( ・∀・)モララーはバイオテロに巻き込まれたようです
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:40:14.72 ID:y3oX50Ro0
君が死んでからもう1年。君は今も僕を見守ってくれているのかな?
君は、僕の生まれて初めて出来た彼女だった。すごくハッピーにて、ハピネスだったなあ。
突然、白血病だってメディカルドクターにセンテンスされてから、君はホスピタルルームで日に日に弱っていった。
「ホスピタルってひまねえ」ってラフする君を見て、僕はいつも泣いていたんだ。
君の為に、僕の小汚いノートパソコンをあげたら、君はすごく喜んでくれたよね。
ネットをするようになった君がいつも見ていたサイト、それが「2チャンネル」だった。
ある日君はいつものように、ラフしながら言った。
「ほら、見てトゥデイも2ゲット出来たよ。」
「あまりパソコンばっかいじってると身体に障るよ」
なんて僕がアテンションすると、
「ごめんねえ。 でもね、これ見てよ。 ほら、この3のひと、2げっとぉ!なんて言っちゃってさぁ、ふふ」
僕は黙っていた。君がすごくファンそうで、僕は何も言えなかった。
「ほらみて、この3のひと、変な絵文字使ってくやしぃ?!だって。 かわいいねえ。 ふふ。」
僕はまだ黙っていた。笑う君を見て、どうしようもなくサッドになった。
「憶えててくれるかなあ」 君がふと言った。
「…この3のひと、私がいなくなっても、あの時変な奴に2をとられたんだよなー
なんて、憶えててくれないかなあ……インポッシブルかな……憶えてて、ほしいなぁ……」
それから数ヶ月後、君はファミリーと僕に見守れながら息を引き取った。
君はもうディスワールドに居ない、なのに僕は今F5を連続でクリックしている。
君の事を、3のひとが忘れないように、いつまでも、いつまでも忘れないように。
パラダイスにいる君とトゥギャザーに、今ここに刻み込む
2 ゲ ッ ト
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:41:04.15 ID:xhnyNNmJ0
俺は広い部屋で座っていた。家具も良質で、絨毯の毛も長く柔らかなリビングルーム。
――酒瓶や皿、スナックの袋を転がしたままにするのは、少々申し訳ないと感じた。
そして俺は、酒気を帯びて赤くなった頬のまま、グラス片手にあいつに問うのだ。
「これから、お前はどうしたい?」
あいつは、やはり酒気を帯びて赤くなった頬のままで、答える。
「君こそ――将来、どうしたいんだい?」
その問いに、ぼんやりと考える。
頭に重い液体を流し込まれたようだ。我ながら酔っているな、と自覚できる。
二十代も半ばになって、学生めいたショウライノユメを語っているのだ――相当な酔いだ。
「俺は、そうだな。今の職場でそこそこ頑張って、軍人恩給もらえるようになって退役したら――」
「退役したら?」
「パン屋でも開くか」
くくっ、とあいつは失笑。似合わない、なとど呟いている――失礼なやつだ。
4 :
◆5xFishXix2 :2007/08/18(土) 21:41:53.32 ID:xhnyNNmJ0
「なんだ? パン屋バカにするのか? 力仕事で早起き必須で、意外と大変だぞ?」
「ご、ごめん……でも、くくっ――」
「でもなんつーか、平和な感じでいいだろ? 町のパン屋さん」
そこであいつは決壊した。
堪え切れないというようにげらげら笑い出し、つられて俺も笑った。
「き、君が町のパン屋……? はは……開店したらぜったい買いに行くよ。ついでに指差して笑いに」
「いいね、王子サマも笑い出す美味しさ、とでもキャッチコピーにするか」
「うん、きっと買いに行く。――だから、パンにカラシとかワサビとかは仕込まないよーに」
「その手があったか!」
うわ余計なこと言ったか、と酒臭い息とともに頭を抱えるあいつ。
お互い、酔っている。先ほどから結構、眠気がきつい。
――だから俺は、眠る前にこれだけは聞いておこうと思った。
「で――お前は、どうしたいんだ?」
あいつは、頭を抱えたままでぴたりと動きを止めた。
……その表情は、見えない。
5 :
◆5xFishXix2 :2007/08/18(土) 21:43:04.39 ID:xhnyNNmJ0
「分からない。けど……ずっと、このままだと思う」
ぽつり、ぽつりと紡ぎ出された声は、どこか無機質なものだった。
