1 :
退魔師:
投下遅れて申し訳ない
まとめは内藤エスカルゴさんです
前回のあらすじ投下後、今日は2話投下します
何とか合作が始まる前に終わらせたい
元ネタは『孔雀王』です
2 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:30:14.85 ID:e766rkQN0
第八話・吸血鬼の家に遊びに行こう〜その1、領主〜あらすじ〜
十八代目・葛葉ライドウことクーの依頼によりブーン、ショボン、ドクオの3人は観光都市M王町へ訪れた。
この町に住む友人からのSOSを受けたというクーをサポートする形での訪問だった。
クーが言うには古くからM王町は吸血鬼に支配されている町だと言う。
数々の伝説に語られる魔物との接触の可能性。
それはブーン達3人に警戒させて余りある事態だった。
万全の準備と共にM王町へ乗り込む。
別行動を取ったクーとの合流まで時間があるため、ブーン達3人は町で聞き込みを開始したが一切の情報が得られない。
あまりの肩透かしに愕然としながらブーン達は予約した旅館にチェックインする。
ダメ元でそこの主人に吸血鬼の話を聞き込むショボン。
すると予想外に主人はM王町に伝わる伝承、そして最近起こった吸血鬼関連の事件の情報をもたらす。
しかしクーの話と微妙に食い違う主人の証言にショボンは一抹の不信感を抱いていた。
突如として襲撃は訪れる。
部屋に投げ込まれる岩石。
蹴破られる扉。
多数の襲撃者に囲まれる旅館。
そして姿を現した強大な魔、吸血鬼オトジャ・ヒロヒコ・バレンタイン。
ブーン達3人は連携して吸血鬼から先手を奪うが……
3 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:31:17.34 ID:e766rkQN0
では第九話投下します
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです
4 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:32:40.79 ID:e766rkQN0
闇に浮かぶ古びた旅館。
妙な頭巾で顔を隠した多数の暴徒、暴徒の標的である3人の対魔師、そして吸血鬼。
平和な観光都市M王町において、通常では考えられない面々がその場に存在した。
3人の対魔師は既に数十人の暴徒の脅威は眼中にない。
現時点における最大の脅威は多数の暴徒よりたった一人の男。
一切の攻撃を不可思議に回避する吸血鬼、オトジャ・ヒロヒコ・バレンタイン。
何をしても無駄なのではないかと言う疑心暗鬼に駆られる。
疑心暗鬼は緩やかに体を締め上げ、金縛りとなり次の一手を躊躇させる。
それにも拘らず、変わらぬ笑みの中には強者の不敵な笑みといういやらしい物は感じられない。
強者でありつつ一片の奢り高ぶりもない。
それがブーン達3人が対峙している吸血鬼の姿だった。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:33:18.63 ID:69QyVJgFO
ktkr!
6 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:33:27.69 ID:e766rkQN0
疑いようもなく実力の一部しか見せていない弟者は、攻撃してくるでもなく明後日の方向に語りかける。
隙だらけにも見えるがブーン達3人は一先ず相手の出方を見ることを選択した。
(´<_` )「こちらだ。ん?あぁ、民よ。少しそこを空けて彼女を通してやってくれないか?」
('A`)「彼女?」
俄かに暴徒の集団が弟者が見ている場所で裂け始める。
人の谷間の奥には鬱蒼と茂った木々が夜を超える闇を作っていた。
直ぐにだったかそれとも十数秒後だったか、不思議な時間間隔を経て彼女は視線の先に闇から身を顕にした。
そろりそろりともったいぶったようなペースで、それでいて凛としたフォームで近付いてくる。
古めかしい外套に身を包み、絹のような長い黒髪が歩に合わせて揺れる。
彼女はブーン達の目の前で足を止め、右手の人差し指と中指を立ててビッと空を切った。
7 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:34:50.92 ID:e766rkQN0
( ゚ω゚)(゚A゚)「eeeeeeeeeeeee!!」
川 ゚ -゚)「よっ、遅くなってすまない。どうやら私の友人とはもう会ったようだな 」
ブーンとドクオの驚愕の叫びを聞き流しながら弟者の方を見る。
聞き違いでも空耳でもなく『私の友人』と言いながら。
(´<_` )「久しぶりだね、葛葉嬢。美しさは健在で何よりだ。妻に娶りたいくらいだよ 」
川 ゚ -゚)「残念ながらウチは婿養子派でな。それに相手なら既にいる 」
(´<_` )「おや、遅れを取ってしまっていたか。何百年も生きているとこういう細かいタイミングが分からなくてね 」
クーが自分の相手だと言いながら目をやった方向。
続いて弟者が世界一幸運な男だと言う視線をやった方向。
そこには当然この男がいた。
(´―ω―`)「クー…」
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:35:12.83 ID:69QyVJgFO
sien
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:35:40.50 ID:e766rkQN0
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです
―――第九話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――
〜その2、赤石〜
し
11 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:36:54.68 ID:e766rkQN0
M王町を見下ろす小高い丘、と言うより台地。
なだらかな丘陵の最上部に近代西洋風の城の優美な姿を見ることができた。
城門をくぐると短く刈り込まれた薄緑の芝に覆われた庭園が眼前に広がる。
そこに転々と立つ木々は城門から城の玄関までの直線を対称軸に、完全に左右対称の配置を取っている。
遥か先に見える城自体も、正面玄関を中心に対象に建てられていた。
歩く事数分、ようやく辿り着いた玄関を入ると柔らかな明かりに包まれたホールで十数名の使用人に出迎えられる。
そこから左右に幾つもの扉を持つ長い廊下を通り案内された先は巨大な応接室だった。
マホガニーのアンティーク調のソファに座ると、直ちに使用人がやはりマホガニーのテーブルに人数分のティーカップとソーサーを置いた。
そこに注がれる琥珀色の液体から発せられる甘く芳醇な香りが気分を落ち着かせる。
つまる所、ブーン達内藤退魔師ご一行様とクーはM王町領主・弟者の屋敷に招待されていた。
12 :
sien:2007/09/28(金) 20:37:47.97 ID:69QyVJgFO
し
13 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:37:53.80 ID:e766rkQN0
(´<_` )「長旅でお疲れだろう?どうかこれを飲んでリラックスして欲しい 」
川 ゚ -゚)「うむ。頂こう 」
クーはスッとティーソーサーを手に取り、それに乗ったカップを逆の手で口に近づける。
口に含んだ紅茶の香気を十分に堪能しながら喉に流す。
ほぅ、と息を吐き出し心身ともにリラックスする、そんな紳士淑女のティータイム。
(;^ω^)(リラックスなんて出来るわけが無いお)
(;'A`)(何で俺らの周りは金持ちばっかりなんだ?)
14 :
サザソのトリヴィア:2007/09/28(金) 20:38:18.60 ID:VEOlToNw0
ガッ
15 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:38:47.14 ID:e766rkQN0
慎ましやかな庶民には逆にこれがプレッシャーとなる。
ブーンとドクオはリラックスどころかガチガチに硬くなっていた。
(´<_` )「おや、紅茶は嫌いかね?極上のオレンジペコーなんだが 」
全く手をつけない二人を見て弟者が聞く。
更なるプレッシャーに戦慄する2人だったが、それを制し、ショボンがティーカップを手に取り中身を一気に喉飲み干した。
(´・ω・`)「ハッキリさせておきたい事が2つある」
空になったカップを置き、一切のオブラートも被せずにショボンは問いかけた。
その目は疑いの光を秘めている。
(´・ω・`)「まず1つ。あなたは敵ではないのか?」
(´<_` )「いかにも。しかし君たちが攻撃してきた事については私も気になっていた。
葛葉嬢は友人である私のことを君たちに伝えている物と思っていたが 」
あっさりと敵意はないことを示し、そしてクーを見る弟者。
ショボンは見向きもしないが、ブーンとドクオも同じようにクーを見た。
しえん
17 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:39:09.78 ID:e766rkQN0
川 ゚ -゚)「当然伝えてある 」
淀みの無い返答を即座に返すクー。
それだけ言うとクーは紅茶の次の一口を堪能し始めた。
一瞬静まり返る室内。
唖然とした2人の庶民が堪らず口を出す。
(;'A`)「待て待て待てーぃ!!お前この町が吸血鬼の脅威に晒されつつあるって言ってなかったっけ!?」
(;^ω^)「確かに聞いたお!!だからクーさんの友達が助けてくれって連絡してきたんだお!?」
川 ゚ -゚)「私は一言もそんな事は言っていないぞ 」
やはり躊躇なく言い放つクー。
あっさりと否定された庶民達はいきり立つ。
18 :
退魔師:2007/09/28(金) 20:39:40.77 ID:e766rkQN0
