( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

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1 ◆HGGslycgr6
以下に当てはまる方はこのままスレを閉じることを推奨

 ・また公開オナニーか
 ・物理法則を捻じ曲げる厨臭さは1ppmも許せない
 ・正義は強くなきゃいけない
 ・読み終わった後はすっきりしたい
 ・熱くなりたい
 ・下ネタ嫌い
 ・地の文とか糞だろ

なんかもう色々カッとなって立てた。反省とかどうでもいい
2 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:51:44.12 ID:l1wU5ufk0
(,,゚Д゚)「はい、じゃあ今日の授業はここまで。日直、挨拶と……あと内藤をぶん殴っておけ」

 教師のその一言に皆が後ろの方の席にいるブーンを見て、くすくすと笑い出した。
瞬時にして注目の的となった内藤ことブーンは、大量の視線を浴びながらも大きく口を開けて
気持ちよさそうに寝入っている最中であった。どこのクラスにも授業そっちのけで寝る奴なんて
ごまんといるが、ブーンに関しては自作の『起さないで下さい』カードを置く徹底ぶりだ。
ちなみに裏返すと『披女募集中』と書いてある。明らかに誤字だと思われるが、ブーン曰く
「自分の心を開いてくれるような女を募集中」であって、誤字ではないらしい。

 少し間を置いて日直が簡単に号令を済ませると、教師は苦笑いを浮かべ教室を後にした。
そして視線達も興味を無くしたかのようにいろいろな方向へと散らばり、ブーンの安眠を阻害
する要素も段々と霧散していった。しかし、晴れ行く霧の向こうに鋭い眼光があった。
3 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:52:46.20 ID:l1wU5ufk0
ξ゚听)ξ「ふー……せいゃ!」
(;-ω-)「う゛っ!」

ブーンの平和だった世界が、凡そその容姿からは想像できない荒々しい言葉を吐き出した
ツンの蹴りによって脆くも破壊された瞬間である。脇腹に強烈な一撃を喰らったブーンは、
為すすべもなくイスから転げ落ちて床に全身を強打し、床にうずくまってしまった。
ゆっくりと落ち着いて綺麗なその足を元の位置に下ろすツンとは対照的に、ひゅっ、ひゅっ、と
聞いているだけで息が詰まりそうな声を出してブーンは必死に生を渇望するばかりであった。

('A`;)「うわ……今度こそ折れたかもな」
( ´_ゝ`)「OK、パンチラゲット」
(´<_` )「流石だな。兄者」

しかしそれでも静まらないツンは邪魔な椅子を放り投げ、蹲り悶えるブーンに対して腕を組んだまま
罵声を浴びせる。
4 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:53:31.37 ID:l1wU5ufk0
ξ#゚听)ξ「さっさと起きなさいよ! もう学校終わるわよ!」
(;-ω^)「な、なんか、ひゅお! げ、原因不明の強烈な腹痛の所為で立ち上がれな、ひゅおっ!」
( ::)_ゝ`)「OK、椅子もゲット」
(´<_` ;)「流石だな。兄者」
(*゚ー゚)「は〜い。そろそろ先生来るから、座って座って」
ξ゚听)ξ「はいはい、『愛しの』ギコ先生が来るんだもんねぇ」
(*゚ー゚)「あ〜、あ〜、聞こえな〜い。ボクには全然聞こえませ〜ん!」

しぃの一言でブーンの周りに集まっていた生徒達、延いてはツンまでもが憎まれ口をたたき
ながらではあるが、各自の席へと戻っていった。
彼女には担任であるギコとのあだ名が立っていて、最早真実か冗談かもわからない程に
一人歩きしている。それに乗じて色々と適当なことをでっち上げるのを楽しむものも少なくない。

(,,゚Д゚)「今日は特に連絡は無いぞ。まだ火曜だけど明日もちゃんとサボらずに来いよ。
     あと流石の弟、早く自分の教室に帰れ」
(´<_` )「先生、流石d――」
(,,゚Д゚)「帰れ」

しょんぼりと教室を出て行く弟者を見送ってギコが日直に目配せをして号令をかけさせると、
皆が適当に挨拶をし、ダラダラと机を教室の後ろの方へと下げ始めた。
HRの間に幾らかは回復したブーンも皆に従いよろよろと机を下げ、その後力なく床に座り込んだ。
5 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:54:41.31 ID:l1wU5ufk0
(´・ω・`)「災難だったね」
(;^ω^)「と言うか何が何だか分からないお」

苦しそうな表情を見兼ねてか、ショボンが座り込むブーンに話しかけた。
教室は掃除の真っ最中の為、日光を反射する埃のベールが見られ、ショボンは隣に座るのを
躊躇った。そんなショボンの様子を見てブーンは体を曲げながらも、ゆっくりと立ち上がる。

( ^ω^)「ところでツンはどこだお?」
(´・ω・`)「さぁ。でも会っても問い詰めない方がいいと思うよ」
( ^ω^)「……ツンがやったのかお?」
(´・ω・`;)「え? いや、そんな、ではなかったような……」

ショボンが急に耳たぶを触りながらキョロキョロし始めた。差し詰め告げ口でもされるとでも
思っているのだろうがブーンはそんなことをするつもりなどサラサラ無かったし、寧ろ
そんなことをすれば逆に男として情けないともう一発追加されるだけだった。
そんな要らぬ心配にうろたえる内気なショボンの声が届いたのか、彼の元に一人の男が現れる。
6黒豆(三粒):2006/12/13(水) 23:55:20.75 ID:ftolOKS6O
wktk
7 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:55:44.48 ID:l1wU5ufk0
(`・ω・´)「ショボン、掃除終わったよ」
(´・ω・`)「あぁ! シャキンちょうど良い! じゃあ一緒に帰ろうか」
(`・ω・´)「……え? あ、あぁ」

現れた男、シャキンはショボンの双子の兄弟で、二人は絵に描いたような仲良しの兄弟である。
毎日のように登下校を共にしていて、傍から見ていて微笑ましいものであるのは間違いない。
ショボンはブーンに軽く手を上げ挨拶をすると、シャキンを引っ張って教室を出て行った。
一応はショボンのほうが兄らしいのだが、見るたびにシャキンの方がしっかりしている兄の
ように見えて仕方ない。
そんなくだらない事を考えた後、ブーンは自分も帰ろうと机の上に置いていたトートバッグを取り、
二人の後を追うように教室を後にした。

 先ほど仲良し兄弟を見送って一人で教室を出たブーンではあるが、彼にも実のところ家が
近所ということでいつも登下校を共にしている人物が居た。
クラスメートと話しているその人物を廊下で見つけ、ブーンは大きく手を振りながら名前を呼ぶ。
8 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:56:30.38 ID:l1wU5ufk0
( ^ω^)「お〜い、ツン。一緒に帰るお〜」
ξ゚听)ξ「……」

名前を呼ばれたツンだが、ブーンをチラリと見ると返事をする事無くまた会話へと戻ってしまう。
勢いよく上げてしまった手はその意味を失い、だらしなく宙を彷徨った。傍から見れば恥辱に
塗れたブーンが哀れに思える場面だが、実は辱めを受けているのはツンの方なのであった。
登下校を共にしているのは勝手な妄想と言うわけではなく事実なのだが、ツンはその事実を
非常に恥ずかしがっており、別々に学校を出たりして皆に覚られないようにしようとブーンにも
協力を仰いでいたのだ。
いつもならツンの意見を尊重して大人しく帰るところだが、今日ばかりは彼女に悪事は巡る
ということを分からせなくてはならない、と敢えて行動に出たのだ。
今頃恥ずかしさの頂点だろうツンを想像しながら、ブーンはニヤニヤしながら学校を後にした。

川 ゚ -゚)「いいのか?」
ξ゚听)ξ「何が?」
川 ゚ -゚)「いや、内藤が可哀想じゃないか」
ξ゚听)ξ「何言ってるか分からないし。私もう帰る」
川 ゚ -゚)「……ふぅ、付き合ってられないよ」

急ぎ気味に廊下を駆けていくツンの後姿を最後まで見る事無く、クーはチラリと時計を見て
図書室へと足を運んだ。果たして自分はどうするべきなのだろうかと、そんなことを考えながら
廊下に差し込む日差しを避けるようにクーは歩くのだった。
9 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:57:33.15 ID:l1wU5ufk0
 後ろをチラチラ気にしながらブーンは学校前の下り坂をゆっくりと歩いていた。
と、突然ポケットの中で携帯のバイブが震えるのを感じ、もしやツンではとブーンは慌ててとりだす。

( ^ω^)「……なんだ」

だが届いたメールの送り主はドクオで、内容は簡潔に『遊ぼうぜ('A`)』と書いてあるだけであった。
ブーンも丁度誰かと遊びたい気分だったので、いつもなら今すぐにでも電話をして詳細を
決めるところなのだが、このドクオと言う男、携帯の電話に出た例がない。
専らメールばかりをその手段として好み、電話すること、されることを嫌がるのだ。
しかしながら今となってはそんな癖も慣れたもので、ブーンは場所や時間の適当な案を
打ち込んでドクオに送信した。

 丁度携帯が送信完了の画面を映し出した時目の前の脇道からツンが現れコチラをチラチラ
見ながら歩いていた。遠くから見ても顔が真っ赤なのがよく見える。そんなツンを見つけると
ブーンは軽い高揚をその胸に抱きながら、ツンに再度一緒に帰ろうと声をかけた。

( ^ω^)「ツン、一緒に帰るお」
ξ#゚听)ξ「もう! バカ! なんであんなことするのよ!」
( ^ω^)「因果応報……悪事は巡り巡って今ツンのところへ来たんだお」
ξ#゚听)ξ「アンタが持って来たんじゃない! あーもう明日からどうすればいいのよ……」
( ^ω^)「別々に帰れば問題ないと……」
ξ゚听)ξ「なんで私が一人で帰らなくちゃいけないのよ。本当はもっと頼れる人がいいんだけど、
       ……まぁあんたでも暇潰しの相手位にはなるでしょ?」
( ^ω^)「いや、別に頼れる人なら他にも……」
ξ#゚听)ξ「うるさい! しつこい! 死ね!」
10 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:58:20.99 ID:l1wU5ufk0
そう言って先に駆けて行き、少し小さくなったツンの後姿を見て大きくため息を吐くと、また
文句を言われる前にと追いついて、その歩調を合わせた。こんなツンだが、こうして並んで
歩きながらふと横顔を見た時に、その顔を隠すように風に揺れるツンの少し癖のある髪の毛を
見るのも、時々吹いてくる風に乗ってくるその香りが鼻をかすめていくのを感じるのもブーンは
好きだった。綺麗だった。ツンが愛しいとかそんな感情ではなく、たしかにツンが綺麗だったのだ。

ξ゚听)ξ「どうしたの? そんなキモイ顔して。クリスマスはまだよ」

そしてその口さえ開かなければと心から思った。

( ^ω^)「いつかその口、二度と開かないようにしてやるお……」
ξ#゚听)ξ「……は?」
( ^ω^)「え?」
11 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:58:55.80 ID:l1wU5ufk0
 そろそろ何か話題を出さないと家に着くまでずっと無言になってしまうと、ブーンは色々と
最近あったことなんかを頭の中で考え始める。けれども頭がよく働かない。どんな話ならば
ツンが喜ぶだろうか。良さそうな話題を頭の中で色々と選別をしていると目の前に見慣れた
クラスメートが現れた。

( ゚∀゚)「お? ブーンとツンじゃん。……はんはん、仲が良いねぇ」
ξ゚听)ξ「別に、たまたまさっき会っただけよ」
( ゚∀゚)「はんはん、さいですか」

二人に絡んできた男、ジョルジュはツンにあっさりと否定されながらも思うところがあるようで、
ブーンの両肩に手を乗せると、その目を真っ直ぐと見て呟いた。

( ゚∀゚)「……『ホウレンソウ』な」
( ::)ω^)「御期待には添えそうにも無いお」

ブーン達男連中には、色恋沙汰だけは隠し事無しで行こうと言う固い誓約があったのだ。
『ホウレンソウ』言わずと知れた、報告、連絡、相談である。ジョルジュはその誓いを今一度
確認して満足したのか、何かを口ずさみ右手を振りながら坂道を軽やかに降りていった。

ξ゚听)ξ「ホウレンソウって?」
( ^ω^)「男の誓いだお……つか丸聞こえかお」
ξ゚听)ξ「何よ、私に隠し事?」
(;^ω^)「か、隠し事って……。わざわざ言うほどの事じゃないだけだお」
ξ#゚听)ξ「ふーん……そんなに口を開くのが面倒なら手伝ってあげるわよ」
(;^ω^)「い、痛っ! らめぇ! そんなに激しくしたら大事なとこ裂けちゃうううぅぅ!」
ξ゚听)ξ「うわっ、サイッテー。不潔」
( ^ω^)「……すぐにわかるツンもどうかと思うお」

そんな感じでツンに小突かれながら下る坂道は、ずっと先まで楽しそうな道が続いていた。
毎日がただ、充実している。そう感じていた。
12 ◆HGGslycgr6 :2006/12/13(水) 23:59:45.54 ID:l1wU5ufk0
 ツンと別れた後、ブーンは家に帰り鞄を置くと、すぐにドクオの家へ向かった。
引きこもりがちのドクオは日頃ゲームばかりしているのだが、対戦ゲームはからきしダメなのが
特徴だ。本人曰く「相手が居ない」らしく、またネトゲに明け暮れるばかりで、テレビの前で
コントローラーを握る、と言うこと自体あまりしないらしい。とは言ってもゲーム機を繋ぐのも
パソコンなわけで、所謂テレビと言うものは部屋には無い。
家へ到着するなり、ブーンはいつも通り呼び鈴は鳴らさずにワンコールをする。これが合図なのだ。
程なくして玄関のドアが開き、不幸に塗れたようなやる気の無い顔が出迎えてくれた。

('A`)「よぉ」
( ^ω^)「楽天でーす。みかん100箱届けに来ましたー」
('A`)「いや、俺こどものじかんしか頼んでないし」
( ^ω^)「きめぇ」

こんな感じでいつも冗談を言っては笑いあう習慣になった挨拶のようなものを交わし、
家の中へとあがった。階段を上り、一番奥にドクオの部屋がある。勿論部屋の中は汚い。
せめてもの救いなのが、食べ物のゴミだけは無いと言うところである。本やらゲームの
箱の他に、さすがに少し止めて欲しいと思う脱ぎっぱなしの服など、絨毯代わりとも思える
ほどに床が埋め尽くされている。
例外なく本日も分厚い絨毯が敷かれていたが、予想外だったのは既に他にも友達が
来ていたことだった。
13 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:00:22.69 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「おや、今日の地質調査は君も参加かね」
(`・ω・´)「えぇ、何せここの地層には太古のロマンが眠ってますからね」
(´・ω・`)「この前なんてバーコードバトラーが出てきたしね。しかもファミコンと繋がったまま」
('A`)「あのあと姉貴に怒られたんだよ……昔姉貴に借りた物だったらしくてさ」
(´・ω・`)「昔って?」
('A`)「えーと……俺が幼稚園行ってたくらい」
(;^ω^)「……この扉の手前で大掃除の文化は絶滅してるお」
('A`)「何回かは片付けてるはずなんだけどな。不思議だよな」
(`・ω・´)「いいから、4人集まったんだし、早くゲームしようよ」
( ^ω^)「賛成」

そう言って4人はぞろぞろと隣の部屋へ移動を始める。
先述のとおりドクオの部屋にはテレビが無く、1人でRPGをするときなど以外は隣の部屋にある
テレビで行うのだ。隣の部屋は教師をしているドクオの姉の部屋で、平日はほぼ夜遅くまで
帰ってこないため、こうして友達を入れてゲームをすることも少なくは無い。なにより、本人が居ても
一緒に混ざってゲームをすることすらあるので、罪悪感といった類のものは感じない。
14 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:01:26.10 ID:8N3abdHZ0
('A`)「姉貴がどっか行きゃこの部屋も俺のものなのになぁ」
( ^ω^)「博士、また新たな地層が生まれそうですな」
(`・ω・´)「うむ、今度はその成長過程を是非記録してみたいものだな」

先ほどとは逆の立場を演じ、フザケながらドクオが配線を済ませるのを3人は待った。
待っている間、お構い無しに部屋をキョロキョロと観察するのだが、いつ見ても簡素で、
本棚にも漫画や小説が色気無く並び、個人を感じる、例えば卒業アルバム等といったものが
全く無い、まるで本屋のような本棚なのである。ある日ブーンがその事をドクオの姉本人に
尋ねてみたところ、「邪魔臭いから全部捨てちゃったの」とにこやかに返事をされたのだった。
過去にあまり囚われないサバサバした人なんだなとブーンは妙に納得した記憶がある。

('A`)「で、今日は何するよ」
(`・ω・´)「格闘」
( ^ω^)「レース」
(´・ω・`)「野球」
('A`)「ウチには4人対戦の野球なんかねーよ」

なんだかんだと議論しながらも結局いつもの4人が同時に出来るシンプルなミニゲームの
詰め合わせのようなものを日が暮れるまで遊ぶのであった。

(;^ω^)「もう戦えないお……」
(`・ω・´)「親指の皮が剥けるようじゃまだまだだね」
(´・ω・`)「シャキンがやりすぎなだけだよ」
('A`)「俺だって皮が剥けたことはねぇぜ」
( ^ω^)「一つ下の男め」
('A`)「うるせー。日本には6割の俺の同士がいるんだよ」

わはは、と笑いその後しばらくその話を引きずった後、頃合を見て3人はドクオの家を後にした。
シャキンだけはまだ遊び足りないと言っていたが、それもいつもの挨拶のようなもので、夕日が
完全に顔を隠すまでには皆が皆それぞれの家路へとついた。
15 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:02:22.75 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「ただいまだお」
J('ー`)し「あら、おかえりなさい」

居間に入るなり、香辛料の匂いと、香ばしい脂の臭いがブーンの鼻をかすめた。

( ^ω^)「……この匂いは間違いなくハンバーグだお」
J('ー`)し「よくわかったわね。もうすぐできるから待っててね」
(*^ω^)「待ちきれないから手伝うお」
J('ー`)し「……そーかい? じゃあ付け合せのキャベツを切って頂戴」

思わぬハンバーグの登場に気分が良くなっていたブーンは、そのまますぐに笑顔でキャベツの
千切りにかかった。
手伝いはよくしているので、包丁の扱いももう慣れたものである。
さっきまでしていたゲームの音楽を頭の中で再生しながらキャベツを切りにかかる。
と、そのとき少しばかり手がブレてしまい、キャベツを咄嗟に庇ったかのように左手に包丁が
あっさりとおろされた。

(;^ω^)「おっ!」
J('ー`)し「どうしたの?」
(;^ω^)「な、なんでもないお」

典型的な油断から来るミスで、ブーンは左手の指を少し切ってしまった。
幸い出血はあったものの傷は浅いようだったので、下手な心配をさせまいとトイレに行くフリを
してセロハンテープを貼って戻り、見せないように気をつけながらキャベツの千切りを再開した。
今度は手を切らないようにと注意し、キャベツの表面に包丁を当てる。
16かき初め(虚脱感):2006/12/14(木) 00:02:42.05 ID:gk8KKInD0
支援
17歯科助手と初詣:2006/12/14(木) 00:03:04.48 ID:W0fLCCDxO
wktk
18 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:03:14.97 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「……?」

これはどういうことなのだろうか。
引けども押せども圧迫されて少し変形するだけで、まるでキャベツの切れる気配が無いのだ。

(;^ω^)「カーチャン、この包丁切れないにも程があるお」
J('ー`)し「何言ってるのよ、貸してみなさい」

カーチャンはブーンから包丁を受け取ると、慣れた手つきであっという間にキャベツの
千切りの山を作り上げてしまった。考えてみれば指が切れたのだ、キャベツが切れない
わけが無い。

J('ー`)し「ほらね」
(;^ω^)「……なんか納得いかないお」

合点のいかない光景を見て、ブーンはなんだか複雑な気分だったが、その後ハンバーグを
食べてすっかり機嫌を直してしまった。
満腹になったブーンは狂おしいほどに愛し合う目蓋と戦いながら、何とか洗顔と歯磨きを
済ませて時計の針が9時を指す直前にベッドへと潜り込む。そう言えばと指のセロハンテープを
外すと、自由を手に入れた血液が飛び出してきた。何枚かティッシュを取り出し、ぐるぐる巻きに
して処置していると、段々と夢の中へと意識が入り込んでいくのを感じた。
いつもならテレビを見ながら馬鹿笑いしているような時間だが、今日は少し疲れているようだ。
そう考えつつ、ひんやりとした布団の感触に包まれながら、ブーンはすぐに夢の中へと落ちていった。
19 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:04:33.42 ID:8N3abdHZ0
 スズメの鳴き声がどこからか聞こえてくる清々しい朝の住宅街を、ブーンは一人走っていた。
昨日はあれだけ早く寝たと言うのに、寝坊をしてしまったのだ。あれこれと言い訳を考えながら
やっと電柱の下で待っているツンが見えた時には、既にいつもより5分も多く時間が経っていた。
朝の5分は夕方の30分に匹敵するだろうとドクオがいつも熱弁していたのを思い出しながら
ブーンは怒り顔のツンの元へ辿り着く。

ξ#゚听)ξ「遅い!」
(;^ω^)「ごめんお……痛っ!」

到着するなりツンが、ヒラヒラとした膝丈より少し短いくらいのスカートを纏わせた、白く
しなやかな足でブーンの尻を蹴った。
それを合図にして二人は一緒に走り出す。
だが走り出しても尚ツンの怒りは収まらないらしく、あれこれと色々ブーンに文句を言ってくる。

ξ#゚听)ξ「アンタがモタモタしてるから私まで遅刻しそうじゃないの!」
(;^ω^)「別に先に行ってても良かったんだお……」
ξ゚听)ξ「そしたらあんた毎日遅刻じゃない」
(;^ω^)「ツンがここで待ってても僕の目覚めが変わるとは思えないお」
ξ;゚听)ξ「あんた、こんな美少女を待たせて、罪悪感って、ものが……」
(;^ω^)「普通は自分で言わないお」
ξ;゚听)ξ「あんたには、私の、美しさが……はぁ……はぁ……」

走り出してまだそれほど経っていない筈だが、何故かツンの息はもう既に切れ切れになっていた。
そして数秒の後、ブーンはハッとして立ち止まった。
どうやら朝起きたばかりの頭でツンのペースにあわせるのを忘れてしまったらしい。
20 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:05:09.15 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「ツン、ちょっと……靴紐結ぶから待っててお」
ξ;゚听)ξ「はぁ……はぁ……そんな、事、してる場合じゃ……」
(*^ω^)「う〜ん……いいねぇそのポーズ。アングルもバッチリ!」
ξ;゚听)ξ「?」

靴紐など解けてはいなかったが、下手なことを言ってもツンが休んではくれないので
ブーンは適当に解いたり結んだりを繰り返しながら時間を稼いだ。なんとなく思い遣りのある
行動が気恥ずかしくて、ブーンの方へ振り向きながら背中を向け前屈みに休んでいるツンの
小宇宙から垣間見える夏の大三角を眺めつつ戯けてみたが、疲労の所為で聞き取れなかった
らしい。チラリと腕時計を見るとギリギリではあるが、もう走らなくても間に合いそうな時間だった。

( ^ω^)「時間も大丈夫そうだし、また解けたら面倒くさいから歩くお」
ξ゚听)ξ「結構ギリギリじゃないの。遅刻しても知らないからね?」

そう言いながらもちゃんと自分の横を歩くツンの姿を見て、ブーンはその滑稽さに微笑んで
しまうのだった。

ξ゚听)ξ「あんた遅れといて何ニコニコしてんのよ。笑顔のまま死んじゃいなさい」
( ^ω^)「それ悪口のようで結構いいセリフだお」
21 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:06:29.41 ID:8N3abdHZ0
(,,゚Д゚)「おーし、今日もドクオ以外全員そろってるな」

 ドクオは教師にここまで開き直らせるほどの遅刻の常習犯で、珍しく朝に居ても皆に
気付かれないことすらある。

(,,゚Д゚)「ん? どうした内藤、その無造作ヘアは」
(;^ω^)「? ……何か変なら寝癖直す時間が無かったからだと思いますお」
(,,゚Д゚)「そうか、明日は早く起きろよ。じゃあHR終わり。今日も途中で帰ったりするなよ」

いつも通り適当にHRを終わらせたギコが教室から出て行くと、早速前の席に座っている
ショボンが振り向いて話しかけてきた。その目はまん丸に見開かれていて、頭上の惨状を
ありありと伝えてきていた。

(´・ω・`)「うわ、本当だ。でもここまでくると無造作と言うか逆に造作を掛けてる感じがするよ」
(;^ω^)「……そんなに酷いのかお?」

ブーンは予想外の反応だったので頭を色々と手で触ってみたのだが、どうもピンと来ない。
そうやっていろいろ頭をいじっていると、遠くの席に座っているしぃと目が合った。
すると、しぃはただでさえ赤いその頬を、更に真っ赤にして笑い始めた。

(*゚ー゚)「あはは、内藤君、何その頭! あははは! あー、お腹痛い」
(;^ω^)「ちょ、しぃ笑いすぎだお」
(*゚ー゚)「あはは、ごめんごめん。ツンも朝気付かなかったの?」
ξ゚听)ξ「だってコイツ時間ギリギリに待ち合……校門で会ったのよ? 見る暇無いじゃない」
(*゚ー゚)「ツン、さすがに今のは無理があると思わない?」
22 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:07:20.08 ID:8N3abdHZ0
ツンとしぃがあれやこれやと騒いでいる間、ブーンは黒板の方をただ見ていた。
まだ頭がボーっとしている。朝の匂いを鼻先に感じながらも、頭は未だ混沌としていたのだ。
そんなブーンの顔と頭をチラチラと交合に見ながら、ショボンは少し手を伸ばして
あちこちにはねた髪をチョイチョイと、まるで動物が戯れるようにその感触を確かめていた。

( ゚∀゚)「おいーっす。サイヤ人が居ると聞いて飛んできたぞ」
(;^ω^)「たかが寝癖で盛り上がりすぎだお」
( ゚∀゚)「すげー、触ってみるとまた一段とそのすごさがわかるな」
(´・ω・`)「だよね。なんかこれすっごい気持ちいい」
ξ゚听)ξ「はいはい、どいたどいた」
( ゚∀゚)「残念、おっぱいポイントが足りません。出直してきてください」
ξ゚听)ξ「ゴメン、今手がすべる。で、何?」
( ::)∀゚)「……どうぞ」

頷いてツンはショボンとジョルジュの手を払いのけ、どこからか出したブラシとスプレー缶を
両手に装備してブーンの前に立ちはだかった。
23 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:08:04.27 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「ほら、私が直してあげるわよ。隣でそんな頭されてたんじゃ集中できないわ」
(*゚ー゚)「あら〜? 髪形は関係無いんじゃな〜い?」
ξ゚听)ξ「うるさいわよ、ミス・インモラル」
(*゚ー゚)「誰がよ」
ξ゚听)ξ「どうしたの? 今返事したじゃない」
(*゚ー゚)「……今日こそ、その天パで首絞めてやるわ」
ξ゚听)ξ「あらぁ? その可愛らしい身長で届くのかしら? ふふ、しゃがんであげましょうかぁ?」
(;^ω^)「痛っ! 髪、髪の毛引っ張らないでくれお! ショボン、助けてくれお!」
(´・ω・`)「大丈夫、僕はブーンが禿げても変わらずに友達で居るよ」
(;^ω^)「ちょ、馬鹿なこと言ってないで……」
(*゚ー゚)「ごめんね、誰かと違って可愛らしくって。でも胸のサイズがボクよりも可愛らしい人が
     居るんだよね〜。あ〜、悔しいな〜」
ξ )ξ「……」
(;^ω^)「アッー! ダメー!」

――小さい頃にグラウンドの草むしりをした事があった。
雑草と言うのは根が地中の奥深くまで張っていることが多くて、抜く時にはブチブチと言う音が
耳だけでなく手を通して伝わってくるのだ。子供心にグラウンドはさぞかし痛いのだろうと思っていた。
そんな昔の記憶を、ふと思い出した。
24 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:08:52.37 ID:8N3abdHZ0
 ブーンのすすり泣く声が終始響いていた午前中の授業が終わり、食料を持ち合わせていない
生徒達が教室からどんどんと流れ出していった。いつも教室で弁当を食べているのは主に
女子の数グループで、男子の中で弁当を持ってきている者も、なんとなく居心地の悪さから
各々別な場所へと散り散りになってしまう。
勿論ブーンもその例外ではなく、のんびりと弁当を食べられる場所を探して廊下をウロウロしていた。
目的地が定まっていないのではなく、ただ一直線に目指すと何かに縛られているようで、
嫌なのだ。出来る限り自由にのんびりしたい、そんな考えがブーンにはいつもあった。
そんなブーンが弁当を食べにやってくるのが図書室だった。図書室で食事なんて非常識
かもしれないが、この学校の図書室利用頻度の低さに加え、管理者の懐の深さのお陰で、
ブーンは一時の落ち着きを得ることが出来ていた。

( ^ω^)「おじゃましますお」
川 ゚ -゚)「いらっしゃい、内藤。そうだ、昨日の放課後新しい本が……どうした? その頭」
(;^ω^)「ま〜だ直ってないのかお……」

ブーンは弁当をテーブルの上に置き、近くにあった水道の蛇口を捻ると、両手を水で
濡らしてぐしゃぐしゃと髪に水をしみこませた。別に髪の毛に気を使っているわけではないが、
かと言ってぺったりとボリュームの無い髪形になるのもあまり好きではなかったので、ある程度
湿らせたあたりで蛇口の水を止めた。
25 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:09:41.16 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「クー、今日は食べるのかお?」
川 ゚ -゚)「いや、今日も食べない」
( ^ω^)「そうかお。でも、今日は体育も無かったからわかるお」

クーはいつもこうして昼ごはんは食べないのだ。初めはどこのマンガのキャラクターの
真似なのかとブーンも思ったものだが、特別なことではないらしい。いつも腹ペコの
ブーンにとってみれば考えられないことだったので、何度か過去に一緒に食事をしようと
勧めたことがあった。
それでも結局これまでに口に入れてくれたのはキャラメル一個だけだった。無理矢理口に
入れようとバタバタ取っ組み合ったあれは結構面白かった。普段アクティブじゃないクーだから
なのかもしれない。
そう考え始めるとブーンの妄想はあらぬ方向へと転がり始める。

( ^ω^)「……フヒ、フヒヒ」
川 ゚ -゚)「……いきなり気持ち悪い声を出すな。寒気がする」
( ^ω^)「お昼ご飯が楽しみだっただけだお。じゃ、早速いただきますお」

一人図書室の関係者でもない自分が弁当を食べることに少しの罪悪感はあったが、時々
本棚の整理を手伝ったりして自分の中でいくらか軽減をしようとはしていた。今日も新しい本が
来たようだし手伝っていこうか。
そんな風にブーンが考えていると、廊下の方から慌しい靴音が聞こえてきた。
26 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:10:46.89 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「ちょっと邪魔するぞ」
川 ゚ -゚)「ん? お前が図書室に来るなんて珍しいな」
( ´_ゝ`)「あぁ……弟者がうっかり長岡にDRフォルダを見せてしまったんでな。避難しにきた」
(;^ω^)「学校でそんなもん見るなお」

DRフォルダとは、『ダイオキシンに関するレポート』という名前のフォルダのことなのだが、
中にはレポートが入っているわけではなく、男の欲望を満たすものが夢の数だけ入っている。
ちなみに、フォルダ内も『ロータリーキルン』等と上手く関連付けた名前のフォルダで分類分け
されているので間違ってクリックされても安全な構造になっている。勿論『ロータリーキルン』
フォルダには可愛らしいファイルがいっぱい入っている。

川 ゚ -゚)「何だ? また卑猥なものでも見てたのか?」
( ´_ゝ`)「む、まさか興味があるのか?」
川 ゚ -゚)「さあな。で、それと図書室に来ることに何の関係があるんだ」
( ´_ゝ`)「あぁ、それで長岡の豪腕を俺も弟者も一発ずつ喰らってな」
( ^ω^)「ジョルジュのあの腕を振る傍迷惑な癖はいい加減止めて欲しいお」
( ´_ゝ`)「仕方ないから別なところで鑑賞しようと思ったわけだ」
(*^ω^)「キタコレ!」
川 ゚ -゚)「頼むから部屋を汚さないでくれよ」

しかし結局二人はクーの存在が気になって落ち着きが無いまま、ただ昼ご飯を食べるだけ
であった。そして食事を終えると二人で図書の整理を少しの時間手伝って教室へと戻った。
27かき初め(虚脱感):2006/12/14(木) 00:11:09.35 ID:gk8KKInD0
支援
28 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:11:47.86 ID:8N3abdHZ0
 授業開始5分前、教室にも生徒達が戻り始め、休みの終わりを惜しむかのようにあれこれと
思い思いに過ごしている時間である。ブーンはそんな教室の隅にドクオの影を見つけた。

( ^ω^)「ドクオ、今日も相変わらずの重役出勤だお」
('A`)「あぁ、今日は休もうかと思ったんだけど鯖のメンテが入ってな。暇だから来た」
(;^ω^)「おま、本当に進級危ないお」
('A`)「進級しても転職システムとかねぇじゃん。意味なくね?」
ξ゚听)ξ「相変わらず頭の中が大変ね、ドクオ」
('A`)「うるせーうるせー。俺は俺の好きなように生きるんだよ」
( ゚∀゚)「そういう素直な心、大事だよな」
( ´_ゝ`)「お前は謝れ」
( ゚∀゚)「ごめんなさい」
(´<_` )「こんなに簡単に謝らせるとは流石だな、兄者」
(#゚Д゚)「お前らうるせー! 授業始めるぞ! 弟、毎回毎回来んな!」

気が付くと既に休み時間は終わっていて、担任兼数学担当のギコが教壇で逆毛を立てていた。
終了の合図を聞かずして唐突に休み時間が終わったことで、ブーン達は何やら気持ちの
消化不良を起こしながらも、各々の席に戻っていった。

(,,゚Д゚)「ドクオ、いつ来た?」
('A`)「さっきです」
(,,゚Д゚)「そうか。お前そこそこ出来はいいんだから出席で落とすなよ?」
('A`)「……はい」

ギコはドクオに一言言ってから、黒板につらつらと数式やらグラフやらを書き始めた。
数学が苦手なブーンも睡魔と闘いながら一生懸命ノートをとろうとしているが、中途半端な
意識で書いたノートはぐちゃぐちゃでまるで読めないものになっていた。
29 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:13:08.18 ID:8N3abdHZ0
諦めて寝てしまおうとシャーペンを置いたとき隣のツンからノートの切れ端で出来た手紙が来た。

『あんなギリギリまで寝てたのにまだ寝不足なの?』

ツンも暇なのだろう。そう思い、ブーンは返事を書きながら昨日の事を思い出していた。
そう言えば昨日切った傷はどうなっただろうかと思って見てみたが、どこに傷があるのか
わからないくらいにまで治っていた。
それよりも寧ろ昨日ツンに引っ張られた所為で口が軽く裂けていて痛かった。

――そういや口が裂ける痛みと破瓜の痛みが同じってのは本当なんだろうか。かと言って
聞くわけにもいかないよなぁ。それにツンってまだショジョっぽいし無理か。ショジョ……ショジョって
どんな漢字だっけ……こう? これだよなぁ? もうちょっとここをうまく払って……

等と思考を蛇行させながらもブーンは書き終えた文章をノートから切り離すためにペンケースから
カッターを取り出して端の方を四角くなぞった。しかし、力の入れ具合が甘かったらしく紙は
跡だけを残して全く離れる気配が無かった。首を捻りもう一度同じ場所を、今度は下の紙ごと
切るくらいの力を入れてなぞる。

(;^ω^)「キ、キレテナーイ……」
(´・ω・`)「ぶふっ!」
(,,゚Д゚)「?」

冗談みたいな状況に冗談で対抗してみたが、ショボンが背中を向けたまま笑った以外何も
変わらなかった。訳がわからなくなったので、とりあえずノートを丸ごとツンに渡してブーンは
考え込む。
30 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:14:12.46 ID:8N3abdHZ0
――いくらなんでもカッターでノートが切れないなんて馬鹿げている。何かが、おかしい。
昨日はキャベツが切れなくて、今日はノートが切れなかった。そんな偶然……いや、偶然じゃない
としたら……と言うかショボンの笑いのツボはおかしい……

そうブーンが考え事をしていると、さっき渡したはずのノートがそのままツンから帰ってきた。
何事かと見てみると、赤ペンで下線が引かれていて、さらに『殺したげる^^』とまで書いてある。
手紙の文中に引かれた下線、そこにはこう書いてあった。

  『昨日、おかずの準備してる途中でうっかり貧血になるほどいっぱい出ちゃって、ティッシュも
   いっぱい使ったしそのせいかな? これに気付かないようじゃ女失格だお 処女 処女 処女』

あぁ、見せる気の無かった試し書きまで入っちゃったのね、と一度冷静に考えた後にブーンは
パニクった。マズイ、これは今すぐ弁解しなければ命が危ない。そう考え、ブーンは小声で
ツンに話しかける。

(;^ω^)「違うんだお。血だお。血がいっぱい出て大変だねって話だお。別にツン自体が処女
      かどうかなんてどうでもいいことなんだお」

その途端強烈な怒気のようなものがツンから噴出したのを感じ、本能的に机にしがみ付いた。

――長年の勘で分かる。このオーラは殺る気マンマンの時のオーラだ。どうやらまた僕は
言葉の選択をミスったようですカーチャン……

ペンケースをガサゴソと漁る音を右耳に聞きながらブーンは最後に十字を切り、目を瞑った。
31書初め(蛙の子は蛙):2006/12/14(木) 00:15:26.93 ID:HklPT3P30
アタイ、こういうの好きだよ
32 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:15:48.62 ID:8N3abdHZ0
ξ;゚听)ξ「あれ? あれ?」

しかしながら地獄の死刑執行人は思いの外焦っているようであった。自慢の大鎌を家の
下駄箱にでも忘れてきたのだろうかと、そんなくだらないことを考えながらチラリと様子を
見てみると、予想以上に奇妙なことが起こっていた。
掴もうとするツンの手から、カッター、彫刻刀、コンパス、等の凶器達がスルスルと意思を
持っているかのように逃げていっているのだ。
しかし、ブーンはその奇妙な現象よりも凶悪な面子に恐怖した。
いつまで経っても掴めないイライラからか、ツンはこっそり逃げようとしているブーンを
左手に掴みながらついには叫び始めた。

ξ#゚听)ξ「なんなのよ! 大人しくしなさい! こっちはもう我慢の限界なんだから!」
(;^ω^)「駄目ぇぇ! そんな、爪立てて掴まないで! そんなに激しくされたら僕壊れちゃう!」
(*´・ω・`)「!?」 ガタッ!!
( ´_ゝ`)「!」 ガタッ!!
( ゚∀゚)「!!」   ガタッ!!
(#゚Д゚)「あぁぁぁ! お前らうるせぇぇぇぇ!」

その後ギコが長々と自身の学生時代の話をし始め、結果的に授業はほとんど進展も
無しに終わってしまった。
33 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:16:34.91 ID:8N3abdHZ0
(´・ω・`)「さっきは何があったの?」
(;^ω^)「話せば長くなるお……とりあえずツンに話を聞くお」
ξ゚听)ξ「私は別に話すことなんて無いわよ」
(;^ω^)「ちょ、さっきあんなに奇々怪々な現場に遭遇してたのをもう忘れたのかお?」
ξ゚听)ξ「あんなのただの偶然よ。ほら」

そう言ってツンが近くにあったカッターナイフを掴むと、確にそれは逃げることなくその手の
中に収まっていた。

ξ゚听)ξ「ね?」
( ^ω^)「あれ? ……おかしいお」
(´・ω・`)「ねぇ、ブーン。ところでなんでこのカッター、刃が出たままなの? 危ないよ?」
( ^ω^)「そうそう、それなんだお。ショボン、ちょっとこのカッターでそのノートを切ってみてくれお」

ブーンに促され、ショボンは不思議そうな顔をしながらも言われた通りにカッターの刃を出し、
ノートの紙をサッと切り取った。

(´・ω・`)「それで?」
( ^ω^)「……ちょっと貸してくれお」

ブーンはショボンから紙とカッターを受け取り、同じように切り取ろうと刃を滑らせたのだが、
やはり予想していた通り、紙が切れることはなかった。
34 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:17:30.34 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「切れないんだお」
(´・ω・`)「……それで?」
(;^ω^)「え? だから何で僕だけ、それに昨日も――」
ξ゚听)ξ「あ、そうだ。武器を持てるようになったのよね」
(;^ω^)「……お?」

喉元過ぎれば何とやら、危機を乗り越えたと安心していたブーンは、すっかり目の前にある
ノートの重要性を忘れていたのだ。武器を持てるようになったツンを前にどうして生き残れようか。
吹き出る汗を肌に感じながらブーンがいろいろな言い訳を考えていると、不意にツンの方から
ガシャンと金属音が聞こえてきた。何事かとその方向を見てみると、どういう訳かさっきまで
ツンの手の中にあったカッターナイフが床に落ちているではないか。
間違いない、これは神が与えてくれた生き残る最後のチャンスだ。神よ、感謝します。
心の中で天に感謝し、千載一遇のチャンスを逃すまいとブーンは床を蹴り走りだした。

ξ゚听)ξ「はい、よいしょぉ!」
(;^ω^)「ふぶっ!」

前傾姿勢だったブーンは後頭部に猛烈な衝撃を食らい、汚い床と歯が折れるくらいに激しい
キスをした。雑巾のような匂いをすぐ近くに感じながらも、ブーンはズキズキする頭を押さえ
ながら救いを求めるように手を伸ばす。

(;^ω^)「しぇ、せめて死ぬ前にその水蜜桃をこの手に――」
ξ゚听)ξ「せいや!」

しかし甘い香りに誘われて伸ばしたブーンの手も、桃源郷にたどり着く前にゴム底にあっけなく
踏み潰されてしまった。
35 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:18:08.81 ID:8N3abdHZ0
(;^ω^)「……ツン、人間的扱いをして貰わないといつか僕本当に死んでしまう気がするお」
ξ゚听)ξ「因果応報よ、あんたもこの前言ってたじゃない」
(´・ω・`)「そんなことよりツン、さっきのどうやってやったの? あの、手からポーンって出るの」
ξ゚听)ξ「……別に私は何もしてないんだけど」
( ´_ゝ`)「なにを盛り上がっているんだ?」
(;^ω^)「いや、誰か僕の心配は……」
(´・ω・`)「さっき急にツンの手からカッターが飛び出したんだよ。やってみたいなぁ……」
(*゚ー゚)「どうせカッターが『嫌だぁ〜』ってツンの手から逃げたんだよ」
ξ゚听)ξ「……」
(;゚ー゚)「あ、あれ? ごめん、怒った?」
ξ゚听)ξ「え? あ、違うの。本当にそうかも知れないなって……」

