【ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」】

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1閉鎖まであと 9日と 15時間
長編投下の際の注意


・超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ! でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ?
・前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ……あの、お茶どうですかぁ?
・基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョンたんの恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ
・当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ……けど、今はほとんど皆無。別に時事ネタでなくてもいい…気にしないで
・キョン君、過度な性的描写はやめようね〜、タンスにエロビデ隠してるのハルにゃんに言っちゃうよ
・台詞や呼称等もその人物にとって違和感がないようにしてくれたまえ!もし不安であればまとめ等で確認することだな
・1レスには最大30行、全角で2048文字まで入るのね。文章構成の参考にして欲しいのね
・要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな
・次スレは950を踏んだヤツが立てれば立ててくれ!無理なら他のヤツらに頼むってのもありだな…すまん!ごゆっくり〜
・19時〜翌1時ぐらいまでにWikiを編集すると、重くて壊れたように表示されちゃうけど少し待てば直るから心配しないでね。じゃあ…死んで
・自分で投下した長編はなるべく自分で編集すること、わかった!?
・それじゃ、さっさと投下しなさいっ! いい? あたしを退屈させたら死刑だからねっ!


DAT保管庫.    http://haruhiss.xxxxxxxx.jp/

まとめサイト     http://www11.atwiki.jp/xgvuw6/

DATうpろだ    http://www.uploader.jp/home/harussdat/
雑談所(避難所) http://yy42.60.kg/haruhizatudan/
携帯用.       http://same.u.la/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/
2閉鎖まであと 9日と 15時間:2007/01/14(日) 05:56:56.82 ID:BADnXZAp0
====================
       業務連絡
====================

まとめwikiの管理人さんが多忙の為、まとめ作業が遅れます。
せめて長編だけでも負担にならないように、SS作者は自分でまとめていきましょう。

また、SS作者の方で自分ではまとめるスキルがない、携帯だからまとめられない、
夜間はwikiが重くて編集出来ないと言う方は

まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド
http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1153863162/ PC用 
http://same.u.la/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1153863162/ 携帯用

にまとめ要請を書き込んでください。

まとめ要請がないと、まとめボランティアの人たちも手出しは出来ません。
管理人さんの負担を減らす為にも是非よろしくお願いします。

【Wiki第2弾SS企画用アドレス】

・SS企画用検討スレ          http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1156605747/
・SS企画『冬』投下スレ・短編用   http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1165158602/
・SS企画『冬』投下スレ・長編用   http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1165158520/
投稿期限12月4日〜翌年1月14(21)日  発表1月中旬予定

文章のルールなどは、前回の企画のものを踏襲しておりますので、検討スレを参考にしてください。
また、質問・意見なども検討スレで受け付けております
3閉鎖まであと 9日と 11時間:2007/01/14(日) 09:19:55.77 ID:rAGjlMzPO
こっちはどうすんだ?
4閉鎖まであと 9日と 10時間:2007/01/14(日) 10:11:51.21 ID:gLXU4NZpO
sage
5閉鎖まであと 9日と 9時間:2007/01/14(日) 11:57:55.92 ID:UNak3xb+0
保守
6閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:23:46.29 ID:7o3QD9euO
ミッドナイト☆ナイスガイ!!!
<〇/
 ||
 <<
7閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:38:56.60 ID:9RZ0bQCiO
アゲ
8閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:40:16.74 ID:kfiqK9ChO
前1000に期待
9閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:41:03.54 ID:EI5UQ8xY0
>>1
とりあえず乙
前スレdatうpロダにうp完了
10閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:42:02.74 ID:pPuaAzNe0
1000 名前: 閉鎖まであと 9日と 8時間 [sage] 投稿日: 2007/01/14(日) 12:37:42.65 ID:VNp9GQmY0
1000なら「朝比奈みくるのクーデター」を本日中に投下する
11閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:42:05.59 ID:9RZ0bQCiO
よく見たらスレタイも違うじゃん…
12閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:43:00.71 ID:EI5UQ8xY0
>>11
あ、ほんとだ
たて直すか?
13閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:45:10.58 ID:kfiqK9ChO
まぁこのままでいいでしょ
どうせ三日後には新しいスレになるんだし
14閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:49:00.63 ID:UNak3xb+0
本スレage
151000:2007/01/14(日) 12:50:46.73 ID:VNp9GQmY0
やってしまった……orz
16閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:52:02.06 ID:EI5UQ8xY0
>>15
ガンガレw
17閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:52:55.76 ID:C8AcrMt50
最後の日まで眼鏡をうpするスレ
http://ex17.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1168741737/

自称長門似の米俵 ◆RICE...cAYさんが写メうp中www
カワユスwwwwwwwww

米俵 ◆RICE...cAYさんって長門にそっくりだね
ってカキコしようぜwwwwwwwww
18閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:58:13.55 ID:H7vCWlMAO
>>1
19閉鎖まであと 9日と 8時間:2007/01/14(日) 12:58:23.61 ID:EI5UQ8xY0
ところでwikiの外部リンクのページつながらなくね?
20閉鎖まであと 9日と 7時間:2007/01/14(日) 13:13:18.26 ID:iygiANy50
waすれてた
>>1
21閉鎖まであと 9日と 7時間:2007/01/14(日) 13:13:28.22 ID:l3HHhVIAO
>>15
無理せずがんばれwww
22閉鎖まであと 9日と 7時間:2007/01/14(日) 13:33:42.33 ID:z/y4nxg10
>>19
なんだかサーバーが落ちてるっぽいよ
23閉鎖まであと 9日と 7時間:2007/01/14(日) 13:42:13.28 ID:EI5UQ8xY0
>>22
d 暫く待てばいいか
24閉鎖まであと 9日と 7時間:2007/01/14(日) 13:54:25.08 ID:YogGxeYWO
age
25閉鎖まであと 9日と 7時間:2007/01/14(日) 13:56:51.22 ID:lY8W1GCCO
スレタイ違っても良いみたいだからプリンじゃなくてもいいよね
26閉鎖まであと 9日と 6時間:2007/01/14(日) 14:07:51.21 ID:9RZ0bQCiO
>>25
俺はそこは妥協出来ないな。
27閉鎖まであと 9日と 6時間:2007/01/14(日) 14:20:14.75 ID:kfiqK9ChO
ハルヒ
28閉鎖まであと 9日と 6時間:2007/01/14(日) 14:25:11.31 ID:gwaffR6r0
うんこちんこまんこくりすとす
29閉鎖まであと 9日と 6時間:2007/01/14(日) 14:30:45.57 ID:3fEHqh+D0
追いついた保守
30閉鎖まであと 9日と 6時間:2007/01/14(日) 14:43:23.03 ID:kfiqK9ChO
ほしゅ
31閉鎖まであと 9日と 6時間:2007/01/14(日) 14:55:06.93 ID:iygiANy50
ほっほっほっほしゅ
32閉鎖まであと 9日と 5時間:2007/01/14(日) 15:06:36.38 ID:APR2iKbJ0
保守
33閉鎖まであと 9日と 5時間:2007/01/14(日) 15:06:44.86 ID:gLXU4NZpO
age
34閉鎖まであと 9日と 5時間:2007/01/14(日) 15:22:20.36 ID:YogGxeYWO
ほっしゅるんるん
35閉鎖まであと 9日と 5時間:2007/01/14(日) 15:42:07.96 ID:30t5uopl0
消えていく日々の人待ちホシュ
36閉鎖まであと 9日と 4時間:2007/01/14(日) 16:02:25.66 ID:gLXU4NZpO
ぬるぽ

37閉鎖まであと 9日と 4時間:2007/01/14(日) 16:08:32.02 ID:c7GrDk/D0
ガッ!

38閉鎖まであと 9日と 4時間:2007/01/14(日) 16:15:21.67 ID:YogGxeYWO
●<マッガーレ



ガ
|
39閉鎖まであと 9日と 4時間:2007/01/14(日) 16:27:21.52 ID:H7vCWlMAO
スゴッ!
ゴ

!
40閉鎖まであと 9日と 4時間:2007/01/14(日) 16:42:33.63 ID:kfiqK9ChO
41閉鎖まであと 9日と 4時間:2007/01/14(日) 16:43:06.44 ID:gLXU4NZpO
ぬるぽるぬ
る る る
ぽるぬるぽ
42閉鎖まであと 9日と 4時間:2007/01/14(日) 16:55:59.23 ID:H7vCWlMAO
ガッ!ッガ
ッ ッ ッ
!ッガッ!
43閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:03:41.19 ID:YWveQRaO0
sage
44閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:06:21.27 ID:iygiANy50
mage
45愛のVIP戦士:2007/01/14(日) 17:06:35.51 ID:VNp9GQmY0
hage
46閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:08:58.62 ID:iygiANy50
kage
47保守という名の妄想:2007/01/14(日) 17:10:00.18 ID:evETyuM6O
ハルヒ「今日は皆でコスプレしてそのキャラになりきるわよ!」
キョン「唐突だな。するのは構わんが、まともな衣裳じゃなければ却下するからな」
ハルヒ「大丈夫よ、服はまともなのばっかりだから。あ、一緒に入ってる原稿をしっかり読ん
でキャラ作りもしなさいよ」


ハルヒ「キョン! あたしと一緒にご飯を食べなさい!」
朝比奈「き、キョンくん、一緒にお弁当食べましぇんか!」
長門「情報統合思念体より神託があった。貴方は私と一緒に食事するべき」
古泉「彼女達は問題ないですね。普段のキャラとの差がほとんどありません。問題なのは僕達
ですか……」
キョン「お前はそれなりに共通点があるからまだいいさ。眼鏡かけてても違和感ないしな。俺
なんて似ているのは立ち位置だけで、あとは別人だぞ。おいハルヒ、いくら何でも俺の配役は
無理がありすぎだ。無難な役に変えてくれ」
ハルヒ「うるさいうるさいうるさい! あんたにはその役がピッタリなの!」
朝比奈「大丈夫ですよぅ。キョンくんならきっとできます」
長門「その役は貴方にしかできない。私も貴方が演じる事を望んでいる」
古泉「との事です。さて、どうなさいますか?」
キョン「わかったわかった。そこまで言うならやれるだけやってみるよ。えーっと、じゃあ、
ご飯は皆で一緒に食べようか」
48閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:12:30.13 ID:kfiqK9ChO
支援
49閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:12:48.97 ID:RMEFmu4j0
しゃっふぉう?
50閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:12:59.06 ID:iygiANy50
支援だ!
51閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:13:58.02 ID:H7vCWlMAO
シャナ?
52閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:16:29.41 ID:RMEFmu4j0
ああシャナか
53閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:27:57.23 ID:kfiqK9ChO
hohoho
54閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:39:29.61 ID:H7vCWlMAO
朝倉さんが黒幕な電波受信
似たのってたくさんあるだろうな
保守
55閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:39:54.08 ID:3tPD0WYl0
おまいらちんぴくさせてやる(携帯可)
http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date30855.htm
56閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:53:51.29 ID:3x8cuMy3O
つ保守
57閉鎖まであと 9日と 3時間:2007/01/14(日) 17:57:09.08 ID:5UzKgfiq0
元々2レス程度に収まるはずだったプロローグが
気が変わって修正始めたらいつの間にか本編になって
文章量が予定の2倍くらいに膨れ上がった上に
いまだに書き終わらないから困る
58閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:06:24.64 ID:BEPgc93P0
保守
最近wiki軽くなったな
59閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:14:04.94 ID:YogGxeYWO
>>57
ガンガレ
60閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:14:17.18 ID:xTMtJZcB0
やあ(´・ω・`) また逢ったね

このレスを見た君たちだけに特別に2ch閉鎖を回避できるおまじないを教えてあげよう

http://game11.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1168603940/


↑のスレに


ニートワロスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


と書き込むんだ
61閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:17:34.62 ID:+0px3mKQ0
>>57
それ、ある意味羨ましいよ…

俺なんてどう頑張っても5レス分が限界w
62閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:19:12.91 ID:VNp9GQmY0
>>61
横からすまんが、短くまとめられる人の方がうらやましいな。
気がつくと100レス級の話になってしまうし。
63閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:21:01.96 ID:5UzKgfiq0
原作級に長いわけでもなく短くまとめられるわけでもなく
実に中途半端だぜ俺
64閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:22:47.79 ID:LsNQ+T6hO
文を長くするのは簡単だが、短くするのは難しいんだっけ
6561:2007/01/14(日) 18:25:39.55 ID:+0px3mKQ0
勘違いしないでくれw

俺は短くまとめるんじゃなくて「考えれない」んですw
66閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:42:06.92 ID:YogGxeYWO
中河「俺がメインの話が欲しいな!」




保守
67閉鎖まであと 9日と 2時間:2007/01/14(日) 18:47:31.03 ID:0c7vqfDQO
>>66
谷川「ごめんwwwそれ無理www」




妙にツボったwww
68消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 18:51:21.84 ID:sUrRN73v0
予告どおり10分後にパート19の投下をスタートいたします。
69支援されたんでビビッて急遽続きを書いた:2007/01/14(日) 18:54:53.92 ID:evETyuM6O
>>47
キョン「いくら美味い料理でも三人分はキツイ……少し休ませてくれ」
ハルヒ「ダーメ、時間無いんだからすぐ行動するの。じゃあ次は街に遊びに行きましょう!」
朝比奈「あの、お買物に付き合ってほしいんですけど……」
長門「図書館に行く事を要求する」
キョン「なんか普段と変わらないというか、単にいつもより俺がこき使われてるだけじゃない
か?」
古泉「いやいや、かなり羨ましい状況ですよ。三人の美少女に言い寄られているわけですから
ね。不満なんか言ったらバチが当たりますよ」
キョン「確かにそうなんだが……納得いかんぞ」
ハルヒ「何よアンタ、私達のお誘いが気に入らないって言うの?」
朝比奈「ダメですかぁ?」
長門「強制はしない。貴方の決定に従う」
キョン「あーもう、わかったよ。やると言った以上最後までちゃんとやる。男に二言はない」
ハルヒ「よろしい! それじゃあちゃっちゃと行くわよ。時間は待ってくれないんだからね」
キョン「はいはい。……なあ古泉、やっぱりコスプレの意味が無いような気がするんだが」
古泉「いえ、ちゃんとありますよ。彼女達の行動はあくまで『演じているキャラ』のものなん
ですよ。普段なら決して言えないような事でも、『演じているキャラ』らしい行動というオブ
ラートに包む事によって堂々と言えるわけです。それに彼女達が演じているのは普段の自分と
ほとんど変わらないキャラなわけですから、行動の差異がありません。ですから自分の願望を
ストレートに出してもまったく不自然ではない。さすがは涼宮さん。一見いつもの思い付きの
行動に見えて、実は完璧に計算された策だったわけですよ」
キョン「アイツは孔明かよ……。まあ、やるって自分から言っちまったんだ。責任とって最後
まで付き合ってやるさ」
ハルヒ「キョン何やってんの! まだ予定の半分も消化してないんだから急ぎなさい! もし
今日中に全部終わらなかったら、死刑なんだからねっ!」
キョン「やれやれ」


>>68wktk
7061:2007/01/14(日) 18:59:30.05 ID:+0px3mKQ0
>>69
乙!

>>68
wktk
71閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:00:12.56 ID:kfiqK9ChO
wktk!
72消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:00:46.31 ID:sUrRN73v0
――19――
「……」
 長門の無言である。
 俺は長門と和室で二者会談の真っ最中であり、朝倉の部室襲撃をたった今伝えたところである。
「朝倉涼子は、わたしの認識範囲内において現状維持をしていた」
 あぁ、俺だってそう思ったさ。だからこそ起きぬけにあいつがいたことには度肝を抜かれた。自宅にいる俺は、今頃
あのおかしな幻覚を見せられ始めた頃じゃないだろうか。とすれば、抜かれた魂は今頃電離圏あたりを浮遊中かもしれ
ん。
「どうすりゃいい。……異時間同位体だったか、あの成長した朝比奈さんも驚いていた。彼女が知っていたのとは違う
出来事が起きちまってる。どうもそういうことらしいんだ」
 長門は真摯な眼差しで俺を見ていた。俺も視線をそらさない。
 やがて、
「わたしは朝倉涼子からあなたたちを守る必要がある」
 そう言った。
「守る、って。お前はあの部室に向かうのか? やっぱり」
「わたしがその時その場所にいるのなら、同じ事をすべき」
 なぜだ。分かってて朝倉を迎え撃つなんてこと、する必要があるのか。
 俺がそういうと長門は首を横に振って、
「事実を知っていたから、わたしはその場にいたのだと思う」
 言われて俺ははっとした。
 朝倉はちゃんと俺の家に向かっていたし、このまま行けば放課後までの時間は俺の知っている通りに進行する。つま
り、ここにいる長門もちゃんとあの部室に向かう……ということか? だが、どうして?
「理由も推測ができる」
 長門は言った。四年前の長門を見た直後だから分かるが、こいつは本当にどんどん人間らしさを増している。きっと、
自分でも気付かないくらいの速度で。わずかに光を反射する瞳が一度瞬きで閉じられ、長門は言葉を続ける。
「わたし自身があなたたちを守りたいと望んだことがひとつ。そして、わたしと統合思念体が朝倉涼子に対し対抗処
置を施すだろうことがひとつ」
73閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:01:11.01 ID:+0px3mKQ0
支援
74消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:01:56.56 ID:sUrRN73v0
 長門は言葉を切った。そして俺はそのふたつの理由について考えを巡らせた。ひとつめは単純にして明快。だが、そ
れを言った人間が長門だってことに注目すべきだ。本当に頼もしい。いつの間にSOS団員のつながりはこんなに強くな
ったんだろうな。
 そしてふたつめだ。対抗処置、って何だ?
「統合思念体は独立した急進派の構成情報の解析をほぼ終了させた」
 そりゃマジか。ずいぶん早かったな。
「四年前、あなたの生体凍結を解除した際のデコード情報を基に解析した」
 なるほどと思う。確かにあれをやったのは朝倉だもんな。四年の歳月も俺やハルヒや朝比奈さんには一晩だが。
「そういや、あの時お前は何で眠ってたんだ?」
 まさか寝不足じゃないだろう。長門が眠そうにしていることなど見たことがない。
「視覚情報と聴覚情報を部分的に遮断する必要があった。本来、四年前の七夕以前にあなたたちと接触する予定はなか
った。だからあの時のわたしは最低限の対処のみを行った」
 なるほど。ってことはやっぱり、過去が変えられちまってるのか。
「その質問にわたしが回答することはできない」
 言葉じゃ説明できないからか。
「思念体から許可が下りない。時が来れば、あるいは」
「……そうか」
「そう」
 長門は俺を真っすぐ見たまま言った。俺は気を取り直して、
「それじゃ、この後のことについて話そう」
 そう言うと長門は一度目を閉じて、開き、
「あなたの協力が必要」
 本日一番のアクセントと共に、そう言った。

 その瞳に俺が人間とインターフェースとの違いを見い出すことは、できなかった。

75閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:02:08.95 ID:+0px3mKQ0
支援
76消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:03:17.05 ID:sUrRN73v0
「話し合いは終わり?」
 ハルヒの言葉である。先ほどまでと違って、何だか表情が明るい。
「もっとゆっくりしててもよかったのよ? ねぇみくるちゃん」
「はい。うふふ」
 一体二人で何を話していたんだろう。仮にも俺と長門のほうは今後の世界とか団とかその他の命運を賭けた超真剣な
対談をしていたのだが。
「内緒よ内緒。あんたは今自分がすべきことのほうに意識を向けてればいいの。そうよね?」
 こっくりとうなずく朝比奈さんだった。何か普通の友達みたいじゃないか。
「何よあんた。ひょっとしてやきもち焼いてるわけ?」
 ぐ。正直朝比奈さんと気兼ねなくお話できるポジションというのはかなり羨ましい。それは認めるさ。
「ふっふーん。譲らないわよん、あんたにみくるちゃんは勿体ないもん」
 所有物かよ。
「そんなことないわよ。いい? SOS団専属のマスコット兼イメージキャラ兼PR係は誰のものになってもいけないわけ。
アイドルなんかが誰か素知らぬ男とつき合い出したなんて言ったら、世間は幻滅するでしょ。そういうものよ」
 いつの時代の話をしてるんだお前、仮にも十代だろ。
「あら、過去の時代の遍歴を知ることも大切よ。何度も言ってるじゃないの」

 以降も十分単位でバカトークが続いたのだが割愛する。まぁ、ハルヒや朝比奈さんが元気なら何よりさ。坂中の犬が
へばっちまった時といい、この二人が揃い踏みで落ち込む様はかなりこたえるものがあったからな。

77閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:03:27.05 ID:+0px3mKQ0
支援
78消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:04:37.51 ID:sUrRN73v0
「行ってきます」
「行ってらっしゃい! 車に気をつけてね!」
 初めて聞く出掛けの挨拶をしてドアを閉めるのは長門であり、母親のようなことを言うのはハルヒであった。
 もう九時近い。完全に遅刻であるがいいのだろうか。まぁ、あいつなら何食わぬ顔で五組の自分の席まで行って着席
しそうではあるが。


 俺が北高へ向かうのは午後になってからなので、まだだいぶ時間があった。
 主不在で長門の家にいるというのもまた初めてのことで、俺とハルヒと朝比奈さんは残してあったゲームで春休みの
延長戦をしたり、たわいない話の続きを展開したり、二度目のお茶を飲んだり、また掃除をしたりして過ごした。
 今度は昼食の調理にも俺はつき合わされ、野菜の皮の剥き方ひとつでいちいちハルヒにツッコミを入れられなければ
ならなかった。くっそ、ツッコまれるのも料理も慣れん。鬼姑のいる実家で四苦八苦する嫁のような心境だ。


 昼食を終えて、時刻は午後一時をまわる。朝倉が部室に来る時間は午後三時四十六分二十二秒。それは大人版朝比奈
さんから聞いた時刻だ。予定では、朝倉を再修正するプログラムを俺の手で打ち込むことになっていた。そんな大役を
俺が請け負ってしまっていいのか、正直に言えばかなり不安だったのだが、長門が言うに他に適者がいないらしい。
 俺は長門から渡された銀色の短針銃を取り出して眺めた。グリップを握る手にわずかばかり汗が滲む。思い出すのは
去年の十二月十八日だ。変わっちまった長門に、俺はこれを撃つことができなかった……。

 相手が朝倉なら打てるのか? SOS団の日常を取り戻すために?
79閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:04:43.29 ID:kfiqK9ChO
支援
80閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:04:43.37 ID:+0px3mKQ0
支援
81閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:04:47.93 ID:0c7vqfDQO
支援
82消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:05:42.28 ID:sUrRN73v0
 今回、長門は朝倉の注意を引く役目を担っている。朝倉と相対するがゆえに、長門が再修正プログラムを打つわけ
にはいかない。チャンスはほんの一瞬だろう。バレてしまえばそこまでだ。長門に噛まれ例のナノマシンを混入されて
いる俺だが、どこまでその効力が有効かは長門自身にも分からないという。長門は、統合思念体による再改変という策
があることも提示してくれたのだが、それは俺が断った。別にかっこつけてるわけじゃない。ただ、誰かに頼ってばか
りなのはもうやめにしたいという俺自身の意思だ。バカを見るのは俺になるかもしれないが、それでも……。

「キョン、大丈夫?」
 気がつけばハルヒが和室の襖を開けて顔を覗かせていた。俺は慌てて短針銃をしまった。ハルヒに見せるわけにはい
かない。こいつは朝倉がどれだけ危険な人間かについては、まったく知らないのだから。
「あぁ、何でもないさ」
 俺が言うと、ハルヒは笑った。そう。こいつから笑顔を奪うわけにはいかんのだ。
「さて、まだもう少し時間があるな。まだやってないゲームあったっけ」
 俺は襖に向かう。

「……」

「ハルヒ?」
 ハルヒは和室の畳に目を落としたままだった。
83閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:05:48.10 ID:+0px3mKQ0
支援
84消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:06:45.00 ID:sUrRN73v0
「どうしたんだ」
「……来て」
「ん?」
「ちゃんと、帰って来てよ……」
 俺はふたたびハルヒを見た。暗がりで表情はよく見えないが……。
 ハルヒの肩が、わずかに震えているように見えた。いや、真実見えただけだったのかもしれない。
 俺はあえて気軽な調子で、
「当たりまえだ」
 それだけ言って、ぽんと片手でハルヒの肩を叩いた。


 当たりまえだ。

85閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:06:57.85 ID:+0px3mKQ0
支援
86消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:07:57.49 ID:sUrRN73v0
「それじゃ行ってきます。留守番よろしく!」
 警察官の敬礼のような仕草で俺はハルヒと朝比奈さんの見送りを受けた。
「気をつけてくださいね」
 優しく言うのはもちろん朝比奈さんで、
「帰りに寄り道したらぶっ飛ばすわよ」
 いつもの調子に戻すのはハルヒである。
「ああ、しないさ」
 俺は多くを考えないことにして長門の家を後にした。
 制服の内ポケットに、小型短針銃の重みを感じながら。

87閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:08:03.29 ID:+0px3mKQ0
支援
88消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:09:12.45 ID:sUrRN73v0
 エントランスを抜けた場所には、またも黒塗りハイヤーが停車していた。
 運転手の新川さんがこちらを向いて会釈する。後部座席を見ると、今度は森さんも乗っているらしかった。
「坂を登るだけなのにすいませんね。わざわざ」
 俺はシートに身体を滑り込ませながらそう言った。
「念のためでございます」
 森さんは言った。もうすっかりこっちのスーツ姿の方に慣れちまったな。俺は黙礼する。
 いつも延々登っている坂道も、車となるとものの三分で学校まで着いてしまう。森さんや新川さんにもう少し何か
言うべきことがあったかもしれないが、俺は車を降りた。
「どうもありがとうございました」
「お気をつけて」
 森さんの言葉や表情から思惑を読み取ることはできなかった。
 黒塗りの車はUターンをして、もと来た道を戻っていった。

「さて」
 春の陽射しが校舎を包むように照らしている。何と穏やかなんだろう。今の心情とは合わないが。
 学校へ入るのにこれだけ厳かな気持ちになることもそうあるまい。今頃この中にいる俺は幻惑されて校内をそぞろ
歩きしているだろう。

 俺が校門へ足を踏み入れようとしたその時――、

「久し振りだな」

89閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:09:19.30 ID:+0px3mKQ0
支援
90閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:10:12.32 ID:3fEHqh+D0
支援
91消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 19:10:29.22 ID:sUrRN73v0
ここまでです。
20はPM9:00から投下します。そのままラストまで一気にいくかは様子見て決めます。
ただ本日中に全て投下しますので。
支援感謝いたします。
92閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:11:27.43 ID:3fEHqh+D0
乙!
引き続きwktkして待ってる。
93閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:11:32.09 ID:+0px3mKQ0
乙!
あと40レスぐらいか?
94閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:12:42.59 ID:sUrRN73v0
>>93
たぶんそのくらいです。……一気に行ったほうがいいですかね?
95閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:13:07.12 ID:30t5uopl0
乙!
やばいな明日の試験落とすわ確実にw
勉強に身が入らんww
96閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:21:54.71 ID:+0px3mKQ0
>>94
一気で良いっしょ。
1時間かからないし。
97閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:34:09.64 ID:0c7vqfDQO
>>94
乙!
好きにすればいいと思うぞ。
確か、間を開けて展開予想して欲しいとか言ってなかったっけ?
98閉鎖まであと 9日と 1時間:2007/01/14(日) 19:43:12.51 ID:kfiqK9ChO
age
99閉鎖まであと 9日と 0時間:2007/01/14(日) 20:04:37.70 ID:UY2OzpN5O
ウィキみてきたが
HOME・・SWEETHOME
いいな
こころがあったかくなるわ〜。
作者さんつづきかかないかな..
100閉鎖まであと 9日と 0時間:2007/01/14(日) 20:21:39.52 ID:kfiqK9ChO
保守
101閉鎖まであと 9日と 0時間:2007/01/14(日) 20:23:34.21 ID:3fEHqh+D0
俺も待ってる保守
102閉鎖まであと 9日と 0時間:2007/01/14(日) 20:35:43.74 ID:YogGxeYWO
保守
103消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 20:52:08.45 ID:sUrRN73v0
10分後より最後まで投下します。
3パートなので各パート間に5分挟んで投下します。
そこまで長引きはしないと思いますが、どうぞお付き合い下さいませ。
104閉鎖まであと 9日と 0時間:2007/01/14(日) 20:55:53.42 ID:iygiANy50
wktk〜
105閉鎖まであと 9日と 0時間:2007/01/14(日) 20:56:14.51 ID:30t5uopl0
まってました
106閉鎖まであと 9日と 0時間:2007/01/14(日) 20:59:54.52 ID:+0px3mKQ0
wktk
107消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:02:12.19 ID:sUrRN73v0
――20――
 警戒心を煽る声。聞き覚えのあるトーン……間違いない。
 俺は振り向いた。歩道にいたのは、あいつに他ならなかった。
 名前すら知らない、朝比奈さんとは別の未来人。二月に朝比奈さんを誘拐しやがった時以来だ。
「お前は!」
 叫ぶ俺に野郎はまたも敵意ある目を俺に向けていた。大人版朝比奈さんの話では、こいつらの勢力が朝倉の突然の奇
行に一枚噛んでいるとのことだった。
「どうだ、楽しんでるか? 既定事項を脱した突然のハプニングを」
 そいつは腕を組んで俺に笑いかけた。笑いと言っても古泉のような微笑ではなく、嘲笑の部類に含まれる笑みだ。
 俺と奴の距離は四メートルほどだった。仮に殴りかかっても、十分に避ける余裕がある。それにこいつならばためら
いなく時間跳躍の瞬間を俺に見せて逃げおおせるかもしれない。
「これがお前の仕業だってのは本当か」
 俺はつとめて冷静に言った。いけ好かない未来人は、嫌な感じに口の端を歪めて、
「あんまり僕たちをなめてもらっちゃ困るからな。今回は仕掛けさせてもらった。無論、僕だけの力ではないが」
 ここで一度顔を横向け、目の端で俺を見ると言った演出じみた仕草をして、
「僕個人にしてみれば、朝比奈みくるが困る事態ならば何でもいいんだよ。お前には分からないだろうがな」
 こいつ……。腹に力が入ってくる。だが、こんな奴に構っている場合ではない。俺は部室に行き朝倉を止める必要が
ある。
「何の用だ」
 今回は俺一人で朝比奈さんはここにいない。矛先を俺に変更したのか?
「ふん」
 未来人は片手の平を上向けて嘆息し、
「広域宇宙体のインターフェースが暴れようが、僕にはどうでもいいことだ」
 だったら今すぐ帰れ、俺にとってお前は邪魔以外の何者でもない。
108閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:02:44.22 ID:+0px3mKQ0
支援
109消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:03:25.75 ID:sUrRN73v0
「なぁ、あんた」
 そいつは顎を引いて俺を上目がちに睨み、
「こっちに着く気はないか?」
 咄嗟に意味を測りかね、俺は訊き返す。
「何を言ってるんだ?」
 未来人は邪悪な笑みを緩和させた。それで友好的な表情のつもりか。もう少し練習した方がいいぜ。
「既定事項を満たすことに疑問を持ったりしないのか? お前は。朝比奈みくるが固定しようとしている未来がどんな
物かも知らないで、よく言いつけを守れるものだな」
 この言葉に、俺はわずかばかり動揺した。確かに、誘拐事件が終わった後大人版朝比奈さんから受けた説明は、肝心
なところが不明瞭で、俺はまだ配って歩けるほど疑問を抱えている。なるほど。そりゃ主人の言いつけを守る忠犬のよ
うに見られても仕方ない。
 ……だがな、
「他の人間が傷つくことを平気でできる奴のところに行くつもりなんかねーよ」
 俺は言った。こんな状況じゃなきゃ出てこない言葉だ。だが本心でもある。俺が凍りついちまった時の朝比奈さ
ん(小)と、夜中に訪ねて来た朝比奈さん(大)の涙は、そう簡単に忘れられそうにないしな。
 未来人は十秒ほど無感動な目を俺に向けていたが、やがて、
「ふん、そうかい。そう言うだろうと思ったが訊くだけ訊いてみたんだ。まぁいい、あんたがどう答えようが変わりは
ない」
 何がだ。俺が意味の分からないことを延々喋るのはやめろ。古泉が消えちまっててもお前の出番はねぇぜ。
「ならせいぜいあの宇宙人と地球防衛に躍起になるんだな。……お前とはまた会うこともあるだろう。だが、もうさっ
きの質問はしない。それを覚えておけ」
 どうでもいい、さっさと失せろ。
110閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:03:38.57 ID:+0px3mKQ0
支援
111消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:04:40.66 ID:sUrRN73v0
「じゃぁな。キョンくん?」
 最後に俺のあだ名を言ってそいつは歩道を歩いていった。こんなに嫌味ったらしくこの名を呼ばれたこともまたない。
 だが今はぐだぐだ考えている場合ではない、時間に余裕を持って来たが、思わぬところで余計な茶々が入った。

 考えることはすべてが終わってからでいい。
 今はすべきと分かっていることを実行するだけだ。


 難しいのはタイミングだった。朝倉が部室に入った直後にドアの前に立てるくらいが望ましい。
 朝倉は部室に入った後、わずかな時間ではあるが俺たちと会話していたはずだ。つまり、最低でもその時間の範囲内
に侵入し修正プログラムを撃つ必要がある。かなりタイトだ。もしもしくじったらどうなるかとか、そんなことを思い
悩むのも後回しで構わない。俺は朝比奈さんから借り受けた電波時計を見た。午後三時二十七分……四十秒。

 俺は待機場所を決めると、校舎に向かって歩き出した。

112閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:04:49.27 ID:+0px3mKQ0
支援
113閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:04:53.04 ID:iygiANy50
しええん
114消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:05:42.05 ID:sUrRN73v0
「……君さぁ、何でうちの部室にいるわけ?」
「すいません、ちょっと黙っててもらえますか」
 俺が身を潜めておく場所に選んだのはコンピ研の部室であった。ここからならば渡り廊下の様子が一望できるし、頃
合いを見計らってすぐにふたつ隣の文芸部部室へ駆け込める。
 もしかして入部希望かい? とか、新しいゲームができたんだけどテストプレイに付き合って、とか言う部長氏の
方を見ずに、かつやんわりとレトリックによる拒否をしつつ、俺はベテランの現場刑事による張り込みばりに集中して
廊下の監視を続行していた。うーん、双眼鏡と牛乳とあんぱんが欲しくなるね。視力悪くなくてよかったな。
 時計をチラチラと眺め、一階と二階の廊下を睨み、十分ほどが過ぎようとした頃……。
「……あれだ」
 間違いない、俺が歩いている。何つう足取りだ。一歩、また一歩、何かに引っ張られるようにして奇妙な挙動で前進
している。確か部室にどうしても行かなきゃならない気がして、朝倉を振り払って走ったつもりだった。
 だが実際はどうだろう。何とも情けない体たらくである。あれが俺なのか。谷口も真っ青のマヌケっぷりだ。
 などと考えている間に過去の『俺』はこちら側、旧館部室棟校舎にふらふらと吸い込まれて消えた。まもなく階段を
上って文芸部部室に到着するはずだが、まだ俺が向かうのは早計だろう。続けて朝倉が現れるはずだ。
 窓から外を見て奇矯なリアクションを取り続ける俺に、コンピ研の面々が痛い人に対する視線を送っている気配がし
たが、振り返っている余裕はない。
 朝比奈さんの時計で午後三時四十五分になろう頃――、

「来たか――」
115閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:05:51.57 ID:+0px3mKQ0
支援
116消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:06:42.79 ID:sUrRN73v0
 朝倉である。二階の渡り廊下を悠然と歩いている。その姿はさながら文化部の友人に会いに行く道中といった風情だ。
 俺は朝倉がこちらの校舎に入るのを見届けると、急いでコンピュータ研究部部室のドアに走り寄った。わずかにド
アを開けて様子を伺う。ここで俺が飛び出しちまうようなことになれば最悪である。階段を上るとすぐに部室が並んだ
廊下に突き当たるから、俺の姿は即座に目撃されてしまう。ナノマシンがどこまで効くかは分からないしな。
 俺はコンピ研の部員全員の動きを目で制しておいて、床に這うようにしてドアの下方から片目を覗かせた。
 間もなく朝倉が何食わぬ顔で階段を登ってきた。一歩、一歩……。朝倉はSOS団のアジトたる文芸部部室前で足を止
め、一呼吸置いてからドアを開け……中に入る。
 直後、俺は起き上がってコンピ研の部室内を睥睨し、
「どうもお騒がせしました。それじゃ失礼します」
 と誰を見るでもなく言って再度廊下の様子を確認し、誰もいないと分かると外に出た。扉を閉める。

 二秒でふたつ隣の扉の前に移動して、聞き耳を立てる。

「……と早く効果が切れちゃったのね。所詮テストプログラムだったかぁ」
117閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:06:50.20 ID:+0px3mKQ0
支援
118閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:07:47.47 ID:kfiqK9ChO
支援
119消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:07:57.96 ID:sUrRN73v0
 朝倉の声だ。間違いない、俺の聴覚と思考だけがおぼろに復活した頃だ。
「キョ……キョンくん! だ、大丈夫ですかぁ〜、うぅぅぅ、しっかり、ふえっ、えっ」
 朝比奈さんの声。突然俺がやって来てぶっ倒れりゃパニックにもなろう。
「朝倉、あんた一体」
「下がっていて」
 ハルヒと長門の声だ。今気付いたが、長門の声は普段のこいつからは考えられないくらい大きく、はっきりしている。
「キョンくん……うぇぇぇぇえええん」
 朝比奈さんが泣いている。悔しいが、今の俺に彼女を慰めることはできない。
「彼に何をした」
 長門の声が響く。この音量ならドアに耳をつけていなくても聴こえるかもしれない。
「何て言ったらいいかしらね。端的に言えば幻覚を見ていてもらったんだけど、どう? 涼宮さん、彼が心配? 大丈
夫よ。死にはしないから」
 朝倉が言う。あの薄笑いが見えるようだ。俺は人通りがないことを確認して、懐から白銀に輝く短針銃を取り出した。
「朝倉……これ、あんたがやったの!? ねぇ、有希! これって一体……」
 ハルヒが当惑した声を上げる。この時のこいつはまだ、まったく何にも分からないのだ。
「あなたは黙っていて。彼の傍を離れないこと。朝比奈みくるも離さないこと」
 鋭く研いだ金属のような長門の声。
「キョン、しっかりして! 目を覚まして! ねぇ、キョン!」
「無駄よ。そいつは完全に意識も神経機能も失ってる。分かりやすく言えば植物状態かしらね」
 記憶にある通りの台詞を聞きながら、俺は銃の安全装置を解除する。これの扱いは長門に繰り返し説明されたからな。
120閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:08:14.69 ID:+0px3mKQ0
支援
121消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:09:18.42 ID:sUrRN73v0
「さ、決着をつけましょうか。今回は絶対に負けないからね」
 朝倉の冷たい声。俺は状態を確認する。……廊下に人はいない。大丈夫だ。
 銃を持つ手に汗が滲む。

「長門さん、よろしくお願いします」

 これまで一度もしなかった大人版朝比奈さんの声だ。これから俺とハルヒと朝比奈さん(小)を連れて四年前に遡行
するはずである。

 ――。

 一瞬、静寂が室内を支配した。少なくとも俺の耳には何も届かない。
 俺が固唾を飲むと間もなく、
「ふふふ……。そっか、そういうことなの。へぇ。……長門さん? あなた、この一年でずいぶんお友達が増えたのね」
 朝倉の声。今やはっきりと分かる。これは、裏の顔。
「わたしが時間跳躍できないって知ってたの? それともただの偶然かしら」
「あなたの異時間同位体は昨年五月二十五日の異常動作までは問題を起こさない。ヒューマノイドインターフェースに
時間跳躍能力を持たせることは不可能。この二点により彼らを時間移動させることが最善と判断した」
 長門は淡々と語ったが、かつての長門のような機械的側面は影をひそめていた。声だけでも分かる。

 今、長門有希は怒っている。
122閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:09:38.02 ID:+0px3mKQ0
支援
123消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:10:19.90 ID:sUrRN73v0
「さすがね。あなた、この部室にも防衛プログラムを施したでしょう。おかげで空間封鎖と情報封鎖ができなかったじ
ゃない」
 朝倉は相変わらずの優等生口調だ。俺はタイミングを計っていた。……長門が特定の単語を言ったら、それが合図だ。
「でももう大丈夫。あと一分足らずでこの部屋には誰も出入りできなくなるから。ね?」
 朝倉の言葉に俺は動揺した。……何だって?
「今度こそあなたを葬ってあげる。再構成もできないように」
 汗が伝う感覚。脊髄を通るような悪寒。
「わたしは必ずあなたの情報結合を解除する」
 長門の声だ。……だが何だ? 何か妙な感じがする。先ほどまでとは長門の声に表れる色が違っているような。それ
に朝倉の話が本当なら、そろそろ合図がないとまずい。


「空間封鎖、情報封鎖」
124閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:10:36.65 ID:+0px3mKQ0
支援
125閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:11:31.88 ID:iygiANy50
しえん
126消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:11:39.84 ID:sUrRN73v0

「……!」


 その言葉を告げたのは朝倉ではなく長門だった。

 俺は気付くと同時にドアノブを思い切りひねった。
「くそ!」
 開かない。
「長門! バカやろう!」
 俺はドアをガンガンと叩いた。
「何やってやがるんだ。無茶するなってあれほど言ったのに!」 

 長門は自分と朝倉だけを部室に閉じこめて、例の封鎖行為を行ったのだ。

 叩こうが、体当たりしようが、押そうが引こうが、ドアは開かない。
「どうして気付かなかったんだ……。どうしてもっと早く中に入らなかった……」
 自分を叱責するように、俺は自分の頭を部室のドアに打ちつけた。

「どうして……」
127閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:11:51.52 ID:+0px3mKQ0
支援
128消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:12:19.64 ID:sUrRN73v0

「……」

 思い出したのは、渡り廊下での会話だ。

 あの日、長門は自分のことを責めていた。
 古泉がいなくなってしまったのは自分のせいだと言っていた。

 あの時に、何としても言ってやるべきだったのだ。


 ……お前は悪くないさ。自分を責めるのは、やめにしようぜ。


 たったそれだけでよかったはずだ。
 だが、もう遅い。

129閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:12:42.33 ID:+0px3mKQ0
支援
130消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:12:59.57 ID:sUrRN73v0

「長門……」

 大人版朝比奈さんは言った。この時間に介入の手が入っている、と。
 それを証明するかのように、未来人野郎が現れやがった。

 そして、結果がこれか……?

 長門は、朝倉に勝てるだろうか。

 俺は、また何にもできないのか。


「キョン!」


 ……誰かが俺を呼んでいる。

 俺は顔を上げて、声のしたほうを見た。
 その姿を視認する直前に、声が誰のものであったかに気がついた。
131閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:13:06.51 ID:+0px3mKQ0
支援
132閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:13:29.71 ID:iygiANy50
しえん
133消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:13:40.12 ID:sUrRN73v0

「ハルヒ?」

 ハルヒが息を切らせて階段を駆け上がり、俺の元までやって来た。

 どうしてお前がここにいる。朝比奈さんの家にいろって言ったじゃないか。
「……はぁっ、はぁ。あたし、あんたと有希が……心配で」
 俺はお前が心配なんだよ。いいから帰ってろ。頼むから……。
 ハルヒはむっとして眉を怒らせ、
「あたしはね、キョン。もう知ることを恐れない。あんたや有希が何者なのかは分からない。けど、どんなことに
なってもあんたたちはあたしの大事な団員であることに変わりはない!」
 俺はハルヒを見た。
「お前……」
「ねぇ……有希はどこに行ったのよ?」
 俺は心臓を叩かれた気になる。長門は、この中で……。

「……」 

「なぁ、ハルヒ」
 俺はハルヒの肩をつかんだ。
134閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:13:54.65 ID:k8FCmjDVO
支援
135閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:13:55.36 ID:+0px3mKQ0
支援
136消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:14:29.80 ID:sUrRN73v0
「何よ」
 ハルヒは俺と視線を交わす。
「お前、さっきの言葉にウソはないか?」
「さっきの言葉って?」
 俺は一瞬間を取って、言った。
「もう知ることを恐れない、ってやつだ」
 ハルヒは小さく口を開き、また元の表情に戻って、
「えぇ。でも、どうして?」
 俺はドアノブに視線を落とした。
「ハルヒ、このドアを開けてみてくれ。どうしても開かないんだ」
 ハルヒは俺を先鋭芸術作品を鑑賞するような不可解な眼差しで見て、
「何で? カギかかってるの?」
「いや、別の理由で閉ざされてる。ものは試しだ、お前が開けてみてくれないか」
 ハルヒは解せない顔のままドアノブに手をかける。ひねる――。

 カチャ
137閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:14:38.02 ID:+0px3mKQ0
支援
138消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:15:29.63 ID:sUrRN73v0
 直後に轟音が響いた。

「長門!」
 開け放たれたドアから長門が飛ばされてきた。廊下の壁に当たって床に崩れ――、
「!」
 窓がない。光が射していない。まったくの灰色。振り返ると、そこに並んでいるべき部室の扉はまったくない。
「有希!」
 ハルヒは長門の元にしゃがみ込んだ。長門は外傷こそ見当たらないが肌や制服が灰や焦げだらけになっている。壁に
打ち付けられた衝撃からか気を失っていて、文芸部部室からは噴煙が立ち昇っている。

「あら、また邪魔する気なの?」
 煙の向こうに人影。声からしても間違いない。
「朝倉!」
 もうもうと上がり続ける煙の向こう側を見つめ続ける。
「有希! しっかりして! 有希!」
 ハルヒは長門に呼びかけ続けている。俺は長門製の銃を握り直す。
「ふふ。長門さんもいつの間にそんな情にもろい子になっちゃったのかしらね?」
 煙の中から朝倉涼子が姿を現した。傷ひとつ、汚れひとつない。
「朝倉! あんた有希に何をしたの!? どうしてこんな……」
 朝倉は愉快でしょうがないかのように笑みを浮かべつつ、
「本当ならとどめを刺すところだったのよ? あとは結合解除するだけだったのに、あなたたちときたらやっぱり邪魔
するのね。助けてもらったお礼のつもりかしら? お互いがお互いをかばい合うなんて、美談のつもり? わたしには
そうする理由がさっぱりだけど」
 やはりインターフェースには本当の意味での感情がないのだろうか。ただ、設定としての性格があるだけで。でなきゃ
こんなことはできないはずだ。長門……。
139閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:15:43.57 ID:+0px3mKQ0
支援
140閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:15:56.52 ID:k8FCmjDVO
支援
141消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:16:30.20 ID:sUrRN73v0

「ちょっと、有希っ!」
 ハルヒの声に長門を見ると、頭部から赤い液体が滴り始めている。
「無駄よ。呼びかけても。言ってみれば瀕死の状態だから。もともとわたしに敵うわけなかったのよ。長門さんも分か
っていたはずなのに。わざわざ二人きりになるような状況を自分から作るなんて、バカな子よね」
 その言葉に俺は腹の底が熱くなるのを感じる。
「……朝倉。満足か」
「キョン?」
 ハルヒが俺に呼びかけているが振り向かない。朝倉は俺に流し目のような視線をよこし、
「えぇ。そうね。おかげでこれまでより随分事態が進展したと思わない? 現に、涼宮さんがこの場にいるでしょう? 
急進派は喜んでいるわ」
「てめぇ……」
 今すぐ殴りかかりたいところだったが、長門すら片付けちまったこいつに生身の人間が勝てるはずもない。
142閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:16:38.82 ID:+0px3mKQ0
支援
143消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:17:01.17 ID:sUrRN73v0
 俺が拳を震わせていると、
「朝倉、……あんたが有希をこんな目に遭わせたの?」
 ハルヒの声が飛んだ。朝倉はハルヒに視線を移す。
「そうよ? でもそんなことはどうでもいいの。わたしが見たいのはあなたの今後だから」
 ハルヒは無言で長門をそっと壁に預けた。

 立ち上がって朝倉に近寄り――、

「ハルヒよせっ!」


「バカ!」


 バシッ!


