( ^ω^)は中継ぎ投手なようです

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1 ◆175R.0ombs
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/24(月) 23:52:03.71 ID:rzLCp1qIO
久々じゃねーかコノヤロー
3 ◆175R.0ombs :2007/09/24(月) 23:54:44.34 ID:IbW+edsD0
なんか短編を書こう書こうと思っていたのに、結局一本も書けず現行まで疎かになってしまいました
第五話、投下します
4 ◆175R.0ombs :2007/09/24(月) 23:55:12.56 ID:IbW+edsD0
 キャンプが終わると、息つく間も無くオープン戦がスタートした。


 余談だが、日本プロ野球界には、オープン戦で勝てば勝つほどシーズンでのツキが減っていくというジンクスが存在する。

 実際に、オープン戦で首位に立ったチームは、なぜかシーズンでは優勝できないことが多いというデータがある。
 そこにいったいどのような因果関係があるのか、あくまでジンクスであるので、あまり深い分析はなされていない。
 ならば、さほど気にする必要もないのだろうが……。


 昨年、ヴィッパーズはオープン戦で首位を独走し、そのままシーズンに突入した。

 しかし、いざシーズンに入って見れば、開幕戦での大敗を皮切りに、負けに負け続け11連敗。
 結局、優勝争いどころか一度として借金を返すことすらなく、ヴィッパーズの2007年は幕を閉じた。

 そんなことがあった翌年である。
 選手達は、それぞれ複雑な思いを抱えながら、敵地・天国ドームに乗り込み、オープン戦の開幕を迎えていた。



5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/24(月) 23:57:37.32 ID:pBEvX7vlO
久々だな。支援
6 ◆175R.0ombs :2007/09/24(月) 23:57:42.81 ID:IbW+edsD0
从 ゚∀从「おー、カマキリ打法の相田だー! すっげえー、実物見たの初めてだー!」

(;-_-)「テレビでしか見た事ないような人ばっかり……。こんなところでプレーできるなんて……まだ実感が沸かないよ」

  _
( ゚∀゚)「やっぱ天国のチア軍団は良いねえ。激しいダンスの乳揺れが最高だよ」

('A`)「何言ってんだ、あの股の開き具合こそ至高だろ」
  _
( ゚∀゚)「ああん? てめぇ、俺に喧嘩売ってんのか?」

('A`)「おっぱいしか見てない奴にはわからんだろうな……あの鍛え上げられた美脚の素晴らしさは」
  _
( ゚∀゚)「てめーは俺を怒らせた。表へ出ろ」

('A`)「上等だ、返り討ちにしてやんよ」


 ……ある一部を除いて、だが。
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/24(月) 23:57:52.57 ID:HkKkfx1QO
イラネ。
8 ◆175R.0ombs :2007/09/24(月) 23:59:58.47 ID:IbW+edsD0
 その様子を傍目にしていたショボンが、ため息をつきながら言った。

(;´・ω・`)「まだシーズンが始まってないとはいえ……なんという能天気っぷりだ。
       ここまで来ると、一周回って逆に感心するな……」

 その横に、グラブを嵌めた右手を軽く慣らしながら、内藤が立った。

( ^ω^)「けど、ピリピリして浮かないムードの中でやるよりも、このほうがずっと良いと思いますお」

(´・ω・`)「まあ、それもそうだがな」

(;^ω^)「去年の初めなんか、あまりの負のオーラにベンチに帰るのをためらったくらいでしたお……」

 当時の事を思い出し、内藤は苦笑しながらそう述べた。

 内藤の言葉に含みは感じられなかったが、ショボンは少しだけ後ろめたい気持ちになった。
9 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:03:07.79 ID:ezKqnrUe0
 昨年、ショボンはオープン戦で脚を痛めたため、開幕からしばらく出場を見合わせていたのだ。

 捕手というポジションは、守りの体勢の都合上どうしても下半身への負担が大きくなり、故障しがちになる。
 それを20年もやっているのだから、仕方がないと言えば仕方のないことだ。