「それで、いいのかよ」
「いいんだ。……もう、それでいい」
数百年前はいざ知らず、今は四番目の王子が野心を抱いたところで、国が割れるような時代ではない。
けれど、醜聞は生まれる。周囲が乱すこともあるかもしれない。――その選択に、俺が口を出す権利は無い。
「…………」
何も言えず、沈黙する。……あいつの血は、枷だ。
あり余る才能の全てを、表舞台で発揮する事を許さない、重い枷。
王族が故に、望めば周囲の手によって多少の我侭も叶うだろう。
しかし血は、あいつが欲するものを自らの力で勝ち取ることを、許さないのだ。
誰もが、あいつを見ない。『王子』ではない『あいつ』を。
「いいんだよ。――機械いじりもそれなりに楽しいし、それに……君が、居てくれたしね」
「アッー!!」
「……殴るよ?」
照れ隠しの冗談だったが、本当に殴られた。――けっこう痛い。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:43:45.50 ID:6fwEdnJ40
ktkr支援
7 :
◆5xFishXix2 :2007/08/18(土) 21:44:02.34 ID:xhnyNNmJ0
「だけどさ、もしお前がホントに王様になれたらどうする? 何がしたいよ?」
冗談めかした口調で、言う。
真面目な話は、もうここらで潮時だ。
「皆が平和に暮らせる国……でも、作りたいな」
「覇気がねえなあ――世界征服! くらい言えよ」
「やだよそんな面倒。征服した後は統治が待ってるんだから」
嫌な現実つきつけるなよ、世界征服と秘密結社は男のロマンだろ! などと叫び、グラスを煽る。
赤い葡萄酒が通り抜けた喉が、熱を帯びる。
見れば、あいつもコップの残りを飲み干していた。
ふと――ふらりと、身が崩れる。
「あー……なんか、眠ぃ……」
「……僕も」
そのまま二人して、ぐったりとソファに横になる。
眼前のあいつは一応王子サマのはずなのだが、気品の欠片も無い。
そのまま睡魔が襲ってきて、俺の意識は暗闇に――
8 :
◆5xFishXix2 :2007/08/18(土) 21:44:48.80 ID:xhnyNNmJ0
「ギコ」
「ん?」
「――ありがとう」
「ん……」
そんな声が、聞こえた気がした。
現実か、夢か――寝言かもしれない。
でも、確かに耳に残る言葉。
そこで、俺の記憶は闇の中に途切れて――
「でも、もう手遅れだよ?」
……なん、だ?
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:45:24.09 ID:xZ581rUJ0
待ってたよー
wktk
10 :
◆5xFishXix2 :2007/08/18(土) 21:45:53.85 ID:xhnyNNmJ0
「だって、もう、僕は――」
闇の底に、浮かび上がる顔。
それは――
(;;;。∀;・;;) 「ゾンビなんだから――」
腐り落ちた、あいつの顔。
いや、あいつじゃない。
ミ;;;;Д;;彡 「たいちょ……うたない、で……」
(;;;‘皿;;) 「たいちょう……たすけ、て……」
(;;.;;∀;;) 「いたいよ……たい、ちょ――?」
湧き上がる、顔。顔。顔。
見知った顔が、皆腐り落ちて――俺に向かって、手を伸ばしてくる。
逃げようとしても、手足が動かない。
11 :
◆5xFishXix2 :2007/08/18(土) 21:46:55.19 ID:xhnyNNmJ0
気づけば、足元に赤黒い池があった。――血だ。
皆の、血だ。
ぱくぱくと、自分の口が何事かを叫ぼうとして、しかし声が出ない。
(;;;。∀;・;;) 「さあ……」
ミ;;;;Д;;彡 「さあ……」
(;;‘皿;;;) 「さあ……」
(;;.;∀;;) 「さあ……」
手が。
手が。
無数の手が。
俺を血の池へと、引きずり込む。
抵抗できない。
ずるずると、引きずりこまれる。
足首から、膝、腿、腹、胸――粘つく感触が、首元まで迫る。
嫌だ、と叫ぼうとした口に、ついに血が詰め込まれ――
うほっ、wktk……あれ?デジャブってるなぁ……
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:48:53.45 ID:xhnyNNmJ0
( ・∀・)モララーはバイオテロに巻き込まれたようです
第五話「闇の底の悪夢」
.
