('A`)ドクオの親父は隠し事をしていたようです

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1 通訳(千葉県)
二話書いてたら落ちた・・・
書き終えたから立てた

なんという過疎
2 前社長(関東地方):2007/04/09(月) 21:54:49.89 ID:DEvxXE0p0
ヒント:つまらない→読者がつかない→過疎→落ちる
3 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 21:55:16.13 ID:NsTFfvpe0
二章



親父の隠し子発覚から1ヶ月が過ぎた。相変わらず俺と親父の間は険悪ムードである。
親父のために俺は実家に戻ってきたのに、これじゃあ意味がない。
早くもあの1Kに望郷の思いだ。

俺は親父の顔なんて見たくもなかったし、親父も意図的に俺を避けているふうだったので、
よっぽどのことがない限り俺たちは顔をあわせることはなかった。


親父行きつけのお店である「バーボンハウス」は、いつもお客さんで賑わっていた。
俺はこの賑わいに癒しを見出して、ここに通うようになっていた。
4 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 21:57:37.77 ID:NsTFfvpe0
(*゚ー゚)「あらあら、またいらしてくれたの?お父さんがこなくなったと思ったら
    今度は息子さんが来てくれるようになって・・・本当は二人で来てくれれば
    一番いいんだけど」


ママはそれ以上言わなかった。
俺たちがカウンターでしていた話を彼女はうっかり聞いてしまったからだ。
聞いてしまったからか、ママは俺の愚痴を何も言わずに聞いてくれる。
・・・実はこの人目当てでここに通っている、っていうのもあるんだけど。

ドタドタと慌しく、マスターがカウンターに入ってきた。
蝶ネクタイがあさっての方向を向いている。


(´・ω・`)「やぁ、すまない。またなんだ」


今日もマスターは遅刻らしい。ママがネクタイを直してやりながら、
呆れたようにため息をついた。
そんなママに、マスターはすっとグラスを差し出した。
5 序二段(石川県):2007/04/09(月) 21:58:07.74 ID:wSZjiRxm0
見てるぜ!
支援
6 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 21:58:15.44 ID:NsTFfvpe0
(´・ω・`)「これでも飲んで機嫌を直してくれよ」

(*゚ー゚)「これはお店のバーボンでしょ!!」


マスターとママは長い付き合いらしく、その掛け合いもなかなかに
コンビネーションが取れている。

一度どういう関係なのか聞いたところ、ママは少し笑って
「そうねぇ、「ときめき」みたいなものを感じる相手かしら」と言っていた。
7 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 21:59:10.08 ID:NsTFfvpe0
また俺は何も言えずにフラレたわけだが、もう慣れっこだ。
それにお店に出ている分には、ママは誰のものでもないはずだ。


ほろ酔い気分で店を出て、俺は帰路についた。
バーボンハウスと実家はそれほど離れていなくて、5分も歩けば実家の窓の明かりが目視できる。

親父の部屋の窓には電気がついていた。親父の部屋・・・昔は両親の部屋だったところだ。
改めて母さんがいなくなったことを身近に感じて、俺はなんともいえない気持ちになった。
8 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 21:59:38.89 ID:NsTFfvpe0
ある休みの朝、俺は親父に叩き起こされた。親父が隠し子を迎えに行くらしい。
隠し子という言葉は余りいい響きじゃないけど、そうとしか呼び方がない。


( ´∀`)「クーを迎えにいこうと思う」

('A`)「クーっていうんだな、その子の名前」

( ´∀`)「・・・ああ」


それなりに身支度を整えて、俺は鏡で自分の顔を見た。
いったいどんな子なんだろう。まさかこんな顔はしていないよな・・・
俺は鏡に映る自分の顔をいじくりまわして想像してみた。
昔から親父に似ていると言われていた俺の顔だ。ひょっとしたら当たりがあるかもしれない。


( ´∀`)「なにやってんだ、いくぞ」

('A`)「・・・」
9 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:00:44.32 ID:NsTFfvpe0
運転手は親父だった。久しぶりのドライブだった。
何年か仕事が忙しくてこっちには帰ってきてなかったから、今思えば親不孝をしたのかもしれない。
母さんの死に目にも会えなかったのは、きっとそのせいだ。