 ハルヒは朝倉の頬をひっぱたいた。思いきり。
144閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:17:17.93 ID:+0px3mKQ0
支援
145閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:17:35.26 ID:x97OwIKH0
sienn
146消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:18:02.33 ID:sUrRN73v0

「…………」

 唖然として頬を押さえているのは朝倉である。

「…………痛い」

「当たりまえよ! ぶたれれば誰でも痛いのよ! あんたはそんなこともわからないの!」

 俺は呆気に取られてハルヒを見た。ハルヒは凄まじい形相で朝倉を真っすぐ見据えている。
 俺の見間違いではなく、その目はうるんでいた。

「どうして、わたしが……?」
「有希を傷つけたからよ! あたしは自分の団員を傷つける奴は、例え相手が宇宙人だろうが異世界人だろうが許さな
い!」

 ハルヒが怒る姿はこれまでだって数え切れないほど見てきた。大体その矛先や捌け口は俺であり、それがゆえに俺が
一番こいつの怒る姿を見ているかもしれない。だが、そんな俺でも今回のハルヒの怒り方は圧巻だ。
147閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:18:11.83 ID:+0px3mKQ0
支援
148閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:18:52.41 ID:iygiANy50
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149消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:19:03.00 ID:sUrRN73v0

 ハルヒは、本気で怒っていた。

 こんなのを初めて見た。もしかしたら、こいつ自身今までこんなに怒ったことはなかったのかもしれない。
 ハルヒは両手を握って全身を震わせたままで、
「有希の痛みはこんなものじゃないわ! あんたにはどうしてそれが分からないの!? どうしてこんなことをするの!」
 一番驚いているのは俺ではなく朝倉のようだった。まだ片手で頬を押さえている。まるで今、『痛み』という感覚を
初めて知ったかのように。
「どう……して……?」
「朝倉」
 ハルヒが鋭く言った。
「……なに?」
 朝倉は呆然として、かろうじてハルヒの方に首だけ向けた。

「有希に謝りなさい」

「……?」
 朝倉は言われた言葉の意味が分からないかのように立ちすくんでいる。
「…………どうして?」
「有希を傷つけたからよ!」
 ハルヒは朝倉に再度歩み寄って胸ぐらをつかんだ。一方の俺は目の前の光景が今だ信じられず、またハルヒを止めよ
うと思いもしなかった。朝倉は両腕を完全に弛緩させてハルヒにされるがままになっている。
150閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:19:24.76 ID:+0px3mKQ0
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151消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:20:03.22 ID:sUrRN73v0
「あや……まる……の? わたしが……?」
 俺はここでようやく長門のことを思い出した。振り向くと長門は壁にもたれて、首にも力が入らずくたっとしている。
頭部から流れた紅色は、頬を長々と伝って今や首に至っている。即座に俺は長門の傍に寄った。
「長門! 大丈夫か、しっかりしろ!」
 長門はぴくりとも動かない。両目は閉じられ、白い肌はあちこちが黒くすすけている。
「長門……」
 何の表情もない長門に俺は呼びかける。
「しっかりしろ。目を覚ましてくれ……」
 どうしていつも傷つくのは俺じゃなくてこいつなのだろう。なぜ俺はのうのうとしてて、こいつは動かないのだろう。
「頑張りすぎなんだよ、いつも、いつも」

 俺は長門の小さな顔を抱き寄せた。

 たくさんの出来事が蘇ってくる。俺が初めてこいつと会った部室での横顔。最初の市内探索で図書館に連れて行った
こと。その後に聴かされた長い話。野球。七夕。カマドウマに孤島。夏の浴衣姿。映画撮影での魔女姿。そして年末に
見せた幻の笑み……。
152閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:20:13.32 ID:+0px3mKQ0
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153消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:21:04.28 ID:sUrRN73v0

「ちくしょう……」

 長門、死ぬなよな。絶対に五人揃ってSOS団を元の状態に戻すんだからな。
 お前は、元通り部室で本を読むんだからな。
 なぁ長門。俺はまだお前に借りてない本が山脈ほどもあるんだよ。
 一生かかっても読みきれないくらいだ。
 そうだ、図書館にも行こう。しばらく行ってなかったもんな。
 何万時間だって付き合ってやる。
 だから……だから。頼むから、目を開けてくれよ。返事は無言だって構わないから。
 目を閉じたままでいるのだけはシャレになってないぜ。長門……。

「ご……めん、なさ、い」

 途切れ途切れの声が微かに耳に届いた。長門じゃない、朝倉の声だ。見ると、ハルヒが後ろで眼光を飛ばしている。
 直後、朝倉は膝から力を抜かして床に手をついた。

「ごめん……なさ、ごめんなさい……!」

 声が震えていた。これまで俺は朝倉の二面性をさんざん見てきたが……こんなのは初めてだ。
154閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:21:15.99 ID:+0px3mKQ0
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155消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:22:04.60 ID:sUrRN73v0

「わたしは……。わたしは……っ」
 朝倉は片手で長い髪をかき上げるようにして押さえる。一体何が起きたのだろうか。ハルヒが朝倉をひっぱたいてか
ら、こいつは明らかに様子が違う。

「ごめんなさい……」

 朝倉涼子は、泣いていた。

「長門さんに、わたし……何てこと……」
 床にうずくまるようにして朝倉は顔を両手で覆った。ハルヒはそれを複雑な表情で見守っていた。さっきまでの止め
られない火山噴火のような烈火の如き怒りは、もうそこにはないようだった。

「……分かってくれたのね」
 ようやくハルヒが言った言葉だった。

「本当に、ごめんなさい……」
156閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:22:19.38 ID:+0px3mKQ0
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157閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:22:43.80 ID:kfiqK9ChO
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158消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:23:20.36 ID:sUrRN73v0

 俺が見とれている中、ハルヒは素早く朝倉に近寄ると片手を差し出した。
「さ、立ち上がって。有希を病院に連れて行かなくちゃ。急いで」
 朝倉はハルヒを忘我の面持ちで見上げていた。
「え……?」
「ほら、早く!」
 朝倉は言われるままハルヒの手を取った。ハルヒは朝倉の手を引くと立ち上がらせる。

 その瞬間――、

「これは……」

 廊下が元通りになっていた。
 部室のドアも窓も元通りに整列している。文芸部室の窓には夕陽が射している。
「キョン、救急車お願い」
「あ? ……おう」
 俺は半ば無意識のうちに119番をプッシュしていた。

「長門さん……ごめんね……。ごめん」

 朝倉は夕方の廊下で、ひとり泣き続けていた。

159閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:23:30.82 ID:+0px3mKQ0
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160消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:23:45.12 ID:sUrRN73v0
パート20は以上です。
5分後から投下再開します。
161閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:24:15.03 ID:+0px3mKQ0
乙。
162閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:25:26.47 ID:iygiANy50
乙!
wktkがとまらないぃぃぃぃぃぃ!
163閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:25:48.98 ID:kfiqK9ChO
sugeeeee!!
164消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:28:45.84 ID:sUrRN73v0
――21――
 その後、北高校門前に救急車がやって来て、生徒達が騒然とする中、長門を担架を持った救急隊員が運んでいった。
 ハルヒはそれについて行き、しかし俺は同じ事をするわけにいかなかった。

 何人かの人物に呼び止められたからである。
165消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:29:16.29 ID:sUrRN73v0


「朝倉涼子からインターフェースとしての性質が消滅しています」

 その言葉を告げた人物は、現場に駆けつけた教師や生徒連中の中にいた、喜緑江美里さんだった。
 彼女からこの手の言葉を聞くのは初めてだったが、そんな些末なことに驚いていられるほど今の俺に余裕はなかった。
「同時に、統合思念体が交渉の糸口を探っていた独立急進派そのものの存在も感知できません。まったく突然に、
『ある』状態から『ない』状態になりました。原因や理由は不明です」
 俺は即座にひとつの出来事に思い当たった。……ハルヒが朝倉にビンタをかましたあの瞬間である。他に何があろう。
あの時に何かが起きたとしか説明がつかない。あいつは朝倉の宇宙人属性と親玉の存在をまるまる消しちまったってこ
とか……?
 喜緑さんはいつの間にか現れて、またいつの間にかその場からいなくなっていた。事実のみを告げて。
 朝倉は教師に連れて行かれたらしい。俺も同様に事情を訊かれる立場になるはずだったのだろうが、続けて声をかけら
れた人物によってそうはならなかった。
166閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:29:23.16 ID:+0px3mKQ0
支援
167閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:29:26.70 ID:kfiqK9ChO
支援
168消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:30:31.69 ID:sUrRN73v0

「こちらへ」
 その声は森さんのもので間違いなかった。どさくさに紛れて堂々と校舎内に入ってきているが、彼女の服装と容姿は
教育実習中の大学生にも見えてしまうのだから不思議である。
 森さんは俺をかつて古泉が自分の正体を明かした野外テーブルまで連れて行き、偶然にも同じ場所に俺たちは座った。
俺はそのまま、古泉の場所に森さん。
「古泉が戻ってまいりました」
「そりゃ本当ですか?」
 即座に訊き返してしまった俺である。
 森さんは頷いて、
「つい先ほど本人から連絡がありました。古泉は自分が数日に渡り存在していなかったいたことについて、既に知って
いるようでした。今、彼の自宅に迎えの車を出しているところです」
 おそらく、俺とあの閉鎖空間で二回に渡って話をしたからだろう。あれはやはり幻ではなく、古泉にもちゃんと記憶
として残っていたのだ。……とすれば、古泉を呼び戻したのもハルヒなのだろうか?
 俺の表情が曇っていたのか、森さんは、
「どうやって戻ってきたかについては、本人にも思い当たりがないようです」
 と、静かに告げた。
「我々のほうでこれより本人確認を行いますので、わたしもここで失礼させていただきます」
 森さんは滑らかな所作で礼をすると、裏門の方へ歩き去った。俺はしばし呆然とその姿を見送っていたが、すぐに
気を取り直す。俺も病院へ向かうべきだろう。
169閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:30:53.31 ID:+0px3mKQ0
支援
170閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:31:00.50 ID:kfiqK9ChO
支援
171閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:31:35.39 ID:iygiANy50
しえん
172閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:31:41.15 ID:TiNTE/440
支援
173消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:31:46.82 ID:sUrRN73v0
 ……と考えて、そういえば搬送先がどこの病院なのか知らないことに思い至った。この分だと俺や中河が入院した、
謎の背後関係のあるあそこで間違いなさそうだが。
 俺はとりあえず靴を履き変えることにした。実を言うと今までずっと学校の上履きで行動していたのだ。上履きの
まま四年前に行ってそのまんまなんだからしょうがないだろ。靴底は今や泥まみれかもしれないが、あえて見ないこ
とにしよう。
 半分ラリッたようになっていた『俺』は四年前に行き、ここにいる俺が現在の人になったのだから、俺がこの靴を
履いて問題はないな、と思いつつ下駄箱を開けると――、

 見覚えのある封筒が俺の運動靴の上に乗っていた。

 俺は靴を履き変えると急いで校門前まで行き、周囲に人がいないのを確認して封を切った。
 丸っこい文字で「キョンくんへ」と始まり、以下、文面はこのようになっていた。
174閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:32:02.88 ID:+0px3mKQ0
支援
175閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:32:09.06 ID:TiNTE/440
支援
176閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:32:44.47 ID:TiNTE/440
支援
177消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:32:47.52 ID:sUrRN73v0


  今あなたがいる時間平面に直接干渉することに制限がかかってしまったので、手紙にて失礼します。
 はじめに長門さんですが、彼女は無事です。あなたも縁のあるあの病院の、306号室にいるはずです。長門さんの家
 にいるわたしと一緒にお見舞いに行ってあげてください。
  今回のことについては、わたしたちの方でもまだ調査すべきことが沢山残っています。なので、今詳しい話をする
 ことはできません……ごめんなさい。『分岐点』のどちらが選ばれたのか。それも含めて、いつかお話できる日が来
 ると思います。今は、あなたの近くにいる人たちのことを気遣ってあげてください。
 それでは、また。

 朝比奈みくる

178閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:32:57.01 ID:TiNTE/440
支援
179閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:32:59.89 ID:+0px3mKQ0
支援
180閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:33:05.17 ID:kfiqK9ChO
支援
181閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:33:29.27 ID:TiNTE/440
支援
182消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:33:48.35 ID:sUrRN73v0
 三回ほど読み返し、俺は息を吐いて手紙を封筒に戻した。
 ……これで終わりなのだろうか?
 どうも納得がいかない。結局、一体誰がこんな展開を仕組んだんだ? あの未来人野郎を初めとした、『敵』が全
てを意図したのだろうか。もしそうだとして、この結果は満足のいくものだったのか? 朝倉が普通の人間になっちま
ったらしいことも含めて、「観測結果」なのか? 一体それを見てるのはどこのどいつだ。出てきやがれ。
 やり場のない怒りのようなものが俺の中で渦を作っていた。何だろう。俺は何に腹を立てているのだろう。

 ……今回、俺はあまりに多くの人が傷つき、悲しむ姿を見てしまった。
 その原因が何なのか、はっきりしない。俺が釈然としないのは、おそらくそこだ。
183閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:33:59.77 ID:+0px3mKQ0
支援
184閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:34:01.58 ID:TiNTE/440
支援
185閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:34:33.32 ID:TiNTE/440
支援
186消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:34:53.83 ID:sUrRN73v0

 いつか、決着をつけてやる。

 相手が誰かなんて知らん。
 だがな、俺は暗い話なんてまっぴらごめんなんだ。

 だからこそ、このままじゃ終われないだろ。

「……そうさ。待ってろよ、この野郎」

 俺は手紙を持っていないほうの手を固く握ると、病院を目指すべく、通学路になっている長い坂道を駆け下りだした。

187閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:35:09.40 ID:kfiqK9ChO
支援
188閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:35:10.69 ID:+0px3mKQ0
>>185
1レスに1回でおk
189愛のVIP戦士:2007/01/14(日) 21:35:11.58 ID:TiNTE/440
支援
190消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:35:29.58 ID:sUrRN73v0
パート21はここまでです。
5分後にラストパートを投下再開します。
191閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:36:38.62 ID:kfiqK9ChO
ついにラスト!
192消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:40:29.73 ID:sUrRN73v0
――22――
 それから二週間後の話になる――。

「どうも、こんにちは」
「よう。どうだ、調子は」
 俺はいつものように部室の椅子に腰掛けた。
「僕ならばいつもと変わりありませんよ? ……もっとも、あの日戻ってきた直後にはすでに元通りでしたけれどね」

 帰ってきたSOS団副団長、古泉一樹の姿は今日もそこにあった。
193閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:41:28.69 ID:+0px3mKQ0
支援
194閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:41:31.57 ID:kfiqK9ChO
支援
195消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:41:34.74 ID:sUrRN73v0

 俺は部室を見渡す。まだ女子勢は誰も来ていないようだ。窓の外では、五月の陽射しがまだ高いところから校舎を照
らしていた。鳥があちこちでさえずっている。いやぁ、のどかだね。
「その後どうだ、何か分かったことはあるか?」
 俺が何気ない調子で言うと、古泉は両肩をすくめ、
「いいえ、さっぱりですね。僕に分かることと言えば、閉鎖空間がこの二週間現れていないことくらいでしょうか」
 そうなのか?
「えぇ。言ってませんでしたっけ。涼宮さんの精神が落ち着いている証ですが、ここまで波風のひとつも立たず静かな
のは、僕も始めての経験です」
 長門が退院して以降、ハルヒはみるみるうちに元の調子を取り戻していたが、古泉がいなくなっていたことに端を発
する一連の騒動については、古泉お得意のイイワケを聞いた以上はまったく言及しようとしなかった。あいつはどう思
っているのだろう。
「これは僕の推測ですが」
 古泉は用意しようとしていたゲームを広げる手を一度止め、
「涼宮さんは予感しているのでしょう」
「何をだ」
 俺の問いに古泉は、
「これで終わったのではないということをですよ」
 簡潔に答え、俺の反応をうかがうように微笑みフェイスを崩さない。
「むしろ涼宮さんにとっては今回の一件が始まりだったのかもしれません」
 俺は押し黙った。古泉の言葉には色々含むところがありそうな気がした。いつもこいつは俺に対し人を食ったような
発言をすること多々だったが……さて。今度はどうだろう。
196閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:41:51.00 ID:+0px3mKQ0
支援
197消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:42:55.62 ID:sUrRN73v0
「始まり、ね」
 俺はブレザーの下のシャツをぱたぱたと扇がせて言った。五月に入ったばかりだが、すでにして二枚着で暑い。こ
りゃ今年も猛暑になりそうだな。
「あなたは超常現象の一端を涼宮さんに認めさせました。しかし、我々のこの現実は未だ変容していません。それはなぜ
だと思いますか?」
 こういう時のお前はいつもながら楽しそうだな。
「あいつがそれだけ慎重になってるってことか」
 俺は答える。微笑みくんのままの古泉は、肩肘をテーブルに着けて上体をわずかに乗り出して、
「もはや涼宮さんは、かつてのように無闇やたらと現実たりえぬ現象を求めてはいないのです」
 そう言えば今年に入ってのハルヒは、不思議そのものよりも探索する行為自体を楽しんでいたように見えたな。
「その通り。つまり彼女は、今まで自分が超常現象との間に無意識に保っていた距離を正確に把握しているのですよ。そ
こへ自ら踏み込むようなことをすれば、今のSOS団が無くなってしまう、と。そう感じているのでしょう。……あくまで
僕の推測ですが」
 どこまで信じていいんだ、それ。ある日突然通行人が火を吹くようになったとか、機械に頼らず空を飛ぶピーターパン
が現れるとか、そんなことになるのはまっぴらごめんだぜ。
「おや、突然でなければいいのですか? 僕ならばじわじわ広がっていく方が気持ち悪く感じそうですが」
 ……人の揚げ足を取るようなことを言うな。
198閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:42:57.02 ID:k8FCmjDVO
支援
199閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:43:00.63 ID:+0px3mKQ0
支援
200閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:43:45.65 ID:kfiqK9ChO
支援
201消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:44:00.73 ID:sUrRN73v0

 かちゃ。

 部室にドアが開く音がする。
「……」
「よう長門」
「……よう」
 あのな、挨拶は猿真似すりゃいいってもんじゃないぜ。仮にもお前は女の子なんだからな。
「こんにちは」
 んん。まだきこちないが、とりあえずよしとしよう。
「そう」
 長門はとてとてと窓際に歩み寄り腰を下ろすと、文庫を取り出して読み始めた。
 いつもの風景。そのピースがまたひとつ、おさまった。
 古泉は今まで何も話していなかったかのようにゲームの準備に取り掛かっている。……こいつは。ポーカーフェイス
のくせしてまるっきりゲーム弱いんだから話になってないな。やれやれだ。
202閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:44:13.46 ID:+0px3mKQ0
支援
203閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:44:24.56 ID:0c7vqfDQO
支援
204消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:45:00.93 ID:sUrRN73v0

 かちゃり。

 またドアが開く。その音だけで誰が来たか察知できるまでに俺の感覚も研ぎ澄まされてきた。
「こんにちわー」
 世界中の花を象徴するような笑みで部室に姿を現すのは、誰あろう朝比奈みくるさんである。途端に室内が色彩豊か
に塗り替えられる錯覚すら覚えるぜ。殺風景が世界レベルの名画に早変わりだ。
「すぐにお茶いれますねー。今日は何がいいですか?」
 のほほんと茶葉の缶を両手に持って可愛らしく微笑むその姿に、今日もまた俺は果てしない安堵を覚えるのである。
彼女の前にはどんな癒し効果のあるアロマもヒーリングミュージックも観葉植物もタジタジであろうことよ。
205閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:45:09.35 ID:+0px3mKQ0
支援
206閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:45:45.03 ID:rAGjlMzPO
支援
207消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:46:01.18 ID:sUrRN73v0

「紅茶がいいわ!」

 バァン! とドアを開けて同時にのたまったのはハルヒ以外に誰もいない。お前、登場のタイミングとかもう少し考慮
しろよな。
「何よ。あたしはいつだって自分の来たいと思う時に来るのよ。悪い?」
 いいえ何にも悪くございやせんこりゃ失礼いたしました。
「腹の立つ棒読みだわ。あんた、もうちょっと素直になったほうがいいわよ。今さらだけど」
 その言葉はお前に言われたくない台詞暫定ナンバーワンだ。
 俺がそう言うと、ハルヒはしばしアヒル口になった後で、嫌な感じの笑顔となり、
「わかった。それじゃこうしましょう。……古泉くん、ちょっとどいてくれる?」
「かしこまりました」
 古泉は過剰なまでに丁寧なお辞儀をして、テーブルマナーを忠実に遂行する貴族よろしく席を立った。アホか。
 ハルヒは古泉がいた席に座ると、用意していた将棋の駒の続きを並べつつ、
「今からゲームで三本勝負よ。負けた方が勝った方の言うことを三つ素直に聞く事。いいわね?」
 マジか。つかそれ俺に拒否権ないだろ。すでに言うこと聞かされてるのは俺になるじゃねぇか。
「うっさいわね。さぁ始めるわよ!」
 このところずっとこんな具合でエンジン回転率200%のハルヒであった。これがさらに上昇しないことを祈る他ない。
208閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:46:13.36 ID:+0px3mKQ0
支援
209閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:46:15.45 ID:kfiqK9ChO
支援
210消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:47:16.62 ID:sUrRN73v0
「あー朝比奈さん、すみませんが俺も紅茶でひとつ」
 俺が注文すると、続けて残る団員二名が
「僕もお願いします」
「……コーヒー」

 長門、空気を読めよ! 朝比奈さんの仕事が煩雑になるじゃないか。
 すると長門は澄んだ瞳をすっと俺に向けて、
「人間素直がだいじ」
 と、反論の余地がないことをびしっと言うのだった。いや、そりゃそうなんだけどな……。そうではなくて、こう……。
「コーヒーですね。はーい、分かりましたぁ」
 初夏すら先取りしてヒマワリが咲く場所があるすれば、それは彼女の心に他なるまい。健気そのものの朝比奈さんはにこ
にことヤカンに水を汲みに行った。

「鼻の下伸びてたわよ」
 ハルヒの一言に俺は鼻の下を押さえ……ってまた引っかかった! ちくしょう!
「分かりやすいわよねぇ、あんたも。そういう意味では素直と呼べなくもないわ」
 その言い方からして既に素直でないハルヒは、盤面の駒を迷いなく動かした。ぐむ、早くもピンチかもしれん。
「長門さん、何かおすすめの本はありますか?」
 古泉が長門に話しかけた。長門は二秒ほど古泉を見上げると、
「待ってて」
 と言って立ち上がり、本棚に歩み寄った。古泉はあらためて長テーブルの端に椅子を出して腰掛けた。
 ……ま、こんな一幕もいいさ。と言うか、こんな何気ない風景こそが一番大事なのだ。
 俺はしみじみと思うのだった。

 SOS団での変わらぬ放課後を送っている俺は、世界一幸せかもな……と。
211閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:47:28.38 ID:+0px3mKQ0
支援
212消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:48:46.87 ID:sUrRN73v0
「はーい王手!」
 早っ! ちょっと待て! お前、何かズルしてないよな?
「するわけないじゃないの。バカ」
 俺が盤面を凝視して、どうして我が軍が没落の一途を辿ったのかについて考察を深めている間、戻って来た朝比奈さ
んはヤカンを火にかけ、長門は古泉に一冊のハードカバーを渡し、そして……

 かちゃり。

 またドアが開く音がした――。
213閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:48:56.02 ID:+0px3mKQ0
支援
214閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:49:16.94 ID:3fEHqh+D0
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215閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:49:20.55 ID:kfiqK9ChO
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216消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:49:47.93 ID:sUrRN73v0

 自信なさげに入ってきた彼女は、居心地が悪そうにうつむいてから、確かめるように言葉を発する。
「長門さん、本当にごめんなさい」

 朝倉涼子だった。
 室内にいる団員全員が注目する中、指名を受けた長門は思いのほか素早い動作で本を閉じて立ち上がり、朝倉の元に音
もなく歩み寄ると、肩にぽんと細っこい手を乗せた。
「いい」
「……えっ?」
 ぽかんとする朝倉に、長門は言う。
「もういい。怒ってない」
 口元に手を当てて戸口でどぎまぎする朝倉を、俺はしばらくぼーっと眺めていた。

 病室での一件が思い出される。

217閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:49:48.32 ID:k8FCmjDVO
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218消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:50:47.86 ID:sUrRN73v0
 ……………………


「朝倉涼子は普通の人間になった」

 俺は、呆然と長門の話に耳を傾けていた。

 こいつが目覚めたのは今の言葉を発した四時間ほど前のことで、俺は朝比奈さんやハルヒとその一報を聞いた。
 驚くほどに長門は何ともないようで、こいつの正体とさっきあったことの両方を知っている俺は、文字通り驚いた。
 医師の診察の結果(一般的な医者なのか甚だ疑問だが)異常や後遺症らしきものはどこにも見られなかったようで、
間もなく俺たちは面会を果たした。

 さんざん話した帰りがけ、長門に手首をつかまれ意味ありげな視線を飛ばされた俺は、わざわざ駅でハルヒたちと
別れた後に即リバースして今に至る。
219閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:50:59.64 ID:+0px3mKQ0
支援
220消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:51:45.45 ID:sUrRN73v0

「統合思念体から報告があった。急進派が消滅したというのも本当」
「まるっきり消えちまったのか?」
 その問いに長門は首を縦に振った。いくら長門の肯定とはいえ、そんなにおいそれと信じられる話ではない。何せ大
宇宙に広がる巨大な意識体である。その力をこれまで俺は何度か目にする機会があった。あんなことができる連中を、
消す?
「やったのはハルヒか?」
 長門はこくんと頷いて、
「現段階での思念体主流派の見解ではそうなっている。しかし、まだ調査の最中」
 長門は医師がついでのように打っていった点滴のついた腕を一度見てから、
「他の原因もあるかもしれない」
 そう言った。俺は続けて訊く。
「朝倉は……? あいつはどうなるんだ?」
「どうにもならない。彼女は今やインターフェースではない」
「消されちまうのか? あの、情報結合解除とか何とかいうので」
 その問いに長門は首を横に振った。
「彼女にもはや危険性はない。彼女がインターフェースに戻ることもない」
 それは確かか?
 この問いにも長門はこくんと頷いた。
221閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:51:52.43 ID:+0px3mKQ0
支援
222閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:52:44.72 ID:kfiqK9ChO
支援
223消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:52:48.67 ID:sUrRN73v0

 その誠実な眼差しを受けつつ、俺はこの一週間であったことを振り返る。
 最初にあったのは古泉が完全に消えちまったことで、それをやったのは独立した思念体急進派と朝倉だった。あの時
点ではまだ未来人の連中と手を組んでなかったのだろうか。次に朝倉は朝比奈さんを消すと言った。しかしそれは実現
しなかった。代わりに狙われたのが俺で、冷凍マグロ状態になった俺と混乱するハルヒ、朝比奈さんを連れて大人版朝
比奈さんが四年の時を遡った。彼女の話では朝比奈さんが消えなかったあたりから歴史が変わっちまってて、この時期
が『分岐点』に当たるって事だった。さっきの手紙によると、この時間平面について今調査がなされているらしい。こ
のへんは長門の親玉とも同じか。『機関』のほうもいずれ独自に調べ始めるのかもしれんな。

 そして、さっきの部室……。
 記憶遡行中だった俺はひとつのことに思い当たり、言った。

「なぁ、長門」
「なに」
 長門は俺が黙っている間カーテンのかかった窓の方を見ていたが、呼びかけに反応して顔をこちらへ向けた。
224閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:53:04.66 ID:+0px3mKQ0
支援
225消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:53:48.91 ID:sUrRN73v0

「お前はさ、もうちょっと休んだ方がいいぜ」
「……」

「あんまり自分を責めてばっかじゃ、疲れるだろ」

 そうさ。自分を責めさいなんだ結果、こいつは一人きりで朝倉と対峙することを選んだんだ。そして、俺はこいつに一
人きりで頑張れなどとは毛先ほども思わないのである。

「これは俺からの頼みだ。……この先は、もっと俺たちのことも頼ってくれ」
 長門は一度正面を向いてぱちりと瞬きし、顎をわずかに引いてから向き直る。

「わかった」
「約束だぞ」

 長門は黙って頷いた。
 澄んだ瞳が、きらりと輝いた。

226閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:54:02.14 ID:rAGjlMzPO
支援
227愛のVIP戦士:2007/01/14(日) 21:54:26.53 ID:TiNTE/440
支援
228消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:54:49.75 ID:sUrRN73v0
 ……………………


 そして今、朝倉は普通のクラスメートとして二年五組で日々を過ごしている。
 初め、俺やハルヒは朝倉と何も話せなかった。
 朝倉は俺たちのことを気にかけ、自ら距離を置いているようだった。途中長門が「問題ない」と経過報告するのを聞
きつつ、SOS団の日常が戻りつつ、谷口がタイミング悪く朝倉にコクってあっさり玉砕したのを適当に慰めつつ、若葉薫
る五月に突入したのである。

 ……俺?

 俺は朝倉を受け入れたさ。
 宇宙人だった朝倉の行動に罪はあっても、朝倉そのものは元々何にも悪くないだろ?
「罪を憎んで人を憎まず」じゃぁないが、問題が解決したのなら、もう余計なわだかまりは残さないのが楽しくやってい
くコツってもんだぜ。

 まぁ、当分は夢に色々とショッキングなシーンがでてくるのかもしれないが。……実際昨日の夢はハルヒのビンタシー
ン再上映だったしな。
229閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:55:08.05 ID:+0px3mKQ0
支援
230閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:55:44.12 ID:TiNTE/440
支援
231消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:55:50.47 ID:sUrRN73v0

「わたし……」

 戸惑う朝倉に、長門は片手を差し出した。
 朝倉は目を見開いて、
「長門さん?」
「握手」
 長門の言葉に、朝倉は口元に当てていた手を胸まで下ろした。
「えっ……」

「仲直り」

 よもや長門の口からそんな言葉が出ようとは。
 思わず駒を取り落としてしまう俺だったが、他の団員も同じくそれぞれの作業を中断しているらしかった。部室を妙
な静寂が包む。

 朝倉は数秒ほどぽかんとしていたが、やがておずおずと右手を差し出して、長門と握手を交わした。
 握手が終わると、長門はくるりと振り返って自分の椅子まで歩き、またすとんと座って読書を再開した。長門以外の全
員が未だ我に返れずにいる中、長門は静かにページを繰る。
232閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:56:11.79 ID:+0px3mKQ0
支援
233閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:56:30.83 ID:TiNTE/440
支援
234消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:56:51.36 ID:sUrRN73v0

 最初に言葉を発したのはハルヒだった。
「そう。……よかったわ。あんたたちの間に何があったのかは知らないけど、仲悪いままなのは誰だって後味悪いもんね」
 朝倉はまだぼーっと長門を見ていたが、やがて思い出したかのようにお辞儀をして、

「ありがとう、長門さん」

 そう言うとぱたんとドアを閉めて部室を後にした。


 部室を、清々しい涼風が吹きぬけた。
235閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:57:07.57 ID:+0px3mKQ0
支援
236閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:57:20.88 ID:0c7vqfDQO
支援
237閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:57:34.18 ID:x97OwIKH0
sien
238閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:57:59.78 ID:kfiqK9ChO
支援
239消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:58:08.66 ID:sUrRN73v0
「わっ、わ〜〜〜っ!」
 突然悲鳴を上げたのは朝比奈さんで、見るとヤカンがとうの昔に沸騰して湯が吹きこぼれていた。俺は微笑ましく彼
女が火を止める様子を見ながら、やっと心地がついた気がして安堵の息を吐いた。

「何みくるちゃんの後ろ姿眺めてんのよ、やらしいわね! さぁ二戦目よ二戦目!」
 ちょっと待て。俺はまだ負けた理由に納得してないぞ。
「何言ってんのよ。ほら、どう見たってあんた詰んでるじゃないの」
 ほら見ろ! ここに飛車があるじゃないか。……まだ助かるだろ?
「あんたがさっき取り落としたんでしょうが。あたしが見てないと思ったら大間違いよ。ズルしてんのはあんたじゃない!」

 イイワケが思いつかず窓辺に目をやると、丸テーブルを挟んで窓をバックに古泉と長門が静かに読書してやがる。
 ぐっ。無駄に絵になってるな。こいつらにフォローを期待するのはやめといた方がよさそうだ。

「よし分かった。まぁ待ってくれ。えぇとだな。……単刀直入に言えば、今の一手をなかったことに!」
「へぇ。いいのかしら? あたしの待ったは高くつくわよ?」
 ハルヒのニヤニヤ笑いに内心で俺もニヤニヤしつつ、いつもの風景に限りない安堵を覚えつつ、春の嵐はこうして晴
れたのである。
240閉鎖まであと 8日と 23時間:2007/01/14(日) 21:58:09.36 ID:TiNTE/440
支援
241消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 21:59:38.89 ID:sUrRN73v0
 ……そう。
 物語には、ハッピーエンドこそがふさわしいのさ。

 だろ?

「いくら払えばいいんだ。ジュース一回奢ればいいか?」
「学食五回分は堅いわね。あ、何よその顔は。嫌なら別にいいのよ? あんたの負けで」
「はーい、お茶が入りまし……きゃぁぁっ!」

 カチャン!

 ――部室の中の嵐は、年中無休で吹き荒れてるけどな。

「みくるちゃん! 今のいいわ、最高よ! もう一回やりましょう!」



(おわり)
242閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:00:08.15 ID:kfiqK9ChO
支援
243閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:00:24.50 ID:+0px3mKQ0
GJ!
名作だ!

お疲れさん!
244愛のVIP戦士:2007/01/14(日) 22:00:33.12 ID:TiNTE/440
GJ!!お疲れさん
245閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:00:50.03 ID:x97OwIKH0
お疲れ様
246閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:01:48.80 ID:3fEHqh+D0
GJ!!!
面白かったです。
最後ハルヒが何をたくらんでいたのかが気になる〜。
247消えていく日々、いつもの風景 ◆Etq65eJh4c :2007/01/14(日) 22:02:07.66 ID:sUrRN73v0
一時間にも渡り支援してくださってありがとうございます。
最大限の感謝と共にこの物語はこれでおしまいでございます。

思えば連載できる場所でなければこれだけ長い作品を仕上げるモチベーションは得られませんでした。
自分では結構納得できる仕上がりになったので、これに関してはあまり心残りもないです。

と、いうわけで、アナラーのみなさんはぜひアナルスレをご覧下さいw
248閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:02:24.93 ID:kfiqK9ChO
ぐぉぉ!なんて爽やかな終わり方なんだ!
朝倉さんよかったよぉ〜

乙でした!
249閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:03:27.02 ID:q7VhiWd+0
乙、面白かったよ!
250閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:09:21.71 ID:30t5uopl0
GJ!!
ものすごく楽しませてもらった。部長氏まで登場してまさにオールキャスト。

ただ風呂敷を広げまくったはいいが『結末は原作に丸投げ』感がいなめない(分岐点云々あたりが)のが
個人的に残念かもしれん。納得できる説明が欲しかったような…
中盤〜終盤の盛り上がりっぷりが凄かっただけに、オチによっては「新刊のハルヒメインてこれでよくね?」
くらいに思ってたので。

でもなんだかんだ、結成から一年経って、SOS団の結束がより深まって団員同士の仲が良くなってる、
そんな和むエンドはほっとした。
長期にわたってお疲れ様でした。
ともかくも素晴らしい作品をありがとう。
251閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:12:38.75 ID:sUrRN73v0
個人的には全て明らかにしてしまうのはいかにもなので意図的に完結っぽくはしませんでした。
自分なりに「SS超長編としてこんなものがあったら読みたい!」みたいなのを作った結果といいますか。
だから楽しんでくれればオールオッケーなのです。
252閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:32:14.57 ID:q7VhiWd+0
ところでお題募集して良い?
ちょっと行き詰った・・・。まただORZ
253閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:34:21.73 ID:iapXK7pB0
>>252
最強マルバツ計画
254閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:34:41.37 ID:L41HTDwO0
乙。とても楽しめたよ。
特にごはんin長門家なんてニヤニヤしっ放し。
面白かった。ありがとう。
255閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:36:53.10 ID:rAGjlMzPO
>>247
乙!
凄くドキドキしながら読んだ!
早くも次回作に期待w
256閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:36:56.20 ID:1d82WN3W0
>>252
蜂のように舞い
  蝶のように刺す
257閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:44:48.08 ID:q7VhiWd+0
>>253>>256
何だかどっちも頭にハテナマーク点灯中なんだけど
頑張ってみるよ。
258閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:49:03.14 ID:rAGjlMzPO
>>256がミスなのか、敢えてなのか分からない俺ガイル
259閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:53:36.52 ID:gc5pp6f/0
おおおおおおおおおおおおつううううううううううううううう!!!!!!!!
260閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:54:38.21 ID:YWPHIc3U0
●<乙です
261閉鎖まであと 8日と 22時間:2007/01/14(日) 22:57:12.15 ID:otiFmLNy0
おつかれ。そんだけ。
262閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:11:59.78 ID:gc5pp6f/0
保守
263閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:26:55.07 ID:gc5pp6f/0
ぬるぽ
264閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:28:36.56 ID:YEgulCLp0
265閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:30:36.86 ID:lGXFZ1TvO
乙!アナル共々楽しませてもらったよwww

大作の後ショボいが投下したいんだけど、今空いてる?
266閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:35:20.26 ID:q7VhiWd+0
大丈夫じゃないかな?
というわけでWKTK
267閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:37:56.61 ID:lGXFZ1TvO
じゃ、投下。
花嫁修行最終話って前の時言ったけど、
思ったより長くなったので今からのともう一話で終わる。
268続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:38:45.20 ID:lGXFZ1TvO
「前回までの粗筋。
始めはさながらヒーローの如く現れ、この私を身を呈して守った古泉一樹だが、
物語の進行と共にヘタレ化が進んでいる」
「それでは粗筋にしても粗過ぎます。やり直す必要があるでしょう。
…ヘタレ化は否めませんが……」
「了解した。やり直す。否、物語の進展云々についてはこの際問題にしない」
「もはや粗筋ですらありませんね」
「問題視すべきは…」
「…すべきは?」
「イ・イ・イツキン イツキンキン」
「また!?止め――」
「以上。自転車の上からお送りした」
「え!?マジでずっと乗ってたんですか、自転車に!?ぼくた――
――えええこれ浮いてる!?凍死とか補導どころじゃねええ!!」
「ペダルを踏み続ける行動が余りに単調だったため、この前に見た映画のワンシーンを再現した。
かごに、あなたのシャミセン二号を乗せれば完璧。
前フリが長い上に粗筋の役割を果していないので、早急に本筋に入ることが望ましい。
続々々・花嫁修行危機一髪、スタート」
「ぞくぞくぞく!?語呂悪っ!
ちょ、始まる前に降ろして下さいい!」
「ヘタレ」
「くっ…!
ああっ、前向いて下さい、でっででで電柱がっ!」
269閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:39:06.49 ID:kfiqK9ChO
支援
270続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:39:35.37 ID:lGXFZ1TvO
 家に着いて、冷蔵庫に買った物を詰め込んで、ソファに突っ伏す。
今日も疲れた…
長門さんは口をもごもごと動かして、十八番の情報操作だろう、
ぐちゃぐちゃに混ざった黄身と白身に沈む、砕けた殻を取り除いていた。
少しの間休んだおかげで復活した僕も、彼女と並んで台所に立つ。
「何か僕に手伝えることは」
「無い」
にべもなく長門さんはそう言って、フライパンに卵を流す。
卵が焼けるいい匂いが部屋に立ち込めた頃、
彼女のお腹から、くうくうとかわいらしい音がして、思わずへらっと笑うと、
「恥ずかしい」
と菜箸で居間を指した。
何もできないくせにぼさっと突っ立ってないで、
さっさと向こうに行け…と言う訳ではないのだろう。
今は、あの炭水化物ダイエットの時とは違い、はっきりと恥ずかしいと言っている。
ですが、長門さん。
室内に入った今でもニット帽を被っている方が恥ずかしいのでは…?
「気に入った。
次の市内探索はこの服装で臨む」
うーん…それは…
僕が選んだ服を気に入ってくれたのは素直に嬉しい。
嬉しいが、その服を着た長門さんを見て、
それも僕が買った物だとばれたら、涼宮さん達がどう思うか…
271続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:40:40.68 ID:lGXFZ1TvO
「あたしは人の趣味に難癖をつける気は無いわ……
有希がいいんなら、まあ、別に構わない、わ…よ」
「へ、へええー。
古泉くんって、そういう趣味があったんですか〜。
あっ、別に軽蔑なんてしてませんよ!
かわいいですね〜、長門さん。確かに似合ってます〜…」
「お前…
いや俺は何も言わん何も聞かんお前の趣味なんて知りたく無い。
長門がいいならそれでいい。
お前が無理矢理着せたっつうんなら話は別だけどな。
とりあえず…俺の妹には手え出すなよ……」
ありありと残りの団員の反応が見えて、僕は乾いた笑い声を漏らした。
どーしよー…
僕が選んだことを、長門さんが黙っていてくれれば問題はそこまで大きく無いのだが…
「できた。オムカレー」
どん、と皿がふたつ机の上に置かれる。
「召し上がれ」
「あ、いただきます」
豊かな匂いと鮮やかな彩色が思考を遮ったのをいいことに、
心配は後回しにして、スプーンを手に取った。

それまでずっと続いていた、スプーンと皿の底がぶつかる軽い音が止まった。
長門さんの分だけ。
しかし、彼女の皿には、まだ黄色と茶色の固まりが半分ほど残っている。
「あなたは」
272続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:41:23.04 ID:lGXFZ1TvO
ぽつり、と彼女は言葉を落とした。
「目の前に危機が迫っている人間がいたら、
利害の有無に関わらず、その人間の安全の為に動く、と。
あなたはそう言った」
一昨日の僕が言ったことを彼女は反復した。
今の状態に発展する羽目になった、今思えば小っ恥ずかしい台詞。
そしてこの騒動が起こる、全て引き金となった台詞。
「危機と呼べるレベルには至らない。
しかしそれはあくまで、私から見た彼女の状況。実際に彼女が感じていた不安は私には計り知れない。
私は母を見失い、泣いていたあの子の為に、行動を取ったつもりだった」
長門さんはここで言葉を切り、僕を見つめた。
僕のスプーンを運ぶ手も、もうとっくの前に止まっていた。
「あなたが私にそうしたように」
沈黙は数秒程だった。
「成長、されましたね…本当に」
273閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:41:51.94 ID:kfiqK9ChO
支援
274続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:42:12.00 ID:lGXFZ1TvO
まるで、今まで遠目にしか見ていなかった幼い子の格段の成長を目の当たりにしたような気分で、
多分穏やかなものになっているであろう目線を暫く注いでいると。
長門さんはニット帽を更に深く深く被った。
前が見えないんじゃないのか、と思うくらいに。
夕食も、その後片付けも終えて、まあ、また抵抗虚しく脱がされ、
浴槽に突っ込まれたりした。
長門さん、あなたはもう少し恥じらいを持ちましょう…
婿にいけない…え、お前がいくの?来てもらえよ、
と、どうだっていいことを一人で悶々と考えて、続けて入浴している長門さんを待つ。
しばらくして、脱衣所の扉が開いた。
よほど気に入ったのか、僕が貸そうとしたラフな服を彼女は受け取らず、
今日買った服をもう一度着ていた。
帰宅してパジャマなりに着替えると思うので、僕がとやかく言うことではない。
「忘れていた」
開口一番、彼女はそう言って、居間の床に正座した。
「何をですか?」
「耳掻き」
275閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:42:19.38 ID:rAGjlMzPO
支援
276続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:43:02.31 ID:lGXFZ1TvO
ぽんぽん、と彼女は太股を軽く叩き、こちらを見上げた。
片手には耳掻きが握られている。
……できればそのまま、ずっと忘れていて欲しかった…
ではお言葉に甘えて、と言う訳にもいかないので、
首をひたすら左右に振ることに専念する。
「結構です」
「良くない」
「いりません」
「いる」
素早く伸びた長門さんの手が、ぐっ、と僕の右手の中指を強く握った。
そこに巻かれていた包帯は、入浴前に解かれていて、今はむき出しだ。
そこっ、腫れてるとこだって!ワザとやってるだろ!!
「いた、い、です」
「耳掻き」
「いりません…っ」
ぎゅうううう
「すみません嘘つきましたー!
やっぱりお願いします!!」
「そう」
指を握る力が弱くなり、そのまま手を引かれ、彼女の太股に顔の側面を預けることになる。
なんだこれは。
彼女が無頓着でも、こっちはそうにもいかないのだから、
やっていいことと悪いことがあるだろう。
なんでスカート選んだんだよ…
と数時間前の自分を呪う。
知らねえよ、こんなことになるなんて普通思わないだろ。
と数時間前の自分は言った。
277閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:43:26.68 ID:9ZFpFJle0
新スレマダー
278続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:43:44.02 ID:lGXFZ1TvO
普通、なんて言葉は三年半程前に見限ったつもりだったのだが、そう言い訳せずにはいられない。
あーあーあー、早く終われー、と呪文のように口の中だけで呟く。
「終わり」
その甲斐あってか、意外と早く耳から棒が抜き出された。
しかし、ほっ、と息を吐いた途端、
「次、反対向いて」
ごもっとも…耳はふたつあるんだよな…
一度起き上がり、反対側の耳が上を向くように動く。
これはどこの少女漫画だ、と眉が寄る。
どこの誰だ、僕の忍耐力やら精神力やら理性やらその他諸々を試しているのは。
受けて立とうじゃないか、とひとりで意気込んでいると、耳から違和感が消えた。
「終わりましたか?」
そう聞いても、長門さんは黙ったままだ。
頭を持ち上げたが、彼女に手の平でこめかみを押さえつけられ、さっきと同じ体勢のままで動けない。
「寂しい」
僕は真上を向いた。
「ひとりは寂しい」
彼女は僕を覗き込んでいる。
今日会ったあの女の子の目は、母とはぐれたと気付いた時、きっとこんな風に揺れていたのではないのか。
もしかしたら、長門さんは、今、彼女自身を迷子の女の子に重ねているのかもしれない。
279続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:44:28.51 ID:lGXFZ1TvO
気のせいかもしれないが、もしそうだったら、いつもの笑顔になればいい。
「寂しい、ですか」
「そう」
「あなたにも、そんな感情があるんですね」
「そう。一人暮らしは寂しい」
「僕も寂しいです」
「泊めて」
またえらい所に話が飛ぶものだ。
「駄目?」
「駄目です」
「私はひとり。あなたもひとり。あわせてふたり」
「それはそうですけれど」
「なら決定」
どうやら僕に拒否権は無いらしい。
この強引さ、涼宮さんの影響だろうか。
「歯磨き」
やっと起き上がることができた僕に、歯ブラシが突き付けられる。
はいはい、ともう抵抗する気力も失せて、僕は口を開いた。
「長門さんはどうぞベッドでお休み下さい」
その格好のままで寝るのは窮屈だろうと、長門さんに簡単な服を手渡すと、
脱衣所に入ってあっさりと着替えてしまった。
耳掻きをする前にそのジャージを履いて欲しかった。
「あなたはどこで寝るの?」
「ソファで寝ます」
「押し入れの方が安眠できると思われる。
私はそこを寝床にしているロボットを知っている」
「いえ…あんな、尚更ネズミが出てきそうな所では落ち着いて眠れません」
280続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:45:09.62 ID:lGXFZ1TvO
「確かに…では何故?
何故彼は、彼の畏怖の対象であるネズミがより出現しやすい押し入れで眠るの?」
「さあ…直接、その猫型ロボットに聞いて下さいとしか」
押し入れから毛布と掛け布団を引っ張り出して、ソファに被せる。
その際、長門さんは押し入れの上の段に登って、二分程そこに寝転がってから、また直ぐに下りた。
「今度、自宅の押し入れで寝てみる」
好奇心旺盛だ。けれど、隠れ家みたいで少し面白そうかもしれない。…やらないよ。
「そこでいいの?」
ベッドに飛び乗った長門さんが聞いた。
「僕のことはお構いなく」
ソファと布団の間に潜る。
「一緒にベッドで寝たとしても、私は構わない」
「僕が構います」
そんなことをして、何かあってからでは遅い。
遅いって何が?いや別に何も。
「そう」
長門さんはこちらを見て、
「おやすみ」
と壁に張り付いた電灯の電源を切った。
「おやすみなさい」
ここで寝返りをうったら転げ落ちるな。
「古泉一樹?もう寝たの?」
「起きてますよ」
「そう」
夏ならともかく、冬だと少し冷えてしまう。
「古泉一樹、寝た?」
「起きてます…」
「そう」
281続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:45:51.55 ID:lGXFZ1TvO
仮眠だとそこまで気にならないが、長い時間寝るとなるとソファは少し固い。
「古泉一樹?眠った?」
「………」
「古泉一樹?」
「起きてますけど…」
「そう」
「あの、あまり声を掛けられると、ちょっと…」
控え目にそう言うと、しばらくの間沈黙が流れた。
「眠れないんですか?」
「違う。
あなたがそこにいるということを、あなたの声がすることで確認したかっただけ」
「そうですか…」
「そう」
閉鎖空間でも発生しない限り、一度床に就いてから家を抜け出すことはなかなか無いのだが。
きっと長門さんに備わっているであろう、サーモグラフィティ等の機能を使用せず、声での存在確認。
…そうだ。
「寝物語りをしましょうか」
「お話?」
「そうです。
おとぎ話とか、童話とか…怪談や、本当は恐ろしいグリム童話等はできませんが。
あなたが寝付くまでお話しでも」
「金太郎がいい」
「日本人の殆どが完璧に説明できないで有名な話できましたね…
えーと、昔々ある所に金太郎という名前の男の子が…」
「ある所ではない。物語の序盤の舞台は足柄山の山奥」
「ご存じでしたら僕が話す必要は無いのでは…」
「ある」
282閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:47:07.11 ID:kfiqK9ChO
長門カワエエ
支援
283続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:48:01.46 ID:lGXFZ1TvO
どこにその必要があるのやら毛頭見当つかぬまま、そこからは殆ど長門さんが物語の語り手になっていた。
これでは僕の方が先に眠ってしまいそうだ。
「そうして、坂田金時は酒呑童子を無事に退治した。と言い伝えられている」
「それで源頼光に褒美を頂いて、めでたしめでたし、ですか…」
「そう」
「そうですか…金太郎ってそんな話だったんですね…
眠い、です…」
「そう。私も」
「寝てもいいですか」
「いい。私も寝る」
その言葉に僕は目を閉じる。するとそのまま、くたっ、と眠れた。
色々と疲労が溜まっていたからだろう。その疲れが取れる筈の入浴が一番気苦労が絶えなかったから。

朝に強いとも弱いとも言えない僕を起こしたのは、先に目覚まし時計を止めた長門さんだった。
「起きて」
「ん」
「起きて」
「あーい…」
は、の発音ができず、それでもまだ布団の中でまんじりとしていると。
「起き――て!」
そう言いながら、助走をつけて腹に飛び乗られた。
284続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:48:48.04 ID:lGXFZ1TvO
「ぐあ!」
膝立てることねーだろ!!
と叫ぶのもままならなず、自由な上半身のみで飛び起きれば、
僕に跨がっている長門さんのドアップで、うわうわ言いながら背中がソファに逆戻り。
コントか、コントがしたいのか一樹。
「起きた?」
「ええもう最高の目覚めです。誰かさんのおかげで」
体の上から退いた長門さんに、いつもの笑顔で痛むお腹を押さえ、ほんの少しの嫌味を垂れる。
「あなたは痛くされるのを好むの?」
嫌味は通じなかった。
「なんでそう話がぶっ飛ぶんですか」
「好き?」
「違います!」
何時何処でどんな状況で誰からそういう知識を得ているんだ。
朝っぱらからなんて会話だ、と洗面所に向かおうとすると、
『ラジオ体操第一!』
全部やってたら確実に遅刻しますよそれ。

結局遅刻は免れた。
体操は昨日のものを全てやったので、
終わった頃には徒歩では到底間に合わないであろう時間だったのだが、
ここでもう一度自転車に出番が与えられた。
「早く乗って」
「ふたり乗りで登校はちょっと…教師の目もありますし」
「遅刻したいの?」
「そういう訳では…」
285続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:50:45.13 ID:lGXFZ1TvO
自転車置場でもたもたする僕を見兼ねてか、
長門さんはさっさとスタンドを撥ね上げてサドルに腰掛け、こちらを振り返って言い放った。
「乗らないと置いて行く」

チリンチリン
「おはよう」
「あら有希、おはよ!…え?古泉くん?」
「お、おはようございます」
チリーン
「おはよう」
「おう、はよっす長門…はあ?古泉?」
「おはようございまーす…」
チリンチリーン
「おはよう」
「あ、おはようございますー長門さ……ふえ?こいず…」
「おはようございま、す…」
恥ずかしい恥ずかしい目茶苦茶恥ずかしい。
こっち見ないで欲しい、っていうか、なんで今日に限って登校中のSOS団全員に会わなきゃならない。
それになんで今日に限って長門さんは全員に挨拶するんだ。
わざわざベルまで鳴らして。
長門さんは三人ともすいすい追い抜かしたが、荷台で僕が縮こまっていた事に関して、
必ず後で涼宮さん達に追及されるんだろうな、今から頭が痛い。
とひとりで思い悩んでいると、坂のふもとの自転車置場に着いた。
「ありがとうございました…」
「いい」
286続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:51:27.13 ID:lGXFZ1TvO
見上げただけでうんざりとする坂を徒歩で登る。
「今日の僕の下駄箱には何が入っているんでしょうね」
昨日の剣山を思い返す。画鋲どころでは無かったな…
「さあ。ちなみに昨日の私の下駄箱には消しゴムのかすが隅に置いてあった。
恐らくは、あなたに好意を寄せている女子生徒の仕業」
うん…なんてコメントしよう……。
長門さんは、怒らせたら恐そうな人学年第一位に輝いてるから…当然と言えば当然か。
「ショボい」
うん…。
その日の僕の下駄箱には、いや、上履きの中には、良く練られた納豆が入っていた。
ちょ、たんま。ほんのちょっとでいいから暴言吐かせて…一言で済むから。
せーの、
「食べ物に罪はないでしょうが!!」
「そっち?」
と、下駄箱から丸められた紙屑を取り出しながら言う長門さんを尻目に、
僕はあらん限りの力で上履きを廊下に叩き付けた。
ああ、むしゃくしゃする。こんな扱いを受けた納豆の気持ちを考えてもみろ。
誰のために美味しく加工されたと思っているんだ。
買ったお前のためだろう!?
「いや、ツッコミ所が違う」
長門さんはそう言い、廊下に転がった上履きを拾い、口をもごもごとさせた。
復活の上履き。
287続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:53:14.23 ID:lGXFZ1TvO
さて、特筆すべきは全ての授業が終わった放課後、文芸部室にての事だ。
今朝の件についての、他の団員からの追及どころでは無かった。
いや、追及はされるにはされた。一時間目が始まる前の休み時間、教室に襲撃しに来た涼宮さんに。
なので、長門さんが昨日に限り僕の家に泊まったことや、
晩ご飯を作りに来てくれていることは勿論伏せて涼宮さんには寝坊して遅刻か、
と慌てて僕がマンションを飛び出した所でたまたま長門さんが通りかかり、
彼女の善意による思い付きで一諸に自転車で登校することになった、と説明した。
今の状況に至った経緯を順に追って説明するのももどかしいので、過程は省かせて頂こう。
僕は両肩に物凄く強い力を加えられ、腰を掛けた姿勢のままパイプ椅子に押さえ付けられていた。
その力は長門さんの両手に込められていて、彼女は僕の目の前で仁王立ちをかましていた。
「えー…と」
「却下」
「まだ何も言っていませんが…」
「あなたが、先程私があなたについて指摘し、
そして今から私が、あなたに実行しようとしている事から逃げようとしているのは明らか」
「いや、そりゃ、逃げもしますって」
「遠慮は無用」
288続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:53:59.62 ID:lGXFZ1TvO
「遠慮だとか言う問題では無くてですね…」
「私は有機生命体で言う所の雌に分類される。あなたは雄。
よって私には、あなたが今置かれている状況を完全に理解する事は不可能」
「はあ、まあ、長門さんには無縁でしょうねえ…」
「しかし、今のあなたは辛そうに見える」
「別に、あなたが思っていらっしゃる程問題は…」
「ある。あなたのそれは痩せ我慢」
「我慢、って…」
「間違ってはいない筈。私は私の発言に責任を持つ。
『あなたの手が完治するまで私があなたの生活をサポートする』」
「はあ、まあ、そんな台詞もありましたね…」
「それはこうとも言える。あなたの手が完治するまで私があなたの右手の役割を担う、と」
「だからって、何もこんなことまで…」
「恐らく、あなたの右手が正常に使えたのであれば、
あなたはこの様に追い込まれるまで放置しなかった筈」
「ええ、まあ、それは確かに」
「しかし、あなたのその不快感も今日で終わり。私がその始末をする」
「いや、マジでいいです、って!僕はそこまで気にしていませんから!」
289閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:54:28.73 ID:72lRCfcw0
支援
290閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:54:29.34 ID:30t5uopl0
sien
291続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:56:10.02 ID:lGXFZ1TvO
「あなたが気にせずとも、私が気になる。もう限界」
「どうかお気になさらないでく――なんて物ポケットに入れていらっしゃるんですかあなたは!?」
「これは使用しないの?」
「しませんしません!
あなたは、何か大きな勘違いをされているようですね、止めておきましょう!ね!!」
「却下」
「却下って!あなたにこういった経験があるとは思えません!」
「確かに、経験は皆無」
「なら!」
「やる気があれば何でもできる。これは名言。偉大な人の言葉」
「ひっ、人には努力や根性のみで出来ることと出来ないことが…
とにかく一旦離して下さい」
「暴れないで」
「お断り、しますっ…手を退けて頂けませんか!」
「却下。これ以上は私が見ていられない」
「たんま!待った!結局それ使うおつもりですか!?」
「そう」
「いや、そんなの使ってやったら死にますよ!殺す気ですか!」
「男が細かい事でごちゃごちゃと…」
「男だからです!」
「わかった、文句は後程受け付ける」
「後では遅――」
「力、抜いて…」
「ちょ、わ、やめ、ぎゃああああ!!」
292閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:57:00.37 ID:72lRCfcw0
支援
293続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:57:07.59 ID:lGXFZ1TvO
ひゅっ、と長門さんの右手が振り上がり、僕は彼女の手の中にあるカッターナイフの刃先を避けるべく、
渾身の力で彼女の左手を肩から払い、椅子から転げ落ちた。
しかし、無様に尻餅をついた体勢の僕が立ち上がるよりも先に、彼女のカッターが頬にぴたりと添えられる。
「あなたに無精髭は似合わない」
「ひ……!」
皮膚に、刃の冷たく固い感触を感じ、さーっ、と血の気が引く。
カッターで、髭は、剃れません…!!
そう言おうとするが、後ちょっとでも刃が深く入れば、
間違いなく流血沙汰なこの状況に対する恐怖からか、
口がぱくぱくと空気を噛むだけで全く声にならない。
怪しげな機関に所属しているせいで、恐い目や痛い目には割と遭い慣れている筈なのだが、
それらと決定的に違っているのは、今の彼女に悪意は、それはもう全く、全然、これっぽっちも無く、
だからこそ、これ位で許してやらあ、ここまでやったら十分だろ、というラインが彼女には存在せず、
それがより恐怖を倍増させる。
更に、あんなに必死になって身に付けた護身術は、彼女相手には無効と来ている。
カッターとのゼロ距離に鳥肌を立て、僕は首をカッターから逃れる為に横に向けた。
294閉鎖まであと 8日と 21時間:2007/01/14(日) 23:58:49.42 ID:rAGjlMzPO
支援
295続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:59:00.40 ID:lGXFZ1TvO
ぎぎぎ、と効果音を付けても良さそうな程ぎこちなく。
今の今まで長門さんの説得に必死(しかもその説得も失敗への道まっしぐらだ)だったせいで全く描写していなかったが、
涼宮さん達も既にこの部室に居て、先程から僕達の会話を目の当たりにしているのだ。
そろそろ危険だ、と助太刀をしてくれても良さそうだと言うのに、しかし一向に誰も動く気配を見せない。
は、薄情者…。
傍観を決め込んでいる三人に、アイコンタクトで助けを求める。
S!
「しっかし、さっきの有希と古泉くん、会話だけ聞いてたらどえらい勘違いしそうだわ。
ね、みくるちゃーん」
O!
「ふえ?勘違いですかあ?別に何も…
ああ、長門さん、カッター振り回しちゃ、危ないですよぉ…でもわたしじゃ止められないし…
あれ?キョンくん、なんで震えてるんですか?」
S!
「刃物持った女子恐い腹えぐられるえぐられる朝倉止めて助けて嫌だ助けて助けて」
SOS送信ミス
………どっ、どいつもこいつも…!!
僕のSOS信号は誰にも届かなかったようだ。
いや、届くには届いたが、長門さんプラスカッターのコンボに立ち向かう勇気が無いのかもしれない。
僕だってそんな勇気は微塵も無い。
296続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/14(日) 23:59:46.50 ID:lGXFZ1TvO
が、このまま大人しくしていると輪をかけてとんでもない事態に陥りそうなので、
ていうか、高々無精髭くらいで一々血の海に沈んでいては、この先命がいくつあっても足りない。
「ああっ、あんな所にキュアブラックがっ!!」
「なぎさ!?」
この部室のある校舎とは反対側に建っている校舎の屋上を指差す。
長門さんがプリキュア好きだというのは初詣の際に知ったことだ。
窓の方へ、足はその場に貼り付けたまま、上半身のみを大きく後ろに捻った長門さんから隙をついて飛び退き、
ドアノブに手を掛ける。この部室から逃げた所で彼女が諦めてくれるとは思わないが、ここはすったもんだをするには狭すぎる。
しかし、こんな見え見えの嘘に上手いこと引っかかってくれたな…
「この様に」
「え?」
「私が騙されるとでも」
長門さんはこちらを振り返ることすら無く、刃物を握った右手を肩越しに覗かせただけだった。
…僕の目には少なくとも、そうとしか映らなかった。
次の瞬間には、すかーん!と音を立て、扉にカッターが突き刺さった。僕のブレザーの裾を巻き込んで。
「な……!」
297閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:00:28.60 ID:3HOcoLNh0
支援
298続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/15(月) 00:01:45.88 ID:LLNiWjE4O
手裏剣!?あんたは忍者か!とか、ぶっちゃけありえなーい、とか、言いたいことは無限にあったが、
歯の根が噛み合わず、かちかちと音を立てただけだった。
あれ、僕ここまでビビりだったっけ…?
あ…ヘタレ化……?
でもこれだと、どちらかと言うとヘボ化では…?
頭がぐるぐるになっている僕を当然無視して、長門さんはすたすたと近付き、カッターを扉とブレザーから引き抜いた。
大きく切れ目が入ってしまったブレザーを見て、長門さんは、
「後程修正を施す」
と言い、またも刃物を構えた。
それなら無精髭をきれいさっぱり取り除いて下さい。
長門さんの右腕が、再び大きく振り上がって、風を切り裂きながら僕の顔面目掛けて迫って来た。
もう、それ、殺ろうとしているようにしか見えない。とても髭を剃ろうとする動作ではない。
腰が抜ける要領で、足の力を一気に抜き、扉にもたれ掛かって背中を落とし、危機一髪で逃れる。体育座りの姿勢だ。
が、それも虚しく、すぱっ、ぱさっ、と嫌な音が続いた。
「あ」
カッターを手にした、通り魔予備軍の少女の唇から小さく声が漏れた。
はらはら、と僕の肩に何かが降り懸かる。
なんだこれ…血、ではないな…
299続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/15(月) 00:02:20.83 ID:LLNiWjE4O
「ストップ、ストーップ!有希、やり過ぎやり過ぎ!!」
涼宮さんが、がらくたの山から美術に使う画板を引っ張り出し、盾にするように僕と長門さんの間に差し込んだ。
肩に落ちた、細い糸のような物を摘む。髪の毛だった。
どうやら、体を落としたはいいものの、髪が体について来れず、逃げ遅れてしまったようだ、
と、そこまで考えて、僕は卒倒こそはしなかったが、へなへな、と体育座りから、
内股を床にべったり付ける体勢になり、今度こそ腰が抜けた。
「大丈夫か古泉くたばってないか古泉チビってないか古泉立てるか古泉」
彼が、彼なりに心配してくれている顔で僕の前に立つ。
トラウマのせいか、まだ些か混乱気味のように、僕の名前を連呼している。
てか、チビってはない!!ないったらないからな!そこだけは絶対譲れない!!
「ななな、長門さん…カッター、わたしに預けてもらっても…?」
朝比奈さんまでおどおどしながらも心配してくれている。
……みんな、ありがたいのだが、できればもう少し早い段階で助けて欲しかった…
びくつく朝比奈さんに、刃をしまったカッターを渡した長門さんは、
彼に並んで僕の前に屈んだ。
「済まない」
300続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/15(月) 00:04:09.73 ID:LLNiWjE4O
長門さんは淡々と言葉を紡ぐ。
「あなたがなぎさをだしに、私から逃れようとたのに憤りを感じ、
少しばかりの制裁を与えようとした。が、度を越してしまった」
ほんとにな。
…そこまでなぎさを使われたのが頭に来たのか…
ここで、彼女はひょこんと頭を下げた。
「…ごめんなさい」
「そうね、有希も反省していることだし、悪気があった訳じゃないし。
ね、古泉くん、許してあげて!」
全く、この人は寛大と言うべきか、大雑把と言うべきか…
実際、彼女がカッターで髪をちょんぎられたら、多分相手が誰であれ一生涯許さないだろうに。
はあー、と盛大に溜息をついて(それ位は優等生演技中の今でも許されるだろう)僕は力無く笑った。
「帰りに床屋に寄って、髪も髭も見れるようにします…
美容院だと、髭剃りは無理でしょうから」
「そうした方がいいわ。
古泉くんは爽やか美少年ポジションであって、無精髭が似合うワイルドタイプじゃないしね」
そう言って、涼宮さんは彼を暫くじっと見て、あんたも似合わないわね、きっと、と呟いた。
「立てる?」
長門さんが手を差し出す。
301続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/15(月) 00:04:46.29 ID:LLNiWjE4O
あっさりとその手に頼るのも情けないので、ぐっ、と力を入れて立ち上がろうと試みる。
が、腰が全く持ち上がってくれない。
「ちょっとキョン、古泉くんに肩貸しなさい」
「なんで俺が」
「あたしやみくるちゃんや有希じゃ力が足りないでしょ!」
「朝比奈さんはともかく、お前と長門はいけるだろ」
「はあ!?ふざけ――」
「私の責任。手出しは無用」
軽く口喧嘩になりかけていたふたりを長門さんが遮る。
そのまま彼女は強引に僕の膝を立てて体育座りにさせ、手を僕の肩と膝の裏に添える。
おいおいおいおいおいおい、これってまさか…
「世間一般で呼ぶ所の、お姫様抱っこに該当される」
「いやいやいや!何をさらっと!」
彼女の手を引き離し、そのままその手を押さえ付け、
足に力を入れると、火事場の馬鹿力か、ふらつきながらもなんとか立てた。
はー、危機一髪…
もう少しで男の面目丸潰れだった…
で、
「………」
なんで睨むんですか長門さん。