(#'A`)「だってお前 川 ゚ -゚)『お前達にはM県S市M王町に行ってもらいたい。
実はここは吸血鬼に支配されている町でな 』」
(;^ω^)「 川 ゚ -゚)『そこ在住の私の友人から恐るべき危機が訪れつつあるとSOSを受けた。
お前達は先に現地入りしてくれ。私もすぐに行く 』
って言ってたお。前回のコピペだから間違いないお……」
揺ぎ無き証拠を突きつける。
一方、ショボンは目を瞑ったまま眉間に皺を寄せていた。
当のクーは何食わぬ顔でそれのどこがおかしいのだと首をかしげている。
川 ゚ -゚)「伝えているではないか。
川 ゚ -゚)『お前達にはM県S市M王町に行ってもらいたい。
実はここは( 私 の 友 人 で あ る )吸血鬼に支配されている町でな 』
川 ゚ -゚)『そこ在住の( 吸 血 鬼 の )私の友人から恐るべき危機が訪れつつあるとSOSを受けた。
お前達は先に現地入りして( 領主であり町長である吸血鬼と顔合わせして )くれ。私もすぐに行く 』
間違いないぞ 」
し
20 :
sien:2007/09/28(金) 20:40:31.72 ID:69QyVJgFO
し
21 :
代九話:2007/09/28(金) 20:40:52.05 ID:e766rkQN0
超理論を展開するクー。
( ゚ω゚) ( ゚A゚)「何だってー―――――――!!」
予想の遥か斜め上の回答に驚愕する2人。
(´―ω―`)「大事なところを括弧で省略するなとあれほど……」
何度も同じ煮え湯を飲まされているショボンは最早攻める気にもならない。
(´<_` )「これは一杯食わされたようだな。ハッハハハ 」
弟者は何百年も生きた為かかなり寛容な性格をしているらしい。
爽やかに笑い飛ばしていた。
し
23 :
代九話:2007/09/28(金) 20:41:46.16 ID:e766rkQN0
(´・ω・`)「あなたが敵ではないことがハッキリしたな。では2つ目の質問、良いだろうか?」
(´<_` )「どうぞ、ショボン君。何でも聞いてくれたまえ 」
ショボンは目を開き弟者と正対する。
(´・ω・`)「訪れつつある危機とは何だ?貴方ほどの実力者が我々に助けを求める程の脅威なのか?」
ショボンは刺す様な眼光を弟者に向けた。
気がつくと一瞬たりとも笑顔を絶やさなかった弟者の笑顔が曇っている。
俄かに空気が重く変質した事を肌に感じる。
聞こえるのはクーが紅茶を啜る音とティーカップがソーサーに触れる音だけになった。
(´<_` )「実は少々厄介な連中に目を付けられてしまってね 」
(´・ω・`)「詳しく聞こう 」
弟者は自分の話を聞かせる面々を見る。
ショボンとクーは変わった様子はないが、ブーンとドクオはガチガチに固まっていた。
24 :
第九話:2007/09/28(金) 20:42:25.12 ID:e766rkQN0
(´<_` )「私は君たちに気を使わせるような顔をしていたか。すまない 」
ふと弟者の顔に笑みが戻った。
途端に空気が柔らかくなりブーンとドクオは安堵の息を吐く。
(´<_` )「ちょっとやそっとの障害ならば十分に排除できるのだがね。
今回はそうではないらしい。君たちの力が必要だ。助けて欲しい、ブーン君。ドクオ君 」
そう言うと弟者は頭を垂れた。
冷徹で高飛車、パンが無ければケーキを食べればいいじゃない。
そんなテンプレートな貴族ではないことを弟者は言葉ではなく態度で示した。
(*^ω^)「おっおっお。良いんですお良いんですお。さぁさぁ、頭を上げて 」
(*'A`)「あんたツイてるぜ。このドクオさんに任せてもらえれば一安心だ 」
途端に態度が軟化する2人の庶民。
弟者はにっこりと笑い、しかし真面目な顔で話を進めた。
し
26 :
第九話:2007/09/28(金) 20:43:31.71 ID:e766rkQN0
(´<_` )「『パンゲア』。この名を聞いたことはないか?」
( ・ω・)「知りませんお 」
(・A・)「シラネー 」
全く興味の欠片もない顔で2人はポケーっと言った。
吸血鬼の間では常識でも人間なら知らなくても仕方ないよね。
2人はそんな顔をしている。
(´・ω・`)「知っている 」
川 ゚ -゚)「私もだ。こんな商売してれば当然だがな 」
(;゚ω゚) (;゚A゚)「・・・・・・」
勉強不足でした、ごめんなさい。
2人はそんな顔に変わった。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:44:06.88 ID:WTOFZFCG0
28 :
第九話:2007/09/28(金) 20:44:46.83 ID:e766rkQN0
(´<_` )「流石だ。君の知るところを聞かせて貰えるかな?」
(´・ω・`)「『パンゲア』……ギリシャ語で全ての陸地を意味する 」
(´<_` )「うむ。続けてくれ 」
(´・ω・`)「大陸移動説において世界の大陸が現在の形に至る前の太古の超大陸として定義されている。
しかし我々のような者にとっては忌むべき名として付きまとう 」
弟者はそれを待っていたと言わんばかりに大きく頷いた。
ブーンとドクオはここぞとばかりに耳をかっぽじって備えた。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:44:48.72 ID:69QyVJgFO
sien
30 :
第九話:2007/09/28(金) 20:45:15.63 ID:e766rkQN0
(´・ω・`)「唯一の超大陸の名の通り、世界を統一しようとする狂信者の集団。
それが『パンゲア』だ。
彼らがいつ歴史上に姿を現したのかは諸説ある。千年前とも二千年前とも。
だが一貫して同じ方法で人の世に仇成す。困ったことに歴史を変えるほどにな 」
川 ゚ -゚)「ここからは私が話そう 」
そういって、クーはショボンからバトンを受け取った。
ショボンが肩を竦め、しかしクーに一任する。
川 ゚ -゚)「ヤツらは魔を使う 」
クーの第一声はこうだった。
ブーンは空気が針の様に尖ったのを明確に肌で感じた。
(´<_` )「そうだな。葛葉嬢、君にとっては因縁深き相手だろう 」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:45:33.19 ID:69QyVJgFO
sien
32 :
第九話:2007/09/28(金) 20:46:05.96 ID:e766rkQN0
川 ゚ -゚)「ヤツ等のやり方は気に入らん。
魔の自由を奪い良い様に利用する。
それが叶わぬ時は力だけを搾り取る。
中には力に魅せられ自ら取り入る魔も存在する 」
大して表情は変えないが相貌に異様な力を込めるクー。
ブーンとドクオは少しだけクーの感情の変遷が分かるようになってきた。
川 ゚ -゚)「ヤツ等は魔をただの力としか見ていない。
魔は我ら人間と変わらない。時に喜び、時に泣き、時に怒り、そして共に笑う。
葛葉は魔を使役しても彼らを道具だなどと思わない。
だからこそ対等な友として古くより共存してきた。それが分からんクズどもは―――」
緊迫した声音で、静かに強烈に一点を見据えたままだったクーは不意に言葉を止める。
クーの肩にはショボンの手が置かれていた。
見上げたショボンの顔は笑いはしないが優しい目をしていた。
それを見てクーは視線の力を抜いた。
そして同時に言う。
(´・ω・`)川 ゚ -゚)「「ぶち殺す」」
強い言葉とは裏腹に、その声からは若干怒気が薄れていたように感じた。
し
34 :
第九話:2007/09/28(金) 20:46:43.02 ID:e766rkQN0
(´<_` )「君たちはどうかな?ブーン君、ドクオ君?」
ショボンとクーの決意を聞き、弟者は押し黙っていたブーンとドクオに問いかける。
2人は1度顔を見合わせて目線で何か交わすと、上気した顔でまくし立てた。
('A`)「悪いヤツ等なんだろ?当然ぶち殺ーす!!」
( ^ω^)「ふっふっふ。主人公として華麗に殲滅するお!!」
(´<_` )「フッ、心強いな。では本だ――『Qooooooooooooo!!!!』
突如として部屋の扉が開け放たれ、弟者のセリフを覆い被す絶叫が耳を劈いた。
鼓膜を掻き毟られるほどに大音量の声の暴力にその場の人間全員が耳を塞ぐ。
一瞬戸惑いはしたものの、この声の正体を知る弟者の顔には直ぐに笑みが帰ってきた。
脳を揺さぶられた衝撃からようやく立ち直った人間達は入り口を見る。
(*´_ゝ`)「Qoo!」
そこには頬を赤らめた弟者が立っていた。
・ ・ ・ ・ ・
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:46:46.33 ID:69QyVJgFO
sien
し
37 :
第九話:2007/09/28(金) 20:47:34.75 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
川 ゚ -゚)「だが断る 」
(;´_ゝ`)「そんなバカなっ!!」
(´<_` )「おめでとう兄者。これで通算30024回目の失恋だ。
なお葛葉嬢にはジャスト1000回目の玉砕だったな。
これは個人に関する記録としては揺ぎ無い1位だ 」
大声を出しながら突如として登場した弟者と同じ顔をした男は、クーの顔を見るなり運命論について語り始めた。
それを最後まで語り終える前に言葉の刃で一刀両断され、男は放心した。
3人の退魔師も違う理由で同じように放心していた。
(;'A`)「これは弟者の影武者か何かか?」
(;^ω^)「弟者さん、影武者はもっとキチンと育てないと……」
(´<_` )「これは私の双子の兄だ。だからどちらかと言えば弟の私の方が影武者かな 」
弟者はにこやかに笑いながらそう言った。
し
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:48:43.69 ID:69QyVJgFO
ラスボスフラグか?
