「( ´ω`)枯れて苦悩し密室で虹を探そうと共に生き抜くようです
1 :
自宅警備員(静岡県):
枯れているようです
苦悩するようです
真っ直ぐ生きるようです
虹を探すようです
2 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:27:24.71 ID:n73A2Eaa0
ここから出られないのは何故だろう。
扉は目の前にあるというのに。
( ´ω`)「……鍵がかかってるからだお」
分かりきったことを口にすれば虚しくなるに決まってる。
それにもう、手遅れなのだろう。
('A`)「……どうしたらいいんですかね」
( ´ω`)「そんなの知らないお。どうせ、もう助からないお」
('A`)「ちょっと待ってください、もう諦めちゃうんですか! 俺は嫌ですよこんなところで終わりなんて」
小柄な男が僕に向かって叫ぶ。
そんなに助かりたければ出来ることをすればいいのに。例えば。
鉄製の分厚い扉。大きな扉の割りに小さな南京錠。それを血を流し骨が砕けるまで殴り続けるとか。
( ´ω`)「いいから黙っとけお。殺すお」
僕はポケットから小さなナイフを取り出すと、それを彼に突きつける。
たったそれだけで、彼はおとなしくなった。
('A`)「……横暴だ」
3 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:28:21.70 ID:n73A2Eaa0
広く、整った家具。王室のような風景に、全く似合わない大きな扉。
彼、ドクオは気がつけばここに居たという。
既に、彼と合流して一時間が経過していた。
( ´ω`)「……ツンに会いたいお」
('A`)「こんなときに女ですか。お気楽ですね」
( ´ω`)「……ツンに会いたいお」
分かりきったことを口にすれば虚しくなるに決まってる。
('A`)「アンタはさっきから……!」
彼がその続きを口にしようとしたところで、そんな声も吹き飛ぶほどの轟音が部屋に響く。
思わず反射的に声を上げ、その源に振り向こうと立ち上がる。
(`・ω・´)「どうもこんにちは。僕の名前はシャキン。よろしく」
豪快に、そして唐突に。
そいつは姿を現すと淡々と自己の紹介を始める。さも当たり前のように、もう一度鍵を閉めて。
そう、奴はこの扉から。
決して開くことのなかったこの扉から現れたのだ。
4 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:31:25.75 ID:n73A2Eaa0
( ^ω^)「……何者だお」
(`・ω・´)「ですから、シャキンです。今後ともどうぞ宜しく」
そうか、なるほど。
話が噛み合わないのは仕様だろう。一方ドクオはと言えばソファに座ったまま動けないでいる。
脱力、というのが正解か。
こうも簡単に開けられてしまっては今までの努力は水の泡以下、既に気体となって消えてしまっている。
そしてまた、コイツは扉を閉めてしまったのだ。
起き上がれないのも無理は無いのかもしれない。
( ^ω^)「そんなことを聞いてるんじゃないお。どうやってここの扉を?」
(`・ω・´)「難しい質問です。確かに僕はこの扉を開け、この部屋に入ることが出来たいやしかし」
シャキンという男は間髪入れずに話を続ける。
(`・ω・´)「開けたのは僕ではないのです」
その言葉にドクオが勢いよく立ち上がる。
そしてシャキンに向かい声を張り上げながら問い詰め始めた。
('A`)「ここは何処で、お前は誰なんだ! ついでにコイツも!」
そう言って僕を指差す。
('A`)「何故入れた! 何故閉めた! 扉の向こうにいるのは誰だ!」
5 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:34:16.59 ID:n73A2Eaa0
彼の意見は御もっとも。
しかし分かってない。何にも分かってない。ダメダメだ。
(`・ω・´)「一つひとつお答えします」
(`・ω・´)「僕の名前はシャキン。宜しくお願いします。
次にこの方ですが、ご存じの通り、内藤ホライゾン様でございます」
内藤、とは僕のことだ。
(`・ω・´)「何故入れた、に関しては先ほど存じたように開けていただいたからです。
何故閉めたか。そこに扉があるからです」
彼は満面の笑みでそう答えた。
少しも途切れることはなく、予め決まっていたかのように聞こえる。
ほうら見ろ、使用人が機嫌を悪くした。
(#'A`)「テメェ、いい加減に……」
( ^ω^)「ドクオ、悪いけどちょっといいかお?」
僕はそう言って彼との間に入り、ドクオの肩を掴む。
ポケットに突っ込んでいたものを再び取り出す。
(#'A`)「なんだよ!」
( ^ω^)「お前、本当に黙れお」