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:49:29.99 ID:wBPqajK+0
しえん
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:51:10.46 ID:ZWEjDQezO
>>12 修正版って
>>1に書いてあるぞ。
終わったら六話が来るんじゃないか?
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:51:26.12 ID:xhnyNNmJ0
(; Д ) 「うわぁああああぁああああああぁああああああああああああッッッ!!」
叫びとともに、跳ね起きた。
同時、ぽとりと額から落ちる濡れタオル。
そして四肢に感じる、包帯やテープの締め付け。
(;゚Д゚) 「……あ、れ?」
見回せば見知らぬ部屋。
体を確認すれば自分は上半身裸で、そこに包帯とテープが教本のように丁寧に巻かれている。
包帯の下はガーゼ。その下は――VIP王国製の薬用ジェルのようだ。
細胞分裂の促進、鎮痛、雑菌の消毒など、さまざまな効果を持つが故の汎用性が売りの、最近のヒット商品。
ニューソク国では流通量がまだ少なかったため、使ったことは無かったが――
(,,゚Д゚) 「いいな、これ……」
あれだけ動いたのに、ほとんど筋肉に痛みを感じない。
ジェルによって適度に冷やされ、テーピングされた手足は、むしろ以前より軽快に動けそうだ。
と、ドアの向こうからぱたぱたと足音が近づいてくる。
音につられるように視線を向けると、ドアが開き、
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:52:12.40 ID:xhnyNNmJ0
(*゚ー゚) 「あ、目が覚めた……?」
一人の少女が、お盆片手に姿を現した。
それを見て、ギコの脳裏にやっと記憶が蘇る。
(,,-Д゚) 「あー……無事だったか。ええと――」
(*゚ー゚) 「あ、私はしぃよ。……その、さっきはありがとう」
(,,-Д゚) 「ギコだ。階級は少尉。ニューソクからの救助隊だが、部隊がゾンビにやられた。
……それと礼はいい。それより現在の時刻と、知ってる限りの状況を教えてくれ」
(;゚ー゚) 「え? えと、うん……」
ギコのよどみない問いに圧倒されたのか、少し口ごもりながらも少女は口を開く。
12歳くらい。華奢な体に、整った顔立ち。
6年後くらいには守備範囲かな、とぼんやりと思った。
(*゚ー゚) 「ええと、今は九時半過ぎよ。ギコさんは三時間くらい眠っていた……かな?」
(,,゚Д゚) 「そうか。そんなに……」
お盆をサイドテーブルに置くと、しぃはそこからペットボトルを取り上げ、コップに水を注ぐ。
少し脱水症状を起こしていたと指摘されて、ギコはコップの水をゆっくりと飲む。
ボトルに結露の滴が付着するほど冷えた水が、喉に心地いい。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:52:54.63 ID:xhnyNNmJ0
(*゚ o゚) 「私は今朝、爆発音で起きたら、街にゾンビが溢れてて……ずっと家で隠れていたの」
それが普通の反応だろう。
ギコは頷きながら、コップに水を注ぎ足す。
ごくごくと喉を鳴らして飲む。体が水分を求めていた。
(*゚ o゚) 「それで放送で、王様や、王族の首が晒されて――」
かしゃん、と硝子の砕ける音がした。
(,, Д ) 「……なん、だって?」
問い返す、自分の声が遠い。
首が? 王族の? 死んだ? 殺された? 誰に? 何で? 首? 首って? 生首? 斬首?
モララーは? 王族? 首が? 全部? 全部じゃない? でも――でも、もしか、したら?
――マニアワ、ナカッタ?