40 :
第九話:2007/09/28(金) 20:50:05.53 ID:e766rkQN0
(´<_` )「兄者。こちら内藤退魔師事務所の御三方だ。今回の件に関して助けを依頼した。自己紹介を 」
( ´_ゝ`)「バレンタイン。名乗らせていただこう。
アニジャ・アラーキー・バレンタイン。
この町の領主をしている。ん?今は町長だったかな?」
(´<_` )「両方だ兄者 」
( ´_ゝ`)「そうか、両方だったな。ちなみにバレンタインと呼ばれても返事をしない事が多いから兄者と呼んでくれ 」
( ^ω^)「メルシーポークー。自己紹介恐縮の至り。
僕は内藤退魔師事務所・所長、内藤ホライゾンですお。
ブーンと呼んで下さいですお 」
(;A;)「ドクオ。僕の名前は……僕の名前はドクオです 」
(´・ω・`)「お前らその辺にしとけよ。僕の名前は(まー、別に覚えてもらう必要はないけど)ショボン 」
(;^ω^)。o ○(頼りになる男のフラグが人知れず立ったような気がするお)
41 :
第九話:2007/09/28(金) 20:51:21.69 ID:e766rkQN0
自己紹介の後、6人は他愛のない話をワイワイと展開していた。
聡明な弟者に、どこか抜けている兄者。
どちらも長い年月を生きてきた凄みが感じられるが、それを必要以上に表に出そうとしない。
( ´_ゝ`)「KWAHHH!面白いなお前ら!馴染む!実に良く馴染むぞ!!」
(´・ω・`)「面白くなってきた…だから……1分……
1分だ……1分だけお前にこのショボンと話す時間をやろう 」
初対面に関わらず、退魔師3人と吸血鬼達はすっかり打ち解けていた。
しかしそんな空気をクーの一言が凍り付かせる。
川 ゚ -゚)「流石は私のフィアンセだな 」
その時世界は止まった。
この時ばかりは弟者も目を見開いてクーを見た。
それはブーンやドクオも同じ。
何となく兄者に聞かせてはいけない様な気がして自重していた。
それを当事者があっさり言ってしまった。
――そして時は動き出す。
し
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:52:04.08 ID:e766rkQN0
(#´_ゝ`)「UREYYYYY!!どういうことだSYOVON!?」
(´・ω・`)「何のことだ?分からないな兄者……」
(#´_ゝ`)「答えろよ……『質問』はすでに『拷問』に変わってるんだぜ 」
川 ゚ -゚)「私はショボンに惚れている。ただそれだけの事だ 」
何でもないかのようにクーが再び時を止めた。
クーの発言はまさに世界を支配する発言だった。
息巻いていた兄者はそれを期に押し黙る。
(´<_` )「どうした、兄者?随分大人しいよう――はっ!?」
( ;_ゝ;)「3歳のQooに振られてから20数年。積み上げてきた数は1000。
だが!だが次こそはという気持ちだけが心の支えだった!」
咽び泣く兄者を弟者が慰める。
兄者は弟者の胸に顔をこすりつけ嗚咽を漏らしていた。
弟者はブーン達4人に目で合図し、『大丈夫、いつものことだから』と声は出さずに口を動かした。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:53:55.93 ID:69QyVJgFO
ザワールド!
45 :
第九話:2007/09/28(金) 20:54:07.68 ID:e766rkQN0
('A`)「待てよ?今3歳って言ってなかったか?」
川 ゚ -゚)「いかにも私が父に連れられて初めてここに来たのは3歳の時だ。
兄者は私を見るなり妻に娶ると言い出した 」
( ^ω^)「コイツはくせぇーーーー!ロリコンの臭いがプンプンするぜぇーーー!!」
( ´_ゝ`)「待て、誤解だ。私は既に600年近く生きている。
そんな私からしてみれば3歳も20歳も変わらない 」
泣き止んだ兄者がすぐさま弁解し始めた。
(´<_` )「残念ながら葛葉嬢への第一声は『ょぅι゛ょFoooooo!!』だったぞ、兄者。
ブーン君の言う事はあながち間違ってはいない 」
すかさず入れられる弟者のフォローに親指をビッと立てて見せる兄者。
ニヤリと笑い合っているところを見ると、絶妙のパスに思い通りのツッコミが返ってきたようだ。
とすれば、涙を流したのも単なるパフォーマンスの一環に過ぎなかったのかもしれない。
し
47 :
第九話:2007/09/28(金) 20:55:22.49 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「全くめでたいぜ。2人とも幸せになってくれよ!
オレはいつだって応援するし、困ったときはいつでもどんな所でも駆けつけるつもりだぜ!
もっともかえって足手まといかな 」
川 ゚ -゚)「足手まといだ 」
( ;_ゝ;)「……兄者はクールに去るぜ 」
(´<_` )「待て兄者。まだ本題を話していなかった 」
パフォーマンスでもなかったのかもしれない。
再び大泣きする兄者は胸を借している弟者になだめられながらしゃくり上げていた。
ブーンとドクオは身のやり場に戸惑いオロオロしていた。
その為に
(´・ω・`)「一応言っておくがオレは了承してないんだからな 」
ショボンの独り言は誰の耳のも届かなかった。
・ ・ ・ ・ ・
48 :
第九話:2007/09/28(金) 20:56:50.95 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
(´<_` )「では本題に入ろう。これを見てくれ 」
泣き止んだ兄者をソファに座らせ弟者は野球ボール程度の大きさの何かを取り出した。
それは幾重にも貼られた札で厳重に封印され、その上に封印鎖を何重にも巻きつけてあった。
度を超した封印。
しかし中身の濃い存在感はそれを押しのけて余りあるほどに強烈だった。
弟者は丁寧に封印を解き始めた。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
(´<_` )「兄者、何を言っている?」
( ´_ゝ`)「ゴゴゴ……ん?あぁ、気にしないでくれ。雰囲気作りだ 」
(´<_` )「そうか。では気にせず続けるとしよう 」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:56:53.44 ID:69QyVJgFO
予告見て兄者は敵かと思ってました
50 :
第九話:2007/09/28(金) 20:58:06.23 ID:e766rkQN0
弟者は次々と封印を剥ぎ取る。
テーブルの上にはその残骸が山のように積んである。
野球ボールほどの大きさだったそれは、既に半分の大きさになっていた。
そしてようやく最後の1枚の札が取り去られる。
( ^ω^)「この赤い宝石は?」
封印されていた物は小さな赤い宝石だった。
とは言え宝石としては馬鹿げた大きさだ。
同じサイズのダイヤモンドがあるとしたら間違いなく怪盗の類に狙われるようなビッグジュエル。
透き通った濃い赤のそれは、美しさのあまり香りさえするのではないかと錯覚させる。
(´<_` )「この赤石はエイジャといって自然界にも滅多にない美しい宝石。
結晶内で光は何億回も反射を繰り返し増幅されて1点より放射する 」
そう言うと弟者は室内の照明に宝石をかざした。
その瞬間宝石から一筋の光線が放たれ壁に穴を穿った。
穴の周囲は高熱で溶かされたように僅かに溶解している。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:59:05.40 ID:69QyVJgFO
テラエイジャw
し
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 20:59:13.95 ID:e766rkQN0
(´<_` )「レーザーだ。世に出れば確実に軍事利用される。
これほど高威力のレーザーは現時点において尚、完全にオーバーテクノロジー。
それゆえ我々兄弟は長年これを隠匿し続けてきた 」
弟者は赤石に光が当たらないように布を被せた。
それを機に壁の穴から弟者に皆の視線が戻る。
(´<_` )「だがそんな事は赤石の力の片鱗に過ぎない 」
赤石の信じがたい力を目の前で展開され、ショボンやクーすらも例外ではなく目を見開いていた。
しかし弟者はそれより大いなる力が宿っていると言う。
室内に固い空気が流れる。
(´<_` )「パンゲアが赤石を求める真の理由……」
弟者の言葉は凝固していく空気を溶解させることなく淡々と続く。
これから続く言葉は自体を深刻にするだろう。
それは全員が感じていたが甘んじて受け入れる決心は既に付いていた。
し
55 :
第九話:2007/09/28(金) 20:59:48.46 ID:e766rkQN0
(´<_` )「赤石の真の力――それはあの世との道の開通だ 」
(´・ω・`)「『黄泉路』か……」
ただ耳を傾けていただけだったショボンが口を開く。
うむ、と首を縦に振り弟者は続けた。
(´<_` )「その先にあるのはのは地獄・魔界・冥府魔道……宗教によって異なるがそう呼ばれている。
もし繋がってしまえば元々こちら側にいた魔はあちらの瘴気で凶暴化する可能性がある。
召喚の儀式など煩わしい手順を踏む必要が無くなって神話の連中も姿を見せる可能性も否めない 」
(;^ω^)「死ぬwそれ間違いなく死ぬww」
(´<_` )「もっとも、そんな者達は大抵こっちの事など興味は無いだろうから心配は要らない 」
('A`)「興味があるヤツ等もいるってんだろ?そんなのがパスポートも無しで大量に押しかけてきたら問題だわな 」
(´<_` )「そうだ。そして魔がこちらに興味を持つ場合は大抵相場が決まっている 」
し
57 :
第九話:2007/09/28(金) 21:00:55.76 ID:e766rkQN0
弟者の口から言葉以外の音が漏れる。
それは歯軋りだった。
あくまで紳士としての態度を貫き通してきた弟者の顔が怒りに震えていた。
(´<_`#)「ヤツ等の――興味とは――」
( ´_ゝ`)「食いモンだよ。人間の事だ 」
黙って弟者に進行を任せっきりだった兄者が口を出した。
兄者が喋ると言う事を忘れそうになるほど黙っていたので一同は面食らった。
それを無視して兄者は話の主導権を握る。
( ´_ゝ`)「弟者はこの件に触れると熱くなるからな。落ち着けよ。らしくないぞ 」
ブーンは『え?これ兄者だよね』とドクオを見た。
ドクオは『黙って聞いてようぜ』と目で返す。
川 ゚ -゚)「人に善悪があるように魔にも善悪がある。悪サイドの魔の到来を危惧しているのだな 」
( ´_ゝ`)「そういう事。真の意味でこの世は地獄と化す。このM王町も例外なく 」
し
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:01:56.50 ID:69QyVJgFO
sien
60 :
第九話:2007/09/28(金) 21:02:02.60 ID:e766rkQN0
(´<_` )「私はM王の民を愛している。危害を加えることは許さない 」
落ち着きを取り戻した弟者が言った。
怒りに向けていた力のベクトルを別の方向にシフトチェンジしたようだ。
いつもの弟に戻ったことを確認した兄は自身もいつもの道化へと返る。
( ´_ゝ`)「全く、しっかりしろよ。お前が周りを見失うとオレが好き勝手できない。
このアニジャ・アラーキー・バレンタインには夢があるっ!