助手席でシートベルトをするのはなにやら新鮮な感覚だった。見えてくる景色も運転席とは違う。

親父はいったい今どんな景色を見ているのだろう。母さんがいなくなって
抜け殻みたいになってしまった親父に元気になってほしいと、俺はそう願って
実家にきたんじゃなかったのか。

それでも納得できない自分はまだまだ子供なのだろうか。
隠し子なんて、ドラマか小説の世界だけかと思っていたんだ。


車内での会話はほとんどなかった。車が風を切る音と、エンジン音、
それにカーステから流れ出るラジオの音だけが車内に響いている。

いつの間にか高速道路に乗っていて、その子のいる施設は結構遠いところなのだと今更気がついた。
出発するときに親父は俺に何も言わなかった。何も言わない時間が、今の今まで続いている。
10 歌手(樺太):2007/04/09(月) 22:00:57.24 ID:z2vcaDleO
支援

第一章見てぇえええええええ
11 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:01:33.57 ID:NsTFfvpe0
唯一の会話は、さっきの「サービスエリアに入るぞ」という親父の一言だけだった。
俺は返事をしなかった。決して無視をしているわけじゃない。
ただ、その一言だけを無視することでもっともっと気まずい雰囲気が流れるとは
思っていなかった。

いつものことをいつもどおりにしただけで、どんどん悪い方向へと進んでいってしまう。
あまりいい流れとは言えない。

サービスエリアで一息入れるのは、親父の膀胱の問題だけではないような気がした。

車を止めてから、俺たちは別行動をした。
親父はさっさとトイレに行ってしまったし、俺はのどが渇いたので自販機コーナーを物色しに行っていた。

まだ肌寒い季節なので、自販機の勢力は熱いのと冷たいのが五対五ほどに分かれている。
俺は迷うことなくホットの缶コーヒーを選択した。北上しているのか、俺の街とは随分気温が違うように思う。
地元は今日それほど寒くなかったので薄手のコートを選択したが、どうやら失敗だったようだ。

冷えてかじかんだ手を缶コーヒーで温め、ポケットのタバコを取り出した。
一服していると、親父が俺と同じ自販機コーナーへとやってきた。


( ´∀`)「おお、ここにいたのか」

('A`)「ああ」
12 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:02:39.20 ID:NsTFfvpe0
親父も俺と同じ銘柄の缶コーヒーを買っていた。血は争えないんだろうか。
吸っているタバコはさすがに違うものだったけれど。


( ´∀`)「なぁ、ドクオ。この期に及んでバカなことを聞く俺を許してくれ。
     お前はクーを引き取ることに反対なのか?」

('A`)「いや、違うよ。反対なんかじゃない。ただ俺は母さんの顔がちらちらと頭から
   離れないだけなんだ。
   その子のことが気に入らないとか、そんなことはないよ。
   むしろ、賑やかになって楽しいかもしれないとさえ思える。
   だけどな・・・まだ俺は納得はしてないんだぜ、親父」

( ´∀`)「そうか・・・それを聞いて安心したよ。俺を憎むのはお前の自由だが、
     あの子は関係ないからな。
     いつの間にか、お前も大人になったな」

('A`)「よしてくれよ・・・もう二十八になるんだぞ」


俺は未だに親父が母さんを裏切っていたことを許していなかった。
母さんはそれを知りながら死んでいった。随分早いお迎えだと俺は思った。

苦労した母さんが死んで、その間他の女と子供なんか作っていた親父が生きているなんて・・・
そんなこと考えちゃいけないのは知ってる。でも俺だって人間なんだ。しょうがない。
13 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:03:42.27 ID:NsTFfvpe0
( ´∀`)「そろそろいこうか」

('A`)「ああ」


俺は灰皿にタバコを放り投げて、親父の横に立った。
親父はなんだか小さくなっていて、危なっかしい足取りで車へと向かっている。
かつての親父はもっとシャッキリしていて、俺よりも随分大きくなかったか。

明らかな老いを感じた。親父は、ゆっくりとだが確実に「死」へと向かっている。
その事実は俺をヘコませるには十分過ぎるものだった。
14 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:04:45.13 ID:NsTFfvpe0
施設に着いたのは、サービスエリアから出発して十分も走らないうちだった。
簡素な作りのそれは、寂寥感たっぷりで俺に迫ってきた。
もう何から何まで現実感が欠けている。


