ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」

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1愛のVIP戦士
長編投下の際の注意

・超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ! でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ?
・前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ……あの、お茶どうですかぁ?
・基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョンたんの恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ
・当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ……けど、今はほとんど皆無。別に時事ネタでなくてもいい…気にしないで
・キョン君、過度な性的描写はやめようね〜、タンスにエロビデ隠してるのハルにゃんに言っちゃうよ
・台詞や呼称等もその人物にとって違和感がないようにしてくれたまえ!もし不安であればまとめ等で確認することだな
・1レスには最大30行、全角で2048文字まで入るのね。文章構成の参考にして欲しいのね
・要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな
・次スレは950を踏んだヤツが立てれば立ててくれ!無理なら他のヤツらに頼むってのもありだな…すまん!ごゆっくり〜
・自分で投下した長編はなるべく自分で編集すること、わかった!?
・それじゃ、さっさと投下しなさいっ! いい? あたしを退屈させたら死刑だからねっ!


DAT保管庫.    http://haruhiss.xxxxxxxx.jp/

まとめサイト     http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip

DATうpろだ    http://www.uploader.jp/home/harussdat/
雑談所(避難所) http://yy42.60.kg/haruhizatudan/
携帯用.       http://same.u.la/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/
2愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:10:23.43 ID:iOLIZipE0
====================
       業務連絡
====================

まとめwikiの管理人さんが多忙の為、まとめ作業が遅れます。
せめて長編だけでも負担にならないように、SS作者は自分でまとめていきましょう。

また、SS作者の方で自分ではまとめるスキルがない、携帯だからまとめられない、
夜間はwikiが重くて編集出来ないと言う方は

まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド
http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1153863162/ PC用 
http://same.u.la/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1153863162/ 携帯用

にまとめ要請を書き込んでください。

まとめ要請がないと、まとめボランティアの人たちも手出しは出来ません。
管理人さんの負担を減らす為にも是非よろしくお願いします。
3愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:10:36.33 ID:AZVmyBaV0
死ね
4愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:10:36.71 ID:PaaeEgNS0
不二家
5愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:11:50.75 ID:1g6/fEskO
>>1乙!
6愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:18:52.34 ID:VM50W+c9O
>>1乙!
7愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:19:32.97 ID:zKYlRvOl0
>>1
8愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:25:40.02 ID:3kn6A0YQO
>>1
乙!
前スレの冬風のマーチはラストを飾るに相応しかった。
9愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:25:53.15 ID:CHnEYXh70
ピンナップ総合スレ その26
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1169646332/

このスレに「>>280在日乙」と書くなよ!絶対書くなよ!
10愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:28:23.90 ID:/MyX/gRkO BE:1652486898-2BP(0)
1乙
11愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:46:30.71 ID:bkGKNeY8O
>>1
乙!
12愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:50:03.98 ID:KJwRg8EA0
>>1
乙!
ちょっと外出してた間に投下あったのか。
どなたか前スレPrz!
13愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 18:56:41.17 ID:iOLIZipE0
>>12
うpロダに上げときました
14愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:01:11.51 ID:BV8eKn1W0
1乙
15愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:03:20.46 ID:KJwRg8EA0
>>13
Thx!!
16愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:03:33.19 ID:y0+PaaI+O
>>1
乙です。
初SS完成したのに規制で書き込めない…
17愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:09:50.14 ID:EUSV6+8g0
>>16
書いてるじゃん。
18愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:11:02.71 ID:y0+PaaI+O
いやPCでまとめてたから
19愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:12:01.61 ID:EUSV6+8g0
>>18
なる。
20愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:12:57.64 ID:HVxax2VsO
●<>>1さんお疲れ様です、さぁここにお掛けになって下さい
21愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:13:44.07 ID:vLGl0qQg0
>>18
携帯にテキスト送ってちょっとずつコピペ投下すればいいんじゃないかな かな
22愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:26:03.84 ID:y0+PaaI+O
>>21
いまケータイにテキスト送ってみたんだけど、俺のケータイだとコピペできなかった><
すまんこ。
規制解除されるまでまつわ
23愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:34:39.99 ID:ffrrzD200
>>22
wawawawktk
24愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:38:34.02 ID:iOLIZipE0
>>22
余計なお世話かもしれないが
雑談所の避難スレに投下してみてはどうだ?
ttp://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1163122061/

で投下後プリンにはリンクを張ると。
本来はVIPが落ちた時の緊急避難先なんだが、
規制中で投下できないってことなら使ってもいいんじゃないかなあ
25愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:41:14.68 ID:vLGl0qQg0
雑談所に貼るくらいなら直接Wikiに投下した方が早くね?
26愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:46:17.59 ID:iOLIZipE0
>>25
それも考えたんだけど初SSってことらしいので
ワープロモードとかリンク編集とか大変かともオモタ。
雑談所の方が2chスレに近い雰囲気だしね。
>>22
まあ一案として聞いてくれれば幸いってことで。
wktkして待ってるよ。
27愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 19:49:14.13 ID:y0+PaaI+O
wiki行ってくる。
終わったら報告しに来ますのでよろしく。
28愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:15:48.57 ID:ffrrzD200
保守
29愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:16:34.94 ID:y0+PaaI+O
wikiにはってきました。消えない雪ってやつです。
精進しますので駄文ですがよろしくおねがいします。
30愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:24:50.60 ID:bkGKNeY8O
age
31愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:25:35.82 ID:ffrrzD200
>>29
GJ!
やけに長門がカワイイぜw
32愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:32:02.48 ID:iOLIZipE0
>>29
乙!
甘い長門ものですね
キャラソン聞きながらにやにやしちまいました。
33愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:36:43.09 ID:AqEFmi++O
>>1
時間切れで落ちたのかい?
34愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:39:35.15 ID:ffrrzD200
>>33
YES。
35愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:41:01.51 ID:y0+PaaI+O
>>31-32
レスthxです。
またネタが出来たらお邪魔します。
36愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:42:10.38 ID:AqEFmi++O
>>34
d
37愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 20:43:23.95 ID:VM50W+c9O
>>35
今見てきた
GJ、ですぜ
長門かわいいよ長門
38愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:04:51.15 ID:VM50W+c9O
保守
39愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:07:23.47 ID:jQxX3X6R0
投下よいかなー。
40愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:11:11.98 ID:ffrrzD200
>>39
カモン!
41Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:12:34.44 ID:jQxX3X6R0
それでは昨日の続きを。
これまでのお話はttp://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2070.html
42Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:13:36.60 ID:jQxX3X6R0
 §第二章§

「あの……キョンくん? 何かあったんですか?」
 帰りの坂道で俺は朝比奈さんに尋ねられた。あとは卒業を残すのみのマイフェアレディは、この半
年で時折大人びた雰囲気を見せることがあって、言ってみれば朝比奈さん(中)への移行段階らしい。
だからこそハルヒの持ってくるコスチュームを着るのもそろそろ羞恥極まってくる頃合いかもしれず、
それでも気丈に申し出を受けている姿には感涙すらする。SOS団で一番うたれ強いのは朝比奈さんだと
確信する次第である。
 そんな麗しの女性が発する気遣いの言葉に、俺はようやく彼女に長門妹に関して何も話していなか
ったことに思い至った。
「実はですね……」

「長門さんに妹さんが?」
 そうなんですよ。それで、もしかしたら長門がいなくなってしまうかもしれない、と。
「そんな……」
 本気で心配している様子の朝比奈さんだった。心温まるね。当の長門本人は今先頭でハルヒと何や
ら話しているが、さて何を思っているのだろうか。
「何とかできないんですか、キョンくん」
 もちろん何とかしたいですよ。今だってそれを考えていましたし。
 だが今回は長門本人に関わる問題だ。これまでみたいに誰かと共に事態解決へ奔走したりとか、そ
ういう事で片がつくとは思えないんだ。とりあえず、有希と由梨の両方ともう少し話してみる必要が
ありそうだが。
「わたしにできることがあったら、何でも言ってくださいねっ!」
 はりきりモードの朝比奈さんだった。もちろんです。と言うか、あなたがそう言ってくれただけで、
少なくとも俺の動力炉に暖かな火が灯りますよ。
43愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:14:05.58 ID:ffrrzD200
支援
44Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:14:37.72 ID:jQxX3X6R0


 長門が気がかりではあったが、とりあえず一度駅前で別れて、自転車置き場へと向かう俺。
 長門由梨が現れたのはその時だった。
「あなたに話がある」

 俺はチャリを押して例の七夕公園に向かう。隣の由梨は真っすぐ前だけを見ていて、とてもじゃな
いが世間話ができる雰囲気ではない。髪が真っ黒なためか、どうも冗談を言う気にもなれない。
 この公園に来るのは久しぶりだった。もうすっかり冬になってきたし、この頃は大小どちらの朝比
奈さんとも時を駆けたりしていなかったからな。
 自転車を止めて、俺たちは距離を取って座った。十二月の風はやはり冷たく、マフラーを巻いてい
ても心許ない感じだった。
 横目で由梨をうかがって、あらためて思う。……本当に長門そのものだ。2Pカラー状態だし、あく
まで同じなのは姿形だが、それでも俺は何か未知の感覚に包まれるようで、ひさびさに情報統合思念
体の力を実感するのだった。一年前、二人の長門が相対するところを見たあの時とは、また何か違う。
朝比奈さん(小)が二人になった時は、別々にしか見ていないし、本物の双子を見たならまた別の感
想を抱くだろう。
「話って何だ?」
 ようやく俺は言った。長門由梨はその言葉を待っていたかのように、しかし首はこちらを向かず、
「あなたや涼宮ハルヒ、その他周囲の人間にとって、長門有希がどれだけ必要とされているのかを知
りたい」
 真っ黒な長門は淡々と言う。意外な質問だった。何を言われるのかまったく予想ができなかったの
も事実だが、思わぬ変化球だ。
「お前たちの親玉は人の心が理解できるようになったのか?」
 俺の問いに由梨は真顔のまま首を二度横に振った。本当に機械的動作で、何だかやるせなくなる。
今の有希がいかに宇宙人属性から脱したかがよく分かる。そういえばあいつは、過去に一度だけ笑っ
たことがあったしな。あぁ、あの改変された世界とは別にだぜ。
45Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:15:38.60 ID:jQxX3X6R0
「長門有希が始めに文芸部に置かれていたことには理由がある」
 俺の回想などお構いなしに黒髪長門は言った。しかしこいつ、まったく人の目を見やがらねぇ。こっ
ちがチラチラ様子をうかがってるのがバカみたいじゃないか。
 で、理由って何だ。ハルヒの動向を観察して、入手した情報を親玉に報告する……とかいうのがずっ
と前に有希本人から聞かされたあいつの役割のはずだが。
「それだけではない」
 まったく考える様子も見せず、オートリピートのように由梨は答える。

「有希が本当にあの場所に置かれたのは、インターフェースがどこまで人間に近づけるかを調査する
ため」

 ……。
 重大事実、なのだろうか。
 いつだったか古泉が言っていた台詞が鮮明に蘇る。

「長門さんがあの場所にいるのには、何か他に理由があるはずです。彼女でなくてはならない理由が」

 それがこれだったのか? 俺たちSOS団団員と毎日を過ごすことで、長門に生じる変化を見る。
 そのまま頷いてしまいたくなるくらいの回答だ。それならば、長門に与えられた無口属性や、他の
インターフェースがハルヒとある程度の距離を取って配置されていた理由も分かる気がする。
「彼女の本当の役割は涼宮ハルヒの観測ではない。観測のみが目的ならば、あのような設定をされる
ことはない」
 由梨は淡々と告げる。そして俺は思い出す。去年の五月、あの何もないマンションの一室で、今の
由梨と同様に無機質だった長門は言った。
46愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:15:53.54 ID:ffrrzD200
支援
47Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:16:43.71 ID:jQxX3X6R0

「この三年間は至って平穏。しかし最近になって、無視できないイレギュラー因子が涼宮ハルヒの周囲
に現れた」

 あの待機モードの三年間だって観測は続いていたはずだ。しかし、長門はハルヒに接近したりしなか
った。
 情報爆発が起きてから情報統合思念体は地球に注目するようになった。それから今まで、ずっとハル
ヒの動向を観測している……と。
 俺は考える。観測だけならそもそもインターフェース自体が必要ないんじゃないだろうか? 情報統
合思念体については、今になっても俺はさっぱり分からないことばかりだが、唖然とするしかないよう
なとんでもない技をいくつも使えるってことだけは分かっている。ならば、単独でハルヒの動向を見守
る事だってできるだろうと思う。ならば、なぜヒューマノイドインターフェースを用意してコンタクト
を図る必要があったのか? あんなにもハルヒに近いところに宇宙人を置いておく必要があったのか?

 ……その答えがこれか。長門にだけ与えられた役割。本人も知らなかった本当の目的。
 あいつは一年前に過去や未来の自分と同期を取ることを拒んだ。そして統合思念体はそれを認めた。
その時に俺は何とも思わなかったが、あれが始まりだったのかもしれない。事実、あの日を境に長門は
劇的なまでの変化を遂げてきた。俺にも予想できない積極性を見せて、時に困ったりしたこともあった
が、それすら俺は長門が人間に近付いているが為の感情発露なのだと受け取っていた。統合思念体はハ
ルヒだけでなく、変化する長門有希という固体をも観測していたのだ。
 ふと見ると長門由梨は俺が考え終えるのを待っているかのように、微動だにせず虚空を見つめている。
 初めの長門はこんなだったのだ。それが今は婦警服を自分に当てがったり、自己流のジョークを飛ば
したり、ハルヒに思わぬ提案をしたり、クラスメートと会話するくらいにまで成長した。
48Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:17:44.43 ID:jQxX3X6R0
「そうだったのか……」
 思わずつぶやきが漏れる。
「自律進化の可能性。その糸口の一つ」
 由梨が言った。確かに、長門は誰の力も借りずに、自分自身の意思でここまで変わってきた。これを
大仰に言い換えれば、あるいは進化と言えるかもしれない。
「長門有希は我々の想像を大きく飛躍した変化をした」
 真っ黒な由梨を見て思う。長門には最初性格らしい性格がなかった。朝倉涼子や、この前まで生徒会
の書記だった喜緑江美里さんには、明確な人格設定らしきものがあった。名前は分からずじまいだった
が、春や夏に対峙したあの敵対インターフェースにも分かりやすいキャラクターがあった。随分と荒っ
ぽい奴だったが、みな確固たる「色」を持っているように思えた。
 だが、長門はどうだ? 確かな性格がないのが性格、なんてのはゴマカシに過ぎず、客観視すれば
個性らしきものは全くなかった。ハルヒは最初「あたしが見つけた無口キャラ」と言ったが、それは
長門が他に取るべき行動を持たなかったからだ。言わば初めの長門は「白」だったのだ。無色と言い
換えてもいい。長門は俺たちSOS団と放課後や学外での活動を共にすることで、自分を獲得していった
のだ。

「そして、彼女の役目は間もなく終了する」
 由梨の言葉が俺を思索から呼び戻した。公園にかかる放送だってもう少し抑揚がありそうなものだ
が、黒髪長門の言葉には温度がなかった。
「なぁ。……あいつをそのまま、ここに残してやることはできないのか?」
 俺は言った。
49愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:17:56.34 ID:ffrrzD200
支援
50Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:18:54.95 ID:jQxX3X6R0
「長門有希にいなくなってほしい人間なんか誰もいないんだよ。……さっきお前は言ったよな? どれ
だけ必要とされていたか知る必要がある、って。他の誰にも代わりが効かないくらい、あいつは俺たち
全員にとって大切な仲間なんだ。何度も助けてもらったからってだけじゃない。これは、俺個人の感情
でしかないが……俺はあいつがいなくなったらたまらなく寂しい。ひょっとしたら、何ヶ月も立ち直れ
ないかもしれない。言い方は変わるかもしれないが、朝比奈さんや古泉、ハルヒだって似たようなこ
とを言うはずだ。だから……これは俺からの頼みなんだが、あいつをここに――」
「できない」
 長門由梨は雪よりも温度の低い声で言った。
「既に決定は下っている。わたしが有希の観察を終え、有希が思念体に報告を終えた後、パーソナルネ
ーム長門有希は情報連結を解除される」
 ……何とかならないのかよ。
「多少の誤差はあれ、おそらく一週間程度ですべての工程が完了する」
 それだけ言うと由梨は立ち上がって何のためらいもなく歩き出した。

「待て」
「……なに」
 俺の呼び止めに黒長門は振り返らず答える。
「お前は、姉さんが消えちまうことに何の抵抗もないのか」
「姉というのは設定上の概念にすぎない。わたし個人に特別な思いはない」
 そうか……。だと思ったさ。こいつはつい最近誕生したのかもしれないし、無理もない。
「お前と長門……有希は、同じ部屋に住んでるのか?」
「わたしは303号室。有希とは別の部屋」
51Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:19:56.25 ID:jQxX3X6R0


「……長門、お前がどう思ってるのか聞こうと思ってここに来た」
 俺は由梨に同行してマンションまで行き、708号室を訪れ今に至る。由梨は当然のように三階でエレ
ベーターを降り、未練も何もないように俺に背を向けた。
 有希……いや、長門はお茶を入れて湯飲みを俺に差し出してくれた。元気がないように見えるのは
気のせいじゃないだろう。
「長門、大丈夫か?」
「……へいき」
 平気には見えなかった。
 春先からこっち、長門の気がふれたようになることは、実は何度かあった。だがそれはどちらかとい
うと、どうやらこいつの気質らしい負けず嫌い根性から来るもので、今のものとは別種だ。悄然、とい
うか、天気で言えば小雨のような長門の表情には……何だか胸がざわざわする。
「もちろんお前はここに残るために申請なり何なりするんだよな? 何もしないままなんてことないよ
な?」
 質問というよりは、長門と自分自身に言い聞かせるかのような言葉だった。
「いなくなったり……しないよな」
 言葉が途切れる。

「……雨」
「ん?」
「雨、降ってる」
 すっかり暗くなったカーテンの向こうで、雨が降り出したようだった。しとしとと……余計な演出だ。
52愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:20:21.31 ID:ffrrzD200
支援
53Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:20:57.83 ID:jQxX3X6R0

「情報統合思念体の決定を覆せる見込みは低い」
 長門の声がいつもより小さい気がした。珍しく目を合わせようとしない。
「だからって諦めるのか? 長門、お前らしくないぜ」
 我ながら中身のないことを言っていると思う。そんなの長門だって分かっているだろう。俺が長門
より分かっていることなんていくつあるだろう。こいつには教えられたり助けられたり、そんなのば
かりで、俺はなかなか恩返しできなかった。だが、そういうジレンマさえもとっくの昔に吹っ切って、
俺たちはその先にある新しい信頼関係を築けていたはずだった。

「困った時は、お互い様」

 いつか長門から聞いた言葉だ。あの時は不覚にも目頭が熱くなった。やたらと切羽詰っていたからな。
 ……そう、全員が全員を助け合ってここまでやってきたのが、SOS団の何よりの強さだった。だから
こそ、厄介事を乗り切った後に部室でのんびりしている時間や、谷口や国木田、鶴屋さんにコンピ研、
妹や生徒会に阪中、ミヨキチ、機関のみなさんと合間に起こしてきたイベントごとがたまらなく楽し
かったんだ。

 そんな日が、いつまでも続くと思っていた。

 本当はそんなはずないし、いつか別れはやって来る。
 それでも、できるだけ長く笑っていられればいいと、そう思っていた。

 これが終わりの始まりなんだろうか?

 こうして、一人、また一人とSOS団から団員がいなくなって、やがて市内探索や年中行事もしなく
 なって、俺たちは別々の場所へ歩いていく……。
54Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:21:58.76 ID:jQxX3X6R0

 しょうがないことなのか、長門?

「俺はな、長門」
 長門は目を合わせようとしない。
「朝比奈さんはともかく、お前は……ずっと近くにいてくれるような気がしてたんだ」
 沈黙。
 こうして長門と差し向かいで話すのは久しぶりだ。長門の力を借りるような困った事態になること
は、もう滅多に起きなくなっていたからだ。
「そんなはずないのにな……」
 言葉の最後は尻切れになった。何と続けたらいいか分からなかったからだ。

 また沈黙。
 俺だけが喋っていて長門が無言になるこの状況は、初めてここに来た時と真逆だった。
「……今日は」
 長門が言った。注意深く耳を澄ませていないと聞こえないような音量。

「今日は、かえって」


 ドアを閉めると雨の音が容赦なく世界を包み、吐く息は真っ白に曇った。
 ……こういう役回りはうまくいかない。
 俺が人の気持ちにも自分の気持ちにも鈍感なのは、この一年でさんざん分かっていたことだ。
 だから長門は、あの時……。
55愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:22:09.01 ID:ffrrzD200
支援
56Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:23:07.47 ID:jQxX3X6R0

 エントランスに降りると、外で自転車が雨に打たれていた。
 その手前、庇のある場所に人影がひとつ。

「あなたが久しぶりに困っているようだったのでね。おせっかいを承知で来てしまいました」
 古泉だった。
「ここで立ち話をしては冷えますから、どこか喫茶店にでも行きましょう。奢りますよ」


 一年前、長門が大量のエラーを溜め込んで世界を変えたあの時、光陽園学院の生徒になっちまってた
古泉とハルヒと共に入った喫茶店に俺たちは入った。ここも随分久しぶりだ。
「今さらですが、今日はお時間大丈夫ですか?」
「あぁ」
 古泉に借りた傘を傘立てに置きつつ答えた。
 本当は予備校のある日だったが、行っても上の空になってしまうことは目に見えている。

 窓の外の雨は強さを増し、やむ気配がなかった。
 俺たちは適当に注文をして、人もまばらな冬の夜の喫茶店の一角に落ち着いた。

「二人の長門と話をした」
 先に切り出したのは俺だった。
 こういう時に一番理解者となってくれるのが古泉なのを、俺はしぶしぶながら認めていた。古泉も
分かっていて待ち伏せしたのだと思う。
 ……俺が話をしている間、古泉は黙って頷きを返していた。喫茶店の中は驚くほど静かで、まだ七
時かそこらなのに深夜のようだった。
57Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:24:08.63 ID:jQxX3X6R0

「なるほど」
 十五分ほどの小話を終え、俺はぬるくなり始めたコーヒーを飲んだ。
「長門由梨は長門有希がいなくなることを告げに現れた、ということでしょうか」
「たぶんな」
 俺はあらためてあの黒髪長門が現れた理由を考える。
 あいつがいなかったら長門は誰から自分がいなくなるという事実を告げられていただろう?
 おそらくは情報統合思念体そのものから、直接だ。
 そして、自分がいなくなると知った長門はどういう行動に出るだろうか。これは俺の推測だが、あ
いつはたぶん俺たちに何も言わない。
 世界を変えちまったあの時だって、長門は一人でエラーの蓄積を抱え込んでいた。あれから実に色
んなことが起こったが、あいつが弱みを人に見せようとしないのは、どうも性格から来るものらしい。
 それはそれで自分の意思が芽生えているのだと好意的に解釈できた。しかし、こういう時にもあい
つは誰にも相談しなかったのではないだろうか。さっきの様子からしても、あいつはどうしたらいい
のか分からずに戸惑っているようだった……。
「古泉、俺はどうしたらいいんだろうな」
 戸惑っているのは俺も同じだった。長門が頼れる人の数は、たぶんそんなに多くはない。
 しかし、俺には負い目があった。ふいに古泉が言う。

「あなたは、一度はっきりと長門さんの好意を断っています」
 ……そう。初夏のことだった。長門は自分の言葉と意思で、はっきりと俺に自分の気持ちを伝えて
きた。俺がずっと自分の中でセーブをかけて、気付かないフリをしていた領域に、長門は真っ向から
歩み寄って来たのだ。……そして、俺はそれを断った。とっくに答えを出していなければいけないこ
とだったはずなのに、俺はぐずぐずと回答保留をし、結果長門を傷つけた。だから、俺が気休めを言
ってもあいつには空々しく聞こえるだけかもしれない。これまで通りの団員としての関係はすぐに元
に戻ったが、以来俺に長門のタブーとなる事柄ができたことは間違いなかった。
58愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:24:21.68 ID:ffrrzD200
支援
59Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:25:10.57 ID:jQxX3X6R0
「しかし、今でも長門さんが一番心を許している存在はあなただと、僕は思っています」
 古泉の言葉が容赦なく突き刺さる。……やっぱりそうなのか?
「だからこそ、長門さんはあなたに心配されることに耐えられなかったのかもしれません」
 反論の余地もない。その通りだと思う。
「情報統合思念体の決定が覆らず、涼宮さんの力も部分的に消失し始めている今となっては、僕らに
できることは何もないのかもしれません」
 古泉は淡々と言う。お前はそれでいいのかよ。
「僕個人の感情を言えば、長門さんがいなくなってしまった後のSOS団なんて想像もできません。我
々は五人が揃って初めて意味を持つのです。それが増えても、欠けてもいけない。あなたも分かって
いるでしょう?」
 どういうことだ。
 古泉は両手の平を組んで、俺に挑むような視線を向けて言った。
「誰かがいなくなる時がすなわち、SOS団が終わる時なのです。……そう思いませんか?」


 家に帰ってから何をどういう順番で行ったか、まるで覚えてない。
 古泉が言ったことの意味について俺はずっと考えていて、妹が宿題について何か言っているのも、
母親が今日は予備校云々言っているのも、夕食を取るのも風呂に入るのも、すべて半自動的に行っ
ていたらしく、気がつけば俺は就寝準備状態だった。
 本当に長門はいなくなるのだろうか? どうも実感がわかないのはどうしてだろう?
 これまで当たり前に毎日を過ごしていた仲間が、ある日突然いなくなるなどと聞かされて、リアル
に想像できるほうがおかしいかもしれない。想像外の出来事に何度も立ち会ってきた俺だったが、そ
れでイマジネーションが豊かになったかと言えば、そうではなかった。

 ……今、長門は何を思っているのだろう。
 天井を見上げて、俺は息をついた。

60Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/29(月) 21:26:23.48 ID:jQxX3X6R0
ここまでです。
結構迷走しているので、終わりまで頑張りますが完成度は期待できないと思います……すみません。
61愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:27:14.38 ID:ffrrzD200
乙!
既に泣きそうな俺…
62愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:31:42.27 ID:SLYAOiEa0
いい感じですね、がんばれ〜
期待してるよー
63愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 21:51:17.56 ID:VM50W+c9O
なんとも、寂しい気分になりますね
乙でした
64愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:06:36.05 ID:AqEFmi++O
65愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:45:41.23 ID:iAphreXH0
ひといねー
保守
66愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 22:58:55.89 ID:1g6/fEskO
保守
67愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:09:30.18 ID:iAphreXH0
何この過疎
68愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:13:10.70 ID:jQxX3X6R0
いますけど保守話題も特に見つからずほ。
69愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:14:24.47 ID:1adV+ZU90
この間投下した話の後半投下して良いかな?
ガール・ミーツ・ガール BookS&Gamesです。
70愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:16:09.90 ID:VM50W+c9O
投下キター
71愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:17:52.50 ID:HVxax2VsO
>消えない雪
普段見られない長門が見れて良かった
子供っぽい長門かわいいよ長門

>Black Lily
このての話に滅法弱いので続きが待ち遠しい
頑張って下さい


長門かわいいよ長門
72愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:18:32.52 ID:r2OzROb30
>>69
wktk
73愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:20:30.94 ID:1g6/fEskO
wktk
74愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:21:32.28 ID:SLYAOiEa0
かもん
75 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:23:10.10 ID:1adV+ZU90
んじゃ投下させていただきます。
『ガール・ミーツ・ガール(略してGMG) Books&Games』後半。
キョンが最初から女の子って設定です。
今までの話はhttp://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/965.htmlに有ります
キャラの性格はともかく人間関係は結構違うのでご注意ください。
それでは投下行きます。
76『GMG Books&Games』後半 01/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:24:31.44 ID:1adV+ZU90
 彼からバニラアイスを受け取ったその日の放課後、何時もなら誰より先に部室に向かうは
ずだったわたしは、担任の教師からプリントを職員室に運ぶように頼まれたため、少し遅れ
て部室に向かうことになった。
 教師の要請を無視することもその小さな依頼を歪めることも出来たけれども、端末とはい
え、この星の有機生命体と同じ生活をなぞることを前提としているわたしは、わたしの判断
で、その依頼を受けることにした。
 これも、わたしがわたしで居るために必要なこと。
 小さな積み重ねが、わたしという存在を形作るために必要なこと。
 たとえそれが、偽装のためのものだとしても。


 部室の中に人の気配を感じたわたしは、扉を開いた。
「あ、長門さん、こんにちは」
 部屋の片隅で刺繍をしていた朝比奈みくるが、わたしを見つけて挨拶をしてきた。
 涼宮ハルヒは居ない。どこかへ出かけているのだろうか。
 古泉一樹と彼女は、チェス板を挟みあう位置に座っていた。
 彼女が居る場所は、昨日わたしが座っていた場所。
 そう、わたしが。
「……これはこう、か」
「そうそう、そうですよ」
「なるほど……、案外ルール自体は簡単なんだな」
「ルールが難しすぎたら、こんなに世界中に普及したりしませんよ」
「まあ、それもそうか」
77『GMG Books&Games』後半 02/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:25:20.11 ID:1adV+ZU90
 どうやら彼女は、彼からチェスのルールを教わっているらしい。
 昨日、わたしがそうであったように。
「ああ、長門さん、こんにちは」
「あ、長門か……、茶でも飲むか?」
 どういうわけか先々週までと同じメイド服姿に戻っていた彼女が、座ったままわたしに問
いかけてくる。何の意図も感じさせない、ただ、わたしが居ることに気づいて、だから、訊
ねてみただけ……、そういう、たいして意味の無い行為。
「……いい」
「そっか」
 断れば、それ以上のことは何も言われない。わたしは、そういう存在。
 彼女の入れたお茶……、嫌いではない、と思う。味覚的なものはともかくとして、お茶を
入れてもらう、という行為自体は嫌ではないと思う。けれども今のわたしは、どういうわけ
か、彼女の入れるお茶を飲みたいとは思えなかった。
「続きを教えてくれるか?」
「ええ、分かりました」
 彼女はすぐに、彼との会話に戻る。
 教える彼が、昨日わたしと相対していたときよりも楽しそうに見えるのは、多分、わたし
の気のせいではないのだろう。
 わたしは所詮、端末。
 喜怒哀楽を見せ随時己の感情を言葉や態度で出来る少女とは、違う。
 彼女と、わたしは、違う。
 ただ、それだけのこと。
 ……わたしは、会話を続ける二人から視線を外し、窓際においてあるパイプ椅子を引っ張
り出し、本を開き読み始めた。
 昨日彼に借りていた本はもう読み終わってしまったから、今から読むのは、違う本だ。
 先日本屋で購入した、SF小説。わたしの知らない、わたしが知るものとは違う宇宙の広が
っている話。
78愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:25:39.51 ID:1g6/fEskO
支援
79『GMG Books&Games』後半 03/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:26:27.08 ID:1adV+ZU90
 人間の空想の深さと緻密さに想いを馳せながら、わたしは本の中の世界へ入っていく。
 読書をしているときは、落ち着ける。
 それは、観察者としては不適格なことかもしれないけれども。
「おや、僕が貸していた本は読み終わったんですね」
 不意の呼びかけに反応して視線を上に押し上げると、彼がわたしを見下ろしていた。
 優しい、見守るような視線。
「そう」
「長門さんは本を読むのが早いんですね。……ああ、また何かお貸ししましょうか?」
「……あなたが、貸してくれると言うのなら」
 断る理由は、特に無い。
 そう、断る理由など無いから。
 だから、わたしは彼からまた本を借りる約束をする。
 そしてそれは……、きっと、彼という人間を知るために必要な行為だから。
 わたしは通学鞄を開き、借りていた本を彼に手渡した。
「おい、お茶のお代わり入れ終わったぞ。……ん、そりゃなんだ?」
 そのとき、お茶を入れていた彼女がわたし達のところへやって来た。
 お盆の上には、お茶が四つ。わたしのものということになっている湯飲みも有る。先ほど
わたしは断ったはずだけれども、これは、ついで、ということだろうか。
 ちなみにこの湯飲みは、先週、わたし以外の女子部員三人が買い物に行って来たときに買
ってきたものである。
 湯飲みにしては明るい配色が多い同じデザインで色違いのものの五つのうち、わたしに割
り当てられたのは白いものだった。彼女は青、彼は緑、朝比奈みくるが桃色、涼宮ハルヒは
赤。
80愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:26:27.47 ID:VM50W+c9O
支援
81『GMG Books&Games』後半 04/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:26:57.78 ID:1adV+ZU90
「ああ、長門さんに貸していた本を返してもらっていたんですよ」
「へえ、お前長門に本なんて貸してたんだな」
「良かったら貴方も読みますか?」
 無言で湯飲みを受け取るわたしの傍で、彼と彼女が話をしている。
 お茶の味が、良く分からない。
 おかしい……、わたしの味覚機能に、異常は無い。彼女が入れたお茶に、味覚的に問題を
発生させるような要因は、存在しない。
 これは些細な、エラー。
 エラー、……発生原因は、何? ……彼女?
 おかしい、今の彼女に、わたしにエラーを起こさせるほどの、要因など……、存在しない、
はず。
「ジャンルは何だ?」
「ミステリですよ」
「ふうん……、まあ、借りてみるかな」
 彼女が、湯飲みが乗ったままになっているお盆をテーブルの上に置き、彼から手渡された
本をぱらぱらと捲っている。
「ん、栞?」
 はらりと、本から栞が落ちる。
「ああ、僕のではありませんから長門さんのですね」
「そっか、返すな長門」
「……」
 栞が、わたしの手の中に帰ってくる。
 何の飾りっ気も無い、何か本を買った時に着いてきた、ただの栞。わたしが、彼から借り
た本を読むときに使っていた栞。
82愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:27:28.83 ID:LFJLbGHfO
携帯から支援

晩御飯何にしよう…
83『GMG Books&Games』後半 05/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:27:48.53 ID:1adV+ZU90
「何か、難しそうな本だよなあ。……まあ、お前には似合っている気もするけど」
「先の展開を考えながら読むのも楽しいものですよ? もっとも、僕の予想は外れることの
方が多いんですけど」
「お前らしいな」
 彼がおどけるように言って、彼女も笑う。
 何気ない、ただの雑談めいた会話。
 彼女が、涼宮ハルヒや朝比奈みくるとするのと大差ない、大きな情報の変動が感知される
ことも無い、ただの日常的な会話。
 そう、ただの、日常的な。
「……そう言えば、今日は涼宮さん、遅いですね」
 朝比奈みくるが桃色の湯飲みを手に取りながら、ぽつりとそんなことを口にする。
「良いんですよ、ハルヒなんて遅れて来たって。……あいつが居ない方がここはよっぽど平
和です」
「それは、そうかも知れないけど……」
「朝比奈さんはハルヒが居る方が良いんですか?」
「ううん、そういう意味じゃなくて……」
 朝比奈みくるが、言葉を濁している。
 では、どういう意味だと言うのだろう。
「まあまあ、あんまり細かいことは気にしなくても良いではないですか。涼宮さんなら、そ
のうちやって来ると思いますよ。今はどこかで、楽しいことを探しているんでしょう」
「楽しいこと、ね……。私達が苦労することじゃなきゃ良いんだが」
「楽しむために苦労するというのは、そう悪くないことだと思いますが?」
「あのなあ……」
 おどける彼と、少し嫌そうな顔をする彼女。
 会話の様子や表情の移り変わりなどが先ほどまでと少し違うのは、涼宮ハルヒの名前が出
たからだろうか。
84『GMG Books&Games』後半 06/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:28:33.26 ID:1adV+ZU90
「あ、二人とも、お茶、冷えちゃいませんか?」
「ああ……、とりあえず飲むか」
「そうですね。何時もありがとうございます」
「……別に、お前のためってわけじゃない」
 彼女が、彼の感謝の言葉に対して、顔を背ける。
 彼のためではない……、では、誰のため?
 今ここには、彼女にお茶を入れるようにと日々口にしている涼宮ハルヒは居ない。彼女が、
涼宮ハルヒが居ない状況でまで、涼宮ハルヒの言葉を忠実に守る理由が有るとは思えない。
 では、これは、……ただの、習慣? ……本当に、それだけ?
 だって、彼女は、彼が……、そう、彼女は彼に、何と言った。
 ああ、そうだ、言ったはずなのだ……、そしてわたしは、二人の記憶を消さなかった。
 そう、そういうことなのだから。
「んじゃ、ルールは覚えたから、とりあえず一勝負だな」
「ええ、そうしましょうか」
 二人が、チェス盤を囲む位置に移動する。
 わたしは、部室の隅に残ったまま。
 片手には白い湯のみ、片手には戻ってきた栞。膝の上には、読みかけの、自分の本。
 わたしは少し考えてから、お茶を飲み干し、テーブルの上に置いたままになっているトレ
イに湯飲みを戻し、読書を再開することにした。
 本を、改めて開く。
 ……そう言えば、栞を挟んでなかった。
 記憶を探索しながら、わたしは読みかけのページを探す。ぱらぱらとページを捲る音が、
耳に心地よい。わたしを、本の世界に吸い込んでくれる。
 日常的な意味でわたしが必要とされない、ただ観察者として存在するだけの世界から、違
う世界へと誘ってくれる。
85『GMG Books&Games』後半 07/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:29:15.06 ID:1adV+ZU90
 結局その日、涼宮ハルヒは、古泉一樹の携帯に連絡をよこしたきり、部室に現れることは
無かった。
「あの、そろそろ帰りませんか?」
「あ、すみません、ちょっとこの勝負が終わってから……、良いよな、古泉?」
「ええ、僕は構いませんよ」
「そうですか……」
 朝比奈みくるの下校の誘いを彼女が断り、彼がそれに同意し、そして、朝比奈みくるが少
し寂しげな表情になる。
「……」
 わたしはそんな三人のやり取りを横目で眺めつつ、下校の準備をしていた。
 とは言っても、読んでいた本を通学鞄にしまうだけのこと。
「あ、待ってくださーいっ」
 朝比奈みくるが、わたしの後ろを追ってくる。
 身長も歩幅もほぼ同じだから、わたし達は自然と、別れるところまで一緒に帰ることとな
った。
 けれどわたしが朝比奈みくるに対して話すことなど何も無いし、朝比奈みくるがわたしに
話しかけてくるということも無い。
 沈黙が支配する、ただ、過ぎていくだけの時間。
「あの、長門さん……」
 先に口を開いたのは、朝比奈みくるの方だった。 
 何か、言いたいことが有るのだろうか。
「……」
「長門さん、昨日、古泉くんにチェスを習っていましたよね?」
「……そう」
86愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:29:35.63 ID:1g6/fEskO
支援
87『GMG Books&Games』後半 08/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:29:40.17 ID:1adV+ZU90
 昨日朝比奈みくるを含めたわたし以外の女子三人が戻って来ていたとき、わたしと彼の間
にはチェス盤があった。そしてわたしがそれ以前にチェス盤を触っていたことなど無い。
 だから、朝比奈みくるがわたしが彼にチェスを習っていたことに気づいても、何ら不思議
は無い。彼女と涼宮ハルヒは、気づいてなかったようだが。
「あ、やっぱり……」
「……」
「そっか、うん……。やっぱり……」
「……」
「あの、長門さん……、無理、しないでくださいね」
「……わたしはわたしという個体が出来る範囲を把握した上で行動している」
「えっと、そういう意味じゃないんですけど……」
 では、どういう意味だと言うのだろう?
 朝比奈みくるの言いたいことは、わたしには理解できない。
 主語も述語もはっきりしない、ただの呟きにも、何らかの意図は有りそうだけれども、わ
たしにはそれをはっきりと解析するだけの知識・経験などが不足しているのだ。
 朝比奈みくるは、一体何が言いたいのだろう。
「……」
「……」
 それから、わたし達は別れる場所まで一言も言葉を交わさなかった。


 次の日の放課後、わたしは読書をしながら他の部員を待っていた。
 昨日の続きの今日。変わらない日常。涼宮ハルヒが何かを言い出すことは有っても、大き
な情報の発生などが起こりようも無い、わたしにとっては、静かと呼べる日々。
88愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:29:56.29 ID:LFJLbGHfO
ポーン
89『GMG Books&Games』後半 09/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:30:16.37 ID:1adV+ZU90
「ああ、長門さんが一番乗りでしたか」
 わたしの次に部室に入ってきたのは、古泉一樹だった。
 彼は、何時もと変わらない、ただ、優しい笑みを浮かべている。
「はい、どうぞ」
「……これは?」
 彼に渡されたのは、一冊の本と、何か、金属製の細い細い板のようなものの先に、小さな
八分音符のオブジェが黒い糸で繋がれたもの。
 本は分かる。これは、約束したものだから。
 では、もう一つは一体何?
「ブックマーカー、要するに栞ですよ」
「栞……」
「ええ、長門さんは良く本を読んでいますけど、あまり栞には拘ってないようでしたから、
何か差し上げようかなと思いまして……、迷惑でしたか?」
「……迷惑では、無い」
 わたしの手の中に、彼から手渡された、ブックマーカーが有る。
 銀色の音符が、キラキラと輝いている。
「ああ、良かった。では、よろしければ本を読むときに使ってください」
「……分かった」
 そうして、そのブックマーカーはわたしの物になった。
 それから朝比奈みくるが来て、彼女が来て、何時もの日常が始まる。
 彼は、彼女とチェス盤を囲んでいる。聞こえてくる会話からすると、彼は彼女の感覚から
しても『弱い』方に分類されるらしい。
「私は初心者なんだがなあ」
「あなたが強いか、ビギナーズラックということでしょう」
「んなわけないって」
「では、次は別のゲームを持ってきますよ」
「ふうん……、まあ、良いけどな」
90愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:30:58.29 ID:LFJLbGHfO
ルーク
91『GMG Books&Games』後半 10/10 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/29(月) 23:31:12.42 ID:1adV+ZU90
 何気ない、二人の会話。
 楽しそうに聴こえるのは、多分、気のせいではない。
 だって、彼女は……、彼が、好きだから。
 彼が彼女をどう思っているのかはわたしの預かり知らぬことだけれど、彼だって、表情も
感情も有るかどうか分からない端末などより、人間の少女と話をしている方が楽しいだろう。
 だから、これは、当たり前のこと。
 そう、当たり前の……、当たり前のこと。
 そして、彼女がそこに座っている限り、彼とわたしがもう一度チェス盤を囲むことは、無
いのだろう。
 そう……、そういうことなのだ。
 わたしは視線を持ち上げ、読書をしている間も本の裏手側にずっと持っていたブックマー
カーを、窓辺から差し込む光に翳す。
 小さな音符が、キラキラと輝いている。
 そのささやかな光が、先ほどからわたしの中に発生し続けている原因不明の小さなエラー
を、吸い取るように分解し、消し去っていく。
 どうしてだろう? わたしには、その仕組みは分からない。わたしには、理解出来ない。
 でも、それは、きっと……、悪いことでは、無いから。

 ゲームという、切り離された時間の向こう側に時折思いを馳せながらも、わたしの、本の
中での旅路では続いていく。
 彼から貰ったブックマーカーを、その共としながら。


 終わり
92愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:34:14.71 ID:1g6/fEskO
いやぁ…悲しいような嬉しいような…


GJ!です
93愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:42:57.73 ID:VM50W+c9O
長門のSSを読んだって感じがする〜
この切なさといい、感情の描写が

乙でした!
94愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:53:40.28 ID:uU5Ft+Aj0
14レスほど投下よろしいでしょうか?
95愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:54:31.21 ID:qQzcJO0T0
GJ!
このお話の女の子キョンは自分の理想の可愛らしさだが、長門もいじらしくて可愛い
どっちも応援したくて困るんだぜ
96愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:56:24.29 ID:PLMBYwmf0
支援準備
97愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:58:34.71 ID:VM50W+c9O
こいこーい
98愛のVIP戦士:2007/01/29(月) 23:58:55.83 ID:1adV+ZU90
投下wktk
99 ◆rDAy9jYT0M :2007/01/29(月) 23:59:26.85 ID:uU5Ft+Aj0
大丈夫そうなんでいきます。
ロックンロールスターダスト2話です。
前の話http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2063.html

なお昔書いた
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1906.html
のSSが元になってます。
100愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:01:14.51 ID:e+NkytYTO
しぇーん
――そしてとうとうスタジオオーディションの日がやってきた。

学校の最寄り駅から乗り換えも含め1時間半ほど、
俺達の地元よりもかなり開けた都会、そこからバスに20分ほど揺られた郊外の一角に、そのスタジオはあった。
「すげ・・・・・・これってプロが使うスタジオじゃないのか?」
俺はその建物を見上げて思わず嘆いてしまう。
それはいつも練習をしている雑居ビルの中に入っているせまっちいスタジオの何倍もある。
「ふん、元々あたし達はあんな狭いスタジオで収まるバンドじゃないわ」
肩で風を切らんかというハルヒを先頭に、俺達は建物の中に入っていく。

まずはとりあえず出場バンドの控え室らしき空き部屋に通される。
そこは校の教室よりも断然広いくらいのかなり大きな部屋で、雑然と並べられたパイプ椅子と
長机の周りには審査の時を今か今かと待つ、いかにもバンドマンらしき風貌の人間がたむろしている。
ざっと百人以上はいるな・・・・・・。すると最低でも三十バンドくらいが出るのか・・・・・・。
それらの人々は、瞑目して精神統一をする者、タバコをふかす者、入念にギターのチューニングをする者、
バンドメンバーと演奏の打ち合わせをする者、と様々だ。
共通しているのはその誰もがこの千載一遇のチャンスをモノにしようと、
ギラギラと野望に満ちたハングリーな目をしていたこと。
それを見て、改めて俺達はとんでもなく場違いな所に来てしまったのだと感じる。
さしものハルヒもこの雰囲気には圧倒されたようで、押し黙ってしまっている。
最初から無言の長門は然り、古泉も真剣に顔を引き締め、朝比奈さんは不安そうな面持ちだ。

俺達はとりあえず手近な開いている机を見つけ、腰をかける。
誰一人喋ろうとはしない。緊迫した空気だ。
ああ、こんな空気の中には一秒たりともいたくない・・・・・・。
誰か沈黙を破ってはくれないかと思っていると・・・・・・。

「あれ、涼宮さん?」
「ほんとっさ〜、どこかで見たことある顔だと思ったらみくる達じゃないかい?」
102ロックンロールスターダスト第2話(2) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:02:18.88 ID:9CSlW53p0
同時に聞こえた二つの声。
振り返るとそこにいたのは、あのENOZの面々と何故か鶴屋さんだった。
「涼宮さんのバンドもオーディション出るの?」
ドラムの岡島さんがハルヒに尋ねる。
「ええ。もしかして岡島さん達も・・・・・・」
ハルヒにしては珍しく、年上に「さん」付けの丁寧な対応だ。
「そうよ。私達ENOZも一次審査に通ったの」
・・・・・・・やはりENOZも今回のニシロック出演を目指していたのか。
こりゃあ少なくとも本家である彼女達には俺達の勝ち目はないなと思っていると・・・・・・、
「涼宮さん達のバンドは強敵ね。何せあれだけ文化祭を盛り上げたんだし」
何とENOZは我々を一応ライバルと認めてくれているらしい。
そんなそんな・・・・・・ENOZはもっと上を目指せるバンドデスヨ?こんな次元で満足してたらイケマセンヨ?
「でも今回は負けないわよ」
不敵に笑う岡島さん。
「ええ、こっちこそ」
これまた不敵な笑みを返すハルヒ。
ハルヒもENOZのことは十分認めているらしく、しっかり彼女達をライバル認定しているようだ。

・・・・・・ところで、
「鶴屋さんは何でいるんですか。応援か何かとか?」
「え、わたし?」
鶴屋さんは自分のことを指差し、キョトンとしている。
そう言えばいつだったか、彼女はENOZの面々と友人だとか言ってたし、きっと応援にでも来たのだろうと思っていたが、
「何言ってるっさ〜キョン君ったら、わたしも立派なENOZの一員にょろよ?」
「・・・・・・はぁ?」
(何を世迷いごとを。ENOZは四人でっせ、鶴屋のダンナ)
俺はそんな無言の訴えが顔に出るほど、間抜けな表情をしていたに違いない。
103ロックンロールスターダスト第2話(3) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:03:12.41 ID:9CSlW53p0
「ホントだよ?」
ベースの財前さんがすかさずフォローを入れる。
「鶴屋さんは今回のオーディション限定の特別メンバーだよ?彼女は凄い音楽の才能があるし、
 彼女自身も乗り気だったから今回だけ加わってもらったの」
「そうだったんですか・・・・・・」
「そうっさ〜。いくらキョン君達とはいえ、この場ではライバル、刃引きはしないにょろよ?」
「それはいいんですが鶴屋さん・・・・・・」
「何かな?」
「貴方は何のパートなんですか?」

俺の疑問に、長門以外のSOSバンドの面々が全員ウンウンと頷く。
まさかベースが二人なんてことはないだろうし、朝比奈さんのようにキーボード担当?
それともENOZは元々ツインギターだし、更に一人加えてフィーバックギンギンの轟音サウンドでも目指すつもりだろうか?
それで全員が直立不動で靴を見ながら無愛想に演奏するとか!?
は!? もしやダブルドラムでデスメタルも参ったかといわんばかりのブラストビートを狙ってるとか!?
それでなぜかボーカルは泣く子も黙るデスボイス!?
いやいや更に裏をかいて、お得意のにょろにょろ口調でラップ担当とか!?ロックとHIPHOPのケミストリー!?
略して『にょろラップ』!? 確かに、基本語尾は全部「にょろ」だから完壁な韻踏みが可能だぞ!?

