAxqmiO
この作品大好き支援
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:29:28.13 ID:CFNkfZ7v0
しぃえん
16 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:29:41.17 ID:YFKrH/cs0
('A`)「まあ、ないものは仕方がないよ。
ここに来る途中、焼きサバ売ってるところがあっただろ?
あれ買ってあげるからさ」
(*゚ー゚)「本当ですか! じゃあ、早速!」
いきなり復活したしぃが、クルリと後ろに振り返り走りだそうとする。
('A`)「よいしょっと」
俺は左手でしぃの腕を掴み、強引に引き寄せると、
右手の人差し指と中指を真直ぐ伸ばし、思いっきり振り下ろした。
パッチーンと気持ちの良い音が辺りに響く。
(*゚ー゚)「いったーっ! いきなり何するんですか!」
思いの外威力があったようで、しぃは腕を押さえたまま、少し涙目になっている。
('A`)「教えてあげよう。これはしっぺというものなのだよ」
(*゚ー゚)「そんなこと知ってます!
何で私がしっぺされないといけないんですか!」
('A`)「ふむ。なかなか良い質問だ。その疑問に答えるために、ここでひとつ問題を出します」
しぃは口を尖らせながらも「はい」と返事をする。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:31:57.18 ID:7M/3/UHHO
こいつが噂のたけしか
18 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:31:58.39 ID:YFKrH/cs0
('A`)「僕たちがこの神社を訪れた目的は何でしょうか?」
(*゚ー゚)「サバを食べるためです!」
即答だった。
俺はとりあえず、自信満々に答えたしぃのおでこに、全力でデコピンを打ち込んだ。
(*゚ー゚)「いったーっ! 何するんですか!」
('A`)「ほう、知らんかね。これはデコピンといって――」
(*゚ー゚)「知ってます! だから、何で私がデコピンされないといけないんですか!」
しぃが俺に指を突き付けながら叫ぶ。
('A`)「ふむ。これまた良い質問だ。
僕たちはそこらへんの相互理解というものをより一層深める必要があると思うのだよ。
という訳で問題です」
しぃがおでこを押さえながらも、再び律義に「はい」と返事を返す。
支援
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:32:53.89 ID:hPn4IJMG0
支援
21 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:33:25.46 ID:YFKrH/cs0
('A`)「今回の旅の目的を述べよ」
(*゚ー゚)「おいしいものをいっぱい食べることです!」
またまた即答だった。
しかも、自信に満ちあふれた顔で、小さな胸を精一杯張りながらである。
なんだか、本当に頭が痛くなってきた。
どうもしぃは、自分の興味のある事柄が目の前にあると、他の事を全て忘れてしまう性格らしい。
(*゚ー゚)「あの、違うんですか?」
頭を抱え蹲る俺を見て、さすがに自分の回答に疑問を持ってくれたらしい。
('A`)「はい、違います。今回の旅の目的は、春休みの君の行動をもう一度繰り返すことによって
記憶を喚起するとともに、不自然な点がないか洗い出すことだったはず、だよね?」
(*゚ー゚)「……あ」
やっぱり本気で忘れていたようだ。
支援
23 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:35:42.27 ID:YFKrH/cs0
('A`)「そういう訳だから、何か思い出したこと、ある?」
(*゚ー゚)「うーん、……」
俺の質問に、しぃは腕を組みながらしばらく考え――
(*゚ー゚)「そう言えば……」
(*゚ー゚)「タコ焼きも食べました」
(;'A`)「……」
俺はよろよろと立ち上がると、社に向かって歩き始めた。
困った時のなんとやら。
ここはひとつ、しぃの思考回路がまともに働くように、神様にでもお願いしてみよう。
('A`)「はぁ……」
疲れ果てたため息を吐き出しつつ、俺は心の中でそう呟いた。
24 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:38:01.72 ID:YFKrH/cs0
※ ※ ※
「では、お皿の方、下げさせていただきます。
御夕食は7時になりましたらお持ち致しますが……また、お二人分でよろしいでしょうか?」
少し驚いたような顔でおかみさんが言った。
('A`)「はい、それでいいです。よろしくお願いします」
俺が頭を下げると、それ以上何も言わず、
おかみさんはまたばか丁寧な辞去のあいさつを残して部屋を出ていった。
(*゚ー゚)「何であんなに驚いていたんでしょうか?」
食後のお茶をおいしそうにすすりながらしぃが聞いてきた。
('A`)「そりゃ、俺みたいなひょろ長い男が2人前の食事をきれいに平らげたら、
誰だって少しは驚くと思うよ」
もちろん、俺は一人分の食事しか食べていない。
もう一人分の食事はしぃのお腹の中だが、しぃの見えないおかみさんには、
俺が食べたとしか思えないだろう。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:39:25.90 ID:G0MUuyBQO
支援
26 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:41:58.47 ID:YFKrH/cs0
(*゚ー゚)「そんなに驚く事かなぁ?」
しぃはそう言い、首を傾げる。
突っ込むとまた面倒なことになりそうなので、俺はスルーして話を進める。
('A`)「それより、本当に何か思い出したことない?
