1 :
◆175R.0ombs :
新人合作にヒート全力さんが参加するということでwktkが止まりません
のんびり投下しようと思います。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:09:43.71 ID:4Nfkag2zO
wktkwktk
3 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:12:24.85 ID:hFfJ46O/0
天国との初戦を勝利で飾ったヴィッパーズ。
しかし、その後は宿敵ロビーズ相手に二連敗、昨年最下位の新都アンカーズ相手に負け越すなど
精彩を欠いた試合が続き、結果的に11勝13敗で14位、負け越しでオープン戦に幕を閉じた。
( ´∀`)「……勝つというのは、なかなか難しいものです」
茂名はオープン戦での試合内容をまとめた資料を読み、額に手を当てながらそう呟いた。
( ´∀`)「オープン戦の出来云々はシーズンと関係がないとは良いますが……」
例年ならさほど気にする必要はないのだ。
通常、オープン戦は若手に経験を積ませたり、新しい戦略を試したり、あるいは選手の調整の場になるところだ。
負けが込んでも、オープン戦で戦ったメンバーでシーズンを戦うわけではない。
むしろ、負けてもともとなのだ。
だが、今年はどうだ。
長年第一線で活躍してきたベテランはチームを去り、その穴を中堅とまだ未熟な若手の選手でなんとか取り繕っている状態である。
オープン戦を戦ったメンバーで、シーズンも切り抜けなければならない。
4 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:14:59.52 ID:hFfJ46O/0
毎日オーダーを組み替え、様々な可能性を試した。
打線は思ったより上手く機能しているが、それでも圧倒的得点力を誇るロビーズ、エンジェルスには遠く及ばない。
リーグ屈指を誇っていた投手力も、やはり中抑えの人材不足が顕著であり、
今の所は問題なく機能しているものの不安が拭えない。
チーム状況は、かなり苦しいと言わざるを得なかった。
(kO-O)「戦力としては、決して悪くは無い様に思えます」
( ´∀`)「私もそう思います……若手もベテランも、各々頑張っています。しかし、結果に結びついて来ません」
(kO-O)「せめて……フロントがもう何年か待ってくれれば……」
( ´∀`)「仕方ありません。遅かれ早かれ、こうなるべくしてなったのでしょう。
幸い、内藤も長岡も毒尾も……数年掛けて育てて来た選手達は、みんな残って居ますから」
茂名は、一週間後に迫った大神モームスとの開幕戦を思い浮かべる。
どういった起用をして、どういった戦略を廻らせるか。
基本的には去年と同じように戦うべきか、思い切って方向性を変えてみるべきか。
茂名の頭の中は、ぐるぐる、ぐるぐると回っていた。
5 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:18:17.20 ID:hFfJ46O/0
――三月中旬、東京都某所。
内藤は一月に及ぶ長い戦いを終え、久しぶりに自宅へと帰っていた。
( ^ω^)「ただいまーだお」
ドアを開け、胸いっぱいに息を吸い込むみ、久しぶりに自宅の空気を味わう。
一歩足を踏み入れると、奥の台所から耳慣れた元気な声が聞こえてきた。
ζ(゚ー゚*ζ「パパー! おかえりー」
どたばたと駆け寄ってくる愛しの娘を、内藤は思い切り抱きしめた。
( ^ω^)「デレ、良い子にしてたお?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん! デレ、もうすぐ二年生になるんだよ!」
( ^ω^)「そっかー……デレもそんな歳かお……。じゃあ、お祝いに新しいお洋服を買ってあげるお」
ζ(^ー^*ζ「ほんと?! やったー!」
そんな風に久々に会えた喜びを分かち会っていると、今度はエプロン姿の小柄な女性が、内藤の元に歩み寄ってきた。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:19:59.98 ID:7LZqyKX9O
書籍化したら3000円まで出すわ
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:21:15.72 ID:kWkl+dwa0
中継ぎか・・・使い潰されそうだ
8 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:21:57.19 ID:hFfJ46O/0