――と、思考が著しく脱線した俺を尻目に鶴屋さんは、
「パートは決まってないよ?」
と、のたまった。
「決まってない?」
「うん、わたしは基本的に何でもやるのさ!パーカッションからDJ、サンプリング、
 琴や尺八、篳篥(ひちりき)のような和楽器から、シタールのようなインド楽器まで全部!
 ギターやベースみたいな楽器は苦手だけどねっ!それ以外なら何でもやるよ?」
「・・・・・・はぁ、全部ですか」
要するに鶴屋さんは『何でも屋』か。様々な楽器を曲に応じて扱い、彩りを添える役だ。
確かにロックバンドには、たまに何の楽器を演奏しているのか良く分からんメンバーがいたりするしな。
それにしたって和楽器にインド楽器・・・・・・ENOZはどこへ向かおうとしているのだろうか?
104愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:03:14.90 ID:e+NkytYTO
支援
105ロックンロールスターダスト第2話(4) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:04:01.68 ID:9CSlW53p0
「すいません。次、○○番のENOZの皆さん、お願いしまーす」
すると、スタッフらしき男性が控え室に入ってきてENOZの名を呼んだ。
「どうやら出番にょろね〜」
「それじゃあ行ってくるね。涼宮さん達も頑張ってね」
鶴屋さんはじめとするENOZの面々が移動の準備を始める。
「ええ、ENOZのみんなも健闘を祈るわ」
と、戦友を送り出すハルヒ。
ふむふむ、ライバルバンド同士のエールの送りあいか。善き哉、善き哉。

――と、
「あの〜・・・・・・」
おずおずと手を上げたのは朝比奈さんだった。何かENOZの面々に言いたいことがあるらしい。
「非常に言いにくいんですけど・・・・・・」
「なんだい?みくる、言ってご覧よ?」
鶴屋さんに促され、朝比奈さんは恐る恐る二の句を継ぐ。

「ENOZってメンバーの皆さんの苗字の頭文字を取ったバンド名なんですよね?
 それなら鶴屋さんが入ったら名前変わっちゃうんじゃないですか・・・?」
――ああ、朝比奈さん。それは言っちゃいけなかった。
――ここにいる全員、それはわかってても空気を読んで言わなかったのに。

「・・・・・・ENOZT、ENOTZ、ENTOZ、ETNOZ、TENOZ・・・・・・どれにしてもユニーク」
――長門、お前もわざわざ止めを刺すようなこと言うんじゃない。

「あ、あはは・・・・・・それじゃあ行ってくるね〜」
ENOZ改めTENOZの面々は、苦笑いを残して控え室を後に戦場へと向かっていった。

すいません・・・・・・是非頑張ってください・・・・・・。
106愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:05:53.37 ID:e+NkytYTO
支援
107ロックンロールスターダスト第2話(5) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:06:01.15 ID:9CSlW53p0
十数分後、ENOZ改めTENOZの面々が控え室に戻ってきた。
見ると・・・・・・一様に暗い表情だ。
「駄目だったよ・・・・・・」
財前さんがうなだれて言う。
「自分達としては良い演奏が出来たと思ったんだけどね」
と、榎本さん。
「鶴屋さんの演奏も最高だったのに・・・・・・」
と、中西さん。
「そうなんだよねぇ〜、最高のラップをお見舞いしたと思ったのに・・・・・・」
と、岡島さん。てか本当にやったのか、にょろラップ。
「一人もの凄く辛口の審査員がいたのさ」
とは鶴屋さんだ。
「『キミ達の演奏には魂がこもってない』とか『何も伝わってこない』とかボロクソにょろ」
何と、そんな手ごわい審査員がいるのか。
「私なんか『ドラムが弱い』って言われたわ・・・・・・」
岡島さんが苦々しく語る。
マジか・・・・・・あの岡島さんレベルでそれとは・・・・・・。
だとしたら俺の未熟なドラミングなんか「HAHAHA〜!」とかアメリカ人みたいに笑い飛ばされてしまうんじゃないか?
「バンド名にもツッコまれるし・・・・・・」
それについてだけは何も言えなかった・・・。
「えーと○○番のSOSバンドの皆さん、そろそろなんで準備お願いします」
更に十数分後、スタッフが近寄ってきてハルヒにそう伝えた。
ENOZもボロクソに言われるようなオーディションで俺達の演奏は果たして・・・・・・
すると、ハルヒが突然、
「さあ、着替えるわよ!」
と叫んだ。そして、いつの間にやら持ち込んでいた紙袋から出したのは
――見事なバニーガールの衣装だった。それも二着分。
はい、察しの良い読者のみんなはもう分かったであろう。
これから一人の麗しき天使の阿鼻叫喚が控え室に響き渡ることになるのだ・・・・・・。
108ロックンロールスターダスト第2話(6) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:06:47.74 ID:9CSlW53p0
「えぇ〜ん、いやです〜、なんでわたしがバニーを着るんですか〜?」
「何言ってるのみくるちゃん! 審査員って言ったっておそらくどうせ皆男よ?
 貴方がコレを着れば悩殺間違いなし! 審査合格間違いなしなのよ!?」
逃げんとする朝比奈さんを背後から羽交い絞めにしているハルヒ。
つーか色仕掛けかよ・・・・・・。この期に及んで・・・・・・。
ほれ見ろ、一気に俺達は控え室の他の面々の好奇の視線を浴びているではないか。
「さっさと脱ぎなさぁーい!!」
「いやです〜、恥ずかしいです〜!」
ハルヒに無理やり服を剥ぎ取られ、チラリと朝比奈さんのピンクのブラ紐がご開帳してしまう。
「バカヤロウ!ここは衆人環視の場だぞ!!」
俺は急いでハルヒを引っぺがそうとするが離れない。

――結局、その後紆余曲折あって女子トイレに連行された朝比奈さんは、
それはそれは見事なバニーガールとなって控え室に戻ってきた。
勿論、ハルヒもお揃いのバニー姿だ。控え室中の男の視線が二人に釘付けになっている。
そして長門もいつの間にやらお馴染みのあの黒魔術師の衣装だ。
おかげで俺と古泉だけが私服でやけに浮いている。
「こんなことなら僕も愛用のツナギを持ってくれば良かったですねえ。
 まあ全裸でも一向に構わないのですが・・・・・・」
変態は放っておこう。

「それじゃあSOSバンドの皆さん、お願いしまーす」
とうとうスタッフが呼び声がかかる。
「それじゃあ行くわよ!審査員だかなんだか知らないけど、あたし達に敵はいないわ!」
そして、すっかり威勢を取り戻したハルヒであった。

ついに――オーディションが始まる。
109ロックンロールスターダスト第2話(7) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:07:48.43 ID:9CSlW53p0
オーディションルームに通される。
そこは録音ブースというよりも所謂リハーサルルームといった感じの部屋だった。
ドラムセットやキーボードなどの楽器、俺の背と同じぐらいはあろうかという大きなアンプ類が、
これ見よがしにずらりと並んでいる。
そしてその機材類の真正面には、長机に並んで四人、審査員と思しき人達が座っている。
皆一様に渋い顔で、入ってきた俺達を見定めんとじっと黙り込んでいる。

「これは・・・・・・大変なことになりそうですね」
古泉が俺の耳元で囁く。つーか息がかかるんだよ。
「大変って・・・・・・何がだ」
「あの審査員達、どの方も業界の重鎮ばかりですよ。
 向かって左から、
 HR/HM(ハードロック/ヘヴィメタル)専門誌『BURNING!!!』の元編集長でHR/HM評論家の草分けの伊納政則さん、
 次に日本を代表するロック専門誌『Rockin' Beat』の創始者で現在は社長の渋谷陽二さん、
 次にその『Rockin' Beat』の現編集長の山田洋一郎さん、
 一番右が今回の『西宮ロックフェスティバル』のオーガナイザー、運営の総責任を担う火高正博さん、です。
 これは誤魔化しがききませんね・・・・・・」
古泉があげた名前は誰一人知らなかった。
しかし、最近ロックに造詣が深くなっている古泉が言うのであればきっと相当な大物揃いなのだろう。

「次は・・・・・・『SOSバンド』か」
渋谷氏が手元の書類を見て呟く。バンド名にちょっと半笑いなのは無理もないかもしれない。
「女の子多いね。ガールズロックってヤツ? どんな感じの音楽やってるの?」
渋谷氏は次々に質問を浴びせかける。
「パンキッシュなのからポップなのまで何でも出来ます」
そんなプレッシャーもどこ吹く風、自信をもって答えるハルヒ。
「ふーん、それじゃ早速演奏してもらえるかな」
渋谷氏がじろっとハルヒを一瞥し、言い放つ。
「ハードでヘヴィなの頼むよ〜?」
とは、伊能氏の弁。
110愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:08:14.41 ID:4nGkNnbfO
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111ロックンロールスターダスト第2話(8) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:09:03.49 ID:9CSlW53p0
「はい」
ハルヒはそう言うと、ギターをケースから取り出す。俺達も各々のパートの位置に散らばっていく。
――そう言えば、さっきから右側の二人、山田氏と火高氏は一言も発していない。
二人とも腕組みをして、じっと俺達のことを睨み付けている。何とも重々しい表情だ。
コレが所謂圧迫面接、もとい圧迫オーディションってヤツだろうか・・・・・・。

ハルヒ、長門、古泉の弦楽器組みが入念にチューニングを行い、思い思いに弦を弾く。
朝比奈さんも鍵盤を一つずつ慈しむように押しては、音の調子を確かめている。
俺は俺でドラムセットに腰掛け、深く息をつく。タムを軽くヒットすると心地よい反響が腕に伝わってくる。
泣いても笑ってもこのオーディションで全てが決まるんだ。
審査を突破する可能性は薄いが、せっかく休日を潰してまでここまで来たんだ。
やれるだけのことはやってやらんとな。
と、考え込んでいる内にハルヒ達の準備は完了したようだ。

「それじゃあいきます。『First Good-Bye』!」
ハルヒはそう言うと、合図代わりにジャランと軽くギターをかき鳴らした。
と、その時、
「ん? ボーカルの子さ、ギターのチューニングずれてない?」
と、口を開いたのは無言だったはずの山田氏。
「・・・・・・えっ」
ハルヒはハッとした表情で手元を見つめた。
「ホントだ・・・・・・」
一弦ずつ音を出すとやはりチューニングがずれていたらしい。急いで直し始めるハルヒ。
あの何をやらせてもソツなくこなす完璧型のハルヒがこんなケアレスミスを犯すなんて・・・。
やはりこの異様なプレッシャーに緊張しているのだろうか。
そして、そんなミスをすぐに見抜いた山田氏、業界の大御所はやはり甘くはない。
「・・・・・・すいません!直りました! それじゃあ改めていきます!」
ハルヒはそう言って、長門に合図を出す。
長門は俺にだけ分かる小さな首肯と共に、一気にギターを掻き毟る。
――SOSバンドの演奏が始まった。
112愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:09:40.91 ID:4nGkNnbfO
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113ロックンロールスターダスト第2話(9) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:09:49.52 ID:9CSlW53p0
――そして四分半ほどの演奏が終了する。
正直言って、演奏の出来は今までで一番良かった。
ハルヒ作曲ということで元からそれなりに曲のクオリティが高いことを差し置いてもなかなかだった。
長門の超絶ギターは相変わらず恐ろしいスピードでバンドをドライブさせた。
ギターソロでは、あのHR/HMマニアにして今までにも幾多の超絶ソロを目にしたであろう伊能氏も驚いていたしな。
古泉のベースはしっかりと曲のボトムラインを支えていたし、朝比奈さんのキーボードも堅実だった。
俺のドラムも何とか上手くいったし、渋谷氏などリズムに合わせて身体を僅かに揺らしていた。
そして何よりもハルヒの歌だ。
先ほどのミスの動揺を微塵も感じさせない堂に入った歌唱は俺が今まで聴いたこの曲の中でも白眉の出来だった。
ハルヒが歌いだした瞬間、伊能氏も渋谷氏も一気に真剣な顔になったくらいだ。
ただ、相変わらず山田氏と火高氏だけは何のリアクションもせず、じっと腕を組んで曲を聴いているだけだった。

「うん、よかったんじゃないかな。特に涼宮さんだっけ? キミ結構歌えるねえ」
渋谷氏が手を叩きながらハルヒを賞賛する。
「そこのSG持ってる子・・・・・・長門さん?のギターソロにはびっくりしたよ。まさか女の子があそこまで弾けるとは。
 オジサン、一瞬イングウェイかと思っちゃったよー。他の子の演奏も悪くなかったよ」
とは伊能氏の弁だ。
うん、やはりこの二人には俺達の演奏は好評だったらしい。
ハルヒもパッと顔を明るくさせる。
が、しかし――
「・・・・・・全然ダメだね」
それは無言コンビの一人、先ほどハルヒのギターのチューニングのズレを指摘した山田氏の唐突な否定だった。
「まずキーボードのキミ」
ビシッと朝比奈さんを指差す。
「わ、わたしですか・・・・・・?」
「演奏は悪くなかったけどさ、ボーカルの子もそうだけど何その衣装?
 僕はここにロックバンドの演奏を聴きに来たのであってコスプレ喫茶に来たわけじゃないんだよ?
 それとも何? 色気で訴えれば高評価が得られるとでも思った? ロック舐めてるんじゃない?」
「そ、そんなつもりは・・・・・・」
一気に身を縮こまらせてしゅんとしてしまう朝比奈さん。バニーの耳も心なしか垂れ下がる。
114愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:10:41.94 ID:4nGkNnbfO
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115ロックンロールスターダスト第2話(10) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:11:07.69 ID:9CSlW53p0
「次、リードギターのキミ」
続いて長門を指差す山田氏
「・・・・・・」
「キミもさあ、何その衣装? 占いの館じゃないんだよ? ビジュアル系はもう流行らないって。
 それにギターは上手いけど、なんか無表情なんだよね。
 ボーっと突っ立って弾いてるだけでさ、つまんないの。
 まさかシューゲイザーとかグランジとかそういうの気取ってる? 時代遅れだよ」
オイオイ、ちょっと待てよ、いくらなんでも・・・俺がそう思っている内に山田氏の舌は更に滑らかになる。
「んでベースのキミ」
「いかがでしたでしょうか?」
次は古泉の番だ。古泉は冷静に山田氏に評価を伺わんとしている。
「うーん、キミはプレイはまあまあだけど、それだけ。全然個性とかそういうのが感じられないね。
 それともアレかな、キミは結構整った顔してるし、女の子のグルーピー(バンドの追っかけ)要員とか?」
「・・・・・・」
古泉は黙って聞いている。
「んでドラムのキミ」
「・・・・・・はい」
そして俺の番だ。
「キミはね・・・・・・まあ、アレだよ。下手クソ。足引っ張ってるし、辞めた方がいいんじゃない?」
分かっていたとはいえ、ここまで露骨に言われると・・・。
「最後にボーカルのキミ」
そしてとうとうハルヒだ。
「確かにそれなりに歌えてたけどさぁ・・・・・・所謂ソウル、魂が伝わってこないよね。
 何というか売れっ子の萌え系アイドル声優が本業の片手間で歌ってるみたいな感じっていうの?
 それにこの曲、キミが作ったらしいけど正直つまらない曲だよね。
 所謂アレでしょ? 今流行のグリーン・レイとかアグリル・レヴィーンとか、あーゆう売れ線のUSパンクっぽいの。
 なんつーかすぐ飽きちゃうよね。この程度じゃ」
「・・・・・・」
ハルヒもまた黙って聞いている。
116ロックンロールスターダスト第2話(11) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:12:15.02 ID:9CSlW53p0
「山田君、何もそこまで言うことは・・・・・・」
「そうだよ。あのキーボードの子なんか半泣きじゃないか」
渋谷氏と伊能氏が山田氏を放言を宥めようとするが・・・・・・
「いいんですよこれくらい。こーいうバンドが日本のロックをダメにするんですから」
山田氏は頑として譲らない。
「とにかくキミ達全然ダメ。バンド名もダサイしね。
 とてもじゃないけどキミ達みたいなバンド、ニシロックのステージには上げられないよ。
 それこそ日本の恥、国家犯罪、外交問題に発展するね。
 キミ達はせいぜいショボイ高校の文化祭で演奏して満足してるレベル。
 こんなトコに来るのは百年早いよ」

これ以上ないまでにボロクソだ。
鶴屋さんの言っていた辛口審査員というのは間違いなくこの山田氏のことだろう。
そしていくら渋谷氏と伊能氏には好印象を持ってもらえたとはいえ、審査員の一人にここまで嫌われては、
オーディションの合格ももうほぼ無理だろう。
それを悟ったのか、長門は相変わらずだが、朝比奈さんはほぼ半泣き状態、古泉も唇を噛み締め苦々しげだ。
そして、ハルヒは俯いてしまって全く表情が伺えない。
きっとみな凹んでいるのだ。かくいう俺もこれ以上ないってくらい凹んでいるし、何より悔しい。

「もういいでしょ。それがわかったらさっさと帰った、帰った」
山田氏はシッシッと手を払うように俺達を追い出さんとする。
「・・・・・・ありがとうございました」
俺は無感情にそう吐き捨て、ドラムセットから立ち上がると、部屋を出ようとする。
古泉や朝比奈さんもそれに続こうとする。
と、その時、
「ふざけんじゃないわよ、オッサン!!!」
何とあろうことか――
ハルヒがギターを肩から外すと両手でネックを握り、一直線に審査員机に向かってダッシュし――
山田氏目掛けて思いっきりギターを振り下ろしたのだ!!
117愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:12:23.08 ID:4nGkNnbfO
支援
118ロックンロールスターダスト第2話(12) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:13:16.19 ID:9CSlW53p0
「ウギャーーーーーー!!」
ああ・・・・・・またやっちまった、そう思った時にはもう遅かった。響き渡る山田氏の断末魔の叫び。
考えてもみればあのハルヒがあそこまで己をボロクソに否定されて黙ってるわけがない。読みが甘かった。
振り下ろされたギターのボディは見事に山田氏の脳天にヒットした。
その衝撃でギターのボディは完全に崩壊。ネックも折れた。山田氏は卒倒し、パイプ椅子ごと後方に崩れ落ちる。
・・・・・・って死んだんじゃないのか?

「何すんだよこのガキ!!」
あ、生きてた。山田氏は仰向けに倒れたまま、ハルヒを罵倒する。
「五月蝿い!! 編集長だか評論家だか知らないけどね、あたしは団長よ!
 アンタにグダグダ言われる筋合いは無いわ!!こんなオーディショこっちから願い下げよ!!」
収まらないハルヒは倒れ伏す山田氏に容赦ないストンピングを食らわせ続ける。
ダメだ。アイツ、完全にキレてやがる!
「ヤバイ! 古泉止めるぞ!」
「はい!」
即座に俺はハルヒを後ろから羽交い絞めにする。
薄手のバニースーツから容赦なく伝わる柔らかい感触はこの際気にしない。
「何すんのよキョン!! このバカをボコボコにするのっ!!」
足をジタバタさせるハルヒ。駄々をこねる幼児か、お前は。
「すいません、涼宮さん。失礼します」
すると古泉が前から両足を押さえつけ、完全にハルヒを身動き取れない状態にする。
「よし! このまま帰るぞ!! 長門、朝比奈さん、行きましょう!」
「え・・・・・・は、は〜い」
「・・・・・・」
「ウキーッ!! 離しなさーい、このバカキョン!!」
「すいません、失礼しました!!」
審査員にそれだけ告げ、俺はハルヒを抱えて一刻も早くこの場から離脱しようとする。
119ロックンロールスターダスト第2話(13) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:14:09.22 ID:9CSlW53p0
すると、
「ちょっと待った!!」
部屋中に響く野太い大声を上げたのは、とうとう最後まで無言だったはずの、
ニシロック最高責任者、火高正博氏だった。
思わず固まってしまう俺。ハルヒも暴れていた手足をぴたりと止める。
渋谷氏と伊能氏も驚いた顔をして火高氏を伺っている。

火高氏はつかつかとこちらに歩み寄ってくる。
スキンヘッドにニット帽を被り、濃いサングラスとヒゲというその風貌は正直とっても怖い。
ぴたッと立ち止まる火高氏。ヤバイ・・・怒られるのか?
と、俺の足が僅かに震え上がった瞬間――

「いやぁ、最高だぜ!!まさか審査員をギターでスマッシュするなんて!!
 久し振りにアナーキーでマザーファッキンな最高のロックバンドを見つけたぜ!!」
「へ?」
それまでの沈黙はどこへやら、急に少し危なめなテンションではしゃぎ出した。
「嬢ちゃん、涼宮ハルヒって言うんだっけか?アンタは最高だ!!
 演奏も最高だったけど何よりもその言動、思想、振る舞いが最高にロックだ!
 自分のバンド、自分の曲を最高だと信じて疑わない、そのかたくなまでの意志の強さと
 傲慢さが今の腑抜けた日本のロック界には足りなかったんだよ!!」
既に俺と古泉の手から離れたハルヒの手を握りブンブンと振り回す火高氏。
しかし、ハルヒのゴーイングマイウェイな傲慢さ、身勝手さをここまで肯定する人間がいたとは・・・。
「ふーん、オジサンなかなかわかってるじゃない」
ハルヒはいつの間にやらケロリと機嫌を直している。
「俺がニシロックに求めていたのはこういうバンドだ!! 嬢ちゃん達は日本ロックの救世主だ!!
 よっしゃ、マザーファッカー達! おめえらが今回の合格者だ!!
 渋谷さんも伊能さんも異論はないよな?」
「まあ火高さんがそこまで言うなら」
「ですね」
ちなみに山田氏は完全スルー、哀れ。
120愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:14:10.56 ID:k1QfZTb40
私怨
121愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:14:17.72 ID:4nGkNnbfO
支援
122ロックンロールスターダスト第2話(14) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:15:26.15 ID:9CSlW53p0
「と、言うことは・・・・・・」
ハルヒが目を輝かせて尋ねると、
「そうだ!! 今回のニシロックアマチュアバンド参加枠はおめえらSOSバンドで決定だ!!」

え、マジ? こんなんで決定?
「わ〜凄いです〜!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現する朝比奈さん。
「・・・・・・結果オーライ」
ポツリと呟く長門。
「いやいや、よかったですねえ」
そして安堵の溜息を吐く古泉。

「順当な結果ね!ありがたく思いなさい、オジサン!
 あたし達が出るからにはチケットは勿論ソールドアウト、テレビの生中継の視聴率もうなぎ登り、
 そして伝説のSOSバンドがその第一歩を踏み出したライブということでニシロックは永遠に歴史に刻まれるわ!!」
そしてハルヒだ。もう何と言っていいやら・・・・・・ここまで自信過剰だとある意味一周回って清々しい。
「おう! ファッキングレイトなライブ期待してるぜ!!」
そして、この火高氏も火高氏だ。
ここまでハルヒに共感出来るイっちゃった思考回路を持つ人間が、
ニシロックという大規模イベントの責任者で音楽業界の重鎮だとは・・・・・・。
やっぱり、日本の音楽業界の未来が心配だ・・・・・。

こうして俺達SOSバンドの西宮ロックフェスティバル特別出演が大決定しましたとさ。
と、言うか本当にいいのか・・・・・・? 未だもって俺の中ではその答えが出ないのであった。
123愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:16:38.32 ID:+n17datM0
GJ!続きが楽しみだw
124愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:17:22.54 ID:4nGkNnbfO
乙!
ギターで殴ったら死ぬwww

続きwktk
125 ◆rDAy9jYT0M :2007/01/30(火) 00:18:20.87 ID:9CSlW53p0
終わりです。
次はいよいよライブ編になります。
今回はあえてカットしましたが、
演奏の描写は次あたりにもっと気合を入れたいと思います。

ちなみに審査員の方々には一応モデルがいます。
つーか分かる人にはバレバレですねwww
126愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:19:59.86 ID:e+NkytYTO
不覚にも山田氏にイラついてしまったwwww

審査員みんな意見ばらばらでワロタw

続きwktk!
127愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:19:59.74 ID:8XQfj6h50
>>125
すごいGJ!筆力があって読ませる。
キャラが生きてる感じだよ。
続きwktk!
128愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:22:19.45 ID:oaZEPo4c0
火高氏さんモデルとまんますぎでワロタ
GJ
129愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:22:44.51 ID:wldcGjRa0
ブ○ーメンかな?w
たぶん違うかw
130愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:29:35.68 ID:e+NkytYTO
つーかにょろラップが気になって寝れないw
131愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:31:00.01 ID:quhMR4/7O
マザーファッキンでアナーキーなで吹いたwwwwww
GJ!
132愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:35:35.74 ID:uuG1JSgR0
保守代わりにちょいと質問。

森さんって、新川さんを呼ぶときは「新川」だったけど、
多丸兄弟を呼び捨てで呼んだことはなかったよね?

陰謀では特にそういったシーンはなかったんだが、
いまいち自信が持てない。
133愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:44:28.30 ID:e+NkytYTO
メイドと家主の主従関係があったからさんを付けていたんだと思うけど
それ以外だと呼び捨てになるのかな?
134愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:50:58.42 ID:4nGkNnbfO
機関の集まりでは森さんが上のような気がするな…

いや、冬企画の作品観てからそうとしか思えないんだわwww
135愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 00:56:42.40 ID:uuG1JSgR0
>>133-134
サンクス。確かに森さんは他の機関の人間より地位が高そうだから
呼び捨てにしそうなイメージがあるな。
しかし、多丸兄弟の場合は名字だとどっちかわからないから名前で呼ばないとならないかも。

森さん「行きなさい、裕。確実に仕留めるのよ」
多丸裕「目にもの見せてやるぜ、ゴキブリ野郎ども!」

……しばらく違和感がありそうだけど、慣れれば何とかなるか。
136愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:03:41.67 ID:Y+hixApkO
冬風のマーチ完結キテター(゚∀゚)!
楽しみにしてた甲斐があったー(゚∀゚)
137愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:06:03.71 ID:4nGkNnbfO
>>135
> 森さん「行きなさい、裕ちゃん。確実に仕留めるのよ」
> 多丸裕「目にもの見せてやるぜ、ゴキブリ野郎ども!」


あえてちゃん付けでwww
138愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:13:58.31 ID:kQfAAj1q0
ちゃんづけすると女の子みたいだよw

つーかハルヒの中で名前の有る登場人物の中ではっきり男の名前!
って感じの名前のキャラなんて一人しか居ないけどな(映画の登場人物除く)
139愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:20:37.43 ID:4nGkNnbfO
乙女な森さんも良いもんだw
140愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:40:22.35 ID:46Ge+W9dO
「ちょ、ちょっと古泉……夜道怖いからコンビニ一緒に行かない?」
141愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 01:45:38.88 ID:5UvG4AtWO
>>140
いや、古泉は俺と行くことになってる。
142愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:06:11.14 ID:geVMG7OKO
鶴屋さん「リク」
143愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 02:15:10.95 ID:geVMG7OKO
ミスったorz

鶴屋さん「リクエストをするっさ! あたしとみくるの話がたまには欲しいにょろっ!」
みくる「ふえぇ……鶴屋さん、そんなにわたしのことを想って……」
鶴屋さん「あたしとみくるの仲は永遠にょろよっ!」



最近、筆が進まないから誰か頼む保守
144愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 03:01:40.13 ID:ViJWgebW0
ほしゅしゅ
145愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 03:34:51.04 ID:PBVUzY6I0
保守
146愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 04:26:22.59 ID:daiaKx970
保守
147愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 05:33:20.34 ID:945OC8D10
保守
148愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 06:49:53.27 ID:qldz+upy0
149愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 07:17:46.15 ID:sN+JZw3V0
150愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 07:40:33.56 ID:iv0wutr3O
151愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 07:41:45.45 ID:AX7rbsCvO
152愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 08:10:49.27 ID:4nGkNnbfO
153愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 08:13:07.15 ID:Q2SrOHFm0
154愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 08:45:09.90 ID:lcBr2za20
155愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 08:59:08.36 ID:i0l+HG3AO
156愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 09:14:25.38 ID:kQfAAj1q0
157愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 09:21:51.78 ID:XLqma8pj0
長門とみくるの身長って同じじゃないよな?
158愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 09:32:23.93 ID:e+NkytYTO
みくる 152cm
長門 154cm 
らしい
159愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 09:54:07.16 ID:XLqma8pj0
知ってる
160愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 10:04:13.35 ID:8XQfj6h50
>>159
何で聞いたのw
161愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 10:05:00.77 ID:XLqma8pj0
GMGで身長が同じって出てたから
162愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 10:18:45.56 ID:qldz+upy0
ホモ笹の葉裸ダム
163愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 10:24:16.25 ID:vzXF6UD60
>>162
ちょっとアナル行ってくるわノシ
164愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 10:25:26.55 ID:XLqma8pj0
自分のケツを追い掛けぐるぐる回ってる>>163の姿が…
165愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 10:48:04.56 ID:5UvG4AtWO
2センチならほぼ同じではある
166愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 10:50:09.74 ID:XLqma8pj0
短小卒業!!!
167愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 11:06:49.23 ID:SR0V739iO
152aは最近の体位向上を考えるとちょっと小さくないか。それとも未来はあまり栄養状態が良くないのか、
むしろ小さいことが美しいとされていて、成長を抑えているのか。
いやしかし朝比奈さん(大)はそれなりに大きかったな。女性は第二次性徴のころに身長の伸びが止まるようだから、
まさかまだ小学生くらいの年……ってことはないですよね?

「どうなんですか、朝比奈さん」
「禁則事項です…」
「ナプキンって知ってますか?」
「? 喫茶店でナイフやフォークの下に敷いてある紙のこと?」
「これはまだ初潮の来ていない幼女……中出しし放題だヤホーイ!
朝比奈さん、付き合ってください」
「え、あ、う……はい、わたしでよかったら、喜んで」

ハッピーエンド
168愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 11:37:07.37 ID:4nGkNnbfO
●<保守
169愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 11:58:25.84 ID:0EKSW8ujO
長門「おい、昼だぞ」
170愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 12:05:50.29 ID:i0l+HG3AO
つ野村不動産
171失恋物書き ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 12:35:33.00 ID:KuaaAbdo0
人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うよね。
これ、どう思う?
172愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 12:37:43.55 ID:U6Bfuy880
後悔先に立たず
173愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 12:38:46.91 ID:sN+JZw3V0
ヤって後悔したらお前一生ものだからちゃんとゴム用意しろよ
174失恋物書き ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 12:41:16.30 ID:KuaaAbdo0
じゃあさ、たとえ話なんだけれど、
テスト期間中なのに何を思ったのか小説を書き始めて、
とりあえず前編は完成したんだけれど後半は完成するかどうか分からないとき、
あなたなら投稿する?
175愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 12:42:18.63 ID:XLqma8pj0
俺は投下せずに自費出版する
176愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 12:48:31.44 ID:945OC8D10
投下してみて反応を見る。
wktk。
177失恋物書き ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 12:57:06.74 ID:KuaaAbdo0
ちっとも進展しないテスト勉強に私は飽き飽きしているの、だから……
SSを投下してスレ住民の反応を見る
178 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 12:58:09.34 ID:KuaaAbdo0
サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいい話だが、
それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかというと、
これが恥ずかしげながら、中学一年まで信じていた。
母親はイベント好きな人だったし、父親はそんな母親の言いなりになってばかりで、まあそんな姿も楽しそうだったんだが、
そんなことだから、宇宙人や未来人や幽霊や超能力者や、悪の組織や、
それらと戦うアニメ的特撮的漫画的ヒーローたちがこの世に存在しないと気づいたのは相当後になってからだった。
しかし、現実ってのは意外と厳しいっ!!
中学に上がる頃に両親が死んだことにより、否応もなしに俺は現実の世界に引き込まれた。
居候させてくれる叔母は忙しい人らしく、家事に追われる毎日の中で、いつしか俺はテレビのUFO特番や心霊特集を見なくなった。
宇宙人? 未来人? 超能力者?
そんなことはどーでもいい。こちとら家事で忙しくてそれどころじゃねーっての。
中学を出る頃には家事にも慣れてきて、遊ぶ暇も出てきた。
俺はたいした感慨もなく高校生になり、そいつと出会った。
179 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 12:58:36.37 ID:KuaaAbdo0
自分で夜食を作りながらの受験勉強が効を奏したのか、なんとか合格した学区内の県立高校はえらい山の上で、
親父とお袋もここに通ったらしいが、そのころからこの急坂は変わっていないらしい。
何が悲しくて文明も発達した21世紀のこの世の中、肉体に鞭打ってこの山を登らなきゃならないのかと考えると、
低血圧気味でブルーな脳みそに、限りなく黒に近いブルーがさらに添加される。
そんなわけで。俺は新しい学び舎で不安と希望に満ち溢れていた新入生特有の顔つきとは関係なく、
俺は薄らぼんやりと今夜の献立のメニューについて考えていた。
男はブレザーで女はセーラー服という奇妙な趣味を持つ校長の眠気電波攻撃を耐え抜き、
俺は配属された一年五組に嫌でも一年間は顔を突き合せなければならないクラスメイトとぞろぞろ入っていった。
担任の谷川なる人物は自分もここの高校卒業であるといったようなことをひとしきり喋り、
「みんなに自己紹介してもらおう」
と言い出した。
まあありがちな展開だし、ちゃんとネタも用意していたから驚くことはない。
男女交互に並んでいる右端から順々に立ち上がり、氏名、出身中学プラスαの自己紹介をはじめ、ついに自分の番がやってきた。
昨日の晩から考えていたネタでなんとかクラスの半分ぐらいのウケを取ることに成功し、
安堵の息とともに席に座りながら、俺の後ろに座る幼馴染の谷口の駄々すべりするギャグを流し聞いた。
列が一番後ろまでながれ、また前の方から自分の隣へと流れてくる。
自分の斜め左の奴の自己紹介が終わり、俺の隣の女子が立ち上がる。
自分の自己紹介を終えて気の抜けていた俺は、次のそいつの言葉をどうして予想できようか。
180 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 12:59:10.39 ID:KuaaAbdo0
「長門有希」
中学校名を言わず、いきなり自分の名前から言いはじめたのは今までのパターンとはちょっとずれたが、
まあここまでは普通の自己紹介だった。
机にひじを突いて、俺はぼんやりとその冷たい声を聞いていた。
「ただの人間には興味がない。この中に自立進化の可能性の鍵となる自分の思い通りに環境情報を操作する能力を持つ者がいたら、私のところに来なさい。以上」
さすがに顔を上げたね。
ボブカットをさらに短くしたような髪、名前の"ゆき"の通りの白い肌に、田舎で見上げたちり一つない夜空のような黒の瞳、
クラス全員の視線を受けてもなお揺るがない表情の欠落した顔、どこか人形めいた雰囲気を持つ少女がそこにいた。
長門は回転するレーダーのごとき無機質な動きでクラスを眺め、最後に呆然とする俺を視線に捕らえてから着席した。
ここ、笑うところ?
結果から言うと、それは嘘でも冗談でもなかった。
いや、この長門有希は嘘や冗談から遥か500光年は離れているような存在だった。
後に身をもって知るんだから間違いない。

こうして俺たちは出会っちまった。
しみじみと思う、運命って恐ろしいと。
181 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 12:59:35.36 ID:KuaaAbdo0
最初の自己紹介で誰もの頭に残る、名前を覚えさせるという意味ではまさに最強の自己紹介をした長門であったが、
半日で終わった入学式後のざわめきの中では完全に無害な無機物と化していた。
新しい友人の輪を作ろうとお喋りや携帯番号の交換を始める女子たちとは無縁に、長門は本を開いていた。
こうして見ていると人畜無害な一美少女高校生だったし、たまたま席が隣だったという地の利を生かしてお近づきになるのもいいかなと血迷った俺を、誰が責められよう。
「なあ」
もちろん、話題はあのことしかない。
「しょっぱなの自己紹介のあれ、本気なのか?」
長門は本の上を高速で移動していた瞳を俺に向け、一言
「本気」
と言って視線をまた本の上に戻す。
……会話が続かない。
「なんだっけ、自立進化のなんたら……」
「自立進化の可能性の鍵となる自分の思い通りに環境情報を操作する能力を持つ者」
ついっと視線をこちらに向けて、
「あなたがそう?」
「いや、別にそんな力はないが……」
「そう」
視線をまた本に戻す。俺にはさっぱり興味がないように。
肩を二回たたかれ、振り返るとそこには外人のようにお手上げポーズでため息をつく谷口の姿が、
「そんなナンパで女が落とせると思っているのか、キョン介。ここはナンパの帝王谷口に任せてみな」
と、きらりと白い歯を輝かせる。
親が友人同士だったこともあり、谷口は幼稚園時代からの幼馴染だ。
知り合いにこんなナンパ好き(連敗記録更新中)がいるというのは、さぞかし恥じるべきことなんだろうが。
ちなみにキョン介とは俺のことだ。いい加減高校に入ったらそのあだ名はやめて欲しいのだが。
谷口は長門のところへ行き、立て板に水を流すようにナンパの口上を並べ立てる。
長門は本の上から視線を動かしもしない。
やれやれ、ほとんど荷の入っていないカバンを担ぎ上げ、谷口に背を向けた。
182 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 13:00:03.76 ID:KuaaAbdo0
そして二日目。
教科書類が追加され重くなったカバンを担ぎ上げ、俺はようやく山の上の高校にたどり着いた。
昨日の空気しか入ったなかったカバンで登るよりもずっしりと重く、これからの高校生活をさらに陰鬱とさせる。
唯一の楽しみである近所のスーパーの卵一パック98円セールのことを考えていると、
「よっ、キョン」
後ろの席から肩をたたかれた、谷口だった。
「朝っぱらからシケた顔してるな。そんなんじゃ女が逃げるぞ」
「チャック開けっ放しで女に逃げられるよりかましだろう。それで昨日のナンパはどうだったんだ」
「さすがに読書美少女はガードが固くてな。あれから一時間話しても返答はゼロだった」
返事もしない相手に一時間話す努力を別の方向へ向けていたら、お前はさぞかし大成したろうよ。
「惜しいな、このクラスでも最高レベルのAランクだ。」
「なんだ、そのAAランクってのは」
誇らしげに谷口が見せたのはどこから手に入れたのか全クラスの名簿、それも女子のものだけだ。
「一年の女子全員にAAからDDまでのランク付けをして、そのうちAクラス以上の女子はフルネームで名前を覚えたぜ」
入学して一日でそんなものを完成させる、お前は親御さんを越える大馬鹿だ。
「しかし、惜しいな。クラス最高レベルの女子だ。あれで眼鏡をかけてたらAA+ものだ」
勝手にしてろ。これ以上話していて馬鹿がうつったらかなわん。
183 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 13:00:29.47 ID:KuaaAbdo0
だが、このとき奇しくも事件は始まっていたのだ。
パァッというほど派手じゃなかったから誰も気づかないうちに始まっていて、
ここからが俺の人生のケチの付けはじめだったんだが。
実は俺は谷口と話しながら、一つの懸案事項を抱えていた。
それは朝、下駄箱に入っていたノートの切れ端、
「放課後、文芸部室に」
と書いてあった。
184涼宮恭司の憂鬱 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 13:02:20.35 ID:KuaaAbdo0
いくらなんでも早すぎやしないか?
入学してからまだ二日目、そんな早々に告白するのかシメるのか。
いやいや、これが北高流の性格調査か? いきなり下駄箱に手紙を放り込んで、どんな対処をしたかで性格を判別するという。
手紙の文字を何度もすかしてみる。印刷されたように揃っているきれいな明朝体だが、よく見るとシャーペンで書かれている。
ペン習字の見本になりそうなその文字を眺めつつ校舎内を歩き回り、俺は文芸部室の前にたどり着いた。
校舎から離れた部室棟、そのまた端っこの文芸部室。
扉をノックすると、小さく「どうぞ」と声が返る。
親父の通っていた時代から立て替えられたらしく、新しい臭いのする部屋にぎっちりと並べられた古い臭いのする本。
真ん中に置かれた長テーブルと、その奥のこれまたえらい古いパソコン。
その真ん中で古いハードカバーに目をうつしていたのは、
「長門?」
教室に居た時にはかけていなかった眼鏡をかけて、長門はそこにいた。
朝言っていた谷口の言葉は真実だと思い知った。
眼鏡をかけている長門はいかにも文学美少女といった面持ちで、何十年も前からこの部室で過ごしてきたような風格を持っていた。
俺を見て、長門は眼鏡を外して立ち上がる。
手に持っていた分厚い本を本棚に戻し、その隅から小さな藁半紙を取り出した。
「これ……」
なんだ、今度こそラブレターか、果たし状か?
どぎまぎしながらその薄っぺらい紙を受け取る。
その中身は、そのどちらとも違うものだった
185涼宮恭介の憂鬱 ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 13:02:58.24 ID:KuaaAbdo0
「入部……届け?」
がっくり、緊張してここまで来た俺が馬鹿だった。
「あのな、長門。もうちょっと待てば部活説明会もある。抜け駆けで勧誘するのは反則じゃないのか?」
「書いて」
人の話聞けよ。
「だから、俺は文芸部なんて入る気は……」
「文芸部ではない」
物静かな長門から、初めて聞いたはっきりとした否定。
その声に少し面食らう。
「文芸部ではないなら、何だよ」
「SOS団」
余計分かるかこのヤロウ。
長門は小さく息を吸い、俺を見定めて、言った。
「世界を大いに盛り上げるための……涼宮ハルヒの、団」
その瞬間、全世界が停止した。
久しぶりに聞いた、涼宮ハルヒの名前。
それは、俺の母親の名だ。
186失恋物書き ◆xwOA46Wafw :2007/01/30(火) 13:04:37.67 ID:KuaaAbdo0
とりあえず投下してみた。
タイトルは『涼宮恭介の憂鬱』でよろしく
182の五行目もキョン介に……

んじゃ、テスト勉強してくる
187愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:05:09.78 ID:4nGkNnbfO
支援
188愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:05:55.06 ID:U6Bfuy880
189愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:06:59.59 ID:4nGkNnbfO
乙!
続きwktkだぜ
190愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:13:47.05 ID:945OC8D10
乙!
続きwktk!!
あとテスト頑張れ。
191愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:24:11.15 ID:5UvG4AtWO
>>186
俺と同じ名前www
192愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:25:39.07 ID:lcBr2za20
WAWAWAwktkだぜ!

久しぶりに聞いたって事はまさか……
193愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:36:38.41 ID:915PkQ1mO
パラレルモノかと思いきや、そういう設定か!
ラストにタイトルが明かされる驚きが得られるのは、リアタイならではだな
まとめじゃこうはいかん
続き期待!
194愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 13:59:27.27 ID:e+NkytYTO
保守
195愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 14:17:19.28 ID:4nGkNnbfO
保守
196愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 14:42:30.40 ID:vzXF6UD60
やっぱり原作の文章はテンポがいいなぁ……。
197愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 15:08:36.95 ID:U6Bfuy880
age
198愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 15:30:07.43 ID:1UnxPPBf0
保守
199愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 15:49:32.09 ID:i0l+HG3AO
age
200愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 16:16:40.29 ID:yDbo7xDU0
今読んだ
恭介…てことはあの二人が夫婦にってことか
201愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 16:38:30.65 ID:1UnxPPBf0
保守
202愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 16:52:09.51 ID:i0l+HG3AO
age
203愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 17:17:27.82 ID:1UnxPPBf0
ほしゅ
204愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 17:31:57.29 ID:e+NkytYTO
ほしゅ
205愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 17:59:41.00 ID:1UnxPPBf0
保守
206愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 18:05:23.15 ID:n35FcbzoO
うおお!!つづきよみてえ!!
物書きがんがれ!!
207愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 18:08:27.18 ID:n35FcbzoO
>>143 うはwwwwおれも鶴屋×みくるはスキスキスー
だが書ける力量がないorz
誰かかけるやついるか?
いたら俺からも頼む
208愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 18:35:07.85 ID:1UnxPPBf0
ほしゅ!
209愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 18:56:13.36 ID:e+NkytYTO
ほしゅ!!
210愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 18:57:20.99 ID:9ddOO0gI0
ほしゅ!!!
211愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 19:26:46.44 ID:4nGkNnbfO
ほしゅ!!!!
212愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 19:43:06.88 ID:ATHWoWevO
ほしゅ!!!!!
213愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:01:52.33 ID:VjpnmlbL0
ほしゅ!!!!!!
214愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:16:14.55 ID:e+NkytYTO
流れをぶった切ってage
215愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:26:53.71 ID:Ikcl72gr0
遅くなったけど今から冬企画の長編投下しときますんで、
暇なときごらんになってください。
216愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:30:31.12 ID:X76//5DS0
>>215
OPPAI!OPPAIじゃないか!!
投下をずっと待ってたよ
217愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:35:10.25 ID:i0l+HG3AO
age♂
218愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:35:28.48 ID:Q0k51bwx0
おいすー(^ω^)
もうすぐバレンタインだお。でもチョコは貰えそうに無い悲しいおまいらに朗報だお!

http://ex17.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1170130346/

このスレに願い事を書くとどんな願いも叶うらしいお!
219愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:36:25.15 ID:xMYOO9qJ0
>>215
見たけど、プロローグと序章って意味同じじゃね?
220愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:42:41.21 ID:Ikcl72gr0
>>219
そうなの?
俺プロローグって言葉このスレで覚えたからしらんかった
一章って意味です。
221愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:50:48.31 ID:xMYOO9qJ0
>>220
序章と第一章ていうのは違うもんだよ。
別にどうでもいいけど
222愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 20:53:12.91 ID:JoumvCma0
別にどうでも良いけど
さすがに>>220はもう少し国語の勉強をした方が良いと思う保守
223愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:03:03.76 ID:Ikcl72gr0
よく言われる……
224愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:17:17.45 ID:1UnxPPBf0
「ユキのえほん」GJ!

