1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
俺も旅に出ようかな……
2 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:00:26.62 ID:K/WiUcCs0
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:01:25.88 ID:bOQCePQ/0
wktk
4 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:01:39.83 ID:K/WiUcCs0
数分くらい商店街から離れていくと、こじんまりとした神社が見えてきた。空き地のような広い敷地を構えている。
しかし、「ここか?」と俺がツンに尋ねても、黙ったままだ。
仕方がないから敷地内に入ると、ツンはやっと口を開いた。
ξ゚听)ξ「…やっぱりいい」
('A`)「ん?なんでだよ。せっかく連れてきてやったのに」
ξ゚听)ξ「いいって言ってるじゃん。早く戻ってよ」
ツンはどうも神社へ行くことを拒否しているようだ。
なぜだろう。静かな場所に行って食べ物を食べたいんじゃなかったのか。
理由を尋ねてもやはり無視を続ける。
5 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:03:34.28 ID:K/WiUcCs0
('A`)ドクオは夏の旅に出るようです
このままでは困ると、俺は話しを繋げる。
('A`)「じゃあ…、商店街に戻るのか?」
ξ゚听)ξ「嫌だ」
('A`)「なんだよ。俺も立ちっぱなしは疲れた。ここで休もう」
ξ゚听)ξ「…いやだよっ」
急に幼子のようにツンは駄々を捏ね始めた。よほど彼女が嫌がる理由が敷地内にあるのだろう。
俺はそれがどうしても知りたくなった。同時に、さっきから抑えていた尿意がどんどん大きくなっていく。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:04:34.17 ID:v/mD7YU9O
wkwk支援
7 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:05:19.79 ID:K/WiUcCs0
('A`)「んーー!」
ξ゚听)ξ「なんだよ」
('A`)「…立ち小便がしたくなった。あっちの草むらなら大丈夫だよな?」
ξ゚听)ξ「…キモイ」
('A`)「はは。じゃあちょっと行ってくるから待ってて」
そう言って俺は、敷地内の周りを覆う草むらの中へと身を隠した。
別に隠しているつもりはないのだが、ここは神社の灯りが届かないので体が暗闇に包まれるのだ。
ちなみにその場所に着くまで結構距離があった。90メートル弱だろうか。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:05:35.64 ID:uSGjFVSgO
きたか支援
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:06:18.78 ID:XTr/8HnmO
きたな支援
10 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:07:39.65 ID:K/WiUcCs0
ジョロロ…
('A`)「…ふぃー。野外プレイもだいぶ慣れたな」
用を足した後、しばらく向こうの端から端まで見渡してみる。暗闇に目が慣れて段々と視界がクリアになり、人がいることを確認した。
2…3人か。その集団は緑や赤の光をあちこちに散らしている。どうやら花火をしているようだ。
人がいないから行きたくないのか。それだけではないだろう。きっとその人物を嫌がっているんだ。
俺はもうちょっと様子を見ることにした。
('A`)「背丈は俺よりみんな大きいな。なんか恐い連中だ」
('A`)「…ん。なんだろ。あいつらどっか同じとこを見てる」
11 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:09:21.89 ID:K/WiUcCs0
「おい、あそこになんかいるぞ」
「ホントだ。あんなとこで何やってんの」
「結構可愛いじゃん。なあ、ちょっと行こうぜ」
何か話し合っているようだが、聞き取れない。
咲いていた花火が全て消え、集団は歩き始めた。こちら側へじゃない…、入り口のほうだ。
ξ゚听)ξ「…来る」
ξ゚听)ξ「でも、暗くて誰だかわからないよ」
ξ゚听)ξ「…ばかドクオ。早く来てよ」
12 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:11:05.08 ID:K/WiUcCs0
「おいーーっす!」
ξ゚听)ξ(…!誰こいつら!?)
「こんなところで何してんの」
ξ゚听)ξ「べっ、別にただ立ち寄っただけよ」
('A`)「何だ、ツンと話してるぞ…」
「神社に立ち寄っただけって変じゃね?」
「可愛い浴衣着てんね」
ツンの周りを、大柄な男達が囲む。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:11:58.55 ID:bOQCePQ/0
支援
14 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:13:06.25 ID:K/WiUcCs0
('A`)「…これはなんという…」
(;'A`)「はっ!! 助けるべきだろ自分!!」
草むらを掻き分けて俺はツンの元へと急いだ。
暗闇と生い茂った草の性で前方が見えない…。早くも走れない。
俺は不安な気持ちで胸がいっぱいになる。とにかく、ツンを助けねばと、早く早くと急かしていた。
しかし、脳の命令はそう簡単にスムーズに体に行き届くわけではない。
('A`)「どわっち!」
('A`)「あ…足がもつれた」
15 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:15:11.92 ID:K/WiUcCs0
('A`)(…つぅーーーーーーん!!!)