その日の団活動は、床屋が閉まらない内にと涼宮さんが僕に帰るように言い、
その途端、長門さんが本を閉じたので、じゃあ今日はこれでお開きね!といつもより早い時間で終わった。
302閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:04:53.88 ID:3HOcoLNh0
支援
303閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:05:07.79 ID:ijZWfK9dO
支援
304閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:06:31.61 ID:DDSOpRv80
支援
305続々々・花嫁修行危機一髪 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/15(月) 00:06:30.06 ID:LLNiWjE4O
「という訳で」
最後尾を、今日だけは長門さんと並んで歩き、僕は前の三人に聞こえないように少し声を落とした。
「帰りに床屋に寄るので、先に帰っていて下さい」
ポケットから部屋の鍵を出し、長門さんに手渡す。
ピッキングの現場を住人に目撃されるのは、なんとしても避けたい。
こく、と彼女は小さく頷いて、ポケットに鍵を滑り込ませた。
そのまま彼女は僕のブレザーの裾に手をかざし、その手が離れると、切り込みは塞がっていた。

「あいよ、坊や。お疲れさん」
そこまで髪が悲惨な目に遭っていた訳でもなく、ほんの少し鋏を入れただけで、元通りとはいかなくとも、
自分から言わなくては、切ったことすら団員以外は誰も気付かないと思われる程変化は見られなかった。
顎を支配していた不快感ともおさらばできて、
安堵と共にそのまま床屋の椅子に深く腰掛けたままでいたかったが、
携帯が着信音1を奏でたので、慌てて会計を済ませた。
Eメール一件受信。
定期報告せよ、とのことだった。


続く
「次回、花嫁修行危機一髪・完、お楽しみに」
「あ?坊や、誰に話し掛けてんだ?」
「…あ、いえ、ひ、独り言です…どうかお気になさらず…」
306閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:07:30.84 ID:DDSOpRv80
乙ー、今回も楽しませてもらったよw
307閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:07:35.39 ID:3HOcoLNh0
>>305
乙!
今回も最高だったぜ!
308 ◆mUByYeJ/Ko :2007/01/15(月) 00:08:28.17 ID:LLNiWjE4O
以上。今度こそ次で終わる。
支援ありがとう。
309閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:09:33.31 ID:ijZWfK9dO
右手うんぬんの辺りからどえらい勘違いをしていたよwww
勝手にドキドキしてたwww
310閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:11:31.52 ID:nrRplZc3O
支援出来んかったorz

乙!
この長門大好きですw
311閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:12:35.79 ID:wA3g+IibO
乙!
長門と古泉はコメディータッチが似合うなwwww
312閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:22:31.59 ID:Ckbs1k9R0
乙!!
やっぱ面白れー。
次回投下待ってます
313閉鎖まであと 8日と 20時間:2007/01/15(月) 00:34:18.40 ID:7k4qn72i0
長門と古泉の組み合わせはいいね!
姫だっこの描写、読んでみたかったwww
314朝比奈みくるのクーデター その1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 00:56:09.02 ID:qkVc/HHe0
前スレ1000ですが、微妙に時間が遅れてしまいましたが、
何とか投下できるくらいになりましたので、1:00に予定されている投下に続いて行きたいと思います。

とは言ってもかなり長くなりそうなので、まだその1ですが……
315 ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 00:59:23.88 ID:g962sWUZO
そろそろ投下します、けっこうツッコミたい部分が多い作品ですが、暖かく見守ってくれたら幸いです。
316Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:00:56.23 ID:g962sWUZO
Truly and Happy dejavu


 今日も朝から平和だ。
 妹に起こされ、飯を食い、家を出て、ハイキングコースのような通学路を登る。
 何の変哲もない日常。……まぁ、学校についたら不思議な連中に会う事になるけどな。やれやれ。

 教室に入ると、不思議な連中のボス、涼宮ハルヒはすでにいた。
 よう、ハルヒ。元気か?
「……微妙ね。ちょっと嫌な夢を見ちゃったから」
 嫌な夢だと? 俺は閉鎖空間なんか行ってないから普通に悪夢を見たのか。
 そりゃ残念だったな。元気だせよ、夢は夢でしかないからな。
 ハルヒはもう一度視線を窓の外に向けて返事をした。
「わかってるわよ」
 触らぬ神に祟り無し、だな。今日は大人しくして、あまり喋りかけないどくか。
 それから、ハルヒはペンでつついてくることも無く、ただただ窓の外を見続けて授業を消化していた。
「おい、キョン。夫婦喧嘩でもしたのか? 涼宮の奴、えらく機嫌が悪いぞ」
 誰と誰が夫婦だ、バカ谷口。ハルヒが何を考えてるなんかわからん。
「今のあいつ、中学の時みたいだぞ……おー、怖っ!」
 確かに、今日のハルヒの人を寄せつけなさは、去年と同じくらいかもしれん。
317Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:01:36.31 ID:g962sWUZO
 何と言うか……心を閉ざしてるみたいだ。
 せっかく、阪中とかとも仲良くなって、明るくなってきたんだけどな。
 しょうがない、ハルヒのことならなんでもわかってしまう超能力者に不機嫌な理由を聞いてみるか。
 そしたら少し元気付けてやろう。
 ハルヒは掃除当番だし、ちょうどいいよな。
 そう思い、放課後までの時間をゆるやかに過ごし、部室へ行った。


「何も変化はありませんよ? 閉鎖空間も生まれてませんし」
 じゃあ、何であいつは不機嫌なんだよ。
「わかりませんね。直接聞いたらどうですか?」
 それが出来ないから聞いてるんだよ、馬鹿野郎。
 それから、朝比奈さんと長門にも聞いたが、芳しい返事は得られなかった。なんなんだよ、あいつは。
 理由も無しに不機嫌を撒き散らすなんて、歩く公害か? まったく、ガキじゃあるまいし……。
「それにしても、涼宮さんの力が落ち着いたという説もあながち間違ってなかったかもしれませんね」
 などと、いきなり古泉は語り始めた。
「1年前ならば、不機嫌になったらすぐに閉鎖空間が出来ていたのですが、今は違いますからね。
 僕達の力が失われるのも近いかもしれません」
 それはよかったな。そうなったらよく眠ってくれよ。
「もちろんですよ。閉鎖……」
 バン!
 ……マズい、ハルヒが来た。聞かれてないよな?
 古泉も少し笑いかたが不自然になっていた。
「『閉鎖』ってなんの話? どこの何が『閉鎖』したの?」
 あぁ、えーとだな……。
「商店街のスーパーに知り合いがいましてね。職がなくなるかもしれないと言われて、キョンくんと不況について話していたのですよ」
 古泉は台本でも用意していたかのように、サラッと言ってのけた。
 よくもまぁ、こんな嘘を咄嗟に思いつくもんだ。
318Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:03:33.35 ID:g962sWUZO
「……嘘よ。スーパーなら『閉鎖』じゃなくて、『閉店』を使うでしょ。古泉くんみたいに頭がいいなら尚更」
 古泉は『しまった』というような表情を、笑顔と混ぜて俺を見てきた。
 俺にどうしろってんだよ、バカ。
 ハルヒ。何と言うか……その……うぉ!?
 何故、俺はこんな素頓狂な声を出したのか?
 理由は簡単。驚いたからだ。
 じゃあ、何故に驚いた?
 ……ハルヒが立ったまま涙を流し始めたからだ。
 おいおい、どうしたんだよ、ハルヒ。
「うるさい! 触るな!」
 肩にそっと触れた俺は、蹴り一発で吹っ飛んだ。……痛いぞ、馬鹿力。
「あ、あの……大丈夫ですか? どこか痛いとか……」
「触るなって言ってんでしょ!」
 これはまた驚いた。俺だけでなく、少しだけ触れた朝比奈さんでさえ突き飛ばしたのだ。
 もう一度、問うしかなさそうだな。
 おい、ハルヒ! 何があったかきちんと話さないとわからん!
「……あたし達、ずっと仲間だって……親友だって信じてたのに」
 ハルヒは涙を床に落としながら、立ち尽くして口を開いた。
「いっつもあたしが来たら隠し事してるでしょ! ずっと前からわかってるのよ!」
 古泉も、朝比奈さんも顔が動揺している。長門も若干、読書に気が向いていないようだ。
「あたしだけ除け者なんて酷いわ! あたしは団長よ、何であたしにだけ隠すのよ!?」
 それはお前にバレたらマズいからだ。……と心の中で言ってみた。何も変わらん。
「みんな、バカよ……。あたしの気持ちもわかってくれない。それであたしを置いて消えちゃうんでしょ!?」
 なんだそれは? ハルヒ、どういうことだ? 俺達は消えたりなんかしないぞ。
319Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:04:03.35 ID:g962sWUZO
「夢の中で、あんた達が内緒話しててさ……あたしが輪の中に入ろうとしたら見捨てて四人で消えちゃったのよ……」
 ……だから、朝から機嫌が悪かったのか。
「起きてから気付いたわ。みんな、あたしが来ると妙に何か隠してるような態度を取るって」
 ……ハルヒ。
 ハルヒの目から零れる涙は、未だに止まらなかった。
「あたし達、仲間じゃないの? 親友じゃないの? なんでも打ち明けてよ! じゃないと……不安で……また、昔みたいに一人ぼっちはやだよ……せっかく仲間が出来たのに……」
 とうとう、ハルヒは涙を流したまま、その場に座り込んでしまった。
 何か声をかけるべきか? ……しかし、かける言葉がみつからない。
 正体がバレたり、ハルヒが能力に気付いたらヤバいからだ。
 それを気にしてか、誰も喋らないまま5分程、時が流れて、ハルヒが喋りだした。
「……みんな、隠すんだ……。あたしだけ、除け者……。いや、イヤ、嫌!」
 おい、落ち着……
「あたしに隠し事しないでっ! 全部教えなさいっ!」
 ハルヒがかなりの大声で叫んだ瞬間だった。妙な感覚に部屋が包まれた。
320閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:04:52.02 ID:5vQHVguY0
sien
321Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:05:57.33 ID:g962sWUZO
 同時に、ハルヒが頭を抱えて、震えだした。
「な、なによこれ……」
 何が起こってるんだ、長門。
「この部屋に情報が急激に集まっている。……わたし達の記憶が、涼宮ハルヒの脳に映し出されている……危険」
「え、朝倉が……キョンを? 有希? ……何これ」
 今は、俺が朝倉に襲われた時に長門が助けてくれた辺りか。……じゃない! どうにかしろ、長門!
「不可能。催眠、記憶操作、全てに対して涼宮ハルヒがプロテクトをかけた。情報が止まるまでは手が出せない」
「古泉くんが……赤い……球に?」
 今は、俺が古泉に閉鎖空間に連れてかれた時か。……何も出来ないなんて最悪だ。
「みくるちゃん、と……キョン? あれは……む、昔のあたし?」
 ……七夕の時、か。
「嘘……あ、あの時の……キョンとのキス……?」
 ………………。
 みんな沈黙を続けていた。そりゃそうだ、喋れるわけがない。全てがバレてしまって、それどころじゃないんだろう。
「あ……」
 は、ハルヒ! しっかりしろ!
 ハルヒはその場に横になった。気を失ってしまったようだ。
 保健室に行くぞ。朝比奈さん、先に行ってベッドの準備を!
「は、はいっ!」


「困りましたね。涼宮さんがまさかあのような感情を抱いていたとは……」
 保健室のベッドで横になるハルヒを見ながら、古泉は呟いた。
 よく考えると、ハルヒほど頭のいい奴が隠し事に気付かないはずがない。
 ずっと気付いてないフリをしていたんだよな、俺達とずっと仲良くしていきたかったから。
 ……朝比奈さん、どこに行こうとしてるんですか? 古泉も。
「え? あ、いや、あのぅ……報告しないと……」
「僕も、機関の方に連絡を……」
 未来人、超能力者、こいつらの組織には正直、うんざりだ。
322閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:06:08.72 ID:nrRplZc3O
支援
323Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:06:49.59 ID:g962sWUZO
 仲間が倒れてるのに、上への報告が優先か。ふざけるなよ。
 ……と言おうとした瞬間だった。先に声を発した人物がいた。
「あなた達は、間違っている」
 意表をつかれたね。ハルヒを除いた、ここにいる全員が長門が発言したことに驚いていた。
「涼宮ハルヒは、わたし達のことを『親友』と言った。『親友』なら、起きるまで何を差し置いても付き添ってあげるものだとわたしは把握している。……違う?」
 そんなことはない。お前の意見は至極真っ当だ。
「……すみません。団員失格ですね。僕はどうかしてたみたいです」
「わ、わたしも……。ごめんなさい、長門さん、キョンくん、……涼宮さん。」
 やれやれ、今回も長門のおかげか。まぁ、俺も同じようなことを言おうとはしたんだがな。
 それから、ハルヒが起きるまでの1時間は、ハルヒが起きた後の対策論を俺は黙って聞いていた。
 ハルヒは能力のせいで全部知っちまったんだよな。……まさか、世界を潰したりはしないだろうが。
 いや、それよりも元通りの仲に戻れるかが心配だ。SOS団解散なんて俺は断じて許さんからな。
「ん……」
 そのとき、ハルヒはゆっくりと上体を上げながら、起きた。
324閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:07:30.71 ID:nrRplZc3O
支援
325愛のVIP戦士:2007/01/15(月) 01:08:35.18 ID:i7Vf+McS0
支援
326Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:08:55.75 ID:g962sWUZO
 大丈夫か? 気分は悪くないか?
 可能な限り優しくしながら、ハルヒに近付くと、抱き付かれた。……何故?
「どこにも行かないで! みんな、行っちゃダメ! 団長命令よ!」
 こんなに必死な顔をするハルヒを過去に見たことがあるか? いや、ないね。
 これくらいで落ち着くとは思わないが、ハルヒの背中を優しく叩いてやった。子どもをあやすようなあれだ。
 落ち着け。俺達はみんなここにいる。誰もいなくなったりしないから……な? なんなら……。
「……なんなら何?」
 俺が掴まえててやるよ。
 そう言って、俺はハルヒを抱き締めた。何をしてるんだよ、みんないるってのに。
「キョン……暖かい……」
 おいおい、ちょっと待て。俺は『何すんのよ、エロキョン!』とか言われて、突き飛ばされるもんだと思っていたが、なんだこの反応は。
 そこ、古泉。ニヤニヤしてんじゃねぇ。朝比奈さん、顔を赤らめるのをやめてください。……長門、あくまで無表情か。
「……ほんとはね、あたしが全部知っちゃったから、みんないなくなるんじゃないかと思ったの。怖かった……」
 ハルヒは俺の腕の中から声を出した。
「あたしがあれだけ望んでた不思議が、あたしの中や、すぐ近くにあったなんて……バカみたい」
 そんなことねぇよ。楽しかったじゃないか。
「……うん。だからね、今の望みは違う。『みんな、ずっと一緒に』とかさ、『勝手にいなくならないで』よ。……お願いだから」
 俺に包まれたまま、か細い、内気な女の子のような声をハルヒは搾り出した。
 俺はずっと一緒にいることが出来るが、こいつらはどうなんだ? せっかく出来た大事な仲間だから、俺も離れたくはない。
「僕は離れません」「わたしも離れませんよ」「……わたしも」
327Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:09:44.53 ID:g962sWUZO
 3人は何故か即答した。誰一人、『上』に連絡することもなく。……何故だ?
「そ、そんなに簡単に決めちゃっていいの? あたしのためなんかに……。だって、みくるちゃんなんか未来……人……だし……」
「簡単な話です」と古泉。
 それから、3人は口を揃えて言った。
「あなた(涼宮さん)が望んだから、僕(わたし)達はずっと一緒です」
 ……なるほどな。理にかなってやがる。ハルヒは力を知った。だからと言って力が消えたわけじゃない。
 ならば、不思議な現象よりも俺達と一緒にいることを望んだ今、それが叶わないことはないな。
 もっとも、みんなは自分の意思で選んだのだろうけどな。
「それでは、僕達は今日は帰りますね。お二人の邪魔になりたくないですし」
 そう言うと、古泉は朝比奈さんと長門の背中を押しながら保健室を出て行った。
 何がお二人の邪魔だ。その羨ましい両手を離しやがれ、変態め。
「えと……キョン?」
 その言葉で我に帰った。そういえば、俺の腕の中にハルヒがいたんだったな。
 どうした?
「『どうした?』じゃなくてさ……。いつまで抱いてんのよ」
328愛のVIP戦士:2007/01/15(月) 01:09:55.46 ID:Xghv5o9p0
しえん
329Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:11:35.49 ID:g962sWUZO
 それもそうだ。……が、何故か俺の手が離そうとしない。ハルヒの力か? 俺の意思なのか?
「……嫌か?」
 なんてことを言いやがる、この口は。こんなのは俺のキャラじゃない、古泉のキャラだ。
 ……なのになんで否定しない。まさか、俺はハルヒが……?
「い、嫌じゃないけど……」
 そうこう考えるうちにハルヒは返事をしてきた。お前も別人が乗り移ってるのか? 『嫌じゃない』なんて。
 しかし、この状態から何にも出来ないのがヘタレな俺だ。いや、しようと思ってるわけでも無いんだが。
 だからといって、急にハルヒを離すのも失礼な気がする。一応、こいつに『掴まえててやる』なんて宣言したわけだしな。
 さて、動きようがなくて困る。ハルヒの表情も見えないから、そこから判断することも出来ない。
 まるで、ガップリ四つに組んだ相撲取りのような状態になってしまった。
 俺は椅子の上、ハルヒはベッドの上で上半身だけ抱きあっているからな。
 なんなら保健の教師でも来てくれれば動くきっかけになるんだが……。
 何にせよ、このままじゃ間が保たん。
「キョン……い、いつまでこうしとくのよ?」
 ハルヒが口を開いたが、沈黙を保ってみる。俺が満足するまで、なんて言えるわけがない。
「そろそろ……放してくんない?」
 放して、顔を見るのが恥ずかしいが、さすがにこれ以上やると変態だ。
 しょうがないから放すか……んむ?
 放した瞬間、目の前にハルヒの顔。いや、目の前という距離ではない。
330閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:11:39.65 ID:qkVc/HHe0
支援
331Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:11:58.65 ID:g962sWUZO
 唇が触れ合っている。それ以外も、密着に近いような距離。
 そう、ハルヒにキスをされている。……何故?
 ゆっくりとハルヒが離れていった。表情を伺うと、よく熟れたプチトマトのように赤い。
「あー……へ、閉鎖空間って言うんだっけ? あの時の仕返しよ……」
 し、仕返しってなんだよ。時効だろ? あれは。
「う、うるさい! あたしには時効って言葉は無いのよ!」
 ……そうか。じゃあ、今のでプラスマイナス0だな。
 ハルヒの突然の行動で、気まずさは無くなった。たぶん、俺の顔も真っ赤だがな。
 真っ赤な顔をして、俺の顔を見ないようにそっぽを向いてハルヒは立ち上がった。
「か、帰るわよ!」
 言われなくてもな。
 ベッドから降りて、靴を履くハルヒ。そのままズカズカと歩き出すと思いきや、俺が歩き始めてもその場に立ち止まっていた。
 どうしたんだ、帰るんじゃないのか? また気分が悪くなったのか?
「……早くしなさいよ」
 はぁ?
「掴まえててくれるんでしょ! 早くしなさいっ!」
 ……やれやれ。言っちまった俺が悪いか。
332閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:12:13.05 ID:nrRplZc3O
支援
333Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:13:30.12 ID:g962sWUZO
 ハルヒの手を取り、二人で歩き出す。少し手が湿ってるぞ、なんて言ったら殴られるだろうな。
「キョン、あんたの手……湿ってるわよ」
 ……この場合は殴っていいのか? いや、事実だから否定は出来ないけどな。
「ほっとけ」
 そう一言返して、学校内を歩き、無言のままハルヒの家まで送り、別れることとなった。
「また明日ね。……絶対に来てよ、みんな揃うんだからね!」
 わかってるよ、誰一人欠かさせない。もし休む奴がいたら、俺が引っ張ってきてやる。
 ハルヒは久々に……と言っても昨日ぶりくらいだが、笑顔を浮かべた。
「その言葉、覚えたからね! ……じゃあね!」
 そして、背を向けて自宅に入っていった。
 すぐさま自分も家に帰り、妹とシャミセンの攻撃を振り切りつつ、風呂や食事を済ませ、ベッドに横になった。
 やっと一日が終わったな。今日は色々ありすぎて疲れたぜ。
 ……まさか、起きたら世界が変わってた。なんて無いよな。
 いや、ハルヒを信じよう。自分に妙な力があるとしても、あいつはあるがままを受け入れるはずだ。
334閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:14:15.98 ID:nrRplZc3O
支援
335Truly and Happy dejavu ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:14:44.88 ID:g962sWUZO
 明日が、平和な一日でありますように……、なんて柄じゃないな。
 眠いから寝るか。


 次の日、妹に超能力で起こされ、親は手から火を出して目玉焼きを作っていた。
 ……なんて漫画チックなことは無く、普通に起こされて、普通の飯を食い、普通に学校に行った。
 ハルヒはどうやらそのままの世界のままにしたらしい。……そりゃそうだよな。
 靴箱で谷口と会ったが、俺は遠回りをして教室に向かった。
 3年の教室の前を通る。
 朝から仲良さげに話す朝比奈さんと鶴屋さんの姿を確認すると、肩の力を少し抜いて2年の教室へと向かった。
 2年9組の前、朝から数人に囲まれながらノートを開く古泉を確認し、6組で一人で本を読む長門を眺めた。
 よし、全員揃っている。あとは……。
 自分の教室の前で深呼吸を一つ。ゆっくりとドアを開けると、俺の席の後ろにそいつは座っていた。
 一歩、二歩と近付いて、少し顔を赤らめている、短いポニーテールのそいつに声をかけた。
「ハルヒ」
「なに?」
「……似合ってるぞ」


おわり


以上です。支援ありがとうございましたorz
336閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:15:45.97 ID:5vQHVguY0
>>335
GJ!
337閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:16:11.62 ID:nrRplZc3O
GJ!

最初はどうなるかとドキドキだったが、甘ぁぁぁぁい!
338閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:17:00.54 ID:qkVc/HHe0
>>335
GJ! 甘い甘すぎる……!
339閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:18:15.24 ID:gEt8POz/0
              /l
    ___       〉 〉           /l
    ヽ ゙i_       〉 __ヽ,_    r‐'" ノ
     l、__ `l_,.-'く く_コ `'l ,ヘ、,ヘノ  l~
       l  /ー-、ヽ─‐'"/.__\ /
       `/l ̄V''ーv l_ し'"V   / ヽ
         | l、__/   ゙、__/   l     <あまっ!
          |       rニヽ,       |    
        |     lニニニl      /  
         \           /
            `ーァ---──'''"ヽ,    
           / / l,  i ヽ ` \
           /            ,.-、
         lニ‐-- .,,__,. -‐‐-、_ノ /
          `ー- .,,_,,. -‐‐--‐'"
340ジェラ ◆7V2lj.SD8g :2007/01/15(月) 01:18:46.48 ID:+4yJsYkr0
乙です。甘くていいw
341閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:19:35.49 ID:Ckbs1k9R0
甘ぁ〜くていい!!
GJでした。
342ジェラ ◆7V2lj.SD8g :2007/01/15(月) 01:20:00.82 ID:+4yJsYkr0
◆LEcaojha/Qさんの後に続き投下しようと思います。
343閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:20:10.02 ID:5vQHVguY0
んで次の人は?
344 ◆mtod1dSyOc :2007/01/15(月) 01:21:01.46 ID:g962sWUZO
読んでくれた方々、ありがとうorz
甘さよりストーリーを重視したつもりだったけど……結局こうなったww
とりあえずありがとうございました!
345朝比奈みくるのクーデター ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:23:10.55 ID:qkVc/HHe0
>>342
すいません。推敲中におかしなところを見つけてしまったので、
先に投下してください。
申し訳ないです。
346ジェラ ◆7V2lj.SD8g :2007/01/15(月) 01:24:58.64 ID:+4yJsYkr0
ではお先に。短めですので。
347ジェラpage24 ◆7V2lj.SD8g :2007/01/15(月) 01:25:35.61 ID:+4yJsYkr0
 やっぱり持つべきものは長門だぜ。さっきの訴えかけるような目線が気にはなったが。
 朝比奈さんは巻き込みたくないと思っていたが、本人にも関係していることであれば、
知らせておかなければならない。
 手紙をもう一度確認するように見ている古泉と長門をよそに俺は朝比奈さんに電話をかけた。
まだ昼休みが始まって半分も経っていない。昼食中かもしれないが、こっちも切羽詰まってるからやむを得ない。
 呼び出し音が十回ほど鳴って朝比奈さんは電話に出た。
「はぁい。キョン君どうしたんですかぁ?」
 朝比奈さんは篭ったような声で言った。やはり食事中だったのだろう。そんな声も可愛くて素敵です。
 なんてことも言っていられないので、俺は手短に用件を伝えた。
「実は、未来に関係あることでお話があるんです。できれば今から部室の方にきてもらえませんか?」
 未来、という言葉に反応したのか、朝比奈さんは声を潜めて
「どういうことですか? 未来って、涼宮さんに何かあったんですか?」
 それを説明したいので部室に来てください、と伝えると、
「急いで行きます」
 と言って電話は切れた。
 朝比奈さんなりにかなり頑張ったんだろう。電話が切れてから約五分ほどで部室にやってきた。
息を切らせながら、
「きょ……キョン君、何が……あったっ……んですか!」
 なんだか俺が申し訳ないような気分になってしまった。しかし、いつもはポワーンとしてる朝比奈さんが
こうやって本来の仕事のこととなると真剣な顔つきになるのは悪くない。不謹慎ではあるが。
 それから短時間で朝比奈さんにわかりやすく説明するのは中々に骨が折れることだったが、なんとか理解してもらった。
「そんなことがあったんですかぁ……」
「それで長門が朝比奈さんなら知っているんじゃないかって言うんですよ」
348ジェラpage25 ◆7V2lj.SD8g :2007/01/15(月) 01:26:17.65 ID:+4yJsYkr0
 朝比奈さんはちらっと長門の方を見てすぐにまた考え込むように俯いてしまった。
「未来では確かに人の意思を操作するような物質、薬はあります。だけど、それを使用することは犯罪なんです。
どういう物質なのかは禁則事項なので詳しく言えないんですけど……」
 また禁則事項か。しかしそういう薬のようなものがあるとわかっただけでも大きく状況は変わってくる。
未来から来た朝比奈さんのような人間がその物質を利用して、今回の騒動を巻き起こした可能性が高いってことだ。
「ちょっと失礼します。朝比奈さんの言う薬などを使用した人物に心当たりは?」
 それまで黙っていた古泉が俺の横から体を半分出した。
「ごめんなさい。私には誰が未来からやってきたか直接わからないんです。
時間移動を行ったらその痕跡が残りますから、未来でならそういうこともわかるんですけど……」
「それを確認することは?」
 ツッコミを入れるように古泉。
「あ……はい、やってみます」
 そう言って朝比奈さんは部室から一度出て行った。
 ドアの前で何やらごそごそやっている。
「どうやら敵はこの学校のことや涼宮さんの性格なども熟知しているようですね」
 どうしてだ?
「あまりに上手く事の流れに乗っているからですよ。学年が変わり、環境も当然変わる。
そこでファンクラブができることを怪しむ人間はほとんどいません」
 俺は初めから怪しいと思ってたけどな。
「そうでしたね。僕は完全に裏を突かれたような気分です。実際そうですが、なんとも情けないことです」
 古泉は自らに皮肉を言うように肩をすくめた。
 こいつも立場が立場ならハルヒファンクラブに入っていただろうとか言ってたからなあ。
それは冗談だとしても、古泉が怪しまないぐらいの手際の良さで事を進めている連中だ。
 一体どんな奴らなんだろうな。それに、その狙いは一体何なんだ。
「恐らく、未来から来た強行派の仕業ではないでしょうか。涼宮さんやあなたに直接手を加えることでその反応を見る。
例の朝倉涼子と同じような考えなんでしょう」
349愛のVIP戦士:2007/01/15(月) 01:27:09.51 ID:qkVc/HHe0
支援
350ジェラpage26 ◆7V2lj.SD8g :2007/01/15(月) 01:28:10.18 ID:+4yJsYkr0
 またか。その名前を聞くたびに未だに手に汗が浮かんでくる。
「早めに気づくことができて良かったですよ。手が加えられてからでは遅いですからね」
 古泉の言葉が慰めにも聞こえる。
 俺は、正直ハルヒのことで巻き込まれるのには慣れた。
 慣れたと言ってもそうそう我慢できることばかりではないけどな。俺が一人で危ない目に遭うならそれでも構わん。
そういう目にあったとしても、古泉、長門、朝比奈さん、そしてハルヒの奴がいる。
 きっとこいつらが何とかしてくれるだろうと俺は思っている。
 なんだかんだで心強い連中に守られてるわけだ。
 それだけならいいが、もしハルヒが俺の目の前で危険に巻き込まれたとき、SOS団のメンバーがいなかったら、
俺はあいつをその危険から守りきれる自信がない。
 長門や古泉、朝比奈さんがいないところで危険に巻き込まれないなんて保障はどこにもないのだ。
 以前の閉鎖空間のようなところからの脱出程度ならまだいい。あれで済むなら安いもんだ。
いくらでもしてやる。
 しかし、朝倉や今回のような得体の知れない連中がもしハルヒに直接危害を加えるとしたら、
俺がそいつらに対してどこまで抵抗できる? 朝倉に至っては長門が来なかったら間違いなく死んでいた。
 俺はハルヒを守るどころか、自分も助けてもらわなければいけないような普通の人間なんだ。
 こういう時に思う。
 俺はハルヒや他の団員に対して、本当は劣等感を抱いているんじゃないかと。
そして圧倒的な力不足という現実に、自分が情けなくて仕方なくなる。
 ハルヒのことを守ることができないという現実が、俺のあいつに対する気持ちを鈍らせている部分も否定できない。
 ……やれやれ。
かっこわりぃな、俺。



続く
351閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:36:55.18 ID:nrRplZc3O
乙!
続きwktk
352朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:37:05.71 ID:qkVc/HHe0
>>350
乙です。続き期待。

何とか完了したのでこっちも投下します。
10レス前後ぐらいなので支援はとくに必要ないと思います。よろしくお願いします。
353朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:38:35.73 ID:qkVc/HHe0
 季節は春。高校生活的時系列で表現するならもうすぐ春休みって奴だ。
期末テストも終わって短縮授業で高校ライフをエンジョイしたいところだが、
相変わらず絶賛24時間営業中のSOS団はホワイトカラーエグゼプションを先取り実現で
残業どころか休日手当もなしに稼働中だ。
「不満そうですね」
 ドンジャラで暇つぶしの相手をしていた古泉が俺に向かって言う。
俺はふうっとため息を吐いて、
「別に不満じゃないぜ。ただあまりに同じ事がだらだらと続いているんで、少々うんざり気味なだけだ」
「平穏が一番です。僕としてはこのまま何もなく終えてほしいですからね」
 ……まあ、古泉の言うこともわかるけどな。平和が一番だ。

 ――しかし、そう考えるとなぜか面倒なことが起きるんだよな。

◇◇◇◇

354朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:38:56.05 ID:qkVc/HHe0
 次のシーンになると、なぜか俺は洞窟の中にいる。それも長門と朝比奈さんと一緒だ。
一面に地底湖のようなものが広がり、水の流れでできた波が懐中電灯の明かりが反射する。
北高から数キロ離れた山岳地帯の洞窟にこんなでかい湖があるとは初めて知ったよ。
 で、何でこんなけったいな場所にいるかというと、
「……すいません、キョンくん。こんなところに付き合わせてしまって」
「いえいえ、このくらい大丈夫ですよ」
 ぺこりと頭を下げる朝比奈さんに、俺は手をぱたぱたと手を振って答える。
デートスポットには陰気な場所だが、悪い気分ではないことは事実だ。
 学校の帰り、またもや朝比奈さん(大)の指令書を受け取った俺は、朝比奈さん(小)とともに
指示された場所までやってきた。それがこんな地底湖のある洞窟の中だったというわけだ。
全く人使いの荒いことで。
「でも、ここで何をすれば良いんですかね? 今までも意味不明でしたが、今回もさっぱりですよ」
「えーとですね……ここで地底湖の真ん中に石を投げ込んで波紋を起こせばいいそうです。
他には何も……」
 全くまた朝比奈さん(大)は俺たちに何も知らせず、か。こんなんじゃ朝比奈さん(小)もその内ストライキを起こすぞ。
 ちなみになぜ長門がついてきているのかというと、ついて来たがっていたと言うことと
不足の事態にも対応できるという安心感からだ。
 俺は指定された大きさの石をポケットから取り出すと、
「じゃあ、俺が投げますね」
「お願い。あたしじゃ中心まで届かないから」
 朝比奈さんに頼りにしてもらうとは気分が良い。いつも癒しを提供してもらっている礼もあるしな。
このくらいおやすいご用だ。
 俺は力一杯構えてから、石を地底湖中心にめがけて投げる。野球なんて体育の授業か初夏の野球大会以来だったが、
良い感じに中心に落ちた。
 ぽちゃん……
 静かな洞窟内に水に入った音が響き渡る。底を中心に波紋が発生し、地底湖全体に広がっていった。
 …………
 …………
 …………
355朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:39:48.61 ID:qkVc/HHe0
 それから数分間、俺たちは黙って波紋が消えていく様子を眺めた。しかし、別に何も起きなかった。
やがて波紋も完全に消え、水の流れで起きる波だけになった。これがいったい何の意味があるんだ?
「朝比奈さん、これからどうすれば良いんですか?」
「え? あ、えーとですね……」
 朝比奈さんはまた指令書とやらに懐中電灯を当てて確認し始める。
「あ、これで終わりみたいです。もう帰って良いと」
「……そうですか」
 全く訳がわからん。今度朝比奈さん(大)に会ったら問いつめるべきだな。
「じゃ、じゃあ帰りましょう……キョンくん、長門さん、ありがとうございました」
 そう朝比奈さんはぺこりと頭を上げて――
「待って」
 そこで制止したのは長門だ。考えてみれば今日一緒に来ていたのに声を聞いたのは初めてだな。
 長門は地底湖中心から全く視線を外そうとしなかった。俺の脳裏に嫌な予感だけがすぎる。具体的にはわからないが何か……
 ふと、俺は地底湖の中心にぽっと明かりが灯ったことに気がついた。水面じゃない。
清んだ水の中からその光が浮き上がるように光を強めていく。
「……な、何でしょう……」
「黙って」
 不安げな声を上げる朝比奈さんを黙らせる長門。俺も黙ってじっとそこを見つめた。
 次第にその光は俺たちのいる方に向かってきて――
「ひえっ!?」
 朝比奈さんが短い悲鳴を上げた。俺も息をのむ。突然、湖の中からざばっと人間が現れたからだ。
真っ黒なウエットスーツを着込み、目には暗視ゴーグルのようなものを装着している。
おまけに肩には自動小銃らしきものまで抱えていた。しかも、1人じゃない。数十人が次々と水面から浮上するように現れる。
 そいつらはまるで軍隊のように規律のとれた動きを見せた。そして、その中心あたりに立っている奴が、
「座標を確認しろ! 現在位置と時間もな! あと、ここに到達できた人数と名前もだ!」
 ……どうやらボスである奴の声は女のものだった。しかも、どこかで聞いたことのあるような……
 この状況でも長門は微動だにしない。朝比奈さんはふるふる震えているだけだ。どうする?
356朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:40:40.73 ID:qkVc/HHe0
「座標のずれなし。現在位置も確認完了。現在時刻も予定通り。全員、問題なく移送転換完了を確認」
「よし、わかった。ならば、即刻行動を開始する……ん?」
 ボスらしき女性がこちらをちらりと見る。しまった。懐中電灯は消しておくべきだったか?
 そいつはしばらく俺たちの方を見つめていたが、やがて暗視ゴーグルらしきものを取り払うと、
「……くっ……あはははは! これはついている。いや、それとも今度こそあたしに運が向いてきたのか?」
 馬鹿笑いするように女が叫ぶ。その目……なんだ? どこかでみたような……
 そのまま、バカにするような目でそのボス女は俺たちをじろじろと見ていたが、また暗視ゴーグルのようなものを装着すると、
「兵士諸君! 神か仏の仕業か知らないが目の前に目標の1人がいる。チャンスを逃す必要はない」
 周りにいた兵士と呼ばれた連中が一斉に肩にかけていた自動小銃を俺たちに向けた。
「――朝比奈みくるを殺せ」
 命令と同時に、一斉に自動小銃が火を噴いた。俺が驚く間もなくだ。
 だが――全ての銃弾は俺たちの前に構築されていた透明の壁のようなもので全てはじき返された。
気がつけば、長門が何かをしているようなオーラを出している。それがいったい何なのかさっぱりわからないが。
「くっ! TFEIか!? 散開しろ!」
 ボス女の言葉で兵士と呼ばれた集団はばらばらと辺りに散り始める。こっちを牽制しているのか、
散発的に銃撃を加えてくるが、全て長門の作った壁で防がれた。
「ふえっ……ふえええ! なんなんですかこれぇ!?」
 パニックに陥っている朝比奈さんだったが、俺はなだめている暇もなく、
「おい長門! 何が――いや、説明しなくてもいい! とにかく逃げた方が良いんじゃないか!?」
「彼らを敵性と認識した。排除を行う。それが終われば逃げる必要もない」
 また、一斉銃撃が俺たちに向けられたが、すべてはじき返した。本当に長門がいてくれて良かった!
でなけりゃ今頃蜂の巣だ!
「…………」
 てっきり長門はすぐに攻撃してきている連中をどうにかするのだろうと思っていたのだが、
いっこうに何もしようとせずただ銃弾を受け止め続けていた。ふと、長門から発せられるオーラのようなものに
変化が生じていることに気がついた。
357朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:41:29.88 ID:qkVc/HHe0
「どうした?」
 俺は長門の肩を持って状況を確認すると、長門はしばらく間を置いてから、
「許可が下りない」
「なに?」
「あの敵性有機生命体に対して反撃する許可が下りない。防御のみ許されている。理由は不明」
 なんだと? 長門の親玉は一体何を考えてやがる!? 俺たちは今殺されそうなんだぞ!?
 銃撃を続けながら、いつのまにやら地底湖の脇の方に移動していた女ボスは、手振りで指示を出しつつ、
「銃は通じない! RPGを出せ!」
 そいつが叫んだと同時に、地底湖の反対側にいた1人の人間が背中に抱えていた物騒な武器を取り出し、
俺たちに向けて発射した。
 閃光とともに俺たち真正面に弾頭が直撃して大爆発が起きるが、やはり長門の壁が熱どころか爆風まで遮断した。
神様、仏様、長門様だなこりゃ!
「ど、どうしましょうぉ!?」
「とにかく逃げましょう! 長門もだ! ここにいたらなんかの拍子でやられちまうぞ!」
「わかった」
 俺は朝比奈さんと長門の手を取り、洞窟出口に向けて走り出した。

◇◇◇◇

358閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:42:20.47 ID:6XWafscA0
支援
359朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:42:31.30 ID:qkVc/HHe0
 あたしはついているのかついていないのか。目の前に目標である朝比奈みくるを見つけておきながら、
みすみすと逃がすことになるとは。TFEIがいたことが最大の障害だった。
「フンっ……。目の前に目標を差し出しておいて、TFEIでぬか喜びか。運命ってのはイタズラ好きのようだな」
「追跡します」
「ああ、頼む」
 あたしの部下の半数が朝比奈みくるたちへの追撃に向かった。どのみちTFEIがいる限り、殺害は不可能だろう。
下手をすれば今すぐ殲滅されてもおかしくなかったほどだからな。ただし、それをしなかったと言うことは、
できなかったという解釈が成り立つ。となれば、まだチャンスは十分にあるはずだ。
 あたしは自分の片腕と認識している部下を呼びつけ、
「他の移転はどうなっている?」
「はっ。確認したところ、一定距離に散らばってはいますが、すべて移転完了しています」
「……わかった。時間がない。この洞窟から出た後、まずは他の武器の回収を行う。
さっき追撃にいったチームは洞窟から出た後は追跡するなと伝えろ」
「了解」
 そう言って彼は無線で連絡を取り始める。
 今度こそ負けてたまるか! 見ていろ朝比奈みくる……!