泣かせやがって…
225愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:20:50.73 ID:qMhiH2iAO
投下しようか?大したモノじゃないけどね…
226愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:26:46.90 ID:0j2C9Arn0
どーぞ
227愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:29:07.82 ID:1UnxPPBf0
wktk
228愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:31:38.50 ID:kaJalfaL0
wktk
229愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:33:02.56 ID:ZkC/DVmm0
>>223
>>215
OPPAIって「中秋の人」だろ。国語勉強しないといけないのにあれは書けるのか。
一種の天才だな。負けました...。(俺も冬企画長編投下したSS職人の一人だけどね)
230K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:40:46.31 ID:qMhiH2iAO
よーし、じゃあ行くよ〜

…━━真っ青に澄みわたったアンダルシアの空でもなければ、果てしなく続くアタゴオルの草原でも無い…
午後の部室…窓の外に広がる淀んだ空の下の校庭、舞い上がる砂埃でくすんだ周囲の森、そしてその彼方に見える灰色の街並み…
それでも僕は、この景色に何度でも心を惹かれてしまう。
この歳になって訪れた「高校生」として過ごす時間も、それほど悪くないと思える程に…
窓を少し開け、ネクタイを緩めて軽く目を閉じる。
校庭から聞こえてくる少年達の凛々しい掛け声や、校舎から聞こえてくる調子の外れた金管楽器の音…
深く息を吸い込むと、乾いた冬の風の匂いがした。
「あら…今日も古泉君だけですか?」
背中から不意に聞こえる聞き慣れた声に、驚いて振り返る様な事はしない。
僕は窓の外を見つめたまま「ええ…そのようですね、朝比奈さん」と静かに応えた━━…

【K.B.F.】〜killing baby-face〜

231K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:41:17.67 ID:qMhiH2iAO
━1━

与えられた任務の為に、ここで彼等と過ごす様になってから既に1年以上が過ぎていた。
任務の対象である『涼宮ハルヒ』、そしてそれにより集められた僕を含む四人の仲間達…
少々複雑な事情とプロフィールを持つ彼等だが、その一員として彼等と過ごしながら与えられた任務を消化していく日常は、様々な紆余曲折や少々の危機的な状況を含みながらも、僕のもとに「二度目の青春時代」とも言えるべき仲間と過ごす充実した時間を与えてくれた。

しかし、最近ではそれぞれが「それぞれの事情」を優先させてしまっている為か、放課後にこの場所で一同に集う機会も少なくなってしまっている。
仲間の内の誰か一人が部室に現れると、それに都合が合えばそのまま各々が集まる訳だが、合わない日は「誰か一人」が居るだけのままで一日が終わる。
さしずめ今日の場合は、その「誰か一人」が僕であった訳なのだが…
偶然訪れた彼女、朝比奈さんと僕の「都合」一致した様で、独りきりで景色を愛でる放課後は静かにその幕を降ろした。

振り返ると、躊躇いもなく制服を脱ぎながら着替えの支度をする彼女が視界に入る。
(まったく…一度関係を持つと、こうまでも遠慮が無くなるものか…)
呆れる僕の視線に気が付いたのだろうか、彼女は悪戯っぽく笑うと「あら、邪魔をするつもりは無かったんですよ?どうぞ、そのままもの思いに更けっていらしたら…」と悪びれた様子を見せた。
「結構ですよ。それより、今日は涼宮さんはどちらに?」
「昨日、キョン君と買い物に出かけると騒いでいた様でしたけど?」
下着姿のままでハンガーに掛けられた衣装に手を伸ばす彼女。
視線を反らすのも癪だから、そのままで会話を続ける。
「そうですか。なるほど、道理で今日も何事も無い訳だ…」

232愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:41:35.54 ID:ZhGhtnacO
よければ誰かハルキョンの甘くておすすめの話教えてくれ
233愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:42:14.39 ID:ZkC/DVmm0
支援
234K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:42:47.81 ID:qMhiH2iAO
今更説明する必要も無いとは思うが、僕の主な任務は涼宮さんの精神の状態が不安定になった時に発生する「閉鎖空間」の内部で遂行される。
よって涼宮さんの精神状態がこのうえなく安定している最近では、僕に対する出動要請は殆んどと言って良いほど無い。
彼女の精神状態が安定している原因は、紛れも無くキョン君だろう。
数ヶ月前に彼と親密に関係を重ね始めてからというもの、それまで二週間に一度は発生していた閉鎖空間はピタリと出現しなくなった。
そして今では、『涼宮ハルヒ』の持つ力の全てが効力を失いつつあるのではないかと思ってしまう程、穏やかな日々が続いている。

「さてと…今、お茶を入れますね」
「ああ…どうも」
朝比奈さんは手早く着替を済ませるとお茶の支度を始めた。
今日は此処には僕しか居ないのだから、コスチュームに着替える必要は無いと思うのだが…
おそらく、この部屋に来てコスチュームを纏う事は彼女にとって習慣化しているのだろう。
(妙な習慣を身に付けてしまったものだな…)
少々気の毒な気持ちになるものの、彼女が苦に感じていないのならそれはそれで良いかとも思う。
「ところで古泉君…?最近は『バイト』の方はどうなんです?」
微笑みながら、お茶を差し出す。
ちなみに『バイト』とは僕の任務の事だ。
彼女も…彼女の所属する組織もまた、最近「涼宮ハルヒ」が見せ始めた変化について興味を持っているのだろう。
「おや…このお茶と引き替えに情報を提供しろと?」
先程のお返しとばかりに、微笑みを返しながら問返す。
しかし、彼女も負けてはいない。
「あら、お茶では足りなかったかしら?お望みなら、そのお茶以上に『熱い』一時も用意できますよ?ウフフッ」
椅子に座る僕の後ろに立ち、悪戯に首筋に腕を絡ませる…
やれやれ…だ。
つくづく「女」って生き物は解らないと思う。
ここに集まる五人の…僕と朝比奈さんを除く三人の中の、誰が彼女のこんな姿を想像出来よう。
「遠慮しておきましょう?生憎、猫舌なものでね…」
「あらあら…残念ですこと」

235愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:42:57.22 ID:JoumvCma0
>>232
涼宮ハルヒの妊娠
236愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:43:30.27 ID:ZkC/DVmm0
支援
237愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:44:33.62 ID:ZkC/DVmm0
>>232
http://haruhino.yu.to/list2.html
行って
dIPa2p9Hdo
を読む。
238K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:46:39.54 ID:qMhiH2iAO
「…ここ一ヶ月、『バイト』はありません。残念ながら、もの凄く暇でね…。これはあくまでも私見ですが、このまま僕の『バイト』は、いずれ必要無くなるのでは無いかと…」
「なるほどね…それで長門さんは今日も居ないのですね…」
「…どういう事です?」
突拍子も無い事を言い出した朝比奈さんに、僕の声の音量が少し上がる。
彼女は僕の後ろから離れると、正面に回りこみ椅子に腰を降ろした。
「古泉君の推測は恐らく当たっていると思いますよ?
そして…私は、このまま涼宮さんの力が消えてしまえば、全てが平穏に解決すると思っています」
「同感ですね」
「でも、それを良しとしない勢力も少なからず存在する…」
「急進派…と呼ばれる勢力ですか?」
「…そう。私の周囲にも貴方の周囲にも、そして長門さんの世界にも存在するそれらの勢力は『涼宮ハルヒの力』が消失する前に、なんとかして彼女の力を利用して『何か』を起こそうと企んでいる…
まあ、コレは私自身の私見を含んだ仮説ですけど」
「いえ、的は得てると思いますが…」
「…ところで、長門さんの世界の急進派は、特に過激なのはご存知ですか?」
「ええ。…まあ後で知った事ですが、此迄も幾度と無くキョン君や涼宮さんに接触を試みている様ですね。ことにキョン君は『とんでもない目にあった』とか…」
「確かその時も長門さんが対処した筈…恐らく今回も同じ様な事態に陥っているのではないのかしら…
例えば、涼宮さんやキョン君に危害が及ぶのを未然に防ぐ為に奔走しているとか…
239愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:46:44.68 ID:KQCMhMNW0
>>232
>>237へ行って
◆2xLpx6qEVE
を読む。
240K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:47:14.58 ID:qMhiH2iAO
まあ、そんな風に考えると長門さんも此処に来て悠長に読書に興じている場合では無いでしょうね…」
「あなたの場合はどうなんです?朝比奈さん」
「特に何も…だからこそ気になって貴方に訊いたのよ?古泉君」
なるほど、確かにこのまま涼宮ハルヒの力が消えてしまえば、此れ迄の様々な出来事が全て解決する事になる。
しかし、その力を利用しようとしていた者達にとっては、これほど都合の悪い事は無い。
僕は「そうですね…」と呟くと、手元のお茶を少しだけ喉の奥に注いだ。
「何だか…これでは面白くないわ」
茶碗を机に置こうとした僕を彼女が不満気に見つめる。
「何が…です?」
「だって…結局、私の方が喋り過ぎてる…」
「では…二杯目のお茶は僕が入れましょうか?もちろん、貴女の分も…」
「フフッ、お茶では足りませんよ…?」
やれやれ…仕方がない…
椅子から立ち上がり彼女の背中に近付く。
そして、そっと髪に触れながら顔を引き寄せると、こちらに向かせて唇を奪った。
と、その瞬間…
僕の上着のポケットの中で携帯が震えた。
普通の震え方ではない、機関からの連絡事項の着信を示す震え方…
「失礼!この埋め合わせは必ず…」
僕はそう告げながら彼女から離れると、部室のドアを勢い良く開けて廊下へと飛び出した。


241K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:47:49.80 ID:qMhiH2iAO
━2━

僕は廊下を走り抜けながら、チラチラと携帯の画面を確かめる。
画面には任務を遂行するロケーションが独自に配分された座標により示されていて、その下には現地迄の移動手段…
移動手段のコード表記はd4163…
やれやれ、今回は『お迎え』は無しか…。
ここまで確認して僕は、もう一つの項目がディスプレイに表示されている事に気が付いた。
『ttt-606』
通常の任務では…ない?
閉鎖空間外の任務…?
すると、先程の座標はその場所で再度指示を受けろという事なのか。
まったく、一体どんな厄介事だろう…
部室棟の出口で立ち止まり、走り抜けた為に乱れた呼吸を溜め息で整える。
そして靴を履き替えて部室棟から出た僕は、そのまま学校の近くの駐車場へと向かった。

駐車場の右側の列の奥から二番目…
そこに僕の車は停めてある。
いや、『停めてある』ではなく『隠してある』と言うべきか。
何しろ今の僕は『高校二年生』なのだから、車を所有して運転する事ほど不自然な事はない。
そうだ、『所有』という部分も少し違う。
車は機関が所有するもので、僕は管理を任されているだけに過ぎない。
言うなれば、これは機関が僕を迎えに来れない時の為の移動手段という訳だ。
車の横に立ち、ドアに鍵を差し入れる。
久しぶりに使うのにも関わらずワリと車体が綺麗に見えるのは、ボディカラーが銀色である故だろうか。
ドアを開けて、運転席へ。
さすがに高校の制服のままでの運転はまずいので、制服の上着とネクタイを車に積んであった私服用のモノへと取り替える。
こんな小細工が出来るのも我が北高の制服がブレザーであるからこそだ。
キーを回し、無事にエンジンが回り始めた事に胸をなで下ろす。
この後に及んで「バッテリーがあがっていた」では、ジョークにもならない。
242愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:48:45.26 ID:1UnxPPBf0
支援
243K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:52:21.27 ID:qMhiH2iAO
(確か…指示の内容だと、目標の地点は隣町の駅前公園辺りか…)
僕はアクセルを静かに踏み込むと、定められたその場所へと走り始めた。

目標の地点である公園に辿りつく頃には、辺りはすっかりオレンジ色に包まれていた。

僕は路上のコインパーキングに車を停めると、携帯を握りしめながら辺りを見回した。
(さて、辿り着いた訳だが…携帯を介して指示を受けるのか、それとも誰かと接触した後に直接指示を受けるのか…)
とりあえず車から降りて、公園へと歩く。
そしてその入り口に差し掛かった時、正面のベンチに誰かが座っているのが見えた。
初老のサラリーマンといったところか。くたびれた背広と傍らに見える古びた皮の鞄…
(まさかな…)
とりあえず近付いて、そのまま隣に座る。
すると、その男は「早かったですね、予測より12分程早い…」と正面に視線を定めたまま呟いた。
どうやら、この男を介して僕に指示が下されるらしい。
男は続ける。
「今から約37分後、この公園の南側にある『ルシーニュ』に涼宮ハルヒとそのクラスメイトが現れる。そして…彼等を狙う者も」
ルシーニュは1年程前にオープンした流行りのスタイルのショッピングプラザだ。
八階建てのビルに様々な若者向けのテナントを抱えていて、中々盛況だと聞いている。
「なるほどね。今回の任務は『涼宮ハルヒ等の身の安全を確保せよ』と…」
「いや、『命を守る』と言った方が適切だ。敵の狙いは涼宮ハルヒを絶対的な危機に陥れて彼女の持つ『力』を引き出す事。
だが今回彼等を狙っているのは、金で雇われたゴロツキだ…こいつが少々厄介でね、既に20人程殺している」
「敵の人数と襲撃の手段は?」

244愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:52:46.05 ID:1UnxPPBf0
しえn
245K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:52:52.15 ID:qMhiH2iAO
「1人である事は判っている。それ以外は…すまない、把握出来ていない」
ここまで話を聞いて、僕は先程の朝比奈さんとの部室での会話を思い出した。
急進派の存在…
今回、涼宮さんとキョン君に襲いかかろうとしている『それ』は、まさしく『僕の世界』のものだ。
しかし、この男は一体何者だ?
機関の人間が持つ独特な気配がまるで無い。
にもかかわらず、涼宮さんや此方の動きを的確に把握している様だが…
少々の疑念を感じながらも、僕は「了解しました」と男に告げベンチから立ち上がる。
そして公園の出口へと歩きはじめると、背中から男の声が低く響いた。
「少々危険な任務ではあるが、かつてKilling-babyfaceと呼ばれた君だ、心配は必要無いと思っている。成功を祈るよ」
…この男!
僕の過去を知ってる…!?
驚いて振り返り、先程のベンチを睨みつける。
しかし…
そこにはもう、誰も居なかった。


246愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:53:36.93 ID:1UnxPPBf0
しえん
247K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:55:33.36 ID:qMhiH2iAO
━3━

「ここがルシーニュか…」
帰宅途中の学生で溢れかえるエントランスで、思わず僕は呟いた。
平日の夕方でこの有り様だ、人気の程が伺える。
ここに来る前に、車の中で制服に着替え直してきたのは正解だった。
もっとも、涼宮さんやキョン君と接触した時の事を考えると、必然的と言えば必然的だが。
ふと腕時計を見ると、先程の男が言っていた時間が迫っている事に気が付く。
(あと10分少々か…)
とりあえず、建物の構造を確認する為に周囲を歩く。
出入り口は約16メートル間隔で、建物の四方から入れる様に四カ所…
これでは、入り口で涼宮さん達が来た事を確認するのは難しい。
(仕方が無い、先回りをするか…)
店内に入り、売り場の案内図を探す。
どうやらエレベーターの横にあるパネルがそれらしい。
1階から2階は女性向けの服飾関係、3階は男性向け…そして4階から上は雑貨やらスポーツ用品やら…
おそらく、1階だけを見て涼宮さん達が帰るということは無いだろう。
確実に、それより上も見て回る筈だ。
だとしたらエレベーターかエスカレーターを使うか…
エスカレーターとエレベーターの数と位置を確認…すると、双方共に一基づつある事が判った。
エレベーターは非常に混雑している様だから、涼宮さんの性格的にエスカレーターを使うと考えるのが妥当だろう。
僕はエスカレーターの登り口にある柱にもたれて、彼等が訪れるのを待った。

「ちょっと、キョン!早くしなさいよっ!」
込み合う通路の向こうから、聞き馴染みのある声が響く。
「大丈夫だって!売り切れる様な代物では無いだろうに…」
「煩いわねっ!アタシのセンスに触れたのよ?もしかしたら今日から爆発的に流行って、一瞬で売り切れちゃうかもしれないじゃないっ!」
来た…
仲良く歩いてくる制服姿の二人が見える。
248K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:56:10.48 ID:qMhiH2iAO
全く、この一見平凡な高校生のカップルが、殺し屋禍いの連中に狙われているかと思うと哀しくなる。
涼宮ハルヒという存在はある意味悲劇的だな…
まあ、それはともかく…彼等が僕に気が付かなければ、こちらから声を掛けようと思う。
気が付いてくれるに越した事は無いが…
そして、それ以降は状況的に共に行動した方が無難だろう…
色々と考えているうちに、ほんの目と鼻の先まで彼等は近付いていた。
そして僕の存在に気が付いたらしく、驚いた様な声をあげる。
「あれ?古泉じゃないか!」
「本当だ!何してるの?ハハァ…さてはデートの待ち合わせとかっ?」
僕は軽く会釈をすると「さあ、どうでしょうね」と笑ってみせた。
「えっ?何っ?本当にデートなわけ?」
「あははっ、違いますよ。まあ…待ち合わせはしていたんですが、相手の都合が悪くなってしまいましてね。
丁度今、これからどうしようかと考えていた所です」
僕の言葉に二人は顔を見合わせる。
そして、すぐにこちらを向くと「なら付き合いなさいよ」「一緒に行くか?」と次々に口を開いた。
「では、お邪魔でなければ…ところで、何を買いにいらしたんです?」
「ハルヒがな?妙なモノを見付けちまって…
まあ…一見普通の地球儀なんだが、陸地の部分がマグネットになっていて、自分の好みに世界を作れるんだ…」
「はあ…世界を…ですか…」
あなたなら、そんなものは必要ないでしょう?と迂濶にも口にしてしまいそうになるが、当然余計な事だから言わないでおく。
「そうですか、面白そうですね」
「でしょ?ほらキョン?古泉君だって面白いって言ってるわよっ?早く行かないと売り切れるわっ!」
早足で歩き始めた涼宮さんの後にキョン君が続く。
そしてその後を追う様に僕も歩き始めた。

その地球儀の売り場は五階にあった。
雑貨売り場の中ほど、陳列棚に囲まれる様に置いてある腰の高さ程の台の上に何個か並べてある『それ』に、涼宮さんが目を輝かせる。
「あった!ねえ見て、二人とも!これよ、これ!」
「全く…ハルヒの趣味は解らん…」
249愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:56:40.53 ID:1UnxPPBf0
支援
250K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 21:56:45.87 ID:qMhiH2iAO
「まあ、よろしいのでは?それにこれ、随分と良く出来ていますよ?」
僕は地球儀を手に取り、興味深げに見つめる素振りをしながら周囲の様子を伺う。
(おそらく今も、敵は僕達の行動を何処からか監視している筈だ)
さて、その敵は果たしてどのように仕掛けて来るだろうか…
先程の男の話によると相手は金で雇われたゴロツキ、だが20人も殺したという実績を持つらしい。
本来の目的が『涼宮ハルヒを危機的状況へ陥れて、その力を引き出す』という事であったとしても、間違いなく最初から『殺す』つもりで来るだろう。
251愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 21:58:12.81 ID:6Spkuk0t0
支援
252K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:01:03.29 ID:qMhiH2iAO
「まあ、よろしいのでは?それにこれ、随分と良く出来ていますよ?」
僕は地球儀を手に取り、興味深げに見つめる素振りをしながら周囲の様子を伺う。
(おそらく今も、敵は僕達の行動を何処からか監視している筈だ)
さて、その敵は果たしてどのように仕掛けてしかも、それほどの数を殺しておきながら今も尚『殺し』を生業にしているという事は、何か特別な手法を得意としている筈だ。
例えば…事故に見せかけて殺すとか…。
それには、こちらの行動を逐一監視する必要がある筈…
いつでも行動に移せる様な場所で…
(何処だ…何処から見ている…?)
陳列棚の間の通路の全ての方向にそれらしき人影は居ない。
となると…何処かで待ち構えているのだろうか。

「さて…と、さっさと買って部室に置きに行くわよっ!」
「ええっ?部室に置くのか、それ!」
「何よっ!みんなにも遊ばせてあげようっていう、アタシの気遣いが解らないのっ?」

地球儀を抱えた涼宮さんとキョン君が会計へ向かう。
僕は二人に気付かれない様に少しその場から離れると、辺りをもう一度見回した。
売り場…会計の行列…エスカレーター…エレベーター…ん?
エレベーターの横に居る男…
先程からあのままだ…
(何をやっているんだ…)
その様子を不審に思った瞬間…
エスカレーターの方から喚きが起こった!
「あれぇ?止まっちゃったよ?」
「何これ!故障?」
どうやらエスカレーターが、何らかのトラブルで停止してしまったらしい。
何処からともなく係員が飛んで来て、エスカレーターの上から降りる様に呼び掛けている。
そして誰も居なくなったのを見計らうと、入り口に『調整中・申し訳ありませんがエレベーターを御利用下さい』
253愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:01:18.42 ID:1UnxPPBf0
支援
254愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:02:04.91 ID:vhxv9iQm0
支援
255K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:02:29.62 ID:qMhiH2iAO
と書いてある立て看板を立てた。
それにより買い物を済ませた人々の流れが、エレベーターに集中する…

(まさか…こういう事か…?)

僕は一瞬、敵の懐中を見た気がした。
エレベーターでなければ帰れない状況を作り、涼宮さん達をエレベーターへ乗せる…
そしてそのまま事故に見せかけて…
だとしたらまずい!
涼宮さんにエレベーターに乗らない様に告げなければ…
慌てて彼等の居る場所へ戻ろうとする…が、しかしエスカレーターの故障で混乱した店内は、全くと言って良いほど身動きが取れない。
しかも僕は…
予想以上の人波に、あろう事か二人を見失ってしまった事に気が付いた。
慌てて携帯を鳴らしてみるものの…凄まじい雑踏の為か通じない。
(仕方がない、エレベーターの入り口で待ち構えて、二人が乗る直前に阻止するか?…だが…この行列を経てエレベーターに辿り着いた彼等が素直に話を聞いてくれるだろうか…)
どうやら彼等をエレベーターに乗らせない事は諦めなくてはならないとみた…ならば!
僕は壁伝いに移動して少し先にある非常口から非常階段へと走り出た。
そしてそれを、全力で上り始める。
(エレベーターの稼働を止める方が早い…!)
おそらく先程エレベーターの横に居た男が敵だ。
涼宮さん達がエレベーターに乗ったのを見計らって、その場から何らかの操作をする。
その操作を受けるのはエレベーターに仕組まれた細工…
そして涼宮さんがエレベーターに乗った瞬間に事故は起きる!
例えば、制御不能等が原因で下端まで落下する様な事故が!
すっかり暗くなった建物の外…闇の中に浮かぶ非常階段を、足元からの微かな街明かりを頼りに全力で駆け上がる。

256K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:02:55.27 ID:qMhiH2iAO
やがて僕は、階段を上りきり屋上へと辿り着いた。
(エレベーターの機械室がある筈…)
辺りを見回すと、右の方に四角く付き出た小屋の様なものが見える。
(これだ!)
急いで駆け寄り、扉に手をかける…
(細工を外すのは、恐らく無理だ。せめてエレベーター自体を止めてしまう事が出来れば…)
その時!背中に『何か』を突きつけられた気がした。
振り返ろうとする僕を野太い男の声が制する。
「それ以上動くなよ…?」
視界の右奥に微かに見える黒い影…
まさか…エレベーターの横に居た奴か…?
「…ふん、追い掛けてきたのかい?」
「ああ…君は足が早いね。追い付くのに苦労したよ」
「いいのかい?持ち場を離れて」
「大丈夫。君を始末したら、すぐに戻るからね」
257愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:03:38.03 ID:1UnxPPBf0
支援
258愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:04:47.52 ID:vhxv9iQm0
支援
259K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:05:52.45 ID:qMhiH2iAO
「言うまでもなく…背中からコイツでズドン!だ」
本来なら一番それが簡単な筈だ。
だが、そうしないのは後で余計な騒ぎになると面倒だからだろう。
『屋上から高校生落下!自殺?』と『屋上にて謎の射殺体!被害者は、なんと高校生!』では、あまりにも警察や世間の反応が違いすぎる。
「別にズドンとやって貰って構わんよ…
ただ、それほどに言うのなら銃の安全装置くらいは外しておいてほしいモノだな…」
「何だと…?」
背中に付きつけられた銃口から、男の微かな動揺が伝わる。
そしてそれを感じた瞬間…僕は全力で体を反転させながら、左手の甲を銃を握る相手の手首に打突けた!
がチャリと音を立てて足元に転がる銃。
慌ててそれを拾おうとする男の顔面に、すかさず右膝を打ち込む!『ゴキッ!』
鈍い感触…鼻骨をヤレたか…?
だが、その程度では用に足らない。
相手は一応プロの様だし…
すかさず後頭部を押さえ込み、そのまま…2回…3回…
グシャッ…グシャッと不愉快な音がする。
そして血の臭い…
スボンが血で汚れるのがたまらなく不快だが、そうそうキレイ好きでもいられない。
4回…5回…6回…
膝先に更にグシャリとした感触…
それと同時に…ガクリと男は崩れ落ちた。

終わったな…

動かなくなった男と、軽く汗ばんだ僕の間をビル風が足早にすり抜ける。
体が冷える前に帰りたいところだ…
だが、この動かないヤツの後始末をしなければならない。
さて…どうしたものか…
260愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:06:05.08 ID:1UnxPPBf0
支援
261愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:07:57.93 ID:vhxv9iQm0
支援
262K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:08:12.86 ID:qMhiH2iAO
━4━

「ねえねえ、みんなっ!今朝の新聞見たっ?」

涼宮さんが部室に飛込むなり、みんなに語りかける。
最近では珍しく、仲間が全員揃った部室。
いや、『揃った』のではなく涼宮さんが『揃えた』のだろう、昨日買った地球儀を見せびらかす為に。
だが話題は地球儀ではなく、彼女が昨夜体験した『エキサイティングな事件』の報告で終始した。
その事件が今朝の朝刊に大々的に掲載されていたからだ。
ちなみに、事件の内容はこうだ。

『話題のルシーニュで原因不明のエスカレーター故障、そしてその直後に屋上で自殺した男の謎!』

「昨日ね、キョンとルシーニュへ行ったのよ!すっごい混んでたんだけどさ?
あ、途中で古泉君にも会ったわね!
それでね、買い物を済ませて帰ろうとしたら、『エスカレーターが止まったからエレベーターで帰ってくれ』って言われたのよ?
で、仕方なくエレベーターに乗る事にしたんだけど物凄い行列でさ?
結局、並び始めてから1階に降りるまで1時間もかかったわ!
やっと店から出れると思ったら、今度は物凄い数のパトカーが来て…」

263愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:08:33.38 ID:1UnxPPBf0
支援
264K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:08:59.13 ID:qMhiH2iAO
自殺…ね。
昨日の屋上での一件、相手の顔を膝で蹴り潰して倒したあと、事を誤魔化す為に相手の口の中に銃を突っ込んで頭を吹き飛ばしたのは、紛れもなく僕だ。
そして…その後に銃を相手に握らせたのも僕…
まさか、これほど大々的に世間が騒ぐとは思わなかった。
余程、他に取り上げるべきニュースが無いのだろう。
平和な社会…いやいや、結構な事だ。

「こら、ハルヒ!あまり騒ぐのは不謹慎だぞ?人が死んでるんだから」
顔をしかめながら諭しかけるキョン君の横で、朝比奈さんが首を傾げながらこちらを見る。
僕はそれに、大袈裟に気付いた振りをしながら「ああ、そうだ!昨日はすいません、急用が入ったもので」と応えた。
「そうですか…ではまたの機会に…ね?」
頷きながら、僕の茶碗にお茶を注ぎ足す彼女。
僕に近付いた瞬間に「今度は最後まで…ね?」と囁く。
そして、何事も無かった様に振り返ると「長門さんもお茶、如何ですか?」と僕の側を離れた。
(案外、長門さんあたりは昨日の出来事を全て把握しているのかもな…)
ふとそう思い付いた僕は、そのまま昨日の出来事を思い出す。
そういえば…公園に居た男、僕をkilling baby-faceと呼んでいた…
かつて全て失われていた、四年以上前の僕の記憶…
そして最近、断片的に思い出せる様になったそれらの記憶…
killing baby-face…

そうだ…僕はかつて、そう呼ばれていた…


K.B.F.〜killing baby-face〜

end
265K.B.F ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:09:29.78 ID:qMhiH2iAO
以上です。
支援ありがとうこざいました。
266愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:09:51.25 ID:vhxv9iQm0
支援
267愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:10:15.79 ID:1UnxPPBf0
GJ!
古泉カッコ良過ぎwww
268愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:12:26.75 ID:vhxv9iQm0
GJ!
本編の裏では本当にこういうことしてるのかもしれないなぁ…
でも、みくるってドジっ娘か娼婦か空気にしかならないんですね…(笑)
269愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:16:08.16 ID:8XQfj6h50
GJ!
一転ハードボイルドktkr
270 ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:22:45.75 ID:qMhiH2iAO
感想ありがとです!

またHOME…SWEET HOMEが煮詰まったら、続編を……www

いやいや、本当にありがとうこざいました!
271愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:24:00.40 ID:kQfAAj1q0
ハードボイルド古泉GJ!
272愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:26:44.32 ID:vhxv9iQm0
ふと思ったのが、この古泉ってメタルギアのグレイ・フォックスに似てる。
幼少の頃はナイフで人を瞬殺するフランク・イエーガーと呼ばれ、BIGBOSSとの
出会いの後表舞台フォックスハウンドにてグレイ・フォックスの称号を与えられる…と。

そうすると最後はキョンと地雷原デスマッチか…w
273愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:33:27.28 ID:ATHWoWevO
>>268
おまえ普通に発言謹めよ。悪い気分になる人がいるのを考えられないのか?
274 ◆2xLpx6qEVE :2007/01/30(火) 22:34:45.92 ID:qMhiH2iAO
>>272
いいなあ…闘うキョンと古泉!
次あたりでやりますか!
275愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:35:32.10 ID:n35FcbzoO
古泉かっけええwwww
ハードボイルドだな
276愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:40:10.30 ID:ZhGhtnacO
>>235
>>237
>>239すぺしゃるさんくす
277愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:43:52.41 ID:vhxv9iQm0
>>273
素直な感想を言ったまでですが。
もっとも、「みくるが〜」という点がファンの方に悪い印象を与えたのなら謝ります。
ですが、あなたももう少し言い方があるんじゃないですか?
278愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:44:44.51 ID:XLqma8pj0
ここはVIP
279愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:45:00.34 ID:R3sxaKNV0
敬語(笑)
280愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:45:06.33 ID:DgPLkacl0
これはNG推奨じゃね?
281愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:46:19.84 ID:lpl7vxdq0
どうでもいい。俺はSSが読みたいだけなんだ。他でやってくれ
282愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 22:59:10.49 ID:ATHWoWevO
言いたいことはもう他の人が言っちゃったのでとりあえず保守
283愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:04:17.93 ID:kQfAAj1q0
保守保守
サウンドアラウンドネタを組み込んだSSって投下して大丈夫なんだろうか。
284愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:05:16.60 ID:Ikcl72gr0
長門「サウザンアイランド……。許可する」
285愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:05:29.53 ID:vzXF6UD60
>>223
wiki感想所にも書いたけど大長編おつかれさま!
心温まりました。
286愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:05:31.56 ID:87ogMJXHO
厨房増えたな……

σ(゚o゚ )


σ( ゚o゚ )僕携帯厨っすか?
287愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:11:03.31 ID:8XQfj6h50
>>284
こんなとこにまでバカ長門w
288愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:14:23.83 ID:e+NkytYTO
 σ ゚o゚ )
  σo゚ )
   σ )
    σ
     σ
age
289愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:14:34.41 ID:IGoCdXBp0
古泉かっけええええ
GJ
290愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:16:01.93 ID:geVMG7OKO
思ったんだが、冬企画の感想は本スレじゃなくて、wikiに書いた方が活用出来ていんじゃない?
291愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:19:45.98 ID:ATHWoWevO
ここで投下宣言してるし、ここに感想書いてもいいんじゃない
292愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:25:44.03 ID:M8vnhg1D0
>>283
投下しないの?
293愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:26:44.86 ID:kQfAAj1q0
>>292
んー、まだ書き途中なんだ。
今晩中に纏められるとは思うけど。
294愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:28:58.70 ID:M8vnhg1D0
>>293
頑張れ。wktkしながら待ってる
295愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:30:27.26 ID:geVMG7OKO
>>291
どっちでもいいとは思うけど、せっかくwikiに管理人さんがページ作ってくれてるし……って

ま、個人の好き好きかな。
スレ汚しスマソorz
296愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:42:50.51 ID:ATHWoWevO
ほっしゅ
297愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:43:22.58 ID:CfLfQAsb0
アゲ
298愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:56:32.51 ID:87ogMJXHO
299愛のVIP戦士:2007/01/30(火) 23:57:14.92 ID:8XQfj6h50
300愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:05:40.62 ID:KMCc49ds0
301愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:08:28.39 ID:sPTxRUST0
302愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:08:46.41 ID:f/lJdIy0O
303愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:09:32.43 ID:OpTJB0eqO
304愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:11:16.65 ID:HKGi79rY0


投下する。前回までのね
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2015.html
305スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 00:12:12.71 ID:HKGi79rY0
 ハルヒに連れられて着いた場所は、裏路地というか、とにかく人通りの少ない道に位置している小さな雑貨店だった。
 ロッジ風の古着屋みたいな外装で、中に入ってみると予想通り古着と雑貨類が煩雑に並べられていて、
 歩くスペースを考慮していないその陳列具合には経営工学的に三時間は文句を言えそうなほどだった。
呼吸も整わずにへばっている俺を無視して、ハルヒは店内に入り込み、わき目もくれずに一番奥まで進んでいった。
「キョン! 早く来なさいよ!」
 店内からハルヒの怒声が響いた。
「俺はお前みたいに馬鹿体力があるわけじゃないんだ。少しは待て」
 俺は文句を言ったが、ハルヒは俺を無視して何かを選んでいる様子だった。
 俺がしぶしぶ店に入ると、ハルヒは何やら楽しそうに店員の人と話していた。
 店員は店の雰囲気と合わない、四十代半ばといった感じの見た目だった。
「それでね、これを売って欲しいのよ」
「どうやって、そんな値段で売れるんだ」
「売れば良いのよ、売れば。どうせ誰も買わないでしょ」
 ハルヒによる恐喝が行われていた。
「ハルヒ、その辺でやめとけ。店員が可哀想だ」
 前のめりに店員を説得していたハルヒの服を後ろから引っ張って、どうにか大事にならないように止めに入った。
「ちょっと、キョン! あんたのために値切ってやってるんだからね!」
「どうして俺のためなんだ」
「あんたが買うからに決まってるでしょ!」
「……ちょっと待て。今なんて言った?」
「あんたがこの指輪を買うのよ」
 ハルヒはプラスチック製のショーケースの中に入っていた指輪を指差した。
「それで、いくらなんだ?」
 ハルヒは俺に値段を伝えた。確かにハルヒの言う通り、半分ぐらいの価値しかなさそうな代物だった。
「これ高すぎると思わない?」
「確かに高すぎる。半分ぐらいで良さそうだ」
 俺はハルヒに同意した。
「ってことだから、値切りなさいよ! 馬鹿キョンが見ても安物に見えるんだからこんなの誰も買わないわよ」
306スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 00:12:47.07 ID:HKGi79rY0
「本当に何も聞いてないよな?」
「しつこいわよ! 聞いてないって言ってるでしょ!」
 俺は人生においてこれ以上ないという失態をし、結果ハルヒに指輪を買うことになった。
 ついでにといってハルヒは俺の分まで買わせ――というより、最初から二つでセットのものだった――、
 さらには駅の中に店を構えているコーヒーショップでキャラメル・ラテを奢らされていた。
 ハルヒはスタンド型の椅子に浅く座り、足を組みながら、さっき買った指輪を目を細めて見ていた。
「ハルヒ」
「何よ」
「そんな指輪で良かったのか? 安物だし、誕生日とかならもっといいものを買ってやらんでもないぞ?」
「ううん。――これでいいのよ」
「それならいいが」
 ハルヒがその指輪の何を気に入っていたのかは分からなかった。
 俺から見ても明らかにフェイクに見えるし、そんなものを買うならちゃんとしたものを買ったほうが良かった気もした。
「行くわよ」
307スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 00:12:58.77 ID:HKGi79rY0
 ハルヒと俺はコーヒーショップを出て、電車に乗り、途中で別れた。
 ハルヒが意味のない怒りを露にすることはなかったし、異世界人が馴れ馴れしく挨拶してくることもなかった。
 鶴屋さんの一件以外あまりにも淡々とした日常に恐怖を感じていた。
 というよりも、俺は心の奥底で何か不思議なことが起こることを望んでいた。
 おそらく、ハルヒ以上に。
 俺はハルヒと別れて一人になり、去年のことを考えていた。
 長門をめぐる世界の有無を決めるような大事件のことだ。
 あんな大事件はこの一年間全く起きていなかった。
 確かにあんな大事件に巻き込まれるような、世界の生死を俺が決めるようなものには関わりたくなかった。
 だが、やっぱり、心のどこかで俺は何か大事件を求めていたんだと思う。
 果てしない空虚感の中で、喜ぶハルヒの姿が浮かんだ。
 俺が望んでいたのは、ハルヒが喜ぶことだったのだろうか? 
 そんな日常的で普通なことを俺は望んでいたのか? 
 昔のハルヒは日常的なことを望んではいなかった。
 それがどうだ? 今のハルヒは日常になれて、本当に非日常を望んでいるのだろうか? 
 俺はハルヒ以上に非日常を欲していた。
 この閉塞的な、息苦しいようなありふれた空気をぶち破ってくれる何かを。
308スリーウィーク:2007/01/31(水) 00:14:23.82 ID:HKGi79rY0
続く。また明日

ちょっと書くのにつまってしまった。次から話が少し複雑になります、すみません
309愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:19:20.81 ID:vLkRLLu2O
続きが楽しみ〜
310愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:23:47.34 ID:OpTJB0eqO
キョンの意味深な一言、続きにwktkせざるをえない!
311 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:26:18.32 ID:uYfSr3uf0
投下良いかな?
上で言っていたサウンドアラウンドネタがちょっと入った話です。
全部で20レス弱ほど。
312愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:29:45.38 ID:OpTJB0eqO
カマンッ
313愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:29:51.92 ID:vOTT1YcoO
wktk
314秘密の音色01/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:30:32.38 ID:uYfSr3uf0

 今日も、音楽が聞こえる。
 何の意味が有るかは知らない、何のジャンルかも分からない、音の羅列。
 意味が有るの無いのかさえ分からないその羅列が、僕を呼び寄せる。
 灰色の世界に、音が降り注ぐ。

 それは、閉じられた世界にだけ存在することを許された、秘密の音色。

 ****

 夏休みも明け、さあ新学期だとそれなりに新鮮な気持ちで登校したその日、ハルヒはいき
なり
「今日から文化祭に向けてバンドの練習よ!」
 と言って、軽音楽部から楽器を調達し、放送部から放送室を奪い、俺達SOS団は楽器の練
習をする羽目になった。
 本当、いきなりだよな。
 まあ、練習自体は去年も一応やっているし、バンド活動に打ち込んでいるおかげで他の面
倒なことに巻き込まれる無くて済むって言うんなら、それはそれで悪くない。
 去年の時みたいにおかしなものが発生する可能性が無いわけでもないが、とりあえず、起
きる前からそんなことを心配しても仕方が無いしな。
 そうして俺達は、もしもの場合のことを頭の片隅に置きながらも、去年の暮れの頃と同じ
ように、楽器の練習に打ち込むこととなった。
315愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:30:39.12 ID:ZsgToSV/0
wktk
316愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:30:49.05 ID:dE13iD2Y0
てS
317秘密の音色02/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:31:13.67 ID:uYfSr3uf0
 異変が起きたのは、一週間ほど経ったあたりのことだ。
「ねえ、古泉くん、あたしとパート交換しない?」
 その日の放課後の練習中、個人のパートのチェックということで楽器の演奏が一巡したと
ころで、ハルヒはいきなりそんなことを言い出した。
 ちなみにこの時まで俺達が練習していた楽器は、去年と同じだ。
 ハルヒがキーボード、長門がギター、俺がベースで古泉がドラムだな。
 ハルヒは、それを交換しようって言い出したってわけだ。
「……交換、ですか?」
「うん、そう」
 一瞬目を丸くする古泉に対して、ハルヒがさも何でもないかのように頷く。
「はあ、僕は構いませんが……、ですが、どうしてですか?」
 おいおいお前、構わないのかよ。
「うーんとね、こう言っちゃ悪いと思うんだけど、古泉くんのドラム、上達しているとは思
うんだけど、何か足りない感じがするのよね……」
「足りない感じ、ですか……」
「そう。まあ、それが何かってのはあたしにも良く分からないんだけど……、とりあえず、
一度楽器を変えてみたらどうかって思ったわけ」
「なるほど……」
「そういうわけだから、今日からはあたしがドラム、古泉くんがキーボードだから」
「了解しました」
 全く持って練習している方の心情など考えて無さそうなハルヒの無茶な提案に対して、古
泉が何時ものように頷く。まあ、さすがにそのイエスマンスマイルまでが何時ものままって
感じじゃなかったが。
「ん、お前、リードボーカルじゃなかったか?」
 まあ、本人達が納得しているというのなら別に俺が口を挟む必要は……、と思ったが、俺
はとあることを思い出し、ハルヒに質問してみることにした。
318愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:31:21.30 ID:vOTT1YcoO
支援
319愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:31:46.36 ID:biW3wMGe0
>>264
盛大に吹いたwwwwww
台詞は小野ボイスだがモノローグは四十代ナレーターの古泉wwww
320秘密の音色03/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:31:58.14 ID:uYfSr3uf0
「そうよ」
「じゃあ、リードボーカルがドラムってことか?」
「そうなるわね。……ああ、そういうのも結構インパクトが有って良いかもしれないわね」
「インパクトってなあ」
「良いじゃない、ドラムセットを真ん中にどーんと置いて、ドラムを叩きながら歌うボーカ
ル! インパクト大よ! うん、決定!」
 ハルヒは目をキラキラと輝かせ、思い付きだった暫定的なパート交代を、あっという間に
決定事項まで引き上げてしまった。
 藪蛇だったかも知れないな……、と思った俺は古泉の方をちらりと見たが、古泉はと言え
ば、珍しく余り色の無い表情で、ハルヒを、いや、ハルヒの前に置かれているキーボードを
ぼんやりと見ていた。


 パート交代して数日後、ハルヒは、さすがと言うべきか、あっという間にドラムの演奏方
法のイロハを身につけていた。昔とった何とやらのキーボードや、長門のギターほどじゃな
いが、高校生のバンドとしては充分過ぎるレベルだろう。
 いやはや、相変わらずスペックだけはやたら高い女である。
「ちがーう、そうじゃない」
「すみません……」
「もう……、まあ、良いわ。もうちょっと簡単なアレンジに出来ないか考えてみるから、と
りあえず古泉くんはそのまま練習を続けて」
「はい……」
 しかしその逆に、と言うべきだろうか、古泉のキーボードの腕前は全く持って上昇してな
かった。ドラムの時は結構筋が良かったように見えたのに、キーボードは勝手が違うのだろ
うか。まあ、前回のときとは状況的な差ってのも有るんだろうが……、どうも、そういうこ
とだけが理由とも思えない。
321愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:32:35.01 ID:OpTJB0eqO
支援
322秘密の音色04/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:32:54.59 ID:uYfSr3uf0
 何と言うか、キーボードに向かうときの古泉の姿は、どこか虚ろげだ。ハルヒには気づか
れないように気をつけているんだろうが、明らかに身が入ってない。いや、身が入ってない
と言うか……、ああ、あれだな、動物が苦手な子供が、仕方なく割り当てられた飼育小屋の
当番を必死でやろうとしている姿に似ているんだ。
 まさか、古泉はキーボード恐怖症なのか?
 いや、そんな間抜けな恐怖症なんてものは存在しないと思うが……。
「なあ、ハルヒ、パートを元に戻すってのは駄目なのか?」
「却下よ! あたしはドラムでリードボーカル、古泉くんがキーボード、これは決定事項な
の!」
 パソコンに向かって作業していたハルヒがヘッドホンを外したところを見計らって駄目元
のつもりで打開策を提示してみたが、あっさりと却下された。
 どうも半分意地になっている気もするが……、どうしたものかな。


