文才がないけど小説を書くでござるでしょう！

ここは筆力のある人・ない人がお題をもらって自由に小説を書き、それぞれの筆力を向上させるスレです
※※※お題をもらわないでの小説投下はスレの主旨と違いますのでご遠慮下さい※※※

各まとめ入口：http://bnsk.jf.land.to/
初心者の方は掲示板を一度ご覧下さい。小説を書く際の禁則やテクニック等が具体例付で説明されています

まずはお題をもらいましょう。基本的に過疎スレなので↓でもらうと良いです
→人のお題を使って書くのもありです。作品がたくさん投下されればスレも盛り上がります

▽投下の際の注意点
・他の作者が投下中は投下完了まで待って下さい。投下前にはリロードを忘れずに。投下宣言するのもありです
・投下する人は最後に「終」「完」「了」など、投下完了の合図をお願いします
・できれば名前欄に『「タイトル or お題」 現在のレス数/総レス数』のように書いて下さい
・作品を投下する際は、テキストエディタで仕上げてからまとめて投下して下さい

▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、保守を兼ねての書き下ろし投下は大歓迎です
・落ちた場合は立てれる人が新スレを立てて下さい。人がいる時間を目安に

▽その他
・通常投稿作品において、トリップで掲載して欲しいと言う方は書いて頂ければ対応します
・トリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます

お題：「カレー好きの山本」

参考
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1183553469/

▲週末品評会
毎週木曜日の夜〜土曜日の午前中に、お題が出されます
作品は土曜日の0:00から日曜日の24:00までの間に投稿してください
その後それぞれに評価をして頂き、月曜日の0:00から火曜日の24:00まで投票を受け付けます

▽作品投稿
・ジャンルは自由、時間を過ぎての投稿も選考外ではありますがまとめサイトに掲載します
・スムーズな流れを保つため、メモ帳等の機能を使って全部書き終わってから投下するようにお願いします
・優勝時の本人確認のため、週末品評会参加者は出来れば酉を付けて下さい（酉は名前欄に#と自由な文字列）
→毎回同じコテや酉で出続けると周囲にわかりやすいです

▽投票
・本スレへの書き込みでお願いします（複数選択可）
・ぜひ書き手の方も他の人への感想や投票を行って下さい
・簡単でよいので、感想、批評等書いて下さい。書き手の次への糧になります！
・投票は投票用テンプレを使うか、【投票】と書いて書き込んで下さい

▽優勝者特権
・投票で一番支持を得た作品の作者の方には、次回品評会のお題決定権が与えられます
・投票数が同数の場合は、気になった作品の投票数の差で決定します
・お題の発表時間は優勝者に一任されますが、遅くても土曜日の午前中には提示して下さい

（今北産業用）
お題をもらう（安価よりも「↓」を推奨）
お題に沿った小説を書く
全部書き上げてからこのスレに投下する（目安は〜６レスくらい）

(スムーズな投下のために)
・１レスは30行、4096バイトまで、一行は全角128文字まで（読みやすさの為に50〜60文字推奨）
・「投下してもいいですか？」ではなく「投下します」。投下宣言が被らない限り、許可はいりません
・メモ帳などで完成させてからコピペしましょう

（中の人のワガママ）
・最低限、お題の表記だけは守って下さい。できればアンカー指定でなく、お題そのものを書いて頂けると嬉しいです
・投下中はできるだけメール欄には何も書かないで下さい。
・通常作品はトリップ必須というわけではありません。お間違いの無いよう。

>>1
乙ー

落ちたな

>>1乙

前スレ857までっぽいけど、誰かそこまでのdat持ってる？

>>1
おつー
品評会お題ｗｋｔｋ

いちおつ

>>7
あるよー

>>1Z

今週こそは参加して関心票もらうぜ！

ほー

いちおー

品評会お題は日付変わってから？

>>9
まとめのうｐろだにdatを上げると幼女が喜んでくれる。

正しくは『木曜の夜以降』

何でだよ、楽しいじゃんｗｗｗｗｗ

>>15
誤爆った

>>13
誰かが上げるかと思って待ってたんだけど、上がらないからうpったよ

今日テレでやってた自費出版の話ﾜﾛﾀ
ワナビは気をつけんといかんな

datをうｐして下さる方、いつもありがとうございます。
では、今日も脱兎の如くっ！
　 ＿＿＿
　 |←編集|　　　　　　　　　
三 ￣||￣ 　　　　　三　┏( ^o^)┛　
三　┛┓　　 　　　三　　　┛┓

>>16
乙
>>18
乙
>>1
乙

みんな乙なんだから。

お題ちょうだいな。

おっぱい

>>21
把握。おっぱいはうｐしないけど小説うｐします。多分。

雑談がてら最近読んだ本で面白かったの教えてくらひゃい。

マテリアル・パズル

ってこれ漫画やんかーー！！ｽﾞｺｰｰ!!

辻村深月のスロウハイツの神様

大西科学のジョン平とぼくと

古橋秀之の冬の巨人

オイレンシュピーゲル弐


>>27
つまらなくはなかったんだが、最近のフルハシは短いのが難点

>>28
確かにもうちょっと尺が欲しかった
けど、あのなんともいえない雰囲気が大好きなんだ

話ふっといてなんだけどラノベばっかりなのは気のせいかなあ……。
もちろん嫌いなわけじゃないが、あんまり知らないから置いてけぼりになってしまうでござるよ。

ラノベじゃないのなら
恩田陸のドミノ

殺人トリック研究会の、ミステリー殺しのテクニック

>>23
これからの環境論　渡辺正

余計話が続けにくい本を言ってみた

進化しすぎた脳

いや、普通に面白かった

ラノベじゃない奴なあ
どこら辺からラノベなのかは知らんけど、イラストついてないってことなら
米澤穂信のクドリャフカの順番

ラノベ以外か……
最近の本じゃないが、俺が最近読んだってことで
朱鷲田裕介のクトゥルフ神話ガイドブック
青山光二のヤクザの世界

ラノベ以外

神林長平の敵は海賊はラノベに入るんだろうか。
最近、新刊が出たから読んだんだが。

三津田信三の厭魅の如き憑くもの

最近和風ミステリーが少ないなぁ……

つくづく自分が本を読まない人間だと思い知らされた。

皆はどうやって買う本を決めてるんだ？

不思議なことに気付くと手の内に入っているんだ……
奇妙だろう？　しかも恐ろしいことに全部ハズレなんだ……

精霊の守り人シリーズと
狐笛のかなた

>>39
ネットである程度評判がいいのを片っ端からとか
表紙、冒頭読み買いかな。
あと友達の評判とかも参考にする。

>>39
５０％の評判と３０％の最初１０ページと２０％のインスピレーション

ごめんなさい。俺のごとき携帯厨が縛りを入れたみたいになっちゃって。
ぶつぶつ文句垂れて言うのもなんだが別にラノベでも全然かまわんのだｗｗｗ
わしが勝手に流行に遅れてるだけじゃけん。気い使ってくれてありがとね。

