( ^ω^)君に空を贈るようです

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178 ◆pSbwFYBhoY

プロローグ


初めて空を飛んだときのことを、君は覚えているだろうか?

重力に縛られていた身体が宙に浮き、
これまで感じたことのない速度で風を切り、
地上から解き放たれた肉体が世界に踊る。

どこまでも高く。
打ち上げ花火のように天永を目指し。

どこまでも自由に。
鳥のごとく軽やかに中空をひるがえる。

最高到達点に達したそのとき、
悲鳴を上げるエンジンにつかの間の休息を与えれば、
音のない世界で、一瞬だけ。

ほんの一瞬だけだったけれど、
身体は音も重さも何もかもを忘れて、

僕たちはただ、空に溶けた。
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:37:03.28 ID:Fuu+Nz1JO
これは期待
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:38:23.04 ID:X9lDTlDlO
アフロきたーー!!!!!!!!!!!!!!!
478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:38:32.71 ID:b4T/x6gf0

その一瞬。

太陽に伸ばした右手は何もつかむことはなかったけれど、
人生最高の瞬間を前に潤んだ僕の瞳が捉えたのは、

まっすぐな日の光の中、
幾重にも連なった、光の輪。

天使の輪のようにも感じられたそれは、
幼い僕たちの初飛行を祝福するかのごとく、ただひたすらに天から降り注いだ。

バックミラー越しに垣間見た君の瞳も僕と同じように潤んでいて、
僕と同じように、届くことのなかった太陽へと縛り付けられていた。

そして世界は、あるべき場所へと僕たちを引き戻していく。

よみがえった重力。
遠ざかっていく太陽。

どこまでも堕ちていく。

どこまでも。
どこまでも。

僕たちは鳥でも天使でもない。

ただの人間にすぎなかった。
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:38:50.59 ID:Z+nECDuo0
例えば夏の雲とか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img364_n110-1.jpg
冷たい雨とか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img365_n110-2.jpg
秋の風の匂いとか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img366_n110-3.jpg
傘にあたる雨の音とか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img367_n110-4.jpg
春の土の柔らかさとか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img368_n110-5.jpg
それから、放課後のヒンヤリとした空気とか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img369_n110-6.jpg
夜中のトラックの遠い音とか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img370_n110-8.jpg
夕立のアスファルトの匂いとか
http://www.kajisoku-f.com/dd/img05/img371_n110-9.jpg
678 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:39:55.87 ID:b4T/x6gf0

青の中。

島から島へ流れ落ちてゆく水の脇を、
そこに彩られた虹の谷間をすり抜けて。

浮かぶ豆粒のような緑の島々へと、
果てなく続く白い雲の海へと。

僕たちは堕ちていく。

上空へ流れ去る風景。
揺り起こしたエンジンで再び空へ。

舞い上がった僕がつぶやいた言葉は、



「世界は広く、こんなにも美しい」

7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:40:55.68 ID:95U/0M7b0
アwwwwwwフwwwwwwロwwwwwww

支援
878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:41:13.80 ID:b4T/x6gf0

空を舞う赤と蒼より色鮮やかで、
空を駆ける豹のまなざしより力強い。

空の要塞に倒れた猫の瞳より悲しく、
空の甲板で出迎えてくれた隻眼の輝きより眩しい。

空の舟をいたわるオカマより優しく、
空に道を描くスーツ姿のハイドより厳しい。

夢を追い続けた老人のしわより深く、
夢の叶え方を教えてくれたあの人の心より広い。

夢の彼方へ消えていった父の背中より大きく、
夢の向こう側で見た楽園の記憶より鮮明な、始まりの空。


僕たちの一生を決定付けた、あの一瞬。


それを、君は覚えているだろうか?
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:41:41.92 ID:F+kTQyb10
機体支援
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:42:05.30 ID:PsgNfjua0
アフロ愛してるよアフロ
私怨
1178 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:42:55.73 ID:b4T/x6gf0

いや、間違いない。
間違いなく、君は覚えているはずだ。

鈍い色をした機械の島の上に立ち、
銀色の月に照らされた君の唇は、僕に向かって確かにこう言った。


「あの時見たあの光景を、あたしは一生忘れない」


そう言ってニッコリと微笑んだ君の姿に、
僕は初めて女を感じた。

そして、そんな君を前に身体の芯から火照った自分に、
僕は初めて男を感じた。

君と僕は、幼馴染。
君と僕は、ナビとパイロット。

君と僕は、女と男。
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:43:33.73 ID:F+kTQyb10
これはもしかして…
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:43:36.24 ID:X9lDTlDlO
支援!
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:43:43.71 ID:TaAk3EegO
わくてかしえん
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:44:23.04 ID:PsgNfjua0
これは空を行くの続編?
1678 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:44:24.22 ID:b4T/x6gf0

もう、五年前。

楽園を捨てて、
ここまで育ててくれた空の家族を捨てて、たどり着いた夜空。

どこまでも果てなく続く雲海。
銀色に縁取られた満月。

月明かりに照らされた僕たちの飛行機械。
そして、僕の後ろで眠っていた君。

手のひらをすり抜けていった、沢山のもの。
それでも残った、大切なもの。

それだけは守ると、
君だけは守ると、
僕は、空に誓った。

だから、もう少しだけ。

もう少しだけでいいから……
1778 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:46:04.57 ID:b4T/x6gf0

                 *


( ‐ω‐)「……寝かせてくれお」

ξ゚听)ξ「ダメー。普通にダメー」


差し込む日差しが閉じたまぶたの裏側まで赤く染め上げる朝。
即座に返されたのは女の声。

凛としたその声が鼓膜を震わせると同時に、
男の身体は自らを包み込むタオルケットとともに、ベッドの上から転がり落ちた。
どうやら女に敷布団をひっくり返されたようである。

男が落ちた衝撃に、木製の床が壊れそうなほどにきしみ声を上げる。
それでもなお、男はタオルケットを頭からかぶり、意固地に眠り続けようとする。
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:46:28.85 ID:OZdOiAETO
wktkが止まらない
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:47:38.20 ID:OZdOiAETO
ほうら、wktkだよ
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:47:47.40 ID:e7tuVtac0
これはwwwwwwwwwwwwwwwwww
2178 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:47:54.24 ID:b4T/x6gf0


( ‐ω‐)「う〜ん……あと一時間だけ〜……ホントに〜……」

ξ#゚听)ξ「長いわ!!」


ひっぺ返されたタオルケット。
反動で男の身体はゴロゴロと床を転がり、まもなく壁面に衝突した。

それでもお構いなしに眠り続けようと床に伏す彼の後頭部に
『ぐわあああん!』と鈍い衝撃が走る。

そこでようやく目が覚めたらしい彼は、
後頭部を両手で抱え、悲鳴を上げながら床を転げまわる。


( ;ω;)「痛いお! フライパンで殴るのは反則だお!」

ξ゚听)ξ「あんたがいつまでたっても起きないからでしょうが。
    さっさと朝ごはん食べてよ。仕事に遅れるから」


芋虫のごとく床を這い回る男を一瞥すると、
女はフライパン片手に悠々と部屋から出て行った。
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:48:07.47 ID:pM5O+FC/0
ああああアフロキターー!
wktk止まんねえぜ支援
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:48:47.92 ID:F+kTQyb10
普通にダメーww
ねーちゃん詩集じゃないですか!