 どうしたも何も、ハルヒが一度決めたことが揺らぐ気配が無く、俺が当事者でもない以上、
俺に出来ることなど何も無い……、とは言わないが、出来ることがあまり無いのは確かだ。
 とりあえずこれ以上ハルヒを刺激するのはまずいと判断した俺は、話の矛先を切り替えて
みることにした。
「なあ、古泉」
 俺はハルヒがアレンジの協力を仰ぐためと言って長門を連れてコンピ研に向かったのを見
計らって、古泉に話しかけた。
「あ、はい。何でしょうか?」
「お前さ、キーボードが苦手なのか?」
 言ってみてから気づいたが、我ながらおかしな質問の仕方だ。
 苦手……、って、それじゃ言葉の範囲が広すぎだろう。
323秘密の音色05/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:33:36.12 ID:uYfSr3uf0
「いえ、そういうわけでは……」
 古泉は言葉を濁しながら、ぽろんぽろんとキーボードを適当に叩いていく。
 音の設定が普通のピアノの音のままなので、まんまピアノを弾いている感じだな。
「んじゃ、何でそんなやる気なさそうなんだよ?」
「……そういう風に見えましたか?」
 俺の質問に対して、古泉はまるで、その意味が分からない、というような感じで首をかし
げた。おいおい、自覚無しかよ。こりゃ重症だな。
 いや、そもそも何がどうなってこういう状態なのか、俺にはさっぱりなんだが。
 こういうときに頼りになりそうな長門はハルヒに引っ張られてハルヒと一緒にコンピ研に
向かったきりだし、朝比奈さんがこの手の分野で役に立つとは全く持って思えない。
「俺にはそう見えたぞ」
「そうですか……、そういうつもりは無いんですが」
 古泉は答えつつ、さっきまでと同じように、また、キーボードを適当に叩き始めた。
 割り当てられた曲とも練習用の簡単な曲とも違う、何か、音を探すような指の動きだ。
 こいつ、何をしているんだ?
「……古泉?」
「え、ああ、どうしましたか?」
「いや、何でもない」
「はあ……」
 古泉は少しの間首を振った俺を不審に思って居たようだが、すぐに俺に対しての関心を無
くしたらしく、またぽろんぽろんと、キーボードで音を探り始めた。
 はて、こいつは一体何をしているんだろうな。
324秘密の音色06/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:34:07.29 ID:uYfSr3uf0
 その日の帰り道、俺はキーボードというかピアノというか、とにかく演奏の心得だとか技
術的なことだとかを大声で話すハルヒとそれを聞いている古泉という、ここ最近では珍しく
も何ともなくなった光景を眺めながら、隣に居る長門に向かってこっそりと訊いてみること
にした。
「なあ、長門」
「……何?」
「お前はさ、古泉がどうしてキーボードに向かうとき、身が入ってない……、そうだな、ド
ラムのときほどやる気が出てないように見えるのは、何でか分かるか?」
「……不明。ただ、推測は出来る」
「推測? 何だそれは?」
「恐らく、古泉一樹の心理的な部分が原因」
「いや、それは……、まあ、そうだろうな」
 長門の淡々とした答えに対して、俺はそれ以上何も言えなかった。
 そりゃまあ、他の要因が有るとは考え辛いからな……、例の非なんちゃら音波だか何だか
の時みたいに外部的というか、妙な宇宙生物や宇宙製ウイルスの干渉で無いのが分かっただ
け収穫と言えば収穫だが、そんなのは既に予想済みだったんだ。もしそんなおかしな連中の
仕業だったら、古泉以外にも影響が有るか、長門がもっと早く対処に動いているだろうから
な。
 今のところ、長門は古泉に対しては完全放置を決め込んでいる。
「なあ、長門」
「何?」
「もし、古泉のキーボードの腕が何時までも上達しなかったら……、お前の情報操作で、何
とかすることは出来るか?」
「出来なくは無い」
「もしものときは頼むな」
「分かった」
 こういうときの長門は、本当に頼りになる。
 まあ、俺としては、長門に頼るような事態にならない方がありがたいと思っていたわけだ
が……、事件は、それから数日後に起きた。
325愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:34:54.25 ID:vOTT1YcoO
支援
326秘密の音色07/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:35:49.69 ID:uYfSr3uf0
 古泉のキーボードの腕は相変わらず全くと言っていいほど上達せず、何時の間にやらハル
ヒは自分の練習よりも古泉の指導に熱中し始め、文句を言いつつもそれなりに楽しんでいる
のだろうというのが傍目にも窺えるようになった頃、その事件は起きた。
 その日の放課後、最早文芸部室にも寄らずに放送室に向かうのが日課と化しつつあった俺
は、当たり前のように放送室に向かい、扉を開いた。扉が開いているってことは、先客が居
るってことだ。
「ようっ」
「……」
 三点リーダ返答だが、長門ではない。
 古泉である。
 ここ最近、ハルヒが居ない時の古泉は、大抵がこんな感じだ。何も言わないまま、何かを
探るような手つきでキーボードと睨めっこ状態。
 その状態が妙に嵌っているというか、一種独特な近づき難さを感じるせいか、俺も朝比奈
さんもそういうときの古泉には殆ど何も言えないまま、ただ眺めるだけという結果に終わる
ことになる。ああ、長門は別に古泉がどういう状態だろうと何も言わないだろうから除外し
ておく。
 ちなみに今この放送室に居るのは俺と古泉だけ。ハルヒが居ないのは当然として、朝比奈
さんや長門もまだのようだ。
「あ、ああ、あなたでしたか……、すみません、気づかなくて」
「いや、気にしなくて良い」
 俺は自分から話を切り上げると、置きっぱなしになっているベースを手に取った。そうし
たら、古泉は俺に関心をなくしたのか、また先ほどまでと同じようにキーボードに向かい始
めた。
 そのまま外の世界と遮断されたかのような一角で、古泉がキーボードを叩き始める。稚拙
な、音を探すような仕草。
 そのうち朝比奈さんと長門もやって来たが、二人とも古泉には挨拶もしないまま自分の練
習にとりかかる。一種異様な光景だが、重苦しさはあまり無い。
 これはこれで奇妙といえば奇妙なんだがな。
「そう、ここは……」
327秘密の音色08/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:36:28.25 ID:uYfSr3uf0
 音を探していたような古泉が、一度キーボードから手を離し、右手の人差し指ですっとキ
ーボードをなぞっていく。
 それが、合図だったんだろうか。

 古泉が、今までの稚拙な動作が嘘みたいな勢いで、キーボードを演奏し始めた。

 長い指先が、凄い速度でキーボードの上を動いている。
 決してでたらめじゃない、でも、聞き覚えが有るような音楽じゃない。
 ジャンルも曲名も不明、ただ『凄い』としか言いようがない、どこか懐かしくて、心地よ
い音色。
 俺は手を止め、ただぽかんと口をあけて、その光景を眺めていた。
 朝比奈さんも長門も、同じように古泉の方をただ見ているだけだった。
 そりゃあ、そうだろう。
 これが昨日まで、いや、ついさっきまで、何度指導されても全くと言っていいほど上達し
なかった人間の演奏なんだぞ? 信じられるわけが無い。
 長門か、それに類する連中が手を加えればこのくらいの芸当が出来る可能性も有るだろう
が、長門の様子からすると、恐らくその可能性は無いのだろう。
 じゃあ、これは一体何なんだ。
 心地よい音色と頭の中に渦巻く疑問という、不協和音とも言い難い微妙な平行状態はそれ
から数分続いたが、唐突に、古泉の演奏は終わりを告げた。
 始まり方も無茶苦茶だったが、終わり方も形式を無視したような終わり方だった。
「すごおい……、古泉くん、すごいですぅ……」
 演奏が終わってから数十秒後か数分後か知らないが、一番最初に金縛りの解けた朝比奈さ
んが、そんな感想を漏らし、それから、ぱちぱちと控えめに拍手をした。
「あ、いえ……」
 古泉はと言えば、そんな朝比奈さんに対して、一体何を言っていいのやらって感じだ。も
しかしたらこいつ、自分が何をしたのか理解してないんじゃないのか?
328愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:36:50.69 ID:vOTT1YcoO
支援
329秘密の音色09/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:37:05.65 ID:uYfSr3uf0
 そんな馬鹿なことが有るか、という気もするが、俺の周りは基本的に理不尽なことだらけ
なので、今更その程度の理不尽さが上乗せされたくらいで俺は大して……、いや、それなり
に驚きはするだろうが、そういうことも有るだろう、くらいの解釈に落ち着くくらいのこと
は出来る。
 あんまり妙な事態に慣れすぎるのは良い傾向じゃないと思うんだがな。
「なあ、」
 これは朝比奈さんと同じように素直に感心するべきところなのか? それとも、あえて本
人が理解してないかもしれないということを承知しつつ疑問を投げかけるべきなのか? な
どという風に思いつつもとりあえず口を開きかけた俺の言葉は、次に聞こえた音で遮られる
ことになった。

 放送室の扉の辺りで、どさりと、何か床に落ちるような音がしたからだ。
 
 何時の間にやら半開きになっていたドアのところに、ハルヒが立っていた。
 金縛りだった俺や朝比奈さんと同じように、ぽかんとした様子だが……、何か、焦りの色
のようなものが窺えるような気もする。
 気のせいだろうか、と思ったが、そんな俺の楽観的な思考は、次のハルヒの言葉によって
完全に吹き飛ばされた。
330秘密の音色10/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:37:40.11 ID:uYfSr3uf0

「何で……、何で、古泉くんが、この曲を知っているの?」

 ……。
 ……。
 言葉を発したハルヒも、名指しされた古泉も、残りの俺を含めた部員三人も、全員が完全
に沈黙してしまった。……今、こいつは何て言った。
「なん、で……」
 ハルヒがさっと後ろに下がろうとして、そのまま、その場でぺたんと尻餅をついた。
 ハルヒらしくない。何時ものこいつだったら、後ろを向いたまま階段2段飛ばしくらいの
ことは軽くやってのけるんだからな。
「あ……」
 古泉が視線を動かし、ハルヒと古泉の視線が真正面からぶつかり合う。
 その瞬間、本当に、その瞬間と言っていいんだろうな。ハルヒはさっと立ち上がり、踵を
返して逃げるように走り出し始めた。
「待ってくださいっ」
 そして古泉が、そんなハルヒに弾かれたかのように、呆気に取られたままの俺達の脇をす
り抜け、ハルヒの後を追って放送室を出て行ってしまった。
「なっ……」
 わけが分からない。
 古泉のいきなりの演奏から、ハルヒの反応、言葉、そしてこの俄か逃走劇……、何もかも
が意味不明だ。
「一体何が……」
「……」
「なあ、長門、さっきのは……」
「あれは、」
331愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:38:02.75 ID:ZsgToSV/0
支援
332愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:38:06.90 ID:vOTT1YcoO
支援
333秘密の音色11/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:38:09.93 ID:uYfSr3uf0

 ****

 あたしは一人、廊下を走っていた。
 何で、何で……何で、古泉くんがあの曲を知っているの?
 だって、あれは……。
「待ってください!」
 古泉くんが、あたしの後を追ってくる。
 どうして……、って、問題はそんなことじゃないことは分かっている。あたしの方が彼に
訊かなきゃいけないことが有るって分かっているのに、あたしの足は、勝手に逃げている。
 何で……。どうして……。
「いや、来ないで!」
「待ってください! 僕は……」
 息を切らしながら追ってくる古泉くんが何かを言おうとしているけれど、あたしには、そ
れが何だか分からない。
 ……違う、あたしは、分かりたくないんだ。
 古泉くんが、キーボードが苦手だった理由。
 古泉くんが、あの曲を知っていた理由。
 そして……、どうして、彼が、あの曲を、あんな風に演奏出来たのかを。
334愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:39:00.24 ID:OpTJB0eqO
支援
335愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:39:05.97 ID:vOTT1YcoO
支援
336秘密の音色12/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:39:57.57 ID:uYfSr3uf0
 ****

「恐らく、涼宮ハルヒの記憶に有る曲。……そして、本来なら古泉一樹が知っている可能性
の無い曲」
「……どういう意味だ?」
「それは……」
 長門は、何時かそうしたように何か許可を求めるように上を軽く見上げてから、俺の方へ
と向き直った。

「あの曲は、涼宮ハルヒが今から四年ほど前に作成した曲」

 そうして、衝撃な事実を口にしたのだった。
「ハルヒが、って……、四年、前?」
「そう」
「あいつは、四年前から……、いや、そんなことはこの際後回しだ。どうして古泉がそれを
知っているんだ?」
「恐らく、閉鎖空間で耳にしたからだと思われる」
「えっ……」
「閉鎖空間は、涼宮ハルヒが引き起こした小規模な情報変動の一種。その中で、涼宮ハルヒ
が作った曲が流れていたとしても、何らおかしくはない」
 長門は、ごく淡々とした口調で、そう言った。
 そして、その長門の言葉で、俺の頭の中でばらばらだったものが、漸く繋がり始めていた。
 そう、古泉はきっと……、閉鎖空間でその音色を聞かされ続けたせいで、ピアノを自分か
ら弾くことに対して無意識に恐怖心めいた物を植えつけられていたんだ。心理的な要因って
のは、そういうことだろう。
337秘密の音色13/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:40:59.83 ID:uYfSr3uf0
 それでいて、音を探すようなことをしていたのは……、
「なあ、長門。あれは、ハルヒが作った曲そのままなのか?」
「違う、明らかに古泉一樹の手が加わったもの」
 やっぱり、そういうことなのか。
 古泉は、かつてハルヒが作った曲に恐怖心を覚えながらも、それをどうにか受け入れられ
ないか、自分で乗り越えられないか……、その道筋を、自分なりに探していたんだ。
 そして辿り着いた結果が、ああやって演奏した曲ってことなんだろう。
 全く、回りくどい話だよな……。
 ああ、そうだ……、俺は、ことの結末に着いてはあまり心配していない。古泉のことだ、何時もみたいに上手く誤魔化してくれることだろう。
 頼んだぞ、古泉。

 ****

「待って……、ください」
「……」
 廊下での追いかけっこは、あたしが文芸部室に逃げ込んだことで終わりを告げた。
 当たり前だけど、これって、捕まえてくださいって言っているのと同じ状況よね。……本
当は古泉くんが入ってくる前に鍵を閉めるつもりだったんだけど、上手く行かなかったわけ
だし。
 あたし達は、部室の入り口と奥という位置で、対峙することになった。
338愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:41:01.27 ID:vOTT1YcoO
支援
339秘密の音色14/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:41:30.73 ID:uYfSr3uf0
「あの……」
「ねえ……、どうして、あたしの後を追ってきたの?」
「それは……」
「どうせ、説明なんて出来ないんでしょ?」
 意地悪な質問の仕方だと知りながらも、あたしには、そういう風に訊くことしか出来なか
った。
 古泉くんが、どうしてあたしの作った曲を知っているのか……、多分、彼は、あたしにそ
れを説明することは出来ないはずだから。
「……」
「あの曲はね、あたしが作ったのよ。中学一年の頃かな? 習った曲を弾くだけのレッスン
に嫌になって、自分で曲を作って……、でも、イライラしていたせいか、ろくなものになら
なかったのよね。当然自分でも全然納得がいかなかったから、家以外では弾かなかったし…
…、だから、あたしと、あたしの家族以外が知っているはずの無い曲なの」
「……」
「……どうして、古泉くんがそれを知っているの?」
「……」
「ねえ、説明出来る?」
 あたしは部室の入り口で突っ立ったままになっている古泉くんのところに歩み寄ってから、
そのネクタイをぐっと引っ張った。そう言えば、古泉くん相手にこういうことをしたことは
無かったわよね。
 古泉くんは、されるがままって感じで、そのままその場に崩れ落ちるように膝を着いた。
 張り合いが無いわね……。まあ、そういう問題でもないんだけど。
「ねえ……」
 あたしも屈みこんで、彼と視線を合わせる。
340秘密の音色15/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:42:09.93 ID:uYfSr3uf0
「すみません」
「何で、謝るのよ。……あたし、謝って欲しいわけじゃないのよ」
 謝って何もかもがすむなんて理屈、あたしには通じないわよ。 
 せめて、もっとちゃんとした言い訳を用意して来なさいよ……、そうしたら、あたしだっ
て、信じるふりが出来たかも知れないじゃない。
 何時もみたいに。
「すみません……」
「だから、何で、」
「すみません、本当にすみません……。何も……、何の説明出来なくて……。許して欲しい
とは言いません……。もし、あなたが僕が許せないと言うのなら、どんな処罰でも、」
「バカっ」
 あたしは小さくそう言って、彼の頭を拳で軽く小突いた。
「えっ……」
「あたしはね……。謝って欲しいわけじゃないし、あなたが許せないわけでもないの」
「……」
「あたしは……、あなたと一緒に居て楽しいし、あなたにキーボードを教えるのも楽しかっ
たし……、でも、これじゃ、教えていたあたしがバカみたいじゃない」
「……」
「こっちは一生懸命教えていたのに、それを一足飛びに超えていかれた上、『偶然』あたし
が昔作った曲に似た曲を思いついていたなんて。……ね、そう思わない?」
 あたしは『偶然』という言葉に力を込めて、そう言った。
 多分、古泉くんなら……、きっと、その意味に気づいてくれると思ったから。
341秘密の音色16/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:42:44.04 ID:uYfSr3uf0
「それは……、あなたの、ご指導のおかげですよ」
「そうかしら?」
 話しながら、あたし達は立ち上がる。
 大丈夫、少しずつだけど、ちゃんと、あたし達は、あたし達の日常に帰れるから。
「ええ、そうですよ。あなたの日々の指導が有ったからこそ、僕はここまで上達できたんで
すよ。日々の訓練の成果が一気に出たからこそ、ああいう結果に繋がったのでしょう。ああ、
そうですね、偶然似た曲が思いつくという結果に至ったのは、やはり、あなたが指導してく
れたからこそなのでしょうね」
「うんうん、そうよね」
 そうそう、段々何時もの調子に戻ってきたじゃない。
 そう、それでいいのよ。
 ……ねえ、そういうことでしょ?
「いやはや、本当、全ては涼宮さんのおかげです。……感謝していますよ」
「ふふふ、あたしの指導が有ったんだからあのくらい出来て当然よね!」
「これからもご指導願いますよ。……先生」
「もっちろん。それじゃ、放送室に戻るわよ! これからもびしびししごいてあげるから、
覚悟してなさいよ!」
 あたしはそう言って、古泉くんの手を取って、放送室へと向かって走り出した。
 わざとらしいってのは分かっているけれど、それでも、先生って言われるのは、結構、良
い気分よね。
342愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:42:50.19 ID:vOTT1YcoO
支援
343秘密の音色17/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:43:17.44 ID:uYfSr3uf0
 ****

「いやあ、まさかこんな偶然が起こるなんて僕にも想像できませんでしたよ」
「本当、こういうことって有るのねえ」
 追いかけっこを見送ってから三十分ほどしてから帰ってきた二人は、完全に通常モードに
回帰していた。しかし、偶然ってな……、そんな言葉で騙されるハルヒもハルヒだよな。
 いや、騙されてくれるからこそ、俺達も助かっているわけだが……、そうだよな?
「けど、あたしが作った曲とはちょっと違うのよね。アレンジとか。そうね、もう一度ちゃ
んと弾いてみてくれる?」
「ええ、了解しました」
 そして古泉が、先ほどと同じようにキーボードを演奏し始めた。
 一回目との違いと言えば、気持ちゆっくり目で、途中でハルヒの指摘やら指示らしきもの
が飛んでいる辺りだな。ハルヒが一体何を考えて居るか知らないが、この勢いだと、ハルヒ
作曲古泉編曲らしいこの奇妙な一曲も、俺達のレパートリーの一曲に加えられることになり
そうだ。
 やれやれ、面倒ごとがまた一つ増えたな。
 まあ、割と良い曲だとは思うけどさ。
344秘密の音色18/18 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:43:56.38 ID:uYfSr3uf0
 ****

 あたしは結局、古泉くんからは何も訊けなかった。ううん、訊かなかったって言うべきか
な?
 ごめんね。……でも、あたしにはまだ、無理なんだと思う。
 あなたにちゃんと立ち向かう勇気が、今のあたしには、未だ、無い。
 あなたがあたしの過去を知っている意味に向かい合うには、足りないものが多すぎるの。
 だから、もう少し……、もう少しだけ、待っていて欲しい。
 騙している振りと騙されている振りを続けながら、楽しい時間を続けていく。
 それが、今のあたし達のかたち。
 今は、それでも良いでしょう?
 だから、まだ、秘密でも……、良いでしょう?

 あ、でも、少しだけ悔しいことが有るのよね。
 あの曲、あたしが作ったときはかなり無茶苦茶だったのに……、あんなに、綺麗にアレン
ジしちゃうんだもの。ねえ、これって才能の差ってこと?
 それとも……、ううん、まあ良いわ。
 細かいことは、全部お預けにしておいてあげる。

 だから今は、一緒に楽しみましょう。

 一緒に楽しく演奏しましょ!


 終わり

345愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:45:08.30 ID:9BI+Wxv90
キャラ変わりすぎだろ
346愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:46:37.34 ID:vOTT1YcoO
GJ!
いやぁ、音楽系の作品は表現が難しいだろうに、上手いなぁ…
347愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:50:30.03 ID:OpTJB0eqO
>>345
そうか?
348愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:51:34.67 ID:ZsgToSV/0
乙!
キャラ設定はサウンドアラウンド準拠って感じかな?
古泉はピアノ系得意そうなイメージあるなぁ…。
349愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:52:50.52 ID:+yOtpw1s0
ちょっとブレが強いかなぁ……
>>317の他の作品見てくる。
350 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 00:54:13.62 ID:uYfSr3uf0
『First Good-Bye』を聞きながら
ハルヒ失恋ものから一ハルに繋げる話でも書こうと思っていたのに
書き出す前に全然違う電波が飛んできてこんな話が出来上がりましたとさ。

351愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 00:55:11.28 ID:cRLkR6LQ0
涼宮ハルヒの妊娠を読んで、単純に涙が出てきた。
352愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:04:30.76 ID:zEkBfzs10
乙!
某サイトの古ハルと違ってほのぼのしてていい
353愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:11:40.64 ID:JBqboCpSO
>>352
某サイトの古ハルはどんなんだったんだ?
354愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:19:14.29 ID:zEkBfzs10
>>353
古泉がキョンを殺してハルヒを寝取ったりとにかく見てて気分が悪くなった
355愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:26:38.92 ID:r7qNRFcG0
「秘密の音色」でまとめwikiも2087ページ目なんだな。凄いよなあ。
厖大なSSの山だ。
356愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:34:38.39 ID:FaVNGXZ60
一週間あっても絶対俺じゃ読みきれない気がするw
357愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:36:15.13 ID:G9iGkxeq0
>>354
個人サイトの作品なら別に良いじゃん。スレに投下されたものなら兎も角として。
自分から見に行っておいて、関係無いところで文句言ってるのはなぁ。
358愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:41:34.54 ID:L3MYBMgE0
お前らぬくぬくスレで言い争うなよ。wikiに本音スレがあるんだからwwww
359愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:43:24.71 ID:ZsgToSV/0
>>358
wikiにはないがなw
360愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:43:49.05 ID:uYfSr3uf0
自分で書いていてなんだけど一ハルは難しいさ〜。
次は久しぶりにハルキョン+古鶴でコメディ路線でも目指しますか。
361愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 01:52:27.57 ID:vOTT1YcoO
>>360
その組み合わせ大好きっすw
めがっさwktk
362愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:02:26.19 ID:r7qNRFcG0
投下していいかな?
363愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:06:42.00 ID:ZsgToSV/0
wktk
364パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:06:58.53 ID:r7qNRFcG0
パラレルワールズ

プロローグ

第1章 ファーストデイ

を投下します。

に今までの内容があります。
家人が来た場合は投下の中止もありです。
15レスくらいのよていです。

=====
パラレルワールズ

プロローグ

俺はいつもの様に早朝強制アスレチックに励んでいた。要するに、
普通に登校していたわけだ。と、突然、誰かが後ろから頭を鞄で
ガン、と叩きやがった。
「いってー」
ふりむくとそこには100ワットの笑顔を満面にたたえたハルヒが立っていた。
365愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:09:09.15 ID:ZsgToSV/0
支援
366パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:09:25.83 ID:r7qNRFcG0
「なにすんだ!」
怒りながらふと、俺は思った。そう言えば登校時に坂道でハルヒと会うことは
まれだ。いや、初めてかも知れない。大体、ハルヒの方が登校時間が早いからなあ。
「なに、ぼーっと歩いてんのよ。元気だしなさいよ」
俺は十分、元気があるぞ、ハルヒ。お前がいつもありすぎなんだ。
「うるさいわね。元気なんてありすぎて困るもんじゃないのよ!」
行くわよ、というとなんと俺の手をにぎってぐいぐい歩き始めた。
何かがおかしい。なぜ、ハルヒが俺の手を引いて歩いているのか。
これじゃあ、まるで「カップル」みたいじゃないか。
「やめろよ、ハルヒ。勘違いされるだろ!」
「何を勘違いされるって言うのよ。いまさら。毎日のことでしょ!」
毎日のこと?毎日何をしているっていうんだ?
校門に着くとハルヒはくるっと向きなおり
「じゃあ、さ、ちょっと部室に行くから先、教室行ってて」
というが早いか、やおら、俺の顔をぐいっとひきよせると軽く
唇と唇をさっと触れさせると
「じゃあねっ」
と言って駆け出した。
俺は呆然としながらただ、ハルヒを見送った。思えば、この時、
何かがおかしいと気づくべきだった.....。

第一章 ファーストデイ

第一節 キョンの場合[I]

俺が教室に入ってからしばらくするとハルヒが飛び込んで来た。俺の方を
367愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:11:06.61 ID:w9kQ6ZZR0
支援
368パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:11:10.34 ID:r7qNRFcG0
みながらやけにニヤニヤしている。はっきり言って不気味だ。なんで
ハルヒはこんなに上機嫌なのか。
「涼宮さん、最近、機嫌がいいわよね。やっぱり彼氏ができたからかしら」
という声を耳にして、振り返り、俺は凍り付いた。つぎの瞬間、俺は椅子から
飛び上がると窓にへばりついた。
「お、おまえ、ここで何してるんだ!」
「何しているんだとは御挨拶ね。代表委員が自分のクラスにいるのがそんなに意外?」
そう言いながら俺に笑いかけているのはまぎれもなく朝倉涼子だった。
「あなたが涼宮さんとつきあい始めてから、涼宮さんは落ち着いてきたわよね。
よろしくね」
朝倉はいつ戻って来たのか。なぜ、誰も騒がない?カナダに転校した同級生が
予告もなく登校してくれば教室は大騒ぎになってもよさそうなもんだ。
が、誰一人、朝倉がいることを不審に思っている形跡はない。
「ハルヒ」
「何よ?」
「朝倉はいつからここにいるんだ?」
「はあ?何いってんの?頭がおかしいんじゃないの?」
「だって、あいつはカナダに転校したはずじゃ」
「キョン、あんたって前から変わったところがあるとは思ってたけど、
相当おかしいわね、やっぱり」
おかしいのはどっちだ、ハルヒ。いっしょにマンションに行ったのを忘れたか?
「マンションって誰のよ?有希のマンション?」
どういういことだ?それに朝倉はさっき何と言った?俺とハルヒが「つきあっている」と?
昼休みに疑念は確信に変わった。鞄をみると、確かに朝、いれたはずの弁当がない。
うわ、このまま飯抜きですごすのは地獄だな、と思っていると、ハルヒの声が聞こえた。
「何やってんのよ。早くたべなさいよ」
369愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:12:06.29 ID:ZsgToSV/0
支援
370愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:12:08.43 ID:w9kQ6ZZR0
しえん
371パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:12:32.56 ID:r7qNRFcG0
振り向くと、ハルヒの机の上には二人分の弁当。
「今日のは結構、凝ってるんだからね。残したりしたら死刑だから」
「おまえ、なんで弁当を作って来たんだ?」
「キョン、本当に頭大丈夫?毎日作って来てるじゃないの、あんたの分も。何が言いたいの?」
俺は返事もせずに教室を飛び出した、「ちょっと待ちなさいよ」というハルヒの声を無視して
廊下を走った。目的地は部室。というより、そこにいるであろう長門有希だ。
ノックもせずに部室に飛び込み、そこに長門がいることを確認すると腰が抜ける程安心した。
が、安心するのはまだ早いかもしれない。この長門はあの長門ではないかも知れない。
俺は尋ねた。
「長門、おまえか?」
長門は本から顔を上げると、俺の方のじっと見た。
「俺が解るか?」
長門はかすかに首をかしげた。
「情報統合思念体をしってるか?」
長門は微かにうなずいた。ふう、第一関門は突破か。
「長門、今何が起きているか把握しているか?」
「している」
助かった!
「長門、どうなっっている」
「あなたが既に予想した通り。世界は改変された」
「いつ?」
「それは問題ではない」
「じゃあ、誰がやった。お前か?どう変えたんだ?」
「わたしも改変を行った」
「おまえ『も』?」
「そう。改変を行ったのは今回はわたしだけではない」
372愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:12:42.32 ID:+iQBUMThO
支援
373パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:12:59.34 ID:r7qNRFcG0
「じゃあ、誰と誰だ」
「SOS団員全て」
何?5人が同時に改変を行った?そんな能力、お前とハルヒ以外にはないだろ?
「本来はそう。しかし、今回は複雑な事情により、5人が世界を改変する能力と機会を
与えられた」
なんと。じゃあ、5人同時に世界を改変したのか。よくそれで改変に矛盾が生じなかったな。
「矛盾は生じようがない。5人がそれぞれ、独自に世界を改変した」
何?じゃあ、どうなるんだ?
「通俗的な言語で言うとパラレルワールドの発生。5人の意志で改変された5つの世界が
同時に存在している」
なんで、そんなことをお前は知っている?
「他の4つのパラレルワールドにいるわたしと同期できるから」
なんてこった。元に戻せないのか?
「簡単ではない。戻す場合には5人全員の意志が必要。一人でもこのままがいいと思えば
元にはもどれない」
マジかよ....。で、他の世界ではどうなっている?
「自分が作った世界に満足しているものもしていない者もいる」
なんでだ?自分で作った世界なんだから、不満なんか無いだろ?
「そうとはいえない。願望は潜在的なものの場合もある。潜在的な願望が具現化した場合
本人は認めたくない願望の場合もある」
そういうものかな。あ、待てよ。5つってことはお前も作ったのか?
「そう」
でも、おまえに『願望』なんてあるのか?
「明示的なものは無い。抑圧されたものは存在可能」
俺は、長門が世界を改変したことを思い出した。
「そうか、で、その世界の『長門有希』は満足しているのか』
374愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:13:18.55 ID:vOTT1YcoO
支援
375パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:13:30.81 ID:r7qNRFcG0
「彼女はしている。彼女は改変世界を戻すことに賛成しないと思われる」
いや、参ったな。じゃあ、このままなのか。俺たちは...。まてよ
「長門」
「何?」
「お前には誰がどの世界を作ったのか解るのか?」
「解る」
「俺たちがいるこの世界は誰の願望だ?ハルヒか?」
俺には自明と思える質問を放った。この世界と元の世界のもっとも顕著な違いは、
俺とハルヒの関係だ。この関係は俺が望んだものではない。となると、ハルヒの望んだ世界と
いうことしかありえなそうだった。が、長門の答えは意外なものだった。
「そうではない。涼宮ハルヒの望んだ世界は別にある」
「じゃあ、誰の願望なんだ?ハルヒ以外に誰が、俺とハルヒのこんな関係を望むんだ?」
「それは...。」
長門が口ごもった。なぜだ?長門が口ごもるところなど初めてみた。
「この世界を望んだのは、あなた」
何だって、そんな馬鹿な、そんなことはありえないぞ。俺はかなり頭が混乱した。だが、これは
まだまだ混乱の始まりにしか過ぎないことにおれはまだ気づいていなかった。

第二節 長門有希の場合[I]

朝。目覚めると、長門はすぐ異変に気づいた。
「目覚める」と言ってもヒューマノイドインターフェイスに有機生命体と
同じ様な意味での「睡眠」があるかというと微妙な問題だ。が、とりあえず、
外面上は機能を停止して休眠状態になる機能を付与されてはいる。特に
必要が無い場合は24時間のうちのある時間帯は「睡眠」をとっていた。いずれにせよ、
観察対象たる涼宮ハルヒが機能停止している時間に起動していてもさしたる意味は無い。
376愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:13:50.02 ID:ZsgToSV/0
支援
377パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:14:29.24 ID:r7qNRFcG0
更に言うならば、目覚めてすぐ異変に気づいたのも長門が有している超人的な種々の
能力のおかげではなかった。もし、長門が目覚めたとき、長門が今いる場所に
存在しているのが単なる有機生命体であったとしても、異変に気ずくのは造作も
無かっただろう。なにしろ、長門のとなりには別の有機生命体が寝ていたのだから。
長門には睡眠モードに入る場合に、隣に有機生命体を「はべらせる」習慣は
無かったから。その当該有機生命体は、長門が目覚めたのに呼応してごそごそと
目覚めると、
「おはよう」
という音声を発してから、顔を近付け、唇と唇の軽度の接触を行った後、
「うーん」
と伸びをして起き出した。どうなら、この有機生命体にとっては起床時に長門有希が
隣で寝ているのはごく普通の状態のことに過ぎないようだった。
長門はすぐさま、情報統合思念体にアクセスし、事態の把握に務めた。事態は
かなり深刻だった。世界は5つのパラレルワールドに分解し、それに伴って
情報統合思念体も5つに分裂してしまったため、思念体は自己同一性を求めて、
5つのパラレルワールドの個々の思念体が互いに同期を確立しようと悪戦苦闘していた。
重複部分を消去して、差分を整理しなくてはいけない状況に陥っており、
長門のアクセスにまともに対応できる状態ではなかった。なにしろ、処理すべき
情報が突然、5倍になったのだ。いくら、性能が5倍になったとしても、
その情報を常時「統合」し続けないといけない言うのは並の負荷ではなかった。
つぎに長門は、他のパラレルワールドに存在する分身たる自分と同期を図った。
あるものはすぐに同期に応じなかったが、しばらく試みるうちに、同期は
確立され、長門は事態を把握した。これ以上無い程、混沌に満ちた「事態」では
あったけれども。
長門は布団から出た。自分自身、および、くだんの有機生命体が衣服をまったく
身に付けていないという事態がすでに、自分がいかなるパラレルワールドに
378愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:14:33.99 ID:0pLOPlemO
全員なんて…色男め…
379愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:14:40.81 ID:vOTT1YcoO
支援
380パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:15:07.80 ID:r7qNRFcG0
招き入れられたかを如実に物語っていた。そういう意味では自分は5つの
パラレルワールドに存在する5つの分身のうちではもっともラッキーだったろう。
くだんの有機生命体は、トイレにいったらしく、戻って来るとまた「唇と唇の
接触」を行おうとしたので、長門はそれを遮った。有機生命体は怪訝そうに
「どうした?」
と尋ねた。
「緊急事態が起きた」
「ハルヒか?」
「部分的にはその疑問に対する答えはYES」
「あいかわらず、よく解らない返事だな」
「当面、あなたには特に問題は起きない。いつもどおり行動してよろしい」
「おいおい、『当面』じゃ問題なくても長期的には問題が起きるのか?」
「そうは言っていない」
「で、何が起きたんだ?」
長門は嘘をついた。
「言語では伝達不可能」
「そうか。ま、お前みたいのとつき合っているのだから、これくらい慣れないとな。
じゃ、てきとうに飯くって俺は登校するから」
「そうして」
当該有機生命体は朝食と命名されたエネルギー補給と行い、身体の部分的な
清潔渡を向上させ(洗顔と歯みがき)、衣服を身に付けると「唇と唇の
軽度の接触」を行った後、部屋を出ていった。
長門は思った。これが自分が望んだ世界なのか。抑圧された欲望が具現化された
世界。この先のことを考え始めた。この改変世界に自分は異存無い。が、他の4つの
パラレルワールドは?それぞれの「改変主」はどう思っているのか?
さっきこの部屋をでていったばかりの有機生命体は真実をしったら、自分の
381愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:16:36.47 ID:vOTT1YcoO
支援
382パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:16:40.99 ID:r7qNRFcG0
「感情」が改変によって強制されたものだとしったら、どう思うだろうか?
長門はマンションの窓から、あくびしながら学校に向かって歩いて行く
有機生命体の後ろ姿を見送りながら、思った。他の有機生命体から
「キョン」と呼ばれている有機生命体の後ろ姿を。

第三節 朝比奈みくるの場合[I]

みくるは今、心臓が胸から飛び出しそうな程、どきどきしていた。
何しろ、朝起きたらキョン君が隣で寝ていたのだ。しかも、すっぱだかで。
ショックのあまり大声を出しそうな口を大慌てて抑えるとキョン君を起こさないように
こっそりと布団を抜け出した。そしてニ度目のショックを受けた。
全裸なのはキョン君だけじゃなかった。顔を洗うために洗面所に行き、
鏡を見て三度目のショック。首筋に赤い小さなアザ。
ここまで証拠が揃っては、「昨夜自分がキョン君と何をやったか」に
疑いを持つのはかなり難しい。いくら、自分には何の記憶も無くてもだ。
その時、脳内ディスプレイが起動した。定時連絡の時間である。
自分は重要な観察対象の「鍵」に「手を出して」しまったのだ。
おそらくは一時の感情に負けて(何も覚えていないけれど)。
召喚は確実だ。もう二度とこの時間平面には戻ってこれまい。
もうニ度とみんなに会えない。思わず、流れて来る涙をこらえることは
みくるには難しかった。
「朝比奈みくる」
「はい」
「定時連絡を」
「...。「彼」がわたしの布団で寝ています。それも全裸で」
みくるはそこまで言うのがやっとだった。隠しても無駄なことだ。
383愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:17:16.27 ID:ZsgToSV/0
支援
384パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:17:27.13 ID:r7qNRFcG0
ばれるのは時間の問題。
「それだけか?」
「は?」
「朝からのろけてくれと頼んだ覚えは無いぞ。以上だ」
脳内ディスプレイはそのまま閉じた。
どういうこと?なぜ、何の叱責もないの?
叱責どころか、管理官は驚きもしなかった。「のろける」?何が?
「みくる」
みくるはいきなり声をかけられて心臓が飛び出す程驚いた。が、慌てて
振り向いてすぐ、目を逸さなくてはいけなかった。キョン君はあいかわらず
何も着ていなかったから。
「どうした?」
キョン君は前を隠すでもなく、右手で尻の肉をぽりぽりかきながらそう
みくるに尋ねた。いくら鈍感なみくるでもキョン君との関係が昨日今日
始まったものではないことは理解できた。
「あ、あの、朝ごはん作りますね。何か着てください」
「ああ」
みくるは台所に向かいながら、自分もまだ何も着ていないことに気づいて
真っ赤になった。キョン君に見られてしまった。が、きっと彼はみくるの
裸を見慣れているはずだった。いまさら、はずかしがってもおかしい。
突然、うしろから抱きすくめられて、みくるは大声を出しそうになった。
「続き、しないか?」
「あ、あの、今日は早く行かないといけないし、そんな時間は...」
「そうだったけな。じゃ、おあづけか」
そういうとキョン君は離れていった。
おちつけ、みくる、自然に振る舞うんだ。なんとかしてこの場を切りぬけないと。
385愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:18:46.29 ID:vOTT1YcoO
支援
386愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:18:48.22 ID:w9kQ6ZZR0
すえん
387パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:19:02.50 ID:r7qNRFcG0
手早く朝ごはんを作るとテーブルに並べる。身支度を終えたキョン君が
テーブルにつく。
「あー、みくるのつくるものは何でもすごくおいしいなあ」
「あ、ありがとう」
こんな状況なのにキョン君とふたりっきりで食事をしていると思うと、
微笑がこみ上げて来るのを抑えることができなかった。わたし、しあわせなの?
キョンは食事を終えると、みくるが片付けを終えるのを待って、
「行こうぜ」
というと外に出た。当り前のように、肩を並べて歩くキョンとみくる。
駅から学校までの坂道でいろいろな人達とすれちがう。
「いっやー、みくるー、朝からお熱いことだねー。みせつけてくれちゃってさー。
おしあわせにー」
これは鶴屋さんだ。
「キョン、あいかわらず朝比奈さんと仲良く登校かよ。あー、
羨ましくて死にそうだぜ、俺」
と言いながら合流したのは谷口くんだ。
学校に入ると、彼の教室に向かう。どうもそこまで行ってからお別れを
言うのが毎日の習慣らしい。教室に行くと言うことは....。
「キョン、遅い!」
教室に着くか着かないかのうちに、涼宮さんが飛び出して来てキョン君に
何かをまくしたて始めた。その間中、ずっとキョン君はわたしの肩に手を
まわしたまま。にも関わらず、涼宮さんは顔色ひとつ変えず、話し続けている。
ふいにわたしの方を向くとこういい放った。
「あ、みくるちゃん、もう行っていいわよ。キョンはあずかるから」
「え、でも....」
怒らないんですか?といいかけたがハルヒは更にこう言った。
388愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:19:05.16 ID:0pLOPlemO
みくるかわいいよみくる
支援
389パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:19:25.39 ID:r7qNRFcG0
「大丈夫よ。とったりしないから。部活が終わったらちゃんとのしをつけて
おかえしするわ。女房灼く程、亭主もてもせず、っていうでしょ?」
「なんだ、人をものみたいに」
「いいのよ、そんなことよりさあ...」
キョン君は涼宮さんに引っ張られていってしまった。
どうやら、この世界では、みくるとキョンがねんごろな仲になっているという
以外に、何の変更も起きていないようだった。キョン君と涼宮さんの関係さえ
何も変わっていないようだった。一体全体、こんな中途半端な世界改変は
誰によって行われたのか?答えをしっていそうな人物には、みくるはたった一人しか
心当たりはなかった....。


第四節 古泉一樹の場合[I]

古泉一樹は爽やかな気分で目覚めた。彼は僕のことを誤解していて
僕の爽やかそうなみてくれはみせかけて作り物であり、
本当は何を考えているか解らない奴、と思っているようだったが、
実際に、僕は本質的には外見通り、中身も爽やかな人間だ。
ただ、いろいろ頭も使っているので単純ではなく、そこが誤解を呼んでいるのだろう。
が、その日の爽やかな目覚めは隣に誰かが寝ていることに気づくまでしか
続かなかった。それも全裸で。となりで寝ていたのは...、なんと「彼」だった。
僕はすばやく頭を回転させた。昨日、寝たときに一人だったことは確かだ。
もっともありうるシナリオは世界が再び、改変された、ということだ。
彼を起こさないようにそっと布団から抜け出そうとしたとき、その予想は確信
に変わった。彼が僕の手をそっと握って、こう言ったのだ。
「起きるのか?一樹?」
390愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:20:56.95 ID:vOTT1YcoO
支援
391パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:21:19.73 ID:r7qNRFcG0
彼が自発的に僕の手を握って来るなど金輪際あるわけはない。彼が目覚めて
同じ様に仰天してくれないかと言う淡い期待は見事に裏切られてしまった。
「ええ、ちょっと定時連絡が必要なもので」
「そうか、なるべく早く戻って来いよ。寂しいからな」
「はい」
動揺してはいけない。いけないのだが怖気がでるのはいかんともしがたい。
さて、この改変はどこまで及んでいるのだろうか?まずは機関が巻き込まれているか
どうかの確認が先決だ。携帯を取り出すと機関に連絡を取った。
「なんだ。まだ、定時連絡の時間じゃないだろ」
「はい。ただ、彼が隣で寝ていますので...」
「....。だから?」
「いえ、別に」
「何が言いたい?古泉一樹。お前がバイセクシャルなのはお前の自由だが、
それはプライベートにしまっておけ。仕事場に持ち出すな。俺はヘテロだし、
殆どの機関員もそうだからな。解ったか?」
「はい」
携帯は切れた。あの連絡員は僕のことをなんと言った?バイセクシャル?ここでは
僕は両刀づかいってことになっているのか。
「一樹?」
おっと彼が起きて来たようだな。
「どうした?すぐ戻って来いと言ったろう?」
「いえ、急用ができまして」
「閉鎖空間か?」
「はい、まあそんなようなものです」
「まったくハルヒの奴、こんな時間まで人の楽しみを邪魔しやがって」
どうやら、涼宮さんはこの世界にもいるらしい。能力の設定も変わってはいないようだ。実際には何と何が改変
392愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:22:05.74 ID:0pLOPlemO
古泉wwwwwww
支援
393パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:22:20.49 ID:r7qNRFcG0
されたのか?変わったのは僕と彼の関係だけ?
「そういうことですので」
「わかったよ、じゃあしょうがないな」
彼は一人で戻っていった。服を着るとまだ明け方前の暗い夜道に歩きだした。
いくら僕でも彼の「お相手」を実際にする根性は無い。機関が巻き込まれている以上、
頼るべき人はたった一人しかいないだろうな。僕は携帯をとりだした。
携帯の住所録を呼び出すと『長門有希』という項目が目についた。彼女がこの改変の
「外」にいるかどうかはわからないが、とにかく、存在はしているらしい。
ついでにスクロールすると『キョン氏』『涼宮ハルヒ』『朝比奈みくる』
『森』『新川』『鶴屋さん』『谷口』『国木田』...。登録しただけで一度も
かけたことのない番号も含めて、あらかたの登場人物は保存されているようだ。
設定まで保存されているかどうかは不明だが。とにかく、まず、電話をかけるところは
あそこしかない。
「もしもし、長門さんですか?...」


第五節 ハルヒの場合[I]

ハルヒは、掃除当番を終えると、大急ぎで部室に向かった。手には半徹で作り上げた
詳細な市内探索プランが握られていた。喫茶店でクジを引いて適当に歩き回る、
などといういきあたりばったりの計画で不思議などみつかるものではない。
必要なのは詳細かつ具体的なプランだ。ターゲットも具体的にしぼる必要がある。
ドアをばーんと開けて、団長机に突進し、さっと飛び乗ると振り返り、
演説を始めた。
「みなさん、明日の市内探索ツアーの方針を発表します。いままでのやり方は
誤っていました。詳細かつ具体的なプランこそ必要なのです!」
394愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:23:01.02 ID:+iQBUMThO
やっぱそうきたかwww
395パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:23:11.84 ID:r7qNRFcG0
そこまで一気にまくしたててから、ハルヒは聴衆を睥睨した。
みくるちゃんはいつも通りの不安な面持ち。有希は全くの無表情。
古泉くんはいつもながらのスマイルで、キョンは...、ああ、またかよって
顔つき。失礼な奴!
「さすが涼宮さん、いいところに気づかれました」
そうそう、そうこなくっちゃ。さすがは副団長。キョン、あんたもちょっとは
見習いなさい!
「さて、明日の具体的なターゲットは宇宙人の探索と....」
「ちょっと待て」
何よ、キョン、人が話しているのに聞きなさいよ!
「お前、この上、もう一人宇宙人を探してどうする?」
もう一人?ってなんのことよ!
「もう宇宙人は見付けたろ」
キョン、何いってんのよ。とうとう、頭がいかれたの?
「いかれたのはおまえだろ、ハルヒ」
なんですって?団長に向かってその言いぐさは許せないわ、ちょっと外にでなさい!
「まあまあ、涼宮さん。僕もそこのところは彼と同意見ですね。もう一人
宇宙人をみつけてどうするつもりですか?」
もう一人って、一人目はどこにいるののよ?
「ハルヒ、これはどういう遊びなんだ?おたがい相手が誰だが知らないふりする
新手の遊びか?」
ちがうわよ、本当に誰だかしらないのよ。
「理解できないしわらえないな。この部屋の中にいる宇宙人といったら
長門有希に決まってるだろ!」
有希、有希って宇宙人だったの?
「そう」
396愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:23:32.44 ID:wK2ecgIEO
古泉も食ったかwww支援
397パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:24:06.36 ID:r7qNRFcG0
そんなの嘘でしょ!
「はあ、つかれる奴だな。それにしつこい。長門見せてやれよ」
有希が立ち上がると部屋の中が見たこともない異空間に変貌した。
有希が座っていたパイプ椅子を持ち上げるとそれは槍に変化した。
有希が槍を投げると反対の壁にぶすりと突き刺さる。
有希が再び、腰をおろすと、空間は元に戻り、槍はパイプ椅子に戻って
床に落ち、ガシャンと音を立てた。
「もういいだろ?」
解らない。これは夢なのか?それとも、あたしってば発狂したのかしら?
「じゃあ、みくるちゃんは?みくるちゃんはなんなのよ」
「未来人だ」
「え、うそ」
「はい。わたしは未来からこの時間平面にやってきた未来人です」
「いつの未来よ」
「禁則事項です!」
「古泉くんは?」
「超能力者です」
「ど、どんな超能力よ」
「涼宮さんが作った閉鎖空間に侵入し、巨神を倒すという超能力です」
「あたしがつくった、なんですって?」
「ハルヒいい加減にしろよ。まさか本当に頭がおかしくなったわけじゃないよな?」
「ち、ちがうわよ。じゃあ、キョンは異世界人なの?」
「違うよ、何いってるんだ。俺だけは普通の人間だよ」
涼宮ハルヒにはここがどこなのか全く解らなかった。夢かも知れない。あるいは、
異世界にワープしてしまったの?確かなことはここでは自分の望みが適っていると
言うことだ。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者を探していっしょにあそぶこと、
398愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:24:57.18 ID:ZsgToSV/0
支援
399パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:25:05.96 ID:r7qNRFcG0
$)Bという目的はここでは完遂されているのだ。ハルヒはよろこんでいいのか、
悲しんでいいのか、解らない気持ちだった。なぜ、望みが全て適ったのに、
あたしってばうれしくないの?この喪失感は一体何?
その時、有希がぼそっとこういうのが 聞こえた。
「それはあなたが望んだ世界だから。望みが適った世界では人は
必ずしもしあわせではないから」
有希、あなた、これが何なのかしってるのね?この状況を理解しているの?
「多分」
おしえてよ、これはなんでなにがどうなってるの?...