しかしこれは夢じゃない。俺は気合を入れるために頬をつねった。

痛い。だがこの痛みなんか両親にとってきっと蚊に刺されたような痛みのはずだ。


こういう施設には得てして悪徳園長がいたりして、子供たちを虐待していたりする。
だが、さすがにそこまでドラマチックではなかったようだ。
出てきたのは恰幅のいい五十代くらいのおばさんで、俺たちが園長室へと連れて行かれる最中にも
幾人の子供たちに挨拶をされては集まられていた。慕われているようで安心した。


( ・∀・)「ようこそいらっしゃいました。改めて紹介させていただきますが、
     私がここ「VIP園」の園長を勤めさせていただいております、モララーと申します」
15 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:05:49.27 ID:NsTFfvpe0
丁寧な挨拶をされ、俺と親父は幾分恐縮してしまった。
きっと里親の心象を悪くしないようにとの考えだろう。

この期に及んで考えをひっくり返すなんてこと、ないと思うが。

親父と園長とのやり取りを横目で見つつ、俺はいったいどんな子が来るんだろうと
気が気ではなかった。

あんまり深く考えなかったが、要するに俺に義理の妹ができるわけである。
俺はこんな男だし、ひょっとしたら気に入ってくれないということももちろんありえる。
そうなった場合、どうしたらいいんだろうか。

もしそうなったら、俺はおとなしく元いたアパートに帰ろう。
親父も一人じゃなくなるし俺の役目は終わるはずだ。


( ・∀・)「じゃあ、少々お待ちください。今呼んでまいりますね」


園長先生はそういって、部屋を後にした。親父はため息をついていた。きっと親父だって不安に違いない。
16 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:06:51.25 ID:NsTFfvpe0
('A`)「ため息なんかついてどうしたよ。鼻息も荒く園長先生に挨拶してたくせに」

( ´∀`)「お前こそ、オドオドしやがって。相変わらずだな、その初対面の人間に
      ビクつくクセは」

('A`)「はぁ?んなことねーって。オドオドなんかしてないっつーの」

( ´∀`)「いいや、ビクついてたぞ。目を見てしゃべれとアレだけ教えたのに」

('A`)「俺はもう立派な社会人さまだぞ。相手の目見てしゃべれなくてどーする」

( ´∀`)「変な自信だな。社会人さまだって、できないことのひとつやふたつはある。
      俺にだってある」


親父は遠い目をしていた。
イスに深々と腰掛けた姿は、さっき見たよれよれの爺さんというイメージとはかけ離れている。

人生の先輩として俺にアドバイスをしているとき、親父の目は生き生きとしていた。
何を偉そうに。俺は悪態をついてその場を収めた。照れ隠しなのは言うまでもない。
親父の目を見て、ああ、いつもの親父だと思ったのは秘密だ。
17 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:08:09.58 ID:NsTFfvpe0
ノック音が聞こえ、俺と親父の間に緊張が走る。きた。いよいよだ。
生唾を飲み込む音が聞こえる。
俺も親父も、今は誰が見てもなんともいえない情けない顔をしているだろう。


( ・∀・)「失礼します。さ、ご挨拶して」

川 ゚ -゚)「クーです。よろしくお願いします」


出てきたのは、俺にも親父にもまるで似ていない美少女だった。
華やかという印象ではないものの、すっと通った鼻筋に白い肌は、
親父の遺伝子なんてまるで継いでいないといったふうである。

肌の白さもあるかもしれないが、たとえるならば「白百合」といった、
儚くとも立派に花を咲かせている。そんな印象だった。

ていうか、年頃の女の子じゃないか。大丈夫か。俺は理性を保てるか。
そういえば10数年前と親父はぼやかしていたが、少なくとも中学生くらいには間違いない。

こんな子と一つ屋根の下で同棲生活だなんて、これなんてエロゲ・・・
同僚のジョルジュがきっと泣いて羨ましがるだろう。
18 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:09:23.19 ID:NsTFfvpe0
俺の反応とは対照的に、親父は落ち着いているようだった。そりゃそうだ。
この年でロリコンなんて救いようがない。もしそうだったら俺はこの場で親父を闇に葬る。