神社なんて、そうめったに行く所じゃないし、君のことと何か関係が有りそうな気がするんだけど」
もしかすると、これは神罰で、しぃが何か神様の不興を買うようなことをしたのではないだろうか。
(*゚ー゚)「特におかしなことは何も……。
出店をまわって……それからお参りして帰っただけです」
('A`)「何か、変なお願いをしたとか?」
(*゚ー゚)「してません!
私がお願いしたのは……プリンをお腹いっぱい食べたいですっていうのと――」
十分変なお願いだ。
まあ、それで臍を曲げる神様もいないとは思うが。
('A`)「後は何をお願いしたの?」
(*゚ー゚)「えっと……ひみつです」
しぃはそう言って、僅かに頬を赤らめた。
この様子では、胸が大きくなるように、とでもお願いしたのだろう。
まあ、それも神の怒りを買うような願いではない。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:43:01.56 ID:4mlaq7zcO
たけし!ごはんよ!
28 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:44:02.67 ID:YFKrH/cs0
('A`)「他には何かしなかった?
例えば、神社の境内でこっそりオシッコしたとか?」
(*゚ー゚)「しません! おトイレがあるのになんでわざわざ外でしないといけないんですか!」
いやいや、お嬢さん。
そうは言いますが、世の中にはそのような特殊なご趣味をお持ち方々だっていらっしゃるのですよ。
('A`)「じゃあ、お供え物を盗み食いしたとか?」
(*゚ー゚)「……しません!」
答える前に微妙な間があった。
実行まではいかなくても、頭の中で思い描くくらいのことはしたのかもしれない。
('A`)「そっか……じゃあ、とりあえず、神社は×で良いかな」
俺は持ってきた小さなバッグからしぃの春休みの行動が書かれたノートを取り出し、
[神社にお参りする]と書かれた所に×印を書き足した。
29 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:46:04.89 ID:YFKrH/cs0
('A`)「えーと、昼からは水族館だけど、どうする?