 しかし、今の彼にとって、そんなものは言い訳に過ぎない。

 もし自分がいたら、あんなに負ける事は無かったかもしれない。
 もし自分がいたら、順位は一つくらい変わっていたかもしれない。
 もし自分がいたら――

 そう思っては、彼は後悔せずにはいられなかった。

(;´・ω・`)「……まあ、去年のことはあまり気にしないでおこう。今年は違うんだ」

 ショボンはそう言いながら、キャンプから固めていた決意を思い出す。

 キャプテンとして、正捕手として、まだ体が動くうちにやっておかねばならないこと。
 入団した時から公約に掲げながら、今までずっと達成できなかったこと。

 すなわち、全試合マスクを被り、チームを優勝に導くと。



10 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:05:12.17 ID:ezKqnrUe0
(kO-O)「今年は例年になく、選手達が元気に見えます」

 ずり落ちた眼鏡を元に戻すような仕草を見せながら、高橋ヘッドが言った。
 茂名はそれに対して頷くと、少し間をおいて応答する。

( ´∀`)「チーム全体が若返りましたからね……怪我の功名ですが。
      ベテランの選手も、例年になく練習に身が入っていましたし」

 真剣である。いつものように天然の笑顔を見せてはいるが、口調は真剣そのものだった。

 監督生活も、今年で五年目を迎える茂名。
 優勝どころかAクラスの経験もない。
 世間から見れば二流監督の彼ではあるが、徐々に監督としての佇まいを身に付けてきているのは確かだった。

(kO-O)「……経験の浅い若手が増えたのに、引っ張っていく立場にあるべきベテランは減ってしまいました」

 今度は少し不安げな表情、重い口調で、高橋がそう溢し始めた。

(kO-O)「このチームをまとめ上げるには、相当の苦労を強いられることになりそうですね……」

11 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:06:59.11 ID:ezKqnrUe0
 コメントし難い、頭の痛い話である。
 しかし、これをクリアしない限り、ヴィッパーズの優勝はありえないのだ。
 だから高橋は辛いながらもこの話題を振ったし、茂名もそれを熟知していた。

( ´∀`)「……仕方ありません。それらもすべて覚悟の上です」

(kO-O)「自信は、ありますか?」

 高橋が問うと、茂名はそれまでの笑顔を崩し、少し険しい表情で、真剣な声色のまま、答えた。

( ´∀`)「自信があろうとなかろうと……私にとっては、これがラストチャンスです。
      逃せば来期はないのですから……やるしかないでしょう」

 お互い、それ以上何も話すことはなく、刻一刻と試合開始時刻は迫っていった。



 オープン戦開幕戦の相手は、大阪・天国ドームに本拠地を構える球団、天国エンジェルス。
 相手にとって不足はない。
 悪いジンクスがあろうとなかろうと、試合である以上、勝つに越した事はないのだ。


12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:07:20.93 ID:uGDE4ZbBO
支援
13 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:08:48.55 ID:ezKqnrUe0
 天国エンジェルス。
 天國鉄道を親会社とするこの球団は、1958年に球界に参入。
 以来、一度も身売りすることなく今年創立五十周年を迎えた、パ・リーグを代表する優良球団である。

 50年間で優勝12回、うち、日本一7回という輝かしい実績を持つこの球団。
 しかし、ここ10年は毎年Aクラス入りこそ果たすものの、優勝一回とパッとしなかった。

ν(・ω・ν)「オープン戦とはいえ、相手はニュー速だ。負けたくないな……」

 ストレッチで身体を解しながら、色白で背の高い男が小さく呟いた。

[ ̄〜 ̄]「去年、ウチはニュー速に負け越してますからねえ」

 その傍らで素振りをしていた、細目でガッチリした体格の男がそれに答える。

[ ̄〜 ̄]「まー、大丈夫でしょう。向こうは相次ぐリストラで戦力がガタ落ちと聞きますし」

 あくまでお気楽そうな細目の男……布施の態度に、色白の男は呆れたような素振りを見せる。

14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:09:38.02 ID:yPiRzxPMO
支援
15 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:10:30.07 ID:ezKqnrUe0
ν(・ω・ν;)「随分と暢気なことを言ってるが……去年の負けの内容、ちゃんと知って言ってるのか?」