艶やかなブラウン・カラーの巻き髪、大きな瞳、西洋人形のようにくりんとした睫毛。
すっと通った鼻筋に、白く透き通った肌理の細かい肌とのコントラストが美しい、緋色の唇。
エプロンの裾から覗かせる、すらっとした細い脚。
控えめではあるが、綺麗な曲線美を形成している胸。
二十代、そう称しても疑う人間はそうそう居ないであろう。
まさに天性の美しさを持った、天使のような女性。
不思議なものだ、と内藤は思った。
男前の長岡の顔も、あまり冴えない毒尾の顔も、十年どころか一月ほどで見飽きてしまった。
それなのにどうして、もう十年以上も一緒にいる彼女だけは、何度見ても飽きが来ないのだろう、と。
ξ゚ー゚)ξ「お帰り、ブーン」
彼女……ツンは、図らずも笑顔で夫を出迎えた。
( ^ω^)ノ「おいすー、ツン、久しぶりだお」
内藤は右手でデレを抱いたまま、左手を振り上げて、笑顔で挨拶を交わした。
9 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:24:41.22 ID:hFfJ46O/0
その日、内藤は久しぶりに一家揃っての食事を楽しんだ。
家に居られる時期が限られている内藤にとって、家族と話せる時間は貴重だった。
学校で何をしているかとか、クラスにはどんな子がいるかとか。
デレが話すことにはとにかく耳を傾け、たまにしか会えない娘のことを知ろうとした。
夜も更けて、デレがベッドで眠りにつくと、ツンと二人きりになった。
ξ゚听)ξ「それでね、田中さんとこのお母さんが……」
小台の上で服にアイロンを掛けながら、ツンは愚痴を吐く。
可愛らしい風貌とは裏腹に、彼女が言うことはかなり辛辣である。
あまりストレスがたまらない気質の内藤は、それを聞くといつも「そんなにカリカリして、疲れないのか」と思うのだが、
一度それを尋ねたとき、鬼のような凄まじい形相でその場にあるものを手当たり次第投げつけられたという痛い経験があるので、
特に言及せず、黙って聞くようにしている。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:24:47.17 ID:TJ35w2nG0
支援
11 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:27:32.64 ID:hFfJ46O/0
内藤もチームメイトからは減らず口と言われて久しいが、ツンにはまったく敵わない。
昔から、見た目も性格もあまり変化がないツン。
飽きずにそれに付き合っている自分。
その構図が、我が事ながら内藤にはときどき妙に可笑しく、微笑ましく感じられた。
ξ゚听)ξ「……でさー、もうほんと空気読めないんだから……ってちょっと、聞いてる?」
内藤が小さく、クスリと笑ったのが気になったのか、ツンは俄かに顔を顰めてそう尋ねた。
( ^ω^)「ごめん、ちゃんと聞いてるお」
ツンは表情を少しだけ穏やかにすると、「……それでねー?」と、続きを話し始めた。
ツンの言葉が途切れ、暫く沈黙が続く。
内藤はそれまで見ていたテレビのスポーツ番組から目を離した。
そして、ベッドの上でぐっすりと眠っているデレの顔を見て、徐に口を開いた。
( ^ω^)「……そういえば、デレももう今年で八歳になるのかお。
僕も歳を取るはずだお」
12 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:28:03.56 ID:hFfJ46O/0
呆れた風に笑みを浮かべながら、ツンが言った。
ξ゚ー゚)ξ「なーにをジジ臭いこと言ってんのよ。ブーンらしくもない」
(;^ω^)「そうだけどお……」
ツンが一通り仕事を終えると、その日はそれ以上は特に何も話さず、二人ともベッドに入った。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:28:46.86 ID:t8wm8LsK0
sienn
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:29:19.09 ID:aTiv2c0D0
支援
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:31:50.97 ID:hEHK8Yd1O
支援
16 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:34:52.59 ID:hFfJ46O/0
内藤はベッドで横になると、ぼんやりとする意識の中で考え事を始めた。