◇◇◇◇

360朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:43:35.68 ID:qkVc/HHe0
 一体何がどうなってやがんだ! 今まで色々たくさんあったが、武器を持った軍人に追っかけ回されるなんて初めてだぞ!
 また、背後から銃弾が飛んできて洞窟の壁に当たる。その度に壁の破片が俺たちに降りかかってきた。
「朝比奈さん! がんばって! もうちょっとだから!」
「は、はいいいい!」
 いつものふにゃふにゃ声を上げながら、朝比奈さんは俺についてきていた。その後ろを守るように、
最後尾に長門がついている。銃の発射音に比べて俺たちの周りまで到達している銃弾の数が少ないのは、
やはり長門が何とかしてくれているからだろう。
 ふと、俺の頭上に何かが飛んできたことに気がついた。懐中電灯を反射的に向けて正体を確認すると――手榴弾っ!?
「ふせて」
 長門が言うのが早いか遅いか。俺は地面にそのまま突っ伏した。朝比奈さんも俺に抱きつくように伏せる。
 五秒ほど経過しただろうか。爆発音もなにもしない。俺は頭上を見上げると、空中に球体のようなものが発生し、
その中で煙と閃光が渦巻いていた。
「爆発性物質をその中に封じた。5分後までその状態を継続――うっ」
 長門が説明している間に背後から飛んできた銃弾が彼女の背中に数発命中した。
背中から血と肉片が飛び散るが、それでも長門は微動だにしない。
「な、長門!? 大丈夫か!」
「大丈夫。この程度ならば個体も正常に動作できる。今は防御に徹するため、修復は後」
 そんな長門を見て朝比奈さんは今にも泣き出しそうになっていたが、俺はすっと肩に手を置いて、
「とにかく逃げましょう! ここだとなぶり殺しにされるだけです!」
「す、すいませんんん……。腰が抜けちゃったみたいでぇ……」
 ええい! 朝比奈さんらしいといえばそこまでだが!
 俺は彼女を背負うと、または知りだした。長門も足下までだらだら血を垂れ流しながらも、
表情一つ変えずに俺たちについてくる。
 そのまま、手榴弾やら銃弾やらロケット弾やらをかわしながら、俺たちはようやく洞窟の外に飛び出した。
辺りはもう暗くなりつつあり、近くを走る市道にライトをともした自動車が数台通り過ぎていく。
ここまではバスで来たが、追われている状況でバスが来る時刻までのんびりと待つわけにも行かない。
「あれ」
 長門がすっと指さす。その先には市道上で一台のワゴンタイプの自動車がランプをともしたまま停車していた。
そして、そこで手を振っている人物は――
361閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:44:24.62 ID:6XWafscA0
支援
362朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:44:30.82 ID:qkVc/HHe0
「古泉か! 助かった!」
 俺は朝比奈さんを背負ったまま、市道までの急斜面を滑るように降りる。長門もそれに続くが、
洞窟から出てきたらしいさっきのいかれた武装集団は俺たちに向けて容赦なく銃撃を加えてきた。
「長門! 本当に大丈夫なのか!?」
「まだ――持つ」
 心なしか長門の顔色が悪い。そりゃあれだけ血を流しているんだ。普通の人間なら貧血どころかショック死しているかもしれん。
 銃撃では無駄だと思ったのか、今度はロケット弾の雨が俺たちに襲いかかる。
古泉が待つ自動車の周辺にも大量に落ちていた。このままでは逃げられなくなる!
「任せて」
 長門がつぶやいたとたん、ロケット弾が俺たちの頭上の上空で爆発を始めた。
どうやらさっきから展開している壁を広げたらしい。全てのロケット弾をはじき返している。
 俺たちはようやく市道まで降りると古泉のいる自動車まで――
「――長門っ!?」
 振り向けば、力尽きた長門が路面に倒れ込んでいた。俺は一目散に彼女の元まで引き返し肩を貸す。
「しっかりしろ! もうちょっとだ!」
「…………」
 顔面蒼白だが無表情の長門を抱え、俺はまた古泉の方に走る。途中で古泉が長門を抱え、
ワゴンタイプの自動車の中に飛び込んだ。
「発射しますぞ。スピードを出すのでご注意を」
 ハンドルを握る古泉と同じ機関の人間である新川さんが言う。そして、急発進の猛烈なGにつぶされそうになりつつ、
俺たちはその場から逃げ出した。背後から飛んでくる銃弾がトランクに数発当たるたびに朝比奈さんがひえっと声を上げる。
 俺は長門を抱きかかえている古泉に、
「すまねえ。助かった」
「いえ、こちらも遅くなってすみません」
 古泉はにこやかなスマイルを浮かべる。長門も自分自身の修復を終えたらしい。背中からの出血は停止していた。
「新川。このまま彼の家まで」
「わかりました」
 助手席に座っていた森さんが新川さんに指示を出す。
363朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:45:33.51 ID:qkVc/HHe0
 俺は後部座席から身を乗り出し、
「森さん、新川さん。すいません。助かりました」
「礼を述べる必要はありません。これはわたしたちの任務なんですから」
 プロらしい言葉で返したのは森さんだ。新川さんもそうですなとうなずく。
 俺はここに来てようやく助かったことを自覚し、座席にふうっと身を任せた。
背後の席では朝比奈さんがひっくひっくと鳴き声を上げている。気の弱い彼女にとっては地獄のような瞬間だっただろう。
泣いて当然だ。俺だって泣きたい。
「確認しても良いですか?」
「なんだ古泉。言っておくが俺たちも訳がわからんから、答えられることは少ないぞ」
 古泉は構いませんと、
「あなた達を襲ってきた人間の目的――は恐らくわからないでしょうから、
何か言っていませんでしたか? できるだけ性格に教えてほしいんですが」
「目的ならわかっている。朝比奈さんの殺害だそうだ。大声で宣言してくれたよ」
 古泉は俺の答えに意外そうな顔を向け、
「朝比奈さん――ですか。これは予想外でした。どうみても殺意を持った相手だったので、
てっきりあなたをねらってきた者だと思いましたが」
「以前に朝比奈さんは誘拐されそうになったじゃねえか。まあ、殺されるような憶えは絶対無いだろうけど」
 そう言いながら朝比奈さんをちらりと見る。顔を伏せたまま、まだ泣きじゃくっていた。ちっ、何が目的だか知らんが、
こんなか弱い少女をいじめて何しようってんだ。
 と、俺はあのボス女が言っていた言葉を思い出し、
「そういや、『目標の1人がいる』って言ってやがったな。どうやら、目的は朝比奈さんだけじゃないようだ」
「なるほど……。となれば、あなた達三人以外でまだ誰か目標がいるみたいですね。
その場で1人としたと言うことは、あなたと長門さんは含まれていない証拠です」
「そうなるな。あと、長門のことも知っていたようだ。お前と同じTFEIという言葉も使っていた」
「なんですって?」
 これには古泉があからさまにおかしいという表情を浮かべる。それを聞きつけた森さんは、
「TFEIという言葉は『機関』で使われている言葉です。敵対する組織を含め、それを使うものは他には心当たりがありません」
「じゃあ、お前の仲間だってのか? さっきの連中は」
364朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:46:31.81 ID:qkVc/HHe0
 俺は古泉に疑惑の目を向けると、古泉は肩をすくめて、
「いえ、結論を出すのはまだ早いと思います。それに『機関』の中に強硬派もいることは認めますが、
先ほどのような大規模な行動を起こすほどの勢力ではありません。もうしばらく調査が必要かと」
 古泉の言葉に俺はふうっとため息を吐いた。どのみち、わからないことだらけだ。これではどうにもならん。
とにかく、今は今後どうするか考えることが重要だな。
「相手の目的がわからない以上、こちら側から仕掛けることは無理です。居場所もわかりません。
とりあえず、今日のところはあなた達は家に帰ってもらいます。『機関』から増援も到着しますので、
住居周辺を警備させます。あなた達には指一本手出しさせません」
 何だか森さんが頼もしいことを言ってくれているみたいだし、今日はもう家に帰って寝るか。いい加減疲れた。

◇◇◇◇

 すっかり闇に落ちたころ、ようやく俺の家の前に『機関』の自動車が到着した。
「今日は助かった。ありがとな、古泉」
「いえ、当然のことをしたまでです」
 そう言葉を交わすと俺は自動車から降りようとして――
「キョンくん」
 俺は背後から言葉をかけられ停止する。見ると、いつの間にか泣きやんでいた朝比奈さんが俺を見つめていた。
「ごめんなさい……本当にごめんなさい! まさかこんな事になるなんて考えてもいなかったから……ごめんなさい」
「いいんですって。朝比奈さんはあんな事が起こるなんて知らなかったんですから。文句を言いたいのは、
あなたの上司の方ですよ」
 これは本心だ。今回の指令の目的があの武装集団と関わりがあるというなら、朝比奈さん(大)は絶対に許せない。
危うく俺たちはみんな殺されそうになったんだからな。
「そう……ですね。この件はあたしの方からも確認します。いくらなんでもひどすぎます……」
 落ち込んだように言う朝比奈さん。全くこんなかわいい人を泣かせるなんて何を考えてやがるんだ。
 俺は自動車を降り、去っていくそれを見送ってから重い足を引きずって自宅へ入った……

◇◇◇◇

365朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:47:33.21 ID:qkVc/HHe0
 翌日。俺は昨日から継続している重い足を引きずりながら学校に向かった。
 『機関』の連中が俺たちを守ってくれると言っていたが、いつも歩く通学路にはそれらしい人物の姿は見えなかった。
まあ、プロだから早々姿をさらすようなマネはしないのだろうとしておく。
 教室に入ってまず気がついたことはハルヒがいないことだ。ま、たまに遅れることもあるだろうと思っていたが、
始業のチャイムが鳴っても姿を現さない。岡部からは、ハルヒは体調が悪いという連絡があったので、
午前中は休むと言うことになっていると告げられた。
 俺は即座に腹の調子が悪いと申告して、携帯を片手にトイレに駆け込み、古泉に連絡を取る。
「古泉、ハルヒが学校に来ていない。何か情報をつかんでいないか?」
『確認できています。涼宮さんはまだ自宅にいるようです。姿も確認していますので、
トラブルに巻き込まれたと言うことはないかと。たまにはこういう事もあるのではないでしょうか?』
「そうか……ならいいんだ」
 そこで連絡終了。全くハルヒの奴、こんなタイミングで学校を休んだりするなよな。
 俺は愚痴りつつ、教室に戻って午前の授業に入った。

◇◇◇◇

366閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:48:20.94 ID:6XWafscA0
支援
367閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:48:35.20 ID:qkVc/HHe0
 小高い丘の地面に寝転がったあたしの視線に映る太陽と空の青さが身にしみる。
こんなきれいな空を見上げたのはいつ以来だろうか。あたしが知っている空は、汚らしいばい煙でゆがんだものしか知らない。
「……伍長」
「はっ。何でしょう三佐」
 近くにいた伍長を呼びつける。愚直でまっすぐな目をあたしに向けて返事をする彼はいつでも忠実だ。
「物資の確保はできたか?」
「はい、武器弾薬の確保はほぼ全て完了しています。移転時に散っていた兵士も全て集まりました」
「何人だ?」
「151名です」
「そうか。ならば、49名は移転に失敗したと言うことだな?」
「……そうなります」
 悔しそうな表情を浮かべる伍長。戦闘もなにもせず25%の兵士を損失……か。
 あたしはすっと立ち上がると、
「さて、伍長。作戦開始だ。同志の死を意味あることにするためにも負けるわけにはいかない」
「わかりました。ただ……」
 伍長はどもる。あたしはふっと笑みを浮かべて、
「不満そうだな? 言いたいことがあるなら言っても良い」
「……は。僭越ながら、2発しかない対地ミサイルをここで使うのはどうなのでしょうか?
ここは温存して切り札としておくべきでは」
「相手にはTFEIがいる。あの攻撃をものともしなかったところを見ると資料以上の能力だ。
この程度のミサイルでは傷一つつけられないだろうな。ならば、単に戦術的に使うのではなく戦略的に使った方が良い」
「戦略的……ですか」
 あたしは周囲に広がるコンクリート製の街並みを眺めながら、
「この世界を見ろ。平和そのものだ。当然、目標もこの平和漬けの世界に浸りきっている。
だからこそ、そこを狙う。我々の世界のルールを見せつけて自らその身を差し出すようにし向ければいい」
「……なるほど」
 どうやら伍長は納得してくれたらしい。彼はふっと笑みを浮かべた。
 あたしはまた空を見上げて、
「作戦に支障はない。全て順調。問題といえば、この空をミサイルから吹き出る煙で汚すのは少々気が引けるぐらいだ……」
「……そうですね」
368朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:49:35.34 ID:qkVc/HHe0

◇◇◇◇

 昼休み。俺は一本の電話を受けて部室に向かう。声は昨日俺たちを襲ってきた女ボスのものだった。
「これからあなたのいる学校に攻撃します。攻撃方法はミサイルで」
 一方的に告げられた内容はそんなものだった。いきなりミサイルで攻撃だと? 宣戦布告かよ!
「これは交渉の一環です。今すぐ、朝比奈みくると涼宮ハルヒを引き渡してください。
そうすれば、攻撃は中止します。その学校にいる人々を傷つけないためにも誠意ある回答を期待しますね」
 ひょうひょうと告げる声。一体どうやって俺の電話番号を調べやがった! 個人情報保護法はどこにいったんだよ!
「……時間をくれ! いきなり言われても俺にはそんな決定権はない!」
「そうですね。ならば、10分だけ差し上げましょうか。その間に皆さんで決めてください。
学校にいる全ての人間の命か、それとも自分の命か。最もあなたに危害を加えるつもりはありませんが」
 やはりどこかで聞いたことがある声だ。何だ? すごく身近にいるような気がする――
 俺は意を決して聞いてみた。
「何者なんだお前は。名前ぐらい教えてくれたって良いだろ」
 ――しばらく沈黙が続く。そして、その声の主はこう名乗った。
 
 ……朝比奈みくる、と……


〜〜その2へ〜〜
369朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:50:08.80 ID:qkVc/HHe0
その1はここまでです。ありがとうございました。

その2は何とか今週中にはやりたいかと。
370朝比奈みくるのクーデターその1 ◆LEcaojha/Q :2007/01/15(月) 01:51:53.71 ID:qkVc/HHe0
にしても相変わらず他の職人の方々に比べて浮いているなぁ……orz
371閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:52:12.32 ID:g962sWUZO
乙wktk
372閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:52:50.71 ID:Kvw7rIszO
乙です
生殺しwktk


…さて、試験勉強するか
373閉鎖まであと 8日と 19時間:2007/01/15(月) 01:59:31.88 ID:gEt8POz/0
今日は良SSが豊作

俺の力学の単位は消失
374閉鎖まであと 8日と 18時間:2007/01/15(月) 02:12:49.27 ID:ecGRSGGw0
 携帯が鳴った。電車から降りて改札口を抜け、目的地もなく歩いていた時だった。ディ
スプレイに表示された「ハルヒ」の文字。俺は携帯を耳につけることなく、ボタンを押し
た。
『ちょっと、キョン! あんたどこにいるのよ!』
 予想通りの爆音に、携帯からの声が音割れしている。
『あんたねー、家にいなさいっていったでしょ!』
「分かったから、声を張り上げるな。頭痛がする」
 俺はハルヒの声にしぶしぶ答えた。
『あんたはそのぐらいでちょうど良いのよ。どうせ、あたしの声なんて聞いてなくて上の
空なんでしょ?』
 俺は何も答えなかった。
『どこにいるのよ?』
 ハルヒの質問に俺は顔を上げた。俺は、――長門の住んでいたマンションの前に立って
いた。どうして俺はこんなところにいるんだ?
375スリーウィーク 5:2007/01/15(月) 02:13:35.27 ID:ecGRSGGw0
『キョン? 答えなさいよ』
「マンション」
『どこのよ? ――大体は見当つくけどね。でも、あたしからは言いたくないわ』
「長門の」
『……そう。今から行くわ。そこで待ってなさいよ! 話はそれからするから』
 ハルヒはそれだけ言うと、一方的に電話を切った。俺は携帯をポケットに入れると溜息
をつき、あたりを見回した。やはりそこは長門のマンションだった。駐車場に続く細長い
スロープもあったし、キノコ型のポーチライトも確かにそのままだった。それらの象徴的
なものを見ていると、脳に直接訴えかけるような圧力が掛かって、あの時長門とここで二
人で立っていた時の情景がありありと浮かんできた。どうしてこんななんでもないところ
が重要なのだろうか? ――そうだ。あの時俺は、長門と一緒にいたかったんだ。でも、
もう少し前から、それに至る経緯を説明した方がいいだろう。
 あんたはどう思う? こんなヘタレになっちまった俺を笑えるかい? 人はその人に何
かがあった時、常に過去を探ろうとするものだ。そろそろ、どうして俺がこういう状態に
置かれているか、現状を把握したいだろう。少しだけ長くなってしまうだろうな。だが、
ハルヒが来るまでには終わる。あの日俺は唐突に訳の分からないことに巻き込まれて、そ
れが今まで一番たちの悪いものだったなんて気付いたのは結局決断する直前だったんだか
ら笑いものだ。それじゃあ、始めようか。どうしようもないほど煩雑で、感情に満ちた三
週間を。

続く
376愛のVIP戦士:2007/01/15(月) 02:25:22.90 ID:Xghv5o9p0
久々にWikiが軽いな、保守
377閉鎖まであと 8日と 18時間:2007/01/15(月) 02:54:03.51 ID:pJR1nNbDO
ほっしゅるんるん
3781/3 ◆2vQ3kRafwI :2007/01/15(月) 02:54:33.48 ID:pRr//6DY0
キョン乃進侍の続きを3レスほど投下します、前回まではこんな感じです。そして今回で終わりです。
http://www11.atwiki.jp/xgvuw6/pages/1965.html

キ「…zzz……、……zzz…
  (……なにやら良い匂いが……これは確か……おゆきさんの加厘粥……!
   確か……昨夜拙者はハルヒ姫様と舟で……、しかしここは拙者の御長屋の寝床?
   これは一体……あれは夢であったのか……じゃがあの時この手に感じたハルヒ姫様のお体の柔らかさは……)」
ゆ「朝餉の仕度ができました……」
キ「ややっこれは古泉殿に朝比奈殿におゆきさん、お三方お揃いとは一体いかなる……」
ゆ「あなた様と姫様は一時(いっとき:約二時間)程、このお屋敷から消えていた」
古「お主には感謝せねばならぬのぅ、御家は安泰、姫様は御無事でお戻りになられた
  我ら姫様を御守り致す者共のつとめも終わりそうにはない。まことにお主の働きは見事であった……」
朝「またお会いできてうれしゅうございます、もう二度とお戻りになられないかと……」

キ「……そっそれでは昨夜の事はやはり夢ではなく……」
古「あっいや、勘違い致すでない、大名家の姫君がお屋敷を抜け出されるなどある筈もない事
  もし左様な事が起こったとすれば某が切腹したくらいでは済まされぬ
  奥向きの方々にも累が及ぶは必定……、よいな全ては夢じゃ」
朝「さようでございます、姫様も昨夜のことは全て夢の中のこととお考えです」
キ「……(ハルヒ姫様は夢と……しかし拙者は昨夜口付け同様の事を……)」
古「どうしたのじゃ? キョン乃進、そうじゃ腹が減っておるのかな?
  これおゆきキョン乃進に朝餉を、いや刻限はもう昼近くじゃがのぅ」
ゆ「……どうぞ」
キ「忝い……、おゆきさん」

古「それでじゃキョン乃進、昨夜某が相談した婿入りの件じゃが、どうじゃ考えてくれたかの?」
キ「そっその儀はその……(確かに拙者はハルヒ姫様に口付けを……しかしハルヒ姫様は夢と…)
古「まぁ…直ぐにとは申さぬが良き返事を期待しておるぞ」
キ「……(ハルヒ姫様……)」
3792/3 ◆2vQ3kRafwI :2007/01/15(月) 02:56:25.34 ID:pRr//6DY0
 さて……舞台はいきなり飛んで一月後の涼宮家の江戸屋敷です。

古「キョン乃進様は大公儀の御旗本のご出身ではございますが、当家の婿君となられるからには
  当家の御流儀にお従い遊ばされますようにお願い申し上げます」
キ「委細承知でござる、古泉殿」
古「またそのような事をキョン乃進様はいずれは我らのご主君となられるお方
  我ら家臣一同へは気遣い無用でございます」
キ「うーむ、昔の癖は中々抜けぬものじゃの……」
古「まぁそれは追々とお慣れ遊ばされれば良いかと存じますが……
  まぁご存知でしょうが我が殿は只今在国中につき本日は姫様のみとのご対面でございます。
  おぉ姫様のお支度が整われたようですぞ、それでは只今より姫様とご対面を……」

朝「姫様、本日のお召し物はその南蛮柄ではございません、こちらに用意してある物に御召替えを」
ハ「よい、よいのじゃ今日はこれでなければいかぬ……」

ハ「キョン乃進! いやキョン乃進殿、不束者ではございますが宜しくお願いいたします」
キ「ハルヒ姫……、こっこちらこそお願いいたします
  しかし…本日のお召し物といい御髪(おぐし)といい、とても良くお似合いですぞ」

***************

こうしてキョン乃進とハルヒ姫は末永く幸せに暮らしましたとさ

めがっさ、めがっさ

 一ヶ月ちょい長々と失礼しました、ラストがなんとなく無理矢理っぽい展開になったりとか
 あと敵方の忍者役で朝倉さん登場とか、朝比奈さんが南蛮の歩野路地(テクノロジ)で大活躍とか
 結構企画は考えたんですが構成力不足のせいか活かせませんでした。
 色々とすいませんでした。
3803/3 ◆2vQ3kRafwI :2007/01/15(月) 02:58:26.93 ID:pRr//6DY0
< おまけ(いきなり現代語風にしてみる) >

ハ「ちょっとキョン乃進、もし父上が隠居してアンタが家督を継いだら、一年置きに参勤交代で国許に単身赴任なんでしょ?
  国許で浮気なんかしたら許さないんだから! もし浮気なんかしたらアンタなんか打ち首獄門よ!」
古「おやおや相変わらず夫婦仲のよろしい事でございますな」
キ「おい古泉、誤解するなこれはその……(入り婿の悲しさよ、新婚当初の初々しさも消え今では尻に敷かれっぱなしじゃ……
  じゃが愛しいハルヒ姫と一緒に暮らせるのであればそれも又幸せというものじゃ……)」

ハ「でも一年もキョン乃進と離れ離れなんて……その……たっ退屈よね(キョン乃進と一年も会えないなんて……)
  ……そうだわ! 父上がずっと隠居しなければいいのよ、そうすればキョン乃進はずっと江戸住まいだわ!
  そうよ父上はまだ四十五だものあと三十年は頑張ってもらわないと、早速国許の父上にお手紙でお願いするわよ!」

キ「……」

こうしてキョン乃進はハルヒ姫の尻にしかれながら幸せな生涯をすごしましたとさ。

めがっさ、めがっさ。
381閉鎖まであと 8日と 17時間:2007/01/15(月) 03:01:13.71 ID:pJR1nNbDO
GJ!
このお話大好きだぜ!
382閉鎖まであと 8日と 17時間:2007/01/15(月) 03:03:12.57 ID:dFZHfFVJ0
今日はペース激しいな
383閉鎖まであと 8日と 17時間:2007/01/15(月) 03:25:02.38 ID:Ckbs1k9R0
GJ!!
乙でした。
あ〜、終わっちゃったかー。
もうね、このお話大好き。
もっと見たかったなぁ。
最後まで楽しませてもらいました。
384閉鎖まであと 8日と 17時間:2007/01/15(月) 03:44:10.45 ID:pJR1nNbDO
385閉鎖まであと 8日と 16時間:2007/01/15(月) 04:20:42.57 ID:dFZHfFVJ0
消えていく日々 素晴らしいですね
ああやって選ばれたタイトルがこうもはまるように感じるとは
それまでに溜めに溜めた展開のおかげであの解決策も受け入れられました
386閉鎖まであと 8日と 16時間:2007/01/15(月) 04:43:57.14 ID:Sgnk6tGF0
消えていく日々に影響されて僕もなにか書いてみたくなりました
題は「涼宮ハルヒの決断」どうも胡散臭いな・・・・・
何分消えていく日々に影響されたのでその傾向が強いと思います
とりあえず完成したら投下するので宜しくお願いします
387閉鎖まであと 8日と 16時間:2007/01/15(月) 04:56:05.97 ID:pJR1nNbDO
>>386
wktk
388閉鎖まであと 8日と 15時間:2007/01/15(月) 05:35:06.51 ID:E+uJEKWl0
タイトルを、「涼宮ハルヒの〜」としてしまうとイマイチになりがちな件
作者も3秒で考えたようなタイトルと言っただけの事はある
389ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2007/01/15(月) 05:55:31.62 ID:bHd5m0d10
リンク反映について改善されました。ご確認ください。

サポートからの返信
>@wikiサポートです。
ご迷惑をおかけし、またご連絡が遅れ申し訳ございません。

11サーバが負荷増大のため正常アクセスが出来なくなっておりました。
それに伴って、11サーバの負荷軽減テストのため、
・xgvuw6を含む一部のwikiのみページ編集時に他ページの2次キャッシュを削除し
ない
という調整を行っておりました。

一旦中間キャッシュをクリアしましたので、
いままでの自動リンクは正常に反映されていると思います。
大変お手数ですがご確認よろしくお願いいたします。

このたびはご連絡遅れて申し訳ございません。
またしばらく調整をお許し・ご理解よろしくお願いいたします。

では今後ともよろしくお願いいたします。
390閉鎖まであと 8日と 15時間:2007/01/15(月) 05:59:37.05 ID:BM8pYl5BO
お疲れ様です
391ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2007/01/15(月) 06:22:58.93 ID:bHd5m0d10
すみません、またおかしくなってます。
392閉鎖まであと 8日と 13時間:2007/01/15(月) 07:38:48.74 ID:3As46NdL0
>>378
乙でした
毎回楽しみにしてたので終わっちゃって寂しい。
気が向いたら続編とか番外編とか書いて欲しいなー
GJでした
次回作も楽しみにしてるよ

>>389
管理人さん乙です。
393閉鎖まであと 8日と 13時間:2007/01/15(月) 07:54:31.45 ID:/Aa3ZY99O
age
394閉鎖まであと 8日と 12時間:2007/01/15(月) 08:30:17.31 ID:nrRplZc3O
保守
395閉鎖まであと 8日と 11時間:2007/01/15(月) 09:04:58.79 ID:lySVZWWGO
ホァ
396閉鎖まであと 8日と 11時間:2007/01/15(月) 09:41:32.76 ID:ijZWfK9dO
シュア
397閉鎖まであと 8日と 10時間:2007/01/15(月) 10:11:30.96 ID:lySVZWWGO
ホァッ
398閉鎖まであと 8日と 10時間:2007/01/15(月) 10:41:39.90 ID:DDSOpRv80
ちょっと質問。
北高の通学鞄ってどんなのだっけ?
スポーツバッグみたいのだっけ?
399閉鎖まであと 8日と 10時間:2007/01/15(月) 10:49:03.50 ID:/Aa3ZY99O
ぬるぽ
400閉鎖まであと 8日と 10時間:2007/01/15(月) 10:54:54.69 ID:Af9NtgjP0
ガッ
401閉鎖まであと 8日と 9時間:2007/01/15(月) 11:09:00.30 ID:nrRplZc3O
>>398
たぶんスポーツバッグ。
402閉鎖まであと 8日と 9時間:2007/01/15(月) 11:37:20.30 ID:/Aa3ZY99O


403閉鎖まであと 8日と 9時間:2007/01/15(月) 11:47:11.53 ID:FZgsPARt0
>>402

404閉鎖まであと 8日と 9時間:2007/01/15(月) 11:56:39.04 ID:os77HlII0
age
405閉鎖まであと 8日と 8時間:2007/01/15(月) 12:03:13.75 ID:35TDABzF0
ぬるぽ
406閉鎖まであと 8日と 8時間:2007/01/15(月) 12:06:50.03 ID:H6KKobwSO
なにこのぬるぽブーム






ぬるぽ
407閉鎖まであと 8日と 8時間:2007/01/15(月) 12:15:30.50 ID:H9QMNhK30

     _
   .,'´r==ミ、
   i 《リノハ从)〉   | |
  从(l|゚ ヮ゚ノリ    | |
    ⊂lj京i/)   人 ガッ
     ぐ/_ノ    <  >_∧∩
     し/ //. V`Д´)/ >>406
     (_フ彡      /



408閉鎖まであと 8日と 8時間:2007/01/15(月) 12:33:14.68 ID:CRCKNjcu0
ブームに便乗


ぬるぽ
409保守という名の妄想:2007/01/15(月) 12:51:18.13 ID:5kpq6hZBO
「キョン、あんた何か用事ある?」
「課題はもう終わってるし、買い物は昨日済ませたし……何もないな。ハルヒは?」
「あたしも特にないのよね。掃除と洗濯はさっき終わらせたし、晩ご飯の下拵えはしてあるか
らあとはちょっと手を加えればいいだけだし」
「じゃあ、このままのんびりしてるか」
「そうね」


「平和だな」
「平和よね」
410閉鎖まであと 8日と 7時間:2007/01/15(月) 13:02:38.77 ID:nrRplZc3O
平和だな…
411閉鎖まであと 8日と 7時間:2007/01/15(月) 13:39:50.69 ID:lySVZWWGO
がしかし
412閉鎖まであと 8日と 6時間:2007/01/15(月) 14:02:23.02 ID:Sp+AGFp6O
突然の…
413閉鎖まであと 8日と 6時間:2007/01/15(月) 14:08:33.87 ID:H6KKobwSO
●<ウホー!ウッホホアッアッアッー!
414閉鎖まであと 8日と 6時間:2007/01/15(月) 14:15:10.81 ID:BM8pYl5BO
スンマセン、
直ぐに片付けます
    ∧_∧
   (;´Д`)
--=≡ /   ヽ
   || ||
-=≡ /\ヽ/\\
  / =ヽニ) ニ) 
-= / /ヽ‖    
-//  /‖   
/ /  / ‖  ●<マッガーレ
Lノ  (_◎ニ◎ニ◎ニ◎
415閉鎖まであと 8日と 6時間:2007/01/15(月) 14:42:23.48 ID:SvO36wuMO
携帯厨の俺に最近の作品、長編でお勧めの話を教えてちょんまげ。
416閉鎖まであと 8日と 5時間:2007/01/15(月) 15:14:07.24 ID:nrRplZc3O
>>415
俺は「選択」が好きだな。
417閉鎖まであと 8日と 5時間:2007/01/15(月) 15:21:20.48 ID:SvO36wuMO
選択ね。
thx
418閉鎖まであと 8日と 5時間:2007/01/15(月) 15:23:27.09 ID:/Aa3ZY99O
ぬるぽ
419閉鎖まであと 8日と 5時間:2007/01/15(月) 15:23:51.20 ID:ijZWfK9dO
シスターパニックもオヌヌメ
420閉鎖まであと 8日と 5時間:2007/01/15(月) 15:55:54.10 ID:nrRplZc3O
>>418
ガッ!


保守
421閉鎖まであと 8日と 4時間:2007/01/15(月) 16:10:53.72 ID:nzD3thY/O
SSがたくさんきてた……
全部乙です
422閉鎖まであと 8日と 4時間:2007/01/15(月) 16:14:04.24 ID:dFZHfFVJ0
とりあえず順番に見てくれというしか
捨てがたいものが多すぎる
423閉鎖まであと 8日と 4時間:2007/01/15(月) 16:36:17.83 ID:nrRplZc3O
本当にVIPは良作揃いだぜ…
424閉鎖まであと 8日と 4時間:2007/01/15(月) 16:42:16.53 ID:ijZWfK9dO
ほしゅ
425閉鎖まであと 8日と 4時間:2007/01/15(月) 16:44:58.47 ID:KDfAvrNZ0
珍しくウィキが軽いのでいろいろと読んでいたら自分も書きたくなってしまったが、ネタが思いつかない
みんな想像力が豊かなんだなあ……
426閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:02:20.61 ID:Z/sILGoX0
ネタが無いならスレで募ってみなよ
427閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:08:48.71 ID:KDfAvrNZ0
>>426
自分で考えたほうがいい気がする。多分。
428閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:14:25.71 ID:nzD3thY/O
ネタ募集でまともなネタを提供したことがないww
新川さんがコンピ研部長殺害とかみくるがNHK受信料未納とかキョンが万引きして逮捕とかwww
429閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:16:59.25 ID:KDfAvrNZ0
どうやって話を考えればいいのだろうか。
それだけで悩んでしまう。
430閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:17:15.49 ID:Af9NtgjP0
>ハルヒと灰色空間に閉じ込められたあの事件のあと、俺は古泉に、いや機関の超能力者達に雇われていた。
>その内容はというと、ハルヒが閉鎖空間を作ったらただちにキスをして欲しいというもの
>まあこれだけで月5万ほどもらえるんだ、悪い話じゃない。


この設定で長編たのむ
431閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:20:14.54 ID:KDfAvrNZ0
>>430
その三行の文章だけで簡単なストーリーができてしまっている分、そこからストーリーを展開させるのがムズイな。
できるかどうかわからんが、一応考えてみる。
432閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:46:20.84 ID:Z/sILGoX0
期待してみるんだぜ…
433閉鎖まであと 8日と 3時間:2007/01/15(月) 17:47:30.18 ID:nrRplZc3O
wktk
434ネタはあるけど文才が無い:2007/01/15(月) 17:51:01.57 ID:5kpq6hZBO
「第一回、寿司ロシアンルーレット大会!」
「なかなか来ないと思ったら、これの準備をしてたのか」
「ルールは簡単よ。ここにある六つのマグロの中に一つだけ山葵が大量に入ってるヤツがある
わ。それを食べちゃった人が負け。もし山葵入りに当たっても耐え切ったらセーフね」
「僕達五人に対してマグロは六つ、つまり誰もハズレを引かない可能性もあるわけですね」
「そういうこと。さあ、どれを食べるか選ぶのよ!」


「あたしはセーフ、当然ね」
「俺もセーフだ」
「だ、大丈夫でしたー」
「僕もです」
「………………」
「どうした長門」
「……わたしも大丈夫(ポロポロ)」
「おい、目から涙こぼれてるぞ。もしかして当たったのか?」
「……違う。これは洗浄液の誤作動。わたしも大丈夫だtゴホッゴホッ」
「おい長門! 朝比奈さん水をお願いします!」
「は、はいっ!」
「だいじょゴホッ、だったゴホッ(ポロポロ)」
「わ、わかったから落ち着け。ほら、水飲めるか?」
「(ゴクッゴクッ)」
「どうだ、落ち着いたか?」
「……わたしが水を飲んだのは喉が乾いていたから。決して山葵入りに当たったからではない」
「わかったわかった。……まったく、変なところで意地を張る奴だな」
435閉鎖まであと 8日と 2時間:2007/01/15(月) 18:10:54.04 ID:nrRplZc3O
長門w頑張り過ぎwww
436閉鎖まであと 8日と 2時間:2007/01/15(月) 18:24:13.72 ID:dFZHfFVJ0
長門かわいいぞ
437431:2007/01/15(月) 18:42:04.44 ID:KDfAvrNZ0
>>431の設定で少しできたのだが、長編になるかどうかわからないので自分でも少し不安。
438431:2007/01/15(月) 18:42:41.76 ID:KDfAvrNZ0
>>437

ミスった。>>431>>430の間違い。
439閉鎖まであと 8日と 2時間:2007/01/15(月) 18:56:12.03 ID:Af9NtgjP0
そうか、作りにくい設定を作ってスマン
440閉鎖まであと 8日と 2時間:2007/01/15(月) 18:59:17.82 ID:PD7/oyYA0
第二部まだかよカス
早く七夕と消失やれよカス
441431:2007/01/15(月) 19:00:45.24 ID:KDfAvrNZ0
>>439
ちゃんと完結できるかわからんが書いてみた。
ちょっと待っててくれい。
442キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 19:05:01.85 ID:KDfAvrNZ0
高1の六月。
SOS団の活動(活動といっても、文芸部室で暇つぶししてるだけだが)が終わり、三人娘が部室から出て行った後のことだ。


「どうぞ。受け取ってください」
古泉は、いつものニヤケ顔で茶色い小さな封筒を差し出してきた。
「これはなんだ? また厄介事か?」
「いえ、僕からのラブレターです」
「死ぬまで殴ろうか?」
「冗談です。機関からの感謝の気持ちです」
なんか怪しいが、とりあえず差し出された封筒を手にする。
封を開けて、中を確認すると現金が入っていた。五万円だ。福沢諭吉の五重奏だ。
「俺はお前の機関に五万という大金を貸した覚えは無いぞ。なんのつもりだ?」
「給料です」
古泉の給料? なぜそんなものをバイトすらやっていない貧乏高校生に渡すんだ? 自慢か? 嫌がらせか?
「いえ、これはあなたの給料です」
「俺はバイトなんかしてないぞ」
「機関からです」
機関? 機関が俺に金を出してきたというのか? 可笑しな話だ。何のために?
「ですから、感謝の気持ちです」
「俺が何をした?」
「先月の閉鎖空間の件です」
せっかく忘れかけていたというのに思い出させるな馬鹿。あれは俺の忘れたい記憶ランキングで朝倉奇襲事件に次いで二位にランクインしてるんだぞ。
近くに四次元ポケットをつけた猫型(狸型?)ロボットがいたら、そいつから地球破壊爆弾を借りてるところだ。
「あなたのお陰で世界が救われたと考えればこれでは少ないくらいですが、一応受け取ってください」
なにか裏があるような気がする。表には必ず裏があるはずだ。
443キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 19:05:51.72 ID:KDfAvrNZ0
確かに嬉しいが、俺はこんなものを望んではいない。俺はこれからも古泉に「世界の為に働いたんだから給料くれ」と言うことは絶対にない。それは古泉だって理解しているだろう。
こんな金、機関からすればメリットは無いのだ。ただ単に好意からのものかもしれないが、俺は受け取るのを拒否するだろう。人から金を貰ったり、借りたりするのは俺は嫌いだ。
人に対して借りを作りたくないのだ。それも古泉にはわかっているだろう。では何故渡してきたか。
@機関は俺が受け取るのを断るとは考えていない。
A裏がある。
この二つだけだ。

「……古泉。その気持ちはありがたいが、俺はそんな金いらん。気持ちだけで十分だ」
「これは給料です。感謝の気持ちもありますが、働いてくれたから出すお金です。あなたに拒否権はありません」
「……」

……古泉……なに企んでやがる……

「もう一度聞こう。なんのつもりだ?」
「給料です」
表情を伺ってみるが、このニヤケ顔は変化ひとつ見せない。
ああ……そういうことか。
444キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 19:06:20.12 ID:KDfAvrNZ0
「もう一度聞こう。なんのつもりだ?」
「給料です」
表情を伺ってみるが、このニヤケ顔は変化ひとつ見せない。
ああ……そういうことか。
「お前、俺になんかさせようとしてるな?」
「正確には僕ではなく、機関の提案ですがね」
「で、俺になにをして欲しいんだ?」
「いえ、簡単なことです。閉鎖空間が発生したら消す。それだけです」
簡単なことと言っておきながら、今の説明の中には簡単な部分がなにひとつとして見当たらなかったぞ。長門でも無理なんじゃないか?
「ええ、長門さんでは無理ですね」
このニヤケ顔がここまでムカついて見えたのは今日が初めてだろう。
「長門にもできないことを、俺に月五万でやらせようとしてるのか?」
「おや、少ないですか?」
「そういう問題じゃない。不可能だ」
「いえ、あなただからこそ可能なんです」
古泉が何を企んでるのかは知らんが、とにかく俺にとって経済的には良いことでも、精神的にはお世辞にも良いとは言えないことだ。それだけは解る。それしか解らんが。
「……方法は?」
俺はおそるおそる聞いてみた。どういう答えが返ってくるのか、俺の1300グラム程の脳みそでも理解できる。それだけは嫌だ。別の答えが返ってくることを祈るしかない。
445キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 19:06:44.67 ID:KDfAvrNZ0
「簡単です。前回と同じ事をするだけです」
前回、どのようなことが行われたかご存知でない方は、「涼宮ハルヒの憂鬱」を読むことを勧めよう。
忘れたい記憶ランキング二位にランクインしていても、俺の海馬はその記憶を鮮明に覚えている。自分の海馬を握りつぶすことができるのなら、俺はあの晩に実行していただろう。
「……もし、NOと言ったら?」
「先ほども申し上げました通り、あなたに拒否権はありません」
……に、ニヤケ顔を殴りたいと本気で思ったのは生まれて十数回目だ……


「古泉……殴っていいか?」
「NOと言ったら?」
「お前に拒否権は無い」
446閉鎖まであと 8日と 1時間:2007/01/15(月) 19:09:23.61 ID:nrRplZc3O
支援?
447閉鎖まであと 8日と 1時間:2007/01/15(月) 19:10:11.47 ID:wA3g+IibO
支援
448閉鎖まであと 8日と 1時間:2007/01/15(月) 19:13:00.94 ID:nrRplZc3O
支援
449閉鎖まであと 8日と 1時間:2007/01/15(月) 19:14:42.92 ID:E/0FrTLp0
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Q子供でもやっていいのですか?
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Qやりたいのでアドレスのコピーの仕方を教えてください
Aコピー…「Ctrl」+「C] 
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Qアドレスはフリーアドレスではだめですか?
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Qなぜ親切に紹介しているのですか?
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Qポイントが早く貯まる方法ありますか?
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450閉鎖まであと 8日と 1時間:2007/01/15(月) 19:19:52.15 ID:Af9NtgjP0
>>449
SSとマッチしすぎて泣いた
451閉鎖まであと 8日と 1時間:2007/01/15(月) 19:21:27.32 ID:XwvHZnTv0
いつも>>449を見て思うこと
古泉並みの怪しさがあるなコレ、と。

アッー
452キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 19:25:30.12 ID:KDfAvrNZ0
>>445
拒否権は無いと宣言したのにも関わらず、こいつは丁重にお断りしやがった。
俺もできることなら、そうしたいんだが。
「で、具体的にはどうすればいいんだ?」
「閉鎖空間が発生したら、”ただちに”彼女にキスをする。それだけです」
それだけ、と言われても色々と大変じゃないか?
そもそも、俺とハルヒはいつでも何処でもキスするような関係ではない。
こいつもそれを知っているはずだ。こいつは正気か?
「その……え〜……”ただちに”じゃないといけないのか?」
「閉鎖空間には素早い対処が必要です」
こいつ……真顔で言いやがった……
「遅れたら?」
「我々の仕事が増える。それだけです。閉鎖空間の規模にもよりますが、少しばかり対処が遅くても差し支えは無いと思います。」
「……そうか」
何故、俺はこんなことに巻き込まれてしまったのだろう。ハルヒが機嫌を損ねたら接吻。あいつって機嫌良いときの方が少ないんじゃないか?
「もし、授業中に閉鎖空間が発生したらどうするんだ?」
「その場で対処してくださって構いませんが、あなた方のことを考えると休み時間にするのが最適ですね」
「他に人がいてもか?」
「してくださるというのなら、お好きなシチュエーションで構いません。我々が監視しているワケではありませんから」
こいつの言い方はなんかいやらしいな。殴っていいか?
「勘弁してください」
こっちのセリフだ。勘弁してくれ。
「仮に、キスしたとしよう。それで閉鎖空間は無くなるのか?」
可能性としてはありえるかもしれないが、絶対ではないだろう。
「ええ。保障します。閉鎖空間は”絶対”消えます」
……絶対の部分を強調しているのが更にムカつく。
453キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 19:25:41.84 ID:KDfAvrNZ0
「嫌ですか?」
「嫌だね」
「給料は電子マネーに交換できますよ? 給料は電子マネー払いがいいですか?」
そんなハイテクな金は使わん。なにがしたいんだお前は。
「……無駄なサービスまでついてるんだな」
「あなたの為です」
「結構です」
「拒否権はありません」
ニヤケ顔で言うな。


「古泉……殴っていいか?」
「NOと言ったら?」
「言う前に殴る」
454閉鎖まであと 8日と 1時間:2007/01/15(月) 19:35:16.99 ID:T+1ID9QN0
支援
455キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 20:00:41.75 ID:KDfAvrNZ0
>>453
「そもそも、俺とハルヒはどこででもキスするような仲じゃない」
「ええ。ですから、今からなってもらいます」
こいつは自分が何を言っているのか理解しているのか? ホントに殴りたいんだが……
「そう簡単に言うけどなあ、俺にとっても大事なことだ。少し考えさせろ」
「どうぞ。ただし、拒否権はありませんよ」
殺す……こいつは殺さなきゃ駄目だ。
手の届くところに、名前を書いただけで人を殺せるノートがあったら躊躇いもなく書いてる。20回くらい書いてる。
「女性陣の意見を聞いた方がいいでしょう。話の続きは明日にしましょう。明日いきなり実行しろと言われてもできないでしょう?」
ああ、それが普通の人間だろう。お前が俺のことを普通の人間だと思っているかわからんが。
「では、今日は帰りましょう」

古泉のヤロー……ただじゃ済まんぞ……
古泉は鞄を持って部屋から出て行った。
「戸締りお願いしますね」
追いかけていって首絞めてやりたいぞ。今の俺なら殺せる。
「殺人は勘弁してください」
勘弁してくれ。


第一章 完
456閉鎖まであと 8日と 0時間:2007/01/15(月) 20:01:05.23 ID:ijZWfK9dO
保守
457閉鎖まであと 8日と 0時間:2007/01/15(月) 20:04:50.45 ID:7omqciBX0
gj....おおお、gj
掛け合いがいいね。
458閉鎖まであと 8日と 0時間:2007/01/15(月) 20:11:36.94 ID:l+co+HeU0
乙!
続きwktkだぜ!
459閉鎖まであと 8日と 0時間:2007/01/15(月) 20:15:01.42 ID:Ckbs1k9R0
乙!!
面白い。
続き期待!!
460wkrnの蜃気楼/イミフ ◆TbjlUtTwCg :2007/01/15(月) 20:35:51.55 ID:f+maJF/AO
ワークテイカー
461キョンの奇妙なバイト(現在執筆中):2007/01/15(月) 20:42:09.44 ID:KDfAvrNZ0
少々お待ちください。
かなり時間掛かるかも。
462閉鎖まであと 8日と 0時間:2007/01/15(月) 20:46:44.07 ID:l+co+HeU0
>>461
待ちますんでゆっくりで良いっすよw
463閉鎖まであと 7日と 23時間:2007/01/15(月) 21:11:43.70 ID:l+co+HeU0
保守
464閉鎖まであと 7日と 23時間:2007/01/15(月) 21:12:01.21 ID:+/RVua7y0
465閉鎖まであと 7日と 23時間:2007/01/15(月) 21:21:44.90 ID:/Aa3ZY99O
ぬるぽ
466閉鎖まであと 7日と 23時間:2007/01/15(月) 21:22:44.32 ID:YdT9NaFI0
>>465
ぐちゃ
467閉鎖まであと 7日と 23時間:2007/01/15(月) 21:43:06.72 ID:pJR1nNbDO
ほ 本当は
し 神人さんより
ゅ 由良さん派
468閉鎖まであと 7日と 23時間:2007/01/15(月) 21:45:35.05 ID:g962sWUZO
アニメで、朝倉がキョンに話しかけた後に女子の輪に入って行く時の三人って誰と誰と誰?
469閉鎖まであと 7日と 23時間:2007/01/15(月) 21:59:53.58 ID:owM0IxmN0
はっす
470閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:00:04.73 ID:hBeGde/40
公式ぐらい買わないとSSなんてやってらんないぜ?
471閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:02:26.23 ID:g962sWUZO
>>470
公式に載ってたのか、もっかい隅々まで読んでくる。
サンクスorz
472閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:03:17.28 ID:l+co+HeU0
>>468
そんなシーンあったっけ…?
473閉鎖まで7日と22時間:2007/01/15(月) 22:07:20.47 ID:q/dIpcQm0
>>472
涼宮ハルヒの憂鬱TかUだったと思う。
474閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:14:49.69 ID:hBeGde/40
>>472
おねがい♪

の後
475閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:18:38.61 ID:ijZWfK9dO
age
476キョンの奇妙なバイト(現在執筆中):2007/01/15(月) 22:22:21.96 ID:KDfAvrNZ0

>>474

そんなシーンあったっけ……?
477閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:24:22.91 ID:pJR1nNbDO
キョン「だが、俺はあいつのスポークスマンでも何でもないぞ」

の後の朝倉のセリフ
478キョンの奇妙なバイト(現在執筆中):2007/01/15(月) 22:25:37.02 ID:KDfAvrNZ0
>>477
思い出した
479閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:25:58.87 ID:PmUo5Os+0
>>476
朝 「何かあったらあなたの方から涼宮さんに伝えてね──
キ 俺はあいつのスポークスマンじゃ──
朝 「お願い。(両手を顔の前でそろえながら)
480閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:30:49.27 ID:ijZWfK9dO
朝倉に「おねがぁい♪」
こんな風に言われたら絶対断れない
481閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:32:14.09 ID:pJR1nNbDO
その後のセリフが「じゃあ、死んで♪」
482キョンの奇妙なバイト(現在執筆中):2007/01/15(月) 22:33:57.80 ID:KDfAvrNZ0
>>481
喜んで
483キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 22:42:28.50 ID:KDfAvrNZ0
一応、第二章完成。
飯食ってから投下します。
484閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:42:36.63 ID:DDSOpRv80
投下して良い?
10レス程度の短編、みくる(大)メイン
485464:2007/01/15(月) 22:43:35.64 ID:KDfAvrNZ0
>>
486485だけど464:2007/01/15(月) 22:44:22.16 ID:KDfAvrNZ0
ミスった。
487閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:44:59.37 ID:KDfAvrNZ0
>>484
喜んで
488FAKE to FAKE 01 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:48:49.09 ID:DDSOpRv80
 その日俺は掃除当番だからというごく単純な理由で、少し遅れて部室へと向かった。
 何時ものようにドアをノック。……反応は無い。
 はて、おかしいな。この時間で長門しか居ないなんてことは無いはずだし、他の三人がい
れば何かしら反応があるはずだ。まさか誰も居ないのか?
 いやいや、まさかそんなことは……、何てことを考えつつドアに手をかけたら、ドアは至
極あっさりと開きやがった。
 部室の中では、どういうわけか古泉が一人机にもたれかかるようにして居眠り中だった。
「……」
 思わず無言のまま部室を見渡す俺。
 古泉が部室で一人居眠り、何ていうレアシチュエーションだ。何かしらの罠とか仕掛けが
有ってのことだとしてもおかしく無いだろう。と俺は思ったわけだが、それから入り口で少
し待ってみたものの、掃除用具入れや朝比奈さんのコスプレ衣装を引っ掛けたままになって
いる仕切りの向こうから人が現れたり何かが飛んでくるような気配は無かった。
「……ふむ」
 独り言になってしまうことを自覚しつつとりあえず古泉のところまで近づいてみるが、本
当に寝入っているようである。狸寝入りという可能性もあるが、古泉がここで一人狸寝入り
をする理由が分からない。そもそもハルヒ達は一体どこだ。
 古泉が本当にただ寝ているだけだというのなら、ハルヒ達が買い出しか何かで部室を飛び
出していて、古泉が留守番役、という辺りだと思うんだが……、本当に、それだけなんだろ
うか。
 古泉が部室でただ一人居眠りしているというこの状況を見ただけで色々と不穏なことを考
えそうになる俺もどうにかしていると思うが、こういうときの予感というのは、案外当たる
ように出来ているものだ。
489FAKE to FAKE 02 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:49:16.53 ID:DDSOpRv80
 俺はそのまま『次』に何が起こるかを待っていた。
 そしてそれは、ほんの数分後にやって来た。早いものである。
 聞こえてきたのはドアを叩くノックの音、しかし、その後に声が続かない。
 珍しい状況だ。
 この部室に入ってくることがある奴の中で、ノックと挨拶のうちノックだけ、何ていう入
り方をする奴は居ない。普通は両方だ。たまに何の呼び動作も無く入ってくる奴も居るが。
 これは、ノックだけということはつまり、俺に声を聞かせたくないってことだろうか。
「……どうぞ」
 俺は少しだけ考えてから、ノックをしてきた人物に部屋に入るよう促した。
 妙な予感は有るが、俺に拒否権は無いというか、件の人物の力量にもよるが、実力行使に
出られた場合を想定した場合所詮俺には何も出来ないも同然なので、結局はどう転んだって
入室を許すのと同じだろうという結論に達した俺は、こうして、出来るだけ当たり障りの無
い方法で入室を促すことにしたわけだ。
 まあ、わざわざノックをしてくるような人間がそんなに簡単に手荒な手段に出るとも思え
ないが。
「……ああ、キョンくんも居たんですね」
 なんて心配していた俺の目の前に現れたのは、俺が知る怪しさ満載設定持ち人物達の中で、
ある種一番実力行使という手段から遠そうな一人の女性だった。
 要するに、朝比奈さん(大)のことである。
490FAKE to FAKE 03 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:49:39.54 ID:DDSOpRv80
「朝比奈さん……」
「今日は、古泉くんに用事が有って来たんです……。と言っても、たいしたことじゃないん
ですけど」
 驚く俺に対して、朝比奈さん(大)は何時も通りの調子を崩さない。
「古泉は寝てますけど」
「ええ、あの子が眠らせてくれましたから」
「……」
 大体想像していた通りの回答では有ったが、それを聞いて、俺の中での目の前の朝比奈さ
んへの不信度合いが一気に上昇した。朝比奈さん、あなた一体何をしに来たんですか。
「キョンくん、席を外してもらえませんか?」
「……この状況ではいそうですかと言えるほど、俺はおめでたくないですよ」
 この、大きい方の朝比奈さんにはっきり否定の返事をしたのはこれが始めてかも知れない
な。朝比奈さんが一体何を考えているか知らないが、以前朝比奈さんが言ったことが確かな
ら、朝比奈さんの裏にいる連中と古泉の所属する『機関』の考え方は同じじゃないはずだし、
対立する可能性もあるというような感じだった。
 あのとき、小さな朝比奈さんは、だからと言って古泉に含むところがあるわけでもないと
いうことを付け加えてくれたが……、今この状況下で、朝比奈さんと古泉を二人きりにする
わけには行かないだろう。
 朝比奈さんが眠っている古泉に一体何をするか、分かったものじゃないからな。
 まあ、最悪の事態を想定しているわけじゃないけどさ。
491FAKE to FAKE 04 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:50:03.74 ID:DDSOpRv80
「キョンくん……、あのね、キョンくん、これは……、わたしの、個人的な用事なんです」
「……」
「時間と場所の問題から、このわたしが、古泉くんに会いに来られるのが、今、この時だけ
で……」
 朝比奈さんの声が、少しずつ尻すぼみになっていく。嘘を吐いているような雰囲気は無い。
 結構、必死って感じだな。……演技って可能性もあるけどさ。
 俺は朝比奈さんから古泉を庇うような位置を保ちつつ、ふと、最近の朝比奈さんの姿を思
い出す。最近の……、そう、朝比奈さん(小)の最近の様子だ。
 朝比奈さん(小)が古泉に、どういう態度をとっているか……、そういう風に絞って考え
て行くと、答えは、案外単純明快だった。
「今でも長門が苦手なのは、そのせいですか?」
「……それも、有ります」
 過程をすっ飛ばした俺の質問に、朝比奈さんが首を縦に振る。
 決定的ってほどじゃないが、一応納得出来るだけの答えではある。
「……キョンくん、席を外していてもらえませんか? あの子達は、後30分は帰って来ない
はずですから……」
「……」
「お願い、キョンくん」
「……仕方ありませんね」
492閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:50:06.66 ID:+/RVua7y0
紫煙
493FAKE to FAKE 05 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:50:28.42 ID:DDSOpRv80
 朝比奈さんが一体古泉に何をしたいのか。
 多分、それは本当に個人的な、本当に、何でも無いような事なんだろう。
 本人が気づかない間に、ちょっとだけ……、という程度のことだ。多分それは、この朝比
奈さんが、あの、俺が何時も見ている小さな朝比奈さんだったときには出来なかったことな
んだ。
 勇気を振り絞って、限られた時間だけ、相手が眠りに落ちた間の……、そうだな、これだ
け条件が揃えば、信用してやれないことも無いさ。
 長門にはちょっと悪いような気がするし朝比奈さん(小)にも申し訳ないが、時には、こ
ういうのもありだろう。……多分、これっきりってことなんだろうしな。
「ありがとう、キョンくん」
 朝比奈さんが、居眠り中の古泉の脇に立ったまま、俺を見送った。
 俺はとりあえず時間を潰すべく、そのまま部室棟を出た。




494閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:50:59.84 ID:nPzTBrRi0
>>468
憂鬱T。剣持・西嶋・瀬能の手芸部3人組と思われ。
ちなみにDVD版でないとそのシーンはない。
495FAKE to FAKE 06 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:51:06.91 ID:DDSOpRv80
 すぐ近くに、人の顔が有るのが分かる。
 目を閉じていても、髪をかきあげる仕草をしていることが、雰囲気と音から伝わってくる。
「……あの」
 ギリギリの位置で、僕は目を開いた。
 目の前に居るその女性は、そんな僕の様子に驚いた素振りも見せなかった。
 この姿の彼女に会うのは初めてだけれども、さっきの会話も聞いていたし、事前に彼女に
関する情報を得ても居るから、不思議に思うことは一つも無い。
 彼女は、朝比奈みくるその人だ。
「やっぱり、起きてたんですね」
「……当たり前です」
 すっと離れていった朝比奈さんに対して、僕は言い返した。
「あんなたどたどしい動作じゃ、やっぱり、気づいちゃいますよね」
 朝比奈さんが振り返っているのは、多分、昔の自分のことなのだろう。
 そう、彼女にとっての昔、つまり、何時も一緒にいる方の朝比奈さんは、今日、僕のお茶
に薬を入れた。……何か仕掛けているというのが丸分かりというほどの、怪しさ満載という
感じの動作で。
496閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:51:25.24 ID:nPzTBrRi0
すまん、割り込んだ支援。
497FAKE to FAKE 07 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:51:53.49 ID:DDSOpRv80
「ええ……、まあ、それだけでも有りませんが」
「え?」
「あの後長門さんが僕に本を渡しに来たでしょう? あのとき長門さんがこっそりお茶に入
った薬を分解してくれていたんですよ」
「あっ……」
 気づいて無かったのか……。
「ご丁寧に栞を使って警告してくれた上、回避方法まで提示してくれましたよ」
 方法は至極単純、買出しだったら全員で行こうと言ってみるとか、力仕事が必要だからと
いう理由をつけて僕が涼宮さん達と行くことにして長門さんが部室に残るとか……。今日は
さして拘りの無い買出しのようだったから、こういう風に提案をすれば、涼宮さんはあっさ
りと頷いてくれただろう。
「……古泉くんは、それでも、わたしと会う方を選んでくれたんですね」
「ええ……、何となく、そうした方が良いような気がしましたから」
 予感、いや、予兆とでも言うんだろうか。
 理由は良く分からないけれども、僕はここでこれから起こりうることに、何らかの意味が
有るんだろうと考えていた。そして僕は、それが一体どんな意味が有ることなのかを知りた
いと思った。
498FAKE to FAKE 08 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:52:48.89 ID:DDSOpRv80
「ありがとう、古泉くん」
「お礼を言われるようなことじゃ有りませんよ……。でも、まさかあなたが現れて、あんな
ふうに話を持っていくとは思いませんでしたけどね。あれじゃ彼は、あなたは僕を好きだっ
たんだっていう風に思い込むでしょうね」
「ええ……、それが目的でしたから」
 朝比奈さんは、至極あっさりと白状した。
「あの頃の……、普段、僕達と一緒に過ごしていた頃のあなたは、『古泉一樹に好意がある
ように振舞え』とでも言われていたんでしょう?」
「……」
 沈黙は、多分、肯定の証なのだろう。
 何時も一緒にいる方の朝比奈さんの、最近の言動、態度……、一見僕に好意的に見えるそ
れは、どこかぎこちなくて不自然だ。
 もしかしたらそういう命令を受けているからじゃないかと思ったのは、つい最近のことだ
けれども。
「全く……、あなたも、役者ですね」
 朝比奈さんが、僕を好きなわけが無い。
 彼女が好きなのは、違う誰か……、多分、彼、なのだろう。
 それが、叶わない恋だと知っていたとしても。
「……古泉くんは、本当に、何時も、凄いですね。どんなこともどんどん言い当てちゃって
……、わたしじゃ、全然敵わない……」
「……」
「ごめんなさい、古泉くん……。迷惑、ですよね。長門さんにも、悪いですし……」
「……別に、迷惑と言うわけでは有りませんよ。長門さんは事情を理解してくれるでしょう
しね。ただ、何時もこちらにいる方の朝比奈さんが少しかわいそうな気はしますが」
 未来の自分に、自分の気持ちさえ誤解させられるよう仕向けられ、偽りの恋心を演じさせ
られ続ける、小さな少女。
 正直、同情を禁じえない。
 ……今の僕に、彼女に同情するだけの権利が有るかどうかは、分からないけれども。
499FAKE to FAKE 09(終わり) ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 22:53:44.99 ID:DDSOpRv80
「……」
「わたし、もう帰りますね。……そろそろ、時間ですし」
 朝比奈さんが身を翻し、部室の扉のところまで歩いていった。
 僕は後を追わない、今の僕にはその権利も資格もないし、そんなことをする理由も無い。
「あ、そうだ……。最後に一つ、ううん、二つ、良いですか?」
「何ですか?」
「あの頃の、わたしが……、一番、敵わないなあって思っていたのは、涼宮さんじゃなくて、
長門さんだったんですよ」
「えっ……」
「それと……、演技のはずが、本気になっちゃうってことも、世の中には、有るんですよね。
それじゃあ、さよならっ」
 朝比奈さんは呆然とする僕を他所に、一気にそう言い切ると、ぱっと部室を出て行ってし
まった。追いかけることは出来ない。彼女は多分、部室の扉を閉めると同時にこの時間から
消えただろうから……。
 けれど今のは……、今のは、一体、どういう意味なんだろうか。
 いや、それは、その……、考えてみれば、一つの想像に繋がるけれども、まさか、そんな
……、そんなことは、無い、と思う。
 これも、きっと、彼女の演技なんだと……、演技の内なんだと、そう、思いたい。
 だって、僕は……。