[ ̄〜 ̄]「へ?」

ν(・ω・ν;)「いや、へ? じゃなくて……あーもう、クックル、お前はどう思う」

 相田は後ろを振り向き、そこに居た白人の男に尋ねた。

 白人……クックルは、2メートルに達しようかという巨体を揺らして向き直る。
 そして、屈んでストレッチをしている相田を見下ろし、答えた。

( ゚∋゚)「……そうだナ」

 クックルは三年前にオーストラリアの球団から移籍し、以来二年連続で30本塁打を記録している、エンジェルスの看板打者である。
 日本での生活もかなり慣れたのか、彼の日本語はなかなか流暢であった。

( ゚∋゚)「確か、いずれも七回までリードを許し、それ以降打線が点を返せなくなるパターン……だったかナ?」

16 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:12:12.20 ID:ezKqnrUe0
 相田はそれを聞くなり、頷いて右手の親指を立てる。

d(・ω・ν)「そうだ、クックルはよく覚えてるな。じゃあ布施、ニュー速で注意すべき投手は?」

[ ̄〜 ̄]「内藤、長岡」

ν(・ω・ν)「そのとおり。あいつらは1〜2イニングじゃなかなか捕まえられん。いかに先発の足を掴んで点をもぎ取るか、だ」

[ ̄〜 ̄]「でも相田さん」

ν(・ω・ν)「なんだ?」

[ ̄〜 ̄]「それじゃ、去年と何も変わりないんじゃ……」

ν(・ω・ν;)「……とにかく、好球必打、打てるときに必ず打てってことだ。気持ちの問題さ」

[; ̄〜 ̄]「なんか、一気に胡散臭くなりましたね」

17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:12:46.32 ID:uGDE4ZbBO
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18 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:13:59.40 ID:ezKqnrUe0
 そうやって彼らが練習とグダグダな話を平行しているうちに、ライトスタンドには横断幕を掲げた応援団、
それに、家族連れや地元の少年達が、徐々に集まってきていた。


 傍らではクックルが、内野席のフェンスから身を乗り出してきた少年達にサインを書いたり、握手をしたりしていた。
 そんな微笑ましい筈の様子を目にしながらも、二人の表情はどこか浮かなかった。

[ ̄〜 ̄]「……やはり……年々、減ってますね」

ν(・ω・ν)「これと言うのも、俺達が不甲斐ないからだよ」

[ ̄〜 ̄]「聞くに忍びない話です」
19 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:15:25.15 ID:ezKqnrUe0
ν(・ω・ν)「俺達は……人気回復のためにも、長年待っているファンのためにも、優勝しなければ――」

[ ̄〜 ̄]「……相田さん」

 布施は細長い目を垂らし、物憂げな顔で訊く。

[ ̄〜 ̄]「本当に……球団、無くなっちゃうんですかね」

 その答えが相田から返ってくることはなかった。
 布施も、それ以上は何も言おうとしなかった。

 三人は練習を切り上げると、一塁側のベンチへと戻っていった。
 試合開始時刻は、十五分後まで迫っていた。
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:16:52.99 ID:Mf9xetS90
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21 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:17:17.90 ID:ezKqnrUe0
 エンジェルスの先発は、昨季13勝12敗で勝ち頭になった新左腕エース・藤山。
 対するヴィッパーズも、14勝4敗で最高勝率のタイトルを獲得したモララーを先発に持ってきた。

 やはり公式戦ではないとはいえ、どちらのチームも、年が始まって最初の試合に負けたくはないのだろう。
 かなりの好ゲームが期待された。



 試合は六回まで、両チーム無得点の白熱した投手戦となった。
 しかし藤山はどうも調子が上がらず、ここまでほぼ毎回、合計六つのフォアボールを出していた。

 この制球の乱れをヴィッパーズ打線は見逃さなかった。
22 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:19:29.15 ID:ezKqnrUe0
 試合が動いたのは、七回表。