夢に見た、腐り落ちたモララーの顔。
ちかちかと不明瞭な視界の中で、それだけが鮮明だ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:54:08.45 ID:6fwEdnJ40
ラジオに間に合うといいな支援
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:54:16.82 ID:xhnyNNmJ0
――全身に寒気が走った。吐き気がする。
先ほど口にした冷水が、体の中で得体の知れない何かに変貌したかのようだ。
頭の中で、何かが轟々と鳴っている。
――ナンダ? コレハナンダ?
(,, Д ) 「ああ、これが……」
――絶望か。
思った瞬間、ぱぁん、と高い音と共に、頬に鋭い痛みが走った。
一瞬遅れで、頬にじくじくと熱と痺れるような痛み。
(;゚ o゚) 「大丈夫っ!?」
見れば、手を振りぬいた姿勢のしぃが居た。どうやら平手打ちを食らったらしい。
そのまま頭を掴んで視線を合わせて、異常はないかと瞳を覗き込んでくる。
――意外と思い切りがいいと、そう思った自分に思わず苦笑した。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:55:44.95 ID:xhnyNNmJ0
(,,-Д゚) 「はは……」
思わず、苦笑する。
国はゾンビだらけで部下たちも殺され、更に親友も殺されたかもしれない、今の状況。
それでも――どうやら絶望には、まだ早いらしい。
つくづく頑丈にできている自分に、苦笑する。
(;゚ o゚) 「大丈夫、悪寒や吐き気はしない? ああ、どうしよう――」
悪寒に吐き気を問う――脳内出血を危惧しているのか。
素人の割に判断が的確だ。
そんな思考に自分の冷静さを確認すると、
(,,-Д゚) 「悪い。放送見てなくてな――動揺したのは、王族に友人がいるからだ。そいつは……」
ギコは正直に原因を話し、モララーの特徴を列挙し始めた。
――◆――
(*゚ー゚) 「その人は――いなかったはずよ。記憶力には自信があるから、安心して」
しぃの返答に、ギコは硝子の破片を片付けながら、ほ、と安堵の吐息をついた。
生死不明なのは相変わらずだが、天秤は、少しだけ生の方に傾いた。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:56:44.99 ID:xhnyNNmJ0
(,,-Д゚) 「ありがとな。そういや……俺の装備は?」
コップの破片の片づけが終わる、ギコは問う。
それに対して、しぃは部屋の隅にまとめられた装備を指差した。
(*゚ー゚) 「そこにあるけど……でも、どうするの?」
答えず、ギコは装備へと歩み寄り、畳んであったシャツに袖を通す。
重ねて防弾仕様のタクティカルスーツを着込むと、硬化樹脂製のボディーアーマーを装着。
腰にはホルスターと幾つものパウチがついたガンベルト。
格闘戦用のプレート付きのグローブに、頑丈なコンバットブーツ。
ザックには水筒と携帯食料、治療キット、携帯端末。他、諸々の雑品。
手持ちの装備を確認。
血脂に塗れたカタナとナイフが一振りずつ。
強姦魔から奪い取ったリヴォルバーを加えても、心もとない装備だ。
(,,-Д゚) 「ま、飛び道具があるだけマシか。……じゃ、世話になったな、しっかり隠れてろよ?」
言って、ギコはリヴォルバーとナイフをホルスターに。カタナをベルトに差し、予備の弾丸をパウチに。
ザックを背負えば、準備は終わった。
(;゚ o゚) 「……出て、行くの?」
ギコの別れの言葉に、しぃが信じられないとでも言うように目を見開く。
さっきまで倒れていた人間が、いきなり外に出ようとすればそれは呆れるだろう。
まして、こんな状況では。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:58:21.09 ID:xhnyNNmJ0
(;゚ o゚) 「ギコさん、倒れたばかりなのよ? それに、ここなら安全なのに――」
しぃの心配そうな言葉。
その心配ももっともだ。拳銃と刃物だけを持って、さっきまで倒れていた人間がゾンビの蠢く街へ?
