1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
川 ゚ -゚) 〜♪
注:代理
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:42:16.72 ID:jaNT1UQF0
川 ゚ -゚)「うぇーい、疲れたー」
手に持ったハードケースを置き、制服のままベッドに寝転がった。
上瞼と下瞼が接着しそうになるのをこらえながらも鞄の中からファイルを取り出し逆さにして振る。
中から方程式やらグラフやらが描かれた紙やら小説が書かれた模試対策の問題用紙やらが飛び出してくる。
その中から、隅がボロボロになっている五線譜とオタマジャクシ…もとい、音符の描かれた紙片を選び出した。
手に取り、眺める。
川 ゚ -゚)「……練習、しておけばよかったか」
月末には、コンテスト。その事実が肩にのしかかる。
唇に伝わるマウスピースの震え。
耳に残る和音の残響。
目に飛び込んでくる音符の群れ。
川#゚ -゚)「……あ゙ーちくしょー、風呂入んべ風呂ッ」
疲労とイライラがごっちゃになって訳が分からなくなった。
吹奏楽は好きだけれど、全国金賞ってのはここまでハードルが高いものだったのか。
息をつき、服を脱いだ。シャワーでも浴びて寝よう。
こんなのクーじゃねぇだろ支援
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:43:07.84 ID:jaNT1UQF0
从'ー'从「クーちゃんツンちゃん、おはようだよだよー」
ξ ゚听)ξ「おはよう二人とも。渡辺は元気ねー。それに比べて」
川 ゙ -゙)「……ふにゃ……」
从'ー'从「クーちゃんはねぼすけさんですねー。はーい、おきてくださーい」
川 ゙ -゙)「……ほっといてくれ、ゆうべはずっと楽譜……ぐー」
ξ ゚听)ξ「重症ね」
アルトサックスの入ったハードケースを右手に下げてふらふらといつもの通学路を歩く。
右には渡辺、左やや前にツン。
ξ ゚听)ξ「ところで、クー。……クー、起きてる?」
川 ゙ -゙)「何とか」
ξ ゚听)ξ「そう。ならいいわ。クーっていつも楽器持って帰るわよね。何で?」
何とか目も開くようになってきた。
ちくしょう、何で夏の太陽ってのはこんなにまぶしいんだ。
川 ゚ -゙)「んー……何となく落ち着くから」
聞いていた渡辺がくすくすと笑う。
从'ー'从「クーちゃんはサックス依存症だねぇ、末期かなぁ」
ξ ゚听)ξ「そんなに吹奏楽が好きなの?家でも毎日吹いてるわけ?」
ゆっくりと首を横に振る。目も完全に開くようになった。太陽が眩しいぞこんちくしょう。
川 ゚ -゚)「夜は音が響いて近所迷惑になるから吹かないさ。部活の後で疲れてるから吹く気もしない」
ξ ゚听)ξ「ま、常識的に考えればそうよね。家に防音室でもあれば別だけど」
適当に話しながら、学校へ向かう。吹奏楽は楽しいけど、勉強は面倒だ。死ねばいいのに。
从'ー'从「うーん、やっぱりここはクレッシェンドしたほうがいいかなぁ」
ξ ゚听)ξ「ちょっと待って、そこを強くするとクーのハモリが消えちゃうでしょ」
从'ー'从「そうだねぇ……でもでも、ここのメロディーは強くしたほうがいいでしょ?」
川 ゚ -゚)「ふむ……確かにそうだが……」
( ^ω^)「少しだけツンの低音を小さくすればいいお。
そうすればメロディーもハモリも引き立つお」
从'ー'从「なるほどー。ブーン先生ありがとうだよー」
( ^ω^)「おっおっお」
私のアルトサックス。
ツンのバスクラリネット。
渡辺のフルート。
三つの音を奏で、重ねる。
一音一音に試行錯誤を重ね、悪戦苦闘しながら少しずつ少しずつ一ヵ月後のコンテストのための曲を仕上げていく。
常に全体のバランスを考え、一粒一粒の音を美しく。
楽譜にペンを走らせ、時には前に書いた書き込みを小さな消しゴムで消す。
描いたときに掠れた黒鉛や、吹いている時に書き加え、そのままになっている薄い跡。
楽譜に大量に書き込まれたそれらが、何ヶ月も前からコンクールの練習に打ち込んできたことを示していた。
……っていうか、そろそろこれ、ちゃんと綺麗な字で書き直したほうがいいのかもしれない。汚すぎる。
( ^ω^)「それじゃ、今のところもう一回だお。
……1、2、3、4――」
ゆったりとした、テクニックをあまり必要としない曲。
コンテストでは、そのような曲が好んで使われる。
うちの高校も例に漏れていない、要るのはテクニックではなく表現力。
ギリシャ神話の女神の一人の名前を冠した曲名を目の端に捕らえ、音符とそれを包み込む小節、
そしてその上下に描かれた無数のペンの跡に従って指を動かし、息を吹き込む。
川 ゚ -゚)「――――――」