ツンの意味深な言葉に皆が口を閉じた。

( ´_ゝ`)「……どういうことだ?」
ξ゚听)ξ「よく分からないんだけど、しっかり掴んでたはずなのにいきなり勢いよく滑った
みたいに手から抜けていったの。別に何かを意識してた訳じゃないし……」
( ´_ゝ`)「ふむ……」
(´・ω・`)「もしかしたら、何かの病気かもしれないね」
( ^ω^)「失いかけの人の心が、ツンの手ぶぉっ!」
ξ゚听)ξ「こんな感じに私の意識とは別に、勝手に動いたのよ」
(; * )「ツ、ツン、ツッコミが激しすぎて前が見えないお」
(´・ω・`)「ブーン、ふざけないでよ。どこぞの漫画じゃあるまいし」
( ´_ゝ`)「ふむ……筋肉が痙攣を起していたりする可能性もあるからな。一応調べてみよう」
36 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:19:46.77 ID:8N3abdHZ0
そんな皆の様子に気付いたジョルジュが、しぃの頭を突付いて説明を促した。

( ゚∀゚)「みんな何を盛り上がってるんだ?」
(*゚−゚)「……別に」
( ゚∀゚)「ん?」
( ´_ゝ`)「よし……ジョルジュ、コレを弟者に渡しておいてくれ。俺は帰って調べ物をしてくる」
( ゚∀゚)「ん。オッケーオッケー」

そう言って兄者はジョルジュにDVD-Rを渡すと、荷物を片付け始めた。
まだ授業は残っているが、別に誰も咎めることは無く、寧ろ自分も帰ってしまおうかとさえ
思っている者さえ居る。クラス全体が、楽しければいいという雰囲気なのでこういうことは
日常的に起こる。

('A`)「……ん? もう授業終わったのか。んじゃ俺帰るわ」
(;^ω^)「でも、ドクオ。次は……」
('、`*川「あら? ドクオ君、どこに行くの? もう授業始まるんだけど」

いつの間にか教壇に立っていた教師がドクオに艶っぽい口調で話しかけた。

('A`;)「げっ! 化学だったのかよ! つーかその呼び方止めろよ! 気持ちわりぃなー」
('、`*川「先生に向かってその口の利き方は良くないわねぇ……。うふふ……帰ったらお仕置ね」
( ´_ゝ`)「じゃあな、みんな」
( ^ω^)「お」
(´・ω・`)「うん、バイバイ」
('A`;)「おい、姉貴! ほら、アイツも帰ろうとして――」
('、`*川「ふふ……化学の面白さを忘れられない体にしてあげる」
('A`;)「あーもう! 聞けよ!」
37 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:20:48.48 ID:8N3abdHZ0
実はドクオの姉が教師をしているのはブーンたちが通うこの学校で、その若さと容姿から生徒達の
間ではかなりの人気の高さを誇る。けれどもドクオ本人にとって、その事実は誇るべきこと
と言うよりは、寧ろただ気恥ずかしい事実であった。
しかしながら彼女にはどうにも頭が上がらないらしく、いつも帰るところを見つかってはよく
教室に気絶したドクオが送り返されてくるのを見掛ける。
だが休みがちなドクオが問題なく進級できているのも、この姉あっての事なのかも知れない。

('三`)「ん゛ー! ん゛ん゛ー!」
('、`*川「授業中は静かになさい」

口にガムテープを張られ、体を麻縄でイスに縛り付けられ、ドクオは監禁状態で化学の授業を
受けさせられることになった。これはどうやら『お仕置き』ではないらしく、帰ってから行われる
『お仕置き』がどんなものなのか、ただドクオが心配で皆の口元から笑みがこぼれる。

( ノω^)「『くやしいっ! でも感じちゃう!』」
('三`#)「ん゛ん゛ん゛ー! ん゛ーん゛ん゛ん゛ー!」

先生の教育的指導により、化学の授業は恙無く終了し、その後縛られたままのドクオを
皆で放置プレーしたままHRを終えた。
38猪(過敏):2006/12/14(木) 00:21:34.98 ID:W0fLCCDxO
wktk
39 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:21:42.93 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「ドクオ、遊んでないで掃除手伝ってくれお」
('三`#)「……」
(´・ω・`)「ねぇ、これ……鼻になんか詰めたらどうなるんだろう?」
( ^ω^)「……」
(´・ω・`)「……」
('三`;)「……」
( ^ω^)「僕たちトモダチだお」
(´・ω・`)「うん、そうだよね」
('三`;)「……」

一瞬二人の周りに常闇の如き暗い影が揺らめいたような気がしたが、それはドクオの
気のせいだったのか、あるいは明日はわが身と自己保身の為にギリギリのところで仮面を
被ったのか、その心中を知る者は居ない。

(;゚∀゚)「おいおい、早く外してやれよ」

もやもやと目に見えないオーラを出しながら佇んでいる二人にそう言うと、ジョルジュはドクオの
縄を解き、口のガムテープを外した。口の周りは薄らと赤らみ、服はヨレヨレになっていた。
そんなドクオの服に残った縄の繊維を払うと、ジョルジュは眉間にシワを寄せ不適に笑い、
徐に右手の親指を立てるとドクオに向かって突き出す。
40 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:22:20.87 ID:8N3abdHZ0
('A`)「あん?」
( ゚∀゚)「いやいや、別に未来の弟君からお礼なんていらんとですよ?」
('A`)「……本当にあんな奴のどこがいいんだか」
( ゚∀゚)「全身からセクシーさが溢れてるのがわからんのかねぇ……」
( ^ω^)「でもジョルジュにしてみれば、おっぱいが足りないんじゃないかお?」
( ゚∀゚)「甘いな。おっぱいの優劣は大きさじゃない、みんなちがって、みんないい。
     それがおっぱいだ」
('A`)「お前ら、目の前で人の姉のそんな話をしないでくれ……」
( ゚∀゚)「でもさ」
('A`)「ん?」
( ゚∀゚)「あー……いや、綺麗だろって」
('A`)「さあな」

『血繋がって無いじゃん』
この一言は未だに軽く口に出来ない距離があった。
41 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:23:43.84 ID:8N3abdHZ0
そんないつもの放課後の談笑も一段落すると、皆がぽつりぽつりと帰り始め、開いた窓から
夕日を纏った風が差し込む頃には教室からは人影がすっかり消えてしまった。
けれども、教室にはまだブーンが一人で居た。皆と居るとついふざけてしまうので、
今日は適当に校内をうろついて人が居なくなるのを待ったのだ。きっとツンはヤキモキしながら
帰ったに違いない。それでもブーンは、なんとなく、夕暮れの教室で考え事がしたかった。

――ふと、窓から校庭を眺めるとどこかの部活動の生徒がランニングをしていた。その様子を
目で追いながら、僕は昔からの問を頭の隅から引っ張り出してきた。グルグルと同じところを
回る生徒達。スタートがあそこ、ゴールはどこだろうか。もしや顧問の気まぐれだろうか、
それともストップウォッチだろうか、はたまたにわか雨なのだろうか。
 人も同じだ。スタートして、走って、走って、よく分からないがゴールが来る。彼らはゴールする
為に走っているのだろうか。走る途中で何を思うのか。その思いは楽しいものなのか、意味が
あるものなのか、人間が在る意味は何か。そこまで考えて僕はある種の孤独感のようなものが
体に染み込んでいくのを感じ始めた。これではいけない、と僕は考える事を止めた。いつもの
ように戯けて過ごし始めれば、こんなものは思い出さない。人間の意味なんて僕が考えても
答えが出るはずもないし、僕のこの不思議な感覚も普通に過ごしていれば感じることはない、
そしてその意味も無い。心に去来する寂しさのようなものを奥歯で噛み潰して僕は窓を閉めた。

( ^ω^)「……はいはい、厨ニ病厨ニ病っと……さっさと帰るお」

ブーンは教室をぐるりと眺め薄く笑うと、机の上に置いていたトートバッグを肩に掛けて教室を出た。

するとどういうことか、廊下には持ち主のように横を見て澄ました兎のマークが描いてある
ボストンバッグを両手で前にぶら下げてこちらを見ているツンが居た。
42 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:24:46.51 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「お? ツン、帰ったんじゃなかったのかお?」
ξ゚听)ξ「それはこっちのセリフよ」
(;^ω^)「あ、あれ? てっきり僕を待っていたのかと思って、白々しいセリフを吐いたのに台無しだお」
ξ*゚听)ξ「冗談よ!」

そう言ってツンはギュッとブーンの右腕にしがみ付いた。一瞬何が起こったのか分からなかった、
と言うのは大袈裟ではあるが、事実のショックよりも腕にしっとりと纏わりついたツンの柔らかな
腕や、ブーンの腕を控えめながら圧迫してくるまだ見ぬ母性の塊にブーンは思考がフリーズした。
そんな混乱するブーンにそれを解かせるような言葉も態度も咄嗟には出てこずに、状態の
クーリングオフ期間を過ぎたと言うか、精神的慣性の法則に基づいてと言うか、とにかくこの状態を
変化させるタイミングを完全に逃してしまった。

(;^ω^)「ツ、ツン。一体どういう風の吹き回しで……。まさか……は、発情期とか?」
ξ(゚、゚*ξ「……そう、かもね」
(;^ω^)(! コ、コイツはヤバ過ぎるお!)

死すら厭わぬ覚悟で放ったセクハラ攻撃だと言うのに、ツンは俯いたまま肯定してきた。
セクハラすらも効かないとなると、最早完全にお手上げ状態である。ブーンは今ものすごく
いつものツンの気持ちを理解していた。あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうとはこの事である。

ξ(゚、゚*ξ「ねぇ、ブーン?」
(;^ω^)「は、はい、何でございましょうか」
ξ(゚、゚*ξ「……こっち向いて」
43 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:25:35.07 ID:8N3abdHZ0
ブーンの心臓は過去最高の拍動回数を記録し、痛いくらいにドクドクと鼓膜をたたきつける音は、
本当に破裂してしまうのではないかと思われるほどだった。童貞レーダーにモールス信号が
何度も届いていた。どう考えてもキスだ、と。どうしたらいいものかと頭の中で小さな自分たちが
慌てふためいている。意味も無く直前のツンの言葉が脳内をループし、そういえばムーミンの
フレーズみたいだ、そうなると自分はブーミンか、いや、ブーミンって。
と大して役に立たない分析なんかをしていた。

 そんなブーンの耳に廊下の向こうから、不意に声が届いた。

(,,゚Д゚)「おい、お前達こんな時間までどうした? 俺になんか用事か?」
(;^ω^)「え? あ、いや、そn――ぐっ!」
ξ゚听)ξ「いえ、ちょっとこのバカが忘れ物しちゃって取りに来てたんです」
(,,゚Д゚)「ん、そうか。もうすぐ暗くなるから早く帰れよ」
ξ゚听)ξ「はーい」
(;-ω^)「ひゅおっ! ツ、ツン……ま……ひゅおっ!」
ξ#゚听)ξ「もう、知らない!」
(;-ω^)「ツ、ツン……待っ……息、出来なひゅおっ!」

残念な気持ちと、ホッとしたような気持ちを感じながら、ブーンは一先ず心臓と横隔膜が
落ち着く迄とゆっくり壁にもたれ掛かる。
そして先ほどのシーンを何度も、真っ赤な夕日の色が褪せていくまで頭の中でリピートしていた。
44 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:26:18.25 ID:8N3abdHZ0
 空に一番星が輝き始めた頃、ブーンは見回りの人に追い出されるように学校を後にした。
随分と遅くなってしまったので、カーチャンが心配するといけないとブーンはいつもとは違う
近道を通って帰ることにした。舗装がされていないので人通りが少なく、足元も悪いので
いつもは使わないのだが、何度か通ったことはあるので迷うことは無いだろうと踏んでいたのだ。

 辿り着いた電灯も無い暗い獣道のような通路の先に、ぼんやりと人影が浮かんでいた。
自分以外にもこの道を使っている人が居たのかと、軽く「ほう」と呟いてまた歩き出す。
ところが、近づいてみるとどうやら知り合いに良く似ているようだった。月明かりに照らし出されて
いたその顔は、しぃだった。もう一人は、よく見えないが体格からして男のようだ。けれども
知り合いではなさそうだった。歩くわけでもなく、ただ二人で立ったまま何かを話しているよう
だったがその内容はそよ風に流され、聞こえてこない。
やがて、ブーンがその場にたどり着く前に、二人は逆方向に別れ、見知らぬ男がこちらに
向かってきた。なるべく目を合わせぬよう観察してみたけれども、やはり知らない男だった。
ただ、纏っていた風の臭いに厭なものを感じた。
これは何の臭いだっただろうか。若しくは嗅いだことなんて無かったかも知れない。
45 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:27:00.35 ID:8N3abdHZ0
 夜、食事を終えたブーンは自室に戻りもう一度ノートの上にカッターの刃を滑らせた。
けれども、やはり予想通りノートのページは一向に離れる気配が無い。そこでブーンは
衝動的にティッシュの箱を勢いよく突き刺した。いや、それは間違いで突き刺せなかった。
不思議な感覚だったが突き刺そうとしている間、何か弾力のあるものを棒で押している
ような抵抗しか受けず、箱は形をゆがめるだけに留まっていた。

( ^ω^)「……まさか」

ブーンはゆっくりとそのカッターの刃を自分の手に押し付けてみた。カッターの刃はブーンの
手の肉を歪め沈んでいく。そして一呼吸置いてゆっくりと刃で皮膚をなぞった。刃の軌跡が
微かに白く肌に残っていくが、全くの無傷だった。勿論痛くならない程度に力は抜いたが、
経験的にこの程度力をいれれば切れていてもおかしくは無かった。
そしてブーンは急いで台所へ行き昨日の包丁を取り出すと手の甲を勢いよく切りつけた。

(;^ω^)「ゥオアッチ!」

手の甲を激しい熱量が走り思わず声を上げてしまったが、赤くなっているだけでやはり切れて
いない。それじゃあ一体昨日はなんだったと言うのか。ブーンは右手の指を眺めながら考え込んだ。

(*^ω^)「あ、左手だったお」

誰も見ていないが軽く照れ笑いをして包丁を仕舞い、部屋に戻って寝ることにした。
46 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:28:43.16 ID:8N3abdHZ0
 翌朝、この間の汚名を返上するために早起きをしたブーンは、ツンよりも早く待ち合わせ
場所に来てしまった。そこでブーンは、ツンが来る方向からは陰になる電柱の後ろに隠れて
待ち伏せることにする。
程なくして待ち合わせの5分前頃にツンが現れた。まさか電柱の陰にブーンが居るなんて
ことは思っていないらしく、その電柱にもたれてチラリと腕時計を見ると、空を見上げてため息を
吐いた。電柱に圧迫されてやわらかく変形した朝摘みの桃がなんともジューシーに見える。

―― 一体どんな驚かし方がいいだろうか、やはりここはベタに大声だろうか、いや、どうせなら
そのよく寝かせたパン生地のようなお尻の感触を確かめつつ驚かせれば一石二鳥じゃないか。
おっと、そんなことを考えていたら、股間の象さんが『僕のようにでっかくなろー』と巨大化
しながら騒ぎ始めやがった。こいつはやるしかない。

ξ゚听)ξ「ふぅ……まだかなぁ」

が、その言葉に今まさに触ろうと近づく尻を包み込まんと変形させたブーンの掌が止まった。

(;^ω^)(ま、まだかなぁ?)

どう考えてもその言葉はブーンの到来を待ちわびるものであった。普段とは違うか細い
声にブーンは戸惑ってしまう。何故ツンがこんなことを言っているのだろうか。
普段のツンならば

ξ#゚听)ξ『……アイツ、遅すぎ。来たら絶対シバき倒す』

などと悪態をつくはずだ。少なくともブーンにはそんなイメージしかなかった。それがどうして
不覚にもちょっとときめいてしまう様なセリフを吐いているんだろうか。
ブーンは昨日の出来事と重なってか、顔が熱くなってきたのを感じた。
47かき初め(虚脱感):2006/12/14(木) 00:29:36.25 ID:gk8KKInD0
支援
48 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:29:36.35 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)(もしかして……ツンって僕が思ってるよりずっと――)
('A`)「ぉぉおおお! おはよう!」

ブーンの思考を遮る様にドクオのけたたましい挨拶が飛び込んできた。

ξ;゚听)ξ「わっ! もう、ビックリしたー! 驚かさないでよ」
('A`)「おぉ……おはよう。いや、未だに興奮冷めやらぬと言うかなんと言うかだ」
ξ゚听)ξ「どうしたのよ、しかもこんな朝早k――」

そこで丁度ツンとブーンの目が合った。そしてツンの視線はそのままゆっくりと、自分の
尻寸前で大きく広げてあるブーンの手に下がった。

(;^ω^)「ぁ……」
ξ゚听)ξ「……」
(;^ω^)「グ……グッモーニン……」

今度隠れる時は電柱などではなく、もっと柔らかいものの陰に隠れようと思う。
後にブーンはそう語っている。

さて置き、朝から似合わないテンションの高さだったドクオに二人は理由を何度か
尋ねたのだが、『学校に着いたら教えてやるよ』と言うばかりで、まったくその理由は見当が
つかなかった。ドクオの事だからどうせゲームの事か何かなのだろうと、そう考えそれ以上
聞くことを止めた。
49 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:30:47.30 ID:8N3abdHZ0
(,,゚Д゚)「おーし、今日もドクオ以外全員居るな」
('A`)「先生! 俺居るって!」
(,,゚Д゚)「……おい長岡、ドクオにそっくりな弟かなんか居なかったか?」

クラスの前列から軽い笑い声が聞こえた。

(,,゚Д゚)「まぁ、それは冗談として。じゃあ今日は全員揃ってるんだな。……内藤、お前は
     早起きをすると流血するのか? ……生きてる、よな?」
(▒▓░▒)「多分悪いことをしたからだと思いますお」
ξ;゚听)ξ(ごめん、ちょっとやりすぎたわ)
(▒▓░▒)(別に気にしてないお。と言うよりなんかもうよく憶えてないお)
(,,゚Д゚)「よし、じゃあ終わり」

ギコが教室から出て行くなり、ドクオが立ち上がってブーンの元へとやってきた。堪えきれない
笑みが口元を歪めているところを見ると、よほど何かを言いたかったに違いない。
50 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:31:45.62 ID:8N3abdHZ0
('A`)「さて、そろそろ話をするときが来たようだな」
( ^ω^)「レアアイテムでも手に入れたのかお?」
(´・ω・`)「おはよー、ドクオ。今日は早いね」
( ´_ゝ`)「む? また何かあったのか?」
(*゚ー゚)「なになに〜?」
ξ゚听)ξ「どうせまたつまんないことでしょ? ほんと、大袈裟なんだから」
('A`)「お前らそんなこと言ってられるのも今のうちだぜ。なんせ俺は無敵なんだからな」
ξ;゚听)ξ「……」
(;´_ゝ`)「……」
(´・ω・`)「……ドクオ、一旦気持ち切り替えて、ね? ここは現実世界だよ?」
('A`;)「バーチャルと混同してねぇよ! いいからほら、ブーン俺の腹殴ってみろよ」
(;^ω^)「えぇぇ……ドクオ体細いから大変なことに成りそうだお」
('A`)「ほら、いいからやれって」

自信満々に腹部を突き出してくるドクオの表情を見て、ブーンは数秒間戸惑ったが、生き生きと
した目をしているドクオを裏切るわけにはいかないと、立ち上がり拳を固め上体を捻り、そのまま
引く事無く真っ直ぐ突き出した。
51 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:32:25.74 ID:8N3abdHZ0
('A`)「っぁ!」

大方の予想を裏切る事無く、声にならない声を上げドクオは後方に転がり動かなくなった。

(;^ω^)「あぁぁ……だから言ったお」
ξ゚听)ξ「アンタこの歳で前科持ちとは、可哀想にね」
( ゚∀゚)「なんだなんだ?」
( ´_ゝ`)「ドクオが死んだ」
('A`;)「い……生きてるっつうの……」
(´・ω・`)「ドクオ、どこが無敵なのさ」
('A`;)「い、いや……こんなはずじゃ……」
ξ゚听)ξ「やっぱりちょ〜っと頭が混乱してたみたいね」
(;^ω^)「さっきの自信はどっから来たんだか……」
(´・ω・`)「そうそう――」
(´・A・`)『お前らそんなこといってられるのも今のうちだぜ! シャキーン』
(´・ω・`)「とか恥ずかしいこと言ってたよね」
( ^ω^)「ぶはは! ショボン似てるお!」
('A`;)「死にてぇ……」
(*゚ー゚)「……」
ξ゚听)ξ「はい、解散解散」
52 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:33:05.51 ID:8N3abdHZ0
号令とともに皆が席へと戻っていく中、しぃの動きが少しおかしいことにツンが気付いた。
フラフラと覚束無い足取りで、机に手をついたりしながら歩いているのだ。それに左手を
時々お腹に当てたりと、様子がおかしい。しぃは確か重い方ではなかったし、心なしか
若干蟹股のような気がするのが気にかかった。

ξ゚听)ξ「まさか…… ねぇ、しぃ」
(*゚ー゚)「何?」
ξ^ー^)ξ「おめでとう」
(;゚ー゚)「な、何!? その満面の笑み」
ξ^ー^)ξ「そっかぁ〜、しぃも大人になっちゃったかぁ。先越されちゃったなぁ。で、誰?」
(;゚ー゚)「さっきから何の話してるの!? 誰って何さ!」
ξ゚听)ξ「まぁいいわ、そのうち分かることだろうしね」
(;゚ー゚)「なんか嫌な予感がする……」
53 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:33:59.99 ID:8N3abdHZ0
 ただ教科書を開いて話を聞き流す授業を過ごす生徒が大半のこのクラスで、授業中に毎回
筆記用具は使用する者は少ない。そんなクラスでいつも筆記音を鳴らしているのがクーである。
一体何をそんなに書くことがあるのかと言う位いつも真剣にペンをノートの上に滑らせている。
ブーンは授業中の暇潰しを、そんなクーをボーっと観察することで行った。普段から大人しい
彼女が考えることは全く想像が付かないし、彼女の情報といえば本が好きなことと昼食を食べない
ことくらいなものだ。誰かと群れることも無く、冗談を言って人を笑わせるようなことも無い。
人を突き放すような態度を取るわけではなく、自ら人に近づこうとしない彼女は寂しくは無いのだろうか。
適当なことを考えながらクーの背中を見つめている内に、黒板に書いてあった文字はほとんど
入れ替わってしまっていた。と、ここである違和感がブーンの胸中に湧く。

( ^ω^)(……あれ? クー、一度か顔を上げたかお?)

そこでブーンはずっと顔を下に向けノートを凝視しながらペンを持つクーが、黒板を一度も見て
いないことに気付いた。だとしたら、あのノートには一体何が書き込まれているのだろうか。
絵でも書いているのだろうかとも思ったが、それにしては線を引いている様子も無く、行ごとに
文字を書いているようにしか見えないので、どうやら文章と見て間違いないだろう。あのクーが
書くのだからもしかしたら小説の類なのかもしれない。それならば今度それとなく聞いてみて
読ませてもらうのも面白いだろうとブーンは考え、それきりクーの観察をやめた。
54 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:35:13.52 ID:8N3abdHZ0
 午前最後の授業が終わり、教室に活気が沸いてきた昼。まだ皆が机の上で色々と片づけ
やらをしている時に弟者が前の方のドアを開け教室にやってきた。辺りをニ、三度見回すと
近くに居たジョルジュに話しかけた。

(´<_` )「長岡さん、兄者は……」
( ゚∀゚)「ん? そういや、居ないな。何か用でもあったのか?」
(´<_` )「えぇ、でも居ないのならいいです。では」

軽く会釈して出て行く弟者を見て、ブーンは昨日のツンの怪奇現象はどうなったのかと引き止めて
聞こうかとも思ったが、どうせ後で兄者に会うだろうと聞くのを止めた。当のツンと言えば
いつものようにしぃと何やら談笑しているようだし、体の具合が悪いようには見えなかった。
一息つくと、ブーンはまたいつものように弁当片手に廊下を彷徨いに出かけた。

 そんなブーンを横目で一度見て、ツンは会話の続きを促した。

ξ゚听)ξ「ねぇ、そろそろ白状しちゃいなさいよ。昨日何かあったんでしょ?」
(*゚ー゚)「だからぁ、何も無いって言ってるのに〜」
ξ゚听)ξ「アンタとどれだけ長い付き合いだと思ってるの」
(*゚ー゚)「はぁ〜……ツンと出会ったのがボクの人生で最大の失敗だよ……」
ξ゚听)ξ「言ってなさい。……あれ? あんた風邪でも引いてるの?」
(*゚ー゚)「ん? なんで?」
ξ゚听)ξ「だって、ほら……」

そう言ってツンは口が全開になっているしぃの鞄から、よく見るような風邪薬の瓶を取り出した。
55 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:35:53.99 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「咳止め? アンタこんなの裸で持たないで……あら、でも空ね」
(*゚ー゚)「あぁ〜……うん、実はねその中にはお菓子が入ってたんだよね。ついでに捨てといて」
ξ゚听)ξ「何のついでよ……で、お菓子って?」
(*゚ー゚)「小粒の飴とかそういうのをね。ほら、ウチの学校って見つかると色々ウルサイじゃない」
ξ゚听)ξ「でも薬の瓶にそんなカラフルなもの入ってたら気づくんじゃないの?」
(*゚ー゚)「それが全然なの。ボク一度先生の目の前で中身食べたことあったんだけど、そしたら
     『風邪か? 無理するなよ』だって! ボクもうちょっとで飴玉吹き出すところだったよ!」
ξ゚听)ξ「ふ〜ん……随分先生と仲が良いのね? もしかしたら相手は噂の先生かしら?」
(*゚ー゚)「もう! そんな事言うならツンだって最近内藤君とどうなのさ」
ξ;゚听)ξ「な、今は私の話は関係ないでしょ」
(*゚ー゚)「へぇ〜……何かあったんだ? そうでしょ」
ξ;゚听)ξ「何も無いわよ!」
(*゚ー゚)「じゃあボクも何も無〜い。ね? お弁当食べよ!」
ξ゚听)ξ「はぁ……そうね」

少しは聞いて欲しかったような気もしながら、ツンは黙って弁当の包みを開け始めた。
56白菜:2006/12/14(木) 00:36:48.70 ID:kHVeTRBS0
おいvipper
スレ違いだが
恥を忍んでここへ来た

AAくれ

なんかさ、〜〜になぁーれ、キラキラキラ
みたいな、杖振って星も降ってるの。

あるだろ頼む貼ってくれ
57 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:37:03.00 ID:8N3abdHZ0
 一方廊下を彷徨い続けたブーンは、結局いつもの通り図書室へと足を運んだ。ドアを開けると
同時に鼻を掠める黴臭いような臭いが却って心を落ち着かせる。まだ本の良さなんてものは
分からないブーンだが、煌びやかな電飾も無く人々の喧騒も無く、それでいて生身の人間より
余程押し付けがましくない古人達の知識が整然と陳列されているのを見ると、その日焼け具合や
埃の被り具合、またその堂々とした居住まいなどから歴史の重みというのが感じられて、
しみじみとしてしまう。
そしてブーンはクーとの話のきっかけを作ろうと、少し大きめの声で馬鹿げた演技を始める。

( ^ω^)「これは……また年代物の良書ですな。それでいてこの保存状態! う〜む、ここの
    管理者は余程お目が高いと見える。おや、これは『ホソユキ』ではないですか。私は
    この人の文体の美しさが……」
川 ゚ -゚)「『ササメユキ』、な」

入室の時に一度チラリと見たきりのクーが呟いた。ブーンはそれを会話の糸口にしようと
更に話を続ける。

( ^ω^)「そうそう、主人公のササメ ユキちゃんがまた可愛くて……」
川 ゚ -゚)「内藤……無理しなくていいぞ。何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
(;^ω^)「ご、ご冗談をフロイライン。この英国紳士内藤ホライゾンがそのような遠まわしな
    行為を行うはずがないじゃないですか」
川 ゚ -゚)「国がグチャグチャだな。それにお前がフザケる時は決まって隠し事をしている時だ」
(;^ω^)「お……」

ブーンは痛いところを突かれて思わず戯けることを忘れてしまった。たかが一、二秒の事とは
言え、物事の連なりの切れ目に人は異常なまでに敏感で、この1、2秒は切れてしまった
時点で既にほぼ永遠と変わらないほどの隔たりを生んでいた。観念してブーンは未だこちらを
見ずに頬杖をつきながら『ドグラマグラ』と書いてある文庫をパラパラとめくるクーの正面に座った。
58 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:38:47.75 ID:8N3abdHZ0
(;^ω^)「ク、クー……その表紙……」
川 ゚ -゚)「ん? 内藤、今日はご飯食べないのか?」
(;^ω^)「え? あ、お、休み時間毎に食べてたら完食してしまったお」
川 ゚ -゚)「……そいつは内藤らしいな」

気付いていないのか、もしかしたら触れてはいけないことだったのか、なにやらドキドキしながら
ブーンはクーの顔を見つめるばかりであった。
しかし良く見てみると、クーというのは表情の変化が無いと思っていたのだけれども、みてみる限り
そうではないのではないかもしれない。今だって僅かに目尻が下がってとても優しい目をしているし、
さりげなく頬杖をつく手で口元を隠しているようにも見える。

川 ゚ -゚)「どうした?」
( ^ω^)「なんでもないお。そうそう、クー。さっきの授業でノートをとり忘れたとこがあったんだお」
川 ゚ -゚)「お前いつもノートなんかとってないだろ」
( ^ω^)「試験が近いから頑張ってるんだお。と、言うわけで見せて欲しいお」
川 ゚ -゚)「断る」
(;^ω^)「そんなはっきり言う奴初めてだお……」
川 ゚ -゚)「それは貴重な経験を出来てよかったな。ノートならしぃだってとってるだろ。彼女なら
     ノートだけじゃなくて補足もしてくれるだろうさ」
(;^ω^)「しぃと話すといつの間にかこっちがセクハラされてて困るんだお」
川 ゚ -゚)「お前にも天敵がいたんだな。意外だ、……と」

クーはそう言って立ち上がり持っていた文庫を近くの本棚に戻すと、そのまま本棚の整理を
始めた。これ以上どう整理するのかと言うほどに綺麗に整えられた本達は一冊一冊クーに引き
抜かれては配置を入れ替えられていく。話が終わってしまわないようにブーンはもう一度繰り返した。
59 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:40:02.92 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「そう言うわけでノート見せて欲しいお」
川 ゚ -゚)「残念ながら私は授業のノートはとってないぞ」
( ^ω^)「お? じゃあ授業中ずっとノートに何か書き込んでたのはなんだったんだお?」

ここぞと、ブーンが隠し持っていた情報をクーの背中にぶつけてみると、本棚を整理するクーの
手がネジの切れた人形のようにゆっくりと減速して、止まった。その瞬間に部屋の中で動いている
ものが無くなり、あたかも部屋中の空気の粒子が固定されてしまったかのように、静けさと重みの
ようなものを感じた。ブーンはそんなゼリーのような部屋の空気に圧迫されながらも、動きを見つけ
ようとクーの変化の観察に神経を尖らせるが、全く窺うことの出来ない表情の代わりに、どこからか
吹き込んできた風にサラサラと靡く後ろ髪、一本一本に目がいってしまう。

川 ゚ -゚)「関係ないだろ。とにかく私は板書を写してない。だから誰か別なのに見せてもらえ」
( ^ω^)「何を書いてたか位知りたいお」
川 ゚ -゚)「……ふぅ」

動揺させたところで畳み掛けてボロを出させる腹だったのだけれども、どうもクー自身、
空白を作る不利益より慌てて化粧の不完全な言葉を紡ぐ不利益の方が大きいことをよく
心得ているようで、空白の取り方が一連の流れに沿っていて非常に上手かった。

川 ゚ -゚)「そうだな……アレは、もう一つの私の話……、幼稚な妄想劇といったところかな」
(;^ω^)「……ま〜た、本ばっか読んでる人はすぐそうやって難しいことを言うんだお。小説家
      とかも、もっと簡単な言葉使えばいいのにと思うお」
川 ゚ -゚)「……そうだな、確かにその通りだ。丁度良い、それなら私も小説家になろうか」

そう言って振り向いたクーの顔は、やはりいつも通りの顔だった。結局ブーンにはその言葉の
意味は分からなかったし、知ろうと言う気も起きなかった。久々に聞いたクーの冗談が、まるで
自分自身に皮肉を言っているかのように聞こえ、胸がモヤモヤとしたからだろう。
60 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:40:53.98 ID:8N3abdHZ0
 午後の授業の間もブーンはクーの事が頭から離れなかった。クーの方を見るとやはり変わらず
ノートに何かを書いていたが、どうしてかさっきのようにずっと見ていることはできなかった。それは
多分……と理由を考えようとしてブーンは止めた。理由なんて考えるまでも無い。

(,,゚Д゚)「クー、机の上に手鏡を立てるのはいいんだが、なんで内藤の方に光を集めているんだ?」
川 ゚ -゚)「……視姦防止です」
( ^ω^):;*.ブッ
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっとあんた……」
(    )「最低だね」
(;^ω^)「ちょ、ツン、誤解だお! ショボンも前向いたまま呟くなお!」
(,,゚Д゚)「うるさいぞー、内藤。お前次から声出す度に宿題プリント一枚追加な」
(;^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「えい」
(;^ω^)「痛っ! ちょ、それ彫刻刀――」
(,,゚Д゚)「おし、一枚」
(#^ω^)「……」
(    )「ねぇねぇ、ブーン」
(;^ω^)「……(そんなんで返事なんかするかお)」
(´゚ω゚`)「べる〜ん!」
(*^ω^)「ぶわははははははははははは!」
(,,゚Д゚)「二枚。内藤、やる気マンマンだな」
(;うω^)「……み、皆なんて嫌いだおー!」
61 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:41:34.40 ID:8N3abdHZ0
わざとらしく「あぁぁぁん!」なんてウソ泣きをしながらブーンは廊下へ内股で飛び出していった。
しかし教室の誰一人としてブーンを追うものは居なく、こういう場面で決まって「カワイソウじゃん、
みんななんとも思わないの?」などと言い出すようなキャラも居ない。
このクラスには、今はめんどくさいからスルーしよう、という見事な団結力があった。
加えて、皆にはブーンが打たれ強いという認識があったというのも大きいだろう。

ξ゚听)ξ「あいつと居ると暇しないわね」
(´・ω・`)「タフないじられ役は重要だよね」
(,,゚Д゚)「あいつはホント自由人だな……ほらほら、授業続けるぞ」


(;^ω^)「……誰一人として引き止めに来なかったお」

一人グラウンドに佇んで、ブーンは切ない気持でいっぱいになっていた。
62猪(過敏):2006/12/14(木) 00:41:55.64 ID:W0fLCCDxO
支援
63 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:42:38.28 ID:8N3abdHZ0
 階段を上りながら、教室に入って何を言おうかと考えていたブーンだが、次第に腹が
立ってきたのでそのまま教室がある階を過ぎ、屋上へ行くことにした。屋上は立ち入りを
禁じられてはいるものの施錠がされていなく、生徒の立ち入りも日常的に行われている。
本当にこの学校は甘いな、と思いながらも重々しい鉄の扉をプレゼントの箱を開けるような
気持ちで押し開けた。
澱んだ空気が開放されて、背中の方から空に向かって飛んでいったのを感じる。
ブーンは頬にくすぐる髪を手で直すと、屋上へ一歩踏み込んで後ろ手にドアを閉め、
青空を仰いだ。

――世界中どこに居たって空の色は変わらない。例え醜い心の人たちが空を煙で蔽っても、空の
色だけは冒せない。それでも今日の空がこんなに綺麗に見えるのはきっと楽しいからだ。

そんな臭いことを考えながらブーンは両手を広げて空を見たまま仰向けに寝た。
ブーンは青空が大好きだった。いや、どちらかと言うと「あおいそら」の方が好きだった。

(*^ω^)「おっと、あおいそらに反応して僕の電波塔が突貫工事だお」
(*゚ー゚)「残念ながら強度に問題ありね」
(;^ω^)「な、僕のは100人乗っても大丈(´゚ω゚):;*.ブッ なんで、しぃがここに……」
(*゚ー゚)「いけないんだぁ、こんなとこでサボって。それにね、空の色だってずっと煙で覆われてたら
     本当の色なんてわからないよ」
( ^ω^)「お互い様……お? もしかして僕、色々な事をお口から垂れ流してましたかお?」
(*゚ー゚)「うん、大分ロマンチックなことを聞かせてもらったよ。まるで何かの歌詞みたいだね」
( ^ω^)「……さようなら、僕が死んだらパソコンの破壊をよろしくお願いします」

そう言ってブーンは起き上がり、ゆっくりとフェンス一枚隔てて床の続いていないこの世と
あの世を結ぶワープゾーンへと歩いていく。そんなブーンの挙動にしぃがアハハと声を上げて
一笑いし、追いかけてブーンの腕を掴んだ。思ったより小さいその手にブーンは少しドキリとする。
64 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:43:49.20 ID:8N3abdHZ0
(*゚ー゚)「ボクも普段いっぱいそういうこと考えてるから大丈夫だよ。恥ずかしくない、恥ずかしくない」
(;^ω^)「うわぁぁん! ちょっとドジでえっちなことに興味津々なお茶目ボーイの僕のイメージが
      台無しだお! もう死ぬしかないお!」

ブーンにとってこれは半分本音だったのだが、さっきの言動が滑稽なものに映ったのなら
まだ心の底は覗かれたことにはならないだろうと、さらに戯けて見せた。ブーンはこの冷静な
自分の側面を人に見せるのが特に嫌いだった。この下にはもう自分が居ない。真の自分が
掴まれてしまうのが怖いのだ。そんなブーンを知ってか知らずか、しぃは体をぴったりと寄せてくる。

(*゚ー゚)「んん? そんな事言っておきながら体は正直だぞ? 生きたいって下半身の人が
     自己主張してるぞ?」
(;^ω^)「い、いや! イきたいなんてそんなはず無い! こんなの何かの間違いよ!」
(*゚ー゚)「ほらほら、我慢は体に良くないぞ? イきたいんだろ? 正直に言ってみろよ」
(*^ω^)「あ……いや……って、しぃ本当に触るなお!」
(*゚ー゚)「アハハ、ごめんごめん、つい盛り上がっちゃって。いや、盛り上がってるのは……」
(;^ω^)「こ、これは反射であって別に飢えてるとか、百戦錬磨のダンディ内藤がこんな――」

しぃと会話をしていると、どうにも主導権を持っていかれてしまい逆にセクハラされてしまう
ことが多々ある。それはそれでブーンも楽しんでいる節があったのだが、楽しんではいけない
というプライドにも似た理性と、心も体もすべて委ねてこの快楽におぼれたいという青い衝動の
間で揺れ、いつも僅差で理性が勝っていた。
65 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:45:06.17 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「しぃは無用心だお……」
(*゚ー゚)「ん? ボクの何が無用心なのさ。ふふふ、アハハハハハ」

そう聞き返して離れるしぃの笑顔は、青空を背に輝いて見えた。きっと彼女にはこの世界は
綺麗に見えるのだろうとブーンは思った。悩みの無い人が居るなんて思いはしないが、
きっとしぃは自分より強いのだろうなと、そうも思った。
そんな中々答えを返さないブーンを見て、しぃは不思議そうに微笑むと扉の前まで軽快に走り、
一度息を吐くと、華奢な腕で一気に扉を引き、ブーンの方へと手を振りながら扉の向こうへと
消えていった。
急に静かになった屋上でブーンはもう一度床に寝転がって青空を見た。
やっぱり、空はいつものように大きく見えた。

 しばらくそうやって流れる雲を見ていたのだが、ふと時計を見るともうすぐHRの時間が
来るようだったのでブーンは肺いっぱいに空気を吸い込んで一気に起き上がる。
と、その時視界の隅に何かを見つけた。崩れたコンクリートかとも思ったのだが、近寄って見てみると
どうやら何かの入れ物と、傍にぐしゃぐしゃに潰れた空き缶のようだった。しぃが落としたの
だろうか。中身を確認してみたが、昔ゲームで見たようなカプセルの薬しか入っていなく、
誰のものか検討がつかないブーンは、空き缶を軽く蹴飛ばして入れ物をポケットに入れると、
屋上を後にした。
66 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:45:55.87 ID:8N3abdHZ0
(,,゚Д゚)「おし、みんなご苦労様。明日はついに金曜だな。最後だからってサボんなよ? じゃ、挨拶」

 ギコの合図で皆が適当に挨拶をして机を下げ始めた。いつもの見慣れた光景である。
あの後結局ブーンも頭を軽く突付かれただけで特にお咎めは無しだった。ギコはいい加減と言うか、
『言ってわかる奴は1度軽く言うだけでわかるから煩くは言わない。それ以外の奴は自分で
怪我をしろ』と、日頃から言っていて、責任が付いて回る現代でよく生き残っていられるなと
思う人である。そんなギコの教育の賜物かはわからないが、生徒達もとりあえずやることは
やるのだ。今だって授業はサボるような者も掃除をきちんとしている。ちなみに掃除をサボると
グループの他の者から「人手が足りなかったので……」と、サボった者の机の周りにだけ
堆く塵やゴミが詰まれる制裁を受ける。
そんなもんだから勿論ブーンも例に漏れず、箒を片手にそれなりにではあるが掃除をしていた。
そんなブーンに兄者が突然声を掛けた。

( ´_ゝ`)「おい、内藤。ちょっといいか?」
( ^ω^)「お? 今すぐかお?」
( ´_ゝ`)「む……掃除中か。それなら終わったら視聴覚室に来てくれ」
( ^ω^)「わかったお。よーし、パパッと終わらせるお!」
(´・ω・`)「ブーン、いつまで箒持ってるの? もう掃除終わったよ」
( ^ω^)「……」
67 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:46:51.70 ID:8N3abdHZ0
 視聴覚室は普段あまり使われることは無いが、迷うことは無かった。一度ここで弁当を
食べようと思ったこともあったのだが、あまりの埃っぽさに食事をする気にはなれなかった。
図書室も多少は埃っぽいのだが、手入れが行き届いていて気になるほどではないのだ。
それに視聴覚室は暗幕のせいか、部屋の中が薄ら寒くて一人で長居するには気味が悪い。
ドアを開けると、やはり案の定冷たい空気が腕に纏わりつくのを感じた。

( ´_ゝ`)「内藤か。早かったな」
( ^ω^)「僕にかかれば掃除なんてあっという間だお。ところでなんで視聴覚室なんだお?」
( ´_ゝ`)「ここだと人も居ないしな。話の幅が広がる」

そう言って兄者はいつものように既に立ち上がっているノートPCを開き、色々とウインドウを
開き始めた。

(*^ω^)「ま、まさかお宝ですかお!?」
( ´_ゝ`)「まぁ、慌てるな」
(*^ω^)「ちょ、ちょっとティッシュ取って来――」
( ´_ゝ`)「待て、慌てるなと言っただろ」
( ^ω^)「おっ」