ゆっくり立ち上がって、親父はさっきのようなふらふらとした足取りで彼女に近づいていった。
何をするかと思えば、親父は彼女の前で跪いて号泣し始めたのだった。

彼女の手を握り、大きな声で泣いている親父。俺はその光景を直視することができなかった。
だって、親父が誰かに跪いて泣いてる姿なんて・・・
19 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:10:25.37 ID:NsTFfvpe0
( ´∀`)「ごめんよ、ごめんよ、こんなに放っておいてごめんよ。お父さんを許してくれ。
      ああ、こんなに大きくなって・・・お前はお母さんにそっくりだなぁ・・・」


園長先生は慣れたものだ。きっとこのような場面に何度も出くわしているのだろう。
でも、俺と彼女は違った。
彼女は明らかに戸惑っているし、俺は親父のほうを見れない。

親父がこうして感情をあらわにして泣き崩れるなんてこと、今までに何度も見たことはなかった。
初めてがついこの前、母さんが死んだときだ。俺も泣いていたから、そのときはそれでよかった。
ぼやけた親父の姿しか見えなかったから。


泣きすがる親父の姿は、俺の心をさらにかき回した。
いったい俺たちはこれからどうなるんだろうか。
その答えは、この可憐な少女が握っているかもしれない。
何気なしに、俺はそう思ったのだった。


第二章 終
20 歌手(樺太):2007/04/09(月) 22:12:55.04 ID:z2vcaDleO
支援
21 経営学科卒(北海道):2007/04/09(月) 22:13:45.00 ID:80jVK7+30
22 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:14:38.51 ID:NsTFfvpe0
以上っす

まぁ>>2が指摘したとおりつまんねってあると思うんでね
でもせっかく書いたしなんとなく方向性も見えてきたので逃げずに頑張りたいと思う


地の文多いのはこういうもんだと思って読んでください
23 歌手(樺太):2007/04/09(月) 22:15:38.76 ID:z2vcaDleO
おっと、乙だ

第一章はもう見られないというのか
24 中小企業診断士(長屋):2007/04/09(月) 22:18:14.06 ID:9jNpQXlp0
>>22
期待してる
頑張ってくれ
25 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:22:09.90 ID:NsTFfvpe0
よかったら一章再投下するけど
26 派遣の品格(樺太):2007/04/09(月) 22:23:28.61 ID:tGxu8+VxO
ん…はっ早くっして下さい…ですぅ
27 生き物係り(東京都):2007/04/09(月) 22:23:34.58 ID:czF7J6rO0
touka site
28 歌手(樺太):2007/04/09(月) 22:25:22.30 ID:z2vcaDleO
第一章期待だぜ
29 農業(樺太) :2007/04/09(月) 22:27:07.15 ID:4d6ngohDO
かなり期待してる
ガンガレ!
30 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:29:34.17 ID:NsTFfvpe0
規制食らったオワタ
31 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:30:11.49 ID:NsTFfvpe0
あ、書き込めた
んじゃ一章はじまるよー



その日は一日中雨だった。
母さんが死んでお葬式をして、やっと周りも自分たちも落ち着いてきたころのことだった。

そんな日の夜、今まで家族とはいえ向き合ってこなかった俺たちに対して、
神様はあるひとつの試練を与えた。


人間は些細なきっかけであっても、とても大きく変わることができる。家族の関係だってそうだ。
でも今回はとてもじゃないが、「些細な」なんて言葉で片付けられるようなきっかけじゃなかった。
俺が試練だと思ったのは、まさしく試練であったからに他ならない。

嵐のような人生が始まる直前は、もう少し静かであってほしかった。

雨音が鼓膜を叩き続ける、そんな日の出来事だった。
32 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:31:19.30 ID:NsTFfvpe0
一章


母さんが死んでしまってからというもの、魂が抜けたようになってしまった親父を見ていられず、
また放っておけず、俺は一人暮らしの家を引き払って実家に戻ってきていた。


やっぱり生まれ育った家は居心地がいい。
もちろん自分の金で借りた1Kも、それはそれで居心地がよかったものだが。

大学入学から就職して6年ほどだから、丸10年はあそこに住んでいたことになる。
だけど荷物は悲しくなるくらい少なかった。社会人になってあまり服をあれこれ買う必要が
なくなったのもあったし、漫画の類は実家に置いてけぼりだったし、家具はあっちで売ってきた。