一瞬にしてドクオの顔が青ざめていく。
6 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:36:19.69 ID:n73A2Eaa0
(`・ω・´)「あはは、冗談にしては笑えないですね」
( ^ω^)「そうかお。どうやら僕と貴方では笑いの沸点が違うらしいお」
小さなナイフをケースにしまい、ポケットの中にもう一度押し込む。
問題は無い。ドクオを静かにさせることが出来たのだから。
( ^ω^)「一つ聞いてもいいかお?」
(`・ω・´)「お好きにどうぞ。答えるかどうかは内容次第ですが」
いちいち癇に障る言い方に、一瞬、間が空いてしまう。
( ^ω^)「……感謝するお」
僕は一息入れ再度シャキンを見据える。
そんな僕に対しシャキンは表情一つ変えずに突っ立っているだけだった。
( ^ω^)「虹が何処にあるか、教えてもらいたいお」
たった一言。僕の一言でその場が沈黙する。
冷たい空気に嫌な視線。密室であるはずのこの部屋のあちこちから、見つめられているような気さえする。
いや、部屋の中じゃない。
外だ。
その瞬間、僕目掛けて何かが飛んでくる。何かが。何かが。
7 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:37:44.63 ID:n73A2Eaa0
そう意識した時には遅かった。
僕の左腕には小さなナイフが刺さっており、痛みを感じない、なんてことは無く。
(; ω )「ウワァァァァァ!!!」
血が、血が流れている。
(;'A`)「ヒィッ!?」
(`・ω・´)「…………」
悲鳴を上げるだけのドクオとは違い、即座に警戒の姿勢を見せ付けるシャキン。
僕は急いで左腕からナイフを引き抜き投げ捨てる。
(`・ω・´)「止血を。それと、早くここから離れた方がいいみたいですね」
(; ω )「助かるお……」
淡々と事を進めようとするシャキンにドクオか噛み付く。
(#'A`)「何言ってんだ! 何処に離れるってんだよ! ここからは出られねぇ!」
(; ω )「おまっ……マジいい加減にしてくれお」
(#'A`)「アンタも何を下手に出てるんだ! おかしいだろ、理不尽だろ!」
(`・ω・´)「……肩を貸します。ついて来てください」
ドクオの言葉など耳に入らないのか、気にする素振りすら見せずに肩を組むと
鍵の掛かった大きな扉の前に向かっていった。
8 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:40:24.31 ID:n73A2Eaa0
何事もなかったかのように部屋に入っては鍵を閉めた彼のことだから
また同じように、いとも簡単に開けてしまうのだろう。
そう思っていた。
(`・ω・´)「内藤様をお願いします」
('A`)「……え?」
衝撃が走る。
凄まじい轟音が耳の奥に嫌と言うほど突き刺さる。耳を塞ぎたいがそれ以上に腕が痛んだ。
シャキンが、扉を押している。
両手を使い、歯を食いしばり。その表情は先ほどまでとは比べ物にならないほど歪んでいた。
(;'A`)「へ? ええ?」
しかし扉はピクリとも動かない。
開く気配の無い扉を見ると、シャキンは諦めたかのように力を抜き
こちらに振り向く。
(`・ω・´)「えっと、ダメでした」
(;'A`)「…………」
ダメだったそうだ。
9 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:43:41.58 ID:n73A2Eaa0
(`・ω・´)「何か方法を考えないと……」
そんなシャキンの態度に痺れを切らしたのか、ドクオがまたも吼えた。
(#'A`)「何で入ってきて、出られねぇんだよ!」
(`・ω・´)「……そうは言われましても」
シャキンの胸倉を掴み詰め寄るドクオ。
一方、僕はと言えばドクオにその場に座らされ、出血する腕を持っていたタオルで止血していた。
僕はてっきり、止血してくれるものだと思っていた。
(`・ω・´)「とにかく、今はここから出ることが出来ません。
それは紛れもない事実。ですので脱出は諦め、その上で手段を考えましょう」
あぁ、なるほど。
(#'A`)「…………」
そうだったのか。
(#'A`)「……アンタなぁ」
気付け、ドクオ。
お前、殺される。
10 :
女工(岡山県):2007/04/23(月) 00:45:03.20 ID:O0E91RVn0
wktkしてやるから我慢しな
11 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:46:04.55 ID:n73A2Eaa0
(;^ω^)「どっちでもいいお、ちょっと手伝ってくれお」
僕は破り引き裂いたシャツの肩から下を掴み差し出す。