支援
2478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:49:28.86 ID:b4T/x6gf0



(;^ω^)「……僕の朝はなんでいつもこんなに騒がしいんだお」


まだ痛むらしい後頭部をさすりながら、男はのそのそと部屋を出た。
それから薄暗い廊下を抜け、階段を下って台所へと足を運ぶ。

地下の一室に設けられた台所。
立ち上る香ばしい匂いに彼が顔を覗かせると、
間髪いれずにトーストが手裏剣のように回転しながら眼前に迫ってくる。

彼はそれを見事に口でくわえると、ものの数秒で平らげてみせた。

十点満点。朝に弱い彼が身につけた陸上での唯一の特技、『早食い』である。


ξ゚听)ξ「それ! もう一丁!!」

( ^ω^)「ワンワン!」


再びトーストを投げる女。それをくわえようと追いかける男。
そんな二人の姿は、さながらご主人様と豚である。
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:50:02.61 ID:VcjnMvZsO
アフロリプレイの人か
支援
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:51:05.90 ID:OZdOiAETO
アフロが投下したおかげでちんちんが18pになりました
(自宅警備員)
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:51:30.98 ID:e7tuVtac0
これはあの続編・・?
勃起とまんねwwwwwwwww
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:51:31.20 ID:18gbw5/a0
これはまさか続編?
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:51:51.86 ID:95U/0M7b0
支援
3078 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:51:52.82 ID:b4T/x6gf0

投げられたトーストは洗面台の方へと飛んでいった。
男はそれをくわえて平らげると、洗面台で顔を洗って歯を磨いた。

 ΩΩ
(;^ω^)「……たんこぶが出来てるお」


鏡にて異様に膨れ上がった後頭部をチェックすると、
トイレに向かい、すっかり毛の生えそろったマンモスを解き放つ。

荒々しい勢いで用を足し終え、同じく地下に設けられた狭い作業場に入ると、
彼は慣れた手つきで壁にかけられた飛行服に袖を通した。

そんな彼の横では、銀色の飛行機械を前に、
ぶつくさと文句を言いながら何やらいじくっている先ほどの女の姿。


ξ;゚听)ξ「ったく、エンジンのかかりが悪いわね……。
     あれもダメ……これもダメ……それもダメか……」

( ^ω^)「エンジンの調子が悪いのかお?」

ξ;゚听)ξ「まあね。四年前に交換して以来ずっと使い続けてるんだし、
     仕方がないといえば仕方がないんだけど……ブーン、アレ持ってきて」

( ^ω^)「把握だお」
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:52:05.16 ID:s4BaBgldO
手裏剣wwwwwwwwww
3278 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:52:48.23 ID:b4T/x6gf0

ブーンと呼ばれた男は台所へと戻ると、
フライパンを片手に再び作業場へと戻ってきた。


( ^ω^)「ご所望の品でございますお」

ξ゚听)ξ「うむ。苦しゅうない。下がれ」


声より先に、そそくさと彼女から距離をとったブーン。
手渡されたフライパンを受け取ると、彼女はそれを大きく振りかぶって、


ξ#゚听)ξ「いい加減に目を覚ませ! このポンコツ!!」

ξ#゚听)ξ「おんどりゃ―――――――――――――!!」


飛行機械のエンジンに叩きつけた。
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:53:43.93 ID:18gbw5/a0
支援
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:54:04.54 ID:95U/0M7b0
後で読もう
支援
3578 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:54:16.92 ID:b4T/x6gf0

鉄と鉄。フライパンとエンジンが互いを弾き合い、
その衝撃で地下室中に『ガ―――ン!』と轟音がこだまする。

同時に、大型動物の低い呼吸音にも似たエンジンの起動音が響き渡り、
それを前に、男女二人はニヤリと笑みを浮かべる。


( ^ω^)「おっおっお。ツンとフライパンのコンビは鬼と金棒みたいなもんだお」

ξ゚ー゚)ξ「あったりまえよ! オカマ譲りのあたしの整備技術、なめんじゃないわよ?」

( ^ω^)「……」


フライパンでエンジンを殴りつけることのどこが整備なのかは甚だ疑問ではあったが、
それを言うと今度は自分がフライパンの餌食になりそうだったので、
ブーンはつっこみを入れないでおいた。

それが功を奏したのか、ツンと呼ばれた女は小汚いツナギから飛行服へと手早く着替えると、
上機嫌のまま、鼓動を始めた飛行機械の後部座席へ颯爽と飛び乗った。

それに続き、ブーンも操縦席である前部座席へと軽やかに飛び乗る。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:54:50.04 ID:R16rV5mLO
空を行くの続編と聞いて、エデンから飛んで来ました
3778 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:55:54.78 ID:b4T/x6gf0

( ^ω^)「燃料よし。油圧よし。回転数よし。
     フラップ、エレベーター及びエルロンの稼動を確認。
     その他すべてオールグリーンだお!」

ξ゚听)ξ「ギリギリでね。エンジンやらなんやら諸々、
     大部分は四年前にレストアしたっきりだから、機体のあちこちにガタがきちゃってるのよねぇ。
     せめて一ヵ月後に向けてエンジンだけは交換したいもんだけど、お金がねぇ……」

( ^ω^)「最近はランクBの仕事が多かったから、貯金はたんまりあるはずだお?」

ξ゚听)ξ「それがさっぱり。消耗部品の交換と、
     ……あとほら、燃料価格が下がったじゃない?
     だから備蓄用に大量に買い込んじゃったわけよ。
     かと思えば、水は値上がりしちゃうしで、残りの貯金もあとわずか……」

(;^ω^)「……マジっスか?」

ξ#゚听)ξ「マジっス。世の中ってね、
     貧乏人にはお金が貯まらない仕組みになってんのよ。
     大体ね、水の値上がりとか意味不明なのよ! 
     上層階級の豚どもが儲けたいがために値上げした違いないわ!
     あーあ! ムカつくわねっと!!」
3878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:57:04.07 ID:b4T/x6gf0

世の中に対する不満をぶつけるかのごとく、
ツンは手にしたスパナを作業室壁面に備え付けられたスイッチに向けて力任せに投げつけた。

見事ヒットしたそれにより、
ガラガラとやかましい音をたてながら天井のシャッターがゆるゆると開いていく。
その音に負けない大声で、ツンがブーンへとがなりたてた。


ξ゚听)ξ「全速力で組合に向かうわよ! エンジン代を稼がなきゃ!!」

( ^ω^)「急がなくても大丈夫だお。
     ランクB以上の仕事をこなせるのは僕たち以外にそうはいないお」

ξ#゚听)ξ「アホ! ロマネスクさんがいるじゃない!」

(;^ω^)「おお! ロマネスクのおっさんのこと、こってり忘れてたお! 急ぐお!!」


そうこうしている内に開ききったシャッター。

開け放たれた天井からは、
薄暗くカビ臭い地下の作業場を、しゃべりあう二人を、外の光がありありと照らしていた。
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:57:48.28 ID:F+kTQyb10
ジブリっぽくて好きだなぁ

支援
4078 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:57:48.66 ID:b4T/x6gf0

やがて、ふわりと宙に浮いた飛行機械。
目指すは天井の先。どこまでも青い空と白い雲の向こう側だ。


ξ゚听)ノ「それじゃ、お仕事にしゅっぱーつ!」

( ^ω^)ノ「ブ――ンだお!!」


ゴーグルをかけると同時に発せられた、勇ましい二人の掛け声。

銀色の飛行機械は垂直に飛び上がると、
開いた天井から青い大空へと飛び出していった。









〜( ^ω^)君に空を贈るようです〜

41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:57:54.12 ID:R16rV5mLO
支援
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:58:39.55 ID:pM5O+FC/0
支援
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:59:06.47 ID:JTmx5Xb50
出だしからこんなにwktkするのは何故だろう
支援
4478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 22:59:45.44 ID:b4T/x6gf0