問題の通勤もいつもより30分早く起きれば済むことだ。俺は親父に内緒で引越しの準備を進めていた。


直前になってそのことを親父に話すと、親父は最初こそ驚いたものの、すぐにほっとしたような顔をして
俺を迎え入れてくれた。

ただ口では「せっかく広々してたのに、狭くなる」なんてほざいていたけど。

ずっと俺が使っていた部屋はそのままで、すぐにでも俺はそこに入って生活ができた。
これもきっと、几帳面だった母さんのおかけだ。
33 主婦(樺太):2007/04/09(月) 22:31:47.99 ID:AcR6PbXSO
支援
34 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:32:21.33 ID:NsTFfvpe0
実家に戻った夜、俺は親父を誘って飲みに出かけた。
といっても近所の親父が行きつけの居酒屋だったけど。親父がここがいいといったのだ。


座敷はあいにく満席で、俺たちはカウンターに座った。ママが笑顔で俺たちを迎えてくれた。


(*゚ー゚) 「お父さんにはいつもお世話になってるんですよ」


ママは後ろの棚からボトルを取り出して、俺にそういった。親父は照れくさそうに笑って、
タバコに火をつけた。

生まれて初めて俺は親父のテリトリーに入った。認められたということだろうか。

親父のボトルを互いに注ぎあって乾杯し、しみじみと母さんとの思い出を二人で語った。
親子水入らずなんて、何年ぶりだろうか。
35 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:33:21.64 ID:NsTFfvpe0
幾分か酔いが回って、親父の心も少し緩んだらしい。
くいっと一口でお猪口を空にして、まくし立てるようにして話を始めた。

普段は余りしゃべらない親父も、お酒のせいかいろんなことを話してくれた。
特に母さんとの馴れ初めを聞かされたときは、俺も顔から火が出る思いだった。
親父の目にはうっすらであるが、涙が浮かんでいた。


いくつかの話を終えた後、急に親父は黙りこくった。そしてずっと何かを考えこんでいる。
俺はしゃべりすぎて疲れたんだろうと気にも留めずお酒を注ぎ、ママと会話を楽しんでいた。

しばらくして親父は、瞳に決意の色を湛えて「話があるんだ」と俺を見た。真剣そのものの顔に、
俺もママも思わず黙ってしまった。
36 不老長寿(埼玉県):2007/04/09(月) 22:33:59.44 ID:UVXb2wFh0
sien
37 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:34:36.70 ID:NsTFfvpe0
( ´∀`) 「俺はお前や母さんに秘密にしていたことがあるんだ」

('A`) 「なんだよ急に。株で大損でもしたか」

( ´∀`) 「いいや、そんなことじゃあない。もっと大切なことだ。俺はずっと母さんに言えなかったことがある」

('A`) 「・・・もったいぶるなって」

( ´∀`) 「今から10年以上前になるが・・・浮気を・・・しちまったんだな」

('A`) 「・・・」

( ´∀`) 「きっと母さんは気づいていたはずなんだ。いろいろと自分でもその兆候があったように思う。
      それでも黙っている母さんを見て、俺はたまらなくなっちまった。だから浮気相手と別れようと
      したんだ。
      でも、そのときには何もかも遅かった」

('A`) 「遅かったって、母さんが死んだってことか?まさかつい最近まで・・・」

( ´∀`) 「落ち着け。俺はそんなこと言ってない。遅かったのは俺と母さんとの関係じゃない。
      相手に関することだ」
38 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:35:41.57 ID:NsTFfvpe0
俺は鼓動が早くなるのを感じた。この人は何か大変なことを俺に言おうとしている。
うっすらその「秘密」という名の山の頂上が見えてきた。でもまだまだその山は雲がかかって
全体が見えてこない。


遅かった?相手に関すること?


少し目を動かすと、カウンター越しのママは不安そうな顔をしている。
私ここにいていいのかしら、といったところだろう。
しきりにコップを拭いたりお皿を洗ったり、落ち着かない様子が見て取れる。


親父はゆっくりと話を続けた。そして、いままでの人生の中でもっとも衝撃的な一言を、
俺ははっきりとこの耳で聞いたんだ。
39 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:36:43.43 ID:NsTFfvpe0





( ´∀`) 「その相手は俺の子を宿していた。そして、相手はその子を産んだ。
      つまり、俺には隠し子がいるんだ」





40 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:37:51.74 ID:NsTFfvpe0
カチャンと、グラスが何かにぶつかるような音がした。ママが口をあけて、唖然としている。
もちろん、俺も唖然としていた。



いったいどういうことだ。隠し子だって?