M王町をオレの漫画で豊かにすると言う夢がっ!」
( ^ω^)「あれ?今なんか言ったお?」
('A`)「漫画……?」
ブーンとドクオは兄者の言葉の一箇所が妙に気になった。
そういえばショボンがバーボンハウスで言っていた。
M王町は『ある漫画の舞台となり近年急速に観光地として有名になった町だ』と。
し
62 :
第九話:2007/09/28(金) 21:03:04.67 ID:e766rkQN0
川 ゚ -゚)「そうか、言ってなかったな。兄者は『徐々に奇妙な冒険』の作者だ。
ペンネームは兄弟のミドルネームから取っているらしいぞ。
町中至る所にオブジェがあっただろう?アレだ 」
そしてショボンはこうも言っていた。
『漫画家自身も在住しているが、メディアには一切の露出が無いためその顔は誰も知らない』と。
( ・ω・)「へぇ……そりゃ凄いですお。でも僕は漫画とか読まないから知らんね 」
('A`)「オレもそっち方面には疎くて。そんなに凄いの?」
大して興味をそそられないのか、ブーンとドクオは薄っぺらい反応を見せる。
しかしこの2人とは圧倒的に温度差の違う人間がそこにいた。
(*´・ω・)「震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!」
そう言って分厚い書物を兄者に差し出すショボン。
表紙には『徐々に午ー後ー』と書かれている。
し
64 :
第九話:2007/09/28(金) 21:04:21.56 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「おや?SYOVON、それは?」
さらに『徐々に奇妙な冒険』最新巻とペンと取り出し兄者に渡す。
その表情は黄金のように輝いている。
( ´_ゝ`)「良ぉお〜〜〜〜〜〜〜しッ!
よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし
よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし
サインか!?単行本にも欲しいのか!?
2個…いやしんぼめ!!」
サラサラと手馴れた感じで2冊の本にサインを書きショボンに渡す兄者。
( ´_ゝ`)「SYOVON!貴様この漫画読み込んでいるなっ!」
(*´・ω・)「答える必要はない!」
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:05:31.61 ID:69QyVJgFO
また始まったw
66 :
第九話:2007/09/28(金) 21:05:48.65 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「ふっふっふ、しかしオレは読者に共通する見分け方を知っているぞ!」
そう言って兄者は漫画の原稿を取り出した。
まだペン入れもされていない下書きのような原稿だ。
( ´_ゝ`)「ヘブンズドアーッ!第7部のネームだよぉ!鼻の頭に血管が浮き出ているぞSYOVOooooo!」
(*´・ω・)「シブイねェ…全くおたくシブイぜ 」
川 ゚ -゚)「よし、お前らその辺にしておけ。これはあくまでもベースは『孔雀王』だからな。
それ以上やるとどっちが原作か分からなくなる 」
( ^ω^)('A`)「??」
ブーンとドクオの知らない単語がクーの口から発せられショボンは『しまった』と言う顔をしてばつが悪そうに押し黙った。
気になったブーンが後でショボンに聞くと『神の世界の言葉だから知らなくていい』と言われた。
67 :
第九話:2007/09/28(金) 21:06:51.70 ID:e766rkQN0
しかし兄者は止まらない。
弟者の首根っこを捕まえて原稿片手に第7部の説明をしている。
( ´_ゝ`)「第7部はなぁ…最初は第7部という記載はしない!『アレ』も最初は『呪われたやつ』とか言って誤魔化す!」
(´<_`;)「兄者……そろそろ自重した方が……」
( ´_ゝ`)「ククククク……ハハハハハハッ!傑作だ!なぁ弟者!」
川 ゚ -゚)「黙れ 」
トランス状態の兄者の口から、クーの一言と同時に肺から強制的に酸素が押し出される音が聞こえた。
外套から覗いたクーの右拳が深々と兄者の水月に突き刺さっている。
兄者はくの字に体を折り曲げ全身が弛緩した。
川 ゚ -゚)「仕方がなかった。後悔はしてない 」
ドサッとクーの腕から床に崩れ落ちる兄者。
その目は白目を向きつつも泡を吹く口は恍惚に歪んでいた。
・ ・ ・ ・ ・
68 :
第九話:2007/09/28(金) 21:08:27.58 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
ブーン達がM王町を訪れて数日。
彼らとクーは吸血鬼の屋敷に滞在していた。
赤石を狙うパンゲアの襲撃に備えてだ。
とは言えそうそう相手が都合よく攻め込んで来るなどありえない。
ブーンとドクオは2人でM王町の観光を楽しんでいたし、ショボンは兄者の仕事部屋に篭もってアシスタントのような事をしている。
クーはショボンのストーキングやたまにブーン達と町に下りるなど、各々全く好き勝手に時間を潰していた。
この日はイタリアンレストラン『虎・猿・DAY』で昼食を取ったブーンとドクオ。
財布の中身が心もとなくなった2人はショボンに小遣いを貰うために一度屋敷に帰還した。
昼間のこの屋敷はファンタジーやメルヘンのように美しい。
青々とした木々の木漏れ日の中、色彩豊かな蝶が飛ぶ。
蝶は瑞々しく咲き乱れる花々の間を舞い、好みの密を溢れんほどに持った花弁に止まる。
良く手入れの行き届いた花々の中でも一際目を引くのが真紅の薔薇園だった。
濃いグリーンの葉に、深いビロードのような赤が陽光に映える。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:09:13.66 ID:69QyVJgFO
sien
70 :
第九話:2007/09/28(金) 21:09:18.71 ID:e766rkQN0
そこにはにこやかに手入れを行う弟者の姿があった。
貴族のような風貌の弟者が薔薇にハサミを入れる様子は実に絵になる。
弟者はブーンとドクオに気付くと木漏れ日に浮かぶ笑顔を一層際立たせて2人を手招きした。
ブーン達は絵画から抜け出したかのようなその美しい場面に溜息をついた。
そして
(;゚ω゚)(;゚A゚)「ッアー――――――――っ!!」
叫んだ。
(;゚ω゚)「オトッオトオトオトオト弟者さんっ!!」
(;゚A゚)「いいいいいいいいいっまままままままままままっ昼昼昼昼!!」
(´<_`;)「落ち着け君達。急にどうしたんだ?」
・ ・ ・ ・ ・
71 :
第九話:2007/09/28(金) 21:12:05.92 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
夜の吸血鬼屋敷。
赤い満月はその身を膨張させ、冷たい光を庭内に注いでいる。
食堂にはブーン、ドクオ、ショボン、クー、そして吸血鬼兄弟が一同に会し料理の前に座っていた。
( ´_ゝ`)「お前ら弟者が日に当たって灰になるとでも思っていたのか?」
( ^ω^)「だって吸血鬼の弱点が太陽って事はデフォですお 」
( ´_ゝ`)「創作の話だろ?オレ達だってこの世に生を受けた生き物だ。太陽の光を浴びて灰になる生物など見たことあるか?」
妙に説得力のある答えが兄者から返ってきた。
確かに日の光で灰になるような生き物が存在するはずが無い。
それならばとドクオもこれに乗じる。
('A`)「聖水や十字架はどうなんだよ?」
(´<_` )「迷信だよ。兄者などはかっこいいからとロザリオを常備しているよ 」
そう言って兄者の方を見る弟者。
ドクオがそっちを見るとこれ見よがしに胸をはだけた兄者が首に下げたロザリオを見せ付けていた。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:12:11.22 ID:69QyVJgFO
sien
73 :
第九話:2007/09/28(金) 21:12:25.62 ID:e766rkQN0
(;^ω^)「ニンニクは?」
(´・ω・`)「うん。このペペロンチーノは良くガーリックが効いている 」
(;'A`)「心臓に杭は?」
川 ゚ -゚)「それはお前だって死ぬだろう。常識的に考えて 」
どうやら吸血鬼といっても長生きする事を除けば想像以上に普通の生き物らしい。
ブーンとドクオは築き上げてきた吸血鬼に対する認識が、自身の中でガラガラと音を立てて崩れるのが分かった。
( ^ω^)「そう言えば兄者さんも弟者さんも血を吸ってるとこ見てないような気がしますお
まさかこれも創作ですかお?」
( ´_ゝ`)「いや、吸うよ 」
この言葉に椅子から転げ落ちるブーン。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:12:44.09 ID:69QyVJgFO
sien
75 :
第九話:2007/09/28(金) 21:12:51.47 ID:e766rkQN0
ドクオは顔を引きつらせて少しずつ距離を取り始める。
その両肩を背後から唐突に掴まれてドクオは身を飛び上がらせた。
(´<_` )「ニヤリ 」
(;'A`)「ゲッ!」
(´<_` )「すまないすまない。冗談だよ 」
普段の柔らかい笑顔に戻った弟者はドクオの肩から手を離しながら言った。
(´<_` )「私達は何でもいいんだ。このような普通の料理でも血液でも。何でもエネルギーとして摂取できる 」
( ´_ゝ`)「父より上は血も吸ってるがオレ達は口に合わなくてな。
勿論父達も人間と同意の上でしか吸血しなかった。
実家は住民達に愛される領主様でな。人間の方から吸ってくれと懇願されるくらいだ 」
(´<_` )「吸うと言ってもほんのちょっぴりだ。それに血を吸われたら吸血鬼になると言うのも無論創作だね 」
76 :
第九話:2007/09/28(金) 21:13:20.96 ID:e766rkQN0
( ^ω^)「だったら吸血鬼だなんて名乗らなきゃいいと思うお……」
( ´_ゝ`)「他に言い方がねぇんだもん。仕方なくね?」
(´<_` )「確かに我々を定義する言葉としては吸血鬼が最も近いね 」
('A`)=3「なんだ。オレ達とそんなに変わらないんだな 」
アナルにツララを突っ込まれたような顔をしていたドクオはようやく安堵の表情を浮かべた。
確かに自分の血を吸おうと思えばこれまでに何度もチャンスはあったはずだ。
寝込みを襲えば一瞬だろう。
未だに自分がカラカラのミイラになっていないと言う事実はつまる所そういうことだった。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:13:37.99 ID:69QyVJgFO
sien
78 :