まだ内藤は、自分自身に衰えを感じてはいない。
けれどもしある日、自分の体が自分の思うように動かなくなったら。
それによって、自分の思い通りのプレーをすることが出来なくなったら……。
現に、彼と歳の近い仲間には、それで引退を決意したものも多いと聞く。
登板機会の多いリリーフ投手なら、それだけ消耗も早い。
グラウンドでは、不思議とあまり歳月の経過を感じない。
長年にわたって、毎日同じように野球をしているからだろう。
しかし、時折日常に戻った時。
彼の知らないところで日々成長する娘や、ほんの少しずつではあるが老けていく妻を見たり、
仕事場でも、年度が変わって新しい後輩が出来たりすると、彼はふとこう思うのだ。
自分も、歳を取ったのだなと。
選手として満足にプレー出来るのは、あと何年だろう。
考えながら内藤は、徐に左手をかざして指を折った。
17 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:36:53.90 ID:hFfJ46O/0
――三月末日。
路傍では残雪が溶け、桜の花もちらほらと顔を見せ始める季節。
春を感じさせる暖かな風が、外ではきっと吹いているのだろう。
揺れる遠征バスの中で、内藤はそんなことを考えていた。
この日、全国の各球場にてプロ野球、シーズン開幕戦が執り行われようとしていた。
一部例外を除き、開幕戦は昨年のシーズンでAクラスに入ったチームが主催する権利を持つ事となっている。
ヴィッパーズはここ15年、一度しかAクラス入りを果たしていない。
内藤が一軍で迎える開幕戦は、これで13度目。
その内、12回が敵地に乗り込んでのスタートである。
それら12回のうち、Aクラス入りした98年以外すべて黒星と言うところから、ヴィッパーズの節目での勝負弱さが窺える。
負けてはいけない試合で負けてしまうこの癖が抜けない限り、永遠にヴィッパーズは栄冠を手に出来ない。
茂名がいつか言っていた言葉が、その時の情景が、内藤の脳裏に蘇る。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:36:54.99 ID:qWY8Gjzp0
支援
19 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:39:10.88 ID:hFfJ46O/0
彼はこの時期になるといつも、若い頃の苦い思い出を思い出す。
そのシーンを、何百という修羅場を潜り抜けた今でも、鮮明に覚えている。
96年の開幕戦。
前年に好成績を残し、既にリリーフとしてチーム内で頭角を表し初めていた内藤は、この大事な試合に抑えとして起用された。
当時から直球とスローカーブの緩急には定評があり、その組み合わせだけで面白いくらいに三振が奪えた。
八回を危な気なく抑えた彼だったが、九回にある打者との初対決を向かえていた。
直接会うのは初めて、それでも一目で強打者と分かるその雰囲気に、内藤の動悸は高まる。
20 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:40:35.58 ID:hFfJ46O/0
不安はあった、だが今振り返れば、間違いなく慢心や欲のほうが大きかったのだろう。
当時の彼はその打者を相手に堂々と「三振を取ってやる」と、真っ向勝負を仕掛けたのである。
三球目を投じた次の瞬間、流し打ちで低い弾道を美しく描きながらスタンドに向かっていく白球であった。
格の違いをまざまざと見せつけられた彼は、試合後のミーティングで先程の茂名の言葉を耳にし、
変わらなければ、と決意した。
そして長い年月こそ掛かったものの、彼はその打者と対等に渡り合えるまでになったのだ。
ちなみにその打者こそ、後のロビーズ不動の四番にして、「球史に残るスラッガー」と名高い、渋澤である。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:40:40.98 ID:aTiv2c0D0
支援
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:41:43.04 ID:hEHK8Yd1O
支援
23 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:43:42.45 ID:hFfJ46O/0
物思いに耽っていると、ふと、後方の席がが騒がしいことに気付く。
(;-_-)「……なあ、俺達本当に、一軍の試合に出られるのかな」
从#゚∀从「しつけえなあ……さっきから何度も言ってるだろ!