機本伸司の神様のパスル

>>39
ノリ
あと立ち読み

乙一のジョジョはどうなったんだ

まだ書き途中ですみません。
全スレで「夜の蝶」というお題をもらったものですが、
どう考えても6レスに収まりそうもありません。
どうしましょう。

選ぶ以前に読みたい本がたくさんあって追いつかないでござるよ

最初の数ページを読んで
あとはインスピレーション

>>46
11レスまでは許容してやる、最高の状態で書き上げるんだ

というか、まずは書き上げろ。

>>45
まだ放置されてる。早く出して欲しい

>>39
評判もしくは立読みもしくはタイトル読み。

>>46
通常作品はレス制限ないから、思うがままに書きなよ

さすがにスレを独占するような長編だったら、空気嫁となるが

>>46
10レスくらいまでならおｋのはず。11レスをこの前みた。
最終手段としては長編板に行くという手もある。
ttp://bnskvip.jp.land.to/test/#6

前スレまでの通常作品及び過去スレ、過去ログ全て編集完了致しました。

　　＼　　　 総作品数：３２２６作品
　　(／o^) 　総スレ数：２５１スレ
　　( ／　　 現　在　：２５２スレ目
　　／ く　　備　考　：機動編集

　　三
　三 　ｼｭｯ
三

>>39
あらすじ55%
ネット評判40%
タイトル･カン・5%

朽ちていった命
　バケツでウラン事件で被爆した人の治療記録。後半に進むにつれて
　「どうしようもない絶望感」が広がっていくのが、もう。

あと、本じゃないけどこれ。
ttp://homepage2.nifty.com/htakuro/newsClip/hitonokimochi.html

>>54
乙乙乙


>>39
あらすじとジャンル重視だわ

>>54
狂おしいほどの乙

>>54
風のように早い編集激しく乙

>>54
ワロタｗｗ乙

>>54Z

あらすじや評判が大きいね。
売れてる作品が嫌い（売れる前が好き）な俺としては、本屋であらすじだけ立ち読みしまくるか……

あと作品の年代も考慮するかな

お題くれるとうれしかったりそうでもなかったり

ストラップ

ストリップ

つ　アブラゼミ

ストラップストリップ、アブラゼミ。
嫌がらせか何かか！？

あれ？　そういえばお題は？

品評会のお題が来ないと寝れないんだが
今日の夜かしらん？

前スレで

＞842 名前： ◆DttnVyjemo 投稿日： 2007/07/04(水) 22:02:58.93 ID:Sm+0V/Lo0
＞今北区。
＞「乗り物」にでもしようと思って過去のを見返したら
＞超最近あったみたいなので再考。

＞日付変わったぐらいで投下の方向で。

という発言があったから、今日だと信じたい

代わりのお題で良い案が浮かばないか
縛りをどうするか考えてるんじゃない？ｗ

おだいください

砂煙

つ　空

UFO

>>73-74
把握
どちらか書けそうなほうで書く

過去ログを漁ってますた（；´Д｀）　思いつくたび被ってるんですもの。

暫定ですが、次回の品評会のお題は「果実」で。
木の実やフルーツっぽい野菜とかも、架空の果物も、
メタファーとしての果実もアリ。

過去の傾向で５が多そうなので、レス数は５以下でひとつ。

ところで、レス数以外の縛りって要るの？

>>77
果実把握

縛りは入れたければ入れるでおｋ

ktkr！

必要性感じなかったらいらないんじゃない？

>>77
熟れた果実（女体）禁止

>>77
把握

これで寝れる
シンデレラ禁止

青い果実禁止
知恵の実禁止

白雪姫って書こうとしたのに


まあ、しらゆきひめ、しんでれら。そんなに違わないからいいかｗｗｗ

つまり桃太郎か

いやいや、さるかに合戦だな。

いやいや、マルコポーロだろ

禁止って……お題の条件さえ満たせば後は自由なほうが楽だし面白いだろ

>>87
恒例の儀式のようなもんだからｷﾆｽﾝﾅ

禁止って言うか自分の首絞めて遊んでるだけだしな

エロ禁止

禁止の流れを禁止するの禁止。

禁断の果実ぅ〜

腐ったミカン禁止

ダメだ、果実と聞いたら女体しか思い浮かばない。
これだから煩悩は困る。

赤い果実を見たら私のことを思い出して下さい推奨

勇気を搾り出せ〜裸のままの欲望で〜

バナナってよ、品種改良で種なくしちゃったんだって。食いづらいから。

どーやって次育てりゃいいんだよｗｗｗｗｗｗｗアホかｗｗｗｗｗｗｗ

>>96
ナメクジのコピペ思いだした

スガシカオのあまい果実が頭を流れて止まらないわけだが…
いきなり自分でペナルティ背負った＼(^o^)／名作は罪作り

>>98
うわああああああああ
巻き添え食わすなorz

はははー
その曲知らない俺は勝ち組だなー

ははー。ネタ浮かばねー。

>>100
高校教師が女子高生に欲情するようなネタでもいいんだよ

>>101
それ読みたいので是非とも書いてください。お願いします。

>>99
うん、道連れが欲しかったんだ、すまない

>>100
知らないのは損してるよ！YOU週末までに聴いちゃいなよ！
そして拡大感染

>>103
そして悪性変異

お題をもらいたいところだけどこのスレがあるうちにかけそうにないからやめておくよ

>>105
別にそんなん気にしなくていいんだぜ。一週間でも二週間でも思う存分時間をかけられるのが通常作品。

>>106
確かにあなたの言うとおりだとは思うんだけどさ
お題が出たそのスレ中に書いてうｐしないと
「そんなお題あったっけ？」ってなるかもしれないジャン。

それいったら、お題出した人が居ない時間帯とかも……
別にお題覚えてるかどうかなんて気にしなくても、ちゃんと評価してくれるぞ。

>>107
他人のお題なんざ覚えちゃいねえ。だから気にすんなって

「こういうお題で書きました」と明記しさえすればダイジョビ。
あとは参加者のモラルにお任せされてます。

>>107
それはたいした問題じゃない。
お題を貰った事実と作品がそこにあればいい。
あとはその場にいる人間が読んでものを言うだけのこと。
と、そろそろ2週間お題をあたためている自分が言う。
書き上げたら……見て…くれるよね…

>>108
確かに感想もくれるし、アドバイスもちゃんとしてくれると思う。
でもまぁ個人的にそう思っているというか
ほかの人が書く文にはそういう意味では文句は言わないし
むしろその分推敲も重ねているのだからいえるわけがないんだけどね。

書いてるうち、ト書きっていうか新ジャンルっぽくセリフだらけになったので寝ます……('A`)

お題出るまでの暇つぶしに始めたらこんな時間になった
気分で集計してみた品評会64回まで（で且つ斬捨てでまとめてあるやつ）の参加数ランキング
◆VXDElOORQI 35
◆InwGZIAUcs 29
◆2LnoVeLzqY 28
◆dx10HbTEQg 24
◆D7Aqr.apsM 23
◆/7C0zzoEsE 22
◆D8MoDpzBRE 19
◆8vvmZ1F6dQ 17
◆Awb6SrK3w6 16
◆KARRBU6hjo 16