 終わり
500閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:55:46.73 ID:wA3g+IibO
支援
501閉鎖まであと 7日と 22時間:2007/01/15(月) 22:59:14.76 ID:KDfAvrNZ0
支援
502閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:08:32.22 ID:9/8PRJUe0
長門→古泉←みくる設定と解釈しておk?
503 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/15(月) 23:11:19.90 ID:DDSOpRv80
なんかえらく分かりづらい話ですみません。
古泉⇔長門は鉄板のつもりですが、後は想像にお任せしますってことで。

まとめはいつもどおり自分でやっておきます。
504閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:12:13.97 ID:nrRplZc3O
GJ!
切ないなぁ…
505キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 23:17:31.12 ID:KDfAvrNZ0
キョンの奇妙なバイト第二章
もうすこししたら投下したいと思ってます。
506閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:17:44.28 ID:H2Yyv1wQ0
しかも古泉は実は女だからなぁ
koizumi「WHAT!?」
507閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:20:41.83 ID:wA3g+IibO
>>506
ちょwwwwwwwww
508閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:24:02.01 ID:DDSOpRv80
>>506
マテマテマテw
509閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:25:27.38 ID:KDfAvrNZ0
>>506
なんだその衝撃の事実www
510キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 23:32:48.42 ID:KDfAvrNZ0
人間の平均睡眠時間は8時間だ。これは一日の3分の1にあたる。要するに人間は人生の3分の1は寝て過ごす。
100年生きた人間なら、33年。そりゃちょっと長すぎだろう、と思う人もいるだろう。
しかし、上には上がいるもので、コアラの一日の睡眠時間は20時間だ。12分の11。
120年生きてても(そんなに長生きじゃないが)、起きてるのは10年だけ。なんだか時間が勿体ない気がする。
だが、睡眠というのは非常に大事なことである。
なぜなら、睡眠というのは脳が唯一休めるときだからだ。
人間は起きているとき(平均して16時間、人生の3分の2)はほとんど脳を働かせている。だから、脳にも休息が必要なのだ。
でも、脳が本当に休んでいるのは睡眠のなかでもノンレム睡眠のときのみだ。ノンレム睡眠というのは、簡単に言うと夢を見ない睡眠のことだ。
それに対してレム睡眠は夢を見る。レム睡眠のときは夢を見ているので、いうまでもなく脳が活動している。長いときには1〜2時間程、レム睡眠の状態の場合もある。
脳が休めるのは実質6、7時間程度なのだ。
511キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 23:33:26.86 ID:KDfAvrNZ0
その俺の脳を休ませることができる短い時間を強制終了したのは、妹である。もうすこし脳に休みをください。
妹に起こされ朝食をとり制服に着替え支度をして外に出る。
朝起きてから、玄関から出るまでの事柄を短くまとめると一行に収まるが、朝が弱い俺にとっての辛さや焦りは、文章から読み取ることのできるそれの100倍はあるだろう。
箱根駅伝の選手でもバテそうな心臓破りの坂を越え、目的地に到着。
この時点で、一日のスタミナの3分の1は使い果たした。
ここに登校するだけで、結構鍛えられるんじゃないか? 鍛えたいワケではないが。

教室に到着。
俺の席にはいくつか難点がある。
まず一つは、窓際だということだ。窓際のなにが悪いかって? 日差しが眩しすぎるんだよ。珍しく真剣に勉強しようと思っても、日差しが強すぎて黒板の文字が見えないときもある。
二つ目に、後ろから二番目という点だ。俺はそんなに視力の良い方じゃないからな。小さい文字だと見えん。まあ、黒板なんて見てないが。
そして最後に……これは言わなくても解るだろう。今日の団長様は機嫌が悪い。本人から直接聞いたわけじゃないが、機嫌が悪いことくらい見れば解る。オーラが出てるからな。オーラの泉なんて爽やかなもんじゃない。オーラの毒の沼といった感じだ。ラーの鏡でも落ちてそうだ。
そんな触れただけでもHPが減りそうなオーラを出しながら、団長様は机に顔を伏せている。
「ハルヒ、どうしたんだ?」
「……うるさいわね……寝不足よ……」
確かに機嫌が悪いというよりは、眠たそうに見える。そして機嫌が悪そうに見える。どちらにしても、こいつの機嫌が悪いのは変わらない。
まあ、ここは放っといたほうがいいな。さわらぬ神に祟りなし。
512閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:34:21.43 ID:hBeGde/40
なかなかのポジションとキョンは言っていたはずなのにな
513キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 23:34:35.97 ID:KDfAvrNZ0
午前の授業ほど、つまらないものは無い。面白くも無いし、まず理解が出来ない。俺にとっては三角関数もフェルマーの最終定理も一緒だ。
たけしの挑戦状以上につまらない授業は、俺にとっては子守唄だ。脳があまり休めなかったから、休息を欲しがってるんだな。俺は自分の脳には逆らわない。眠いときは寝るさ。それが授業中でも。
目覚めたときには昼休み。急いで弁当を腹に詰め込み、文芸部室に行く。おそらく古泉がいるはずだ。殴ってやりたいな。
部室のドアの前に立ち、とりあえずノック。
「どうぞ」とニヤケ顔の声がする。
ドアを開けると、ハルヒ以外のメンバーが揃っていた。朝比奈さんは当然だが、制服だ。まだ昼休みだからな。
「今、三人で相談していたところです」
「俺のバイトについてか?」
「ええ」 古泉はイスに座ってお茶をすすっている。
長門は定位置につき、活字をひたすら目で追っている。よく視力落ちないな。
「で、俺の拒否権は相変わらず存在しないのか?」
「もちろんです」と素晴らしいほどの0円スマイルで言い放った男、古泉。
待てよ……俺に拒否権が無かったとしても、無理やりキスさせるのは不可能だ。俺が職務放棄して、給料も受け取らなければ、それは俺の拒否権が発動されたことになるんじゃないか?
「不可能」 長門によってあっさりと否定された。
「長門さんの高速言語に操られるか、自ら進んで行動するか。選んでください」 古泉はそういうと、湯飲みを長机の上にコトンと置いた。
泣きたい気分だ。俺に自由は無いのか?
「選択する自由はある」 長門はこちらに視線を上げた。
長門……それ自由って言うのか? まるで独裁政治だ。今すぐにでもクーデターを起こしたい気分だ。
「なあ古泉、閉鎖空間が現れたらいつも通りにお前達が戦えばいいんじゃないか? 無理に何かを変える必要は無いんだ」
「確かにその必要はありませんが、改善というものはあったほうがいいでしょう?」
「お前らにとっての改善は、俺にとっての改悪だ」
514キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 23:34:50.58 ID:KDfAvrNZ0
「我々はそれでも構いません」
おいおい。神様の鍵がどうなってもいいのか? 長門だって観察対象のイレギュラー因子に何か起こると困るだろ?
「問題ない。大丈夫」
「誰にとって、問題が無いんだ?」
「涼宮ハルヒ」
聞いた俺が馬鹿だったよ。俺にとっては大問題。それは俺が一番理解してることだったのに。
「キス以外に手段は無いのか?」
「ないことはない。しかし、確実ではない」
キスするって言ったって、俺とハルヒはそんな仲じゃない。
「ええ、わかってます。なので、朝比奈さんにいろいろとご協力を」と古泉。
朝比奈さんに? なぜ?
「女心を理解できるのは女性だけでしょう?」
ああ、なるほど。
515キョンの奇妙なバイト:2007/01/15(月) 23:35:18.93 ID:KDfAvrNZ0

今日のこの時間から、古泉と朝比奈さんによる奇妙なレッスンが始まった。
「まず、キスを日常で出来るようにするためにはその過程が大事です」 古泉は席を立って説明を始めた。「朝比奈さん、女性としては男性にどのように接してもらいたいものですか?」
古泉から朝比奈さんにバトンタッチ。
「ええと……基本的には優しく、ですかねぇ?」
ですかねぇ?ってあなた女性でしょう。朝比奈さん。
「あ、でも優しすぎるのもいけません! 過度の優しさはかえって、女性を傷つけます!」
やっぱり女性だからなのか朝比奈さんは女心を熟知していた。
「時にはやさしく、時に厳しく、です!」
「なるほど、飴と鞭ですか」
古泉、飴と鞭って躾とかのやつじゃないか? 朝比奈さんに怒られるぞ。
「まあ、そんな感じです」と朝比奈さん。
ああ、そんな感じなんだ。躾ける感じか。
516閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:35:32.72 ID:KDfAvrNZ0

まあ、こんな感じで奇妙なレッスンが行われていた。傍から見れば恋愛のためのレッスンである。しかし、これは俺のバイトのための勉強である。奇妙だ。実に奇妙だ。
「そこで泣いてしまったら、声をかけずに静かに抱きしめてあげましょう」と古泉。
ああ、ドラマでそんなシーンあった。ベタだなあ。
「なぜ恋愛ドラマにベタなシーンが多いんだと思います?」
考えたこともない。ネタが尽きたからじゃないのか?
「それが女性にとっての理想的な恋愛だからです。流行というのは常に移り変わります。しかし、恋愛というものは人類がこの世に誕生してから一度も形が変わってません。恋愛の理想とは、どの時代でも同じなんです」
なるほど。なんか知らんが、古泉が言うと説得力があるな。

このあたりで普通の人間なら一つの疑問が浮かぶハズだ。ああ、浮かばないやつは長門に操作されてるぞ。




本来の目的から外れてないか?

閉鎖空間が発生したときに、ハルヒの唇を奪えばいい。それだけなんだ。古泉だってそう言っていた。
しかし、その古泉ですらどんどん脇道に逸れている気がする。古泉が脇道に逸れてしまうなんてことありえるだろうか。いや、どちらかというと俺が脇道に誘導されているような……
ああ、古泉は故意に逸らした。これが古泉含む三名の計画だったわけだ。ハルヒと俺をくっつけるというのが。やられた。
しかし気に食わない。俺を騙してまでくっつけたいのか?
なんかだんだん腹が立ってきたぞ。俺は昨日からずっと騙されてたのか。チクショー。
目には目を。歯には歯を。

第二章 完
517閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:43:03.11 ID:Ckbs1k9R0
乙!!
書くの早いな。
第三章wktk!!
518閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:45:09.72 ID:nrRplZc3O
乙!
続きwktkだぜ
519閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:46:34.03 ID:wA3g+IibO
乙!
続きが気になるな〜
520閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:55:05.32 ID:j+nILIHv0
乙ですよ!

いつか、「古泉実は女の子」話で、1本書いてみたいんだぜ。
521閉鎖まであと 7日と 21時間:2007/01/15(月) 23:58:02.40 ID:DDSOpRv80
乙!

>>520
エロパロに有った、国木田は実は男装している女の子なんだ!
というネタ振りを思い出すな・・・。
522閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:11:03.90 ID:qOivPjz00
批判じゃないんだ別に

何の事件やら交流も説明も無く、ごく当たり前のように古×長やら古みくっていうのは
唐突過ぎて違和感があるというか「なんで?」と説明を求めたくなる

…のは俺だけか。
こんなこといって突き詰めていくとSSなんか書けなくなっちゃうもんね。
523閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:18:03.52 ID:01rc5RK00
唐突にハルヒとキョンが夫婦なSSも有ったりするから
それと似たようなものじゃないだろうか。
二次創作だから「そういうもんだ」と割り切るのが吉。

くっつく過程が頭の中にあっても
その過程なかなか書けない人間も居るのだと思ってください・・・自分がそうなんだがorz
524閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:22:17.63 ID:QtoNSjvKO
文才があるか無いかも分からない俺がハルヒ+ローゼンって言う電波を受信しましたよ
525閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:23:30.29 ID:IoJSZwXY0
>>524
その昔な・・・そういうスレがあってのう
526閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:25:05.23 ID:2bv2IEPN0
    長門
     ↓
古泉→キョン←みくる
     ↑
    ハルヒ

やっぱこうじゃないとな
527閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:26:10.38 ID:UcGgE77FO
ハルヒ+ローゼンのスレは良かったなぁ…
意外と合うんだよな。
528閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:26:33.50 ID:qOivPjz00
その二人でなければならない、その二人が結びついた分岐
ストーリー上の必然性、みたいなものを提示するべき、とでも言おうか。

自分もSS書いてて
「なんかもう、これハルヒの世界じゃなくても構わなくね?」
「キョンっぽいキャラと長門っぽいキャラをにゃんにゃんさせてるだけじゃね?」
と自己嫌悪で頓挫することなんかしょっちゅうなわけで
529閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:28:58.13 ID:QtoNSjvKO
まじでか
知らんかったよ
テンクス
530閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:31:58.35 ID:gA4Wn2pi0
古×長のSSが大好きな俺だが、その関係が恋愛で、相思相愛だったら
それはそれでまた複雑な気分。どうしても消失長門のイメージを取り払う
ことが出来ないので、長→キ×ハから逸脱することが出来ないんだよな。
531閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:34:20.06 ID:Cytk0ivp0
奇妙なバイト、展開が面白いし、いい引きですね
ところでコアラの睡眠時間は計算が違うかなーと
532キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:37:16.80 ID:/VSqUZIm0
>>531
そんなバカな!?
533閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:39:00.80 ID:01rc5RK00
>>528
そういうときは萌えとキャラ愛で乗り切るべし。

所詮二次は二次、どこかで割り切ることも大事かもよ?
534キョンの奇妙なバイト(訂正):2007/01/16(火) 00:39:45.75 ID:/VSqUZIm0
>>531
今、脳内計算機を駆使してはじき出した結果です。
コアラは人生の6分の5(12分の11は間違い)を寝て過ごします。
120年生きてたら、起きてるのは20年(10年は間違い)です。
535閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:40:04.36 ID:uCRP7QxtO
>>531
そんなバナナ!?
536閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:44:31.05 ID:Jqs9CId60
キョンがキョンになっちゃう話ってどうだろ?w

ベタかw
537閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:46:12.43 ID:4Jz9rv6oO
>>536
!?
538キョンの奇妙なバイト(第三章完成):2007/01/16(火) 00:46:56.39 ID:/VSqUZIm0
今、第三章出来たんですけど少し短いかも。
投下希望あったら投下します。
539閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:47:16.11 ID:Y04zSKlkO
>>536
いいね!それでいってみよう!
540閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:47:55.69 ID:IErvOsYF0
>>536
キョンの意識をある時間に移動させて、そこに元からあった別のキョンの意識をどこかに追いやってしまうってことか?

自分で書いててわけわかめ
541閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:49:45.30 ID:bFyWWRbG0
>>536
八丈島の(ry

>>538
wktk
542閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:50:02.15 ID:Y04zSKlkO
>>538
wktk
543キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:51:27.14 ID:/VSqUZIm0
第三章

放課後。
長門の本を閉じる合図と共にハルヒは真っ先に鞄を持ってドアから飛び出していった。長門は時報の役割を果たしている。なぜ、長門が本を閉じるのが合図なのだろうか。誰かが決めたわけでもないが、いつのまにかそうなっていた。奇妙だ。
「では始めますか」
奇妙なバイトのレッスンの始まりである。

「では、今回は男女の交際について勉強しましょう」
交際ねえ。
「付き合ってもいないのに、キスをするというようなことはあまりありません」
だろうな。俺もそう思う。
「では、あなたがこのバイトをするためにはどうすればいいか」
お前が何を言いたいのかわかってるよ。
付き合え、ってことだろ?
「物分かりが早くて助かります」
こっちの気持ちを考えてくれよ。
「おや、あなたは涼宮さんのことが嫌いなんですか?」
「誰もそんなことは言ってないだろう」
「では好きなんですか?」
「……わからない。俺は鈍い人間だからな。そんな感情が自分のなかにあったとしても気づかないかもしれん」
これが率直な感想だ。
「でしょうね。でも、覚えてますか?」
「なにが?」
こいつはいつもの二倍のスマイルで言った。
544閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:51:32.37 ID:Jqs9CId60
楽しみにしてるw
545キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:51:47.42 ID:/VSqUZIm0
「あなたがどういう気持ちでも、あなたに拒否権はありません」
殴ってやりたいな。寿命で死ぬまで。
「では、早速ですが告白の練習をしてもらいます」
出たな。ここまでは予想通りだ。
「……練習って言ってもな……」
「では、朝比奈さんを練習台にしましょう。いいですか?」
そう言って、古泉は朝比奈さんの方に振り向いた。
急にバトンタッチされたので、朝比奈さんは一瞬ビクッとしたが、快くOKしてくれた。
「告白って言っても、どういうのがいいんですかね?」
「ん〜〜〜……やっぱり自分の正直な気持ちをぶつけるのが一番だと思います!」
546キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:52:06.66 ID:/VSqUZIm0
罠その@  誘導尋問
ここで言う告白というのは、当然愛の告白のことである。愛の告白ということは、自分が相手のことを想っているという旨を伝えるのである。要するに「好きだ」と言うのである。
さて、ここで問題発生だ。朝比奈さんと古泉は事前に打ち合わせをしている。今の朝比奈さんのひとことでハッキリした。
朝比奈さんが「自分の正直な気持ちをぶつけるべき」と言ってしまったので、練習とはいえ告白をしたら、それがハルヒに対する正直な気持ちということになってしまうのである。そうなると、もう逃げられない。
この程度のトラップは予想済みだ。
対処法はひとつ。
547キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:52:28.14 ID:/VSqUZIm0
「自分の正直な気持ちですか? そうですね……
『今まで、自分の心の内にある感情の正体がわからなかった。でも、これが恋愛感情なのかもしれないと自分でも気づいた。
それが誰に対しての感情なのか今までわからなかったが、今ハルヒを前にしてハッキリとわかった。 好きだ。 付き合ってくれ。(棒読み)』みたいな感じですか?」

このトラップの対処法は、もう諦めることだ。無理に抵抗すると墓穴を掘る。

「それが、涼宮さんに対する正直な気持ちですね?」 古泉が珍しく真面目な顔で聞いてきた。
当たり前だろ? そうじゃなかったら、ハルヒにキスしてない。
「それもそうですね。もう、あなたには拒否する理由はありません」
そうくると思った。
「でも棒読みではなく、感情を込めて言ってみないと練習になりませんよ?」
「わかってる。」
では、朝比奈さんの前に立つ。なんか練習なのに緊張する。不思議だな。

「今まで、自分の心の内にある感情の正体がわからなかった。でも、これが恋愛感情なのかもしれないと自分でも気づいた。
それが誰に対しての感情なのか今までわからなかったが、今ハッキリとわかった! 好きだ! 付き合ってくれ!」

俺の計画のために一部、修正させていただきました。朝比奈さん。
練習だとわかっているのにも関わらず、朝比奈さんも恥ずかしかったのか顔が真っ赤に染まっていく。
「はい、今のでいいと思いま…………」
548キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:52:43.96 ID:/VSqUZIm0
朝比奈さんの言葉が止まった。

次に、なにか恐ろしいものでも見たかのように、顔が真っ青になっていく。

「……朝比奈さん?」

横の古泉を見ても、同じような表情をしてドアの方を向いている。

俺はドアの方に振り向いた。









……ハルヒが呆然と立っていた。

ハルヒは右手に持っていた鞄をドサッと足元に落として、こう呟いた。

「……嘘」

ハルヒの頬を一筋の涙が濡らしている。

「キョンのバカッッ!!!!」

ハルヒの叫びが校舎中に響き、ハルヒは走り去っていった。
549キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:53:04.62 ID:/VSqUZIm0
「……これはマズイですね」 古泉が真っ青な顔をして呟いた。
朝比奈さんは顔を真っ赤にして涙を流している。
「ど、どうしよう……」朝比奈さんは泣きながら何度もそう呟いていた。
「とりあえず、涼宮さんを追いかけてください!」古泉が今まで出したことのない大声で叫んだ。
ああ、言われなくてもそうするさ!
俺は何も言わずに全速力で部室から飛び出した。

廊下を走るなと校則で定められていたって関係ない。俺は走った。
スタミナの3分の1を登校時に使い果たしていても関係ない。足を鍛えなかった俺が悪い。
もう本能で走っているような感覚だった。体は疲れてもう走れない。
もう走れないハズなのに、俺の足は止まらない。
いま、捕まえなければ、もうハルヒに会えないような気がする。
そんなことは絶対に無いけど。でも追いかけなければならない。
それが俺の運命。朝比奈さんに言わせれば「規則事項」。
そう。俺には何故こうなったかわかっている。
俺が何のために走ったのか理解している。
しばらく走ると、ハルヒの姿が見えた。
その影は、教室の中へと吸い込まれていった。一年五組の教室へ。
俺は滑り込むように、教室へと飛び込んだ。
550キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 00:53:21.14 ID:/VSqUZIm0
ハルヒは自分の席に座って頬杖をつきながら窓の外を眺めている。
「……遅かったじゃない」

「お前ほど足は速くない……」
相当な距離を走ってきた。俺は肩で息をしている。

ハルヒは落ち着いている。涙も流していない。

ハルヒは俺の方を向いて、100Wの笑顔でこう言った。










「キョン、計画通りねっ!」

「ああ、ぬかりは無い」
午後の夕焼けに照らされた教室に、二人の笑い声が響いた。
551閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:55:55.31 ID:IoJSZwXY0
支援
552閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:56:34.31 ID:Y04zSKlkO
支援
553閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:56:38.90 ID:UcGgE77FO
支援
554閉鎖まであと 7日と 20時間:2007/01/16(火) 00:57:59.73 ID:UcGgE77FO
支援
555閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:01:30.06 ID:UcGgE77FO
支援
556閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:05:41.50 ID:Y04zSKlkO
支援?
557閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:06:43.46 ID:UcGgE77FO
支援なのか?
乙なのか?
558キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 01:19:41.35 ID:/VSqUZIm0
一応、これで第三章は終わりです。短すぎてすいません。
四章は出来るだけ長くしたいと思います。
559閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:22:47.99 ID:Y04zSKlkO
乙!
wktkだっぜ!
560閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:33:11.04 ID:kyZ68+nj0
乙です!
それと・・・『禁則事項』と『規定事項』がごっちゃになってますよん

ってことで続き楽しみにしてます!
561キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 01:35:38.71 ID:/VSqUZIm0
>>560
ほんとだ!
すいません。勢いで書いてるから間違い多いです。大目に見てください。
562閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:41:07.81 ID:yT7603j90
乙!
wktkだ!!!
563閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:52:18.72 ID:Jqs9CId60
こう見てると俺も書いてみたいなw

ちょっと挑戦してみる
564キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 01:54:25.46 ID:/VSqUZIm0
多分、四章の投下は午後になります。
今日、学校休みなんで、一睡したら仕上げたいと思います。
それまで、できれば忘れないでください。
565涼宮ハルヒの決断:2007/01/16(火) 01:56:56.73 ID:88eK7aK10
>>564
大学生さんですか
乙です!wktkです
566閉鎖まであと 7日と 19時間:2007/01/16(火) 01:58:38.65 ID:BM9Qfruv0
うっかりこっちに特攻野郎落とすところだった(´・ω・`)
英語の語彙が少ないのは専攻がドイツ語だからだYO
567閉鎖まであと 7日と 18時間:2007/01/16(火) 02:04:58.15 ID:Nvm09+xY0
>>563
がんばれ
短編でもそれなりに需要があると思うし
568閉鎖まであと 7日と 18時間:2007/01/16(火) 02:06:03.14 ID:3CvWp9FE0
朝倉視点にしてみたら、えらいノリノリになって、筆が進む進む。
でも、これ朝倉のキャラとしていいのかな?
キョンとハルヒを足して2で割ったようなノリになってるよ。
569閉鎖まであと 7日と 18時間:2007/01/16(火) 02:12:16.52 ID:QW1uj0+w0
古泉とキョンが入れ替わってしまい…

キ「お前…何企んでる?!」
古「ふふ…何も企んでいませんよ。ただこの体だといろいろ好都合だなと思いまして」
キ「なんだと…?」

<略>

ハ「ねぇ古泉くん、今日のキョン、なんだか変なの。
…なんていうか…その…優しいっていうか…それにあんなこと…」

<略>

キ「古泉…。俺の体でハルヒに何かしたらただじゃおかねぇぞ」


そんなキョン×ハルヒで古泉→ハルヒ な電波を受信したがオチが思い浮かばんので寝る
570閉鎖まであと 7日と 18時間:2007/01/16(火) 02:14:32.65 ID:ZV3sj9l70
595 名前:ウィキ管理人 ★ :07/01/16 02:02:08 ID:???
申し訳ありませんが、今日一日だけ新規分の編集は避けてもらっていいでしょうか?
お願いします


だそうです。
今日は投下しても編集はなしでお願いします
571閉鎖まであと 7日と 18時間:2007/01/16(火) 02:15:48.03 ID:LJqnWHvS0
572キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 02:25:10.68 ID:/VSqUZIm0
>>565
まだ大学生じゃないです。
中二です。
ではおやすみです。
573閉鎖まであと 7日と 18時間:2007/01/16(火) 02:26:03.60 ID:WcSGdCHhO
●<マッガーレ
∧     |
マ     ガ
ッ     ッ
ガ     マ
|     ∨
レ―ガッマ>●
574閉鎖まであと 7日と 18時間:2007/01/16(火) 02:34:34.60 ID:Z/Ptc0oG0
>>569 にwktkしながら保守して寝る
575ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2007/01/16(火) 03:02:57.57 ID:N1ZFWSBj0
お待たせしました。まとめ全ページ移行完了しました。

つきましては、そのことについてまた話し合いをしたいので今夜八時頃より検討を雑談所の『まとめ運営スレ』にて話し合いたいと思いますので、
ご協力お願いします。

また、新まとめの公開、現まとめのページ作成・編集はそれまでお待ちください
576閉鎖まであと 7日と 17時間:2007/01/16(火) 03:11:49.80 ID:yT7603j90
中二? ホントに?
末恐ろしいな。
待ってるぜー。
577閉鎖まであと 7日と 17時間:2007/01/16(火) 03:50:37.13 ID:yT7603j90
保守
578閉鎖まであと 7日と 16時間:2007/01/16(火) 04:35:19.45 ID:Nvm09+xY0
579閉鎖まであと 7日と 16時間:2007/01/16(火) 04:58:15.33 ID:Cytk0ivp0
奇妙なバイト いいですね
ハルヒ来るかなーとは思っていましたが、ああ続くとは
展開が楽しみです
580閉鎖まであと 7日と 15時間:2007/01/16(火) 05:03:44.86 ID:bFyWWRbG0
>>575
いつもお疲れ様です!
581閉鎖まであと 7日と 14時間:2007/01/16(火) 06:17:13.04 ID:bFyWWRbG0
保守
582閉鎖まであと 7日と 14時間:2007/01/16(火) 06:51:43.44 ID:vNdtxn6RO
ぬるぽ
583閉鎖まであと 7日と 13時間:2007/01/16(火) 07:23:13.24 ID:KxqwBkYtO
アッ!!
584閉鎖まであと 7日と 13時間:2007/01/16(火) 07:51:22.73 ID:LorV5C5X0
保守
585閉鎖まであと 7日と 12時間:2007/01/16(火) 08:10:39.05 ID:UcGgE77FO
管理人さん乙です。
586閉鎖まであと 7日と 11時間:2007/01/16(火) 09:00:48.23 ID:BN3zOqvJO
掘れ掘れ
587閉鎖まであと 7日と 11時間:2007/01/16(火) 09:41:34.79 ID:BN3zOqvJO
掘れ掘れ
588閉鎖まであと 7日と 11時間:2007/01/16(火) 09:47:27.01 ID:ooArln6l0
アッー アッー
589閉鎖まであと 7日と 11時間:2007/01/16(火) 09:50:37.46 ID:WII22YHc0
こっちで書いてみるっていうのも 手だな・・・・・・
性的なやつがNGって何処までがNGだろう?
590閉鎖まであと 7日と 11時間:2007/01/16(火) 09:54:21.50 ID:UcGgE77FO
性行為がNGかな…?
591閉鎖まであと 7日と 10時間:2007/01/16(火) 10:03:15.31 ID:ooArln6l0
臭わせる程度なら大丈夫だと思うけどね。
592閉鎖まであと 7日と 10時間:2007/01/16(火) 10:06:28.87 ID:vNdtxn6RO
ガッ!
593閉鎖まであと 7日と 10時間:2007/01/16(火) 10:41:42.01 ID:BN3zOqvJO
掘れ掘れ
594閉鎖まであと 7日と 10時間:2007/01/16(火) 10:49:43.52 ID:WII22YHc0
ぶっちゃけ いじめとかじゃないと キレが出ないんだよな・・・むずかしい
5951年5組の幽霊 ◆mtod1dSyOc :2007/01/16(火) 11:04:36.59 ID:QvegLsUtO
ここで俺が没ネタを無理矢理終わらせて保守代わりに投下する。
没ネタだから話メチャクチャww


 もう一度、あの世界に戻りたい……。
 それがあたしの望みだった。長門さんに消され、新しい世界で再構築され、また消された。
 そんな風になっちゃったから、情でも湧いちゃったのかな。地球に、北高周辺の世界に戻りたくなった。
 だから、情報統合思念体に頼んでみたの。そしたら、許可が降りちゃった。……条件付きだけど。
 条件は二つだった。一つは負の感情……つまり、悪意とかそんなのを全て消去されること。
 簡単に言っちゃうと、性格を変えられるってことかな。これは全然構わないんだけど……。
 二つめ、体を与えず、精神だけで行くこと。ちょっと辛いんだけど、以前の独断専行のお仕置なんだって。
 ……しょうがないか。あたしが体を持って行ったら、キョンくんを驚かすだけだもんね。
 あたしは二つの条件を受け入れて、目を閉じた。次に起きたらあの世界かぁ……。


 目を開くと、あたしは家の前の公園のベンチにいた。制服を着てるし、体も見えるんだけど、他人には見えないみたい。
 あたしの横のベンチでは、カップルがキスをしていた。幸せそう……羨ましいな。
5961年5組の幽霊 ◆mtod1dSyOc :2007/01/16(火) 11:05:28.67 ID:QvegLsUtO
 だけど、ここは居心地がいい。見慣れた風景、体に馴染む気候。
 他人から見えないこと以外は、全部元のあたし。……食事も出来ないし、物も持てないけど。
 今日はもう遅いから、家で休んで、明日いろいろな場所を見て回ろう。
 そう思って、マンションの入口に向かった時だった。キョンくんと涼宮さんが並んで出て来ていた。

――トクン――

 キョンくんの顔を見た時、あたしの胸が鼓動を大きくした。なに……この感情。
 死についてすら何も思わないあたし達。なのに、確かに今、あたしは感情を抱いていた。
 嫉妬、そして……愛情。
 そっか……あたし、本当はキョンくんが好きだったのかも。
 あたしは立ち止まっているけど、向こうは近付いてくる。仲良さそうに口喧嘩をしながら。
 3メートル……2メートル……。
「ひ、久しぶり!」
 あたしは明るく声をかけた。……つもりだった。
 だけど、二人はあたしに気付かず、肩が触れたのにすり抜けて過ぎて行った。
 ……そうだよね、見えないんだし。
 少し残念な気持ちを押さえながら、荷物の撤去された自分の部屋に戻り、眠った。
 はぁ……キョンくん、かぁ……。


 特に眠たくもなかったあたしは、かなり早くに起きたけど、敢えて生徒が多い時間まで待って家を出た。
 やっぱり、話せなくても知り合いの顔を多く見たいから。
 ……負の感情がなくなっちゃったからかな、今は全ての人を愛しく感じちゃう。
 長門さんに芽生えてきた感情のおかげかな。他のインターフェースもどんどん人間っぽくなってきてるみたいだし。
 情報統合思念体全体に良い傾向が生まれてるのかな? あたしも、あんなことしなかったら今頃……。
「おはよう!」
5971年5組の幽霊 ◆mtod1dSyOc :2007/01/16(火) 11:07:14.94 ID:QvegLsUtO
 坂道を歩いて登っていると、後ろから声が聞こえてきて、あたしは振り向いた。
「西嶋さん……おはよう」
 と、声をかけたあたしを素通りして、いつの間にか前にいた剣持さんと瀬能さんの所にかけていった。
「おはよう。昨日、実はね……」「そうそう……」
 あの頃、あれだけ仲がよかったのに、今じゃ挨拶さえ出来ない。……後悔ばかりが募っちゃう。
 なんで急進派に属してたんだろう。主流派にいれば今ごろ、あの輪の中にいたかもしれないのに……。
 気がつくと、あたしは立ち尽くしたまま涙を流していた。どうして涙が流れているのかはわからない。
 たぶん、『寂しくて、悲しい』にあてはまるんだと思う。長門さんには絶対に生まれない感情だよね。
 そんなことを考えながらも、地面を濡らすことのない涙はどんどん零れていった。
「あたしも、普通の人間になりたかったなぁ……」
 たった今、芽生えた想いだった。友達と話したい、好きな人を見ていたい。
 負の感情を全て消された今ならわかる。……あたしは、人間に近付いた。
 今更、意味がないことだけどね。


 始業のチャイムが鳴ると、あたしは元クラスメイトの人達の様子を見て回った。
 クラス替えでバラバラにはなっているけど、やっぱりグループで仲は良さそう。
 長門さんは、キョンくんや涼宮さんと一緒のクラスになって楽しそうだし。
 ……ほんとあたしってダメな奴ね。これ以上、幸せそうなみんなの日常が見てられなくなっちゃった。
 もう、この場所から帰りたいけど、一度申請が通ると一年は戻れない。
 ……この生活、辛いよ。
 元クラスメイトのいない場所へ行こうと思い、あたしはある場所へ向かった。
5981年5組の幽霊 ◆mtod1dSyOc :2007/01/16(火) 11:08:21.93 ID:QvegLsUtO
 今は新入生が使っている、1年5組の教室。懐かしい……。
 机の配置も、窓からの景色も変わらない。ただ、人が入れ替わっただけの教室。
 そこで、あたしは放課後まで時間を潰して、誰もいない教室になるのを待った。
 そういえば、キョンくんが来たのもこのくらいの時間だったよね……。
 窓の外は赤く染まっていた。こういう景色が見たかったのも、この世界に戻りたがった一つの理由かな。
 その時、廊下側の窓にキョンくんの姿を見つけた。それと同時に、胸がいっぱいになって、あたしは聞こえるはずのない声を発した。
「……キョンくん」
 振り向かない。涙が出そうになっちゃう。
「キョンくん」
 そのまま通過していく。あぁ、ダメだ。涙が出ちゃうよ。話したいよ。
「ぐすっ……キョンくん!」
 一番の大声を出したけど、キョンくんは通過していった。
「やっぱり……ダメだよね。えへへ、あたしバカ……」
 誰もいない教室に、あたし以外に聞こえることのない一人言が響いた。
「今……誰か呼んだか?」
 過ぎ去ったはずのキョンくんが、ドアから顔を覗かせていた。……聞こえたの?
「まさかな。こんな時間に誰かいるわけないか」
5991年5組の幽霊 ◆mtod1dSyOc :2007/01/16(火) 11:08:42.40 ID:QvegLsUtO
 消えて行く背中にあたしは叫んだ。
「いるよ! あたしがいる! 気付いて!」
 そんな叫びも虚しく、キョンくんは教室を出て行った。そして、あたしはまた一人で取り残された。
 ほんとは期待してた。これまで、いろいろなことを解決してきたキョンくんなら、あたしの姿に気付いてくれるかなって。
 でも、ダメだった。あたしはこれから一年間、誰にも気付かれないまま。
 しょうがないよね、自分で望んだことだから。
 そして、あたしは心に決めた。帰るまでの一年間、1年5組として授業に参加しよう。
 誰も気付かない存在として、ずっとここにいよう。
 そのために一つだけ、情報統合思念体に頼みごとをした。それはすぐに許可が降り、みるみるうちに形をとっていく。
「これが、今日からのあたしだけの机……」
 誰も座らない机と椅子が一組増えて、あたしはそれに腰掛けて呟いた。
「朝倉涼子です。よろしくお願いします……」
 そして、あたしはその机にとり憑いた幽霊のようになった。


おわり
600閉鎖まであと 7日と 9時間:2007/01/16(火) 11:22:13.89 ID:BN3zOqvJO

やっぱり朝倉はガチ
601閉鎖まであと 7日と 9時間:2007/01/16(火) 11:43:27.36 ID:vNdtxn6RO
せつねぇ…

602閉鎖まであと 7日と 8時間:2007/01/16(火) 12:19:59.74 ID:DwbKiP4iO
乙。・゚・(ノД`)・゚・。
603閉鎖まであと 7日と 8時間:2007/01/16(火) 12:35:03.71 ID:hUNYgrBr0
ぬるぽ
604閉鎖まであと 7日と 8時間:2007/01/16(火) 12:55:17.23 ID:UcGgE77FO
乙。

昼間から。・゚・(つД`)・゚・。
605閉鎖まであと 7日と 8時間:2007/01/16(火) 12:58:08.23 ID:dBfF52s0O
朝倉・・・泣かせるじゃねぇか
606閉鎖まであと 7日と 8時間:2007/01/16(火) 12:59:54.33 ID:dBfF52s0O
>>603
(マッ)ガッ(レー)
607閉鎖まであと 7日と 7時間:2007/01/16(火) 13:14:03.38 ID:FQ1kvb1DO
昨日もきた携帯厨だが選択をようやくよみおえた。
設定がよかったなあ、ハルヒキョン好きな俺には美味しくいただけた。
次はシスターパニックを読んでみるにだ
608閉鎖まであと 7日と 7時間:2007/01/16(火) 13:17:18.70 ID:BN3zOqvJO
>>607
ハルヒの起源は日本です><
609閉鎖まであと 7日と 7時間:2007/01/16(火) 13:30:36.34 ID:UXGoiE6y0
保守ついでに駄文放出(´д)ノ
610ずれた世界:2007/01/16(火) 13:31:38.20 ID:UXGoiE6y0
その1
実に平和な一日だった。
ハルヒは特におかしな提案を出すこともなく静かにパソコンをいじっていたし、
朝比奈さんはいつものメイド姿で俺の生命の活力であるお茶を煎れてくれたし、
古泉は毎度のスマイル顔で今日も俺のゲーム連勝記録の更新に貢献していたし、
長門は、、、そういえば今日は長門とは一言も口を聞いていないかもしれないな。
まぁ、アイツと何かしら長話をするときは決まって俺が苦労する羽目になると相場が決まっていたからな。話すことがないってのはやっぱり平和だったということだ。
というわけで俺はいつもと何も変わらない、むしろハルヒが静かだった分少しはいつもより平和だった一日を過ごして帰路についた。
611ずれた世界:2007/01/16(火) 13:32:22.88 ID:UXGoiE6y0
その2
家についてからは特にすることもなく、少しは勉強でもするかなと思っていたが
気がついたらいつのまにか布団の中で冒頭の回想をしていたって寸法だ。
ま、勉強なんていつもしてないし次の定期試験まではまだ日もあるから別に
かまわないんだけどな。
また明日も平和な一日であってくれよ
誰にしているのかもわからないお願いをして俺は回想を終了して寝ることにした。

困ったことに俺の願いがかなえられることはなかった

612ずれた世界:2007/01/16(火) 13:33:37.48 ID:UXGoiE6y0
その3
眩しい、、、
まだ寝ていたいという俺の希望は無視され、部屋の電気がつけられた。
妹の奴が起こしにきたのだろうか? なんだかぜんぜん寝てない気がするのだが、、、
何かおかしい、そう思って目を開けてみる
どうやら、また、らしい。
家の布団の中で寝ていたはずだった俺はいつの間にか部室のソファーの上にいた。
ハルヒの奴がまた世界を作り変えようとしているのか?
だが、すぐにどうやら違うらしいと思う
部室の窓から入り込んでいる日差しはここが閉鎖空間でないことをつげていた。
どうなってんだ・・・
俺のつぶやきに答えが返ってくることはなかった。
613ずれた世界:2007/01/16(火) 13:34:52.97 ID:UXGoiE6y0
その4
時計を見ると12時23分を表示していた。
となると、普通ならばこの時間はお昼休みである。
そういえば部室の外からは生徒達の話し声が聞こえる。
とりあえず、ここにいても仕方がないので外に出てみることにする。
ドアを閉める時に違和感にきずく、部室のドアには大きく「SOS団」と書かれた
張り紙がしてあった。
俺の記憶が正しければここまで大々的に張り出していた覚えはないのだが・・・
まあ、この状況そのものが謎である今、コレくらいのことに気をとめていても仕方がないのでとりあえず自分の教室にむかってみることにする。
614ずれた世界:2007/01/16(火) 13:35:48.90 ID:UXGoiE6y0
その5
学校の様子はいつもとまったく変わっていなかった。
自分だけが時間を乗り越えてしまったような感覚である
まさか、朝比奈さん関係なのだろうか?
以前にも朝比奈さんとは時間跳躍をしたことがあるが、今回はそれとは違うと
いう感じが非常につよい。
なぜなら、一見すると何もかわらない学校に見えるが どうも違和感がある。
誰かが同じものを作ろうとした際に生じた微妙な違いのようなものが。
きょろきょろと周りを見ながら歩いていたら渡り廊下から自分の教室が視界に
はいってきた。
この状況の本命であろう涼宮ハルヒが誰かと話していた。
いや、おれはあいつを知っている。

ハルヒは俺にそっくりな奴と話をしていた。
615閉鎖まであと 7日と 7時間:2007/01/16(火) 13:36:39.63 ID:wEQb2G+c0
支援
616ずれた世界:2007/01/16(火) 13:37:52.25 ID:UXGoiE6y0
まだここまでしか書いてないので 書いてきます(´д)
617閉鎖まであと 7日と 7時間:2007/01/16(火) 13:40:02.41 ID:wEQb2G+c0
wktkしながら待ってる
618ずれた世界:2007/01/16(火) 13:54:50.64 ID:UXGoiE6y0
その6
困った、実に困ったことになった。
ハルヒと話しているのは99%俺であろう。残りの1%は考えたくないが、、
いままでハルヒ関係でいろいろな目にあっていたが自分がいたことはなかった
とりあえず、あの二人に見つかるのはまずいだろう
直感的にそう思い、俺は足早にその場を去ろうとした、、のだが
「あれ、あなたはさっき教室にいたような気がしたのですが、、?」
みつかった
不幸中の幸いか、俺を見つけたのはいけ好かない笑みを浮かべた古泉だった。
こいつは教室を見るとこちらに向き直り
「やはり、あなたは教室にいますね。となるとアナタは誰ですか?」
ああ、正直俺もそれを知りたいんだ。まあ、俺が知りたいのはあっちのオレが
誰だか ってことだがな
「ふむ、何にせよここで話しているのはまずいですね。涼宮さんに見つかったら言い訳のしようがないですからね」
それもそうだな
「とりあえず、部室に行きましょうか」
619ずれた世界:2007/01/16(火) 14:11:50.60 ID:UXGoiE6y0
その7
俺は自分の知りうるこの状況を古泉に話した。
古泉は最初は笑みを浮かべながら聞いていたのだがだんだんと難しい顔になり
俺の話を聞き終えるとすぐに、頭を抱えたくなるようなことを言いやがった
「僕の記憶がただしければですね、涼宮さんがあなたを閉鎖空間に閉じ込めたようなことは一度もありませんでしたよ?」
なんだと?あの事を忘れるなんて寝ぼけててもありえないぞ
「可能性としては次のことが考えられます。今の世界が涼宮さんによって改変されたものであるか、もしくはアナタがパラレルワールドに紛れ込んだか、というものです」
またその手の話か、悪いが俺はそういった単語には拒絶反応を示すようになってるんだ
「あくまで可能性としての話ですよ、正直僕にはどうしてアナタが表れたのかわかりません」
結局わからないんじゃないか、そういえば長門はいないのか?あいつは大体いつも昼休みは部室にいたような気がするのだが
「長門さんがですか?彼女なら昼休みにはいつも中庭にいたと思うのですが」
そうだったか?まあ、この際そんな細かいことは気にしてられんな。きっとあいつならこの状況がわかっているはずだ
620竹石敏規:2007/01/16(火) 14:20:23.64 ID:sbzLvn2r0
ちょぉっと待ったあっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
AA、コピペ、なんでもいいからこの糞スレを埋めてくれ!たのむ!!!

http://anime.2ch.net/test/read.cgi/voice/1159756616/
621ずれた世界:2007/01/16(火) 14:25:59.59 ID:UXGoiE6y0
その8
「では、僕が長門さんを呼びにいってきますよ。アナタはここで待っていてください。
涼宮さんに見つかってしまっては大変なのでね」
 ああ、わかってる。なるべく早く呼んできてくれ。 誰かがきたら困るからな
「承知しました、では」
 そう言い残すと古泉は部室を出て行った。
 あらためて部室を見回すとところどころ俺の知っている部室とは違っていた。
 さっきはこの状況に戸惑っていてあまりよく見ていなかったが
 翌々考えてみれば部室にソファーなど置いていない。
 それに、団長机の上にはパソコンは置いてなく、代わりに動くのかもわからな
 い非常に古びれたテレビが置いてあった。
 あと、何かまだ違うところがあるような気がするのだがどこだろう、、
「お待たせしました」
 俺が小さな脳みそをきりきりと働かしていると古泉が戻ってきた。
 古泉の後について入ってきたのは見間違うはずもなく長門であり、こいつの無表情は
 やはりいつものように俺の心に安心感をもたらしてくれた。
622閉鎖まであと 7日と 6時間:2007/01/16(火) 14:27:43.20 ID:9H5Io5Al0
wktk
623閉鎖まであと 7日と 6時間:2007/01/16(火) 14:29:36.87 ID:dBfF52s0O
ちゃんと書き上げてから投下しない?現在進行形投下だと、
他に投下したいという人が居た場合にその人が投下しにくいという問題があるんだが。
624ずれた世界:2007/01/16(火) 14:31:55.20 ID:UXGoiE6y0
ああ、申し訳ない じゃあ、書きあがったら一気に張るので自分の投稿は
一回終了ということで(´д)ノシ
625閉鎖まであと 7日と 6時間:2007/01/16(火) 14:34:00.87 ID:dBfF52s0O
>>624
wktkして待ち伏せしてる
<●/
 ||
 <<
626保守という名の妄想 朝比奈みくる編:2007/01/16(火) 14:38:44.96 ID:xkufHoQUO
「朝比奈さん、今何か困ってる事とかありませんか?」
「ふえっ、えーっと、何でですかぁ?」
「朝比奈さんには日頃お世話になってるんで、何かお返しが出来ないかと思いまして」
「お世話なんてそんな、あたしは別にたいした事してませんよ?」
「いえ、充分してもらってますよ。それにお返しといっても、俺が出来る事なんて限られてま
すからね。あまり深く考えず、軽い気持ちで何か言ってみてください」
「キョンくんがそこまで言うなら……うーんとぉ」
「あ、買い物はいつでも付き合いますから、それ以外でお願いします。」
「買い物以外ですかー。うーん。あ、それじゃあですね、お茶の試飲をお願いしたいんですけ
ど、いいですか?」
「試飲?」
「はい。部室で出すお茶の新しい候補がいくつかあるんですけど、あたし一人で選んでいると
どうしても好みが偏っちゃうんですよね。ですからキョンくんにも飲んでもらって、その意見
を参考にしたいなあって思って」
「それは構いませんが、俺はお茶の味の細かい評価なんて出来ませんよ?」
「あ、聞きたいのはあくまでキョンくんの好みですから。これはいいけどこれはイマイチ、み
たいな感じで大丈夫です」
「わかりました。その程度でいいならいつでも使ってください」
「あ、あとですね、お休みの日にあたしの部屋に来てもらう事になっちゃうんですけど……、
それでもいいですか?」
「休日の予定は市内パトロールくらいしかないですからね、問題ないですよ」
「良かった……それじゃあ詳しい事は後で連絡しますね。よろしくお願いします」
「はい、任せてください」


(えへへ、キョンくんをお部屋に呼ぶ約束しちゃった。あ、お茶と一緒に手作りのお菓子も出
してみようっと。キョンくん、喜んでくれるかなあ)
627閉鎖まであと 7日と 5時間:2007/01/16(火) 15:13:52.85 ID:HCp/63NC0
hしゅ
628閉鎖まであと 7日と 5時間:2007/01/16(火) 15:36:13.52 ID:52NifPbb0
age
629閉鎖まであと 7日と 5時間:2007/01/16(火) 15:53:15.84 ID:bytHHzhCO
ほしゅ
630閉鎖まであと 7日と 4時間:2007/01/16(火) 16:19:03.46 ID:0mHRTB3P0
>>574
無理w
途切れ途切れにシーンは思い浮かぶのだが、うまく言語化できない。文才欲しい。
ネタ欲しい人に>>569の電波差し上げたいよ
631閉鎖まであと 7日と 4時間:2007/01/16(火) 16:20:42.66 ID:tCST2xF90
>>630
欲しいのは山々だが、閉鎖前に書きあげる自身がない。
632閉鎖まであと 7日と 4時間:2007/01/16(火) 16:22:11.15 ID:Z+8ZRFEb0
古泉くん黒化しそうだねw
633閉鎖まであと 7日と 4時間:2007/01/16(火) 16:53:25.33 ID:bytHHzhCO
>>631
閉鎖は釣りでしょ
634閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:02:10.01 ID:/VSqUZIm0
>>633
釣りの可能性も高いけど、釣りじゃなかったときのことも考えて行動しろってじっちゃんが言ってた。
635閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:02:33.09 ID:vNdtxn6RO
>>633
真か偽かわからないな
錯綜してる
636閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:05:19.82 ID:/VSqUZIm0
キョンの奇妙なバイト第四章、第五章書き終わったんで、少ししたら投下します。
637閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:11:58.15 ID:yT7603j90
wktk!
638キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:14:08.27 ID:/VSqUZIm0
>>550
第四章

長門はわからないが、古泉と朝比奈さんはすっかり騙されているはずだ。
俺らを騙そうとした罰だ。
目には目を。騙しには騙しを。
これ以上、あの三人に踊らされてたまるか。
「キョンもたまには面白いこと思いつくじゃない!」
「まあな」
「で、あの三人があたし達を騙そうとしてたってホント?」
ハルヒは俺に顔を寄せてきた。
「お前はどうだか知らんが、俺は騙されるとこだった」
「ふうん、あの三人がねぇ」
ハルヒは腕を組んで、天井を見上げた。
「アンタを騙してまで、あたし達をくっつけさせようとしたのは許しがたいわね」
「で、どうする? 今から部室戻ってネタバラシするか?」
ハルヒは古畑任三郎のように中指で眉間を押さえながら考え始めた。
まさかこれ以上何かするつもりか? 朝比奈さん泣いてたぞ。
「これだけじゃ、あたしの怒りは治まらないわ! 仕返しね!」
おいおい、朝比奈さんをこれ以上泣かせる気か?
「あたしだって泣いたじゃない!」
あれは演技だろ? 朝比奈さんは本気で泣いてたぞ!
「じゃあ……そうね。こうしましょ!」
639キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:14:49.74 ID:/VSqUZIm0
なんか、よからぬ事を考えている顔だ。
「明日は土曜日よね? 当然、市内探索があるわけじゃない!?」
……いつになくテンション高いな……
「あの三人はもちろん、あたし達をくっつけようとするわ。もし、キョンとあたしがペアになったら……」
……なったら?
「あの三人を罠に嵌めてやるわ!」
こんな心底楽しそうなハルヒは見たことが無い。目を輝かせている。こんな機会滅多にないからな。
しかし、悪代官か悪の秘密結社のリーダーみたいな感じが出てるな。後者は正しいかもしれないが。
今のハルヒにテーマソングをつけるとしたら、プロコフィエフの「モンタギュー家とキャピレット家」か、ジョンウィリアムズの「インペリアルマーチ」だ。
わからない人は某携帯電話会社の「予想GUY」の音楽と、某SF映画の黒いマントとヘルメットをした息の荒い悪役の音楽を思い浮かべてもらいたい。
「で、どうやって?」
ハルヒは勢いよく立ち上がり、座っていたイスが後ろに倒れた。
「耳の穴かっぽじってよーーーく聞きなさい! あの三人はトリックを使ってでも、あたし達をペアにさせるわ。
そこであたし達をいい雰囲気にさせて、誤解を解かせた上で告白させると思うわ!」
今日のハルヒは冴えている。こういうくだらない事に限って、頭を使うんだな。
「だろうな。俺も同意見だ」
「でも、あたし達をペアにさせるのは午後だけ。午前は別々にしてあたしとアンタを説得させようとするはず!
あたしが考える午前の組み合わせは……アンタは有希とみくるちゃん! あたしは古泉君とね!」
なるほど……いや、待て。
640キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:15:09.17 ID:/VSqUZIm0
あいつらから見れば、ハルヒは俺と朝比奈さんが付き合っていると誤解しているように見えるんだろ?
それなら俺と朝比奈さんが一緒だと、さらに二人の関係が悪化するから、朝比奈さんはハルヒと一緒のはずだ。そしてその時に誤解を解かせようとするだろう。
「……あんた、今日は冴えてるわね。でも、みくるちゃんと古泉君は一緒にならないような気がするわ。有希があんたを説得させる場面なんて想像できないもの」
そう言われてみればそうだ。
おそらく、ハルヒの言うとおりに古泉と朝比奈さんは別々だろう。そうなると、長門はハルヒと同じグループだな。
「なんでよ」
まあ聞け。誤解したハルヒと朝比奈さんを二人っきりにさせると、どれほど気まずいか想像できるか?
「それもそうね。じゃあ、午前の組み合わせ予想は……アンタは古泉君と! あたしは有希とみくるちゃんと! これで決まりね!」
ああ、完璧な推理だ。
641キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:15:25.79 ID:/VSqUZIm0
「じゃあ次! どうやって三人を騙すか! キョン、あんたの意見は!?」
え〜と……午前は俺達を説得させるだろう。その時は、ずっと演技していればいいだけだ。問題は午後だな。
午後は100パーセント俺とハルヒがペアになる。そのとき、あの三人がどう動くか。ハルヒだったらどうする?
「もちろん尾行するわね」
ああ、あの三人もそうするはずだ。だから、午後もずっと演技してなきゃならない。
「そんなのわかってるわよ! それだけ?」
いや、まだある。
その時に、俺達が取るべき方法は大きく分けて二つある。
@三人が尾行についたまま、三人を騙す。
A尾行を振り切って、三人を騙す。
Aの場合は、俺達が演技をしているとバレる可能性が高い。
「じゃあ、@しかないじゃない」
@しかないってワケじゃない。Aだって頭を使えば成功する。まあ、@の方がリスクが低いがな。
「なら@ね。で、どうする?」
そうだな……こうしよう。
642キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:15:41.46 ID:/VSqUZIm0
土曜日 午前九時。
俺が駅前に到着した頃には、恒例のように四人が待っていた。
朝比奈さんは昨日のショックで休むかと思ったが、責任を感じて来たのだろうか。
四人とも笑顔は無く、暗い表情だ。一人は演技だがな。
「……遅い。罰金」
ハルヒは今までに無いほどの機嫌の悪いオーラを出しながら俺にそう言った。声に元気が無い。
いつも通り、近く店に入り俺が奢ってからくじ引きである。
終止無言のままだ。暗すぎる。演技とはいえ、あまり良いものではない

罠そのA  爪楊枝
長門によって操作されたくじ引きである。古泉、朝比奈さん、長門の三名にとって都合のいい結果しか出ない。
その結果はこうだ。
印あり…俺、古泉
印なし…ハルヒ、朝比奈さん、長門
読みが当たったな。あとは計画通りに動くだけだ。
643キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:15:55.99 ID:/VSqUZIm0
無言でハルヒ達と別れ、俺と珍しくにやけてない古泉は特に行きたい場所も無いので、無言で近くの駅前公園へと向かった。
土曜日だが、思った以上に人が少ない。木々の向こう側には長門が住んでいるマンションが見える。
自動販売機で適当な飲み物を買って、ベンチに腰を下ろす。ああ、眠い。
「で、昨日の件なんですが。あの後どうしましたか?」
「どうしたもなにも、ハルヒは話すら聞いてくれなかったよ」
古泉は驚いたような顔をした。どうしたんだよ。
「それはマズイですね。いま、非常事態なんです。昨日から閉鎖空間が現れてないんです」
「じゃあ、ハルヒが機嫌を損ねてないって証拠だろ?」
「そう見えましたか?」
まあ、本当は凄く機嫌がいいんだがな。
見える、と言うわけにはいかないな。
「見えないな。どういうことだ?」
「非常に申し上げにくいんですが……」
古泉は非常に深刻そうな顔をして続けた。
644キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:16:13.23 ID:/VSqUZIm0
「涼宮さんはあなたを諦めたんです」
ハルヒの機嫌が悪いにも関わらず、閉鎖空間が現れないことをどう説明すればいいのか迷っていたら、古泉が一人で片付けてくれた。
ああ、クソ。笑ってしまいそうだ。
だ…駄目だ…まだ笑うな…こらえるんだ……し…しかし……
「おかしいですね」
「何がだ」
「なぜ涼宮さんはあなたを諦めたのでしょうか」
「一つしかないだろう」
笑いをこらえているせいで変な顔になってないか心配だ。
「『朝比奈さんとお幸せに』ということだ」
「あなたは……それでいいんですか?」
「良いワケないだろう」
俺の計画が壊れるからな。
「そう答えると思いました。午後は長門さんに頼んであなた方を二人きりにさせます。なんとか誤解を解いてください。良い結果を期待してます」
計画通り。
「あと、当然ですが拒否権は無いですよ」
わかっているんだが。ムカつく。
お前が飲んでるそのコーラにテトロドトキシンでも入れてやろうか? 青酸カリと違って、苦しみながら死ねるぞ?
「勘弁してください。では、午後は我々が影から見守っていますね」
645キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:16:27.88 ID:/VSqUZIm0

あまり会話をすることも無く、そのまま集合時間に突入。
店で再びくじ引きである。
一見、ハルヒは機嫌悪そうに見えるが、俺と同じように笑いを堪えているようである。
そんなハルヒを見ていたら、こっちまで噴き出してしまいそうになった。ふう、危なかった。
で、くじ引きの結果は言うまでもないな。
印あり…ハルヒ、俺
印なし…古泉、朝比奈さん、長門

孔明もLも驚きの計画が今、スタートした。

第四章 完
646閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:22:34.15 ID:DwbKiP4iO
wktk
647閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:22:44.72 ID:UcGgE77FO
乙!
648閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:22:48.40 ID:Z+8ZRFEb0
おもしろいねwwいい
649ずれた世界:2007/01/16(火) 17:25:10.99 ID:UXGoiE6y0
お、奇妙なバイト始まってたか。
書き終わったので奇妙なバイトの投稿終わったらはりま
650閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:26:41.77 ID:UcGgE77FO
wktk
651キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:27:26.00 ID:/VSqUZIm0
第五章

午後はハルヒと俺のペアである。
駅前で、古泉、朝比奈さん、長門の三人と別れ、適当に歩いていた。
台本どおりに行くだろうか。緊張してきた。
無言で歩いていると、ハルヒの方から切り出してきた。
「……みくるちゃんから聞いたわ。あたしの勘違いだってね……」
よし、台本どおりだ。
「……ごめん……許して……」
俺は少し俯いているハルヒとは対照的に、視線を上げた。
視線を上げたところにあるカーブミラーは、俺達の200mほど後ろに不審な三つの人影を映していた。
あの三人がいないと、この計画は成り立たない。
「許すもなにも、俺は最初から怒ってなんかいない。誤解が解けたならいいんだ」

「……違う」

「……何が違うんだ?」

気がついたら、先ほどまで古泉といた公園に来ていた。人通りが少ないせいか、あの三人は意外に目立つ。職質されないか心配だ。
「それを許してって言ったんじゃない……」
「どういうことだ?」
後ろに見える三人の表情が険しくなる。
ハルヒは顔を上げた。
652キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:27:56.04 ID:/VSqUZIm0

「……あたしがこれから言うことを許して……」

このときのハルヒの表情は、演技とはいえ可愛かった。そりゃもう、俺のハートがチリ地震並みのマグニチュードで揺さぶられたね。

「……なんだ?」
俺達は立ち止まった。

「あたし……キョンの正直な気持ちはみくるちゃんから聞いたわ……正直嬉しかった……」
自販機の陰に隠れている三人は眉をひそめた。




「でも……あたし……キョンとは付き合えない」
俺は無言だ。
古泉は身を乗り出している。
朝比奈さんは泣きそうだ。
長門は……何考えてるんだかわからん。
「キョンは優しいし、わがままなあたしに今までついてきてくれた。あたしはキョンがいて嬉しかった。
でも・・・・・・キョンは優しすぎるわ。過度の優しさはかえって、女を傷つけるのよ?」

朝比奈さんから教わったことと同じ事をハルヒは言った。
653キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:28:15.67 ID:/VSqUZIm0

「いままで、キョンと一緒で楽しかった。それは恋愛感情とは違う。どちらかというと友情に近いものだったわ。
キョンのことは好き。でも、付き合うことで……さらに距離が近くなることで……今までの関係が壊れるのがイヤだったの。
友達以上、恋人未満の関係があたしにとって一番良かった」
「……そうか」





「それに……あたし……他に好きな人ができたの……」


三人は完全に固まってしまった。
アストロン! と唱えたみたいだ。
古泉、次にくるパルプンテに備えたほうがいいんじゃないか?

654キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:28:41.10 ID:/VSqUZIm0

「え?」
「他に……好きな人ができたの」
ハルヒは顔を俯かせ、さっきのセリフを繰り返した。



「……誰?」
古泉が「聞くべきではない」というジェスチャーをしているが関係無い。
長門の表情も明らかに先ほどとは違う。驚いているようだ。
朝比奈さんは相変わらず泣きそうな顔をしている。
おそらく、次のハルヒのセリフで一番驚いたのはこの三人だろう。







「……古泉君」
655キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:28:54.24 ID:/VSqUZIm0
古泉が自販機の後ろで地面に膝を突きながら呆然としているのが見える。
「……そうか。……俺は諦めるよ」
ああ、クソ。また噴き出しそうになってしまった。
「……そろそろ時間ね。戻りましょ」


計画通り。
駅前に再集合した。
朝比奈さんはまだ泣きそうな顔をしている。
古泉もまだ呆然としている。
長門は……やっぱり何考えてんだかわからん。
団長様に市内探索の結果報告(当然、何も見つからなかったが)を終え、解散した。
古泉と別れる前に、あいつの肩を叩いて「がんばれ」と言ったら、古泉の動きが停止した。

656閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:29:10.52 ID:UcGgE77FO
支援
657キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:29:11.42 ID:/VSqUZIm0

「計画通りね! 古泉君の呆然とした顔、面白かったわ!」
俺は今、自分の部屋でハルヒと電話している。
「ああ、明日ネタバラシしないと古泉に悪いぞ」
「わかってるわよ。どうやってネタバラシするか考えなきゃ!」
そうだな。俺と古泉が今日の市内探索について話しているところに、ハルヒが突撃してネタバラシとかどうだ?
「それいただきっ! 明日、朝九時までに部室集合ね! わかった!?」
ああ、それとだな……
「なによ」
658キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:29:28.44 ID:/VSqUZIm0
ちょっと気になることがあってな……
「なに?」
俺の気のせいかもしれないが今日解散するときに、長門が……








……「計画通り」って呟いてたんだが……
「……冗談でしょ?」
本当だ。
「……どういうこと?」
すべて古泉たちの計画だったりして……
「それじゃ、あたし達踊らされてただけじゃない!」
いや、俺の聞き間違いかもしれん!
「そうに決まってるでしょ! ここまで予想できるのは孔明くらいよ!」
じゃあね、と言って電話を切られた。相変わらず一方的だな。
659キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 17:29:43.82 ID:/VSqUZIm0
俺は長門のひとことが気になって、ベッドに仰向けになって考えてみることにした。
これが古泉達の計画だったのか?
まさか、ここまで考えるのは孔明だって無理だ。
でも、もしそうだったとしたら何のために?
古泉の言葉を思い出そう……

「で、俺になにをして欲しいんだ?」
「いえ、簡単なことです。閉鎖空間が発生したら消す。それだけです」

これは一昨日の会話である。
閉鎖空間を消す……
今日の会話は……

「昨日から閉鎖空間が現れてないんです」

……わかった。
これですべて説明がつく。
古泉の機関は天才が多いんだな。メンサ(高IQ集団)みてーだ。

第五章 完
660閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:31:25.03 ID:UcGgE77FO
661閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:34:40.30 ID:Z+8ZRFEb0
面白いっすw続きもがんがれー。
662ずれた世界:2007/01/16(火) 17:35:29.58 ID:UXGoiE6y0
乙ですー
少ししたら張り出しますね
663閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:36:23.39 ID:/VSqUZIm0
>>662
wktk
664ずれた世界:2007/01/16(火) 17:47:39.61 ID:UXGoiE6y0
では、張ります〜
665ずれた世界:2007/01/16(火) 17:48:54.08 ID:UXGoiE6y0
その9
長門、この状況はどういうことなんだ?
「この時間軸上にアナタが二人存在している」
 いや、それは分かっているんだ 俺はどうしたら元の場所に戻れる?
「アナタは異時間同位体ではなく個別の存在としてこの時間に存在している。これはありえないこと」
 ありえないって、、じゃあ俺は一体なんなんだ?
「原因は涼宮ハルヒにあるものと思われる」
 結局アイツが原因なのか、、 なんだからって俺がこんな目にあってるんだ?
「アナタは涼宮ハルヒによってこの世界に呼ばれた異空間同位体だと思われる」
666ずれた世界:2007/01/16(火) 17:50:19.32 ID:UXGoiE6y0
その10
 あー、、何だって?いくうかんどういたい?
「なるほど、ということは彼は異世界人ということですね?」
「そう」
 ちょっと待て 俺が異世界人だと?
「涼宮ハルヒは異世界人の存在を望んだ、だからアナタが呼ばれた」
「やはりアナタはパラレルワールドから来たようですね」
 おいおい、二人ともずいぶん好き勝手なことを言ってくれるな 俺にもよく分かるよう
に話してくれ
「つまりですね、涼宮さんは異世界人と遊びたいと思ったのでしょう。だからアナタが呼ばれた
んですよ、僕や朝比奈さんや長門さんのようにね」
 何てことだ、異世界人の知り合いがいないってのが俺の小さな安心の一つだった
 というのに、まさかおれ自身が異世界人にされちまうとはな
「いやはや、涼宮さんの力には驚くばかりですね まさか異世界人まで連れてきてしまうとは」
 一番驚いているのは俺だ。しかし、何で俺なんだ?同じ人間が二人いてもややこしい
 だけだろうに
「それは、、、そういえば確かにそうですね。どうして彼なんでしょうか?長門さんはどう思いますか?」
667ずれた世界:2007/01/16(火) 17:51:23.12 ID:UXGoiE6y0
その11
「わからない」
 長門よ、お前に分からないんじゃ誰にも分からないじゃないか まあ、この際理由
などはどうでもいい俺はどうやったら帰れるんだ?
「涼宮ハルヒによって開けられた異空間転送ゲートはすでに閉じてしまっている」
 そうかい、じゃあすぐにそれをこじ開けて俺を元の世界に返してくれ
「それは不可能。この世界における我々情報統合思念体には異空間転送の理念は確立していない」
 、、、は?じゃあ、おれは元の世界には帰れないのか?
「方法ならばないこともない、でも、これは賭け」
 なんだ、方法はあるんじゃないか 
「この世界に無い異空間転送の理念があなたの世界の情報統合思念体において確立していればあなたは戻ることができるはず」
 じゃあ、確立してなかったら、、?
「・・・・・・あなたは帰ることができない」
668ずれた世界:2007/01/16(火) 17:52:39.70 ID:UXGoiE6y0
その12
 冗談だろ、、、帰ることができないだと?
「困ったことになりましたね」
 お前の顔はちっとも困ってるようには見えないぞ
「そうですか?それは失礼しました。しかし、涼宮さんの願いはやはり何でもかなってしまうのだと思いましてね 恐れ入りますよ」
 古泉の奴は人の気も知らずに微笑を浮かべていたので足をふんずけてやった
 それにしてもマジで困った。この賭けに失敗したら俺はどうすればいい?
 異世界ってわりにはあまり俺のいた世界と変わらないみたいだが、ここには
 すでに俺がいる、つまり、SOS団に俺の席はないってことだ
 俺がため息をついていると昼休み終了の鐘が鳴った
「おっと、休憩時間は終わりのようですね。では、僕は教室に戻りますよ」
 この薄情者が
「アナタには申し訳ないと思いますが、どうやら僕にはどうすることもできな
いようなのでね。それに、あなたならばきっともとの世界に戻れますよ」
 そういうといつものいけ好かないスマイル顔で部室をでていった。
669ずれた世界:2007/01/16(火) 17:53:50.62 ID:UXGoiE6y0
その13
「学校が終わり次第アナタを元の世界に戻すための術式を行う」
 術式って、、、魔方陣でも書いて俺を無理やり送り返そうってのか?
「私の家で待っていて」
 そういうと長門は家の鍵を俺に渡すと静かに部室から出て行った。
 またアイツの家か、何かあるごとにアイツには世話になるな。
 まてよ、あいつの家ってのはこの世界でも同じ場所なのか?
 いや、きっとあいつのことだからこんなところでへまはしないのだろう。
 
昼休み終了の鐘から五時限目までは少し時間があるので学校が静まったころにそーっと
出て行けばいいだろう。
そう思って部屋の端っこにおいてあるソファーに腰掛けてみる
ん〜、、なんともすわり心地が良い。こっちのハルヒはこのソファーをどこから
くすねてきたのだろうか?
正直俺は非常に眠かった そういえば寝ようとしたらこっちに来ちまったんだよな
俺はやめればいいのについつい横になってしまった。
目が覚めたときに時計は4時を指していた。
670閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:55:13.52 ID:UcGgE77FO
支援
671ずれた世界:2007/01/16(火) 17:55:16.30 ID:UXGoiE6y0
その14
やっちまった
起きるや否や俺は激しい後悔の中にいた。
時計が4時を指しているということはすでに授業は終わり団員が部室に集まって
くる時間だ。
幸いまだ誰も着ていないようなので急いで部室を出て学校を去ろうとした
しかし、どうやら今日の俺はずいぶんと運が悪いらしい

廊下を曲がったところでハルヒと鉢合わせになってしまった。
672ずれた世界:2007/01/16(火) 17:56:29.01 ID:UXGoiE6y0
その15
「あれ?アンタ今日は用事があるから部活にはでれないんじゃないの?」
 この事態になってから一番困ったね。
 一番会ってはまずい人物が今目の前にいるのだ。
「おっかしいなぁ あんたさっき昇降口で別れたよね?」
 どうやら、こっちの俺はいないみたいだな、ぎりぎりセーフって奴だ
ああ、やっぱり用事がなくなったんでな 部活に出ることにしたんだ
 寝起きで頭が働いてなかったってのは言い訳にならないな
 俺は最悪の言い訳をしてしまってから、激しく後悔したが時すでに遅し
「あっそ、じゃあ部室いきましょ」
 というわけで、俺は今ハルヒと二人きりで部室にいる。
 ハルヒはあの動くのかうかがわしいテレビの電源を入れるとボケーっと
 画面に視線を向けていた
673閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:56:41.92 ID:UcGgE77FO
支援
674ずれた世界:2007/01/16(火) 17:58:07.52 ID:UXGoiE6y0
その16
 見れば見るほどハルヒである。
 ここか異世界だってのは実は嘘なんじゃないかと思えてくるね。
 ハルヒはどう見ても俺の知っているハルヒであり、違うのはこいつがパソコン
 でなくテレビの画面を部室で見てるってことくらいだ。
「何さっきから人の顔じろじろみてんの?あほみたいな顔してるわよ」
 あんまり見ていたため見つかってしまったようだ
ああ、すまん なんでもない
 適当なことを言って俺もテレビを見ることにする
 テレビの中のニュースキャスターは背後霊を三人くらいしょっていて非常に見にくい。
 せめてもっと新しいのを持って来いよとこのテレビを持ってきたであろう誰かに
 文句を言う。まあ、どうせハルヒだろうがな。
675閉鎖まであと 7日と 3時間:2007/01/16(火) 17:58:23.28 ID:UcGgE77FO
支援
676ずれた世界:2007/01/16(火) 17:59:30.42 ID:UXGoiE6y0
その17
 しばらくテレビを見ていたら控えめにドアをノックする音が聞こえた。
「こんにちはぁ」
 俺の知っている朝比奈さんにそっくりな人が入ってきた。
「お茶、いれますね」
 そういうと朝比奈さんはお茶を煎れる準備を始めた。制服のままで。
 昼休みにはきずかなかったがどうやらここには朝比奈さん専用のコスプレ衣装
 は無いらしい。
 俺は心の中で俺の世界のハルヒをほめてやった、メイド服だけは正解だったぞ。
 まあ、何が正解なのかもわからないが、そんなことはどうでもいいのさ。
「はい、キョン君」
 朝比奈さんはクラリとくる笑顔でもって俺にお茶の入った湯飲み茶碗を
 わたしてくれた。
 ん〜、うまい。だけど、俺の世界の朝比奈さんが煎れてくれたお茶とはどこか
 違う味がした、どう違うのかはわからないのだが。
677ずれた世界:2007/01/16(火) 18:00:09.97 ID:UXGoiE6y0
その18
「すいません、掃除が長引いてしまいましてね」
 俺がお茶をすすっていると古泉が来た。
 一瞬俺の姿を見て怪訝そうな顔をしたがすぐにいつものスマイルにもどった。
 なんだ、俺の顔に何かついているのか?
「いえいえ、ちょっと話があるのですがいいですか?」
 そういうと、古泉は俺を引っ張り出すようにして部室の外に連れ出した。
「これはどういうことですか?」
 これってのはどれだ?
「長門さんから部屋に行っているようにと鍵をわたされたでしょう」
 まあ、それはカクカクシカジカでな、というかお前は俺がこっちの俺じゃないと
 わかるの?
「こっちのアナタは用事があるといって帰りましたからね」
 なるほど、すいぶんよく知ってるんだな
「そりゃあ、あなたとは一緒のクラスですからね そっちの世界ではちがうのですか?」
 そいつは驚いた、こっちじゃお前とは別々さ
「そうですか。まあ、こうなってしまった以上仕方がありませんね普通にしていてくださ
いね おそらくそっちの世界とやってることはそんなに変わらないと思うので」
 ああ、わかっているよ
678閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:00:14.48 ID:UcGgE77FO
支援
679閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:01:05.51 ID:BN3zOqvJO
なんか怖いな
680ずれた世界:2007/01/16(火) 18:02:26.37 ID:UXGoiE6y0
その18
 さて部室に戻るかと思ったら長門がトコトコとやってきた。
 俺の顔をちらりと見たが特に何も言わずに部室に入っていったので俺と古泉も
それに続いて部室にはいった。
どうやらこっちの世界におけるSOS団も目的不明の集まりらしい。
俺とハルヒと古泉は延々大貧民を繰り返し朝比奈さんは何やら編み物を編んでいた
長門はというと映りの悪いテレビの画面をただじっと見つめていた。
本は読まないんだろうか?

6時を過ぎたあたりでハルヒによる本日の活動は終了の掛け声とともに部活動は
終わった。本当に何をする集まりなんだろうな。
ハルヒは鞄を手にするとさっさと部室からでていってしまった。
朝比奈さんにも話すべきなのだろうか?
少し迷ったが話しても事態の解決にはあまり役立たないだろうと思って
やめた。
681ずれた世界:2007/01/16(火) 18:03:16.35 ID:UXGoiE6y0
その19
 朝比奈さんは編み物を鞄にしまうとさようならと挨拶をして出て行った。
「では、僕もこれでしつれいしますね。あなたが元の世界に戻れることを祈ってますよ」
 古泉は無責任なことを言うと微笑を浮かべながら部室を出て行った。
 さて、、と。俺は本当に帰れるのかな?
「術式の用意はすでに整っている。私の家へ」
 不安に押しつぶされそうになっていた俺の心が少しばかりの安堵を得た。
 
 そんなこんなで長門のうちにやってきたわけだが、やはり俺の知っているアパートで
 殺風景な長門の部屋だった。
「おそらくアナタの世界での私がアナタのことを探しているはず。私がするのはアナタの
世界の私がこの世界に干渉するための補助」
 なるほどな、よく分からんが頼んだぞ、俺の世界の長門よ。
「しかし、私だけでは力不足。」
「だから私の出番ってわけ」
 突然後ろから話しかけられて思わず脊髄反射的に後ろを振り向いた。 いつの間に?
 そこにいたのは見間違うはずもない、急進派のインターフェイスで長門によって
 消されたはずの、、
 
 朝倉涼子がそこにいた。
682閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:03:21.79 ID:UcGgE77FO
支援
683閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:06:16.68 ID:UcGgE77FO
支援
684ずれた世界:2007/01/16(火) 18:07:17.99 ID:UXGoiE6y0
その20
「どうしたの?そんなびっくりした顔して。あなたの世界にも私はいるんでしょ?」
 まあ、いたことにはいたんだが、いろいろとあってな。
「そう、アナタも大変ね」
 そういうとクスリと笑った。
 どうやらこっちの朝倉はいかれてないみたいだな、心臓が止まるかとおもったぞ。
「では、これより術式を始める」
 長門がそういうと朝倉は長門のとなりに座り、二人ともあの謎の呪文を唱え始めた。
 
 最初は目の錯覚かと思った。
 朝倉の姿が下から上へと変わっていき、長門の姿となった
「むかえにきた」
 新しく表れた長門は言った。どうやら成功らしい。
長門、、、お前ならやってくれると思っていたぜ。
「いい」
さあ、ちゃっちゃと元の世界に戻ろうぜ。

「我々はそちらの空間における情報統合思念体との一時的コンタクトを要求する」

 さっきまで黙っていたこちらの長門が突然口を聞いた。
685閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:07:50.19 ID:UcGgE77FO
支援
686ずれた世界:2007/01/16(火) 18:08:21.35 ID:UXGoiE6y0
その21
「拒否する」
 長門は短い拒絶の言葉を述べた。一体何の話だ?
「あなた達にはとても感謝している。しかしその要求を認めることはできない」
「・・・そう」
 こっちの長門はそういうともう何も言わなかった。
「これからあなたを元の位相空間上に転送する」
それは、元の世界に戻るってことでいいんだよな?
「そう、目をつぶって」
 俺は言われたとおりにする。
 
 ずいぶん長いな、もう一分くらい目をつぶってる気がするんだが、、、
長門、もういいのか?
 耐え切れずに目を開けると、俺の部屋にいた。
687閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:08:40.43 ID:UcGgE77FO
支援
688ずれた世界:2007/01/16(火) 18:09:07.50 ID:UXGoiE6y0
その22
 どうやら俺は元の世界に戻ってきたらしい時計を見ると7時を回っており
 休んでいる暇もなく学校の準備をしなければならなかった。

 とても疲れた。
 まあ、今回は特に危険な目にあったわけでもないがやはり精神的にはきつかった
 元の世界に戻ってこれてなによりだ。
 そんなことを考えながら恨めしい学校への坂道を登っていると後ろから名前を呼ばれた
「キョン!何を死にそうな歩き方してるのよ」
 ハルヒのハイテンションな声が耳に響いた。
 そういえばあっちのハルヒは結構静かな奴だったな、こいつとどっちがましだろう
 などと考えながら朝から元気なこいつの話し相手となってやる。
 なにやら昨日の映画を見たかとか何とか聞いてきたが、そんなこと俺の知ったことでは
 ない。
 というか、昨日ってのはいつだ?どうも曜日の間隔が狂う
689閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:09:40.46 ID:UcGgE77FO
支援
690ずれた世界:2007/01/16(火) 18:10:21.04 ID:UXGoiE6y0
その23
 学校についてからも特にいつもと変わることなく放課後を向かえ
 見慣れた部室に来ていた。
 俺が部室に着くと長門しかおらず、他のメンバーはまだのようだった。
長門、昨日、、か? まあ、いい。昨日はありがとうな。
「いい」
 そういうと長門は読書に戻った。やっぱりこいつはほんを読んでいるほうが
 しっくりくるな。

 それからすこししてハルヒ、朝比奈さん、古泉が来て、もしかしたらアレは夢だった
 のではないかと思うくらいに同じ風景が作られていた。
 だが、ハルヒはパソコンとにらめっこしてるし、朝比奈さんはメイド服でもって
 お茶を煎れてくれた。やっぱりこの味だな。
 俺がしみじみと日常をかみしめているとハルヒが横槍を入れてきた
「ねえ、誰か昨日の映画見た人いない?」
 またそれか、そういえば朝もそんなこと言ってたな。
「いえ、僕は見てませんね」
「私もみてないです」
691閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:10:40.61 ID:UcGgE77FO
支援
692ずれた世界:2007/01/16(火) 18:12:01.72 ID:UXGoiE6y0
その24 
「有紀は?」
「見てない」
 
「誰も見てないのかぁ、、面白かったんだけどな」
 おい、俺には聞かないのか?
「アンタには朝聞いたでしょ」
 ああ、そういえばそうか。
「それはどのような映画だったのですか?」
 古泉が毎度の営業スマイルで聞かなくていいことを聞いてやがる。
 
 ま、面白かったならそれに越したことはないさ。前にあいつの見た映画がつまらなかっ
たとか言う理由でひどい目にあったからな。
ハルヒは古泉に要領の得ない説明をしており、こいつはこいつでわかってるのか
いないのか、スマイルでうんうんとうなずいている。
ハルヒはひとしきり話し終えてからつぶやくように言った。



「いたら面白いのになぁ、、、異世界人」
693閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:12:44.44 ID:UcGgE77FO
支援
694ずれた世界:2007/01/16(火) 18:13:26.65 ID:UXGoiE6y0
これで終わりです
長文書くのは初めてなのでgdgdになってしまったかもしれませんが
大目に見てやってください(´д)
695閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:13:49.74 ID:wVzv7QJ00
乙GJ
有希だけどな
696閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:15:30.36 ID:UcGgE77FO
GJ!
まさかの異世界人キョンでドキドキだったぜ。


>>692
×友紀
〇有希
697ずれた世界:2007/01/16(火) 18:16:43.94 ID:UXGoiE6y0
うああああ
変換間違ってたorz
脳内変換オネガイシマス(;´д`)
698閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:25:38.29 ID:w3r6JqDQ0
水木しげるプロ協力の妖怪人気投票です
飛影に清き一票お願いします(現在57位)
妖怪チンポにも一票お願いします(現在15位)

http://www.sakaiminato.net/

ちょwww主催者は水木しげる作品1位にしたいんじゃないのかよwwwwとか
チンポておまえwwwちんぽっぽかよwwwwwww
とお思いでしょうが、
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/33641/
このように我らが田代神批判ともとれるニュースで宣伝してるやつらです
思い切ってやっちゃいましょう
一度に3つの候補に票を入れることができます
699閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:36:36.58 ID:Iil9/C5B0
   モサ
 兄 にょ 弟
美白にょん高橋
福元三木禿鷲
   周作

3バック過労死フォメ
700閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:37:33.89 ID:Iil9/C5B0
おや?
701閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:41:57.86 ID:ziJioUgb0
ポッポのようすが・・・
702閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:42:39.33 ID:cdY3tm0E0
ttp://www.kajisoku-f.com/dd/img02/img518_h01.jpg

そろそろ埋める時期に来たのでこんなの持ってきた。これが何巻なのか知らな
いが、1巻と比べてずいぶん作画が変わったな。
703閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:47:44.05 ID:byOrpKr6O
傘が可哀想な事になってるwww
704閉鎖まであと 7日と 2時間:2007/01/16(火) 18:55:30.03 ID:uCRP7QxtO
古泉イケメンになったなぁ
705キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 19:00:45.81 ID:/VSqUZIm0
>>702
右のコマに違和感を感じるのは気のせいだろうか

キョンの奇妙なバイト最終章。短いけど、もう少ししたら投下したいと思います。
706閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:01:03.66 ID:gRgcfK6N0
古泉は元からイケメン設定じゃねーか
707閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:04:53.65 ID:cdY3tm0E0
てかこことかエロパロ版の住人って、みんなマンガ読まないのか?俺もここに
居座って結構長いとは思うが、マンガの話なんてほぼ皆無と言っても過言では
ない。まあここはSS版だから現作はラノベだけで、他は必要はないかもしれんが。
708閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:06:00.71 ID:Z+8ZRFEb0
パロ板は変にお高くとまってるからなー。
709閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:08:16.54 ID:gRgcfK6N0
>>708
そんなこといったらどこもだめになる
710閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:10:01.14 ID:UXGoiE6y0
ハルヒのマンガは読んでみたことあるが
原作のほうが良いんだよなぁ
711閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:12:09.78 ID:Z+8ZRFEb0
>>709
あそこかなり投下減ってるじゃない。ここは平気だけど。
712閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:12:48.42 ID:UcGgE77FO
>>705
wktk
713キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 19:13:41.67 ID:/VSqUZIm0
最終章

日曜日 午前九時。
休日だというのに、俺はわざわざ心臓破りの坂を越えてこの文芸部室まで来たのだ。疲れる。
文芸部室には、ハルヒを除くメンバー三人が既に到着して定位置についていた。
一人いないだけで静かだな。
俺も定位置につき、恒例のオセロが開始された。
全員無表情だ。あのニヤケ顔までも。
なにも喋らないところをみると、俺の読みは当たったようだ。
「で、古泉。どうするんだ?」
「なにがです」
「昨日の件だ」
古泉は黙り込んだ。
朝比奈さんの動きが止まった。
長門が視線を上げ、古泉の方を見ている。
沈黙が続く。
この変な沈黙を破ったのは、爆発音のようなドアの開く音である。
714キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 19:14:02.97 ID:/VSqUZIm0
ドアが開いて、登場してきたのは「ドッキリでした」と書かれたプラカードを持ったハルヒである。そんなもんいつ手に入れたんだ?
「残念! ドッキリでした!」と言いながらハルヒは部屋に突入してきた。
ハルヒを除く全員が呆然としている。俺もだ。
うん。時が止まった。
そして古泉が笑い出す。
朝比奈さんは笑顔になった。
長門は無表情。
ハルヒも笑い出した。
俺は……疲れた。心底疲れた。
「驚きましたね。どこから嘘だったんですか?」
「最初からよ!」
「ええ? すっかり騙されてましたよ」
そんな感じで、古泉とハルヒの談笑が続いた。
朝比奈さんはそんな二人を眺めている。長門も同様だ。
「じゃあ、せっかく集まったんだし、どっかに食べに行きましょ!」
というハルヒの提案によって、俺達は部室をあとにした。
715キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 19:14:21.63 ID:/VSqUZIm0
「古泉。今回の件のバイト代はいらんぞ」
「おや? 気づかれてたんですか?」
長門が「計画通り」と言ってくれたお陰で、推理が楽だったよ。
「まさか裏の裏の裏まで読まれてしまうとは。参りましたよ」
要するに、全部お前らの機関の考えたことなんだろ?
「ええ、そうです。涼宮さんの機嫌を損ねないためには何をすればいいか、考えた結果がこのドッキリです。朝比奈さんと長門さんにもご協力願いました」
結局、俺は最後まで機関に踊らされてたってことか。
まさか、俺の行動まで予想済みだとはな。
「一応、あなたの"本当の"バイト内容は『涼宮さんの機嫌を損ねないこと』です。あなたは自分では気づかないうちにバイトをしてたんです」
「そこまで頭が回るのに、なんでお前はオセロで勝てねえんだよ」
「僕にもサッパリです。どちらにしろ機関は仕事が減り、あなたはバイト代が貰えるんだからそれでいいじゃないですか」
だからバイト代は受け取らんと言っただろう。
716キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 19:14:37.14 ID:/VSqUZIm0
「お忘れですか? あなたに拒否権はありません」
参ったね。
「まあ、このあと涼宮さんに奢らされるでしょうから、丁度良いんじゃないですか?」
「それもそうだな」
古泉は茶色い小さな封筒を差し出した。
「今月分です」
「先払いか?」
「ええ。電子マネー払いがいいですか?」
「いやこのままでいい」
俺はその封筒を受け取った。
「これからも頼みますね」

キョンの奇妙なバイト 完
717閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:14:58.09 ID:BM9Qfruv0
kasawarota!
nazekahiraganautenai
718閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:16:43.23 ID:+ghD2Vo30
>>716
今北
が一気に読んでしまった 乙!!
719閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:17:07.15 ID:Z+8ZRFEb0
乙wwww楽しかったwww
720閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:17:09.25 ID:uZSqOb0H0
乙と言いたいんだが

>あなたに拒否権はありません

この一文の裏付け、根拠の説明がないから古泉が単なる自己中にばかり見えて多少イライラした
721キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 19:18:08.95 ID:/VSqUZIm0
ネタを提供してくれた>>430に感謝します。
722キョンの奇妙なバイト:2007/01/16(火) 19:18:49.61 ID:/VSqUZIm0
>>720
俺も。
723閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:19:04.71 ID:UcGgE77FO
GJ!
724閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:20:56.51 ID:cdY3tm0E0
結局はハルヒを退屈させないイベント止まりってことか。
強要しつつも、古泉はキョンの気持ちも尊重してやってるのな。
お疲れ。
725閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:28:30.94 ID:sgKTtpEb0
>>708
投下されたものを片っ端から読むんじゃなくて、
厳選して読みたい俺としては、いい具合だけどな。
726閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:29:35.78 ID:gRgcfK6N0
ほかと比べること自体書くほうも読むほうも間違ってる
727閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:30:07.01 ID:Z+8ZRFEb0
ほか?
728閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:35:25.77 ID:/VSqUZIm0
>>726
違うものだしな
漫画と小説を比べるみたいなことだな。
729閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:53:27.26 ID:Z+8ZRFEb0
あれまとめ移行の話し合いみたいのあるんだっけ?
730閉鎖まであと 7日と 1時間:2007/01/16(火) 19:54:47.04 ID:UcGgE77FO
そういえばドラマCDってどんな感じなの?

そのままアニメの映像が無い感じでおk?
731ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2007/01/16(火) 20:08:35.90 ID:N1ZFWSBj0
>>729
http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1167729880/
ここでやりますので時間がありましたらご参加ください
732閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:09:36.79 ID:nkRY+Alu0
>>350
その作品wikiに上げないのかい?
733スリーウィーク:2007/01/16(火) 20:14:29.47 ID:0CvwWAKL0
昨日休んでしまった。これからセンターなんで、一週間分まとめて投下します
また来週の月曜日から2レスで続けようと思っています
734スリーウィーク 6:2007/01/16(火) 20:15:15.04 ID:0CvwWAKL0
 話は十二月十八日、奇しくも去年に起きた事件と同じ日に全ては始まった。いや、始ま
っていたというほうが正しいだろう。俺は意識することもなく、その日の朝を迎えていた。
去年同様、凍てつくような寒さの中、布団に留まろうとする俺を妹が起こそうとするとこ
ろから始まった。
    *
 小さな身体から生み出される力が俺の布団を剥ぎ取った。朝から嫌味なくらい満面の笑
みで挨拶する妹を睨みつけると、俺はとっととリビングへと向かった。寒さに身体を抱え、
身震いさせながら部屋を出た。砂漠化する気候に呆れながらも、秋という季節に特別の思
いがあるわけでもなく、ただ漫然とその変化を感じていた。要するに、今年も去年と同じ
く秋がなかったということだ。妹は文句を垂れながらも素早く階段を下りる俺を追いかけ
てきた。
 リビングに入ると朝食は既に並べられていて、赤と黄色のコントラストにトーストとい
う馴染みのものだった。妹は俺の横に座ると、屈託のない笑顔で合掌をし、すぐにトース
トを齧った。これだけ笑顔で食べてくれるのなら、食べ物も生産者も嬉しいだろう。朝食
を嫌々腹に詰め込む俺なんかよりずっと。時間もないのに朝の情報番組を見ながら、コー
ヒーカップを傾けた。妹もやけに難しい顔をしながらテレビを見ていた。
「キョン君、税金の無駄遣いは駄目だよね!」
 妹は真面目な顔で頷きながら、俺を見つめ言った。
「ああ、駄目だ」
 俺が適当に答えると、妹は嬉しそうに「そうだよね」と相槌を打った。
735スリーウィーク 6:2007/01/16(火) 20:15:44.97 ID:0CvwWAKL0
 俺は食事を終えると、制服に着替え、自分の部屋に昨日やっておいた課題を取りに行っ
た。夜から始め、深夜に終わらせた数学の課題だった。部屋に入り、机の引き出しの中に
課題が置いてあることを確認した。妹がまだ小さかった頃――その時も俺を起こしにきて
いた――、びりびりに破られ、課題を提出できなくなり、担任にひどく叱られたのを思い
出した。それまでまともに課題を提出していなくて、教師に最後通告を受けていた課題だ
ったのだ。学校で妹のせいにできるはずもなく、その日の放課後にもう一度やるはめにな
った。答えは覚えていたのですぐに終わったのだが。そんなわけで、俺は大事なものを机
の上に置きっぱなしにしないことを学んだわけだ。さすがに妹も小学六年になり、今さら
心配しているわけではないが、習慣というものは抜けないのだ。
 課題を取ろうとすると、それとともに空白な金属音を鳴らして何かが床に落ちた。不思
議に思い、床からそれを拾い上げた。銀製の、といっても安物の、露店で売っている様な
指輪だった。俺にはそれを購入した記憶は無かった。記憶というより、俺がそれを購入す
るようなことは俺の考えの中ではありえないことだったし、第一指輪なんて必要なかった。
色々な角度から指輪を眺めてみたが、特別変わったところはなかった。形も途中で一度捻
ってある程度のものだった。俺は観察するのにも飽きて、机の中に投げ入れ、引き出しを
閉じ、部屋を出た。
 リビングに戻ると妹は既に赤いランドセルを背負っていて、準備万端で構えていた。俺
も学生鞄を肩に掛け、妹と一緒に家を出た。「じゃあねキョン君」と妹は二つ結びの髪を
跳ねさせながら俺に声を掛け、「ああ」と俺は妹に答えて、俺達は別れた。駅までは自転
車通学、それから厄介な登坂が待っていた。
736スリーウィーク 7:2007/01/16(火) 20:16:14.02 ID:0CvwWAKL0
 坂を上りながら、俺は今年のクリスマスのことを考えていた。考えてもハルヒが今年は
何を企んでいるのか、全く検討がつかなかった。去年と同じように鍋パーティーなんての
が俺としては安全パイなのだが。ハルヒ特製鍋は文句無くうまいし、また皆で鍋を囲むと
いうのも悪くない。
「よお、キョン!」
 後ろから存在感も無く、谷口が俺の背中を鞄で叩いた。
「ああ」
 気のない返事をして、谷口を適当にあしらった。
「どうした朝からそんなにニヤニヤして、気持ち悪いぞ」
 俺が言うべき台詞を谷口が先に言った。ハルヒ特製鍋のことを考えて顔がニヤついてい
たらしかった。
「してない」
「もしかして今年は長門さんとデートなのか?」
「それは無いと思う。今年もSOS団で何かやるんだろうな」
「てことは、去年と一緒で涼宮達と鍋パーティーってことだな」
「そうなることを望む」
「俺も混ぜてくれ」
 谷口は懇願するような、哀願を込めた声で言った。
「お前、今年も彼女いないのか!」
 わざとらしく驚いて見せた。
「お前だっていないだろうが」
「全くだ」
 谷口が汚い笑い声を上げた。
「お前いつになったら彼女ができるんだ? まあ、あのけったいな団に関わっている限り
不可能だろうが」
737スリーウィーク 7:2007/01/16(火) 20:16:32.09 ID:0CvwWAKL0
 俺は谷口の推察を無視し、未だに続く上り坂を見上げ、睨みつけた。丘の上というのは
古くから重要な場所、もしくは権力を持った人がいた場所のはずだった。俺ら北高生より
有能で、かつ育ちもいい女子高が麓に位置しているのを、どう説明すればいいのか分から
なかった。そんなことを考えていると、俺達は校門に辿り着いた。遅刻ぎりぎりだという
のに、校門には未だに多くの人が登校しており、この学校に未来は無いということに確信
が持てた。その中に一人マフラーを首に巻き、冬用の制服を着た女子に――もちろん、こ
の寒い時期にマフラーを巻いている人など大勢いるわけだが――、目が留まった。細くす
らりとした足に、肩口まで伸ばした黒髪、俺が一生忘れないだろう後姿、涼宮ハルヒだっ
た。いつも一番早く来ているはずのハルヒが、なぜこの時間にいるのかは分からなかった
が、声を掛けることにした。早足でハルヒを追い掛け、下駄箱で追いついた。
「よお、ハルヒ。今日は遅いんだな」
 俺がテンプレートな会話から入ると、ハルヒは慌てた様子でこちらを伺ってきた。
「何よ」
 ハルヒは慌てたのを隠そうと、俺をじとっとした目で見つめた。
「いや、何となく。ハルヒに話しかけたい気分だったから」
 「えっ」と一瞬驚いて、ハルヒは俯いて口ごもってしまった。そして、無言のまま、ハ
ルヒはその場を走り去っていった。
738スリーウィーク 8:2007/01/16(火) 20:16:59.07 ID:0CvwWAKL0
「おい、キョン!」
 俺がハルヒの様子に呆然としていると、後ろから谷口が呼びかけた。
「お前、涼宮に嫌われるようなことでもしたのか?」
「いいや」
 そういう記憶は一切無かったので、当然そう答えた。
「でも、おかしいな。涼宮があんな反応見せるの初めて見たぞ」
「そうか、だが俺にも分からん」
 ハルヒを不審に思いながらも、俺達は教室へと入っていった。
 教室に入ると、ハルヒはぼんやりと窓の外を見ていた。一年の時から相変わらずハルヒ
の前の席に居続けている俺は、ハルヒを気にしながらも自分の座席に座った。
「どうしたんだ、ずっと外を見て。UFOでも飛来したか?」
「………」
 ハルヒは俺の言葉を無視した。俺が空を眺めるハルヒの横顔をじっと見つめていたとこ
ろで、担任の岡部が入ってきて、前に直り、睡眠体勢へと移行した。午前中、俺はほとん
ど寝たまま過ごした。テスト返しも終わり、蛇足としか思えないこの一週間に気合など入
るはずもなかった。
739スリーウィーク 8:2007/01/16(火) 20:17:28.00 ID:0CvwWAKL0
「今日の涼宮はおかしいとは思わんか?」
 谷口は弁当のご飯を一口大の大きさに切りながら言った。
「確かにねえ。なんかぼーっとしてるよね」
 国木田は半分に切られたゆで卵を一口で食べると、優しい声で言った。
「キョン、お前も不自然だとは思わないか? あの涼宮がいらついているわけでもなく、
体調が悪いわけでもなく、ぼんやりと空を見上げてるなんて」
「なぜ、俺に訊く」
「お前に訊くのが一番手っ取り早いからだ」
「どうして」
 そこで谷口は黙ってしまった。
「涼宮さんが恋にでも落ちてるんじゃないか、って谷口は思ってるんだよ」
 国木田は助け舟のつもりで谷口の気持ちを代弁した。
「ほう、それで何故俺に訊く」
「涼宮さんの思い人がキョンなんじゃないか、って谷口が考えてるんだよ」
「おい、止めろ! 国木田!」
 谷口は妙に焦っていたが、国木田はそんなことは露知らず、朗らかな笑みで俺を見つめ
ていた。
「で、キョンは涼宮さんのことをどう思ってるの?」
「どうも思わん。ハルヒはSOS団の仲間だし、面白い友達ってとこだ」
「ふーん」
 国木田は声に出してつまらなそうにし、谷口はなぜだか安堵の表情を浮かべていた。こ
いつらは俺とハルヒのことをどうしてもくっつけたいようだったが、俺にはそのことを考
えることは無いだろうと思われた。なぜなら、ハルヒは俺の、SOS団としての仲間で、
大切な友人だからだ。そして俺は急いで食事を終えるといつものように、部室へと向かっ
た。
740スリーウィーク 8:2007/01/16(火) 20:17:49.25 ID:0CvwWAKL0
 部室に着くまでの間、俺はそわそわする気持ちを抑えるために色々なことを考えた。部
室に入ったらどう声を掛けようか、どんな話をしようか、思い出話でもいいかもしれない。
頭の中で思考を巡らせているうちに、部室に着いた。ゆっくりとドアを開け、その中に人
がいることを確認しようとした。
 長門がいた。部室の片隅で、パイプ椅子に座り、分厚い本に目を落としていた。俺は長
門がいることに安心し、近づいていった。
「長門」
 もう何度こんな風に長門に声を掛けたのだろうか。俺は普段通りに長門に声を掛けたつ
もりだった。しかし、長門の反応はいつもとは全く違うものだった。本から目を外し、俺
を見るなり『驚き』の表情――少し目を大きく開いただけ――を一瞬だけ浮かべた。
「どうした? 俺の顔にゴキブリでも住み着いてるのか? それともお前の親父さんに顔
が似てきたか?」
 長門の思わぬ反応に、とりあえず茶化してみた。
「……何でもない」
 長門はゆっくりと首を振ると、俺を見つめてそういった。その瞳は吸い込まれそうな力
を持っていて、思わず目を逸らしてしまうほどだった。俺は長門の横にパイプ椅子を広げ、
座った。そして、本を読む長門をただぼんやりと見ていた。それだけで気分が落ち着いた
し、長門の細く白い首筋はむしろ俺の鼓動を早めた。全体として細身のシルエットに、薄
くピンクがかった唇、横から見える長いまつげ、全てがいつも一緒にいる長門だった。
「長門、そんなに同じ姿勢で本を読んでいて肩とか凝ったりしないのか?」
「……ない」
「そうか、でも肩凝りってのはいつの間にかなってるもんだ。俺が肩でも揉んでやるよ。
得意なんだ」
741スリーウィーク 9:2007/01/16(火) 20:18:20.22 ID:0CvwWAKL0
 長門は首を動かすことも無く、ページを繰る手も止まったので了承だと思い、俺は長門
の後ろに立った。そして、ゆっくりと長門のその薄い肩に掌全体で触れた。長門は動じる
ことも無く、その状況を黙って受け入れていた。俺は長門を痛めないように、少しずつ力
を入れていった。小さい頃、田舎のばあちゃんにやっていたときのように、純粋な気持ち
でやろうと心がけた。時折香る長門の髪の匂いに、俺は嬉しくなっていた。長門に香りを
感じるたびに、長門が少女であること認識できるからだ。
「長門どうだ?」
 長門は小さく頷いて、
「……いい」
「どっちの意味だ?」
 長門は何も答えなかった。『嫌だ』なのか『ちょうどいい』なのかは分からなかったが、
嫌がる素振りを見せないかったので続けた。
 しばらく長門の肩を揉んで、もういいだろうと思い、止めてパイプ椅子に座りなおした。
揉み終わると、長門は再び本の中へと帰っていった。俺はその様子を傍観し、漠然と長門
の隣に座っていた。
「肩揉まれるのは嫌だったか?」
 何も反応が無かったのが怖くなり、尋ねた。長門は本を見ているときと同じように俯い
たまま、小さく首を横に振り、
「……別に」
「そうか」
 なぜ俺が長門の肩を揉んでいたのかは分からなかった。ただ、事をし終えて、長門の側
に居たかったのに気付いた。そして、その俺の行動がよくある会社の嫌な上司のセクハラ
のようで、暗澹たる気分になった。
 チャイムが鳴って、俺は長門と一緒に教室へと戻った。廊下でも一言も喋らず、長門は
俺の後ろをふらふらと付いてきた。その姿が愛らしくて、俺は何度となく後ろを歩く長門
を振り返っていた。俺が長門を見ようとすると、長門は視線を合わせまいと俯いていた。
742スリーウィーク 10:2007/01/16(火) 20:19:07.40 ID:0CvwWAKL0
 長門と別れ、教室に入ると、ハルヒはやはり窓の外をぼんやりと眺めていた。俺は自席
に座り、身体を斜めにしてハルヒに話し掛けた。
「ハルヒ、どうしたんだんだ? 体調でも悪いのか? 今日のお前はどこかおかしいぞ?」
「……馬鹿」
 ハルヒは外を見たまま、小さく呟いた。
「馬鹿って、人が心配してやってるのに」
「あんたにだけは心配されたくない」
「そうかい」
 ハルヒの態度が余りにも無愛想だったので、俺は話し掛けるのも止めて身体を向き直し、
やはり睡眠体制に入った。ハルヒがもう一度「キョンの馬鹿」と小声で言ったのは無視す
ることにした。不安げな表情も気になったが、体調が悪い時は誰でも不安になるものだと
決め付けることにした。
 俺は終業のチャイムとともに目覚めた。身体のバイオリズムかは分からないが、そうい
う風に身体ができているようだ。ホームルームを終え、俺は部室に向かった。リズム良く
階段を下りていると、前から鶴屋さんがずんずんと一人で上ってきた。すぐに気付いたの
は、鶴屋さんが何もしていなくても目立つ存在だからだ。さばさばと歩く姿はさまになっ
たし、俺と一緒に階段を下りていた周りの人も鶴屋さんに目をやっていたからだ。
743スリーウィーク 10:2007/01/16(火) 20:20:01.88 ID:0CvwWAKL0
 鶴屋さんも俺に気付くと、
「やあ、キョン君!」
 鶴屋さんは目を瞑るほどの笑みを浮かべて、はきはきと俺を呼びかけた。
「あ、こんにちわ」
 俺は階段の途中で立ち止まり、鶴屋さんと話す事にした。今年のクリスマスのことを話
しておこうと思っていたからだ。
「鶴屋さん、今急いでますか?」
「全然。ちょっと上に用事があるだけさ。で、何だい? もしかしてクリスマスのことか
い?」
 鶴屋さんは二つ下の段から、俺の中でも覗き見るかのように上目遣いでじっと見つめな
がら言った。
「話が早くて助かります。今年のクリ――」
「ちょいとキョン君邪魔だよ!」
 鶴屋さんは俺の服の袖を引っ張った。俺が階段の真ん中に居たせいで、通行の邪魔にな
っているようだった。上から吹奏楽部であろう、コントラバスを背負った女子が降りてき
ていた。
「すみません」
「いいよ」
 身の丈を悠に超える黒いカブトムシが通り過ぎて、俺は話を元に戻した。
744スリーウィーク 10:2007/01/16(火) 20:20:31.94 ID:0CvwWAKL0
「んと、今年のクリスマスは鶴屋さんは参加できますか? まだ何をやるって決まったわ
けじゃないんですけど、とりあえず訊いておいた方がいいかなと。鶴屋さんと朝比奈さん
はもう三年ですからね、センター試験も近いですし。それに、鶴屋さんは彼氏と過ごすか
もしれないですしね」
「ああ、あたしは大学は推薦で決まったよっ。それに今年も彼氏はいないし。だから、今
年も皆と一緒にバカ騒ぎできそうだよっ! キョン君今年も何かネタをやってくれるんだ
よねっ? あれ面白かったからなあ。去年食べたハルにゃんの鍋もおいしかったし、うー
ん、また食べたいなあ!」
「ネタはやりません」
 鶴屋さんは頬を緩ませていたが、俺はきっぱりと断言して見せた。
「だって、面白かったよ? キョン君お笑いの才能ありすぎだよっ! 思い出しただけで
――」
 鶴屋さんは「ぷっ!」と噴出しかと思うと、「だははっ!」と腹を抱えて笑い出した。
悪意はないのだろうけど、あのトナカイを思い出すだけで胃が重くなった。
「それでは、今年も鶴屋さんは参加してくれるということでいいですね」
 俺は不機嫌な声で、事務的に言った。
「何か喋り方が古泉君みたいだね」
「それは嫌ですね」
「古泉君もひどい言われようだね。ま、それはいいや」
 鶴屋さんは一呼吸置くと、続けて、
「あたしは今年も参加させてくれるなら参加するよ! ハルにゃんからオファーがあった
ら行くことにする。無かったら無かったで家族のパーティーに参加するし。ハルにゃんに
もそう言っておいてくれっさ!」
「分かりました」
 鶴屋さんは階段をひょいひょいと一段飛ばしで上り、踊り場から俺を見下ろすと、
「それじゃあ、またね」
 特徴のある犬歯を見せてニイッと笑いながら、手を振り、階段を上っていった。長く伸
びた髪が揺れて、俺の心に尾を引いていた。
745スリーウィーク 11:2007/01/16(火) 20:20:59.22 ID:0CvwWAKL0
部室までの間、長門が鶴屋さんのような笑顔を見せるのにはあとどれぐらいの時間が必
要なのだろうか、ということを考えていた。そして、それを考えることがすぐに馬鹿馬鹿
しくなった。長門には顔を崩すほどの笑いは似合わないと思ったし、微笑んでくれるだけ
で十分だと思ったからだ。それは猫のようだと感じた。笑いはしない、けれど好意を持っ
ていることを一緒にいることで伝え、側にいて擦り寄ってくるようなものだった。
 俺が部室に近づいていった時だった。俯きながら歩いていた俺は部室から漏れて響く怒
号に驚き、思わず顔をあげ、閉まっていた部室のドアの前に立った。声を荒げていたのは
古泉だった。注意して聞くと、それを止めに入る朝比奈さんの声も混じって聞こえた。な
ぜだか俺は中に入ることを躊躇ってしまった。俺が入ることで事態が余計に悪化するよう
に思われたからだ。普段からは想像も出来ない声で誰かに怒りをぶつける古泉の話に俺は
注意深く耳を傾けた。
「あなたは最も大事な部分だけを書き換えてしまった。それであなたは満足かもしれない
が、もしかしたら世界は終わってしまうかもしれない。そういうことは考えなかったので
すか? 僕たちはあなたの自己満足なんかに付き合っている時間はないんですよ!」
 古泉が話しかけていたのは長門のようだった。
「古泉君、長門さんはさっきから否定しているじゃないですか」
 これは朝比奈さんが止めに入っている声だ。涙声になっているのは気のせいなのだろう
か?
「あなたは迷っていた。だから僕たちだけは残したのでしょう? 早く元に戻してくださ
い」
「もう止めて! 古泉君!」 
 古泉はそこで落ち着いたのか、部室からは一切声が聞こえなくなった。俺は素知らぬ顔
で部室に入ることに決め、ゆっくりとドアを開けた。
746スリーウィーク 11:2007/01/16(火) 20:22:00.61 ID:0CvwWAKL0
「おっす! あれ、ハルヒのやつはまだ来てないのか」
 できるだけ普段通りに振る舞い、どかっと椅子に座り込んだ。鞄も長机の上に投げ出し
た。しかし、そこまで振る舞って、俺は動きを止めてしまった。目の前に広がる光景にた
だ言葉を失った。朝比奈さんはメイド服を着て床でうずくまって泣いていたし、古泉は長
門を睨みつけたまま肩を怒らせて立っていた。部室の隅のパイプ椅子に座っていた長門は
古泉の視線を避けるためなのか、俯いたままピクリとも動こうとはしなかった。そんな状
況を無視し続ける事は不可能だったのだ。それに俺は古泉に対して、もやもやとした怒り
を感じていた。なぜ長門を睨みつけているのか、それが知りたかった。俺は立ち上がり、古泉に話しかけた。
「おい! 古泉、お前はどうして長門を睨みつけてるんだ。場合によっちゃ俺が怒るぞ」
「涼宮さんなら来ませんよ」
 古泉は冷たく言い放った。俺の話なんか聞いていない様子だった。
「ハルヒの事はいい。それより、どうして長門に対して怒っているのかを教えてくれ」
 「ははっ」と古泉はわざとらしい笑い声を上げて、でこを右手で触りながら天井を仰い
で見せた。そして、俺のほうに身体を向き直し、
「あなた自身が一番分かっているでしょう?」
「何をだ」
 質問の意図すら掴めず、少し苛立った。
「これはこれは、さすが長門さんというべきですね。完璧だ」
「いい加減にしろ。お前は何が言いたいんだ」
「あなたの好きな人を僕に教えてはくれませんか? もう半年もすれば出会って二年近く
経ちますし、そういうことを語り合う仲にはなっているでしょう?」
 俺は古泉の言葉に溜息をついた。
「何でお前に俺の好きな人を教えなきゃならんのだ。この話とどういう関係がある」
「長門有希」
 俺は一瞬驚きの表情を浮かべてしまったと思う。なぜなら、それが古泉に問われて思っ
た、俺の好きな人だったからだ。
「ビンゴみたいですね」
 古泉は無感動な笑みを浮かべて言った。俺がずっと俯いたままだった長門を見ると、長
門は俺をじっと見つめていた。何かを否定するような、俺に何かを訴えるような瞳だった。
「あなたは操作されたのですよ。長門さんにね。長門さんのことを好きになるように」
747スリーウィーク 12:2007/01/16(火) 20:22:36.19 ID:0CvwWAKL0
「そんなはずない!」
 俺は古泉をきつく睨みつけると、怒鳴った。俺は古泉のじれったい態度に苛立ちを隠せ
なかった。
「そうなんだから仕方ありません」
「そんなはずない! 俺はずっと前から長門のことが好きだった。記憶だってある。そん
なはずないだろ」
「本当に長門さんは優秀だ」
「長門、お前はそんなことしないよな?」
 俺は言って、長門の顔を伺った。長門は少しの溜めの後、ゆっくりと、しかししっかり
と頷いた。
「酷い話だ」
「何が酷い話だ。長門はそんなことをするようなやつじゃない」
「僕と朝比奈さんはあなたが操作されたことに気付いているんです。長門さんは僕たちに
見せ付ける気なんですよ。いい迷惑ですがね。ですが本当に迷惑なのは――」
「やめてください!」
 床に突っ伏していた朝比奈さんが古泉の足に抱きつき、叫んだ。
「古泉君、もうやめて! それ以上言ったら、わたしたち一緒にいられなくなっちゃう!」
 朝比奈さんの悲痛な叫びが古泉に届いたのか、古泉は肩を竦めて見せると、
「もう帰ります」
748閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:22:45.93 ID:UcGgE77FO
支援
749スリーウィーク 12:2007/01/16(火) 20:22:51.82 ID:0CvwWAKL0
 古泉はそう言うと、床に落ちていた鞄を拾い肩にかけ、早足で部室を出て行った。古泉
がいなくなった部室は朝比奈さんの泣き声だけが響き、酷い頭痛が俺を襲った。俺はその
まま椅子に座ると、がっくりと項垂れ、先ほどの訳の分からない言い合いを考えた。古泉
がなぜあんなに怒っていたのかが分からなかったし、朝比奈さんもなぜあんなに泣いてい
たのかも分からなかった。というより、全てが分からない事だらけだった。俺の好きな人
が操作されている? 俺は今までの記憶を思い起こした。やはり、俺に思い当たる節は無
かった。俺はちゃんと長門が好きだった。
 朝比奈さんは立ち上がり、俺の向かいに腰掛けた。涙の後を擦りながら大きな瞳を潤ま
せている様子は抱きしめたくなった。でも、それは好きとは違っていた。長門に対する思
いと、衝動的な欲求は全くの別物だったし、胸が苦しくなるような思いとは違ったのだ。
そのことを考えて、俺は長門のことが好きなんだと確信が持てた。長門のどこが好きなの
かは分からなかったが、『長門』が好きなのは確かだった。
「朝比奈さん、大丈夫ですか?」
 朝比奈さんが少し落ち着いたのを見計らって、できるだけ優しく話しかけた。
「……だい……じょうぶ」
 途切れ途切れ言葉を繋げて朝比奈さんはゆっくりと答えた。
「何か飲み物でも飲みますか? 俺が煎れますよ。長門もいるだろ?」
750閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:23:13.36 ID:UcGgE77FO
支援
751スリーウィーク 13:2007/01/16(火) 20:23:35.02 ID:0CvwWAKL0
 やかんに水を入れに行くために立ち上がりながら、長門に尋ねた。いらないと言っても
飲ませるつもりだった。やかんを持ち上げると中に液体が入っている重みを感じ、蓋を開
けて中を確認した。三人分は十分に煎れられる水が入っていたが、いつからのかは分から
なかったので朝比奈さんに確認を取った。「ちょっと前です」とこもった声で答えてくれ
たので、ガスコンロを点けた。ぼんやりと青い炎を眺めていると、この部室が冷え切って
いることに気付いた。さっきまでの古泉と言い合いが終わって、緊張の糸が切れたからだ
った。
「なんで暖房つけないんですか? 電気ストーブっていってもつけるとつけないでは大違
いですよ」
 独り言とも問いかけともつかない調子で部室に向かって話しかけた。そうでもしないと
場の空気の重さに潰されてしまいそうだった。俺はガスコンロの前に戻ると、壁に向かっ
て話しかけた。
752スリーウィーク 13:2007/01/16(火) 20:23:52.44 ID:0CvwWAKL0
「せっかく去年の今頃、俺が持ってきてやったって言うのに。ああ、そういえばあれはハ
ルヒの命令だったな。あいつが来年の文化祭の前借りだって言って電気屋の親父さんをご
まかしたやつだった。あの親父さんも人が良すぎるよな。生意気な女子高生のわがままを
すんなり聞いてくれるんだから。そんで、俺はそのお使いを命じられたわけだ。ああ、そ
の日は確か降水確率十パーセントだったのに雨が降ったんだ。俺は途中から走って帰った
んだっけ。部室に戻ると……誰だっけか、長門か。うーん。確か長門が本を読んでいて、
そして俺はいつの間にか寝ていて、起きたらカーディガンがかけてあって。ハルヒが俺に
悪戯しようとしてたんだ。あいつ、妙に焦ってて、あいつも俺にカーディガンかけてくれ
てたんだよな。外は叩きつけるような雨が降っていて、ハルヒは――」
 ハルヒは俺と一緒に一つの傘で帰ったんだ。狭い狭いなんて文句言いながら、少し気恥
ずかしそうに。ハルヒがあんなに恥ずかしそうな顔を見せたのは初めてだった。閉鎖空間
でキスをしたときは驚いていたし、ハルヒが自分からそんなことをしたのは初めてだった
から。その後俺たちは、途中で焼き芋を食べたんだ。雨だっていうのに、客なんてこない
だろうに街を周っていた焼き芋のトラックを見つけて、ハルヒが食べたいって言うから俺
が奢ってやったんだ。ハルヒには傘に入れてもらったし、そのお礼も兼ねてな。でも、焼
き芋は一本しかなかった。雨だから沢山は焼いてなくて、ちょうど前にまとめ買いしてっ
たおばちゃんがいたらしかった。それでも近くの公園で屋根のあるベンチで並んで食べた
んだ。熱いのを我慢しながら、包み紙の上から焼き芋を半分に割った。当然綺麗に半分に
なんて割れるはずもなかった。ハルヒはもちろん大きい方を取った。「俺が買ってやった
のに」なんて文句を垂れながらも、久し振りに食べる焼き芋はおいしかった。ハルヒは熱
いのに強いからなのか、ものの数十秒で食べ終わってた。「値段の割にはおいしいわね」
なんて買ってやった俺の前で偉そうなことを言ってたな。でも、ハルヒは頬に焼き芋付け
てて、そんなこと言われても全然腹が立たなかったんだ。
 なぜ、俺はハルヒとのことをこれほど鮮明に覚えているのだろう? ――いや、違う。
俺は長門のことが好きだ。長門との思い出もしっかりと覚えているし、長門のことを考え
ると高揚する自分がいた。
753閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:24:04.71 ID:UcGgE77FO
支援
754スリーウィーク 14:2007/01/16(火) 20:24:18.36 ID:0CvwWAKL0
「キョン君! やかん!」
 俺は朝比奈さんの声で我に帰った。やかんは耳に付く高音を鳴らせて、俺が火を止める
のを待っていた。慌ててつまみを捻って火を止めると朝比奈さんの方を向き、
「すみません、ぼーっとしてて」
 俺は朝比奈さんに向かって軽く頭を下げながら言った。朝比奈さんは「ふふっ」と小さ
な笑みを浮かべると、
「わたしが煎れますよ。キョン君は座っててください」
 どうやら、朝比奈さんは元に戻ったようだった。朝比奈さんは柔らかに立ち上がって、
ぱたぱたとコンロに向かった。
「あ、すみません」
 俺は再び頭下げて、椅子に座った。
「謝らなくていいですよお。わたしが悪いんです。めそめそ泣いていたりして。キョン君
はなんにも悪くないんです」
 俺の背中から朝比奈さんの愛らしい声が聞こえた。朝比奈さんはもう慰めたりする必要
はなさそうだった。俺は安堵するとともに、少しだけ残念だった。
 朝比奈さんがお茶を入れるまでの間、俺はぼんやりと部室の外を眺めていた。日はほと
んど沈みかけ、あと少しで冬の夜が訪れそうだった。朝の寒さが続いているとしたら、今
日の帰りは縮こまって帰ることになるだろう。日が落ち暗くなった中、狭い歩道を街灯の
光を受けながら、今日は長門と帰ろうと思った。そして、長門を家まで送ろう、そう思っ
た。