部屋を出ようと立ち上がったときに、襟首を掴まれ俄に天を仰いだブーンは、軽く照れ笑いを
しながらもう一度席へと着いた。もう一度落ち着いて画面を見てみたのだが、どうにもブーンが
期待している物を用意しているような雰囲気は無かった。慌てるな、とはそういう事だったのかと
今になってようやく理解する。
68書初め(女優になるんだ):2006/12/14(木) 00:47:25.20 ID:ayQKIuhO0
支援
69 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:48:16.51 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「実はツンの件で弟者に集めてもらった資料の中に興味深い物が見つかってな」
( ^ω^)「ツン? あぁ、あの珍々怪々な事件のことかお」
( ´_ゝ`)「まぁ、説明するよりコレを見てもらったほうが早いな」

兄者はどうやら操作に夢中でジェスチャー付きのボケにも気付かなかったらしく、真顔で
ノートPCの画面をブーンの方へと向けた。開かれていたのは『&`$#{\~に関する資料、まとめ』
と、いうタイトルのテキスト文章だった。前半は恐らく文字化けだろう。何を言わんとしているのかは
理解できなかったが、とりあえずそこに書かれている文章を少しずつ読み始めた。
活字慣れしていない所為か、どこまで読んだのか途中で見失うなどしてなかなか苦労しながらも
凡その内容はぼんやりと把握することが出来た。

( ´_ゝ`)「どう思う?」
( ^ω^)「どうもこうも……マンガのあらすじか何かかお?」
( ´_ゝ`)「いや、これはどうも実話らしいんだ」
(;^ω^)「じ、実話か……お」

資料に書かれていた文章をブーンが途中まで読んで把握した内容はこうだ。

 『ある日、ある学校の教室で、突然一人の生徒の身に奇妙な現象が起こる。その日を境に
  知らず知らずに奇妙な現象を起す生徒が増え続けたが、学校がそれを隠しつつも、
  職員達で原因を探り始める。しかし、その間に生徒達の間で徐々に争いが起こり始める』

まるでありきたりな映画か小説の煽り文句のようだが、これが実話となると『奇妙』と言うのも
またその度合いを考え直す必要がありそうだ。
70猪(2ch中):2006/12/14(木) 00:48:55.74 ID:N6FUDLC4O
支援
71 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:49:23.68 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「あぁ、テキストと一緒にこれまでこの学校で起きた事件やらをまとめた資料が入っていてな」
( ^ω^)「……」
( ´_ゝ`)「予想以上に綺麗にまとめられていて、弟者にしては久しぶりにいい仕事を――」

ぺらぺらと矢継ぎ早に兄者の口から出てくる言葉に、ブーンは嫌な予感を感じながら、それが
確定してしまうのを遅めるかのように口を挟んだ。

( ^ω^)「兄者、さっきから聞いてたら……それじゃあまるで――」
( ´_ゝ`)「そうだ。これはどうやら、うちの学校で起こった出来事らしいんだ。それもつい7年前にな」
(;^ω^)「……ま……そんなまさか」

身近なことと知らされるや否や、急に話に重みが増したものの現実味の無い話だし、7年前の
話にしては何も噂を聞かない辺りにやはり信憑性の無さを感じた。それにいくら学校が隠そうと
しても、まさか生徒を学校に監禁するわけにもいかないだろうし噂の一つでも流れていていいはずだ。

( ´_ゝ`)「俺もすぐには飲み込めなかったのだが……この学校にも怪談があるのは知ってるか?」
( ^ω^)「怪談かお? トイレの花子さん的な?」
( ´_ゝ`)「この学校ローカルの物だ。誰かに聞いて見るといい。俺が話すよりはその方が良い」

あまりに冷静な態度をとる兄者に、ブーンは心ならずも小さな不安を抱えつつあった。
どうして自分が昔の話に不安にならなければいけないのか。そんなにこの話は怖かったか。
頭の中を整理しつつ自分の感情の理由を探りながら、とりあえず会話の繋ぎにブーンは
兄者に冗談を言う。

( ^ω^)「それにしてもこの時代に居なくて良かったお。居たら僕なんかはあっという間に――」
( ´_ゝ`)「――いや」

歯切れのいいスタッカートの低音がブーンの声を遮った。
72 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:50:36.80 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「今これと同じことが起こりつつあるとしたら?」
(;^ω^)「…………」

冗談を言うために柔らかくした心臓を不意に鷲掴みにされ、貧血を起しそうになった。
何を根拠にそんなことを言っているのかと、ブーンは怒りで心に即席のバリアを張る。
しかしその所為で語気に多少の荒さが混じってしまう。

(;^ω^)「いや、兄者! どうしてそんなことを断言できるんだお!」
( ´_ゝ`)「言っただろ。これはツンの件で集めた資料だ、と」
(;^ω^)「それが何なんだお! それがっ……」

突然ブーンの脳裏に『奇妙な現象』という文字と、この前のツンの騒動が浮かんだ。
そして間髪入れずに自分自身のあの奇妙な出来事をも思い出し、ブーンは言葉を詰まらせた。

( ´_ゝ`)「なぁ、内藤。お前……、お前自身に心当たりはないか?」
(;^ω^)「……」

ブーンは言うべきかどうかを逡巡した。しかし冷静さを欠く状況に置かれると、自分自身の話を
することに急に躊躇いを感じる癖のようなものがありどうしても話すことが出来ない。

(;^ω^)「……いや、僕は多分そんな変わったことは無かったと、思うお」
( ´_ゝ`)「そうか。……うむ、気にするな。これはコーヒーブレイクのようなものだ。もっと力を
      入れて調べた科学的な資料のほうだが――」
(;^ω^)「……」

兄者の丁寧な口調で仮説が立てられていったが、ブーンは胸の内の何かざわざわとした
ものが気になってまったく集中できなかった。『失敗した』。必死になってしまった自分を思い
出してブーンはそう思い、後悔した。兄者にとっては只の余談のようなものにこんなに食い
ついてしまうなんて、自分はどうしてしまったんだろうか。
ブーンは気を取り直して兄者の話に耳を傾け始めた。
73 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:51:33.21 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「――と、言うわけで脳血管の方に異常があるかもしれないから、評判のいい脳神経
      外科もピックアップしておいた。コレをツンに渡しておいてやれ」
(;^ω^)「本当にその手際の良さは高校生のものじゃないお……」
( ´_ゝ`)「弟者の協力もあってのものだ。俺一人の力ではない」
( ^ω^)「はぁ……どいつもこいつも仲良し兄弟ばっかだお」
( ´_ゝ`)「実際、俺はもっとアイツには一人でしっかりしてほしいんだけどな」
( ^ω^)「仲が良いのはいいことだお」
( ´_ゝ`)「……うむ」

そこまで話すと、ガラ、と視聴覚室の重いドアが開いた音がした。見ると弟者とツンのようだった。
見慣れないペアだが、こんな所に一体何の用があったのだろうか。

(´<_` )「兄者、言われたとおりツンさんを……」
( ´_ゝ`)「OK。じゃあ内藤、さっき言ったとおりだ。俺は用事があるから一足先に弟者と帰らせてもらう」
( ^ω^)「お? わかったお。あ、兄者、さっきのウチの学校の話のアレだけど……僕にも
      ファイルをくれるとうれしいお」
( ´_ゝ`)「ん? ああ、あれか。そのプリントの束に資料の要約なら入っているが……帰ったら
      一応ファイルを送っておこう」
( ^ω^)「ありがとうだお」

バイバイ、とブーンは流石兄弟に手を振ると、手持ち無沙汰そうにしているツンに声を掛けて
隣に座らせた。こんな陰気なところに居るのは嫌だと拒否されるような気もしたが、ツンは
頷いてドアを閉めると隣のイスを引いてゆっくりと座った。
座った瞬間にツンの方から女の子の匂いがして、ブーンは改めて兄者が帰ったのだと認識した。
74 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:52:43.32 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「なんか色々調べてくれたんだって?」
( ^ω^)「そうなんだお。兄者が言うには――」

 ブーンは兄者に説明されたことを思い出せる限りツンに説明して、プリントアウトされた
症状の簡単な説明や、オススメの病院のリストなどをツンに渡した。

ξ;゚听)ξ「なんか色々怖くなってくるわね」
( ^ω^)「大丈夫だお、ツンがそう簡単にくたばるわけないお」
ξ゚听)ξ「アンタには早くくたばって欲しいわ」
( ^ω^)「おっおっお。冗談キツイお」

ブーンはそう笑い、背もたれに体重を預けた。防音設備の所為か外からの雑音が聞こえて
来ず、沈黙の中特有のノイズのような物が聞こえるばかりであった。見ると時計の針もいい
時間を指していたので、ブーンは机の上に広げていた残りの書類をまとめて片付けると、鞄に
まとめて詰めて立ち上がる。ついでに暗幕を手でめくって外を確認したが、予想通り外は
もう日が沈み夜の暗さだった。
75 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:53:54.78 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「ツン、暗くなったし一緒に帰るお」
ξ゚听)ξ「……何もしないでしょうね?」
( ^ω^)「なんかする気だったら、もう既にここでしてるお」

ツンが顔をしかめて、ガタガタッとイスごと後ろに下がった。

(;^ω^)「いや、だから仮定の話で……もういいお、帰るお」

態と呆れたような口調で吐き捨ててブーンは視聴覚室を後にした。そしてなるべく足音を立て、
早足で階下に降りて息を潜めた。視聴覚室はブーン達二年生の教室と同じ三階にあり、ここは
三年生の教室が立ち並ぶ二階になる。帰るのならば玄関のある一階に行くのが道理であるが、
ブーンはツンが慌てて追いかけに来ないか、また、後ろから脅かしたらどんな顔をするのか、
それを確かめたくて二階に留まった。もう遅いとは言え階段周辺の蛍光灯は点きっ放しだったので
その光が届かない程度に離れて静寂に耳を傾ける形になった。

 そんな矢先早くもブーンの耳に物音が飛び込んでくる。しかし、それは階段とは逆の
方向にある教室から聞こえたものだった。特に興味は無かったが、それが教師だと色々と
コミュニケーションをとるのが面倒臭いので、ブーンは一応確認のため恐る恐る教室を覗き込む。
覗きこむと同時に机を前にして佇む人影が発見できた。
教室に差し込む月光が照らし出していたのは、ジョルジュだった。
雰囲気がそうさせたのか、彼にしては大人しい表情をしているように見え、それはまるで口を閉じた時に
ネジが切れたからくり人形のようだった。彼はもしや僕の同類なのだろうか。
ふとそんなことを考え、それ以上見ることがいけない事のように思えてブーンはそのまま静かに
その場を離れ玄関へと向かった。
76あがり:2006/12/14(木) 00:53:58.83 ID:lMQAe2eL0
割とおもすれー(^ω^ )
77 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:54:58.47 ID:8N3abdHZ0
 玄関には、いつの間にか頭から離れていたツンの姿があった。それも、怒っているのかと
思えばどうもそうではないらしく、したり顔とでも言うのだろうか、澄ました顔のまま笑っている
その表情はどこか被虐心をそそられるものがあって、ブーンは思わず見とれてしまった。

ξ゚听)ξ「ほら、そんなことだろうと思ったわよ。ほら、アンタの外靴下駄箱に入ったまま」

ブーンが自分の顔を無言で見続けているのが、自分の智略によるものだと思ったのか
ツンは得意満面といった感じで悔しがるブーンの言葉を待っていた。

( ^ω^)「あ……あぁ、なるほど。失敗したお」

勝手に別な思考に処理の大部分を裂いてしまった大脳の、まだ使われていない片隅を
借りて虚ろな返事をすると、ブーンはツンに続くように学校を出た。自分に被虐嗜好が
あったのかと言う驚きにも似た疑問に、それは暗さの所為なのだろうという確信の無い
理由付け、そしてツンのパーツではなくツン自体に女性を感じてしまった自分に対する
戸惑い、それらを自分の矜持とうまく共存させられるようにするのにかなりの時間を
費やしてしまい、その日の帰り道はブーンらしくない無難な会話や態度ばかりのまま、
ツンの家に着いてしまった。
78 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:55:45.04 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「なんかやけに大人しいわね。さっきの約束のせい?」
( ^ω^)「いや、……あぁ、うん、そうだお」
ξ゚听)ξ「ふーん……アンタのそれにも中身が入ってたのね」
(;^ω^)「し、失礼な! 僕は常に上も下も満タンがデフォルトの……」
ξ゚听)ξ「うわ、キモいけど今のアンタっぽいわ」
( ^ω^)「前から思ってたけどツンって耳年増だお」
ξ゚听)ξ「そりゃ毎日こんなのと会話してたら嫌でもこうなるわよ……。それにこれ位普通よ?」
(;^ω^)「ま、またまたぁ〜」
ξ゚听)ξ「て、言うかアンタみたいに回りくどくないわね。結構平気でエグイこと言ってると思う」
(;^ω^)「や、やめて! 女の子は純粋無垢で温室の花のように穢れを知らなくて――」
ξ゚听)ξ「うわぁ、そういう幻想ぶち壊してやりたいわ」
(;^ω^)「も、もう帰るお! じゃあツンまた明日!」

そうして慌ててその場から逃げるように駆け出したブーンにツンが後ろから叫んだ。

ξ゚听)ξ「少しは手ー出せ意気地なしー!」
(;^ω^)(出したら絶対手が無くなるお……)

やっぱりこんな猥雑な奴に特別な感情を覚えるわけは無い、とブーンは胸を撫で下ろして
家路についた。
79 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:56:37.32 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「ただいまーだおー」
J('ー`)し「おかえりなさい、ご飯もうすぐできるからね」
( ^ω^)「何か手伝うことはあるかお?」
J('ー`)し「もう魚を焼くだけだから。のんびりしてなさい」
(*^ω^)「待ちきれないお」

ブーンがそう言って鞄を置きに部屋へ行こうとした時、ポケットに入れていた携帯が震えた。
メールだろうと考えて部屋に着いたら取り出そうと思っていたのだが、どうにも震えが止まらず
どうやら電話のようだった。気付いてすぐに取り出すと相手はあの電話嫌いのドクオだった。
よほど急な用事なのか、ブーンは一瞬最近の事柄から発展しそうな不幸を頭の中で
シミュレーションして電話に出た。

( ^ω^)「もしもし?」
('A`)「おぉ、やっと出たか。今時間いいか?」
( ^ω^)「これからご飯を食べるお。それにしてもドクオがかけてくるなんて、何かあったのかお?」
('A`)「あぁ……やっぱりアレは俺の勘違いじゃなかったんだ」
( ^ω^)「アレ?」
('A`)「とにかく飯を食い終わったら公園に来い。じゃあな」

一方的に約束を取り付け、ドクオは電話を切ってしまった。ブーンはしばらく『アレ』について
考えていたが、行けば分かることだ、と考えるのを後回しにして部屋に鞄を放り投げると、
すぐに居間へドタドタと早足で戻った。

( ^ω^)「ごちそうさまだお」
J('ー`)し「はい」
( ^ω^)「じゃあちょっと出かけてくるお」
J('ー`)し「え? こんな時間にどこに行くの?」
( ^ω^)「ちょっと友達に呼ばれたんだお。すぐに戻るから大丈夫だお」
J('ー`)し「そう、気をつけてね」
80 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:57:20.12 ID:8N3abdHZ0
 外はひっそりと静まり返り、街灯もただ地面を照らすばかりで人など一人も居ないのでは
ないかと思うほどの夜だった。ブーンはたまに夜空を見上げるなどしながら夜の冷たい
空気を胸いっぱいに吸い込み住宅街を歩く。肺に入った空気が少し焦げ臭いのは、誰かが
花火をしていたのだろう。ドクオと会うことになっている公園は家からはかなり近く、ものの
数分で着いた。その公園の真ん中にウロウロと落ち着かない様子で歩き回るドクオがすぐに見えた。

('A`)「遅いぞ。待ちくたびれたって」
( ^ω^)「なら座ってればいい話だお」
('A`)「まぁな。どうしても落ち着かないんだ」
( ^ω^)「ドクオが自分から部屋を出るなんて……」

そういえばつい最近似たようなことがあった気がする。
そう思い記憶を遡ると答えはすぐに見つかった。

( ^ω^)「……まさか、今朝の?」
('A`)「あぁ、やっぱりアレは俺の勘違いじゃなかったんだ」

勘違いも何もそれは今朝証明したばかりじゃないかと口を挟もうとしたが、ドクオがここまで
するのならもしや何かあるのかも知れないとブーンは口を噤んだ。
81 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:58:10.29 ID:8N3abdHZ0
('A`)「いいか、俺が目を瞑ったらビンタするなり頭を叩くなり何でもしてくれ」
(;^ω^)「……また今朝みたいになるのがオチだお」
('A`)「まぁ、やってみろって」

そう言ってドクオは目を瞑ったのだが、ブーンはドクオに怪我をされても困るので軽く埃を
払う程度にドクオの頬を叩いた。これでも顔面に食らう分には多少の痛みはあるはずなのだが、
ドクオはと言うと我慢しているのか何なのか全くのノーリアクションだった。

('A`)「あん? もう終わりか? つーか今の絶対力入れなかっただろ」
(;^ω^)「いや、だって力入れたらドクオが……」
('A`)「いいからやってみろっつーの」
(;^ω^)「……もうどうなっても知らないお」

このままではいつまでも帰れないと、ブーンは覚悟を決めてドクオの頭を思いっきり殴った。
返って来た衝撃で拳が痛いところを考えると、間違いなくドクオは相当なものを食らった筈だ。
しかし当のドクオと言えば、未だ目を瞑ったまま微動だにしない。もしかして、これが今朝
言っていた『無敵』なのだろうか。それならばと、ブーンはドクオの顔に近づき鼻に指を入れ
勢い良く鼻毛を抜いた。これで身動き一つとらずに居られる奴は居まい、とブーンはニヤニヤ
したがどういうわけかドクオは顔色一つ変えずにただ目を瞑っているばかりだった。
82 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:59:02.04 ID:8N3abdHZ0
('A`)「ん〜? もしかして鼻になんか詰めたのか?」
(;^ω^)「詰めてはいないけど……ドクオ、しばらく見ない間に随分我慢強くなって……」
('A`;)「違うっつうの」

そう言ってドクオはゆっくりと目を開けた。その顔は自信に満ち溢れている。

('A`)「な? 無敵だろ?」
(;^ω^)「確かに鼻毛抜いてノーリアクションは常人のできる芸当じゃないお」
('A`)「鼻毛なんて抜いてたのかよ……っと、あぶねぇ」
( ^ω^)「危ない?」
('A`)「いやな、あんまり意識すると痛みがくるんだ」
( ^ω^)「どういうことだお? と、言うか本当に痛くなかったのかお?」
('A`)「あぁ、なんか触ってるな、って程度だったな。仕組みは俺も見当が付かないんだが」
( ^ω^)「じゃあなんで眼を瞑ったんだお?」
('A`)「その方が簡単なんだよ。これは全部嘘だ、って思うのに」
(;^ω^)「……ますますわからんお」
('A`)「簡単に言うとな、俺が信じなかった痛みは何故か全部感じないんだよ」
( ^ω^)「じゃあもうドクオは一生痛みを感じずに生きられるってことかお」
('A`)「いや、例えば今ここでお前に殴られたら滅茶苦茶痛いと思う」
(;^ω^)「信じなきゃ痛くないんじゃないのかお」
('A`)「いや、信じざるを得ないだろ。見てるとさ」
(;^ω^)「……ドクオ、僕がちゃんといい病院を探してあげるから――」
('A`;)「また振り出しかよ……」
83書初め(女優になるんだ):2006/12/14(木) 00:59:42.96 ID:ayQKIuhO0
支援
84 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:00:18.13 ID:8N3abdHZ0
ブーンにはツンなんかよりも余程ドクオの方が脳味噌を輪切りにする必要があるように思えた。
実際に見たとはいえ確証のあるものではなかったし、偏った食事に不規則な生活を送っている
ドクオなら、どこか神経がやられてしまってもおかしくはないという思いがあり、ドクオの言うこと
すべてを鵜呑みにすることは出来なかった。そこでタイミングよく何かのサイレンが聞こえてきた
ものだから、ブーンは反射的にふざけたことを言った。

( ^ω^)「ほら、早速お迎えが来たお」
('A`)「はえーっつーの」

そんな掛け合いをして二人が笑いあったのをシメの合図にドクオは『もう帰るか』と言い
それに頷いたブーンを見て、後ろを向いて歩き始めた。
ブーンはそんなドクオの後ろにこっそりと近づき、ばれないように髪の毛を適当に親指と
人差し指で掴むと、一気にそれを引き抜いた。髪の毛を引き抜かれたときの痛みは
ブーンもよく理解している。指の間からはみ出ている髪の毛を見る限り十本以上
抜けたに違いない。ドクオが何か文句を言ってきた時に、本当に無敵と言うならば
これくらいの不意打ちは何ともないだろう、と言ってやろうと考えイタズラ半分でやってみたが、
果たしてリアクションはどんなものになるのかとブーンは瞬間唾を飲んだ。

('A`;)「おい、引っ張るなって。首痛めるっての」
(;^ω^)「ド、ドクオ……何ともないのかお?」
('A`)「何がだよ。用がないなら帰るぞ」

とりあえずドクオが我慢強くなったわけでは無いと言うことは理解できた。
ドクオは本当に何か痛覚だけが麻痺する病気にでもなってしまったのではないかと考えると、
ブーンはそれ以上ドクオに喋りかけることが出来なかった。
ただ遠ざかるその後頭部を眺めながら、一足早い満月が出ているなぁ、と呟いて小さく笑った。
85 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:00:58.67 ID:8N3abdHZ0
 家に帰ると、ブーンはすぐに部屋に入りPCの電源を点けた。特に意味のある行動ではなく、
習慣的なものだ。部屋に入り電気とPCの電源を点けて一息ついた後に、これから何をするか
考えるのだ。ガリガリと雑音を撒き散らしながらPCが立ち上がっていく中、ブーンはベッドに
体を預け土日の予定なんかを考えていた。元々インドア派なので誰かを誘って何処かに出かける
ということもなく、いつも家でダラダラとしている間に月曜が来てしまっているというのがお決まりの
パターンなのだが、最初から意味の無い土日なんて過ごしたくは無い。

( ^ω^)「ふう……とりあえず宿題は明日やるとして……」

そう考えている内にブーンはそのままゆっくりと眠りに落ちてしまった。
86 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:02:04.22 ID:8N3abdHZ0
 ブーンがやけに暑い部屋で目を覚ましたのは既に夜明けのことだった。一瞬タイムスリップ
したような感覚に囚われたブーンだが、ファンを回し続けるPCに気付くと、自分が寝てしまって
いたんだなと記憶を整理した。すぐに電源を落とし気持ちの悪い口腔を何とかするために
洗面所に行って歯を磨いた。体が重く感じられどうにも寝た気がしなく、ブーンはしばらく
居間のソファーで横になりながらボーっと時計の針が進むのを見ていた。

 時計の針が六時を指したころ、ポケットに入れっぱなしの携帯に気付いて取り出し、画面を
確認すると夜の11時半に誰かからメールが来ているようだった。
どうやら差出人はツンのようだったが、久しぶりに届いたツンからのそのメールにブーンは
どこか違和感を覚えた。中身を確認すると内容は酷く簡潔で、『今暇?』というたった三文字に、
申し訳程度に添えてある微妙な表情の絵文字のみ。夜の11時半に暇も何も無いのでは
と思いながらもブーンは返事を打ち始めた。

 『ごめん、寝てたお。ツンからメールなんて珍しいけど何かあったのかお?』

無難な返事だな、と思いながらブーンは送信ボタンを押した。そこで一つ大きく伸びをして、
目を覚ます為にとシャワーを浴びに行った。

 風呂場でマジマジと自分の顔を見つめると、ブーンは髭が伸びていることに気が付いた。
元々それほど伸びるスピードが速くなく、週に1、2度剃れば十分だったため、あまり気にして
見ることが無かった。この長さならば剃ってしまおうと、石鹸を泡立てて髭の上に乗せると
鼻の下を伸ばして剃刀を宛てがい、優しく滑らせた。
87猪(vipper):2006/12/14(木) 01:02:48.41 ID:N6FUDLC4O
wktk支援
88 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:03:05.67 ID:8N3abdHZ0
(;^ω^)「うぃっ! いぁっ!」

予想だにしない痛みに奇天烈な声を出したブーンは慌てて剃刀を置いて鏡を凝視した。
一瞬肌が切れたかとも思ったのだが、手に伝わってきた感触は切れたというよりは剃刀が
うまく切れず髭に引っかかった感じだった。しばらく見ていたが血が出てくる様子も無く、
どうやら予想通り髭が引っ張られて痛かっただけのようだった。剃刀の切れ味が落ちたのかと
手に持っていたのを捨て新しいのを出そうと風呂場のドアを開けて急に昨日のドクオとの
やりとりや、これまでの自分自身の不可解な出来事が頭を過ぎった。

(;^ω^)「まさか……これも……」

今までことごとく手にした刃物の切れ味が悪かった記憶に、ブーンは小さく身震いをした。
これは最早偶然では無く、今自分の体には何らかの異変が起きている。今まで髭が
剃れなかった事なんて無い。それでもブーンは未だ何かの勘違いなのだろうと信じ、慌てて
新しい剃刀を出して髭を剃ってみる。しかしながら結果は同じだった。
その瞬間目に見て分かる程に鳥肌が立った。
それはまるで何か重病を医者に宣告されたような気分だった。
一体自分の身に何が起きているというのだろうか。自分の体がどうにかなるならまだしも
自分が触れている物がどうにかなる病気なんておかしい。頭がおかしくなったのだろうかと
ブーンは一度今までの記憶を検証し始める。しかしそれでも自分がおかしくなってしまった
ような兆候は見つからない。けれども自分がおかしくなってしまったら、そもそもその時は
自覚など出来るのだろうか。ブーンは段々と自分の不確かさに寒気と目眩を覚え始めた。
89 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:04:58.19 ID:8N3abdHZ0
 シャワーもそこそこに淋しい気持ちを何とかしようと急いで体を拭き着替えると、携帯を
手に取りドクオに電話を掛けた。コール音が鳴っている間、ブーンはなんと説明しようか
考えていた。昨日のドクオはこんな気分だったのだろうかと今更ながら少し後悔もしていた。
どうして自分は今まで気楽に考えて放って置いたのだろうか。自分の脳天気さにも段々と
腹が立ってくる。けれどもいくらイライラを募らせてもドクオが出ることも無ければ、不安が
消えることも無かった。

(;^ω^)「くそっ、やっぱドクオは起きてないお」

ブーンは諦めて電話を切り、すぐに今度はショボンに電話を掛けた。しかしショボンも
一向に出る気配が無い。早々とショボンを諦め、次はジョルジュに掛けようと電話帳の索引から
ジョルジュを探していると、唐突に携帯が震えだした。上の方に手紙のアイコンが表示されたので、
どうやらメールが届いたらしい。ブーンは一旦作業を中断し、メールを開いた。
差出人はツンだった。そう言えばさっきメールを返していたと気付いて中身を読み始める。

 『返事遅すぎ! もういい!』

前半には怒りマークを、後半にはさらに追加して3つも寄越してくれたツンにブーンは腹が立って
返事を送らずに携帯を投げ捨てた。何を今更そんなに焦っているのか、自分自身の感情の
不安定さに説明が付かずブーンは苛立っていた。今まで散々不可解な現象には立ち会って
きたのに、それが一つ増えたからといって何なのだろうかと。
一度ため息を吐いて、投げ捨てた携帯を拾うと自分の部屋へと戻った。
90猪(禁酒中):2006/12/14(木) 01:04:58.46 ID:qr2JGmhXO
しえん
91 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:06:21.76 ID:8N3abdHZ0
 イライラは次のイライラを生み出す。乱雑な机の上に携帯を放ると、積み重なっていたプリント
と一緒に携帯が床に落ちてしまった。

(#^ω^)「…………」

怒りのままに携帯を拾い上げベッドに渾身の力で叩きつけると、続いて散らばったプリントを
乱暴に掴み縦に裂くとそれらを丸めて床にもう一度投げつけた。が、投げつけると同時に
それが何のプリントだったのか心配になって、ブーンは結局拾い集めて破片を広げ始めた。
惨めな気持ちで口の中がしょっぱくなった。

(;^ω^)「もし大事なプリントだったら……お?」

広げてみると、どうやらついこの間兄者から貰ったプリントのようだった。しわくちゃになったそれらを
ベッドの上に広げ初めてブーンは、はたと気付いた。自分の不安の出所がここにあったのだと。
急に心臓の鼓動が早くなり、ブーンは俄に気分が昂揚してくるのを感じていた。不安のドキドキ
ではなく期待にドキドキしている自分が居たのだ。歪んでいるなぁと思いながらプリントに目を
通していく。
一度読んでいる所為か、ざっと読んだだけで理解が出来た。そしてブーンは確信した。
兄者が正しかったのだと。あの時は怯えてしまったが今は違う。自分は皆にはない物を
持っているのだと言う優越感がブーンを不安から解放した。それに、これからさらに仲間が
増えたとしてもツンやドクオ達なら怖くは無いと、そうも思った。

(*^ω^)「なんだかそうなってくると、逆にこれからが楽しみになってきたお」

気分はまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだった。一体皆はどんなおもちゃを
買ってもらうのだろうか。僕のおもちゃはどう遊べば楽しいのだろうかと考えは尽きなかった。

( ^ω^)「確かツンは起きてたはずだお。……皆に知らせるんだお」

( ^ω^)「僕たちは、新しい力を手に入れ始めているんだお……」
92かき初め(二回目):2006/12/14(木) 01:06:49.37 ID:gk8KKInD0
支援
93 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:07:23.90 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「で、わざわざ人をこんな朝っぱらから呼び出しといてそれだけ?」
(;^ω^)「そ、それだけって……」

あの後ブーンはすぐにツンへ電話をして、無理矢理公園に呼び出した。興奮のままにこれまでと
これからの事の運びを自らの推測を交えてツンに話したのだが、リアクションといえばこの通りである。

ξ#゚听)ξ「あー! もう、バカみたい! 少しは心配してくれてると思ってたのに……」
(;^ω^)「いや、ツン、だから、心配とかそういうのはもうどうでもよくなって……」
ξ#゚听)ξ「どうでもいいってなによ! 他人事だと思って適当なこと言わないでよ!」
(;^ω^)「あ……う……」

ブーンはツンの怒りがもっともであることも勿論分かっていたが、それでも今この状況に
少しも心を揺らされないツンにブーンは歯がゆさを感じていた。

(;^ω^)「げ、現にドクオも超能力みたいなものを身につけたんだお」
ξ#゚听)ξ「例えそうだとしても、それじゃあ私のこれが病気じゃないって確証はどこにあるのよ」
(;^ω^)「それは……」

痛いところを突かれてブーンは二の句が継げなくなった。今、刻一刻と自分の話の説得力が
無くなっていくのを感じるのに、焦れば焦るほど言葉が出ない。

ξ゚听)ξ「それだけなら帰るけど、もういい?」
(;^ω^)「あ……その、ツン。えーと、昨日のメールなんだったんだお」
ξ゚听)ξ「別に。じゃあ帰るわ」

苦し紛れに話題を変えてみたが全く効果が無かった。背中を向け歩き出すツンに手を伸ばしたが
その手は宙を掴むばかりでツンを引き止めることは出来なかった。
94 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:08:24.38 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「……男の夢を理解できん奴め」

捨て言葉を吐き出して自己を正当化しつつブーンはドクオにメールを打った。

『起きたら連絡欲しいお。大発見したお』

送信ボタンを押すとパタンと携帯を閉じて、ブーンは複雑な気持ちを抱いたまま携帯を見つめていた。
と、いきなり携帯が震えだした。何かと思い開くとドクオからメールが届いていた。

      『まだ寝てないぞ。どうした?』
(;^ω^)「そんなに電話が嫌なのかお……」

嫌いなのは知っていたが、まさか無視するまでとは思っていなかった。そう言えばこれまで
電話をかけた時は大体寝ていたと言っていた気がするが、それはすべて都合の良い言い訳の
為の嘘だったのでは、とブーンは今更になって考え直した。

(;^ω^)「たく……昨日の晩は自分から掛けてきたくせに見た目と言い中身と言い、我利我利とは
      まさにドクオの事だお」
      『昨日のことについて色々話があるお』

ドクオなら食いつきが良いだろうと敢えて回りくどく返事をした。予想通り送ってほんの数秒で
返事がきた。しかし、内容は予想外だった。

      『昨日といえば知ってるか? ショボンの家火事だってよ』
( ^ω^)「は?」
95 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:09:23.97 ID:8N3abdHZ0
ブーンの口から思わず頓狂な声が漏れた。何をふざけたことを言っているのかと思って、
ブーンは直ぐに返事を送る。

      『昨日って……ドクオ、冗談にしては不謹慎だお』
      『こんなクソつまんねぇジョーク言うかよ。母さんが言ってたし多分マジだな』

メールを見るなり直ぐにブーンはショボンの家へと走った。信じ難いことではあったが、心の
どこかでは既に焼けたショボンの家を想像している自分が居て少し嫌気が差した。

 ショボンの家は、真っ黒になっていた。キャンプファイヤーの後の木で組んだやぐらが
確かこんな感じだった、とブーンは思い出した。鼻を突くような木の焦げた臭いと、微かに
空気中に飛散する塵でブーンは少し涙ぐむ。
ドラマで見たような黄色いビニールテープが張り巡らされ、そこだけが日常から浮いていた。
ブーンは慌ててドクオにメールを送る。

      『真っ黒だお……』
      『そうか。とりあえず俺ん家来いよ。そろそろ8時回るし寝そうだ』

一瞬携帯のカメラでドクオに写真を取っていこうかと思ったが、その姿を想像してあまりの
愚かさに気付き自己嫌悪に陥った。浮き足立っている自分が浅はかに思えてブーンは
ショボンに申し訳なくなる。今朝はツンも怒らせてしまったし、今日の自分は少し他人に
対する気遣いが出来ていないのかも知れないとブーンは沈んでいく。ドクオの家に行く間
ブーンは態度を改善しようと今朝のツンとの会話についてずっと脳内反省会を開いて、
結局さらに沈んでいった。
96 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:10:23.99 ID:8N3abdHZ0
('A`)「で、話ってなんだ?」
( ^ω^)「え? あ、あぁ……」

 てっきりショボンの家についての話が出ると思っていたので、ブーンは軽く困惑した。それでも
この話題を打ち切る気もしなかったのでいそいそとポケットからプリントを取り出しドクオに渡した。

( ^ω^)「昨日の夜ドクオが見せてくれたアレ、きっとこれなんだと思うお」
('A`)「……なんだこれ?」
( ^ω^)「少し前にウチの学校で起こったことらしいお」
('A`)「へぇ……」

マジマジとプリントを眺めるドクオ。その顔をじっと見つめながらブーンは次の言葉を待つ。
ドクオにも否定されたならば自分は一体どうしたら良いのかと、これからのくだらない心配
なんかをしながら。

('A`)「……だとしたらすげぇけどよ、でも本当にありえるのか? こんなこと」

揺れているような返答にブーンは微かな期待を見て、すかさずフォローを入れる。

( ^ω^)「自分であんなに見せびらかして何を言ってるんだお。自信持てお」
('A`)「いや、だってよ、俺のも実際よくよく考えてみればそういう病気なのかもしれないぜ?」
( ^ω^)「ドクオまでツンと同じことを言うのかお……皆頭が固すぎるお」
('A`)「ツン? ツンになんか言われたのか?」
( ^ω^)「こないだのツンの騒動はこれが原因だって言ったら怒られたんだお」
('A`)「知らねぇな……何があったんだ?」
( ^ω^)「? ……あ、そういえばドクオは寝てたかも知れないお」
97 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:11:16.53 ID:8N3abdHZ0
ブーンは掻い摘んでツンの身に起こったことを話し始めた。手からカッターが飛び出たこと、
何故か飛び出なかったこと、言いながらブーンは自分でも少し混乱してきて最後は誤魔化して
話を終えた。

('A`)「何だかよくわかんねぇな」
(;^ω^)「確かに」
('A`)「飛び出る時と飛び出ない時があるってことか?」
( ^ω^)「そう言えば最初はカッターがひとりでに動いてたのを見たお」
('A`)「はぁ? わけわかんねぇな」

そのドクオの言葉でまた2人は黙ってしまう。

('A`)「……でもよ、だからって別に俺たちがなんか超能力に目覚めたってことは言えなくないか?」
( ^ω^)「……実は、僕にもおかしなことが起きてるんだお」
('A`)「へぇ、どんな?」
( ^ω^)「ドクオ、ちょっとなんか切れるもの貸して欲しいお」
('A`)「いや、めんどくせぇ」
(;^ω^)「いいから探してくれお」

ガチャガチャと汚い部屋を引っ掻き回して、ドクオはどこからか片手に納まるくらいの小振りの
ナイフを取り出してきた。

('A`)「これなんかのおまけで付いてきたんだけど、中途半端な大きさで全然使えねぇの」
( ^ω^)「十分だお」

そう言ってブーンはドクオが地面に置いたプリントを手に取ると、思いっきりそのプリントを
切りつけた。プリントはやはりブーンの予想通り全く切れずに依然その状態を保っていた。
98 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:12:23.81 ID:8N3abdHZ0
('A`)「……あ〜悪ぃな。もっと別な切れるの探してくるわ」
(;^ω^)「い、いやだから切れないのが変なんだってことだお」
('A`)「いや、おまけだから仕方ないだろ」
(;^ω^)「だから!」

ブーンはプリントとナイフを床に置くと、ドクオに目で合図をした。乗り気じゃないような顔を
しながらもドクオはナイフを手に取り、プリントを切った。

('A`)「あぁ、切れるな。お前ヘタクソ。シンプル2000シリーズ、THE・ヘタクソ」
(#^ω^)「……貸せお」

ブーンはこれ見よがしに何度もナイフを紙の上で滑らせる。そして、それでも全く切れる
気配の無い紙を持ち上げるとドクオの顔面まで突き出した。

('A`;)「わかったわかった。でもよ、なんつーか……地味だな」
(;^ω^)「それには反論できないお」
('A`)「物を消したりできるってんなら間違いなくその場で超能力だって騒ぐけどよ……こりゃあ……」

そしてまた沈黙。どうやらドクオはドクオなりに言葉を探しているようであった。
99 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:13:21.69 ID:8N3abdHZ0
('A`)「……そう、ワクワクしないな」
(;^ω^)「で、でも例えば――」

なんとか対抗するためにブーンは必死に考えてみるが、そう言われると全く使い道が無いことに
気付く。そしてそれと同時にさっきまでのワクワク感もどこかへ消えてしまう。

( ´ω`)「……なんかどうでもよくなってきたお」
('A`)「あぁ、きっと俺たちにはわからない何かがあるんだろうし。こんな紙切れ一枚で早とちり
    してたら科学者激怒するぜ」
( ^ω^)「言えてるお。……じゃあそろそろ僕は」

別れを言いかけたブーンの言葉を遮るように携帯の着信音が鳴った。ブーンは常にマナー
モードにしているので、鳴っているのはドクオの携帯だ。何のメロディは何か分からなかったが
どうやらメールが届いたようだ。

( ^ω^)「じゃあドクオ、僕はもう」
('A`)「待った」

今度はドクオの言葉が別れの言葉を妨害した。

('A`)「……ブーン」
(;^ω^)「ったく……何だお」
('A`)「面白くなりそうだぞ」

そう言ったドクオの視線は、ブーンを通り越してどこか遠くを見ていた。
100 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:14:50.36 ID:8N3abdHZ0
 あれからしばらくの間ドクオはPCと睨めっこしながら何かを起動したり設定をいじったりしている
らしかった。暇を持て余すブーンは適当に転がっている漫画なんかを読んで退屈を凌いでいた。

(;^ω^)「ううっ……キンキンに冷えてやがる……」
('A`)「スマンな、温いコーラしか無くて」
( ^ω^)「ドクオ、そう思うならさっさとするお」
('A`)「ちょっと待ってろって……よし、見てみろ」

ドクオが横にずれ、ブーンの目にモニターが飛び込んできた。どうやらムービーが再生
されているようで、そこには誰かの部屋が映っていた。どこかで見たことがあるとブーンが
考えていると画面の右端に突然兄者が現れた。

( ^ω^)「あ、これ兄者の部屋だお」
( ´_ゝ`)『では行くぞ』

画面の中で横向きの兄者が右手を開いてゆっくりと前に差し出す。丁度掌がこちらに見えるように
している様はまるで誰かに握手を求めているようだった。そして唐突に、それこそ映画のコマが
ごっそり抜け落ちたかのように、兄者は大きな剣のような物を握っていた。
101 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:15:43.38 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「……お?」
( ´_ゝ`)『うむ、こういうわけだ』
      『さすがだな、兄者』

どこかから聞こえてきた声はおそらく口振りからして弟者だろう。

('A`)「オーケー、なるほど。確かにそいつは面白いな」
( ´_ゝ`)『うむ。未だに夢ではないかと思っているのだが、三度寝した結果がこれだ』

会話をしているということは、ムービーじゃなく今実際に回線が繋がっていると言うことになる。
ブーンはそんな設備が整っていたのかと驚くと共に、ドクオと兄者なら当然かと納得もした。

(;^ω^)「えと……どういうことだお?」
('A`)「ん? お前の勝ちって事だ」
( ´_ゝ`)『我々の身に何か科学では説明できないことが起こっているということだな』
(;^ω^)「ア、アウアウア……」

さっきまではコレを望んでいた気がするのだが、何故かブーンはすんなりとそれを受け入れ
られない。自分を遥かに上回るその力に、心の奥で暗い物が渦巻いていることを、まだ
気付いていなかったのだ。

( ´_ゝ`)『他に心当たりは無いのか?』
('A`)「ん〜……どうよ?」
( ^ω^)「お? ……ないお」
( ´_ゝ`)『そうか……と、言うことは今のところ俺とドクオとツンに何かしらの力が――』
('A`)「ん? ブーンを忘れてるぞ」
( ´_ゝ`)『内藤? 内藤も何かあったのか?』
( ^ω^)「あ〜……僕のは、あまり大したことは無いんだけど――」
102猪(vipper):2006/12/14(木) 01:15:53.65 ID:N6FUDLC4O
支援
103 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:16:34.76 ID:8N3abdHZ0
ブーンは少し照れくさそうに何度やったかわからない紙をナイフで切ると言う行為を兄者に見せた。

( ´_ゝ`)『ふむ……なるほど。一度ならず何度もとなると、どうやらそれも関係があるようだな』
('A`)「あのさ」
( ´_ゝ`)『どうした?』
('A`)「俺そろそろ眠いから寝て良いか?」
( ´_ゝ`)『OK、把握した。切断するぞ』
('A`)「わるいな」

('A`)「つーわけだ、じゃあなブーン」
(;^ω^)「じゃ、じゃあなって僕はこれからどうしたら……」
('A`)「どうもこうも家帰ってゲームでもしてりゃいいじゃん。俺は寝るぜ」

そう言ってもぞもぞと布団に潜ると、ドクオはあっという間に寝息を立て始める。そんなドクオを
しばらく見た後に、ブーンはこれからのことを考えつつ静かに部屋を後にした。