我ながら正気の沙汰ではない。
いっそこの幼い少女を護って、静かに救助を待つほうが賢いのかもしれない。だが――
(,,-Д゚) 「言っただろ、友人がいるんだ。……助けに行かなくちゃ、ならねえ」
それでも、行かなくてはならない。
自分はモララーの親友だ。
離れても親友だと――そう、約束したのだ。
そして、虚しく命を散らした部下たちの無念も、晴らさなくてはならない。
彼らの死は無駄ではなかったのだと。意味があったのだと。
それを生き残った自分が示さなくて、誰が示すというのだ。
――心の中で、戦う理由を一つ一つ確認し、己の心を奮い立たせる。
(,,-Д゚) 「できれば残ってやりたいが――悪いな」
こんな状況で、一人で取り残すしぃには悪いとは思う。
だから謝罪は、本心からのものだった。だが――
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:59:04.36 ID:6fwEdnJ40
支援
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 21:59:21.33 ID:xhnyNNmJ0
(;゚−゚) 「だったら……私も、私も連れて行って!」
流石にこの返答は、予想外だった。
(;゚Д゚) 「オイ、街の状況分かってんのか!?」
人食いのゾンビがうろついている町だ。
少女を連れて子守ついでに散歩、といった状況ではない。
(;゚−゚) 「迷惑だろうし、とんでもないことを言ってるのも分かってるの」
でも――と、しぃは言葉を続ける。
その華奢な体が小さく震えていることに、ギコは初めて気が付いた。
(;゚−゚) 「一人で家にいると、また襲われるんじゃないかって――怖いの」
考えてみれば、無理もない話だ。
未遂に終わったとはいえ、強姦されかかるという、ただそれだけでトラウマものの事態の後に独り?
しかも外には化け物の群れが居るのだ。
いくら気丈でも、12かそこらの少女に耐えられる状況ではない。
だが――
(;-Д-) 「ゾンビ相手に戦うんだぞ? できるのか? 武器は?」
自分の戦いに素人がついてくれば、まず命は無い。ギコとしては、説得せざるをえない。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:00:02.54 ID:xhnyNNmJ0
(;゚−゚) 「護身用の拳銃があるわ。それに、民間救命士の資格を持ってる――少しは役に立てるはずよ」
ああ、とギコは頷いた。
医療器具の使い方の上手さや、とっさの見立ての的確さ。
それらの理由はそれかと、納得したのだ。
(;-Д-) 「だが……」
(;゚−゚) 「お願い。この区画にある、第二基地まででいいの……そこに、お父さんがいるから」
(,,゚Д゚) 「基地……と、そうだ。すっかり忘れてた、この区画は?」
(;゚−゚) 「第七区。……一応、基地までの道も知ってるわ」
ザックの中の携帯端末には、VIP国の地図も入力されているが――
現地の人間がいるに越したことは無い。
そして、医療資格の保持者というのも魅力的ではある。
(,,-Д゚) 「どの道、VIP軍とは合流するつもりだったしな――」
一人でできることには、限りがある。
どうせどこかの基地には行かねばならなかったし、土地勘のある人間がいるに越したことはない。
戦力としては――まあ、もとより期待はしない。
(*゚ー゚) 「じゃあ……っ」
(,,-Д゚) 「ま、短い間だが――よろしく頼む」
そう言って、ギコは少女に向かって手を差し出した。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:00:53.41 ID:xhnyNNmJ0
――◆――
地下鉄の線路上。