( ФωФ)「ファイヤーショットガン!」

 一番杉浦、ツースリーから外に外れるスライダーを見送り、本日二度目のフォアボールで出塁。

从 ゚∀从「チェンジアップ、もらった!」

 二番高岡、右打席から高めに甘く入ったチェンジアップを流し打ちに。
 これが一二塁間を破り、ヒットとなる。


 ワンアウト一、二塁。迎えるバッターは三番ライト、フィレンクト。


/^o^;\(なんというピンチ……でもフィレンクトさんには打たれた記憶ないし……ここを切り抜ければなんとかなるかも……)

 藤山はキャッチャー加賀見の指示通り、低めにボールを集めていく作戦に出る。
 しかし、相変わらずコントロールが定まらない。

 緑のランプが、あっという間に二つ点灯する。
23 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:21:49.45 ID:ezKqnrUe0
 フォアボールなら満塁。しかも、昨季打率.305、27本塁打を記録している毒尾に打席が回ってしまう。
 最悪の展開だ。

 オープン戦とはいえ、年明け初戦、落とすには痛い試合。
 負けられない。

/^o^;\(くっ……とりあえず、ストライクを取らなきゃ)

 藤山は元より、制球に難があり、安定感にも欠ける投手だ。
 好調時の投球には目を見張るものがあるが、調子が悪い日には、それこそ並みの投手ほどの活躍も見込めない。

 加えて彼自身、相手が左打者、しかも過去に抑えている相手とだけあって、少し甘く見ていたのだろう。
 それも一度は怪我して、球界から姿を消しかけた選手だ。
 もしかすると、打たれるはずがないとさえ思えたのかもしれない。

 藤山が投げたボールは、コントロール重視の、悪く言えば本来彼の持ち味である筈の力が備わっていない直球だった。
24 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:24:11.94 ID:ezKqnrUe0
 いくら弱小チームとはいえ、プロの三番打者がそれを見逃すはずがない。

(;‘_L’)(来た!)

 狙い澄ましたように、フィレンクトは引っ叩いた。
 ボールは美しい軌道を描き、右中間に落ちる。
 センター布施が俊足を飛ばしてボールのカバーに入るが、その間に塁上のランナーはホームへと突っ込んで行く。

[; ̄〜 ̄]「くっ!」

 布施は苦汁を飲んだような顔をしながら、中継に入っていた遊撃手、白木にボールを返球した。

(#゚〜゚)(杉浦は無理だ、でも一塁スタートの高岡は刺せるかもしれない!)

(#゚〜゚)「むんっ!」

 小さく奇声を上げながら、白木が受け取ったボールを手早くホームへ返球した。
 しかし、思った以上に高岡の足は速い。

「セ―フ、セーフ!」

 主審が、大きく両手を広げた。


 七回表、二点。天国にとっては手痛い一撃となった。

25 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:24:36.99 ID:ezKqnrUe0
 藤山は6回1/3で降板し、そこからは根岸がリリーフに入った。

 一方のヴィッパーズはというと、終盤でリードすれば、あとはお得意の継投策で逃げ切りの体勢に入るのみである。
 七回裏、茂名監督がベンチから現れ、審判に守備交代の旨を告げた。

 三塁毒尾に変わって三井、一塁引田に変わって左翼に入っていた斉藤、空いた左翼には、五十嵐が起用された。

「投手の交代をお知らせします、ピッチャー、モララーに変わりまして――」

 そして、アナウンスとともに、電光掲示板の名前の表示が切り替わる。

「――内藤、背番号24」

 レフトスタンドから沸き上がる歓声。
 久しぶりに耳にする、自らの登場テーマ。
 それらに入り混じって時々聞こえる、「ないとー!」という叫び声。
26 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:26:32.04 ID:ezKqnrUe0
( ^ω^)「……久しぶりに、実践で投げる、って感じがしますお」