今俺達が乗ってるのはファームのバスじゃなくて一軍バスで、あんたと俺は今日の開幕戦でベンチ入りなんだって!」
窓側には、おそらくチームで一、二を争う大男、引田。
それと比べれば豆粒のように小柄で華奢、髪は茶髪で長髪、
野球選手というよりはジャニーズ系アイドルとでも言うべき容貌の異端児、高岡がその隣に座っている。
(;-_-)「だよな……そうだよな、でも、なんか信じられないんだよ」
从 ゚∀从「何が?」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:45:49.72 ID:qWY8Gjzp0
支援
25 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:45:51.82 ID:hFfJ46O/0
(-_-)「俺はまだしも……どうしてこんな豆粒みたいな奴が開幕一軍でベンチいr」
身長170cmに満たない高岡が、言葉どおり自分より頭一つ大きな引田の胸倉を掴み掛かる。
从#゚∀从「だーれーがー豆粒だああぁぁぁぁああ!!! この木偶の坊が!」
そして、強烈な右フックを引田の腹に決めていく。
从#゚∀从「ガッシ! ボカッ!」
(;-_-)「ギャッ! グッワ! 待ってくれ! 待ってくれ!」
(;^ω^)「うーん……なんだか、トムとジェリーを見てるみたいだお」
その様子を傍目に見る内藤の頭の中では、幼い頃に見た、米国産の世界的人気ドタバタアニメーションが再生されていた。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:48:26.61 ID:hEHK8Yd1O
支援
27 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:48:37.81 ID:hFfJ46O/0
/nハ;゚_}「……止めに入らなくて良いのか? 内藤」
内藤の隣に座っていた男――
チームではショボンに次ぐ古参で、内野手陣のまとめ役であるベテラン中西は、少し不安げに尋ねる。
しかし内藤は、まるで当たり前とでも言わんばかりにこう返した。
( ^ω^)「きっと、若いから血の気が多いんですお。気が済むまでやらせておきましょうお」
/nハ;゚_}「いやしかし、あれが原因で連携プレーに乱れが出たりしたら困るし……俺が行ってくる」
温和な性根がそうさせるのか、中西は二人の喧嘩を止めるべく、席を立ちあがろうとする。
しかし内藤は相変わらず、それどころか、まるで仲裁に赴く中西を止めるようにこう言った。
( ^ω^)「……世の中は、最初から誰とでも親しく出来るあなたみたいな紳士ばっかりじゃないですお。
ああいう風に喧嘩して、馬鹿やって、それで信頼を深めていくチームメイトがいても、いいと思いませんかお?」
28 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:50:54.87 ID:hFfJ46O/0
/nパ_}「……そんなものかな」
一応納得した様子で、中西はそう言って席に着いた。
( ^ω^)「きっと、そんなものですお」
ひとしきり会話が終わると、内藤は目を瞑った。
依然として、後方からは騒がしい二人の声と、それを止めに入る何人かの必死の声が聞こえた。
若き日の、長岡と喧嘩する自分が自然に思い出された。
バックを知らせる甲高い電子音が聞こえた後、まもなくしてバスは止まった。
浜風を身体に浴びながら、彼らは球場へと足を踏み入れて行った。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:51:55.91 ID:qWY8Gjzp0
支援
30 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:52:54.65 ID:hFfJ46O/0
大神モームスのフランチャイズ、モーニングスタジアム幕張。
規模はさほど大きくないものの、開放感溢れる外野スタンド、海に近いため起こる非常に強い海陸風が特徴で、
大神ファン、及び一部のパ・リーグのファンの間で人気の高い球場である。
大神とニュー速。
ともにそれほど人気のあるチームではないものの、開幕戦ということもあり、