( ^ω^)「なーんかつまんないお」

舞い上がっているのは自分だけのような気がしてブーンは少しの戸惑いを感じていた。
ひとりだけフワフワと浮いているような感覚が纏わりついて離れない。

( ^ω^)「僕にも剣が出せれば……」

そう言って前に突き出した右手にあったのは、使い物にならない小さなナイフだけだった。
104黒豆(万粒):2006/12/14(木) 01:17:44.53 ID:PAJQt6SB0
これは……面白い
105 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:17:45.18 ID:8N3abdHZ0
 結局あれから何かが進むことも無く、ブーンはいつも通りの休日を過ごした。何度か兄者に
連絡を取ってみたものの、原因究明中と返ってくるばかりで話が進まない。ツンは病院に行って
何も異常が無いことが分かったし、ショボンもどうやら家族丸ごと含めて大した怪我はなかったと
連絡があった。それを考えればこの土日は悪くは無かったのだろうか。ブーンはそう思った。

ξ゚听)ξ「で、ショボンは学校には来れるの?」
( ^ω^)「問題ないらしいお。色々あったらしいけど、親に行った方がいいって言われたらしいお」
ξ゚听)ξ「でもきっとショックよね……」
( ´ω`)「お……」

いつもの登校が少し暗くなってしまったと、ブーンは慌てて空気を変えようとする。

( ^ω^)「で、でも無事でよかったお。ツンもなんでもなかったみたいだし」
ξ゚听)ξ「そうね。……よかった」

対話の相手を話の中心にすればとりあえずは間違いない。そんな考えでブーンはあれこれと
ツンの話を引き出しながら学校までの道のりを歩いた。

 ツンと一旦別れ教室に着くと、前の席でしぃとジョルジュがなにやら話しているのが目に入った。

( ^ω^)「おいすー」
(*゚ー゚)「あ、おはよー内藤君」
( ゚∀゚)「おいすー」
(*゚ー゚)「あれ? ツンは?」
( ^ω^)「はて、何のことだか。あ、そうだしぃちょっと……」
(*゚ー゚)「ん? なに?」
( ゚∀゚)「あ、お〜い兄者」

ブーンがしいと話し始めると、ジョルジュはその場を離れ兄者のところへと向かった。
それを横目で見つつブーンはポケットから小さいケースを取り出す。
106 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:18:42.73 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「これ、この前屋上で拾ったんだけどしぃの物かお?」

取り出したのは先週拾ったピルケース。確証は無かったがしぃの物だろうとブーンは思っていた。
差し出されたケースを一度見て視線をブーンの斜め後ろ辺りにキョロキョロと泳がせると、しぃは
にっこりと笑った。

(*゚ー゚)「あ、うん、そうだと思う。わざわざありがとう、内藤君」
( ^ω^)「いえいえ、紳士ゆえ」
(*゚ー゚)「はいはい、ワロスワロス」

わざと相手にしない風をオーバーに装ってピルケースを受け取ると、しぃは自分の席へと座った。
ブーンも何か気の利いた返事をしようかと思っているとき、教室の空気が変わった。
背中に感じる何かを見るために振り向くと、教室の入り口にショボンが居た。
しかし誰も挨拶をする様子が無い。
皆が皆の出方を窺っている感じで、視線があちらこちらに転がっていた。
そして、ブーン自身も咄嗟に視線を外してしまっていた。

(´・ω・`)「……」

無言のまま自分の席へと歩を進めるショボン。白々しく会話を続ける他の生徒や、何気なく
教室から出て行く生徒、机に突っ伏して寝たフリをする生徒。ブーンはこの雰囲気がたまらなく
嫌だった。
107 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:19:50.94 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「?」

返事も無くゆっくりとブーンの方を振り返るショボン。

(´゚ω゚`)「べる〜ん!」

(´・ω・`)「……」
(´゚ω゚`)「……」

(´・ω・`)「…………」
(´゚ω゚`)「…………」

(´・ω・`)「………………」
(´゚ω゚`;)「………………」

(´・ω・`)「……プッ、フフ。ブーン、すごい顔だよ」
(´゚ω゚`)「ハッハー! ウチのワイフはもっと酷い顔してるぜ!」
(´・ω・`)「はいはい、欧米か」

空白の時間があまりに長すぎて倒れる寸前だったが、ブーンはとにかくショボンを笑わせることに
成功した。どうやらそれが功を奏したらしく、次々に皆がショボンに挨拶をし始めた。
それを見ながらブーンは少し誇らしい気分になるのだった。
108 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:20:49.93 ID:8N3abdHZ0
(´・ω・`)「ねぇブーン、宿題のここだけど」
( ^ω^)「記憶にございません」
ξ゚听)ξ「あ〜それはね……」
( ^ω^)「ツ〜ン、僕のもやってくれお」
ξ゚听)ξ「ここがこうなって……で、こうして……」
(´・ω・`)「あ、なるほど」
( ^ω^)「……最近スルーの腕上げてますね」

(,,゚Д゚)「おーし、お前らHR始めるぞー」

いつも通り代わり映えの無いHRがダラダラと続いていく中、ブーンはこれからまた一週間が
始まるという何とも言えない気だるさに包まれながら、ぼんやりと教室の壁を眺めていた。

( ´_ゝ`)「先生、ちょっといいですか」
(,,゚Д゚)「ん? どうした?」
( ´_ゝ`)「今日は確か六時間目が空いてましたよね?」
(,,゚Д゚)「あぁ、そうだな」
( ´_ゝ`)「そこでこれまでの行事の写真を返却したいので、時間をくれませんか?」
(,,゚Д゚)「? まぁ、いいが……」

承諾が取れ、兄者が満足そうに背もたれに体を預けるとHRはそのまま静かに終わった。
109 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:21:46.13 ID:8N3abdHZ0
 今日も今日とてつまらない授業が流れていく中、ブーンはいつものようにどこでもなく宙を
ただぼんやりと眺めながら時間を過ごしていた。それでも頭の中は自分のこれからなんかを
色々と繰り返し思考している。けれどもその大半は大した意味も持たず、数秒でどこかへ
消え去ってしまう。
と、ポケットの携帯が急に震えだしたのを感じてブーンは慌てて取り出し、ボタンを押した。
授業中にメールなんて滅多に来ないので油断していたが、どうやら何事も無く授業は
進んでいるようだった。
開いてみると、差出人はしぃだった。

『内藤君は欲しい物ってある?』

何を態々授業中に送ってきているのだろうかとブーンは首を傾げる。それでも暇潰しには
いいだろうとブーンは返事を打ち始めた。

     『あなた以外に欲しい物などありませんよ、セニョリータ』
     『またそんなこと言って笑 じゃあさ、要らない物ってある?』
( ^ω^)(要らない物……?)
     『君を独り占めしたいと思ってしまうこの心苦しい感情かな』
     『はいはい笑 内藤君はいいねぇ、私も内藤君になりたいよ↓』
( ^ω^)(しぃにしては珍しく自己主張が出てるお……ここはマジレス……)
     『何かあったのかお? しぃがメールなんて珍しいお』

ここで少しメールが返ってくるのが遅れた。本当に何かあったのではとブーンは心配になる。
110 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:22:45.30 ID:8N3abdHZ0
     『ううん、なんでもないよ。きっと内藤君になれたら楽しいと思って』
     『僕になっても毎日退屈なだけだお。代われるものなら代わりたいお』

ブーンは心からそう思い、送った。こんな似非楽天家の人生なんて楽しいはずが無いと。

     『そっか、内藤君も退屈なんだね。ボクと一緒だね。ちょっと安心しちゃった』
     『一緒だお。毎日が楽しくなればいいってどれだけ思ったことか分からないお』
     『うんうん笑 わかるわかる。じゃあ内藤君は明日世界が変わっちゃうとしたらどうする?』
( ^ω^)(はは、すごい質問だお)
     『変わるってどんな感じに?』
     『今までとは逆の楽しい世界』
     『それは諸手を挙げて大歓迎だお』
     『そっか。そうだよね』

そうしてメールは終わった。ブーンにはしぃが何をしたかったのかがよく理解できなかったが、
きっと授業があまりに暇だから気まぐれを起したのだろうと考え、携帯を仕舞って寝ることにした。
111 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:23:55.11 ID:8N3abdHZ0
 ブーンが起きると既に昼休みになっていた。自分の鈍さに軽いショックを受けつつも、
弁当を持っていつもの放浪の旅に出かける。そしてやはり行き着く先は図書室だった。
と、ドアに手を掛ける寸前で、図書室のドアがひとりでに開いた。

( ´_ゝ`)「ん、内藤か」
( ^ω^)「お? 兄者も図書室でお昼かお?」
( ´_ゝ`)「いや、俺はもう帰るところだ」
( ^ω^)「そうかお」

そう言って図書室を後にする兄者を見送って、ブーンは図書室に入った。

( ^ω^)「ぱじゃまで、お・じゃ・まー」
川 ゚ -゚)「……」
( ^ω^)「クー?」
川 ゚ -゚)「ん? あぁ、内藤か」

本も読まずにボーっとしているなんてクーらしくないと思いながら、ブーンは向かいに座り
早々と弁当を広げ始める。

( ^ω^)「考え事かお?」
川 ゚ -゚)「まぁな」
( ^ω^)「そんな時は甘い物食べるといいお」
川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな」
( ^ω^)「……?」

ブーンにはまるですべてが空返事に聞こえて、まるで会話をしている気にならなかった。
112 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:24:37.86 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「そう言えば行事の写真が返ってくるって言ってたお」
川 ゚ -゚)「ああ」
( ^ω^)「どんな写真か楽しみになるお」
川 ゚ -゚)「そうか……私はそうでもないな」
( ^ω^)「そうかお?」
川 ゚ -゚)「どうせ私は写ってないだろうしな」
(;^ω^)「お……そう言えばクーは写真嫌いだったかお?」
川 ゚ -゚)「そんなところだ」

ブーンは群れないクーが写真に写ることはそうそう無いと言うことをすっかり忘れていた。
うっかり傷を抉ってしまったような後悔の念で自然と口が動かなくなった。
そんな戸惑うブーンを気にする風も無くクーが口を開いた。

川 ゚ -゚)「なあ、内藤」
( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「……例えば、そう、宝石好きな女の子が居たとする」
( ^ω^)「お」
川 ゚ -゚)「その娘は毎日宝石屋のショーウインドウを眺めながらそれを見につける夢を見るんだ。
     決して自分のお金じゃ買えないと知りつつそれでも毎日眺め続けるんだ」
( ^ω^)「……」
113猪(筋肉質):2006/12/14(木) 01:25:17.94 ID:8N3abdHZ0
ごめ

見につける→身につける
114 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:25:54.81 ID:8N3abdHZ0
川 ゚ -゚)「でも、いい加減手に入らないものを眺め続けることに苛立ちを感じ始める。宝石を
     着けている人たちに嫉妬し始めるんだ。そしてある日通りすがりの魔法使いに、こう
     言われるんだ。『私はあなたに宝石を与えることは出来ませんが、それを身につけて
     いる人たちを消すことが出来ます。ただし、その後あなたが宝石を手に入れることは
     なくなります』と。女の子はどうすると思う?」
( ^ω^)「でも、女の子は宝石が好きだから……」
川 ゚ -゚)「頼まない? 頼まなくても自分で宝石なんて手に入れる日は来ないと知りつつも?」
( ^ω^)「なんで手に入らないんだお?」
川 ゚ -゚)「恐らく手に入れるための努力をしないんだ」
( ^ω^)「好きなのに?」
川 ゚ -゚)「……既に歪んでしまっているのかも知れない。手に入らないから嫌いだと合理化して
     それを諦めているんだ」
( ^ω^)「それじゃあもう……答えは決まっているようなもんだお」
川 ゚ -゚)「そう……だよな」

クーにしてはメルヘンチックな事を聞く、とブーンは変に感心してしまった。そして所々生々しい
のもまたクーらしいと思った。ブルーマンデーの所為だな、と食べ終えた弁当のフタをして
小さくあくびをした。

川 ゚ -゚)「でも……」
( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「……いや、なんでもない。内藤、握手をしようか」
(;^ω^)「握手って、握手かお?」
川 ゚ -゚)「あぁ、そうだ」
(;^ω^)「なんか今日のクー変だお」
川 ゚ -゚)「私もそう思う」

そう言ってクーが差し出した手を、ブーンはゆっくりと握った。少し冷たいクーの手を握って、
ブーンは少しだけ緊張した。そう言えばクーに触れたのは初めてだったな、と。
115パティシエと初詣:2006/12/14(木) 01:26:01.19 ID:m04NmYUi0
http://pc8.2ch.net/test/read.cgi/dtm/1120608911/
晒し厨どもがVIPPERを馬鹿にしてるお(#^ω^)


357 名前:名無しサンプリング@48kHz[sage] 投稿日:2006/12/14(木) 00:15:05 ID:XVfySqJa
要するにアレか
VIP並みの低脳だらけってことか


358 名前:名無しサンプリング@48kHz[] 投稿日:2006/12/14(木) 00:58:36 ID:eLIS25oc
>>357
お前そういうこと書くとホントに来るからやめろよ


359 名前:名無しサンプリング@48kHz[sage] 投稿日:2006/12/14(木) 01:08:02 ID:XVfySqJa
>>358
VIPPERがか?どうせあいつらニートかフリーターだろ?
社会的なクズなんだから何言ったって構わねぇよ
業者と同じようなもんだろ?w

116 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:27:23.02 ID:8N3abdHZ0
 五時間目の授業は、気絶しているドクオと共にやってきた。

('、`*川「はい、授業始めるわよ〜」
('∀`)「……」
(;^ω^)「先生! せめて恍惚の表情を浮かべて床に寝転んでるドクオを何とかしてあげてください」
('、`*川「いいのよ、ただの寝坊だから」
(;^ω^)(南無……)

恐らく昼休みの間に拉致されてきたのだろう。それにしても実の弟を気絶させたまま引き摺って
くるなんて、姉弟とは言えやりすぎではないかと言う声も上がらないことはない。

(´・ω・`)「面白いからいいんだけどね」
( ^ω^)「ですよねー」
ξ;゚听)ξ「あんたらって結構黒いわよね」

結局授業の間ドクオが目を覚ますことは一度もなかったし、何度も踏まれてヨレヨレになっていく様
ばかりが気になって授業どころではなかった。

('、`*川「あ、しぃ。ちょっと準備室に来てくれる?」
(*゚ー゚)「え〜! また〜?」
('、`*川「いいじゃない。お茶菓子くらい出すわよ」
(*゚ー゚)「行く行く!」

そしてやはり2人はドクオを踏んで教室を出て行った。
それとほぼ同時にチャイムが鳴り教室はどっと騒がしくなる。
117 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:28:21.04 ID:8N3abdHZ0
ξ;゚听)ξ「あれだけ踏まれて起きないって……死んでるんじゃないの?」
( ^ω^)「南無ちんちん」
ξ゚听)ξ「とりあえず可愛そうだから席に運んでおきましょ」
( ::)ω^)「……あい」
( ゚∀゚)「しかし尻に敷かれっぱなしだな、ブーンは」
( ::)ω^)「あんな無駄に豊満なヒップに敷かれたら埋もれて圧迫死す――」
ξ゚听)ξ「…………」
( ::)ω^)「――るなんてことはなく、寧ろ小振りすぎて乗っているのかさえ分からないくらいで、えぇ」
(;゚∀゚)「お前も色々大変なんだな……」
( ::)ω^)「怖いことにもう慣れたお」

そう言って二人笑いあっていると、その笑い声でだろうかドクオが目を覚ました。

('A`;)「……なんか体中いてぇんだけど」
(;^ω^)「そりゃあアレだけ踏まれれば当たり前かと……」
('A`)「マジ姉貴今度会ったらタダじゃおかねぇ……」
118 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:29:25.16 ID:8N3abdHZ0
ドクオが陰口をたたく中、教室にチャイムが鳴り響いた。それを聞くと皆がそれぞれの席へと
当たり前のように戻っていく。
そして落ち着いたころを見計らって兄者が教壇の上に立った。

( ´_ゝ`)「ふう……いざとなるとどこか緊張するところがあるな」
(´<_` )「兄者、応援しているぞ」
(;^ω^)「弟者いつの間に紛れ込んだんだお」

そう言えばこの時間は兄者が写真を返すだとか言っていたなとブーンは授業に向け張っていた
気持ちを再び緩めた。しばらく待ってみても一向に始まらないところを見ると先生待ちなのだろうか、
とも思いつつのんびりと曖昧な時間を生徒達は楽しんでいた。

(´・ω・`)「もしもし? あぁ、シャキン? え? うんうん」
( ^ω^)「ツン、この前のテレビの話だけど」
( ゚∀゚)「大富豪やる奴集合ー」


それから20分くらい経っただろう頃、そんなやりたい放題の教室にしぃが戻ってきた。
しかしながらさして気にするでもなく各々がまた色々な遊びを始め出す。

(*゚ー゚)「ただいまー」
( ´_ゝ`)「しぃ、もう済んだのか?」
(*゚ー゚)「うん、やっぱりやるの?」
( ´_ゝ`)「あぁ、勿論だ」
(*゚ー゚)「ふふ、いいよ。ボクも結構楽しみだし」
( ゚∀゚)「写真まだー?」
(*゚ー゚)「じゃあ、行くよ」
119書初め(外に出たい):2006/12/14(木) 01:30:14.10 ID:ayQKIuhO0
支援
120 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:30:22.91 ID:8N3abdHZ0
そのしぃの一言と共に教室の色が変わった。雰囲気だけの問題ではなく、壁の色から空気から
1つ残らず空間丸ごとが淡いピンク色に侵されていた。脳髄まで蕩けそうな甘い桃色、桃源郷が
もし在るならばきっとそこから漂う桃の香りにはこの色が付いているだろう、そんな甘美な色。

(;^ω^)「な、ちょ、何だお!?」
( ´_ゝ`)「なるほど。どれ、試しに」

騒然となる教室の中で、冷静な顔をした兄者がその手から剣を取り出した。いつかブーンが
ドクオの家で見たその剣、吸い込まれる様な深い蝋色をしていて金属光沢はまるで無い。
僅かに反った太い刀身は巨大な四角いウロコを五枚程重ねたような独特のフォルムをしており、
無造作に赤く光る角張ったラインが幾重にも走っている。

(*゚∀゚)「うぉー! かっけぇ!」
(´<_` )「流石だな、兄者」

一層賑わいを増す教室の中で、ブーンは一人何か嫌な予感を感じていた。人の顔色を窺って、
自分を偽り、人を欺くことを毎日のように続けていれば、自然と人の心中を慮り見当をつける
力が養われてくるのだ。言うなれば小動物的な感性がブーンの中で今警鐘を鳴らしていた。

(;^ω^)「あ、あうあうあ……」
ξ;゚听)ξ「ねぇ、どうなってるの?」
(*゚∀゚)「なぁなぁ、それ一体――」

無言のまま白刃一閃、兄者の振り下ろした剣がジョルジュの脇に居た生徒を縦に裂いた。
そして一瞬の間を置いて吹き出た鮮血があたりに一面に飛び散る。

( ゚∀゚)「……は?」
(;´・ω・`)「……」
('A`;)「……」
ξ;゚听)ξ「……ゃ」
121 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:31:17.68 ID:8N3abdHZ0
そしてどこからともなく耳を劈くような女子の悲鳴。信じられない光景を前に、教室中が突沸した。
狂乱した者達が必死に逃げ出そうとドアに手を掛けるが、慌てている所為なのかそれとも
何かが引っかかっているのか、とにかくビクともしない。

『何やってんだよ! はやく開けろよ! てめぇブッ殺すぞ!』
『押すなよ! 開かねぇんだよ!』

そして一人また一人とドアの方へ雪崩れ込んで行く。人、人、人、普段ではありえない強襲する
人の波に体のいたるところを押され、ぶつけられ、息さえもする暇が無いほどにもみくちゃにされる。
上を、横を、下を、暴力が通り過ぎるのをただブーンは堪えた。
人の波は見る見る間に圧縮され、前後のドアに手がいっぱい生えた二つの黒い団子が出来た。
何とかそこから逃れられたブーンは辺りを見回す。今では毒々しく感じるそのピンク色の向こうに
微動だにしない兄者、弟者、そしてしぃがいた。

(;^ω^)「…………」

しかし、声など出るはずが無かった。圧倒的な暴力を見せ付けられた後で、例えそれが友達
だろうと気軽にコミュニケーションをとろうとなど思えるわけが無い。けれども目が離せない。
122 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:32:15.76 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「ふむ、抵抗を全く感じなかった。これは素晴らしいな」
(´<_` )「兄者、次は俺に……」
( ´_ゝ`)「あぁ、では弟者は後ろを頼む」
(´<_` )「把握した」

いつ取り出したのか、弟者の左手にはいつの間にか弓が握られていた。兄者の暴力的な
剣とは対照的に、細く撓るその和弓独特のフォルムをそのままに、握りから上弭(うわはず)、
下弭(しもはず)まで兄者と同様に角張った血管のような青白い光が縦横無尽に走っていた。
そして右手にしている弓懸(ゆがけ)は弓の色と揃いの濁った蝋色。
兄弟だから色も同じだとでも言うのだろうかとブーンが考えた刹那、弟者の右手に真黒な
矢がまるで空間をワープしてきたように、突如現れた。潔白な矢羽が更にその黒の深さを
際立たせている。
弟者はゆっくりとした動作で型を一つ一つ確認するように弓を絞っていき、限界までそれを
引き絞ると、無表情のまま矢を放った。
その瞬間までどれだけの時間があったかは分からないが、ブーンがその間微動だにする
ことが出来なかったのは事実である。そして、矢は後ろのドアに群がる誰かに刺さった。
飛び出ている長さからすると何人かは串刺しだろう。それでも彼らはその場から離れない。
逃げようと必死に開かないドアに僅かな希望を託しているのだ。
そんな彼らを一人一人、弟者は淡々とただ射続けた。

(;^ω^)「…………」

ブーンは何度も心の中では止めろと叫んでいた。それでもその言葉は口からは出てこない。
口から出して攻撃の対象が自分に向かうのが恐いのだ。自分の命の為にクラスメートの命を
今見捨て続けている。卑怯だとは感じつつも、それに安心してしまっている自分も居た。
123猪(背中が弱いの):2006/12/14(木) 01:32:49.81 ID:X+5WRv+F0
鬼のような投下速度だ
124 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:33:23.12 ID:8N3abdHZ0
(´<_` )「これは体の一部のように扱えるな。飛んで行った矢にも自分の意思が宿っているようだ」
( ´_ゝ`)「うむ、程よい重量と言うか、自分の腕のようだ。……さて」

一息ついて兄者がブーンの方へと体を向けた。

( ´_ゝ`)「内藤」
(;^ω^)「! ……なんだぉ」

緊張して言葉尻まで声量を保てなかった。ブーンは声を出して初めて気付いたが舌がペタペタと
口腔に張り付くほどに喉がカラカラで、軽く耳鳴りがしていた。

( ´_ゝ`)「今そこに群がっているクラスメートか内藤のどちらかを殺そうと思うんだがどうする?」
(;^ω^)「ど、どうするって……」

それを聞いたクラスメートの内半分程度が一気に後ろのドアへ流れる。そこに積み重なる死体の
絨毯を踏みつけ、バランスを崩しそうになりながらもドアに体を打ちつけなんとか脱出しようとする。
ドアを開けることを諦め、窓の方へと向かう者もいたが、意に反して軽々と開いた窓を天国への
入り口かと勘違いしてそのまま何人も地獄の底へと落ちていった。
ブーンも第三者ならばどちらも殺さなければいいだろうと言えたかも知れない。
しかし今は、只単純に体裁と命の危険を天秤にかけるしか出来なかった。
125 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:34:12.13 ID:8N3abdHZ0
ξ#゚听)ξ「殺すってあんた達さっきから何してんのよ!」

いきなりツンが叫んだ。
その度胸と気迫にブーンは驚くと共に、自分の決断が先延ばしされたことに安堵した。

( ´_ゝ`)「ふむ、本当は既に段取りは決まっていたんだが……気が変わった」
(´<_` )「兄者、でも――」
( ´_ゝ`)「弟者、俺の判断は内容も聞かずに間違いだと言いたいのか?」
(´<_` )「……いや、そんなことはない」
( ´_ゝ`)「そうだな。じゃあ弟者は他の奴らを頼む」
(´<_` )「OK」

話の決着が付いたのか、弟者は入り口に向かって弓を引き絞り始め兄者はブーンの方へ
向きなおした。そして柄を両手で握り直すと体勢を低くした。

( ´_ゝ`)「じゃあな、内藤」
(;^ω^)「ッ……!」

言って走り出した兄者の気迫にブーンは身を縮め両手で顔面を庇った。
腕の痛み頭の痛み、とにかく色々な痛みをこのコンマ数秒でシミュレートする。
この瞬間は長くなるほどに辛い。
本来一瞬であるはずの驚きが連続して何十何百と永遠に続くような感覚。
そして俄に静寂に包まれた教室で、ついに甲高い音がなった。
126 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:35:33.28 ID:8N3abdHZ0
が、ブーンの体に痛みは全く無い。程なくして誰かの声が続く。

川 ゚ -゚)「……話が違うぞ」
( ´_ゝ`)「ふむ、やはりなかなかお前は侮れないな」

何事かとブーンが目を開けると、そこには背を向けて立つクーが居た。彼女の前には奇妙な
模様の壁が立ちふさがっていた。どうやらその壁のお陰で兄者の剣はブーンまで届かなかった
ようだ。

( ´_ゝ`)「そういう使い方もあるのか。お前を誘ってよかった」
川 ゚ -゚)「利害の一致であって心を通わせたわけではないことを憶えておけ」

その一言で壁は崩れ、派手にガシャガシャと金属音を鳴らし続けた。床に堆く積もったそれは
一つ一つがナイフだった。あっという間にナイフの山は消えてしまい、ブーンが確認できたのは
それだけだった。
127 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:36:35.95 ID:8N3abdHZ0
(´<_` )「兄者、終わったぞ」
( ´_ゝ`)「……うむ、わかった。しぃ、後は頼んだ」
(*゚ー゚)「はいはい〜まかせといて」

その一言でブーンは既にクラスメートの大半が死んだことを知った。
そして流石兄弟はあれだけ皆が苦労したドアを易々と開けてどこかへ行ってしまう。

(;^ω^)「う、あ……クー」
川 ゚ -゚)「……」
(;^ω^)「……」

言葉を交わすことも目を合わせることも無く、クーも静かに教室から出て行ってしまった。

(*゚ー゚)「えーと、とりあえず邪魔臭いから色々と消すね」

突然教室にかかっていたピンクのフィルターが消え去ったかと思うと、そこはいつもの教室に
なっていた。血も臭いも無いいつも通りに教室に、しぃが笑って立っていた。

(*゚ー゚)「皆大丈夫かな? 特にドクオは入り口のところまで流されてたみたいだけど……
    見えるってことは生きてるね」

その言葉で入り口の方へ見ると、確かに蹲って耳を塞いでいるドクオがいた。しぃはそんな
ドクオに近づきポン、と肩を叩いて片手を引っ張ると耳打ちをした。

('A`)「……本当に終わったんだな?」
(*゚ー゚)「少なくともボクは手出ししないし、ここに居る人たちはそんな気も起きないでしょ」

スッと立ち上がるとドクオはゆっくりと方目を薄らと開く。
そして身構えながらも教室の後方、ブーンの元へと向かった。
128 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:37:22.28 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「ドクオ! 無事だったかお」
('A`)「あぁ、なんとか……な。切り傷はあるけど……痛くねぇ」
(*゚ー゚)「ドクオはそうらしいね、兄者から聞いたよ」
('A`)「は?」
(*゚ー゚)「色々と説明することがあるんだけど……とりあえず起してあげなよ」

しぃの目線が二箇所に流れる。片方は机の下で机の足を握ったまま気を失っているショボンで
もう片方は床に蹲ったまま動かないでいるジョルジュだった。

(´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)「……」

二人とも酷く顔色が優れなかった。ジョルジュに至ってはどうやら戻したらしく、しきりに
口の辺りを拭いていた。

ξ゚听)ξ「ねぇ、しぃ、一体何なのこれ」

皆がどんよりと沈む中ツンがはっきりとした口調でしぃに尋ねる。ブーンにはその姿が非常に
頼もしく見えた。

(*゚ー゚)「ふふ、ビックリしたでしょ? 私達はね、世界を変えるの」

ふとブーンは漫画を思い出した。そんなことを言うようなキャラが漫画には沢山いたなと。
それと共にしぃの言葉から重みが消えてブーンの心を縛り付けていた鎖も少し緩んだ。
129 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:38:19.36 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「世界を変えるって剣と弓矢でかお?」
(*゚ー゚)「う〜ん、確かに無理っぽいよね、それはボクも分かってる。だからボク達は協力したんだ」
( ^ω^)「……クーかお」
(*゚ー゚)「うん、そうだね。クーもとりあえずはボク達に協力してくれるはず。もう皆ウンザリ
     してるんだよ。嫌いなんだ、この世界がさ」
ξ゚听)ξ「嫌いって、何言ってるのよ。それ位我慢しなさいよ。私だって――」
(*゚ー゚)「いやぁ、ツンは全然分かってないよ」
ξ゚听)ξ「……何がよ」
(*゚ー゚)「ツンが傍から見て我慢できるどうこうじゃないの。本人が我慢できるかどうかの問題
     なんだよ。ツンはきっと自殺しようとしてる人に『生きてたら良い事がある』って言うタイプだね」
ξ゚听)ξ「生きてても良い事なんて無いって言いたいの? バカじゃないの」
(*゚ー゚)「まさか、良い事なんていくらでもあるし知ってるよ。ただ死ぬ側にとっての問題はそこ
     じゃないんだよ。これから先、一つでも悪いことがあるかどうか、なんだよ。もう苦しい
     思いをしたくないから死ぬのにさ、ズレてるんだよ、幸せな人は」
ξ゚听)ξ「何よ! そんなのいくらでも他にもっと不幸な人が居るじゃない!」
(*゚ー゚)「だからズレてるって。その人の不幸による影響を決めるのは一般の定義じゃなくて、
     その人自身なんだって。……ボクの話までズレちゃったね。話を戻すよ」

しぃはチョーク入れから一本チョークを取り出すと教卓に肘を突きながらチョークを眺め始めた。

(*゚ー゚)「ボク達は力を手に入れたんだよ」

その言葉にブーンが反応した。
130書初め(外に出たい):2006/12/14(木) 01:38:44.97 ID:ayQKIuhO0
支援
131 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:39:01.89 ID:8N3abdHZ0
(;^ω^)「まさか……」
(*゚ー゚)「内藤君は知ってるよね。この学校で起きたこと」
ξ゚听)ξ「何よブーン、なんかあったの?」
(;^ω^)「……」
(*゚ー゚)「簡単に話すと、皆が色んな超能力を手に入れて喧嘩しあったって話。すごいよね、
     時代は繰り返すってこのことだよね」
(;^ω^)「なんで……」
(*゚ー゚)「え? 何?」
(;^ω^)「なんでこんな事がするんだお……」
(*゚ー゚)「……ごめんね、内藤君。結局こういうものなんだよ。内藤君だって自分が一番でしょ?」
(;^ω^)「僕は……」

勿論ブーンは何も言い返せなかった。
あの時返事を渋った自分には何も発言する権利は無いのだ、と。

(;^ω^)「でも、何もして無い人を殺すのとは訳が違うお!」
(*゚ー゚)「だっていつか誰かが力を手に入れて後ろから刺されたら怖いじゃん。長い目で見た
     防衛だよ、これは」
ξ゚听)ξ「そんなの屁理屈よ!」
(*゚ー゚)「そうだね、これは流石に正論とは言わないよ。でもボク達は端からこの世界の正義の
     味方を目指してるわけじゃないんだ。これはボク達の正義だよ。ツンたちには悪でもね」
('A`)「何が悪だよ」

突然ドクオが口を開いた。
132 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:40:25.76 ID:8N3abdHZ0
('A`)「悪ってのは正義と同じように一本筋が通ってる奴が使うんだよ。お前らは外道だ、
    見損なったよ、しぃ」
(*゚ー゚)「安全になるとよく口が回るね、ドクオ。そんな陳腐なこと言ってさ。ボクは何でもいいよ、
     楽しければ」

そう言ってしぃは手に持っていたチョークをふわりと宙に浮かべた。
その言葉にドクオは口を半開きにしたまま黙り込んでしまう。

(*゚ー゚)「ボクは世界を思い通りに変えられるんだ。ただし範囲は僕の周りほんの少しだけどね。
     ただ、残念なことに直接人を殺すとかは出来ないんだ。いろいろ回りくどいことも試してみた
     けれど、なかなか神様が許してくれないみたいでさ」
(;^ω^)「で、でもさっき人が消えたお」
(*゚ー゚)「なんか死んだ人は大丈夫みたい。不思議だよね、まだまだ覚えたてだからよく分からないよ」

そこでジョルジュがいきなり教室の隅に走り、吐いた。すぐ隣で真二つにされたのを見たのだから
無理も無い。ツンが無言でジョルジュのところへ行き背中をさすり始めた。

(*゚ー゚)「臭うからそれも消しとくよ。さて、そろそろ本題に入ろうかな」

しぃが浮かべたチョークがゆっくりと教卓に着地すると、チョークはサラサラと粉になってしまった。
133初夢(ゴキとの思い出):2006/12/14(木) 01:40:53.61 ID:aofDPOYg0
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/voiceactor/1164719170/


/(^o^)\/(^o^)\/(^o^)\
134 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:41:35.20 ID:8N3abdHZ0
(*゚ー゚)「ボク達は協力してるんだ。これはさっき言ったね。だからそれぞれの関係が円滑に
     なるように互いに条件を出してそれを飲み込んだんだ。そしてボクの条件がこれ」

粉になったチョークをしぃがフゥーっと拭いた。すると宙に待ったチョークの粉が黒板にまるで
磁力ででも引きつけられているかのようにして飛んでいき、図を作り出した。
出来た図はこの学校の案内図で所々の部屋に×印が書かれている。×印の数は全部で4個。

(*゚ー゚)「ふふふ、マンガを読んでて思いついたんだ。ボクの条件はゲームをすること」
( ^ω^)「ゲーム?」
(*゚ー゚)「そう、ボクはこの力を手に入れたし、これから先他の人が色々かき回してくれるのを
     見るだけでも十分楽しかったりするんだ。だから今すぐ楽しめる物は無いかなって」
ξ゚听)ξ「あんた……本気なの?」
(*゚ー゚)「今更だよ、ツン。ボクはずっと暇だったんだ。色々試して凌いではいたけど、全然だったよ」
ξ゚听)ξ「……」
(*゚ー゚)「このゲームをクリアしたらそれ以上手出しはしないってのもちゃんと約束したから
     頑張ってよ」
('A`)「本当なのか?」
(*゚ー゚)「ドクオ、確認なんてとっても仕方ないと思うよ。とりあえず今殺されるよりはいいでしょ」

その一言で沈黙が訪れる。しかしそんな沈黙などまるで気にしないといった風にしぃが言葉を続ける。
135 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:43:00.94 ID:8N3abdHZ0
(*゚ー゚)「ルールは簡単。×印のところに鍵があるんだ。それを全部手に入れたら玄関にしてある
    それぞれの錠が全部外れて脱出成功。他の出入り口は全部開かないようになってる
    から出ようとしても無駄だよ」
('A`)「簡単じゃねえか」
(*゚ー゚)「うん。でもねぇ、この校舎には勿論兄者とかが居るから気をつけてね。見つかったら
     タダじゃすまないと思うから」
('A`)「は?」
(*゚ー゚)「だって只の宝探しじゃつまらないでしょ? 実は鍵には『兄者』とか名前が書いて
     あってね。自分の名前が書いてある鍵の錠が開けられたらその瞬間書かれてた人は
     即刻退場アンド罰ゲームってことにしたんだ。燃えるでしょ?」
(;^ω^)「……罰ゲームって」
(*゚ー゚)「それは秘密。でも内藤君たちには罰ゲームは無いから安心して良いよ。あ、あとねぇ、
     兄者たちが鍵とは違うフロアに移動すると本人に警告がされて、その10分以内に
     元のフロアに戻らないと鍵を開けられるのと同じ事が彼らに起こるようにしてあるんだ。
     鍵が移動された時なんてもっと酷いよ。今度は10分以内に鍵を元のフロアに戻さなきゃ
     駄目なんだ。どう? 結構サービスしてみたんだけど」
(;^ω^)「しぃ、僕達はそんなことを――」

ブーンが何かを言おうとしたところにチャイムの音が邪魔をした。
そこでブーンは急に現実を思い出す。
136 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:43:52.44 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「そ、そうだお! 学校にはまだまだ人がたくさん居るし、先生だってその内来るお!
      警察が来ることだって、だから――」
(*゚ー゚)「全員帰したよ」
( ^ω^)「は?」
(*゚ー゚)「校長先生に少し強めにお願いしたんだ。全員帰らせてねって。だって邪魔されたら
     つまらないじゃん。後はこの学校の周りをボクがちょ〜っといじって気付かれないように
     すれば完成って訳」
( ^ω^)「……なんでだお?」
(*゚ー゚)「え? だから邪魔されたらいろいろゲームに支障が出るじゃない」
( ^ω^)「……なんでここの皆を殺したんだお?」

静かにだが、ブーンは怒っていた。理不尽に殺されたクラスメートの無念さを考え、やりきれない
気持ちで胸がはちきれそうになっていたのだ。

(*゚ー゚)「……だって、皆危機感無いままやっても本気にならないじゃん」
( ^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「酷い……」

目の前に居るのはしぃなんかじゃなく、しぃによく似たロボットだとブーンは思った。あのしぃが
こんなことを軽々しく言うわけが無い、こんなことを平気で言えるわけが無い、と。
137 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:45:15.48 ID:8N3abdHZ0
(*゚ー゚)「うんうん、酷いよね。でもね、世の中こんなもんだよ。現実に起こりようが無いこと以外
     ありとあらゆること、すべてが起こっているんだよ。例えそれがどんなに酷いことでも」
( ^ω^)「だからって、しぃがそんなことしていいわけじゃないお……」
(*゚ー゚)「……話が長くなったね、質問はある?」

質問はあるかと聞かれ、皆互いに顔を見合わせながら思案をめぐらせた。
しかし、急に訊かれた為か誰も質問が思いつかない。

(*゚ー゚)「無いなら始めようか。ボクが出て行ってから30分時間をあげるよ。1分前までドアは
     開かないけれど、誰も攻めさせないようにするからじっくり話し合ってよ」
('A`;)「ま、待てよ」
(*゚ー゚)「何?」
('A`;)「武器も持って無い俺たちがあんな奴らとどう戦えって言うんだよ!」
(*゚ー゚)「力があるじゃん」
('A`)「力?」
(*゚ー゚)「全然知らないんだね。兄者ももうちょっとサービスしてあげればいいのに。じゃあボクが
     少しだけ教えてあげるよ。あのねぇ、ドクオは自分で認めない限り痛みを感じないし、
     ツンは攻撃するイメージを持つとその凶器に近寄れなくなるんだ。後は……ふふ、秘密」
('A`)「……なんでそんなことを知ってるんだよ」
(*゚ー゚)「それも秘密。それじゃあ頑張ってね」
('A`;)「お、おい!」

笑顔のまましぃはこちらに向かって手を振ると、そのまま教室から出て行った。
そして教室に訪れる沈黙。ついさっきまでいつも通り退屈な授業を受けていたはずなのに
急に死と直面しているなんて誰もが信じたくないことだった。現状を飲み込もうとするだけで
精一杯なのだ。これから先どうやって戦っていくかなんて考える余裕がまるで無い。
138 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:46:36.11 ID:8N3abdHZ0
('A`;)「と、とにかくなんか話し合おうぜ。このままじゃ時間が来ちまう」
ξ;゚听)ξ「話すって何をよ」
(;^ω^)「とりあえずみんなの現状を把握するお」
(´・ω・`;)「……ねぇ、一体何がどうなってるの?」
(;゚∀゚)「俺もさっぱりだ。誰か説明してくれよ」
('A`;)「とりあえず今分かることを全部整理しようぜ」

 先ずはそれぞれの力について整理した。しぃの言ったことが確かなら、ドクオは自分が
認めなければ痛みを感じないし、ツンは攻撃するイメージを持つとその凶器に近寄れなくなる
ということだった。残った三人に関しては、ブーンは刃物の切れ味が極端に悪くなることが
分かっていたが、ショボンとジョルジュは自分には何も変わった事が無いと言う。
最悪の場合何も持ち合わせていないと言うことも考えられた。
それに対して敵の力は錚々たる物だった。先ず兄者の剣に弟者の弓、クーが出す無数の
ナイフや、しぃのなんでも出来そうな反則技まである。これにはさすがに皆が阻喪した。

 次に×印の位置を確認した。それぞれが忘れないように携帯で写真を撮ったりメモを取ったり
しておいた。勿論これを後で確認できるかどうかは別問題として。
この時一緒にあることに気付く。しぃの説明を受けていた時は気付かなかったが、×印以外にも
いろいろなことが黒板には書き込まれていた。
例えば『ラッキーゾーン』という書き込み。特定の部屋の枠の中にラッキーゾーンと書かれており
そこから線を引いて『ここに入ると敵の攻撃を防げるよ(*゚ー゚)』と書いてあった。
勿論それが本当かどうかは分からない。けれども憶えておいて損は無いだろうとブーン達は考えた。
139かき初め(二回目):2006/12/14(木) 01:47:15.89 ID:gk8KKInD0
今宵最後の支援
明日までスレが残ってますように
140御雑煮:2006/12/14(木) 01:47:34.86 ID:lMQAe2eL0
いかん気になって寝られん
141 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:47:43.80 ID:8N3abdHZ0
('A`;)「なんか俺すげードキドキしてきた」
(´・ω・`;)「……」
(;^ω^)「……」
(;゚∀゚)「俺たちさ、死んじゃうのかな」

死ぬなんて自分以外の誰かが不幸に巻き込まれて起こることだと思っていた。自分にも
死が訪れるなんて考えたことも無かったし、想像も出来ない。

(;^ω^)「……死にたくないお」
('A`;)「俺だって」
(´;ω;`)「うっ……うぅ……」
(;゚∀゚)「……」
ξ#゚听)ξ「何よあんた達さっきから! そんなこと言ってたって始まらないでしょ!」

湿った空気にツンが喝を入れた。しかし、それでもジメジメとした雰囲気はまるで消えない。

(´;ω;`)「そんなこと、ひっく! ……言ったっ、てぇ、無理だよ……えぐっ、ひっく」
('A`;)「ツンは怖くねーのかよ」
ξ#゚听)ξ「怖いに決まってるでしょ! だから何とかしなきゃいけないのよ! ただ困って
        いるだけの方がもっと怖いのに何で気付かないのよ!」