５回以上参加者の平均得票数ランキング
作者/得票数/関心数
◆pt5fOvhgnM /4.375/2.375
◆bsoaZfzTPo /4.2/2.2
◆wDZmDiBnbU /2.928571429/2.928571429
◆1EzYxEBEas /2.875/2.25
◆aDTWOZfD3M /2.727272727/2.818181818
◆oGkAXNvmlU /2.111111111/1.222222222
◆O8W1moEW.I /1.916666667/1.25
◆YaXMiQltls /1.75/2.125
◆tGCLvTU/yA /1.75/1.9375
◆dx10HbTEQg /1.75/1.416666667

すごいなこいつら

４．３票ってｗｗｗ

>>114
参加数だけｗｗ俺涙目ｗｗ

GJwww
◆8vvmZ1F6dQ氏と◆Awb6SrK3w6氏、最近来ないよなぁ 

>>114
GJ。
上位の参加回数20回超えとかすごすぎる。
そりゃあ固定ファンも出てくるわｗ

まとめられてないのを除外してるってことは、実際は40超えてるんだろうなぁ

おおっと、参加数上から十個拾ったからちょっと抜けたぜ。
◆VXDElOORQI データの個数 35
◆InwGZIAUcs データの個数 29
◆2LnoVeLzqY データの個数 28
◆dx10HbTEQg データの個数 24
◆D7Aqr.apsM データの個数 23
◆/7C0zzoEsE データの個数 22
◆D8MoDpzBRE データの個数 19
◆8vvmZ1F6dQ データの個数 17
◆Awb6SrK3w6 データの個数 16
◆KARRBU6hjo データの個数 16
◆qygXFPFdvk データの個数 16
◆tGCLvTU/yA データの個数 16


全部エクセルにデータ入れたからリクエストあれば教えるぜ？ｗｗｗｗｗ

誰が誰だかわからない俺は確実に初心者

>>121
やあ俺
頑張って越えてみようぜ

もう寝るのでお題ください

自転車フルバーニアン

おやすみ

>>124-125
寝ている間に書けたら書きます。�d

自動手記？

小人さんが書いてくれるんだよ

保守

保守

魔女保守

分身の保守！

お題「夜の蝶」投下します。
長編板は長いことレスがついていなかったようなので（酷評でいいのですぐアドバイスがいただきたいんです）

「暇だねー」
　電車の揺れる音に消え入りそうなか細い声で、春子はそうつぶや
いた。彼女は時々、すごく小さく独り言をいう癖がある。初めて聞
いた時は空耳かと思ったくらいだ。今はもうすっかり慣れてしまっ
て、冷たいと思われるかもしれないが僕はそれを受け流すことを憶
えたし、彼女も別に返事を求めているわけではない。
　確実に日没が迫りつつある。海はやたら赤く、その向こうにりん
ごのような夕陽がゆっくり落ちてゆく。夜には見事な暗闇になる水
面が、一日の最後の光を燃やし尽くす。僕は左隣の春子に目をやら
ずに、右の窓をずっと見つめる。
「悪いね、松澤君を付き合わせちゃって」
　春子が申し訳無さそうにいった。
「どうせ同じ街に帰るはずだったんだ、関係ないよ」
　僕が適当に返すと、春子はそっか、それもそうだね、と少し笑っ
た。
「でも、まさかあんなちっちゃい専門学校に、栗江の人が私以外に
もいるなんて思わなかった。しかも、同じ神村高校の後輩」
「あぁ、俺もびっくりしたよ」
「おかげで一人で帰省しなくてすむしね」
「そうだな」
　そんな風に、背中越しにどうでもいい会話を続ける。僕は春子の
取り留めのない話ばかりできるところが好きだ。無駄に中身のある
ことを言おうとして自分を飾るようなことはしない。二つ年下の僕
がため口を聞いてもお構いなし。潔いと思う。
　そして思い起こせば、その潔さは理穂の対極にある。髪型にした
って、ショートヘアの春子と超がつく程のロングの理穂とでは正反
対だ。にも関わらず、僕は春子が好きである一方で、かつて理穂が
好きだった。不思議なものだ。

　里中理穂と知り合ったのは高校一年の四月だから、もう五年経つ。
出会った経緯は別段面白くはない。偶然同じクラスになっただけの
ことだ。
「あの子、従姉が成海璃子なんだって」
　クラスメートが大騒ぎしていたのを聞いて、理穂を見ると、確か
に顔立ちは成海璃子に似ていたし、背中の半ばまで伸びた髪を切れ
ば瓜二つだっただろう。でも、その程度では特別感心が湧くことは
なかった。僕が彼女に近付き始めてからのことを話そうとすれば、
一ヶ月後、対北朝鮮戦争開戦直後まで飛ばなければならない。
　芸術選択で美術をとっていた僕は、心象風景を描く、という課題
に悪戦苦闘していた。その日までを何も考えずに過ごしていた僕に、
心象風景などあろうはずもない。適当に海を描いて、真っ黒に濡っ
てお茶を濁そうか、それとも去年取り壊された廃駅でも描こうか、
それとも……。
　頭をかきむしる僕の横で、黒髪むちゃくちゃ長髪の少女が淡々と
絵筆を動かしている。
　崖から見下ろす満月に照らされた砂浜、打ち寄せる波。そこまで
はありふれているのだが、夜だというのに絵に描かれた海は黒では
なかった。いや、部分的には黒なのだが、それは水面を覆い尽くす、ターコイズとエメラルドグリーンの蝶の群れの隙間のみなのだ。

さるさけ

　脇目もふらずに水彩絵の具を塗る彼女と、その奇妙な作品をボーッと見ていると、空襲警報が鳴った。
　宣戦布告後、初の警報。
　一気に美術室じゅうの空気が固まる。みんなスピーカーを向いたまま動かない。
　しばらくそのままの状態が続いて、美術教師が口を開く。
「なにボケッとしてんだ、さっさと逃げろ！」
　みんな悲鳴を上げながら我先にと駆け出し、押し合いへし合いの大混乱が起きた。避難訓練の成果が一切上がっていないことを滑稽に思いながら、僕も一緒に逃げようとしたが、途中で違和感を感じて美術室に戻った。
　思った通り、理穂は全く動じることなく、自分の席に座って絵を描いていた。
「なんで逃げないんだよ！」
　理穂に問いかける。彼女はゆっくりとこちらを向いて、しばらく澄んだ黒目でじっと僕を見つめ、やがてクスッと笑ってこういった。
「反骨心」
「は？」
「反骨心のない人間はすぐ潰れるよ。そんなの、つまんないじゃん」
　その間も真っ直ぐ過ぎる視線が僕を捉え続ける。彼女の口元は笑っている。口調も楽しげだ。でも、目だけは笑っていない。なにかに対して真剣な、少し憂いのある目つきだ。
「それに、本当にここに爆弾が落ちてくると思う？　自分は大丈夫だっていう自信がないなんて、恥ずかしくないの。私はいやだな、自分は弱い人間ですっていってるみたいで」
　実際、この学校が攻撃をしかけられるようなことがあるなんてことは僕も信じていなかったが、それにしても理穂の持論はあまりにも主観的で説得力がなかった。
　でも、僕はなにかを感じた。理穂の目のせいだ。彼女の言葉よりも遥かに強い説得力を、彼女の瞳は持っていた。そのせいで、僕の、学校に爆弾が落ちることへの疑念は安全の確信へと変わった。