頭が理解するのを拒んでいるのか、なかなか事実を飲み込めない俺がいた。
しかも10年以上前って言うことは、俺は高校生だということだ。
そんなことがあったなんてまるで気づかなかった・・・

が、気づかないのも無理はない。そのころ俺は遊ぶのに夢中だったのだから。

母さんは遅くまで家に帰らぬ俺や、他の女のところにいるであろう親父を家で待ち続けていたに違いない。


そう思うと、俺は涙が出てきた。同時に、なぜそんなことをしたのかと親父を問いただした。
41 イラストレーター(京都府):2007/04/09(月) 22:38:07.30 ID:yaCjgjKm0
支援
42 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:38:53.46 ID:NsTFfvpe0
俺は淡々と語る親父の胸倉を、思わずつかんでいた。酔った勢いもあったかもしれない。
余りに冷たくはないか。人間の命と人生を弄んでいるとしか、俺には思えなかった。


('A`) 「フザけんな!!勝手に産んで、勝手にどっかに消えただって?
   そんな話があってたまるか!!
   なんで親父はそのとき引き取らなかったんだ!!事情さえ話せば母さんだって・・・」

( ´∀`) 「バカをいうんじゃない!!俺だってそれは考えたさ!!
      でもなぁ、いくら母さんとはいえ、愛人の子をおいそれと育てると思うか!?
      俺にはそうは思えなかった・・・
      争いの種になるなら、そのまま施設にいてほしい、そう思った。
      お前にも家族ができればわかる。俺の考えがいつかわかる」


俺は言葉を失った。自分の父親が人の道に外れるようなことをしていたなんて。
43 主婦(樺太):2007/04/09(月) 22:39:11.03 ID:AcR6PbXSO
支援
44 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:39:57.30 ID:NsTFfvpe0
俺はずっとこの親父がひそかな目標だった。
だからこうして行きつけのお店に来て、ママに俺を紹介してくれたときに
涙が出るほど嬉しかったんだ。


昔の親父はかっこよかった。バリバリ働いて、誰より朝早く出かけていって
誰より夜遅く帰ってきた。

休みはあんまりなかったけれど、合間を縫って俺はいろんなところに連れて行ってもらった。

家族で行ったキャンプで、夜中にこっそり親父と抜け出して見に行った星空の美しさは、
今でもはっきりと覚えている。
俺と親父の思い出は、その星々の瞬きのようにキレイなものだった。


今ここにいる男はいったい誰だ。


こんなのは親父じゃあない。俺はこんな男を目標に頑張ってきたんじゃないんだ。

親父は小さくなって肩を震わせていた。いつの間にか、カウンターにいたママはいなくなっていた。
目の前には、空になったビンが置いてあった。

からっぽだ。俺の心は、28年目にしてからっぽになってしまった。どうしたらいいだろう。
空になったビンにはまた何かを注げば満杯になる。でも心はそう簡単にいかない。

親父はポツリと、一言漏らした。俺はまた、信じられない思いをすることになったのは言うまでもない。
45 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:40:59.64 ID:NsTFfvpe0





( ´∀`) 「償いをしたい、というわけじゃないんだが、俺はその子を引き取ろうと思うんだ」





46 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:41:42.12 ID:NsTFfvpe0
ガタガタとけたたましい音が、お店の扉から聞こえてくる。
いつの間にか、外は猛烈な嵐になっていた。

その嵐は、これからの俺たちの行方を暗示しているかのようだった。

季節は、春を迎える。


一章 終
47 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 22:43:01.81 ID:NsTFfvpe0
以上一章終了でございます