第一話 南風


この世界の大地は空に浮かぶ島々。

最上層に浮かぶ『水の島』を頂点に、
流れ落ちる水を共有する幾層にも折り重なった島の集合体がひとつの国を形作る。

そしてここは飛行機械のメッカ、ニューソク国最下層の島『ツダンニ』。

工場作業員、整備工、パーツ屋、ジャンク屋。
その他多くのブルーカラー労働者が住みつくこの島の町並みは実に雑然としている。

所狭しと並ぶつぎはぎベニヤの屋根。
網目状に張り巡らされた小道。
モクモクと煙を吐き出し続ける工場の煙突。
上層の島から流れ落ちてきた汚水を運ぶ川の流れ。

互いにひしめき、己の存在を主張し合うそれらを見下ろしながら、
ブーンとツンを乗せた銀色の飛行機械は、今日も悠々と空を渡る。


ξ;゚听)ξ「はぁ〜……今月はピンチだわ〜……」


しかし、後部座席で家計簿をにらみつける彼女に限っては、
まったく悠々としてはいなかった。
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 22:59:49.75 ID:F+kTQyb10
ネームバリューもあるかもしんないけど

独特の雰囲気作れてるんだよな、アフロん
たまらん

支援
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:00:39.73 ID:18gbw5/a0
第一話…これは
支援
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:00:52.37 ID:eBGcIXfR0
やっべ、オラワクワクすっぞ紫炎
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:01:27.37 ID:ainKHZIX0
支援
4978 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:01:28.77 ID:b4T/x6gf0


( ^ω^)「値下げしたからって燃料を大量に買い込むからそうなるんだお。
     燃料さえ買わなかったら、エンジン代だってなんとか工面できたはずだお?」

ξ#゚听)ξ「うるさい! 家計を預かる身としては当然の行動よ!
     燃料みたいな生活必需品を安いときに大量に買い込むのは、消費者としての鉄則よ!?」

(;^ω^)「……なんかツン、最近考え方がおばさんっぽくなってきたお」

ξ#゚听)ξ「なんだと!? 生活力ゼロ人間がゴチャゴチャ言うんじゃない!!」

( ;ω;)「アウチ!」


ツンの投げたスパナが見事にブーンの後頭部へと直撃した。

あまりの痛みに、操縦桿を握る手を一瞬放してしまったブーン。
そのせいで飛行機械が上下左右に揺れに揺れ、彼は慌てて体勢を立て直す。
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:01:35.74 ID:e7tuVtac0
一番好きな作品がまたこうして読めるとは
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:01:38.77 ID:Yh8aWgdvO
支援!支援!!
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:02:32.36 ID:MtlRw4PH0
ktkr支援!!!
5378 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:02:57.98 ID:b4T/x6gf0


( ;ω;)「痛いお〜。頭が割れるお〜」

ξ゚ー゚)ξ「そう言って割れた奴はいないから安心しなさい」


泣きながら後頭部をさするパイロット。それを見て微笑むナビ。
その様子をバックミラーで確認すると、ブーンはおチャラけた調子で言った。


( ^ω^)「まったく……ツンみたいにがさつだと、嫁の貰い手が心配だお。
     売れ残ったら僕がお嫁にもらってやるから安心しろおwwwwwwwwww」

ξ;゚听)ξ「よ、余計なお世話よ! 
     あんたみたいな生活力ゼロの男なんか、こっちがお断りなんだから!」

( ^ω^)「……そうかお」


冗談まじりに放った言葉の返答に残念そうな表情を浮かべたブーン。

やがて飛行機械は町を抜けて丘陵地帯の草原へと入り、
その先にポツリと鎮座した木造建物の前へと着陸した。
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:03:02.35 ID:pM5O+FC/0
純粋に、ツンとブーンが良いんだよなぁ
支援
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:03:46.34 ID:6uVrzF56O
>>31

434 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/09/30(日) 04:00:50.99 ID:s4BaBgldO
終わったんだからさっさと落とせよ
投下中は支援、終わったら乙
それ以外は質疑応答だけなんだから何もないなら落とせ
252 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/09/30(日) 03:21:03.81 ID:s4BaBgldO
ビロードのアルファベットがついに判明257 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/09/30(日) 03:21:40.42 ID:s4BaBgldO
なんだってー!!
371 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2007/09/30(日) 03:32:40.50 ID:s4BaBgldO
今からBなんか使う機会があるのかと
436 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/09/30(日) 04:05:58.60 ID:s4BaBgldO
>>435
支援なんか作者1に対して6か7ぐらいあるし乙も100近くあるし
俺がしなくても何も問題ない
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:04:00.73 ID:PsgNfjua0
久々に・・・久々に本気でwktk
5778 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:04:24.94 ID:b4T/x6gf0

降り立った二人が前にした木造建築物。
これが彼らの所属する『飛行機械郵便行組合』だ。

各国各地にあるこの組合を窓口として、
ブーンら大多数の飛行機械乗りは日夜郵便業にいそしんでいる。

いつものように屋内のエントランスへと足を踏み入れた二人。
そのまま受付で書簡を受け取ると、ニコニコ顔で飛行機械へと戻ってくる。


ξ゚ー゚)ξ「ロマネスクさん、今日は寝坊したみたいね。
    今日のランクBはひとつだけだったから助かったわ!」

( ^ω^)「あのおっさんは本当にだらしないおwwwwwwwww」

ξ#゚听)ξ「あんたが言うな! 
     ビロード君とちんぽっぽちゃんは朝早くから頑張ってるみたいよ?
     あんたもちょっとは見習いなさい!!」

( ^ω^)「何言ってんだお。ビロードたちに飛行機械の乗り方を教えたのはこの僕だお?
     むしろ二人が僕を見習うべきだおwwwwwwwwwwww」

ξ#゚听)ξ「寝坊を直せって言ってんのよ! このドアホ!!」

58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:04:30.77 ID:95U/0M7b0
支援
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:04:49.13 ID:MtlRw4PH0
wktk支援
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:05:20.20 ID:R16rV5mLO
支援
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:05:21.69 ID:18gbw5/a0
支援
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:05:58.19 ID:eBGcIXfR0
支援
6378 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:05:58.35 ID:b4T/x6gf0

ブーンの尻を蹴り上げるツン。

そのまま何度も何度も蹴り上げながら、
彼女はたくみにブーンを操縦席へと誘導していく。

そんな二人は、やはりご主人様と豚にしか見えない。


( ;ω;)「痛いお〜。お尻が割れるお〜」

ξ゚ー゚)ξ「そう言って割れた奴はいないから安心しなさい」

( ^ω^)「いや、お尻はもともと割れてるお?」

ξ#゚听)ξ「つべこべ言うな!」

6478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:07:15.32 ID:b4T/x6gf0

口は災いの元。
もう一撃強烈な蹴りを尻に頂戴しながら操縦席へと乗り込んだブーン。

続けて後部座席へと乗り込んだツンは地図を広げ、
パイロットに対しテキパキと指示を出していく。


ξ゚听)ξ「今日の配達先はドクシン国よ。
   距離が長いから今夜は向こうで泊まりね。それで、風は……」

( ^ω^)「南風だお。少し強めだけど、いい感じの風だお」

ξ゚听)ξ「把握。あと、泊まりだと時間的に余裕があるから、
    途中でこことここのコンビニエンス島に立ち寄りましょう。
    今朝のエンジンの調子を見る限り、ちょくちょく休ませなきゃ墜ちるかもしれないわ」