お昼食べたばっかりだし、ちょっと休憩してから行ってもいいけど」
(*゚ー゚)「大丈夫です。すぐに行きましょう!」
しぃは元気一杯にそう言うと、俺の腕を引っ張って無理やり立ち上がらせる。
本音を言えば、少し休みたいところだが、笑顔ではしゃぐしぃを前にして、そんなことは言えなかった。
('A`)「前もって言っておくけど……お願いだから水族館の魚は食べないでね」
(*゚ー゚)「……食べません!」
おそらく、食べるところを想像したのだろう。
少しの沈黙の後、俺にしか聞こえない大きな声でしぃが叫んだ。
30 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:49:36.68 ID:YFKrH/cs0
※ ※ ※
(*゚ー゚)「わー、見てください! ほら、あの魚、おいし……かわいい!」
しぃは水槽に顔を近づけながら、はしゃいでいる。
('A`)「君、いま、おいしそうって言おうとしたよね?」
(*゚ー゚)「言ってません。わー、こっちの魚もおいし……身がプリプリしてそうです!」
('A`)「いや、わざわざ言い直したのに、食べること前提のセリフになってるから」
しぃは次から次に魚の入った水槽を興味深そうに眺めては、移動して行く。
地方にある水族館なのであまり期待はしていなかったのだが、
規模は小さいものの、なかなかきれいなところだった。
夏休みということもあり、多少の人込みも覚悟していたのだが、館内はまばらに人がいる程度で閑散としていた。
水族館側にとってはありがたくないことだろうが、お陰でこうして俺たちは気兼ねなく、魚たちを眺めることが出来る。
しぃ
32 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:53:12.31 ID:YFKrH/cs0
('A`)「さ、もうそろそろ出よう。イルカショーが始まる時間だよ」
タツノオトシゴの水槽を眺めながら「……からあげ」と呟いているしぃにそう呼びかける。
(*゚ー゚)「そうでした! イルカさんが私を待ってます!」
しぃは俺の腕に自分の腕をからませると、またも強引に引っ張り始めた。
(;'A`)「そうせかさなくても、ショーには十分間に合うから」
苦笑を漏らしながらそう言うと、しぃはようやく自分のしていることに気が付いたのか、
パッと腕を離し、少しだけ頬を染める。
(*゚ー゚)「ごめんなさい。ちょっと浮かれすぎですね」
('A`)「いいよ、別に。せっかくだから楽しまないとね。
でも、目的だけは忘れちゃだめだよ」
しぃは笑顔に戻って「分かりました」と返事をした。
33 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:54:53.62 ID:YFKrH/cs0
('A`)「それから、イルカが脅えるといけないから、食べようと思ったりしないようにね」
(*゚ー゚)「食べません! いくら何でも、あんなにかわいいイルカさんを食べようとは思わないです!」
('A`)「でも、昔は食用にもしてたらしいよ」
俺の言葉を聞いてしぃが動きをとめた。
(*゚ー゚)「……えーと、おいしいんですか?」
('A`)「さっき、かわいいイルカさんがどうのと言ってたのは誰だったかな?」
(*゚ー゚)「あっ! うー……」
込み上げてくる笑いをかみ殺しながらそう言うと、しぃは頬を膨らませながらそっぽを向いた。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 17:55:00.89 ID:HSWAxqmiO
支援支援
35 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 17:56:14.09 ID:YFKrH/cs0
※ ※ ※
イルカショーを十分に堪能した俺達は、水族館の隅々までしっかり観察してから、再び旅館に戻った。
時刻は午後6時。夕食まで時間がある。
俺達は『松の間』で、水族館での行動を振り返ることにした。
('A`)「特にこれといっておかしなところはなかったね……。
君はどう? 何も思い当たることはない? どんなささいな事でも、思い出したことがあったら言ってよ」
しぃが難しい顔で考える。
(*゚ー゚)「とくに……ないです」
('A`)「そっか……」
少し落胆しながら、俺はノートに×印を書き込んだ。
しえん
37 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 18:00:01.77 ID:YFKrH/cs0
(*゚ー゚)「ごめんなさい……せっかくドクオさんが連れてきてくれたのに……」
しぃがしょんぼりと項垂れる。
('A`)「いや、気にしなくいいよ。
それよりさ、あと1時間あるけど、何しようか?」
(*゚ー゚)「えーと、それじゃあ、お風呂にはいるのはどうです?