第九話:2007/09/28(金) 21:13:46.79 ID:e766rkQN0
その時、食堂内に無機質な携帯電話のコール音が鳴った。
弟者の携帯だった。
弟者は通話ボタンを押すと瞬時に笑顔を押しやり、険しい表情を顔に浮かべた。
相手に礼と労いの言葉を告げて弟者は電話を置く。
そして食堂の全員に言った。
(´<_` )「町外れに住む愛する民からの連絡だ。パンゲアが来た 」
( ´_ゝ`)「ここに到達するまで約1時間といったところか。使用人たちは避難を 」
兄者は傍らに佇む執事にそう言った。
執事は一瞬躊躇するような仕草を見せたが『お気を付けて』と退室した。
しばらくすると大勢の使用人が食堂に押しかけてきた。
ある者は涙し、ある者は自分も残ると言い兄弟に縋りつく。
兄弟はその悉くを優しく諫め、避難させる事を選択させた。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:14:06.74 ID:69QyVJgFO
sien
80 :
第九話:2007/09/28(金) 21:14:14.68 ID:e766rkQN0
(´・ω・`)「敵の情報は?」
使用人が引き払い静かになった室内でショボンが弟者に問いかける。
その顔には先程ブーンとドクオをからかっていた表情は微塵も残ってはいない。
(´<_` )「ライカンスロープ。数は約20。幸いにも一切他の物には目をくれずここに向かっているらしい 」
(´・ω・`)「これはこれは。銀の弾丸を用意しておいて正解だったな 」
ショボンはほくそ笑んだ。
狼男と聞いてドクオも笑う。
こちらも吸血鬼に劣らず知名度の高い魔物だ。
クーは魔を封じた銀の筒のストックを確認する。
1本だけ空の銀筒を見ながら密かに笑った。
そしてブーンは窓から外を凝視している。
待ち合わせに遅れた恋人を今か今かと待つかのように。
その姿は訪れつつある戦いに高揚していた。
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:14:37.23 ID:69QyVJgFO
sien
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:14:39.49 ID:wwAO5d4GO
待ってたぞ!! 作者
83 :
第九話:2007/09/28(金) 21:14:41.94 ID:e766rkQN0
(´<_` )「諸君、直にここへ強敵が現れる。心の準備はいいかな?」
強敵、と口には出すものの弟者の表情に陰りは一切無い。
笑顔こそ無いものの普段の弟者の聡明さがそこにあった。
( ´_ゝ`)「これも領主様の務めだからな 」
(´・ω・`)「オレ達は仕事で来たんでね。しっかり働かないと 」
川 ゚ -゚)「ショボン。2回目の共同作業だな 」
('A`)「まぁ、死なないように頑張りますか 」
各々好きなように心の準備が完了している事を告げる。
そして少し離れた窓の側からブーンが言った。
( ^ω^)「最近はドクオやショボンやクーにいい所持って行かれっぱなしだったお。今夜はきっと僕のターン!」
全員の戦闘体制が整った事を受け、弟者は力強く頷いた。
そしてテーブルに手を着いて全員に聞こえるように言った。
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:15:09.02 ID:69QyVJgFO
sien
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:15:18.76 ID:e766rkQN0
(´<_` )「よし、では作戦を話そう 」
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです
―――第九話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――
〜その2、赤石〜終
86 :
退魔師:2007/09/28(金) 21:17:00.22 ID:e766rkQN0
スムーズに投下できました
支援ありがとうございます
ちょっと花田少年誌の録画予約して戻ってきますw
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:18:40.70 ID:69QyVJgFO
コラw
wktk
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:20:49.32 ID:69QyVJgFO
現行ではかなり上位の方だと思うんだけどな
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:21:57.54 ID:mUrlUnNr0
これは正義ヒーロー超えたな
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:24:37.29 ID:69QyVJgFO
マダー
92 :
退魔師:2007/09/28(金) 21:25:30.02 ID:e766rkQN0
ただいま
花田少年始まるってスレ立ててくれた人には感謝
では第十話投下します
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです
kt!
94 :
退魔師:2007/09/28(金) 21:26:24.04 ID:e766rkQN0
赤い月が照らす吸血鬼屋敷。
幻想的にさえ見えたその光は今は鮮血のように禍々しい。
美しく整備された庭園には獣の臭いと唸り声が充満していた。
満月に高揚したライカンスロープの群れは、抑え難い破壊衝動を本能のままに発揮していた。
木々は薙ぎ倒され、大理石の彫像は粉砕される。
無残に踏みにじられる花々は最早蝶を呼ぶことはないだろう。
屋敷の者の寵愛を一身に受けてきた全ての物は、その一方的な暴力に抗議の声を上げる事すらできずただただ破壊されていく。
狂気の光を目に宿したライカンスロープ達は、破壊の快感に身を震わせ遠吠えを上げた。
だがその快感も次第に薄れていく。
何の抵抗もしない物を破壊し続けることに魅力を感じなくなっているのだ。
彼らが今欲するのは熱い血を体内に流す獲物。
引き裂いたときに断末魔の叫びを上げる獲物だった。
内容もいいけど一回の投下が長めなのもいい
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:26:59.44 ID:69QyVJgFO
ktkr!
97 :
退魔師:2007/09/28(金) 21:27:27.89 ID:e766rkQN0
通った後には全ての物が原形を留めない。
ライカンスロープの行進は遂に屋敷入り口に及んだ。
扉の中から鼻を突く獲物の臭いで獣人達の口から間断なく唾液が垂れる。
ミ,,゚(▼)「臭う…臭うぞ!獲物の臭いだ!血の臭いだ!」
斥候の一言で他の者達は歓声を上げる。
その爪で皮膚を引き裂きたい。
その牙で肉を千切る感触を味わいたい。
その舌で獲物の甘さを堪能したい。
1秒でも早く!1瞬でも早く!
目の前に迫る快楽を待ちきれず、獲物と自分達を隔てる2枚の扉を叩き壊す。
身を仰け反らせ快楽の波に痙攣しながら獣人たちは遠吠えを上げ、優美な玄関ホールに進入する。
最初の獲物がそこにいた。
し
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:28:56.77 ID:Hg5FWAZKO
し
100 :
第十話:2007/09/28(金) 21:29:03.92 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「何とも醜悪だな。オレが知るライカンスロープはもう少し上品だった気がするが……どう思う、弟者?」
(´<_` )「同感だ兄者。彼らは誇り高い戦士だった。大方これはパンゲアの造魔といったところか。
仮初めの力に酔っているのだろう。哀れな者達だ 」
ホールの中央に静かに立つ2人の吸血鬼は、やはり静かに言った。
いつもはニヤニヤと変態的で、しかしどこか心地良さを感じさせる笑顔を持つ兄。
普段は朗らかに優しく、見るもの全てを包み込む笑顔を持つ弟。
しかし今の2人の顔にその笑顔はない。
有るのは分不相応の力を得て正気を失った者達に対する哀れみ。
そして彼らの魂を死を以って救済しようという冷たい覚悟。
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:29:21.62 ID:6iCM+pBmO
ん
し
103 :
第十話:2007/09/28(金) 21:29:42.68 ID:e766rkQN0
ミ,,゚(▼)「WWWWWWOOOOOOOOO
ミ,,メ(▽) OOOOOOOoooooooo
ミ,,゚(▽) oooooー――――――――!!」
人狼の群れが一斉に雄叫びを上げる。
雄叫びは空気を伝いガラスを激しく振動させる。
空気の振動は風を生み出し、殺気を運ぶその風は2人の吸血鬼に届く。
それを受けた兄弟は唇を吊り上げ牙を覗かせた。
( ´_ゝ`)「あー、怖い怖い。あいつ等なんか大袈裟に叫んでるぞ、弟者」
(´<_` )「我ら2人を同時に相手にするには少々数が足りないようだが?」
20の獣人がたった2人の相手に一斉に飛び掛る。
飢えと渇きと欲望を満たす為だけに。
獲物の数に対して圧倒的に狩人が過多。
全員がより多くの自分の取り分を得るため、
仲間同士でさえも食い合う狂宴が、今…
…始まる。
くるおしいほどにwktk
105 :
第十話:2007/09/28(金) 21:30:40.75 ID:e766rkQN0
(#´_ゝ`)(´<_`#)「「WWWWWRRRRRYYYYYYYYYYY!!」」
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです
―――第十話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――
〜その3、天敵〜
し
107 :
第十話:2007/09/28(金) 21:31:37.45 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
(´<_` )「よし、では作戦を話そう 」
1時間前、弟者は屋敷の食堂にて自身の中で出した結論を話した。
領主としての責任感がそうさせるのか、それとも生来そういう男だったのか。
人の人生の10倍の長さを連れ立ってきた実の兄は、そんな弟が出す提案など初めから分かっていたようだ。
それを聞いても笑うだけだった。
しかし4人の助っ人は動揺を隠せなかった。
4人は4人ともこの戦い、守るべきは赤石と吸血鬼兄弟だと思っていた。
(;^ω^)「弟者さん!それじゃ僕達が何のために来たのか分かりませんお!」