('A`)「はっ!」
('A`)「心の中とはいえあの生意気娘の名を叫んでしまった!」
…でもそんなの今は関係ない。
あの男達がツンに何か乱暴をしたら、おばさんに合わす顔がない。
俺は本能的にも分かっていたし、頭でも理解していた。
ツンが危険だ。
16 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:16:50.59 ID:K/WiUcCs0
__
「まだ祭りって終わってないよねー」
「足、悪ぃの?」
「ねえねえ、ちょっと俺たちと一緒に行こうよ」
ξ゚听)ξ「何言ってんだよ!き…消えろ」
「消えろはないんじゃね?」
「ちょっと生意気だなこいつ」
ξ゚听)ξ(ほんとマジうざい…)
ぶんっ!
「わ!危ねえなこいつ。いきなりターンしやがって」
「車椅子も安全運転で行こうぜ、な」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:17:25.31 ID:2qnKzTKSO
支援
18 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:18:03.44 ID:K/WiUcCs0
人が走る音と、何か車輪がアスファルトを滑る音が聞こえる。
ツンが何らかの状況に追い込まれているということだろうか。
やばい。本格的に焦ってきた。入り口まで後数メートル…。
ξ;゚听)ξ「………」
「逃げる気かよー」
ξ;゚听)ξ(もっと!もっと早く走りなさいよこのポンコツ!)
タタタッ…
「頑張ってるみたいだけど、よゆーで追い抜けちゃうよ?」
ξ;゚听)ξ「はぁはぁ……」
「やっぱ、車椅子じゃーねー」
ξ;゚听)ξ「!!」
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:19:25.02 ID:2qnKzTKSO
支援
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:19:32.39 ID:bOQCePQ/0
し、支援ッ!
21 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:19:47.12 ID:K/WiUcCs0
ξ )ξ( ('A`)『く、車椅子が人の足に勝てるわけねーだろっ』 )
ξ )ξ
ξ;听)ξ「……」
「おいおい、泣き出しちゃったよ」
「別にそんなつもりなかったけどねぇ」
「…なんか一気にシラけたよ。行こう行こう」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:20:24.59 ID:2qnKzTKSO
支援
23 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:21:59.42 ID:K/WiUcCs0
ようやく草むらを抜けた俺は辺りを見回す。
入り口からちょっと離れたところに集団とツンはいた。
急いで俺は駆けつける。
(;'A`)「はぁはぁ…やっと、追いついた」
ξ )ξ
(だれあいつ…?)
(;'A`)「ちょ、ちょっとまてーーやおまえらぁああ!!!」
「あん?」
(;'A`)「この子になにしたぁあああ!!」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:22:42.99 ID:bOQCePQ/0
ドクオwwww早漏すぐるwwww
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:23:23.35 ID:2qnKzTKSO
支援
26 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:24:15.66 ID:K/WiUcCs0
ξ )ξ「!!」
こんな風に啖呵を切るのは生まれて初めてだと思う。
ツンはずっと下を向いたままだ。男たちはこちらにガンを飛ばしながら話しかけてくる。
恐い…。すごく恐いけど、ここで下がったら、俺は金玉を持ってる資格なんかないと思った。
「別になにもしてねーよ」
「ああ。まじなにもしてねー。そいつ泣いてっけど、理由知らんし」
男たちの態度は冷え冷えとしていた。俺はツンの方を振り向く。
27 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:26:00.08 ID:K/WiUcCs0
('A`;)「ほ、ほんとかツン」
ξ )ξ「…」
ξ )ξ「えっちなこと、されそうになった」
「はあ!!??」
男たちは顔を見合わせて困惑していた。よく見ると、ツンの浴衣や髪型が少し乱れているじゃないか。騙されないぞDQNめ
…本当に危ない。ガチで取り返しのつかない事態になるところだった。
そして俺の感情の矛先は、男たちに向けられる。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:26:17.21 ID:ucMKizER0
支援
29 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:27:47.36 ID:K/WiUcCs0
('A`)「ぶるああああああ!!!」
('A`)「ツン!!おまえは先にどっか行ってろ!!」
ξ )ξ「うん」
('A`)「こんのクソ外道がーーー!!!!」
「…なんだこいつ。(外道はその女だと思うんだが)」
「ってかさ、おまえ、その子のなんなの?彼氏…ではないよな。その面で」