どちらのチームもスタンドには熱心なファンが集い、熱気に包まれている。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:53:05.98 ID:VOSHZfrb0
ガンガレ
32 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:54:15.62 ID:hFfJ46O/0
スタンド一面に広がる人の海を見て、引田は言葉を失った。
額に浮かぶ脂汗を拭い、呼吸を整える。
そうしなければ、息が詰まって動けなくなりそうだった。
(;-_-)「す……すごい人の数……」
引田は今まで、いわゆる”大舞台”と言われるような場面でプレーした事がなかった。
高校では甲子園に行くことが出来なかったし、大学でも全国まであと一歩、という所で破れている。
33 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:56:31.45 ID:hFfJ46O/0
それでもプロの世界に足を踏み入れることが出来たのは、やはり実力ありきの事なのだろう。
しかし、小心者で控えめな彼は、球団スカウトに「ウチの球団でやらないか」と言われたときも、自身の耳を疑っていた。
二軍でプレーしている時も、とてもプロでやっているとは思えず、今となっても実感が沸かないでいるのだ。
(;-_-)「こんな大勢が見てる前でミスなんか出来ないよ……とりあえず素振りを」
契約金で購入した、細い木製バットを両手で握る。
丈夫で扱い易いと云われるそれは、キャンプで暫く使えば、評判どおりすんなりと手に馴染んでくれた。
顎を引き、しっかりと腰を入れてフォームを作り……。
刹那、殺気を感じた。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:57:00.71 ID:7lniIWOhO
まとめ貼らなくていいの?
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 22:58:28.89 ID:hEHK8Yd1O
支援
36 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 22:58:36.91 ID:hFfJ46O/0
从#゚∀从「ドロップキイィィーック!!」
あ! やせいの たかおかが とびだしてきた!
たかおかの でんこうせっか!
(;-_-)「ひでぶっ!」
こうかは いまひとつのようだ。
从#゚∀从「コブラツイストォォーー!!!」
ひきたには こうかがない……。
どうやら しんちょうが たりないようだ。
(;-_-)「ええい、やめいっ!」
纏わりつく豆粒を振り払う引田。
引っぺがされた勢いで、モーニングスタジアムのロングパイル人工芝の上を転げる高岡。
37 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:00:24.52 ID:hFfJ46O/0
(-_-)「ったく、さっきからその態度はなんなんだ……いいか、俺は仮にもお前の先輩――」
地面にうずくまる高岡に引田は近寄りながら言う。
从 ;∀从「うっ……うっ」
しかし引田の目に映ったのは、まるで何かに怯えるように身体を丸めて嗚咽を漏らす、
あの生意気な行動からは想像出来ない程弱々しい、高岡の姿だった。
(;-_-)「な……お前、もしかして泣いてるのか?」
引田は心配になり尋ねる。
高岡は小さな声で嗚咽交じりに、こう答える。
从 ;∀从「だって……ヒキさんが緊張してるから……少しでも緊張が解れたらと思って……」
(;-_-)「……悪かった、高岡」
从 ;∀从「うっ……ひっく」
(-_-)「お前の気持ちを理解してやれなくて……すまなかった」
38 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:02:11.98 ID:hFfJ46O/0
从 ;∀从「……ヒキ……さん」
(-_-)「ありがとう」
涙目の高岡に、引田が手を差し伸べる。
しかし……次の瞬間、高岡の口元が僅かに緩んだかと思うと……。
从#゚∀从「掛かったなああぁぁぁ!! 食らえ、スカイアッパァァァアア!!」
引田の視界が、突然上向いた。
(;-_-)「ひでぶぅ!」
たかおかの スカイアッパー!
きゅうしょに あたった! こうかは ばつぐんだ!