「その反骨心とやらを持ってる里中さんは、なに描いてんの」
「先生が心象風景を描けっていうから、普通の風景画を描いてやったんだけど、見る？」
　理穂は僕に描きかけの画用紙を渡した。あの、蝶に覆い尽くされた渚の絵。妙にキラキラとして、終末の予感がどことなく漂う、不思議な印象を受けた。
「普通の風景画ってことは、これって実際にある景色なの」
　僕が尋ねると、理穂は肩をすくめてまた笑った。よく笑う子だ、と僕は思った。
「さあね。あるかもしんないし、ないかもしんない。蝶が海を渡るのは本当だけど、あとはどうだろ」
　それから彼女は汗で額にはりついた前髪を指先で離し、少しよじったり指を滑らせたりしてもてあそびながらこう続けた。
「世界の終わりに、世界で一番美しい崖から海を眺めると、エメラルドグリーンの蝶がいっぱい海にいて、最期の時に一斉に宇宙へ飛び立つ。こんなのどうかな、連作として」
「訳分かんないな」
「だね。私もさっぱりだよ。でも、そんなもんでしょ、人間なんて。大して意味のないことばっかりいってみたりするし、よく分かんない」
　そんなこんなでうだうだしているうちに三十分が経過し、警報が解除されて同級生が戻ってくる。最後に美術教師に呼び出され、親も連れて来られて三者面談をさせられたが、適当に聞き流した。
　これが、字面だけを見ると電波ポエムにしか見えないことを平気で話す彼女との、本当の意味でのファースト・コンタクトだった。

　それから、僕たちはなにかと一緒につるんだ。週に二、三回は一緒
に登下校した。美術の授業では、彼女はいつも崖からの砂浜の眺めを
幻想的に描き、僕はそれを誰よりも先に見た。休み時間になれば、色
々な話をした。彼女がサナトリウム文学が大好きなこと、最近のJ-popがつまらないこと、洋楽のこと（僕たちは驚く程音楽の趣味があった）、大人が汚くてずるいこと、共産圏に呑み込まれた北北海道が実
は地上の楽園だといわれていて、南北海道から多くの人間が越境亡命
していること……。若者にありがちな、そういう青臭くて恥ずかしい、やたらと格好つけた話題。
「中二病っていうんだって」
　七回の空襲警報が杞憂として過ぎ去った七月のある日、理穂が嬉々
として、パソコン室のパソコンのディスプレイを指差しながらいった。
「なにが？」
「私達みたいなの。中二病」
「へぇ」
　僕の素っ気ない反応を見て、理穂はクスッと笑った。
「反応悪いなぁ。私達病気なんだよ？　なんか楽しくなんない？」
「別に」
「あぁもぉ、だから松澤忠司はダメなんだよねぇ」
「うるさい」
　理穂はもう一度笑った。かと思えば、彼女は突然真顔になって、僕
を見据えた。
「でも、そんなとこも含めて、松澤忠司が、好きだよ」

さるさる

　えっ。
　あまりにも突然のことに、僕は面食らった。それまで一度も、僕は
女子に面と向かって好きといわれたことがなかったのだから、当然だ。彼女の言葉をその場で素直に受け止められるほど、僕は器用ではない。
「いきなりなんだよ」
　我ながらぎこちなく笑ってごまかした。しかし、彼女の視線や言葉
を回避することもできないほど、僕はあまりにも不器用だった。
「だからいってるじゃん。私は、松澤忠司が好きなの。二回も言えば
充分でしょ」
　そういう間も表情を崩す気配が全くない。
「冗談じゃないの」
「あったりまえでしょ」
　観念するしかないようだ。僕はそう悟って、唾を飲み下す。変な汗
を掌に感じる。
「俺も、理穂のこと、好きだよ」
「……本当に？」
　理穂が少し不安そうな顔をした。切実な表情の彼女を見るのは初め
てだった。いつもより強く、彼女の周りの空気に憂いを感じた。
「冗談じゃないの」
「当たり前だろ」
　僕が答えてから短い沈黙があった。理穂は安堵の溜め息をついて、
手の甲で額を拭った。
「よかったー、断られたらどうしようって思ってた。人に告白するの、初めてだし」
「俺も初めてだよ、告白されるのなんて」
「そっかぁ」
　やっと理穂の顔に微笑みが戻った。彼女はパソコン室の窓に目を向け、あっ、と声を上げて外を指差した。

「ほら、虹」
　彼女が示した方向を見ると、大きな弧を描いて、雨上がりの空から
七つの色が流れているのが見えた。
「ほんとだ」
「相変わらず素っ気ないなぁ」
　理穂が呆れたようにいう。
「そんなことないよ」
　そう返して彼女の右手を取る。彼女の掌も僕と同じくらい汗ばんで
いた。彼女は驚いたようにこっちを見てから、赤い頬をして照れくさ
そうにいった。
「ごめん、そんなことなかったね」
「だろ」
「うん」
「そろそろ帰ろうぜ」
　僕の呼びかけに、理穂は小さく頷いて、安全ピンであちこちを止め
てあるボロボロの鞄を拾い上げた。

　十月から理穂は学校を休みがちになった。十二月に入ってからなんか、一週間丸々休んだ。たまに一緒に登校しても笑顔が全くなく、理
穂の顔色が風の突き刺すような冷たさをひどくするように思えた。し
かもそんなありさまなのに、決して俯かず、いつも通り背筋をしゃん
としているから、見ていて辛い。
「理穂、元気ないけどどうしたんだよ」
　下駄箱から上履きを取り出しながら、思い切って尋ねてみた。理穂
は下駄箱を開けることをためらっているようだった。
「え、なにが？」
「なにがじゃなくてさ。全然学校来ないし、前みたいに笑わないし、
なんかあったのか？」
「まさかー」
　抑揚のない作り笑いを浮かべて、彼女は疲れきった声でそう答えた。
「真面目に答えろよ！」
　発した側から自分でびっくりするくらい厳しい口調で、思わずそう
口走ってしまった。立ち止まった理穂の表情が強張る。それでも彼女
は俯かない。最初の空襲警報の日、僕が魅入られたあの意志のはっき
りした視線は、ギラギラしていた。夕陽の燃え尽きる直前の明るさみ
たいで、そこにははっきりと生命力が感じられて痛々しい。そんな目
で見るなよ。
「……本当に知りたい？」
　無造作に髪をかきあげながら、理穂は質問し返してきた。
「あぁ」
「おい、上を見ろよ」
　僕たちのやりとりを遮るように、外から男子生徒がそう叫ぶのが聞
こえた。辺りが妙に騒々しくなる。
「戦闘機だ」
「でかいなぁ」

　遠くから、なにか轟く音が聞こえる。雷？　いや、違う。こんな天
気のいい日にそれはない。
　もっと近くで、爆発音が立つ。二軒隣の家があっという間に火柱に
包まれる。同時に校庭のスピーカーからサイレンが低く唸り、市内放
送が流れる。
「ただ今、栗江市、宝永寺市、桜紅寺町に空襲警報が発令されました。該当地域の住民は速やかに避難をしてください。繰り返します」
　急いで逃げなきゃ。そう思って理穂に振り返る。その次の瞬間、僕
は話にはよく聞くけれど実際には見たことがなかった、一つの光景を
目にした。
　理穂が下駄箱の扉を開いた。
　大量の紙が流れ出す。お菓子の包み、噛み終えたガムを包んだ紙、
封書、丸められたプリント、そういったものが彼女の足下に散らばる。彼女は屈んで封書だけを拾い集め、クシャッと握りしめた。指先が微
かに震えている。
「ついてきて」
　走り出した理穂の後を追う。理穂は校庭を斜めに突っ切り、ドアが
開け放たれている部室長屋を抜け、昼間でも容赦なく暗い森林に入っ
ていった。空襲を受けている学校付近の喧騒が後ろに、理穂の常人よ
りずっと長い髪が前に、遠ざかっていく。

さらにさる

　十分くらい走った頃、少しずつ日差しが強くなっていくのが分かった。冬の海の潮騒が風景に混じって聞こえる。あの激しく、陰鬱な音
色が僕を嘲笑って急かす。
「あっ」
　森を完全に脱した地点は、一本の木が生えた崖だった。
　理穂が春も夏も、飽きずにいつも描いていた崖、砂浜、海。朝には
少年と少女が手を繋いだまま溺れ、昼には無人の船が打ち上げられて
朽ち果て、夕方には若者が夕陽に溶かされながら靴を見つめてギター
をかき鳴らし、夜にはターコイズやエメラルドに発光する蝶が飛び立つ、あの渚。
　森から離れて生えた木の前で理穂はこっちを向き、両手を翼のよう
に広げて立っていた。制服のスカーフが風に翻る。
「……分かってくれた？」
　理穂は辛うじて聞き取れる程度の声で弱々しくいった。
「どうして、こんなことになったんだよ」
「ごめん。でも、これは松澤忠司の問題じゃないから」
「俺の問題だよ」
　また冷たい口ぶりで答えてしまった。うまく自分の感情を抑えられ
る気も、表現出来る気もしなかった。
「お前は俺に告白したし、俺もお前が好きだっていった。だから、俺
はお前を助けなくちゃいけないんだ。違うか？」

おいてめえら、VIP魂見せろや！
俺は
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1183557627/
このスレのID:ZTHxQdr50なんだけど
低脳焼き豚、凄まじい大バカID:QslWN8+V0を叩くために協力してくれ！
サッカーファン最高だろ？
野球なんか殺そうぜ！

　初めて理穂が俯いた。ギターのエフェクト・ペダルをいじるシュー
ゲイザーのように足をだらしなく動かして、彼女は僕の問に返事をせ
ずにこういった。
「とりあえず、座ろ」
　理穂が僕に背中を向ける。彼女の後ろの木立には穴が空いていて、
彼女はそこから一台の古びたCDラジカセと何冊かの文庫本、そして半
分に折られた画用紙とパステル鉛筆セットを取り出した。
「この下に昔、初名浜の廃駅があったのは知ってるよね」
「あぁ」
「初名浜駅には昔、『魔女』って呼ばれる人がいたの。昔、っていっ
ても二つ上の先輩だけど」
　おもむろに彼女は話し始めた。
「『魔女』はすごく綺麗な人だったんだけど、長い間いじめられてて、友達が一人もいなかった。だから、駅に本棚を置いて、学校が終わる
といつも駅で一人で本を読んでた。でも、ある日、『魔女の図書館』
の噂を聞きつけて駅を訪れた一つ下の後輩に声をかけられて、その子と、その子の幼馴染みの男の子二人と友達になった」
　そこで、彼女は僕に上目遣いで目配せをした。僕は話の帰着点が見
えないまま、なんとなく頷いた。

「ここにある文庫本は、『魔女』が後輩に出会うまで、彼女の一番の
友達。ラジカセは、後輩のプレゼント。駅が取り壊されることになっ
た時、私が持ち出して、自分の『秘密基地』に持ち込んだの」
　彼女はパステル鉛筆セットの箱を開けて、頼りない笑みを浮かべた。
「そしてこの画用紙と鉛筆が、私が松澤忠司に出会うまでの、私の一
番の友達」
　彼女は青鉛筆を取り出し、画用紙の裏に隠れるようにして、紙を塗
りたくり始めた。
「いじめっ子はみんな頭が悪い子ばっかりだったから、地元で一番の
進学校に入れば逃げられると思って、必死に勉強して神村高校に入った。上手くいくって思ったんだけど」
　彼女が洟をすすってから再び話し出すまでの隙間を波の音が埋めた。
「上手くいったんだよ、途中までは、ね。でも、でも」
　声がおぼつかない様子で揺れ出す。僕が彼女の手元から画用紙を取
り上げるや否や、彼女は顔を両手で覆った。
「松澤忠司のことが好きな子は、私だけじゃ、なかった」
「えっ」
「C組の築館さん、知ってるでしょ」
「嘘」
　僕は当然のように築館を知っていた。築館は地元の有名な甘味処の
娘で、C組のクラス委員を務める才色兼備の大和撫子として、学年中
の男子にもてはやされていた。そんな子が、僕のことなんか気にかけ
ているなんて、夢にも思わなかった。

「あの子、私と松澤忠司が付き合ってるって、すごい怒ってた。あの
子は私と違って人気者だし、なんでもできるから、私を潰すのくらい、簡単だっただろうね」
　僕は地面に置かれていた封書達の中身を取り出す。
「自分の立場くらいわきまえろ」
「ブス」
「電波女」
「キチガイ」
「死ね」
　女が書くとは思えない乱雑な字で、女が書くとは思えない粗暴な言
葉が綴られている手紙。筆跡からして、最低でも十人は関わっていそ
うだった。
「中学の時、変わってるってみんなにからかわれて、だったら徹底的
に変わった奴になって、お前らみんな突き放してやる、って意地にな
ってた。でも、途中でダメだって気付いて、それでもやめられなかった。変わり者でいるってことに慣れちゃって、後戻りが効かなくなっちゃった」
「だからなんなんだよ」
「からかいがいがないと無視される存在でしかなくなったの。無視さ
れるのが怖くて、自分を変わり者として飾ること以外に、できること
がなにもない、それだけの人間。従姉が成海璃子なのも嘘」
「だからなんなんだよ！」

どんどん総レス数増えてさるｗｗｗｗ

さーる。
三十行まで入るんだぜ？

　彼女がやっと顔を上げる。あふれる涙の向こうでも、彼女の瞳はいたって一途に僕を見ていた。
「築館が先に唾をつけなかったくせにいちゃもんつけてるだけだろ。
お前はなんにも悪くないし、変わり者だろうが嘘つきだろうが、俺は
お
前が好きだ」
「本当に？」
「あぁ」
　そういって、僕は首を縦に振った。理穂は下を向いて手の甲で涙を
拭いた。
「冗談じゃ、ないの」
「当たり前だろ」
　すごく昔のことに思える告白の台詞を、なんの迷いもなくそっくり
そのまま再現すると、彼女の口元が少し緩んだ。
「明日は早めに学校に行こう。下駄箱の掃除手伝うよ」
「うん。机の落書きも、お願い」
　どうにか理穂は泣き止んだようだった。
「分かった。とりあえず、学校に戻って様子見て来ようよ」
「私、もう少しここにいたい」
「しょうがないなぁ。じゃあ、またあとで迎えにくるよ」
「うん」

>>151
申し訳無いと思っています
しかも後半は村上春樹を超劣化させたみたいなものになります

>>151
切れ目がおかしくなるんです
今も充分おかしいけど

　彼女と別れたあと、僕は警報の解除された学校に戻って二人分の荷
物を運び、崖まで理穂を迎えに行って、登校直後に帰されるのは初め
てだ、なんて話をしながらなるべく目立たないように一緒に帰った。
いつも別れる道で、彼女の髪で真っ黒な背中を最後まで見送った。
　それっきり彼女を見ていない。次の日は約束の時間に現われず、気
になって彼女の家に様子を見に行ったら、家はすっかりもぬけの殻だ
った。築館が嬉しそうにあいついなくなっちゃったね、と友達と話し
ているのを聞いて僕が詰め寄ると、築館は大人しく謝ったが、僕がそ
の場を離れるとまた元の話題に戻った。

　そして今に話は戻る。二年前の北朝鮮の社会主義政権崩壊によって
徴兵されることなく終戦を迎え、一時の暗澹たる気持ちからどうにか
抜け出した。恋人に常軌を逸した長髪も中二病電波トークも求めなく
なり、my bloody valentineやRIDEやslowdiveのCDケースに埃が積もり、スピッツやレミオロメンって案外悪くないなと思い始めた僕は、
理穂と正反対の女の子と一緒に、あの崖にいる。春子に理穂との思い
出を話したことはない。偶然にも春子に連れて来られた先がここなのだ。

ついに総レス数が？だけにｗ

　夏の潮騒と虫の声以外になにも聞こえない静かな暗闇のなかで、満
月だけが柔らかい光を地上に浴びせる。
「東京に帰りたくないねぇ」
　春子がまたひとりごちるようにいった。確かにこの風景を見ると、
東京に帰る気が失せる。特に僕みたいにこの地にまつわる思い出があ
る場合、しばらくは夢に出てきそうだ。
「こういう特別な機会だし、ちょっと自分らしくないこと、して見よ
うかな」
　その言葉を聞いて、僕は隣にいる春子を見た。彼女は僕より頭一つ
くらい小柄で、見下ろすような感じにならざるを得ない。
「戦いって大変だな、ってたまに思うの。戦いは知らない所で、自分
の周りに関わってくるからね」
　春子は足下の小石を一個拾い、崖下に放った。水に落ちる音もしな
ければ、波紋も見えないが、それらは絶対にそこにある。
「高一の時、初名浜の駅で、私は『魔女』に出会ったの」
　魔女。その単語によって、記憶の中でなにかが繋がる。

「『魔女』はすごく綺麗な、なのにすごく孤独な人。初めて会った時に、私は友達になりたいって思って、だから幼馴染みを紹介して、ラ
ジカセをプレゼントした。みんなで仲良く、幸せにできるはずだった。でも、先輩のたった一人の親友が、家の都合で引っ越してたイギリス
から日本に帰ってきて、先輩と同じ人を好きになったの」
　彼女が語る物語に既視感を感じる原因から、僕は目を逸らしたいと思った。けれども、できなかった。
「私は馬鹿だったから、どっちの味方もできなかったし、どっちも助
けられなかった。最後には仲直りして、みんなで仲良く、幸せにでき
たんだけどね」
　春子はもう一個小石を崖下に投げる。やはり音も波紋も感知できない。
「先輩達が卒業する少し前に、駅の取り壊しが決まって、私はラジカ
セや、先輩が駅に置いてた文庫本の中でも先輩が気に入ってたのを崖
の木に移して、私だけの秘密基地を作った。私達の後ろに立ってる木ね」
　振り向くまでもない。僕は春子が思う以上にこの場所をよく知って
いる。

「で、進級してわりとすぐのことなんだけど、ここで絵を描いてる女
の子がいたの。話をしてるうちに、その子は私よりずっと、一人でい
られる場所を必要としてるんだって気付いたから、ラジカセと本を置
き土産にして、その子にここをゆずったの。私には友達がいたけど、
その子にはいなかったし、いらないっていってたから」
　理穂だ。
　頭の中のモヤモヤが一気に振り払われる。
「それから二度と私はその子に会えなかった。その年の冬、学校の近
くが空爆されたあとに、ここよりもっと田舎に疎開したらしいの。恋
人と離ればなれでどうの、って聞いたことがあるけど、よく知らない」
　こんな偶然って、あんまりじゃないか。笑い出したくなるのをこら
えて黙る。また春子が小石を放る。
　春子は無意識に、そしてものの見事に、僕が彼女に好感を抱いてい
た理由である「取り留めのない話ばかりすること」に立ち向かった。
そこに僕は理穂の反骨心を感じてしまう。しかも、彼女は理穂と同じ
場所をかつて自分の居場所としていた。
　記憶の片隅に追いやられ、忘れつつあった理穂が、春子がいうとこ
ろの理穂の「戦い」が、未だに僕の近くの範囲外から僕の運命を束縛
している。

20はいくなこりゃ……さる寝

「理穂の呪い」
　思わずそう呟いた。春子はいつも僕がしているように受け流してく
れた。
「まだ続いてる戦いも、一つあるんだけど。日本の戦いと後輩の戦い
の話しはしたけど、こっちは私の戦い。あんまりいい気分はしないと
思うけど、この際だし聞いてくれる？」
　こんな運命の悪戯を目撃した後はなんだって構いやしない。
「あぁ、聞くよ」
　半ば自棄になって答えると、春子は話し始めた。
「私は松澤君が好きなんだけど、それは松澤君が、昔私が好きだった
人に似てるからなの」
「なぁんだ、そんなことかぁ。だったら俺もそうだよ」
　きょとんとして春子が僕を見る。
「俺も春子のこと好きだよ。かなり前から好きだ。でも、それは春子が、昔の彼女と似てるからなんだ」
　笑いながらそういうと、春子もつられて笑った。
「今までずっと、春子はその子と真逆の人間だって思ってたけど、さ
っき意外と似てるって気付いた」
「それでどう？　幻滅した？」
「まさかぁ。前より好きになったよ。それがいいことか悪いことかは
別として」

続きどうした保守

これ、半端なところで改行せず、きちんと三十行ずつ投下してりゃ、
こんなにレス数増えなかったんじゃね？

さるかな？
保守寝

「そっかそっか。やっぱり私達、意外と似てるね。このまんま結婚と
かしちゃおっか」
　二人で爆笑して笑い疲れたあと、春子はいった。
「これで、私らしくないことは終わり」
「あぁ」
　春子は海の方に向き直り、すぐに指を指して声を上げた。
「うわ、松澤君、見て」
　春子の指の先には、さっきまでの墨色の海はなかった。
　緑の蛍光色の水面。理穂の絵とは違って、ずっと先、水平線の彼方
まで、月光を跳ね返す蝶の群れが蠢いている。それはまるで一つの統
一された意志を持って動いているように見えた。かつての敵国、北朝
鮮のマスゲームによく似た光景だが、それは僕の主観で、人間ではな
い第三者から見たら、この蝶達は運命に翻弄されている全人類の象徴
なのかもしれない。
　程なくして、その蝶の群れは一斉に飛び立った、何百羽、何千羽、
いや、何万羽と。
　世界の終わりに、世界で一番美しい崖から海を眺めると、エメラル
ドグリーンの蝶がいっぱい海にいて、最期の時に一斉に宇宙へ飛び立つ。
　理穂、どこにいるんだ。
「……悪くないな、世界の終わり」
　春子は今度の独り言には答えた。
「えっ」

「このまんま東京に帰らないで、世界が終わってくれたら。ここにず
っと、永遠にいられたら。悪くないって思わない？」
「そうだねぇ、それはそれでありかな。松澤君と一緒なら」
　春子は僕の腕にしがみついて、目の前の不思議な出来事を眺める。
　春子の中に潜む、存在しないはずの理穂の幻影を見つけたはいいが、
それはあくまでもただの幻影であり、それを愛するわけにはいかない。
僕はここにいない蜃気楼のような理穂よりも、ここにいる生身の人間で
ある春子を選び、少しずつでもありのままの春子を受け入れていく努力
をしなければいけない。
　さようなら、理穂。
　宇宙へと飛び立つ蝶の壁の向こうから、理穂が僕に振り向いた気がし
た。でも、壁が分厚過ぎて、その表情はすっかり見えない。

さるさる

これは長編板に投下して、こっちで感想ねだった方がよかったな。
つか、投下するときはレスごとに区切っておいて、投下しような。

hosy

ほしゅほしゅ

ほしゅ

ほ

古畑でカレーに生卵混ぜて食う話があってさ、それ真似したら結構美味かった。
おやすみ。

十一時くらいになったら起こしてく

ほ

天下一ブドウ会禁止？

まだ続くの？

ほ

はなか

>>173
我が家ではごく普通のことだが、けっこう珍しい習慣なのか？

カレーは一晩寝かせた後に、漢方薬とケチャップとインスタントコーヒーとソースを加えるべし

>>175
ありゃブトウ会じゃね？

ﾎｽ

果実ねえ。微妙にイメージがわかないから不参加かね

知恵の実ってりんごと言われてるけど正確にはイチジクらしいよ

保守

>>183
知恵の実を食べた後に羞恥心を覚え、股間を隠すのにイチジクの葉っぱを使ったんじゃなかったか？

聞いた話だから詳しくはシラネ

>>186
すまん、俺も聞きかじった話だ。
聖書ネタってかなり歪曲されて流用されてるよなぁ……

１０００年以上経ってんのにまだアンソロ作られてるってすごいよな
作者は幸せ者だ

お題ください↓

不幸

>>188
「幸せ者」

>>189-190
なんと深い
把握した

保守

http://game11.2ch.net/test/read.cgi/arc/1183530391/

ここはニートの巣窟ですが、あえて、「お前ら仕事は？」と聞いてみましょう。
面白い反応が返ってきますよ。

品評会お題は今晩？

　「不幸な幸せ者」
　「なんだって？」
　「不幸な幸せ者」
　さっきまで膝を抱えて泣いていた男が、突然口を開いて、最初に出た言葉がそれだった。
　「……どういう意味だ？」
　その男は、何も無い空間を見つめている。空っぽの箱のような目だった。
　あたりは黒煙と、肉の焦げた臭いが充満し、ハンカチを鼻と口に押さえつけていなければ耐えられない状態だった。ビルはそのほとんどが崩れ、ただの廃墟へと姿を変えた。
　未曾有の大災害が起きたのか、あるいはどこかの国から爆弾が投下されたのか。原因は分からないが、私の慣れ親しんだ街は、ほんの一瞬でその形を崩してしまった。
　俺は、その男の言った言葉を反芻していた。「不幸な幸せ者」
　「それは、この状況で生き残った俺達の事か？　こんな事になってしまったが、何はともあれ俺達は生きてる」
　男は黙って首を横に振った。
　「それとも死んでいった者達の事か？　死んでしまったが、この状況を見ないで済んだ」
　男は黙って首を横に振った。
　「あんたの事か？」
　男は黙って首を横に振った。
　「俺？」
　男が「そう」と呟き、首を縦に振った。そして続ける。
　「死んでしまったのに、この状況を見てしまった。でもきっと、君の事が見える私よりは幸せ者」
　ああそうか、俺は死んだんだった。あまりにも唐突すぎて気づかなかっただけだ。

完

なんというシックスセンス
では次のお題↓

蛇になげわ

>>197
把握

>>194
もう出てる出てる
果実で5レスまで

>>195
書くの早いな。一人称で「私」が出てきて、一瞬視点が変わったのかと思った。
死んでる人間の視点でおｋだよね？
よくある話と言わざるを得ない。実は死んでたオチもこの短さだと感情移入できないしなあ。

>>199
あ、ミスった

>>134
　なんか前半話が飛びすぎて、いまひとつ全体像が見えなかった。
　例えばいきなり説明なく「理穂」とか「成海璃子」なる名前が出てきて、
それはいいとしても、さらに「かつて理穂が好きだった」だの「顔立ちは
成海璃子に似ていた」と言われても、はあ、としか。
　成海璃子についてはググって「ああ、実在の人なのね」と知ったが、
知らない人は作中に「成海璃子」という人物が出てくるものだと思いながら
読むわけでして。

　あと、二人を語らせるところにどうにも腑に落ちない記述があって、
そこで引っかかって以後の流れがさっぱりわからなくなった。

理穂「ここにある文庫本は、（中略）駅が取り壊されることになった時、私が
持ち出して、自分の『秘密基地』に持ち込んだの」

春子「駅の取り壊しが決まって、私はラジカセや、先輩が駅に置いてた文庫本の
中でも先輩が気に入ってたのを崖の木に移して、私だけの秘密基地を作った」

　どっちなんだよｗ
　このせいで春子＝理穂の別名だとばかり思いこんで読み進んだのだが、
結末はどうも違うっぽいし。

　もうひとつ、北朝鮮という固有名詞を持ち出す必然性がどうしてもわからない。
（それ以前に戦時である必要もあまり感じられなかったが。）
　「マスゲーム」とか「北朝鮮」がお題だったのならスマヌ。

名前欄に

タイトル （お題：○○） （1/5）

と書いておくとまとめの人が編集しやすくなると思うので、ご協力を。
タイトル無しの場合は、

お題：○○ （1/5）

とするとわかりやすいかと。
すぐ上にお題があったとしても編集しながら読み返すのは
正直しんどいです。

>>195>>196

>なんというシックスセンス
たしかにｗｗｗ

>>179
そもそもカレーになんかかけて喰う習慣自体が、うちにはないんだ。
お昼ごはんもカレー+生卵にした。


保守
知恵の実というと、ボウケンジャーのアクタガミ思い出す俺は特オタ

アクタガミの回はいい話だったなぁ

チーフの無茶な返しが大好きです。ほしゅ

カレーにとろけるチーズ乗せると美味い

ほ

ほ

　家に居たところで何もする事が無い。５０代男性の独身なんて孤独の極みだ。
　扇風機の送る風を心地よく感じながら、ちりんちりんと鳴る風鈴を眺めていた。こんな事なら、無理してでも会社に出社すべきだったか。ぎっくり腰なんぞどうとでも……ならないな。ああ扇風機よ、お前のように強靭な腰が欲しい。
　そんな事を考えてると、「ピンポーン」とチャイムが鳴った。セールスか何かだろう、こんな時は無視するに限る。「ピンポンピンポンピンポピポポポポポポ」。ちょ、連打するなって。最近のセールスは礼儀もわきまえて無いのか。
「三郎おじさーーーん！！」
　聞いた事のある声だった。確か姪のゆ……、ゆ……。なんだっかな？　み？　か？　き？
「いるんでしょーーー！？」
「よっこらしょ」
　自然にこの言葉が出る自分が悲しい。なるべく腰に負担をかけないように立ち上がり、玄関に出て行った。
　今時引き戸を開けると、そこには姪の「ゆり」の満面の笑顔があった。顔を見れば思い出せるんだ。決してボケではない。
「やっぱりいた」
　ゆりは白いワンピースに麦わら帽子を被っていた。長い髪を後ろで結っている。
「……何か用か？」
「当たり前でしょ。用が無きゃ来ないし」
　小生意気なガキだ。俺の弟の遺伝子をしっかりと受け継いでいやがるな。
「そんで、」
「喉渇いたー」
「何の、」
「お茶のみたーい」
「俺の話を聞、」
　言い終わる前にゆりは家にあがっていた。玄関にサンダルをけっちらかし、わき目もふれず台所に一直線。俺が追いついた頃には、既にグラス一杯の麦茶を飲み干していた。

「昔のお金が欲しいの」
　人の言う事は無視するくせに、自分の言いたい事は勝手に言う。だが、「今のお金が欲しいの」と言わなかっただけまだマシだと思うべきか。
「何に使うんだ？」
「自由研究」
　小学生は今夏休みだという事を思い出した。自由研究か、懐かしい響きだ。
「実家にならあるかもって、お父さんが」
　弟よ、余計な事を……。
「まあ、あるかもしれんが、納戸の奥だな……」
　途端に姪がうるうるとした目をこちらへ向け、囁くように言った。
「お願い……」
　この年でこんな荒業を使い出すとは、将来が心配になる。
「いや……納戸開けたくないんだが……」
「お願い……」
　俺が首を縦に振るまで続けるつもりだろう。という事がゆりの表情から察せた。
「ああ、もう、わかったよ。かわいい姪の頼みだ」
　などと虚勢を張りながら、ゆりを２階の納戸へ連れて行った。
「いいか？　開けるぞ」
　ゆりは嬉々とした目つきで納戸を見ている。俺は口と鼻を手で覆い、目を閉じて素早く戸を開けて後ずさりした。と同時に、ものすごい量の埃が納戸から噴出し、ゆりはそれをもろに被った。我ながら大人気ないとは思ったが、仕返しの１つもしないとな。
　ケホンケホンと、咳き込みながらゆりが必死に何か訴える。
「も、何する……もう！」
「おお、すまんすまん」
　わざとらしくそう言ってやった。ゆりが涙目で俺を睨む。
「早く探して！」
「俺が探すのか！？」
「当たり前でしょ！　女の子に仕事させる気？」
　こうなると逆らえない。俺が押しに弱い事を姪は把握してる。

　なるべく腰に負担をかけないように、ゆっくり１つ１つ納戸の中の物をどかしていった。その時、思わず懐かしい物が目に入った。
「見ろ見ろゆり、『レッドスネーク、カモ〜ン！』」
　と言いながら壷を叩いて、俺の腕が入った緑色の蛇のぬいぐるみを出した。
　わずかに間があいて、
「何それ？」
　ゆりが冷ややかな目で俺を見下ろしてる。
「何って……知らない？」
「知らない」
　即答された。それもそのはず、これが流行ったの、俺が小学校の時だった……。
「面白いだろ、ほれほれ」
　めげずに蛇をくねくねと踊らせる。
「つまんない」
　ゆりが益々冷めているのがわかった。
「俺がゆりくらいの時はこれで爆笑だったんだが……」
　そう呟いてうなだれると、ふわりと何かが宙を舞った。その何かは、俺の右手が突っ込んである蛇に見事にかかった。麦わら帽子だった。
「やった、入った」
　やれやれ、ゆりも所詮ガキだな。と言いたい気持ちを抑え、壷と蛇と麦わら帽子を置いて、納戸の探索へ戻った。
「三郎おじさん結婚しないの？」
　唐突だった。唐突すぎて、心臓が止まるかと思った。
「ああ、しない」
「しないんじゃなくてできないんでしょ？」
　思わず噴出しそうになった。

「ばか、おじさんはモテモテだぞ」
「うそばっかり」
　鼻で笑われた。確かに嘘だから仕方が無いが。
「ゆりが大人になったら、お嫁さんにきてあげようか？」
　今度は本当に心臓が止まったと思う。
「ば、何言ってやがる」
「あはは、照れてる。冗談だよ」
「わかっとるわ」
　笑ってるゆりを見て、俺は内心ほっとしていた。
「じゃ、そろそろ帰るね」
「おい、昔のお金は？」
「やっぱいいや」
　もう怒りを通り越して呆れしか出てこなかった。
「とうっ」
　ゆりが麦わら帽子を投げた。それはふわりと浮き上がり、吸い込まれるように俺の頭に収まった。
「やった、それあげる！　また来るね」
　そう言って、ゆりは去っていった。
　ああ、腰が痛い。


完

お題↓

車輪

>>214
把握

ほ