無数のケーブルが這い回るそのトンネルの暗闇の中で、幾本もの光の線が戸惑うように交錯していた。
「ぐぁッ!!」
腕を切られた護衛官の一人が、腕を抑えて蹲る。
別の二人がカバーに入って射撃するが、『敵』を捉えることができない。
〈;;;[━]〉 「ィヒヒヒヒヒッ!!」
爪を構え、嗤う化け物。
幾つものライトが闇を裂くが、見えるのはその影だけだ。
川 ゚ -゚) 「……ッ!!」
偶然、マグライトが敵影を捉える。
クーがマシンピストルを連射するが――
川;゚ -゚) 「く……っ!」
避けられた。
『敵』の跳躍力と身軽さは異常だ。
ケーブルを掴み壁面すら足場にして、トンネル内を縦横に動き回られては照準も定まらない。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:01:34.60 ID:xhnyNNmJ0
銃声と怒号、そして悲鳴がトンネルに反響する。
モララーを守るように円陣を組んだ護衛官たちは粘り強かったが、状況は圧倒的に不利だった。
(´<_` ) 「……そこか」
弟者が僅かに捉えた敵影の右方に向けて、サブマシンガンを連射。
( ´_ゝ`) 「任せろ」
兄者が回避予測地点に向けて精密なライフルの射撃を叩き込むが、手ごたえはない。
サルのような身軽さで、上下左右、奥行き含めて全てに移動が可能な相手だ。
二人の息の合った連携も、通じない。
(´<_` ;) 「まずいな……このままだと状況は悪化するばか」
川;゚ -゚) 「ぅ……」
と、跳弾が当たったのか防弾ベストの肩を押さえたクーのフォローに、流石兄弟が動く。
川;゚ -゚) 「少し痛んだだけだ。大したことは無い……大丈夫だ」
狭く暗いトンネル内だ。敵の姿は捉えられず、逆に敵からは自分たちが丸見え。
更に空薬莢は足元に溜まって足場を悪くする。弾丸は跳ね回って自分たちに返ってくる。
時間を経るごとに疲労が重なり、悪化する状況――
( ;・∀・) (――最悪だ)
支援
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:02:44.55 ID:xhnyNNmJ0
このまま嬲り殺されるのか。
こんな冷たい地の底で、化け物の爪に切り裂かれて、血を流して野垂れ死ぬのか――
そんな絶望的な思いが、耳障りな『敵』の哄笑と供に、皆の心を染めていく。
〈;;;[━]〉 「ヒヒヒヒッ!!」
と、流石兄弟とクーが動いたことによって発生した穴に向けて、化け物が踏み込んできた。
モララーを守るための密集隊形が裏目に出て、護衛官たちが銃口を向けるのが一瞬遅れる。
化け物の爪が、モララーの首筋に向けて――
( ;・∀・) 「……ッ!!」
〈;;;[━]〉 「……!?」
と、モララーが冷や汗を浮かべながらも身を逸らして、際どいところで振るわれた爪を逃れた。
次の瞬間には護衛官たちの射撃が始まり、『敵』も即座に後退して闇の中に。
また、敵の姿が見えなくなった。
(´<_` ;) 「肝が冷えたな……」
川;゚ -゚) 「まったくだ」
ギリギリだったと、銃とマグライトを構えたまま、呟く二人。
その言葉に同意するように、護衛官たちが頷いた。
……一人を除いて。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:03:30.11 ID:xhnyNNmJ0
( ´_ゝ`) 「なあ」
兄者だった。
兄者は普段の彼とまったく異なる、ひどく落ち着いた口調でモララーに問う。
( ´_ゝ`) 「王子。――今、あの化け物の攻撃が『捉えられた』のか?」
皆が目を見開き、青褪めたままのモララーに視線を向ける。
( ;・∀・) 「うん。……ギリギリだけど」
その言葉に、兄者を除く皆の表情が驚愕に彩られる。
彼らとて相応の訓練を受けた精兵だ。
その彼らに見切れない攻撃を、守るべき対象の王子が見切った?