部分的に血が付着してはいるものの、出血しているほうと比べれば、比較的乾いている。
止血には充分だろう。
(;^ω^)「傷口に巻いて貰えるかお。片手じゃ出来ないんだお」
ドクオには感謝してもらいたい。
しかし、それをシャキンの前で言うことは出来なかった。
(`・ω・´)「出したら私が……」
そう言うとシャキンは慣れた手つきで僕の腕に布の切れ端を巻きつけていく。
('A`)「何にしたって、このままここから出られないんじゃどうしようもない」
ドクオはそう言ってまた、部屋の真ん中にあるソファに深く座り込んでしまった。
彼の言い分もよく分かる。
しかし、どうしようもない。今彼が駄々をこねたところで何一つ変わりはしない。
( ^ω^)「ありがとお」
シャキンの一つ礼を言うと、僕は立ち上がりドクオのほうへと向かっていく。
12 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:48:54.33 ID:n73A2Eaa0
( ^ω^)「ドクオ」
僕は出来る限りの小声でドクオに話しかける。
それに気付いたドクオも、僕が確認出来る程度の反応で頷く。
( ^ω^)「これが最後だお。“黙っておけ”お」
そう言って僕はドクオから離れ、またシャキンの元へと向かっていく。
ドクオは訳の分からないような顔をしていたが、今はそれでいい。
(`・ω・´)「どうしますか?」
( ^ω^)「どうするも何も、まずはここから出るしかないお」
(`・ω・´)「そうですか」
シャキンは立ち上がり、一度ドクオを見据えると壁に向かって歩き始めた。
そこには何も無い。
そのはずだったのに。
(`・ω・´)「では行きましょう」
そこには一つの扉があった。
おかしい。絶対におかしい。今まで気付かなかったとでも言わせるつもりなのか?
(`・ω・´)「さぁ」
13 :
留学生(樺太):2007/04/23(月) 00:49:04.12 ID:IVzEpGD7O
支援してやんよ
14 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:50:45.98 ID:n73A2Eaa0
両手を広げ、微笑。
そしてシャキンは僕たちに向かってこう言った。
(`・ω・´)「己の渇きを潤すために、己の過去を断ち切るために」
(`・ω・´)「欲のままに動き、考え、陥れよ」
(`・ω・´)「それは夢であり、虹である」
「当方、虹の城」
「思う存分、虹を堪能して頂きたい」
僕は、僕の意志のままに、扉の向こうへと足を踏み入れた。
それが全て決められていたことであったとしても。
僕は。僕の意志で。
少なくとも、今だけは。
15 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 00:52:20.58 ID:n73A2Eaa0
一話終わりで、二話を投下しようと思ったのですが睡魔に勝てませんでした。
せっかく代理で立ててもらったのに申し訳ないですが、後日また自分で立てようと思います。
見てくれた人ありがとー。
16 :
女工(岡山県):2007/04/23(月) 00:54:18.67 ID:O0E91RVn0
おつんちゅ
18 :
アイドル(青森県):2007/04/23(月) 01:33:38.79 ID:YgvOpQmf0
>>15 乙だー
続きを予想しながら寝る
∧∧
( ・ω・)
_| ⊃/(___
/ └-(____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
19 :
噺家(樺太):2007/04/23(月) 01:44:05.17 ID:7d5OEze3O
ペンペン
20 :
食品会社勤務(愛知県):2007/04/23(月) 01:45:08.48 ID:JUmgNLis0
乙
寝る前ほす
22 :
造反組(ネブラスカ州):2007/04/23(月) 02:03:48.78 ID:32g0CdU3O
保守
寝られないほす
24 :
文学部(東京都):2007/04/23(月) 02:47:00.93 ID:oz1TKQB80
こういう最初が面白いのってだいたい作者が逃亡するんだよな・・・・
逃亡しないでクレよ
期待保守
25 :
社長(コネチカット州):2007/04/23(月) 04:31:51.50 ID:ce+eX6FcO
保守
26 :
ミトコンドリア(樺太):2007/04/23(月) 05:23:14.60 ID:ncfpD5bvO
保守
27 :
自衛官(樺太):2007/04/23(月) 06:33:07.20 ID:L6zN2y4qO
28 :
住職(樺太):2007/04/23(月) 08:23:57.33 ID:X8fB0NY0O