続く
755閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:25:24.20 ID:UcGgE77FO
乙!
続きwktk
756スリーウィーク:2007/01/16(火) 20:25:50.43 ID:0CvwWAKL0
また来週続きを投下します
757閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:27:16.51 ID:gRgcfK6N0
声と効果音で作られるストーリー
小説と同じで場面の状況は想像力に任せられる
758閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:27:56.65 ID:gRgcfK6N0
759閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:37:25.14 ID:UcGgE77FO
>>757
thx
760閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:40:36.11 ID:vNdtxn6RO



●<ぬ
761閉鎖まであと 7日と 0時間:2007/01/16(火) 20:58:31.16 ID:bytHHzhCO
ほしゅ
762閉鎖まであと 6日と 23時間:2007/01/16(火) 21:00:59.89 ID:wEQb2G+c0
===============

       業務連絡

===============

涼宮ハルヒのSS in VIP まとめサイトが新サイトに移行します
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip


そのための論議下記で開催中です
http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1167729880/
時間がありましたら是非ご参加ください
763ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2007/01/16(火) 21:02:25.56 ID:N1ZFWSBj0
携帯の方も是非ご参加ください

今後のまとめ運営方針を検討するスレ
http://same.u.la/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1167729880/l10
764閉鎖まであと 6日と 23時間:2007/01/16(火) 21:15:04.44 ID:UcGgE77FO
アナル時間切れ。
765閉鎖まであと 6日と 23時間:2007/01/16(火) 21:19:25.54 ID:Y04zSKlkO
新スレはまとめが決まってからの方がいいのかな?
俺は立てられないが…
766閉鎖まであと 6日と 23時間:2007/01/16(火) 21:24:21.14 ID:0CvwWAKL0
http://ex17.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1168949939/
         , ´,r== 、ヽ
         !くl人ノ从)ト、
         W┃゚ ヮ゚ノiノ
     ../ ̄ ゝ⊃)) ̄∪  ̄\    キュッキュッ
        / ̄ ̄ ̄ ̄ヽ.

         , ´,r== 、ヽ
         !くl人ノ从)ト、
         Wリ` ヮ´ノiノ
        | ̄∪ ̄ ̄∪ ̄|  トン
        | アナルスレ │
    ../ ̄|         .| ̄\
767閉鎖まであと 6日と 23時間:2007/01/16(火) 21:25:03.56 ID:Y04zSKlkO
もう立ってた
768閉鎖まであと 6日と 23時間:2007/01/16(火) 21:47:08.71 ID:fezfXpDEO
保守
769涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜 ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 21:58:41.64 ID:+3uNr1G30
ご無沙汰しております。
2ヶ月以上続編投下を凍結させてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
忘れ去られてしまったかもしれませんが、投下したいと思います。よろしいでしょうか?
40レスくらいあります。

前回までの話:http://www11.atwiki.jp/xgvuw6/pages/1495.html

770閉鎖まであと 6日と 23時間:2007/01/16(火) 21:59:37.81 ID:Z+8ZRFEb0
これは待ち焦がれた人も多そう!
771閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:00:03.26 ID:fezfXpDEO
wwwwwktk
772涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(1) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:02:11.34 ID:+3uNr1G30
俺のことを『殺す』だと・・・?
「そ、そんな〜・・・」
背後では朝比奈さんが驚愕と絶望の入り混じった嘆きの声をあげる。
今にも卒倒しそうな青白い顔色だ。
「アーチャー・・・アンタ何言ってるの?」
ハルヒも状況を把握しかねるといった様子だ。首を傾け、赤い外套を睨みつけている。
「・・・はあ?何を言っているんだ?」
俺も唖然とした声を挙げる他なかった。

「・・・まず俺の正体を話さなくてはならないだろうな」
俺達からふと視線を外し、自嘲気味に唇を歪めつつ、アーチャーは静かに口を開いた。
「と、言ってもライダーにセイバー、古泉は既に解ってはいるだろうが・・・」
そんな妙に引っかかる前置きを添えて、衝撃的な事実が語られる。

「俺は――以前の世界では『キョン』と呼ばれていた」

「――え・・・それって」
ふと呟くハルヒ。俺も・・・信じられなかった。と、言うかそもそも理解出来ない・・・。
「俺は以前の世界で・・・SOS団に所属していた。そっちの世界にはハルヒも朝比奈さんも、古泉も、
 セイバーも長門有希として、ライダーも鶴屋さんとして、存在していたんだ。
 そうだろ、古泉、長門、鶴屋さん。誤魔化しても無駄だぞ。
 どうやらなぜか古泉とサーヴァントには以前の世界の記憶が残っているらしいからな」
その言葉に、垂れ落ちる血を拭おうともせず、唇をかんで俯く古泉。
ライダーは「あ〜、とうとう言っちゃったね〜」とか何事かを小さく嘆いている。
おぞましき仮面により表情は窺い知れないものの、戸惑っているに違いないと思われる声色。
そして、セイバーはといえば、表情を変えず、じっとアーチャーを見つめている。
773閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:02:59.96 ID:fezfXpDEO
支援
774涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(2) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:03:21.66 ID:+3uNr1G30
「まあ、いきなり信じろって言ったって無理な話だろうが・・・」
と、そこで言葉を切るアーチャー。そりゃあそうだ。そんなムチャクチャな話、やはり信じられるワケない。
しかし、
「彼の言うことは本当」
セイバーがポツリと呟く。それはそれは真剣な面持ちで――。
ライダーもコクコク頷いている。古泉も相変わらず黙ったままだ。
まさか・・・本当に・・・。

「ちょっと待ちなさいッ!」
アーチャーの告白と共に流れ出した不穏な沈黙を、断ち切ったのはハルヒの一声だった。
「どういうことよ?アーチャー、アンタが・・・キョンだって言うの?」
「そうだ」
「ウソ・・・自分の正体が思い出せないって言ってたのは何だったのよ!?」
「正体については既に思い出していた。今まで黙ってて悪かった」

「じゃあ・・・何でキョンを殺すだなんて言い出すの?」
ハルヒの口から、核心を突く質疑が成される。
再び辺りには、釣鐘のように鈍重で厳かで――不気味な沈黙が降りる。
洞窟内の温度が一気に数十度低下したかのような――不穏な空気が立ち込める。

「それは・・・」
アーチャーの赤い外套が洞窟内に吹く風に大きく揺れる。

「その男が・・・生きていてはいけない存在だからだ」
775閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:03:40.53 ID:fezfXpDEO
支援
776閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:03:50.61 ID:Z+8ZRFEb0
支援ー
777涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(3) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:04:27.90 ID:+3uNr1G30
「はあ?」
その言葉を聞いて、思わず俺はそんな間の抜けた声をあげていた。
言うに事欠いて何だそりゃ?どうしてそんな理不尽な理由で俺がお前に殺されねばならない?

「随分不満そうだな」
アーチャーが俺を睨みつけ、心底不快だと言わんばかりに皮肉を吐き出す。
憎悪に濁ったその視線から放たれる殺気が、チクチクと俺の神経を刺激する。
「当たり前だろ。いきなり殺すだなんて言われて、ヘラヘラ笑ってられるほど、俺はお人よしじゃない。
 それに・・・相手が誰でもない『自分』とありゃ尚更だ」
俺も負けずに睨み返す。背中と腹に力を入れ、殺気に震える身体を奮い立たせる。

「殺すなんてダメですよ〜・・・」
おろおろと俺とアーチャーを交互に見る朝比奈さん。
「だいたい何でキョンくんを殺すんですか?どうして『生きてはいけない』存在だなんて言うんですか?
 アーチャーさん、あなたが本当にキョンくんと同一人物なのであれば、そんな酷いことは言わないはずです!」
感情をむき出しにして、涙を浮かべながら朝比奈さんは俺とアーチャーの和平調停にあたらんとする。
「そう、ダメ絶対」
セイバーも小さく同意する。

「ハルヒも長門も朝比奈さんも・・・知らないからそんなことを言えるんだ。
この男が・・・『俺』が以前の世界でどんなことをしでかしたのか知らないから・・・」
そんな2人の懇願に、一層苦々しく顔を歪めるアーチャー。
「・・・何をしたっていうんだ。俺が」
――そうだ。俺は他でもない『自分』に恨みを買うようなことをしでかした覚えなどないぞ?
「・・・わかった。何も知らないまま殺してしまうのは確かに理不尽だし・・・話してやろう」
アーチャーが静かに語りだす。消し難い罪悪に彩られた悲しき過去を・・・。
778閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:04:55.36 ID:fezfXpDEO
支援
779涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(4) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:05:57.11 ID:+3uNr1G30
〜回想1〜
それは・・・以前の世界でのこと。俺がまだ、普通の高校生『キョン』として生きていた頃だ。

「キョン・・・あたし・・・アンタのことが好きになっちゃたみたい」
「ほえ?」
それはハルヒのそんな唐突な告白から始まった。

「アンタは・・・何だかんだいってずっとあたしの傍にいてくれた。
 キョンのいないSOS団・・・キョンのいない世界なんてもう考えられない」
そんなことを言うハルヒは、北極の氷もものの三秒で解けるような強烈な熱に浮かされでもしたか、
本気で小隕石でも頭に衝突してどうかしちまったのかと思ったくらいだった。
それほどまでに突然の告白。
そんなハルヒの異常に、俺が考えたのは「これは何かの罰ゲームなのか?」ということだったくらいだ。
しかし、その言葉が真剣であることは、次のハルヒの行動を以って証明された。

――それは突然のキス。
ムードも色気もへったくれもなかった。
俺のネクタイを強引に掴み、ぐいと引き寄せられるがまま、その唇を押し当てられた。
これで・・・ハルヒとのキスはあの閉鎖空間以来、2度目だ。
正直余りにいきなりすぎて、さぞ柔らかかったろう唇の感触とか味とか――キスをしたという事実以外の何も覚えていない。

「アンタが良ければ・・・あたしと付き合って欲しいな、なんて・・・」
ゆっくり唇を離し、顔を真っ赤にしてモジモジと語るハルヒに普段の威勢のよさは微塵もない。
しかし、そんなしおらしい姿と突然の告白――そしてキスに俺が大きく心を動かされたのもまた事実だった。

放課後――俺達以外に人がいなくなった部室でのひとコマだった。
780閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:06:07.33 ID:fezfXpDEO
支援
781涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(5) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:06:45.75 ID:+3uNr1G30
〜回想2〜
結局、あまりの驚きに、その日はとうとうハルヒに対し、返事らしい返事も出来なかった俺だったが、
心の中では既にハルヒの気持ちを受け入れたも同然だった。
次の日から俺とハルヒは仲睦まじく登下校や昼飯を共にする仲になり、クラスでは谷口や国木田に大いにからかわれた。
勿論、我がSOS団においてでも俺達の関係は白日の下に晒されることになり(まあハルヒがいきなり他三人に勝手に宣言したのだが)
俺とハルヒは学校中の公認のカップルとなってしまった。

正直、俺はハルヒのことをずっと憎からず思っていたし、恋人になったということも十分認識していた。
しかし、事態はこれを機に思わぬ方向へと転換することになる。

その日の放課後、掃除当番として、いつになく真面目にに己の職務を全うするハルヒを教室に残し、
一足先に部室へと赴いた俺を、ただ一人で待っていたのは朝比奈さんだった。
何やら決意を秘めたような真剣さとどことなく切なげな憂いを兼ねた表情だったのはよく覚えている。
「涼宮さんとキョンくんが結ばれるのは規定事項なんです・・・。いくら未来から来たとはいえ、
 わたしにそれを覆すことなんて出来ません」
じっと俯き、我が部室の天使は何事かを呟いていた。
「・・・朝比奈さん?いきなり何を・・・」
「本来・・・わたしにこんなコトをする権限も資格もありません・・・。
 でも・・・自分の気持ちをこれ以上隠すことは・・・わたし出来ません。
 わたし・・・キョンくんのことが・・・好きです」

それはそれは衝撃だった。あの憧れのエンジェル朝比奈さんの告白だ。
普通の男ならいくら転生したところで預かることのないようなその僥倖に小躍りするところだが、
その時の俺にとっては、何の防御もせずにヘビー級ボクサーの右ストレートを食らう位の衝撃以外の何物でもなかった。
そして――『規定事項』と朝比奈さんは確かに言った。俺とハルヒがこういう関係になるのが未来の規定事項だとしたら、
それに水を差すような行為は、未来人たる朝比奈さんにとっては最も避けなければならないことのはずだ。
それを知ってなお朝比奈さんは、己の隠しきれぬ想いを吐露したのだ。
782閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:07:15.16 ID:fezfXpDEO
支援
783閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:07:31.55 ID:bytHHzhCO
支援
784涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(6) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:07:44.72 ID:+3uNr1G30
〜回想3〜
「朝比奈さん・・・本気ですか?」
「本気です!わたしは誰よりも・・・キョンくんのことが好きになってしまったんです!」
目に涙を溜めて、真剣に言い放つその姿に対し、『本気ですか?』なんて随分俺も下種なことを言ったものだと思う。
それこそ校内に幾人潜んでるとも知れぬ朝比奈ファンクラブの連中に、闇討ちされて殺されても文句は言えなかっただろう。
「キョンくんの気持ちが涼宮さんにあるのはわかってます・・・。それでも少しだけでいいんです・・・。
 今、この瞬間だけでいいんです・・・。どうか・・・わたしのことを見て・・・」

俺は答えを出すことが出来なかった。
朝比奈さんの・・・未来を覆してまでの告白を無下にすることも、ハルヒの気持ちを裏切ることも出来なかった。
更に――事態はそれだけにとどまらない。

数日後――俺はとある人物から深夜に光陽園駅前公園に呼び出された。
呼び出しの主は・・・もうおわかりだろう。

「こんな夜中に一体何の用だ?長門」
「・・・・・・」
長門は相変わらずの制服姿のまま、黙って立ち尽くしていた。

そして、ポツリと呟く。
「わたしの中に・・・説明できないエラー、バグが蓄積している」
「へ?」
「あなたが涼宮ハルヒと交際を始めてからこれらの現象は発生しだした」
「それって・・・」

「わたしはあなたのことが好き」

世界が音を立てて崩れ始めるその始めの音を――頭のずっと奥の方で聴いた気がした。
それは鈍く、気味の悪い音だった。
785閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:07:59.04 ID:fezfXpDEO
支援
786涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(7) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:08:33.96 ID:+3uNr1G30
〜回想4〜
いつからこんなことになってしまったのだろう。
俺は数日にして、自分を巡る複雑な四角関係を形成してしまった。
ハルヒ、朝比奈さん、長門・・・この三人から一気に告白を受けた。
世の男子が渇望して止まないハーレム的なシチュエーションだが、俺は素直に喜ぶことなどできやしなかった。
誰か一人を選ぶなんて・・・最初から無理だったのだ。

それからの俺は、自分でも嫌になるくらいの歴史に残るダメ男ぶりを発揮した。
結局3人の想いを全部曖昧にしたまま、俺は皆と関係を持った。
勿論・・・肉体関係もソレに含まれる。
長門の部屋と朝比奈さんの部屋、そして自宅(ハルヒは俺の部屋でコトに及びたがる傾向にあった)を、
一晩の内にハシゴするなんてこともザラだった。
今思えばよく体力が持ったものだが、あの時の俺は身体的な疲労を感じることさえ放棄していたのかもしれない。

朝比奈さんと長門は、俺が自分以外の女と関係を持つことを容認していたようだった。
行為が終わるや否や部屋を出ようとする俺が引き止められることは一度もなかった。
寧ろ次の相手の下に向かうことを促されるようなこともあった。
しかし・・・それをよしとしない人間が一人だけいた――ハルヒだ。

なし崩し的に作り上げてしまった四角関係はすぐにハルヒにバレてしまった。
その時のハルヒの怒りようといったら、なかった。泣く、喚くは当たり前。
俺に対しては勿論鉄拳制裁、ボコボコにされた。女にここまでボコボコにされるのもまた情けないのだが。
それだけにとどまらず、ハルヒはとうとう朝比奈さんと長門にその怒りの矛先を向け、
部室で、うろたえる俺と古泉を前に、2人を『泥棒猫!』と罵り、キツイ平手打ちまでお見舞いした。

その日を境にハルヒは学校にも団活にも姿を見せなくなり、連絡も取れなくなった。
787閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:08:46.43 ID:fezfXpDEO
支援
788閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:08:58.67 ID:bytHHzhCO
支援
789涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(8) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:09:20.81 ID:+3uNr1G30
〜回想5〜
そして最も恐れるべき事態がやってきた。
ある夜、古泉に呼び出された俺は、いかに今のハルヒの精神状態が危険なものかを長々と説明された。

「もはや我々『機関』でも手の施しようがありません。閉鎖空間は日を追う毎に拡大し、
 神人の破壊活動の規模も大きくなってきています。世界崩壊も時間の問題です」
古泉は冷たくそう言い放った。もう全てを諦めていたのかもしれない。
「・・・あなたのせいですよ」
「・・・・・・」
俺は黙って下を向いていることしか出来なかった。

「あなたのせいで・・・いつも僕は・・・。なぜ僕ばかりがこんな目に逢わなければいけないのです?
 なぜ僕ばかりがいつも涼宮さんのご機嫌とりを・・・あなたの失態の尻拭いをさせられねばならないのです?
 僕だって・・・普通の『古泉一樹』としての人生があったんだ・・・!
 こんな能力・・・本当はいりやしなかった!!」
古泉は激高した。今思えば・・・お前がコッチの世界で俺達を殺そうとした気持ちも理解できる。

「お前のせいだッ!!」
古泉はそう言い放つと、渾身の右ストレートを俺の顔面にかまし、闇夜に消えていった。
俺は一言も反論する気力さえ残っていなかった。
そして同時に、古泉にはもう二度と会うことはないだろうことを悟った。

『絶望』を司る神がいるとしたらよっぽどソイツはサドに違いない。
そして、きっと人々の血や涙を喜んで喰らい、腹の足しにするのであろう。
――磨耗しきった俺を、更に絶望の淵に追い込む出来事が2つ、立て続けに起こる。
790閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:09:26.47 ID:fezfXpDEO
支援
791涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(9) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:10:20.43 ID:+3uNr1G30
〜回想6〜
「わたし・・・未来に変えることになりました」
泣きじゃくりながらそう告白した朝比奈さん。
未来の規定事項に水を差し、『捻じ曲げ』てしまった彼女に、組織の上層部は黙ってはいなかったようだ。
強制的にその身を未来へ送還されることが決定したのだ。
勿論、ただ送還されてハイ終わり、ではない。『しかるべき罰』とやらが朝比奈さんのことを待っているらしい。
それ以前にハルヒが世界を改変してしまったら・・・朝比奈さんの帰る未来も・・・。
「わたしが・・・あんな告白しなければ・・・」
「朝比奈さんのせいじゃ・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
天使の生まれ変わりのような少女の涙を前にして――それを拭うことも掬い取ることも叶わない。
俺は心底自分が情けなった。
「きっと・・・もう2度と会うことはありません・・・。さようならキョンくん・・・」
そう言い残し、朝比奈さんは去っていってしまった。

そして――
「わたしの廃棄処分が正式に決定した」
長門は無感情にそう言ってのけた。
長門の親玉である情報統合思念体とやらは、今回の事態の引金となった長門の軽率な行動に、
大層ご立腹している、とのことらしい。
『廃棄処分』か・・・。随分とイヤな言い方だ。俺は長門を1人の人間として見ていたはずなんだが・・・。
雪の結晶の具現のようなその少女が、儚く溶けていってしまう――その様を指をくわえて見ていることしかできない。
やはり心底自分が情けなかった。
「ごめんなさい・・・」
「長門・・・」
「あなたに会えて良かった・・・さようなら」

こうして2人のかけがえのない人が、俺の目の前から――世界から消えた。
792涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(10) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:11:11.90 ID:+3uNr1G30
〜回想7〜
朝比奈さんと長門が消えてしまった翌日、古泉から連絡があった。
それは非情な最後通告だった。

『明日の朝をもって完全に世界は崩壊し、涼宮さんの手によってまっさらに塗り替えられます。
 もう足掻いても無駄です。僕も機関も完全に諦めました。
 あなたも諦めてください。それでは』
携帯電話越しであることを差し引いても、その口調は冷たく無機質だった。

そして世界最後の夜、俺は考えることも、現実に向き合うことも、
ハルヒに、朝比奈さんに、長門に向き合うことも、全て――放棄した。
どうせ世界がなくなるなら・・・最後の夜くらいラクにさせてくれ。

そうして、俺は自室で布団を被り、ただただ無心で世界の崩壊を待った――。
俺の周りにあった日常――
妹や母親や父親、谷口や国木田、鶴屋さんといった友人、何よりも俺が大切にしていたSOS団の生活、
そして・・・古泉や俺を『好き』と言ってくれた3人の女性、
全てから逃げ出し、俺はただただ布団に包まっていた。

俺は・・・誰も幸せにすることなんかも出来ない。
俺は・・・誰も守ることなんかもデキナイ。
オレハ・・・誰かをマトモにアイスルコトなんかもデキナイ。
オレハ・・・ナニモデキナイ。

押しつぶされてしまいそうなほどの絶望と自己嫌悪が俺を襲った――。
それこそ・・・『自分を殺してしまいたい』くらいに――。
793閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:11:45.19 ID:fezfXpDEO
dkdk支援
794涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(11) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:12:12.94 ID:+3uNr1G30
〜interlude1〜
「・・・しかし、目が覚めたとき、世界が崩壊していることはなかった。
 なぜか目の前にいたのは魔術師を名乗るハルヒで、俺は『アーチャー』とかいう
 ワケのわからないサーヴァントとやらになってしまっていたというわけだ」

俺は過去の世界で最後にあった出来事について一気に語った。
勿論、ハルヒの力のこととか朝比奈さんが未来人だとか長門が宇宙人だとか、
そういう話には上手く触れぬように。
こっちの世界ではハルヒは勿論、朝比奈さんだってそんなこと知らないだろうからな。

「そういうワケだ。『キョン』、お前は生きていてはいけない人間だ。
 誰の気持ちにも応えることが出来ず、中途半端なままSOS団を崩壊させた。
 お前のような人間には・・・誰も幸せにすることなど出来はしない。
 不幸にするだけだ」

正直、こんなのは情けない『自分』への八つ当たりに過ぎないということはよくわかっている。
しかし、それでも俺はやらなければならない。
『キョン』という人間の存在は、ハルヒも長門も朝比奈さんも幸せにすることは出来ない。
ただ・・・災厄をもたらすのみ。
元より俺は未来人でも宇宙人でも超能力者でもないし、ましてやハルヒみたいな『力』を持つわけでもない。
単なる普通の人間だ・・・。最初から、ハルヒ達の傍にいるべき存在ではない。
だったら・・・俺が消えるしかないじゃないか・・・。
そう考えてみれば、こうしてサーヴァントとして強大な力を得ることが出来たのも
『自分』を殺すためにはちょうどいい機会だ。

俺は改めて自分にそう言い聞かせ、目の前の『キョン』に殺意をぶつける。
795涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(12) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:13:03.90 ID:+3uNr1G30
「何だよソレ・・・」
俺は思わずそう搾り出していた。
「そんな八つ当たりみたいな理由で殺されてたまるかッ!!!」
洞窟内に響き渡る咆哮。とても自分の口から発せられたとは思えない。

「ああ、八つ当たりだとも。それでも俺はお前を殺す」
赤い男――『俺』だった男が言い放つ。
「やってやるよ・・・」
そこまで言われて黙っちゃいられない。
それに俺が最も気に入らないのは――アイツが以前の世界で『逃げた』ことだ。

「どうやらヤル気になってくれたようだな」
アーチャーは瞬時に両手に短剣を投影する。
やはり俺と同一人物なだけあってか、今までは気付かなかったが奴の得意技は、
どうやら俺と同じ『投影』らしい。
俺も負けじと同じ短剣を投影し、アーチャーに向き直る。

しかし今にも戦闘が始まらんとしたその時――俺の進行を阻む小さな腕が目の前に現れる。

「ダメ」

俺を制したのは――アーチャーが長門と呼んだ少女、セイバーであった。
796涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(13) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:14:14.33 ID:+3uNr1G30
セイバーは俺の前に立ち、アーチャーを睨みつける。
「・・・長門か。やはり俺を止めるつもりなんだな?」
アーチャーの問いかけに小さく首肯するセイバー。
「・・・俺の企みを最初から知っていたんだな?」
「知っていた」
「・・・以前の世界の記憶もあるんだな?」
「ある」
「じゃあなぜ・・・」
アーチャーとセイバーは、2人で何やら話し込んでいる。

「止めても無駄だ・・・と言いたいところだが、長門・・・いやセイバーに手を出されたら
 俺もどうすることも出来ないな・・・」
天を仰ぐアーチャー。確かに最強のサーヴァントであるセイバーが俺に加勢してくれれば百人力だ。
しかし・・・ここでセイバーに助けてもらうのは・・・。

「下がれセイバー。これは・・・俺の戦いだ」
俺はセイバーを制し、一歩前に出る。
「・・・でも」
セイバーが珍しく苦々しく表情を変える。
「『俺を守る』だっけ?あんなこと言われて、凄く嬉しかったよ。
 お前は最高のサーヴァントだった。本当に何度も助けられた。
 それでもこの戦いだけは・・・お前の助けを借りるわけにはいかない」
俺はセイバーに向き直ると、左手の甲を向けた。

「令呪の下に命令する!この戦いに手を出すな、セイバー!!」
797閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:14:40.96 ID:fezfXpDEO
支援
798涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(14) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:15:13.51 ID:+3uNr1G30
左手に刻まれた歪な刻印が紅く、禍々しく光を放つ。
そして、改めて俺はセイバーの一歩前に出る。
セイバーは令呪に縛られ、そんな俺を制することはもう出来ない。
「どうして・・・?」
セイバーが珍しくその瞳に、明確な疑念と悔しさを滲ませ、俺を睨む。

「すまない。コイツとの決着は・・・どうやら俺だけで着けなきゃならないようだ」
「・・・・・・」
「セイバー・・・いや長門だったっけか?もし元の世界に戻れたならば・・・宜しくな」 
そんな俺の言葉に、セイバー、いや元の世界では俺達SOS団の団員であったという長門有希は諦めたように俯いてしまった。

「ダメです・・・キョンくん・・・いくらなんでも人間がサーヴァントにかなうはずがありません!」
朝比奈さんが声を振り絞って、俺を止めようとする。
「そうだ・・・!ライダー・・・ふたりを止め・・・」
「無駄だ」
朝比奈さんの悲痛な願いを一蹴したのはアーチャーだった。
「ライダーは先程のランサーとの戦闘で宝具を使用しており、消耗が激しい。
 邪魔に入ろうとしても・・・今のライダーならすぐにでも殺せるぞ」
冷たくそう言い放つアーチャー。
「言うにょろね〜・・・でも事実だし仕方ないっさ・・・」
ライダーにも今の自分ではアーチャーを止められないという自覚があるらしい。

「ちょっとキョン!!アンタ、ムチャよ!?なんだったらアタシとみくるちゃんが加勢するわッ!!」
ここぞとばかりにハルヒが叫んでいるのが聞こえる。
「それには及ばないさ。すまんな、ハルヒ。半人前の俺を今まで助けてくれてありがとうな」
「何言って・・・!!」
ハルヒは俺の決意が固いと見たのか、それ以上の言葉を飲み込んでしまった。
799涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(15) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:15:53.11 ID:+3uNr1G30
「相変わらずモテモテだな」
アーチャーが乾いた笑いを浮かべて、皮肉めいた言葉を投げる。
「お前がソレを言うか?」
俺も負けじと皮肉を返す。

「ハルヒ達との別れが済んだのなら・・・いくぞ」
アーチャーは両手の短剣を握り締める。高まる殺気――。
「何言ってんだか・・・同じ人間でも、サーヴァントになるとここまでひねくれちまうモンなのかね」
俺も短剣を構え、戦闘開始に備える。

重い沈黙が辺りを支配する。俺もアーチャーも間合いを保ったまま、動かない。
どうやらハルヒ達もこの戦いを止めるのは不可能と悟ったのか、誰も口を開かない。

「さあ・・・」
アーチャーが小さく呟く。
「わかってるさ・・・」

「「勝負だ!!『キョン』!!」」

2人の『キョン』が激突する――!!
負けるわけには・・・いかない!!
800閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:16:20.81 ID:bytHHzhCO
支援
801閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:16:28.18 ID:0ocY6GTF0
ランサーって谷口か?w

シエル
802涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(16) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:17:08.53 ID:+3uNr1G30
剣がぶつかり合う甲高い音が響く。
ただひたすらに腕を振るい、打ち合う俺とアーチャー。
それこそ、最初はは生身の人間でもサーヴァントに対抗できるという多少の自信があった。
あの金ぴか野郎に致命傷を与えたことで少し俺も天狗になっていたのかもしれない。

しかし・・・徐々に状況は悪くなっていく。
アーチャーの放つ一撃一撃は、俺のソレより確実に疾く、重い。
肉眼でその剣の軌道を読み取ることは出来ず、金ぴかの戦闘でこしらえた感覚で何とか剣戟を弾く。
それでも弾く剣ごしにもその重さが伝わってきて、俺の腕を痺れさせる。
「そろそろバテてきたか?」
アーチャーはいやらしい笑みを浮かべて、遠慮なく更に剣を振るう。
「クソッ!まだまだ・・・!!」
俺も強がっては、必死にそれを受け止めているものの、正直劣勢と言わざるを得ない。

「・・・さっきはあえて伏せていたがお前には教えてやろう」
剣を振るいながら、アーチャーがふと、俺にしか聞こえないような小声で話し始めた。

その内容はアーチャーが『俺』であるという事実と同等、いやそれ以上に衝撃的だった。
未来人の朝比奈さん、宇宙人の長門、超能力者の古泉、
そして自分の願望を何でも形にしてしまえる力を持ち、ひとたび癇癪を起こせば世界を崩壊させてしまうことも出来るハルヒ。
以前の世界での俺は――魔術の蔓延るこの世界とは本質的に何かが違う、そんな非日常の中にいたという。

「『俺』は・・・お前は結局普通の人間に過ぎないんだ」
アーチャーが少し憂いを帯びた声で続ける。
803閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:17:54.72 ID:fezfXpDEO
支援
804涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(17) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:18:13.04 ID:+3uNr1G30
「何が言いたいんだ・・・!」
必死に剣を振るいながら俺は問いかける。
「わからないのか?俺もお前も所詮無力な存在なんだ!ハルヒの、朝比奈さんの、長門の気持ちにも
 応えることなんて出来やしない無力な存在なんだ!以前の世界でSOS団が・・・世界が崩壊したのも、
 俺の・・・お前のせいなんだよ!」
鬼のような形相でアーチャーは感情を爆発させる。
そしてその言葉を聞いた瞬間、押し留めていたつもりの俺の感情のダムも、ついぞ決壊した。

「・・・人のせいにするんじゃねえッ!!!!!」
その場にいる全員の耳に届いたであろう咆哮。それはやはり紛れもなく俺の口から発せられたものだ。
アーチャーも驚いたのか、一瞬剣を繰り出す手を止めた。それに併せて俺も手を止め、更に感情を吐き出す。

「やっぱり俺とお前は同一人物なんかじゃねえ」
「・・・今更何を」
「俺は確かに普通の人間かもしれない」
「そうだ・・・何も出来ないちっぽけな存在だ」
「でもお前みたいに全てを投げ出したりなんかしない」
「・・・何だと?」
「ハルヒとも朝比奈さんともセイバー、いや長門とも真剣に向き合おうとせず、
 逃げ回ってるような弱虫じゃない、ってことだよ!」
「・・・・・・」
「お前はただ甘ったれてるだけだ!!」
「・・・どの口が――」
「俺はお前とは違うッ!」

「どの口がそんなコトほざきやがるッッ!!!!!!」
805閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:18:49.95 ID:fezfXpDEO
支援
806閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:19:12.71 ID:fezfXpDEO
支援
807涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(18) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:19:15.37 ID:+3uNr1G30
耳を劈くような叫びが反響する。
アーチャーは完全にブチ切れてしまったようだ。
ハアハアと肩で息をして、眉間に皺を寄せて俺を睨む。
はち切れんばかりに膨れ上がった殺気がこちらに注がれるのが手に取るように感じられる。

「お前に・・・俺の何がわかるッ!!」
そう叫ぶと一気に俺に向け、再び突進を開始するアーチャー。
繰り出される一撃を必死に受け止め、言い返す。
「ああ、わからないねッ!お前みたいな弱虫の気持ちはッ!」
「五月蝿いッ!!」
アーチャーの繰り出す一撃は相変わらず重い。今にも受け止めている腕がふき飛んでしまいそうなほど。
しかし、その一撃にも少し動揺が見えてきた。剣の軌道が粗くなり、スピードも少し落ちた。
繰り出す剣戟の描くその道筋が、確実に読み易くなってきている。

「お前は・・・以前の世界での生活が・・・SOS団での日々が大切なんじゃなかったのか?」
「そうさ・・・だからこそソレを壊してしまった自分自身が――お前が憎くて仕様がないんだッ!」

「それなら・・・なぜその世界を守ろうとしなかったんだ?」

俺がその言葉を発した瞬間、アーチャーが動きを止める。
「俺が・・・守る?」
「そうだ」
アーチャーは俺の言葉にショックを受けたのか、急にユラユラと後ずさり、下を向いた。俺は更に続ける。

「大切なものを守る・・・いくら俺が普通の人間だからってそれくらいは出来るだろう?
 いや、出来る出来ないの問題じゃない。守ろうとするかしないか、だ」
808閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:19:57.66 ID:bytHHzhCO
支援
809閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:20:11.31 ID:fezfXpDEO
支援
810涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(19) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:20:16.66 ID:+3uNr1G30
〜interlude2〜
目の前の『俺』が発した言葉――『それなら・・・なぜその世界を守ろうとしなかったんだ?』
頭の中でガンガンと反響し、脳髄に染み渡るその言葉――俺が守る?ハルヒ達をどうやって?
そりゃあSOS団での毎日は楽しかったさ。
ハルヒにこき使われたり、ワケのわからない騒動に巻き込まれたり、大変なことも多かったけれど、
それでも毎日が新鮮な刺激の連続で・・・。
ハルヒが団長席にどっかと座り、長門は黙々と読書に励み、朝比奈さんはメイド服で茶を淹れて、
古泉はニヤニヤしながら俺との対戦ゲームに勤しむ――そんな毎日。
それは当たり前でいて、かけがえのない日常――。
今はもう戻らないはずの、楽しかった日常――。

俺はそんな非日常的な『日常』を・・・守ることが出来たのか?
いや、守ろうとしたのか?

俺は逃げただけ?甘えていただけ?
ハルヒの気持ちにも、朝比奈さんの気持ちにも、長門の気持ちにも、古泉の悲痛な叫びにも、
真っ向から向き合おうとせず、ただ背を向けて、布団に包まって何もしなかっただけ?

わからなくなってきた・・・俺には何かが出来たのか?
もし俺が逃げなければ・・・あの世界は崩壊することはなかったのか?
もしそうだったら・・・どんなによかったか。
ハルヒがもう一度、あの傲慢でいてどこか憎めない笑顔を見せてくれたらどんなによかったか。
朝比奈さんがもう一度、あの麗しいメイド姿で俺にお茶を淹れてくれたならばどんなによかったか。
長門がもう一度、俺をマンションに招待してカレーを振舞ってくれたらどんなによかったか。
古泉のニヤケ顔をもう一度、対戦ゲームでボコボコに打ち負かすことができたならばどんなによかったか。
あのかけがえのない日々が戻ってきたならばどんなによかったか。

「それでも・・・やっぱりもう戻ることは出来ないんだ」
811閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:20:40.71 ID:fezfXpDEO
支援
812涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(20) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:21:08.79 ID:+3uNr1G30
「それでも・・・やっぱりもう戻ることは出来ないんだ」
そう呟くと、アーチャーは再度両手の短剣を強く握り締め、真っ直ぐに俺を見据えた。
その瞳は・・・悲しかった。これが『俺』と同じだった人間だなんて信じられないくらいに。

「俺には・・・お前を殺すことしか出来ない。そして俺のいなくなった世界で皆には幸せになってもらいたい。
 それが苦労をかけてしまった古泉、消えてしまった朝比奈さんや長門、
 そして悲しませてしまったハルヒへのせめてもの手向けだ」
そして一気にその顔を憎しみの篭ったそれに変える。

――甲高い剣戟の音が再び洞窟内に響き渡る。

「ふざけるな!殺されてなんかやるもんか!俺は皆と一緒に元の世界に戻るんだ!」

――ハルヒ達は俺達の戦いを固唾を呑んで見守るだけ。誰一人して介入しようともしないし、出来もしなかった。

「まだまだSOS団でやり残したことがいっぱいあるんだ!
 ボードゲームのリベンジを古泉から受ける予定なんだ――!!
 朝比奈さんの衣装のバリエーションだってもっと見たい――!!
 団員だったはずのセイバー、いや長門とも話をしたい――!!
 そして何よりも・・・まだハルヒの言う宇宙人、未来人、超能力者を見つけられてない!!」 

「五月蝿い!!お前にそれをする資格などない!!ここで惨たらしく殺されろ!!」
目に見えて動揺しだすアーチャー。繰り出す剣にも力がなくなってきている。
「殺されてたまるか!!」
徐々に俺の繰り出す剣戟がアーチャーを押し返し始める。
そしてついにアーチャーに隙が生まれる。そして確かに見えた――今ヤツの左胸はガラ空きだ――!