その一言に皆が黙り、耐え切れずに漏れるショボンの嗚咽だけが教室に小さく響く。
142猪(甘党):2006/12/14(木) 01:48:03.92 ID:h6E22sbmO
寝れねぇwwww
支援
143猪(給食中):2006/12/14(木) 01:48:09.75 ID:80XT4NBa0
えーと、これなんていう黒の子ども会ですかww
とりあえずワクテカwwwwww
144猪(体操着):2006/12/14(木) 01:48:58.97 ID:U6oB+yAh0
寝なきゃいけないのにwwwww死ぬwwwwww
145 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:49:05.15 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「確かにツンの言うとおりだお……一刻も早く対策を練るべきだお」
( ゚∀゚)「……だよな。それに、きっと今に俺がすごい技身につけるからよ!」
('A`)「へ、お前は特にしょーも無いようなのを身につけそうだな」
(´・ω・`)「袋とじの透視、とか?」
ξ゚听)ξ「あんたそれ位ハサミで切りなさいよ」
(;゚∀゚)「ちょ、確定かよ!」

小さいながらとても暖かい空気が湧き上がってきた気分だった。
そうして和らいだ空気を皆が一度吸い込み、頭を切り替える。

('A`)「さて、だ。先ずは固まるかバラけるかだな。効率から言えばバラけた方が勿論いいだろうが……」
( ^ω^)「僕達の力を考えると個別じゃ間違いなくやられるお」
( ゚∀゚)「でもよ、固まったところで何が出来るんだ?」
(´・ω・`)「……」
ξ゚听)ξ「この際、その力ってのは無視した方がいいわね」
( ゚∀゚)「かもな。役に立ちそうなのはドクオのくらいなもんだしな」
146 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:49:51.92 ID:8N3abdHZ0
(´・ω・`)「あのさ、自分の名前が書かれてる鍵を開けられたら即刻退場って言ってたよね」
('A`)「あぁ、言ってたかもな」
(´・ω・`)「と言うことはスタートダッシュでどれか1つ鍵をいち早く開けちゃえば戦力は減るんじゃない?」
( ゚∀゚)「鍵を別フロアにどうのこうのってのはどうなんだ?」
('A`)「あいつら相手に10分逃げれると思うか?」
( ゚∀゚)「だよな……で、鍵を開けるとなると狙うのは誰だ?」
('A`)「恐らく兄者か弟者だな。特に弟者は飛び道具だから廊下で出くわすとヤバい」
( ゚∀゚)「クーは?」
ξ゚听)ξ「多分クーはあまり好戦的じゃないと思う」
( ^ω^)「確かに……クーは僕を助けてくれたお」
('A`)「でもよ、クーだって味方じゃないんだぞ? ……まぁ、最初に狙う相手じゃないって感じか」
( ゚∀゚)「あれ? でもどこに誰の鍵があるかなんてわかんなくね?」
( ^ω^)('A`)(´・ω・`)ξ゚听)ξ『あ……』
147 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:50:36.61 ID:8N3abdHZ0
('A`)「じゃあ鍵の位置で決めるしかないな……」
( ^ω^)「ここから近いところにあるのか、玄関に近いところにあるのかのどっちかがいいお」
ξ゚听)ξ「私は玄関に一番近いのがいいと思う。鍵を持ってる限り狙われるのは確実だから」
( ゚∀゚)「言えてるな。鍵を持ってる時間はなるべく短い方がいいな」
('A`)「となると……一階の家庭科室だな」
ξ゚听)ξ「それでも結構あるわね……」
( ^ω^)「ここに行くまでにも誰かと会いそうで怖いお……」
(´・ω・`)「それに一人倒したくらいじゃ終わらないし、ここから先の事も考えなくちゃ……」
( ゚∀゚)「玄関行ったら全員待ち伏せしてました、とかな」
('A`;)「……」
(;^ω^)「もうどうしたらいいのか分からなくなってきたお」
ξ゚听)ξ「しっかりしなさいよ!」
('A`;)「怖いものは怖ぇんだよ」
ξ#゚听)ξ「何言ってんのよ!」

大声を出したかと思うと、ふっと力を抜いてツンは呟く。

ξ゚听)ξ「私なんて戦うことすら出来ないのよ……」
('A`;)「あ……いや、その……」

攻撃する意思無しに凶器を持って何の足しになるというのか、能力は少なからず地の力に
プラスの何かを与えていると言う認識をしていたドクオはそこで言葉を詰まらせる。
148 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:52:08.14 ID:8N3abdHZ0
(;゚∀゚)「た、盾とかさ、防御のためなら……」
(;^ω^)「ジョ、ジョルジュ」
ξ )ξ「別にいいわよ……」

改めて自分の無力さに気付いたツンは俯いて黙りこくってしまう。
そんなツンを黙って見つめていたショボンが、そっと肩に手を置いて語りかける。

(´・ω・`)「ツン、大丈夫だよ。皆が居るんだもん、きっとなんとかなるよ」
ξ゚听)ξ「……ふん、別に。さっきあんなに泣いてたショボンに慰められるなんてね」
(´・ω・`)「やめてよ、恥ずかしい」

2人笑いあう様子を見て、残りの男連中もホッと胸を撫で下ろした。

('A`)「腐っても兄貴だな」
( ゚∀゚)「末はホストかヒモ野郎か。1号はめでたくツンになったわけだ」
(´・ω・`)「それじゃあ、調度家も焼けたしツンのところに行こうかな」

一瞬空気が凍った。

ξ゚听)ξ「ショボン、笑えない」
(´・ω・`)「ごめん」
(;^ω^)「そんなこと言ってる場合じゃないお、もうそろそろ時間無いお」

時計を見るとしぃが立ち去ってから既に20分は経っていた。
もうすぐ始まってしまうのかと皆の顔に俄に焦りが見え始める。
149 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:52:44.52 ID:8N3abdHZ0
('A`;)「えーと、どうすることになったんだけ?」
(;^ω^)「とにかく家庭科室に行って鍵を開けて、その後は……ここに行くお」

ブーンが指差したのは玄関を挟んで家庭科室と反対側にある保健室だった。

('A`)「ラッキーゾーンってやつか? 信用できんだかな」
(´・ω・`)「それにここに入った後、どうやって出るかだよね。ドアの前で待ち伏せされたらお終いだよ」
( ^ω^)「それでも廊下に立っているよりはマシだお」
( ゚∀゚)「だな」
ξ゚听)ξ「じゃあ時間になったらまず家庭科室まで皆でダッシュって事?」
('A`)「時間も無いしとにかく今はそれだな。後は保健室で決めよう」
(´・ω・`)「うまくいくかな……」
('A`)「……さあな」

時計の針がチクタクと時を刻む度に心臓が締め上げられるような思いだった。皆そわそわとして
まるで落ち着きがなく、意味も無く辺りをウロウロしたり黙って床を見つめたり、各々が迫り来る
その時に押し潰されぬよう必死だった。
そして残り3分を切ったところで皆が無言で視線を交わしドアの前に集合した。
150 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:53:24.40 ID:8N3abdHZ0
('A`)「中央階段な」
( ゚∀゚)「オッケー」
(´・ω・`;)「心臓が……」
('A`)「とにかく最初に着いた奴がそのまま玄関に行って開錠な」
( ^ω^)「みんなちょっといいかお?」
ξ゚听)ξ「なによこんな時に」
(´・ω・`;)「そうだよ、もう時間が」
( ^ω^)「ツンにはそのまま保健室に向かってもらいたいんだお」
ξ゚听)ξ「……なんでよ」
( ^ω^)「時間が無いから言葉を選ばないけど、ツンが最初に着くとは思えないお」
('A`)「いいぜ、わかったこうしよう。とにかく皆家庭科室に雪崩れ込んで鍵を探す。見つけたら
   叫ぶ。そしたら中に居た奴が全部玄関に向かう。ツンは一緒に家庭科室を目指すけど
   途中一人だけ別れて保健室に。いいか?」
(´・ω・`)「よくわかんないけどいいよ」
( ゚∀゚)「こんな切羽詰ってる時に追加かよ」
( ^ω^)「それでいいかお? ツン」
ξ゚听)ξ「いいわ」

そして時間が残り1分を切り、皆が自然と無言になる。

('A`)「ドア、開けとくぞ」

ドクオがゆっくりとドアに手を掛け開けた。一瞬身構えたが、誰かが居るということは無かった。
151 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:54:05.62 ID:8N3abdHZ0
( ゚∀゚)「俺きっと今までで最高のタイム出るぜ」
(´・ω・`)「ぼくも」
( ^ω^)「……お」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「あー心臓いてぇ」

そう言うとドクオがチラリと腕時計を見た。

('A`)「カウント行くぜ」
(;^ω^)「っうぇ」
(;゚∀゚)「嘔吐くなって」
(´・ω・`;)「……」
ξ;゚听)ξ「……」
('A`)「10……9……8……」

カウントが進むたびに「待って」と言いたくなる気持ちを抑えながらブーンは必死に前を見た。
頭の中で廊下を走る自分がグルグルとしている。運動会の100m走の時と、この感覚は似ている。
152 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:54:57.03 ID:8N3abdHZ0
(;^ω^)「……(目眩がするお)」

ブーンの中で色々な思考が駆け巡っていた。

――途中で誰かと出会ったら僕はどうすればいいのか、でも皆が居れば何とかなるかもしれない、
自分が最初に攻撃されたら、もし死んだら

('A`)「5……4……」

――足がガクガクしてくる、叫びたい、心臓が口から出そうだ、あと3秒、考えられない、走る、
走る、走る、走れ、転んだら、置いていかれたら、考えない、もうすぐだ、助けて、待って

('A`)「3……2……」

あああああああああああああああああああああ――――

('A`)「1……っけぇぇぇぇぇぇ!」
(;゚∀゚)「ッ!」
(´・ω・`;)「……!」
(;^ω^)「……っ!」
ξ;゚听)ξ「!」
153猪(甘党):2006/12/14(木) 01:56:28.42 ID:h6E22sbmO
⊂二二( ^ω^)二二⊃
154 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:58:29.83 ID:8N3abdHZ0
申し訳ないですが、一旦ここで中断します。
続きはいつになるか未定ですが、土曜までには帰ってきます。
夜あたりに立てるので見かけたらまた開いてやってください。

では、支援してくれた方、読んでくれた方、深夜にもかかわらずありがとうございました。
155猪(甘党):2006/12/14(木) 01:59:19.52 ID:Q1o8kK2n0
ようやく寝られるぜ
156書初め(外に出たい):2006/12/14(木) 01:59:33.06 ID:ayQKIuhO0
乙!
157猪(過敏):2006/12/14(木) 01:59:56.94 ID:IPyihkS10
作者乙!どこまで進むのか気になって寝れなかったw
158猪(禁酒中):2006/12/14(木) 02:00:22.20 ID:P8gSv5ZVO
159なまはげ(悪い子はいねがー):2006/12/14(木) 02:00:54.51 ID:lMQAe2eL0
160猪(カビ):2006/12/14(木) 02:01:23.45 ID:TyJcz4bkO
まとめサイト依頼したほうがいいかな?
161猪(不倫中):2006/12/14(木) 02:02:44.58 ID:U6oB+yAh0
こ  れ  は  乙
162猪(進化系):2006/12/14(木) 02:03:10.84 ID:W0fLCCDxO
乙。これは面白い
163書初め(私は広東面):2006/12/14(木) 02:03:20.59 ID:zgKCTZaMO

すげえ投下速度だった
164猪(友達がvipper):2006/12/14(木) 02:03:45.60 ID:N6FUDLC4O
いちおつ。大分wktkさせて頂いた
165猪(友達がvipper):2006/12/14(木) 02:04:48.81 ID:N6FUDLC4O
これはまとめてもらうべき
166猪(やせ):2006/12/14(木) 02:05:47.18 ID:tk6E9Eoz0
ちょうど追いついたところでオワタwwwwww
乙ンデレwwwww
167猪(緑):2006/12/14(木) 02:10:00.78 ID:80XT4NBa0
乙カレさま
168あいつと初詣:2006/12/14(木) 02:13:59.42 ID:e54e1y+20
やべぇ!楽しい!
169おみくじ(やぶれた):2006/12/14(木) 02:16:32.46 ID:Cy0/I9Rn0
乙。
まだ3分の1も読んでないw
全然追いつけねぇwwwwww
170猪(汗かき):2006/12/14(木) 02:19:02.12 ID:yRQIVTbGO
やっと追い付いた
作者乙

睡眠時間が…(´・ω・`)
171VIP皇帝:2006/12/14(木) 02:19:37.70 ID:XffY/2et0
投下速度に吃驚した。
今から読む。
172猪(禁欲中):2006/12/14(木) 02:20:22.11 ID:qn1Fnq/f0
おつ!

まとめてほしいなこれは
173黒豆(九粒):2006/12/14(木) 02:27:12.04 ID:utiBzWwl0
これは乙!
174猪(ボーカル):2006/12/14(木) 02:30:14.36 ID:Nvnmnd2xO
これは素晴らしくwktk
175猪(甘党):2006/12/14(木) 02:35:56.50 ID:7S3o8L1YO
これはおもしろい
176猪(泣き上戸):2006/12/14(木) 02:44:31.95 ID:xyT6ilwsO
やっと追い付きますた
乙!
177猪(ボーカル):2006/12/14(木) 02:48:54.14 ID:0x2P1xgfO
作者乙!!
178猪(しいたけ目):2006/12/14(木) 02:50:40.56 ID:1GFEIqffO
俺の睡眠時間2時間分かえせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!




乙〜
179お年玉(もらいたい):2006/12/14(木) 02:53:37.04 ID:zpn5Qh89O
追いついた。
乙です!
180猪(メイド服):2006/12/14(木) 03:18:16.79 ID:raIWjZEOO
読んだ1乙です
181猪(右利き):2006/12/14(木) 03:53:13.05 ID:Mqgb5two0
182猪(左利き):2006/12/14(木) 04:21:20.79 ID:Mqgb5two0
てーかマジで面白い
滅茶苦茶wktkしてる
183猪(酒乱):2006/12/14(木) 04:39:29.70 ID:i+oVfaG1O
そこいらの下手な小説より遥かに面白い。これはわくてかがとまらんね
184猪(ミニスカ):2006/12/14(木) 06:03:04.98 ID:dA6Qq9DOO
これはいい
185牡蠣:2006/12/14(木) 06:49:01.74 ID:eNypZFaO0
今起きた
ピアノの人かwwwww
186おせち(5,000円):2006/12/14(木) 06:57:28.92 ID:pg86BYxHO
これはGJ
187猪(48才):2006/12/14(木) 07:29:55.20 ID:PgLr7Zcl0
肉便器図鑑 携帯厨可
http://newsstation.info/up/img/ns16272.htm
188猪(乱視):2006/12/14(木) 08:07:42.62 ID:G8lmpKHzO
(´・ω・`)
189猪(メイド服):2006/12/14(木) 08:55:22.24 ID:k+bRkPezO
これはヤバいな……
190猪(ばくち打ち):2006/12/14(木) 10:22:33.59 ID:NzkLQFK0O
これは乙、否、禿乙
191猪(入浴中):2006/12/14(木) 11:19:53.61 ID:G8lmpKHzO
保守
192丸煮もち:2006/12/14(木) 11:45:42.96 ID:utiBzWwl0
a
193おせち(200円):2006/12/14(木) 12:18:39.92 ID:pz3KQoBmO
保守
194ハマグリ:2006/12/14(木) 13:00:35.44 ID:TC6DSR7V0
保守
195猪(ばくち打ち):2006/12/14(木) 14:13:33.15 ID:i+oVfaG1O
196猪(禁煙中):2006/12/14(木) 14:44:57.66 ID:KCW/v0+f0
hosyu
197猪(マヨラー):2006/12/14(木) 14:48:10.58 ID:2ZTTPxZl0
>>1の注意書きを見てワロタwwwwwwwwwwwwww
そんな神経質になるならVIPでやるなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
198おせち(12,000円):2006/12/14(木) 14:52:43.33 ID:ZV8qY4eyO
 少ししか読んでないが一つ。


 段落空白入れてみたり入れてなかったりするのはちょい読みにくい。空けるなら初めから空けて欲しいかな。
199初夢(二日酔い):2006/12/14(木) 15:25:52.22 ID:DC6la+V50
これは良いもの
200おせち(30,000ウォン):2006/12/14(木) 16:24:33.54 ID:N6FUDLC4O
保守
201:2006/12/14(木) 17:13:01.82 ID:8N3abdHZ0
>>185
ご存知頂いているとは光栄です。

>>197
ですよねー^^

>>198
実のところ本も碌に読んでない小僧なもんで、段落ってものもよくわかってないし
空白もなんとなくで入れてると言う暴挙。勉強になります。


今日の夜、少しの間また来ます。感想を下さった方々ありがとうございます。
固い口調は作品が終わるまで治らないので気にしないで下さい。
202愛のVIP戦士:2006/12/14(木) 18:00:01.31 ID:Ew6tdN7A0
203初夢(こんなにもてていいの?):2006/12/14(木) 18:12:17.06 ID:mKa3FFzgO
ξ゚听)ξ 保守
204初夢(ホスト修行中):2006/12/14(木) 18:17:56.18 ID:bDFONqMJ0
作者さん乙です。
まとめさせてもらいました。
不都合等ありましたらお知らせ下さい。
ttp://vip.main.jp/97-top.html
205猪(巨乳):2006/12/14(木) 18:57:53.83 ID:NyJ18z4UO
206愛のVIP戦士:2006/12/14(木) 19:22:36.92 ID:Ew6tdN7A0
207初夢(見るの忘れた):2006/12/14(木) 20:00:27.36 ID:3/JhowrC0

208トリマーと初詣:2006/12/14(木) 20:36:06.37 ID:7pHMQj1r0
209猪(貧乏):2006/12/14(木) 20:36:44.55 ID:Sg2I98yG0
これはやばい。wktkが止らない
210書初め(外に出たい):2006/12/14(木) 20:48:40.99 ID:Cy0/I9Rn0
今日中に続きが見れないと僕のチンコが爆発します
211黒豆(五粒):2006/12/14(木) 21:26:49.07 ID:EM4S0k69O
浮上
212:2006/12/14(木) 22:00:43.94 ID:8N3abdHZ0
>>204
まとめ、ありがとうございます。おまけにちゃんと訂正まで……。
いつぞやは邪険にしてすみませんでした。
またコレが終わった頃に改めてご挨拶に伺います。

と、言うわけで始めます。
推敲が納得のいかない部分もギリギリまで見たいので投下速度は幾分低下しますし、
恐らく分量もそこまで投下できないと思いますが、付き合っていただけたら幸いです。
213初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/14(木) 22:02:59.67 ID:zpn5Qh89O
wktk
マターリお願いします
214 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:04:01.52 ID:8N3abdHZ0
――誰かが叫んでいくかと思ったが、皆険しい顔で無言のまま飛び出した。
一瞬走る方向と逆を確認したけれども誰かが居る様子は無かった。それを理解してからは、
ただ走ることに集中する。風景が見えない、とにかく長い廊下の向こうを考えて走る。
階段を下りるときの曲がり方はどうしようか、降りた後家庭科室までの道はどんな感じだったか、
考えてはぐるぐると頭を回り続ける。
左前にドクオが見える。そんなに足速かったのか、意外だ。ほぼ隣にジョルジュ、見えないから
きっとショボンとツンは後ろ。確認する余裕は、無い。

 曲がり角に誰かが居たらどうしようか、足がもつれそうだ、今後ろに誰かが来ていたらどうしようか、
不安ばかりがブーンの頭に積み重なっていく。やがてドクオが曲がり角に差し掛かり、向こう側が
見えるようにやや大きめに曲がった。先陣を切っているそのプレッシャーはどんな物なのだろうかと
想像してブーンはゾクリとした。
そしてブーンも曲がり角に差し掛かる。ドクオが先に行っていた分いくらか不安は少なかったが
それでも息が詰まる程の緊張感を感じた。今のところ事は順調に運んでいた。このままいけば
本当にうまくいくかも知れない、そんな考えがブーンの脳裏をかすめる。
215 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:05:21.28 ID:8N3abdHZ0
 階段を1段1段下りるのは、非常にもどかしく感じられた。それに全速力で走っている所為か
息が苦しくなってきていた。手すりに掴まりながら残りの数段をジャンプして折り返す。
一階に着けば家庭科室はすぐそこだ。
ブーンは酸欠で締め上げられていく肺を誤魔化しつつひたすら走る。

 最後の4段をすっ飛ばしてブーンは一階に降り立つ。誰かが居る気配はまだ無い。
ここで一度玄関を通り過ぎる。そこに誰かが居たらどうしようかとブーンはさらに思考を進める。
そう言えばツンとはここで別れるのかと思い出したが、勿論後ろを振り返ることは無い。
通り過ぎる瞬間玄関をチラリと見たが、どうやら誰も居ないようだった。勿論隅から隅まで
確認したわけではないから安心は出来ないが、それでもこの情報はブーンのプレッシャーを
大分軽減した。
前を見るとドクオがバランスを崩しつつも家庭科室のドアを開けて中に滑り込んだ。
誰かが待ち伏せしているかも知れないと言うのに躊躇いもせず入るドクオを見て、再度
ブーンはドクオを尊敬する。
216 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:07:12.69 ID:8N3abdHZ0
そしてブーンもドアまで辿り着き、縁に手を掛け中へ入ろうかとした時、衝突するくらいの勢いで
ドクオが中から飛び出してきた。しかし、まるでぶつかる事を気にする様子も無くドクオは、
すれ違い様に呟いて走り出した。

('A`)「見つけた。戻れ」

大声なんかではなくブーンだけに聞こえるような小さな声で、声色は真剣そのものだった。

 その言葉を聞いて理解するまで家庭科室を眺めること2秒、ブーンは『見つけた』の主語を
理解し急いで踵を返す。大丈夫だ、玄関には誰も居なかったし誰の鍵かは分からないけど、
これでとりあえず一人減る。ブーンは安堵しつつも後ろから追ってきた2人にジェスチャーを
してドクオの応援に回した。
が、二人は玄関の方を見たまま動かない。
ブーンに嫌な予感が走った。それも心臓が豆1粒くらいに圧縮されそうなほどの。
人を不安にさせる、そんな表情を2人がしていたからだ。
絶対に見たくはないけれども見に行かずにいられなかった。
ブーンは乱れる呼吸を必死で抑えながら2人の元へ向かった。
そして玄関を見て背筋に寒いものが走った。

('A`;)「ハァッ! ……ハァ……! ハァッ……ッハァ……」
( ´_ゝ`)「そんなに慌ててどこへ行くんだ?」
(´<_` )「流石だな、兄者」
217 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:10:07.72 ID:8N3abdHZ0
 そこにはさっきまでは居なかったはずの流石兄弟が居た。
兄者が丁度錠の前に立ち剣を構え、その剣先から2メートル程離れたところに弟者が弓を構えて
立っている。引いてはいないものの弓をかわしたとしても、弟者をすり抜けるときに左右どちらかに
動かなければいけないので、兄者の剣をかわすことが極めて困難だった。

(;^ω^)「……」
('A`)「なぁ、兄者」
( ´_ゝ`)「なんだ?」
('A`)「2対1はよぉ、さすがにねぇと思うんだわ」

ドクオはまるで雑談をするかのような口調で話し始める。

(´<_` )「ドクオさん、寝ぼけてるんですか? これはゲームながら殺し合いですよ?」
('A`)「んなこたわかってる。ただそっちは見れば随分ゴツイ武器持ってるじゃねぇか、しかも
    俺たちは今日いきなり戦場に放り込まれたわけだ。こりゃねぇよ」
(´<_` )「だから――」
( ´_ゝ`)「弟者、いい。……ドクオ、1人外れろとでも言いたいのか?」
('A`)「いや、こっちにもう1人俺の場所まで安全に来させてくれ」
( ´_ゝ`)「誰だ?」
('A`)「……ブーン、来てくれるか?」
(;^ω^)「……」
('A`)「強制はしねぇ。逃げたきゃ逃げていいぜ。鍵を持ってるのは俺だから最悪追いかけられても
    来るのは一人だ。だけどよ……来てくれないか」

その声が震えていた。
218 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:12:18.61 ID:8N3abdHZ0
 この申し出を受け入れること、それは死を受け入れることに等しいとブーンは思った。
死を前にして体裁を気にして友情を優先する必要などあろうか。心が揺れているのは自分が
未だ温い覚悟で居るからなのだろうか。ブーンは葛藤する。
そして納得のいく結論が出ないまま言葉を口にした。

( ^ω^)「……わかったお」
('A`)「マジかよ……今俺すっげぇうれしいわ」

断ることなんて出来なかった。長く染み付いた顔色を窺う生活のせいか、それとも今後仲間との
連携に支障が出るからなのか、自分の判断の根拠は分からなかったが、ブーンはこのドクオの
言葉に胸が温かくなっていくのを感じた。

('A`)「ショボン、ジョルジュ、お前ら早く行け」
(´・ω・`;)「な、何言ってるんだよドクオ」
(;゚∀゚)「そうだぜ、そんなこと出来るかよ」
('A`)「大丈夫だ、逃げれるって。これで終わりじゃないんだ。早くしろ」
( ^ω^)「ドクオの言うとおりだお。二人とも早く行くお」
(;゚∀゚)「……絶対帰って来いよ」
(´・ω・`;)「ジョ、ジョルジュ!?」
( ゚∀゚)「ショボン、俺たちがここに居ても役に立たねえ。……行こう」
(´・ω・`;)「……ゴメン、ドクオ、ブーン」

なんとなくブーンは自分が正義の味方になったような誇らしい気持ちになった。
同時に今からでも2人と一緒に逃げ出したいという気持ちもあった。
219書初め(一人身脱却):2006/12/14(木) 22:12:19.24 ID:zp3VyWR+0
wktk
220 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:14:42.94 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「大した度胸だな」
('A`)「へっ、自分でも惚れそうだぜ」
(´<_` )「兄者、あいつらは……」
( ´_ゝ`)「放っておけ。ここに居る限り俺たちの勝ちだ」
(;^ω^)「……」

と、流石兄弟が話している隙にドクオがブーンにゆっくりと近づき小声で囁いた。

('A`)(ブーン、お前はとにかく兄者の剣を掴め。どこでも良い、掴め。その間に俺はこの鍵を開ける)
(;^ω^)(掴めって簡単に言うなお……)
('A`)(何とかしろ。俺が出てすぐ後、左から行け)

ドクオの考えはこうだった。とにかく突っ込んで鍵を開ける。恐らく不意を突かれた弟者は
兄者に任せようとする。勿論狙うと兄者に当たる危険性があると言うことも加味してである。
そして兄者の剣はブーンが封殺する。勿論ブーンにそんな技を期待しているわけではない。
自分が先に行って切られることで隙を作ろうと考えていたのだ。痛みを感じなければどうって
ことは無い。死ぬよりはマシだろうと。右手に鍵を持って右側から行けば、左腕が切られても
大丈夫だろうと。片腕を失う可能性は十分あるが、もう覚悟は出来ていた。

('A`;)「畜生、きっと今俺最高にかっこいいぜ」
(;^ω^)「……」
221初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/14(木) 22:15:00.99 ID:zpn5Qh89O
支援
222 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:16:53.25 ID:8N3abdHZ0
 それに対しブーンはかなり怯んでいた。剣に素手で近寄っていってそれを取り押さえるなんて、
どこぞの達人でも難しいんじゃないかと。それでも、自分のできることを考えるとそれしか
ないようにも思える。自分が使えるカードは刃物の切れ味を落とすと言うことだけ。
それならば兄者の剣を無効化する以外に方法は無いのかと考え、足が下がろうとするのを
必死で我慢する。

( ´_ゝ`)「さて、遺言でも聞こうか?」
('A`)「いや、特にねーわ」

そう言うや否や、ドクオが走り出した。それを見て一瞬戸惑ったがブーンも走り出す。
目指すは弟者の左脇をすり抜けた向こうにある兄者の剣。
走り出してからは、どうにでもなれとブーンは腹を括った。

('A`)「ヴッ!」

突然潰れた悲鳴がして、ドクオが視界から消えた。思わず声の方を見ると、どういうわけか
ドクオが地面に突っ伏している。転んだということを理解するまでに1秒かかった。
そして、その1秒に加えて前を向きなおすのに1秒、その2秒の間に兄者の剣はブーンの
目の前まで振り下ろされていた。鼻の奥がキュッと詰まったような感覚にブーンは目を瞑る。

(;-ω-)「――!」
223 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:19:32.68 ID:8N3abdHZ0
身をギュッと縮めて目を瞑る。その時に対する儚すぎる抵抗。
けれども訪れない。
時が永遠に伸びたかのようにその時が訪れないのだ。
この体験をブーンはつい最近一度していた。

川 ゚ -゚)「……内藤には手を出させない」

やはりクーだった。
そのすらりと伸びた背に掛かる後ろ髪の向こう、少し前に見たナイフの壁が兄者の剣を完全に
防いでいたのだ。

( ´_ゝ`)「……いい加減にしろ。内藤を殺さない限り俺たちはこのゲームを終えられない」
川 ゚ -゚)「それとこれとは別だ。その剣を下ろせ。あとその弓もだ。お前の矢より私のナイフは早い」
(´<_` )「……」

弟者が、引き絞っていた弓をゆっくりと緩める。それを合図に一旦この場のピリピリとした
戦いの空気が霧散していくのを感じた。それでもドクオが動けずに居たのは、勿論痛みの
所為などではなく、防がれた兄者の剣の先がその向きを自分の方へと変えていたからである。
224 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:21:10.62 ID:8N3abdHZ0
( ´_ゝ`)「どうするつもりだ」
川 ゚ -゚)「しぃと掛け合う」
( ´_ゝ`)「掛け合う? ゲームの中止をか」
川 ゚ -゚)「いや、多分それは無理だな。だから内藤をこちら側に引き込む」
( ´_ゝ`)「……何を言ってるんだ。そもそもこいつらを残してゲームをする提案をしぃがしたのに
      そんな馬鹿げた条件を呑むわけが無い」
川 ゚ -゚)「私は内藤には手を出すなと言ったはずなのにそれが実行されていない。それはおかしい」
( ´_ゝ`)「ふん、それならばいっそそっちにつけば良い。俺達2人ならお前を倒すことも出来る」
川 ゚ -゚)「……いや、それはダメだ」
( ´_ゝ`)「我が儘にも程があるな。欲しい物は2つも手に入らないんだ」
川 ゚ -゚)「兎に角、内藤を開放しろ。私はしぃに掛け合う」
(;^ω^)「ド、ドクオも助けてくれお!」
川 ゚ -゚)「……仕舞ってやれ」
( ´_ゝ`)「お前なんてこのまま待っていればいずれ居なくなって――」
川 ゚ -゚)「イライラしてくるな、黙れ。私は今すぐお前を殺せる」
( ´_ゝ`)「不愉快だ」

そう言って兄者が眉間にシワを寄せると、サラサラと砂粒のように剣が細かく崩れて行き、
風に乗ってどこかへと流れて消えてしまった。
225初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/14(木) 22:22:33.21 ID:zpn5Qh89O
支援
226 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:23:17.07 ID:8N3abdHZ0
(´<_`;)「あ、兄者……」
( ´_ゝ`)「お前も仕舞え。ドクオ、下がれ」
('A`;)「あ、あぁ……」

起き上がりゆっくりと下がるドクオを見て弟者も渋々弓矢を兄者のように仕舞う。

(;^ω^)「……クー」
川 ゚ -゚)「どっかに逃げてろ内藤。後で連絡する」
('A`;)「行こうぜ、ブーン」
(;^ω^)「……」

ドクオに引っ張られるままに複雑な思いでブーンはその場を後にする。
そしてブーン達が安全な距離まで離れたのを確認し、クーは再び兄者に向き合った。

川 ゚ -゚)「私もしぃの考えに対して協力するに吝かではない。ただ私には十分に議論する時間が
     無かったように思われる」
( ´_ゝ`)「……時間が欲しいと?」
川 ゚ -゚)「これ一度で良い。それまで内藤に手は出さないで欲しい」
(´<_` )「そんなに内藤さんが好きなんですか」
川 ゚ -゚)「……あいつだけだったからな」
( ´_ゝ`)「……お前でも下らない感傷に浸るんだな」
川 ゚ -゚)「あぁ、私だからだ。……こんなひ弱な私だからだ」

そう呟いてクーはそのまま西階段の方へと歩きだす。
その後姿を狙おうとする弟者を兄者が無言で制止した。
227 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:26:21.88 ID:8N3abdHZ0
(´<_` )「兄者……やっぱり俺達――」
( ´_ゝ`)「弟者」
(´<_` )「……」

煮え切らない顔をする弟者に、兄者はその目を見つめながらゆっくりと語り出す。

( ´_ゝ`)「これはチャンスなんだ。俺たち二人だけではどうにもならないが、しぃが居れば可能。
      トップに立つことが出来るんだ。……例え自力でなくとも俺は君臨してみたい」
(´<_` )「兄者、だが……俺はそれに魅力を感じない」
( ´_ゝ`)「何?」

兄者の頬がぴくりと動いた。その仕草を見て弟者はやや怯んだ様子で言葉を継ぐ。

(´<_` )「その……頂点に立つことが、一体何が楽しいか俺には……」
( ´_ゝ`)「ふむ……弟者、よく聞け。世界を手に入れることは俺の喜び。それも極上の喜びだ。
      そして、俺の喜びは……」
(´<_` )「……弟の俺の喜び」
( ´_ゝ`)「そうだ。それだけのことだ。お前は俺を信じていれば良い」

その言葉を聞き弟者は一度小さく頷くと、何かを納得したようだった。

(´<_` )「……OK、わかった、兄者」
228 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:30:51.92 ID:8N3abdHZ0
 西階段を上がり三階へ辿り着いたクーは、他の部屋には目も呉れずに音楽室へと向かう。
扉を開けたその向こうには、ニコニコと無垢な赤子のような笑顔のしぃが居た。

(*゚ー゚)「いらっしゃい、クー」
川 ゚ -゚)「……」
(*゚ー゚)「自分の鍵はほったらかしで良いのかな?」
川 ゚ -゚)「一度戻ったし10分も時間があれば余るほどだ」
(*゚ー゚)「自信満々だね。ここ、濃度濃いよ?」
川 ゚ -゚)「どこに居たって変わらない。とにかくこのつまらないゲームを止めろ」
(*゚ー゚)「あれ? そんな話をしに来たの?」
川 ゚ -゚)「……あぁ」

互いの腹の内を探るように、すっ、と沈黙が訪れた。
口を真一文字に結び譲らない姿勢を表すクーを見て、しぃは少しばかり背筋を伸ばし
いかにも真剣な話といった感じに口を開き始めた。

(*゚ー゚)「……クーはさぁ、内藤君好き?」
川 ゚ -゚)「好きだ。内藤をこれ以上巻き込みたくない。だからこのゲームを止めろ」
(*゚ー゚)「そっかぁ、実は私もなんだ〜。別にかっこいいとか付き合いたいとかじゃなくてさ、なんか
     楽しいんだよね、一緒に居て」
川 ゚ -゚)「だから、なんだ」

その言葉ににっこりとしぃが微笑んだ。

(*゚ー゚)「だからさぁ、ボクとしてはクーを応援してあげたい気持ちはあるんだ。クーも幸せになって
     内藤君も幸せになったら、きっとボクも幸せになれるでしょ?」
川 ゚ -゚)「……何が言いたい」
(*゚ー゚)「ふふ、取って置きの方法があるんだ。皆が幸せになる、さ……」
229 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:33:07.73 ID:8N3abdHZ0
(;^ω^)「はぁ……はぁ……」
('A`;)「寿命80年は縮んだぜ……」
(´・ω・`)「ドクオ、それもう致命傷だよ」
ξ゚听)ξ「それにしてもほんとよく無事で帰ってきたわね」
(;^ω^)「クーが居なかったら僕たち今頃チンジロオースだったお」

噛みすぎて訳のわからない単語にも誰も突っ込むことは無かった。
緩んだ空気の中にも緩みきれない何かが混ざっていた。

('A`)「かなりヤバかったよな」
( ^ω^)「あんな大事なとこで転ぶドクオはかなり終わってるお」
('A`;)「俺だって転びたくて転んだんじゃねぇよ! 転んだ瞬間死んだって思ったしなぁ」
( ゚∀゚)「ほら、ドクオ消毒してやるから肘出せ」
('A`)「ん、わりぃな」
230初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/14(木) 22:33:23.16 ID:zpn5Qh89O
支援
231 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:34:37.92 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「で、結局どうなったわけ?」
( ^ω^)「とにかくクーからの連絡待ちだお」
(´・ω・`)「その間に色々確認しておこうよ」
('A`)「ジョルジュ、それうがい薬じゃねぇの?」
( ゚∀゚)「え? ……まぁ、大丈夫だろ」
('A`;)「大丈夫って、おま」
ξ゚听)ξ「大丈夫よ。うがい薬も消毒には使えるもの」
('A`)「あん? そうなのか?」
ξ゚听)ξ「色ついちゃうけどね」
( ^ω^)「へぇ……ツンも結構女らしいとこあるお」
ξ゚听)ξ「……別にこれ位女とか関係無しに常識よ」
(´・ω・`)「ウチのおじいちゃんはよくお酒を口の中に含んでブーって吹きかけてくれてたよ」
('A`)「豪快だな……」
(´・ω・`)「でもいっつも傷口には一滴もかからないで全部ぼくの顔にかかるんだ」
( ゚∀゚)「ぶは! それは見てみてぇな」
( ^ω^)「ショボン、それ結構面白いお」
(´・ω・`)「いや、笑い事じゃないんだよー」

そんな明るい笑い声の中に静かなバイブレーションの音が混ざりこんできた。
232 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:36:45.41 ID:8N3abdHZ0
( ^ω^)「お、メールだお」
('A`)「なんだって?」
( ^ω^)「……ツンだけ屋上に来いって書いてあるお」
ξ゚听)ξ「え、なんで?」
( ゚∀゚)「ブーンをどうのこうのって話し合いじゃなかったのか?」
( ^ω^)「えーと……私を介して双方が納得する話し合いをしたい、その間内藤には安全な
      ところに居て欲しい、……らしいお」
('A`)「あ〜……で、こっちの代表者がツンってことか?」
ξ゚听)ξ「いいわよ、さっき私だけ楽させてもらったし」
( ^ω^)「じゃあ頼むお、ツン。是非平和的解決を」
('A`)「うわ〜、無理っぽいなぁ」
(´・ω・`)「絶望的だね」
( ゚∀゚)「みんな、武器の準備は出来たか?」
ξ゚听)ξ「何よ! 言ってなさい!」

アハハと笑い声が漏れる中、ピシャリ、とドアを閉めてツンは保健室を出て行った。
それを確認してジョルジュは中途半端な笑顔のまま控えめに呟いた。
233書初め(一人身脱却):2006/12/14(木) 22:38:21.21 ID:zp3VyWR+0
支援
234 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:39:08.16 ID:8N3abdHZ0
( ゚∀゚)「でもよお、真面目な話、武器は持っておいたほうが良いかもな」
('A`)「あぁ……」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「なんでさ」
('A`)「だってよ、この話し合いがうまくいくかなんてわかんねぇし……」
(´・ω・`)「……ぼく達には特別なすごい力があるわけでもない」
('A`)「もう、あんな目に遭いたくないんだよ。せめて抵抗する力が欲しいんだ」
( ^ω^)「じゃあツンが帰ってきたら……」
('A`)「ブーン、気持ちは分かるけどな……」
(´・ω・`)「……うん、ツンが居ない今に揃えるべきだね」
(;^ω^)「分かってるお、分かってるけど……」

ツンが帰ってきたら武器なんて必要ないこと、そしてそれ以前にツンにとって武器はまるで
意味を持たないこと、それらを考えれば今その準備をすることは当然だった。
しかし、それでもブーンはどうしても首を縦には振れなかった。
こんなツンを裏切るようなことなんて出来るわけが無い、と。
235 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:40:44.64 ID:8N3abdHZ0
('A`)「いいぜ、俺は俺個人の考えで武装する。嫌ってくれてもいい」
( ゚∀゚)「俺もだな」
(´・ω・`)「……ぼくも生きて帰りたい」

バラバラになってしまう。そう感じ、慌ててブーンは返事をする。

(;^ω^)「……わかったお」

 何故こんなことになっているのか、ブーンはここでもう一度疑問に思わずには居られなかった。
武器を持つということは、鍵を開ける云々に頼っていた頃とはまるで違う心構えになっている。
普通の殺し合いでしかなくなっている、そんな気がしてならなかったのだ。

( ^ω^)「何で僕達はこんなことをしてるんだお……」
('A`)「なっちまったんだから仕方ねぇよ」

ドクオの言葉を無理矢理飲み込んでブーンはドクオ達と一緒に保健室の中を物色し始めた。
その最中、ずっとツンの笑顔がブーンの頭から離れなかった。
236初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/14(木) 22:40:52.31 ID:zpn5Qh89O
支援
237 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:42:11.62 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「……女らしい、か」
ξ*゚听)ξ「…………」
ξ;゚听)ξ「い、いけない。廊下の真ん中でぼーっとしてるとかまぬけ過ぎるわ」

歩いては立ち止まり、その度に首を振りまた歩き出す。その繰り返しを何度もしながら、
ツンはやっと屋上まで辿り着いた。
一度胸に手をあて深呼吸してから、ゆっくりとその扉を開けた。

 封印を解かれて逃げ出してきたかのように、重い扉の向こうから大量の風が吹いてきた。
バサバサと暴れる髪の毛を押さえながら扉から差し込むオレンジ色の光の向こうを見つめる。
そこに居たのは夕日を背にこちらを見つめるクーだった。

ξ゚听)ξ「クー?」

ツンが後ろ手に扉を閉めたのを見て、クーは左手で邪魔そうに髪を押さえながら近づいてくる。
238 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:45:01.28 ID:8N3abdHZ0
川 ゚ -゚)「……」
ξ゚听)ξ「えーと……言われたとおりに来たんだけど……」
川 ゚ -゚)「ツンは内藤が好きか?」

予想だにしない言葉にツンは戸惑い、混乱した。
そして何故自分がここにいるのかをまでも一瞬忘却してしまう。

ξ;゚听)ξ「……は? 急に何を言って……」
川 ゚ -゚)「答えてくれ」
ξ;゚听)ξ「べ、別にあんなやつ好きとか嫌いとか……」
川 ゚ -゚)「じゃあ私が内藤と子を生しても祝福してくれるな?」

その言葉に心臓が熱くなった。

ξ;゚听)ξ「こ、子って……何を言ってるの?」
川 ゚ -゚)「私はしぃと共に往く。其処で内藤と家庭を持つ。誰にも邪魔されずに……」
ξ゚听)ξ「……正気? 本当に世界を変えられるとでも思ってるの? こんなに広いのに?」
川 ゚ -゚)「例え変えられなくても良い。ただ、現状が続かなければ私はそれで良い」
ξ゚听)ξ「何がそんなに不満なのよ……。あんたもしぃと同じなの? つまらないからって――」
川 ゚ -゚)「あいつと一緒にするなっ……!」
ξ;゚听)ξ「……」