ほしゅ
29 :
うどん屋(樺太):2007/04/23(月) 10:05:00.48 ID:hcg0RJ7FO
保守
ほす
31 :
漂流者(樺太):2007/04/23(月) 10:51:58.61 ID:IyS/7LKQO
保守
ほす
ほす
34 :
料理評論家(樺太):2007/04/23(月) 12:53:25.03 ID:GlWmtTn5O
ほ
35 :
自衛官(樺太):2007/04/23(月) 13:40:26.62 ID:cpn4eoqCO
ほ
も
37 :
踊り子(ネブラスカ州):2007/04/23(月) 15:25:47.27 ID:7BjE+0l5O
だ
ら
39 :
自衛官(樺太):2007/04/23(月) 16:20:13.03 ID:cpn4eoqCO
け
40 :
相場師(京都府):2007/04/23(月) 16:24:24.46 ID:i4PifdWL0
だ
41 :
ぁゃιぃ医者(東京都):2007/04/23(月) 16:26:42.22 ID:ktUa5zzY0
け
ど
43 :
自衛官(樺太):2007/04/23(月) 17:30:29.19 ID:cpn4eoqCO
ほ
44 :
うどん屋(樺太):2007/04/23(月) 17:31:42.86 ID:tVYn5VLRO
も
45 :
ほうとう屋(樺太):2007/04/23(月) 18:30:17.13 ID:14xRQBDoO
だ
け
47 :
ミトコンドリア(樺太):2007/04/23(月) 19:36:41.76 ID:ncfpD5bvO
は
48 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:08:24.33 ID:n73A2Eaa0
ちょ、残ってる。嬉しすぎて抜いた。
少ししたら二話目投下します。
49 :
社長(コネチカット州):2007/04/23(月) 20:14:48.52 ID:il7QWOgcO
wktk
50 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:26:19.88 ID:n73A2Eaa0
先ほどまで無かったはずの扉を抜け、僕は思わず言葉を失う。
僕の少し後ろをドクオがついてくるが、やはり同じような反応だ。
景色が変わらない。
全く同じ部屋なのだ。
( ^ω^)「これは……どういうことだお?」
(`・ω・´)「どういうこと、と申されましても。ここが第二の部屋です」
( ^ω^)「第二?」
咄嗟に彼の言葉に耳を傾ける。
つまり、そういうことなのだろう。第二。部屋は複数存在する。
(`・ω・´)「はい。……とは言っても、第三、第四と部屋が続く訳では無いんですけどね」
( ^ω^)「あ、そうなのかお」
はは、とシャキンが苦笑する。
思い切り予想が外れてしまったことも、どうせ見透かされているのだろう。
('A`)「それで、この部屋に移動した意味は?」
もうお前はどうにでもなれ。
51 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:29:01.74 ID:n73A2Eaa0
(`・ω・´)「安心してください。正規のルートで、ゴールに向かってますよ」
( ^ω^)「つまり、虹には近づいてるのかお?」
(`・ω・´)「その通りです」
途端にドクオが噛み付くようにして口を挟む。
('A`)「さっきも聞いたけどその虹ってのは何なんだ?」
シャキンが僕に視線を向ける。
それに気付き僕もシャキンに視線を合わせるが、何を悟ったのかシャキンが一つ溜め息をつく。
(`・ω・´)「……ドクオ様は何も知らないのですか」
( ^ω^)「そうらしいお。気付いたら部屋にいたと言っていたお」
僕の一言にピクリと反応し、ドクオが取り乱す。
そしてまた吼え始めた。
(;'A`)「ちょっと待てよ! アンタは違うのか!?」
( ^ω^)「お?」
(;'A`)「アンタも気付いたらこの部屋にいたんじゃなかったのかって、そう言ってんだよ!」
僕は後ろ髪を掻きながら、口を開いた。
( ^ω^)「……違うお」
52 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:31:05.84 ID:n73A2Eaa0
(;'A`)「どういうことだよ、そんなこと一言も聞いてねぇ!」
( ^ω^)「聞かれてないし、言う必要もなかったお」
(;'A`)「……何だよ、それ」
ドクオの表情が少しずつ曇り始める。
その意図は僕には分からない。しかし、そんなことを気にしていられるほど僕にも余裕があるワケではなかった。
( ^ω^)「正規のルートかお」