======

以上です。支援ありがとうございました。まとめwikiには自力で上げておきます。
400愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:25:23.18 ID:vOTT1YcoO
支援
401愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:26:41.45 ID:uYfSr3uf0
はちゃめちゃだけど面白かったw
続きwktk
402愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:26:48.01 ID:vOTT1YcoO
乙!
このスレでキョン×古泉には驚いたwww
403愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:26:50.72 ID:jbrQewhK0
グッジョーブ
404愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:27:13.33 ID:+iQBUMThO
面白いよ〜続きwktk
405愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:28:06.56 ID:0pLOPlemO
乙カレー
これはwktkな作品だ
個人的にみくるかわいいよみくる
406パラレルワールズ ◆D5lhsNR6PY :2007/01/31(水) 02:29:01.27 ID:r7qNRFcG0
>>401-404
ありがとうございます。
自分でも妄想が暴走して困っています。
最後はどこに行くんだか....。
それでは。
407愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 02:29:02.22 ID:ZsgToSV/0
GJ
昨日から今日にかけて変化球が連投だw
シュール感がたまらない
みくるパートの地の文がちょっと気になるがw
408スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 03:05:57.98 ID:HKGi79rY0
投下する。前回までのね
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2015.html + >>305-307
409スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 03:10:21.02 ID:HKGi79rY0
   *** 

 錯綜する情報をなんとか整理して、俺はベットの上で寝転んでいた。
指輪も外した。頭の中で溢れかえっていた風景や音や匂いを少しずつ咀嚼し、整理していく。
 その中で俺は驚くべきことに気付いてしまった。
 といっても、俺にとって既にこのことは体験済みのことだった。
 ――この世界は二度目の12月19日を迎えている。
 全て辻褄が合う。
 朝比奈さんが俺が長門のことを好きではないということを知っていたことも、
 古泉が俺の好きな人を知っていたことも全て辻褄が合う。
 重要なことは世界が変えられる前の記憶が12月24までしかないことだ。
 そして、この世界とは違い、前の世界では俺はハルヒのことが好きだった。
 これは嫌でも認めなくてはならなかった。
 一度目の12月24日のことを考えると、そうとしか考えられなかった。
 俺が考えたことの顛末はこうだ。
 一度目の12月24日、何者かによって世界改変され――古泉によると長門らしいが、俺はそうは思わない――、
 二度目の12月18日を迎えた。
 その際、俺の好きな人はハルヒから長門に改変されてしまった。
 そして、俺はこうして長門が好きなまま二度目の12月19日を迎えているわけだ。
410スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 03:10:44.15 ID:HKGi79rY0
 なんだ、分かってきたぞ。改変者の意図は分からないが、この改変者は案外抜けているのかもしれない。
 ハルヒと指輪を買ったのが12月17日、俺はこの日の記憶を二つ持っていない。
 指輪は改変された世界の外にあるものだ。
 だから俺が指輪をはめた時、こうして全ての記憶が戻ったのだろう。
 きっと、これはハルヒの贈り物だ。
 閉鎖空間を作ることができるのだから、去年のあれとは違い、能力も消えてない。
 こうして考えていると、俺はあることに気付いてぞっとした。
 改変者の意図が分かってしまったのだ。
 ――不完全な改変。しかし、最も適切な改変。
 そうだ、この改変者が狙っていたのは俺ではない。――ハルヒだ。
 俺の好きな人を変えることで、最小限の変化でハルヒに世界改変をさせる。
 一度目の世界――つまり、変えられていない未来。本当の世界だ――では、
 俺とハルヒは恋人同士といっても言い過ぎてはなかった。
 あと一言、なにかその隙間を埋めるための言葉があれば、俺たちは一つになっていただろう。
 それを改変者は妨害したのだ。一度目の12月24日、圧倒的な光とともに俺の記憶はそこで途切れている。
 おそらく、そこで世界改変が行われたのだろう。
 俺は一度目の世界を詳細に振り返ってみることにした。
 何かのヒントがあるかもしれないし、改変者が分かるかもしれない。
 あの日、一度目の12月19日、俺は部室で古泉にハルヒのことを伝えられて、部室を出たんだ。
411スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 03:11:17.49 ID:HKGi79rY0
    ***

「あのぉー、キョン君。涼宮さんが休んでるって本当ですかぁ?」
 朝比奈さんは俺の前に湯飲みを置きながら、尋ねた。
「ああ、ハルヒのやつ、今日は来てませんでしたね」
「どうしたんでしょうねぇー」
 俺と朝比奈さんが甘い雑談をしていると、部室のドアが開き、古泉が顔を覗かせた。
「涼宮さんが休んでいるって本当ですか?」
「なんだお前もか」
「ええ、涼宮さんが学校を休むなんて今世紀中にあるとは思っていませんでしたからね」
 古泉は部室に入ってきて、パイプ椅子を広げて座った。
「確かにあいつを休ませるとはいったいどんな病気だ」
「先ほど電話がありまして、ただの風邪とは言っていましたが」
「もしかして宇宙的な風邪ということはないよな、長門?」
 もちろん部室の片隅で本を読んでいる長門に対して尋ねた。
「ない。当該惑星にW29型流行性感冒症が到達するのは数万年後」
「そ、そうか」
「お見舞いに行くのはどうでしょうか?」
 古泉が突然提言し始めた。
「いいですねぇー」
 朝比奈さんも笑顔で賛同している。
「長門さんもどうでしょう?」
 長門、肯定。
412スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 03:11:36.07 ID:HKGi79rY0
「あなたはどうしますか?」
「まあ、行っても良いが。もう二度目はなさそうだしな」
「あ、言い忘れてましたが、僕は行きませんよ」
「わたしも、ちょっと用事があっていけません」
 長門、否定。
「なんだ? みんな行かないのか。それなら、俺も行かなくていいな」
「あなたは行ってあげるべきだと思いますが。暇なのはあなただけですから」
「キョン君行ってあげてくださぁい。涼宮さんもきっと寂しいと思いますぅ」
 長門、首肯。
「お前ら、俺をはめてるだろ」
「そんなことありませんよ。ただ、あなたが行くべきだと僕個人の意見です」
「はめてなんかないですよぉ。えっと、ただ、わたしはキョン君に涼宮さんを見に行ってあげてほしいだけです」
 長門、無視。
「何なんだお前らは。特に古泉。顔がにやけてるんだよ」
「それはいつものことで」
「古泉くんはいつもこんな顔ですよぉ?」
 長門、生体反応無し。
413スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 03:11:54.32 ID:HKGi79rY0
「……分かった。行けばいいんだろ? ちょっと行ってすぐに帰るからな!」
「さすがですね。男の中の男だ。これはいい」
「キョン君は、結局優しいんですよねぇー」
 長門、肯定。
「で、何か買って行ったほうがいいよな?」
「あなたさえいればなにもいらない気がしますが」
「あ、紅茶の葉でも持って行きますかぁ?」
「カリカリ梅」
「お前らの意見は役に立たないことが分かった。自分で適当に選んで買うよ」
「だから、あなただけいれば問題ないと言ってるじゃないですか」
「ふぇーん。キョン君、紅茶をいらないっていうんですかぁ?」
「カリカリ梅を馬鹿にするとは。有機生命体も低俗な進化でしかない」
「それじゃあ、暗くなる前に行って来るよ」
「布団温めておきますね」
「涼宮さんは病人なんだから優しくしないと、『めっ!』ですよぉ」
「……カリカリ」
「………」
 俺は溜息混じりに部室を出た。
「……ふぅ。なんだこれ?」

 続く
414スリーウィーク 第三章:2007/01/31(水) 03:12:38.91 ID:HKGi79rY0
また明日。二度投下してすみません
ここまで投下したかったから
415愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 04:40:28.84 ID:ZsgToSV/0
>>414
乙乙
続き待ってるよ
416愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 04:42:57.67 ID:o+V5DONS0
おつかれー
スリーウィークってのはそういうことですか
417愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 05:09:11.73 ID:sVIDhUb9O
418愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 06:48:32.03 ID:ZHVV6zzt0
hosyu
419愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 07:21:35.07 ID:KaiOsxeb0
h
420愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 08:15:23.07 ID:OpTJB0eqO
ほしゅ
421愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:33:36.88 ID:vLkRLLu2O
★・・★・・★・・★・・★・・★
422愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:33:46.65 ID:OpTJB0eqO
ほしゅ
423愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:34:57.78 ID:Ry5Cl4zV0
遅レスだが、「秘密の音色」の作者がアスタリスクの人?
424愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:43:08.91 ID:biW3wMGe0
あの人はパロ板にしか投下してないような?
****じゃなくて- * -だったと思うし。
425愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:51:26.39 ID:V0ac8NQE0
他の板と掛け持ちしてる人って多いのね。
426愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:56:15.78 ID:ZHVV6zzt0
突然ですが投下よろしいでしょうか?
427愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:59:45.71 ID:vCtBAi4C0
う、オレこれから会議w
支援できそうも無いが、バイサルないんだっけか
428愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 09:59:51.37 ID:V0ac8NQE0
オフコース
429 ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:02:15.60 ID:ZHVV6zzt0
9レスなんでさるないと信じていっちゃいます。
ロックンロールスターダスト第3話です。

前の話>>101です。

なお昔書いた
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1906.html
のSSが元になってます。
430ロックンロールスターダスト第3話(1) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:03:22.17 ID:ZHVV6zzt0
西宮ロックフェスティバルを間近に控えたとある日。
俺達SOS団もといSOSバンドは――巨大なステージの上に立っていた。
「うわ……凄いです。アリーナの一番後ろなんてここからじゃ見えませんよ〜」
「これは……僕達はどうやら本当にとんでもないステージに立とうとしているんですね」
「この会場は約3万人の観客が収容可能……」
「何よ、コレくらい余裕だわ」
思い思いの感想を漏らすバンドの面々。
つまるところ、俺達は本番前最後のリハーサルとして、実際のライブ会場のステージに立っていたのだ。

フェスティバルが行われるのは、『西宮スーパーアリーナ』という建物だ。
って言うかこんな建物があったこと自体俺は知らなかったのだが……。
所謂ドーム球場などを除けば国内でも有数のキャパシティを誇るイベント会場であるらしい。
ロックフェスティバルというと野外で行われるソレが一般的であるが、このニシロックは屋内型だ。
野外よりも集客は少ないとはいえ、万規模の人が集まるのはスケールが大きいと言わざるを得ない。
噂では、この西宮スーパーアリーナの地下には闘技場があり、
毎夜のごとく屈強な男達が己の最強を示さんと、血で血を洗うバトルが繰り広げられているとまで言われているが、
まあ、絶対にウソだろう。
地上最強の生物の息子とか片手で500円玉を捻り曲げるようなヤクザの若親分とか、
空手界の最後のリーサルウェポンとか中国4000年の歴史の結晶とか凡人では触れることも出来ぬ護身の達人とか、
最強のためには命を賭したドーピングも厭わないケンカファイターとか、果てには巨大な猿とか、
そんな奴等は断じていない。

そして今、俺達は本番前の演奏のリハーサル、所謂サウンドチェックを行っているというわけだ。
ちなみにロックフェスティバルというものはワンマンのコンサートとは違い、
様々なバンドが、同じステージを出演時間を区切って登場するという形式が一般的だ。
このニシロックは2日間に分かれており、俺達の出番は2日目の……何とトップバッターだ。
流石にアマチュアバンドということで、俺達に与えられた時間はたったの十五分程度。
曲数にして三曲演奏できるかどうかといったところだ。
まあ、元々俺達は持ち曲が少ないのだし、十分な時間ではあるのだがな。
431愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 10:03:27.59 ID:lwLEX21z0
さるはもう無いぞ
432ロックンロールスターダスト第3話(2) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:04:24.34 ID:ZHVV6zzt0
さて、ステージではバンドの面々が各々の楽器の音を入念にチェックしている。
ハルヒと長門がギターをかき鳴らすと、驚くほどのデカイ音が響く。
これは、文化祭やオーディションの時と比べ、機材がより大規模になったためだ。
壁のようにズラリと並べられたアンプ、高性能なPA機器がどこまでもバンドの音を増幅させるのだ。
耳を劈くようなギターの音――文化祭において体育館で演奏した時も俺としてはかなり大きな音に感じたが、
アリーナ級の会場で出すソレの音圧は、文字通り桁違いだ。
古泉のベース音、朝比奈さんの鍵盤音も同様である。
一度古泉が弦を弾けば、地鳴りのような重低音がステージの床に響き渡り、
朝比奈さんの奏でる一音一音は、浜辺に打ち寄せる大波のように会場中を侵食する。
俺が踏むバスドラムの音も、会場の壁に反響して自分のところにまで戻ってくるくらいだ。
そして更に驚いたのが俺達を囲むスタッフの数――。
音響スタッフ、照明スタッフ、機材運搬スタッフ、設営スタッフetc……
百人はゆうに超える数の人々がニシロックを、俺達のステージを、良いものにしようと会場内を奔走している。
改めて、プロのライブのスケール、レベルの違いを肌で感じ、背筋が寒くなる思いがする。
「それじゃあ、三曲通してやってみるわよ。準備はいい?」
ステージ真ん中のスタンドマイクを通して、ハルヒが呼びかける。
長門は無言で、朝比奈さんと古泉は頷きで、俺はドラムスティックを掲げてマルの形を作って、
それぞれに準備完了の意をハルヒに伝える。

――そして一通りのサウンドチェックが終了する。
正直言って、俺達の演奏は酷かった。
会場、機材、スタッフ――何もかも桁外れのイベントの規模に緊張してしまったのか
長門のギターは相変わらず素晴らしい出来だったものの、
朝比奈さんは終始音を外しっぱなし、古泉のベースプレイにも要所要所でミスが目立った。
俺は俺でリズムキープがままならず、テンポがモタったり、逆に走りすぎてしまったりという有様。
そしてあのハルヒまでもが、どこかその歌声にハリをなくしてしまっていたのだ。
周りのスタッフ達は不安と疑念を織り交ぜた表情でそんな俺達を見つめている。
「本当に大丈夫かよ、こいつら?」という声が今にも聞こえてきそうだ。
こうして俺達は、改めてプロのステージの恐ろしさを身をもって感じる羽目になった。
433ロックンロールスターダスト第3話(3) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:05:45.60 ID:ZHVV6zzt0
「さっきのリハーサル、酷かったじゃないか。どうしたんだいマザーファッカー達……」
サウンドチェックを終え、舞台袖へと引っ込んだ俺達に、あの火高氏が心配そうに声をかける。
「何言ってるのよ、オジサン。能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ?
 アレはカモフラージュ、本番ではもの凄い演奏をお見舞いするわよ!」
ハルヒが得意げに言い放ってみせるが、残念ながら俺にはわかる。
ハルヒは強がっているだけだ。言葉ではああ言っているものの、
表情には先ほどの演奏が上手くいかなかったことの悔しさと本番への不安がありありと窺える。
「そうかい。とにかく、期待してるぜ!」
と、言って去っていたオーガナイザー。
しかし、火高氏は騙せても俺は騙せないぞ、ハルヒよ……。

「僕としたことが……余りの会場の大きさに飲まれてしまいました」
「わたしもです……でも、本番はあの観客席が一杯になるんですよね?それを考えると余計に……」
古泉と朝比奈さんも反省しきり、不安がることこの上ない。
「先ほどの演奏……朝比奈みくるは二十四箇所、古泉一樹は十九箇所、演奏ミスが見られた。
 涼宮ハルヒに至っては三十回、歌唱において音程を外している」
長門が俺にだけ聞こえる小さな声でそう呟いた。
「ちなみにあなたは……」
「その先は言わないでくれ……」
「……わかった」
まさに前途多難だ。文化祭やオーディションとは次元が違う。今更後悔しても遅い。
俺達は皆一様に、これからの本番に不安を抱かざるを得ない。
434ロックンロールスターダスト第3話(4) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:06:48.98 ID:ZHVV6zzt0
「オヤオヤ、誰かと思ったら今回の特別枠だっていうアマチュアバンドの皆さんかい。
 いやぁ、さっきのサウンドチェックの演奏、酷かったね〜」
と、その時、一人の若い男が俺達に近づいてきた。
だらしなく伸びた茶髪をかきあげる、そのいかにもミュージシャン然として男は……?

「あれは……日本で今、最も人気のある若手5人組ロックバンド、『ロレンゲレンゲ』のボーカルのリョウトですね……」
説明ご苦労様、古泉よ。
『ロレンゲレンゲ』……流石の俺でもその名前はよく知っている。
数年前、インディースから鳴り物入りでメジャーデビューしたロックバンドだ。
出す曲出す曲がオリコンで一位を獲得し、アルバムもミリオンセールスを次々に記録、
中高生、特に女の子達の間ではカリスマ的な人気を誇るモンスターバンド。
そしてそのメンバーの中でも一番人気と言われるボーカルのリョウト、確かにテレビでよく見たことがある顔だ。
そう言えばロレンゲレンゲは大人気の一方で、ネット上では楽曲のパクリ疑惑などの悪い噂がが絶えず議論されているらしい。
「僕達が出る2日目には彼らも出演するはずでしたね。確かトリ前という日本のバンドとしては最も高い位置づけです。
 彼らも今日がリハーサルだったんですね」
更に付け足す古泉。
しかし、そんな大物が一体俺達に何の用で?

「しっかし、お前らみたいなアマチュアにも満たないショボイバンドが出れるだなんて、ニシロックも落ちたもんだ。
 全く、火高のオッサンも何考えてんだか……」
ニヤニヤとイヤミな笑みを浮かべて、俺達を嘗め回すように見るリョウト。
なるほど……コイツ俺達をわざわざ貶めにきたのか。
ハルヒはそんなイヤミに苦々しく顔を歪め、
「ちょっと、今アンタ何て……!!」
「やめろ、ハルヒ!」
オーディションの時の悲劇を繰り返してはいけない。
俺は今にも殴りかからんとするハルヒを制する。
435ロックンロールスターダスト第3話(5) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:08:12.01 ID:ZHVV6zzt0
「おやおや、演奏のショボさを棚にあげて暴力に訴えるとは……野蛮な女だね。まあ見たところ女と言うよりガキか」
「……!!!」
ハルヒの顔が一気に茹でダゴのように沸騰する。
しかし、それでも言い返せない。
オーディションの時に山田氏に批判された時とは違い、実際に俺達の演奏は酷かったのだ。
それを分っているからこそ、ハルヒも二の句が告げないでいる。

「それよりさ……」
リョウトはハルヒから視線を外し、
「リードギターのキミ、凄い上手かったよね。さしものこの俺もびっくりしちゃったよ。
 それでさ、実はウチのバンドのギターが脱退するとかゴネてるんだよね。何かギャラの取り分が少ないとかで――」
「……」
長門は目もあわせようとせず、じっと押し黙っている。
「そこでさ、もしキミがよかったらウチのバンドに入らない?キミはこんなショボイバンドでおさまる器じゃないよ。
 どうだい?悪くない話だと思うんだけど」
(コイツ……!! 長門に何を……!!)
俺としたことが、ハルヒと同じように一瞬沸騰しかけてしまう。
「ちょっと! 有希はSOS団の大事な人材よ!」
ハルヒも我慢できずに叫ぶが、
「俺はこの子に聞いてるんだぜ? キャンキャン喚くなっつーの。で、どうかな?」
リョウトは意にも介さない。長門に近づく。しかし、
「……入らない」
「え? よく聞こえないんだけど?」
「……わたしはあなたのバンドには入らない、と言った」
小さくもハッキリとした声で、確固たる拒否の意を示す長門。
「……チッ!」
リョウトは苦々しげに舌打ちする。ざまあみやがれ。
「さすが有希ね!」
嬉々とするハルヒ。勿論、俺も長門を信じていたぞ。
436ロックンロールスターダスト第3話(6) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:09:46.50 ID:ZHVV6zzt0
「それじゃあさ――」
しかし、長門に断られたリョウトは凹む素振りも微塵も見せず、今度は朝比奈さんに近づいていった
「キミ、凄い可愛いよね」
「え?わ、わたしですか……?」
「実はさ、このニシロックでのライブが終わった後、ごく近い関係者だけを集めて打ち上げをやるんだよね。
 もしよかったらキミを是非それに招待したいと思うんだけど……」
そう言えば噂で聞いたことがある。『ロレンゲレンゲのリョウトの女癖は最悪』と。
女優、アイドル、ミュージシャン、果てはグルーピーの女の子まで……流した浮名は数知れず、と。
なるほど――つまりそういうことかこの野郎……!!
「こ、困ります……」
「そんなカタイこと言わずにさ、キミならきっと皆大歓迎だよ?」
戸惑う朝比奈さんの腕を強引に取ろうとするリョウト。
クソッ!もう我慢ならねえ!!

「その人は『知らない男性に触られると気絶しちゃう病』なんです。やめてくれませんか」
俺はとっさにリョウトの腕を掴んだ。病気の話は勿論、ウソだ。
「……何だよ。ヘタクソなドラム君」
睨み返され、思いっきりガンを飛ばされる。しかし、俺は引かない。逆に睨み返してやる。
「やめてください、と言ったんです」
「お前さ、この業界で俺に――ロレンゲレンゲに喧嘩を売るっていうことがどういうことがわかってんの?」
「わかりませんね。俺はしがない高校生でアマチュアバンドのドラマー、音楽業界の人間なんかじゃありませんから」
俺は思いっきり腕を握る手に力を込める。
「キョンくん……」
朝比奈さんが不安そうな顔で俺を見つめている。
437ロックンロールスターダスト第3話(7) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:11:04.87 ID:ZHVV6zzt0
「そうよ!ただのパクリバンドのクセして、みくるちゃんに手を触れるなんて百万年早いってものよ!!」
あ、余りにもカッとなってハルヒを忘れていた。俺としたことが……ハルヒがこの状況で黙ってるわけないのに。
「何だと!?」
リョウトが今度は思いっきりハルヒを睨みつけた。
「俺達をパクリと言うか……」
「事実でしょう? アンタらみたいなバンドが日本で一番売れているなんて片腹痛いわ。
 あの火高のオジサンが日本のロックの未来を憂うのもムリのない話ね」
「このアマ……!」
「あら、反論しないところを見るともしかして図星?」
ハルヒの挑発に、今度はリョウトが顔を茹でダコにする番だった。
「テメエら……覚えとけよ! この喧嘩、買ったからな……!!」
てっきり更に突っかかってくると思ったが、そう吐き捨てただけで、リョウトは逃げるように去っていってしまった。
「ふん!何よ、アイツ。気に入らないわ!」
プリプリ怒るハルヒ。暴れ出さなくてよかった……。
「キョンくん、ありがとうございました……」
目を潤ませて俺を見る朝比奈さん。ちょっとその上目遣いはキケンだ。
「いやはや、まさかあなたがあんな勇気ある行動を取るとは……流石僕のキョンたんですね」
変態な古泉。放っておくに限るな。
「……わたし達の勝ち」
呟く長門。もしかして意外に負けず嫌い?
まあ、何とか場は収まった……のかな?

「確かに今日のリハーサルの演奏は酷かったわ。でも本番こそあたし達、SOSバンドの本領を発揮する時よ!
 みんな、気合入れていくわよ!あんなパクリバンド、ぶっ飛ばしてやりましょ!」
「……そうです!ここまできたらやるしかないです!!」
「次こそは僕もよい演奏をしてみせますよ」
「……わたしは問題ない」
ハルヒの号令と共に気合を入れる面々。
そうだ。今日のことはもう忘れよう。とにかくあとは本番に臨むのみ。当たって砕けろだ。
俺はそう自分に言い聞かせ、迫る本番に震える己の身体を奮起させた。
438ロックンロールスターダスト第3話(8) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:11:46.14 ID:ZHVV6zzt0
そしてついに西宮ロックフェスティバル、その二日目がやってきた。

俺達が出番を待つ楽屋は基本的に共用――出演バンドの殆どが集まるだけのスペースがある広いもので、
辺りでは至るところにオーラ放ちまくりのロックスター達が闊歩している。
「キョンくん! あれ、見てください! テレビヘッドのティム・ヨークが歩いてます〜!」
はしゃぐ朝比奈さん。って言うか意外にあなたもロック好きだったんですね。
「あれは……ブラックコールドペッパーズのブリー……実物は初めて見ました。
 本当にチ○ポソックスなんですね」
同じく古泉。珍しく本気で驚いた表情をしている。
そうそうたるスター達が俺達の周りをこれでもかというほど囲む。
その中に佇むただの高校生五人、やはりどう考えても浮いている。
ふと気づくと、長門までもがある一点を見つめ、ボーっとしている。
「長門、どうしたんだ?」
「あれ……」
長門の視線の先には、アコースティックギターを抱え、物憂げなアルペジオを爪弾きながら、タバコをふかすブロンドの外人が一人。
「……ナルバーナのカール・コバーン」
どうやらそういう名前の人らしい。勿論、出演者の一人だろう。
「もしかして……好きなのか? その……ナルバーナとかいうの」
長門は数ミリほど首肯してみせる。余りにも意外すぎて言葉も出ない。
長門がロックを聴いてノリノリでヘッドバンキングする光景――想像できね……。

そして、ハルヒは無言のままパイプ椅子に腰掛け、ギターを抱えてじっと瞑目している。
とても話しかけられない雰囲気だ。既に衣装がえを済ませているので、
ハルヒはあのバニーの格好をしているが、その格好の珍奇さと自身の緊迫した雰囲気がなんともミスマッチだ。
あれだけいつもは強がっているハルヒでも人並みに緊張ぐらいするのだろう。
勿論緊張は俺も同じ。文化祭やオーディションの時とは比べ物にならない、
心臓が口から飛び出そうなほどの緊張だ。
手のひらに人と書いて飲み込めば緊張がほぐれるとかいう迷信じみた行為を今だけは信じたくなる。
439ロックンロールスターダスト第3話(9) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:13:06.22 ID:ZHVV6zzt0
出番まであと30分ほど――
既に熱狂の坩堝にあるロックファン達の怒号にも似た歓声が耳に届いてくる。
その時、一人のスタッフらしき男性が俺達に近づいてくる。

「あの……SOSバンドの皆さんですよね?」
「ええ、そうですが」
スタッフの質問にとりあえず俺が代表して答えておく。
「実は……非常に申しあげにくいのですが……」
「はあ……」
「――――――――――――――――」
「!!……そんな……」
思わす俺は、目の前が暗くなる錯覚を覚える。

「どうして――」
朝比奈さんが、長門が、古泉が、そしてハルヒが、
信じられないといった驚愕の表情でスタッフの言葉を聞いている。

「――どうして俺達の出演枠が急になくなったりするんですか!?」

『出番だった』時間まであと数分――。
ライブの始まりを今か今かと待つ、すっかり熱狂しきった観客達の歓声が控え室にまで地鳴りのように響く――。

「私がこれをバラしたことはオフレコでお願いしたいのですが……実はですね……」
スタッフの男性が渋々といった風で続ける。
「ロレンゲレンゲのリョウトさんが運営の方に圧力をかけて……『SOSバンドの出番を潰せ』と火高さんに直々に……」

今度こそ――俺の目の前は本当に暗くなった。
440 ◆rDAy9jYT0M :2007/01/31(水) 10:15:08.26 ID:ZHVV6zzt0
終わりです。
ライブ本番まで行きませんでしたがご容赦をorz
441愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 10:19:10.54 ID:kCghPWfv0
ロレンゲレンゲワラタwwww

続きwktkだぜ
442愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 10:24:02.85 ID:V0ac8NQE0
乙ー、支援できなくてすまん
443愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 10:24:11.84 ID:K1VVwsB2O
444愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 11:01:02.40 ID:+UjAGcBw0
ロレンゲレンゲにブラックコールドペッパーズにナルバーナ吹いたwwwwwwwwww
445愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 11:30:43.39 ID:QZiAY0vbO
>>270 HOME..もかいてるひとだったか!!
あれ好きなんだ。あったかい作品だよな〜。
つづき煮詰まったらかいてくれ!!いつも楽しみにしてるんだ
446愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 11:41:05.83 ID:al5cII/+O
プリンってここ?
447愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 11:44:21.20 ID:biW3wMGe0
ここ。
448愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 11:46:12.60 ID:al5cII/+O
そうかサンクスつまり長編はここなんだな
449愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 11:48:34.71 ID:biW3wMGe0
そうね。基本的に普通のはこっち、ネタ系はアナル。
450 ◆UzwNkLPbSc :2007/01/31(水) 11:58:17.87 ID:45xXiZvV0
従順なハルヒスレから引っ越して来ました。

書き終わったら投下しようと思います。
451愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 12:04:14.75 ID:dFsLzVid0
ギブルウェイギブルウェイナーウ
452愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 12:15:05.26 ID:kCghPWfv0
>>450
いらっさい。
wktkしながら待ってるぜ
453愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 12:35:26.60 ID:ct3qT+7K0
「……」
「うん? どうしたの、有希」

ふと見ると、長門さんがじっと涼宮さんの唇を見つめていました。
はて何事かと思い、右にくいー左にくいーと首を揺らす涼宮さん。長門さんの目もそれを追って何やら変な動きをしています。
私はと言うと、揺れる髪の隙間から見える、涼宮さんのうなじに気を取られていましたが。

うぇ、ここここれ、あの、もしかして、いやもしかしなくてもキスマーク……ですか?

「…有希、さ」

涼宮さんが唐突に切り出しました。

「キスしてみる?」

唐突すぎました。

「ふぇぇぇぇっ!?」

い、いいんですかそんなの!? そんな、だって、涼宮さんはキョンくんと昨日キスして、それに、おん、女の子同士なのに!
長門さんはこのあまりの急展開に、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイスとしての機能を完全に停止…

「する」

…してませんっ! なんですかその順応性の高さは!
454愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 12:37:02.58 ID:ct3qT+7K0
…ゴメン('A`)
janeで書き込み制限行とテキスト量を測っていたら間違えて書き込み押しちゃった…
455愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 12:38:34.74 ID:vOTT1YcoO
誤爆とは思えないwww

こんな三人娘好きです。
456愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 12:42:18.68 ID:kCghPWfv0
ちょwwwwおまwwwww
生殺しwwwww

後でちゃんとこのスレに投下するんだよな?な?
457愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 12:56:07.42 ID:ePhGVH1hO
>>450
1レスSSの人?


誤爆キタコレwwwww
458 ◆UzwNkLPbSc :2007/01/31(水) 13:10:23.63 ID:45xXiZvV0
>>457
1レス目では無いです。
たまたま、昨日従順なハルヒスレを見つけて、久しぶりにSSを書きました。
昨日は従順スレに途中まで投下してましたが、
どうやら落ちてしまったみたいなので、こっちに引っ越してきました。
459愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 13:11:55.31 ID:OpTJB0eqO
保守
460愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 13:15:51.68 ID:ePhGVH1hO
あれ、落ちちゃったのかぁ。
2人ほど書いてたね。
wktkして待ってる。
マイペースでやってちょーよ
461愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 13:35:50.31 ID:vOTT1YcoO
wktk保守
462愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 14:04:00.59 ID:vOTT1YcoO
保守
463愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 14:18:28.12 ID:OpTJB0eqO
捕手
464漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:27:25.30 ID:eurzulja0
どうも。従順なハルヒより引っ越してきました
よろしくお願いします
465愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 14:29:36.36 ID:TKjCZ50u0
惚酒
466漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:31:24.12 ID:eurzulja0
とりあえず書いてあったところまで投下します

ストーリーとしては、ハルヒがキョンに命令して。と言った感じです。
ハルヒ「いいわね!?つまんない命令したら殺すわよ」
取りあえずコイツには 俺を殺すな と命令したいのだが…。
そんな気持ちもさし置いて俺はこの機会にハルヒの知らない所を知ろうと思った
キョン「そうだな、お前の家に連れていけ」
ハルヒ「はぁ?…嫌よ。」
あっさり主従を逆らいやがった
キョン「ハルヒよ、命令は聞くためと与えるためにあるんだぞ」
ハルヒ「確かにそうだと思うわ。でもその命令は駄目。絶対駄目」
なぜそんなかたくなにハルヒが断るのか、俺にはまったく分からなんだ
だから、なんというか、つい知恵が働いてこんな事を言っていた
キョン「なら、それ以外ならいいのか?」
ハルヒ「まあね、特に問題ないわ」
キョン「二言は無いな?」
ハルヒ「シツコイわね、無いわよ」
かかったな、ハルヒ
キョン「そうか、ならお前の部屋に連れていけ」
ハルヒ「……アンタ、そんなに私の家に来たいの?」
467漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:32:29.96 ID:eurzulja0
不満、というかどこか不安気な表情のハルヒは、そっぽを向きながら聞いてきた。無論返事はイエスだ
ハルヒ「…しょうがないわね、良いわよ。」
それっきり、残りの授業では俺の後ろの席で延々とブツブツ言うハルヒ。
教師陣も決まりが悪そうに授業をしていた。まぁいつもノートこそ取らないが、それなりに真面目なハルヒがこんな様子じゃあな、仕方なかろう

そんなこんなで放課後になった

ハルヒ「行くわよ、ついてきなさい」
昼休みに僅かな他SOS団員3名に、今日は休み、と言いはなっていたハルヒはいつの間にか命令口調に戻っていた。
キョン「そういえば東中出身だったな。谷口とかとは家近いのか?」
ハルヒ「誰それ?」
頼むからクラスメイトの名前くらいはしっかり覚えてもらいたい。谷口はハルヒにとっては炉端の石同然なのであろう、楽しみ方といったら勢いをつけて蹴りとばすくらいしか俺には思いつかない
キョン「そういえばお前は自転車には乗らないのか?」
ハルヒ「私自転車って嫌いなの、速いから色々見落としちゃうのよね」
何を見落とすのかは十人十色だが、コイツの場合は「不思議」やら「奇妙な事」なのだろう
なんてことの無い会話だが、ハルヒに歩を合わせているうちにいつの間にやら知らない風景に俺はいた。何処かで見たことのある建物がズラズラっと並んでいるが、並びと道が違うだけでこうも違うもんなんだな
「あらハルヒちゃん」
素朴なマダムが現れた、手の編み込み型バッグからはネギと大根が頭を出している、なんともまぁ典型的なことで。
ハルヒ「あ、おばさん。こんにちは」
水飲み鳥のように頭を下げるハルヒ、便乗して俺もその二分の一くらいの割合で頭を下げる。近所付き合いを邪魔しちゃいけないのはいくら俺でも分かるもんだ。

468漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:33:03.16 ID:eurzulja0
「おやぁ?」
そのパーマネントのかかった頭が俺に視線を向けてきた。なんというか首がもどかしいな。
「ハルヒちゃんにも、ようやく登下校出来る男の子が出来たんだねぇ」
ハルヒ「あ、いや、あの、彼は同じ部活の人で、」
珍しい、ハルヒが動揺という色をばらまいている
「いいんだよ、若い頃はオバチャンもそういったもんさ」
ハルヒ「いえ、ただの部活が」
こういった時にでもいつものボロを出さないのがハルヒらしいな、と何処にでもある気体のような存在感を出している俺は思っていた
「あ、晩御飯の準備しなくちゃ!バイバイ、ハルヒちゃんと彼氏くん」
想像が空回りしていたマダムはこちらの返事も聞かずに走って行った。あーいう人が日本を支えてるのかもしれん
ハルヒ「あの人、いつもあんな感じなのよね」
眉を潜めつつ消えていった方向に目をやる。ハルヒは視線を動かさず
ハルヒ「………ゴメンね」
はてさて、俺は何か悪い事でもされたのだろうか?
ハルヒ「なんか勝手に私の彼氏にさせられちゃって」
キョン「いいじゃないか、一人の婦人に夢を与えたと思えば」
ハルヒ「…アンタ…嫌じゃないの?」
気が付けばハルヒの大きな目は両方とも俺を見ていた。
469漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:33:23.05 ID:eurzulja0
嫌じゃないか?と聞かれてもなぁ
キョン「可愛い女の子の彼氏と言われたら心踊るもんだけどな」
珍しく俺はその時、ハルヒのとんでも性格を頭の隅に置いていた
ハルヒ「…バッカみたい!」
言うやいなやハルヒはズンズンと大股で歩きはじめた
訳が分からないと言いたげな俺の表情を見ずとも悟ったか分からないが
ハルヒ「アンタの事じゃない。私がよ」
と、あのハルヒが自分を曲げた同然の発言をしたぞ。地元効果というやつだろうか?
ハルヒ「私ね、アンタにてっきり嫌われてるのかと思ってたの」
これにはいくら俺でも驚いた
キョン「俺がお前をか?」
ハルヒ「だってアンタ私のやることに一々釘刺すじゃない。恨まれてるとも思ったことさえあるわ」
いったいコイツの目線で俺はどう映っていたのだろうな。ともかくこの誤解は解かにゃなるまい
キョン「不満になら思ったことあるが、嫌いじゃないさ。なかなか楽しいよ」
そこまで言うと、ハルヒは「そう……そうなんだ」と一旦速かった歩調を緩め、前を向いたままおもむろに空き手を後ろに出してきた
ハルヒ「い、今これ以上前に来たら一生、口きかないからね」
心なしか頭につけた黄色いリボンが俺には踊って見えた
やや広い俺の視界にはハルヒの顔が、またやや映っていた。表情は分からなかったけどな

470漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:34:01.23 ID:eurzulja0
しばらく右往左往すると、ハルヒはその足を止めた。ちなみにあれからこの間まで、ハルヒはひたすら黙秘をし続け、俺はどこぞの勇者を追う馬か馬車のような存在になっていた。
ハルヒ「着いたわよ」
キョン「ここか…」
見上げた先に、刺激的な風景は無かった。深い青の屋根の二階造り、二階に作られたベランダに物干し竿はあるが洗濯物は無かった。ハルヒを除く団員の周辺状況と比較すると、ハルヒは最も普通に見えた。勝手知ったる我が家なので、特別チャイムもならさずドアを開ける
ハルヒ「ただいま」
「おか…え……り?」
ハルヒが目前に現れた。いやいや、この白いエプロンが語るに母親なのだろう。これは…破壊力がなかなかある光景だった
「ハ、ハルちゃん?こ、こ、この」
ハルヒ「部活の友達、部屋に入れるわ」
「部活?あぁ〜じゃあ貴方がキョン君?よくお話聞いてるわよ〜」
もしハルヒの性格がおっとりしていたらこんな風におっとり喋っていたかもしれない。一瞬だが、「それも、いいかもしれない」と考えた自分が恨めしい
キョン「どうも、部活の友達の…えーと、キョンです。あ、でも本名は―」
ハルヒ「行くわよ」
グイッと引っ張られて家に上がらされる。ハルヒ家一階を見る間もなく階段を威勢のいい音を二重にして登っていく。手が離されたと目の前のドアには「ハルヒ」とやけに可愛いらしい字で看板が掛っていた。どうやら長くにして目的地についたらしいぞ。
ハルヒ「ちょっと待ってて」
一人ドアの奥に消えるハルヒ。本当にちょっとの間に出てきた
ハルヒ「コレに目を通して」
分厚い本が胸に押し付けられた。聖書?と思ったが「世界奇怪大全」とまがまがしい形で書かれた表紙を読み、内容とハルヒらしさが出る本だという事を確認した。どうもこの頃読書を強要されるような…
キョン「少し通すだけで時間がかかりそうだが?」
まともに読んだら本当に丸一日はかかりそうだ。長門に持たせたら、ずっと読んでそうだな
ハルヒ「じゃあ10分読んでて」
471漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:34:23.45 ID:eurzulja0
まさか、ハルヒお前、部屋の掃除をしているのか?ドアの奥からは、言葉に出来ないような音が出ていた。
キョン「……」
何を血迷ったのか分からなかった。気が付いたら俺は目の前にあるドアノブに手をかけていた。「ガチャ」いまならまだ未遂で済むぞ俺。全てを開け放ち部屋の中になにやら手一杯に荷物を抱えているハルヒを見た時は、もう手遅れだと思っていた。
ハルヒ「ア、アンタ…何入ってきてるのよ!」
キョン「いや、この本は難易度が高いから変えようかと」
ハルヒ「出てけー!!!」
叫ぶハルヒ。体では出ていった方がいいのは分かっていたけど、なんていったらいいのかなぁ。そう。意地をはってしまったのだ
キョン「嫌だね」
自分でも、この俺の行動は珍しいもんだと思ったね。言った直後でなんなんだけどさ
ハルヒ「な、」
ハルヒもこの対応には困ったようだ。次に出てくる言葉を探す間、視線が無差別にふく風のようにそこらをまっていた。簡単な作りのクローゼットと本棚、そしてベッド。
てっきり黒いオカルトグッズみたいなもので埋まっているかと思っていたのだが、
これはこれでハルヒらしい
472漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:34:59.75 ID:eurzulja0
ハルヒ「ふん!!いいわよ、もうそこに座ってて」
クローゼットの中にギュっと手に持っていた荷物をつめるハルヒ。コイツにもこういう一面があると思うと、むずがゆい。
キョン「ん?」
つい、座った場所の下に違和感を感じ、俺にソレを与えていた物を手に取る。
キョン「・・・・・・・」
ハルヒ「?どうかしたの__あ」
ちゃぶ台の向こう側に座ったハルヒが手を口にやる
何だったか分からなかった時と同様に、それは姿を現しても尚俺に違和感を与えた
女性雑誌が俺の手には握られていた。いや、掴む時に本だということは良く分かっていたのだが。
どうせまた「妖怪」だとか「心霊」だとか心の一辺が黒くなるような物だと、俺はてっきり、てっきりそう信じ込んでいたのだ。この本の存在はいささか衝撃的だった
ハルヒ「そ、それね。鶴屋さんやミクルちゃんが薦めるから貰ったのよ」
なるほど、俺が疑問を投げかける前にハルヒは律儀にも答えてくれた。
ハルヒ「でも大部分は髪型だとか、つまんない通信販売だとかだったわ」
いつもの三角オニギリのような口をしてムスっとした
それでもこの本を読んでいるハルヒを想像すると普通の女子高生のようで逆にシュールだ
キョン「なら小部分は面白かったのか?」
パラパラと雑誌を見回すと所々に折られていたページがあった
ハルヒ「えぇ、ホラーだとか、不思議、だとかの読んでて退屈にならないものもあったわね」
ほう、というかやはりそんな項目しか。・・・・ん?
キョン「『これで完璧。男の子を落とすということ』・・・」
ハルヒ「__ッ!!!か、返して!」
無効側から伸びてくる手を俺は中堅ライトフライ級ボクサー並みのスウェーで避けた。
473漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:35:32.14 ID:eurzulja0
キョン「…ハルヒ…お前」
呆然、という言葉があっているのだろうか、その時俺は口をバカみたいに開けて、向かい側の女性を眺めていた。コイツにも、まさか、まさか+方向の恋愛感情があったとは
ハルヒ 「いや、それはその」
狼狽するハルヒ、精神的に優位に立った、と少し笑う俺。普段から人を困らせるからシッペ返しがきたのさハルヒ
キョン「なになに、『好きな男の子には尽くすこ』……ん?」
今日の授業の間の休み時間が、鮮明かつゆっくりと俺の脳内にフラッシュバックしてくる
待て、確かにハルヒは俺に「命令しろ」と言っていたが。マズイぞ、非常にマズイ。いつのまにか俺は自分で精神的上位を降りていた。
ハルヒが?
俺を?
普遍の塊のような俺をか?まさかな。冷静さを取り戻し、再び精神的上位に戻った俺を待っていたのは、机に手をかけることもなく、この距離からでも顔の紅潮が分かるハルヒだった。
下を向き、何かを言い出す寸前まで口を動かし、また口を結んでを繰り返していた。
新手の金魚運動か、と、いらない冗談が俺の頭には浮かんでいた。そして意を決したか、湯だったような顔をあげ
ハルヒ「あのさ…」

474漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 14:35:45.67 ID:eurzulja0
ハルヒ「アンタ・・・・、好きな女の子とかできたこと・・・あるの?」
唐突に何を言う、そりゃぁ、長い人生だ。今まで生きてきて無いなんて言ったら嘘になるな
ハルヒ「そ、そう・・・」
紅い顔をしたままテンションを下げるという妙技を魅せるハルヒ。俺は恋をしちゃいけなかったのかね?
キョン「それがどうした?」
ハッっとなり形状記憶合金がお湯をかけられたかのように顔をあげてきた
ハルヒ「あ、え?あ!実は私、女の子の友達から…えーと、そう!恋愛相談を受けたのよ」
キョン「ソレはまた、女の子らしい相談を聞いたモンだな」
ハルヒのついた嘘はすぐ分かった。
普段SOS団の中では活発に動き回るハルヒであるが、教室の中では海底深くにあるアトランティスのようにその活発さは影はおろか身まで潜めている。そうなるとSOS団内ということになるのだが、朝比奈さんはこの時代でそんな事はまず無い。
長門に至っても、アイツの今の恋人は分厚い聖書かSF長編小説だろう。
小泉に至っては女性ですらない。
中学の頃の友達という線もあるが、今よりも波乱万丈さが悪化していた頃なのだ。確立は限りなく低い。おぉ名探偵みたいだぞ俺
ハルヒ「んでね、その・・・女の子なんだけど。男の人と付き合った事はあるの。でもそれが恋まで発展したことはないのよ」
文末に向かってハルヒの顔は真剣味を取り戻して行った。普通は恋に落ちたら付き合うモンなんだがな。
ハルヒ「その時は道理じゃなかった・・・らしいのよ、でもね?でもね!。」
取り替えたばかりの蛍光灯のような笑顔が戻ってくる。瞳も便乗して光っているように見えた
ハルヒ「その子は、初めて恋をしたのよ、多分。その人といると嬉しいし、つまんない事でもおもしろく見える、世界が変わるような人と会えたのよ」  
キョン「さぞかし、見た目が面白いか考えがヘンテコなんだろうな」
自分で自分をぶんなぐってるようだ。いぶす煙を見るような目でコチラを見てくるハルヒ
ハルヒ「あまりにもその人は普通だった。その子でも、恋、なんていう状態になるまでに気付かなかったの」
475愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 14:43:16.84 ID:OpTJB0eqO
支援
476愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 14:56:48.48 ID:vOTT1YcoO
あれ?生殺し?