ブーンが声を荒げる。
弟者の提案はこうだった。
――自分達2人が時間を稼ぐから赤石を持って逃げろ――
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:32:11.64 ID:69QyVJgFO
wryがネタじゃなくカッコイイと思ったのは初めてw
109 :
第十話:2007/09/28(金) 21:32:26.54 ID:e766rkQN0
('A`)「なぁ、そりゃあんたらにしてみればオレなんかひよっこかも知れねぇ……
でも戦う力はある。そんな事は分かってるんだろ……?」
(´<_` )「勿論だよ、ドクオ君。君達は強い。長年生きてきたが人の身でそこまで昇華した者はそうそういないよ 」
(-A-)「…だったら一緒に戦わせてくれよ……
オレはあんたらが…気に入ってるんだ……」
消え入りそうな声でドクオは言った。
普段のドスの利いた声ではなく、懇願するような声で。
弟者はドクオの言葉に心底嬉しそうに微笑んだ。
しかし首を縦に振ることはしない。
(´・ω・`)「……考えを聞かせてもらおうか?」
下を向いて押し黙っていたショボンが視線を弟者に移した。
ショボンの目にも若干悲しげな光が宿っている。
し
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:33:27.10 ID:69QyVJgFO
sien
112 :
第十話:2007/09/28(金) 21:33:31.36 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「戦争ってモンはな、必ずしも大将がやられたら負けって事は無い。
今回オレ達はパンゲアから赤石を守り通す事が出来れば勝ちだ 」
(´<_` )「君達なら分かるはずだ。最も重要な事が何なのかを。
そして君達ならその選択が出来るということを私は知っている 」
僅か数日しか共に過ごしていない相手に既に全幅の信頼を寄せている兄弟。
過ごした時間は短くとも兄弟にはこれが間違いではないという確信がある。
川 ゚ -゚)「ふっ、そんな顔も出来るのか兄者?もっと早く私に見せておくべきだったな 」
( ´_ゝ`)「おい、聞いたか弟者?遂にフラグが立ったぞ 」
(´<_` )「知っているか兄者?フラグには時間経過によって折れるものもある。とっくの昔に期限切れだよ 」
少しだけ軽くなった空気。
それはほんの僅かだったがその場の全員にとって何よりも有難かった。
し
114 :
第十話:2007/09/28(金) 21:34:26.84 ID:e766rkQN0
(´<_` )「私達はね、紳士なんだ。生来のね 」
弟者は笑う。
(´<_` )「紳士として自分の問題を1番に他人に任せてしまっては恥だからね 」
見るもの全てを包み込む優しい笑顔で。
( ´_ゝ`)「オレ達はな、領主様なんだよ。何百年もな 」
兄者が笑う。
( ´_ゝ`)「自ら進んで矢面に立つ。そうでなければ民衆は付いては来んよ 」
その場に心地良い風を運ぶ健やかな笑顔で。
彼らが彼らである限り決して他人を危険の最前線に送る事はない。
迫り来る脅威に最初に立ちはだかるべきは自分達だ。
2人の顔にはそう書いていた。
し
116 :
第十話:2007/09/28(金) 21:35:11.54 ID:e766rkQN0
(´・ω・`)「……承知した。この赤石、我々が命をかけて守ろう 」
兄者達の真意を汲み取り、ショボンもまたそれに同調した。
その目に悲しみの光は最早無い。
有るのは静かに燃える使命感のみだ。
(´<_` )「この屋敷の地下には秘密の地下道がある。君達はそこを言ってくれ。
途中2又に分かれている箇所が1つだけある。そこは右を行け。外に繋がっている。
左は行き止まりだ。必ず右に行ってくれ 」
弟者は簡潔に説明を終えると兄者と共に食堂を出る。
その背中に向かってドクオが声を上げた。
はっきりと。
強く。
('A`)「明日一緒に朝飯を食うんだからな!」
2人の吸血鬼は足を止め同時に振り向いた。
いつもと変わらない、それぞれの笑顔を顔に浮かべて。
・ ・ ・ ・ ・
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:36:05.89 ID:69QyVJgFO
流石兄弟にビンビン志望フラグがw
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:36:12.66 ID:6iCM+pBmO
なんだこの流石兄弟
カッコ良いいぞ支援
119 :
第十話:2007/09/28(金) 21:36:26.34 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
吸血鬼屋敷玄関ホール。
人狼の1匹は僅かに残る理性でこう考えていた。
ミ,,`(▼)(……ありえない……)
この空間に無傷の物は既に存在しない。
ここは人狼達の破壊衝動によって凄惨たる状況だった。
壁には穴が開き、装飾品は粉々にされ、その残骸は破られた絨毯の上に転がる。
仲間達が傷付け合いながら我先にとその顎を食い込ませようとするのは2人の吸血鬼。
人狼となり馬鹿げたレベルにまで昇華した動体視力は確かに仲間の大顎が2人を挟むのを確認した。
しかし吹き出す血と裂ける肉は確認できない。
噛み砕かれたはずの2人は、ガッチリと噛み合った口にはもういないのだ。
信じ難いほどに早いのか。
それとも幻術か何かの類か。
とにかく2人の獲物は仲間が攻撃する度にその場から霧のように消え失せる。
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:36:33.44 ID:IF/aoYep0
支援
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:37:06.80 ID:e766rkQN0
そして途方もない場所から現れ、たまたまそこにいた不運な仲間が倒される。
ある者は首を折られ、ある者は体を貫かれ、ある者は屋外に吹き飛ばされた。
人狼は本能的にその場を逃げ出した。
拙い脳が悟ったのだ。
自分は捕食者ではない。
被捕食者であると。
しかし外には半数以上の仲間が室内に入ろうと押し寄せていた。
まだこの中には食い物があると思い込んでいる仲間達は目の色を変え次から次へと進入しようとしてくる。
その流れに再び室内に押し戻され絶望する。
そして聞こえた。
(´<_` )「ど こ へ 行 く ?」
それがこの世で聞いた最後の声となった。
122 :
第十話:2007/09/28(金) 21:38:01.30 ID:e766rkQN0
依然としてホールの入り口からは不快な奇声を上げながら人狼達が侵入してくる。
しかしここにきて急に敵の襲撃が止む。
床に伏せるライカンスロープの死体は既に10に近かった。
嫌でも目に入るその姿を見た人狼達が慎重になり距離を置き始めたからだった。
( ´_ゝ`)「見ろよ弟者。どうやらヤツ等にも知恵があるらしいぜ?」
(´<_` )「そのようだな兄者。単純に攻めるだけでは無駄な事を学習したようだ 」
( ´_ゝ`)「しかし打開策は永遠に出んのだろうな弟者。こんな頭の悪そうな顔してるような連中じゃw」
(´<_` )「だがこのまま睨み合っているのも考え物だな兄者。彼らに期待は出来そうも無い。こちらで考えるとしようか 」
双方動きの無いまま睨み合いだけが続く。
外の人狼達も全て入ってきているようだ。
いきり立って入ってきた者達も無残な姿で転がる半数の仲間を見て、打つ手が無く唸るだけの立っている仲間と同じ状態になる。
完全にこう着状態となった。
やべえw退魔が化けたw
124 :
第十話:2007/09/28(金) 21:39:08.89 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「もしかしてこれで全部じゃね?」
(´<_` )「と、いうことはこいつらを片付ければ終幕か。どうする?早い方と遅い方があるが?」
( ´_ゝ`)b「当然早い方で 」
ふむ、と弟者は指で顎をなぞる。
兄者はこれを了解の合図だと判断した。
ミ,,メ(▽)「何だ!?ヤツ等が消えていく!」
ミ,,゚(▽)「どういうことだ!?匂いはまだあるが 」
人狼達は唖然とした顔でこの様子を見ていた。
目の前に確かに存在している2人の男が消えていく。
このあまりにも不可思議な現象を目の前に人狼達は唸るのも忘れていた。
静寂に包まれる室内。
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:39:47.50 ID:69QyVJgFO
wktkwktk
126 :
第十話:2007/09/28(金) 21:39:58.99 ID:e766rkQN0
ミ,,゚(▼)「ぎゃぁぁぁぁぁー―――――っ!!」
静寂は1匹の人狼によって引き裂かれる。
ミ,,゚(▽)「どうした!?―――?何だアレは?」
その仲間は白い霧に包まれていた。
そして目の前で白い霧は赤に変わる。
赤は濃度を増し、空中に絵の具で塗りたくったような濃い赤がただ浮かんでいた。
その赤からドサリと崩れ落ちる仲間。
ミ,,メ(▽) 「大丈――っ!?死んでる!」
ミ,,゚(▽)「何だこの死に方は!?どうすればこんな風に殺せるんだ!?」
その人狼は体中の全ての水分を搾り取られたかのようにカラカラに乾いていた。
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:40:21.62 ID:IF/aoYep0
支援
128 :
第十話:2007/09/28(金) 21:40:27.94 ID:e766rkQN0
低い知能では何が起こったのか理解するのに時間がかかる。
人狼達は空中にぷかぷかと浮かぶ赤い気体を見た。
突如、それは大きく震える。
そしてそこから大量の赤い液体が弾き出された。
その赤い液体を全身に浴びたとき、人狼達は初めてそれが何なのかを理解する。
その臭い。
その粘度。
その味。
それは紛れも無く、たった今ミイラにされた仲間の血液だった。
『 ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ 』
室内に2人の吸血鬼の笑い声が充満する。
同時に漂っていた白い霧が渦を巻き始める。
霧の通り道にいた人狼は血を吸い取られ干からびていく。
赤く染まった霧は雲となり、血の雨を降らせた。
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:40:32.96 ID:69QyVJgFO
wktkwktk
130 :
第十話:2007/09/28(金) 21:41:38.30 ID:e766rkQN0
ミ,,メ(▽)「ひぃぃぃぃぃー――――!!」