(´・ω・`)「お前、キャンプじゃあんまり実践形式で投げて無かったからな。早くカンを取り戻せよ?」

( ^ω^)「おっおっお、カンが戻るのが早いのだけが、僕の取り得ですお」

(´・ω・`)「減らず口は年を取っても変わらんな……まあいい。いきなりクリーンアップだからな、オープン戦だが、全力で行くぞ」

( ^ω^)「了解ですお」

 短い会話の後、大まかな組み立ての内容を聞くと、内藤はマウンドに戻り、投球練習に入った。
 三球とも、きっちり真ん中にストレートを投げ、ブルペンとは微妙に違うマウンドの感覚を掴んでいく。

「プレイボール!」

 審判が、試合の再開を告げると同時に、内藤の動悸が高まった。
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:26:56.10 ID:uFYOncviO
ロマネスクにはどっから突っ込めばいいんだよwwwwwww
28 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:27:50.83 ID:ezKqnrUe0
ν(・ω・ν)「さあ来い!」

 三番、スイッチヒッターの相田が右打席に入る。
 四番クックル、五番布施ほどの飛ばし屋ではないものの、それでも昨年22本塁打を放っている強打者だった。
 油断ならない相手だ。

 初球、内藤が投じたボールはカーブ。
 90キロ台の予想以上に緩いボールに、相田はタイミングが合わず、半回転する。

(´・ω・`)(……初球から打っていく癖は相変わらずか。まずはワンストライク)

 続いて二球目は直球。
 内藤は要求通り、抜群のコントロールで低めにこれを決めた。
 カウント、ツーナッシング。電光掲示板には、140km/hが計測される。

ν(・ω・ν;)(くっ……内藤はどうも苦手なんだよな……)

 相田はバットを短く構え直す。
 点を返さなければならない。とにかく、どんな形でも塁に出たい。

 本来冷静になるべき場面で、逸る気持ちが顔に出ていた。

29 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:29:38.61 ID:ezKqnrUe0
(´・ω・`)(内藤、次で決めるぞ)

( ^ω^)(わかりましたお、ショボンさん)

 三球目、内藤は全身をしならせ、全体重をかけてストレートを投じた。
 迷いなど微塵にもない、クロス・ファイアー。

ν(・ω・ν)「っ!」

 振りぬく、しかし力負けしたか、ボールは三塁線を力なく飛んで行く。
 三井がバックし、危なげなくこれを捕球した。

ν(・ω・ν;)「やられた……」

 相田は苦虫を噛み潰したような顔で、ベンチへと戻っていった。



(;゚∋゚)「ウガッ!」

 四番クックル、外の鋭いカーブに泳がされ、三振に倒れる。
 ツーアウトとなり、バッターは布施。
 打率は低いながら、昨年は30本塁打を放っている和製大砲だ。

30 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:31:08.78 ID:ezKqnrUe0
[ ̄〜 ̄]「……去年と同じ様には行きませんよ、内藤さん」

 小さくそう呟きながら、布施は打席に入る。


(´・ω・`)(布施も一発が怖い打者が、バットコントロールは甘い。内藤の鋭い変化球は捌けない筈だ)

 布施への初球、ショボンは内角にカーブを要求した。
 大きく弧を描き……打者の手前でそれは、ストライクゾーンへと吸い込まれるようにして曲がって行く……。

 轟音と共に、ボールが宙に舞う。

(;´・ω・`)「う、打ったっ?!」

 バットを置き、ボールの行方を見つめながら、布施は走り出す。

[; ̄〜 ̄](三塁線ギリギリ……どうだ?)

