1 :
◆rHi47N9WYc :
あれ?一発で立つとは珍しい……
三十五話を投下します
第三十五話
( ´∀`)
やあ、ようこそ社長室へ
せっかくだからマルボロでも一本どうかね?
………今回は閑話休題というか……
勝手ながら私の若い頃の話をさせてもらう
まあ若い頃といっても30代の頃だが
………気に入らなければ捨ててくれ
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 20:20:49.43 ID:kGuDEe4dO
はひふへほしゅ
( ´∀`)
私は一時期、少しばかり異色なクルマに乗っていた経験がある
たしか、ツンがまだ小学校に入るか入らないかくらいだったかな
………そう、バブルで世の中が狂っていた時期のことだった
当時は東京の銀座あたりだと坪4億円もしたくらいだ……まったくクレイジーな時代だった
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 20:24:19.52 ID:1mLeixZpO
支援
…………………………………
15年前
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「やあ、VIP建設のモナー社長ではないですか、どうです景気は?」
( ´∀`)「おや、VIP不動産のポリフェノール社長、これはこれはごぶさたしております、
私共はなにぶん起業したばかりですから……まだまだこれからが勝負ですよ。いかがですか社長は?」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「いやあ、こう言ってはなんだけど儲かって儲かって笑いが止まらないんだ。
スポンサーもいくらでもゼニを出してくれるし、何を出してもヒットする。
株価だって天井知らずさ、ハッハッハッ!!」
( ´∀`)「そうみたいですねぇ、……まったく羨ましい限りです。
まあこの好景気は今後あと20年は続くみたいですから……
焦らずにウチはまず借金の返済を済ませることが優先になっちゃいますよ」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「ハハ、この御時世なら借金なんてすぐ返せるでしょう……ところでモナー社長は、クルマはなにか乗ってましたかな?」
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 20:24:50.91 ID:svBfDl0a0
支援
( ´∀`)「??ウチの社用車はセドリックですが?」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「いやいや、プライベートのクルマですよ」
( ´∀`)「ああ、たいしたクルマじゃないですよ……初期のZです」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「ほう、いわゆるS30ですな、これはまた渋い趣味をお持ちで」
( ´∀`)「ええ、まあ自分もクルマももういい加減トシですけど、ハハ……」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「では、この機会と言っては失礼かもしれませんが……
ズバリ私のクルマを買いませんか?」
( ´∀`)「え?まさかポリフェノール社長のフェラーリテスタロッサのことですか?」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「ええ、そのまさかです。
今度はF40を買うことにしましたのでね、テスタの売却を考えていたんですよ。
どうだろう?モナー社長もそろそろフェラーリを経験してもいいと思うんですがね?
いいもんですよ。アレは……」
( ´∀`)「………………」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「……………せっかく苦労を重ねてお互いこうして実業家になったのです。
クルマくらい少しばかり贅沢してもバチは当たらんでしょう?」
( ´∀`)「……それも、そうかもしれないですね……
……では今度、ぜひ見せて頂きたいと思います……」
そう、我々は、かの有名な『スーパーカーブーム』世代であった。
元々クルマが好きで、高校の頃から親父のハコスカを無免許でコッソリ乗っていたほどの私が、そのブームを経てフェラーリに憧れを抱かないわけがなかった
………就職して自分で免許を取り、
親父のハコスカや自分で買ったZに乗るようになっても、いつも心のすみっこでずっと、ずっと欲しいと思っていた。
乗るだけでもいいから、いや座るだけでもいいから、フェラーリに近付きたいと……
( ´∀`)(そうだモナ、気がつけば……私にもフェラーリを買えるほどの余裕は出来ていたんだモナ)
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 20:33:15.30 ID:yuTbEjWXO
支援
13 :
◆rHi47N9WYc :2007/06/29(金) 20:34:34.51 ID:qfL+zKS6O
手続きはトントン拍子に進み、ロッソコルサ(赤)のフェラーリテスタロッサはすぐに私の元へと納車されてきた
( ´∀`)「ほほう……」
5リッター水平対向12気筒エンジンを搭載し、
鮮血のごとく紅く煌めくボディ
不気味なほどに低く、幅広く構えたシルエット
……猛毒のカタマリのようなクルマだなと思った。
( ;´∀`)「…………」
ほかにうまい表現が思いつかないくらいに……
14 :
◆rHi47N9WYc :2007/06/29(金) 20:38:53.22 ID:qfL+zKS6O
( ;´∀`)「…………」
いままで色々なクルマに乗ってきたが、これほどに緊張するシェイクダウンは初めてだった
意を決してシートに座り、12気筒エンジンに火を入れる………
『クォクォクオオオーーン!!』
( ´∀`)「…………!!」
まるで違った。
他のクルマでは決して起こりえない快感が、ただエンジンを掛けただけで私を襲ってきた
そうだ、コイツはいままで乗ってきたどんなクルマとも違っていた
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 20:40:28.04 ID:1mLeixZpO
支援
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 20:42:42.09 ID:p1yMHdL/0
sienn
今北
S30って、シルビアだっけか?@ジゴロー知識
支援
( ´∀`)「素晴らしい……」
テスタに乗り、さっそく新制首都高に乗ってみた
アクセルを吹かして軽く回すと音と音が互いに共鳴し、えもいわれぬ快音を紡ぎだす
( ´∀`)「私のS30Zとはまるで違うもな……」
これまで乗っていたZはフルチューンだった。L28改3リッターNAキャブ仕様
それゆえに充分危険で、それ系の快感のあるクルマだったが………
フェラーリとはたぶん評価する基準自体が違うのだろう
( ;´∀`)(……これでレッドゾーンまで回したら………おそらく気絶するほどだろうモナ)
いま、正直この状態でも少しヤバい。
クルマではなく、私が……
たかだか100キロちょいしか出していないというのに
本当にこれで7000rpm以上回してしまったら快楽に溺れたまま死んでしまってもおかしくないくらいだ
そう思ったせいではないのだが……どうにもアクセルが踏み込めない
……右足が動かせない
Zならば普通に踏めるのに
こいつを踏んでしまったらなにかとてつもなく恐ろしいことが起こってしまう気がする
( ;´∀`)(踏むか、止めるか……)
踏めばさらに未知なる世界、だが安全は保証されないだろう
そう葛藤していたときだった
( ´∀`)「……?!」
急に車内にガソリン臭が充満したのだ
しえん
21 :
◆rHi47N9WYc :2007/06/29(金) 20:51:52.68 ID:qfL+zKS6O
( ;´∀`)「え……?」
とてつもなく嫌な感じがした
もしかしてエンジンのフューエルホースからガソリンが漏れだし、引火するのではないかと思ったが、
……果たしてその通りになってしまったのである
( ´∀`)「ッッッ!!!」
走っている最中にあっという間に火が回り、リヤセクションは完全に火だるまになってエンジン全体からモクモクと煙をあげた
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 20:53:26.76 ID:1mLeixZpO
支援しようぜ!
23 :
◆rHi47N9WYc :2007/06/29(金) 20:54:02.02 ID:qfL+zKS6O
すぐにブレーキを踏み、路肩に停めてクルマを降りた……
( ;´∀`)「ま、まずいモナ……」
もはや時はすでに遅かった
夜の新制首都高の路肩で、赤いテスタロッサは、おごそかに炎を上げて燃えている光景だけが、理解出来た
( ´∀`)「…………」
イタリア車は炎上する可能性が国産車に比べてとてつもなく高い。
そういう説は知っていたが、まさか納車されたその日に、フツーに走っただけで燃えるとは思わなかった
しかし、そんなことはいまさら仕方がない。
もうこんなに燃えてしまっては手のつけようがない
( ´∀`)「あああ…………」
私は、完全に力が抜け、ただただ路肩に立ち尽くしたまま、パチパチと燃えるフェラーリを眺めていた
( ´∀`)「おそらく、一生忘れない光景だろうなぁ……」
まるで他人ごとのように、そう思った
実際、夜の湾岸で炎を上げて燃えるフェラーリテスタロッサは映画のワンシーンのようで美しかったとさえ感じる
……自分のクルマじゃなければ
25 :
◆rHi47N9WYc :2007/06/29(金) 20:57:01.29 ID:qfL+zKS6O
結局2000万円したテスタは一晩で廃車
そしてその数週間後にはバブルが崩壊………
………つくづく愉快な夏だった
…………………………
( ´∀`)
それ以来、私はイタリアのクルマには乗らないことにした。
だから現在、ホンダNSXという選択なのだ
他の同業他社の社長にはフェラーリオーナーも多数いるが、私には怖くてとてももう二度と乗れたものではなかった
その後、私はあちこちの知り合いのフルチューンのGT-RやらRX-7やら911ターボやら様々なクルマに乗ることができた。
どれもパワーは素晴らしいのだが、しかしあのフェラーリテスタロッサのような少し『異質』な快感を感じることはなかった
しえん
27 :
◆rHi47N9WYc :2007/06/29(金) 20:59:40.92 ID:qfL+zKS6O
( ´∀`)
……チューンドGT-Rやポルシェ、対してフェラーリ
前者が重点を置いているのが、さしずめ『性能』なら、後者は……
『官能』だったのだろうか
( ´∀`)(……結局、あのテスタロッサのエンジンの素性はわからないままだったな……)
フェラーリのことはあまり思い出したくなかったが、あのエンジンの素晴らしさだけは、いまだに忘れられないでいる
4000回転であの快感を生んだあのエンジン
もし、7000回転まで回していたらと思うと……
いまでも、それだけは心残りだった
いつか、本当に憂いがなくなったらまた乗ろうか、とも考えつつある
そういえばあのクリスマスの夜……ツンの帰りがかなり遅かったが……
おや、タバコが切れてしまったようだ
それではNSXで買いに行ってくるとしよう……
第三十五話 完
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 21:04:30.54 ID:p1yMHdL/0
乙〜
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/29(金) 21:05:48.59 ID:1mLeixZpO
乙
以上ですー
支援してくださった皆さん、ありがとうございました
寝ます
乙