('A`)「彼氏なんかじゃねえ!!俺はな」
('A`)「…」
('A`)「なんだろうか?」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:28:46.93 ID:3kKSvTU70
なんだろうな?w
31 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:30:57.54 ID:K/WiUcCs0
俺がふと怒らせた肩を沈めると、その隙に男たちは、ここぞとばかりに闇の中へと消えてしまった。
「まじイミフーーww」などという言葉を吐き残して。
(;'A`)「よし。なんとか追っ払ったぞ」
ξ )ξ「…あいつらがアンタに呆れて、勝手にどっか行っただけだよ」
ツンは俺の斜め後ろで冷めた顔をしていた。
('A`;)「ツン!どっか行ってろって言ったじゃんか」
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:31:45.73 ID:bOQCePQ/0
ツン、ド外道wwww
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:32:28.50 ID:R4bbg0h60
これはwwww
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:32:38.50 ID:2qnKzTKSO
支援
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:33:03.21 ID:ucMKizER0
はぁ…なんでここんとこ最近のツンってこんなにムカつく奴が多いんだろ。
36 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:33:09.36 ID:K/WiUcCs0
ξ )ξ「そんな必要ないよ」
('A`;)「な…なんでだよ」
だって、ウソだもん。
37 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:34:25.01 ID:K/WiUcCs0
('A`)
うそ?
ξ゚听)ξ
ちょっと、遊びいかないかって誘われただけよ
( A )
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:35:04.82 ID:2qnKzTKSO
支援
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:35:37.71 ID:ucMKizER0
支援
40 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:35:40.49 ID:K/WiUcCs0
無意識に手がでた。
堪忍袋の尾が切れたとはこういうことだろうか?
ξ゚听)ξ「つっ!!!!!」
俺の手がツンの頬にぴしゃりと当たる。
本当に無意識のうちに手が伸びたとしか言い様がないのだ。
…自然と頬を打つ強さに加減が無くなっていた。
(;'A`)「……」
41 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:38:24.40 ID:K/WiUcCs0
(; A )「……」
俺とツンは共に俯いていた。俺は彼女を殴った右の掌を見つめる。
そして…、頭を上げた。
ξ )ξ
まだツンは俯いている。
暗さと前髪に隠れてよくわからなかったが、仄かに頬は赤くなっているようだった。
42 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:38:51.17 ID:K/WiUcCs0
('A`)「…」
俺は何も喋らなかった。
彼女から口を開くのを待っていたのだ。
おまえは言う事があるはずだ。
俺に。
43 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:41:00.53 ID:K/WiUcCs0
二人の間に沈黙が流れていた。
しかし街の方からはまだまだ楽しそうな声が聞こえてくる。
俺は段々我を取り戻してきて、「人を平手打ちとはいえ殴ったのは初めてだ」なんて思っていた。
それからまたちょっとだけ時間が経って、ようやくツンもゆっくり頭を上げ始める。
彼女の瞳は弱弱しく潤み、長いまつ毛はしっとりと濡れていた。
…泣けば済むことじゃない。だが、俺はかなり動揺した。
夕方見せた顔じゃない。
これは、夕方俺と喧嘩をしたときに見せた顔とは違う。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:41:47.61 ID:2qnKzTKSO
支援
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:43:41.74 ID:bOQCePQ/0
支援
46 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:43:43.71 ID:K/WiUcCs0
ξ;- )ξ「…」
('A`)「ごっ」
('A`)「ごめんな。」
俺はツンの口から謝罪の言葉が出るのを待つために、沈黙を作った。
それなのに、顔を上げたツンの表情は、逆に俺の口から
「ごめん」その言葉を出させるように作用した。こんな風になるはずじゃなかったのに。
ξ;- )ξ「ひぐっ…ひぐ…」
ツンは嗚咽交じりに泣き出した。
まるで幼児のようだ。そして、流れる涙を手の甲で拭い、口を開く。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:44:51.54 ID:2qnKzTKSO
支援
48 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:45:54.74 ID:K/WiUcCs0
…声も体も、全てが震えていた。
鼻から水が垂れてきそうな具合だった。ツンは塞き止めたものを一気に流すように喋り始める。
ξ;- )ξ「ドクオ…うっ、ごめん…ごめんなさい…」
ξ;- )ξ「きっ、キライだよねアンタだって…ひぐっ!…私のこと…」
ξ;- )ξ「我侭でさ…、意味不明でさ…、ヒステリックでさ…、さっきから困ってるでしょ?」
ξ;- )ξ「私もね…、うっ、ときどき、自分で自分が何やってんのか分からなくなるのよ!!!!」
('A`)「…」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:46:58.73 ID:2qnKzTKSO
支援
50 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:49:57.11 ID:K/WiUcCs0
俺は何も言えない。何を言ったらいいのかわからない。
…でも、口を開かなきゃ駄目だ。
パニックになっているツンに自分の言葉を挟ませて、"会話"を成り立たせなくては。
だって、このままじゃ彼女は自分を責め続けて、心が破裂させるだろう。
きっと…、今までもそうしてきたんだ。
胸の中の辛いことや黒いものを、こうやって涙と一緒にして吐き出すしか術がなかったんだ。
高圧的な態度は、それを精一杯抑制するための仮面なのだ。
なぜか俺はそのことを一瞬にして悟っていた。
それは、俺も彼女と同じように胸の中にドロドロしたものを抱えている人間だったから。
それを、こんなふうに自分の外に吐き出せるかどうか。
それだけの違いだったんだ。
やっと気付いた。彼女も俺と同じなのかもしれないと。
51 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:51:47.32 ID:K/WiUcCs0
ξ;- )ξ「こっ、この足がぁ!!悪いのよ!」
ツンは左足を浴衣の布地越しに、拳で殴り始めた。鈍い音が出る。
('A`)「やめろよ!おい!ますますひどくなるよ!やめろって…」
俺はそれを両腕で制止する。ツンは呆気なく俺の力に抑えられ、再び小さく泣き始めた。
俺と彼女の距離が狭まる。よし、今なら話しかけられる。俺は腕を解いた。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:53:10.52 ID:2qnKzTKSO
支援
53 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:53:57.55 ID:K/WiUcCs0
('A`)「一つずつ、聞いていくよ…」
('A`)「いや、それよりまず、俺からだな」
('A`)「さっきは殴って悪かった。顔は女の命なのにな…。最悪だったよ俺」
俺は車椅子の前で土下座をした。地に頭をつけるのは、初めてだ。
('A`)「あと、急に用を足しにどっか行っちゃってごめん」
('A`)「元はといえば、俺がもう少し我慢してれば変な男たちも寄り付かなかったんだ」
どうしても、目線を完全に合わせて彼女に言葉を渡すことができない。
ツンは黙ったまま、俺の話しを聞いている。
54 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:55:40.46 ID:K/WiUcCs0
('A`)「…でさ、今度はツンのほうなんだけど」
('A`)「まずは、なんで神社に入りたくなかったんだ?」
ξ;- )ξ「クラスメイト…」
('A`)「クラスメイト?」
ξ;- )ξ「花火してたでしょ?クラスメイトがいると思って…行きたく、なかった」
('A`)「馬鹿にされるのか?何か言われるのか?」
ξ;- )ξ「馬鹿にされるっていうか、学校では、シカトされる」
ξ;- )ξ「そのくせにこういう場所で会うとね、嫌な目をされるの…」
ξ;- )ξ「ひぐっ…。だから嫌だった…。ドクオに、その姿を見られるのも…、嫌だった!」
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:56:33.08 ID:YUz7xrOR0
支援
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:57:14.07 ID:2qnKzTKSO
支援
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:57:20.69 ID:gnIIhudkO
支援
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 21:58:18.88 ID:bOQCePQ/0
支援
59 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 21:58:53.76 ID:K/WiUcCs0
ツンの口調が段々と幼くなっていた。
学校では空気扱い。しかし外では生殺し…。
よくあるパターンだ。俺もそういう状況に追い込まれた時期は無かったとは言い切れない。
ところでなぜツンが学校でそんな扱いを受けるのだろうか?