ξ ゚听)ξ「――――――」
从'−'从「――――――」
――コンテストまでに曲が完成すればいいが。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:45:02.73 ID:jaNT1UQF0
『音符は紙に書かれているだけでは意味を為さない。
楽器を持った貴方が吹くことで、初めて意味を持ち、そして物語を紡ぎ出す。』
どこで聞いたのかは忘れた。だが、この言葉を読んだときに目から鱗が流れた。
雑巾を全力で絞ったときの汚水くらい流れた。
そして、この言葉を心に刻み込んで練習した。
毎日決めた回数の腹筋、背筋、ビルトレ、発声練習をこなし、余裕があるときはそれぞ1セットずつ増やす。
何ヶ月もそれを繰り返して、コンクールで賞を取れるほどになった。
もちろんそれは私一人の力じゃない。友達のツンや一つ下の渡辺、そして顧問であるブーンのおかげだ。
ブーンはともかくとして、ツンと渡辺も自分で厳しいトレーニング内容を自分に合わせて作っているのだという。
自分に厳しくしないと、物語を紡ぎ出すほどの力量は持てない。……のだが。
从;'ー'从「クーちゃーん、へーるぷ、へぇーるぷ」
川# - )「……」
音楽室のピアノでチューニングを終え、楽譜を譜面台とともに用意した矢先に渡辺から声がかかる。
ツンとブーンがまたか、といった表情でこちらを見つめている。
( ;^ω^)「クー、早めに終わらしてやってくれお」
川#゚ -゚)「……はい」
言われるまでもなくサックスのマウスピースにキャップをして椅子の上に置く。
渡辺が泣きそうな表情で手をへろへろと振っている、反省しているのだろうかこの馬鹿は。
渡辺の隣に座る。どうも音楽室の木造の椅子は好きになれない。
川 ゚ -゚)「で?今日は何の教科で、どこだ?」
从;'ー'从「えーと、数学で、ここー」
机の上の折り目がついた一枚のプリントには何やら方程式が書かれている。
一年前に通り過ぎた内容だ、教えるのはともかくとして、適当に解いてやればいいだろう。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:45:33.79 ID:jaNT1UQF0
川 ゚ -゚)「………………」
从;'ー'从「………………」
川 ゚ -゚)「………………?」
从;'ー'从「………………」
川;゚ -゚)「………………!?」
从;'ー'从「………………」
川#゚ -゚)「………………」
从;'ー'从「………………」
川#゚ -゚)「……なぁ、渡辺?」
从;'ー'从「ふぁ、ふぁい?」
川#゚ -゚)「お前、ちゃんとこの頃の数学の授業聞いてるか?」
从;'ー'从「……あははー」
川#゚ -゚)「質問に答えろ、聞いてるか?」
从;'ー'从「……えっと、寝てました」
川#゚ -゚)「ほほう、そうか。相当余裕なんだなぁ。じゃこれ、標準形に直してみろ」
从;'ー'从「ひょーじゅんけー?あははークーちゃん、これ英語じゃないよー」
川# - )「………………」
从;'ー'从「………………」
川# - )「あのな、渡辺」
从;'ー'从「はひ」
川# - )「お前が言ってるのは『動詞の原型』だと思うんだが、どうだ?」
从;'ー'从「あ、それそれ」
川# - )「……それなおせ。部活終わったら私の家で徹底的に扱いてやる」
从;'ー'从「いやんクーちゃんのえっち☆」
川#゚ -゚)「誰のためだこのボケナスがあああああああああああああああああああ!!」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:46:21.27 ID:jaNT1UQF0
ξ ゚听)ξ「大変ねえ、渡辺の世話は。毎日毎日」
川 ゚ -゚)「根を上げたいくらいだ、全く。……で、ツン。エナメルはどうした?」
ξ;゚听)ξ「あ、ヤバ!教室におきっぱだ、取りに行かないと……校門で待ってて!」
川 ゚ -゚)「……分かった。忘れ物するなよ。」
ξ ゚听)ξ「ごめんごめん。さ、行きましょ」
川 ゚ -゚)「ツン、明日も朝連だぞ。ジャージで来た方が楽だと思うけど、家に置いてあるか?」
ξ;゚听)ξ「……ぁぅ」
川 ゚ -゚)「また教室か。早く取ってきてくれよ」
ξ;゚听)ξ「ご、ごめん!ほんっとごめん!」
ξ;゚听)ξ「ただいま。ごめんね、ほんと」
川 ゚ -゚)「スクールバッグは?」
ξ ;凵G)ξ
川 ゚ -゚)「うん。もういいから泣くな。もういいから。」
才能があるやつってのはどこか欠点があるとは聞いたことがある。
だが、そんな欠点を毎日毎日見せ付けられると、精神的に参るものだ。
自分の肌で、そう実感した。……多分いつか、慣れるんだろうな。
……ん、とするとこいつらと同じくらいの技量の私も欠点があるのか。