(;^ω^)「把握したお。雲海の中はもうコリゴリだお」

65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:07:51.80 ID:fwlzU9jP0
しえん
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:08:10.63 ID:ainKHZIX0
支援
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:08:39.40 ID:pM5O+FC/0
支援
6878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:08:58.55 ID:b4T/x6gf0


ξ゚ー゚)ξ「あら? あたしなんか雲海から下の世界に飛び降りたのよ?
    それに比べれば、あんたなんかまだまだ甘ちゃんよ!」


ブーンの言葉に数年前の体験を思い出したのか、ツンは高らかに笑い声を上げる。
彼女の挑発的な笑いにのせられたのか、少しムッとした表情でブーンが応答した。


( `ω´)「飛び降りたツンを空中で拾い上げたのは誰だったかお?
     この僕だお! そこんとこ、ちゃんと感謝してほしいもんだお!!」

ξ#゚听)ξ「何言ってんのよ! あたしは助けてって言った覚えは無いわ!!
     あんたが勝手にあたしを拾ったんでしょうが!
     大体あの時あんたがヘマしてなきゃ、あたしが飛び降りる必要なんて無かったのよ!!」

(;^ω^)「うう……痛いところを突いてくるお……
     でも、僕が雲海から落ちたからこそエデンを見つけられたわけで……」

ξ#゚听)ξ「うるさい! 黙れ!!
     ったく、時間があるとはいえね、無駄話してる余裕は無いのよ! 
     どっかの誰かさんの寝坊のせいでね!!」
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:09:29.99 ID:xSCeCV7nO
前作終了後の二人の無事が知れただけでもう嬉しい
7078 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:09:32.76 ID:b4T/x6gf0


(;^ω^)「……ごめんだお。僕が悪かったお」

ξ゚ー゚)ξ「わかればよろしい。ほら、さっさと離陸する!」

(;^ω^)(……口ではツンに勝てないお)


敗北感に打ちひしがれながらも、
ブーンはスロットルレバーを引き、スムーズな離陸をこなして見せた。

危なげない角度で上昇した銀色の空の舟は、
青と白の中、強い日差しを身にまとい、今日も変わらず空を行く。
7178 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:10:35.89 ID:b4T/x6gf0

                *

予定通り、最初のコンビニエンス島へと停泊した二人。

各国を結ぶ航路の小島に設けられたそこは、
飛行必需品を割高で販売するコンビニエンスストア以外に、あとは草原しか存在しない。


ξ;゚听)ξ「しっかしエンジンの調子が悪いわね……。
    昨日まではそんな兆候は無かったんだけど……どうしてかしら?」

( ^ω^)「……」


まさか今朝のツンとフライパンが原因だろうとは口が裂けても言えない。

ブーンはコンビニエンスストアで買ったタイ焼きをほお張りながら、
エンジンをいじくり回すツンの背中を黙って眺めることにした。
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:11:14.66 ID:R16rV5mLO
支援
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:11:19.90 ID:b88tDW8n0

(;^ω^)「行く……?うあっ」


ハンゲツは振り返り、一瞬にしてVRとの間合いを詰める。

そしてそのままホットブラザーズを起動させ、VRに斬りかかった。


川;゚ -゚)「ッ!」


VRは凄まじい反応速度でその斬撃を受け止める。

衝撃音と共に、回りの床が陥没する。


川;゚ -゚)「なんの真似だ!」

(;^ω^)「いや、勝手に……」


ハンゲツはホットブラザーズを引き離すと、続け様に斬撃を打ち込む。
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:11:39.49 ID:b88tDW8n0
あぁぁぁぁぁ、ごめんなさい誤爆です……
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:11:49.23 ID:95U/0M7b0
空を行くというやつの続編なのか
支援
7678 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:11:51.33 ID:b4T/x6gf0


ξ;゚听)ξ「……こりゃダメだわ! もう限界なのかしらね?
    騙し騙し使えばもう少しは持つだろうけど、
    レースに出場できるかどうかはかなーり微妙ね」


まさに『お手上げ』と言わんばかりに、両手を上げて草原に背中から倒れこんだツン。

その口にブーンがタイ焼きを突っ込めば、
彼女は手を使わず口だけで器用にそれを平らげていく。


ξ゚听)ξ「何よ? このタイ焼き、中身あんこじゃない。カスタードは無かったの?」

( ^ω^)「カスタードは二倍の値段だったお」

ξ゚听)ξ「そう。それじゃあしょうがないわね」


貧乏くさい会話を交わした後、黙々とあんこ入りタイ焼きに食らいついた二人。
一足先に食べ終えたブーンは、寝転ぶツンと同じように草原へと背中を預けた。
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:12:40.73 ID:F+kTQyb10
>>73
他スレみながら合作投下してんじゃねーよwww


支援
7878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:13:37.70 ID:b4T/x6gf0

見上げた今日の空は、薄い青。
俗に言う『空色』というやつである。

淡い色彩のそれは、強烈な白を誇る雲が並存する場合は映えることは無いのだが、
見上げた今の空は快晴であり、雲影ひとつ見当たらない。

そんなとき、一面に広がる空色の淡さは目に優しく、
見ている者の気分を穏やかにしてくれる。

心地よい日差し。おまけに吹き抜ける風は絹のように肌を撫で、
吹かれた草木が奏でる柔らかな音も相まって、ブーンは強烈な眠気に駆られた。


(;^ω^)(でも、ここで寝たらツンに怒られちゃうお……)

ξ−凵|)ξ…zzZ「……違います……私は沢尻エリカではありません……」

( ^ω^)(……なんだお。ツンも寝てるのかお)

79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:14:16.85 ID:95U/0M7b0
支援支援
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:14:30.34 ID:eBGcIXfR0
支援
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:14:47.85 ID:4XBSKpUbO

  /⌒ヽ
 ( ^ω^) 
 / つwktkc
 しー-J
8278 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:15:05.28 ID:b4T/x6gf0

ちらりと横目で盗み見たツンは、
普段の気性の荒さなど微塵も感じさせないほど穏やかな顔で眠っていた。


(*^ω^)(こうして改めて見ると、やっぱりかわいい顔してるお)


すやすやと寝息を立てるツン。
これ幸いとブーンは彼女の隣に移動して、その顔をまじまじと眺めることにした。

整った目鼻立ち。
柔らかそうな頬。
ちらりと見える白いうなじ。
申し訳程度に膨らんだ胸。

吹く風に乗って、彼女の栗色の髪の香が届く。
何度か嗅いだことのある甘い香りの中には、ほのかに草の匂いが混じっていた。


(*^ω^)(……幸せって、こういうことを言うのかもしれないお)


それからしばらく眠る幼馴染の顔を眺めて、再び視線を空に戻したブーン。
やがてまぶたが重くなり、彼の意識もまた眠りの底へと堕ちてしまっていた。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:15:28.01 ID:ainKHZIX0
支援
8478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:16:17.32 ID:b4T/x6gf0

                     *


( ‐ω-)…zzZ「違いますお……僕は福山雅治ではありませんお……」

ξ;゚听)ξ「うわ―――! 起きろこのバカち―――――ん!!」

(;゚ω゚)「ひでぶ!!」


突如わき腹に走った激痛。どうやら誰かに蹴られたらしい。

あわてて飛び起きたブーンが目にしたのは、
文字通り草原を右往左往しながら慌てふためく幼馴染の姿だった。


ξ;゚听)ξ「どうしよい! どうしよい!!」

(;^ω^)「あいたたた……どうしたんだお、ツン?」

ξ;゚听)ξ「寝過ごした! 二時間も寝過ごした!!
    夢の中に和田アキコが出てきたせいよ! どうしてくれんのよ!!」

(;^ω^)「いや、僕に言われましても……というか、和田アキコって誰だお?」

ξ;゚听)ξ「あたしが知るか!」

( ^ω^)ノシ「いやいや、お前しか知らねーお」
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:16:52.93 ID:OhZJ01mzO
支援
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:17:31.72 ID:OhZJ01mzO
沢尻に福山wwwwwwwww
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:18:04.04 ID:TaAk3EegO
しえん
8878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:18:04.11 ID:b4T/x6gf0


ξ;゚听)ξ「それよりどうしよい! どうしよい!! 
     配達時刻に間に合わないわ!ってどわ―――――っ!!」


相変わらず慌て続けるツン。
右往左往しすぎるあまり、彼女は足を絡ませ、草原へと転がり倒れてしまった。

アホな幼馴染の姿にため息をつくと、
ブーンは飛行服の懐から懐中時計取り出し、何かを考え込むようにしばらく押し黙った。


( ^ω^)「……確かに二時間のロスは痛いけど、間に合わないことはないお。
     もうひとつのコンビニエンス島に寄らないで飛び続ければなんとかなりそうだお」

ξ;゚听)ξ「え! ホントに!? でも、それってかなり厳しいんじゃない!?」

( ^ω^)「確かに厳しいけど、僕たちは誰もたどり着けなかった『エデン』を見たんだお?
     それに四年前の『ニューソクカップ』だって制覇したんだお?
     やって出来ないことはないお!!」

89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:18:21.36 ID:eBGcIXfR0
支援wwww
9078 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:18:50.57 ID:b4T/x6gf0


ξ゚ー゚)ξ「……そうよね! たまにはいいこと言うじゃない!!
    現時点では、あたしたちが一番のパイロットとナビだもんね!!」

( ^ω^)b「そうだお! 
      一ヵ月後の『ニューソクカップ』連覇に向けて、ここで弾みをつけておくお!!」

ξ゚ー゚)ξ「オッケー! そんじゃ、気合入れていくわよ!?」

( ^ω^)ノ「お――――っ! だお!!」


意気揚々と飛行機械に飛び乗った二人。
彼方まで続いてく空には、二人の行く手をさえぎるものなど何も存在……
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:18:59.58 ID:95U/0M7b0
支援
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:19:00.09 ID:OZdOiAETO


僕にいぃぃぃいぃいい!!!!!
僕に空を送ってくださああぁぁあぁあいぃぃいぃい!!!!!!!!!


93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:19:05.54 ID:F+kTQyb10
支援!
9478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:19:49.36 ID:b4T/x6gf0

                         *


ξ#゚听)ξ「……するのよねぇ」


数時間後。
いつかの空戦と同じ色をした黄昏の空。

ドクシン国領空へとたどり着いた二人が目にしたのは、
黒煙を後ろになびかせながらヨタヨタと飛ぶ大型のカーゴ(物資運搬用の飛行機械)の機影。

豆粒のように見えるそれを視界に捉え、ツンが大きくため息をつく。


ξ゚听)ξ「……トラブルってやつは、一気呵成に降りかかってくるもんなのよねぇ」


95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:21:02.45 ID:lYDadkQc0
支援
9678 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:21:09.20 ID:b4T/x6gf0


(;^ω^)「そんなことよりカーゴから発光信号が出てるお! 解読してくれお!!」

ξ゚听)ξ「はいはい」


はるか前方より明滅する発光信号。
それを読み取ったツンが、苦々しげな短声を上げる。


ξ;゚听)ξ「ゲッ! こりゃまたやっかいなことになりそうだわ……」

(;^ω^)「向こうはなんて言ってるんだお?」

ξ;゚听)ξ「『流石一家』に襲われているんですって」

(;^ω^)「あちゃー……」

97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:21:47.20 ID:eBGcIXfR0
流石一家wktk
9878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:22:46.03 ID:b4T/x6gf0

速力を上げてカーゴへと向かった二人。

それに近づくにつれて、カーゴ周辺を飛び交う迷彩柄の複座式飛行機械と、
その母船らしき超小型戦艦の機影が目視できるようになった。


(;^ω^)「……間違いないお。
     迷彩柄の飛行機械と言えば『流石一家』の搭載機に決まってるお」

ξ゚听)ξ「実際に見るのは初めてだけど、かなーり趣味の悪い色してるわよねぇ」

(;^ω^)「それにしてもあのカーゴ、護衛の飛行機械も付けずに何をやってるんだお……」

ξ゚听)ξ「護衛機は墜とされちゃったんじゃないの? 
    『流石一家』の飛行機械って、結構強いって聞いたことあるし」


先ほどコンビニエンス島で買ったタイ焼きの残りをほお張りながら、まさに人事のようにぼやくツン。
一方でブーンは、真剣な表情で対策を練り始める。
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:22:51.11 ID:TaAk3EegO
わくてかしえん
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:23:34.66 ID:95U/0M7b0
支援
10178 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:24:10.73 ID:b4T/x6gf0


(;^ω^)「さて、どうしたもんかお。僕たちの飛行機械には武器がないお。
     応戦無しで足の遅いカーゴを安全圏まで誘導するには……」

ξ゚听)ξ「これ使ったらどう?」


そう言ってツンが取り出したのは、手のひらサイズの丸い物体。
それを見たブーンの頭上に電球がともる。


( ^ω^)「なるほど! 目潰しかお!!」

ξ゚听)ξ「そ。これで敵の視界を潰しておいて、
    その間を使ってカーゴに安全圏まで避難してもらうのよ」

( ^ω^)「それはいいお! で、どっちを潰すかお? やっぱり飛行機械の方かお?」

ξ゚听)ξ「それが定石でしょうけど、飛行機械は機動性が高くて当てづらいわ。
    ここはあっちの鈍亀のほうを狙いましょう」


そう言ってツンが指差したのは迷彩柄の飛行機械ではなく、
少し離れたところに浮かぶ、流石一家の母艦らしき超小型飛行戦艦の艦影。

速力が無い上に大きな艦体。目潰しの的としてこれほど格好なものは無い。
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:24:33.89 ID:R16rV5mLO
支援
10378 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:24:50.67 ID:b4T/x6gf0


ξ゚听)ξ「こっちの最優先課題はカーゴの死守よ。
    火力の高い飛行戦艦を先に潰しておいたほうが得策だわ。
    それに母艦を狙われたとなれば、飛行機械もこっちを向かざるを得ないはずだし」

( ^ω^)b「把握したお!」

ξ゚听)ξ「まずは敵をこっちに引き付けて、カーゴの脱出時間を稼ぐのよ?
    それじゃ、あたしが目潰し攻撃を仕掛けるから、
    あの鈍亀まで接近してちょうだい。機銃にやられないようにね?」

( ^ω^)b「任せてくれお! 僕を誰だと思ってるんだお?」

ξ゚听)ξ「朝に弱いへちゃむくれ」

( ^ω^)「……」

104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:25:42.78 ID:TaAk3EegO
へちゃむくれwwwww
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:25:43.66 ID:JTmx5Xb50
これは…

支援
10678 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:26:04.72 ID:b4T/x6gf0

ブーンの双眸が索敵のためにせわしなく動く。

守るべきカーゴは前方斜め五時の方向。
敵の母艦はその後方。

敵飛行機械はカーゴ周辺に一機。
どうやらブーンたちに気づいたらしく、彼らは機首をこちらに向けて距離を詰めてくる。


(  ω )「僕はへちゃむくれなんかじゃないお……」


西日は十時の方向。
スロットルレバーを限界まで引き、上昇して位置エネルギーを稼ぐ。

そのまま西日を背に預け、敵母艦へ向けて急速ダイブ。


( ゚ω゚)「僕は『VIP』の子供だお――――――!!」


ブーンの叫び声は風に乗り、黄昏の空に響いた。
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:26:21.43 ID:OZdOiAETO
ツン俺を罵ってツン
10878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:28:22.50 ID:b4T/x6gf0

                        *


(´<_` )「アニジャ。あれはもしや……」

( ´_ゝ`)「わかってる。みなまで言うな、マイ・ブラザー」


ブーンの叫びから数分前のこと。
迷彩柄の飛行機械を操る、同じく迷彩柄の飛行服をまとった顔がそっくりの二人組み。
空で迷彩柄をまとっても何の意味も無いのに、なぜに彼らは迷彩柄なのだろうか?

そんな疑問はさておき、
後部座席に乗ったナビらしき男は、前部座席で操縦桿を握る男をアニジャと呼んだ。
彼はアニジャの返事に感心した様子で、再びアニジャに声をかける。


d(´<_` )「こんな状況でも七五調で返事をするとは……さすがだなアニジャ」

( ´_ゝ`)b「まあね。もっと褒めて」

(´<_` )「おや、今度の返事は七五調ではないな?」

( ´_ゝ`)「当たり前だ。こんな状況で七五調の返事などしていられんよ」

d(´<_`;)「おお! 実に的確な状況判断だ! さすがだなアニジャ!」

( ´_ゝ`)b「まあね。もっと褒めて」
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:28:55.54 ID:XpCZZZYg0
こいつらwwwwwwwwwwwwww
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:29:39.86 ID:OZdOiAETO
兄者操縦桿よりも俺の竿を握ってよ兄者
11178 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:30:14.01 ID:b4T/x6gf0


(´<_` )「しかし、まさかこんなところで奴らにお目にかかれるとはな」

( ´_ゝ`)「人と人とのめぐり合わせなんてものは実に数奇なものなのだよ、オトジャ君。
      あ、これ、今日の俺の名言ね?」

d(´<_` )「把握した。早速『アニジャ名言集』に書き加えておく」


なんだか間の抜けた掛け合いを見せる二人。
彼らの視界の真ん中には、西日を背負いこちらへ向かってくる一機の飛行機械らしき黒い影。

攻撃目標であったカーゴから離脱すると、
彼らは敵機影が西日から外れるよう、己の位置を修正した。

近づいてくる敵機。位置修正の甲斐があったのか、
二人は敵機を影ではなく、その色や形までもハッキリと捉えることに成功した。


(´<_` )「……機銃の無い洗練されたフォルム。銀色に輝く機体。
     そして空の上で踊るかのような、軽やかな身のこなし。間違いない」

( ´_ゝ`)「ああ。奴こそが『エデンを見た男』だ」

112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:31:05.97 ID:OhZJ01mzO
78氏本領発揮だな
11378 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:31:38.77 ID:b4T/x6gf0

冗長で回りくどい会話を繰り広げるこの二人。

彼らの名は『アニジャ=サスガ』と『オトジャ=サスガ』。
前者がパイロットを、後者がナビをそれぞれ務めている。

二人はドクシン国を縄張りとする海賊『流石一家』の棟梁の双子としてこの世に生を受け、
現在はこうやってカーゴなどを襲い金品を強奪する、非常にせこい飛行機械乗りをやっている。

この『流石一家』とは、
さかのぼること二十数年前から活動を続ける由緒正しきアウトロー一家である。

棟梁の『ハハジャ=サスガ』も、かつてはこの二人同様飛行機械を操っており、
ドクシン国近辺ではそれなりに幅を利かせていた。
噂では、当時の連合艦隊のエース『レッドバロン』とも対決したことがあるらしい。

しかし、今からおよそ十数年前。
突如勢力を伸ばし始めた『海賊狩りのVIP』に喧嘩を売り、
完膚なきまでに返り討ちにされて以来、彼らはしばらくなりを潜めていた。

そして今から五年前、『VIP』の面々が
メンヘラ国ラウンジ艦隊に捕らえられ処刑されたという情報をキャッチするや否や
ここぞとばかりに活動を再開した。

そんな卑怯な海賊が、彼ら『流石一家』なのである。
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:31:44.86 ID:e7tuVtac0
VIPの他のメンバーはどうなったのか気になるな、モナーとクーとか
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:32:19.98 ID:95U/0M7b0
支援
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:32:34.37 ID:eBGcIXfR0
しえ
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:32:45.38 ID:e7tuVtac0
>メンヘラ国ラウンジ艦隊に捕らえられ処刑

\(^o^)/
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:33:09.71 ID:F+kTQyb10
これは…wktk
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:33:11.90 ID:d2EWD7D80
ぎゃあ!空を行くでは泣かせていただいた!支援させていただくっ!
12078 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:33:22.48 ID:b4T/x6gf0


( ´_ゝ`)「それでときにオトジャよ、敵はなぜこちらに向かってこんのだ?」

(´<_` )「うむ。それは俺も疑問に思っていたのだ。しばし待たれよ」


敵機であるブーンたち銀色の飛行機械は、
明らかにサスガ兄弟の方角ではなく別の方角へと進路をとっていた。

ナビであるオトジャは、双眼鏡を片手に敵機の動向を観察する。


d(´<_` )「わかったぞアニジャ」

( ´_ゝ`)b「偉いぞオトジャ」

(´<_` )「ありがとう。それでな、敵機は我々ではなく
     我らが母艦『ブラクラゲット号』へと進路をとっている」

121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:34:07.05 ID:8h7qBnJSO
ブーン二つ名付いたのか
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:34:12.83 ID:OZdOiAETO
さすがだな、兄弟
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:34:19.67 ID:b88tDW8n0
支援
12478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:34:42.54 ID:b4T/x6gf0


( ´_ゝ`)「ほう? 聞くところによると、
     彼らの機体には武器が搭載されていないと言うではないか。
     武器なしで我らが母艦に挑めば、たちまちハハジャの対空砲火の餌食になるというのに、
     なぜにまた彼らはそんな愚かしいことを?」

(´<_` )「わからん。しかし相手は『エデンを見た男』。何か秘策があるのやもしれん」

( ´_ゝ`)b「なるほどな! しかしそれでこそ燃えるというものだ!!
      今こそ我らサスガ兄弟がやつらを墜とし、
      『エデンを見た男をやっつけた男』として世界に名を轟かせるときなのだ!!」


そう宣言してオトジャへと振り返り、ポーズを決めたアニジャ。
すかさずオトジャがカメラを取り出し、立て続けにシャッターを切る。
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:35:30.29 ID:d2EWD7D80
いいなこのバカ兄弟www支援
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:35:49.93 ID:FL0SamUP0
支援
12778 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:36:12.85 ID:b4T/x6gf0


d(´<_` )「完璧だぞアニジャ」

( ´_ゝ`)「ちゃんと右斜め四十五度で撮れたか?」

d(´<_` )「ああ。すぐに現像して『アニジャ写真集』にファイリングしておく」

( ´_ゝ`)b「さすがはオトジャ。見事な手際だ」


満足した表情で前を向きなおしたアニジャ。

スロットルレバーをめいっぱい引き、急加速。
舵を銀色の飛行機械へ向けて倒し、高らかに勝ち名乗りを上げた。


( ´_ゝ`)「覚悟せよ『エデンを見た男』! この空が貴様の墓場だ!!」

128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:36:33.67 ID:OhZJ01mzO
支援
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:37:23.81 ID:95U/0M7b0
よし原作読んでこよう支援
13078 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:38:08.41 ID:b4T/x6gf0