ここの露天風呂、とっても気持ちがいいんですよ」
('A`)「うん、じゃあそうしようか」
さっそく着替えをもって、二人で肩を並べながら露天風呂へと向かった。
38 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 18:00:48.18 ID:YFKrH/cs0
※ ※ ※
('A`)「何だか、新婚旅行の気分だね」
何げなく言った俺の一言に反応して、しぃの頬が赤く染まる。
(;'A`)「そういう初々しい反応をされると、何だかこっちまで恥ずかしくなってくるんだけど」
しぃが頬を赤くしたまま口を尖らせる。
(*゚ー゚)「……うぅ……ドクオさんのバカ……」
('A`)「否定はしないよ。むしろ肯定してあげよう」
まじめな顔で言ってみた。
(*゚ー゚)「……ドクオさんの変態」
しぃがまた小声で呟いた。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 18:01:06.12 ID:l+LGrszHO
この作者が某スレで合作けなしてた奴か
まぁこの作品が合作より面白いって自信があるから叩いたんだろうな
40 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 18:03:45.25 ID:YFKrH/cs0
('A`)「うん。俺は正真正銘変態さ」
さわやかな笑顔で言ってみた。
(*゚ー゚)「……ドクオさんの鈍感」
しぃが負けずとまたまた小声で呟く。
('A`)「なぜ俺が伝説の勇者ドンカンだと!?
も、もしかして君こそが、大戦士セントジョーンズなのか?」
しぃがため息を吐きつつ立ち止まった。
('A`)「どうしたんだ、大戦士セントジョーンズ?
さあ、そんな所に立ち止まってないで、私と一緒に大魔王ロテッンブローを倒しに行こうではないか」
大口を開いて「ガハハハハ」と笑っていたら、しぃの地獄突きを喉にもらった。
(;'A`)「ぐえっ! 喉がっ! げほっげほ……」
(*゚ー゚)「……本当に鈍感」
しぃはそうポツリと呟くと、咳き込む俺を残して、ひとりで先に行ってしまった。
41 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 18:06:33.77 ID:YFKrH/cs0
[男性入口]と書かれた露天風呂の入口に立つ。
('A`)「ちょっと悪ふざけが過ぎたかな?」
少しだけ反省しつつ、[女性入口]と書かれた方の入口をちらりと見る。
だが、しぃの姿はない。
('A`)「はぁ……。怒っちゃったのかな」
小さくため息を吐きつつ入口の扉に手をかけようとしたところで、
「鬱田様」
と、後ろからおかみさんに呼び止められた。
「鬱田様、露天風呂はただ今の時間、混浴の時間となっております」
('A`)「え?」
俺は[男性入口][女性入口]の両方を交互に見て首を傾げた。
「入口は別れていますが、脱衣場を抜けると、どちらも一つのお風呂に繋がっております。
当露天風呂は午前10時から利用可能となっていますが、10時から11時までは男性。
11時から12時までは女性。というように男性と女性の入浴時間が一時間毎に代わるシステムになっております。
ただ、現在の時間、午後5時から7時までは特別に、男女とも利用可能な混浴の時間となっております」
俺の疑問を察したおかみさんが[男性入口]と[女性入口]の中間の壁に張ってある小さな張り紙を指さしながら、そう説明してくれた。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 18:07:06.24 ID:HSWAxqmiO
支援
43 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 18:07:34.03 ID:YFKrH/cs0
('A`)「つまり、先客がいる場合は、それが女性ということもあると?」
何だかちょっと心が浮き立ってしまう。
だが、おかみさんは首を横に振った。
「ただ今、ご入浴されている方は一人もいらっしゃらないのでご心配いりません。
ですが、鬱田様がご入浴中に誰かお入りになるかも知れませんので、ご注意したまででございます。
鬱田様がお気になさらなければ、ごゆるりと、当旅館自慢の露天風呂を堪能してくださいませ」
おかみさんはまた、ばか丁寧な辞去のあいさつを残し、去って行った。
('A`)「さて……ここまできて引き返すのもあれだし、後から美人のお姉さんが入ってくる可能性もあるからな……」
俺は一瞬の迷いの後、弾むような足取りで[男性入口]の扉を開けた。
44 :
◆YnecR1MhsM :2007/10/03(水) 18:08:09.94 ID:YFKrH/cs0
第七話は以上です。
ありがとうございました。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 18:09:25.30 ID:HSWAxqmiO
乙乙
乙
す ん ど め
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 18:10:44.76 ID:pWMNE4bn0
はいはいおつ
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 18:10:59.87 ID:V76r9m83O
乙
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 18:11:09.82 ID:bs9qI9RiO
乙
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/03(水) 18:13:49.83 ID:HZIbvyJ0O
乙
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。: