ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」
1
大寒という名の下にシベリア寒気団の連中が思う存分に力を発揮し、おかげで熱エネルギ
ーをすっかり奪われた身体のほうは、氷点下じゃないかと思えるくらいの滝で修行できる坊さ
んばりに気合を入れてようやく微動してくれるという程度には冷え切った二月のある日、俺は
自宅のフローリングがスケートリンク化しちまったんじゃないかってくらいの霜焼け寸前の冷
たさと、身支度して家を出た直後に吹きすさぶ遥か北方からの風によるあまりの洗礼っぷりに、
脊髄反射的、あるいはトマホークミサイル的鋭敏さで防寒対策を強化すべく玄関に引き返した。
「あれ、キョンくん忘れ物?」
すると小型ロシア人形のようにピーコートとマフラー、耳あてまでした妹が靴ひも結びを中
断して俺を見上げた。
「まぁな。お前も北風に根負けしてすげなく追い返されないよう気をつけろよ」
そう言うと妹は雪解けを思わせる笑顔で、
「大丈夫。子どもは風の子だもんね」
きゅっと蝶々結びを完成させると、冬に羽化する新種であるかのようにふわふわと玄関から
飛び立っていく。風の子を自称するわりにはちゃんと厚着してたが。
さて俺はというと、江戸時代の飛脚とも肩を並べられる心持ちで階段を二段飛ばしで上り、
マフラーを取って地球の引力を極力無駄にしない挙動でもって階下へと舞い戻る。いつも遅刻
すれすれをかすめる時間に間に合うかどうかのラインで起床しているため、こうした些細な予
定外行動が朝の出席判定に甚大な結果をもたらしうる。
吹きすさぶ冬の旋風に横倒しされぬよう黙々とペダルを踏み込んで駅前駐輪場まで滑り込み、
着衣をぴたりと肌にまとって決して脱ぐまいとする旅人の心境よろしく、既に登頂回数数百回を
数える山道に踏み出す。
「よ! 遅刻の友!」
直後に俺の気勢を削いだのは、この二年で「アホ」と辞書を引けば当該項目に至る前にこい
つの顔が思い浮かぶくらいには見慣れた面構えの級友、谷口だった。
何が遅刻の友だ。俺はまだ担任吉崎より先に教室に着き、無事出席欄に記される望みを諦め
ちゃいないぜ。
ktkr支援
「あいつは本当に時間ぴったりに来るからな。廊下で待ち伏せてんのかと疑っちまうくらい」
谷口は吐息を白から灰色に雲らせんばかりに言った。友よ、俺たちがこうして益体もない話
にうつつを抜かしていると、本日分はボーダーラインを越えて内心に小さなヒビが追加される
ことが確定事項となりそうじゃあないか。
「しゃーねーな、走るとすっか。お先に!」
言うなり谷口は低血圧人種が見たら十人に二人くらいは羨望しないこともないかもしれない
闊達溌剌とした挙動でもって早朝登山ランニングを開始した。何となく癪なので、やむなく俺
も後に続く。
間もなく肩が並び、気づいた谷口が横槍を入れるかのごとく声をかける。
「キョンよ。その後、古泉と長門はどうなんだ? うまく行ってんのか」
白い息でレースを煙に巻かんばかりと谷口は言う。その内容が咄嗟に地球の重力が倍化した
かと思わせあわや転倒しかけるが、そうはいくか。
「さぁな。俺に訊かれても困る。……とまでは言わないが」
俺は接地するたび等間隔でかかる自重のリズムに合わせて呼吸しつつ、
「ま、SOS団自体は相変わらずだ」
それだけ言って右足に瞬間力を込め、さほど広くもない歩道のアスファルトを蹴り出す。
半馬身リード。
「……急ぎすぎだ、バカキョン」
昇降口。息を上げ肩を下げ下駄箱を開きつつ谷口が言った。うるせえ。お前にバカ呼ばわり
されると、まるで裸の王様にズボンのチャックが全開であることを指摘された直後みたいな気
分全開だ。
すると谷口は土建屋よろしく額の汗を袖で拭って、
「んだと。だったらそう呼ばれないように、ちったぁ勉学に勤しんだらどうなんだよ」
こいつめ。諸刃の剣ってのはそう容易く振りかざすもんじゃないんだぜ。……まぁ、確かに
胸張れるようになるにはあと少しと言わず学内偏差を上方へ修正してやらねばいけない。オフ
クロの満足度もまだもうひとつといったところだし。
支援
谷口との小競り合いのせいですっかり身体が汗ばんでしまい、上気した頬へ風を送るべく俺
はマフラーを外して鞄にしまい、隣で呼吸を整える臨時陸上部仲間と取るに足らない会話をし
ているうちに教室へたどり着く。五分前登校。やれ素晴らしや。
「……」
早くも冷えてきた身体に教室の微かな温度を感じるのと同時。そこだけ凝固してつや消しマ
ット処理されたかのような漆黒の瞳が、物言わず俺を見ていた。と言うかばったり出くわした。
「……」
無言とプチブラックホールの主、長門由梨は、瞳と同じ色のショートカットをわずかに揺ら
して、
「おはよう」
とだけ言って廊下に出た。時を止めたような静謐が俺限定でしばしわだかまり、やがて我に
返る寸前、
「やっぱバカで合ってると思うぜ」
余計なアローブローが入った。ぐ。うるさい。ほらあれだ、今立ってる足場が急になくなっ
たら自由落下とともに心臓が止まるかのような感覚に襲われるだろ。それと似たようなもんだ。
俺の訴えに谷口は口の端をひん曲げて小悪党じゃなければ妖怪アニメの鼠人間よろしく笑い、
そのまま自分の席に向かったので俺も同様にし、室内で曇っても何ら不思議のない吐息を漏ら
した。やれやれ。
ふと見ると、由梨の姉こと長門有希はシャギーがかった髪と陶器のような横面をこちらに向
けてクラス中央の自席に着いていた。俺の視線を感知したかのように目が合う。眼鏡のレンズ
越しにでも長年の仲間への深厚が解る眼差しでもって黙礼。俺も片手で身振りだけの挨拶。雰
囲気的に、何となくこのまま有希が微笑んでもおかしくないようなシチュエーションだったが、
さすがに口元が緩んだりはしなかった。
明らかなエナジー浪費の早朝ジョギングを心地よい沈黙による意思疎通で癒し、俺はようや
くもって己が椅子に身を預ける。と、
「何で真冬の朝っぱらから汗ばんでるわけ? ランニングでもして来たの?」
ハルヒが指定席たる真後ろで、そのまんまなことを言った。
支援
「谷口と遅刻を免れるべく抜きつ抜かれつの熾烈な争いをだな」
「……なるほどね。若さによる愚かな行動の見本って感じ」
バッサリ切り捨てられては、余裕で間に合った栄光も蛍光にすらならない。
「何言ってんのよ。結果として遅刻しなかったんならそれでいいじゃない」
いかにもハルヒであった。確かに、お前のすることは他人の評価の重要性なんぞ二の次三の
次どころか下から数えた方が早いくらいだからな。
「あったりまえよ。よく解ってるようね。そりゃ二年も経てばね。あんたみたいな業績不振の
ヒラ団員にも団の方針が確固とした根を生やしてないと困るわ」
そうかそうか。これは知らぬうちに植えつけられたSOS印の宿り木だったのか。誰か移植の
仕方を教えてくれ。
ハルヒは鼻息が煙幕かしそうなくらいに胸を張って、
「どんな植木屋にだって無理ね。何せあたしが生み出した、全宇宙にまたとない特別製の苗だ
から」
得意満面な団長に、たぶん俺も似たような笑みを返しつつ、肩をすくめて担任吉崎が教室の
戸を開ける音を耳にした。きっかり八時四十分。
さて、物忘れというものはわざわざあらためて訊くまでもなく、人間であれば誰でも一度二
度と言わず、あれ何だっただろうと思い出せずに場合によっては懊悩し、はたまたそれすら忘
れてしまい、んなことやってるうちにしまいには何について忘れていたのか、気になってたの
はいつどこの何かってとっかかりすら……という具合にわけ解らなくなるものだ。年齢に関わ
らずな。
忘れたことが昨日の晩飯とかそんなどうでもいいことならまだしも、例えば原稿の締め切り
とか業務の追加懸案事項とか友人との特別な約束とかであった場合、その代償は時に取り返し
のつかない形態となって経験値すら蓄えていない俺たちの前に出現し、その強大さゆえに弱パ
ンチ一発でもってあっさりとのしてしまう。南無三。
支援
俺はというと、そんなうっかり八兵衛を演じたおかげでしっぺ返しを受けた経験が人並みか
それ以上にはあり、何とかならないもんかとその都度思うもののやはりそれすら忘失していて、
この日も試行結果たる不意打ちが俺を秒速ノックダウンせんとばかりにステルスミサイルのよ
うな狡猾さで俺をロックオンしていた。要するに迂闊だったのだ。この時点で俺は半歩ほど底
の見えない沼沢地に足を踏み入れていた。当然であるものの、もっと悪いことに自覚症状もな
かった。ヤブ医者でもいいから警鐘を鳴らしてくれれば、ひょっとしたら別の結末に向かった
かもしれず、だからといって俺がどうなったかといえば……それはまぁ、ゆっくりと続きを話
そう。
この日、朝の余計な運動からくる睡魔を追い払いつつも何とか授業を聞ききり、しかし頭に
何一つ残っていないということに気づいて愕然としかけ、あわや記憶錯簡しかけた頭を鼓舞し
て部室棟へと到着した俺は、すべてを払拭する至福の緑茶にあずかるべくドアをノックした。
「はぁい。どうぞー」
答えてくださるのは部室内を常春の温暖気候へ変化させてしまう現人神、朝比奈みくるさん
である。まとめて掃除当番となっている長門姉妹とハルヒに加えて、古泉もまだ来ていなかっ
た。しかして俺は瞬間躁となり、掌で羽ばたけば宙に浮けるんじゃないかってくらいの身軽さ
となってふわりと着席する。
「今お茶淹れますね、ふふ」
くすと笑った朝比奈さんに、急がなくていいですよと心中でささやいて、俺は部室内に目を
やった。
昨年度に引き続き現役のストーブが点く部室は、朝比奈さんも来たばかりだったのか、実際
の温度はまだ寒い。ちょっとした飲みものなら冷蔵できそうだな。二年経っても公立校の安普請
ぶりを嘆くことしきりだったが、こと俺にとってはそれ以上に得たものが莫大だったので今さ
らとやかく言うつもりはない。
502 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/19(土) 22:54:15.01 ID:VABYmtZAO
支援
俺はさしあたっての防寒対策としてオーバーを膝がけし、すると心許なくなった首周りにマ
フラーを巻いた。これで大分マシになった。見れば朝比奈さんも同年代の女子学生に人気のメ
ーカーのものと思しきチェックのマフラーをしている。本当になんでもそつなく着こなしてし
まうお人だ。メイド服に着替えてないのは今着いたばかりだからか、それとも寒いからか。
などと感慨のぬるま湯に浸っているとバタンとドアが開いて、
「ハロー敬愛の団員諸君!」
ハルヒが等圧線も軌跡を歪ませて迂回しそうな高気圧笑顔と共に威勢よく登場、
「あれ、古泉くんはまだなの――」
ね。と言いかけて、朝比奈さんに続けて視線をやった俺のところで語尾が切れた。……どう
した?
「あんた、それ」
ハルヒは俺の喉元付近を指差し目線を固定、
「そんなマフラーしてたっけ?」
そこで朝比奈さんがお茶の用意を終えて近付く姿が目の端に映った。
がしゃん。
湯飲みがテーブルの上に転がり、間もなく盆がガタカタカタと音を立てる。
「あ……あぁぁー」
朝比奈さんは何やら小刻みに震えているらしかったが、はて何故だろうと思いつつ彼女も俺
の喉元に注視するのを見て、はっとした。
物忘れ――。
俺が巻いていたのは、先月朝比奈さんから秘密裏に押し頂いた贈答品。世界中のブランドを
束にしたって敵わないハンドメイドのマフラーであった。
支援
支援
しまった。
この一週間ばかり、俺はこのマフラーを仏壇に奉納すべきか、家宝として金庫に(家にそん
なものはないけどもだ)入れるべきか、でなければ日頃着用して常なる温もりを得るべきか迷
い、風呂で考えて寝床で考えて朝考えてということを繰り返しているうちに今日になっていた。
が、降雪のないことが不思議なくらいに寒い今朝の疾風は、俺を無意識の行動へと導いて、
その結果が今思い出して当惑して挙げ句に不審な反応を俺の認識史上最も勘の鋭い女に見られ
たと……そういうわけである。
「手作りよね? それ。一体誰が――」
「いや、これはだな」
ハルヒの詰問口調に、つとめて冷静に振舞おうと口を開いた矢先、
「あたしがキョンくんに送ったんです!」
誰もが予想しなかった人物が、かつてなかったほどはっきりと事実を言葉にして表明した。
時間をねじったような、でなければ俺の胃腸が捻転してるかのどっちかだと思う時が経過す
るも、その間隙をぬってハルヒの後ろにいたらしき長門姉妹二人が音もなく入ってきた。
有希は我関せずとばかり窓際へ歩み寄って椅子を開き、腰掛けて文庫本を開き、栞を取り出
して早速文学の徒となった。一方の由梨は俺の傍まで来て冷や汗の成分分析でもするかのよう
な高透過度の瞳で半瞬目線を交わし、振り向いて朝比奈さんと視線を交わし、また元に戻って
有希と窓を挟んで反対側の指定ポジションへ同じく腰掛けた。文芸部部室の放課後にだけ現れ
る雪と百合の印象的な情景は、下界の修羅場をものともせずに本日も窓に架かった。
「みくるちゃんが……?」
一時停止からスロー再生したかのようにハルヒの当惑声がして、俺もそちらへ目を戻す。声
色に違わずハルヒは当惑していて、それはワンセンテンスも発せずにいる俺も同様だった。
目を瞬かせるばかりのハルヒ、と、固唾を飲む俺。
支援
「そうです」
朝比奈さんはナキウサギのように身体をふるふるさせ、
「……あの、涼宮さんがその、恋愛ごっこしようって言った時に、あたしが編んでキョンくん
に渡したんです」
両手をきゅっと閉じて切なる訴えをする。テーブルの上では淹れたてのお茶が支流本流に分
かれて小川を形成している。その上手で、俺印の湯飲みがまだ止まらずに転がり揺れていた。
「そ、そうなの。はは。いいのよ別に。あたしが全力で取り組めって言ったんだからね。……
さ! 今日も通常業務に取り掛からないと」
あからさまな繕いでもってハルヒは団長机に一人行軍し、しかし途中で俺の足につっかかっ
てよろめきかけた。さすがに支えるまでもなく持ち前の反射神経で踏みとどまって転倒は避け
たが。
俺は半ば初対面であるかのように朝比奈さんを見た。どうしたって意外である。まさか素直
にカミングアウトするとは思わなかった。俺ときたら、去年の冬長門がいなくなっちまうかも
しれないって瀬戸際でハルヒに言い訳した時以来のうろたえっぷりであった。
はっと気がついた朝比奈さんはコンロに戻って布巾を取ってくると、瀬戸物の湯飲みが割
れていないことに安堵の息を吐いてテーブルを拭きはじめた。棒立ち状態の俺が見つめている
のに気づいているのか否か、しかし先輩はこちらを見なかった。長い睫毛に縁取られたつぶら
で大きな瞳が、今現在の天穹を映したような曇り空に見えたのは、きっと俺の錯覚ではないと
思う。
かちゃと音がして、見ると重役出勤状態でようやく古泉が如才なき空気スマイルを友として
顔を見せた。お前、騒動が一段落するまで外で様子窺ってたんじゃないだろうな。
「おや、何かあったのですか?」
見ようによっては白々しく、しかし本心は解らないいつもの笑顔で古泉は俺に語りかけた。
「何でもねぇよ」
俺は席について古泉を促した。意を得た古泉は山積みになったゲーム集から適当なものをひ
とつ取って向かいに座る。
支援
支援!
ようやく六人が揃った文芸部部室は、ぱっと見変わらず通常営業であり、けれど全然そう感
じないのはもちろん俺の心理作用によるものだった。まだ心臓が変則的なテンポでビートを刻
んでいる気がしてならない。何となく古泉と盤面以外の存在に目を向けたくない。
かくして俺はその日の放課後、鞭打ち症になったように前方のみを見て過ごし、いつもは余
裕で勝ち越せる古泉とのゲームも、この日は綺麗に五分五分の引き分けだった。
最後に白星を古泉が書き入れたところで終業の鐘が鳴り、二つの文庫本が閉じられる音がそ
れに呼応した。俺が立ち上がってやっと首を動かすと、ハルヒは頬杖ついて漫然とマウスを動
かし、時折思い出したようにやたらとクリック音を連続させていた。
「おいハルヒ」
「……」
「ハルヒ!」
「……ん。あぁ。キョンね。何?」
「何じゃねぇよ。下校時刻だろ」
そう言うとハルヒはモニタの時計に視線を注ぎ、
「あ。もうそんな時間。はい帰りましょ」
と言って、一割ほど空気の抜けた風船のように張りのない調子でパソコンをシャットダウン
した。
校門を出て下り坂に差し掛かる頃には、空ももう闇色へと変化をし、それが今日は妙に不気
味に見えた。ざわつく胸中を晴らすかのごとく、俺は今やどんな空気の元でも微笑状態でいるん
じゃないかと思える隣の副団長に声をかける。
支援
待ってた
「おい」
俺のささやきが小さかったのか、古泉はすぐには反応せず、しかもよく聞くと鼻歌歌ってや
がるな。
「おい、古泉」
「は、何でしょうか」
有希とハッピーライフ送ってるのはいいが、それで団内に対するアンテナが鈍るんならお前
も副団長としての手際が落ちるんじゃないのか。
「はは、これは手厳しい」
古泉は今やはっきりと解る惚気スマイルでもって、
「いえ、聞こえていましたよ。もちろんね。ただそれに注意を喚起されなかっただけと言いま
すか」
もっと悪いだろ。聞いてないフリと思われても仕方ないんじゃないかそれは。
「すみません。で、用件は何でしょうか?」
どうにも調子が狂うな。あの告白茶番以来ずっとこんな調子である。冬の最中流行先取りで
花粉症にかかったみたいな歯車の乱れっぷりだ。何か挟まってるんじゃないのか? さしずめ
ノロケウィルスとかって病原体だか何だかが。
「朝比奈さんがな……」
俺は先ほどの一件を仔細に語って聞かせたはずであった。最近シーソーゲームのように俺と
古泉は交互に相手を相談役に任じていた気がするが、今回この場においてはそうならなかった。
すべて話し終えると、古泉は流水のようなさりげなさで前方へ視線を戻して、
「そうですか。それはそれは」
それしか言わなかった。ちょっと待て。どうして気に留めない。仮にも朝比奈さんは時間駐
在員だろ。未来人であるわけだし、現在である今この時空にあんまり自分から影響を及ぼしち
ゃマズいってのは仮に一年半前の俺であっても瞭然と解る事実だろうが。
支援
支援
そう言うとそれでも古泉は調子を改めず、
「えぇ。何か問題が起きた際には、我々も座視せず総力をもって事態解決しますよ」
儀礼的に棒読み寸前の声で古泉は言う。まるで緊迫感がない。いよいよもってこいつは色ボ
ケしちまったのか。お前を頼った俺がバカだった。何と、谷口は俺の実態を的確に言い当てて
いたのだ。明日あいつに見習い予言者の称号をくれてやろう。
駅前にて奇妙な力の分散を体現するようにして俺を含む一行は解散した。俺は俺で考えるだ
け火傷しそうな先ほどの出来事と向き合わねばならないかもしれず、そして他団員が考えてい
ることがバラバラなのもまた間違いなさそうだった。
「……」
ふと由梨と目があった。由梨はぱちと一度だけ瞬きしてから、首を二ミリほど傾け、それか
ら振り向いて待っている姉の下へと駆けていった。いや、こうしてみるとすっかり普通の女子
高生姉妹だな。時の力恐るべしってところか。
そのようにして俺の軽挙とも言うべき不覚……なんていうとロクでもないな。日常の行動を
半歩踏み外したことによる些細な誤差は、そのまま予期せぬ流れを作って俺をどこかへと運ぼ
うとしているらしかった。止めたり遡ったりできるのかは俺にも解らん。ついでにそんな重要
な事柄なのかどうかも含めてな。……だが最近の珍事件発生スパンから言って、そろそろ今月
の火種がいずこからくすぶり出してもおかしくない。そう思った。
支援
ここまでです。今回は投下期間が開くかもしれません。支援感謝します。
520 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/19(土) 23:08:54.56 ID:VABYmtZAO
乙!
あんたを待ってたんだぜ。
続きwktk!
実はすっかり忘れてたw
おかげで楽しみが増えたぜGJ!
522 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/19(土) 23:17:44.26 ID:azF/XoXJ0
GJ
やっぱり投下してもらってよかったぜ
四レスほど投下してもいいですか?
こーーーい!
支援
固め撃ちだっぜ!
第四話事後処理
キョン「逃がしちまった・・・」
森「逃げられたものは仕方ありません。それよりも色々と片付けなければ。」
ユーレイハルハル「誰か(作者の暴走を)止めて!!」
長門「君がくれた勇気は―――億(ry」
新川「新しいダンボールでも買おうかな」
祐「実は俺ポニーテル萌だったんだ」
圭一「嘘だ!!」
朝倉「いろんな意味でガクガクブルブル・・・」
あえて言おう、カオスであると
元ネタ分かるやつ何人いるんだろうね?
人の事言えないが
そんなどうでもいい文章稼ぎに俺はイライラしていた
もうちょっとテンポ良く進めよ
古泉一樹が退院した
!?
いくらなんでも話が進みすぎだ!!
医者「信じられん、数時間前まで生死の境を彷徨っていたと言うのに!!」
よく退院を許可しましたね。
やぶ医者「すまんね、ベットが足らないんだよ。」
説得力無いな
古泉「いやぁ、一時はどうなる事かと思いましたよ。」
キョン「平気なのか?」
古泉「えぇ、長門さんの情報操作で直してもらいました」
長門「妨害電波発生装置の―――破壊に成功―――不可能だった事の一部が可能になった―――」
キョン「雰囲気かわったな?どうした?」
長門「心配ない―――私はいたって正常―――」
圭一「今日の晩御飯は何かな?かな?」
祐「おまえ、キャラ変わったな。」
新川「過度なギャグは命に関わるぞ。」
森「チョココロネってどうやって食べる?」
古泉「今はそれを話してる場合ではないでしょう。」
長門「話が進まない―――強行手段に入る
ikuyotagan=dogegahcdogsUJmCCPnat=dog」
長門が例の高速早口をつかった。
さて何が起こるやら・・・
古泉「そろそろ、鶴屋さんの捜索に向かいたいのですが・・・」
いっている事はまともなんだが顔が近すぎる
せめて息が当たらない位置を保ってくれ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
地震!?
朝倉「痛ッ!」
朝倉!?
圭一「カナカナカナ・・・」
ひぐらし!?
ピタ
変な効果音とともに地震が終わった
支援
古泉「いやぁ〜驚きましたね。もしかして本当に怪物でもいるんでしょうか?」
キョン「何だその怪物とやらは?」
小泉「この屋敷には元々吸血鬼が住んでいて、当時は地下室へ続く階段があったそうです
その地下室には吸血鬼の妹が『あまりに危険すぎる』という理由で封印されていたそうです
もちろん、そんなのは伝説にしかすぎず嘘だと思いますが、
この屋敷の外壁が真っ赤なのは吸血鬼に襲われた人間の血なのかも知れませんね
余談ですが、この屋敷には元々門があったらしくそこにはかわいそうな門番がいたとかいなかったとか。」
キョン「吸血鬼の妹ねぇ・・・仮に本当だったらとしたらこの屋敷は化け物やしきだな」
古泉「そういえば、森さんはいつも、変なところから現れて行動も早かったりしますね」
キョン「化け物の能力引き継いでいるじゃないか?例えば時を操る能力を持っているとか」
古泉「ありえますね」
とりあえず、屋敷の中は事件とさっきの地震のせいで散らかっていたので
掃除するためにしばらく屋敷をでてと森さんと新川さんに言われた
俺は長門とハルヒをつれて村の近くにある森近くまできたのだが・・・
一人の老人が墓石の前に立っていた
なんとなく興味を引かれたので見に行ってみると墓石には名前が書かれていなかった
老人「おや、見かけないかおだねぇ。旅人かい?」
キョン「ええ、ところでこの墓は誰の墓なんですか?」
老人「この墓はね、ある旅人の少女の墓なのさ
村の入り口で倒れているのが発見されてね。どうやらモンスターに襲われたらしいんじゃよ
持ってる食料もなく、やっと見つけた村の前で力尽きてしまったらしいのぅ。
そういえば不思議と長くて黒い髪だけは綺麗だったのぅ」
そんな話を聞いてると隣にいる長門の様子が少し変な事に気が付いた。
黒い瞳をこちらに向ける
キョン「どうした?長門」
長門「この墓に妙な感覚を抱いた―――」
なんだかいやな予感がするのは俺だけか?
一応手を合わせすぐその場から離れる事にした
村に戻ってきたが時報を知らせるスピーカーから変なノイズが聞こえてきた
スピーカー「ザッザッザッ ザッーーー ザッザッザッ ダンッ」
頭がキーーンとして痛い!!
ハルヒ「痛いわよ、この音!!」
長門「不協和音がひどい―――、これは―――」
住人A「やめて!!音がひどいから!!」
住人B「買い物できないじゃない!!まともに!!」
住人C「落ち着かない!これじゃ!」
おまえら倒置法でしゃべるな!わかりずらいから!
ボー―ン!!
な、スピーカーが爆発して壊れた!?
振り返るとそこには戦車の軍団がいた
戦車兵「これよりこの村は革命軍の占領下にはいる!!」
何だこの展開!?
メガホンを持った戦車兵の隣の戦車から出てきたのは・・・
「やあ、ひさしぶりだねっ!!」
「鶴屋さん!?」
美しい緑の髪の所持者、鶴屋さんがそこにいた
第三章へ続く
533 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/19(土) 23:32:19.37 ID:jkQkQ+CtO
知ってる人いるかわからないけど、
『キョン「俺が本当のレイプの仕方を教えてやる」 』
っていう独立スレは結局どうなったの?? なんか5日程前から見かけないんだけど もしかして終わった?????
乙!
以上です
今回の二つの教訓
「混ぜるな危険」
「後悔先たたず」
混ぜ過ぎカオスwww
だが乙っ!
なんというカオスwww
>>533 作者がスレ立てるんじゃない?
それかwiki直投下とか。
森こなたは(・∀・)イイ!!
540 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/19(土) 23:42:01.51 ID:jkQkQ+CtO
>>538 スレがもう5日も建たない・・・・・・・
1週間以上に及ぶ超長編だったのに残念だorz 作者帰って来てくれ・・・・・・
541 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/19(土) 23:43:31.15 ID:KyyN1JEH0