(´<_` ;) 「…………」
川;゚ -゚) 「…………」
その事実を知ったとき、数人の脳裏に掠める作戦があった。
だが――
(´<_` ;) (それは……)
川;゚ -゚) (いくらなんでも……)
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:04:20.91 ID:xhnyNNmJ0
( ;-∀・) 「いいよ。だいたい、皆が何を考えてるかは分かるし――覚悟はある」
と、皆の心を読んだかのように、モララーが言う。
しかしその顔は青褪めているし、足はがたがたと震えている。
先ほどの攻撃の恐怖が、その身を縛っているのだ――どう見ても、動けるような状態ではない。
(´<_` ;) 「駄目だ」
川;゚ -゚) 「それは、我々の存在意義に反する事です」
だから即座に、皆がその意見を切り捨てようとする。
( ´_ゝ`) 「いや。現状、他に手段は無いな。――よし、王子、奴を引き付けてくれ」
――兄者以外は。
(´<_` ;) 「兄者! 何を言っている!!」
川;゚ -゚) 「護衛対象を殺す気か!!」
その兄者に向かって、護衛官たちから叱責が飛ぶ。
確かにこの化け物の攻撃を捉えられるのが王子だとしても、それを護るのが彼らの仕事だ。
囮になどできるわけが無い。
――しかし叱責を受けても、兄者はたじろがなかった。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:05:05.64 ID:xhnyNNmJ0
( ´_ゝ`) 「王子、頼む。――俺は弟者やクーと同じように、アンタを仲間だと思ってる。」
兄者の視線が、静かにモララーを見据える。
( ´_ゝ`) 「俺はもう、仲間を誰一人死なせたくないんだ……」
いつもはふざけてばかりいる兄者の、真摯な言葉。
皆が一瞬、言葉を失った。
( ;-∀・) 「うん。……仲間として、最善を尽くすよ」
青褪め、冷や汗を流したまま、モララーは兄者の言葉に頷く。
川;゚ -゚) 「王子ッ!!」
( ;-∀・) 「大丈夫だよ。……これでも、ボクシングでは一人にしか負けたことが無いのが自慢でね」
軽口を叩きながらも、モララーの足は相変わらず震えていた。
当たり前だ。
――これから自分は、あの高速の爪の前に、何の守りも無く晒される。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:06:06.89 ID:xhnyNNmJ0
( ;-∀・) 「じゃ、カウントだ。――3」
それを思うと、怖くて怖くて仕方がない。
( ;-∀・) 「2」
だが、周りには自らを信じてくれる仲間が居る。
( ;-∀・) 「1」
その信頼に応えるために、するべきことがあるのだ。
――自分だけに、できることが。
( ;・∀・) 「ゼロッ!!」
――足は、もう震えていなかった。
モララーが一人、円陣から飛び出す。
足元の砂利を踏みつけて、体を傾け全力で走る。
背後のマグライトの光が彼を追う。
と、ふと首筋が泡立つ感覚。
( ;・∀・) 「……ッ!!」
頭を下げて砂利の上を転がると、後ろ髪を掠める何かの感触がした。
慄いている時間はない。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:06:14.34 ID:6fwEdnJ40
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/18(土) 22:06:49.73 ID:xhnyNNmJ0
即座に構えを取りつつ立ち上がる。
とっさに選択したのは慣れたボクシングのファイティングポーズ。
眩しいほどにマグライトの光が交錯し、皆が銃を構え――
( ;-∀-) 「ごめん! 静かに!」
この圧倒的な闇の中で、中途半端な光はむしろ邪魔だ。
目を閉じる。
( ;-∀-) (…………読み取れ)
空気の流れを。敵の立てる微かな音を。
と、左斜め後方から微かな音。
( ;-∀-) (足元……ッ!)
前方にステップしつつ、身を回して振り返る。
ぎりぎり。――ふくらはぎのあたりを風が掠めた。
〈;;;[━]〉 「ィヒヒヒヒヒィッ!!」
嘲笑が聞こえる。
何をしても無駄だ、とでも言うように。
( ;-∀-) (声の高さからして、身長は低め。頭の位置は――)
感じる恐怖を押し殺し、必要な情報だけを読み取っていく。
プレート付きのグローブを、ぎゅっと握り閉めた。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
空気の流れに、微妙な変化。刺々しい雰囲気。感じる悪意と視線。
そして砂利を微かに踏みしめる、音――
来る。
必殺の一撃が。
自分の命を奪う一撃が。
――警鐘を鳴らす本能を、意思と覚悟で押さえつけた。
来る。
来る。
来た――!
( #・Д・) 「そこだぁああああッッッ!!」
動いた、と自覚したときには全ては終わっていた。
頬を、爪が掠める感触。
それと同時に、モララーの拳は『敵』の顔面の暗視ゴーグルを打ち抜いていた。
カウンターパンチ――それはボクサーならば誰もが夢見るような、理想的な一撃だった。