ま、そんなに毎日毎日欠点を見せてはいないだろう。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:47:13.03 ID:jaNT1UQF0
コンテストまでは、あと1ヶ月。
時間が、足りない。
もっと、時間が欲しい。
どっかに漫画みたいな時が止まる部屋とか時間の流れ方が遅くなる建物とかないもんか。
ツンも渡辺も、大体は完成しているみたいだし。
私だけかな、曲に不安があるのは。
……せめて、二ヶ月あれば何とかなりそうなんだけど。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:47:27.81 ID:eq5bbFLn0
総合でみたことある、支援
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:47:51.53 ID:jaNT1UQF0
↑
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◆┃ 从'ー'从 ┃◆└┘ ◆┃ . ('A`) ┃◆
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└─┘ | 川 ゚ -゚)クーは音符を追いかけるようです │ │└─┘
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13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:48:32.31 ID:jaNT1UQF0
用語説明:吹奏楽の用語とか作中に出てくる皆忘れてるような言葉とか。
コンテスト : アンサンブル(合奏)コンテスト。県大会から全国大会へつながる。
ジャンル:音楽 出場項目には各楽器ごとのアンサンブル、木管アンサンブル、金管アンサンブル、打楽器アンサンブルほかがある。
演奏する曲は自由、ドラクエを演るヤツもいた。
マウスピース : 楽器を吹くときに口にあたる部分の部品。
ジャンル:音楽. 木管楽器と金管楽器とでは大きさや音の出し方が違ってくる。
クレッシェンド : 音量をだんだん上げていくこと。
ジャンル:音楽
ビルトレ. : 「唇のトレーニング」の略。傍から見るとものすごく間抜けっぽい。
ジャンル:音楽
チューニング : 機械やピアノなどを用いて音程を一定に合わせること。
ジャンル:音楽 これを怠ると音楽は不協和音になる。
標準形 . : y=ax^2+bx+c の式を y=a(x-b/2a)-4b^2+c の形に変形すること。
ジャンル:数学 グラフを書く問題では必須。高一で学習する。
動詞の原型 : 一人称と二人称の現在形の後につく形。助動詞の後ならば必ず動詞の原型が使われる。
ジャンル:英語. 動詞の活用表では「原型・三単現・過去形・過去分詞・現在分詞」の順で書かされた記憶があるだろう。
エナメル. : エナメル素材でできたバッグのこと。運動部がよく持ってる肩提げタイプのバッグ。
スクールバッグ .: 学校指定のバッグ。大体寒色。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:50:43.18 ID:jaNT1UQF0
とりあえず今日はここで終わりです
代理スレ立てしてくださった総合の
>>479氏と
>>487氏に感謝。
人来ねえwwwwww
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:52:18.80 ID:eq5bbFLn0
乙、あんま人来ないとか言うのは
避けといたほうがいいぜ
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:53:54.37 ID:+dCl1TI50
ブーン系小説NEWS速報(2ch@崇拝)です
まとめさせて頂きます
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:54:08.83 ID:OFyhzbIk0
おつかれさん
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:54:55.07 ID:fvZ2DDCj0
クーがクーじゃないみたいだな
とりあえず乙
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/23(日) 19:56:16.91 ID:jaNT1UQF0
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。: