1 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :
大学に入ってはや四ヶ月
SOS団で過ごした嵐のような三年間が懐かしい。
いまや俺は全く当たり触りのない普通の大学生としての毎日を享受している。
普通に登校し、普通に授業を受けて、普通に友達と話して、定時に帰宅する。
坂道をひぃひぃ言って登る必要も無いし、授業中に寝ていても後ろの小うるさい奴に頭をはたかれる事もない。SOS団なんていう電波なサークルも無ければ、無意味に夕方まで残る理由もない。
まったく、世界は平和になったもんだ
2 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:41:46.86 ID:OGJ+/9cWO
SOS団のメンバーはハルヒに安定期が訪れたとかなんとか言い残して、皆居なくなっちまった。
朝比奈さんは結局年齢を明かさないまま未来の世界に帰り、古泉は組織とやらの方針で急に『留学』して姿を消し、長門に至ったてはさよならも言わずに綺麗さっぱり消えちまった。
で、ハルヒはというとだな……
3 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:42:23.29 ID:OGJ+/9cWO
まぁ正直、何も知らない。
綺麗にさっぱり居なくなった例の三人組は最後に俺に色々言い残して言った。
ワンパターンな連中だ。最初に俺に正体を明かした時と同じように、やたらと勿体ぶった挙句けたたましい専門用語と共に曰く次のような事を俺に伝えた
『もう涼宮ハルヒに関わるな』
『彼女の安定が崩れてしまうから』
『私達の努力が水泡に帰してしまうから』
『どうか、お願いだから』
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 23:43:18.35 ID:L/1MJSrKO
wktk(・∀・)
5 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:44:36.96 ID:OGJ+/9cWO
古泉が言うならともかくあの可憐な朝比奈さんに涙目と共に言われたら文句のつけようがないね。まして長門も言うなら尚更。
安定期に入った(らしい)ハルヒは連中の度重なる消失に慌てふためく事もなく意外に淡々と「ふーん……皆色々大変ね」と呟くに留め、唯一残った俺に「何その顔。皆将来の為に忙しいのよ」と軽口を叩いていた。
大人の対応、という奴か
俺が県外の大学に進学するという旨を伝えてもハルヒのそのスタンスは変わらず、「あっそ。たまには連絡寄越しなさいよ」と実にあっさりと返事をしていたものだ。
かくしてSOS団はその発足と同じく唐突に解散し、世界は消失の危機に見まわれる事もない、平和一辺倒へと再び傾き始めるのだった、と。
あー良かった
平和で平凡な日々だ
まったく、最高だぜ
6 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:46:55.90 ID:OGJ+/9cWO
〈某中堅大学/食堂〉
昼時真っ盛り。食堂は学生達でごった返し、騒がしい。席はどこも一杯だ。
そんな中、一人の男が四苦八苦しながら席と席の間を抜けて、目的の場所へと向かっていく。
??「何が最高だって?」
彼はそこへ到達すると、空いた席につきつつ、向かいで携帯をいじっている男に声を掛けた。
男は顔を上げる。
キョン「あぁ……谷口か」
彼は酷くつまらなそうな顔をして呟いた。
7 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:51:39.21 ID:OGJ+/9cWO
谷口はトレイに載ったランチに手をかけつつ、不満げに言う
谷口「なんだよキョン、腐ったナスビみたいな顔しやがって」
キョン「あぁ?……あぁ」
曖昧な返事だ。机に突っ伏した彼の目が死んでいた。
谷口「おいおい、暑いんだから辛気臭い顔は止めろ、ホラ見ろ!」
ばっと谷口が腕を伸ばし、窓の外に向けられる。
そこは真っ白な陽光が蒼い芝生に突き刺さる、真夏の世界が広がってている。
谷口「夏だ!! 熱く、エネルギッシュ! 情熱と官能が激しく燃え上がる、愛の季節!!」
キョン「…………」
キョンは何の反応も示さない。
オーバーアクションの谷口が食堂で浮き、どこからともなく「なにやってんのアレ」といった女性徒の声が囁かれる。
谷口「……キョンよぉ」
彼は気まずそうに腕を下ろしながら
谷口「そんなに涼宮が恋しいか?」
キョンは突っ伏したまま、手だけを振ってそれを断固否定した。
8 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:52:30.29 ID:OGJ+/9cWO
それから谷口は一方的に話を続けた。自分が所属した飲み会サークルが最高に楽しい事、既にある女とデートの約束を取り付けた事、ゼミでは意外に好成績を取り付けて教授に飲みにまで誘われた事、大学は最高で自分が輝く場所はここだったんだetc.etc......
休憩時間が終わりに近づくと彼は「高校時代お前に遅れをとった分を俺はこれから取り戻すぜ!」とこれまた一方的に結論を述べ
キョン「…………」
最初から最後まで相づちもうたなかった友人に小さくため息をついた。
突っ伏したその肩に手をやり
谷口「なぁ、涼宮達の事なんか忘れろ……お前だって新しい生活を楽しむ権利はあるぜ」
と大分小さな声で呟いた。
キョンは突っ伏したまま、手だけを振ってそれに答えていた。
9 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:56:20.68 ID:OGJ+/9cWO
谷口が帰った後、残されたキョンは相変わらず突っ伏したままだった。
谷口と同じように、次の授業時間が近づいて来たために周囲から学生の群れが去って行く。
そしてそれから時計の長針が五週した時、そこに残っていたのはキョンだけだった
キョン「…………」
窓際で陽光に照らされる彼は、何か象徴的なオブジェのようだった。ピクリとも動かず、音も発しない。
時間だけが淡々と過ぎていく。
そして『彼』が計画を実行に移し始めた
10 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/15(日) 23:58:47.89 ID:OGJ+/9cWO
まず『彼』は事を急くことなく、動かないキョンを中心に半円を描いて移動し、彼をじっくりと観察。
ついでに自販機コーナーで缶コーヒーを一本買い……迷いながらも二本目を買った。
『彼』はまるでFBIに追われる麻薬密売人のように用心深く辺りを見渡し、しかしなんでも無いことのようにキョンに向かって歩き始める。
キョンは突っ伏したまま
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:00:10.56 ID:GJHCBngz0
支援
12 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:00:44.89 ID:xs9UZel+O
かこん
机に置かれた缶ジュースはそんな音を立てた。
キョンの向かいに座った『彼』はそれでキョンが起きると思っていたが、いかんせんキョンはピクリともしなかった。
『彼』「…………」
『彼』は苛立ったように腕を組み、頬をひくつかせる。
嫌いな野郎にへつらうような真似をするのは屈辱的なので、彼はそのままキョンを起こしたりせずにじっと待ちの戦法に打って出る。
キョン「…………なんだよ谷口」
その戦法が効をそうしたのはそれでも二十分も後後の事だった。
キョンは欝々とした低い声で
キョン「まだ何か用なのか……」
と呟き
『彼』「……『まだ』、か。確かに、お互いもういい加減疎遠になりたい所だ。この期に及んで『まだ』――僕も不本意極まりない」
全く谷口ではない嫌味ったらしい返事に、思わず目を見開いた
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:00:55.84 ID:FtpDiwtYO
イツキタ━━━(゜∀゜)――――――!!
14 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:02:09.13 ID:xs9UZel+O
キョンの身に戦慄が走る。
全身を駆け抜けた鳥肌に、まるで追いたてられるようにばっと顔を上げ
彼「僕を覚えてるか? ……だから言ったんだ。規定事項を鵜呑みにするなってな」
視界に飛び込んでくる顔
忘られるはずもない気にくわない顔、ネガティブな感情をたたえたその表情――
キョン「未来人野郎……!」
弾かれたように掠れた声を上げたキョンに、彼は糸のように目を細めて
彼「……藤原だ」
と苛立った口調で答えた。
15 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:05:09.66 ID:xs9UZel+O
藤原「くだらないごっこ遊びが遠ざかったら今度は廃人か、あんな生活を再び望むなんてあんたも奇特な人間に過ぎる」
キョン「……なにしに来た」
ぎらつく視線を向けたキョンに藤原は軽く両手を上げて返す
藤原「そんな顔をするな。友情の証も携えて来たつもりだ」
キョンが眉間に皺を寄せ
キョン「友情……?」
藤原は顎をしゃくって机に置かれた缶ジュースを示す。
藤原「精一杯の気持だ。これ以上は、悪いが考えつかない」
キョン「……なめてんのかお前」
キョンは手を伸ばすと缶ジュースを払い除けた。
缶が転がり、机の下に落ちて鈍い音を立てる
藤原は薄く笑った
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:05:16.99 ID:oAlylodv0
藤原かよwwwwww
17 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:05:56.73 ID:xs9UZel+O
藤原「なぁ、あまり無理をするな」
彼はぐっと身を乗り出しながら、自分の分の缶コーヒーをキョンの前に置いた。
藤原「今回は僕とあんたがタッグなんだ……互いに口の聞き方に注意した方がいい」
キョン「タッグ、だと?」
藤原「そうだ。あんたは僕の相棒だ。そして僕は、あんたの相棒――」
キョン「ふざけるなよ……お前とタッグなんて、虫酸が走る」
藤原「同感だが、仕方がない」
藤原はイニシアティブを持っている者特有の嘲笑を浮かべる
藤原「取り戻したいんだろう……涼宮ハルヒを。あの嵐のような日々を」
キョンの顔が歪んだ
18 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:06:43.10 ID:xs9UZel+O
ちょっと待っててね
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:07:30.17 ID:WEQjjPIn0
保守
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:08:51.47 ID:7tNM94O3O
藤原でワロタwwwwwww
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:12:16.81 ID:8f4CyVkrO
ワッフルワッフル
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:12:49.16 ID:smewJsvwO
期待保守
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:13:49.14 ID:Xie83KHuO
wktk
24 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:18:18.01 ID:xs9UZel+O
もうちょっと
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:22:26.24 ID:7tNM94O3O
保守
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:22:38.71 ID:Xie83KHuO
ほ
27 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:25:34.09 ID:xs9UZel+O
スマンちょいパソがとらぶった
携帯から手打ちでいく
28 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:33:25.23 ID:xs9UZel+O
藤原「自由気ままに、未来に無限の可能性があったあの瞬間一つ一つが恋しいはずだ。どれだけ受け身的だろうとあんたには涼宮ハルヒという絶対的な希望があった……会いたいはずだ」
キョンはしばらく、本能に則したような恐ろしい形相をして藤原を睨んでいたが、ふいに表情を崩すと、ふ、と鼻で笑った。
キョン「ハルヒには会わない。あいつらと約束したからな。だいたい何処の大学に行ったかも――」
藤原「会わないんじゃなくて『会えない』んだ。その理由も約束だからなんかじゃない。手短に済ませたいからその理由も僕から教えてやる」
彼は身を乗り出して、キョンの目を下から覗きこんだ。歪んでいるようでどこまでも真っ直ぐな、突き刺すような黒目がキョンの濁った黒目に向けられる
藤原「彼女が『大人になったからだ』」
窓の外からセミの鳴き声が聞こえ始めた
夏が始まる
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 00:40:37.88 ID:f4Gu4VI90
ほ
30 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:43:16.15 ID:xs9UZel+O
セミの大合唱の中で、キョンと藤原は睨み合う。
キョンは死んだような目で淡々と、藤原は腹にねじ込んだナイフのように鋭く強烈に。
キョン「何言ってんだお前」
藤原「あんたが僕の用意した『ウサギの巣穴』に転がり込むメリットを話してるんだ」
キョン「『ウサギの巣穴』?」
藤原「アリス・イン・ザ・ホールだ」
キョン「……お前の言ってる事はまるっきりわからん」
藤原「ならそれでもいい」
彼はそう言うと席を立った。
31 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 00:49:52.42 ID:xs9UZel+O
藤原「具体的な話をしてやる。『今』に不満があるのなら、自分から『未来を変える努力』を始めるんだな。それも、今すぐにだ。――タイムリミットは」
腕をまくって時計に目をやり、
藤原「今日の午後七時までだ。それまでに決断するんだな」
彼はそう言い残すと、床に落ちていた缶ジュースを拾い上げ、キョンに背を向けて歩きだす
キョンは思わず立ち上がり
キョン「おい、一方的に時間まで決めて偉そうに――」
藤原「これから一生このままでいるか」
背を向けたまま、彼は腕を振って缶ジュースを放り投げた。
それはまるで狙いすましたかのようにキョンに向かって低くシュプールを描き、思わず手を差し出したキョンの手の中にすっぽりと収まる。
藤原「『禁忌』を犯してでも未来を手に入れるか」
食堂の自動ドアが開き、藤原を迎え入れた。内部と外部を――藤原とキョンを断絶するがごとく静かに閉まる
そして彼は蜃気楼の中にかき消えていった。
後に残ったのはやかましいセミの鳴き声と
キョン「…………」
キョンの手の中に収まった「林檎ジュース」だけだった
32 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 01:03:09.42 ID:xs9UZel+O
〈某中堅大学・心理学部棟・中規模教室・初期心理学授業中……〉
前の演壇て教鞭を振るう教授は、差し迫った期末に自らが追いたてられるかのように熱心に講釈を垂れていた。入学からはや四ヶ月で新入生特有の『アカ』もだいぶ抜けた生徒達も、真剣な眼差しで彼の言葉に耳を傾けている。無論、こちらも期末対策のためだ。
そしてその中に一人、キョンがポツンと浮いている。
ぼんやりとした表情の顔を、腕の上に乗せて突っ伏していた。
キョン「(……キザ野郎が)」
その視線は本来ノートが置かれるべき場所を陣取っている「林檎ジュース」に向けられている。
33 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 01:08:51.47 ID:xs9UZel+O
キョン「(……ハルヒが大人? 百歩――いや一万歩譲ってそうだったとしても、俺がアイツより子供だってのには苦言を呈するぜ。アイツは短冊に『地球が逆回転しますように』なんてアホの極致を地でいくような願い事を――)」
――あっそ。たまには連絡寄越しなさいよ――
キョン「(…………)」
再生されたハルヒのあっさりした言葉が妙に引っかかった。
寂しい、様な気がした
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 01:09:06.36 ID:xwGpYLLp0
きたいあげ
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 01:20:48.54 ID:f4Gu4VI90
ほ
36 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 01:21:26.30 ID:xs9UZel+O
「――おい01A72番、君」
「――01A72番、おい!」
「――おい、聞いてるのか! 起きなさい!」
夢うつつの世界に急に飛び込んできたその言葉に、キョンの意識は強引に現実に引き戻された。
ハッとして飛び起きた時にはしかし既に時遅し。
教授はつっ立っている彼に不愉快そうな顔を向けていて、実に嫌味ったらしく
教授「君ね……この例文7の女性について、フロント的な観点から抑圧されているものを答えなさい」
と詰問してくる。
普段無意味にかき集めている知識がこういう時にはまったく役に立たない。フロントの名に聞き覚えがあってもなかなか記憶のシナプスがつながらない。
教授「……答えられんのかね」
その棘々しい言葉に冷や汗が流れ始め、いよいよ覚悟を決めて『笑って誤魔化すか』と心中彼が腕をまくったその時だった。
す――と彼の前に一冊のノートが差し出される
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 01:25:45.12 ID:8f4CyVkrO
ワッフルワッフルワッフルうぅぅ!!!
38 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 01:32:32.38 ID:xs9UZel+O
理路整然と書き並べられた文字列の中に、シャープペンシルで薄く丸で囲まれている一文があった。
古来から何とかは藁をも掴むといわれるが、この時のキョンもその例外に漏れる事はなかった。
キョン「あー……エスです。そう、エス。抑圧されているのは幼少期に厳格な母親の許で形成された超自我によって制限されているエス……?」
しどろもどろになりながらその文字列を読み上げて
キョン「……だと思います」
最後にとってつけたように言った。教授をちらっと見る。
教授は呆れたとばかりに鼻をならし、座席表を見ながら
教授「隣で見せたのは誰だ――」
ノートの人「出席番号は03Y128――」
キョンの傍らの生徒が先手を打って手を上げた。その声は知性に満ち溢れていてハキハキとした女の声で――
――聞いていたキョンはギョッとした
ノートの人「佐々木です」
懐かしい友人の横顔がそこにはあった
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 01:34:35.20 ID:Fp6vMByv0
頑張れ
応援しているぞ
40 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 01:46:14.92 ID:xs9UZel+O
教授「佐々木君、情けは人の為にならずだよ……これは誤った方の用法での意味だが」
初老に達した教授の絡み付くような苦言を
佐々木「ごめんなさい」
実に女の子らしい声と笑顔で軽くいなす佐々木。
その横顔を(彼女はメガネをかけていた)唖然としてキョンは見ていたが、その彼女にちょいちょいと袖を引っ張られて、促されるままキョンは席につく。
キョン「お前……同じ大学だったのか」
ほとぼりが冷めてからキョンが話しかけると、彼女はいたずらっ子のような笑顔をキョンに向けた。
佐々木「学部は違うんだけどね。同じ授業をとって、いつ僕に気がつくのかと試していたんだ」
そこでクスクスと笑い
佐々木「でも君は全然気が付かないものだから、寂しくなって自分から話しかけてしまったよ――滑稽だろう?」
41 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 01:52:41.03 ID:xs9UZel+O
キョン「滑稽というか、驚きだ。さっさと話しかければ無駄な時間も省けただろうに」
佐々木「君は相変わらず刹那的だな。人生は長い、時にはそうやって一見無駄な時間を過ごすのも楽しくていいものさ」
キョン「四ヶ月も俺の顔を横から眺めるのがそんなに楽しいかよ」
