アニメ・ローゼンメイデンの矛盾を解決する

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1愛のVIP戦士
解決できないかもしれないけど
2割れたカップ ◆cup....pPw :2007/01/29(月) 22:47:17.62 ID:eN12OnKI0
妖精を返せ!ってのはあれなんだったの?
3愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:47:23.57 ID:3h1xPMlP0
>>1は死にやがれですぅ〜
4愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:47:40.75 ID:NQnyxbao0
「なぁ、この辺りに住んでる橘って男、知ってるか?」
「噂だけなら。なんでも奇跡と呼ばれるほどの天才らしいんだろ?」
「だが筋金入りの変人らしい」
十九世紀の東京で、二人の男は話していた。もちろん天才人形師ローゼンのことだが日本では名前も、姿までも変えているようだ。
「馬鹿と天才は紙一重だってよく言うじゃないか。で、お前は何か知ってるのか?」
「滅多に家から出てこないんだが、たまに出てきたと思うと大きな鞄を持って、それに話しかけているんだ」
この東京で、二人の会話を聞くのは天のみか。いや、二人は気付いていないが、その会話を聞く者がいた。
水のように流れる美しい金色の髪、綺麗な肌に整った顔立ち、一言で言えば美男だ。
ただ、その表情は決して明るいといえるものではない。むしろ怒りすら感じられる目をしている。いや、これは哀しみか、あるいは両方か。
二人が話し終わらぬうちにその男は立ち上がり、家の中へ入っていく。
5愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:49:20.88 ID:NQnyxbao0
小さな家だった。ごく普通の家だ。もちろん人が尋ねてこればドアを開けるし、家に訪れた客人は何の疑問を持つこともないだろう。
だがそれは一階の話だ。その家の地下に彼は住んでいた。本人いわく二千年前に誕生した、まさに天才というべきに相応しい人物。
「ローゼン」
「…エンジュか」
黒くゴワゴワした髪、その髪には白い点々が無数にくっ付いている。フケだ。
地味な服装、爪の間に挟まった垢、顔は整っていて綺麗だが、お世辞にも美男とはいえない。
エンジュの双子の兄、ローゼンである。
「前に比べて外に出るようになったのはいいことだけど、服装とか髪型とかちゃんとしたらどうだ?あと行動も。噂になってる」
「エンジュ、これを見ろ」
人の話を聞かないのにももう慣れた。それでもコミュニケーションをとるのは家族の義務だ。そんなことを思いながら、ローゼンの手の中の物を見た。そこにある赤く、鈍く光っている物体を見たときのエンジュの驚きはいかばかりか。
「まさか…それ、ローザミスティカ?…完成したのか?」
「長かった」
それは、魂だった。ローゼンが言うにはそれを人形に入れることで、歩き、話し、哀しみ、喜ぶ、つまり心を手に入れるということだ。
それを人の手で作ったというのだから驚愕せずにはいられない。
「それで、ローザミスティカを入れる人形は…?」
「まだ製作途中だ。完成を楽しみにしてるんだな」
6愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:49:32.46 ID:CHnEYXh70
これVIPPERを馬鹿にしてると取ってもいいよね?
報復開始!!!

ギャグマンガ日和 第21幕(題字・増田こうすけ)
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1167829253/

972 名前:作者の都合により名無しです 投稿日:2007/01/29(月) 20:26:19 ID:XEHRLQus0
VIPを利用するようにならなくなっただけマシだからほっとけよ
7愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:50:47.86 ID:NQnyxbao0
それから幾日が経っただろうか。ローゼンの机の上には一糸纏わぬ姿の人形が一体置かれていた。
「少女…人形?」
「ああ。アリスという名前だ」
「アリス」
何故そんな名前をつけたのか、エンジュにはわからなかったし、わかろうともしなかった。少し気になりはしたが。
「触っても?」
「駄目だ。私の人形だ。触ることは許さない」
そう言われることはわかっていたはずなのに。なのにエンジュは少し苛ついた。苛ついた?私は小児性愛者ではない。だがそれでも、この人形には人を惑わす魔力がある。男として生まれたのなら誰もが近付き、触れたくなる魅力があった。

8愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:51:58.44 ID:FOhm/94SO
http://c-au.2ch.net/test/-.YYY000/csaloon/1169977039/134-
http://c-au.2ch.net/test/-.YYY000/csaloon/1170072656/i
これはひどいwwwwwwwwwwwwwww
こいつら厨房ってレベルじゃないお(^ω^;)
VIPの皆の力集めてぶっ潰すお(^ω^ )wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
9愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:53:39.68 ID:NQnyxbao0
それから数日後、エンジュはいつものように朝食を持って地下へ降りて行った。しかしそこにローゼンの姿はなかった。
少女人形の姿もない。一緒に連れて行ったのか、それとも留守中にエンジュに弄られることを恐れ、どこかに隠したのか。
エンジュは机の上の、細かい字と人形の絵が描かれている沢山の紙の下に、一枚の写真を見た。どこかで見たことがある、と思うまでもなくそれはアリスだった。
「なるほど、そういうことか」
呟いて、その写真を置く。つまりローゼンはたまたま外出先で会った少女に恋をしたのだ。二千歳の男が少女に恋とはおかしな話だが、エンジュはそうだと信じて疑わなかった。
あの兄ならありえる。最近外出が多いのも変だなと思っていたのだ。なるほどこの少女に会いに行くためか。いや、兄のことだ、会うではなく見るために行くのだろう。
こんな盗撮したような写真があるのだから間違いない。
それなら最近になってより一層人形作りに励み、生きた人形のことをよく話すようになったのも頷ける。
そのとき、ドアを開ける音、そして閉める音が聞こえ、さらに階段を下りる音も聞こえた。言うまでもなくローゼンが帰ってきたのである。その手に大きな鞄を持って。
「どこに?」
10愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:55:27.98 ID:NQnyxbao0
「これを買っていた」
手にしていたのはフリフリの可愛らしい衣装だった。
サイズからして、人形に着せるための服だろう。当たり前だ。
いくらこの男でも、こんな服を自ら着るわけがない。しかし買ったのか。この男がこの服を買ったのか!
また変質者扱いされていなきゃいいけど。まさか店で人形に服を着せてみたりはしてないだろうな。
いや、百歩譲って店でならまだいい、もし外で服を着せていたら大変だ。などと考えながら、エンジュは苦笑した。
いまさら何を言ってるんだ。兄の行動にいちいちツッコミをいれていたら過労死してしまう。
「動いたけれど着せる服がないなんて困るからな」
「じゃあ、入れるのか…。アリスに、ローザミスティカを」
「見ていろ」
ローゼンは鞄の中から人形を取り出し、作業机に優しく置いた。ローゼンが触れている肌はへこんでいる。
その嫌でも目に付く球体関節さえなければ、完全な人間に見える。それが動くのだ。
エンジュはこの奇跡の瞬間に立ち会えるのが嬉しかった。
天才の兄に隠れ、世間は忘れがちだが、実は彼も素晴らしい人形師だ。喜ばないはずがない。
いや、たとえ人形に興味のない人間だとしても、この瞬間を見たいかと問われたならノーと答えるはずがない。
人形は机の上で背を起こして座っている。この時点でまるで生きているのではないかと錯覚するほど美しい人形だ。
動いたらどうなるか、想像できる人間がこの世に存在するか、どうか。
11愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:56:58.83 ID:14dY5jYq0
エンジュ苦労人wwww
12愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:59:07.20 ID:NQnyxbao0
どういう原理なのかわからない。いや、そもそもこの人間のすることに原理を求めてはいけないのかもしれない。
ローゼンが手にしたローザミスティカを人形の背中に当てると、
まるで手品師が百円玉にタバコを貫通させるがごとく、人形の中にローザミスティカが入っていった。
これが、ローザミスティカなのか。そう思うしかなかった。
人形の中に、モルモット程度の大きさがあったローザミスティカが全て入った。全て、入った。
いくらローゼンが神すら驚愕するほどの天才だとしても、人の魂について全てを知っているわけではない。
そもそも全てを知れるはずがないのだ。だが彼は魂を作ってしまった。
しかし自ら作り出したそれについても、全てを知っているわけではなかった。
これを笑うか仕方ないと思うかは感性の問題だが、ローゼンはこれでいいと思っていた。
確かにそれをいきなり使うのは賭けだが、ローゼンはもちろん天才としての自覚がないわけではない。
つまり自信があったのだ。だから、こんなことになるとは思っていなかった。
13愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:59:49.32 ID:QNgNj2TuO
なんで雛苺の指輪は二つあるの?
巴のとフォッセー(コリンヌ)
14愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:04:37.89 ID:NQnyxbao0
十分予想できることだった。ローゼンは自分が作った人形に自信を持ちすぎていたのだ。
ローザミスティカが恐ろしい物であるということは重々承知していたはずなのに。
少女人形は、アリスは粉々に崩れ落ちた。あの柔らかかった体が、どうしてこのように崩れるのかわからない。
慌ててローザミスティカを取り出したが、もう遅い。誰が見てもわかる。いくら天才といえども、修復不可能だ。
その光景を見ていたエンジュは悲しくなった。あそこまで素晴らしい人形が、勿体無い。動くのを楽しみにしていたのに、と。
だがローゼンの絶望はエンジュの比ではなかった。この人形に一体どれほどの想いと時間をかけただろう。
完成し、ローザミスティカを入れる今日という日をどれほど心待ちにしていたことだろう。
エンジュにとってこれはただの人形だったかもしれないが、ローゼンにとってそれ以上のものであったことは言うまでもない。
まさか粉微塵になってしまうとは。もう一体同じ人形を作る気も起きない。
それまでも生きているのか死んでいるのかわからないような人間だった彼は、
まさに生きる屍と成り果てた。少なくともエンジュにはそう見えた。
15愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:04:44.43 ID:JP3bKqB3O
コリンヌの指輪は雪華綺晶のだと思ってた
16愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:05:58.64 ID:QzK6FDM5O
>>15
漏れもそうだと思ってた
17愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:09:12.44 ID:NQnyxbao0
書くの忘れてた
特別編やる前に考えた話だからアニメ1期2期だけの続きってことにしてほしい
18愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:12:57.82 ID:NQnyxbao0
「ローゼン、気持ちはわかるけど、いつまでそうしてるつもりだ?もう少し頑張ろう」
頑張ろう。その言葉がどれほどローゼンを傷つけたか、エンジュは知らない。頑張ったさ、死ぬ気で頑張った。
そしてやっとの思いで完成させ、その頑張った成果が見れると思ったら…。全てが無駄になった。無駄に。無駄に。無駄に。…無駄、に?
違う。何を言ってるんだ。全てが無駄になったわけではない。ローザミスティカは、こうして残っているではないか。
アリスはおそらく、ローザミスティカの力に耐えることが出来ずにああなってしまったんだ。
空気を入れすぎた風船は破裂する。そうならないようにするためにはどうしたらいい?決まっているではないか。入れる空気を少なくするんだ。
そんな簡単なことに今まで気付けなかったほど、今のローゼンは衰弱していた。
19愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:16:38.16 ID:NQnyxbao0
まるで天がそうなることを望んでいるかのように、意外にもそれは簡単に割れた。
「欠片を、人形に?」
まさか今更思いついたのかと、エンジュは驚いた。絶望していたのはわかっていた。
しかし彼はローゼンだ。こんなことに気付かないはずはない。
それに今のローゼンに人形のことはタブーであろう、そう思ってエンジュはあえて口にしなかったが、まさか気付いていないとは思わなかった。
少し時間はかかったが、人形は完成した。美しい白銀の髪、鋭い、だが優しさを感じさせる瞳、ふくよかな乳房、すらっと伸びた綺麗な足。
背中からちょこんと出ているのは、羽根のようだ。その羽根が、いや衣装全体が黒いのはローゼンの趣味か、それとも今の心境を表しているのか。
アリスよりも少し大人に見えた。少なくともアリスではないのは間違いない。何故アリスをもう一度作らなかったかは、
おそらく新しいゲームは何時間もかけてクリアするが、途中までやってセーブが消えてしまったゲームはやる気がなくなるのと同じであろう。
「名前は?」
「水銀燈だ」
変な名前だとは思ったが、エンジュはそれ以上口にしなかった。それよりも、早くこの人形が、今度こそ動くところを見てみたい。
「ローゼン」
「ああ、大丈夫だ」
そう言ってローザミスティカの欠片を手に取り、アリスの時と同じようにそれを体内に入れた。
聞こえたのはビスケットを潰したような音だった。
「まさか…」
駄目なのか?また、駄目なのか?やはり無理なのか?そう思ったが、水銀燈は崩れ落ちなかった。なら今の音はなんなのだ。
そうか、あれは成功した合図なのか。ローゼンは喜びに震え上がり、螺子を巻き始めた。だが、
まだ意識が朦朧としている水銀燈に触れたローゼンは気がついてしまった。そうか、さっきの音はそういうことだったのか。
そう、水銀燈には。
腹が、なかった。
欠片でもまだ崩れてしまうのか。だが、確かに動いている。エンジュはそれを見て二つの意味で戦慄した。
一つはもちろん、生きた人形の誕生を見ることが出来た喜びだ。そしてもう一つの感情は、恐怖か。ありえないと思った。
腹がないことに気付いたローゼンは、水銀燈の服を脱がして確かめていた。その光景まさに恐るべし。彼女の上半身は宙に浮いていたのだ。
ローザミスティカにありえないは通用しないということは、彼も知っているつもりだったのに。

20愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:30:18.72 ID:qObB17W6O
この話自体にも矛盾があるけどwktkが止まらない
21愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:34:28.32 ID:NQnyxbao0
「薔薇乙女第二ドール。名は金糸雀だ」
「うゆ?」
「お前は私が作った人形だ」
「………」
「外にお前の姉がいる。」
「わかったわ」
意識が芽生えた瞬間から言葉を理解し、話せることについてもはや驚きはしない。
足早に階段を駆け上がっていく金糸雀を見て、まるで本物の子供のようだと、エンジュは呟いた。
それについていくようにエンジュも階段を上ると、扉を開けている金糸雀の姿が目に付いた。
「それは便所だ」
「ま、間違えちゃったわ」
「外に出るためには、あそこ」
玄関のほうを指差すと、金糸雀はぺこりとお辞儀をして玄関に向かい、ドアを開けた。
「それは下駄箱」
「えへへ」
水銀燈のこともあったので、金糸雀には小さめのローザミスティカの欠片を入れた。ひょっとして、足りなかったか。
そんなことを思いながらも、エンジュは幸せだった。まさか数年後、兄が人形たちに殺し合いを命じることなど予想もせずに。
22愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:38:08.72 ID:NQnyxbao0
「あ、あの」
内気な小学生が好きな男の子に話しかけるような表情で、金糸雀は言った。
「私、薔薇乙女の第二ドール、あなたの妹の、金糸雀って言うの」
「そう。よろしく」
彼女は、笑った。この微笑みを伝えられる形容詞がこの世に存在するだろうか。
物を知らない金糸雀でさえ吸い込まれそうになる笑顔であった。
二人はすぐに仲良くなった。二人しかいないのだから当然だが、水銀燈には人を魅了する力があった。つまり仲良くなりたいと思わせる力だ。
それは金糸雀も同じで、水銀燈のそれとは少し違うが、一緒にいたいと思わせる魅力を持っていた。
二人は服を着ていればどこから見ても人間だ。水銀燈は見た目の割りに小さいが、そんなことはいくらでも誤魔化せる。
この子は実は人形ですと言われるのと、こういう体の子なんですと言われるのでは、どちらを信じるかは明白だ。
だが彼女たちを外に出すことはなかった。いや、外に出すことはたまにあったので正確に言えば人と交流をさせることはなかった、だ。
万が一動かなくなって病院に連れて行かれたり、球体関節を見られたりしたら大変だ。
それにあのローゼンが自分の人形を他人に触られることを許すはずがない。もっとも、エンジュは触れているのだが。
それから二年ほど、幸せな生活が続いた。あまり外に出ない二人は、情報を本から得ている。
エンジュは読書好きで、色々な本が置いてある。
もちろん誤った情報を得てしまうこともあるが、そこはしっかりとエンジュが教えてくれる。
彼は水銀燈と金糸雀にお父様と呼ばれ、悪い気はしなかった。だから否定はしなかった。
ローゼンもこのことは知らないし、アリスの件以来上に上がってくる様子もない。
二人だって地下に行く気さえないだろう。そんな風に考えていた。
水銀燈も金糸雀も、毎日地下で何かをしている黒髪の不潔な男、本当の自分の生みの親のことなど完全に頭から消え去っていた。
23愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:47:28.42 ID:NQnyxbao0
本当に幸せだと思っていた。お父様は優しいし、カナは抱きしめたくなるくらい愛らしい。でも、でもでも。
いくら考えてもわからなかった。自分に腹がない、その理由を。
それを確かめる一番早くて確実な方法は思いついている。そう、お父様に訊くことだ。
でも、怖い。何て言われるか想像も出来ない。
だからこそ訊くべきではないのか。いや、しかし、もし、もしも…。
「水銀燈!」
その声で、水銀燈は目を覚ました。
「どうしたの?うなされてたわ」
ドールたちの寝場所は鞄の中だ。外に音が漏れるほどの声だったのか。
水銀燈は苦笑した。なんだかこの子の顔を見ていたらどうでも良くなってきた。
…そうだ、どうでもいいんだ。だって今日もいつもと変わらない幸せな一日のはずだから。
「びっくりしちゃたわ」
「そんなにうるさかったかしら」
「…?かしらって?」
「ん…?ああ、なんでもないわよ」
「かしら…。なんか面白いわ。漫画に出てくるネコミミの子みたいで」
金糸雀は小さな文字の羅列した本を読むのが苦手だった。だから漫画や絵本しか読まない。
絵本はエンジュが金糸雀のために買ってきたもので、最初からあったわけではない。
今金糸雀が言った漫画とは、ローゼンの物であってもちろんエンジュの趣味ではない。
ローゼンが人形を作るための資料なのか、趣味なのかはさておいて。
24愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:49:51.92 ID:NQnyxbao0
「別に語尾につける口癖じゃないわよ」
「そうなの?でも、面白いかしら!かしら!」
「くすっ、あはは」
どうしてこんなに可愛いんだろう。ああもう、本当に幸せだ。
「これからは寝てるときに音を立てたらメイメイに注意してもらうようにしなきゃ」
「凄いかしら水銀燈!ピチカートはそんなこと出来ないかしら」
「カナ、人工精霊の躾はドールの仕事だって言われたでしょ」
「私、そういうの苦手かしら…」
「仕方ないわね。ちょっとだけなら私が手伝ってあげるわよ」
「ほんとに!?」
こんなに嬉しそうな顔をされたら、やる気が出てきてしまう。全く、自覚してるけれども本当に甘いわね。
人工精霊の意味はドールの成長のためということもあるのに、これじゃ意味ないわ。
この子にとっても、私にとっても。そう思いながらも、水銀燈は天使のように微笑んだ。
25愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:53:52.29 ID:NQnyxbao0
今日はエンジュは出かけていて家にはいない。
正確には出かけて、というのは二人が思ったことで、実は起きた時から姿が見えない。
しかしこんなことはよくある事だった。だから二人は大して気にはしなかった。
水銀燈は、今の生活が本当に幸せなものだと思っていた。
幸せな日々が続くと、気分が盛り上がり興奮してしまうのも仕方がない。
だから普段は絶対に言わないような、絶望的な一言を言ってしまった。
「ねぇ、カナ。この家、探検してみない?」
深い意味など全くなかった。ただの暇潰しになればいいなと思っただけで。
「探検するような広さかしら?」
ここでそれもそうねと言ってやめておけば、彼女はこれからも幸せに生活できていたのかもしれない。
もしかしたら、第五ドールを憎み、妬み、嫌い、そして長きに亘る争いをすることもなかったのではないか。
見つけてしまった。地獄の部屋を。聞いてしまった。悪魔の声を。
「お父様の、声?誰かと、話してる…?」
「え?でも、両方同じ声に聞こえるかしら」
「二人いるわよ。独り言とかそういうレベルじゃないし」
「開けるかしら!」
26愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:54:50.18 ID:NQnyxbao0
眠くなってきた・・・
27愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:58:00.89 ID:ORWm11PU0
気になる終わり方しないでくれよw
28愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:00:12.20 ID:NXY6ZkH+0
エンジュは今のドールたちとの関係を気に入っていた。だからローゼンにそれを壊されたくなかった。
ローゼンはエンジュに話しかけられない限り話をしなかったし、部屋から出る気配もなかった。
食事をしなくても大丈夫らしい。ローゼンもエンジュも不老不死と呼べる状態だが、殺されれば死ぬという。
だが餓死はしないとローゼンは言っていた。つまり人によって殺されない限り死なないということだ。
人形作りに必要な道具についても大丈夫だ。二人が寝ている間に地下へ行き、必要な道具とそれを使い終わる期間、
つまり次に道具が必要になる日にちを聞き、道具を揃えている。
その計算は完璧なので予想以上に早く使い終わってしまったなどということはない。実際にそんなことは今まで一度もなかった。
だからローゼンについて心配することはない。あとはドールたちだ。
エンジュは二人の考えがわかるわけではない。だから二人がローゼンのことをどう思っているかわからなかった。
二人はローゼンのことなど少しも話に出さないが、それでも忘れてしまっているという確信があるわけではない。
しかしこれも簡単だ。考えてみればそんなことはどうでもいいではないか。二人はローゼンのことなど全く気にしていない様子だし、
仮に覚えていたとしても、時が経てばそのうち忘れてしまうだろう。それよりも大事なことは、
二人にローゼンのことを考えさせないようにすること、もしくは思い出させないようにすることだ。
エンジュは家中にカーペットを敷いた。地下への入り口を隠すためだ。
しかしこのままでは、地下に入り難いことこの上ないので、入り口にあわせて四角形の三辺を切った。これで大丈夫だ。
切れ目は毛糸に隠れて見えないから見つかることもないだろう。万一遊んでいて見つけてしまう可能性もあるが、
そこに二人が近付いて遊んでいたら、話を持ちかけて違うことに興味を引けばいい。疑うことを知らない水銀燈と金糸雀だ。
それで大丈夫だろう。
だが、エンジュがいないときに近付いたらどうするのか。簡単だ事だ。鍵をかけておけばいいのだ。
地下への入り口が見つかっても、鍵がなければ開かないようにしておけばいい。ノックをされてもローゼンは返事すらしないだろう。
中から音が聞こえても中に入れないのなら大丈夫だ。訊かれてもネズミがいると誤魔化しておけばいい。
あの中には大切なものがしまってあると意味深に答えておけばいい。どうせ忘れるだろう。

29愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:02:37.97 ID:UQZi+B4R0
>>19
マテ
オーベル銀には羽根がない
30愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:03:18.19 ID:NXY6ZkH+0
エンジュは今日の朝、地下に入った。ここに入るのは、実に約三年ぶりだった。
三年前には、なかった。だからエンジュは驚愕した。今日完成すると知っていたのだから驚愕はおかしいが、
それでもエンジュは戦慄せずにはいられなかった。机の上に置かれた少女人形を見て。
ローゼンは今日、見事第三ドールを完成させていたのだ。
いや、違う。第三ドールと、第四ドール。
机の上には、二体の少女人形が並んでいた。
エンジュは、ローゼンが人形を作り続けることに対して、大した疑問も浮かばなかったし違和感も覚えなかった。
なぜなら彼は人形師だからである。失礼な話だが、エンジュは彼から人形を取ったら何も残らないとさえ感じていた。
だが、実際に今二体同時に作られた少女人形を見て、エンジュはえも言われぬ違和感を感じていた。
「どうしてまだ、人形を作り続ける」
何故こんなことを聞いたのか。ローゼンから人形を取ると何も残らないのではないのか。
エンジュは水銀燈や金糸雀と共に生活を続けていたからこそ思った。机に置かれた剥き出しの少女人形をみていると、
説明できない物寂しい感情に侵されると。いや、ここまで的確に質問をするということは、
エンジュはこの時点ですでに気付いていたのかもしれない。そもそも彼は、
ローゼンと二千年もの月日を共に過ごしてきた。だからローゼンの瞳の変化に気付かないはずがなかった。
濁りきったその瞳に、気付かないはずがなかった。
エンジュが返答を待っていると、その問いには答えず、ローゼンは言った。今のエンジュにとっては戦慄すべし一言を。
「服を、買いに行ってくる」
しまったと思った。そしてエンジュは自分の思考回路の弱さを呪った。何故忘れていたのか。
水銀燈のときも、金糸雀のときもそうだったではないか。ローゼンは、衣装だけは必ず自分で買っていたではないか。
何故もっと早く気付かなかったのか、わからない。気付いていれば人形が完成する時期にあわせ、二人を遠くに外出させ、
その間にローゼンを買い物に行かせることだって出来たというのに。
31愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:04:08.63 ID:NXY6ZkH+0
>>29
ごめ、オーベルを考えると矛盾だらけになるから1期と2期のみで頼む
32愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:12:05.28 ID:NXY6ZkH+0
落ち着いて考えろ。おそらく今、あの二人は鞄の中で眠っている。
その隙を見てローゼンを外に出すか。無理だ。帰ってきたときにどう対処すればいい。
過去の経験からして、ローゼンは服を選ぶのには結構な時間を掛ける。
戻ってくるころにはあの子達は目覚めているに違いない。
ローゼンはこちらの事情など知るはずがない。何の遠慮もなしに家に入り、
そしてあの子達がいたとしても当たり前のように地下へ入って行くだろう。
それを二人になんと説明する?世間知らずなことを利用して、あれは家の守り神とでも言ってみるか?馬鹿な…!
しかも、あの子達が今、本当に寝ているという保証もない。もし今起きているというのなら、
ローゼンを地下から出すことさえ出来ないではないか。…ならば、出さなければいいんだ。
ここでエンジュの思考は停止した。書けば長いが、ローゼンが服を買いに行くと言ってから五秒と経っていない。
昔のエンジュなら、こんなことでここまで真剣に悩むなんて、と苦笑するはずだ。
だが、今のエンジュはそんな余裕すらないほど必死であった。
あの二人と一緒に暮らしているうちに、二人を本当の娘のように感じるようになっていた。
そして二人も、エンジュを本当の父親だと思い込んでいるだろう。
確かにエンジュは二人に嘘をついている。だが悪いという気持ちはなかった。
作ってそのままほったらかしのローゼンよりも、自分のほうが断然父親に相応しいと思ったから。
自分が父だと信じて疑っていないのなら、それでいいじゃないかと思ったから。
33愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:12:37.03 ID:UQZi+B4R0
腕のいい人形師の割りに、ドール用の服は既製品・・・