支援
477愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 14:57:57.46 ID:91u0Ju8i0
生殺しorz
478さ算のトリビア:2007/01/31(水) 14:58:35.65 ID:/kMCUz/d0
だお
479愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 14:58:54.78 ID:vOTT1YcoO
最初読んでなかったw

続きwktk
480愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 15:00:46.04 ID:OpTJB0eqO
ものすごい良いところで止まってしまったw
気になる
481愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 15:15:10.16 ID:4AIQXBhF0
支援! シエン! しえん!
482愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 15:25:22.89 ID:biW3wMGe0
書いたものの打ち切り終了っぽくなっちゃったなぁ……。
483漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 15:56:34.40 ID:eurzulja0
>>474
ハルヒ「だから、困ってるのよ。その子」
キョン「困る必要があるのか?」
誰だって一度は通るあまりにも広い門なんだろうに。何をそんなに困るかね
ハルヒ「・・・…方ないじゃない」
ほとんど消え入りそうな声が俺の耳には届いた。といっても繋がるべき所は上手く聞こえなかったが
ハルヒ「仕方ないじゃない・・・頭に、そんな事なかったのよ。それがどう?急にそれしか考えられなくなってた」
どこか虚ろで、弱い目。ハルヒが自分自身を責めているように見えた。
ハルヒ「だから私は頑張った。活動だって、前より活発にしたし・・・・でもその存在は消えずに、逆に広がっていったの」
キョン「で、結局どうした?」
ハルヒ「相談した。した人は固まって『それは難しい』っていって本をくれたわ」
さて、と、どうやらコイツは嘘を突き通せないらしいな。おそらくではあるが、話をしているうちに感情が全部ソッチにいってしまったのであろう
指摘すべきかしないべきか、でもまぁ、言っといたほうが楽だろうな。おいハルヒ
キョン「それがこの本って訳か」
ハルヒ「そう・・・・・ん?・・あ・・・・!!??」
先程から組んでいた腕を少し緩め、ハルヒは動きを止めた
いくら俺が鈍目だからって、分からないハズもない
ハルヒ「ち、違うのよ!!!ぜ、全然そういうんじゃなくて、その、全然・・・全然・・・」
手を上空にあげ、ブンブンと振るハルヒ。奇妙な踊りに見えなくもないが、その行動も、今のハルヒの驚愕と焦りが混じる顔が全て消し去っていた。
その色は、サーモグラフィーで見ても、見なくても完璧な紅潮具合だった。
484愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 15:58:12.80 ID:vOTT1YcoO
wktk支援
485愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 16:00:39.45 ID:4AIQXBhF0
おかえり支援!
486愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 16:01:04.69 ID:0pLOPlemO
キョン語りが出来るのなら台詞前の名前は入らないかもしれんね
支援
487愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 16:02:14.14 ID:CdFP1NLC0
お、従順の人も来てくれたのか
488愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 16:06:26.02 ID:Gtjo4w9U0
489漣 ◆YdOpWVFY1s :2007/01/31(水) 16:11:44.61 ID:eurzulja0
>>486
ならちょっとこの名前いれてみるのやめてみます
指摘ありがとうございます。
490愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 16:12:38.34 ID:vOTT1YcoO
まだ書きかけかな…?

出来ればいっきに読みたいから、まとめて投下して欲しいぜ。
491愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 16:34:59.44 ID:vOTT1YcoO
保守
492愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 16:52:59.88 ID:IzgcqcZC0
●<俺、参上
493愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:09:47.20 ID:OpTJB0eqO
●<俺、三乗
494愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:10:44.98 ID:x2HpfPiA0
出来たがながすぎる90スレ以上使いそうなんでテキストでうpしたいがやり方が
wkrん1111111111111
495愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:13:51.27 ID:P7e98cwy0
直接wikiに上げてURLでおk
496愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:17:49.94 ID:KMCc49ds0
90レスだろお
どうしてレスとスレの区別がつかないんだよ君はー
俺はエレベータとエスカレーターの区別がつくようになったのが高校生になってからだけど。
497愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:20:42.72 ID:JGbN9jBz0
ハルヒたちの学力教えてください
お願いします><
498愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:23:53.29 ID:KMCc49ds0
ハルヒ……学年トップ10入りするほど頭いい
長門……おそらく頭いい。目立たないほどに。
朝倉……キョンの分析だと頭いいと思われるがデータがないうちに消滅
古泉……特進クラスにいるものの、頭脳レベルは不明。消失ではトップ高にいくほど頭いい
みくる……謎。常識力は低い

キョン……バカ
谷口……キョンといい勝負
499愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:25:52.52 ID:JGbN9jBz0
>>498
thx
500愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:36:51.68 ID:uYfSr3uf0
基本的にSOS団はキョン以外は成績優秀なんだよね。
ハルヒははっきり言われているし、古泉、長門、みくるもそれらしい描写有りだし
501愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:37:41.85 ID:2u5JLcWl0
小学校のころよく傘で牙突をやったもんだ
ピジョット>>>>>>>(越えられない壁)>>伝説のトリポケ
      ,.ィ'´:,ィ' : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ, : : : : :.:.:.:.\
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  ,': : :.:.:.:.i : : : : : :.:i: :i‐- .,_  ',: : : :.ヘ : : : !: : : : :! : : : :ハ:.:.ヽ:.ハ
. !: : : : :.:i : : : : : : :|:.:i.!:|  `'' ヽ..,_ : :ヽ: : :',: : : :.:! : : : : ヘ:.:.:',: :i
 l: : : : : :i : : : : : : :.|: ハ:|     \`゛''‐''" ', : : :.:!: : ハ: : ヘ:.:.i: :i
 !: : : : :.:| : : : : : : : !:.| ! . -‐‐‐、 ヽ: :.',ヽ: ヘ: ,イ !: : :.ヘ: : ヽ:|: :l
 !: : :i: :/|: : : : : : :|:ヘ ./::::::::::::r、'ヽ  ヽ,:! ヽ.ヘ:.:\: : : :i: :ヘ:\:|
 |:.:.:.|:.〈 | : : : : : :.|: |/ ,'::::::::::::::7     ヘ   _ヽ: :ヘ`.、: :iヘ ヘ: :i\
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 ||: :.| : : !i: :.i : : :.|: :|. `´          /:::::::ッ }./:ハヽ: :.ヘ:.`,'\
 |i|: :|: : :.!:!: .!: : : |: :|. 〃'          i,::::::/ /:/',:.:.!ヽ: :ヘ,   
 |!l: :|!|:.:.:iハ:.:!: :.:.:|: :|            ヽ `。' /ィ' ! !:.!: : \:ヘ
. ! i:.|.ハ:.:.|:ハ:.!: :.:.:!:.:|             ''' /  !:.:.:!: : :.,'. `'へ
_,,.!. ',| ! ',:.i!:.|',!:.: :.:!: | 、      ´゛'     ,.'   .! :.:!: : :,'     `'
: : : : ', ',:.',:!',l:.ハ: :.:ハ: !  >.,          ,. r '"    .!: :.!: : ,'
: : : : :.', :.:.ヽ', :.ヘ: :.ハ ! /、 `' . - ''"´          !: :,':.:./
ヽ. : : : : : : : :.:.:.:iヘ:.:.ハ',:! l                !:./: /
ヽ.ヘ : : : : : : : : :.| ヘ:.:',ヘ :|                !/: /
 ', ハ: : : : : : : : :.| ヘ:.',:.:.:.!、            //


頼む、↓のスレに↑のAAを貼り付けてれ。理由は問わないで欲しい。

http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/neet4vip/1169370420/l50
502愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 17:46:11.71 ID:OpTJB0eqO
どうやら今日鯖停止するらしいね
以下コピペ

1月31日 電源対策工事日程のお知らせ

データセンターXO電源設備の対策工事に関して、
続報が入りましたのでお知らせいたします。

データセンターXO側の再度のスケジュール調整により、
当初1回を予定しておりました電源対策工事を
2回に分けて行われる旨、連絡が入りました。

1回目:日本時間 2007年1月31日 22時30分〜23:30

2回目:日本時間 2007年2月1日 16時00分〜17:00

作業時の60分間、各サーバへの電源供給が停止されるため、
その間、各サーバに接続できなくなります。
503Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 17:58:33.91 ID:biW3wMGe0
投下しますー。
これまでのお話はこちらhttp://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2070.html
504Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 17:59:05.43 ID:biW3wMGe0
 §第三章§

 翌日――。

 登校して、真っ黒な髪の長門由梨を見ると思う。
 物事の終わりは、こんなに静かなものなのだろうか? と。

「あんた、元気ないけどどうしたの?」
 俺が教室に着いてイスに座るより早くハルヒが言った。さて何と答えればいいのだろう。
「お前さ、長門が転校するってことになったら、どうする?」
 ハルヒは宇宙の広がりを思わせる大きな瞳を一度パシリと瞬きさせてから、
「有希が……転校?」
 二つ隣の列にいる長門の後ろ姿に目をやった。
「どうしてよ。妹が入ってきたばかりで今度は有希がいなくなるの? それっておかしくない?」
 だよな。状況をまるっと全て説明されなければそう思うだろうさ。
「やっぱりあの二人、仲が悪いとか?」
 ハルヒは不思議顔のまま訊いてくる。そうじゃないんだ。むしろそのほうが俺としてはよっぽど分
かりやすくてよかったんだがな。

 もう遥かな昔にも思える入学したての五月、朝倉vs長門の構図になったことを思い出す。あの時み
たいに、露骨に対立してくれればまだしも俺も立ち位置を見失わずに済んだだろう。今回の件が煮え
切らないのは、それがどちらかというとドカンと騒動が起こるわけではなく、淡々と事実のみが告げ
られて収束へ向かおうとしているからなのだ。
505Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 17:59:46.42 ID:biW3wMGe0

「何なのよ、はっきりしないわね!」
 ハルヒは席を立つと長門の元へ歩み寄り、
「有希、キョンがあんたが転校しちゃうとか言ってるんだけど、冗談よね?」
 長門の席はクラスの中心に程近いところにあり、そんな場所でハルヒが大声でのたまうものだから、
当然クラス中に聞こえるわけで、結果としてクラスメート全員が少なからずざわついた。
 直後に俺の元に猛進してきたのは谷口である。
「おいキョン! どういうことだよ! 詳しく聞かせろ」
 ハルヒばりの大音声。あぁ、面倒なことになってきたな。
「言葉通りだ。長門は近いうちにいなくなるかもしれん」
 どうせ遠からず分かることだ。
「何てこった! 俺のいるクラスはどうしてこうランク高いのがいなくなるんだ!」
 うるさいぞ。彼女持ちが余計な事をつべこべ抜かすな。
「言っただろうが、それとこれとは話が別だ」
 谷口はハルヒと何か話している長門の方へ視線をやった。俺もつられてそちらを見る。
 長門はやはり元気がないように見えた。ハルヒは机を挟んでしゃがみ込み、長門の顔をうかがうよ
うにして話し続けている。
 クラスメートの半分ほどがハルヒと長門に目を向け、何やらささやきあっている。口数は少ないが、
長門はクラスでも確かに特殊な存在感があったからな……。
 そこで俺は右に目を移し、黒い使者たる由梨を見た。一連の流れに委細構わず、教科書に無感動な
視線を向けている。他に見るものがないから仕方なくそうしている風情だ。


 長門がいない部室の風景なんてものを想像できない。
 俺はやる気もなく授業の間中机に突っ伏したままだった。本当に打つ手はないのだろうか?
 去年の今頃もこうして悩んでいたことを思い出す。あの時は長門が変わってしまって、ハルヒの代
わりに朝倉が後ろにいて、世界そのものが狂っちまってた。
506Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:00:26.67 ID:biW3wMGe0
 今度は特別変わったところもない。ただ奇妙な存在感を放つ長門二号がクラスに加わっただけだ。
 あらかたの出来事はもう終わっている。……もしかしたら、俺の役目ですらも。
 俺は一体何を望んでいるんだ? 長門に俺がしてやれることなんて何もないのに、どうして引き止
めておきたいなどと考えるのだろう? 日常の風景を維持したいがためのワガママか? だとすれば
俺はこの一年半で何にも成長していないことになる。ハルヒとの出会いに始まって、これまでずっと、
俺はさんざんいろんな事に巻き込まれてきた。途中からそんな毎日が楽しくなって、いつまでも続け
ばいいと思っていた。しかし、長門はもうすぐいなくなってしまう。
「キョン、具合悪いの?」
 ハルヒが見当はずれなことを言っている。
「今日こそは撮影再開するからね。ねぇ、聞いてる?」
 撮影か。そんなことして何になるんだ。長門はどうせいなくなる。から騒ぎでムダに疲れるくらい
なら――、
「ちょっと、あたしが話してるんだからちゃんと聞きなさいよっ!」
 首根っこを引っつかまれて起こされた。何すんだよ。人が沈んでる時に。
「あんたどうしちゃったのよ、熱でもあるの? ……違うわね。そんなに有希が心配?」
 あぁそうさ。お前、長門から何を聞いたんだよ。
「有希は自分で納得した上でご両親のところに行くって言ってたわよ。あんたもしっかりしなさいよ。
 有希よりよっぽど元気がないじゃないの」
 俺のことはほっとけ。ん……納得した上で?
「そうよ。だから心配いらないって言ってた。連絡するからって。ねぇ、聞いてるの? キョン」
 ハルヒから聞くより直接話したほうが早い。俺は席を立って長門の元に歩いた。
「長門。お前いいのかよ、本当にこのままで」
「いい」
 長門はいつも通りに見えた。さっきまで落ち込んでいたようだったのは気のせいか?
507愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:00:56.24 ID:OpTJB0eqO
支援
508Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:01:11.56 ID:biW3wMGe0
「いいってお前」
「いつかこうなることは分かっていた。それに、わたしはあなたたちといられて楽しかった。もう十分」
 とてもじゃないが、それが長門の気持ち全てだとは思えなかった。思えなかったが、俺にそれ以上
踏み込む権利などないのではないか……そうも思った。


「キョン! 何ぼさっとしてるのよ、早くカメラ回して!」

 ハルヒの声に我に返り、慌てて録画ボタンを押した。
 場所は凍りつきそうな寒さの体育館で、朝比奈さんが薄着で肩を震わせている。
「さ、っさささぶいです、はっくしゅ! へっくしゅ!」
「みくるちゃん。女優たるもの、ちょっとの寒さや逆境に負けちゃダメなのよ!」
 来週の今頃には長門はいないというのに、なぜハルヒは通常営業していられるのだろうか。納得し
た上で行くと聞かされただけでこいつが引き下がるってのも、それこそ納得いかないな。
 当の長門は例の魔女っ娘衣装で朝比奈さんの傍らに立ち、反対には制服姿の古泉。どうもこのキャ
スト三人がこれから漫才をするという筋書きらしいのだが、そんなものの台本があるとは俺は聞いて
いない。
 映画第二作は宇宙的なパワーを増して帰ってきたユキが、今度はミクルと手を組もうとし、困惑し
たところをイツキが止めようとする、ラブコメ的展開を前面に押し出した幕開けをし、その後なぜか
舞台が清水に飛び、天橋立を経て北高へ戻ってくる。ユキがどうなったのか結局分からずじまいだっ
たのだが、「これで第三部に続くわけよ! 完璧な幕引きだわ」というハルヒの一言によりオチてる
んだか何なんだか分からないままにエンドクレジットとなっていた。
 その第三部だって、トリプルキャストのうち二人がいなくなってしまってはもう続けようがないの
ではないだろうか。朝比奈さんは来年の秋にはとっくに卒業しているはずだから。
509愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:01:19.88 ID:lwLEX21z0
テスト>>507
510愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:01:38.08 ID:lwLEX21z0
いやすまん、支援
511Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:01:52.97 ID:biW3wMGe0
 長門の転校はまだしも、朝比奈さんについてはハルヒも分かっていたはずで、それならどうしてこ
んなとっちらかった展開のまま緞帳を下ろしたのかと、俺は完成試写会の場で思ったものだった。

 俺が黙考している間にイツキとユキとミクルによるトリオ漫才が始まっていた。
イツキ「いやいやいやー、始まりましたね、朝比奈ミクルの冒険、舞台裏漫才!」
ユキ「トリオ漫才は宇宙でも難度が高い。正直できるか心配」
ミクル「でっ、ででででもぉ、あれだけ練習したんでふぇ、ふぇっくしょん!」
イツキ「だいじょぶですか。上着なしではやはり寒いのでは」
ユキ「そこは気合いでカバー。心頭滅却すれば火もまた涼し」
ミクル「で、でもっ、ここここけっ、ここ体育館ですしっ、今暑いんじゃなくて寒……へっくしっ!」
イツキ「では僕の上着を着てください」
ユキ「監督がすさまじい目つきでこちらを見ている。おそらく気遣い無用のサイン。ああこわい」
イツキ「棒読みでは怖さが伝わりませんよ……実際すごい形相ですね涼宮さん」
ミクル「う、うぅ〜、さぶいですぅ〜」
イツキ「えっと、台本どこまで進みましたっけ」
ユキ「十二行目。へっくし」
ミクル「うぅ〜、くしゃみのマネなんかしないでくだ……はぶしっ!」
 超斬新な全員ボケによるトリオ漫才である。長らくシリアスだった俺の心情もお構いなし。朝比
奈さんのお茶目なくしゃみっぷりには不覚にも感涙しそうになる。

 ……。
 ふと長門と目が合った。昨日は一度も目を合わせなかったが、ぱちぱちと瞬きをして、何でもなか
ったかのように小首を傾げる。
512Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:02:33.56 ID:biW3wMGe0
ユキ「あなたがしっかりしないと何もはじまらない」
ミクル「ふぇっ? うぅ〜。だって、さむいんですよぅ〜」
イツキ「だから僕の上着を」
ユキ「また監督が凄まじい睨みを効かせている」
「そう! ダメよダメ! 朝比奈ミクルは何者にも負けない気丈なヒロインなんだからね!」
 監督がフレームインした。もうグダグダである。
「そんなわけで、映像特典を楽しんでくれてるあなた! 漫才はここで終了よ!」


 帰る頃には俺の冷凍ミカン状態だった心は常温くらいには温まっていた。ひとえにハルヒが強引に
撮影敢行して俺を引っ張りこんでくれたおかげかもしれん。
「ハルヒ」
 機材を片付けているハルヒにさりげなく言った。
「何?」
「さっきはすまなかった」
「いいわよ別に。気にしてないから。元気のないあんたなんて気持ち悪くて見てらんないからね」
 偶然なのか、ハルヒはこちらに背を向けていて、どんな表情をしているのかは分からなかった。


 今日も終業の鐘がなり、俺たちSOS団は全員一緒に学校を後にする。

 それぞれの思惑はあっても、俺たちは今日も五人揃ってこの坂道を下りている。いつか四人になっ
ちまうのかもしれないが、いつかそうなるなら、せめてその時まで笑ってるべきなのだろう。ハルヒ
にそう教えられた気がした。
513Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:03:22.43 ID:biW3wMGe0


 長門から携帯に電話があったのはその日の夜だ。通話ボタンを押した俺の耳に涼やかな声が届く。
「マンションに来て」

 俺はマンション下まで出向き、間もなく長門宅に上がりこんだ。二日連続。
 長門は今日もお茶を入れてくれた。しばしの沈黙の後、長門は俺の目を見て告げた。
「昨日はごめんなさい」
「……長門?」
「わたしは動揺していた」
 長門は一度顎を引いて、それからまたこちらを見る。
「まだ、ここにいたい」
 長門は言った。小さな声で、大きな意思を。
「わたしはあなたたちと一緒にいたい」
 その瞳には決意の色が浮かんでいる。俺はしばらく何も言わずに長門を見つめていた。

 本当に変わったよな、お前は。
 去年の長門だったらこうして電話でわざわざ俺を呼んで謝ったりしなかっただろうし、『動揺』じゃ
なく『エラー』と言っていたと思う。


「そうか」
 やがて俺は息を吐き出すと共に、安心して言った。長門の本心を再確認できたからだ。
「そうだよな、当たり前だよな」
 聞いたか、情報統合思念体。これが長門有希の意思だ。お前たちに感情の理解はできないんだった
か? だったら長門は親玉のお前たちより進歩しちまったことになるかもな。
514Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:04:02.84 ID:biW3wMGe0
「何か方法はないのか? お前が連結解除されずに、ここに止まる方法は」
 長門由梨は言っていた。ハルヒの力を持ってこようとも対処できる、と。
 本当にどうにもならないのだろうか?
 これまでだって、八方ふさがりと思うような状況を俺たちは乗り越えてきた。俺に数少ない特性が
あるとすれば、往生際が悪いってことだ。おかげでここまで来れたんだからな。今回もやすやすと諦
めたくはない。

「長門由梨」
 出し抜けに長門が言った。俺は思考から戻る。
「わたしの情報連結解除の役割を担っているのは、おそらく彼女」
 役割って何だ。親玉が直接お前を消しちまうわけじゃないのか?
「情報連結解除には、同じヒューマノイドインターフェースのコード申請が必要。朝倉涼子の時を思
い出して。わたしがいなければ、彼女がいなくなることはなかった」
 古いテープを再生するように、ぼんやりと浮かんでくる映像。……そうだ。あの時、長門が来るま
で、俺は本気で朝倉に殺されると思っていた。情報封鎖。それを突破した長門が朝倉を白い砂に変え
てしまったのだ。呪文のような早口。
 長門は本分を思い出したかのように、滑らかな口調で続ける。
「インターフェースの創生と終焉のプロセスは異なる。統合思念体はヒューマノイドインターフェー
スに直接結合解除をすることはできない」
 朝倉を砂にするのは、お前なしじゃできなかったってことか?
 長門は頷き、
「インターフェースの不具合は別のインターフェースが解消するように作られている。同様に、わた
しという固体の引継ぎを行うのは、彼女の役目」
 黒髪のお前か。
 俺はそれを聞いて考える。長門は自分の意思こそ持っているが、これまで親玉の決定に意を唱えた
ことはなかったはずだ。ならば統合思念体は、当然長門は命令に従うだろうと思っているかもしれない。
515Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:04:44.46 ID:biW3wMGe0
「どうすればお前は助かるんだ?
「わたしが逆に彼女の連結を解除できれば、あるいは」
 そんなことができるのか?
「可能性は限りなく低い。長門由梨はわたしの情報連結解除を仕事のひとつとして遣わされている。
わたしが命令に背くと分かれば、即座にわたしの行動を封殺すると思われる」
 そりゃマジか。……今のところあいつはこの上なく大人しいが。
「マジ。そうなった場合、情報統合思念体も彼女の背後に着く」
 長門は世間話のように言う。
 そのカードに勝ち目はあるのか? 大宇宙に時空間を超越して存在している意識体とそのインター
フェース相手に、人間二人で挑むのは分が悪いなんてレベルじゃないだろう。
「確率はゼロではない」
 はっきりした口調に俺は顔を上げた。依然、長門の目には強い意思が表れている。
 長門が望んでいるのなら、俺は可能な限り力になってやりたかった。
「長門、俺にできることがあれば何でも言ってくれよな」
 俺の言葉に、長門は深く頷いた。


 とはいえ、そこそこにビビッていたのも事実である。
 ヒューマノイドインターフェースが本気を出すとどういうことになるのかは、この半年あまりで
散々思い知らされている。ここだけの話、ガチンコでバトルするような展開はできれば避けたかった。
今回の長門対長門がどのように運ぶのかはまだ分からないが、なるべくなら平和的な解決を……。
 無理か。何にしろ、俺の長門が残るには黒長門が消えなきゃならんのだから。
 そう、どっちかが消えなきゃならない。朝倉と長門が戦った時のように。
 朝倉は最後に微笑んでいたが、そう言えばあの時のあいつは何を考えていたのだろう。長門以外の
インターフェースには、特別な感情――エラーはないのだろうか? 朝倉は言っていた。「何も変化
しない観察対象に飽き飽きしている」と。
516Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:05:24.55 ID:biW3wMGe0
 それこそが感情なのではないか? 朝倉の本心なんてものは未来永劫俺には分からないだろうが、
あの真っ黒な髪の長門にもそうした心の機微がないと、本当に言い切れるのだろうか。

 こちらが圧倒的に不利らしいのに余計な感傷に浸りつつ、俺は自宅に帰り着いた。二日連続で夜に
帰ってきたからか、オフクロが俺にいわくありげな視線を送ってきた上に「彼女でもできたの?」と
訊いてきたが、おあいにく様である。こら妹、同調するんじゃありまっせん。


 翌日、放課後の部室――。

「それじゃ、二人の合格を祝して、かんぱーい!」
 部室に響き渡るハルヒボイス。
「うーい! あんがとーっ!」
 それに続くは鶴屋さんの明朗な声。
「飲んで」
「あ、ありがとうございま〜す」
 長門がお酌をして朝比奈さんが申し訳なさそうに受け取る。もちノンアルコールだ。
「しかし突然だったので用意が骨でしたね。また奥の手を使うことになってしまいました」
 どうでもいいことを言うのは古泉で、俺たちが何をしているのかというと、鶴屋さんと朝比奈さん
の合格祝賀パーティである。今朝鶴屋さんが推薦合格したとの報を聞きつけたハルヒが、
「みくるちゃんとまとめてお祝いしましょ! 鶴屋さんにはお世話になりっぱなしだったしね!」
 と言って突如決定された催しである。
「僕だけ呼ばれちゃっていいのかなぁ」
 国木田がニンジンを食べつつ言った。何のことかと言うとここにいない谷口についてだ。
517愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:05:40.18 ID:OpTJB0eqO
支援
518愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:06:01.23 ID:vOTT1YcoO
支援
519Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:06:04.82 ID:biW3wMGe0

 谷口は俺の誘いを断固として固辞、挙句、
「お前、そうやって俺を悪魔の誘惑に陥れようとしてるんだろ。分かってるぜ」
 と勝手に納得しやがった。何を言ってやがる。俺にしてみれば谷口の頭の中の方がよっぽど大魔境だ。

「いいんじゃないか。毎回谷口の相槌打つのも疲れるだろ」
 俺は国木田に言った。
 本当ならコンピ研の部長氏あたりも誘ってあげたいところだったのだが、彼は一般受験組なので、
まさに今受験勉強の真っただ中であり、そういうわけでここにはいない。ぜひとも頑張ってもらい
たいところだが、来年の今頃はわが身に降りかかるとなると、のん気に両手を合わせてもいられな
いな。

「……」
 もう一人お客がいるのだ。その名は長門由梨。なぜか? あぁ、本当になぜだろうな、ハルヒよ。
その疑問を
「人数は多いほうが楽しいでしょうが!」
 の一言で片付けられては何も言えない。まさか由梨の正体を明かすわけにもいかない。俺は正直
言って困っていた。何せ昨日の話の後である。有希と由梨は互いを意識するわけでもないようだった
が、そこまで平然としていられると気にしている俺がバカみたいじゃないか。
「どうしましたか。鍋アレルギーか何かでしょうか? 食が進んでいませんよ」
 古泉がモノローグに横槍を入れてくる。鍋アレルギーだと、ふざけんな。
「それにしても彼女、なかなか興味深い存在ですね。本当に髪の色以外は長門さんそのものです」
 久々にその「興味深い」って口癖を聞いたな。
「おや。僕もあなたの口癖を長らく聞いていない気がしますが」
 そんなに言ってほしきゃお応えするぜ。やれやれ。
520Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:06:45.54 ID:biW3wMGe0
「しかし、由梨さんでしたか。彼女を見ていると最初の長門さんを思い出しますね。僕が涼宮さんに
引っ張られて部室に入ってきた、あの時の長門さんの雰囲気にそっくりですよ」
 くしくも古泉は俺と同じ感想を抱いたらしい。しかしほんとに興味津々だな。お前も黒髪属性か。
「お前も、とはどういう意味でしょうか?」
 何でもない。……谷口のことを言ったつもりだったが、誤解されたかもしれん。
「ほら由梨、じゃんっじゃん食べてね! まだまだ具はたくさんあるから。足りなかったら男どもに
買いに行かせるからさ」
「……」
 有希と同じく由梨も大食いらしかった。セリフの量に反比例して旺盛な食欲である。何も言わない
からその分食べてるのかも分からないが。
「いやー、しっかし有希っこに妹がいたなんてね! 驚き桃の木栗林だよっ」
 鶴屋さんのエキセントリックな言葉にも全く動じず、鶏肉を頬張る由梨。いちおう先輩なんだし、
会釈くらいしておいたほうがいいと思うぞ。……かつての姉を思うと浅はかな願いかもしれんけど。

 ふいに、有希と由梨の箸がかち合った。
 二人とも同じ魚の切り身に手が伸びたらしい。偶然にもすべての会話が節目となるタイミングだっ
たらしく、沈黙が訪れる。
「……」
「……」
 ふたつの無言が箸をたどって魚の上でぶつかった。有希と由梨の目が合う。他六名の視線が二人の
間をただよう。時間が止まったかのように見つめ合う宇宙姉妹。

「な、長門?」
「どうぞ」
 俺がつぶやくとほぼ同時、有希が箸を離した。
521Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:07:25.38 ID:biW3wMGe0
「……」
 由梨は無を閉じこめたような瞳で二秒ほど有希を見つめて、
「どうも」
 と言って魚を取り皿に取った。

 ……。

「あれね! 姉妹愛ってやつ?」
 ハルヒが出し抜けに言って、ふたたび時が動き出した。一時的に聴覚マヒになってたんじゃないか
ってくらいに、突如として鍋のグツグツいう音が聞こえてきた。
「みくるー! ご飯お代わりちょうだいっ!」
「へ? あ、はい! ただいま」
 鶴屋さんが差し出した茶碗にびびくんとして、メイドスタイル朝比奈さんが我に返った。
「何だったんだろうね、今の」
 国木田が箸を止めつつ言った。
「さぁな」
 俺にもよく分からん。……そういやいつだったか、長門と喜緑さんの間でも似たようなことがあっ
たな。何かアイコンタクトに特別な意味でもあるのだろうか。


「いやー、食ったくった! ハルにゃんありがとねっ!」
「お安い御用ってものよ。そうだ、最低でも卒業式のときにあと一回はパーティしましょ!」
「おう、そりゃ気前がいいねっ!」
 ハルヒと鶴屋さんが先頭を歩き、続くのは朝比奈さんと国木田という稀に見る組み合わせ、次に長
門姉妹、最後尾はいい加減倦怠期に突入したくなる俺と古泉コンビだ。
522Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:08:05.35 ID:biW3wMGe0

 しかし何やらシュールな風景である。特に目の前の髪の色の違う二人。こんなのを見られるのは、
後にも先にもこの時だけかもしれん。
「楽しいひと時でしたね」
 また古泉がいらぬ一言を投げかけてくる。吐息をかけるな。白く曇るから気色悪さ三割増しだ。
「しかし、ハルヒは何たって長門妹を呼んだんだろうな」
 無意味かもしれないが、小声になって俺は話す。
「おや、本当にお気づきでないと?」
 む。そう言われればどうだろう。これまで古泉がしてきたような説明を思い起こせば、訊かずとも
自分で回答を出せるかもしれない。

「姉妹間の見えざる齟齬を感じ取った」
 俺の台詞を代わりに読むかのように古泉が言った。
「どうです。答え合わせできていたでしょうか?」
 クスリと笑う。だから俺にその手の笑みを向けるのはやめろっての。
 だがまぁ、確かに俺も同じことを思ったさ。ハルヒの勘の働き具合も行動パターンも、さすがにこ
れだけ長い付き合いだと大雑把な見当はつく。
「涼宮さんは有希さんのほうが転校するかもしれない、ということから、二人の関係があまりいいも
のではないのかもしれないと思った。そして、二人を鍋パーティに呼べば少しはしこりが取れるので
はないか、と考えたのでしょう」
 団員全員を気にかけることに関しちゃハルヒの右に出るものはいないからな。俺は何かに注目する
とその間他のことがおろそかになったりするが、さすが一年半も団長やっているだけのことはある。
 目の前のショートカットガールズは同じ歩調で歩いている。訓練された兵隊よりも息ピッタリであ
る。プログラムによって同期していると聞かされたほうが頷けるかもしれない。
523Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:08:45.58 ID:biW3wMGe0

「わたしが統合思念体に報告を終えない限り、彼女がわたしの連結を解除することはない。期限は五
日後」

 長門はそう言っていた。
 駅前で別れて、互いに何も会話することなく同じマンションへと歩いていく色違いの後ろ姿を見な
がら、いっそこのまま二人とも残れればいいのに、などと俺は身勝手なことを考えていた。
 インターフェースであれ、自分で考えて動く力を与えられている以上、そこには少なからず理屈で
は片づかない事柄ってものがでてくるんじゃないか。あの黒髪長門だって、時間を経れば姉のように
人の気持ちを汲み取れるようになるのではないだろうか。

 そんな考えは、浅はかだっただろうか。

524Black Lily ◆Etq65eJh4c :2007/01/31(水) 18:09:27.64 ID:biW3wMGe0
ここまでっす。
……もう読んでいただけるだけでありがたいですこれに関しては。支援感謝ー。
525愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:12:25.18 ID:4AIQXBhF0
乙!
wktkだ。
526愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:13:54.84 ID:3ZUu59290
ごくろうさまっす。
なんか悲しい終わり方になりそう。
それも踏まえて期待してます
527愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:15:38.08 ID:vOTT1YcoO
乙!
BADだけは!BADだけは!


続きwktkっす
528愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:19:48.48 ID:OpTJB0eqO
これはこれでBADもアリかもしれん…
黒髪の長門ってのもなかなか良いですな

乙でした
529愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:34:54.32 ID:1YrLMfQEO
保守
530愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 18:41:32.28 ID:uYfSr3uf0
>>524


バッドなんだろうか・・・、ハッピーを期待。
531愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:02:27.21 ID:PDRHCagH0
age
532愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:10:49.37 ID:AFct/ywj0
533愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:14:49.39 ID:uYfSr3uf0
一応予告していた通りのハルキョン+古鶴なんだと思うが、
何だか良く分からないコメディ調のものが出来たんだが、投下いいかな?
534愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:18:40.82 ID:vhyNYogm0
wktk
535愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:21:27.27 ID:vOTT1YcoO
wktk
536トライアングル・ラン 01/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:25:44.76 ID:uYfSr3uf0
「ちょっとキョン、あんたもうちょっと早く走りなさい!」
「わ、待て、ハルヒ……」
「ああもう、とろいわね!」
 ハルヒがぐいと右手を引っ張り、それにより俺の左腕も引っ張られる。
 なぜかって? そりゃあ、俺達の手が手錠で繋がれているからだ。
「ふええええ、長門さん〜、目が回ります〜」
「……暴れないで」
 そして俺とハルヒは、どういうわけか、朝比奈さんを引っ張っている長門に追われている。
「と、こっちだ」
「ちょっと、無理に引っ張らないでよ!」
「良いから来い!」
 長門が曲がり角で減速しているあたりで、今度はさっきとは逆に俺がハルヒの手を引っ張
って難を逃れる。
 え、一体何をして居るかって?
 それはだな、
「あ、鶴屋さん発見!」
「え、あ、」
「追うわよ、キョン!」
 って、ハルヒ、お前早すぎだろう……。
 ああ、とりあえず、状況を説明しよう。
537トライアングル・ラン 02/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:26:21.02 ID:uYfSr3uf0
 ことの起こりは、約三十分ほど前に戻る。
 その日俺が部室に来た時点で、団員は全員集合済み+鶴屋さんが居て、朝比奈さんが制服
姿のままという、それだけでも何となく妙な予感というか、これから何か起こるんだろうと
いうことが連想される状況だったが、そこでハルヒは
「よし、これで全員揃ったわね!」
 といってから、おもむろに宣言したのである。

「今日はここに居る全員で鬼ごっこをするわよ!」

 ……。
 ……子供かこいつは。
「鬼ごっこって……、なあ、ハルヒ、その手錠は何だ?」
「ああこれね。普通に鬼ごっこをしてもつまらないと思ったから、二人組ずつに分けてやろ
うと思って持ってきたのよ」
 二人組、ね。
 だから鶴屋さんが居るわけか。
「手錠付きで鬼ごっこなんて面白そうじゃないか!」
 正式な団員ではないながらもハルヒの思いつきには真っ先に賛成する筆頭とも言って間違
いない鶴屋さんは、びしっとピースを決めてそう言った。この人も相変わらずで有る。
「んじゃ、一応ルールを説明するわね」
 当たり前だが俺以外の団員がハルヒの意見に反論するわけも無く、俺としても、まあ、こ
のくらいのことなら良いかと静観を決め込もうかと思ったため、止める者の居ないハルヒは
あっという間にその鬼ごっこを行うことを決定事項とし、説明に入った。
「まず、組み分けはくじ引きね。でもって、一組が残り二組を追うって言うんじゃつまらな
いから、そうね、それぞれが三すくみみたいな感じで追いかけることにするの。AがBを、B
がCを、CがAを、って感じね。で、捕まった組は負けで、他の組の人達にご飯を奢ること。
……どう、簡単なルールでしょ。ちなみに場所は校庭も含めた校内全部、自転車とか乗り物
を使うのは禁止だからね」
538愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:26:28.53 ID:OpTJB0eqO
支援
539愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:26:45.99 ID:vOTT1YcoO
支援
540トライアングル・ラン 03/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:26:48.02 ID:uYfSr3uf0
 禁止以前に、こんな山の上の学校に自転車で通学している酔狂な人間など殆ど居ないわけ
だし、そもそも手錠で繋がれた状態で自転車になんか乗れるわけも無いだろう。
「なるほどな」
「なるほど、了解いたしました」
「分かったよー」
「……了解した」
「え、えっと、追って来る人達から逃げながら、自分が追いかけなきゃいけない人を追うん
ですよね……、うん、大体分かりました」
 朝比奈さんの反応がちょっと不安だが、まあ、理解出来ては居るのだろう。
「んじゃ、先ずは組み分けね。あ、赤と黒と色無しが二つずつ、赤が黒を追って、黒が色無
しを追って、色無しがが赤を追うって所まで決まっているからね。そうそう、どこかの組が、
追っている組の手錠を掴んだら終了だからね」
 相変わらずこういうときの用意は良いね。
 かくして俺達は、運を天に任せつつ籤を引くことになった。
 しかし、誰と一緒になるのが一番良いんだろうな。俺としては一番幸せな選択肢は朝比奈
さん、と言いたいところだが、罰ゲームつきなことを考えると朝比奈さんはパートナーとし
てはちょっと頼りなさ過ぎる。俺と朝比奈さんじゃ、この六人の中じゃ運動能力で考えて下
から二人なのは確実だからな。別に俺や彼女の運動神経の問題じゃなく、残りの面子の能力
が高すぎるだけなんだが。
 長門は規格外、ハルヒは規格外すれすれ、ハルヒほどじゃないが古泉と鶴屋さんも割りと
何でもそつなくこなすタイプだからな。
「……黒」
「あ、わたしも黒です……」
 どうやら、朝比奈さんは長門と同じ組になったらしい。
541トライアングル・ラン 04/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:27:27.77 ID:uYfSr3uf0
「あたしは赤だね、あ、一樹くんも赤だねっ」
「ええ、同じ組ですね」
 鶴屋さんと古泉は赤。何となく二人とも嬉しそうに見えるのは気のせいじゃないんだろう
な。しかし、こういう組み合わせってことは。
「俺はハルヒとか……」
「何よ、団長と一緒なんだからあんたもうちょっと喜びなさいよ!」
 俺とハルヒが同じ組かよ。
 まあ、ハルヒはこういう運動能力が絡むことでのパートナーとしては申し分ないとは思う
が……、こっちに合わせてくれるかどうかって不安が無いわけじゃないがな。
 長門と朝比奈さんに追われつつ、古泉と鶴屋さんを追う……、しかし、一体どう転ぶかな。


 それから俺達は、有る程度ばらばらのスタート地点に着き、追いかけっこを開始した。
「ていっ」
「うわ、無理に引っ張るな!」
「そんなに簡単には捕まらないさっ!」
「こっちです」
「うし、行っくよ〜!」
 三組が三組とも追っ手から逃げつつ他の組を追うという変な状況だが、これはこれでスリ
ルが有る。いや、ちょっと有りすぎな気もするが。
 ちなみに上の台詞の応酬はハルヒが鶴屋さんを捕まえようとして逃げられたときのものだ
が、誰が誰の言葉かなんて説明する必要も無いだろう。そうそう、こんな風に俺とハルヒが
鶴屋さん+古泉の組にまともに接近できる機会など実は殆ど無い。
 それは追っている二人のコンビネーションの良さも有るが、何より、俺達を追ってくるも
う一組の存在が有るからのことである。
542トライアングル・ラン 05/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:27:53.50 ID:uYfSr3uf0
「……」
「そうは行かないわよ!」
「ぐわっ」
「は、はわわ〜」
 一体何が『そう』なのか知らないが、殆ど音も無く現れた長門の攻撃を、どうやって察知
したのか知らないが、ハルヒが俺を引っ張りつつ無理やり回避したのである。まともな解説
になって無くて申し訳ないが、悪いが俺には長門やハルヒがどんな動きをしたのか良く分か
ってない。今のこいつらの行動は俺の常識と動体視力を上回っているからな。
 長門のパートナーが朝比奈さんというのが、俺達にとっての救いだろうか。長門の動きは
無茶苦茶素早いが、朝比奈さんに引っ張られて多少鈍っているようなところが有るからな。
 これが長門+古泉or鶴屋さん、なんて組み合わせだったら俺達はあっという間に捕まって
いたことだろう。悪いが俺には普通程度の運動能力しかないからな。
「とにかく走りなさい!」
「お、おう」
 文句をつけたいことは色々有るんだが、そんなことを一々口にする余裕は無い。何せ俺達
を追ってくるのは長門なんだからな。朝比奈さんも居るが。

 ****

 目標を捕捉、交戦……、予測より早い動きで回避される。
 やはり、そう簡単には捕まえさせてくれないらしい。さすが涼宮ハルヒ、彼女の運動能力
はとても優秀。彼の存在がややそれを引っ張ってるけれども、条件的にはこちらも似たよう
なもの。
「うう、ごめんなさい……」
「謝らなくて良い」
 朝比奈みくるが謝る必要は無い。わたし達の間に運動能力に差が有るのは仕方ないこと。
 問題は、それを埋める方法が無いこと……、いや、一つだけ有る。
543愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:27:55.76 ID:vOTT1YcoO
支援
544トライアングル・ラン 06/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:28:30.44 ID:uYfSr3uf0
「朝比奈みくる」
 わたしは視界無いにわたし達を追ってくるもう一組が居ないことをざっと確認してから、
その方法を提案してみることにした。
「ひゃ、ひゃい」
「今のままでは、わたしとあなたの運動能力の差がわたし達の行動を妨げるものとなってお
り、このままでは状況は打開できないものと思われる」
「あ、はい……」
「そこでわたしは、あなたを抱えることにした」
「え?、ええ、ええええ……!!」
「暴れないで」
 わたしは動揺する朝比奈みくるの訴えを無視し、彼女を抱えあげた。
 大丈夫、この程度の重量ならわたしの脚力に影響を与えることは無い。
 ただし、これではわたしが手を伸ばすことは不可能。
「あ、あのあの」
「この状態ではわたしが手を動かすのはほぼ無理。彼と涼宮ハルヒの手錠に手を伸ばす役目
は貴方に一任する」
「え、え、あ、あの、でも……」
「わたしはこの作戦がわたし達の勝利のためにもっとも効率が良いと考えている。
「あ……、はい、了解しました」
「では、行動を再開する」
「は、はい……、って、早いですようっ」
545愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:29:04.86 ID:vOTT1YcoO
支援
546トライアングル・ラン 07/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:29:16.60 ID:uYfSr3uf0
 ****

「有希ちゃん発見……、って、お姫様抱っこかいっ」
「ええ、そのようですね」
「これはちょっと、手強そうだねえ」
「ええ……」
 ハルにゃん達から逃げ切ってぐるっと階段を回って一回りしてきたあたし達は、漸く有希
ちゃんとみくるを見つけた。いや、それにしてもお姫様抱っことはね。
 まあ、二人の運動神経の差を考えたら、これはこれで良い作戦かも知れないけどね。
「ま、良いや、とにかく追いかけよう」 
「そうですね、追いましょう」
 まあ良いや、考えるのは後々。
 そりゃあ、お姫様抱っことか……、うーん、まさか、して欲しいって言うわけにもいかな
いしねえ。いっくら学校中が公認状態でも校内で出来ることと出来ないことは有るし、何よ
り、普通に走っていてちょうど良いバランスのあたし達に、お姫様抱っこをする必要性は無
いしさ。
「もう居ないし……やっぱり早いねえ」
「捕まえる方はどうか分かりませんが、逃げる方はほぼ完璧、と言ったところですか」
「そうさねえ」
 あの状態からどうやってハルにゃん達を捕まえるんだろうって疑問は有るけど、こっちか
ら逃げるって意味ではほぼ完璧だね。有希ちゃんはすっごく足が速いし、逃げる分にはみく
るが有希ちゃんの腕の中で暴れようと、殆ど関係ないわけだしさ。
 有希ちゃん、そういうの無関係に走っているしなあ……。
「おっと、立ち止まっている時間はなさそうですね」
「おう、そうだね!」
 うかうかしていたら、ハルにゃん達に捕まっちゃうもんね。
 有希ちゃんとみくるを捕まえるのは大変そうだけど、あたし達も頑張らないとね。
547トライアングル・ラン 08/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:29:58.49 ID:uYfSr3uf0
 ****

「ああん、鶴屋さん達もう居ないじゃない」
「って、おい、ハルヒ、後ろ」
「……」
「はうう、ごめんなさいー!」
「くそ、こっちだ」
「きゃっ……、ちょっと、痛いじゃない!」
「良いから逃げるぞ!」
 朝比奈さんが伸ばしてきた手から寸前の所で逃れ、俺はハルヒを引っ張って走り出す。ま
あ、程なく俺がハルヒに引っ張られる形にシフトするんだが。
 しかし、今の二人……、お姫様抱っこ、だよな。
「有希ったら、考えたわね」
「あんなのありかよ!」
「少なくともルール違反じゃないわよ。手錠は繋がれたままだったもの」
 あの状況でそれをちゃんと視界に捉えているお前が凄いよ。
 ついでに言うと、これだけでルール違反云々って暴れないくらい成長したことも……、ま
あ、その辺りのことは口に出す気は無いけどさ。
「けどなあ……」
「とにかく逃げましょ。あの体勢じゃ有希は手を伸ばせないだろうから、逃げ切るのはそう
難しくないはずよ」
「ああ、そうだな」
 朝比奈さんには悪いが、長門がどんなに気配を抑えて最速で忍び寄ろうと、最後の最後に
手を伸ばしてくるのが朝比奈さんなら、避けられないことは無いだろう。
548愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:30:34.60 ID:vOTT1YcoO
支援
549トライアングル・ラン 09/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:31:01.58 ID:uYfSr3uf0
 しかし、お姫様抱っこなあ。
 常識で考えたら、明らかに朝比奈さんより軽量級の長門が、朝比奈さんを抱えても速度を
全く落とさずに走れるなんてのは、ほぼありえない話なんだが……。

「ねえ、あたしがあんたをお姫様抱っこするってのは駄目かしら?」

 ……。
 ……まて、ハルヒ、俺は未だ男の尊厳を捨てたくない!
 それ以外のものは、既に色々捨てさせられた気がするんだが。
「あ、あのなあ……」
「あら、だってそれも一つの作戦じゃない」
「幾らなんでも無茶だろ」
「そうでもないと思うわよ。あたしがあんたを引っ張り続けるよりは動きやすそうな気がす
るもの」
「おいおい……」
 確かにハルヒは、両腕に俺と古泉を掴んだ挙句、その重量をものともせずに疾走していけ
るくらいの脚力というか、パワーの持ち主だとは思うし、対格差が有るとはいえ、俺くらい
の体格だったら、抱えられないことも無いだろうが……、いや、ここはそういう問題ではな
いだろう。
「と、有希が来るわ……。キョン、つべこべ言わずつかまんなさい!」
「わー、ちょっと待てー! 早まるなー!」
 ……。
 ……どうやら、俺は、放課後の生徒達が見守る中、男の尊厳というか、なんと言うか…
…、とにかく、ハルヒによって、捨てたくないものをまた一つ捨てさせられる羽目になった。
 いい加減にしてくれよ……。
550トライアングル・ラン 10/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:31:47.24 ID:uYfSr3uf0
 ****

「……迂闊、同じ作戦を取られるとは思わなかった」
「ほ、ほえええ、涼宮さんがキョンくんを抱えてます……」
「そう、こちの作戦を真似された」
「涼宮さん、凄い……」
「涼宮ハルヒの運動能力を持ってすれば、あのくらいは可能なことのはず」
「そ、そうなんですか……、でも、なんだかキョンくん、かわいそう……」
「……どうして?」
「え、うーん、それは……、だって、キョンくんはやっぱり、男の子だし……」
 彼が男性という性別に分類されることは確かだが、それがどうして『かわいそう』という
感想に繋がるんだろうか。
 効率的に動くという意味では、適切な作戦。
 その行動自体に、何ら問題は無いはず。
「この状況下において性別は関係ないはず」
「ううん、それは……」
 言葉を濁す朝比奈みくるの本位は不明。
 一体どういうことなのだろうか? わたしの中に疑問が残る。
 しかし、今はそんなことに構っている時間は無い。
 わたし達も、彼と涼宮ハルヒを追いながら、もう一組から逃げる必要が有るのだから。
551愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:31:52.25 ID:vOTT1YcoO
支援
552トライアングル・ラン 11/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:32:30.82 ID:uYfSr3uf0
 ****

「……」
「……」
「……あれは、涼宮さんたち、ですよね」
「そうだねえ」
「涼宮さんが彼を抱えているような気がするのですが、僕の気のせいでしょうか?」
「いや、あたしにもばっちしそう見えるさ」
「……」
「……とりあえず、捕まらないように逃げない?」
「そうですね」
 一樹くんはまだ何か言いたそうだったけど、逃げようっていうあたしの意見には従ってく
れた。そうそう、ここはハルにゃん達が居るのとは別の棟なんだよね。廊下の窓から向こう
でみくる達と追いかけっこしているハルにゃんたちが見えたってわけさ。
 でなきゃこんなにのんびり話できるわけないしね。
 いや、しかし……、まさか、ねえ。
 まさかハルにゃんが、キョンくんをお姫様抱っこだなんて……。逆ならともかく……、ま
あ、確かに作戦としては結構よさそうだけどさ。けどハルにゃん、凄いねえ。キョンくんを
抱えているのに、走る速度が全然落ちてないんだもん。こりゃあちょっと、追っ手が強力に
なったって感じだね。
「あー、古泉くんと鶴屋さん発見!」
 って、うかうかしてたらこっちも見つかっちゃったし。
「逃がさないわよ!」
「待て、馬鹿、ハルヒ! お前抱えている人間が居るのを考えて行動しろ!」
「つべこべ言わない」
553愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:32:58.00 ID:vOTT1YcoO
支援
554トライアングル・ラン 12/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:33:21.37 ID:uYfSr3uf0
 あーあー、有希ちゃんもみくるに対して容赦なかったけど、ハルにゃんもキョンくんに対
して何の容赦も無いねえ。抱えている分横幅が増えるわけだけど、そんなのお構いなしって
感じだよ。
 っと、そんなこと悠長に考えている暇は無いんだけど。
「こっちです」
「おっけー」
 あたしは一樹くんと息を合わせて、さっと階段を上り始めた。
 けど、お姫様抱っこ×2と追いかけっこって光景も何だか不思議な感じだよね。

 ****

 それから追いかけっこが続くこと数十分。
 俺はハルヒに抱えられっぱなしの上自分が通れる幅以上のことを全く考慮しないハルヒの
おかげで頭や足を何度も壁や棚にぶつけていた。多分、朝比奈さんも同じような目に合って
いるのだろう。何度か鉢合わせたが、段々涙目状態だったからな。
 俺の方が泣きたいけどさ。
 何が悲しくて男が女にお姫様抱っこされなきゃならん。おまけに、二人並んで走っている
ときより、こっちの方が素早いと来ている。
 ……俺、泣いても良いか?