その場の全ての人狼に許されるのはたった1つ。
即ち、恐怖の内に死ぬ。
阿鼻叫喚の中、最後に残った人狼は消え行く意識の中でようやく理解した。
2人の吸血鬼は霧に姿を変え、自分達の血を吸っていたのだと。
・
・
全てのライカンスロープが崩れ落ちた室内で、白い霧が一箇所に集まる。
霧は人の形を作り、白に色が入り始めた。
質感の無い気体が人体へ変貌する。
そこには2人の吸血鬼が現れた。
支援するより読んでたい件w
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:42:02.15 ID:e766rkQN0
( ´_ゝ`)「不味い。なんて味だ。これだから血は嫌いなんだよ 」
(´<_` )「同感だよ、兄者。口直しが必要だな 」
( ´_ゝ`)「まぁ、敵は綺麗に片付いたか。客人の手を煩わせる事が無くて良かったんじゃね?」
(´<_` )「その点に関しては私もホッとしている。だがコレ、後片付けが大変だぞ 」
そう言いながら目の前に積み上げられた20強の人狼の死体を見てウンザリする。
どうやって処理しようかと考えていると兄者と目が合った。
途端に吹き出してしまう。
そして2人は図ったかのように声を合わせて言った。
( ´_ゝ`)b d(´<_` )「「正義(ジャスティス)は勝つ!!」」
・ ・ ・ ・ ・
133 :
第十話:2007/09/28(金) 21:42:40.54 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
吸血鬼屋敷・秘密の地下道。
ブーン達4人は一心にこの道を走り続けていた。
これまでのところ追っ手は無い。
それは吸血鬼の兄弟が善戦している事を意味していた。
目の前に見えたものに4人は足を止める。
左右に伸びる2つの道。
弟者が言っていた分かれ道だった。
(´・ω・`)「分かれ道、か。ここは右だったな。先を急ごう 」
そして右の道に足を踏み出したショボン。
しかし違和感に気付き振り返った。
( ^ω^)「・・・・・・」
ブーンが無言で立ち尽くしている。
ただ呆けて立っているのではない。
その表情は何らかの決意を感じさせた。
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:43:29.93 ID:bHOgSeZMO
支援
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:43:31.02 ID:69QyVJgFO
ジャスティスw
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:43:38.61 ID:e766rkQN0
( ^ω^)「ショボン。行ってくれお。僕は今から屋敷に戻るお 」
(´・ω・`)「馬鹿を言うんじゃない。兄弟はオレ達を信頼して任せてくれた。
オレ達の方も残ると言った彼らを信頼するんだ 」
( ^ω^)「妙な胸騒ぎがするお……何も無かったら謝れば済むだけの話だお。
でももし何かあったら僕はここで戻らなかったことを一生後悔するお 」
('A`)「オレも付き合うぜ、ブーン。何かこのままじゃいけねぇ気がする 」
(´・ω・`)「……全く 」
ブーンの顔を見たショボンは説得が無駄な事を悟っていた。
こういう顔をしたとき、ブーンは梃子でも動かない。
(´・ω・`)「行け。赤石はオレとクーで安全な場所まで運ぶ 」
( ^ω^)「ありがとうだお!帰ったら店の掃除するお!」
(;'A`)「え、掃除?オレも?」
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:44:23.54 ID:69QyVJgFO
wktk
138 :
第十話:2007/09/28(金) 21:44:42.50 ID:e766rkQN0
ショボンは来た道を引き返す2人の背中を見送った。
ショボン自身も走りながらこのまま脱出する自分にもどかしさを感じていたのは確かだ。
年長者としてブーン達を導かねばならない。
その責任感がショボンのそういった感情を抑えていた。
(´・ω・`)「物分りのいい振りをして自分を誤魔化しても結局はこうする事を選択してしまった。馬鹿らしい事をしていたな 」
川 ゚ -゚)「大丈夫。ヤツ等もお前の本当の気持ちなど分かっているさ 」
(´・ω・`)「どうだろうな。果たしてそこまで頭が回るかどうか 」
川 ゚ -゚)「私でも分かるんだ。お前とずっと一緒にいるあの2人が分からないはずは無い 」
ショボンは返事をすることなく出発を促した。
クーは頷き、2人は再び出口まで走り出した。
ショボンは願う。
もしブーンの直感が正しいのであればどうか間に合ってくれと。
・ ・ ・ ・ ・
支援!
140 :
第十話:2007/09/28(金) 21:45:36.07 ID:e766rkQN0
・ ・ ・ ・ ・
( ´_ゝ`)「あー、残念だ。実に萎える展開だ 」
(´<_` )「その点に関しては同意せざるを得ないな兄者。
テストが終わったと思ったら裏にまだ問題が残っていたと言うのはこういう状況を言うのだろうな 」
( ´_ゝ`)「え?弟者テスト受けたことなんてあるの?」
(´<_` )「ない。多分そうだろうなと思っているだけだ 」
吸血鬼兄弟は血と獣の臭いが充満する玄関ホールで溜息をついた。
その原因は屍の山となっている人狼が破った入り口に立っていた2つの人影だった。
人狼たちの仲間であることは間違いないだろう。
しかし全滅したそれらを見ても眉一つ動かさない。
それどころか1人はせせら笑っていた。
退魔のクーはいいんだよなあ
142 :
第十話:2007/09/28(金) 21:46:39.80 ID:e766rkQN0
ノ||-∀-||「おーおーおーおー。人狼部隊も大した事ねえよなー。
これだけ数いてたったの2人に歯が立たないの?何のために人間止めたんだよw
それにしても臭っさいわw汚物はさっさと消毒しないとww」
肌もその長い髪も、眉毛や睫毛さえも真っ白なその少年は目を瞑ったままニヤケた顔でそう言った。
仲間であるはずの者達の死を目の当たりにしてもそれを悼む態度は微塵も無い。
寧ろ死んでくれて良かったと思っているようにすら見える。
ノ)) - 从「おい……」
もう1人は黒をイメージさせる巨漢だった。
黒いマントで包んだその巨体に相応しい太く低い声で嘲笑する白い少年を制する。
真っ黒なボサボサの長髪で顔の上半分が隠れているため表情は読み取りにくい。
ノ||-∀-||「ちぇっ、全くお堅いねぇwさっきも『目的の物以外には構うな』なんて言いやがって。
こいつら殺されちゃうんだったら町人の1匹くらい食わせてやっても良かったのにw」
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:47:20.95 ID:69QyVJgFO
sien
144 :
第十話:2007/09/28(金) 21:47:38.50 ID:e766rkQN0
悪びれた様子も無く舌を出す白い少年。
黒い男もこれ以上は何も言わない。
両者に共通している事は1つ。
どちらも強烈な力の圧力を感じさせることだけだった。
ノ||-∀-||「オレはショーン。こっちのデカブツはノーマン。『パンゲア』から来た 」
白い少年、ショーンと名乗った方は飄々と名を名乗った。
そのまま1人ツカツカと室内に歩を進める。
一方黒い男、ノーマンは依然として入り口に佇んでいた。
(´<_` )「こちらの自己紹介はいらないだろう?赤石はある場所に隠してある。持って帰りたかったら我々を倒すんだな 」
( ´_ゝ`)「おいおい、ちょいと無用心すぎるんじゃあないか?そこら中に転がってるお仲間はオレ達があっさり片付けたんだぜ?」
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:47:48.21 ID:6iCM+pBmO
支援
146 :
第十話:2007/09/28(金) 21:48:05.15 ID:e766rkQN0
兄者は乾き始めた血漿をべっとりと全身に浴びたまま横たわるライカンスロープの死体群を指して言った。
ショーンは『あぁ、これ?』と足元を指差す。
そこには苦悶の表情を浮かべたまま横たわる人狼の亡骸があった。
・
・
・
グシャッ
ノ||-∀-||「綺麗に殺すなぁwどうせやるならこれくらいやらないとww」
ショーンは飛び散った脳漿から足を抜きながら言った。
その表情は心底楽しそうだ。
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:48:09.26 ID:69QyVJgFO
sien
148 :
第十話:2007/09/28(金) 21:48:26.51 ID:e766rkQN0
(´<_` )「……不快だな……」
( ´_ゝ`)「コイツ生きてても百害あって一利無しだな。ここでぶっ殺そう 」
部屋の中心にまで単身入り込んだショーンを排除すべき敵と認識する吸血鬼兄弟。
2人は一陣の風と共に霧へと姿を変える。
霧は高速で室内を舞い、次の瞬間ショーンを覆った。
ノ||-∀-||「おい、ノーマン。手ぇ出すなよ 」
多数の人狼を葬った吸血の霧に身を晒しながらもショーンは表情を変えなかった。
そしてノーマンもまた言われるまでも無く微動だにしない。
ノ||-∀-||「吸血鬼風情が……」
白い体を白い霧に包まれ、その場は全くの白となる。
しかし唐突に2つの小さな赤が浮かんだ。
ノ||゚∀゚||「芸がねぇんだよ!」
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:48:56.03 ID:69QyVJgFO
アルビノ支援
150 :
第十話:2007/09/28(金) 21:49:34.10 ID:e766rkQN0
赤は見開かれたショーンの双眸だった。
ショーンは無造作に霧の中に両手を入れる。
そこから何かを掴み出し無造作に放り投げた。
投げられた2つの何かは人狼達の死体を弾き、壁面にしこたま打ち付けられて止まった。
(´<_`;)「ぐふっ!馬鹿な!?」
(#´_ゝ`)「痛ぇなコノヤロウ!何すんだテメェ!!」
戸惑う弟者。
痛みに怒る兄者。
2人は霧となった自分達が攻撃を受けるなど想定していなかった。
しかし現にこうして攻撃を受けている。
2人は攻撃者であるショーンを見る。
ノ||゚∀゚||「そうか痛いかw痛みを感じるのも久しぶりだろう?安心しろよ。直ぐに癖になるw」
ショーンの両腕の肘から先は白く発光していた。
そこには白い輝く体毛が生え揃い、両手には一様に長く鋭い鉤爪を備えている。
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:50:00.15 ID:69QyVJgFO
wktkwktkwktk!!!