                     *

こうして始まった空戦は、十数分が経ってもこう着状態が続いていた。

敵母艦『ブラクラゲット号』のブリッジに目潰しを仕掛けるブーンとツン。
二人を墜とそうと弾幕を張りまくるブラクラゲット号艦長、ハハジャ=サスガ。
そして、二人を墜とし名を上げようと目論むサスガ兄弟。

戦力的には流石一家が断然有利。
しかしブーンたちは、雨あられと降り注ぐ弾幕の間隙を縫い、華麗に空を飛び続ける。

その間に、防衛対象であるカーゴは少しずつではあるが確実に空域から離脱を始めていた。


(´<_`;)「アニジャ、ハハジャからの発光信号だ。
     『ここはいいからカーゴを追え』だそうだ」

(# ´_ゝ`)「何をおバカさんなことを! 
     『エデンを見た男』を墜とす千載一遇のチャンスだぞ!? カーゴなんて知ったことか!!」

(´<_`;)「……追伸だ。『早くカーゴを追わないと晩飯抜き』」

( ´_ゝ`)「……お腹減ったなー」

131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:38:45.16 ID:xSCeCV7nO
オトジャまでボケるから収集がつかねえwwww
13278 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:39:43.70 ID:b4T/x6gf0

二人がブーンを追う間にも、確実にカーゴの機影は小さくなっていく。

晩飯を取るか、名誉を取るか。
アニジャは選びきれない二者択一の板ばさみにあっていた。

そんなアニジャに向け、オトジャが申し訳なさ気に意見を言う。


(´<_`;)「なあアニジャ? さすがの俺たちでも、
     『エデンを見た男』に挑むのはちと時期尚早だったんじゃないのか?」

(# ´_ゝ`)「……オトジャ、貴様、俺の飛行技術がやつらに劣っているとでも言いたいのか?」

(´<_`;)「そうは言わん。しかし、奴らのあの動きを見ろ。
     もう十数分もハハジャの弾幕を避けつつ、我らの追随からも逃れ続け、
     おまけに『ブラクラゲット号』のブリッジへ目潰しらしき攻撃を仕掛けているのだぞ?
     さすがの俺たちでもあれを墜とすのは至難の業ではないか?」

( ´_ゝ`)「……確かにそうかも知れんなー。それにお腹すいたしね。
     『アレ』を使ってダメなら、カーゴのほうを狙いにいこうか?」

d(´<_` )「さすがはアニジャ。見事な妥協だ。それでは『アレ』を起動させる」

133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:40:20.03 ID:gnLyyxqtO
>>129
原作?元ネタあるんだっけ?
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:40:24.52 ID:fwlzU9jP0
しえん
13578 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:41:39.32 ID:b4T/x6gf0

そう言って後部座席の奥へともぐりこんだオトジャは、
即座にコントローラーらしきものを取り出した。


d(´<_` )「アニジャ、準備おkだ。いつでもいいぞ」

( ´_ゝ`)b「把握した。それでは受けてみよ『エデンを見た男』!
      我ら流石一家のメカニック『チチジャ=サスガ』が開発した恐るべき新兵器、
      有線式誘導ミサイル『>>1さん待って君三号』の威力を!!」


長ったらしい決め台詞と同時に、操縦席のとあるボタンを押したアニジャ。
直後、サスガ機の機体下部より、一基のミサイルが射出された。
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:41:40.97 ID:d2EWD7D80
>>133
空を行くのことじゃね?
原作じゃなくて前の作品だけど。

しえん
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:42:21.87 ID:x92TKZ4B0
うーん、いいなこの流石兄弟
好きなタイプだ
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:42:48.58 ID:8h7qBnJSO
支援
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:43:04.31 ID:OhZJ01mzO
>>133
あまり雑談はしたくないが、おそらく前作だろ
支援
14078 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:43:11.31 ID:b4T/x6gf0

発射された有線式誘導ミサイル『>>1さん待って君三号』。

これは機体とミサイルを結ぶケーブルを通じ、
コントローラーの操作で自在に標的を追い続けるという恐ろしい兵器なのだ。

それはオトジャの操作により、ブーン機へと高速で接近していく。


( ´_ゝ`)「ふはははは! 討ち取ったり『エデンを見た男』!!」


しかし攻撃に気づいたらしいブーンたちは、
>>1さん待って君三号』を後ろに引き連れつつ、
ロールで機銃を避けながら、サスガ兄弟に向かって急速接近してくる。
14178 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:43:49.88 ID:b4T/x6gf0


( ´_ゝ`)「愚かな! どうせ我々と激突する直前に急降下か急上昇をして、
     後ろに引き連れた『>>1さん待って君三号』を我々に当てる、
     つまりフリーザ様と気円斬みたいな関係を狙っているのだろう!?
     そうは問屋が卸さんよ! オトジャ!!」

(´<_` )「アイアイサー」


アニジャの予想通り、ブーン機はサスガ機に衝突スレスレまで近づき、急降下。
オトジャはすかさず『>>1さん待って君三号』を急降下させ、ブーン機を狙いからはずさない。


( ´_ゝ`)「さーて、どこまで逃げ切れるかな?」

142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:44:47.96 ID:JOcwEHkM0
Xien
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:45:01.43 ID:bbx8+52g0
\1さーん、待って〜〜〜〜
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  ⊂二 ̄⌒\  ハァハァ          ノ)
     )\   ( ∧_∧         / \
   /__   )*´Д`)    _ / /^\)
  //// /       ⌒ ̄_/
 / / / // ̄\      | ̄ ̄
/ / / (/     \    \___
((/         (       _  )
            /  / ̄ ̄/ /
           /  /   / /
         / /   (  /            
        / /     ) /             
      / /      し′             
    (  /                      
     ) /                       
     し′             
14478 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:45:35.63 ID:b4T/x6gf0

と、余裕の表情でブーン機の動きを眺めていたアニジャであったが、
>>1さん待って君三号』はいつまでたってもブーン機に命中しない。


(# ´_ゝ`)「オトジャ! さっさと当てんか!!」

(´<_`;)「しかしだなアニジャ……奴ら、ものすごくすばしっこくて……」

(# ´_ゝ`)「ええい! ほんなこつ歯がゆか! コントローラーを貸せ! 俺が当てる!!」


短気なアニジャはオトジャからコントローラーを奪い取ると、
>>1さん待って君三号』の操作に全神経を注ぎ始めた。


( ´_ゝ`)「わーい、有線操作って楽しいなー。
      今度チチジャにこの形式のおもちゃを作ってもらおう」

(´<_`;)「そんなことよりアニジャ! 高度が下がってる! 雲海に墜ちるぞ!!」


子供のように『>>1さん待って君三号』の操作に夢中になっていたアニジャ。

操縦主を失ったサスガ機は雲海の下、
すでに失われた地表の引力に引かれ、徐々に高度を落とし始めていた。
14578 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:47:20.20 ID:b4T/x6gf0


(;´_ゝ`)「む! ぬかった! 
     有線式誘導ミサイル『>>1さん待って君三号』の操作が面白すぎたあまり、
     つい飛行機械の操縦を疎かにしてしまっていた!!」

(´<_`;)「言い訳はいいから! 早く上昇してくれ!!」

( ´_ゝ`)「よーし、急上昇だー」

(´<_`;)「バカ! 『>>1さん待って君三号』を急上昇させてどうする!!
     っておい! ミサイルこっちにきてるぞ!!」

( ´_ゝ`)「よーし、ロールで避けるぞー」

(´<_`;)「だから『>>1さん待って君三号』をロールさせてどうするんだ! 
     ってぬわ―――――――っ!!」


ロールというマニューバは、機軸を中心に回転するだけで軌道は変わらない。
よって、当然のごとく『>>1さん待って君三号』はサスガ機へと命中。

黄昏の空には、轟音とともに派手な爆発が巻き起こった。
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:47:25.32 ID:JOcwEHkM0
XienXien
あれだな、飛行機運転したくなるな
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:47:43.56 ID:MtlRw4PH0
まじめにやれwwwwww支援
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:47:59.86 ID:4XBSKpUbO