「ふふ、そろそろ決着のときみたいね」
「そんな簡単にはつかまらないさ! ね、一樹くん!」
「ええ、その通りです」
「……負けない」

 上から誰の台詞か説明する必要も無いだろうが、お荷物状態の俺と朝比奈さんは台詞無し
だ。俺は泣きたいし、朝比奈さんは既に泣いているのと大差ない。
555トライアングル・ラン 13/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:34:01.28 ID:uYfSr3uf0
 この状態で捕まえろって、無茶だろそれ。
 ちなみに場所は校庭のど真ん中、俺達はちょうど正三角形の三角に位置するようにほぼ等
距離で対峙していた。……お姫様抱っこ×2は続行中のままで。
 校庭で練習していたであろう運動部の部員達は、何時の間にやら人を抱えているとは思え
ぬ速度で駆け回るハルヒや長門を避けるようにして退避してしまっていた。
 そして何時の間にやら、どこから噂を聞きつけたのか、いや、まあ、彼方此方を走り回っ
ていたから噂も何も関係ないという気もするんだが、放課後だというのに、校庭の周りには
たくさんの生徒が集まっていた。
 どの組が勝つか、なんていう勝手な賭けまで始まっているような気配すらある。
 おいおいおい……。
 ああ、しかし、だな。

 無関係な生徒達の目の前で、ハルヒにお姫様抱っこされる俺。

 ……なあ、やっぱり泣いて良いか?
556愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:34:07.74 ID:vOTT1YcoO
支援
557トライアングル・ラン 14/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:34:36.46 ID:uYfSr3uf0
 ****

 緊張状態から最初に動いたのは、有希ちゃんだった。
「……」
「そうは行かないわ!」
 音も無く動いた有希ちゃんだったけど、やっぱり決め手となるみくるの動きがたどたどし
いからだろうね。ハルにゃん達に結構あっさり避けられちゃっていたよ。ううん、お姫様抱
っこ大作戦の盲点だねえ。
「とりゃっ」
「おっと、そうは行きませんよ」
「くそ、逃げるな古泉!」
「馬鹿キョン、もっと上手くやりなさいよ!」
 捕まえようとしながら仲良く喧嘩している子達に捕まるほど、あたしも一樹くんも鈍くな
いよ。まあ、さすがに息が切れ始めていることは否定できないけどさ。
「てぇいっ!」
「……遅い」
 けど、こっちもなかなか手強いね。
 有希ちゃん、逃げる方はほぼ完璧だしなあ。
 お姫様抱っこ状態だと、手錠が有る位置に手を伸ばすのも結構難しいし。
 おまけに女の子同士密着のところだから、一樹くんの方に手錠を掴むのを任せるわけにも
行かないしさ。
「すみません、上手く連携できなくて」
「ううん、一樹くんは上手くやっている方さ! さあ、も一回だね!」
558愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:35:01.18 ID:vOTT1YcoO
支援
559トライアングル・ラン 15/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:35:06.88 ID:uYfSr3uf0
 ****

 三すくみの混戦模様が、延々と続いている。
 至近距離での攻防が続いているが、はっきり言ってどこも決め手に欠けている。
 長門+朝比奈さん組は決め手となる朝比奈さんの動きがどうしても遅いし、俺は俺でこの
体勢から息の合った動きを見せる鶴屋さんと古泉を上手く捕まえるほどの運動神経の良さは
ないし、その鶴屋さんと古泉も、逃げる方に関してはほぼ完璧な長門達を捕まえるほどの機
敏さは無い。
「キョン、もっとしっかりやんなさい!」
「やっているって! てか、いい加減おろせ!」
「駄目よ、大体、こんなところで降ろしたら隙をつかれちゃうじゃない!」
「ぐっ……」
 ハルヒの発言はもっともだと思うので、逆らい難い。
 確かに、この至近距離の攻防の状態でそんな悠長なことをしていたら、間違いなく長門と
朝比奈さんに捕まるだろう。朝比奈さんが幾ら鈍いとはいえ、そんな絶好の機会を逃すとま
では思えない。
「……」
「キョンくん、ごめんなさいっ!」
「うわっ」
「まだまだぁ!」
 俺を抱えたままのハルヒが、また、ありえないような速度で、同じくありえないような速
度で追ってくる長門から逃れていく。ったく、二人とも無茶苦茶だよな……、連れまわされ
ている俺と朝比奈さんの身にもなってくれ。いや、引っ張られるよりお姫様抱っこをされて
いる方が被害は少なくてすんでいるんだろうが……、いやいや、ここで納得しちゃ駄目だろ
う、俺。
560トライアングル・ラン 16/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:35:37.90 ID:uYfSr3uf0
「……」
「くっ……」
 そしてそのまま始まる、二対二の攻防。
 さっきまでと違って、連携力はともかく、人間的速度でしか動けない鶴屋さんと古泉の入
る隙間は無しって感じだ。というか、幾ら連携が上手く出来ているとはいえ、普通の人間の
はずのこの二人が、良くハルヒや長門と互角で戦って来れたよな……、それだけで凄いこと
のような気がするぞ。
「……」
「しつこいわね」
「あなた達はいい加減諦めるべき」
「そういうわけにはいかないのよ!」
 状況さえ考えなければなかなかカッコいいように聞こえなくも無いハルヒと長門の台詞の
応酬だが、それぞれお姫様抱っこ状態で人を抱え込んだまま、しかも実質的な攻撃手が朝比
奈さんという状態では、ちっとも決まらない。
 俺はと言えば、時折ハルヒの動作を助ける意味も込めて、近づいてくる朝比奈さんの手を
空いている手で軽く振り払うくらいだ。朝比奈さんには本当に申し訳ないが、奢らされるの
は嫌だから仕方が無い。俺達の組が負けた場合、状況の如何に関わらず、俺が全額奢る羽目
になりそうだからな。
561愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:36:03.76 ID:vOTT1YcoO
支援
562トライアングル・ラン 17/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:36:07.67 ID:uYfSr3uf0
 ****

「このままハルにゃん達の体力切れを待つってのは、ちょーっと、あたしの主義に合わない
んだよね。……ねえ、良いかな?」
 放っておけば、多分、有希ちゃん達が勝つだろうけど……、それじゃやっぱり、あたしは
楽しくないんだよね。ここまででも充分楽しかったけど、勝負の結果に関われないなんて、
寂しいじゃないか。
「……仰せのままに」
 一樹くんはちょっとだけ苦笑気味の表情になったけど、すぐにそう言ってあたしの意見を
受け入れてくれた。ごめんね、一樹くん。
 もし負けちゃったら、あたしが全部出してあげるから、許してね。

 ****

「ていっ」
「……」
「きゃあああっ」
 規格外ギリギリの攻防に、どういうわけか鶴屋さんと古泉がまた飛び込んできた。
 いや……、古泉はともかく、鶴屋さんの性格を考えれば、ありえる話か。
「キョン、こっちも!」
「お、おう!」
 均衡の崩れたその隙を狙って、俺とハルヒも動く。
 と言っても、俺が古泉と鶴屋さんの連携を崩せるわけが、

「うわっ!」
563トライアングル・ラン 18/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:36:44.15 ID:uYfSr3uf0

 そのときの具体的な状況を俺が言葉にするのは、ちょっと難しい。
 何せ鶴屋さんが手を引っ張ったときの衝撃で古泉がバランスを崩し、その古泉がハルヒに
背中からぶつかり……、俺は、ハルヒの腕から投げ出される形で尻餅を着いた。
 おまけにその俺が長門にぶつかったせいで、結局俺達は、六人全員がごちゃごちゃに折り
重なって倒れる羽目になった。

「つ、つかまえましたあ!」

 恐らく本日一番活躍してなかったであろう人の声を聞いて、俺は朦朧としていた意識を回
復させた。
 どうやら折り重なる中でも上の方に居て被害の少なかった朝比奈さんが、俺とハルヒの間
の手錠を繋ぐ鎖をがっちりと掴んでいた。
「……良くやった」
 長門が、朝比奈さんに賞賛の言葉を送る。
「馬鹿キョン、あんたのせいで負けちゃったじゃない!」
「俺のせいかよ!」
「あんたのせいに決まっているわ! あんたが鈍いから、」
「まあまあ、ハルにゃん落ち着いて。……なんだったら、あたしが奢ろうか?」
 そのまま口喧嘩になりそうな俺達のところへ割って入ってきたのは、鶴屋さんだった。
 鶴屋さんもその隣の古泉も、充実感がうかがえる良い笑顔を浮かべていた。
「え、でも、ルールが……」
「良いの良いの、あたしも楽しかったしさ。……駄目かな?」
「ううん、まあ、鶴屋さんが奢ってくれるって言うんなら……、それも、良いわ。あ、でも、
キョンはあたしの脚を引っ張った分として、あとで個別に奢ること、いいわね!」
 ハルヒは一度納得しかけたものの、さっと俺のほうに向き直って、そんな理不尽なことを
言いつけた。
564愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:37:05.75 ID:vOTT1YcoO
支援
565トライアングル・ラン 19/19 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 19:37:19.61 ID:uYfSr3uf0
 こいつ……、
「……分かったよ」
 言いたいことは色々有ったが、まあ、ハルヒ一人分くらいなら何とかならないこともない
だろうし、俺が脚を引っ張っていたのも事実なので、俺はとりあえず、ハルヒのその要求を
受け入れてやることにした。
「分かればよろしい!」
「ただし、全部で1500円以内な」
「ちょっと、男ならもっとどーんと構えなさいよ、みみっちいわよ!」
「さっきまでお姫様抱っこしていた相手に言う言葉じゃないだろ、それ」
「う、それは……、まあ、良いわ、その額で勘弁してあげる」
 もはや完全に開き直りきった俺の発言にどう思ったのか、ハルヒはそれで納得したらしか
った。
 それから俺達は、部室に戻り手錠を外し、鶴屋さんの奢りにありつくべく、6人で坂道を
下ることになった。

 そうそう、言い忘れていたが、今日このお姫様抱っこ状態で、俺が一つだけ得したと言っ
て良いかもしれない事が有った訳だが……、それが一体何のことかは、わざわざ言う必要も
無いよな?


 終わり
566愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:39:25.34 ID:vOTT1YcoO
GJ!
いや、おもしろいw
読んでてドキドキだったよ
567愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:40:02.54 ID:ebyCA2tI0
支援
568愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 19:55:04.11 ID:kCghPWfv0
面白かった。
こういうネタも良いいな
GJ!!
569愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:01:14.54 ID:OpTJB0eqO
これは斬新な鬼ごっこww
手錠付けた状態をよく教師たちに見つからなかったなwww

乙でした!
570 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/31(水) 20:04:25.76 ID:uYfSr3uf0
>>566 >>568-569
楽しんでいただけたようで何よりです。

えーっと、実は結構前に貰った、
手錠をつけたままハルヒとキョンが脱走、というネタから思いついた
話だったりします。
脱走の話自体は別の人が書いてくれたので、
ちょっとアレンジを加えてみたら、こんな話が出来上がりました。

ハルヒがキョンをお姫様抱っこっていうのは、書きながら思いついたんですけどね。
ハルヒだったらそのくらいのことは出来そうな気がしたので・・・。
571愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:16:01.79 ID:biW3wMGe0
おもしろかったですw長さもちょうどいいし。
そのままアニメで見たい感じw
572愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:25:45.71 ID:FeR/Sjwo0
この人がアスタリスクさん?
573愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:35:18.18 ID:uYfSr3uf0
違いますよー。
わたしは人称(視点)変更の合図を****にしているだけです。
574愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:35:39.61 ID:r3jmzStY0
チュ・・・

「・・・これがキスってやつだ。接吻だ。」
「そう」

「舌、入れるぞ」
「・・・・・・」

ンちゅ・・・ちゅぱっ・・・レロレロ

「っふう・・・どうだ、きもちいいか?」
「わからない」

「あなたは、気持ちいいの?」
「ああ、もちろんだとも」
「そう」

聞きなれたいつもの短い返事のあと、驚くべきことに今度は向こうから唇を寄せてきた。

はむっ・・・ちゅぱちゅぱ、レロレロ、んぢゅぅぅぅ・・・レロレロレロレロ、ンぢゅるるっ・・・

俺がホンの数十秒前にそうしたよりも、遙かに器用に、丁寧に舌を絡めてくる。
なんてこった。
これからは放課後の文芸部を退散したあと、ここに通うことになりそうだ

この、長門の部屋に
575愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:38:33.01 ID:mYPVM/u/0
>>572
全然違う。HP見ればわかるけどエロパロ以外には投下してないぽ。
それにあの人、独自解釈は多いけど、基本原作遵守だし。
576愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:40:06.69 ID:QZiAY0vbO
?>>570 これは萌える..とくに長門とみくるがイイ!!
よんでて萌萌してしまったwwww
577愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:44:51.17 ID:QZiAY0vbO
>>454 うぉおい!!
全部かいたらこのスレに投下するように
絶対だぞ!!期待してっからな!!
578愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 20:59:05.73 ID:ZsgToSV/0
知ってると思うけど
21:00〜22:30 2ch全鯖止まりますよ〜
http://219.166.251.40/~maido3/
579愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 21:01:13.41 ID:3wdYmXoY0
580愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 21:06:45.95 ID:OpTJB0eqO
 ●
581愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 21:07:30.83 ID:1CVmK6f70
   三●
582愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 22:43:08.43 ID:YyW3ukLdO
保守
583 ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 22:45:23.13 ID:bdFjMWO60
予告時間が思いっきり全鯖停止と
かぶってた件について。

つーわけで気を取り直して23:00から行きますね・・・
584愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 22:46:09.02 ID:YyW3ukLdO
wktk
585愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 22:51:41.50 ID:EhByIPqJ0
かもん
586愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 22:56:59.13 ID:74982aDJO
VIP復活&wktk
587夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:03:00.20 ID:bdFjMWO60
んじゃいきます

「ここは……どこだ?」

 見渡す限り、全てが暗闇に覆われた空間。
 今俺は立っているのか? ひょっとしたら浮いているんじゃないのか?
 それすらもわからない。そもそもなんでいきなり、こんなところにいるんだ?
 
 なんなんだここは? 閉鎖空間か??
 ……
 ガシャンッ!
 ……
 ……
 前方がフイに明るくなる。光の元を探すと、一箇所にだけ明かりが照らされている。
 そうだな、ここから距離にして、10mほどだろうか。
 その光に照らされた先には……白い布のようなものを被り、佇んだ人影が1つ。
 オバケ? なのか?

 白オバケ(俺が勝手に命名)は、ほとんど向こうを向いてしまっていて、
 正面がどうなっているのか、あまりわからない。
 かろうじて、右の目の部分に穴が開いているのが見えた。
 おそらく左の目も同じようになっているのだろう。

 とりあえず今の手がかりはアイツだけだ。
 としたらやる事は1つしかないだろ?
588愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:03:42.77 ID:JKxTZ4h7O
wktk
589夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:03:56.41 ID:bdFjMWO60
「おい! ここはどこなんだ!? おい!!」
 精一杯の声で白オバケに向かって何度も叫んでみる。だが聞こえてないらしく、全く反応がない。
 そっちに向かって走ってみる。……が、一向にヤツとの距離が縮まらない。
 やがて俺は息をきらしてそのまま立ち止まってしまった。

 ちくしょう、どうすりゃいいんだ?

 白オバケは右手(布の中なのでおそらくだが)を目の前まで真っ直ぐ上げ、そこで停止した。

 なにをするつもりだ? もうなにがなんだかわからない。
 とりあえず俺をここから出してくれないか?

 ……相変わらず反応なし。こんなところに飯なんてあるはずもないし、俺、このまま死ぬのか?

 そんな事を考え始めている時だった、白オバケの身体が急に光り始めた。
 最初はぼんやりとだったが、時が経つにつれ、その光はどんどん強くなっていく。
590愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:04:54.29 ID:74982aDJO
支援
591愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:05:08.09 ID:YyW3ukLdO
支援
592夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:05:29.96 ID:bdFjMWO60
「おい! なにするつもりなんだ! おい! 聞こえないのか!」
 その光のせいで最早まっすぐソイツを見ている事ができなくなった俺は、
 片手で目を覆い、もう片方の手で必死に白オバケを捕まえようと手を伸ばす。

 返事ナッシングの白オバケは強い光を帯びたまま、俺に気づいたのか、こちらを振り向k……



 ガタン!!!

 ……頭が痛い。ゆっくり目を開けると、自分の部屋の天井が見える。
 どうやらベッドから落ちてしまったらしい。
 
 ……夢……か……。

 それにしてはリアルな感じだった気がする。
 しかし、我ながら変な夢を見ちまったもんだ。
 もしフロイト先生が今の時代に生きていたら、ぜひ相談してみたいね。

 布団に戻りながら時計を見る。まだ午前4時を過ぎたばかりくらいだった。
 起きてる時間がもったいない、俺はすかさず二度寝を開始した。
593愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:06:59.86 ID:74982aDJO
支援
594夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:07:56.08 ID:bdFjMWO60
「珍しいわね、遅刻ギリギリじゃない」
 頬杖をついたまま、席に座ったばかりの俺に後ろからハルヒが話しかけてきた。
 まさか、今朝見た夢のせいで目覚めが悪かった、なんて口が裂けても言えるわけがない。
 ガキじゃあるまいし。
 まぁ、たまにはな。
「へぇ〜? 怪しいわね」
 目を細めながら口元を緩めるハルヒ。
「どうせあんたの事だから、今日は妹ちゃんが起こしてくれなかったとか、
 変な夢を見たとか、そういうくだらない理由でしょ?」

 大変失礼な事を言ってくれる。たまにはぎりぎりまでゆっくりしたい日もあるってだけだ。
「あっそ」
 口をへの字にしてそう俺に返すと、また窓の外を見始めた。
 ……まぁ実際、後者は正解なわけなのだが。
 相変わらず、妙なところで鋭いやつだ。今に始まった事じゃないがな。
 
「は〜……」
 鞄の中身を机の中に入れていると、不機嫌そうなハルヒの溜息が聞こえた。
「退屈」
 
 そう、この日もこんな、何事もない1日だった。

 ……はずだった。
595愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:08:04.94 ID:P6n5xoSi0
支援
596夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:10:52.43 ID:bdFjMWO60
 ──放課後

 部室に入る前にノックをし、マイエンジェル朝比奈さんの返事がない事を少し残念に感じつつ、
 ゆっくりドアを開いた。
 中にはパイプ椅子に座って、いつものように難しい本を読みふけっている長門有希の姿があった。
「よぅ」
 いつものあいさつを交わした俺だったが……

 次の瞬間、俺は自分の目を疑うことになった。なぜかって?
 その長門が、微笑を浮かべながら小さく俺に会釈し、こちらを見つめていたからだ。


 とりあえず後ろ手に扉を閉めた。どうした? 長門? 俺の顔に何かついてるか?
 ペタペタ顔を触る俺に
「違う」
 一言だけを俺に返し、また本に目を戻す長門。
 万年無表情のお前が微笑を浮かべているなんてよっぽど俺がおかs……

 微笑を浮かべた長門?
 ……既視感にかられた。ちょっと待て!
597愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:12:10.90 ID:YyW3ukLdO
支援
598愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:12:12.24 ID:74982aDJO
支援
599夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:12:54.42 ID:bdFjMWO60
「おい! 長門!」
 びくっとして俺をおそるおそる見てきた。
 ──ああ、すまん、いきなり大きな声を出したりして悪かったな。
「ちょっと、聞いてもいいか?」
 黙ってうなづく長門。その両目にはありありと恐怖の色が濃く出ている。
 ……そんな表情は、お前には似合わないはずなのに。

「お前は人間ではなく、宇宙人に作られた対ヒューマノイドインターフェースだ。
 魔法みたいな力も使える、そうだよな?」

 またデジャヴだ。こんな事を言っている俺にコイツは……
 長門は、明らかに変な顔になっていった──

「違うのか?」
「ごめんなさい、わたしは知らない」

 ある冬の日に俺が聞いた時と、全く同じ回答。
 まさかとは思ったが、ここまでくれば、おそらくもう間違いないだろう。
 メガネこそかけていないが、長門は、ハルヒが消失した時の、
 
 あの長門になっていた。
600夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:13:36.86 ID:bdFjMWO60
 落ち着け、とりあえず落ち着いて考えるんだ、俺。
 長門はまだ少し困惑したような顔をしていたが、俺がいつものパイプ椅子に腰掛けると
 もう興味がなくなったのか、本の続きを読み始めた。

 ──まず、前回のようにハルヒがいなくなったわけではない、
 ついさっき授業終了のチャイムが鳴るまで、俺の後ろに座ってたんだからな。
 当然、朝倉涼子もいなかった。
 俺が教室から部室に来る間に世界が改変されたって可能性も0じゃないが……。

 
「こんにちわ。……おや? 考え事ですか?」

 ドアが再度開いたのに気づかなかった、古泉がそう言いながらニヤケ顔でこちらを見ている。
 ……ちょうどいい。古泉、話がある。
「そうですか。奇遇ですね、僕もあなたにお話することがあったのですよ」
 言いながら前髪を指で跳ね、鞄を置くと再びドアを開いて俺を外へと促した。
 俺達は自動販売機の方に足を向けた。
601愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:15:19.13 ID:74982aDJO
支援
602夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:15:42.67 ID:bdFjMWO60
「お前は大丈夫なんだろうな?」
 ジュースを買って椅子に腰掛け、話を始める。
「大丈夫、とは?」
 もしやと思うが……
 結局俺は、カマドウマや草野球の話を一からコイツに話す事になった。

 ……
 ……
「これではっきりしました」

 俺の話を黙って一通り聞いた後の、コイツの第一声がこれだった。
「僕もあなたと全く同じ記憶を持っています、これが作られた記憶である可能性はゼロではありませんがね」
 禅問答はいい。それに、俺の思い出は俺だけのモンだ。誰にも操作なんてさせねぇぞ。

「おそらく、朝比奈さんや涼宮さんも同様の記憶をお持ちでしょう、だとすれば」
 俺の避難をかわすように話題を変え、
「長門さんだけが変わってしまった、と考えるのが妥当です」

 誰の仕業だ? 情報統合思念体の過激派とかの仕業か? それとも長門の親玉がやったことなのか?
 雪山で遭難した時のように、未知なる宇宙人の攻撃か?

 かぶりをふって一呼吸置いた後、ニヤケ顔をやめた古泉は静かに
「わかりません。ただ、僕の立場からひとつ言える事は──」
 言葉を一旦切る古泉。言える事は?
「機関はしばらく静観するという選択肢を選んだ、ということでしょうか」
603愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:16:19.97 ID:JZ57j0nDO
おちそうあげ
604夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:16:56.74 ID:bdFjMWO60
 ……要するに見てるだけって事か。
「仕方ありません。我々の元々の存在意義は、涼宮さんのニキビ治療薬でしかないんです。
 長門さんの性格が変わってしまったからといって、特になにもできるわけではないんですよ」
「言われてみればそうだな」
「それに、誰の仕業かもわからないのに、うかつに動くのも……というのが機関の本音ですね」
 自分の所属先の事だというのに、まるで他人事のような言い方をする。

「それでですね、僕からもあなたに1つ、お願いがあります」
 ほう、まぁ内容次第だな。
「簡単ですよ。今回の事で、早まった真似だけはしないでくださいね」

 まるで俺が何かしでかすような言い方だな。
「前向きに検討しておこう」
 政治家のような発言をした俺に
「それで充分ですよ、ありがとうございます」

 そう言うと古泉は立ち上がり、飲み干してしまったコーヒーの缶をくずかごに捨て
「さて、長々と話してしまいましたね、そろそろ戻りましょうか」
 その顔にはすっかり、いつものニヤニヤスマイルが張り付いていた。
605愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:17:11.19 ID:YyW3ukLdO
支援
606愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:17:12.21 ID:Q64uBgNY0
支援
607夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:17:54.90 ID:bdFjMWO60
「おっそーーいっ!! 3分も待ったわよ! キョン! 古泉君!」
 団長席でパソコンをいじっていたハルヒは、
 俺達は部室に戻って来たのを見るや否や仁王立ちし、手を腰に当ててそう言った。

 ──やはりハルヒは、いなくなってなどいない。まずここで一安心といったところだろうか。
 いやまぁ、長門がこんな事になっているし、それどころじゃないってのはわかっているが。
 それにしても、ハルヒは長門の異変に気づいていないのか?

 朝比奈さんはというと──まだ来ていないようだ。
 こんな時せめて、古泉なんぞとは全くレベルも次元も違う
 あなたのエンジェルスマ〜イルで、少しでも安らぎを得たかったんですが……。

「すみません、あまりにも外が暑いので、たまにはジュースでも、と」
 笑顔を崩さず古泉が平謝りする。相変わらずのハルヒに対する低姿勢ぶりはさすがとしか言いようがない。

「それで、あたしにはお土産はないわけ!? キョン?」
 ハルヒさ〜ん? どうしてそれを俺にだけ言うのかなぁ〜?
「まったく! 気が利かないんだから」
608愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:18:43.72 ID:74982aDJO
支援
609夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:18:55.81 ID:bdFjMWO60
 さっきから俺達のやりとりをおどおどしたような顔で見つめていた長門だったが、
 俺の視線に気づくや否や、頬を少し赤らめ、すぐに開いていた本に目を戻した。

 以前も感じたが、そんな仕草をする長門はちょっと──いや、かなりかわいいと思う。
 実際照れ屋なのか注目されるのが苦手なのかはわからんが。
 こうしていると普段の稲妻のような読書速度も、こころもち落ちているような気がする。
 
「んもうっ! みくるちゃんはまだなの!? 今日は重大発表があるっていうのにっ!」
 そう大声で叫ぶハルヒによって、俺は現実に引き戻される。
 腕を組んだまま、アヒルのようになったその口から、プリップリ怒っているのが丸わかりだ。
 それにしても重大発表ときたもんだ、何かまたろくでもないことを思いついたか。
 
 ヘタをすれば閉鎖空間の原因になっていたかもしれない未来人こと
 朝比奈さんはその30分後くらい後にやってきた。

「すみません〜、3年生は今まで、テストが…その…あって…」
 やはりハルヒとは違う、なんというか、その温かみのある話し方もステキです、朝比奈さん。

「そうなの? ならちゃんと事前報告しなさいっ!」
 罰ゲームとでも言いたいのか、手に持ったハリセン(どこから持ってきた?)で朝比奈さんの頭を軽く叩くハルヒ。
610夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:20:50.34 ID:bdFjMWO60
「ぅぇ〜、ごめんなさい〜」
 朝比奈さんは素直に謝った。テストなら仕方ないですし、全く気にしなくてもいいですよ。
 ハルヒよ、もっかいやったら許さんぞ、その場で乱闘だ、大乱闘スマッシュブラザーズだ。
 朝比奈さんを守るためなら、俺は性欲だってもてあましてやる。

「意味わかんないわよ、バカキョン」
 呆れた顔をしながら冷たいツッコミを入れないでくれ。
 
 ひとつため息をついた後、全員を見渡し、今度は目をキラキラさせながら
「それでは! 今日は重大発表があります!」

 本当はまだ長門に聞きたい事が色々あるのだが……
 そんな事はおかまいなし、天上天下唯我独尊女は
 おどおどしている人数が2人に増えたこの部室で、こう言った。

「今週末! 海に行くわよ!!」
611夏色1 -ここはどこ?- ◆04fRh0UG7U :2007/01/31(水) 23:21:35.82 ID:bdFjMWO60
とりあえずここまで。
駄作ですすみません。

こんな感じの設定でやっていっきまっすー。
週1で投下できるといいなぁ・・・
それでは また。
612愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:22:57.75 ID:P6n5xoSi0
夏が来るのが楽しみになるような、そんなお話になるのでしょうか。
wktkしていいかな?かな?
613愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:23:31.92 ID:YyW3ukLdO
乙!
久しぶりの投下みたいだけど、鈍ってないっすね〜。

続きwktk
614規制で延期されていた保守用時事ネタ:2007/01/31(水) 23:26:38.36 ID:P6n5xoSi0
 人間には『忘れる』という現象がある。
 嫌なこと、辛いこと、悲しいことその他の、人間にとって都合の悪い記憶を、記憶領域から読み出せなくする機能。
 わたしには『忘れる』という機能はなかった。それは有機生命体の知性発達を妨げる、
構造上の欠陥と思われていたから。でもそれは違っていた。
 忘れるということは、人間の精神を過大な負荷から保護する重要な安全機構だった。
忘れることができなければ、『エラー』が際限なく蓄積し、致命的な誤動作を招くから。
わたしが世界を改変したときのように。
 しかし、忘れるが故に、過ちを繰り返してしまうのもまた人間の事実。
歴史を紐解くと、同じようなことが繰り返し発生している。例えば、このように。
--------------------------------------------------------------------------------
「ちょぉ、キョン! あたしのプリン食べたやろ!?」
「ん? 俺は食うてへんで。」
「嘘吐きなや! ほな、なんで冷蔵庫に入れといたプリンが無くなっとぉや!?」
「知らんがな……」
「そのプリンなら、わたしが処分した。」
「有希の仕業やったん!? なんでそんなことしよん?」
「安全性が確認できない。口にしないのが妥当と判断した。」
 長門有希は、証拠として容器のラップフィルムを提出した。
「う、これは……」
「ハルヒ。これは、長門の的確な判断に感謝すべき違(ちゃ)うか?」
 ……「不○家」の文字が、そこにあった。
--------------------------------------------------------------------------------
 そのメーカーは、それより以前に同じ問題を起こした別のメーカーが、
経営困難に陥った事実の本質を忘れていた。だから同じ過ちを犯した。
 人間の保護機構である『忘れる』ことは、決して『無かったこと』になるのではなく、
あくまでその人格を形成する要素として積みあがった上で、明確には思い出せなくなるもの。
だから、経験して忘れた状態と、最初から経験していない状態とでは、大きな差が出る。
 感情暴走事故防止の為に、インターフェイスには『忘れる』機能を追加すべきかもしれない。
だが求められる機能は、情報操作とは異質なもの。実際に搭載するためには、十分な研究が必要。
(報告者:長門有希)
615愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:27:25.30 ID:74982aDJO
久々の消失長門、それに季節は夏!
これはwktk
616愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:40:42.43 ID:JZ57j0nDO
>>614 報告の人か!!
いつもみてます!!つづきわくてかしてまってるのでまた投下してくだしあ!!
617規制で延期されていた保守用時事ネタ:2007/01/31(水) 23:46:52.15 ID:P6n5xoSi0
>616
約2週間ぶりに規制が解けたので、投下準備してますが、
今夜は予約は他にありましたっけ?
618愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:47:48.57 ID:GBbOTIcf0
ok wktk
619愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:51:16.19 ID:YyW3ukLdO
>>617
今夜はもう予約無いね。

だからwktk
620愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:56:33.11 ID:74982aDJO
解けたのはプロバイダの規制?
だとしたら今まで投下出来なかった他の人も投下出来るようになったということかな?
621現地語版担当者 ◆eHA9wZFEww :2007/01/31(水) 23:57:43.86 ID:P6n5xoSi0
長いDION規制が解けたので、早速『長門有希の報告』第16話、投下します。
これまでのお話は、
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1230.html

今回は12レス。
ほな、行こか〜
622愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:57:44.85 ID:YyW3ukLdO
アナル時間切れっす。
6231/12 ◆eHA9wZFEww :2007/01/31(水) 23:59:00.92 ID:P6n5xoSi0
Report.16 長門有希の憂鬱 その5〜The report of RYOKO.A〜

「ゆ……き……?」
涼宮ハルヒは、突然現れたわたしに恐る恐る声を掛けた。わたしは無言で視線を向ける。
「話はあと。」
極めて短い返答。わたしは2人に向けて言った。
「朝倉涼子、支援を要請する。ハルヒ、下がってて。」
「な!? 何言(ゆ)うてんの!?」
ハルヒが声を上げた。
「涼宮さん!!」
彼女に負けじと声を張り上げる涼子。
「今は……長門さんの言うとおりにして!!」
「あんたは、あたしに黙って見てろって言うん!?」
「だいじょうぶ。」
わたしが声を掛ける。
「あなたが信じてくれる限り、わたし達は負けない。」
「そんなこと……!」
わたしは彼女を見据える。しばらく見詰め合っていたが、とうとう彼女は観念した。
「……分かったわ。でも、約束やで? 絶対、無理したらあかんで。」
「約束する。」
彼女は後ろに下がった。わたしは攻撃者に向き直る。
攻撃者は、目の前の状況が何を意味するのか、正しく理解していなかった。
わたしの全身から立ち上る、無言のプレッシャーを。『透明オーラ』を。すなわち、闘気を。
わたしは、まさに怒り心頭に発しようとしていた。
『情報統合思念体と接続できないの。』
涼子は通信で状況を伝えてきた。
『この襲撃してきた一派……過激派に、情報統合思念体の一部が乗っ取られている。
通信プロトコルが強制的に変更された。あなたが接続を切られているうちにプロトコルが改竄されたため、
あなたが接続できない。今からプロトコルを伝える。』
『同期……確認。プロトコル解析……終了。再接続試行……接続成功。OK、いけるわ。』
624愛のVIP戦士:2007/01/31(水) 23:59:15.54 ID:YyW3ukLdO
支援
625閉鎖まであと 1972773 秒:2007/02/01(木) 00:00:27.81 ID:+VMsbGZS0
もっと凝ったモノを作りたいが侍は面倒だというジレンマorz