…尋ねようと思ったが、即座にその考えは閉まった。
ハブられている人間に、ハブられている理由を尋ねるなんて、ひどすぎる。馬鹿げてる。
大体予想もできる…。だからやめておこう。
俺は続けた。
('A`)「そっか…。じゃあ、なんでウソついたんだよ」
('A`)「お前の身に何かあったらな」
('A`)「おばさんにどう俺は…」
('A`)「それにな、お前だって…」
60 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:01:12.98 ID:K/WiUcCs0
責めているわけではないのに、自然と口調が厳しくなる。
それ以前に自分でも何言ってるかよく分からなくなってきた。
俺はとりあえずツンの返答を待つ。
ξ;- )ξ「別に…、理由…、ない」
ξ;- )ξ「でもっ…、こんなに怒られるって分からなかった。うっうっ」
もはやあの高圧的で棘棘しかったあの姿はない。
目の前にいるのは、ただ子猫のようにすすり泣くただの女の子だ。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:02:54.77 ID:2qnKzTKSO
支援
62 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:03:08.31 ID:K/WiUcCs0
ξ;- )ξ「本当に私って、わけわからない…」
ξ;- )ξ「ごめんなさい、ごめんなさい…」
もうここまで弱くなってしまった姿を見てしまったら、こっちも潔くそれを許さざるを得ない。
('A`)「…わかったよ。もういいよ」
('A`)「ん」
俺はツンの膝にちょこんと乗っていた焼きそばに気がついた。
だいぶ中身がぐちゃぐちゃになっている。
('A`)「じゃあ…、誰もいなくなったし焼きそば食べようか?」
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:04:13.65 ID:muHr5m0k0
支援
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:10:11.03 ID:uSGjFVSgO
支援
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:10:29.12 ID:muHr5m0k0
支援
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:11:26.96 ID:9QvBHAFXO
支援
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:11:35.38 ID:qRgmMvWUO
携帯から失礼します。なんかネットが繋がらなくなりました。今いろいろと原因探ってるんで、復帰するまでどうかお待ちを。
68 :
◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:11:56.80 ID:qRgmMvWUO
携帯から失礼します。なんかネットが繋がらなくなりました。今いろいろと原因探ってるんで、復帰するまでどうかお待ちを。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:12:16.72 ID:bOQCePQ/0
おk保守
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:15:23.25 ID:bOQCePQ/0
ホッシュ
71 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:16:00.83 ID:9M8Vx6I00
復帰しました。二重投稿すんません。
72 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:16:52.44 ID:9M8Vx6I00
('A`)「…早くしないと、冷めちゃうぜ」
ξ;- )ξ「もう……、冷めてるよ」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:17:19.62 ID:bOQCePQ/0
再開ktkr
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:17:25.41 ID:muHr5m0k0
しえn
75 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:18:12.62 ID:9M8Vx6I00
___祭りが終わり、俺たちは家へと戻った。
おばさんが「花火しない?」と誘ってきたが、俺もツンもそれを断った。
ツンがなぜやりたがらないかはわからないが、俺はとにかく疲れていた。疲労しきっていた。
そもそも俺は病み上がりの体だったのだ。
部屋に戻ってきた俺は、畳の上で体を大の字にし、今日一日を振り返った。
76 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:19:37.75 ID:9M8Vx6I00
('A`)「ええと…、昼過ぎに雨が降ってきて、ぶっ倒れて」
('A`)「夕方に目覚めて、気がつくとそこは見知らぬ部屋でした…っと」
('A`)「そこにいたのはツンという少女で、そいつはなんと俺の自転車を破壊しやがった…とさ」
('A`)「んで……メシ食べさせてもらって…いや、自転車を破壊されたのが先だったか?…えと…んと……」
( A )「……ぐぅ」
眠りの世界に片足を突っ込んだ俺の耳に、大きな音が入ってきた。戸を開ける音だ。
77 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:21:02.03 ID:9M8Vx6I00
('A`)「ふがっ!」
目線を上げた先には、浴衣からまた私服に着替えたツンがいた。
ξ゚听)ξ「部屋…、来ない?」
('A`)「え!?いやいや…、そんな」
ξ゚听)ξ「来なさいよ」
(;'A`)「うん……」
家に戻ってきて、彼女はまた"元"に戻ったみたいだった。
俺は疲れた体を持ち上げ、言われるままにツンについていく。
78 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:23:12.75 ID:9M8Vx6I00