39 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:04:28.64 ID:hFfJ46O/0
从 ゚∀从「フハハハハハ! ハーハッハッハハイーンリッヒ!」
甲高い声を球場全体に響かせ、勝利を誇示するように高笑いする高岡。
(#-_-)「てめえええぇぇ!!! もう許さねええぇぇぇ!!!」
从 ゚∀从「へんっ! 俺の脚に着いて来れるかな?」
自慢の快速を飛ばして外野を駆け抜ける高岡。
バットを振り回してそれを追う引田。
ベンチから見れば、二人の姿はさながら……。
(;^ω^)「見れば見るほど……」
_
(;゚∀゚)「なんというトムとジェリー……」
かくして、共に初めて一軍のグラウンドに顔を出した期待の若手二人は、
この後長きに渡り、引田は「トム」、高岡は「ジェリー」と云う愛称でファンから親しまれることとなった。
40 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:05:03.84 ID:hFfJ46O/0
その頃、内野側では……。
∧_∧
( ' x ')「……俺達、完全に役を食われちゃいましたね」
(,,・◇・)「……ですね」
その様子を複雑そうに見守る、ウサギとカモメを模した両チームのマスコットの、少し物憂げな姿があった。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 23:06:16.49 ID:hEHK8Yd1O
支援
42 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:06:36.66 ID:hFfJ46O/0
数分後、ヴィッパーズの選手らが止めに入り、なんとか騒動は収まった。
(;kO-O)「初日からあんなに大暴れして、あの二人……本当に大丈夫でしょうか?」
( ´∀`)「まあ、さほど心配する必要はないでしょう。あの内藤と長岡も、昔は役を廻ってよく喧嘩したものです」
(kO-O)「……そういえば、そんなこともありましたね」
( ´∀`)「あの二人は、どことなくそれに重なるように見えませんか?」
茂名がそう言うと、高橋もなんとなく納得したのか、それ以上は何も言わなかった。
( ´∀`)「まあ、そんなことより目先の試合の事を考えましょう。打線が上手く回ってくれれば良いのですが……。
……おっと、もうこんな時間ですか。開会式の前に、向こうの山本監督に挨拶をしてきます」
茂名は席を立つと、一塁側、モームスのベンチへとゆっくり歩いて行った。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 23:07:59.72 ID:qWY8Gjzp0
支援
44 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:08:45.87 ID:hFfJ46O/0
開会式が終わり、両チームが各々のベンチに帰ると、
放送席では、初老のアナウンサーがマイクに向かって喋り始めていた。
(;・д・)「ここ、モーニングスタジアム幕張では、大神対ニュー速のパシフィックリーグ公式戦、開幕戦が行われようとしています!
ちょっとしたアクシデントはありましたが……開会式は無事終了しました。
大神の先発はサブマリン盛岡、対するニュー速の先発はタイトルホルダーのモララー!
実況は私、宏米久(ひろこめ ひさし)。
解説は四年前まで天国エンジェルスでプレーし、エースとして114勝を上げました、飯田さんでお送り致します。こんばんは」
( -,,,-)「こんばんは。ご紹介に預かりました、飯田です」
( ・д・)「飯田さん、今日の試合の見所は……」
( -,,,-)「大神とニュー速、共に昨年後半に勢いがあったチームですね。
大神はあの勢いを本物に出来るか、ニュー速は大幅な変革があったチームを上手く操縦出来るか。
今日のみならず、これから暫く鍵になって行くことだと思います」
( ・д・)「なるほど、ありがとうございました。それではどうやら試合開始のようです」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 23:08:55.64 ID:wWwlH8l2O
支援
46 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:09:01.58 ID:hFfJ46O/0
「プレイボール!」
主審の気合が入った掛け声と共に、2008年のペナントレースが今、始まった。
47 :
◆175R.0ombs :2007/10/02(火) 23:11:48.77 ID:hFfJ46O/0
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 23:13:03.45 ID:75XoJnUSO
乙
佐々岡も引退とか\(^o^)/
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
>>47 え?マジ?戦力外?
なんかベテランがどんどんいなくなってくな…