突然語気を荒げたクーにツンは思わず怯んだ。大人しい彼女しか見て居なかったツンにとって
予想外の出来事であり、どう反応していいものかと当惑してしまう。
239 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:46:35.83 ID:8N3abdHZ0
川 ゚ -゚)「……自分の所為だと言うことはわかっている。他人に迷惑をかける正当な理由など
     これっぽっちも無いことだって分かっている。ただ私が弱かったんだ」
ξ゚听)ξ「回りくどいわね、何なのよ」
川 ゚ -゚)「……私は人と話すのが苦手でな。その場限りの関係だったり用事があったりして
     話す分には、まぁ問題は無いんだが」
ξ゚听)ξ「確かに、そんな感じだったわね」
川 ゚ -゚)「関係が深くなったとき、どういう話をして良いのか分からないんだ。どういう表情をして、
     どういう話題を出して、どういう口調で……全く分からないんだ。そう考えている内に
     自然と人とは目を合わさなくなったよ。目が合うと会話が始まるからな」
ξ゚听)ξ「……」
川 ゚ -゚)「そんな中で内藤が図書室に来るようになってな。内藤が毎日私に話しかけてくるんだ。
     それでいて教室では特に話しかけたりすることも無く図書室だけというのも良かった。
     間違いなく内藤のお陰で私は救われた」
ξ゚听)ξ「わかるけど……でも何で」
川 ゚ -゚)「いつも図書室に居るわけじゃないんだ」
ξ゚听)ξ「?」
240 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:48:11.28 ID:8N3abdHZ0
川 ゚ -゚)「ツンには分からないだろう。あの教室の空気がいかに苦しいか。下手な妄想ばかりが
     先行して頭が狂いそうになるんだ」
ξ゚听)ξ「そんなに苦しいなら苦しいって……」
川 ゚ -゚)「話しかけも出来ないのに弱音なんて吐けるわけが無いだろ」
ξ;゚听)ξ「何で今になって……もっと早く行ってくれれば……てっきりあんまり人と関わりたく
       ないものだと……」
川 ゚ -゚)「いや、悪いのは私だ。けれどそれを改められるほど私は強くない。そしてそんな私の
     世界の大部分を占める内藤がもし居なくなったら、私はもうこの世界で生きてはいけない。
     想像しただけで胸が苦しいんだ」
ξ゚听)ξ「……」
川 ゚ -゚)「最初は漠然と世界が変われば良いと思っていた。けれども今ここに明確となった。
     内藤が私だけのものになれば良い。そしてそれを邪魔する物がすべて無くなれば良い」
ξ゚听)ξ「……そういうこと」
川 ゚ -゚)「ツン、もう一度聞くぞ。お前は私の邪魔をするのか?」

ツンはその問を受けじっくりと考え始めた。イエスと答えれば恐らく串刺しになって終わり
なのだろう。ノーといえば――そこでツンの思考がジャンプした。

ξ゚听)ξ「そっか……そうよね」
川 ゚ -゚)「?」
241書初め(一人身脱却):2006/12/14(木) 22:49:34.58 ID:zp3VyWR+0
支援
242 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:49:56.41 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「そうね、私もブーンが好きだわ。誰にも渡したくない」
川 ゚ -゚)「……やっぱりか」

ノーと言って自分に何の得があるのだろうか。
そのままブーンが連れて行かれて後は結局皆殺されてしまう。
それならば目の前の女、目に物見せてくれよう、と。

ξ゚听)ξ「私はあんたみたいにウジウジなんかしないわ。見てなさい」

そう言ってツンはどういうことか携帯を取り出すと電話を掛け始める。
掛けた先は渦中のブーンだった。

( ^ω^)「お? ツンから電話?」
('A`)「きっと話し合いのアレだな。出てみろよ」
( ^ω^)「お。もしもし? ツン?」

ξ゚听)ξ『ブーン? よく聞きなさいよ?』
( ^ω^)「なんだお?」
ξ*゚听)ξ『だ、……大好き! そっちに戻ったらずっと抱きついて、キ、キスして、それから、
       いっぱい頭撫でて欲しい!』
( ^ω^)「へ?」

そこまで一息に言うとツンはそのまま電源ボタンを押し終話した。

('A`)「なんだって?」
(;^ω^)「……えーと、ドッキリカメラ的な……?」
243 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:51:18.50 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「ふん、何か言いたいことは?」
川 ゚ -゚)「いいや、予想通りだった。ただそれだけだな」
ξ゚听)ξ「余裕ね」
川 ゚ -゚)「お前こそ」

クーの背後から1本のナイフが現れた。小振りだが間違いなく心臓を狙われれば即死する
長さの刃渡りがあった。ハンドルまで付いているところを見ると、実際に持って使うのも十分
有り得ることだった。
ただ、そんなことをしなくてもクーが攻撃できることは百も承知である。

川 ゚ -゚)「内藤は渡さない」
ξ゚听)ξ「もう手遅れよ」

その言葉を引き金に、ナイフがツンの頬を掠めていった。冷ややかな細い風が頬を撫でたような
感触の後に、焼けるような熱さと突き刺さるような痛みが襲ってくる。
244初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/14(木) 22:51:46.81 ID:zpn5Qh89O
シリアスなのに俺の名前欄…支援
245猪(停学中):2006/12/14(木) 22:52:38.19 ID:7NDipqsl0
おじさんこういうの好きだよ
246 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:53:02.72 ID:8N3abdHZ0
ξ゚听)ξ「……いきなり顔なんてあんたも酷いわね」
川 ゚ -゚)「じゃあ次はどこが良い?」
ξ゚听)ξ「うわっ悪役くさっ」

それを皮切りにナイフが一本ずつツンの体を掠めていった。本数を増やすことも無く、突き
立てるようなことも無く、ただその体を傷付けることを楽しんでいるかのような、一方的な暴力。
ツンは至る所を切り刻まれ、最早どこを押さえて良いかもよく分からなくなっていた。

ξ;゚听)ξ「痛っ……痛いっての……足も手も肩も顔もー!」
川 ゚ -゚)「ほら、私のナイフを分けてやる。戦ってみろ」

足元に放り投げられた1本のナイフを、ツンは全身の痛みを我慢しつつ言われるままに手に
取ろうとする。しかし、ナイフは無情にもツンの手から遠くへと滑っていってしまう。

川 ゚ -゚)「驚いたな、ツンはサイコキネシスを使えるのかな」
ξ゚听)ξ「ふん、あんたも小さい女ね」
川 ゚ -゚)「何がだ」
ξ゚听)ξ「これくらいでそんなピリピリしちゃってさ。あーやだやだ、自分が何も出来ないからって」
川 ゚ -゚)「私が弱い人間だと言うことくらい自覚している。今更言われたところで何も思わない」
ξ゚听)ξ「なら何も言わなきゃ良いじゃない。自覚してますって態々言って、冷静装って、賢いフリ?
      ただの逃げ口上じゃない」
川 ゚ -゚)「……」
247 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:55:56.78 ID:8N3abdHZ0
心まで折れないようにと言葉で反撃をするツンを、クーは冷たく見下ろすとその手にしっかりと
ナイフを持ち俄にツンの傍へ近づくと、刃を人差し指に見立てまるでおしゃべりな子供を「しぃー」
と静かにさせるように、ツンの唇に直角に当てた。当然唇を動かすことが出来なくなりツンは
黙ってしまう。

川 ゚ -゚)「……おめかししようか」

そう言いクーは床に落ちていたナイフを操り、ゆっくりと、あたかもどこを切りつけるか迷って
いるかのように揺ら揺らと浮かせながら徐々にツンの太ももへとナイフを導く。
慈しむようにナイフの背でその太ももを撫でると、唇に刃を当てたまま太ももにナイフを突き立てた。

ξ;゚−゚)ξ「ッ……!」

ゆっくりと、しかし確実にツンの柔肉の中を進み、その血を啜っていく。
やがてその傷口から溢れ出す赤色にクーの顔が朱を帯び始める。
一方のツンは、今刃物が体に刺さっていると言う事実に気がおかしくなりそうで、叫び出して
少しでも痛みを紛らわせたい気持ちだった。しかし既にヒリヒリと唇を焼く痛みにそれすらも
出来ないと体を震わせ只耐えるしかできなかった。
248 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:58:30.99 ID:8N3abdHZ0
川 ゚ -゚)「顔色が悪くなってきたな。それじゃあ次は頬紅にしようか」

そう言って2本のナイフをツンから離し、やおらその頬を撫でると、クーはそのままツンを
押し倒し両の手を床もろとも串刺しにした。

ξ;゚听)ξ「ぁああああ!」
川 ゚ -゚)「……」

信じられない痛みに悲鳴を上げるツンを無言で見つめながら、クーは再びナイフを手に取り
ツンの頬に刃を添え、真っ白なキャンバスに一筋の赤い線を描いた。

川 ゚ -゚)「綺麗な肌だ。憎らしいくらい」
ξ;;)ξ「ふうぅ……ぅうううう!」

涙ぐみ必死に痛みに耐えるツン。或いはそれは美貌を汚されたことへの悲しみからか。
ツンは顰めていた眉をより吊り上げて、口の中に流れてきていた血液を思い切りクーの
顔面に吐き出した。
249 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:00:23.59 ID:8N3abdHZ0
川 ゚ -゚)「……足りない、か」

そう言ってクーは立ち上がり、背後に次々とナイフを待機させ始めた。
数十、若しくは百にも届くかも知れないという数。これが降り注いだらと考えるだけで
心臓が凍り付いてしまうような、圧倒的なその量。
しかしそれさえも気にしないといった感じでツンは泣きながら顔面に憎悪の念を浮き上がらせる。

ξ;;)ξ「……許さない」
川 ゚ -゚)「……それが最期で良いか?」

その返事を待たずにすべてのナイフが空に舞い上がり、ツンの上を雨雲のように蔽った。
そして、それを見上げるツンの元に、ナイフの雨が降り注いだ。



250初夢(ろうそく熱い):2006/12/14(木) 23:02:01.12 ID:zpn5Qh89O
支援
251 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:02:04.97 ID:8N3abdHZ0

(´・ω・`)「遅いね」
( ゚∀゚)「遅いな」
('A`)「同文」
( ^ω^)「どーぶん」

来た時はまだ真っ白な日が差していた保健室も、いつの間にか紅の頼りない光のみが室内を
照らしていた。

('A`)「なぁ、あの電話やっぱり何かあったんじゃないか?」
( ^ω^)「いや、でもそんな内容じゃ……」
( ゚∀゚)「じゃあどんな内容だったんだよ」
(;^ω^)「いや、その……」
(´・ω・`)「ぼく様子見に行くよ」
( ^ω^)「あ、でも……」
(´・ω・`)「何?」
( ^ω^)「……いや、なんでもないお」
( ゚∀゚)「ショボン、俺も行くわ」
(´・ω・`)「あ、ありがとう」

保健室を出て行く2人を見つめながらブーンは短く溜息を吐いた。

('A`)「持ってかれたな」
( ^ω^)「うるさいお」
252 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:04:03.37 ID:8N3abdHZ0

( ゚∀゚)「しっかし結局なんなのかね」
(´・ω・`)「何が?」
( ゚∀゚)「だってよ、殺し合いとか言いつつもう俺達普通に廊下歩いてるぜ」
(´・ω・`)「ぼくは、まだおっかなびっくりだよ」
( ゚∀゚)「んー……やっぱ誰かに会ったら攻撃されるんかな」
(´・ω・`)「話し合いってのがうまくいってなかったら、かなり危ないよね」
( ゚∀゚)「だよなぁ……」

と、ジョルジュがいきなり立ち止まり複雑な表情を浮かべ始めた。
そわそわとした様子で落ち着きが無くなり、意味の無い言葉を色々と唸っている。

(´・ω・`)「どうしたのさ、ジョルジュ。早く行こうよ」
(;゚∀゚)「あー、えーとよー……あーどーしよ……」
(´・ω・`)「はっきりしないなぁ、何さ?」
(;゚∀゚)「くそー、ツンは戦えないんだよなぁ……ちくしょー……ショボン、先行ってくれ」
(´・ω・`)「え? なんで?」
253書初め(今年こそ素人デビュー):2006/12/14(木) 23:05:01.88 ID:zp3VyWR+0
支援
254 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:05:32.00 ID:8N3abdHZ0
(;゚∀゚)「あー、その何だ。ぶっちゃけるとトイレ」
(´・ω・`;)「えー、緊張感無いなぁ。待ってるから早く行ってきなよ」
(;゚∀゚)「いいっての、すぐ追いつくからよ! 早く行ってやれ!」
(´・ω・`;)「ったく……早く来てよ?」

何度か後ろをチラチラと見ていたが、やがてショボンはジョルジュを置いてそのまま階段を
上っていった。それを確認してジョルジュは溜息を吐く。そしてその溜息に誘われるように
2つの影がジョルジュの前に現れた。

(´<_` )「へぇ……どうしてまたショボンさんを行かせたんですか」
( ゚∀゚)「話し相手は1人で十分だろ?」
( ´_ゝ`)「話し相手……ねぇ」

2人に睨まれながらも、ジョルジュは右のポケットからカッターを取り出し、決して目を逸らさなかった。
255かき初め(虚脱感):2006/12/14(木) 23:06:55.31 ID:j71SfcvOO
オムでまとめ見たけど、
これまで見たどのブーン小説よりも文章がすげぇ綺麗!クオリティテラタカスクリニック!
いや、ホントこの文章力にはガチで感動した!
そういうわけで
ガンガレ!超ガンガレよ!
256 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:07:33.14 ID:8N3abdHZ0

(´・ω・`)「えーと……屋上はこのままでいいんだっけ?」

中央階段を1段1段ショボンはぶつぶつと独り言ちながら上っていく。
すると、二階に差し掛かったところで突然ドアの閉まる音がショボンの耳に飛び込んだ。

(´・ω・`;)「…………」

今この学校に他の生徒は居ない。そして残りの仲間は保健室か屋上に居る。
となるとこのドアを閉める音は明らかに自分にとっての敵が出した音だった。

(´・ω・`;)「ど、どうしよう……」

ポケットの中のハサミをギュッと握り締めながらショボンは踊り場に立ち尽くしてしまった。

(´・ω・`;)「ジョルジュ早く来てよぉ……」

しかし背を向けて下の階に戻る勇気も、また同様に屋上を目指す勇気も無く、ショボンは
ゆっくりと2階をビクビクしながら進んでいくしかなかった。
257おせつ:2006/12/14(木) 23:08:30.06 ID:hFlFAUOlO
試演
258 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:10:20.48 ID:8N3abdHZ0
 西日で彩られた廊下はその静けさも相俟って言い知れない空しさをおぼえる。加えて、
ショボンは朱色に染まる建物を見ると、怖気がつくようになっていた。

(´・ω・`)「……嫌でも思い出しちゃうよ」

火事に遭ったのがつい3日前の晩。早めに寝ていたショボンが飛び起きた時には
既に辺りは火の海で、もしあのまま寝ていたら死んでいたのかもしれない。
今でも耳に残っているシャキンの「あついよぉ……あついよぉ」と助けを呼ぶ声がショボンを
震え上がらせる。もしあの時助からなかったらシャキンは――そこまで考えてショボンは
嫌な考えを振り切った。

(´・ω・`)「折角生き残ったのに……」

皮肉が口を衝いて出たその時どこかから物音が聞こえてきた。気の抜けた電子音はどうやら
ゲームの音楽のようだった。
誰かがこんな大きな音を出して呑気にゲームをしているというのだろうか。ショボンには全く
信じられない事だったが、そこに誰かが居るのは間違いない、と音のする方へ近づいていった。
259猪(大人):2006/12/14(木) 23:11:19.07 ID:7NDipqsl0
>>1と支援してるやつらを支援でそんな俺を誰か支援してください
260 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:11:45.65 ID:8N3abdHZ0
(´・ω・`;)「あぁ〜……」

辿り着いたのは案内図で×印のついていた教室だった。
間違いなく電子音はその中から漏れている。
ドアの前でショボンは只管に考えた。
ドアを開けてプラスになることなんて無い、もしかしたらこの音自体がフェイクでどこか後ろの方から
誰かが狙っているのかもしれない。けれども、その裏を掻いているかも知れない、などと考え出すと
もうどうしようもなくなっていた。
引き返そう。そうショボンは決意した。今はツンのところへ行くのが先だし、このドアは全く
開ける必要が無い。そう思った矢先のことだった。

     『あ〜……またやられた』
(´・ω・`;)「ぇ……」

どこかで聞いたことのある声だった。いや、実際はどこかなどと惚けている暇も無く、真っ先に
声の主が浮かんだ。ショボンはその声に魅了されたかのように、ゆらゆらとドアにひきつけられて
いく。そしてその手が取っ手に掛かり、ドアが開かれた。
日常と非日常の隙間が開かれたその先、探すまでも無くそのままの目線の先、黒板にもたれながら
携帯ゲーム機で遊んでいるその人は、まさにショボンの悪い予感をそのまま形にしたものだった。
261黒豆(八粒):2006/12/14(木) 23:12:48.21 ID:MvwnAOcvO
>>259
ガンガレ
262初夢(ろうそく熱い):2006/12/14(木) 23:12:45.13 ID:zpn5Qh89O
わかった支援
263 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:12:55.51 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「ん? ショボンか。どうしたの? 固まって」
(´・ω・`;)「な、何で居るんだよ、シャキン」
(`・ω・´)「今更何言ってるんだよ、鍵取りに来たんじゃないの?」

いつもの赤いリュックを背負ってシャキンは事も無げにそんな返事をしてくる。
希望的観測と事実の把握がせめぎあって思考のギャップが埋まらない。

(´・ω・`;)「鍵って……鍵は4つじゃ……」
(`・ω・´)「そうだよ? 兄者、弟者、クー、で、ぼく」
(´・ω・`;)「なんでさ! しぃが居ないじゃん!」
(`・ω・´)「しぃはゲームマスターだもん。居なくなったらダメでしょ」
(´・ω・`;)「そんなの聞いてない……」
(`・ω・´)「しぃも気まぐれだからね〜……あ、やっつけた」

シャキンが手に持っているゲーム機が一際派手な後を鳴らし、続いてファンファーレのような
ものが聞こえてきた。それに大した感動も無いかのようにシャキンはすぐに電源を切り、仕舞う。
264猪(発情中):2006/12/14(木) 23:13:43.85 ID:Sg2I98yG0
>>259
支援
265 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:14:02.24 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「丁度終わったし、じゃあする?」
(´・ω・`;)「するって……」
(`・ω・´)「ぼくは何でも良いよ?」
(´・ω・`)「なんでもいい?」
(`・ω・´)「別にナイフだの何だのを振り回しても楽しくないでしょ」

その言葉にショボンはホッとする。
殺し合いなんてあるはずがない。ましてやシャキンがぼくと殺し合いなんてするわけが無い、と。

(`・ω・´)「ショボンはジェンガやったことあるよね?」
(´・ω・`)「え? あ、あるけど」
(`・ω・´)「よし、じゃあジェンガにしよう。ルールはどうしようか?」
(´・ω・`)「ルールって……普通に抜いて、上に積んで……」
(`・ω・´)「それじゃあ普通じゃん、つまんない」
(´・ω・`)「でも他に何も思いつかないよ」
(`・ω・´)「そうじゃなくてさ」

シャキンは一つ大きくため息を吐いて言葉を続ける。
266 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:15:13.06 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「例えば服を脱がない野球拳はただのジャンケンだよね?」
(´・ω・`;)「……野球拳?」
(`・ω・´)「例えばだよ。だからさ、ただ普通にやるジェンガはジェンガでしかないんだよ」
(´・ω・`;)「え? 服を脱げって事?」
(`・ω・´)「だから違うって! リスクが足りないって事」
(´・ω・`)「リスク?」
(`・ω・´)「ドキドキが足りないんだよ。僕が言ったのはさ、ただ殴りあうだけじゃつまらないから
      他の事で決着を付けようってことだよ? 命を取り合う位のリスクがあって当然でしょ」
(´・ω・`;)「え……?」
(`・ω・´)「そうだなぁ……どうしようかなぁ」

シャキンは徐に立ち上がり黒板の前で考え込むと、チョークを取り出し色々と書き始めた。

(`・ω・´)「賭けよう」
(´・ω・`)「お金なんか持ってないよ」
(`・ω・´)「ショボンは本当に話を聞いてないね」
(´・ω・`;)「き、聞いてるよ! だからお金は……」
(`・ω・´)「お金じゃないよ。賭けるのは時間さ」
(´・ω・`)「……時間?」
(`・ω・´)「そう、死ぬまでの時間。丁度良いものをしぃから貰ってたんだ。今色々ルールを考えるね」

シャキンはそう言って、楽しそうに色々と文字を書いていく。そんな黒板が白い文字で埋まっていく様を
ショボンはただ呆然と見るだけだった。
267書初め(今年こそ素人デビュー):2006/12/14(木) 23:15:59.32 ID:zp3VyWR+0
>>259
支援
268猪(大人):2006/12/14(木) 23:16:12.44 ID:7NDipqsl0
ありがとう
支援
269 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:17:57.41 ID:8N3abdHZ0
黒板に書き出されたルールは単純ではあったが要点が掴みにくい文章だった。

 『掛かった時間だけ消費』 『タイマーが0になったら負け』 『崩しても負け』
 『事故で倒れた場合は、プレイ中の人が負け』

(`・ω・´)「こんなところかな……後は普通のジェンガで。質問ある?」
(´・ω・`)「時間とかタイマーっていうのは?」
(`・ω・´)「うん、それはこれ」

そう言うとシャキンはリュックから細い金属の首輪2つと腕輪4つ、それに掌に乗る位の
サイズで長方形をした薄っぺらい深緑色のシートを2枚取り出した。
そして机を2つ向かい合わせにして、即席でゲームをするテーブルを作った。
机をセットするとシャキンは辺りを見渡し、周りの机をガタガタと廊下に運び始める。
それを手伝うようにショボンも机を片付け始めた。
そうして教室の中央に二つの机を繋げたテーブルと、シャキンが何故かそのまま残した
2つの机と椅子がやや遠くにあるだけになった

(`・ω・´)「さ、座ってよショボン。そしたらこの首輪と腕輪を両腕に付けて」
(´・ω・`;)「……でもこれって――」
(`・ω・´)「早くしようよ」
(´・ω・`;)「あ、ごめん……」

シャキンの剣幕にショボンは渋々腰掛け、Cの字になっている首輪を付け、止め具をカチリとはめた。
腕輪も同じ構造になっていたので同様に付け、何回か腕をくるくると回し観察する。
それを見てシャキンは満足そうに頷き、自分も首輪、腕輪を取り付ける。
270 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:19:13.22 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「このシートは机の邪魔にならないところに置いて。ここにデジタルで残り時間が
      表示されるから」
(´・ω・`)「なんかハイテクだね」
(`・ω・´)「タイマーの一時停止は、こっちに置こう」

シャキンは、なにやら四角い箱のような物を4つ持って立ち上がり、先ほどの2つ離れた
机の上に2つずつセットでそれらを置くと色々とチェックをしてショボンを手招きした。
それを見てショボンも折角腰を掛けたのにと思いながらも再び腰を上げ、そこに向かう。

(`・ω・´)「腕輪があるよね?」
(´・ω・`)「うん」
(`・ω・´)「その腕輪の模様がここの溝に合うように付けたらタイマーが止まるから」

箱だと思ったそれの中身は以外に複雑な構造をしており、腕が置けるように柔らかくカーブを
描いた窪みに更に一段深くなっている溝があり、どうやらその溝に腕輪がピッタリとはまる
ようだった。ショボンは一度腕を置いて確かめてみたが何故だか腕輪がはまらない。

(`・ω・´)「あぁ、逆逆。こっちを向いて座ってはめてみて」

言われるままに椅子に腰掛け両腕を置くと、気持ち良いくらいにピッタリとはまるのを確認できた。
271 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:20:58.60 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「ちなみにこの腕輪は連動してて、片方のプレイヤーがストップをするともう片方が
      自動的に始まるんだ」
(´・ω・`)「へぇ……」
(`・ω・´)「お互いストップにはそれぞれこの装置を使う。ちなみにこれコンセント刺さってるから
      これ以上ゲームテーブルの近くに行けないから」
(´・ω・`)「なんか一気にハイテクさがダウンしたね」
(`・ω・´)「現実はそんなモンだよ。じゃあリハーサルしてみようか」

そうして2人でゲームテーブルへと戻るとシャキンは一度「あ、ゴメン」と言い、いつの間にか
トマトのような真っ赤な色で『60:00』と表示されているショボンの深緑色のシートを指差した。
なんとなく理解しショボンがそれを手に取ると、シャキンは机の上に黄緑色のマットを敷き、
その上へ無造作にバラバラとジェンガのパーツを出した。マットの中央には黄色い線で
四角く囲っている領域があり、どうもそこへジェンガを組み立てるようだった。
ショボンは一度取り上げたシートを再び置き、シャキンが色々と準備を整えるのを待った。

(`・ω・´)「よし、と。1回作ろうか。練習だから気楽にね」
(´・ω・`)「うん……」

言われるままにジェンガを何段かずつ協力して作っていく。程なくしてジェンガのタワーは
すぐに組みあがり、最後に四角い筒をはめてその形を整えると綺麗な直方体が完成した。
272神所謂ゴッド:2006/12/14(木) 23:21:11.68 ID:9pLwlgtf0
支援
273 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:22:16.91 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「さて、じゃあタイマーをスタートしたつもりでやっていこうか。先行はショボンでいいよ」
(´・ω・`)「え?」
(`・ω・´)「いや、別に僕でもいいけど。どっちがいい?」
(´・ω・`)「じゃあ先にやるよ」
(`・ω・´)「うん、じゃあどうぞ」

促されるままにショボンはジェンガに手を伸ばし、下の方から適当なのを1本見繕って抜き、
上にゆっくりと置いた。

(`・ω・´)「で、席を立ってあっちの装置に腕をはめたら順番が終り」
(´・ω・`)「え? あ、うん」

ショボンはタワーが倒れてしまわないようにそっと立ち上がり箱に近づくと、腕輪をはめた。
それを確認して、シャキンも同じように中腹辺りから引き抜き、上に乗せる。
そしてショボンのほうへと近づき、隣の装置に腕をはめ、ショボンに目配せをした。

(`・ω・´)「そしたらショボンが席に着いてゲームをする。コレを繰り返すだけだよ。簡単でしょ?」
(´・ω・`)「うん……でも、あれは?」

そう言ってショボンが指さしたのは黒板に書いてあるルールだった。
274 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:23:52.70 ID:8N3abdHZ0
(´・ω・`)「事故で倒れたら負けってちょっとひどくない?」
(`・ω・´)「これはねぇ……システム自体どうしようもなくて」
(´・ω・`)「システム?」
(`・ω・´)「うん。このマットとジェンガ、実は中にいっぱい機械が入ってて、ジェンガがこの黄色い
      枠外でマットに触れると崩れたと見なす仕組みなんだ」
(´・ω・`)「へぇ……」
(`・ω・´)「だから途中でうっかりブロックをマットの上に置いたりしちゃ駄目だよ」
(´・ω・`)「うん、でも……例えばシャキンがやってる時に僕がなんか邪魔して倒したら?」
(`・ω・´)「両腕拘束されてこれだけ離れてちゃ何も出来ないさ。あ〜……でも念のため
      お互い靴を脱いでおこうか」
(´・ω・`)「靴?」
(`・ω・´)「これなら座ってても投げられそうだ」

それに納得したショボンは靴を脱ぎキョロキョロと辺りを見回す。シャキンはそんなショボンの
靴をその手から取ると、足で半分ほどドアを開け、自分の靴と共に廊下に放り投げた。

(`・ω・´)「ちなみに」

ドアを閉めパンパンと手を払いながらシャキンは言葉を足す。
275猪(大人):2006/12/14(木) 23:25:36.63 ID:7NDipqsl0
支援
276初夢(ろうそく熱い):2006/12/14(木) 23:25:56.25 ID:zpn5Qh89O
支援
277 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:26:01.65 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「相手の腕輪がはまってないのに自分の腕輪を外すとその時点で負け確定だからね」
(´・ω・`)「うん、それはなんとなくわかってた」

一通り説明を聞き終わったが、今になってもう一度まじまじとそのブロック一つ一つを眺めながら
ショボンは感心していた。まるでそんな風に見えない外見や、それを感じさせない重さはそれが
本当なのかさえも疑わしくなるほどの出来で、何故こんな物がここにあるのだろうと思った。

(´・ω・`)「でも、事故で負けになったらやりきれないね」
(`・ω・´)「事故なんていつでも起こるものさ。遭いたくなけりゃさっさと自分の番を終らせれば
      良いんだよ」

そう軽く言ってのけるシャキンには全く不安の色が見えないどころか、逆にその顔色は良く、
紅潮した頬がその内なる興奮を伝えてきていた。
何故そんな表情が出来るのか、既に小さく震えが出始めているショボンには全く理解できなかった。

(`・ω・´)「どう? わかった?」
(´・ω・`;)「う〜ん……」
(`・ω・´)「暗くなってきたね。そろそろ電気を点けようか」

そう言われて今にも隠れてしまいそうな夕日に気が付いた。
そんな夕日を眺めつつショボンは自分の状況を改めて考え、一瞬だけ昔を思い出した。
まだ何も考えないで過ごしていた日々のことを、ほんの一瞬だけ。
278おみくじ(大吉):2006/12/14(木) 23:26:27.12 ID:BBEwM34Y0
ハアッオ゛!!!
279 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:27:40.49 ID:8N3abdHZ0
(`・ω・´)「あ」

カーテンを閉めていたシャキンが突然短い声を上げたかと思うと、窓を開け下の方をじっと
確認し始めた。

(´・ω・`;)「え、何?」
(`・ω・´)「あぁ〜……いや、なんでもない。地上の花火」

答えてシャキンは窓を閉めカーテンで完全に外の景色を蔽うと、ショボンの向かいに腰掛ける。

(`・ω・´)「で、どう?」
(´・ω・`;)「え? あ、うん。あのさ、これって時間がなくなったらどうなるの?」
(`・ω・´)「あぁ、そうだった。それ言ってなかったね。えーと、首輪の噴出孔から炎が吹き出て
      頭が丸焦げになる」
(´・ω・`;)「……え」
(`・ω・´)「それも結構すごいのがしばらく続くらしいよ。例え丸焦げに耐えられたとしても酸欠に
      なるってさ。どこにそんな燃料が入ってんだろね」
(´・ω・`;)「…………」
280 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:28:57.57 ID:8N3abdHZ0
その言葉でショボンはこの間の火事のことを思い出していた。迫り来る炎や熱風を思い出すだけで
息が詰まり苦しくなる。なんでシャキンは平然としていられるのか、本当に彼はシャキンだろうか
とさえも思った。

(`・ω・´)「それじゃあ、今は時間を2人合わせて合わせて2時間にしてるんだけど、いい?」
(´・ω・`;)「……いいけど、シャキン、なんでぼく達……」
(`・ω・´)「手加減しないよ、ショボン」
(´・ω・`;)「……」

何故兄弟で命の取り合いをしているのだろうか。
それも大した動機も無くジェンガなんてゲーム1つでなんて、どうしてこんな愚かな事をしているのか。
ショボンはタイマーがセットされている間中そんなことばかりが頭の中から離れなかった。

(`・ω・´)「それじゃあ始めようか――」



281 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:31:04.07 ID:8N3abdHZ0
 すべてが闇に食われてしまう寸前の空の下、ツンは床に散らばるナイフの山の中央に依然
磔にされたままだった。体の至る所から出血し、最早痛みがどこから湧いているのかも
よく分からないほどだった。右目はいつの間にか開いても見えなくなっていたし、左目も随分と
霞んできていた。それでもツンは必死に耐えていた。

川 ゚ -゚)「死んだと思ったんだがな……一度に出しすぎてコントロールが悪くなったか」
ξ;-听)ξ「はぁ……ぁ……ぅ……」
川 ゚ -゚)「まぁ、いい。一度で死ななければ二度三度と繰り返すだけだ」
ξ;-听)ξ「……す……それ……して……」
川 ゚ -゚)「ブツブツとどうした? 頭がやられたのか?」

ただ只管クーの方を睨みつけ何かを呟くツン。哀咽か恨み言か、どちらにしろその呟き言は
クーのところまではまるで届かない。

川 ゚ -゚)「まぁ、無理もない。死を前にして冷静な奴などそうそう居ないだろうしな」
ξ )ξ「……す……して……ろす……」
川 ゚ -゚)「今終わらせてやる」

再びクーの背後から無数のナイフが出現する。先ほどと同じかそれよりも多いか。とにかく
1人に対しては大袈裟なほどの数が空中に浮かんでいた。

川 ゚ -゚)「死ね」
282猪(イタ電中):2006/12/14(木) 23:32:15.59 ID:kTPVj3C70
クー→ツンのとツン→クーのナイフじゃね?
283 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:32:17.31 ID:8N3abdHZ0
何の前置きもなく、ただそう言い放ってクーはツン目掛けてナイフを飛ばした。
正面から受ける形で飛んでくるナイフは見ただけで失神してしまいそうなほどの迫力があった。
しかしツンは全く目をそらす事無くナイフの群れをただ睨み続けていた。

 そしてそれは起こった。
ツンを目掛けて飛んでいたナイフが、ツンの体に触れる直前で悉くその軌道を変えまるでツンに
当たることなく何処か明後日の方へと消えていくのだ。そして両手に刺さっていたはずのナイフも
いつの間にかその姿を消していた。

川 ゚ -゚)「……何故だ。私の鍵はそこにある。まさか力が衰えたのか……? 太陽と何か関係が……」
ξ )ξ「…………」

思考に耽るクーをよそに、ゆらり、とツンが紐で引っ張られたかのように力なく立ち上がった。
そして覚束無い足取りで一歩一歩ゆっくりとクーの元へと近寄っていく。

川 ゚ -゚)「……しぃか」

舌打ちをしてクーは辺りを見回した。
284 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:35:15.32 ID:8N3abdHZ0
川 ゚ -゚)「しぃ! くだらないことは止めろ! こんな事をせずに出るならさっさと出て来い!」

しかしクーの叫びに応じる者は無く、ただただ東の空に言葉が吸い込まれては消えていく
だけだった。

川 ゚ -゚)「邪魔臭い」

ツンにまたも1本のナイフが高速で飛んでいく。
しかし、顔面を狙ったそのナイフもツンの目の前であらぬ方へと向きを変え、結局ツンには当たらない。

川 ゚ -゚)「何を考えているんだ。瀕死のツンを操って何が楽しい」
ξ )ξ「……んで……さす……たたきつけて……つぶす……」
川 ゚ -゚)「……何?」

近づくにつれて段々と明瞭になってきたツンの言葉にクーは違和感を覚えた。
まるで内容が死に瀕している者のものとは思えないように聞こえたのだ。

川 ゚ -゚)「ツン、何を呟いて――」
ξ-听)ξ「つか、んで……め、だまに……たたき、つけ、る……もちかえ、て……さす……」
川 ゚ -゚)「お前……そんな……まさか、ありえない……」
285 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:36:19.78 ID:8N3abdHZ0
ツンはただ只管にクーを痛めつける方法を口にしていた。

川 ゚ -゚)「ありえない……」

クーは後ろに一歩下がりつつ、ナイフを数本ツン目掛けて飛ばす。

ξ-听)ξ「…………」

しかし、やはりそのどれもが全くツンに当たらない。クーの顔にはっきりと今焦りの色が出始めていた。

川;゚ -゚)「お前……この膨大な数のナイフすべて……」
ξ#-听)ξ「……このナイフ全部であんたを痛めつけてやる……目を潰して……胸を突き刺して
        ……お腹を抉って……太腿を切り裂いて!」
川;゚ -゚)「お前の力は、そんな……いや、そもそもこんな芸当……」

気付けばクーはいつの間にか屋上の端まで追いやられていた。

ξ#゚听)ξ「潰してやる……抉ってやる……裂いてやる……折ってやる! 砕いてやる! 
        あぁぁぁぁぁ! 撲ってやる! 暴いてやる!」
川;゚ -゚)「近づくな!」
286 ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:38:11.84 ID:8N3abdHZ0
至近距離からの目も眩むようなナイフの射出。次々と休み無くツンに襲い掛かるナイフだが
それでもツンの頬を掠めることがやっとだった。その気迫のみにじりじりと追い詰められ
クーはどうにかこの状況を打破しようと考える。思考に集中するために一度体を後ろに
預けようとしてバランスを崩した。

川 ゚ -゚)「……え、なんd――」

ふわ、とクーの髪が浮いたのをツンは見た。
そして、その次の瞬間にはもう、クーの姿はどこにも見当たらなくなっていた。

ξ-听)ξ「…………」

どさ、と体がコンクリートに打ち付けられるのも気にせず、ツンは後ろに倒れこんだ。
既に呼吸も浅くすることしか出来ず、両目を開けてもまるで何も見えなくなっていた。

ξ゚听)ξ「……見え、ない……や」

闇の中に意識が融けていくのを、ツンはただぼんやりと感じながらまどろんでいた。

ξ゚听)ξ「……頭……撫でて、くれる……かな」

ξ )ξ「…………寒いよぉ……」

その音を最後に一切の音が消え、屋上は売れ残った一枚の絵画のように、ただ寂然となった。


287猪(ボーカル):2006/12/14(木) 23:39:43.42 ID:ZUoqqtE5O
支援
288書初め(今年こそ素人デビュー):2006/12/14(木) 23:39:47.80 ID:zp3VyWR+0
支援
289書初め(子孫繁栄):2006/12/14(木) 23:40:02.64 ID:Cy0/I9Rn0
挟まれ隊
290猪(大人):2006/12/14(木) 23:42:12.34 ID:7NDipqsl0
支援
291:2006/12/14(木) 23:42:27.42 ID:8N3abdHZ0
今日はここまでにします。


>>255
ありがとうございます。これからも精進したいと思います。

>>282
('A`)?