  /⌒ヽ
 ( ^ω^) 
 / つwktkc
 しー-J
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:48:51.55 ID:bbx8+52g0
支援wwwwwww
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:49:04.01 ID:CJtqBGt+O
敵なのにこのほのぼのさ…
サスガ一家からドーラ一家の匂いがプンプンするぜ!
支援
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:49:14.41 ID:OZdOiAETO
ぬわー――――
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:49:22.03 ID:RY1b+XCi0
クーとモナーも一緒に仕事してると思ってたのに……

支援
15378 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:49:57.54 ID:b4T/x6gf0

                    *

(;^ω^)「……」

ξ;゚听)ξ「……」


自らの操るミサイルで自爆したサスガ機。
それを呆然としながら眺める飛行機械上のブーンとツン。


ξ;゚听)ξ「……ねぇ? これって、あたしたちのせいなのかしら?」

(;^ω^)「いや、さすがに自爆となれば、僕たちも責任を負いきれないお……」


それからしばらく口をあんぐりとあけ、爆煙を眺め続けたブーンとツン。
やがてようやく正気を取り戻したらしいブーンが、爆煙の方へと機首を向ける。


(;^ω^)「と、とにかく救出に向かうお! もしかしたら生きてるかもしれないお!!」


と、スロットルを全開にしようとしたそのとき。


ξ;゚听)ξ「ブーン! 後ろ!!」

154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:50:50.19 ID:TaAk3EegO
しえん
15578 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:50:50.84 ID:b4T/x6gf0


(;゚ω゚)「おわっ!!」


ツンの声に、反射的に舵を切ったブーン。
コンマ数秒の差で、彼らのいた場所へと火線が走る。

冷や汗をかきつつ体勢を立て直し周囲を確認すると、
そこには流石一家の母艦『ブラクラゲット号』の姿。


(;゚ω゚)「しまったお! まだこいつが残ってたんだお!!」

ξ;゚听)ξ「……ブーン! ちょっと待って!」


しかしそれはブーンたちを追いかけることはなく、
一直線にサスガ機が散った場所へと向かっていく。

しばらく『ブラクラゲット号』の尾翼を眺めていた二人。

その先の空に、突如二つの花が咲いた。
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:50:57.48 ID:d2EWD7D80
やっぱりアニジャはアホな子だった支援
15778 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:52:16.85 ID:b4T/x6gf0


( ^ω^)「お? 落下傘だお」

ξ゚听)ξ「どうやらあの機体のパイロットたちみたいね。うまいこと脱出していたみたいだわ」


双眼鏡いらずの視力を誇るツンは、目を細め、空に咲いた花の正体を見極めることに成功した。


( ^ω^)「それは良かったお! 流石一家の母艦もあっちに気を取られてるみたいだし、
     今のうちにカーゴを安全な場所まで誘導するお!!」

ξ゚ー゚)ξ「オッケー!」


即座に機首を向けなおし、すでに豆粒ほどの大きさとなっていたカーゴへと向かった二人。
カーゴへと近づき発行信号で連絡を取ったツンは、笑顔を向けて、ブーンに通信内容を報告する。


ξ゚ー゚)ξ「カーゴは何とか飛べるみたいよ。これからドクシンまで戻るんだって。
    何かあるといけないから、このまま一緒に付いていってあげましょ?」

( ^ω^)「把握したお! これにて一件落着だお!!」


黒煙を吹いてはいるが辛うじて飛べるようであるカーゴを先導し、
二人はドクシン国へと進路を取る。
15878 ◆pSbwFYBhoY :2007/09/30(日) 23:53:42.16 ID:b4T/x6gf0

しかし、トロトロと足の遅いカーゴ。
それに合わせなければならないブーンたちは、機体の速度をまったく上げられない。

そんな現実を前に、先ほどまで笑顔だった二人の表情が一気に曇っていく。


ξ;゚听)ξ「この速度じゃ、配達のほうはとても間に合いそうにないわね」

(;^ω^)「遅れた場合の違約金って、いったいいくらだったっけかお?」

ξ ;凵G)ξ「……報酬の半額よ。
     流石一家に遭遇して、被弾したカーゴを先導して、その上報酬はランクBの半分。
     割りに合わなすぎるわよ……エンジンの交換なんて夢のまた夢ね……」

( ;ω;)「あうあう〜」


そしてようやくドクシンまでたどり着いた頃には、
まるで二人の気分を代弁するかのごとく、空はすっかり暗くなってしまっていた。


第一話 おしまい
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:54:43.00 ID:d2EWD7D80
乙!wktkが止まらないwwwwww
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:55:03.21 ID:F+kTQyb10
乙!
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:55:34.24 ID:JOcwEHkM0
O2
これほど続きが気になる話もないな
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:55:55.45 ID:OhZJ01mzO
乙!
続きが楽しみ!
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:56:05.26 ID:fwlzU9jP0
おつ
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:56:10.91 ID:MtlRw4PH0
超期待乙!
165 ◆OmuricecW6 :2007/09/30(日) 23:57:40.40 ID:ainKHZIX0
乙です。
まとめてもいいですか?
もしよければ、前作もまとめたいです。
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:57:51.07 ID:R16rV5mLO
乙!
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/30(日) 23:58:56.89 ID:8h7qBnJSO
乙!
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:00:45.94 ID:W2bxhMyhO
おっつ!
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:01:09.14 ID:dAAOMbaTO

空を行くの番外編を書いてるんじゃなかったっけ?
まさか続編とは!
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:01:31.50 ID:OmQUXDsg0
乙ww
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:02:28.23 ID:A1SJs/v5O
おつっっっ!!!
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:03:24.23 ID:i9FZ2crhO
乙!!!
17378 ◆pSbwFYBhoY :2007/10/01(月) 00:04:02.86 ID:iojcNAZ70
今日は以上です。支援ありがとうございました。

本当は新作のほうをさっさと出したかったのですが、
いかんせん競馬を題材にするとなると血統やらレース構成やらを考えなければならず、
もう少し時間がかかりそうなので先にこっちを投下することにしました。

この話はあくまで番外編なんで、多分十話くらいで終わるはずです。

>>165こがんとでよければ煮るなり焼くなり好きにしてください

>>169番外編はもしものときのためにとっておくことにしました。ごめんなさい。
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:08:14.77 ID:OPF9cozs0
スルーして構わんのだけど、なんで競馬なん?

前から競馬が好きだったの? それとも今更みどりのマキバオーにハマったとか?
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:08:31.44 ID:V8Yl9AuiO
これは番外編か。
新作もwktk
17678 ◆pSbwFYBhoY :2007/10/01(月) 00:11:01.85 ID:iojcNAZ70
>>174
競馬が好きだからです。それだけです。
今年の三歳牝馬は強すぎです。では失礼します。
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:11:40.51 ID:V8Yl9AuiO
改めて乙!
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:12:58.50 ID:8ZZyvftL0
アフロじゃまいか!
今から読むほ
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:14:07.68 ID:WnW96UIJO
誰か前作のまとめ貼ってくれー
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:23:59.67 ID:XEgDuXOnO
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:24:39.49 ID:A1+OHgEv0
アフロキテタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─!!
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 00:36:02.61 ID:xwTPRAWsO
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
今読上