(`・ω・´)「……はい?」
僕の言葉にシャキンが顔を歪ます。今度こそ僕の予想は的中したようだ。
( ^ω^)「つまり、他にもルートはあるんだお?」
(`・ω・´)「あります。一応」
( ^ω^)「正直に言って欲しいお」
(`・ω・´)「それについては何ともいえません」
( ^ω^)「……正規のルートと“その”ルート。どっちが虹に近いんだお?」
僕とドクオの視線がシャキンを捉え、そしてシャキンが僕らを見返す。
そして少しの間を空け、ゆっくりと口を開く。
ほら、やっぱり。僕の予想通りの言葉が。
(`・ω・´)「お勧めはいたしません。ですが、近いのは確かです」
53 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:34:01.89 ID:n73A2Eaa0
( ^ω^)「そうかお」
(`・ω・´)「ですが、私はここまでです」
( ^ω^)「お?」
そう言うとシャキンはその場で振り返り、入ってきた扉の向こうへと向かっていく。
ドクオがシャキンを追う。
そして僕も追いかけようとするが、どうしても体が動かなかった。
(;^ω^)「待ってくれお! 何処に行くんだお!」
しかし彼等は既に扉の向こう。
('A`)
薄らとした笑みを浮かべ、僕を見つめるドクオが見えた。
そしてドクオはシャキンについていく。
(;^ω^)「待てお!」
僕の声が彼等に届くことはなかった。
ゆっくりと。ゆっくりと。僕の目の前で扉が閉まっていく。
最初は普通に。しかし次の瞬間、扉の両端がさらに閉まっていった。まるでファスナーを閉めるような。
(;^ω^)「……お。何だお、これ」
気付けば僕は、もと居た部屋と同じ部屋に一人、取り残されていた。
54 :
料理評論家(樺太):2007/04/23(月) 20:36:49.16 ID:6zAVIds2O
支援
55 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:37:20.76 ID:n73A2Eaa0
見た感じでは、数時間前と同じ状況だ。
無駄に広く、一見豪華な家具の整った一室。まるで王室のようだ。
( ^ω^)「まただお」
僕はゆっくりと、先ほどの部屋と同じ位置に置かれたソファの上に倒れこむ。
( ´ω`)「また虹から遠ざかってしまったお……」
すると腹部に何か違和感を感じる。
ソファと腹の間に手を突っ込み、違和感の根源を弄り探す。
見つけるのは早かった。
( ´ω`)「何だお、これ」
それは一枚の紙だった。
紙には僕のこれからを指示するような文字は見当たらない。かといって何も書かれていないわけでもなかった。
落書き。というわけではないだろう。
( ´ω`)「子供の描いた絵……かお?」
クレヨンで色鮮やかに満遍なく彩られたその絵を僕はその場で放り投げ、
もう一度立ち上がる。
56 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:39:33.65 ID:n73A2Eaa0
( ^ω^)「行かなくちゃ。ここで立ち止まってるわけにはいかないお」
長方形に模られているであろう、その部屋の四隅には台座がありその上には壷。
僕はそのうちの一つの壷を持ち上げ、壁に投げつける。
派手な音を上げながら、大きな欠片を残し破損する。
( ^ω^)「何とかしないと」
十数メートル先にある、もう一隅まで走り向かう。
そしてまた壷を持ち上げ、投げ捨てる。地に着いた瞬間、同様に、嫌な音と共に割れてしまう。
( ^ω^)「何かしてないと」
また隅へと走る。
そして、壊す。
( ^ω^)「何も出来なくて」
最後の一つをゆっくりと持ち上げ、一気に地面にたたきつけた。
( ^ω^)「狂いそうだお」
57 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:42:15.56 ID:n73A2Eaa0
最後の壷の中から、また一枚の紙が出てきた。
先ほどと同じような絵だったが、描かれている人物が明らかに違っていた。
( ^ω^)「さっきの絵と違う人だお。……まぁ子供の絵に大した違いなんか無いけど」
どうしたらここから出られるか、まずそれだけを考えなければ。
そのとき僕はふと、天井を見上げた。
( ^ω^)「電気が切れそうだお」
さっきから我が目を疑っていたのだが、どうやら僕のせいでは無いらしい。
目がちかちかとして気持ち悪い。
どうにかならないものだろうか。
从 ゚∀从「申し訳ない、今すぐ電球を取り替えよう」
突然発せられたその声に驚き、勢いよく振り向く。
そこには前後共に長髪の、顔の半分隠れた女性が立っていた。
(;^ω^)「だ、誰だお!?」
从 ゚∀从「誰、と言われたらハインだとしか言いようが無いな」