http://up.rgr.jp/src/up7478.png
6262/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:01:01.28 ID:otCLYyd20
わたしは、帰ってきた。彼女がわたしに会いたいと願ったから。
わたしは、三人称である『観測者』となっていた。しかし今、一人称である『長門有希』を取り戻した。
わたしは、攻撃者に視線を集中させる。攻撃者は、彼女達に危害を加えようとした。その事実だけで十分。
「あなたは、わたしを怒らせた。」
情報連結解除は、たやすい。でも、それではわたしの『怒り』が収まらない。直接殴らないと気が済まない。
「……覚悟して。」
『長門さん。涼宮さんの前で、どうやって戦うつもり?』
涼子から通信。
『人間の能力の範囲内で行動する。武術の達人程度。でも、やりすぎてしまうかもしれない。』
『あれだけ仕事が正確な長門さんとは思えない、感情的な発言ね。』
『……この気持ち、いずれあなたにも分かるときが来る。』
その後の様子は省略する。なぜなら、ほとんど覚えていないから。
わたしは、人間の言葉で表現すると『怒りに我を忘れた』状態になっていた。
断片的にしかログが残っていない。辛うじて残っているのは、涼宮ハルヒの怯えた視線。
後に涼宮ハルヒ本人から聞いた当時の様子は、次の通り。
「……あの時の事は、できれば思い出した無いわ。あの時の有希は……めちゃめちゃ怖かった。
殴るわ蹴るわ、ものすごい大立ち回り。しかも無表情。朝倉は朝倉で、鉄筋を次々と斬り飛ばすし。
有希がヌンチャク、朝倉が薙刀で……武器を持ったあんたらは、
それはもう……うああああああああああああ!!」
--------------------
長門さんは怒りに我を忘れ、ログが正しく記録されていなかったようなので、
以下、長門さんに代わってわたし、長門有希任務代行・朝倉涼子が報告します。
627625:2007/02/01(木) 00:01:08.24 ID:+VMsbGZS0
>>625誤爆orz
6283/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:02:00.65 ID:otCLYyd20
追い詰められたわたしは、賭けに出た。
話の展開としてはかなり無理があったけど、状況が状況だけに、仕方がなかった。
それに、涼宮さんも、完全に現実感を喪失していたので、都合が良かった。
多少話に無理があっても、気付かないから。
とにかくわたしは、涼宮さんに、長門さんがここに助けに来るというイメージを持つよう誘導した。
その甲斐あって、ついに長門さんは復活した……のは良いんだけど、
彼女の目の前で鉄筋の雨を爆散させるなんて、そんな派手な情報改変はまずいんじゃない!?
『問題ない。それに、やるなら盛大にとことんやったほうが、あとでごまかしが利く。』
彼女の常識から大きく外れた、ありえない現象を見せ付けたほうが良いっていうわけね。
でも彼女はかなり非現実的な出来事に敏感だから、ごまかすのは大変なんじゃない?
『そう。だから、とりわけ盛大に行う必要がある。ためらえば感付かれる。』
……ちょっと、今の長門さんは、なんと言うか『危険な香り』がするわね。
『わたしは至って冷静。』
他のインターフェイスならともかく、わたしの目はごまかされないわ。
その全身から立ち上る闘気はなんですか、長門さん。
『……気にしてはいけない。』
気にするっちゅうねん! というツッコミはさておき。長門さんは、攻撃者に向き直って言った。
「あなたはわたしを怒らせた。覚悟して。」
やっぱり怒ってんじゃん!
長門さんは腰から武器――ヌンチャクと呼ばれる、2本の棒を鎖で繋いだもの――を取り出し、
わたしの周りに突き刺さった鉄筋を薙ぎ払った。わたしは長門さんに助け起こされる。
「あなたにはこれを渡しておく。」
そう言って長門さんは、背中に背負っていた長い包みをわたしに手渡した。開いてみる。
「薙刀……」
そこには、長い柄の先に湾曲した刃物が付いた武器が入っていた。
『涼宮ハルヒの嗜好を考慮して、あなたに似合う武器を選定した。刃は付いていないが、
それ以外は本物に限りなく近い。以前のあなたの得物とは違うが、問題ないと思う。』
前科の話は勘弁して……。薙刀の使用法をダウンロード……完了。薙刀使いの出来上がり。
「わたしは攻撃者を叩く。あなたは涼宮ハルヒの護衛をしてほしい。」
「了解。」
6294/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:03:00.78 ID:otCLYyd20
わたしは、涼宮さんの許に戻った。
「あんた、薙刀使えるんや……」
「まあね。嗜む程度には。」
そういうことにしておこう。『謙遜』って言うんだっけ。……ちょっと違う気もするな。
そんなやりとりをしてる間に、長門さんは華麗にヌンチャクを振り回し始めた。無言で。
情報検索……『李小龍』っていうアクション俳優の動きなのね、これは。
なるほど、確かに彼は、ただの人間にしては良い動きしてるわね。動きに無駄がないわ。
ウォーミングアップと威嚇を兼ねたヌンチャク演舞を終えて型を決めると、
長門さんは攻撃者と静かに相対した。沈黙が辺りを支配する。
仮想段階での攻撃の応酬が繰り広げられている。人間の言葉では『気組み』等と呼称するそうだ。
先に動いたのは、長門さんだった。滑らかに身体を滑らせ、攻撃を開始した。
速い。というか、何か鬼気迫るものがある。鉄筋の射撃をものともせず、ヌンチャクが舞う。
ヌンチャクが止められれば、すぐに鋭い前蹴りが飛ぶ。あまりの速さに、攻撃者反応できず。
蹴りが入った一瞬後に、攻撃者の意識が蹴りを入れられた部位へ向かう。
そのためガードが少し下がったのを、長門さんは見逃さなかった。
左正拳突き……いや、ジャブか。そのまま素早く左3連打。1発1発がそれぞれ必殺級の威力なのに、
あくまでコンパクトに素早く打ち込んでいく。3点バースト射撃とでも言うべきだろうか。
そして再びヌンチャク乱舞。サンドバッグを殴るかのように、攻撃者を翻弄する長門さん。
いい加減うずくまりそうな攻撃者の頭らしき場所を左脇に抱えると、
背後で右かかとを跳ね上げるように使って蹴る。一旦攻撃者を身体の正面に持ってくると、左膝蹴り。
そして胴回し蹴りからそのまま逆立ち状態で攻撃者の首らしき部位を脚で挟むと、
攻撃者の足元に飛び込みながら、地面に叩きつけるように投げた。
……また派手な技使うわね。
「白……か。」
後ろでポツリと呟く涼宮さん。あー、スカートの中のことを言ってるのね。
ちなみに今の攻撃は、相当な速さで繰り出されたけど、さすがは涼宮さんね。あの速さで見えてるのか。
そういえば、わたしの時にも何か言ってたような……と思ったら、ぽん、と肩に手を置かれた。
「あんた……結構かわいいの穿いてるんやね。まさか縞パンで来るとは……萌えのポイント高いわ。」
再構成されるときに、あなたの嗜好を考慮してるからね。
630閉鎖まであと 1972614 秒:2007/02/01(木) 00:03:06.29 ID:+vL3tXd4O
支援
6315/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:04:00.70 ID:otCLYyd20
それにしても、わたし達は人間じゃないけど、人間の女の子の姿をしてるんだから、
仮にも女の子のあなたが、余りぱんつで喜ばないで欲しいな。
『それは涼宮ハルヒが現実逃避に走っている証拠。そのほうがやりやすい。』
……そりゃあ、あなたはぱんつどころか、もっと凄いことになったから、
今更ぱんつが見えたところで動じないんだろうけど。
『あなたが一番、ぱんつぱんつ言っている。』
はう。
長門さんにツッコまれた。
冷静に通信でツッコミを入れながらも、長門さんはひたすら無表情でストッキング仮面(仮名)をしばき上げている。
相変わらず物凄い闘気を纏いながら。それにしても、わたしが出る幕ないと思うんだけど。
『もうすぐ。』
長門さんはヌンチャクを構え、攻撃者を見据えて言った。
「あなたはもう死んでいる。」
どこの世紀末救世主ですかとツッコむ間もなく、長門さんは、涼宮さんに見えない角度で詠唱を始めた。
物凄い勢いでしばき回しながら、攻撃者に崩壊因子を組み込んでいたのね。
詠唱が完成すると、攻撃者は音もなく、煌めく砂となり、崩れていった。
それが合図だった。
わたしは、この空間内へ急速に敵性存在の気配が満ちていくのを感じた。
『今倒した攻撃者は、尖兵に過ぎない。これが倒されることが、その後の展開の引き金。
作動させないと、この空間封鎖を完全に破ることはできない。』
まるで空間そのものを材料として、先ほどの攻撃者同等の存在が無数に生み出されていくかのような気配。
「……はぁっ!!」
どこからともなく飛んできた飛翔体……鉄筋を、わたしは薙刀で斬り飛ばした。
あれ? 刃は付いてないんじゃなかったの? でも、今はそれどころじゃない。
これって、全方位から狙撃されるってことじゃない!?
『そう。』
なんてことだ。もちろん、インターフェイスとしての能力を最大限生かせば、防ぐのはたやすいけど、
今はそばに涼宮さんがいる。長門さんが彼を庇いながら戦った時とは、わけが違う。
なぜなら、涼宮さんにはわたし達の力を全て見せるわけには行かないから。
あくまで『人間の枠内』で対処しなければならない。例えば防護フィールドは使えない。
6326/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:05:01.12 ID:otCLYyd20
正直言って、キツい。
ああ、考えてるそばから鉄筋がいっぱい飛んできたよ。忙しいなあ、もう。
わたしは薙刀を振るって鉄筋を斬り飛ばしながら、涼宮さんを護る。
長門さんは、相変わらず無表情で、ヌンチャクを振り回して鉄筋を叩き落としている。
どうやってこの局面を切り抜ければ良いんだろう。そう考えていると、
『準備ができた。』
長門さんの通信と同時に、誰かがこの空間に突入した気配。
『朝倉さん! 長門さん! そっちの様子はどうなってますか!?』
突入したのは喜緑江美里だった。こっちは正直キツいかな。
『こちらは、涼宮ハルヒの手前、あまり動けない。支援を要請する。』
長門さんの通信に、喜緑さんが答えた。
『了解しました。』
情報統合思念体に申請して、情報を共有する。……彼、朝比奈みくる、古泉一樹も伴っているのか。
全員持てる能力を最大限に発揮して戦っている。本来は非戦闘員である彼には、武器が支給されている。
一体どうなってるのかしら。
『喜緑江美里達には、別働隊として、派手に戦って敵勢力を引き付けてもらう。』
古泉君は、閉鎖空間仕様の赤い玉になって、縦横無尽に飛び回ってる。
朝比奈さんは、文字通り『人間兵器』、『歩く凶器』と化して、辺り一面を薙ぎ払ってる。『アレ』を解禁したのか。
彼は、支給された武器をちゃんと使いこなしているようだ。武器に支援システムを組み込んであるのね。
喜緑さんは……涼宮さんがいないからって、そんな大技……ちょっと演出過剰なんじゃない?
『あれくらい派手にやってくれたほうが、都合が良い。』
確かに、こちらへの攻撃が段々手薄になっていってるけど……ああ、また喜緑さんの大技が炸裂した。
同時に土煙が立ち上るのが見え、少しして轟音が聞こえてきた。ここから目視できる範囲で戦ってるのか。
そして、彼の武器が変形した……!? ちょっと!? 涼宮さんがいないからって、無茶しすぎ!
比較すると、こちらは肉弾戦仕様パーティーで、あちらは飛び道具部隊か。
さては、喜緑さん……深夜アニメでも観たな?
え? なんでそんな例を思い浮かべたかって?
……わたしには待機モードの3年間、暇つぶし……もとい、『情報収集』の一環として、日がな一日、
テレビを見て過ごしていた時期があった。色々観た番組には、アニメ番組も含まれていた。
深夜アニメには、結構『熱い』作品が多かったかもしれない。
633閉鎖まであと 1972471 秒:2007/02/01(木) 00:05:29.73 ID:IHoY/j030
支援するよ
6347/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:06:01.26 ID:otCLYyd20
人間がそのまま演じる実写ドラマに比べると、アニメは表現がより『情報』に近い。
普段は『肉体』というフィルターを通してしか表現できない人間の内面、すなわち『感情』が、
アニメではより純粋な情報に近い形で表現されていた。
人間の感情が良く分からない当時のわたしには、それは『人間らしい』所作の研究に役立った。
朝から昼は、人間達の話に違和感なく溶け込めるよう、ニュース番組を欠かさずチェック。
朝早くはニュースや交通情報が多い番組も、昼が近くなるに連れて、芸能人の話題が増えていく。
これは、一般的な人間の生活様式に合わせた結果であることが分かった。
ただ、あまり見過ぎると、わたしの設定年齢からかけ離れた年代の人間と同様の思考パターンに陥る、
人間の言葉で言うと『おばはん臭くなる』という諸刃の剣。素人にはおすすめ出来ない。
今にして思えば、意外と『人間生活』を楽しんでたんだな、わたし。
『もうすぐ、次の機構が作動する。』
長門さんの通信が入る。何で情報統合思念体と再接続したのに、
わたしが余り状況を把握できていないかというと、未だリンクが完全には確立していないから。
ノイズが多すぎて、再通信が頻発し、実効通信速度が極度に低下している。
おかげで、インターフェイスとしての能力を6割程度しか使えていない。
これは、涼宮さんがいなかったとしても、あんまり力を使えなかったわね。
辛うじて、他のインターフェイスとの通信を保持できてはいるけど、これも危うい。
映像と音声でしか通信できず、しかもノイズだらけなので、現在の人類の技術水準による通信、
携帯電話によるTV電話程度の精度でしか通信できない。通常の情報共有に比べれば極めて不完全。
……何だか、わたしって足手まといっぽいな。ちょっとヘコむ。
『一つずつ機構を作動させていくのは、効率が悪いので、ここらで一気に片を付けますね。』
喜緑さんからの通信。同時に、喜緑さんは詠唱を始める。
えええ!? そんな大きな情報操作を……
『これより、情報共有はパッシブモードに切り替えます。
ことが済むまで通信には答えられないと思いますので、連絡事項は今のうちにお願いします。』
喜緑さんの通信に、長門さんが答える。
『こちらは、3人で移動を開始する。合流は北高文芸部室にて。以上。』
『了解しました。健闘を祈ります。それでは30秒後、対閃光衝撃防御願います。以上。』
この通信を最後に、喜緑さんからの映像と音声が届かなくなった。
635閉鎖まであと 1972427 秒:2007/02/01(木) 00:06:13.59 ID:+vL3tXd4O
支援
636閉鎖まであと 1972406 秒:2007/02/01(木) 00:06:34.67 ID:D5T9jia00
また閉鎖までのカウントダウンになっている保守。
6378/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:07:09.18 ID:otCLYyd20
「涼宮さん! 目を閉じて耳を塞いでっ! 早くっ!!」
「えっ!? えっ!? こ、こう!?」
戸惑いながらも、わたしの指示に従い、涼宮さんが目を閉じて耳を塞ぐ。
それを確認すると、わたしは素早く耳栓を構成して装着し、彼女を庇うように抱き締めて目を閉じた。
長門さんは、耳栓とサングラスを構成して、装着していた。
そして……
世界が強烈な光に包まれるのが、瞼の上からでも感じられた。一瞬後に、激しい衝撃波と爆発音。
涼宮さんに目を瞑らせた上で防護フィールドを展開してはいるけど、それでも激しい余波。
余波が収まると、すぐに耳栓を分解してから、辺りの様子を確認する。
まだ空間封鎖は解けてないけど、攻撃される気配はない。
「今のうち。」
と、サングラスと耳栓を分解した長門さんが言った。涼宮さんも、目を開けて耳を塞いでいた手を離した。
「今のうちに、移動しよ。」
「どこに?」
わたしの言葉に、涼宮さんは疑問を返す。行き先は一つ。
「とりあえず、北高に避難しよ! ほら、あそこって、災害のときの避難場所になっとぉやんか。
逃げる場所としては、最適やと思わへん?」
「確かにそうかも……」
「ほら、急ご!」
わたしは涼宮さんの手を引いて駆け出した。長門さんも無言で後に続く。
背後から、また爆発音が聞こえ始めた。
『喜緑さん、頼んだわよ。』
返答が返ってこないと知りながら一言送信すると、わたし達は北高を目指した。
余計なお世話だと思うけど、こんな長い坂道の上にあるんじゃ、
本当に避難するとき、大変なんじゃないかな? 立地条件には関係なく、
『学校』という属性だけで、避難場所として指定されているらしい。
こういうのを『お役所仕事』と呼称するそうだ。
人間って、わたしにとっては時々、訳分かんないというような不合理な行動を取る不可思議な存在だけど、
そんな人間にも訳が分からないと考えられてるのが、『お役所仕事』だそうだ。
そのような『お役所仕事』の範疇に含まれるところの、公立学校である北高に着いた。
6389/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:08:00.90 ID:otCLYyd20
「はぁ、はぁ、はぁ……」
長い坂を駆け上がってきたおかげで、さすがの涼宮さんも息が切れたようだ。肩で息をしている。
「はぁ、はぁ……ふぅ。さて、北高に着いたはええけど、この後どうすれば……」
「部室。」
涼宮さんの問いに、長門さんが極めて短い単語で答えた。
「なるほど、確かに、うちらが共通して知っとぉ場所って言(ゆ)うたら、文芸部室やね。」
と、わたしも同調する。正副インターフェイスの連係プレイですよ、奥さん。……奥さんって誰だ。
手際よく涼宮さんを部室に連れ込む……もとい、誘導するわたし達。
遅い時間になっていたとはいえ、校庭に誰一人いない光景を涼宮さんに見せ続けるのは良くない。
……校舎内も似たような状況だけど、部室の中に入ってしまえば、外の様子は余り気にならないからね。
部室に入り扉を閉めると、ようやく一息つく。
喜緑さんとは相変わらず通信が途絶してるので、状況は全く分からない。
遠くのほうでなにやら爆発音が聞こえるので、まだ戦闘は続いてるんだろう。
涼宮さんをここに匿って待機、か。
こうなると、もう……人間の言葉で言うところの『祈る』ことしかできない。
ここまでずっと涼宮さんの手を握っていたけど、もう大丈夫かな。そう思って手を離そうとしたら、
ぎゅっ。
涼宮さんは、わたしの手を離そうとしない。それどころか指を絡め、しまいには腕に組み付いてきた。
あのー、涼宮さん? あなたは何をしておいでなのでしょうか。
「べ、別に不安やからとか、そんなん違(ちゃ)うんやからね!
あんたが怖がったらかわいそうやから、手ぇ繋いだげとぉだけなんやからね!」
うん、もうどこに出しても恥ずかしくない、立派なツンデレさんだね。
そんな真っ赤な顔して、そっぽを向きながら、震える手で言っても、全然説得力ないわ。
「!?……あ、あほぉ、そんなん違(ちゃ)うって……」
照れるツンデレ萌え、って表現するのかな。照れる涼宮さんの、何と可愛いことよ。
「――っ!! も、もう、知らん!」
ぷいっ、と涼宮さんはそっぽを向いてしまった。
ぎゅうー。
わたしは、照れて首まで真っ赤になった涼宮さんを抱き締めた。正直、たまりません。
63910/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:09:01.31 ID:otCLYyd20
「大丈夫、何(なん)も心配せんでええよ。わたしも長門さんも、付いとぉから。」
わたしがそう囁くと、涼宮さんは『ふみゅぅー』とでも擬態語を付けるのが適当な様子で、
ふにゃふにゃとわたしの胸に顔を埋めてきた。よしよし、頭撫でてあげる。……抵抗はしないのね。
「……しばらく、こうさして。」
やっぱり不安だったのね。あー、もう、かわいいなぁ。なでなで。
長門さんを差し置いて、こんなことをしちゃって良いのかな。
涼宮さんは、わたしに頭を撫でられるがままになっている。極めて珍しい光景。
いつもは元気いっぱいに振舞っているけど、いくら規格外の彼女とて、やはり人間。
他の人間同様に、『不安』や『恐れ』といった感情もやはり存在するというのが、これまでの観測結果。
更に言えば、人間の言葉で表現すると、かなりの『甘えん坊』。普段はそれを表に出さないだけ。
そう考えると、長門さんと似たもの同士といえるのかもしれない。
長門さんは、どんな感情(に類するもの)も、一切表に出さないように設定されている。
もっとも、最近はそれでも微弱な揺らぎが表出したり、
特定の人間には感情を見せたりするようになったみたいだけど。
とにかく、どちらも『本当の感情を表に出さない』という点では、共通している。
そんな似たもの同士のふたりだから、惹かれあってしまったのかもしれない。タブーを超えて。
冷静沈着に任務を遂行するように設定されているはずの長門さんが、今回のように、
『怒り心頭に発し』、『我を忘れて』大暴れするなんて、本来考えられない状況。
なのに、それは起こった。
今や長門さんは『観測者』たり得ない。涼宮ハルヒに影響を与える重要な要素の一つになっている。
『鍵』は『彼』だけではなくなった。長門さんも含めた『SOS団』そのものが、涼宮さんにとっての重要な『鍵』。
そう、『変化』は起こっている。
かつてわたしが、そしてわたしが所属していた急進派が求めて止まなかった『涼宮ハルヒの変化』が、
『変化』を求めず『現状維持』を目指した主流派に属する、長門有希の存在によって起こっている。
なんて皮肉なことかしら。
わたしは変化を求め、彼を殺そうとした。
長門さんは現状維持を求め、彼を守ろうとした。
そしてわたし達は戦った。その結果、わたしは情報連結解除……人間の言葉で言えば『殺害』された。
かくして、変化を求める勢力は敗れ去り、現状維持を求める勢力の思惑通りにことが進む……はずだった。
でも、そうはならなかった。現状維持を望む側の長門さんが暴走し、世界を改変してしまった。
640閉鎖まであと 1972254 秒:2007/02/01(木) 00:09:06.06 ID:B0e1OOngO
支援
64111/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:10:08.87 ID:otCLYyd20
今なら分かる。
変化を抑えようとする意向が、変化を免れない有機生命体……ヒューマノイドインターフェイスを狂わせた。
情報統合思念体は、この事実を重く受け止めるべきだろう。
本当に、有機生命体である涼宮ハルヒを理解したいと思うのなら。
涼宮さんの不安そうな顔を見ると、その思いはますます強くなった。
彼女にこんな表情をさせるようなことが、彼女の理解に資するとは思えない。
もしあの時、わたしが勝って彼の殺害に成功していたら、どうなっていただろうか。
情報爆発は、確かに起こっただろう。でもそれは、『悲しみ』に彩られていたに違いない。
そして、情報統合思念体自身も、無事では済まなかったはず。
これは、長門さんが世界を改変した時、情報統合思念体を消滅させた事実からも明らかなこと。
あの時情報統合思念体は、人間の言葉で言えば『肝を冷やした』。
例え世界が壊れても、自分だけは大丈夫だと考えていたから。
情報統合思念体の存在を知っていたからこそ、長門さんはそれを選択的に消滅させるという芸当ができた。
しかし、だからと言って、その存在を知らない涼宮さんが改変するならば、
情報統合思念体は無事でいられるという保証にはならない。
もし涼宮さんが、『宇宙人も未来人も異世界人も超能力者も、何もかもどうでも良い』と思って
情報爆発で世界を書き換えたら、どうでも良いと思われた宇宙人の範疇に入る情報統合思念体も、
消滅しないという確証はない。むしろ、同様に消滅すると考えたほうが自然だろう。
強硬な手段を使って涼宮ハルヒに情報爆発を強制的に起こさせた場合、非常に高い確率で、
それは『悲しみ』又は『絶望』という属性を持った情報爆発になると予想される。
そしてその『悲しい』情報爆発は、同様に非常に高い確率で、世界を崩壊させ、
情報統合思念体も、そして恐らくは広域体宇宙存在も、共に消滅させてしまうと予想される。
それでも、情報統合思念体は、強硬な手段を執る選択肢を残すべきだろうか。
わたしには、それが得策であるとは、到底思えない。検討する価値もないとさえ思っている。
64212/12 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:11:11.11 ID:otCLYyd20
『終わった。』
そんなことを考えていたら、長門さんから通信が入った。慌てて周囲の状況に感覚を振り向ける。
空間封鎖が解かれて、通常空間に復帰していた。周囲の音も聞こえるようになっている。
『空間封鎖の解除、通常空間への復帰を確認。ふう。終わりました。今からそちらへ向かいますね。』
喜緑さんからの通信が入った。無事、攻撃者達を排除したみたいね。
『お疲れ様。』
長門さんが、労いの言葉を掛けている。これも、少し前では考えられなかったこと。
「涼宮さん。大丈夫やで。」
わたしは、涼宮さんに声を掛けた。ずっとわたしにしがみついていた涼宮さんが、わたしの顔を見つめる。
「怖い夢は、もう終わり。」
我ながら無理がある締めの言葉だと思う。でも、他に言える言葉を、わたしは知らない。
「……夢?」
涼宮さんはわたしの顔をまじまじと見つめた後、わたしの肩に視線を移して言った。
「あれ? あんた、肩の傷は……」
肩の傷は、治しておいた。最初から傷などなかったように。
「ここには、涼宮さんがおって、わたしがおって、長門さんもおる。
誰もおらへんようになってへんし、誰も傷付いてへん。それで十分やんか。ね?」
そう言ってわたしは、ウィンクした。
「……」
涼宮さんは、長門さんばりに黙りこくってしまった。無理もないわよね。
「それより、ほら。会いたがってた長門さんが帰ってきたで。」
「え? あ、ああ……」
まだ涼宮さんは本調子じゃないわね。どこか上の空。
「あ、えっと、その……」
「ただいま。」
まごつく涼宮さんに、長門さんは極めて短い単語で、的確に返答した。そして……
長門さんは、目を細めて微笑した。
「! あ……お、おかえり……」
長門さんの微笑に、涼宮さんは頬を染めてはにかみながら答えた。
……わたしは、長門さんの微笑と、涼宮さんのはにかんだ表情に、見とれていた。
643閉鎖まであと 1972128 秒:2007/02/01(木) 00:11:12.86 ID:B0e1OOngO
支援
644現地語版担当者 ◆eHA9wZFEww :2007/02/01(木) 00:12:31.84 ID:otCLYyd20
>623-642
以上です。
ようやく長門が帰ってきましたが、報告者は代打・朝倉です。
宇宙人3人娘のサイクル報告、達成しました。
口調はこれで良かったのかな、と思いますけれども。
645閉鎖まであと 1972006 秒:2007/02/01(木) 00:13:14.25 ID:+vL3tXd4O
GJ!
喜緑さん強ぇwww
646閉鎖まであと 1971865 秒:2007/02/01(木) 00:15:35.92 ID:R3uspwVwO
GJ。っつかまた閉鎖ッスか?
647閉鎖まであと 1971843 秒:2007/02/01(木) 00:15:57.62 ID:CM4Vl1qu0
アナルスレがない……
648閉鎖まであと 1971688 秒:2007/02/01(木) 00:18:32.74 ID:otCLYyd20
>647
時間切れだそうです
649閉鎖まであと 1971525 秒:2007/02/01(木) 00:21:15.57 ID:otCLYyd20
>644
というわけで、これまで続いていた三人称視点も、
情報素子になった長門による報告だったということで。

この後、話の続きを書くか、喜緑さんチームの話を書くか、迷ってたり。
どっちを先に書こう……
650閉鎖まであと 1971426 秒:2007/02/01(木) 00:22:54.65 ID:ECSlsQJQ0
>>649
喜緑さんチームお願いしマッス
651閉鎖まであと 1971370 秒:2007/02/01(木) 00:23:50.47 ID:+vL3tXd4O
>>649
是非喜緑さんでw
652閉鎖まであと 1971179 秒:2007/02/01(木) 00:27:01.49 ID:ECSlsQJQ0
653閉鎖まであと 1971089 秒:2007/02/01(木) 00:28:31.82 ID:X0t7QLynO
乙っす!
長い間投下出来なかった分、文章がよく推敲されているのを感じました
描写も細かいし、朝倉さんの語りも(;´д`)ハァハァ

紐パン(;´д`)ハァハァ
654閉鎖まであと 1970220 秒:2007/02/01(木) 00:43:00.43 ID:X0t7QLynO
保守
655 ◆UzwNkLPbSc :2007/02/01(木) 00:44:13.26 ID:3leQfI5U0
従順スレで投下したものを途中までなのですが、
こちらに投下しても平気ですかね?
7レス程です。
656閉鎖まであと 1970102 秒:2007/02/01(木) 00:44:58.07 ID:R3uspwVwO
従順また立ったよ
657閉鎖まであと 1970085 秒:2007/02/01(木) 00:45:15.30 ID:otCLYyd20
>653
ちょwwwwwww紐wwwwwwwwww

朝倉「紐じゃなくて、縞! し・ま・し・ま!!」
涼宮「両方合わせれば良いじゃない!」
朝倉「ちょ!?」
長門「縞模倣の紐パン。」
朝倉「言い直さなくて良いから!」
長門「さらにローレグにすることを提案する。」
朝倉「!?」
涼宮「さあ、想像してみましょう!」
涼宮ハルヒは卒倒した。
涼宮「……物凄い破壊力だわ。また彼岸に逝きそうになった……」
長門「もはやB(生物)兵器。」
朝倉「……」

>655
wktk
658閉鎖まであと 1969993 秒:2007/02/01(木) 00:46:47.16 ID:ECSlsQJQ0
>>655
wktk
659閉鎖まであと 1969869 秒:2007/02/01(木) 00:48:51.57 ID:X0t7QLynO
>>657
マジだwやっちまったwww
妄想爆発wwww

>>655
wktk!
660 ◆UzwNkLPbSc :2007/02/01(木) 00:49:34.97 ID:3leQfI5U0
従順スレがたったみたいなので、荷物まとめてそちらに引っ越します。
>>655さん、誘導ありがとうございます。

661閉鎖まであと 1969751 秒:2007/02/01(木) 00:50:49.53 ID:+vL3tXd4O
あら残念。
662閉鎖まであと 1969712 秒:2007/02/01(木) 00:51:28.47 ID:ECSlsQJQ0
おや残念。
663閉鎖まであと 1969587 秒:2007/02/01(木) 00:53:33.91 ID:X0t7QLynO
残念だ
そして縞パンと紐パン間違えたてまえ言いにくいが、
自分にレスしてるぞ
664閉鎖まであと 1969398 秒:2007/02/01(木) 00:56:42.94 ID:fPa/jd3k0
>>655
余計な事すんなよ・・・
665→→→→× ◆U2cV79H4gE :2007/02/01(木) 01:03:51.02 ID:k2HMBavRO
古泉一樹は長門有希のことが好きなので、誰もいない昼休みの文芸部室に忍びこみ、
机の上に置きっぱなしの彼女がいつも読んでいる本の間に、想いを伝える手紙を挟んだ。
―――放課後には、無口で可憐な彼女に気持ちが伝わりますように。

長門有希はキョンのことが好きなので、古泉一樹と入れ違いに文芸部室に忍び込み、
彼がいつも見ているパソコンのドキュメントに、想いを伝える文章フォルダを作成した。
――放課後には、気だるげで優しい彼に気持ちが伝わりますように。

キョンは朝比奈みくるのことが好きなので、長門有希と入れ違いになった文芸部室に忍び込み、
棚の上に整理された湯呑み道具一式の中に、想いを伝える手紙を置いた。
――放課後には、ドジで可愛い彼女に想いが伝わりますように。

朝比奈みくるは古泉一樹のことが好きなので、キョンと入れ違いになった文芸部室に忍び込み、
部屋の隅の碁盤の上、彼愛用の黒い碁石入れの中に、想いを伝える手紙を入れた。
――放課後には、ゲームに弱くて素敵な彼に気持ちが伝わりますように。
666→→→→× ◆U2cV79H4gE :2007/02/01(木) 01:06:23.98 ID:k2HMBavRO
涼宮ハルヒは、授業終了後、文芸部室に他の団員の誰よりも早く来て、
本と湯呑み道具一式と碁石入れとパソコンの電源ケーブルを、そっと目に付かない場所に隠した。
――無口で気だるげでドジでゲームに弱い彼彼女等と、変わらぬ仲間でいられますように。

本が見当たらず、日課の読書が出来ない彼女と、
パソコンの電源が入らず、日課のネットが出来ない彼と、
湯呑み道具が見当たらず、日課のお茶組みが出来ない彼女と、
碁石が見当たらず、日課のゲームが出来ない彼と、
その実、変化に臆病な私が、変わらぬ関係でいられますように。


(終わり)
667閉鎖まであと 1968630 秒:2007/02/01(木) 01:09:30.36 ID:xDn1Gxa60
>>666
GJ
こういうの大好きだ
668閉鎖まであと 1968598 秒:2007/02/01(木) 01:10:02.54 ID:+vL3tXd4O
GJ!
こんなハルヒも良いね。
669閉鎖まであと 1968572 秒:2007/02/01(木) 01:10:28.90 ID:ECSlsQJQ0
>>666
いきなりのGJ
どこで見てたんだハルヒw
670閉鎖まであと 1967878 秒:2007/02/01(木) 01:22:02.09 ID:X0t7QLynO
>>666
GJ
なんとなく星新一のショートショートを彷彿とさせるSSだ
671閉鎖まであと 1967388 秒:2007/02/01(木) 01:30:12.83 ID:0vpv0FB20
>>666
GJ!
しかしハルヒが超能力者みたいだw
672閉鎖まであと 1965956 秒:2007/02/01(木) 01:54:04.57 ID:+vL3tXd4O
保守
673閉鎖まであと 1965876 秒:2007/02/01(木) 01:55:24.44 ID:dukpO5RE0
>>1のちんちんはうまい
674閉鎖まであと 1965120 秒:2007/02/01(木) 02:08:00.97 ID:CM4Vl1qu0
●<どれどれ
675閉鎖まであと 1963364 秒:2007/02/01(木) 02:37:16.42 ID:+vL3tXd4O
●<保守
676愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 03:05:46.78 ID:+vL3tXd4O
保守
677愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 03:35:30.95 ID:OTCVvEWy0
赤い糸のひと、続きをいつまでも待っているぜ!
と言うことで保守&皆お休み!
678愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 03:56:47.62 ID:g6SJ6WYc0
「ねえキョン」
「なんだ」
「過疎よねー」
「なんだ?夕張の話か?」
「違うわよ。昔と比べて投下が減ったと思っただけよ」
「は?俺には何のことを言ってるのかさっぱりわからん」
「もう、ほんとに鈍いわね。じゃあヒントをあげるわ」
「よくわからんが、言ってみろ」
「『プリン』これがヒントよ」
「……まったく訳がわからん、おまえは俺に何を言わせたいんだ?」
「もう知らない、あんたの一人称の物語好きだったのに」

バタン

いやわかってたんだがな
仕方ないだろ?もうネタが浮かばないんだ

という保守
679愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 04:35:55.87 ID:+vL3tXd4O
保守
680愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 05:22:58.23 ID:OU2FJr/G0
長門「Watch me be free as a bird.
The moment tomorrow when today turns from present to past is a miracle.」
キョン「はっきり言おう。ドドインドインドイーンだ。」
681愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 06:24:31.31 ID:CM4Vl1qu0
682愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 07:17:00.24 ID:RMvkVVBeO
●<…
683愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 07:59:07.69 ID:RMvkVVBeO
●<プリンが…
684愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 08:21:13.76 ID:ovIf66kxO
age
685愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 09:00:06.32 ID:X0t7QLynO
保守
686愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 09:27:04.49 ID:+vL3tXd4O
●<保守
687愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 09:51:46.75 ID:2B4huDrkO
688愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 10:13:01.90 ID:2yme3pK8O
鶴「一樹くんっ! 今回は何時ぐらいに落ちるんだい!?」
古「そうですね……今日の18時くらいに堕ちると思います」
鶴「漢字が違うにょろ」
古「僕はすでに貴女に堕ちているって意味ですよ、ふふ」
鶴「な、そそれはあたしだって同じっさ!」









会長「は! ドリームか! しかし何故関係ないあの2人が夢に……?」
喜「会長、早くしないと学校に遅れちゃいますよ?」
会長「何故、君が私のベッドの上にいるのかね?」
喜「そんな……会長の上にいるだなんて……」
会長「ベッドが抜けているぞ」
喜「いいじゃないですか。せっかく起こしにきたのですから」
会長「そうか! これもドリームか!」
喜「会長のバカー!」
会長「ギャボー」
喜「……でもそんな会長も好きです」


オチ? ないですよ? え? ちょ、うわなにするやめろンギモヂイィイ
689愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 10:27:34.99 ID:R3uspwVwO
「愛してる」
言ったのは最後の愛。
貴女は何処に居ますか?
貴女はまだ好きですか?

ある日届いた手紙。
それは、貴女の字。

―――また、約束の丘に二人で。

俺達が再開した、その時。
世界がぐるり回っていく。
ふわふわと夢心地風任せ。

新番組・緑色の喜び

「喜緑さん・・・ずっと一緒だから。約束だから」
「はい・・・」

二月十四日放送開始(しない)
690愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 10:34:11.79 ID:mGXixNtY0
皆はどのSSが一番好き?

俺は全部読んだわけではないけど、
「冬風のマーチ 」が好きだなー

お勧めあったら教えてよ
てか職人さんが一生懸命作ったものだから、
『全部』お勧めが正解かな
691愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 10:48:07.00 ID:+vL3tXd4O
>>690
「さよなら」が好きだね。ガチで泣いた。
692愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 11:21:20.81 ID:+vL3tXd4O
保守
693愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 11:51:17.59 ID:+vL3tXd4O
保守
694愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 11:57:50.60 ID:mGXixNtY0
「さよなら」面白かったよ!

SOS団で恋愛絡みではなくて、
面白い話があったら勧めてくれー
695愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 11:58:29.23 ID:fZtz7Z530
>>690
【The Girl Who Wanted To Be A Real Human】完全版
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1889.html
涼宮ハルヒの微笑
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/975.html
【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/620.html
『Short Summer Vacation』
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1570.html
696愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:06:26.04 ID:mGXixNtY0
>>695
嬉しいじゃないの〜
俺はどんな話だろうがとりあえず読んじゃうぜ
697愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:13:20.10 ID:m5XNpHxUO
>>696
避難所の好きなSSを語ろうスレとか、感想スレも参考にすると良いかと
698愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:16:14.61 ID:mGXixNtY0
>>697
だね、スレ違いだったすまん
保守になったと許してね
699愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:16:53.87 ID:Jzq2O8lZ0
Come on, let's dance! Come on, let's dance!べーいびー♪
700愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:20:32.47 ID:m5XNpHxUO
>>698
違うぜ、あっちにもいい感じで話してあるからだ。
別にスレ違いとか言うつもりは全く無い。
ちなみに、個人的にハニカミ!が好きだったww
701愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:24:32.23 ID:mGXixNtY0
こういうSSを簡単に見れるっていいよね
一昔前なら一苦労ですよ

「ハニカミ!」も読むぜ!
702愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:44:45.49 ID:lljznE/7O
>>688 わろたw
703愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:48:19.36 ID:0vpv0FB20
そういや完全に恋愛がらみじゃない話ってあんまり無いねー。
ほんのり片思い要素とかも駄目ってなると、結構少ないんじゃないかな。
恋愛要素低めの戦場の人のSSとかも多少そういう要素は有るし
「さよなら」も片思いものだし。
704愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 12:57:15.24 ID:mGXixNtY0
>>703
恋愛絡みも好きなんだけど、
何となく今日は普通の冒険談みたいなのを読みたい気分だったんだよ
そんな気分になること無い?

憂鬱〜陰謀にあるようなほんのり片思い描写はあり!
705愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:03:19.32 ID:lljznE/7O
>>649 おそくなったがみさせてもらった..いまならわかる。これが萌え。彼女ら(主にハルヒ)は俺をくるわせたああああ!!
SS書き上げお疲れ様。
次回は喜緑さんチームで!!
706愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:11:51.74 ID:ECSlsQJQ0
>>704
それなら
「TDRのSOS団」
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1508.html
「涼宮ハルヒの戦場」
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1066.html
「キョン乃進侍」
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1535.html
「涼宮ハルヒの覚醒」
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1700.html

あたりもいい。というか普通にwikiのss全部読めちゃうよ。
707愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:21:51.08 ID:mGXixNtY0
>>706
ありがと!
なんつーか幸せな時間が過ぎていってる
今日は皆が教えてくれたのをのんびり読むよ
708愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:23:11.25 ID:mGXixNtY0
スレ違いのわがままリクエストに答えてくれてみんなありがと!
709愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:24:35.71 ID:R3uspwVwO
自分のタイトルが無いと頑張らないといけないなぁ、とじみじみやる気が湧くよ
710愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:33:52.65 ID:mGXixNtY0
自分には文章を創造する能力が全く無いので職人さんにはいつも感謝です

全ての職人さんが、今日一日を健やかに過ごせますように・・・
711愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:39:03.90 ID:UxdK764c0
流石にそこまで行くと馴れ合いになるからやめようぜ
712愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:39:09.72 ID:6hc4lrcyO
キモッ
じゃあ職人にアナル差し出せばいいじゃん。
713愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:41:14.41 ID:mGXixNtY0
すまん
以降「保守」しか書かん
714愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:50:35.15 ID:lljznE/7O
715愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 13:51:27.86 ID:gDKdsD/X0
716愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:01:08.24 ID:+lM3orKTO
717愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:02:24.17 ID:nf6LoqtR0
718愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:03:45.15 ID:+lM3orKTO
719愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:04:48.25 ID:Ls/zoyzI0
720愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:10:11.75 ID:+lM3orKTO
721愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:11:13.31 ID:1QAX2dfD0
722愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:12:45.96 ID:R3uspwVwO
朝倉涼子の暴投でキャッチャーだったキョンは怪我をした。
喜「キョンくん・・・キョンくん!」
キ「喜緑さ、ん・・・?」
喜「大丈夫?今、助けますか、きゃっ」
キ「・・・」
ぎゅう・・・
喜「キョンくん?駄目ですよ、傷を塞がないと・・・」
キ「今は、あなたに触れていたいんです」
喜「キョンくん・・・」
キ「愛してます・・・」
喜「私も・・・」



ハ「古泉くん!急いで!!」
古「あ、はい!」
723愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:12:55.26 ID:Ls/zoyzI0
724愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:20:55.14 ID:LwfZavfz0
             _____
             |___   /
 \ \   /⌒l     / /
   \ \ :{.__, |.    / /
   / / {   |   (  (__/|
 / /   }.__, |    ヽ     /
    __,/厂{  |、 .    ̄ ̄ ̄
  __ノ{  、   }ー ,八              我はついに手に入れたぞ!!!!
  |! 、  |  {.イjj \
 | |  ヽ.___,フツ'´  )          ,ィ    新たなる狐スレを!!!!!!!!
  ヽ.__>ーく_(rへ__,/ハ             { ヽ    \、
   ハ..__,.ィ"丁厂_,ノ ノ :〉           、__ヽ `丶.__ノ 〉
   !ヽニニニニ-tijj":::i:{          {ヽ-ゝ  __  \
  |i ::::巛'::::::j;彡'::::;':/l       {\\   〆勺7ヽz   )
   :|!('.:::::::::jj彡'::::/人     ヽ `¨ ,r/FミV/_}[ 〈 ,
   ヽ_'ー--一__''ニ´ くヽ \ー-、  ヽ. ハ|`> iッ`T゙K, レノ
    /´「`广 ̄:::彡::  l }  j}ヽ、\  Y>|ィ Tミi> l/ン,r'´
  /..:f}!!   :::三::  ! ' ,ハ  \,,>‐/ 人.'⌒),/凹,. -‐'"'´~'''
_/ .::;i}!}|!    ::三::.. :.  j:: ;    (⌒!ノ ミ.  ̄彡 !h´.,.,;.;';;'';:';'';;.;.,
{ .::;}}i}人`    :::三ッ川:..{:. ;    jlY^) ミ....::彡 rj^),;'';:;':;;';.:'':;':;'.;.;

頼む、↓のスレに↑のAAを貼り付けてれ。理由は問わないで欲しい。
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/neet4vip/1169370420/l10
725愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:38:51.65 ID:4b1gNElA0
昨日のメンテの続きかわからんが16:30までまた落ちるらしいな
726愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 14:53:26.61 ID:ECSlsQJQ0
>>725
15:30〜16:00の間らしい
727愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 15:16:54.30 ID:X0t7QLynO
そろそろ〜
728愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 15:23:44.62 ID:0vpv0FB20
ネタが無い〜。
いや、ネタは有るけど書きあがらない〜。
729愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 15:29:21.94 ID:X0t7QLynO
復旧までアディオス〜
730愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:19:19.91 ID:sYx0mJwnO
保守
731愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:22:22.28 ID:Bk3StqnFO
復旧age
732愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:37:44.71 ID:gTbQP2UiO
涼宮ハルヒの微笑を読み終わった
すげえ、二次創作でこれだけのもんが書けるのな
オチも纏まってたし原作が霞む悪寒
733愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:47:07.68 ID:KbXVFWEv0
その話題はここでは禁止
734愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:51:28.21 ID:cZ3AlCMH0
あれで原作は霞むとか言われてもな……
735愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:54:47.25 ID:gTbQP2UiO
>>733
ああタブーなのかスマソ
736愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:56:15.17 ID:q/Iu/yvQ0
微笑(笑)
737愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:58:02.71 ID:nhgRdpidO
タブーってゆうかあくまで設定をかなり加えた二次創作なのに
「原作はこれでいい!」とか叫ぶやつがたまにいるから
738愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:59:53.14 ID:Bk3StqnFO
>>735
●<僕が処分してあげましょうマッガーレ
739愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 16:59:57.85 ID:TGUZ2bzk0
まあこのスレも後一時間強で時間切れな訳だが
740愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:02:09.90 ID:AtEuK5ya0
もうか。早いな。
前スレラストは冬風のマーチだったっけ。
あれはマジ良かったな。
741愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:08:06.82 ID:4Y6j1/lX0
冬風〜は良かった。ほんと。
742愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:14:18.92 ID:wQS6zCPYO
冬風人気だな。おれも好きだ。
細かい情景描写の上手さとか。
終盤のやりとりが大好きだな。
743愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:15:08.98 ID:AtEuK5ya0
あと一時間切ったか。
744愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:21:16.14 ID:qm3csYBVO
俺はツボが違ったな……
なんというか、あの文章が合わなかったかも
745愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:24:18.14 ID:n4mIZBuL0
同じく、どちらかというとWikiに直接投下されたえほんの方が好きだ
746愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:27:49.58 ID:AtEuK5ya0
>>745
なにそれ
747愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:28:05.08 ID:KbXVFWEv0
感じ方は人それぞれ。
だからたくさんのSS職人がいても成り立つわけで。
みんな一人の職人ばかり好きだったらやってられないよ。

少しでも褒めてもらえると職人もやる気でるから、
好きな職人さんは雑談所の感想スレで褒めてあげてください。
748愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:29:36.35 ID:Mo0cYssJ0
職人が上とは言わないがずいぶんと上から見た言い方だね。
749愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:31:01.21 ID:sYx0mJwnO
>>746
まとめサイトで実施中の冬企画で投下されたSSのひとつ
750愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:32:25.05 ID:AtEuK5ya0
>>749
d
751愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:33:45.72 ID:KbXVFWEv0
いや、ここでする話題じゃないだろーってこと
752愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:36:29.83 ID:AtEuK5ya0
残り時間もわずかだからいいんじゃね?
職人さん来るかな。新スレになるまでは...。
753愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:36:44.38 ID:qm3csYBVO
つまり、良い感想も悪い感想も感想スレでやる、でおK?
754愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:39:11.66 ID:TGUZ2bzk0
>>753
感想なら「感想スレ」
批評なら「アドバイススレ」だよ

作者さんに聞かせたくない王様の耳はロバの耳的な
コメントをづして我慢できなければ「本音スレ」

でも最低限の気は使おうぜ

てな感じで今のところ。
755愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:42:03.76 ID:sYx0mJwnO
投下直後の感想はここでもいいけどな

756愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:43:19.77 ID:KbXVFWEv0
そうだね
757愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:43:39.36 ID:qm3csYBVO
>>754
把握

投下後の感想は本スレでもいいけど、時間が経ったら感想スレのが良いかもね。
今みたいな状態になりそうだし
758愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:47:00.65 ID:AtEuK5ya0
おk
759愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:49:23.23 ID:InN1toiKO
キョン→会社の重役
谷口→整備屋
とかいう電波が飛んで来て丸2日。何とか形にはなったが、どうだろう。投下は新スレがいいのか?
760由良さんの暖冬:2007/02/01(木) 17:50:32.89 ID:PbNlTaAOO
冬は暖かく、その色を変える。雪の降らない山、氷の張らない湖。しかしながら肌に感じるのは冬そのものだった。
北風が寒く、過ぎていく。頬を切り、耳を痛め、手をかじかませながら。だけど、心は寒くない。
「由良さん」
「ん?・・・うん」
差し出されたキョンくんの手。その手を掴むと左手は右手と共に彼のポケットに吸い込まれた。
手が温かい。心が暖かい。キョンくんが居るから、ね。
「キョンくん」
「ん?」
「大好き」
「俺もですよ・・・」
寄り添う私達は更にお互いに近づく。

うん―――暖かい。

761愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:50:54.32 ID:KbXVFWEv0
長いなら新スレでやったほうがいいかと。
下手すると投下中にスレが終わるし。
762愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:51:15.99 ID:8Axti6j60
でも面白かったSSの話とかは保守がてらあってもいいよなーとは思う。
763愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:52:35.07 ID:AtEuK5ya0
まあ、本末転倒にならない程度に。
764愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:53:02.46 ID:8Axti6j60
今みたいにスレ終了間際とか。
765愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:53:16.38 ID:InN1toiKO
>>761
全然長くない。3レス未満なんだよ。
>>760
続きに期待
766愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:54:53.75 ID:n4mIZBuL0
過疎ってる時の保守代わりにお勧めを紹介し合ったりする程度なら良いかもね
行き過ぎて作品批評になるのは注意しなきゃいけないけど
767愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:55:27.01 ID:jEViRKqW0
>>765
3レスなら今投下!
768何作品溜めてるのやら ◆41zceJmqdc :2007/02/01(木) 17:55:28.25 ID:PbNlTaAOO
>>765
気が向いたら書かせていただきますね。
769愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:56:55.46 ID:InN1toiKO
>>767
よしわかった。ただえらくキャラ崩れなうえにちぐはぐしてるのはゆるしておくれ
770愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:57:49.68 ID:TGUZ2bzk0
>>768
あんたも多作だなw
ながとぅーみーの続きを頼む。マジで。
771カッコイイキョン君 最・終・回:2007/02/01(木) 17:58:37.74 ID:InN1toiKO
 仕事帰りの満員電車。ここでは色々な人を見る事が出来る。
学校が終わり、何処へ遊びに行こうかと楽しげに語り合う学生もいるし、疲れ顔でシートに身を任せ、深い眠りにつく会社員やお喋りに興じるご婦人方もいる…本当に様々な人間がここにはひしめき合っている。
社の人間は俺が電車通勤だと知った途端送迎用の車を出すと言ったのだが、俺はこうやって満員電車に乗って様々な考えを巡らせるのが好きなのだ。
例えば今度の社内一斉清掃はいつだったっけ。とか、キッチンの水漏れの修理を早くやらないとな。とか。
たが、今日はもっと別な事を考えていた。考えただけで顔がにやけてしまうような事を。

電車がお目当ての駅のホームへ滑り込み、しばらくして人々が車内から降りて行く。俺もそれにならい電車を降りる。ここからは徒歩だ。俺は駅を出て歩き出した。
 駅を出て、15分くらい歩いただろうか。目の前で微かに光を漏らしているボロいシャッター。この中に今日俺が浮ついていた原因がある。
シャッターをガンガンとノックする。普通なら近所迷惑極まりないが、ここの周りに民家はほとんどないので気にしない。
「うるせえな。今開けるよ」
772カッコイイキョン君 最・終・回:2007/02/01(木) 17:59:09.61 ID:InN1toiKO
「よう」
そこに現れた人物に俺は軽い挨拶を交わす。
「なんだお前かよ」
「なんだとはなんだ。それより、出来てるか?」
ああ、今俺の顔絶対にやけてるわ。
「顔に出てるぞ」
やっぱりか? でもしょうがないだろ。楽しみにしてたんだ。
「だろうな。まあ立ち話もなんだし、入れよ」
そう促されシャッターを潜り、中へ入っていく。その中はオイルやらガソリンやらの匂いが充満していて、さらに俺の気分を高揚させる。
「そういやお前、会社から直で来たのか?」
「まあな。待ちきれなくてさ」
今日という日をどんなに待ち望んだか。お前にもわかるだろ?
「わからん事も無いが、嫁には言ってあるんだろうな?」
「それは……まだ、言ってない……」
「マジか!?」
「大マジだ」
するとこいつはいかにも「あちゃー」と言いたげな顔になった。
「いや、言おうとしたんだぜ? だけどなんか言い出せなくてさ……」
「それにほら! あいつ高い買い物は何かとアレだろ!?」
 俺必死に言い訳。カッコわりー。
「アレとか言われてもわかんねーっつの」
「だから今日家に着いたら言おうかなって……」
でも、やっぱ怒られるだろうなー。
773愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 17:59:37.33 ID:PbNlTaAOO
3レスでも支援

>>770
お願いされるのは初めてですなぁ嬉しいですなぁ。よろこんで書かせてもらいます。
774カッコイイキョン君 最・終・回:2007/02/01(木) 17:59:48.44 ID:InN1toiKO
「怒られんだろうな。きっと……」
ぐっ……。
「まあ何とかなるんじゃねーの? 学生の時もそうだったろ?」
「そうは言ってもなあ」
延々と愚痴られる俺の姿が脳裏に浮かぶ。軽く憂鬱だよほんと。
「ま、それは置いといて。見るんだろ?」
しかしコイツはそんな俺の憂鬱を軽く流し、白いカバーが被せられた『それ』に目を向ける。
「ああ!」
それだけですぐにまた気分をもちなおす。俺って単純な奴。
「一応希望通りにやっておいたぞ」
被せられたシートが徐々に捲られていく。それにつれて姿を現していく『それ』に俺は目を奪われていた。
「……すげぇ」
思わず溜め息が漏れた。ヤバい。カッコよ過ぎる。
「そうだろそうだろ! すげぇだろ!? 結構頑張ったんだからな!」
相変わらずお調子者なそいつの声は、もう俺の耳には届いていなかった。

 かつて少年の頃に憧れて、バイク乗りだった時でさえ忘れた事がなかった。
その憧れだったそれが、今俺の目の前にあって、俺にはそれが『早く走らせろ』そう叫んでいるように思えた。
「今日から、お前のもんだ」
「……ああ、ありがとな。谷口」
775カッコイイキョン君 最・終・回:2007/02/01(木) 18:00:09.70 ID:InN1toiKO
谷口からキーを渡され、俺は今日からの相棒に火を入れる。
スターターが回り、寝坊助なエンジンを目覚めさせる。完全に目覚めたエンジンはうねりを上げ、走り出す瞬間を待ちわびている。
「いい音だろ?」
「……最高だ」
懸念事項はあるが、今日はたぶん、最高の日だ。




「じゃ、また今度な」
それから谷口としばらく話をして帰ることにした。
「ああ。またな」
「まだ完璧なセッティングは出してないんだからあんま飛ばすんじゃねーぞ。何かあったらすぐもってこい」
「おう」
そして俺は帰路についた。しばらくして見慣れた町並みが近付いてきて、終点を知らせる。もうすぐ我が家だ。
ハルヒはどんな顔をするだろうか? 『返してこい』とは言わないだろうが、結構な金がかかってるし、苦い顔をしそうだ。
たが、俺は満面の笑みでこう言うのだろう。
「良い車だろ?」
と。





〜〜完〜〜

☆ご愛読ありがとうございました。先生の次回作にご期待下さい☆
776愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 18:01:05.41 ID:TSqI9/K40
http://life8.2ch.net/test/read.cgi/seikei/1170303604/l50

11 :名無しさん@Before→After:2007/02/01(木) 17:00:56 ID:79zOVEPU
610の顔
  ↓
http://imepita.jp/20070130/646980

13 :名無しさん@Before→After:2007/02/01(木) 17:40:16 ID:3L0JEDVb
http://imepita.jp/20070201/632850
目を大きくし、鼻、輪郭、眉をシャープにしたら術前よりもかなりマシに。
777カッコイイキョン君 最・終・回:2007/02/01(木) 18:01:05.46 ID:InN1toiKO
4レスだったじゃん!
ごめんね
まぁ保守がわりに軽く読んでくれ
778愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 18:01:13.89 ID:jEViRKqW0
GJ!
カッコイイぜw
779愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 18:01:53.30 ID:PbNlTaAOO
GJ!〜
780愛のVIP戦士:2007/02/01(木) 18:03:10.41 ID:TGUZ2bzk0
>>775
乙!確かにキョンと谷口の関係って
こんな感じなのかもね。つか谷口プロっぽいなw
781愛のVIP戦士
次スレは〜いつ〜なのぉ〜私はワカメじゃないのよぉ〜Fu〜