支援してくださった方、読んでくださった方ありがとうございました。
続きは明日か明後日の夜になります。
292猪(大人):2006/12/14(木) 23:42:50.24 ID:7NDipqsl0
支援
293VIP皇帝:2006/12/14(木) 23:43:16.92 ID:zp3VyWR+0
294猪(発情中):2006/12/14(木) 23:43:25.26 ID:Sg2I98yG0
ツン死んじまったのか・・・?
295猪(大人):2006/12/14(木) 23:43:34.68 ID:7NDipqsl0
終わりかよwww
気になるじゃないか
296おみくじ(汚れて読めない):2006/12/14(木) 23:43:35.18 ID:cK4y4L9R0
>>1
これは良いブーン小説だ。期待してる。
297猪(ミセブラ):2006/12/14(木) 23:44:32.46 ID:P8gSv5ZVO
298猪(巨乳):2006/12/14(木) 23:44:48.47 ID:h6E22sbmO
追い付いた。
そして乙!
299神所謂ゴッド:2006/12/14(木) 23:45:09.26 ID:9pLwlgtf0
面白杉www

300黒豆(六粒):2006/12/14(木) 23:46:30.76 ID:cxXGfrmwO
追いついた。
こんな猟奇的で破綻した人格の出てくる小説なんて……と思いながらwktkで寝れない俺がいる……
301愛のVIP戦士:2006/12/14(木) 23:47:03.51 ID:KMxzut3d0
302初夢(ろうそく熱い):2006/12/14(木) 23:51:50.42 ID:zpn5Qh89O
乙です!
おもしろいわ
303VIP皇帝:2006/12/14(木) 23:59:06.67 ID:UhQ4tgPAO
乙!
昨日と違って今日は早く寝られそうだwww
304猪(給食中):2006/12/15(金) 00:04:00.73 ID:53awi+iX0
乙です
305初詣でころんだ:2006/12/15(金) 00:07:04.64 ID:izTK+Bqr0
乙〜
306猪(子持ち):2006/12/15(金) 00:38:53.69 ID:acTheCdkO
これは面白い
307初夢(二日酔い):2006/12/15(金) 00:59:11.66 ID:ebNRQaQz0
なんか魅せられる文章だよね
308猪(2ch中):2006/12/15(金) 01:32:24.62 ID:s9yRe08jO
ブーンに刃物が効かないのかブーンが刃物を使うと切れないのかどっちなんだぜ?
309VIP皇帝:2006/12/15(金) 01:35:31.99 ID:Z+TWiQdNO
厨2病すぎるwwwww
310女教師と初詣:2006/12/15(金) 01:41:22.54 ID:bsMFZRsf0
>>308
今のところ恐らく後者だろうがツンの能力が発展したから刃物全般に強くなったりしてね
311猪(しいたけ目):2006/12/15(金) 02:04:47.04 ID:skPSMXKzO
携帯からの評価なんか要らないだろうが言わせてくれ。

>>1 の 前 置 き は 嫌 味 か ?
312おみくじ(いいのこいっ):2006/12/15(金) 02:42:09.51 ID:ahooGkyr0
hosyuage
313猪(2ch中):2006/12/15(金) 02:44:13.48 ID:9OKkVsLWO
はやくつづきがよみたい支援
314猪(カビ):2006/12/15(金) 02:47:43.65 ID:BlykB+RYO
これはいい
315猪(酒乱):2006/12/15(金) 03:05:56.79 ID:rbAqhEU2O
ツンかぁいいお
316猪(友達がvipper):2006/12/15(金) 03:07:28.79 ID:q03PQZUG0
これはよい、続き期待age
317嫁と初詣:2006/12/15(金) 03:15:17.26 ID:+J6fldqe0
sageになってるぜwww
318猪(進化系):2006/12/15(金) 03:19:16.75 ID:B71FTBrl0
気体
319書初め(私はイケメン):2006/12/15(金) 03:38:23.63 ID:99eJeM3TQ
320猪(友達がvipper):2006/12/15(金) 04:35:58.19 ID:679GfzOUO
おいおい
321猪(浴衣姿):2006/12/15(金) 04:52:30.46 ID:Ii8Cb+Yd0
悔しいけど面白い
322お年玉(なし):2006/12/15(金) 05:35:46.91 ID:99eJeM3TQ
ふふふ
323猪(委員長):2006/12/15(金) 06:30:51.41 ID:6HZXzw8/O
今まとめサイト読んでた早く続き見たい〜
324猪(ベース):2006/12/15(金) 08:34:39.99 ID:679GfzOUO
落ちないもんだな
325初夢(ピザった夢):2006/12/15(金) 10:47:21.01 ID:WFeXBp+2O
保守
326おみくじ(ひく金ねー):2006/12/15(金) 11:46:10.40 ID:O+bLLSeKO
あげ
327初夢(猿の夢):2006/12/15(金) 12:04:36.87 ID:Ni5ytjErO
( ´_ゝ`)保守
328猪(体操着):2006/12/15(金) 12:31:16.34 ID:0el4evrx0
保守
329書初め(家内安全):2006/12/15(金) 12:57:51.80 ID:4eAYYCe60
もの凄くフラッシュ化したくなったお(*‘ω‘*)
ちょっと、弄ってくるお
330初夢(二日酔い):2006/12/15(金) 13:28:28.02 ID:Ni5ytjErO
(*゚ー゚)保守
331書初め(交通安全):2006/12/15(金) 14:30:32.70 ID:ahooGkyr0
hosyu
332猪(停学中):2006/12/15(金) 14:45:37.11 ID:zRRKRavyO
ほす
333初夢(筋肉痛):2006/12/15(金) 14:59:35.06 ID:Ni5ytjErO
(`・ω・´)保守
334猪(右利き):2006/12/15(金) 15:16:23.24 ID:hWOKrvvF0
テラスゴス。この一言に過ぎる。
干す
335猪(ドラム):2006/12/15(金) 15:22:53.61 ID:ML6f76GX0
悪徳包茎クリニック
○央、○野、Kクリ、○の手、○須、○ムロ、○ェニックス、○村、○インボー、○ースト、○ールドマン

悪徳クリニックの所業
↓元包茎クリニック社員の暴露
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/mcheck/1149655037/1-20
↓包茎クリニックの手術で勃起不全になり自殺
http://web.archive.org/web/20060519035957/http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/0/6c969fa677c6eebc49256d2700338cc6?OpenDocument
真性包茎は手術しないで治る!part16
http://life7.2ch.net/test/read.cgi/body/1165249213/1-17

ためしにイタズラ電話を掛けてみてください。低脳がテンパって面白いですよ。
336おせち(10,000円):2006/12/15(金) 15:28:57.91 ID:m1cGLFG+O
337VIP皇帝:2006/12/15(金) 16:09:56.18 ID:aylW75Le0
川 ゚ -゚)「……え、なんd――エンッ!!」
338おせち(12,000円):2006/12/15(金) 16:51:48.87 ID:m1cGLFG+O
339おせち(30,000円):2006/12/15(金) 17:06:21.69 ID:679GfzOUO
ハアハア
340書初め(点滴必要):2006/12/15(金) 17:37:40.08 ID:SWmtDMmN0
ほす
341猪(赤詐欺):2006/12/15(金) 17:54:22.30 ID:B71FTBrl0
保守
342初夢(またバイトか):2006/12/15(金) 18:32:13.71 ID:Ni5ytjErO
ξ゚听)ξ保守
343書初め(外に出たい):2006/12/15(金) 19:12:51.32 ID:ahooGkyr0
hosyu
344初夢(ろうそく熱い):2006/12/15(金) 19:33:03.49 ID:CLjLTjEh0
ho
345猪(貧乏):2006/12/15(金) 19:42:17.81 ID:KPm+YDoi0
しぃはどうでもいいけど他のやつらは全員好きだったからちょっと(´;ω;`)ぶわっ
346おせち(1d):2006/12/15(金) 20:11:15.61 ID:679GfzOUO
クー(´;ω;`)
347初夢(すべてが夢):2006/12/15(金) 20:41:06.71 ID:LLMAtKYzO
ほす
348黒豆(五粒):2006/12/15(金) 21:25:04.47 ID:qYt+hGsdO
ここのツン好きだったのにな・・・
349:2006/12/15(金) 21:32:34.54 ID:lpA65W140
>>311
含みはありません。

>>329
そこまで影響を与えたというのを考えると嬉しい限りです。しかしその技術羨ましすぎる……。


えー、始めます。うまく行けば今日中に完結するかと思います。
何度も言い訳がましいですが、後読感最悪です。では
350 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:34:04.36 ID:lpA65W140

('A`)「なぁ」
( ^ω^)「お?」
('A`)「……いや、さ――」

と、いきなり軽快な着メロが流れ出した。ドクオはそこで喋るのを止め、携帯を取り出し耳に当てた。

('A`)「もしもし?」
('A`)「あぁ、はいはい。どうした?」
( ^ω^)「誰だお?」
('A`)「ジョルジュからだ。はいはい、聞いてるぞ」

ジョルジュといえばさっきショボンと屋上へ向かったはずだ。良い返事が聞ければいいのだが、と
ブーンは少しばかり身を強張らせる。

('A`)「は? ……おう。……あぁ、わかった。待ってろ」

ドクオの声のトーンが下がったかと思うと、通話はそこで終わった。ブーンは何かが起こったのだと
薄々感じながらもドクオに尋ねる。

(;^ω^)「ジョルジュはなんて?」
('A`)「兄者たちに捕まった」
(;^ω^)「え……」

交渉の事とばかり考えていたブーンの思考に思わぬ方向から打撃が加わり、一時混乱した。
351初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 21:35:22.85 ID:WFeXBp+2O
ガンガレ支援
352 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:35:32.46 ID:lpA65W140
('A`)「なんかわからんが、とにかく俺たちがご指名らしいぜ」
(;^ω^)「……」
('A`)「どーするよ、5分以内に来なかったらジョルジュを殺すとか言ってたぜ。ありえねぇよ」
(;^ω^)「殺すって、そんなことをしない為に今……」
('A`)「あいつらには関係ないんだろ……さすがにクーがジョルジュを助けてくれるとも思えないし」
(;^ω^)「でも僕たちが行っても……」

2人は時計を見ながらも沈黙してしまう。仲間を助けるべきだと分かっているのだが、ただ
無駄死にしてしまう恐怖には抗えない。

('A`)「あのよ」
(;^ω^)「?」
('A`)「俺、ずっと考えてたことがあるんだ。聞いてくれ」
(;^ω^)「何だお」
('A`)「この……これ弟者の鍵なんだけどよ、お前が持って上の階に行くんだ。で、そのまま
    10分経てば少なくとも弟者は消える」
(;^ω^)「でもあの2人相手に10分逃げ延びるなんて無理だお」
('A`)「俺が囮になる」
(;^ω^)「オトリ?」
('A`)「俺があいつらの、少なくとも兄者の足止めをする。だからお前も頑張ってくれないか」
(;^ω^)「無理だお! 僕もそうだし、ドクオだってあの兄者の足止めなんて――」
('A`)「でもよ!」
(;^ω^)「……」

ドクオの叫びが保健室に静寂をもたらした。
353 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:37:23.06 ID:lpA65W140
何回か秒針の音を聞きいた後、ドクオが呟く。

('A`)「……二人とも死ぬよりマシだろ」
(;^ω^)「ドクオ……」

そしてドクオはポケットから小さな鍵を取り出すと、ブーンにその掌をいっぱいに広げて差し出した。
その掌をじっと見つめるとブーンは頷き鍵を受け取った。

('A`)「頼んだぜ」
( ^ω^)「……わかったお」

涼しい顔なんてとても出来たものではないが、2人は不安な未来に対して目一杯冷静な自分を
見せ付けた。これから起こることは大したことではないと、運命に嘯くために。
354 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:38:38.69 ID:lpA65W140
('A`)「あのよ」
( ^ω^)「なんだお?」
('A`)「明日学校サボってゲーセン行こうぜ。それ位許されるだろ」
( ^ω^)「ドクオ、あんまりカッコいいこと言ってると死ぬお」
('A`)「ここは俺に任せて早く行け! とか?」
( ^ω^)「それは完璧アウツだお」

そうして笑いあい、二人は廊下に出た。

('A`)「……死ぬもんかよ」
( ^ω^)「……だお」

そう言ってブーンはドクオが向いている方向とは反対の東階段へと走っていく。
その足音に振り返る事無くドクオは走り出す。

('A`)「――でもよ」

走りながらドクオは独り言を呟く。

('A`)「誰かの為に死ぬってのも悪くねぇかなって、そんな気分だ」


355 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:39:46.36 ID:lpA65W140
 勝負は一方的な展開を迎えていた。
あまり大きい勝負をしないショボンだったが、決断の遅さや不慣れな勝負に少しずつその
時間を失っていき、気付けばシャキンと23分もの差がついていた。

(`・ω・´)「はぁ……なんだかゲームバランスの悪いフリーソフトをやってるみたいだよ」

ショボンがどのブロックを抜こうかと選んでいるとき、少し遠くからシャキンはそう言って
わざとらしく溜息を吐いた。

(´・ω・`;)「そんなこと言われても……」
(`・ω・´)「……ショボンにはまるで危機感が足りないからだ」
(´・ω・`)「ぼくだってそれくらいは感じてるよ」
(`・ω・´)「……じゃあぼくと話してるような時間は無いんじゃない?」
(´・ω・`;)「あ、いや、でもそれは……」
(`・ω・´)「ほら、手が止まってるよ」

シャキンに言われてショボンは更に眉尻を下げ、やや上段寄りのブロックを人差し指でゆっくり
何度も突付いて、後ろ側から引き抜いた。
そのブロックを手に持ったままショボンはつぶやく。

(´・ω・`)「シャキンは助かりたくないの?」
(`・ω・´)「え? なんでさ」

ブロックを見つめながら、それを積む事無くショボンは更に話を続ける。
356おみくじ(汚れて読めない):2006/12/15(金) 21:40:15.87 ID:UzOAutQd0
ドクオ格好良すぎて泣いた。
357 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:41:39.63 ID:lpA65W140
(´・ω・`)「だって、じゃないと僕にアドバイスなんて……」
(`・ω・´)「言ったじゃん。バランスが悪いとつまらないんだよ」
(´・ω・`;)「つまらないとか……」
(`・ω・´)「ドキドキするその先に、僕が酔いしれるものがあるんだ」
(´・ω・`)「え?」
(`・ω・´)「続けよう。話はゲームをしながらでも出来るしね」

そう言ってシャキンはどこか消化不良のショボンにゲームの続きを促した。



(`・ω・´)「さて……ショボン。このタワーあとどれくらい遊べると思う?」

シャキンが自分のターンでそんなことを訊いてきた。
言われてショボンは目を細めてジェンガのタワーを眺める。至る所に穴が開いており、バランスが
保たれたとしても縦に伸びる以上、これ以上は積めないというポイントが生まれるのは容易に
予想が出来た。

(´・ω・`;)「う〜ん……10回無いかもね」
(`・ω・´)「まぁ、それくらいだろうね。そこら辺はいくらでも調整できるんだけど…・・・」

何を思ったかそう言うとシャキンは立ち上がり、窓の方へと歩いていった。
その間にもシャキンのタイマーは少しずつその残り時間を減らしていく。
358 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:42:40.72 ID:lpA65W140
(´・ω・`;)「何してるのさ。は、早くしないと」

ショボンの言葉にシャキンが振り返り、笑った。

(`・ω・´)「ショボンと同じ位置にまで行こう。きっとドキドキするよ。あの感覚が欲しいんだ」
(´・ω・`;)「……何を言ってるんだよ……今倒れたら……」
(`・ω・´)「ショボン、自分で言っといてアドバイスしてるじゃん」
(´・ω・`;)「何言ってるんだよ。関係ないじゃない」
(`・ω・´)「じゃあさ、ショボンは負けてくれるの? ぼくの代わりに死んでくれる?」
(´・ω・`;)「……それは……違うというか……」
(`・ω・´)「ごめんごめん、意地悪だったね」

少しだけ笑うとシャキンはもう一度ゆっくりと席に戻った。

(`・ω・´)「ショボンは2人とも助かったらいいのにって感じなんでしょ?」
(´・ω・`)「それは勿論だよ! なんでぼく達のどっちかが死ななきゃならないんだよ」
(`・ω・´)「……やっぱりそこだなぁ」

シャキンは携帯を取り出し何か操作するとそれを耳に当てた。
電話のようだったがその相手は勿論ショボンには分からない。
359 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:43:37.15 ID:lpA65W140
(`・ω・´)「もしもし? 兄者? ドクオ捕まえた? ちょうど良かった。あのさぁ今ショボンと
      遊んでるんだけど、僕が勝ったらもう1回電話を入れるからさ、そしたらドクオ
      やっちゃってくれない? 早く帰りたいんだよね」
(´・ω・`;)「シャ、シャキン! 何してるんだよ!」
(`・ω・´)「うん、うん。オッケー。僕から電話入らなかったら、まぁとりあえず何もしないと言うことで」
(´・ω・`;)「シャキン!」
(`・ω・´)「じゃあね。……ショボン、電話中は静かにしてよ」
(´・ω・`;)「静かにって……何してるんだよ」
(`・ω・´)「何って、ショボンが全然やる気出してくれないから、やる気出そうとしたんだよ」
(´・ω・`;)「……めちゃくちゃだよ」
(`・ω・´)「はい、積んだっと。そろそろショボンと同じくらいかな。お互い残り12分。目一杯遊ぼうよ」

電源の入っていない電話をポケットに仕舞うとシャキンは目を細めて笑った。

360 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:45:05.44 ID:lpA65W140
(´・ω・`;)「……」

穴だらけのタワーを前に、ショボンは何度繰り返したか分からない作業を行う。
観察して、ブロックを抜き、上に乗せる。それだけだと言ってしまえばそれだけなのだが、
人の命を背負っているというプレッシャーはショボンにはかなり大きなものだった。

(´・ω・`)「……ふぅー」

なんとかバランスを崩す事無くブロックを乗せ終えると、ショボンは一目散にタイマーを止める為
装置の元へと歩いてくる。

(`・ω・´)「……いくらか真面目になったね」
(´・ω・`;)「あんなことしといてよく言うよ」
(`・ω・´)「でもまだまだだよ。防御だけじゃ駄目さ、攻撃をしなきゃ」

シャキンは椅子に座ると、まるで最初の一手のように軽くブロックを抜き、乗せ終えてしまう。
そして早々に作業を済ませるとシャキンは携帯電話を取り出し、なにやら操作をし始める。
またどこかへ電話するのだろうかとショボンがそれを止めようとした時、シャキンは何故か
その携帯を机の教科書を仕舞うスペースへゆっくりと入れると、ショボンの元へと戻って来て
腕輪を装置へとはめた。
361猪(友達がvipper):2006/12/15(金) 21:47:03.44 ID:2dbZ3kmOO
支援
362 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:47:17.75 ID:lpA65W140
(´・ω・`;)「?」
(`・ω・´)「攻撃、さ。手が使えなくても、何故かぼくはあの机を揺らすことが出来るんだ」
(´・ω・`;)「…………あ!」

漫画のような分かりやすいリアクションを取ってショボンはゲームテーブルへと駆け寄り、
シャキンが入れた携帯を慎重に取り出す。
そして携帯を開けようかと手をかけた瞬間に、携帯が震えだした。

(´・ω・`;)「シャ、シャキン……」
(`・ω・´)「あぁ、あはは、ごめんごめん。アラーム付けっぱなしだったみたいだねぇ」
(´・ω・`)「…………」

ショボンの中で暗い感情が動き始めた。
それと同時にショボンの手に持っていた携帯電話の電源が落ち、真上の蛍光灯だけが教室を
照らすことを止めた。

(`・ω・´)「へぇ……なるほど、やっぱりショボンは僕の反対なんだね」

その言葉と同時に今度はシャキンの頭上にあった蛍光灯が一瞬眩しく光り、そして消えた。

(`・ω・´)「ムーディーになったね」
(´・ω・`)「シャキン、僕は……」
(`・ω・´)「説明するよ。だから早く続けなよ」

ショボンはしばらく両手を見つめシャキンの携帯をポケットに仕舞うと、チラチラとシャキンの方を
気にしながらも椅子に座りジェンガと睨めっこを始めた。
363おみくじ(汚れて読めない):2006/12/15(金) 21:48:36.93 ID:UzOAutQd0
wktk
364 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:49:10.88 ID:lpA65W140
(`・ω・´)「ぼく達は力を得た。それはしぃや兄者達だけでなく、ぼくも、そしてショボンも」
(´・ω・`)「……」

やっと取り出せそうなブロックを見つけたショボンは、返事をする事無くブロックを取り出す
作業をしながら話に耳を傾ける。しかしその手つきはどこか危なげだった。

(`・ω・´)「勿論ショボンの力はぼくの予想の範囲でしかないんだけど。しぃが言ってたんだ、
      ぼく達兄弟は逆の力を持ってる、って」
(´・ω・`)「……」

ブロックを掴んだまま、ショボンは1度目線をシャキンに向ける。
それを見てシャキンはさらに話を続ける。

(`・ω・´)「ぼくの力は……何と言うか言葉では非常に言い表しにくくて、促進というか……うん、
      触らない触媒みたいな物なんだよ」
(´・ω・`)「触媒……」
(`・ω・´)「触らないのに触媒ってのも変な話だね」

そう言って目を細め笑うシャキンに釣られて笑うことも無く、ショボンはブロックを置く先を
しっかりと見て、その指先に神経を集中させる。
365初夢(ろうそく熱い):2006/12/15(金) 21:50:04.02 ID:sthfTqE+0
ツンの能力がイマイチわからないんだけど・・・・・
366 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:50:30.38 ID:lpA65W140
(`・ω・´)「そしてショボンもまた触媒なんだ」

その言葉に一瞬ショボンの動きが止まったが、一呼吸置いてブロックを慎重に積むと、
倒れないのを確認してシャキンの方を向いた。

(´・ω・`)「それじゃあ同じじゃない」
(`・ω・´)「いや、種類が違うって事だよ」
(´・ω・`)「……種類?」
(`・ω・´)「そう。速くするのが僕で、遅くするのがショボン。正触媒と負触媒ってとこなのかな?」
(´・ω・`)「シャキン、僕はあんまり化学が得意じゃなくて……良く分からないよ」

そう言いながらショボンは席を立ち、装置に腕輪をはめたそれを確認してシャキンは眉を上げ、
テーブルへと向かう。

(`・ω・´)「簡単に言えば僕は周りのやる気を出して、ショボンはやる気を失わせるって事だよ」
(´・ω・`;)「やな力だなぁ」

そこで一旦会話が終わり、シャキンは真剣な面持ちでジェンガに向き合う。
首を伸ばしていろいろな角度から眺めながらあれこれとブツブツ呟く様は先ほどとは打って
変って真剣なものだった。
心なしかその黒目が小さく鋭くなって、辺りの空気を縛り付けているかのような錯覚を抱く。
整列させられた空気の粒子がシャキンに従いその様子をそっと見守っているような感覚。
まるで全てがシャキンに握られているような感覚をショボンは感じていた。
367 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:51:46.54 ID:lpA65W140
(`・ω・´)「……ショボン、焦ってるね」
(´・ω・`)「なんで?」
(`・ω・´)「『なんで?』か。そうだな、なんとなく」

そう言ってシャキンは、ふふと鼻で笑っていつの間にか抜き取ったブロックを指先で握り直し、
ペンを回すようにくるりと回した。

(`・ω・´)「寒いなぁってさ」
(´・ω・`)「……そう言えばそうかも」
(`・ω・´)「あははは」

たしかに指先は幾らか冷えていて、それを確かめるようにショボンは指の背を首に当てたのだが、
それの何が面白かったのかシャキンは笑い出してしまった。それもいつもとは違って、少しばかり
わざとらしく。

(´・ω・`;)「なんだよ気持ち悪いなぁ」
(`・ω・´)「まだまだ、お楽しみはこれから」

ブロックを乗せ終わったシャキンが笑っていた。心が温かくなる類のものではなく、冷たくなる方だ。
楽しいなぁ、と呟くシャキンが隣で装置に腕をはめる。一体何が楽しいものかとショボンはそれに
答えることなくテーブルへと向かった。
368おみくじ(きち):2006/12/15(金) 21:52:10.04 ID:bsMFZRsf0
>>365
武器を持とうとしても、手からすり抜けて武器がもてない
クー戦ではナイフが避けてったことから武器の拒絶とかじゃないの
369 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:52:57.66 ID:lpA65W140
 穴だらけのタワーはこれ以上の搾取に耐えられないといった感じに頼りなさげに立っていた。
それでもとショボンは隙を探し続ける。

(`・ω・´)「ショボン、僕を追い詰めてよ」
(´・ω・`)「……」
(`・ω・´)「追い詰めるだけじゃつまらないな。スリルを頂戴」
(´・ω・`)「……」

心の中に黒い物を抱え、険しい顔で黙ったままのショボンだったが、シャキンを追い詰める
方法を考える気にはなれなかった。
まず一体どうしたらこのゲームを2人無事に終えられるだろうか。そして勿論友達も。
シャキンが憎いという感情とは別に、助けたいという感情があった。それらは決して混ざり合う
ことなくショボンを突き動かす原動力となる。
しかし表示されている残り時間は既に3分を切り、のんびりと考えている時間は無かった。
やはり思いつかない、まるで2人が一緒に助かるなんて方法が思いつかないのだ。
結局ショボンはゲームをこなすのに精一杯なままターンを終えるのだった。

(`・ω・´)「……ふぅ、駄目か」

一方のシャキンも残り時間は4分程度と少なめではあったが、まるでゲームに集中していない
様子からして、ゲームとは別な何かについて考えることに夢中なようだった。
370 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:55:13.88 ID:lpA65W140
(`・ω・´)「どうしたら真面目にゲームしてくれるのかな」
(´・ω・`)「大真面目だよ」
(`・ω・´)「嘘だね。じゃあそこからぼくの手にあるブロックを落として見せてよ」
(´・ω・`;)「どうやってさ。そんなこと出来るわけ無いよ」
(`・ω・´)「……そうか、待てよ……うん……ぼくが……」

なにやら思いついた風にブツブツと呟くと、シャキンは無造作にブロックを積んだ。
倒れてしまうのではないかと焦るショボンを尻目にシャキンは俯き加減で何かを考えているようだった。
考えている間にもタイマーは更に時を刻み、見る見る内に1分を切る。

(´・ω・`;)「シャキン!」
(`・ω・´)「うん、ゾクゾクしてきた」

そわそわするショボンを置き去りにしてシャキンのタイマーはどんどんと減り続け、ついには
20秒を切ってしまう。
そしてそれを確認し頭を振りリズムを取ると、シャキンはゆっくりとショボンのほうへ歩み寄り、
ゆっくりと腕輪を装置にはめた。
シャキンのタイマーの残りは僅か2秒になっていた。
371 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:57:09.71 ID:lpA65W140
(´・ω・`;)「何考えてるんだよ……これじゃあ次の番が来ても」

自らのタイマーなど気にする事無くショボンはシャキンを見ながら呆然としていた。
しかし、当のシャキンはと言うとそんなショボンを見て口の端を吊り上げるとこう言った。

(`・ω・´)「ショボン、ぼくを殺しに来てよ」

――ぼくが、シャキンを殺す。
聞き、考えて、そういうことになるのかと理解した。
何をバカな、殺せるわけが無い。そう思いながらもタイマーの残り時間はショボンの心を締め上げる。

(`・ω・´)「ショボン、自分の命に友達の命がかかってるんだよ。ぼくを殺さなきゃ」
(´・ω・`;)「出来ないよ……」
(`・ω・´)「……そうだ」

シャキンが暗く低い声で呟いた。

(`・ω・´)「ショボン、良い事を教えてあげるよ」

気だるそうに息を吐き出すとシャキンはシャツの中に手を入れ、みぞおちの辺りを掻きながら
言葉を投げ捨てた。

(`・ω・´)「この前の火事、あれさぁ、火点けたのぼくなんだよね」
(´・ω・`;)「――――」
372猪(乱視):2006/12/15(金) 21:58:28.39 ID:53awi+iX0
支援
373 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:58:51.89 ID:lpA65W140
その眩めくような告白の内容と、なんてことはないといった口調に、時が止まった。
心臓が裏返って目の血管がギュッと絞られた感覚に陥る。

(`・ω・´)「家が燃えるってどんなのかなってさ」
(´・ω・`)「シャキン、冗談でも言って良い事と悪いことがあるよ」
(`・ω・´)「正直そんなに面白くなかったけどね。皆普通に生き残ったし」
(´・ω・`)「ねぇ、シャキン、ちょっと止めてよ」
(`・ω・´)「1人くらい死ねばよかったのにさ。経験値少な目」
(´・ω・`)「いや、止めてって。シャキン、いい加減に……」
(`・ω・´)「そうそう、あついよぉ、あついよぉ……って、僕、名演技だったでしょ?」

 あまりの事にプラズマで出来た槍の先端のような物が見えた気がした。
脳味噌と心が同じならば今間違いなく潰れた。
そして潰れたショボンの心からは暗褐色の粘液がじゅる、と溢れ出る。
それは体中を侵し、ついには耳や目、鼻から零れ、空間の色さえも塗り替えてしまう。
それがショボンを決意へと導くのだ。その先を確認したわけでもないのに。

(´・ω・`)「シャキン」

ただ名前だけを呼び、ショボンはゲームテーブルへ向かった。
374初夢(ろうそく熱い):2006/12/15(金) 21:59:10.71 ID:sthfTqE+0
そういうことか。
MGS2でそんなやついたような希ガス
375 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:00:37.73 ID:lpA65W140
 タワーはまさに絶望的なまでに穴だらけだった。さっきまでは難しいにしろ可能性があるブロックが
あったのだが、今はもうそれすらも無い。目の前でグラグラとタワーが揺れるような錯覚を覚え、
それに合わせて心臓が大きく鼓動を打つ。死にたくない。焼かれる自分の姿を想像して、そう思った。
いや違う、負けたくない。ショボンは空想の文字を上から塗りつぶした。

(´・ω・`)「……」

いっそ死んでしまうなら、無茶をしようか。そんな無謀な思い付きが浮かんだ。
半ば自棄だといっても違いない。
ただ、ショボンはこの局面でツンの言葉を思い出していた。黙っていても生き延びられないと、
何故だかこの時はすんなりと飲み込めた。そしてショボンは決意した。立ち向かおうと。
 その決意の瞬間だった。恐怖とは別に血液を沸きたてるものを感じたのだ。
これがシャキンの欲しがったものだったのだろう。ピンと来たのは兄弟だったからだろうか。
ショボンは自然と釣りあがる口元を隠すように、そっと左手で唇を触った。

 最早タワーからブロックを抜いて積む、と言うことは無理だった。
それを確信しショボンは覚悟を決め、思考を180度回転させる。

(´・ω・`)「シャキン、ルール確認したい」
(`・ω・´)「ん? いいよ〜」

にやぁ、とシャキンが笑ったのをショボンは見た。ショボンには全く気にならなかったのだが。
376書初め(給料倍増):2006/12/15(金) 22:01:35.60 ID:96+LFEVs0
おもすれーww
377 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:02:27.51 ID:lpA65W140
(´・ω・`)「使っていい指は?」
(`・ω・´)「片方の親指と人差し指」
(´・ω・`)「ブロックを抜いて、積んで、崩れていないと判断されればオーケー?」
(`・ω・´)「ん〜……まぁ」
(´・ω・`)「崩れた崩れてないの判断はこのマットがする」
(`・ω・´)「そうだね。なになに? 面白いこと考えてるの?」

シャキンの問に答える事無くショボンはタイマーを見る。残り45秒。残りの人生45秒。

(´・ω・`)「……シャキン、ぼくはみんなのやる気を無くすんだよね?」
(`・ω・´)「? うん。まぁね」
(´・ω・`)「……さっきの感じは……」

ショボンはさっき蛍光灯に変化を起した時の感覚を思い出す。残り40秒。
もやもやとしたイメージを集め、教室の端の蛍光灯にペースト状のイメージを塗りたくった。残り37秒。
蛍光灯が静かに消えた。残り34秒。
それをタイマーに塗りつけてみた。残り31秒。
タイマーがやや遅くなったように感じられる。錯覚か。残り29秒。

(`・ω・´)「あぁ、タイマーを止めるの?」
(´・ω・`)「……」
(`・ω・´)「無理だと思うよ? 僕も正確に構造を説明は出来ないけど、多分ショボンの力程度じゃ」

シャキンの言葉通り、タイマーは止まる事無く確実に時を刻み続けていた。
しかしショボンはタイマーから視線を逸らしタワーを見据える。
そして一呼吸置き、徐に一番上のブロックを掴んだ。
378猪(双子の妹):2006/12/15(金) 22:02:41.62 ID:x/axxYaF0
これはイイ
379初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:02:54.33 ID:sthfTqE+0
クーは落ちて死んだの?
ナイフで粉みじんにされて死んだの?
380 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:04:14.71 ID:lpA65W140
(`・ω・´)「ちょっと、それを積み直して……ってのは反則だよ?」

その言葉を聞いてか聞かずか、ショボンは手に持ったブロックをそのまま下へ、黄色い枠を超えた
マットの上へ、置いた。

(`・ω・´)「――は?」

傍から見ればまるで自殺行為のそれはシャキンの思考を僅かに止め、ゾクゾクと冷たい
血液が背中を網目状に走った。

(`・ω・´)「……なんで」

予想外の出来事に、幻覚を見ているかと思った。
いや、正確にはこれで正しいのかとシャキンは混乱する。
ショボンは未だ燃えずにいたのだ。
そしてショボンはさらにブロックを掴んではおろしていく。残り18秒。

(`・ω・´)「あぁ……そっか……。それも、かなり反則っぽいよ、ショボン」

引き攣った顔のシャキンは言いながら親指の腹をあごに当て、考え事を始める。
対してショボンは一番上の段とその下の段のブロックを下げ終えると、上の段を修復し、
2段目にあったブロックを手に持った。
つまり、この前後、マットにブロックをおろした場面を切り取りつなげて見ると、ショボンは2段目の
ブロックを引き抜き、それによって最上段が1段下がった形になった。
381猪(双子の妹):2006/12/15(金) 22:04:34.60 ID:x/axxYaF0
>>379
落ちて死んだんだと思う
382 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:05:31.62 ID:lpA65W140
 全くもって根拠なしに行った行動だったが、ショボンは確かに今16秒を残し生きていた。
この装置の仕組みは一体どのようなものなのか、その全てを予想したわけではなかったが
触れたことを知らせるために変化するべき物があったと言うことは確実だった。
ショボンが築きあげたエネルギーの壁は予想以上に高いものだったのだ。

 後はその手にあるブロックを積むだけ、そこまで来ていた。
ただ、ここで崩してしまったらもうどうしようもない。
この力がどれだけ続くかも判らないし、積み直す時間も無い。
ショボンは慎重かつ、戻る時間を考慮し迅速に行動を移す。
それほど難しい作業ではなく、ショボンはついにタワーを完成させる。
その時点で残り時間は8秒。安全圏内だった。

(`・ω・´)「参ったな。死にたくないよ」

あっさりとした口調のシャキンは笑っていた。
歪んだ奴め。人としてのものが欠けている。ぼくとは正反対だ。そう考えながらショボンは
装置の元へと歩き、椅子に座った。
――-ぼくとは正反対……。
383 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:07:20.79 ID:lpA65W140
ゆっくりと装置へ下ろされる腕を確認して、シャキンは明後日の方を向いた。
残り2秒で考えることはどんなことだろうかと。

(´・ω・`)「……だよ」

なのにそこで場違いな涙声が聞こえた。

(´;ω;`)「……無理だよ」
(`・ω・´)「ショボン?」
(´;ω;`)「……なんで邪魔しなかったんだ。シャキンは、ぼくの……」
(`・ω・´)「ショボン、早く。時間が無いよ」

ショボンのタイマーの表示が3から2へと変わる。
しかし、震えるその腕は後数センチのところで固まってしまっている。

(´;ω;`)「あぁあぁ! 無理なんだぁ! お願い、皆を……死にたくな――」

言葉を待たずして、ブワッ、とショボンの泣き顔が炎の奥に消えた。

 人生の終わりにしては不相応なほど間抜けな電子音と共に、ショボンの顔は青い青い炎に
蹂躙される。苦しみ悶えるものかと思ったのだが、棒立ちしたまま崩れ落ちるショボンを見て、
人らしからぬ動きにぞくりとした。

(`・ω・´)「……違う」
384おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 22:08:18.75 ID:UzOAutQd0
うわあああああ
385 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:08:54.34 ID:lpA65W140
シャキンは、ぐらぐらと目玉を震わせながら後ずさりをした。
いつの間にかシャキンの顔面は蒼白になり、首は長く伸びてその筋が浮き上がっていた。

(`・ω・´)「話が違う……これは、おもちゃって……しぃが……」

――何かおかしい。こんなもの僕が望んだものではない。
何故本当に炎が出てショボンが……ショボンが……死……

そう思ったとき誰かの声がした。

     「どうだった?」
(`・ω・´)「え? しぃ――」

そこで突然、相槌にしては大きすぎる音が鳴った。続いて地を走る鈍い衝撃音。
そしてさらに連続して破裂音が数回、教室を突き抜ける。

(`・ω・´)「……ぁ……ぇ……」
      「可愛いねぇ……みんな甘過ぎて蕩けそうだよ」

そう呟くと、ビシャ、と真新しい血溜りを踏みつけ、満足した様子で人影は教室から出て行った。

386おみくじ(汚れて読めない):2006/12/15(金) 22:09:05.05 ID:bsMFZRsf0
ショボンヌも死んだか…
387初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:09:42.60 ID:sthfTqE+0
あぁあショボンまで

ムズカシクてショボンがなにをしたかったのかわからんがな
388猪(双子の妹):2006/12/15(金) 22:10:08.10 ID:x/axxYaF0
シャキンも死んだのかな・・・?
389おみくじ(汚れて読めない):2006/12/15(金) 22:10:37.89 ID:bsMFZRsf0
>>387
地面にブロックが落ちる速度を極限まで遅くして落ちる前にブロックを下から組みなおした…とか?
俺もよくわからん
390 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:10:55.72 ID:lpA65W140

( ´_ゝ`)「来たか」
(;゚∀゚)「ドクオ……その……」

手足を縛られて床に転がるジョルジュが、顔だけを上げドクオの方を申し訳無さそうに見る。

('A`)「いいって。兄者、ジョルジュを放してくれ」
( ´_ゝ`)「内藤はどこだ」
('A`)「なら俺も聞くけど、弟者はどこだ」
( ´_ゝ`)「……なるほど。それではやはりこいつを開放するわけにはいかないな」
('A`)「震えるほどの悪党っぷりだな。なんか覚悟決まったぜ」
( ´_ゝ`)「死ぬ覚悟か。潔いな」

そう言って兄者はあの凶悪な剣をその手に握り、ゆっくりとその先端をドクオの方へと向けた。

( ´_ゝ`)「俺は弟者を追ったりはしないぞ?」
('A`)「俺だってブーンを追ったりはしないぜ?」
( ´_ゝ`)「なら何故笑う。そんなに死ぬのが楽しいのか?」

ドクオは確かにその瞬間笑っていた。本人も言われるまでは気付かなかったが、言われて
妙に納得してしまう心境でもあった。
391 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:12:46.61 ID:lpA65W140
('A`)「なんつーの? 緊張するとドキドキするだろ? それで胸の奥になんかエネルギーの塊
    みたいなのがどんどん溜まってよ、それが俺のテンション上げるんだよ」
( ´_ゝ`)「わかりかねるな」

突然無表情な刃が笑顔を斬りつけた。
その圧倒的な運動量は身を捻ったドクオの左肩から先をもぎ取り、地面に突き刺さる。
その凄まじい光景にジョルジュは目を瞑り、兄者は血飛沫が目に入らぬように眼を細めた。
しかし、血液は床に転がる腕から流れるだけでドクオの肩口からは一滴たりとも零れる気配がない。

('A`)「……ぶっつけだけどなんとか出来たな。俺天才かも」
( ´_ゝ`)「……なに?」
('A`)「大業物を持った人間と、鈍ら物を持ったゾンビはどっちが勝つんだろうな。なぁ、兄者。なぁ!」
( ´_ゝ`)「……ふん、ゲーマーのお前なら予想は付くだろう」
('A`)「そうだな。主人公が勝つぜ」

ドクオはバックポケットから鞘に納まった小振りの包丁を取り出し、斬られた傷口を見せるように
半身に構え戦う姿勢を表した。
392 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:14:27.27 ID:lpA65W140
( ´_ゝ`)「ふん、下手な得物に頼ってもお前に勝ち目はない」
('A`)「強い武器を手に入れたからって身体能力まで上がったと勘違いしてる奴よりはマシだぜ?
    それによ、鍵を取りに行った時ロスタイム無く手に取れる位置にこれがあったんだ。
    きっとこれキーアイテムだぜ」
( ´_ゝ`)「頭が腐ってるな」
('A`)「もとより」

その言葉が空中に霧散し、消えるかという刹那、兄者が剣を振り上げる事無くドクオに向かって
真っ直ぐに突いた。刃が1センチ2センチとどんどん体の中を突き進んでいくのを感じながら
ドクオ1秒か2秒か、命の遣り取りにおいては長すぎるほどの時間を耐えた。
この体は俺が操るキャラクター。道具であって操作している俺は別次元。
そう考えながらドクオはただ我慢し続ける。
そして刃が自分の体を突き抜けたのを確認して右手を伸ばすと勢いよく体を回転させる。

( ´_ゝ`)「むっ!」

ドクオの体と共に剣を持っていかれそうになり、兄者は必死に踏ん張り咄嗟に剣を捻り角度を
与えた。背骨と並行に突き刺さっていた剣の刃がドクオの回転しようとする方向と逆の方を向き、
腹の辺りから刀身がUの字を描きながら滑り出るように姿を現した。
そしてその次の瞬間には回転を続けていたドクオの体が兄者を正面に捕らえる位置まで来、
それに気付いた兄者の表情が苦々しく歪みきるまでの間に更に回転が進み、右手に持っていた
包丁がその顔面を激しく切りつけた。
393書初め(給料倍増):2006/12/15(金) 22:14:55.57 ID:96+LFEVs0
ドクオ・・・
394おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 22:15:38.29 ID:UzOAutQd0
ドクオには死んでほしくない。
395 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:16:13.15 ID:lpA65W140
(;´_ゝ`)「グゥッ! ウウウゥゥゥ!」
('A`)「…………」

剣を消し、両手で顔面を押さえ苦しむ兄者を見ながらドクオは心の中で短く溜息を吐いた。
恐らく心臓は真っ二つになっただろうし、腹がパカパカと開いているこの姿はとても恐ろしいに
違いない。もう自分は死んでしまったんだな、とドクオは静かに落胆した。

('A`)「それでもまだ認めるわけにはいかないんだよ……」
(#´_ゝ`)「ドクオォォォォォ!」

今まで見たことの無い強烈な憎悪の表情をドクオに向け、兄者は再び立ち上がった。
心なしか手に持っている剣もその姿をより凶悪なものに変えている気がした。

(#´_ゝ`)「殺してやる。お前はぁぁぁぁぁぁぁ!」
('A`)「俺は死なないんだ!」
396 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:17:43.20 ID:lpA65W140
向かってくるドクオの刃を気にする事無く兄者は剣を大きく振りかぶり、そのまま狙いも何も
気にせずに振り下ろした。死を恐れないドクオだが長年の間に染み付いた反射を抑えることは
出来ず、わずかに減速した。そして一閃、ドクオの体が縦に割れた。
しかし物体として残った慣性力(或いは計れない思いのようなものか)がそのまま真っ直ぐと
兄者の腹部に包丁を、ぐ、と押し込めた。
だがその代わりにドクオの体は右と左に分かれてしまい、その意識は酷く曖昧なものに
なってしまった。

(;´_ゝ`)「グッ……ウ……」

腹を押さえ蹲る兄者を横目に、ドクオは床に横たわりながら考えていた。
今自分はどうなっているのか、これは右の意識か左の意識か。
なんとなくだが左半身が床に埋もれているような感覚がして、どうやら右の意識なんだなと認識する。

('A|「……」

それでもドクオは決して認めなかった。
色んな訃報をこれまで聴いたが、まさか自分が死ぬ訳が無い、死んでたまるか、死にたくない。
数分前までは五体満足だったんだ。ありえない。体が半分なんてなるわけが無いと。
ふと見ると視界の隅にジョルジュが居たが、どうやら気を失っているようだった。
そういえばコイツは意外と繊細だったんだな、と思い出して急に今までの学校生活が
早回しで蘇ってきた。
397 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:18:50.20 ID:lpA65W140
 殆んど家に引きこもっていた自分を、たまに学校に行ったときバカな話ですぐに迎えてくれる
皆の顔が、シーンが次々と浮かんできて暖かい気持ちが少し湧いた後は寂しい気持ちが
無くなった体を埋めるように次々と溢れ出してくる。

(;´_ゝ`)「ド、クオ……ォォォオオオ!」

よろよろと立ち上がりもう動かないドクオの左半身を切り刻む兄者。それを不思議な気持ちで
見つめながらドクオは思い付く限り友の名を口にし始める。

(;´_ゝ`)「お前も、お前、ぉ!」

真っ青な顔で右半身の方へと向かう兄者。
今にも倒れそうだがその目にはまだ確固とした殺意が宿っていた。
しかしまるで気にせずにドクオは唱え続ける。

('A|「あと……それからブーン。皆ありが

そこで人としてのドクオはこの世から消滅した。

398 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:19:50.46 ID:lpA65W140

(;^ω^)「はっ……はっ……はっ……」

ブーンは背中に纏わりつく寒気を我慢しながら只管走り続けていた。そして気付くと図書室に
逃げ込んでいて、本棚にもたれながら廊下の音を聞いていた。

(;^ω^)「弟者1人ならまだしも2人で来たら絶体絶命だお……」

とにかく10分隠れていれば勝ちなのだ。こちらの居場所が知らされるわけでもないし10分
程度なら昔したかくれんぼを考えればクリアできそうな数字だと感じた。

(;^ω^)「どこか隠れる場所は……」

辺りを見回して鍵の付いた書庫の存在を思い出した。隠れる上で鍵が付いているというのは
非常に心強く感じられる。しかも今回は気付かれるか否かではなく、一定時間姿を見せなければ
いいのだ。そう考えると隠れる場所はここしかないだろうと、ブーンはすぐさま書庫に入った。
いつも鍵が掛かっていないのは知っていたが、掛かっていなくて良かったと思いながら内側から
つまみをねじって鍵をかけた。
399かき初め(虚脱感):2006/12/15(金) 22:19:56.79 ID:Ts8LmUIt0
ドクオしんじゃらめぇーーーーーーーー
400初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:21:11.64 ID:sthfTqE+0
ドクオ(;ω;)
401 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:21:24.51 ID:lpA65W140
(;^ω^)「……ドキドキしすぎて胸が痛いお……」

書庫に入ってから、鍵を閉めた書庫をフェイクにして別な場所に隠れようとか、態と何か服を
はみ出させようとか、色々な知恵が浮かんできたが今この扉を開ける勇気はブーンには無かった。
それに弟者だってブーンが図書室に隠れたことを知っているわけではない。

(;^ω^)「静かにしてれば……大丈夫だお……」

書庫の本棚の影に身を潜めていたブーンだが、ふと足元に投げられたように転がり開いたままの
文集のようなものを見つけた。製本は手作業でやったのかお世辞にも綺麗とはいえないものでは
あったが、自分の置かれている状況も半ば忘れ、引き寄せられるようにそれを見る。
文集のタイトルはページの隅に書いてある文章からするに、どうやら
 『怪談「蝶のバレッタ」に伝えられる過去の超常現象事件』
というタイトルで、頭のどこかに引っかかっているものを引き出してくれるような、そんな気が
してきた。危機感が欠落しているとは思ったがどうしても手が伸びてしまう。
ブーンは好奇心のままになるべく音をたてないように静かにページをめくり始める。

    今日我が校に伝わる怪談に『蝶のバレッタ』と言うものがある。これは生徒が作り出した
   単なる妄想ではなく事実を基にした怪談である事が資料を調べていくうちに明らかになった。
   それらを一度ここにまとめ、二度とこのようなことが起こらないよう以後の対策を練るための
   ものとしたい。そもそも私がこの資料を手にした切掛けだが――

だらだらと長い前置きをそこまで読むとブーンはページをめくった。
402おみくじ(汚れて読めない):2006/12/15(金) 22:21:47.36 ID:bsMFZRsf0
ドクオしんじゃらめぇぇえええええ


よく考えるとドクオが一番楽に死ねるよな
403 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:22:36.98 ID:lpA65W140