この質問に、佐々木は僅かに間を置いた。
それはキョンが意識するほど長いものではなかったが、佐々木自身には十分意識できうる『ためらい』であり『葛藤』であり、つまるところ『恥じらい』であり――
佐々木はキョンに向きなおると
佐々木「もちろん」
ニッコリと柔らかな微笑みを向けた。その頬は僅かに朱に染まっている。
そのストレートな物言いに、キョンはなぜかハルヒを思い起こして怯んだ。
42 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 01:53:41.25 ID:xs9UZel+O
って所で書き貯めた分がなくなってしまった。意外に早い……
続きどうすっかなぁ
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 02:10:42.21 ID:8f4CyVkrO
頑張れ主
応援するぜ
44 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 02:12:37.78 ID:xs9UZel+O
〈電車内・帰宅時〉
電車内、二人は人もまばらな席について話をしている。
佐々木「藤原君にあった?」
キョン「あぁ……わけのわからない事を延々と話した挙句に安い缶ジュース置いていった」
佐々木「よくわかないが、興味深いね。彼はもう未来に帰ったのだとばかり思っていたよ」
キョン「朝比奈さんは帰ったのにアイツは残るなんてな……逆ならまだしも」
45 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 02:13:14.98 ID:xs9UZel+O
46 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 02:23:47.75 ID:xs9UZel+O
佐々木はクスクスと肩を揺らす
佐々木「相変わらず仲はわるいんだね。因縁という奴かな?」
キョン「単に気にくわないだけだ。スカしてるしな」
佐々木「そうかな? 僕の主観では、彼は非常に真っ直ぐな心の持ち主だと思うけどね」
キョン「バカ言え。大リーガーの変化球だってもう少し真っ直ぐだぜ」
佐々木「物の見方がひねてるのはキョン、君が言える立場じゃないと思うけどね」
キョン「俺のはおおむね好意的に受け取られてるぜ」
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 02:32:35.64 ID:8f4CyVkrO
ワッフルワッフル
48 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 02:33:59.76 ID:xs9UZel+O
キョン「あぁ、そうだ」
彼は肩掛けのレザーバックに手を突っ込むと、件の缶ジュースを取り出した。
キョン「飲むか?」
佐々木「それが『安い缶ジュース』って奴かな?」
キョン「くだらない話に付き合った見返りにしちゃ安いと思う」
佐々木にジュースを手渡す。彼女は受け取ったジュース缶をまじまじと見ながら
佐々木「普通の林檎ジュースだね……藤原君は具体的に君になんて言ってたんだい?」
キョン「んー……確か、『ハルヒに会いたいか』とか『今に不満があるんだろ』とか、
――ああ、あと『未来を変える努力をしろ』、とか』
佐々木の目つきが変わった
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 02:43:21.08 ID:CZYpgHCtO
佐々木カワユイ(*´д`)ハァハァ支援
50 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 02:48:12.22 ID:xs9UZel+O
キョン「冗談じゃないぜ何がハルヒに会いたいかだ。会わないならそれに越したことはないぜあんなトラブルメーカーは……」
僅かに佐々木の視線が下がる
佐々木「……他には」
キョン「ん?他? なんだったかな、『ウサギの巣穴』がなんとか、そういえばアイツ、俺の事を相棒だとか言ってたな……気色悪い」
佐々木「相棒――確かにそう言ったのかい?」
キョン「なんだよ、妙に食いつくな……言ったぜ。ちゃんと覚えてるよ、気持悪くてしょうがなかったからな」
佐々木「そう……か」
彼女は視線をさらに落とした。
佐々木「藤原君は、やっぱり真っ直ぐだな」
小さく呟く
51 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:04:25.35 ID:xs9UZel+O
キョン「え?」
佐々木「……『ウサギの巣穴』は不思議な世界に向かう道の事だよ」
唐突に話始める彼女にキョンは怪訝な顔をする
佐々木「アリス・イン・ザ・ホール……ウサギを追いかけたアリスはウサギの巣穴に落っこちてしまう。アリスは危険で恐ろしい奇妙な世界を旅するハメになる」
キョン「なんだよぶしつけに……」
佐々木がふと顔を上げた。
キョンは言葉に詰まる。
佐々木「キョン、わざわざ進んでウサギの巣穴に入るなんて馬鹿げてる」
彼女の瞳がうるんでいた。
ふと手に温かい感触を感じ、見ると座席に置かれた自分の手に佐々木が手を重ねている。
佐々木「それとも『今』に不満があるのかい?」
キョン「あ…いや……」
52 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:05:41.00 ID:xs9UZel+O
おおーい誰かいる?
53 :
以下、名無しにわかりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:06:54.05 ID:Uo3WfFkq0
ノシ
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:07:07.45 ID:LEOqxSaU0
いるぜ 読んでるぜ
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:07:16.06 ID:xnwCYJNf0
いるぞー、おもろい。頑張れ。
56 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:08:50.43 ID:xs9UZel+O
おぉ、いっぱいいてビクッたw
頑張る(`・ω・´)
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:11:00.71 ID:f4Gu4VI90
がんばれ!
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:13:19.88 ID:CZYpgHCtO
適度に支援・保守するぜ
59 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:19:52.19 ID:xs9UZel+O
佐々木「……大丈夫、そんな危ない目に逢わなくても、これからは僕がいる」
キョンは違和感に息を詰まらせながら
キョン「佐々木……?」
ぷしー
と音がして電車が止まった
佐々木は黙って、何か物問いたげにキョンを見上げている
キョン「あー……佐々木、お前この駅で降りるんじゃないのか」
彼女はそれにしばらくは答えなかった。
代わりに唐突にキョンの手をとって立ち上がる
キョン「お、おい佐々木……」
佐々木「この辺りも昔と大分代わって、随分物騒になったよ」
握られた手に、さらにギュッと柔らかな手の平が押し付けられた。
佐々木「送って行って……欲しい」
60 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:29:53.65 ID:xs9UZel+O
佐々木「ダメかい?」
キョン「い…や、ダメじゃないけど」
とそこまで言って、キョンは自分のしているデジタル時計が『6:30』を表示しているのに気が付いた。
――タイムリミットは午後七時――
キョン「……佐々木すまん、俺少し用事がある」
自然に口がそう言っていた。
佐々木の表情が崩れそうになり
キョン「いやいやいや、そういう事じゃなくてな、今日はダメってだけで明日なら別に問題は――」
佐々木「本当?」
一瞬その言い方に『女の子』が見えてキョンは口をパクパクさせたが、すぐに
キョン「あぁそりゃぁ、そうだ。嘘なんてついたこと無いぜ」
と虚勢を張った。
61 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:40:57.34 ID:xs9UZel+O
佐々木「それじゃぁ――」
ホームに発車のベルが鳴り響く。
名残惜しげに佐々木の手がキョンの手を離れ、そして扉が閉まる間際
佐々木「また明日――」
佐々木は電車が小さくなって見えなくなるまで、なぜか今生の別離を控えたかのような必死さで手を振っていた。
そしてホームには彼女以外誰もいなくなった
佐々木「また、明日だよキョン」
夏虫達の大合唱の中で、彼女はため息のような呟きをもらした。
62 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:42:45.46 ID:xs9UZel+O
良かった……やっと恥ずかしいシーンオワタ\(^o^)/
大学もあるので少し寝たい……いいかな?
63 :
以下、名無しにわかりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:43:28.26 ID:Uo3WfFkq0
うんwww寝ようなwwwww
明日また立てれば良いさ
お休〜ノシ
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:43:38.78 ID:ezJtGHHE0
早稲田かな?
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 03:47:43.79 ID:CZYpgHCtO
パソ直るといいなー(´・ω・)ノシ
66 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 03:53:39.12 ID:xs9UZel+O
>>63 サンキューおや〜
ノシ
>>64 俺の大学の事ならFランク大
>>65 パソ使いもんになんねぇ……でも大学の使うお!(AA略
67 :
セミプロ591 ◆MNGyu73AVw :2007/07/16(月) 04:06:31.37 ID:xs9UZel+O
明日までもつかな?
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 04:59:44.84 ID:OCPEEojBO
ほ
69 :
以下、名無しにわかりましてVIPがお送りします。:2007/07/16(月) 05:02:51.77 ID:Uo3WfFkq0
持たすなら自動保守入れるが?
これは気になる。ほしゅっとく
71 :
以下、名無しにわかりましてVIPがお送りします。:
じゃあ保守