ξ゚听)ξ「ここよ」
ツンは客間のエリアから離れた一室で立ち止まり、ドアノブを回した。
('A`)「おっ…………」
目の前に広がったのは、定石通り並べられたぬいぐるみや女の子らしい色調のインテリア…だったが、それより目を惹かれたのは…
('A`)「す、すっげえ量のテープとCDだな!!!」
ツンの部屋には入り口のところを除く三辺に二つずつ棚が置いてあり、その中にはテープやらCDやら漫画やらが敷き詰められていた。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:24:18.79 ID:cnO/IZ4PO
支援
80 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:24:45.73 ID:9M8Vx6I00
ξ゚听)ξ「うん。ひいた?」
('A`)「い、いや全然」
ξ゚听)ξ「私ね…、こんなんで全然友達いないし、外にも自由に遊びいけないし」
ξ゚听)ξ「この部屋が一番のお友達なのよね。今も、今までも」
そう言ってツンはラックからCDのケースを取り出し、コンポに差し込んだ。
絞った音量で、お洒落な曲が部屋に流れる。いい雰囲気だ。
ξ゚听)ξ「でも、あんたとはいい友達になれそう」
('A`)「!?」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:26:58.80 ID:ucMKizER0
疎遠
82 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:27:21.89 ID:9M8Vx6I00
ξ゚听)ξ「あんなに本気でキレられたの、ドクオが初めて」
ξ゚听)ξ「あんなに私が人前でグチャグチャに泣いたの、ドクオが初めて」
ξ )ξ「私って見る目あるわねー」
('A`)「…そだな。俺を助けてくれたもんな」
たった半日で、人を見る目は変わると思った。
そしてあのとき、本気で俺はツンを心の底から心配して、良かったと思えた。
本当に、良かった。
83 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:29:45.68 ID:9M8Vx6I00
ξ゚听)ξ「…」
('A`)「…」
俺はツンが出してくれたお茶を啜っていた。
彼女は何もいわず窓の外から星を見ている。
('A`)「なあツン、おすすめはどれだ?」
俺は棚を見回しながらツンに尋ねた。
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:29:58.63 ID:bOQCePQ/0
支援
85 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:31:09.94 ID:9M8Vx6I00
ξ゚听)ξ「うーん。これかなぁ」
ツンは車椅子でこちらに近づき、二段目の棚からテープを取り出した。
少しだけ色褪せたラベルには
『フルーツバスケット』
と書かれている。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:31:41.04 ID:2qnKzTKSO
支援
87 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:31:56.57 ID:9M8Vx6I00
('A`)「これってどんな映画なんだ?」
ξ゚听)ξ「三人の女の子がね、イカダ作って島から逃げ出すの」
('A`)「…」
('A`)「え、それだけか?」
ξ゚听)ξ「それだけよ」
('A`)「へぇ。こんなにいっぱい映画のテープあるから、そういうのにはウルサイと思っていたんだが…」
ξ゚听)ξ「私の身の回りにはね…」
ξ゚听)ξ「できない"それだけ"が多すぎるのよ」
('A`)「えっ、あ…ごめん」
ξ゚听)ξ「別に謝らなくていいよ」
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:32:26.70 ID:muHr5m0k0
四円
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:33:48.53 ID:ucMKizER0
支援
90 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:34:21.94 ID:9M8Vx6I00
('A`)「えっ、あ…ごめん」
ξ゚听)ξ「別に謝らなくていいよ」
ξ゚听)ξ「だからね、そんな変哲もない普通な映画が楽しいの」
ξ゚听)ξ「それにね…」
ξ゚听)ξ「この映画に出てくる女の子たちの顔が好きなの」
('A`)「表情?」
ξ゚听)ξ「うんっ」
ツンは寂しげに微笑む。
ξ゚听)ξ「演技だけど…、それでも私には眩しすぎるくらいいい笑顔してるんだよ?みんな」
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:36:25.85 ID:bOQCePQ/0
支援
92 :
1 ◆ps3CKPkBXI :2007/08/15(水) 22:38:21.97 ID:9M8Vx6I00
ξ゚听)ξ「あとね…、すっごく気に入ってるシーンがあるんだ。この映画には」
('A`)「へぇ。そいつぁどんな?」
ξ゚听)ξ「女の子がね…他の女の子たちと別れちゃうの」
('A`)「うんうん」
ξ゚听)ξ「それでね…、その去ろうとした女の子は」
ξ゚听)ξ「"また会えるかな?"って別れ際に言ったのよ」
('A`)「なんかその時点でいいシーンだな」
ξ゚听)ξ「そして残された子は、彼女にこう返事する…」
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/15(水) 22:38:23.90 ID:2qnKzTKSO
支援
94 :
1 ◆ps3CKPkBXI :
('A`)「ほうほう、その言葉がジーンとくるんだな?」
ξ゚听)ξ「えと…、ジーンってくるより、なんか励まされるんだ」
('A`)「それで?残された女の子はなんて言ってやったんだ?」
ξ゚听)ξ「……」
ξ゚听)ξ「い・わ・な・い!」
(;'A`)「なんでだよー」
ξ゚听)ξ「実際に観てみなさいよ」