僕の反応に対して、彼女は微塵も動揺した様子は無い。しかしそれも当然のことなのだろう。何故なら彼女は――
( ^ω^)「……使用人かお」
58 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:45:21.26 ID:n73A2Eaa0
从 ゚∀从「よくご存知で。どうする?」
( ^ω^)「どうするって」
从 ゚∀从「ここで延々と文句垂らして全てを終えるか、俺についてくるか」
隠れて殆ど見えないのだが、彼女はきっと美人なのだろう。
そのまっすぐな視線が僕にそう感じさせる。
( ^ω^)「……いくお」
僕の言葉を聞くとにやりと笑う。もっと、こう。表現を「微笑んだ」と言わせるような笑い方をすればいいのに。
彼女のそれは間違いなく、にやりとした笑い、なのだ。
从 ゚∀从「着いてきな」
彼女の最初の口調との微妙な変化に違和感を覚えつつ、僕はまた歩き出した。
何処に行くかはわからない。
それでも、ここに居るよりはマシだろう。
从 ゚∀从「……気でも触れてるのか?」
( ^ω^)「お?」
从 ゚∀从「あれ」
ハインが指差す先には僕が先ほど投げ割った壷の破片。
从 ゚∀从「破壊衝動?」
( ^ω^)「……別に、そんなんじゃないお」
59 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:48:27.17 ID:n73A2Eaa0
そして僕の目の前で、それは起きた。
壁に、扉が出来たのだ。
从 ゚∀从「行こうか」
説明する気は毛頭無いようだ。当たり前のように、いや、実際当たり前なのだろう。
彼女が壁に手を当てると、まるで口を開いたかのように扉が出現する。
……当たり前であってたまるか。
( ^ω^)「把握した」
シャキンの時と同じ型の扉のようだ。
見たところ鍵は無い。
从 ゚∀从「あ、そうだ」
( ^ω^)「何だお?」
从 ゚∀从「お前、虹を探しているんだろう?」
このタイミングで聞かれるとは思っていなかったため、少し返事に困ってしまう。
そして僕の返事を待たずに、ハインは続けて言う。
从 ゚∀从「虹を見て、どうする気だ?」
その質問が何を意味するのか。
その質問にはどう答えればいいのか。
( ^ω^)「虹を見ることが出来た時、話すお」
60 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:50:39.52 ID:n73A2Eaa0
从 ゚∀从「そうか。……なら、その答えを俺が知ることは無いだろうな」
( ^ω^)「お?」
从 ゚∀从「無理に聞こうとは思わない。ただ、覚悟はしておけ」
ハインの言葉の意味を、僕が知ることはなかった。
从 ゚∀从「さぁ、行こう」
何故ならこの先、僕とハインは出会うことは二度と無かったからだ。
この貴重な関係を、僕はもっと大事にするべきだった。そう後悔する時間だけは延々と与えられることになる。
从 ゚∀从「お前が虹を求める時、虹もお前を求めるだろう」
从 ゚∀从「求める者の渇きを潤すため、虹はその身を捨てることになる」
从 ゚∀从「虹の城は確かに存在する」
从 ゚∀从「それを、疑うな」
ハインの言葉がそこで止まると同時に、扉が開く。
僕は臆すことなく歩を進める。
そのとき、別れ際のドクオの不愉快な笑みが頭に浮かんだ気がした。
61 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 20:51:49.14 ID:n73A2Eaa0
二話終了です。
予想外の保守、ありがとうございました。
62 :
料理評論家(樺太):2007/04/23(月) 20:53:30.08 ID:6zAVIds2O
乙
63 :
アイドル(東京都):2007/04/23(月) 20:53:46.48 ID:UPz6sinz0
乙
64 :
自衛官(樺太):2007/04/23(月) 21:05:58.17 ID:cpn4eoqCO
乙
65 :
水道局勤務(樺太):2007/04/23(月) 21:09:31.65 ID:PmvmCLslO
乙
66 :
相場師(京都府):2007/04/23(月) 21:10:09.60 ID:i4PifdWL0
乙
67 :
通訳(神奈川県):2007/04/23(月) 21:13:38.12 ID:xCk10Cln0
乙
68 :
通訳(長屋):2007/04/23(月) 21:14:08.91 ID:n73A2Eaa0
乙
69 :
アイドル(東京都):2007/04/23(月) 21:15:22.98 ID:UPz6sinz0
70 :
料理評論家(樺太):
じwwwえwwwwwんwwwwwwwww