 良く飛んでいる。
 しかし、布施自身、これは納得のいく会心の当たりとは言えなかった。
31 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:31:41.33 ID:ezKqnrUe0
 打球はポール際でギリギリで反れ、ファールになった。

(;´・ω・`)「危なかった……」

(;^ω^)「すみません、少しボールが高めに浮きましたお」

(´・ω・`)「まあ、久しぶりの実践だからな……ちょっと力むのも仕方ないか。次は気を付けろよ」

( ^ω^)「把握ですお」




 その様子をベンチで見ていた茂名は、ほっとため息をついた。

(;´∀`)「まったく……ヒヤヒヤさせますね、今日の内藤は……」

(kO-O)「真っ直ぐを見る限り、調子はさほど悪くないように見えますが……」

(;´∀`)「まだ実践の感覚が戻っていないのでしょう。遅くとも開幕までには合わせてくるはずです。
     というより、そうしてくれないと……」

(;kO-O)「……中抑えが、あまりに不安過ぎますね」
32 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:33:50.99 ID:ezKqnrUe0
 そんな二人の心配をよそに、あくまで内藤はマイペースに投げ続けた。

[; ̄〜 ̄]「しまっ……!」

 布施は逃げるスクリューに手を出し、ファール。
 これでカウントは、2ストライク2ボール。若干、内藤が優位に立った。



 と、ここで内藤がショボンにある提案を持ちかける。

(´・ω・`)(よし、今まで低めにボールを集めてきたから、最後は高めのまっすぐで……)

( ^ω^)(……ショボンさん)

(´・ω・`)(お? どうした)

 サインに首を振る内藤に、ショボンが訝しげな顔をする。
33 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:34:24.24 ID:ezKqnrUe0
 すると内藤は、開幕前にキャンプで決めた、あのボールのサインを示した。

(´・ω・`)(……自信は、あるのか?)

( ^ω^)(わからないけど……実践で投げてみないと、あのボールはどうも掴めない気がするんですお)

 ショボンは少しだけ考える素振りを見せ……。

(´・ω・`)(そうか……お前がそこまで投げたいというなら、好きにしろ)

( ^ω^)(ありがとう、ですお)

 ミットを、構えた。
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:34:51.19 ID:uGDE4ZbBO
支援
35 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:36:08.93 ID:ezKqnrUe0
( ^ω^)(注意して投げないと……ただの棒球になってしまうお)

 内藤は全神経を左手に集中させる。

 いつもとは少し違うボールの握り、それを誤魔化す腕の振り。
 すべてに注意を注いで、ボールを投じる。


[ ̄〜 ̄](……スライダーか?!)

 布施は軌道を想像しながら、ボールを叩きに掛かる。

 想像通り、ボールは俄かに食い込んできた。
 だが……。

[; ̄〜 ̄]「……ア……あれ?」

 タイミングが合わなかったわけでもない。
 軌道は読めていたはずだ。

 なのに、なぜ、どうして、バットは空を切ったのか。
 わからない。

 布施が理解したのは、自分は三振した、という事実だけだった。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:37:17.86 ID:uGDE4ZbBO
支援
37 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:37:18.14 ID:ezKqnrUe0
 ベンチから様子を見守っていた茂名の口角が、俄かに釣りあがった。

( ´∀`)「内藤の奴……隠し球を持っていましたね。報告しないとは……あのバッテリーも人が悪い」

(kO-O)「今の球は……カットボール、でしょうか?」
 高橋の質問に、茂名はこう答えた。

( ´∀`)「そうですね。しかし、普通のカットボールとは、明らかに違う点があります」

 そして笑って、付け加える。

( ´∀`)「あの球は恐らくまだ未完成……もしかすると、”魔球”なんてものに成り得るかもしれませんね」

(;kO-O)「……はあ」

 高橋はよくわからないといった風な様子を見せると、再び、自作のスコアブックを取る作業に戻った。


 茂名が言ったことが本当になるのは、まだ、暫く先の話である。
38 ◆175R.0ombs :2007/09/25(火) 00:37:38.17 ID:ezKqnrUe0

 ヴィッパーズはこの後、若手の投手をリリーフで起用し、九回に一点を返されたもの、辛くも逃げ切りゲームセット。
 年初めの試合を、見事勝利で飾った。

39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:39:09.99 ID:ezKqnrUe0
以上で第五話は終わりです
こんな夜中に支援ありがとうございました
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:39:27.18 ID:uGDE4ZbBO
乙。
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:41:08.71 ID:yPiRzxPMO
乙!
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/25(火) 00:43:00.12 ID:Mf9xetS90
乙ー
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。