「俺は――皆を、SOS団を、世界を守ってみせる!!」

そう叫びながら放った右の短剣の一撃が――ついにアーチャーの心臓に突き刺さった。
813閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:21:28.01 ID:bytHHzhCO
支援
814閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:21:42.44 ID:fezfXpDEO
支援
815涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(21) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:21:54.58 ID:+3uNr1G30
「ゴフッ・・・!!」

刹那――口から血を吐き出すアーチャー。
頭から俺に浴びせかけられるその血の生温さが何とも心地悪く、濃厚な鉄の臭いが俺の鼻腔を刺激して止まない。
しかし、すぐにそれも気にならなくなった。

「そ・・・ん・・・な・・・」
アーチャーは血と共に嘆きを吐き出す。
「負けた・・のか・・・?俺は・・・」
左胸に剣を突き立てられたグロテスクな姿のまま、アーチャーは力なくたたらを踏む。
心臓が潰されたはずなのに喋れているのは流石サーヴァント、といった所なのだろうか。

「俺は・・・間違っていたのか?
 俺はハルヒを・・・長門を・・・朝比奈さんを守ることが出来たのか?
 3人の気持ちに向き合うことが出来たのか・・・?」 
ヨロヨロと後退するアーチャー。滴り落ちる血の赤が身に纏う外套の色彩を一段と濃いものにする。

そしてなぜか俺は、すっと、ごく自然に、次の台詞を吐き出していた。
「ああ――お前にも出来るさ。なんてったって『俺』なんだからな」
我ながら恥ずかしくなるくらい自信過剰な台詞だ。けど不思議と後ろめたさはなかった。

「そう・・・だった・・のか」

そんな掠れた声とともに、アーチャーは仰向けに地に倒れた。

どうやら・・・終わったようだ。
816閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:22:48.58 ID:fezfXpDEO
支援
817涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(22) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:22:56.51 ID:+3uNr1G30
倒れ伏したアーチャーの身体が徐々に透けていく。
神社でキャスターを仕留めた時、ついさっきあの金ぴかを倒したと時と同様だ。
どうやらサーヴァントといえども心臓を貫かれれば絶命は免れないのは揺るがないらしい。
おそらくあと数刻で、アーチャーは完全に消滅してしまうだろう。

元は自分と同じ人間――同一人物だったはずのサーヴァントの死。
それを目前とした時、何とも言えない虚しさと悲しみが俺を襲った。

「ふん・・・随分辛気臭い顔をしてるじゃないか」
アーチャーが虚空を見つめながら、さぞ複雑な表情をしているだろう俺に言葉を投げる。
「・・・一応、お前は俺だしな。自分を殺しておいていい気はしないぞ」
「・・・よく言うぜ」
アーチャーは皮肉を込めたような笑みを浮かべた。
心なしか、少し斜に構えたようなその口調も、俺と似ている、むしろ同一のそれになっている気がする。

「お前・・・確かに言ったな。『SOS団を、世界を守る』って・・・」
「ああ」
「その言葉・・・違えるんじゃねえぞ」
「わかってる」

俺はこれまでの人生でおそらく一番と言っていいだろうほどの覚悟を持って、アーチャーに応えた。

さっきより更に身体が透けてきたようだ・・・おそらくもう終わり・・・と思ったその時、

「アーチャー!!」

そう叫びながら倒れ伏す血まみれの赤い外套に向かって駆け寄っていったのは――ハルヒだった。
818閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:23:24.68 ID:fezfXpDEO
支援
819閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:23:51.33 ID:4Jz9rv6oO
聖杯ktkr
つーかキョンが昼ドラばりのダメ男にwwww
820涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(23) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:23:59.14 ID:+3uNr1G30
〜interlude3〜
「アーチャー!!」
もうすぐにでも消滅してしまうであろう俺に駆け寄ってきたのは、誰あろうハルヒだった。

「アンタ・・・バカ!?いきなりキョンを殺すだなんて言い出したと思ったら、
 言うに事欠いて『以前の世界で俺はキョンと呼ばれていた』ですって!?
 それでキョンと斬り合いだしたと思ったら・・・こんな・・・。
 もう・・・ワケわかんないわよッ!!」

ハルヒは捲くし立てるように、矢継ぎ早に罵倒の言葉を投げかけてくる。
ただ、懐かしいくらいに刺々しいその言葉とは対照的に――ハルヒは涙を流していた。
それはもう、凄い勢いで――それこそ以前の世界でも見たことないくらいに。

「スマン――」
「何よ・・・あたしのサーヴァントがそんな簡単に死んじゃうなんて許さないんだからねッ・・・!」
「お前には迷惑をかけたな・・・コッチの世界でも以前の世界でも」
「何言って・・・」
「SOS団の活動頑張ってくれよ・・・」
「それよりアンタ・・・キョンなんでしょ!?どうして黙ってたの!?」
「言えるワケないだろ・・・」
「あたしがそれを知って・・・どんな気持ちか・・・アンタにはわかる?」
「すまない・・・」

俺の息は絶え絶えだ。正直言ってもう目も見えない。
泣いているハルヒの顔を捉えることももう出来ないくらいだ。
821閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:24:32.24 ID:fezfXpDEO
支援
822涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(24) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:25:00.36 ID:+3uNr1G30
〜interlude4〜
「やっぱり・・・俺は逃げていただけだったのかな」
「だから・・・!!何言って・・・!」

俺は全てを悟っていた。
承知してはいたものの、結局は『俺』の言う通り、この戦いはただ八つ当たりでしかなかったのだ。
俺は間違っていた。逃げるべきじゃなかった・・・。
最後の最後まで、這い蹲ってでも、血反吐を吐いてでも、糞尿を垂れ流してでも、
ハルヒ達の気持ちに真っ直ぐに向き合うべきだったんだ・・・。
ハハ・・・でも今気付いても・・・遅いんだけどな・・・。
それでもいい・・・。この世界の俺はもはや消え行くだけの存在・・・。
きっともう一人の『俺』が俺の分までSOS団を盛り上げてくれるだろう・・・。

もはや息も殆ど出来ないし、ハルヒの顔も見えない・・・。
「ちょっと・・・!理解しやすいように簡潔かつ詳細に、主語・述語・修飾語を明確にして説明しなさいッ!」
聴覚までなくなってきた。ハルヒの涙声も徐々に遠くなってゆく。
「ねえ!聞いてるの!?・・・『キョン』!!」

ああ、まだ俺をその名で呼んでくれるかハルヒよ。
姿形もすっかり変わり、自分のヘタレさに嫌気がさして、つまらない憎悪にこの身を汚した俺を。
ありがとう、ハルヒ――。
もう全身の感覚がないけど・・・お前に苦悶に満ちた顔を見せることはしたくない。
もうこれが最期の言葉だ――アーチャーのサーヴァントとしてこの世界に存在する俺の、正真正銘、最期の言葉――。
それくらいはせめて、これ以上ないくらいの最高の笑顔で・・・。

「大丈夫だ、ハルヒ――答えは得たから」

全身から力が抜けていく――世界が暗転する。
それでも俺は――不思議なくらいに安らかな気持ちだった。
823閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:25:21.67 ID:fezfXpDEO
支援
824涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(25) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:25:54.30 ID:+3uNr1G30
終わった――。
つい今しがた、倒れ伏したアーチャー、いやもう一人の『俺』の身体は完全に消滅した。
ヤツは最後の瞬間、確かに笑顔を浮かべていた。そして何事かを呟いていた。
その内容の詳細までは窺い知ることは出来なかった。
しかし、傍にいたハルヒにはきっと聞こえていたことだろう。

連戦でボロボロの、鉛のように重い身体を引きずりながら、俺は立ち尽くしているハルヒに歩み寄った。
ハルヒはじっと動かず、ただただ俯いているのみだ。
その表情を窺い知ることはできないし、ハルヒ自身も振り向こうとしない。
「ほんっと馬鹿よね――」
ふとハルヒはそう呟いた。
「『答えを得た』って――あたしはアンタが何に対して答えを得たのかも知らないのに」
もしかしたら泣いていたのかもしれない。振り向かなかったのは精一杯の強がりだったのだろう。
「しかも何を言い出すかと思えば――このあたしがアンタに告白?有希もみくるちゃんもですって?
 妄想癖もここまで来ると罪悪に等しいわ。百万回死刑にしても足りないくらいね。
 それで結局、ワケわかんないまま消えちゃうなんて――やっぱりキョンは馬鹿よね」

それは誰に向けられた言葉だったのか・・・ハルヒ自身も把握しかねていたかもしれない。
そして、最期に確かだったことは、もう一人の『俺』が、何らかの答えを得ることができたということ。
殺すだなんて言われた時は納得いかなかったし、ヤツの話が事実であるならば、
以前の世界でのヤツの在り方も当然受け入れられるようなものではない。
それでもヤツが『答え』を得て、以前の世界の自分に折り合いをつけて逝くことができたのならば、
少しはよかったんじゃないかと――自分でトドメを刺しておいてなんだが――俺自身思えてしまうのであった。

なぜって?
そんな疑問に殊更飾り立てた返答が必要なのか?
あの赤いサーヴァント――アーチャーは、誰でもない『俺』なんだ。

――理由なんてそれで十分だろう?
825閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:26:07.16 ID:pRLwU1lX0
>>819
元ネタ主人公もヘタレ主人公選手権にノミネートされる程のヘタレだから問題ない
826閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:26:09.77 ID:fezfXpDEO
支援
827涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(26) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:27:01.87 ID:+3uNr1G30
アーチャーが消滅してから、数刻――それでも体感にすれば永遠にも思えるくらいの永い――時間が経った。

いつまでも感傷に耽っているわけにはいかない。そう自分に言い聞かせ、俺はハルヒに問いかけた。
「ハルヒ・・・これからどうするんだ?」
「・・・どうするって」
背を向けたまま小さく返答するハルヒ。
「聖杯に・・・何を願うんだ?」
「あ・・・」

そうだ――最後の難敵、アーチャー(金)を殲滅し、マスターたる古泉も既に戦意を失っている。
そして俺を亡き者にせんとしたアーチャー(赤)も消滅してしまった今、俺達を阻む敵はもういない。
つまりこの聖杯戦争の勝者は――いやセイバーとライダーの二人のサーヴァント、
そして俺、ハルヒ、朝比奈さん、古泉と四人のマスターが未だ生存しているこの状況において
勝者という概念自体が既に意味を失っているが――俺達であり、戦争自体が終結を迎えた、といってよい状況なのである。
だとするならば、あと俺達がするべきことは目の前に燦然と在る聖杯とやらに己の願望を叶えて貰うのみ――。
アーチャーが消滅したことにより、聖杯に蓄えられたサーヴァントの魂は6体分。
その奇跡を発動させるに十分な量のハズだ。
元より俺は聖杯に叶えてもらいたいような崇高な願いなど持っていない。
当初は戦争自体に関わることを忌避していた朝比奈さんも同様だろうし、
古泉も『叶えたい願いなどない』と自ら宣言していた。
残るはハルヒなのだが・・・。

「元の世界に・・・戻るんだろ?」
『俺達は元々別の世界の住人である』――初めて古泉から聞いた時はただの与太話にしか思えなかったが、
セイバーをはじめとするサーヴァント組もそれを認めている今、
俺自身も戻るべき世界が別にあることを認めている。
「わかったわ」
ハルヒはそう言うと、俺達をぐるっと見回した。
赤みを帯びた目が、アーチャーに対する複雑な感情を涙として表したことを如実に物語っていた。
それでもハルヒにもう迷いはなかった。
828閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:27:24.30 ID:fezfXpDEO
支援
829涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(27) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:27:48.80 ID:+3uNr1G30
「全知全能の聖杯よ。今こそその奇跡を我が眼前に示し賜え――」

ハルヒが何かの呪文じみた大仰な口上をつらつらと語り出す。
戦いは終わった。俺達は今、元いた世界へと帰還する。

アーチャー、いや、もう一人の『俺』よ。
俺はお前の分も精一杯『キョン』としての人生を全うしてみせるぞ。
絶対に・・・逃げたりなんかしないからな・・・。

「さあ、聖杯よ!あたしたちを元の世界に戻しなさい!
 そしてもっともっと面白い出来事に出会わせなさい!」

ハルヒが自らの、いや俺達皆の願いを高らかに宣言する。
・・・ってちょっと待った。元の世界に戻る云々はともかく、何だ『面白い出来事に出会わせなさい』って。
俺はこんなワケわからん戦争以上の奇怪な出来事に巻き込まれるなんて真っ平御免なんだが・・・。
更にそれ以前に、聖杯で叶えられる願いって一つじゃないのか?
一度に二つの願いだなんて・・・シェ○ロンじゃあるまいし・・・。

と、益体もないことを考えていると・・・突然視界が塞がれる。
至近距離で太陽を見てしまったかのような眩しい光に包まれているのだ。
そして、それと同時に、電気楽器を接続したアンプがハウリングを起こしたが如き、激しい耳鳴りが鼓膜を刺激してくる。
すぐに全身の感覚もなくなってゆく――そしてついには意識もその自我を手放そうとする。

あれ・・・?おかしいな・・・?
これで本当に元の世界にモドレルノ・・・?
でもこの感覚・・・イチドアジワッタコトガアルヨウナ・・・。
ああ・・・マタミンナニアエルトイイナ・・・。
ダメダ・・・ナンダカモウネムクナッテキタ・・・。
830閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:28:00.47 ID:fezfXpDEO
支援
831涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(28) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:28:44.32 ID:+3uNr1G30
暗く、重く意識が沈んでいく。
ベッドに横たわり、心地よい睡魔に包まれているかのように、
すーっと落ちてゆくような感覚。
何も見えないし、聞こえない。
俺は・・・一体どうしたのだろうか・・・。
あれ?というか俺今まで何していたんだ?
今日はいつも通りの一日で・・・って違うぞ?
俺は何やらとんでもないことに巻き込まれていたような記憶が・・・。

それにしてもこの不思議な感覚は一体なんだろう?夢か?
ふと、閉ざされていたはずの視界に、眩しい光が注ぐ。
まるで俺はその光に導かれるように――
ゆっくりゆっくりと――
その中心に吸い込まれていく・・・。

――はっ!!

――目を覚ます。見渡すと・・・辺りは見慣れた俺の部屋、そして身体はふかふかのベッドの中。
枕元では携帯電話のアラーム音が己の義務を果たさんと、これでもかと唸りをあげている。
推測するに、日々俺が習慣的に起床するべき時であるらしい。
俺は・・・寝ていた・・・のか?
まだ意識が覚醒しきっていない影響か、今の自分の置かれている状況がすぐには理解できなかった。
数分間、ただただぼーっと部屋の壁を見つめている。
寝ぼけ眼が少しずつ開かれて、徐々に眠っていた意識は覚醒し、記憶が蘇らんとする――と

「キョンくん、起きたぁ〜?」
バタンとドアを開け、部屋へと闖入してくる小さな人影。
それは見紛うことない、我が妹の小さなシルエットだった。
832閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:28:45.57 ID:bytHHzhCO
支援
833閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:29:04.88 ID:fezfXpDEO
支援
834涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜(29) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:29:41.64 ID:+3uNr1G30
白状すると妹の姿を視認した瞬間に、俺は全て思い出していた。
だからこそ、呆けている俺を尻目に、いつの間にやらベッドにちょこんと飛び乗り、無邪気に纏わりつく妹に、
こんな言葉を投げかけてしまっていた。

「お前・・・俺を殺すつもりだったりするか?」
「へ?キョンくん何言ってるの?」
俺の突然の発言に、妹は目を丸くさせている。もう少し聞き方ってモンがあったかな・・・?
「・・・そう言えばシャミセンは?」
「そこにいるよ?」
妹が指差す先では、床に文字通り丸くなって眠っている三毛猫の姿――。
「俺・・・見た目どこか変じゃないか?」
「???」
「髪の毛が真っ白だったり、赤い変な服着てたりしないか?」
「いつものキョンくんだよ?」
立て続けの兄の脈絡のない意味不明な発言に、妹は首を傾げ、思案顔だ。
「・・・そうか。無事戻ってこれたんだな・・・」
「???何言ってるの?へんなキョンく〜ん・・・」
言い知れぬ安堵感を感じ、気づくと俺は思わず傍らの妹の頭をワシャワシャと撫でていた。
「や〜ん、くすぐったいよ〜」

ここに来てやっと、思い出した記憶と認識した現状が一本の線に繋がった。
どうやら俺はあのワケのわからない世界から無事元の世界に戻ってくることが出来たらしい。

ただどうしても違和感がある点――言い換えればむしろ驚愕に値する点が、事実として存在していた。

それは『キョン』としての俺の記憶と、あの赤いサーヴァント『アーチャー』としての記憶を、
現在の俺が両方とも持っているということだった――。
835閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:29:54.80 ID:fezfXpDEO
支援
836閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:30:13.74 ID:bytHHzhCO
支援
837閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:30:18.45 ID:4Jz9rv6oO
>>825
なんだそれwwwww
838涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(30) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:30:35.78 ID:+3uNr1G30
結局のところ、俺の日常はいつも通りに戻っていた。
とは言っても二人の『俺』の記憶を現在の俺は持っているワケで、
今生きているこの世界が元々どちらの『俺』に属していたものかはわからない。
寧ろ――どちらでもないんじゃないか、って今は考えているのだが。

とにかく――俺が『聖杯戦争』とか『魔術』とか『サーヴァント』とやらが存在しない世界、
常にデッドエンドが隣り合わせの血生臭さとは離れた平和な世界に戻れたことは間違いないらしい。
その証拠に俺の家に大きな庭なんてないし、離れの小屋だってない。父親も母親もしっかり存在しているし、
記憶の中ではシャミセンをけったいなバケモノとして従えていた妹も、ちっこいただの小学生だ。
勿論、いくら念じてみても俺の両手から物騒な剣が飛び出てくることもない。

俺は――ただの高校生『キョン』に戻ったのだ。

学校への通学路――いつもの長くキッツイ坂道――をひたすらに歩く。
「よっ!キョン」
背後から俺を呼ぶ声――谷口だ。
俺は隣を歩く旧友に唐突に言葉を投げる。
「お前・・・ライダーって知ってるか?」
「はあ・・・?仮面ライダーなら知ってるが・・・っていきなり何言ってんだお前」
谷口はテストのヤマが丸っきり外れてしまったかのようなしかめっ面で、俺をまじまじと見つめている。
一瞬――地べたに倒れ、もがく俺を見下ろし、品のない笑みを浮かべる谷口の顔を思い出した――が、すぐに脳裏から消えた。
「いや・・・なんでもねえ」
「お前おかしいぞ?とうとう涼宮に洗脳でもされちまったか?」
「そんなワケねえっつーの」

そうそう。ありゃ洗脳なんて言葉も生温い。言うなれば悪夢みたいなモンだと思うのだが
839閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:30:41.32 ID:fezfXpDEO
支援
840涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(31) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:31:49.78 ID:+3uNr1G30
「はあ・・・?僕があなたを殺そうと?ランサー、アーチャー?何のことでしょう?」
古泉一樹は心底俺の言っていることが理解できないといった風で、顎に手をあて、首を傾げていた。

中庭――並んでベンチで缶コーヒーを啜りながら俺は古泉に一部始終を語っていた。
俺の話す内容について、古泉には何の記憶もないらしい。
もっとも、教会で最初に会った時は嘘を吐いて俺とハルヒを欺いていたヤツのことだ。
もしかすると記憶にありながらも誤魔化しているだけなのかもしれないとも考えたが、
どうやら古泉は本当に俺の言っていることに覚えはないらしい。

「あなたの話が本当だとすれば・・・それは非常に興味深いですね」
ただコイツはこれでも『機関』とやらに属する超能力者だ。この手のトンデモ話には幸いなことに耐性が十分にある。
すぐに俺の話が真実のものと仮定した上で、ペラペラと薀蓄を垂れ始めた。
まあ、いつも通りハルヒがどうこうとか神がどうこうとかワケのわからん話だったので聞き流したがな。

「お前、俺達のこと殺そうとしたんだぞ?」
そうそう。これはしっかりと追求しとかねばならない。
ストレスかなんだか知らないが、コイツの顔したランサーに一度は心臓ぶち抜かれてるんだからな。
「おやおや、僕はそんな物騒な役回りだったのですか?」
「ああ、お前がラスボスだなんて勘弁してくれよもう」
「ご心配なく。僕は何があろうとあなたの味方ですよ」
「やめい。その言い方少し気色悪いぞ、変態め」

記憶の中の古泉は『いつも損な役回りをさせられていた』『僕にも普通の古泉一樹としての人生があったのに』
というようなことを言っていた。それはそれは普段のコイツからは想像もできないような苦々しい表情で。
まあ、これからはコイツの負担を少しは和らげられるよう、俺も行動しないとな。

「迷惑かけたな、古泉。まあこれからもかけるかも知れないが」
そんな俺の言葉に――古泉はいつものあの気色悪い笑みを向けることで返答した。
841閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:32:07.29 ID:fezfXpDEO
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842涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(32) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:32:40.35 ID:+3uNr1G30
「ああ、そう言えば――」
教室に戻ろうとした俺に、古泉は思い出したように声をかけた。
「生徒会長さんから言付けを頼まれまして。『後で生徒会室に来い』とのことですよ?」
はて。俺は生徒会に呼び出されるような狼藉をやらかした覚えなど皆無なのだが。
「何でも・・・『ウチの書記を苛めてくれた落とし前をつけろ』とのことで・・・」
あらら・・・。そういうことデスカ・・・。

『もし・・・もとの世界に戻れたら・・・覚えててくださいね?
 会長に・・・あなたにいじめられたって・・・チクっちゃいますよ?』
赤き英霊アーチャーとして、暗殺者アサシンたる喜緑さんと対峙した記憶が蘇る。
って喜緑さん・・・。あなたしっかりと覚えていたんですね・・・。
これは後が怖いぞっと・・・。

「そうですか・・・そんなことがあったんですね」
3年生の教室の前。廊下にて俺は朝比奈さんと会話を交わしていた。
朝比奈さんは俺の話をそれほど驚いた風もなく、淡々と聞いた末に以上のような感想を漏らした。
彼女もまた未来人という特別な境遇に身を置く人間であり、俺のトンデモ話をすんなりと受け入れてくれた。
そして、やはり彼女にも古泉同様、何の記憶も残っていないらしい。
あの世界での出来事は朝比奈さんにとっては思い出したくないことが多いだろうし、それで良かったのかも知れない。
あと、正直言って、彼女に記憶がないのは非常に俺にとっては幸いなことだった。
なぜなら俺は・・・『魔力補給』とかいうワケのわからん名目で朝比奈さんと×××してしまっている・・・。
まあ実を言えばその場にはもう二人いたんだが・・・。
とにかくそういうワケでもし朝比奈さんに記憶があれば、それはそれは気まずいことになっていただろう。
あー良かった良かった・・・。

「わたし・・・キョンくんのお役にたてました?」
上目遣いで控えめに聞いてくる天使、否朝比奈さん。
「ええ、勿論」
これは本当。あなたがいなかったら俺の心はきっと折れていたでしょうから――ね。
843閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:32:56.24 ID:fezfXpDEO
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844涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(33) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:33:22.55 ID:+3uNr1G30
「おや?キョン君、3年の教室にまで来て何してるのかな?
 もしかしてみくると密会?青春にょろね〜」
と、俺と朝比奈さんの間にいつの間にか割り込んでいたのは勿論この人、鶴屋さんだった。
「二人して何の話してたのかな〜?」
鶴屋さんは興味津々といった風なナチュラルハイなテンションで、俺と朝比奈さんを交互に見てニヤニヤしている。
「えっ・・・えっと・・・それは・・・」
戸惑う朝比奈さんを制し、
「別に、そんなんじゃありませんよ。ちょっと団活のことで連絡があっただけです」
「ふ〜ん。ホントかな〜」
疑いを隠そうともせず、俺をジロジロと舐めるように見回す鶴屋さん。
きっとこの人にも記憶はないハズだし、余計なことは言うべきじゃない。
ただ――
「鶴屋さん、あなたがいて本当に助かりましたよ」
と、感謝の念だけはしっかりと述べておいた。
「へ?何言ってるにょろ?」
キョトンとしてしまう鶴屋さん。
(――あなたがいなかったらきっとランサーを倒すことは出来なかったでしょうからね。)
俺は心の中でそうひとりごちていた。

「――で、だ。やっぱりお前には記憶があるんだろう?」
俺の問いかけに、長門は僅か2ミリほど首を縦に動かすことで答えた。
無論、不可視の剣を持っていたりなどしない、どこからどう見てもただの女子高生である。
そして――だ。やはり長門にはあのワケのわからない世界で『セイバー』のサーヴァントとして
現界していた記憶が、しっかりとあるらしい。
『やはり』と言ったのは長門ならそれぐらい不思議でない、と思ったからに過ぎない。
それ以上の根拠をあげるならば、同じヒューマノイドインターフェースである喜緑さんには、
記憶があったらしいから、ということぐらいだ。
ちなみに『キャスター』として現界していた朝倉涼子はこちらの世界には存在していない。
朝倉は二人の『俺』の共通の記憶にあるように、長門によって消滅せしめられたままのようだ。
845閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:33:34.50 ID:fezfXpDEO
支援
846閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:33:43.03 ID:bytHHzhCO
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847涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(34) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:34:05.36 ID:+3uNr1G30
とにもかくにも長門には記憶がある。
ということはあの聖杯戦争の一部始終や最後の二人の『俺』の死闘についても記憶があるということで。
更には『魔力補給』の名目で×××・・・ってそれは置いておこう・・・。
何が何でも話題に出しにくいし、避けなければならないな・・・。
しかし、それでもこれだけは言っておかなくてはならないだろう。

「ありがとうな長門。今回もやはりお前には助けられっぱなしだったよ」
未熟な駆け出し魔術師としての『俺』に『セイバー』のサーヴァントとして付き従ってくれた長門。
もし長門がいなければ、俺は即脱落――あの世逝きだったことは間違いだろう。
そして『自分殺し』という不毛な憎悪の塊だったアーチャーとしての『俺』にも『守りたい』とまで言ってくれた長門。
幾ら謝辞を述べたところで、その感謝の気持ちを表すには足りないくらいだ。

俺の言葉に長門は、表情一つ変えず
「いい。――あなたが無事でよかった」
と、これまた俺にだけ聞こえるような小さな声で呟いた。

長門有希――俺の知る無表情で、無口で、本が好きで、宇宙人というトンデモな肩書きを持つ少女。
彼女は常に俺の傍にいてくれた。そして、俺の身に降りかかる様々な危険から、俺を守ってくれた。
本当に感謝してもしきれない。だからこそ、今度は俺がお前にお返しをする番だ。

「また今度、図書館行くか――?」

長門は透き通ったガラス玉のように無垢な瞳を俺に向け、小さく頷いた。
848閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:34:20.83 ID:fezfXpDEO
支援
849涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(35) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:34:54.74 ID:+3uNr1G30
放課後。特にやることもない俺は一目散に帰宅――ではなく、旧校舎へと足を運ぶ。
どこに向かっているか、言うまでもないだろう。
随分久し振りな気がするが――こっちの世界の時間軸に従えばそんなことはないのだろう。

――足を止め、目の前にあるは我がSOS団の部室。
紆余曲折あったが、俺は再びこの場所に戻ってくることができた。
『俺』にとって、一度は失ったはずのこの場所に。

ドアを開ける――そこには記憶と少しも違うことのない風景だ。
そして真正面の机に鎮座し、デスクトップPCと対面しているのは
――マスター・・・いや違ったな。もうこの呼び方は適切じゃない。

そう。誰あろう我がSOS団団長――涼宮ハルヒだ。

「あれ・・・。他の面子はまだ来てないのか」
部室にはハルヒ以外の人間はいなかった。
ハルヒは入ってくる俺を意に介する様子もなく、黙りこくっている。
そう言えば今日は教室でも終始こんな感じだったな。
俺は壁に立てかけてあるパイプ椅子を広げ、いつもの指定席に腰を下ろす。
ハルヒがカチカチとマウスを叩く無機質な音のみが室内に響く。

「ヘンな夢を見たのよ――」
不意にハルヒは口を開く。視線はPCの液晶に固定されたままで。
「へえ、どんな?」
「ワケのわからない夢だったわ。特にアンタが笑えたわよ。コスプレみたいな赤い服着てて」
「俺にそんな趣味はないがな」
「かと思ったら、何もないところから武器出したりして」
「そらまた物騒な」
850閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:34:59.66 ID:fezfXpDEO
支援
851閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:35:36.58 ID:bytHHzhCO
支援
852涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(36) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:35:39.85 ID:+3uNr1G30
「なぜかアンタが二人いて――」
「意味がわからないし笑えないな、そりゃ」
「・・・・・・」

それっきりハルヒはまた黙りこくってしまった。
何とも気まずい沈黙だ。早く誰か来ないものか、と思っていると――
「・・・・・・わよね」
また何事かをハルヒが呟いている。
「は?」

「今度は・・・急にいなくなったりしないわよね?」

俺の所からはハルヒの表情は窺えない。
けれども、その搾り出したような真剣極まりない声色を聞けば、今ハルヒがどんな気持ちなのかというのは自明だった。

「――ああ」

普段は手狭に感じることもあるこの部室も、二人だけしかいないと随分広く感じる。
例えば、俺の座っている場所からハルヒ専用の団長席までの距離がやけに遠く感じるように。
それでも今この瞬間は、そんな物理的な距離に関係なく、俺とハルヒが思いを馳せていた記憶は同じだったのだろう。

「いなくなったりしないさ。俺がいないと、雑用とかを引き受ける人間がいなくなるだろう?」
我ながら悲しいぐらいの、奴隷属性丸出しの台詞である。
「ふん、わかってるじゃないの」
ハルヒは相変わらず、ディスプレイを凝視したまま。
カチカチというクリック音がやけに大きく聞こえた。

涼宮ハルヒ――俺の戦友でありマスターであり、今では団長だ。
きっとお前がいなければ、俺はこの世界に戻ってくることも、そして『答え』を見出すこともできなかっただろうな。
ありがとう、ハルヒ。
853閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:35:41.75 ID:WKg2dLsc0
この人はキチガイなのですか?

http://kiasu.blog83.fc2.com/blog-entry-335.html
854閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:35:55.41 ID:fezfXpDEO
支援
855閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:36:20.49 ID:WKg2dLsc0
この人はキチガイなのですか?

http://kiasu.blog83.fc2.com/blog-entry-335.html
856涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(37) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:36:20.99 ID:+3uNr1G30
んで、だ――。
「お前さっきから何やってるんだ?」
さっきから延々とPCのディスプレイに釘付けになっているハルヒに疑問を投げる。
どうせ、またおかしなオカルトサイトをネットサーフィンして回ってるだけだろうけど。
「ん、ちょっとね」
そんな歯に物の挟まったようなハルヒの返答が妙に気になった俺は席を立ち、PCの画面を覗き込んでみる。
「なんだこれ?」
「暇つぶしにコンピ研の連中から借りたのよ。所謂ギャルゲーってヤツ」
「・・・・・・」
ツッコミその1。
まず100パーセントの確率でコンピ研から『借りた』のではなくて『強奪した』のであろう。
毎度ながらご愁傷様です。
そしてツッコミその2。
しかもよりによってギャルゲーかよ。っていうかその手のゲームでPCでやるのって大体は十八禁じゃ・・・。

「しっかし、こんなののどこが面白いって言うのかしらね。オトコって馬鹿じゃないの?」
そう言いながらもテキストを送るクリックをする手を止めないハルヒ。
「こういう陳腐なボーイミーツガールものってどうなのかしらね。ただこのゲームの設定は面白いと思うけど――」
「あれ?」
俺はディスプレイの中で繰り広げられるゲームを見ながら、そんな間抜けな声をあげていた。
それは主人公が、魔術師同士の戦争に巻き込まれるという、伝奇モノのストーリーだった。
やけに難しい漢字や強引にも思えるルビ振りが成されたテキストが特徴的な、いかにもその手のオタクが好みそうなゲーム。
「魔術がある世界なんて面白いじゃない?それに過去の英雄を使い魔として召喚して戦争するなんてのも」
ふん、と鼻を鳴らし、ゲームの感想を述べているハルヒ。
――そういうことだった・・・のか?
そんなコトがあるはずないと思いながらも俺は、あの極悪神父古泉や暗殺者喜緑さんの台詞を思い出していた。
「こんな面白い世界だったら、あたしも是非体験してみたいわね」
呑気にそう漏らすハルヒ――。
何とも皮肉だね。ついぞこの間まで俺もお前も同じような世界に身を置いていたんだぜ?
857閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:36:55.60 ID:fezfXpDEO
支援
858涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(38) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:37:07.35 ID:+3uNr1G30
「こんばんは。おや、お二方共既に来ていたのですね」
――と、気づくと部室に入ってきたのは古泉だった。
そしてその後ろには朝比奈さんと長門が控えている。
SOS団全員集合だ。

「みんな揃ったようね」
マウスを弄くる手を止め、勢揃いした団員達を見回すハルヒ。

「今日は久し振りに、外に出るわよ――!」
こうしてまた俺の日常は動き出す。

「課外活動として、市内不思議探索ツアー、勿論途中の食事はキョンの奢りね――」
勿論、宇宙人や未来人や超能力者、そして世界を改変してしまうトンデモ力を持ったヘンな女――
そんな『非日常』にも囲まれながら。

「そうと決まったら行くわよ!ほら、みくるちゃん、有希――!」
「ふええ〜ん、引っ張らないでくださ〜い」
「・・・・・・」
「おやおや、今日の涼宮さんはやけに活動的ですね」

そう。俺は誓ったんだ。
この非日常的な日常を守っていくと――大切にしていくと――。

――それは誰でもない一人の俺、『キョン』として、な。
859閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:37:30.06 ID:fezfXpDEO
支援
860涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(39) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:38:04.09 ID:+3uNr1G30
と、まあ今回の話はこれで終わりだ。
相変わらずワケのわからない事件に巻き込まれてしまった俺ではあるが、
何とか無事に事態が収まってよかった、と目一杯安堵の溜息をつかせていただきたい気分である。

さて、最後に一つだけ疑問が残ってしまった。
それは俺が今身を置いているこの世界のことである。
まず、あの聖杯戦争が行われていた世界はやはり、仮初のものであり、別の世界であったのだろう。
それについては俺も既に重々認識していて、納得もしている。
しかし、一般人である俺が生きていたはずの世界は、ハルヒの手によって崩壊してしまったはずではなかったのだろうか?
そして朝比奈さんも長門も古泉も、俺の目の前から消えてしまったはずではなかったろうか?
それでも今目の前には皆存在しているし、何もなかったかのように日々は続いている。
果たしてこはいかに・・・・という話である。
そんな疑問に際して、俺は一つの仮説、もとい答えを考えてみた。
本当はこういうのは古泉の専売特許なのであろうが、な。

つまりは全ては『聖杯』のおかげなのだろう。
ハルヒは聖杯に『元の世界に戻せ』と願った。
それと同時に『もっと面白いことに出会わせろ』とまで贅沢にも願った。
聖杯とやらがハルヒの言うことをどう捉えたかは知らん。
しかし、きっと聖杯は、俺達の生きるこの世界をあるべき姿に再構成してくれたのではないだろうか?
ハルヒの手によって塗り替えられてしまうはずだった世界を、もとの日常に戻してくれたのではないだろうか?
もし俺の推測が当たっているとすれば、聖杯とやらは本当に全知全能だったらしい。
何せ、『神』と呼ばれたハルヒの所業まで覆してしまう力を持っているのだからな。

と、まあ古泉並にぶっ飛んだ推測であるし、信じる信じないは皆の自由だ。
861閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:38:20.87 ID:fezfXpDEO
支援
862涼宮ハルヒの聖杯〜第9章〜後日談(40) ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:38:45.84 ID:+3uNr1G30
それ以上に大事なのは、やはりこの世界の行く末は俺にかかっている、ということだ。
再び取り戻すことのできたこの日常を、守るも壊すも俺次第。
現に一度俺はそれに失敗しているのだ。

今度こそ、俺は守らなければならない。

それが――
あの狂った世界で『俺』があの赤い弓兵に誓ったコトであり――
赤い弓兵としての『俺』が得た答えだ。

何の特殊なプロフィールもないし、魔術も使えない、そんな一介の高校生の俺には、
何とも荷が重い話のように思えるが、まあ何てことはない。

俺は俺なりに、この世界を、このかけがえのない日常を楽しんでいく。

それでいいじゃないか。

な?そうだろう?

「ちょっと、キョン!アンタもさっさとついてきなさい!」
ハルヒが頬を膨らませて、俺を呼ぶ――。
「はいはい、わかってるさ・・・」
そして、本当に久し振りの口癖が思わず出てしまう――。

「やれやれ・・・」

〜THE END〜
863閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:39:30.91 ID:tCST2xF90
感動した。GJ!!!!!!!!
864閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:40:00.35 ID:fezfXpDEO
GJ!!!
完結乙です!
865 ◆rDAy9jYT0M :2007/01/16(火) 22:41:48.15 ID:+3uNr1G30
長きに渡って放置してしまい、本当に申し訳ありませんでした。
以上で終了です。
一時期、何を書こうにも陳腐に思えて仕方なく、投げ出してしまう時期がありました。
おかげでここまで引っ張る事態になってしまったわけですが、重ね重ねすいませんでした。
こうしてやっとこさ完結させることが出来てほっとしています。

本当にありがとうございました。
866閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:42:45.42 ID:Y04zSKlkO
乙なんだぜ!
867閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:45:11.07 ID:UcGgE77FO
GJ!
868閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:45:56.83 ID:4Jz9rv6oO
乙です!
869閉鎖まであと 6日と 22時間:2007/01/16(火) 22:45:59.18 ID:+ghD2Vo30
乙!!!!!!!
870ランバリオードザバスジェッキワイ ◆omega..2P. :2007/01/16(火) 22:59:39.46 ID:tCST2xF90
もう閉鎖まで、思い残すことはな・・・・




いや、自分がまだ書き上げてないか。
871閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:00:23.15 ID:j+JSWRcS0
聖杯ktkr!
超乙っす先輩wwwwww
872閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:06:03.56 ID:bytHHzhCO
そういえばこのスレ朝6時に落ちるんだな
873閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:11:16.30 ID:UcGgE77FO
聖杯読めたし、今日は大満足だぜ!
874閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:11:22.14 ID:QvegLsUtO
乙GJ!
やっぱり素晴らしい!
875閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:21:22.57 ID:GcHaRERSO
キ「鶴屋さん、その特徴的な語尾の『っさ』の促音をぬいて、ついでにのばしてみてください」
鶴「これでどうさ〜」
キ「ほーら、あっという間に世紀末リーダー」
876閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:30:17.38 ID:pLa3ToEy0
鶴屋「んばば、んばんば、めがっさめがっさ」
キョン「やーれやれやれ」
877閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:39:15.81 ID:xkufHoQUO
聖杯の人乙でした!
Fateの良いとこ取りで、かなり楽しめました

しっかし弓兵の自分殺しの理由が情けなさすぎる気が……
878閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:53:01.90 ID:bytHHzhCO
保守
879閉鎖まであと 6日と 21時間:2007/01/16(火) 23:59:55.21 ID:0ocY6GTF0
そういや…エンドレスエイトとFDは少し被るなw

お疲れ様ですw
fateも好きだから不思議な気分ですよw
880閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:02:01.05 ID:I9JRJ9OJ0
     ∧  ∧
    / ヽ‐‐ ヽ
   彡      ヽ
   彡   ●  ●   !!
   彡  (      l
  彡   ヽ     |
  彡    ヽ    l
  /`   , ( o o)
 /    |    ,,ノ |
(_,,, l  |ヽ  ヽl  l
と_,,_|‐‐|_)_,|‐‐|
881閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:10:40.74 ID:UyzTIrzfO
アーチャーキョンは俺の婿
「な〜んてな」
●<そうはいきませんよ!
「ホモ泉!?」
●<たとえ英霊であろうとキョンたんは僕のものです。それを奪う輩は……
「ヒィッ!」
●<こうだ!!ふんもっふ!
●<GJ!
「アッー!GJだけは!GJだけは!」

GJ
882閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:13:19.81 ID:5hfi2gjr0
職人さんたち乙
ところで少し前にあった「古泉が実は女の子だったら」
というネタで話を書こうと思っているんだけど
他の人も使いたいネタみたいなんだけど、書いて投下していいのかな?
883閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:15:23.86 ID:jWDkDSkX0
>>882
お題が同じでも人が違えば違うSS。
どんどん書いておk。
884閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:15:42.33 ID:I5XGl3cE0
おk wktk
885閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:16:47.10 ID:AwH0PivQO
みんなの心の数だけ古泉♀はいるんだよ? 何も臆することはない。
886あなるスレの短編古泉の人:2007/01/17(水) 00:17:14.42 ID:blIwOwJi0
>>882
やっちまいな!!
887閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:20:17.03 ID:OJvcl45sO
目を閉じればいつもそこに古泉♀が…
888閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:22:07.81 ID:blIwOwJi0
ちょっと待て。

な ん だ こ の ア ナ ル 空 気 WA。

な ん だ こ の ア ナ ル 空 気 WA。

な ん だ こ の ア ナ ル 空 気 WA。
889閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:22:30.45 ID:5hfi2gjr0
んじゃ書いてみよう。
長くなりそうだけど今日中にさわりくらいは投下できると思う。

ちなみにただのギャグの予定だから。
890閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:24:16.62 ID:1/Tbco+80
wktk
891閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:26:09.47 ID:Ch0RBBuwO
良かったw
ちょうど「女になった古泉」を諦めた所だw
892閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:29:21.81 ID:blIwOwJi0
アナルで宣言したが、俺はお前より早く女古泉を書き上げてみせる!!
ちなみに、ラブストーリーだ。かなり甘めのアナル。


キ「俺は高速!!うぉぉおおおお!!いろは坂ハチロク時速100km!!」
●「そこドリフトでマッガーレ!!」
キ「アッー」
893閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:45:34.26 ID:OJvcl45sO
保守
894閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:50:30.69 ID:5hfi2gjr0
さて、プロローグが出来たから投下するか。
ちなみにかなりの変化球。
895閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:52:32.77 ID:Ch0RBBuwO
wktk
896一樹ちゃん☆スマイル ぷろろーぐ 01/05 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/17(水) 00:53:48.20 ID:5hfi2gjr0
 わたしの名前は古泉一樹。
 どこにでもいる、普通の、って言ったら語弊があるけれど、有る特殊能力を除けば、そん
なに変わったところの無い15歳の女の子かな。
 わたしの持っている特殊能力は二つ
 一つは『涼宮ハルヒ』が閉鎖空間を発生させた時に表れる神人を退治する能力。
 もう一つは、自分の外見の性別を変える能力。
 前者はともかく、後者の能力がどういう意味を持つのかは、わたしもよく知らない。
 わたしは別に男の子になりたいというわけでもないし、男の子の姿になってやりたいこと
があるわけでもないし……、それに、性別を変えられると言っても特定の外見になれるだけ
だから、あんまりメリットも無い。
 まあ、それを言ったら前者の能力にもわたし自身に対するメリットなんて殆ど無いんだけ
ど。……でも、こっちは一応、その能力が存在すること自体の意味とか関連性って物を見出
すことは出来るんだよね。でも、後者についてはそれが出来ない。
 使おうと思えば使えないことはない能力なんだろうけど、わたしは別にそんな能力が必要
だなんて思っていなかったし、必要な事態になって欲しいとも思ってなかったんだけど……、
世の中、そうは簡単にいかないみたい。
897一樹ちゃん☆スマイル ぷろろーぐ 02/05 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/17(水) 00:54:19.74 ID:5hfi2gjr0
「……男の子の格好で、ですか」
「そうよ」
 目を白黒させつつ呟くわたしに、鋭い口調で言い切る森さん。
 あ、森さんって言うのはわたしの上司だよ。
 今日森さんは、かねてから決まっていたわたしの転校の予定が事情により早まったことを
告げるためにわたしのところへやってきた。
 そこで言われた、衝撃の事実……どうやらわたしは、男の子の格好で潜り込まないといけ
ないらしい。
「でも……」
「でもも何も、すでに決定事項です」
「ええっ、そんなあ……無理ですよっ!」
 男の子として、だなんて……そりゃあ、男装とはわけが違うから、外見からばれる心配は
無いだろうけど……でも、そんなの、嫌だなあ。下手するとオカマさんみたいな振る舞いに
なっちゃいそうだし。
「無理でも無茶でもやらないとダメです」
「ええ……。ですけど、涼宮さんに警戒されないためには、女の子の方が、」
「警戒されないためにこそ、男の子の格好で、ということなのですよ」
「……ほへ?」
 思わず間抜けな声を上げちゃうわたし。
 ええっと、それって、どういう……。
898一樹ちゃん☆スマイル ぷろろーぐ 03/06 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/17(水) 00:55:46.11 ID:5hfi2gjr0
「そのままの意味です」
 う、自分で考えろってことか。
「えーっと……、あ、もしかして、女の子だと恋敵として見られる可能性が有るとか……、
え、ええ、あの涼宮さんに、好きな人が?」
「そのようです」
 自分で想像しておいてびっくりだけど、森さんにあっさり頷かれちゃって二度びっくり。
 まさかあの涼宮さんに……、いや、うん、会ったことは一度も無いんだけど、経歴とか生
活環境のこととかは結構知っているし、その、閉鎖空間に呼ばれるときに、ちょこっとだけ
ど、その、彼女の心情みたいなものが、断片的にだけど、伝わってくるわけだから……。だ
から、最近では、親近感みたいなものも沸いちゃっていたりするんだよね。
 ああでも、涼宮さんに好きな人が出来たのかあ、ちょっと意外だなあ。
 けど、見てみたいかもなあ。
 一体、どんな子なんだろう。……やっぱり、変わった男の子なのかな?
「そういうわけで、あなたには男の子として転入してもらいます」
「え、あ、で、でも……」
「これは決定事項です」
 うう、森さん、怖いんですけど……。
 ああでも『機関』の決定事項じゃ、覆せないんだろうなあ。駄々をこねて行かないってい
うことは出来るかもしれないけど……、ううん、でも、せっかく、涼宮さんと同じ学校に入
れる機会なんだしなあ。
 本当の自分の姿で会えないのはちょっと残念だし、男の子として学校に通うなんて大変そ
うだけど、でも、やっぱり……。会ってみたい、かな。
899一樹ちゃん☆スマイル ぷろろーぐ 04/06 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/17(水) 00:56:17.30 ID:5hfi2gjr0
「転校は明後日。必要なものは全て揃えてあります。それまでに男子として生活するために
必要な能力を身に着けてもらいますからね」
 森さんはちゃっちゃとそう言い切ると、どこに用意していたのか、男子高校生が読んでい
そうな雑誌や本をどんっとテーブルの上に置いた。
「……これで、ですか?」
「そうです。読んで勉強しなさい」
「で、でも、これで……」
「良いから読みなさい!」
「は、はいっ!」
 う、ううん、こんなので勉強になるのかなあ……。すっごく不安なんだけど。
 そもそも男子高校生以前に、わたしは、普通の中高生の生活というものを全然知らないわ
けで……、流行とかにも疎いというか、そういうことを気にかける余裕も全く無かったし。
 よくよく考えたら、そんな人間に潜入を命じるって時点で、無謀も良いところって気もす
るんだけど……。
「それから、一人称も直しなさい」
「ええっと『わたし』じゃ変だから……、『俺』とかですか?」
「『僕』の方があなたの外見には合うでしょう。喋り方は……、そうね、敬語を徹底した方
が良いかもしれないわね」
「敬語、ですか……」
「敬語と言うかですます口調なら、男女差は余りで無いでしょう?」
「ううん、確かにそうかもしれませんね……」
 自分で喋っていても思うけど、確かに、ですますが後ろにつく喋り方だと、あんまり性差
は感じないかも。うん、じゃあそれで行こう。どうせ大人相手が多い『機関』では何時も敬
語が基本だったしね。……間違いの多い敬語だって指摘されたことも有るけど。
900閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:56:32.35 ID:jWDkDSkX0
支援
901一樹ちゃん☆スマイル ぷろろーぐ 05/06 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/17(水) 00:56:57.28 ID:5hfi2gjr0
「口調はそれで決まりねえ、後は、そうねえ、」
 それからわたしは、森さんと一緒に延々と打ち合わせめいたものを続けていた。
 打ち合わせと言っても、結構大雑把だったんだけど……、というか、そもそも何で森さん
が教師役なんだろう? 男子高校生の何たるかを教えるって意味でなら、男の人の方が良い
んじゃあ……『機関』に男子高校生は居ないけど、大学生くらいの年齢の男の人なら何人か
居るんだし。
 それなのにどうして、森さんが?
 ううん、何だか不思議だなあ……。まあ、慌てて色々身に着けようと思っていたわたしが
そのことに気づいたのは、転校初日の朝になってからだったんだけど。

「よし、完成!」
 ふう、やっとネクタイ結び終わったあ。
 これって結構難しいんだよね。何度も練習しちゃったし……、もしかしたら、このネクタ
イを結ぶ練習が一番時間を割いたかもなあ。
 今、鏡の中には男の子の姿の自分が居る。
 最近あんまりなってなかったからっていうのも有るんだけど、やっぱり、変な感じ。
 これがいっそ元の自分と全然違う姿だというのならばともかく、殆ど同じ顔で……、男女
差は有るけど、すっごくよく似た年の近い兄弟姉妹みたいな感じなんだもん。
902一樹ちゃん☆スマイル ぷろろーぐ 06/06 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/17(水) 00:57:26.25 ID:5hfi2gjr0
「お疲れ様、一樹くん」
 準備を終えたところで、話しかけてくれる人が居た。
 多丸裕さん。『機関』の中でよくお世話になっている一人。
「あ、裕さん。……ああ、やっぱり『くん』づけになるんですよね」
 仕方ないことだとは分かっているけど、何だかちょっと残念かも。
 今日からはこっちの、男の子の姿で過ごす方が標準仕様になりそうだし。……うう、本当
は違うんだけどなあ。
「……そりゃね。けど、君も大変だね」
「うん、まあ……。でも、仕方ないですよ、これも任務ですから」
 任務じゃなかったらこんなことしたくありません。
「そうだね。……まあ、頑張りなよ。あと、喋り方が時々女の子っぽくなっているから、そ
こは気をつけたほうが良いよ」
「うっ……、分かりました」
 わたしは一応、こうしたら男の子らしいかな? というポイントを踏まえつつそう言って
から、裕さんに行ってきますの挨拶をして、学校へと向かった。

 ああ、不安だなあ……。
903閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:58:24.39 ID:UyzTIrzfO
「いいかはるひ。ドリフトってのは後ろのタイヤが滑ってるよな?」
「うん」
「タイヤを滑らせる為には何をすればいいと思う?」
「う〜ん……タライ?」
「言っとくがドリフじゃないからな」
「じゃあ(σ゚∀゚)σゲッツ!」
「確かに今やると盛大に滑るがそれでもないな」
「じゃあ……悲しい時〜。楽しみにしてたAVがあんまり興奮しなかった時〜」
「クッ……!それはある」
「おにいちゃんはどんなのが好き?」
「そうだな……パツキン巨乳とか好きだ」
「欧米か」
「妹物とかも……」
「ロリコンか」
「いやいや。スチュワーデスも捨てがたい」
「JALか」
「お前は何が好きなんだ?」
「へへへ〜。おにいちゃんだよ〜」
「そ、そうか」
「おにいちゃんとお留守番2が明日発売なの〜」
「ブラコンか」


保守
904閉鎖まであと 6日と 20時間:2007/01/17(水) 00:59:04.15 ID:Ch0RBBuwO
うわぁぁぁぁ!
なんか破壊力がぁぁぁぁ!

続きwktkだぜ
905 ◆Gzo5DAjIoE :2007/01/17(水) 01:00:10.68 ID:5hfi2gjr0
途中までナンバリングミスってますが、とりあえず6レス分。
おばかな話になりそうですが、のんびり続けていこうかと思っています。
次回は多分憂鬱ダイジェスト版。

WIKI編集は何時ものように自力で、
急ぎゆえ粗が多いのでWIKI掲載時に多分加筆しまくりになるかと・・・。
906閉鎖まであと 6日と 19時間:2007/01/17(水) 01:13:35.37 ID:xMlDFNon0
>905
GJ.この後の展開が楽しみw
907閉鎖まであと 6日と 19時間:2007/01/17(水) 01:15:51.66 ID:jWDkDSkX0
>>905
乙!
いきなりナックル級の変化球ktkr
続きwktk
908閉鎖まであと 6日と 19時間:2007/01/17(水) 01:37:32.78 ID:Ch0RBBuwO
次スレ、落ちたらやっぱりすぐに立てるの?
909閉鎖まであと 6日と 18時間:2007/01/17(水) 02:05:41.78 ID:jWDkDSkX0
>>908
次スレがないと乱立する可能性もあるしなぁ
できれば引き伸ばして今日の夜にでもたてればベストなんだろうけど
910閉鎖まであと 6日と 18時間:2007/01/17(水) 02:13:19.17 ID:R4fXcURL0
これどこのSSだ?長門のキャラスレだろうか。
長門&朝倉好きにはオススメ。

ttp://www.syu-ta.com/blog/2007/01/14/172531.php
ttp://www.syu-ta.com/blog/2007/01/16/223952.php#more
911ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2007/01/17(水) 02:19:39.81 ID:fVHiW40H0
まとめの移転を行いますので、次スレから>>1のテンプレの変更をお願いします。
相違点としましては、まとめのURLの部分と編集禁止時間廃止の二点となっています。
今までブックマークしてくれていた方は、リンク先の変更お願いします。

長編投下の際の注意


・超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ! でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ?
・前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ……あの、お茶どうですかぁ?
・基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョンたんの恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ
・当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ……けど、今はほとんど皆無。別に時事ネタでなくてもいい…気にしないで
・キョン君、過度な性的描写はやめようね〜、タンスにエロビデ隠してるのハルにゃんに言っちゃうよ
・台詞や呼称等もその人物にとって違和感がないようにしてくれたまえ!もし不安であればまとめ等で確認することだな
・1レスには最大30行、全角で2048文字まで入るのね。文章構成の参考にして欲しいのね
・要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな
・次スレは950を踏んだヤツが立てれば立ててくれ!無理なら他のヤツらに頼むってのもありだな…すまん!ごゆっくり〜
・自分で投下した長編はなるべく自分で編集すること、わかった!?
・それじゃ、さっさと投下しなさいっ! いい? あたしを退屈させたら死刑だからねっ!


DAT保管庫.    http://haruhiss.xxxxxxxx.jp/

まとめサイト     http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip

DATうpろだ    http://www.uploader.jp/home/harussdat/
雑談所(避難所) http://yy42.60.kg/haruhizatudan/
携帯用.       http://same.u.la/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/
912閉鎖まであと 6日と 18時間:2007/01/17(水) 02:26:07.32 ID:jWDkDSkX0
>>911
管理人さんお疲れ様です〜
了解しましたっ
913涼宮ハルヒの決断:2007/01/17(水) 02:34:24.52 ID:IpFwRjys0
最悪だ・・・決断執筆していたら
なんかのトラブルかで出来上がったばかりの3章がバイバイした
やり直す気力もおきねぇどうしようかな
914閉鎖まであと 6日と 18時間:2007/01/17(水) 02:39:33.26 ID:OXOdpcAK0
今日は寝るのも手ですよ。
今やる気ないのに無理しても
いい出来になるかわかんないですし
915閉鎖まであと 6日と 18時間:2007/01/17(水) 02:40:29.85 ID:jWDkDSkX0
>>913
ドンマイ
気を落とすのは解るが早く書き直しに取り掛かった方がいいと・・・
時間がたてば立つほどオリジナルとは違ってくるし

もしくは、もう忘れて他のSS書いちゃうとか

なんにしてもガンガレ
916現地語版担当者 ◆eHA9wZFEww :2007/01/17(水) 02:59:00.94 ID:RSSk4Kqg0
まとめ移転お疲れ様です。

ワープロモードに移行したということなので、試しに文字色の変更を利用して、
現地語表記と標準表記を併記した形にしてみました。
何分初めてなので、かえって見づらくなっただけのような気がしますが、
読者の皆様の意見を踏まえて、見やすい形を模索できたらいいなと思っています。
(本音は、耐久テストのお役に立てれば良いのです。)

長門有希の報告(新まとめサイト版)
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1230.html
Report.1を改訂してみました。
917現地語版担当者 ◆eHA9wZFEww :2007/01/17(水) 03:05:23.95 ID:RSSk4Kqg0
>916
うぼあー
文字が化けとうがな……
直すのは、明日以降にさせてください……
(治してくださるという奇特な方がいらっしゃったら、涙流して喜びます)

修行が必要ですね。
918ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2007/01/17(水) 03:11:51.13 ID:fVHiW40H0
>>917
そんな方のために練習用Wikiも新たに設置しましたので活用してください

涼宮ハルヒの道場 http://www24.atwiki.jp/yasasii


ちなみにまとめのトップページからも飛べます。

ここなら失敗ページを何ページ作ろうが問題ないので技量に不安がある方には役立ててもらえると幸いです。
919閉鎖まであと 6日と 17時間:2007/01/17(水) 03:33:57.05 ID:sLNYPvCd0
あと三時間弱か
起きていたら今日活動できないなぁ
920閉鎖まであと 6日と 17時間:2007/01/17(水) 03:41:56.96 ID:IIEeOIq8O
うー。
キョンからメール帰ってこない…
どうしたのかしら?
寝ちゃったのかな??
って!まだメール送ってから10分しかたってないや…
こんなにあたしがキョンのこと大好きなんて伝わらないんだろうな
バカバカ!キョンの大バカー!きらい!
ん?
あっメール返ってきた♪

付き合いはじめのハルキョいめーじ
921閉鎖まであと 6日と 17時間:2007/01/17(水) 03:53:13.18 ID:jWDkDSkX0
>>917
こっそり修正のテストをしましたw確認してください
要するに「…」が「&」にされてしまうのですよね。
ワープロモードの機能で、「標準」と「高機能版」とあるんですけど
以前「高機能版」で編集したときに同じ事が起きた経験ありますよ〜
修正してから「標準」で保存しなおせば大丈夫です〜
922閉鎖まであと 6日と 16時間:2007/01/17(水) 04:41:23.13 ID:Rw5RukBf0
古泉実は女ネタはアナルが発祥なのに……ビクビク!
923閉鎖まであと 6日と 15時間:2007/01/17(水) 05:06:42.07 ID:Ch0RBBuwO
目が覚めた…
924閉鎖まであと 6日と 15時間
保守