152 :
第十話:2007/09/28(金) 21:50:50.69 ID:e766rkQN0
姿を変えた吸血鬼を造作も無く攻撃する。
そして体を白く光る獣の姿に変える。
弟者の脳裏にふとある者の存在が浮かんだ。
(´<_`;)「貴様まさか!?『パンゲア』に与するなどありえない!その全ては法王庁に帰属しているはず!!」
( ´_ゝ`)「心当たりでもあるのか弟者!?」
今だ消えぬ苦痛に表情を強張らせながら弟者は叫ぶ。
脳裏に浮かぶのは最悪の事態。
ショーンは2人がうずくまる場所へと歩み寄る。
ニヤニヤと嘲り笑いながら。
ノ||゚∀゚||「いい顔だw嬉しいねぇwwオレが何なのか分かったかい?」
その時、弟者の四肢を4本の杭が貫いた。
それは物理的な武器が通用するはずのない弟者の体に深々と突き刺さり体を床に磔にする。
(;´_ゝ`)「弟者!!」
めまいがするほどwktk
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:51:17.61 ID:69QyVJgFO
wktkwktkwktk!!!
155 :
第十話:2007/09/28(金) 21:51:53.57 ID:e766rkQN0
(´<_`;)「これはヴァチカンの聖杭!やはり貴様っ!!」
開いた穴から血を流しながら弟者は確信した。
―――勝てるはずが無い―――
(;´_ゝ`)「弟者!しっかりしないか!!」
ノ||゚∀゚||「おいおい、コイツ分かってないようだぜ?w聞かせてやりなよ、オ・レ・が・な・に・かww」
愉悦に酔いしれた声でショーンは言う。
尊厳を踏みにじられた弟者は唇を噛みながら渾身の叫びを上げた。
(´<_`;)「そいつは『ク ル ー ス ニ ク』だ!逃げろ兄者!!」
支援
157 :
第十話:2007/09/28(金) 21:53:27.08 ID:e766rkQN0
身の自由を奪われた自分は最早逃走は不可能。
せめて兄だけでも、そう思った。
(#´_ゝ`)「ふざけた事を言うなぁぁぁー―っ!!」
しかし兄者という人格は弟を残して逃げる事を許さなかった。
兄者の頭の中では目の前のクルースニクをぶっ飛ばし、弟者の体を縛る杭を抜く。
そしてその後2人で逃走するというシナリオが出来上がっていた。
しかしそこに1つだけ盲点がある。
ノ)) - 从「甘いな 」
いつの間にか間合いに入ってきたもう1人、ノーマンの太い右腕に反対方向の壁まで吹き飛ばされた。
このなぎ払われた腕の攻撃からもダメージを受け兄者は困惑する。
ノ||゚∀゚||「いい事教えてやろうか?」
ショーンのせせら笑いを最上級の侮辱に感じた兄者は怒りに震える。
しかし被せられたショーンの言葉に重大な事柄があった。
ノ||゚∀゚||「ノーマンは『ダンピール』だwお前らの天敵が2人もいるんだぜw
絶望ォー――に身をよじれィ虫けらどもォオオー――ッ!!ってかww」
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:53:55.36 ID:69QyVJgFO
天敵kt!
159 :
第十話:2007/09/28(金) 21:54:06.12 ID:e766rkQN0
吸血鬼と戦う為に生まれる者『クルースニク』
人間と吸血鬼の間に生まれる者『ダンピール』
2つの天敵が敵として目の前にいる事実。
それは人生の暗幕として暗い影を兄者と弟者に落とす。
(´<_`;)「何故……だ?何故パンゲアに加担する……?
アレは人を滅ぼそうとする組織だぞ!本来ならば貴様らは人間側の存在だろう!?」
激痛に耐えながら叫び上げる弟者。
それを聞いたショーンはその狂気に満ちた赤い瞳を輝かせながら言った。
ノ||゚∀゚||「蟻っているよなぁ?あの小さい虫だよ。オレはアレを踏み潰すのが大好きなんだ。
笑えるぜ?体と同じサイズの餌を運ぶ蟻を巣の寸前で踏み殺すんだw
あいつらがどれだけ一生懸命働いてもオレにはその全てを否定する力があるww」
ノ)) - 从「・・・・・・」
ノ||゚∀゚||「お前ら吸血鬼を踏み潰す力も神から与えられたwオレは歓喜しながらお前の仲間をぶっ殺してきたよw
普段でかい顔しててもオレの前じゃ何も出来ずに死ぬだけだwwこんなに愉快な事は
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:54:13.32 ID:YmWGM8FCO
支援
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:54:52.78 ID:69QyVJgFO
sien
162 :
第十話:2007/09/28(金) 21:54:55.52 ID:e766rkQN0
狂気の演説を展開するショーンに為す術のない兄弟は、この時ほど自分達が吸血鬼である事を呪った事はなかった。
吸血鬼であるが故にこの腐った男に制裁を加えることができない。
ノ||゚∀゚||「まぁ、やりすぎてヴァチカンから追い出されちまったけどよw
そうそう、どうしてパンゲアにいるかだったよな?」
なおもショーンの狂演は止まらない。
ダンピール、ノーマンは無表情のままただ立っていた。
ノ||゚∀゚||「ここだとお前らみたいな獲物をどれだけ痛めつけても文句も言われねぇww
それどころか次から次へと獲物を紹介してくれるんだwwこんなに楽しい事はないぜwww」
下品な笑い声を上げながら恍惚の表情を浮かべるショーン。
ただただ無表情に事の成り行きを見守るノーマン。
吐き気を催すほどの外道に対して為す術を持たない屈辱に耐える兄者と弟者。
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:55:13.92 ID:6iCM+pBmO
天敵ktkr
164 :
第十話:2007/09/28(金) 21:55:32.30 ID:e766rkQN0
ノ||゚∀゚||「安心しろよwお前らは直ぐには殺さねぇww連れ帰ってたっぷりと楽しんでやるからよww
吸血鬼なんだから最低でも10年くらいはオレを喜ばせてくれよwww」
ノ)) - 从「ショーン……」
ノ||゚∀゚||「あぁ、そうだったな。趣味の話は一先ず置いといて、だ。
おい、エイジャの赤石はどこだ?何やっても無駄なんだからさっさと出せよ 」
ノーマンの一言でようやくショーンの演説は終わった。
兄者と弟者は屈辱に耐え続けていたが赤石の言葉を聞き再び自尊心を蘇らせた。
確かにこの2人の天敵に自分達は為す術はない。
しかし目的の物を手に入れさせることはない。
今頃は信頼すべきショボン達の手により地下道を進んでいるはずだ。
そしてかすかに聞こえるのはここに近付いてくる2つの足音。
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:55:58.36 ID:69QyVJgFO
sien
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:56:09.41 ID:e766rkQN0
吸血鬼の聴覚は常人には聞こえない音をも捉える。
弟者は兄者を見る。
兄者も弟者を見てニヤリと笑った。
(;´_ゝ`)(聞こえるか弟者?あの足音が?)
(´<_`;)(聞こえるよ兄者。全く……私の言う事をキチンと聞いてくれないものかな?)
( ´_ゝ`)(その点については期待できないな )
(´<_` )(ふっ。だがこの点については期待できる )
吸血鬼にのみ聞こえる小声で部屋の両端に別れた2人は会話する。
そしてこのいけ好かないクルースニクに鉄槌を下す存在がホールに駆け込んできた。
神展開過ぎる
168 :
第十話:2007/09/28(金) 21:57:25.12 ID:e766rkQN0
(#^ω^)(#'A`)「「ブーンとドクオ、ただいま参上!!トウッ!!」」
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです
―――第十話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――
〜その3、天敵〜終
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 21:58:00.94 ID:8wKGiWye0
乙
170 :
次回予告:2007/09/28(金) 21:58:54.12 ID:e766rkQN0
第十一、十二話、予告
乱入者ブーンとドクオ。この2人を見てクルースニクは苦々しく口走る。
ノ||-∀-||「チッ……こっちはさっさと赤石持って帰りてぇってのによ……」
それを見てブーンはさも得意気に言った。
( ^ω^)「残念だったお!赤石ならショボンが地下道通って運んでるお!!ばーかばーかww」
(;'A`)(;´_ゝ`)(´<_`;)ノ||-∀-;|| ノ)) - 从「・・・・・・・・・」
(;^ω^)「お?」
(;´_ゝ`)「……流石のオレもそれは引くわ 」
ノ||-∀-||「行け、ノーマンw赤石は地下道だってよww」
地下に下りる黒い影。
地上に残る白い光。
次回
( ^ω^)ブーンは退魔師稼業のようです
―――第十一、十二話・吸血鬼の家に遊びに行こう―――
〜その4、ダンピール〜
〜その5、クルースニク〜
合作食えたんじゃね?
172 :
退魔師:2007/09/28(金) 22:00:02.66 ID:e766rkQN0
投下が滞ってしまい本当に申し訳ない!
来週一杯まで色々と立て込んでいまして・・・
元々遅筆なんですけど
たまに絵スレで見る退魔師稼業の絵には非常に勇気付けられます。
必ずキチンと書き終えます。
次回の投下でこの『吸血鬼の家に遊びに行こう編』を完結させる予定です。
その後は残されたツンとでぃの話を。
話の構想だけは最後まであるのに書くのが遅いorz
支援のおかげで何とか合作の前に終われました
ありがとうございました
乙!
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 22:00:39.41 ID:IF/aoYep0
乙ー!
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/28(金) 22:02:06.03 ID:69QyVJgFO
最初から見てるがこれほど作者の成長が見られる作品も珍しい
乙!
前回ブーン達の攻撃を弟者がことごとくかわしたのは霧になって避けたから?
177 :
退魔師:2007/09/28(金) 22:04:59.15 ID:e766rkQN0
>>176 タネはそういう事です
クーのボディーで兄者が悶絶したのは攻撃が来るとは思ってなかったから、ということでw
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
狼男の扱いが酷いw