おそらくずっとこんな感じです
48 主婦(樺太):2007/04/09(月) 22:43:05.77 ID:AcR6PbXSO
49 人民解放軍(千葉県):2007/04/09(月) 22:53:21.06 ID:FdQ5yyP10
乙です
僕個人は、あなたは才能があると思っています
ただ登場人物が少ないから、メリハリを感じ取りにくいだけで
続きに期待です
50 踊り隊(青森県):2007/04/09(月) 23:03:57.91 ID:JfF8r7ro0
乙だー
続きが投下されているのを発見したら
また読ませてもらうね
51 女流棋士(東京都):2007/04/09(月) 23:04:47.74 ID:khgoRkMn0
必要な部分に必要なだけ描写する
上手いじゃんか、ドラマ化を待ってるぜ
52 通訳(千葉県):2007/04/09(月) 23:07:05.33 ID:NsTFfvpe0
お褒めの言葉をありがとう・・・これを糧に自分生きていくっス


二年目のジンクスならぬ二作目のジンクスにならぬよう頑張ります
では寝ますノシ
53 留学生(東京都):2007/04/09(月) 23:11:35.00 ID:k7c8fZKD0
うほっ
54 大統領(コネチカット州):2007/04/09(月) 23:18:38.86 ID:i94gQX50O
誰か 姉妹になるようです のまとめがある所教えて。
55 社長(長屋):2007/04/09(月) 23:23:48.21 ID:EqXCUuVj0
なんかまったり感が。俺は好きだよ。
56 バンドメンバー募集中(コネチカット州):2007/04/09(月) 23:40:47.73 ID:i94gQX50O
57 序二段(石川県):2007/04/09(月) 23:41:23.83 ID:wSZjiRxm0
58 歌手(樺太):2007/04/09(月) 23:44:31.93 ID:z2vcaDleO
59 受付(新潟県):2007/04/09(月) 23:47:25.34 ID:YJbf6T2l0
60 バンドメンバー募集中(コネチカット州):2007/04/09(月) 23:47:44.33 ID:i94gQX50O
>>57 thx!
61 イラストレーター(京都府):2007/04/09(月) 23:56:53.05 ID:yaCjgjKm0
姉妹になるようですは最期グダグダになっちゃったなあ・・・あんまり非難はしたくないが。百合っぽく成っちゃったからな・・・・

この話は上手いこといきますように(・人・)保守
62 名人(コネチカット州):2007/04/10(火) 00:50:29.06 ID:smIgsf39O
保守
63 名人(コネチカット州):2007/04/10(火) 02:09:18.14 ID:smIgsf39O
する意味あるのだろうか?
投下が無けりゃ落とすべきか?
64 高専(ネブラスカ州):2007/04/10(火) 02:21:25.76 ID:MxvDRB6jO
>>61
(・人・)おっぱい!
65 AV監督(京都府):2007/04/10(火) 02:44:04.75 ID:g/2xHZPo0
>>63
まあまだ続けたいみたいだし、とりあえず俺も読みたいってのもあるから保守。
落ちたら落ちたで需要がないってことでしゃあないが
66 週末都民(コネチカット州):2007/04/10(火) 03:16:06.81 ID:smIgsf39O
>>65 そですね。という訳で保守。
67 名人(コネチカット州):2007/04/10(火) 03:48:27.14 ID:smIgsf39O
(゚Д゚)
68 名人(コネチカット州):2007/04/10(火) 04:31:02.87 ID:smIgsf39O
>>67 こっちみんなw
69 派遣の品格(樺太):2007/04/10(火) 04:57:56.69 ID:9bOh2NC5O
koge
70 名人(コネチカット州):2007/04/10(火) 05:43:11.84 ID:smIgsf39O
>>67-68 虚しい奴だ。
71 週末都民(コネチカット州):2007/04/10(火) 06:15:25.94 ID:smIgsf39O
寝る前保守
72 週末都民(コネチカット州):2007/04/10(火) 06:51:16.45 ID:smIgsf39O
眠れん
73 名人(コネチカット州):2007/04/10(火) 07:22:47.77 ID:smIgsf39O
>>72 いいから寝れ!
74 名人(コネチカット州):2007/04/10(火) 08:00:09.22 ID:smIgsf39O
>>73 はい、寝ます。おやすみなさい。
75 果樹園経営(樺太)
   \   ∩─ー、
     \/ ● 、_ `ヽ
     / \( ●  ● |つ
     |   X_入__ノ   ミ そんな餌にクマは釣られないクマ ・・・
      、 (_/   ノ
      \___ノ゙
      / 丶' ⌒ヽ:::
     / ヽ    / /:::
    / /へ ヘ/ /:::
    / \ ヾミ  /|:::
   (__/| \___ノ/:::