秘密の臭いがするな・・・
34愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:13:34.86 ID:NXY6ZkH+0
そもそもいくら自分の家の地下から出てきたとはいえ、こんな身なりの男の言うことを信じるものか。
いきなり出てきた男に、本当の父親は私ですと言われてそう簡単に信じるものか。
自信ならある。私はあの子達に好かれているつもりだ。
私が当たり前のような顔をしてそんな男は知らない、
二人の父親は私だと言えばいいだけだ。そう。…それだけだ。
だが、その父親だと名乗る男が自分と瓜二つの姿をしていたらどうだ?話は変わってくるのではないか。
ローゼンが日本人の姿になっているのはあまりに単純な理由だ。
ローゼンも自分の性格を少しは自覚している。だから外国人よりも、
同じ国の人の姿のほうが溶け込みやすいだろうと思った、ただそれだけだ。
しかもそれはエンジュが提案したことである。
つまりいつでも元の姿に戻ることが出来るということだ。
だが、元の姿に戻ることがローゼンにとって何の得になるというのだ。いや、そんなことは知らなくてもいい。
私はローゼンの双子の弟だが、ローゼンではない。彼の考えていることなど完璧に理解できるはずもない。
そんなことはあるはずがないと思ってしまうことが一番危険なんだ。
特にローゼンに関しては、それを嫌というほど思い知らされてきたではないか。
35愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:16:37.68 ID:ml+9QKP90
wktk
36愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:19:08.05 ID:NXY6ZkH+0
本当は、何が一番危険なのかわかっていた。そう、ローゼンはこちらの事情など一切知らないのだ。
もちろんこちらから話すつもりもない。話しても何の解決にもならないからだ。
あなたの作った人形が私を父親だと思っているのでこの関係をこのまま維持させてくださいと言われて
大人しく黙っているローゼンではないことは自分が一番良くわかっている。
もっとも、水銀燈と金糸雀がローゼンの作ったドールでなければ、おそらく彼は何も言わないだろうが。
ローゼンはこれから先も自分の気持ちを理解しないに違いない。
おそらくいずれローゼンはアリスに対する思いが薄れ、水銀燈と金糸雀に近付くことがあるであろう。
そのとき、本当に私は言えるのだろうか。私が水銀燈と金糸雀を作った二人の父親だと、
平気な顔をして嘘をつけるのだろうか。水銀燈と、金糸雀の前で。いや、それよりも、ローゼンの前で。
私とローゼンは今まで二千年もの時を共に過ごしてきた。だから知っている。
確かにローゼンは人間としては尊敬できる人物ではない。だが人形師としては、最高と呼べる師だった。
私はローゼンに比べたら未熟すぎる。もちろん生きた人形など作れるはずもない。
その私が、事情すら知らないローゼンの前で、涼しい顔をしてそんなことが言えるはずがない…!
なら、どうすればいいのか。簡単な話だ。二人とローゼンを接触させなければいい。
「服なら、私が買ってくるよ」
そうだ。自分勝手とは思わない。自分勝手というのなら、ローゼンのほうだ。
二人とローゼンを接触させないためには、今までどおりの生活を続ければいいだけだ。
ローゼンが一階へ上がってこれるくらい回復するときがくるかもしれないが、それはまたそのときに考えればいい。
「いや、これは私がやることだ」
断られることは想像の範囲内だった。
いや、ここでローゼンに承諾されたのなら、唖然としてしばらく声も出ないことだろう。
つまり、断られるに違いないと確信していた。だからすぐに言い返す。
「いいじゃないか。道具だって私が買ってるんだ。それなら衣装だって」
「衣装には私なりのポリシーがあるんだ。本当は道具も自分で買いたいが、面倒くさいからな」
37愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:23:52.87 ID:NXY6ZkH+0
……………?
…今、この男、なんて言った…?
ローゼンは世界最高の人形師だと思っていた。二千年生きてきて、兄以上の男に出会ったことがなかった。
もちろん職人としてだが、兄は想像を絶することを当たり前のように次々とこなしていった。
本当に、最高の師だった。それが、なんだと…?
「ふざけるな!!」
初めてだった。二千年もの時を過ごしたにもかかわらず、初めてだった。兄に、本気で激怒したのは。
エンジュは今まで、奇人変人と罵られ、他の誰からも見放されたローゼンをただの一度も見捨てはしなかった。
捨てようとも思わなかったし、置いて行こうなんて考えもしなかった。
それは彼が実の兄であると同時に、最高の人形師であったから。
エンジュは言われたとおりの道具を買ってくるだけだが、
ローゼンはかつての情報だけで必要な道具を判断している。
時代は進歩しているということは言うまでもない。つまり最高の人形を作るためには、
自ら店に足を運び、見て、触り、自ら決めるのが一番の方法に決まっている。
それが、本当は自分で買いたいが、面倒くさい、だと?あまつさえ、服を選ぶのはポリシーがある、だと?
道具にはそれがないというのか。その理由が、面倒くさい、それだけだというのか。
エンジュはその旨をローゼンに話した。どうせいつものように聞く耳を持ってくれないとは思ったが、
少しでも自分の言葉が人形師、ローゼンの心に届くことを願って話し続けた。
ちょうどその頃、扉の上で二人の少女が、
誰かと話してる、でも同じ声しかしない、と会話をしていることに気付きもせずに。
38愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:29:02.16 ID:NXY6ZkH+0
ドン、ドンドン。
うるさいな。さっきから何の音だ。どうでもいい。
この男は…、二人といないであろう最高の師だと思っていたこの男は、人形師としても腐ってしまったのか。
裏切られた気分だった。水銀燈と金糸雀が懸命に扉を
叩いているのにも気付かないほどに、今のエンジュは取り乱していた。
それほどまでに、ローゼンのこの変化は彼にとって辛いものであった。
だが、ローゼンの変化に少なからずエンジュの責任もあるということに、彼は気付かない。
彼は水銀燈と金糸雀に心を奪われた時点でローゼンを捨てていた。
それまで毎日のようにローゼンに会いに行っていたエンジュがある日を境に滅多に
会いにこなくなったことに気付かぬローゼンではなかった。
今まで、エンジュは何があってもローゼンを見捨てたりはしなかった。
口下手なローゼンは一度も口に出して言ったことがないどころか、
それを態度に表したことすらないが、彼はエンジュのことを好いていた。
だから、エンジュに捨てられたと思った彼は、残っていた最後の心までもが腐ってしまったのかもしれない。
このことに、エンジュが気付く日は来るのか。
それとも未来永劫気付くことなくその生涯を終えてもなお、地獄でローゼンを憎み続けるのか。
「さっきの質問の答えだが、楽しいからだ」
エンジュに対する想いなど微塵も感じさせないローゼンであった。
「アリスは完璧な少女だった」
このアリスというのがこの場合、自身が作った少女人形のことなのか、
実際に存在している少女のことなのかはわからない。
「水銀燈も金糸雀も、アリスを目指して作った。
だが、生きた人形を作ること自体に喜びを感じるようになった。」
普段のエンジュなら、喜びを感じることはいいことだと笑うだろう。
だが、今のエンジュはそうではない。この男は、完成度よりも楽しさを優先させるのかと思った。
つまりそれは、作ることが目的であって、出来上がった人形はどうでもいいということではないかと思った。
ここまでくると滅茶苦茶だが、そのことに今のエンジュが気付くには少しの時間が必要だった。
39愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:31:14.66 ID:NXY6ZkH+0
「完璧な少女を目指して作られたって事は、私たちは完璧ってことかしら!?」
甲高い声でそういったのは金糸雀だ。何の曇りもなく、心の底からそう思い言った言葉であった。
「水銀燈…?」
返事がないことを不思議に思い、金糸雀はその名を呼んだ。
「え?あ、うん、そう、ね。あはは」
無理やりに、あまりに無理やりに作った笑顔であった。
さすがにこれは金糸雀も違和感を感じたが、
このとき、水銀燈の瞳が僅かに濁ったことに気付ける金糸雀ではなかった。
無邪気に、残酷なほど無邪気に笑う金糸雀を見て水銀燈は何を思ったか、
この時点で金糸雀が知るはずはない。そして、再び言う。
「すごいかしらすごいかしら!!私たち、完璧なのよ!」
40愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:33:10.94 ID:NXY6ZkH+0
金糸雀は思う。考えてみれば、あの時からだった。水銀燈が少しずつ変わっていったのは、と。
今の生活は幸せだ。ミーディアムと一緒にいる時間も最高に幸せだし、
妹たちとふざけ合ったり悩んだりするのも楽しい。
でも、この中に、私の幸せの空間の中に、彼女の姿はない。
私のせいだ、と今になって思う。私があの時あんなことを言わなければ、
今の生活が変わっていたことは間違いない。
もしかしたら、全ての薔薇乙女が一つ屋根の下で暮らすという夢のような生活さえありえたかもしれない。
何度も後悔した。愚かだった自分を恨んだ。だがあまりに遅すぎた。
金糸雀は自分の罪に気付いたとき、まず謝ろうと思った。
会って話が出来る機会があれば本気で謝罪しようと考えた。許されなくてもいい。
謝って謝って、また共に時を過ごしたいということを伝えたい。
水銀燈なしで、私の本当の幸せはありえないと伝えたい。しかし。
久しぶりに出合った水銀燈のその顔を見て、金糸雀は絶望した。
そして思った。これは、水銀燈ではない、と。
さすがの金糸雀もすぐに気が付いた。完全に過去を断ち切っていると。もう、私など目に入っていないと。
こうなったのは私の所為なんだ。彼女を恨むことはできない。
私にできるのは、いや、しなければいけないことは、彼女を救うこと。
だが金糸雀はそうしなかった。怖かったから。
心から慕い、尊敬し、愛した姉に傷付けられるのが怖かったから。
そもそも私に何が出来るのか。水銀燈が私なんかの話を聞いてくれるわけがないではないか。
その罪を償わなければいけないことはわかってる。わかっているけれども…。
言い訳に言い訳を重ね、金糸雀は自分の責任から逃げ続けていた。過去の思い出を、深く胸の奥にしまって。

41愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:37:28.38 ID:NXY6ZkH+0
その絶望は筆舌に尽くしがたい。私は、完璧を求めて作られたドールだという。
ならなぜ、私には絶望的なまでの最悪の欠陥があるのだ。
それに加えて、金糸雀の存在が私を奈落の底へと突き落とす。
私がこの世に生を受けてから、金糸雀の誕生にはしばらくの時間があった。
少なくとも同時に作られたのではないことはわかる。何故金糸雀は存在しているのか。
それは私が完璧ではないからに決まっている。お父様は仰った。
水銀燈も金糸雀も、アリスを目指して作ったと。
私がそのアリスという完璧な少女に
届いていたというのなら、金糸雀を作る必要はない。つまり、そういうことだ。
本気で愛していた。お父様も私のことを好いていてくださると思っていた。
あの笑顔は嘘だったのか。あの優しさは偽りだったのか。
私は所詮、アリスには届かない不完全な存在でしかなかったのか。
水銀燈は少しずつ変わっていった。狂っていった。
人は一日のうちの三分の一は眠って過ごしている。それはドールにとっても例外ではない。
もっとも、二人は十時間、あるいはそれ以上眠ることもよくあったが、
今の水銀燈は一日のうち実に十七時間は鞄の中で過ごすようになった。
ドールは食べ物や飲み物を体内でエネルギーに変換し、それを活動の源としている。
だから水銀燈が食事を怠ることはないが、それでも目に見えて食べる量が減っていた。
それだけではない。本を読むこともなくなったし、金糸雀と話す時間も減った。
他にも以前の水銀燈とは明らかに違う行動がいくつも見られた。
それでも水銀燈は、まだ笑顔を見せていた。
それはかつての天使のような笑顔とは比べ物にならないほど乾いた笑顔であったが、
それでもこの時点でならまだ、昔の水銀燈に戻れる可能性があったのではないか。
この頃、ローゼンにもある変化が起こった。
アリスが消滅して以来一度も地下から出てこなかった彼が、
一階へその姿を現したのである。二人がまだ眠っていたのは幸いであった。
以前の件もあり、エンジュはローゼンに地下から出た理由を聞こうともしなかった。
もっとも、あそこまで言っておいてこちらから話しかけるのは、
という子供じみた理由もあるにはあったが。
42愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:41:34.77 ID:NXY6ZkH+0
ローゼンは家から出て行った。何のためにと思うよりもまず、エンジュはローゼンがいつ帰ってくるのかを気にした。
二人が起きているときにローゼンが来て、鉢合わせしてしまうことを何より恐れた。水銀燈の調子が悪くなる前ならば、
二人を外に遊びに行かせることも出来た。だが、今はそれも無理だと思う。
もちろん水銀燈を置いて一人で遊びに行く金糸雀ではないこともわかっていた。
だからここはシンプルに、いつもと同じ手を使うことにした。エンジュはローゼンとは違い、どちらかといえば社交的だ。
だから、当然のことだが、家には人が尋ねてくるし、家の中に入ってくることだってある。
その時どうしているかは、あまりにも単純だ。二人はエンジュの合図があるまでクローゼットの中に隠れているのだ。
だが問題なのは、ローゼンは客ではないということだ。理由も説明せずにここで待っていてくれと言われて待つローゼンではない。
聞く耳持たないことは重々承知している。かつてこれと似たような状況があったとき、この方法を取らなかったのはそのためだ。
だが今はかつてとは状況が違う。ローゼンは外からやってくるうえに、今すぐと言うわけではない。
ならば金糸雀が起きたら、大事な客が来るから、またいつものように隠れていて欲しいと言えばいいだけだ。
帰ってきたローゼンは、その手に大量の道具を持っていた。人形を作るための材料だ。
少し、嬉しかった。自分の言ったことを理解してくれたとエンジュは思った。
ローゼンからしてみればあそこまで言われたのだから、もうエンジュに頼んでも無駄だと思っただけなのかもしれないけれども。
43愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:44:12.83 ID:NXY6ZkH+0
それからまた数年の月日が流れ、ローゼンはエンジュを地下に呼んだ。
それが朝だったのはまたしても幸いだった。二人には気付かれていないだろう。
エンジュは、ローゼンから話しかけてくるなんて、と少し驚いたが、大体の予想はついていた。
おそらく完成したのであろう、薔薇乙女の第五ドールが。
人は本気で驚愕したとき、声すら出ないと言う。何も言えなかった。
この男は、残っていた最後の、人形師としての心までも腐ってしまったのだと思っていた。
だが、少なくとも人形師としての技術は腐ってはいなかったのだ。
それほどまでに美しい、いや、美しいという言葉でさえ不釣合いな姿をした人形であった。
そしてその横にもう一体、作りかけの人形が置いてあった。
「これは?」
「真紅を作った後に、もしかしたら今ならこれ以上の人形が出来るのではと思い作ってみたが、やはり集中できなかった」
真紅というのは、この完成している人形のことであろう。だが、そんなことはエンジュにとってはどうでもよかった。
エンジュはローゼンに説教をした後、少し後悔した。さすがに、言い過ぎたかなと思っていた。思っていたのに。
この言葉を聞いたエンジュの心に再び火が灯ってしまったのを、ローゼンは知らない。そして当然のように続ける。
「真紅なら、アリスすら凌駕する可能性だってある…!だから…」
運命が、狂う。

44愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:48:22.05 ID:NXY6ZkH+0
最初、どういう意味なのかわからなかった。だって、私たちはアリスを目指して作られた、完璧なドール。
真紅と言うのは、おそらく第五ドールの名前だろう。真紅なら、アリスすら凌駕する。確かにそう聞こえた。真紅なら…。
金糸雀である。起きた彼女は、エンジュがいないことに気がついた。鞄の中で寝ている水銀燈を除けば、家には今自分ひとりだと思った。
退屈しのぎに金糸雀は、家の中を歩き回り、なにか遊ぶものはないかと探して始めた。
そのとき、なにやら物音が聞こえたので、金糸雀はその方向へと近付いた。そして思い出す。確かこの辺りに、扉があったということを。
…つまりは、私はお父様が思う理想に届けていなかったということではないか。不完全だったということではないか。悲しかった。悔しかった。
だから言ってしまった。その時たまたま目を覚まし、鞄から出てきた水銀燈に。
「私たち、完璧じゃないって、第五ドールが、真紅が、アリスだって、お父様が」
金糸雀を恨むか。仕方がないという言葉では済まされないと言われてしまえば言い返す言葉もないが、やはりこれは仕方がない。
金糸雀は子供なのだ。いや、それを言うのなら水銀燈も子供なので、正確に言えば子供と同じ精神ということだ。
だから金糸雀は、水銀燈のことなど何も考えずに話した。最も信頼できる相手だから。エンジュを除けば、唯一の話し相手だから。
その言葉が、無惨、水銀燈の心を粉々に打ち砕いたとも知らずに。
水銀燈が、その鞄ごと痕跡も残さずに消え去っていたのは、
そしてその後を追う様に、金糸雀さえもいなくなっていたのは、それからわずか一時間も経たないうちのことであった。
45愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:51:23.84 ID:NXY6ZkH+0
「他の人形を、破壊する」
それは、死にも等しい宣告。もう、救えない。
ローゼンは、我が兄は、我が最高の師は、死んだんだ。アリスが消滅した、その時に。
他の人形を破壊する。もちろん全てのローザミスティカを真紅に入れるという意味だ。
そして言う。この男はすでに、人間としての心があるのかどうかわからない。
いや、わからないのではない。そんな心はとうになくなっているのだ。
「だが、普通に壊しては面白くない。だから、殺し合いをさせるんだ。人形たちに、互いのローザミスティカを奪い合う殺し合いを」
どこまで狂えば気が済むのか、もう止まらなかった。
「出来レースだがな。もちろん最終的には真紅が勝つに違いない。これで、アリスを超える人形が出来るんだ。
そうだな、アリスゲームとでも名付けようじゃないか」
ドン、と一回、鈍い音が響き渡る。尻餅をつき、阿呆のような顔を晒すローゼンを見て、エンジュは一発殴っただけでは足りない、
その顔をひたすら蹴って、蹴って、蹴って、蹴り殺してやりたい衝動に駆られた。そもそもこんな男が死んだって悲しむ者など誰もいない、
困る者など一人もいないではないか。いや、むしろこんな男はこの世に存在してはならない。いないほうがいいに決まっている…。
46愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:52:44.13 ID:NXY6ZkH+0
nのフィールドとは、ローゼンが発見した未知の世界だ。エンジュも初めは驚いたが、その驚きも長くは続かなかった。
ローゼンが世界を作ったというわけではないし、兄のすることに耐性はついていた。
そのnのフィールドに、かつてローゼンだった、朱色に染まった物体を放り投げたエンジュの顔に表情はなかった。
エンジュはローゼンのすること、そして起きることについて驚くことはあってもその原理を求めないことにした。
理由を求めないことにした。ローゼンが理解を超越することをしても、当然のことだと考えた。
だが、いくらエンジュといえどこれは想像も出来なかったであろう。何も映るはずのないローゼンのその瞳に、
エンジュの姿がはっきりと映っていたということを。
そう、ローゼンは生きていたのだ。エンジュに粉々に頭を砕かれてもなお、ローゼンは死ななかった。
人に殺されれば死ぬ不老不死。だが、死ななった。もしかしたらローゼンがエンジュに話した不老不死についての話は、
エンジュに限ったことだったのかもしれない。
今のローゼンにとって、エンジュに捨てられたのは嬉しいことであった。
なぜならnのフィールドにいれば、人形たちの争いが見れるから。
心を持つ美しい人形たちが、自分の言葉一つで争い、壊れていくさまを見れるから。
そして、エンジュがnのフィールドに放った悪魔は、狂道化師として踊りだす。
道化師は、兎の姿で踊り続ける。そして伝える。あまりに馬鹿げた、殺戮ゲームの始まりを。

47愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:59:14.63 ID:NXY6ZkH+0
一階に上がったエンジュは、ある違和感に気付く。家中を探し回ってみたが、やはりどこにもその姿はなかった。水銀燈と金糸雀のことだ。
それから幾日もの時が経過したが、二人が帰ってくることはなかった。今までこんなことは一度だってなかった。
エンジュが言わなければ外出もしないような子達だった。そこで思いつくのは、やはり水銀燈の最近の態度であった。エンジュは悟った。
あの子達は、もう帰ってこないと。あの子達は、気付いてしまったのかもしれない。自分たちの宿命に。最悪の親の下に生まれた運命に。
「どうして…こんなことに」
もしかしたら、一番辛かったのは水銀燈ではなく、エンジュだったのかもしれない。このときのエンジュの精神は、
触れれば崩れてしまうほど弱々しいものであった。
何かに誘われるように、エンジュは地下へと降りていった。
「可哀想に…」
目線の先には、ローゼンが作り出した生きた人形、薔薇乙女。
翠星石と、蒼星石、真紅。そして。
「可哀想、に…」
作りかけの人形を見て、再び言う。この子も、何とかしてやれないものかと思う。
すぐに見つかった。人形の設計図だ。少しだが、ローザミスティカの欠片もあった。
これがあれば、私にだって生きた人形が作れるのではないか。
そう思ってからは早かった。人形に対する思いはローゼンと変わりない、とまではいかないが、
彼も人形師だ。生きた人形を作れるこの機会に、いくら弱っているとはいえ燃えないはずがない。
もっとも、今のエンジュが人形のことにのみ熱心になれるという、
忌み嫌い憎んだかつての兄と同じ状態になってしまったのは皮肉な話だが。
そうして、雛苺と名付けられたその人形は完成した。
48愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:01:24.58 ID:NXY6ZkH+0
だが、エンジュに人形の螺子を巻き、動かす気力はなかった。
そもそも、この地獄の部屋で人形たちを動かすつもりなどない。暮らすつもりはそれ以上にない。
仮に今人形たちの螺子を巻いてしまえば、エンジュは必ずそれらに感情移入してしまうに違いない。
もう嫌だった。愛する子供たちが、傷つき悲しむ姿を見るのは。
だからエンジュは相談した。彼はエンジュが最も信頼している人物であり、最も頼れる男であった。
彼なら欲に負け、人形を売り払ってしまうことなどありえない。四体の人形を養っていける経済力もある。
これを無責任で身勝手だと考えることが出来るほど、今のエンジュは強くはなかった。
任せたのだから、最後まで彼に任せればよかったものを、エンジュは最後の最後で余計な出しゃばりをした。
エンジュは、人形の螺子を巻くことは自分がやりたいと頼んだ。生きた人形が動くその瞬間を近くで見たいと思ったからだ。
エンジュはかつて、その瞬間を二度経験しているが、しかしそう思うのは無理もないことだった。
あの時螺子を巻いたのはローゼンであったし、アリスが動くところは見ることが出来なかったからである。
そうして真紅の螺子を巻いたエンジュは、包み込むよな優しさで、真紅を再び椅子に戻して、言う。
「すまない」
その様子を、水銀燈に見られているとも知らず、優しく、優しく笑い、去っていった。その手に、薔薇乙女の設計図を持ちながら。
49愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:03:37.66 ID:NXY6ZkH+0
特別編が水銀燈メインと聞いて、それならこの話を特別編に〜みたいな妄想で書いた
だから次からはこれから数年後の話に飛びます
50愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:04:13.18 ID:ml+9QKP90
ガンガレ!
51愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:06:44.08 ID:UQZi+B4R0
雛はハーフか!!
雪はどっちの作品だ?
52愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:10:00.30 ID:NXY6ZkH+0
では続きを

「あ、真紅ぅー!」
幼い子供の声が響いた。nのフィールドと呼ばれる場所である。
そこは無という言葉が相応しい、まさに何一つ無い場所であった。
「雛苺」
驚いたような声を上げた者がいる。先ほどの幼さを感じさせる声とは別で、気品のある声だ。
「ここは一体なんなの、雛苺」
雛苺と呼ばれた少女は首を横に振り、聞き返す。
「真紅はどうしてここに?」
「鏡を見ていたら、急に波紋が広がって。おかしいと思って鏡に触れたら、この世界に入ってしまったのだわ。」
「真紅、迷子なの?」
違うわよ、と言い、あなたはどうなの?と付け加えた。違うと言ったが、出口がわからないのは事実なので、これはただの強がりだ。
「ヒナも最初はよくわからないうちにこの世界に来ちゃったんだけど、ここも楽しいのよ?空も飛べるし、いろんな世界があるの!」
この世界を見て楽しいという感想を持ったものは、おそらく姉妹の中で雛苺のみであろう。楽天的である意味羨ましいわ、と真紅。
その刹那、真紅の表情が険しくなった。今までに感じたことの無い、絶望的な感覚に襲われた。
そして一瞬、眩暈のような感覚に襲われ、何故かはわからないがずいぶんと長い間気を失っていたような気さえした。
「だれ?」
目線の先に、一人の男が立っていた。いつからそこにいたのかわからない。少なくとも最初からいたのではないことは確かだ。
その男は実に奇妙な格好をしている。タキシードにシルクハット、というだけで少しおかしいが、それでも整った身なりをしている。
そんなことはどうでも良かった。兎なのだ。仮面を被っているわけではない。体がどうなっているのかはわからないが、顔そのものが兎なのだ。
「ラプラスの魔、とでも名乗っておきましょうか」
ローゼンである。そして彼は、真紅と雛苺に絶望的な運命を告げる。すなわち、アリスゲームの始まりを。

53愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:11:59.88 ID:NXY6ZkH+0
ローゼンは、雛苺のことを知ってるわけではない。雛苺を完成させたのはエンジュだからである。
しかしローゼンにとってそんなことはどうでも良かった。アリスの事件以来、少しずつ狂っていったローゼンは、
エンジュに頭を叩き割られてから完全に狂ってしまったようだ。
ローゼンにとって雛苺の存在は、五体が六体に増えた、ただそれだけであった。
いや、自分の言葉で壊れていく愛らしいモノが一つ増えたということが、今のローゼンを喜びに震え上がらせたかもしれない。
「真紅、さっきの話」
そう言ったのは雛苺である。このあどけない少女が、兎の言葉にどのような感情を抱いたか。
「気にすることはないわ」
そう言った真紅自身も、実のところ動揺している。彼女はローゼン、いや彼女たちの言葉で言えばお父様、
つまりはエンジュのことだが、彼を知らないわけではなかった。言葉を交わしたこともなければ、
その顔をしっかりと見たこともないが、初めて螺子を巻かれたときに感じた形容しがたい包容力を忘れることは出来なかった。
ラプラスの魔の近くにいたときに感じた、そこにいるだけで吐き気がするような不思議な感覚とは
まるで正反対の安心感がエンジュにはあった。
何の根拠も無いが、しかし真紅は彼こそ私たちを作りしローゼンに違いないと確信していた。
真紅だけではない。ここにいる雛苺も、真紅の姉である双子の人形も真紅と同じ感想を述べていた。
アリスになるために戦うと言えば、あるいは綺麗に聞こえるかもしれない。だが、つまりは姉妹で殺しあうのだ。
その戦慄すべし意味を、この時点で真紅は理解していなかった。
お父様が言うことであれば、きっと正しいことである。そう思ってしまっていた。

54愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:16:23.11 ID:NXY6ZkH+0
ローゼンがアリスゲームを伝えたのは、もちろん真紅と雛苺だけにではない。
薔薇乙女が生命の欠片を持つ物に近付いたときにnのフィールドに導き、そしてあまりに無惨な宣告を人形たちに伝えるのである。
アリスゲームについての人形たちの想いは次のとおりである。
第四ドールである蒼星石は、最初はなんてことをと思ったが、やはり真紅と同じで、お父様が仰ったことなのだから正しいに違いないと思った。
第三ドールの翠星石は、それが私たちの運命なのかと受け入れる心もあったが、たとえお父様の望みでも、
蒼星石と争うことなどできるはずが無いという意思はこの頃からすでにあった。
第一ドールの水銀燈。この話を聞いたとき、彼女はある決心をした。私はアリスには届かなかった。
しかしお父様はアリスの存在を望んでいる。姉妹を全て倒せばアリスになれるとラプラスは言った。
ならば私が全ての姉妹を倒し、お父様に認めてもらえばいいのだ。
そして、見返してあげる。お父様がアリスを求めているということは、真紅はアリスに届かなかったということだ。
だが、私以上にアリスに近いのは確かだ。
だから、おそらく私以上にお父様に愛された真紅を見返してあげる。
そのためには、過去を完全に断ち切る決心をしなければならない。
金糸雀さえも壊してしまう強い決意を抱かなければならない。
そして、最も絶望したのは金糸雀であった。水銀燈に謝らなければいけないと思っているのに、なぜ戦わなければならないのか。
お父様の優しさを、温かさを充分に味わった金糸雀だからこそ、お父様が望んでいるのだというアリスゲームは耐えられないものであった。
55愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:18:38.05 ID:NXY6ZkH+0
それからしばらくの月日が流れた。青く澄み切った空には雲ひとつ無い。
深緑の道を歩いていると聞こえてくる鳥の声、川のせせらぎは、聞く者を心地よい安らぎに誘う。
何の変哲も無い家に住む女性と一緒に暮らしているのは金糸雀だ。その女性というのは、ピチカートが選んだミーディアムである。
明日はその女性の誕生日であった。いつも世話を焼いてもらっているので恩返しがしたいと思っていた金糸雀は、
数日前に、年に一度その人が生まれた月日に祝う、誕生日というものがあることを知った。
そしてミーディアムの誕生日がもうすぐそこに迫っているということも知り、これを利用しない手は無いと考えた。
流石に店に入って商品を買うのは不可能なので、以前どこかで耳にして興味を持った秋の七草を集めようとした。
外出することは禁止されているが、これもミーディアムが喜ぶ顔を見たいがためだ。
金糸雀はこれまでに集めてきた七草をほくそえみながら眺め、後は撫子だけね、と呟いた。
ミーディアムの留守中にこっそり外に出た金糸雀は、以前からチェックしていた場所を虱潰しに探そうと意気込んだ。
翠緑の森を走り回ったり、美しい花が宝石のように咲く花壇を眺めたり、時には靴を脱ぎ、川に足を入れて休憩したりもした。
「さて、次はカナとっとーきの場所に行くかしら!」
七草を探しにきたのか遠足をしているのかよくわからない発言をした。
とっておきの場所があるなら最初からそこに行けばいいのだが、
金糸雀に言わせればお楽しみを最後にとっておくのは常識らしい。
と、そこに一人の男が現れた。その男を見た金糸雀は目を疑った。
何かの間違いと思い、目をこする余裕すらなかった。
「お父様」
そこにいたのは、まさしくエンジュその人であった。これは天が望んだ偶然であった。
「金糸雀…よかった、無事で」
そう言って、微笑もうとしたエンジュの顔が凍りついた。金糸雀の完全なる拒絶の表情を見たからである。
56愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:21:49.61 ID:NXY6ZkH+0
しかし金糸雀は、エンジュにどうしても聞きたいことがあった。アリスゲームのことではない。水銀燈に欠陥がある理由である。
どういった経緯でかは知らないが、金糸雀は水銀燈の腹部についてのことを知ってしまったらしい。
一つだけ聞きたいことがあるかしら、と言いそのことを聞くと、エンジュは水銀燈より前にもう一体人形がいて、
その人形に全てのローザミスティカを入れたら崩れてしまったのでその反省を活かし、水銀燈にはローザミスティカの欠片をいれたのだが、
それでもまだ大きすぎて、腹だけが崩れてしまったと話した。
この水銀燈より前にもう一体いるという話を、おそらく雛苺にでもしたのであろう。それが姉妹の間に広がり、
薔薇乙女は七体いるという認識になってしまったようだ。これが、存在は知っているが誰も見たことのない七体目の正体である。
金糸雀は自分が薔薇乙女の第二ドールであることを知っている。自分の前に作られたのが水銀燈なので水銀燈は第一ドールで、
その後に作られた双子が第三ドールと第四ドールであり、第五ドールが真紅なので、雛苺はその後くらいに作られたのではないかと言ったのであろう。
金糸雀はエンジュに、水銀燈より前にもう一体と聞いたが、妹たちは金糸雀の話を聞き、ならば七体目は第七ドールであろうと思ったに違いない。
「それで、水銀燈はどうした?仲良くやっているか?」
この言葉に、金糸雀は絶望した。アリスゲームという残酷な運命を私たちに強いたくせに、
よくもいけしゃあしゃあとそんなことを言えるものだと思った。
「何よ…。私たちに、殺し合えって言ったくせに!」
「何を…言ってるんだ?」
「兎が言っていたわ!アリスになるために、姉妹で戦えって!それをお父様は望んでいるって!
あの兎はお父様の知り合いなんでしょ!もうみんなに言ったんでしょう。あの翠星石や雛苺でさえ、アリスゲームのことを気にしていたもの!」
兎の知り合いなどいない。だがこの言葉で大体の予想は付いた。つまり、兎とはローゼンが化けた姿だ。しかし。
ローゼンは生きているのか、という当然の疑問に襲われた。幼い頃からローゼンには、価値観を変えてしまうことさえ平気で見せ付けられてきた。
だからエンジュは彼に関する限り、大抵のことが起きても驚かなくなったと自負していた。
しかし、さしものエンジュも全身に鳥肌が立つのを禁じ得なかった。
あの時、確かにローゼンは死んでいた。心臓も動いていなかったし、脈も止まっていた。
試しに目を触ってみたが、反応は無かった。それでもなおローゼンが生きているというのなら、
死んでいなかったというより、生き返ったと言ったほうが納得できる。
常人ならば納得できないことであるが、これで納得してしまうところがエンジュの凄さであった。いや、これはローゼンの凄さと言うべきか。
「金糸雀、それは」
「嫌、いやいや、もう何も聞きたくないわ!」
そう言ったのを最後に、金糸雀は勢いよく駆けていった。
その影が次第に小さくなり、消えてしまってもなお、エンジュは金糸雀の背中のあった方角をいつまでも眺め続けていた。
57愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:25:15.78 ID:NXY6ZkH+0
つまり、ローゼンは私と離れ離れになってから、兎の姿になり、人形たちに言ったのだ。
姉妹で戦い壊し合えと。全てのローザミスティカを手に入れたら、完璧な少女であるアリスになれると。
このままでは薔薇乙女は姉妹で争い続け、壊れてしまう。そんな馬鹿げた争いは止めなくてはならない。しかしどうすればいい。
アリスゲームの話は、他の姉妹にも伝わっているらしい。中にはその気になってしまっている人形もいるはずだ。
私が今更アリスゲームは嘘だと言っても、彼女たちが聞いてくれるかどうかわからない。実際、金糸雀は聞く耳を持ってくれなかったではないか。
なら、アリスゲームの悲しさを教えればいいのだ。自分の行っている行為がいかに愚かなことかを気付かせればいいのだ。
始めからこのことを予測していたわけではないが、エンジュは薔薇乙女の設計図とローザミスティカを持っていた。
彼も人形師である。生きた人形を作るという奇跡を味わいたいと思っても不思議ではない。
彼は一度雛苺を完成させているが、それでも雛苺はローゼンがすでに基盤を完成させていたものであり、
オリジナルの人形を作りたいと思うのも当然であった。だが、今回は自らの欲求を満たすために薔薇乙女を作るのではない。
人形たちを、愛すべき子供たちを助けるために作るのだ。
エンジュはこれから作る人形、すなわち薔薇水晶を使って何をしようとしているのか。
もちろん意図してのことではないが、金糸雀はエンジュに重要なことを教えてくれた。アリスゲームの始まりもさることながら、
雛苺もアリスゲームを行う姉妹の一人だということをである。私の作った雛苺がアリスゲームに参加している理由はわからないが、
これから私が作る人形を妹だと偽ってアリスゲームに参加させることも不可能ではない、とエンジュは思った。
そしてアリスゲームに加わった薔薇水晶が六体の人形を全て壊すのだ。全て壊さなければならない。
壊れた人形を直すためにも、途中で薔薇水晶が倒されてはならないのだ。
だから薔薇水晶は戦闘機能を重視し、他の人形よりも強くなるように作られた。
さらに、この子は他の、姉妹ではないが人間で言うところの同級生、正確には作られた年にかなりの差があるのでそうではないが、
見た目や性格が同年代のように感じる子達を壊すために作られるのだ。感情が無いほうがいい。
喜怒哀楽が極端に欠落している人形になったのはそのためである。
薔薇水晶が全ての人形を壊し、私がそれを直すだけでは駄目だ。最後にしなければならないことがある。
エンジュは、自分を殺してまで薔薇乙女を救う覚悟を決めた。それが吉と出るか、あるいは無か。

58愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:26:58.91 ID:NXY6ZkH+0
それからしばらくして、エンジュの元に一人の男が尋ねてきた。
白崎と名乗るその男は、エンジュの作っている人形に興味を示し、ドールショップを開かないかと提案してきた。
準備や開いた後のことは全て自分がやるので、エンジュは人形を作っていればいいと言われ、すこし妙だとは思ったが、
しかしこの男には不思議な安心感がある、根拠は無いが信頼できると思ってしまったのは皮肉であった。
その安心感と条件の良さから、エンジュはそれを承諾した。
開かれたドールショップで黙々と人形を作り続けるエンジュに、白崎は何も言わない。
ただその虚ろな瞳で、彼を眺めるだけであった。

59愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:29:19.36 ID:NXY6ZkH+0
「できた…」
呟いて、薔薇水晶の体にローザミスティカの欠片をあてる。するとそれは、吸い込まれるようにして彼女の体内へと入っていく。
螺子を回し意識が芽生えた薔薇水晶に、己が作られた理由を全て話し、最後に、このことは誰にも言っては駄目だと伝える。
その時、店のドアを開ける音がし、その後すぐに閉める音がした。おそらく白崎が商品の買出しから帰ってきたのであろう。
エンジュは気にせずに話を続けた。ここから先の話は、万一白崎に盗み聞きをされていたとしてもいくらでも誤魔化せるからだ。
すなわちそれは、こういった計画を立てたはいいが、薔薇乙女がどこにいるか今の段階では皆目見当が付かないということであった。
間抜けな話に思えるかもしれないが、しかしエンジュにも考えはあった。金糸雀は少なくとも翠星石と雛苺には出会っている。
翠星石と雛苺は、蒼星石、真紅と共に同じ場所で生活していたが、金糸雀はそうではない。
その金糸雀が翠星石と雛苺に出会ったことを、エンジュは偶然とは考えなかった。
薔薇乙女の中に入っているローザミスティカの欠片は、元は一つのものであった。
それが共鳴し、少女たちを、少女たちの中にある欠片を一箇所に導いているのだ。
それくらいの力がローザミスティカにあっても不思議とは思わなかった。
「薔薇乙女を探そう、薔薇水晶」
そう言ったとき、店とエンジュが人形を作っている部屋を隔てている布の向こうで、白崎の声が聞こえた。驚愕すべきその言葉に耳を疑う。
「薔薇乙女の居場所が知りたいのですか?それなら私が教えてあげましょう」
そう言って、エンジュの部屋に入ってきた白崎を見て、言う。
「何故、お前が知っている」
「知っているに決まってるでしょう。…自分の子供のことを知っていて何が不思議なんだ、エンジュ」
「…………ローゼン!」
大不覚であった。二千年の時を共に過ごした男に気が付かなかったのは、姿が違うのもその理由のひとつであるが、
かつてのローゼンからは考えられないほど流暢な言葉遣いのせいだ。そうなった原因がまさにエンジュのせいであるのは皮肉な話であるが。
60愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:33:55.50 ID:NXY6ZkH+0
「私を追い出すか、エンジュ」
さすがのローゼンも、エンジュに殺された、殺されたというに相応しい状態にされたので、
エンジュに自分がどう思われているのかは理解していた。にもかかわらず、
かつてエンジュと共に過ごしていた頃の理性が僅かながらにも残っていたのか、
自分がローゼンであると知らせた理由は、エンジュがどういった反応をするか見るため、
あるいは姿は違えど自分がローゼンであると気付いていたと言ってほしかったためか。
しかしそんな想いも、エンジュの失意に満ちた顔を見たら消えうせてしまった。
だから、追い出されてしまうと思った彼は少し挑発気味に言ったのだ。
「私なら、薔薇乙女に関して知ることは沢山ある。それでも私を追い出すか、エンジュ」
何を考えている、とエンジュは思う。少なくともローゼンの話を聞く限り、自分の計画を見透かされてはいないだろう。
全てを知った上で、それを止めるために私に近付くという可能性も考えられるが、おそらくそれはない。
ローゼンならば、今すぐ薔薇水晶を壊し、私を殺めるであろう。彼に他人の命を奪う勇気があるかどうかは知らないが、
少なくとも私に遠慮はない。かつて殺すつもりでローゼンの頭をかち割ったことのある私を殺すことに何のためらいも無いだろう。
そんなことを考えていると、ローゼンはエンジュが悩んでいるとみたのか、自分の知っている情報を次々と喋りだした。
薔薇乙女はアリスを目指しながら姉妹で争っているというエンジュも知っている情報から始まり、人形たちは、
何故かはわからないが存在していると思っている七体目の目覚めが全ての人形の目覚めであり、
それはアリスゲームを始めよというお父様の意志だと考えていることを話し、それに加えて言う。
おそらくその理由は、存在していないのだから当たり前だが、時が経ってもその姿を誰も見たことが無い七体目について不思議に思い、
薔薇乙女の一人が、その七体目が目覚めたらアリスゲームは始まるのではないかと推理して、それが広まったのではないかと言った。
もしくは戦いを否定している薔薇乙女が、アリスゲームが永遠に始まらないように、
本当は七体目がいてその薔薇乙女が目覚めたらアリスゲームが始まると兎に聞いた、
というようなことを言ったのかもしれないという説明をしたが、これは間違いである。
「つまり、そこにいる薔薇水晶が第七ドールだと偽り、薔薇乙女に近付くこともできるということだ」
これはエンジュの計画を見透かして言ったことではない。
彼はエンジュがアリスゲームを食い止めようとしてるなどとは微塵も考えていなかったのだ。
つまり、自らの計画のためにエンジュを使おうと思っているだけなのであった。
そして最後にローゼンの言った言葉に、エンジュは何を思ったか。
すなわち、水銀燈が真紅によってジャンクにされたということである。
そのことを話すローゼンの瞳に、喜びの炎が燃え滾ったことにエンジュが気付いたか、どうか。
61愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:37:13.52 ID:NXY6ZkH+0
エンジュはローゼンと今まで通りの関係でいることに躊躇いはあったが、彼のもたらした情報、
そして彼がこれからもたらすであろう情報の大きさに惹かれ、彼を追い出すことは無かった。
しかし、ローゼンが何を考えているのかは、相変わらずわからないままだ。
ローゼンは自らの計画を実行するためにエンジュを使っていると書いたが、
その計画は実に戦慄するものであり、またアリスゲーム以上に馬鹿げたものであった。
彼はエンジュと分かれた後、あることをふと思った。そしてアリスゲームを伝えるために薔薇乙女の前に姿を現した際に、
そのことを伝える前に人形を眠らせ、ある機能を追加した。ミーディアムである。
薔薇乙女たちには、ミーディアムは戦うための媒介と伝えたが、そうではない。
ミーディアムの本当の意味は、人形だけでに飽き足らず、自分のせいで衰え、死にゆく人間がみたくなったという、
常人には理解できないあまりに馬鹿げたものであった。
だが健康な人間では、人形の力だけでは衰退する可能性はあるが、死に至ることはないであろう。しかし人が永眠するところも見たい。
それに加え、美しい人間が衰え追い詰められていくさまを見てみたい。
だからこそミーディアムに選ばれる人間は、ローゼンが好む美しい人間や、いつ死んでもおかしくない精神的に病んだ者ばかりが選ばれた。
この思いをさらに強くさせたのが、水銀燈の死であった。
彼は真紅が水銀燈を壊しているところを目撃していたのである。命を持つ美しい人形が炎上しているさまを見て、
それが自ら生み出した人形であるにもかかわらず震え上がった。
だから彼は、ミーディアムの衰退、もしくは死を見るために積極的に動き出したのである。
その最初の標的が、今おそらくアリスゲームの最も近くにいると思われる、桜田ジュンであった。
実はローゼンがエンジュに出会ったのは、ただの偶然なのである。
その時エンジュが生きた人形を作っていることを知り、エンジュが何を考えているのかは知らず、これを利用しようと考えた。
薔薇乙女たちは、七体目が存在しているのだと思い、その七体目が現れない限り本当のアリスゲームは始まらないと思っているようだ。
水銀燈のように好戦的なドールばかりなら問題は無いが、戦いを否定している薔薇乙女がいるのは確かだ。
いや、それどころか、ほとんどのドールが戦いを否定しているようにさえ感じる。真紅と雛苺、翠星石と蒼星石は、
私が戦えと言ったのにもかかわらず、みなで平和に生活していることを知っているからだ。
七体目のことを聞いたときに、そんな人形はいないと言わなかったのは不覚であった。
今言おうと思っても、なかなかそのきっかけが見つからない。そんなことを思っていたら、
生きた人形を作っているエンジュに出会ったのだ。この人形を七体目ということにすればうまくいくのではないかと考えたローゼンは、
再びエンジュと共に生活することを選んだのであった。
62愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:40:52.30 ID:NXY6ZkH+0
ローゼンが何を考えているのかはわからない。しかし、私の計画に気付いていないのならば、利用するまでだ。
エンジュは白崎、つまりローゼンの留守を狙い、薔薇水晶に話した。
あの男は、最初に話したローゼンという男で、訳あって一緒に生活することになった。
ローゼンは私たちの計画に気付いておらず、また、あの男にも何か計画があるらしいから、
その計画を手伝っていると見せかけて上手く利用してやるんだ、と。ローゼンについては、今はこのくらいでいいだろう。
だが、ローゼンが言った言葉で一つ気になることがあった。
もちろん、水銀燈の死である。真紅に倒されたと言ったが、あの美しい人形がそこまでアリスゲームに対して積極的であったのかと思った。
まさかその戦いを仕掛けたのが水銀燈であるとは知る由も無く、想像さえしなかった。
そしてエンジュは、水銀燈を直すのは、薔薇水晶が壊した、正確には壊す予定の人形を直すときでよいと考えた。
そんなことを考えていると、ローゼンが店に入ってくる音が聞こえた。そして、まるでエンジュの考えを聞いていたかのように言う。
偶然に過ぎないが、これもローゼンの恐ろしさの一つであった。
「今すぐ水銀燈を直す」
本当に、何を考えているのかわからないとエンジュは思う。しかしここでようやく彼はローゼンの話を思い出した。
七体目の目覚めが全ての人形の目覚め。それはアリスゲームを始めよというお父様の合図。
つまり全ての人形が目覚めなければ、アリスゲームは始まらないのである。
ローゼンの考えていることは、アリスゲームの開始だと、この時点で初めて気付く。
七体目を作ろうと考えている最中に私に出会い、薔薇水晶を七体目として利用しようと考えたに違いないと確信する。
考えてみれば、簡単なことであった。ただ、全ての人形が目覚めなければ
アリスゲームが始まらないということに気付けなかった私が愚かだっただけで。
しかしエンジュでも、上に書いた戦慄すべき計画には、おそらく永遠に気付かない。

63愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:44:06.71 ID:NXY6ZkH+0
「水銀燈のローザミスティカはある。これさえあれば修復は簡単だ」
真紅が何故ローザミスティカを奪わなかったのか二人にはわからないが、しかし僥倖であった。
もしローザミスティカが無ければ面倒なことになる。ローゼンが一からローザミスティカを作ることも出来るであろうが、
それにはどれほど膨大な時間がかかるかわからない。仮にローザミスティカが作れたとして、いかなローゼンであろうと、
水銀燈の体内に入っていた欠片と全く同じ形、性質の物が出来るとは思えない。つまり一からローザミスティカを作っていたら、
性格が変わってしまうことは免れないのである。
水銀燈を作るローゼンを見て、エンジュはやはりどうやっても適わないと思った。
ローゼンが真紅を作ってから実に百年以上の月日が経過している。
水銀燈は、天照さえ嫉妬する大天使になるかもしれないとさえ思った。
水銀燈の豹変を知らないエンジュであった。
完成した水銀燈の美しさに、作ったローゼンでさえ少し見惚れた。
「これなら、この欠片を入れても壊れることは無いだろう」
生まれ変わった水銀燈に、奇妙な空間はもはやなかった。
その後水銀燈を鞄に入れ、薔薇水晶が教会に持っていった話はするまでもない。
64愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:47:25.51 ID:NXY6ZkH+0
目的が正反対の二人の計画は順調に進んでいく。ローゼンの計画を食い止めることがエンジュの計画なので、
二つの計画が同時に、順調に進むというのはおかしな話しだが、
少なくとも二人はそれぞれの計画が順調に進んでいると思っていた。
そのうち何を思っての行動かと、エンジュが不思議に思うことをローゼンは始めた。店にやたらとある男を呼ぶのである。
呼ぶどころか人形について熱く語ったり、エンジュが人形を作っているところを見学させるということまでやった。
桜田ジュンである。ローゼンが最初の標的と決めた男であるが、しかしどうやって彼を導くか迷っていた。
ローゼンの目的は、nのフィールドで人形たちが相戦い壊れていく様子をみることである。そして同時に、そこで人の衰退、
もしくは死を見れたら最高であると考えていた。そのためには、桜田ジュンをnのフィールドに導く必要がある。
だから、彼が今どのような状態であるかは知らないが、
アリスゲームに興味を持たせればよいのだ。つまり、人形に今以上に興味を持たせるのだ。
そんなことを考えているときに、最近この店によくやってくる少女が、桜田ジュンを連れてきたのはまさに幸運であった。
この男は天さえ味方につける能力でもあるのかもしれない。
それをきっかけに、ローゼンは彼を見たらほとんどと言っても良いほど店に誘うようになった。
一方薔薇水晶は、水銀燈に接触し、エンジュに言われたとおりのことを、
つまりアリスゲームのためにお父様があなたを復活させたということを伝え、少しだが戦闘もした。
話とは違う予想外の強さに、彼女は戦慄し、そして喜びに震えた。
だから彼女は、エンジュの予期しないことを言ってしまう。
水銀燈と本気で戦ってみたい。そう思った彼女は、水銀燈のやる気を強めるために、
ミーディアムの病気は完全なローザミスティカがあれば治ると水銀燈に伝えた。
これは完全なる独断の行動だ。エンジュの得することではない。
それどころか、ローゼンの利することであるが、そこまで考えて行動している薔薇水晶ではなかった。
いや、薔薇水晶からしてみれば、お父様、つまりエンジュが言った、
ローゼンの計画を手伝っていると見せかけて、の見せかけてというのがこれだという言い訳は用意していた。
実際に、薔薇水晶のこういった、エンジュが想定していなかった行動が、
エンジュは自分に協力しているんだとローゼンに思わせている原因になっているという事実はあるにはあった。
65愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:48:31.59 ID:NXY6ZkH+0
ローゼンは薔薇水晶に、ある計画を持ち出した。仲良し姉妹に戦う気を起こさせると彼は言った。
ローゼンは今まで薔薇乙女たちに何度か接触し、様子を伺った。そして、彼女たちを見ていて気付いたことがあった。
蒼星石のことである。一つ屋根の下で仲睦まじく暮らす姉妹のうち、蒼星石だけは戦う気があると、
薔薇乙女たちの会話や微妙な表情の変化で気付いたのである。かつてのローゼンでは考えられないことであるが、
これもエンジュに頭を叩き割られたのが原因であろう。
この蒼星石を徹底的に煽り、姉妹たちの間に亀裂を生じさせる。それが今回のローゼンの計画であった。
ローゼンの計画の手助けをしていると思わせるためにも、薔薇水晶はこれを断ることが出来ず、静かにうなずくだけであった。
ここに薔薇水晶とローゼンという、奇妙な組み合わせの連携が生まれた。
66愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:50:23.26 ID:NXY6ZkH+0
それから数日後、エンジュは薔薇水晶とローゼンから、蒼星石が水銀燈にローザミスティカを奪われ、
さらには雛苺も動かなくなったということを聞いた。
雛苺をとめたのはローゼンである。ローゼンは、戦いに最も消極的で、姉たちに愛されており、
何よりエンジュが完成させた雛苺を良くは思っていなかった。それに加え、一度は真紅に倒されたというのに、
平気な顔をして生き永らえていることがローゼンを怒らせた。
始めはそのうち他の薔薇乙女に倒されるだろうと思っていたが、
薔薇乙女の大半が戦いを否定していることを知り、ついに耐え切れなくなったローゼンの、
蒼星石が眠りに付いた悲しみも消えぬ段階での雛苺の停止による絶望を味わせるという、まさに悪魔の計画であった。
そしてローゼンはエンジュに、今nのフィールドに真紅と翠星石、金糸雀がいることと、
その人形たちをここに導くことが出来るということを伝えた。
ならば、仕上げに入ろうとエンジュが言ったとき、店に何者かが入ってくる気配がした。桜田ジュンだ。
ローゼンは真紅たちを店の中に導く。そして部屋に置いてあった鏡に入る。
「何のため?」
と聞いた薔薇水晶に対し、意味深に笑いながら、答える
「演出のため」
本当に、何を考えているのかわからない。鏡の中に入ったローゼンは、nのフィールドを通り、店の中に再び入る。
そこに人形たちとミーディアムがいるのを見て、かすかに笑いながら話し出す。
「言ったでしょう、深き森は迷いの森と」
そう、全ては計画通り。ここまで、エンジュとローゼン双方順調にことは進んでいる。
その後、ローゼンは水銀燈をnのフィールドへと導いた。
今、この薔薇園には、水銀燈、金糸雀、翠星石、真紅、薔薇水晶、桜田ジュン、エンジュ、ローゼンが揃っている。
もう少しだ。もう少しで、上手くいく。もう少しで、全てが終わるんだ。そう思うのはエンジュである。
薔薇乙女たちの争いを、涎を垂らしそうな恍惚とした表情で見ているのはローゼンである。
67愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:52:03.15 ID:NXY6ZkH+0
そして、薔薇水晶は、圧倒的な強さで次々と薔薇乙女を倒していく。
翠星石を水晶漬けにし、金糸雀を串刺しにする。
そして水銀燈を水晶で滅多打ちにし、真紅を。
エンジュが扉を開けると、そこで目にした光景は、仰向けに転がっている薔薇水晶の上に真紅が乗り、
薔薇水晶を押さえつけながら拳を握っている姿であった。
大丈夫だ、この程度でやられるようには作っていない、とエンジュが思うのは、自信か、それとも自分を安心させるための自己暗示か。
そこにミーディアムが駆けつける。桜田ジュンに気を取られている真紅を見て、エンジュは心中安心した。
それと同時に、薔薇水晶が頭のアクセサリーをとり、真紅に突き刺す。
無惨にも動かなくなってしまった真紅の体から、ローザミスティカがするりと抜け出す。
これで、良いんだ。よくやった。薔薇水晶。
拍手をしながら薔薇水晶に近付く。そして言う。
「君の勝ちだ、薔薇水晶」
そうだ。私たちの勝ちだ。これでもう、ローゼンには勝ったも同然だ。
ローゼンはこの光景を見ながら笑っているだろう。人形たちが壊れていったと幸せそうな顔をしているだろう。
見事に欺いたんだ。天才、ローゼンを。
「僕の人形が勝ったんだ」
「これで薔薇乙女より強い人形になったのですね」
人形たちは、これから全て復活させる。そのためには、このアリスゲームが不正なものであるということを、
ミーディアムに知らせなければならない。このアリスゲームが正当なものであるならば、直す理由が無いからだ。
「誰も超えることができなかった我が師を超えた…!」
そして、全てのローザミスティカがエンジュと薔薇水晶のもとへ近付いてくる。
アリスの悲惨な運命を知っていながら、エンジュが全てのローザミスティカを薔薇水晶の体内に入ることを許したのは、挑戦か。
「ひびが、顔に…!」
全てのローザミスティカが入った薔薇水晶の体は、粉々に崩れ落ちた。
「お父様…、お父様…」
68愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:54:05.67 ID:NXY6ZkH+0
このときエンジュは、筆舌に尽くしがたい絶望を覚えた。
エンジュは、薔薇水晶に自信がないわけではなかった。
だからこそ全てのローザミスティカを体内に入れることを考えたのだ。
ローゼンの作った人形が素晴らしいものであることは認めている。
アリスを見たとき、一日中見ていても飽きないと思うほど、強い魅力を感じたのも事実だ。
しかし、それも百年以上も昔の話である。その百年の間、エンジュはただ寝ていたわけではない。
確かにローゼンが水銀燈を直したとき、彼には勝てないと思ったが、そのローゼンも、
かつてのローゼンから百年以上経過したローゼンなのである。
だからもしかしたら、かつてのアリスを超えているのではないかと思い、挑戦してみたのだとしても無理はない。
まるで消滅してしまったかのようにその場から去るエンジュ。この消滅は、
それらしく見えると思い以前から計画していた演出であった。nのフィールドなので、こういったことができても不思議ではない。
「偽りには真実の光は眩しすぎたようです」
そう言って、入ってきたのはローゼンである。偽りとはエンジュと薔薇水晶のことであり、真実とはローゼンと薔薇乙女のことである。
しかし、いかなローゼンであろうとも、今のエンジュが薔薇水晶の死を除いては芝居だったということに、気付くはずもく去っていった。
69愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:54:32.71 ID:1iyKoUrK0
なんでローゼンはミスティカを一つの人形に入れなかったのかが不思議
一つじゃ耐えられなかったのならアリスゲーム無意味だし…ラプラスが何時から居るのかも気になる
70愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:56:51.81 ID:NXY6ZkH+0
薔薇園にある宮殿のような建物の一階の部屋に、彼らはいた。エンジュと、薔薇水晶である。
正確に言えばかつて薔薇水晶だったものであるが。
「……やはりか」
やはり、粉々になってしまったか。という意味ではない。あるいは、こうなってしまうことも考えていた。
本当のことを言うと、こうなってしまったときに絶望するのが嫌だからこそ、
感情をなくしたのである。それが一番の理由なのである。なのに。
こんなにも悲しいなんて。こんなにも、胸が痛むなんて。金糸雀のように愛らしい仕草を見せるわけでもない。
水銀燈のように天使のような安心感があるわけでもない。
しかしただ、私のためにと、私の言うことを素直に聞いてくれる直向きな彼女を、愛していたのだ。
「これで、よかったんだ」
なにが、よかったのか。
「運命だったんだ」
どんな運命だったのか。
「始めから、こうなる運命だったんだ」
それは、唯の自己暗示であった。言うことと思うことが正反対であり、心が壊れてしまいそうになる。
そうだ、ローザミスティカはまだある。もう一度、作り直そう。
しかしアリスゲームは不正であると、薔薇水晶は偽者であると言ってしまった。薔薇水晶を直す理由はない。
二人で唯ひっそりと暮らすのもいいが、薔薇水晶だって本当は、友達がいたほうがいい。
薔薇乙女のように姉妹で仲良く、平和に暮らしたいに決まっている。
だったら、同じローザミスティカで、違う人形を作ればよいのだ。
本物の第七ドールとして、新しい薔薇水晶を作ればよいのだ。
だが、その前にやることがある。人形たちを直すために、壊れた薔薇乙女を回収しなければならない。
真紅がいる広間には、まだミーディアムが何かを言っているようだ。
待つのも面倒くさいので、自分があたかもローゼンであるかのようにあの少年の前に現れ、人形を直すと言えばいい。

71愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:58:31.26 ID:NXY6ZkH+0
椅子の上に、真紅、金糸雀、翠星石、水銀燈が並べられた。蒼星石と雛苺は見当たらなかったが、それも道理であるとエンジュは思った。
ここに来る前に、ローゼンや薔薇水晶から、二人はすでに動かなくなったと聞いたではないか。
雛苺や薔薇水晶を完成させた彼にとって、少し壊れた薔薇乙女を治すなど、造作もないことであった。
そしてまず、真紅の螺子を巻き、言う。アリスゲームなど、無意味だからしてはいけないと単刀直入に言えば、彼女たちの百数十年間を否定することになる。
「もう一度、アリスを目指しなさい。でも、アリスゲームだけがアリスになる方法じゃない。他に道はある」
今回のことで、アリスゲームがどれほど悲惨なものであるか、理解してくれたと思っている。
だから、アリスゲームだけがアリスになる方法じゃないといえば、必ずアリスゲーム以外の方法を探してくれると思った。そして続ける。
「君はこれから背負わなければいけないことがある。それを、解決しなさい」
つまりそれは、水銀燈との関係であった。エンジュは、ローゼンに蒼星石が動かなくなったということを聞いたとき、同時に水銀燈の豹変についても知った。
知らなかったのかと笑うローゼンは、他にも水銀燈は特に真紅を嫌っているという話しをした。姉妹で憎みあっていては、必ず次なる争いが起きる。
だからこそ、水銀燈との仲を解決しなさいと言ったのであった。
しかし真紅は、蒼星石と雛苺が止まってしまってから、水銀燈をジャンクにしてしまったことが原因だが、頭の中は動かなくなった姉妹のことでいっぱいであったのだ。
薔薇水晶に倒されてから、何故かはわからないが別の部屋で椅子に座らされていることを知った真紅は辺りを見回し、
そこに金糸雀と翠星石、水銀燈はいたが、蒼星石と雛苺がいないことにすぐに気が付いた。
そこでちょうどお父様を見たので、真紅はこう思った。私たちを直してくれたのはお父様だと。
しかし薔薇水晶に倒されていない蒼星石と雛苺は、直してくれなかったのだと。
その後エンジュは、金糸雀と翠星石にはアリスゲームのほかに道はあるということだけを、水銀燈には、真紅と同じ内容を伝えた。
72愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:00:45.67 ID:NXY6ZkH+0
「できた…」
薔薇水晶が完成したときと、全く同じ言葉を言う。ドールショップの中である。
薔薇水晶と同じローザミスティカを人形の体内に入れ、静かに言う。
「久しぶり。お前は雪華綺晶と名乗り、薔薇乙女たちと仲良く暮らすんだ。そのほうが、いいだろう?」
彼女の片目からあふれた涙をやさしき拭き取り、泣き出したくなる衝動を必死に押さえながら言う。
「それで、蒼星石と雛苺の体がどこにあるかを聞いてほしいんだ。できたら、直せる人を知っているといって持ってきてくれると嬉しい」
こくん、と深くうなずき、薔薇水晶、いや、雪華綺晶はnのフィールドへ入っていく。
その瞬間、雪華綺晶が入っていった鏡が光った。まさかもう用事が済んだわけはないから、なにか言い忘れたことでもあったのか、などと思う暇はなかった。
鏡から出てくる予想以上に巨大な影を見て、エンジュは失望した。
ローゼンである。兎の姿をした彼は、エンジュに近付き、勢いよく彼の肩を鷲掴みにした。その痛みに耐えることが出来なくなり、
凄惨な叫びを上げるエンジュを助ける者はいない。
ローゼンは、薔薇園でミーディアムの衰退を見れず絶望した。しかし、薔薇乙女が破壊されていくさまを見ることが出来た。
その快感を忘れぬうちに、次なる玩具を見つけるためにnのフィールドを彷徨っていた彼は、当然のように動いている真紅と翠星石を見たのである。
壊れたのではなかったのかと訊くと、お父様が直してくださったのだと言う。私は当然直した覚えはない。ならば、エンジュしかいないではないか。
そう思ったローゼンは、急ぎドールショップへと向かったのである。
「どういうことだ、エンジュ」
「全ては、計画通りだ。ローゼン、お前は私に欺かれたのだ!薔薇乙女たちを破壊するなどという馬鹿げたことを、私が許すと思うか、
私が協力していると本気で思ったのか。だとしたら、お前は本当に馬鹿な男だ。私に頭を割られたせいで脳味噌がいかれてしまったようだ。
残念だったなローゼン、もう薔薇乙女たちはお前の思い通りにはならない。アリスゲームなどという下らない事はやめるように私が言ったからだ。
お前の計画はここに完全に費えた!私の勝ちだ、ローゼン!」
肩を掴んでいたローゼンの手が、完全に閉じた。鎖骨と肩甲骨を完全に砕いたのである。
さらに、もう片方の手を刃のように鋭く開き、エンジュの体を串刺しにした。二メートルの巨体が、その場に虚しくくずおれる。
これが、二千年という長き時を共に過ごした兄弟の末路であった。
机においてある二つのローザミスティカの欠片を手に取り、再びnのフィールドに戻っていったローゼンは、口を耳まで裂いて笑っていた。
73愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:01:26.59 ID:NXY6ZkH+0
「あれから五二六回の失敗を経て、またも侵入のチャンスが巡ってきたかしらー!」
桜田家には正面から堂々と入れる間柄になったにもかかわらず、まだこんなことをしている金糸雀であった。
これを聞く者はピチカートだけであるが、これに呆れもせずに付き合っているところを見ると、この二人はベストコンビであると言えよう。
双眼鏡で中の様子を覗いてみれば、そこには相変わらずの光景が広がっている。
「くんくん!その女は!!」
いつものようにくんくん探偵を見ているのは真紅一人である。ソファーの上の真紅の隣には、ただくんくん人形が置いてあるだけであった。
「さ、さりげなぁーい気遣いが大事なのですよ。そういう気遣いを少しづく続けていくことで、そうですぅ、ジュンは翠星石に従順な犬となるですぅ!」
「姉ちゃん、醤油とって」
ここぞとばかりに近くにあるものを順に差し出してかける。翠星石のほうが早いですぅ、これからは翠星石に頼むですぅ、と言わんばかりの表情だ。
「うわ、なにすんだ!それは墨汁だ!」
「へ!?や、やっちまったですぅ」
「全く、とんでもない性悪人形だな」
どうやらこれを悪戯でやったと勘違いしたらしい。その言葉に、いつものように翠星石は反撃する。
「ふざけるなですぅ!」
「違うわくんくん、私にはわかるわ!その女は愛がほしいだけなのよ!」
「そうですぅ、愛がほしいだけ…ってそれこそふざけるなですぅ!」
どん、と机を叩き、ジュンを蹴り飛ばして部屋を出て行く翠星石に、真紅は全く気付いていなかった。
「なんなんだ、一体」
74愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:02:55.05 ID:NXY6ZkH+0
いつもと変わらない光景のはずである。しかしこれを見ていた金糸雀は、とてつもない違和感を感じていた。
いつも彼女たちの騒ぎの中心にいた雛苺、
その彼女たちを優しく見守っている蒼星石。彼女たちの姿は、ない。
「ううん、駄目だわ駄目なのよ。そんなふうに考えては駄目。真紅だって、呼ぶ声があれば戻ってくると言っていたわ」
だから、前向きに考えるのだ。いつまでも落ち込んでいては駄目なんだ。
「今日はこのロープを使うかしら!気分はターちゃんよピチカート!」
それを言うならターザンではないかと言うピチカートに対し、そんなのどっちでもいいわと金糸雀。
ロープを予定通りに設置し、屋根の上に登った金糸雀は、
これまた予定していたピチカートの合図で窓が開いたことを知り、屋根を蹴って宙に舞う。
だが、綿密に計算されたはずのロープの長さは予想以上に長かった。
「や、やばいか」
…しら、と言う前に、凄まじい音を立てて金糸雀は壁に激突した。
「ローザミスティカが抜ける勢いだったわ」
その音を聞いた真紅と翠星石、ジュンとのりは、何事かと窓の外を覗く。
そこにいる金糸雀を見て、またあなたなのねと呆れる真紅。
たいがいにするですぅと罵る翠星石。どうしたの?と言ったのりに、
「入れてほしいかしら」
と言う金糸雀。その目に溜まりに溜まった涙は、滝のように零れ落ちた。
始めからこう言えば良いものを、そうしないのが金糸雀の愛らしさであった。
75愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:04:23.47 ID:NXY6ZkH+0
「大丈夫?」
心配そうに言うのりに少し笑いながら金糸雀は答える。
「平気かしら!カナは打たれ強いのよ。それに、ピチカートが傷を癒してくれるかしら」
ここは桜田家の二階、ジュンの部屋であった。家に入った金糸雀は、安心したせいか気絶してしまった。
もちろん壁に激突したことが原因だ。その後、気絶した金糸雀をのりが二階へ運んだというわけだ。
「あ、ごめんなさい、私ちょっと用事があるから」
と言って、のりは部屋を出て行こうとする。
「ジュン君たちを呼んでおくわ」
というのりに、金糸雀は言う。
「だ、大丈夫かしら!心配しなくてもいいかしら」
「そう?じゃあ、そのタオルでちゃんと冷やしておいてねー!」
優しい人だな、と思う。しばらくして、私も一階へ行こう、と思ったそのときであった。
気配がしたと思い振り返った金糸雀は、そこにいた唯一の姉と目が合った。
76愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:05:40.83 ID:NXY6ZkH+0
「水銀燈!」
窓の外に、水銀燈はいた。その顔には、明らかに動揺の表情が浮かんでいた。
「金糸雀…」
……………………あれ?
水銀燈って、私のこと、何て呼んでたっけ?
「し、真紅と遊びに来たのにいないようね。つまんなぁい」
嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
何も聞きたくない。頭の中が真っ白になる。
かすかに私を呼んでいる声が聞こえるが、それが誰の声かもわからない。
「いつまで、逃げ続けるつもりなの」
その言葉を聞いて、我に返る。
「そろそろ決着、つけようよ」
ピチカートである。
そうだ。私は、水銀燈を。
「す…水銀燈。中に、入るかしら」
「何よ」
「話したいことが、あるかしら」
「何よ、私の気も知らないで。大嫌いなのよぉ、私、あなたが」
今度こそ、頭の中が完全に真っ白になった。体中から溢れる汗を止めることが出来ない。
だから、嫌だったんだ。罵られることは、わかっていた。でも、聞きたくなかった。
「ごめん、なさい」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。繰り返される謝罪を聞く者はいない。
少なくとも、その謝罪の対象である水銀燈はその身を翻し、遥か空の向こうへと消えていた。
77愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:06:51.46 ID:NXY6ZkH+0
水銀燈が去ってから数十分間、金糸雀はその場から微動だにしなかった。動けなかった。
ピチカートが思いつく限りの言葉で必死に励ますが、それも耳に届かない。
その境地の中で、金糸雀は一つの事実を思い出す。あっと叫んだ後に、またしばらく停止する。そして、言う。
「ピチカート、もしかして私たちは、とんでもない思い違いをしていたんじゃないかしら」
どういうこと、というピチカートの問いに、疑問詞で返す。
「私たちがお父様と呼んでいた人は、誰?」
よく意味がわからない、とピチカート。それに対して、覚えてないのピチカート?と叫ぶ。
「私が初めて目を覚ましたとき、目の前には黒髪の、今でも名前さえわからないような男がいたわ。
そして言ったの。お前は薔薇乙女の第二ドールだって。私が作った、人形だって!」
ピチカートに表情があったなら、鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をしたであろう。
まさにこれは薔薇乙女の運命を変えかねないことであった。ただし、思い出すのがもう少し早ければの話だが。
「ずっとおかしいと思っていたわ。あのお父様が、私たちをこんなにも絶望させることを望んでいるなんて」
このことは、人はきっかけがあればいつでも変わる、水銀燈を見ればよくわかるというピチカートの説明で、渋々納得したことであった。
「でも、そうよ、思い出したわ。私を作った黒髪の男、あれはローゼンなのよ。
あの男がアリスゲームを望んでいたのであれば、お父様とアリスゲームは無関係かしら。つまり…!」
そう、つまり。
「私たちの、百年間は一体」
78愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:08:09.36 ID:NXY6ZkH+0
金糸雀の言う事実の重要性の大きさと、それを今の今まで忘れていた金糸雀の罪の大きさは比例する。
そして、その事実の重要性は、あまりに重い。金糸雀が早期にこの事実を思い出していれば、
姉妹たちで無意味な争いをすることはなかったかもしれない。
さらに、金糸雀はもう一つ思い出したことがあった。
「私、遠い昔にお父様に会ったわ。その時、お父様は何を伝えようとしていた?
たぶん、アリスゲームなんて望んでいないって、そんなことはしなくていいって言おうとしたに違いないわ!」
その通りであった。金糸雀はエンジュが、それは兎の狂言であり私の望んだことではないと言おうとしたときに、
背中を向けて駆けて行ってしまったのである。
私のせいだ。全部。私のせいだったんだ。
だから、私が終わらせる。終わらせなければいけないの。私たちの、狂ってしまった運命を。
79愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:09:55.04 ID:NXY6ZkH+0
桜田家を離れた水銀燈は、深く思いつめていた。
「どうして、あんな顔を」
この私が、カナをあんな顔にしてしまうことになるなんて。昔の私に話したらきっと失望するわね。
カナは、私のことを恨んでいるのだと思っていた。自分勝手に鞄に引きこもり、気力をなくし家を飛び出し、
幸せだった生活をぶち壊しにした私を憎んでいるものだと思っていた。だからこそ、私はカナを捨てて魔になる決意が出来た。
耳障りと罵倒したのも、彼女を断ち切るためだ。最も、先ほど彼女を罵倒したのは、焦りとプライドのためであるが、
まさか必要とされているとは思わなかった。求められているとは思わなかった。
水銀燈がエンジュの言葉を聞いたとき、本音を言えば、いまさらそんなことを言われても困ると思った。
アリスになる方法がアリスゲームだけではないというのなら、何故始めにそのことを伝えなかったのか。
そんなことを言われたら、私の百年間が否定されたも同然ではないか。そう思ったのである。
だから水銀燈は意地でもアリスゲームを続けようとした。桜田家に来たのはそのためである。
しかしその考えも、金糸雀の表情を見て変わろうとしていた。
あの子を、傷つけたくはない。
なら、アリスゲーム以外にもあるというその方法で、アリスになってやるんだ。
お父様に認めてもらい、真紅を見返すことはその方法でもできるんだ。
そう思い、水銀燈は元来た方向へ引き返す。真紅に、このことを伝えよう。
もしかしたら、お父様が最後に仰ったことは、こういうことなのかもしれない。
桜田家に戻ってきた水銀燈は、翼でガラスを叩き割り、中に入る。
「水銀燈」
「何しに来やがったですぅ!」
「ガラスは後で真紅が直すわぁ。今日は戦いに来たんじゃないのよぉ」
「じゃあ、何しに来たんだよ」
と言ったのはジュンである。
「ねぇ真紅、私」
アリスゲーム、やめようと思うの。しかし、その言葉を言う勇気が水銀燈にあるか。
おそらく真紅がこれを聞いたら、始めは驚いたような表情をするが、すぐに微笑してそれは良いことだわと言うであろう。
しかし、例えそうだったとしても、水銀燈のプライドがその言葉を言うことを許すかどうか。
80愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:10:21.92 ID:1y1u2n8u0
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81愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:11:11.91 ID:NXY6ZkH+0
その時、扉を開け中に入ってきた者がある。それを見た水銀燈が一瞬動揺したことに気付いた者はなかった。
金糸雀である。水銀燈を見た彼女は、どうしてまた?と驚き、そして覚悟を決めた。
今、言うんだ。また明日言おうなんて甘い考えはもう駄目だ。
私は今まで、自らの罪の責任から逃げ続けていた。
また今度会ったとき話せばいいと思い、その、また今度をいうのを墓場まで持ち込むつもりだったのかもしれない。
謝ることで私の罪が消えるのかはわからない。でも、例え許されなかったとしても、謝らなくては駄目なんだ。
そして、私がもういない妹たちの代わりになるなんて大それたことを言うつもりはないけれど、
今まで以上に精一杯、元気で明るい金糸雀でいよう。
それで姉妹がほんの少しでも幸せだと感じてくれるならば、
私がこの世に生を受けた意味はあったんだと思える。
私は、生まれてきても良かったんだと思える。だからそのためにも、
水銀燈と決着をつけなければならないんだ。もう、逃げてはいけないんだ。
「ごめんなさい!」
突然放たれた本気の謝罪に、場は一瞬にして凍りつく。
その謝罪が自分に向けられたものだとすぐに気付いた水銀燈は、しかし真紅達の前では何も言えなかった。
「わかっているわ。全部、私が悪いの。ずっと、ずっと謝りたかったの!でも私、臆病だから、言えなくて」
こんなにも、顔をくしゃくしゃにしてまで、何を言っているんだろう。こんなにも優しい妹を私はどうして。
「話、あるんでしょぉ?…聞いてあげるわ」
「水銀燈!」
ああ、私はこんなにも愛らしい笑顔を奪っていたのか。こんなにも素敵な妹を、捨てようとしていたのか。
82愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:12:13.89 ID:NXY6ZkH+0
金糸雀は、しかし真紅や水銀燈たちに、自分が思い出したことを伝えなかった。軽蔑されるのを恐れてのことではない。
そのことを思い出したとき、金糸雀は姉妹の残酷な運命を望んだローゼンへの素晴らしい仕返しの方法を思いついたのだ。
金糸雀に言わせれば、薔薇乙女一の策士なら、このくらいお茶の子さいさいらしい。
すなわち、薔薇乙女七体全員で、幸せに生活するという方法である。
話を聞けば、真紅たちはアリスゲームを終わらせようとしているらしい。
前向きに生きている彼女たちにそんな話をしたら、アリスゲームは無意味であるのでやめても構わないのだと知ると同時に、
金糸雀と同じく、私たちの百年間はなんだったのかと思うに違いない。百年という時の重さはあまりに大きい。
また、このことを話せば必ずローゼンへの復讐の方法を思いつく。真紅と翠星石については問題ないが、
真紅と水銀燈、もしくは水銀燈と翠星石の間で、この子と仲良くしなければいけないという
義務的な感情が表れてしまうのは嫌なのであった。そこから始まる友情もあるかもしれないが、
しかし今の水銀燈や真紅、翠星石ならばそんな話をしなくても、アリスゲームを終わらせてくれると、
みなで中睦まじく生活してくれると信じている。だからこそ、そんな話はする必要がない思った。
それから、水銀燈はよく桜田家に遊びに来るようになった。真紅とけんかをしている水銀燈は、
かつての水銀燈とは全く違う性格をしているけれど、そんなことはどうでもいい。
私にとって、水銀燈は水銀燈なのだから。彼女がそこにいてくれるだけで、私は幸せなのだから。
そうだ。私は、アリスになんかなれなくてもいい。ただこの幸せが、永遠に続くことを願うだけで。

83愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:12:59.43 ID:NXY6ZkH+0
とりあえず終わりました
84愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:14:16.86 ID:1Sn+CH0r0
85愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:14:41.79 ID:qPolxSj9O
眠れなかったぜ。乙!
86愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:14:50.89 ID:ml+9QKP90
GJ
87愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:15:15.71 ID:sF+XiE8W0
感心した
88愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:17:25.63 ID:AQkIFazUO
久々にすごい物を見せてもらったよ。乙!
89愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:22:19.76 ID:ZvjDe5xIO
すげぇ
90愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:23:23.86 ID:N4tXh5EeO
携帯だからとてもじゃないが全部みれないよ
だれかログ残しておいてくれぇ
91愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:47:04.52 ID:9BxDw5pz0
また夜更かししてしまったじゃないか
92愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:48:40.23 ID:ZR2WAgIF0
か、金糸雀派の俺にはこの大作は眩し過ぎるぜ・・・!

カナ何気に優遇されてるなw
93愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:54:59.52 ID:VHNPEs+zO
ところで雪華綺晶はどうなった?
94愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 03:00:05.70 ID:qgia3yeS0
ほ〜ら☆
えっちなものだよぉ〜
(携帯可)
http://uploader.fam.cx/img/u04319.htm
95愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 03:09:27.28 ID:NXY6ZkH+0
>>92
トロでの空気っぷりっていうか、映す価値なしっぷりは異常だったから。
ってのもあるんだけど、この話は金糸雀の妄想から始まったものだったり

>>93
例えば、カナが水銀燈に謝った後にエンジュが死んだとする。
きらきはあの後真紅たちに会って、たぶん真紅たちに「だったらその直せる人をここに連れて来い」的なことを言われたんだろう
引き換えしてきたらラプラスと遭遇。ローゼンにそこまで嫌悪感をいだいていないっぽい薔薇水晶(きらき)が、
(話を誤魔化しながら会話をする)ローゼンと話しても不思議ではない。そのシーンがトロ最終回。
その後ドールショップに戻ってきたきらきは・・・。うわああああ
96愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 03:30:28.14 ID:iro4p+E80
>>95
嬉しいけど少し心外だな。
トロの出番だけでも十分意味はあったと思うぞ。
桜田家を少し違った視点から眺められる金糸雀が居たからこそ、世界観が広がった。

何はともあれ乙だった。
97愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 03:39:45.72 ID:NXY6ZkH+0
>>96
そっか。
念のために言っておくが、俺は金糸雀大好きだよ
98愛のVIP戦士
>>97
大好きでなければ.ここまで上質で濃厚な妄想を紡ぐことはできまいなw
おまいと同じドールを好きになったことを誇りに思うよ。