    怪談『蝶のバレッタ』

    まだ記憶も薄れることの無い程度の昔話だが、突然居るだけで周りに不幸が起こるように
   なってしまった哀れな女の子がいた。女の子はそれ以来皆に怖がられ、次第にいじめに
   遭うようになってしまう。そしてある日、女の子は大事にしていた蝶のバレッタの羽部分を全て
   バラバラに壊され、それからぱたりと学校に来なくなった。それ以来不幸が治まり、それに
   関わっていた人達が口々に「良かった」などと話していたその矢先、女の子が飛び降り自殺を
   したという話が飛び込んでくる。そしてその数日後いじめっ子のリーダーの机の上が血で
   真っ赤になっているのが発見された。そこには羽が取れたままの蝶のバレッタがまるで
   飛び降りた女の子を真似るかのように置いてあり、片隅に置いてあった紙切れには
   女の子からのメッセージが書かれていた。
     『試したけれども飛べませんでした。これからあなたの羽を貰いに行きます』
   と。


(;^ω^)「……」

うす寒い空気を感じながらブーンはページをめくる。
404猪(ミニスカ):2006/12/15(金) 22:23:17.95 ID:53awi+iX0
(;´_ゝ`)「ドクオしんじゃらめぇえええええええ」
405 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:23:41.61 ID:lpA65W140

    資料『感染事件』からの引用

   四十周年の式典の翌日、我が校の教室で突然一人の生徒の身に奇妙な現象が起こる。
  その日を境に無意識ながら奇妙な現象を起す生徒が増え続けたが、学校側は事実を公に
  することは無く、職員達の手によって原因の究明を進めた。しかし、その間に生徒達の間で
  徐々に度を超えた争いが起こり始める。
   一方それと同時に生徒達の間にある噂が急速に広まる。生徒が奇妙な現象を起した時、
  いつも決まってそばにある生徒が居たと言う噂である。その生徒はいつしか『病原菌』扱いされ
  その奇妙な現象は『発症』と呼ばれ始める。そして皆のその生徒への行動はより非道なものに
  変化して行き『ワクチン』と称した集団リンチを行うこともしばしばあった。加えてその生徒に
  とっては最悪なことに、決まってそのリンチを行った生徒達、皆が『発症』したのだ。しかしながら
  その生徒自体になんら特殊な事態が起こるわけでもなく、まるで捌け口にされているとしか
  思われなかった。
   そして『発症』と『ワクチン』の悪循環からついにその生徒は自殺を図り、それ以来騒動も
  沈静化した為、今でも謎に包まれている事件である。


ブーンにはこの資料を読んだ覚えがあった。

(;^ω^)「これは確か兄者に見せてもらったものにそっくりな気が……」
406 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:24:35.35 ID:lpA65W140
そこまで気付いてブーンの頭の中が弾け始める。次々とこれまでの現象や疑問が繋がり、
答えをはじき出し始める。

 恐らくこの生徒は周りの人に何らかの異常を与える『能力』を持っていると考えるのが妥当だろうと
ブーンは思った。2つの文章を見ただけでもそれは暗に記されていて、変化を好ましく思わない
生徒達によってこの生徒は痛めつけられたのだろうと。
 もし今の事態がこの事件の再来だとしたら引き金となった人物がいるはずである。そして
その人物は今もまだ生きていることになる。
身近な人物で、今生存している、とそこまで考えて浮かんだ顔を必死にブーンは消そうとする。
仮定の上に仮定を乗せたところでそれは殆んど意味の無い疑りだと心を一度洗い流した。

(;^ω^)(そんな訳ないお……)

しかしページをめくる手は止まらない。一体この手は何を望んでいるだろうか、ブーンには
まるで分からない。
407 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:26:02.89 ID:lpA65W140
 資料1『事件の人物相関図』

 そんな見出しが飛び込んできたそのページは、色々な名前に矢印が至る所から蜘蛛の巣のように
引っ張られなかなか理解しにくい図であった。その名前の殆んどが黒で潰されており、実名を
知ることはほぼ不可能だった。
その中にポツンと潰されること無く浮かんでいた名前。全ての矢印が向かっている事件の中心人物、
怪談の主人公がそこに居た。その苗字が長岡であった。

(;^ω^)(…………)

 痙攣を起しそうなくらいの衝撃だった。こんな苗字いくらでも居るものだが、浮かべていた物が
目の前に出てくるとその衝撃は何倍も大きくなって返ってきた。
しばらくそのページを眺め、反証を探すために次へ次へとページをめくり流し読みをしていく。
しかし、読めば読むほどそれは決定的であった。都合よく貼り付けられたその年度の卒業アルバム
からの抜粋が逃れられない真実を語っていた。
 事実としてジョルジュには姉が居た。その姉は数年前にある事件の中心人物であった。
そして今、数年前の事件と酷似した事件が起こっている。そしてその中にまるで空手の一般人
のようなジョルジュが居る。
そこまで考えるとブーンは背中の奥から冷たい冷気が全身の血管を通って体を硬直させて
いくのを感じた。
ジョルジュはこれを、自分の運命を知っているのだろうか。自分がこの事件の重要なファクターであり、
そして自分だけ開花することの無い特別な能力であることを。何とも脆いジョルジュと言う命を前に
ブーンは心が締め上げられる思いであった。
そして締め上げられた心からどす黒い墨が溢れた。

ジョルジュが居なくなったらこの争いは終わるのだな、と。
408 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:27:22.49 ID:lpA65W140
(;^ω^)(……僕は何を考えてるんだお)

 事実を思い浮かべただけなのにそれを邪なものとして見るのは、見る目が邪な所為だからだ。
そう考えフラットな目で見ようと、もう一度相関図のページをじっくりと眺めるとブーンは新たなことに気付く。
塗りつぶされている生徒は皆共通して『腹部を刺され重症』や、もしくは『頭蓋骨を骨折し死亡』
など一律に悲惨な目に遭っていたのだ。まさか呪いの仕業とでも言うのか、と思いながら
そこから延びる線を辿ると、1人ぽつんとそこに誰かが居た。
その線が結ぶ関係は、加害者と被害者。そして加害者から延びる点線がジョルジュの姉へ。
点線が示す二人の関係は「姉弟」。

(;^ω^)「ッ……」

目が眩むような衝撃と、見てはいけないものを見てしまったような後ろめたい気持ちが、ブーンの
中で渦巻いて平衡感覚を狂わせる。

(;^ω^)「ちょっと待つお……頭が混乱して……」

口に出してハッと息を飲む。未だ自分は逃亡中の身なのである。
不用意に音など出してしまっては命などいくらあっても足りない。
キョロキョロと辺りを見回し、しばらく耳を澄ます。
409おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 22:27:52.23 ID:UzOAutQd0
支援
410初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:28:01.09 ID:ymUvmoBfO
おっぱい!
 おっぱい!
   _  ∩
  ( ゚∀゚)彡
  | ⊂彡
  |  |
  し⌒J
411 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:28:56.58 ID:lpA65W140
 するとブーンにとって不幸なことに図書室の引き戸が開く音がした。
聞いている瞬間に聞き間違いであって欲しいと何度も思いながらもこれからの行動を
大急ぎで考え始める。
ここに隠れ続けるか移動するか。移動はリスクが高すぎるし、あっちは遠距離の武器を
持っている、と移動の線を切り捨てた。ただ息を潜めて隠れ続ける。
そんな弱々しい抵抗しか選択肢には残っていなかった。
ここに入ってしまった時点で既にシナリオは終わりが決定してしまっていたのか。
ブーンは無力にも気休め程度と知りながら書庫の入り口からは死角になる場所で
息を殺し祈るほか無かった。

 足音が鳴る度に心臓がより大きく拍動する。その距離感に全神経を集中させこれ以上ない位に
身を小さく丸め、一度も崇めたことの無い神に助けを求めた。一度遠ざかった足音は図書室を
一周するようにしてまた近づいて来、このまま退出してくれれば幸いであったがどうにも
そこからぱたりと何の音も聞こえなくなった。位置的には入り口の前か、あるいはこの書庫の扉の前か。
あまりに長い無音のプレッシャーに視界は歪み、鼻の奥にまで緊張が込上げて来ているような
状態になる。もう既に部屋の中に侵入しているのではないかと何度顔を出して確認しようかと思ったが
それすらも怖くて出来ない。若しくは既に部屋から出て行ったから静かなのではないか、そんな
希望的観測さえも浮かんでくる。
 周囲への警戒を解かないままチラリと一瞬時計を見る。ドクオがジョルジュに呼び出されてから
およそ20分が経っていた。ブーンは視野の限界まで注意を張り巡らせながら必死に計算する。
ドクオに設けられた制限時間が5分、鍵を持ち出しセーフティーになるまでが10分。
つまり、今はもう既にセーフティーなのではないか、と。
その考えに至ってからさらに3分耳を澄ませ、しとしとと汗をかきながら息を潜めたが、ついに
覚悟を決め思い切り陰から顔を出し入り口の方を見た。
412 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:30:19.90 ID:lpA65W140
 やはり誰も居なかった。当然である、戸が開いた音がしなかったのだから。それでも聞き逃した
可能性が0で無い以上、そのプレッシャーは半端ないものであり、ブーンは汗ばんだ手を
ひんやりとした床に付け溜息を吐いた。

 書庫全体をもう一度ぐるりと眺め立ち上がると、足音を立てないようゆっくり入り口に近づき
向こうの部屋の気配を必死に探った。この扉の向こうで今か今かと弓を引き絞っている
のではないか、若しくは既に気配を感じて射る寸前なのではないか、ブーンの頭にこれでもかと
最悪のパターンが過ぎるが、今出るのも1時間後に出るのも同じこと。それに、今はジョルジュの
元に行ったドクオが心配であった。
そこまで考えてブーンは兄者がここに来る可能性を思い出した。ドクオ一人で足止めなど
本当に出来たのだろうか。そう考えるとブーンの足は途端に竦み、そこから動けなくなってしまった。

(;^ω^)「う……うぅ……」

しかしそれならなおさら早く駆けつけなければならないし、ここに長居するべきではない。
頭は分かっているのに足が本当に地面に引っ付いているみたいだった。
413 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:31:28.22 ID:lpA65W140
(;^ω^)「お……おぉ……」

ブーンは近くにあった辞書を2冊手に取り、1冊を左手で左胸に、もう1冊を右手で額の前に翳し、
気休めの防具を纏って思い切って扉を開けようとする。

(;^ω^)「手、手が余ってないお」

自分自身でも呆れた行動をとっていると思った。
両手が塞がったまま数秒の間戸惑った後辞書を捨て、覚悟を決め勢いに任せて扉を開けた。
何が居てもブーンは切り抜けてジョルジュの元へ行くつもりだった。
呼吸を忘れ、血走った目で見た扉の向こうには、足があった。

(;^ω^)「ひぁ!」

一瞬ジャンプしているのかと思った後、それは浮いているのだと分かった。
そして浮いているのではなくぶら下がっているのだと理解した。
見上げたそこに、ギョロギョロとした目つきの弟者が膨れた顔で首を吊っていた。
414 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:32:33.25 ID:lpA65W140
(;^ω^)「うっ……ぁっ……うぇっ!」

ブーンは反射的に嘔吐いて目を伏せた。胃がビクビクと上下に痙攣し頭の中をぐるぐると弟者の
顔が飛び回っていた。頭がおかしくなる。オバケよりも信じられない物を見た気分であった。
焼きついて離れない顔のせいでもう顔を上げられずに、ただブーンは床を見つめて落ち着くのを
待っていた。しかし、頭上にあの顔があるのかと思うと全身にこれ以上無いほど鳥肌が立ち続ける。

( ;ω;)「ぅ……えぅぅ…・・・っ! ……っ!」

痙攣が治まらないままその顔から逃げるようにして図書室を出る。後ろからあの顔が追って
きているのでは無いかと思うと背筋がゾクゾクとしだして全く治まらない。

( ;ω;)「うぅ……ふぅぅぅ……ふぇぇぇ……」

だらしない子供のような情けない声を出しながらブーンはただ廊下をどこへとなく歩く。
床が曇っていると目を擦ると、いつの間にか目には涙が溜まっていた。さっきから嘔吐いて
いるせいだろう。

 何故弟者が首を吊っているのか、自分は助かったのか、今この学校は何が起きているのか、
とうにパンクした頭を抱えながらブーンは保健室を目指した。正常じゃない判断力の中、
記憶を頼りにその身の安全をまず求めた。
415初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:32:47.98 ID:sthfTqE+0
弟者あああああああああああああああああああああああっ
416 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:33:47.81 ID:lpA65W140
( ;ω;)「ふぅぅん……ぅぅん……」

体が脱力して鼻から抜けるような声ばかりが出る。とにかく何処かに安心して腰を下ろしたかった。
階下に行こうと階段へ一歩足を出すも、足の裏がしっかりと地面を踏めずにバランスを崩し、
ブーンはそのままもんどり打って踊り場に転落する。

( ;ω;)「ひっ! っ! っ!」

背中を打ったためか、先ほどとは違う場所が痙攣し始め呼吸が極端に浅くなり、なんて自分は
非力で情けないんだとさらに涙があふれそうになる。

(;゚∀゚)「ブーン!」

ジョルジュの声にブーンは起き上がる。友達だ、安全だ、助かる、とブーンは安心し涙ながらに
ジョルジュの名を呼んだ。

( ;ω;)「ジョルジュ、弟者が……」
(;゚∀゚)「弟者に何かされたのか? 怪我は無いか?」
417おみくじ(汚れて読めない):2006/12/15(金) 22:33:51.40 ID:bsMFZRsf0
解除したやつ死ぬのか
救えないな〜
418 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:34:40.48 ID:lpA65W140
 が、ある記憶が心配するジョルジュの声からブーンの意識を遠ざける。
それは書庫で見た相関図。
事件の中心のジョルジュの姉。何人もの人を手にかけたその弟ジョルジュ。
断片的な記憶が辺りを飛び回りブーンに警告をしているかのようだった。

(;゚∀゚)「……どうした? 大丈夫か?」
(;^ω^)「あ、いや……大丈夫だお」

 しかし、ブーンにそれを問いただす勇気は無かった。もし聞いた途端に豹変したらどうしようか、
もし本当なら否定するに決まっている、こちらが気付いてしまったと知りながら善人を演じられたら
もう今の弱った精神では耐えられないだろう、と。しかしそもそもあの資料が嘘だとしたら。
そうも考えブーンは悩み続ける。

( ゚∀゚)「まぁいい、話は後だ。とにかく一旦引き上げよう」
(;^ω^)「……お」

それきりしばらく、辺り一面が地雷地帯のような気がしてブーンは一言も喋れなかった。
419 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:36:13.02 ID:lpA65W140
 無言のまま保健室へと戻った二人はそれぞれベッドに腰掛け、互いに空気を探り合っていた。
未だに喋られずにいるブーンの代わりに、ジョルジュは少しして口を開き始める。

( ゚∀゚)「ブーン、その……今一体どうなってる?」
( ^ω^)「どうなっているって?」

気持ちが落ち着くまでは下手なことを喋らぬよう、相手の会話を引き出すことにした。
ただオウム返しに答え、会話を引き伸ばす。

( ゚∀゚)「今の状況だよ。俺が行ってからのことはまだ知らないし、そこら辺整理しようぜ」
( ^ω^)「……」

 言っていいものなのかブーンは悩んだ。勿論今すぐに情報を共有したい、いや、それ以上に
今まで起こったストレスを伴う出来事を誰かに話し、すっきりしたい。ブーンはその衝動を
強く感じていた。
だが、感情から来る行動がプラスになることはあまり無いとブーンは話を保留することにした。

( ^ω^)「そういえばショボンは、それにツンは……あれ、でも捕まった……ドクオ!」
(;゚∀゚)「……」
(;^ω^)「……ちょっと待つお。頭が混乱して……」
( ゚∀゚)「……ドクオは死んだよ」

全身の体毛が逆立った気がした。足の裏から心臓を通って頭の先へ電流が流れ、眼球が
ブルブルと揺らぎ、血液が喉元から漏れていくような感覚にブーンは陥った。
420 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:37:24.53 ID:lpA65W140
(;^ω^)「……いやいや」
( ゚∀゚)「ショボンも……行きがけに見て……しっかり確認はできなかったけど……多分」
( ^ω^)「……」
(;゚∀゚)「ブーン?」
( ^ω^)「何言ってるんだお、ジョルジュ」

伝えられたニュースに反してブーンの口調は軽かった。

(;゚∀゚)「いや、でも……」
( ^ω^)「でもも何もないお。ドクオやショボンが死ぬわけ無いお」
(;゚∀゚)「お前、何言ってるんだよ」
( ^ω^)「だって、友達だお? 僕の友達だお? そんな死ぬとか、ゲームじゃあるまいし」
(;゚∀゚)「……ブーン」
( ^ω^)「ツンだって何処かで隠れて合流するチャンスを探してるんだお。早く探しに行かないと……」

そう言って立ち上がり扉のほうへと歩き始めるブーン。それに気付きジョルジュは止めようとする。
421書初め(給料倍増):2006/12/15(金) 22:37:40.42 ID:96+LFEVs0
いったい何人死ぬんだ・・・
422 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:38:06.04 ID:lpA65W140
(;゚∀゚)「ブーン!」
(#^ω^)「ウルサイお! 僕は今から皆を探しに行くから忙しいんだお!」
(;゚∀゚)「落ち着け! ドクオは死んだ! 俺が見たときにはもう……もう掌しか……」
(#^ω^)「あ〜! あ〜! あ〜!」

意味不明な声を出しながら頭をやじろべえのように何度も振り続けるブーン。

( ゚∀゚)「……わかった、じゃあ確かめに行こうぜ」
( ^ω^)「……お? でも……でも外は危険だお」

先ほど自分であのような行動をしながらこんなことが口から出るとは、自分はやはり臆病
なんだなとブーンはこれまでの行動を回想、反省し始める。

( ゚∀゚)「なんていうかさ……もう疲れたって言うか、死んでもいいかなって思うくらい……あ、悪ぃ」

しかしブーンはジョルジュの失言にあまりピンと来なかった。それと言うのも既に頭の中では
これから廊下に出たときの危険、自分の身の危険のことを考えていたからだ。

( ^ω^)「……あわせる顔が無いお」
( ゚∀゚)「……」

そしてしばらくの静寂が訪れた。
423初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:38:48.44 ID:sthfTqE+0
バッドエンド
完。
424 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:39:14.64 ID:lpA65W140

( ゚∀゚)「兄者は居ないし、クーはお前に手は出さない。しぃはいきなり戦うようには見えないし
     お前の話だと弟者も居ない、と」

 とりあえず二人でこれまでの出来事を整理していた。勿論ブーンは書庫での出来事を口には
しなかったし、それとなく聞くことすらしなかったが。

( ゚∀゚)「これならいきなり死ぬってことも無いだろ。まぁお前の話が本当ならな」

ブーンはその言葉が軽く癇に障った。とは言え日常の範囲内ではあったが、小さな報復を行う。

( ^ω^)「ジョルジュだって。兄者が死んだかどうか怪しいもんだお」
( ゚∀゚)「嘘吐いて何になるってんだよ」
( ^ω^)「こっちだって」
( ゚∀゚)「……」
( ^ω^)「……」

果たしてこんな感じだっただろうか。ふとブーンは二人の関係を顧みずには居られなかった。
425猪(双子の妹):2006/12/15(金) 22:39:36.89 ID:x/axxYaF0
>>423
ここで終わりは酷すぎるだろwwww眠れなくなるwwwww
426 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:41:41.86 ID:lpA65W140
 二人は保健室を出ることにした。他に生きている者が居ないか、その可能性に賭けたのだ。
勿論生存を確かめて安心するということが目的なのだが、どちらかと言うと今はとにかく誰かと
合流してこの何ともいえない雰囲気をどうにかしたかったと言うのがブーンの本音だった。

 すぐに辿り着いたのはドクオと兄者が死闘を繰り広げた場所だった。
勿論ジョルジュに言われてそこを確認したのだけれども、言われなくてもここで人が死んだことは
一目瞭然であった。
辺りには既に縁が乾燥し始めている血溜まりが(思っていたよりも大分少ない感じはしたが)
幾つかあり、またそこから赤い線やら靴跡が出たりしているのを見るだけでも気が滅入った。
 そして何かブルブルとした塊が視界に入った瞬間、それ以上その塊を観察したくないと
反射的に目を背けた。瞼に焼きついた赤褐色の血に濡れる髪や突出している骨のような物、
ピンク色をした白子のようなものが乗っかっているその奥の視線。奇麗事など並べる必要は
無いと思いながらも、ドクオのように見えたその塊を汚い、怖いと思ってしまった自分に、
ブーンはまた情けなさを感じた。そして孤独を感じる深い悲しみと、どうしたらいいのか分からない
怒りがブーンの中をドロドロと粘っこく循環していた。

 そしてふと何かに気付いた様子でブーンはジョルジュの方へと振り向く。
427おみくじ(やぶれた):2006/12/15(金) 22:42:27.89 ID:izTK+Bqr0
全てが俺の予想の斜め上を行きやがるwwwすげぇwww

(;ω;)
428 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:42:52.57 ID:lpA65W140
( ^ω^)「ジョルジュのせいだお」
( ゚∀゚)「……え?」
( ^ω^)「ジョルジュのせいでドクオは死んだんだお」
( ゚∀゚)「……」

言ってはいけないことを言っている、そうブーンは自覚していた。しかしそれは涙のような物で、
止めようとして止められる物ではなく、次から次へと口をついて出てくるのにただ甘んじることしか
出来ないのだ。

( ^ω^)「なんでジョルジュは無傷なんだお? ドクオが死んで、なんでジョルジュは?」
(;゚∀゚)「いや、それは……」
( ^ω^)「全部ジョルジュのせいだお。もう……」

そこまで言葉が漏れてやっと喉のバルブが閉まった。しかし、肌に感じる空気は既に手遅れだと
言うことを痛いほどに伝えてきている。それに耐えられずにブーンはその場から無言で立ち去った。
間違いなくブーンは逃げた。けれどもジョルジュは怒りのあまりこの場から立ち去ったと思うかも
知れない等と今更ブーンは体裁の心配などをしていた。若しくは自己防衛ともいえた。
429初夢(声優とデート):2006/12/15(金) 22:42:53.68 ID:CLjLTjEh0
こわい・・
430猪(貧乏):2006/12/15(金) 22:44:35.42 ID:gF305mqf0
私怨
431 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:44:36.64 ID:lpA65W140
 半ば自棄になりながらブーンは一人屋上を目指す。屋上にはツンが居るはず、それにショボン
だって居る。そう、帰ってこないのは屋上で2人話しているから、屋上の扉を開けて敵に襲われるのが
怖いからだ、と色々と都合のよい現実を練り上げながらブーンは階段を登っていく。

( ^ω^)「ツン……ショボン……」

いつの間にか口からは友の名が出ていた。身の安全を保障されている場所はあった。学び舎で
いつも勉学を共にした学友も居た。しかし心は一向に安全にならず、学友は黒い影がちらついて
まるで精神の磨耗が止まらない。

――何故自分がこんなに辛い思いをしなければいけないのか。悪いのは誰だ。悪いのは誰だ。
他人を貶めるな。僕が弱いからいけない。いや、弱い友も戦い僕は結果護られた。
僕は救いようの無い弱者。今もただ問題から目を背け救いだけを求めている。
僕を弱いままにしたのは誰だ。責任を転嫁するな。僕が悪い。あぁ、あぁ――

 これ以上ネガティブな思考へ下っていかないようにブーンは必死に階段を上った。
とにかく誰かに会わなければ頭がおかしくなってしまいそうだったのだ。視野は狭まり、柔らかくも
重々しい真っ黒な物が四方八方からブーンを圧迫し殺そうとしていた。
そして辿り着いた屋上。開けられた扉。その扉を開けたから黒いものが漏れたのだろうか、
外は真っ暗だった。一歩一歩人影を探すもそれらしいものは見つからない。小さい頃家の鍵を
落として必死に探して時の事をブーンは俄に思い出した。それが幸いしたのか、それともやはり
それは不幸か、床に落ちていた探し物が見つかった。すっかり外に晒されたままで冷えきった
彼女に触れると、ブーンは吼えた。
432初夢(声優とデート):2006/12/15(金) 22:46:25.29 ID:CLjLTjEh0
しぃはどうなったんだ・・・
433 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:46:38.84 ID:lpA65W140
( ;ω;)「ぁぁぁあああ! 僕はぁっ! ……あぁ! 僕は――」

救いようの無い弱者だ。
再度卑下し、ブーンは今更ながらに抱きかかえたその華奢な肩を、温めなおすようにグッと
自分の体に引き寄せた。カサカサと乾燥した血液を払ってやると、その下にぷっくりと膨れた
傷口があった。つい触れてしまい痛かったかとツンの顔を見るも反応が無い。当たり前だった。
しかしそんな風にツンを抱えながらも、恐怖感とともに何秒か置きに後ろを確認するのだった。
大切な人の死を前にしても暗闇に怯え自らの身を案じ、後ろを気にする自分はどこまでも卑しい。
ブーンは頭の中で自分をすぐ先の崖からグラウンドへ何度も突き落とした。
死んでしまえ、死んでしまえと。

( ;ω;)「……?」

――落とす? 屋上は、こんな場所だっただろうか。ここには確か――

     「内藤君」

背中の方から声が聞こえ、ブーンは少しばかりドキリとした。振り向いてみるとドアの方に闇よりも
更に濃い人影と、それを確かにするオレンジ色の光点が浮いていた。

(*゚ー゚)「迎えに来たよ」

何故かその声がとても心地よい物に感じられた。
434猪(ミニスカ):2006/12/15(金) 22:47:49.74 ID:53awi+iX0
今北用

  / ̄\   ショボンが焼かれたし    / ̄\
  |/ ̄ ̄ ̄ ̄\           / ̄ ̄ ̄ ̄\|
 |   /V\\\          |  /V\\\ 
 | / /||  || |           | //|   || |
 | | |(゚)   (゚)| |           | | (゚)   (゚) /|
ノ\|\| ( _●_) |/           \| ( _●_) |/|/\ ドクオも死んじゃったの
 彡、   |∪|  、` ̄ ̄ヽ    /彡、   |∪|  ミ  \
/ __  ヽノ   Y ̄)  |   (  (/     ヽノ_  |\_>
(___)       Y_ノ    ヽ/     (___ノ
     \      |       |      /
      |  /\ \     / /\  |
      | /    )  )    (  (    ヽ |
      ∪    (  \   /  )    ∪
            \_)  (_/
     / ̄\
     |/ ̄ ̄ ̄ ̄\
   (ヽノ// //V\\ |/)
  (((i )// (゜)  (゜)| |( i)))   そのうえ弟者は首・つ・り☆
 /∠彡\|  ( _●_)||_ゝ \ 
( ___、    |∪|    ,__ )
    |     ヽノ   /´
    |        /
435初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:48:59.38 ID:sthfTqE+0
シャキンが死んだ?時の、あの声はしぃの?
436 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:49:13.49 ID:lpA65W140
 蛍光灯が照らす校舎の中をしぃに連れられてブーンは歩く。しぃについていったのは酷い
孤独を紛らわすためで、隙を狙って仇を討とうだとかそんなことはブーンの頭に微塵もありは
しなかった。憎くないといえば嘘だしこんなことになった原因はやはりしぃにあるとは思ってはいた。
けれども心ががらんどうで頭が満杯のこの不安定な状況では、自分を導いてくれる者にただ
惹かれ、思考や判断を放棄してしまうのだ。
 今でも楽しそうに何かの鼻歌を歌いながらブーンを只導くばかりでこの事件にはさも関係が
ないかのように見えた。あるいは本当にしぃはただゲームの説明をしただけで何が起きているかは
知らないのでないか、とさえ思えるほどに純真な様をしていた。

(*゚ー゚)「は〜い、どうぞ」

 着いたそこは音楽室であった。開けられた扉の向こうからは何かしらの音楽が聞こえている。
ブーンは只それに従い中へ入ると、少しばかり歩いてしぃの方を向き次の指示を待った。

(*゚ー゚)「どうしたの? そこら辺に座ってよ」
( ^ω^)「……しぃ」
(*゚ー゚)「なぁに?」

非常に不謹慎なことではあるが、ブーンはしぃに強く惹かれていた。日暮れの密室に居るからか、
それとも心を締め付ける孤独感から逃れる為か、はたまたその潔白さに憧れたからか。
せめてもの救いが、心の求めている物が劣情ではなく庇護であることだった。
437 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:50:20.34 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「あ、もしかして……駄目だよ、誰も居ないからって変なこと考えちゃ」
(*^ω^)「ち、違うお!」
(*゚ー゚)「赤くなってるよ〜」

間違っていることは確かだったが、自分がしぃを求めていることを見透かされたようで、ブーンは
思わず赤面してしまう。しぃには本当に人の心を見透かす能力でもついているのではないか
とさえ思った。

( ^ω^)「……皆居なくなったお」
(*゚ー゚)「そうだね」
( ^ω^)「……」

口に出すとまた悲しみがこみ上げてくるのを感じる。あの日々はもう戻ってこないのだと。
しかし、しぃはそんなブーンをただ笑顔のまま見つめるばかりであった。

(*゚ー゚)「ねぇ……内藤君」
( ^ω^)「ぉ?」

声が上擦らないようゆっくりと小さめに声を出す。
438 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:51:23.04 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「内藤君は楽しいこと、好き?」
( ^ω^)「お?」

こんな場面で出す話題なのだろうか。ズレたその質問に頭が適応せずに答えが浮かばない。
しかし気にする風も無くしぃは話を続ける。

(*゚ー゚)「私は好きだよ。ていうか嫌いな人なんて居ないよね、楽しいんだもん」
( ^ω^)「……たしかに」
(*゚ー゚)「うんうん、でもね、ボクはちょっと人よりそれが強いんだ」
( ^ω^)「それ?」
(*゚ー゚)「好きの度合いが」

そう言ってしぃは当たり前のようにタバコを取り出し、火を点けた。一度それをふかしてもくもくと
煙を吐き、再度咥える。タバコの先が一層その光を強くしたかと思うと、うっとりとした表情の
しぃの、そのしっとりと濡れた唇の先から直線的に紫煙が吹き出る。

(*゚ー゚)「……嫌い?」
( ^ω^)「……」

何が、と聞こうとしたがこの雰囲気を壊してしまいそうでブーンの口はそれを許さなかった。
それに辺りに広がり始めた臭いはタバコのそれとはまた違っていた。まるで野草が燃えるような
何処かで嗅いだ憶えのある臭い。こんな怪しい夜だっただろうか、だがブーンは思い出せない。
439猪(貧乏):2006/12/15(金) 22:52:12.41 ID:gF305mqf0
紫煙
440 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:52:26.41 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「楽しいことって色々あると思うの」

話の主導権はすっかりしぃにあり、ブーンはただそれを聞きながらしぃを見るばかりである。

(*゚ー゚)「みんななんで犯罪をすると思う?」
( ^ω^)「犯罪……?」
(*゚ー゚)「そう、犯罪」

また話が飛んでいるとブーンは感じ、続きを促したがそれをしぃが許さなかった。どうあれ意見を
聞きだすつもりのようだ。仕方なくブーンはあれこれと考えを巡らせ語り始める。

( ^ω^)「……例えば強盗ならお金が欲しいからだし、殺人なら憎い人が居たから……」
(*゚ー゚)「うんうん、それで?」
( ^ω^)「麻薬は気持ちよくなるらしいし、その、性犯罪は言わずもがな……」
(*゚ー゚)「うん。共通しているものはなんだと思う?」
( ^ω^)「共通? ……人に迷惑をかける、とか?」
(*゚ー゚)「あ〜、うん。だから禁止されている。正論だね」
( ^ω^)「……」
(*゚ー゚)「ボクはねぇ、全部が『楽しい』ってことで共通してるって思ったんだよ」
( ^ω^)「……楽しい?」
441 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:53:09.81 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「うん、お金が増えれば楽しい、憎い人が居なくなれば楽しい、麻薬、レイプは楽しい……って」
( ^ω^)「……でも、人を殺すのは……」
(*゚ー゚)「それはちょっと複雑だよね。でもやりたい事がストレスの減る事、まぁ結果的にストレスが
    増えることになってもそれはどんな楽しいことにも起こり得ることだし、これも広義的に
    考えればそうかなぁって」
( ^ω^)「……」
(*゚ー゚)「別に全てが厳密にそうでなくてもいいんだよ、可能性があれば。それでね、ある日思ったんだ。
    禁止してるのは禁止しないと自然と皆がするから。自然と皆がするってことは楽しいから
    なんだなって」
( ^ω^)「……」
(*゚ー゚)「と言うことはさ、法律の本って実はすごい娯楽の指南書ってことになるなぁって」

なるほど、とブーンは納得した。それでも何か反論したいと思うのはそれが間違って
いるからなのか、ただ倫理観を刺激されたからなのかその判断がつかない。
ただ目の前に居るしぃが、酷く幼く見えたのは確かだった。
442 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:54:35.16 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「悪いことをすると楽しいってのは確かに思い当たる節はあるでしょ? 昔退屈してた
    ボクがこれに気づいた時はワクワクして仕方なかった。だって自分の知らない楽しいことが
    いっぱい見つかるかも知れないんだもん」
( ^ω^)「でも、捕まるお」
(*゚ー゚)「そうなんだよね。いくら上手く手を回しても捕まる可能性は0にならないんだよ。
    仕方ないからボクは色々と捕まらない程度に楽しいことを始めたんだ。でも全然
    ダメ、すぐに慣れちゃうんだ。でもね、そんな時この力を手に入れたんだ」

そう言うと部屋に流れていた音楽が急に切り替わった。一転してダイナミックな曲が流れ始め
しぃは満足げに一度目を瞑る。激しい音色の和音が立て続けに聞こえてきたかと思うと、
突如として流れるような優雅な旋律へと切り替わる。そしてまたダイナミックな旋律へと
目まぐるしく切り替わる。

(*゚ー゚)「飛翔……この曲みたいにボクはどこまでも羽ばたけるような気持ちになったんだ」
( ^ω^)「しぃの力……」
(*゚ー゚)「すごいよ、ボクは銃だって作り出せるんだ。しかもちゃんと動くんだって」

少し興奮した面持ちでしぃは両手を頬にあて顔を傾けうっとりと目を瞑る。
443初夢(みんなと仲間だった):2006/12/15(金) 22:55:07.21 ID:LLMAtKYzO
しえん
444 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:55:49.42 ID:lpA65W140
(;^ω^)「ま、まさか誰か撃ったのかお」
(*゚ー゚)「さぁ? ボクにはわからないなぁ」

その円らな目が一層輝きを増した。ブーンは少なからず身の危険を感じ、1度出口を見た。
しかし出口の向こうは真っ暗で、寒い、そんな感じがしてまたそこから目をそらすのであった。

(*゚ー゚)「内藤君、現実はつまらないよ」

急にしぃがそんなことを言ったものだからブーンはまた思考を束縛される。

(*゚ー゚)「ボクは何かに依存してなきゃ、とっても毎日笑ってなんか居られない。そんなボクには
    内藤君が眩しかった」
( ^ω^)「しぃ……」

 あの日のメールは本当の事だったのかとブーンは今更ながらショックを隠せなかった。
ブーンも毎日仮面を被って過ごしていた。そしてしぃは何も無く、ただ心から笑っているのだと
そう思っていた。多少のショックはあったが、それよりもブーンの心を支配したのは仲間意識だった。
自分と同類が居た。何故2人はもう少し早くお互いに気付けなかったのか、と。
しかし、それでもブーンはまだ自分の仮面を告白することに躊躇っていた。
445初夢(熱湯風呂):2006/12/15(金) 22:56:07.68 ID:sthfTqE+0
てか
しぃ
って一人称「ボク」なんだね
446 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:57:40.37 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「内藤君。ボクを必要として。ボクを、求めてくれないかな?」
( ^ω^)「……それは」
(*゚ー゚)「大人が咎めるいやらしい事は、きっと楽しいことだよ」
( ^ω^)「……」

 この時ブーンは決意したわけでもないのに、しぃの体を一通り眺めた。その後そんなことを
していいのだろうかと思いながら心が傾き始めているのを感じる。頭の中ではしぃの肌の感触
なんかが再生されようとまでしていた。しかし頭の隅から蘇る記憶がブーンに歯止めをかける。
自分を好きだと言いながら死んでいったツン。聞いた当時は冗談か何かだと思った。
けれども時間が経って改めて考えるとそれはブーンの心に絡みつき、けっして離れなく
なっていたのだ。だがもうツンは居ない。そして自分は惨めに生きながらえながらしぃを求めようと
している。そこまで考えブーンはまた自己嫌悪の念を抱きつつ、何処かで免罪の根拠、
あるいは妥協点を探し、さらにそれは深くなって螺旋を落ちていく。

(;^ω^)「僕は……」
(*゚ー゚)「難しいことを考えないで。したいことをすればいいの……」

ゆっくりとブーンに近づき、骨が入っているのかと思わせるような柔らかく滑らかな動きで
科を作ってくるしぃに目が奪われる。幾許か自分より背丈が低いしぃのその見上げる目に
ブーンは指先の一本から呼吸のリズムまで拘束され、次第に思考さえも囚われていく。
そしてその決心がぐらついた。

(;^ω^)「僕は……その……」
(*゚ー゚)「……ごめんね」

降伏しようかと思ったその瞬間にしぃに袖にされ、ブーンは戸惑いと憤りを覚えた。
ここまでされて一体何なのだと。果てには掴みかかろうかとまで思ったが、頭から甘い蜜が
抜けていくと、状況に変化があったことに気が付いた。
447 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 22:59:15.02 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「良くないよ? そのノゾキ趣味」
( ゚∀゚)「いやぁ、入ろうと思った途端こんなだから動けなくなってよ」
( ^ω^)「……」

いつのまにか入り口にジョルジュが立っていたのだ。ブーンはジョルジュの顔をしばらく見つめ、
目が合うと気まずさからすぐに目を逸らした。

(*゚ー゚)「ジョルジュ、邪魔しないでよ。ボクだけジョルジュに協力するのは不公平だよ」
( ゚∀゚)「いやいや、だから俺は本当にたまたま――」
( ^ω^)「協力?」

小さい石が頭の上にこつんと当たったような、そんな違和感。それは落石が起こる前触れ。

( ゚∀゚)「……」
(*゚ー゚)「そう、協力」
(;^ω^)「いや、でも……」
(*゚ー゚)「内藤君ならもう気付いてると思ったんだけど……」

気付いている。その言葉で連想される書庫での出来事。ジョルジュの過去。

( ^ω^)「ジョルジュ……」
( ゚∀゚)「……その」
(*゚ー゚)「ジョルジュが全ての原因ってのはわかってる?」
( ^ω^)「……お」
(*゚ー゚)「じゃあやっぱりある程度の事は知ってるんだね」
( ^ω^)「あれは……本当なのかお?」

しぃを見て、そしてジョルジュの顔を見た。
気まずそうなその表情に加え反論が無いことにブーンは目眩がした。
448巫女と初詣:2006/12/15(金) 23:00:13.60 ID:gzYnFOeD0
449 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:00:17.96 ID:lpA65W140
( ^ω^)「……ジョルジュ、僕達は……」
( ゚∀゚)「違う」
(#^ω^)「違うもんか! ドクオは! ツンは!」
(#゚∀゚)「違う!」

2つの怒号が相殺し、部屋がしんと静まり返る。

( ゚∀゚)「俺は今回誰も殺してない」
( ^ω^)「そんな奇麗事……ジョルジュはとっくの昔に人殺しに――」
( ゚∀゚)「お前は」

ジョルジュの瞳が、まるで歯車がしっかりと合ったかのようにブーンを捕らえて動かなくなった。

( ゚∀゚)「お前は肉親を殺されて何も無かったと出来るか? 友達を殺されて騒いでるお前が」
( ^ω^)「僕は誰も殺してない」
( ゚∀゚)「俺と同じこと言ってるぜ。何故弟者が死んだ?」
(;^ω^)「それは……仕方なく……」
( ゚∀゚)「面白くないぜ。俺だって仕方なかった、頭がどうにかなりそうなほどグチャグチャになってな」
( ^ω^)「だからって人を殺して良いわけがないお!」
( ゚∀゚)「じゃあ俺が死ねばよかったってのか」
(;^ω^)「誰も……そんなこと……」
( ゚∀゚)「俺は間違いなくあのままだと死んでたぜ。同じ場所で飛び降りしてな」
( ^ω^)「……」
( ゚∀゚)「現に行ったんだよ、そこまで。そしたらよぉ……そこに居た奴らが話しててよ」

ジョルジュの顔が段々と歪んでいくのが見え、ブーンはその見たことの無い表情に少しばかり怯む。
450 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:01:35.31 ID:lpA65W140
( ゚∀゚)「『ここで死んだらしいよ』『まさか本当に死ぬとかウケる』『めんどくさい事にしやがって』だってよ」
( ^ω^)「……」
( ゚∀゚)「全員同じ目に遭わせてやろうって思ったよ。不思議なもんで全然その場で感情的に
     なって殴るなんてことは無くてさ、家に帰って飯も食わずにずっと全員きっちり殺しきる
     方法を考えてたよ」
( ^ω^)「でも……」
( ゚∀゚)「でも結局逃げられた奴も居たんだけどなあの時俺まだ小さかったし。でもそのお陰で
     全部色々と変な理由、事故だとかが付けられて俺は何もなかったけどな」
( ^ω^)「……どうして今になって」
( ゚∀゚)「今になって!? おいおい、止めてくれよ。今までずっとだよ。俺はずっと探してたんだぜ?
     まぁ、勿論今こうして動き出したのは理由があるさ」
( ^ω^)「……見つかったとか?」
( ゚∀゚)「いや、見つかったらそのまま刺せばいいだけだろ。力に気付いたんだよ。姉ちゃんと同じ
     腐れた力に」
( ^ω^)「じゃあやっぱり……」
( ゚∀゚)「あぁ、皆が超人になったのは俺が力を目覚めさせたからさ」
( ^ω^)「なんでそんなことしたんだお」
( ゚∀゚)「人手は多いほうがいいだろ?」
(#^ω^)「なんで殺し合いなんかさせたんだお!」
( ゚∀゚)「おいおい、そりゃ俺じゃねぇよ」

そう言ってジョルジュは視線をブーンの背後に移したが、しぃは目を丸くして「何?」と言わん
ばかりの表情で首を傾げた。
するとそこへBGMとは違うメロディが流れた。一瞬何事かと思ったがどうやらしぃの携帯が
鳴ったらしく、どこからか取り出した携帯をしぃはスライドさせ耳に当てた。
451 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:02:53.82 ID:lpA65W140
(*゚ー゚)「もしもし? うん、うん、はい、りょーかい」

簡潔な受け答えだけをして、しぃは携帯を仕舞うと立ち上がり目を瞑って大きく伸びをした。

(*゚ー゚)「それじゃあ、あとはお若い2人に任せて……じゃあね」
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待つお!」
(*゚ー゚)「?」
(;^ω^)「クーかお?」
(*゚ー゚)「クー?」

電話が来て何か話をし、その場を後にする。その流れを見れば誰かに会いに行くのは自明だった。
問題は誰に会いに行くのかである。今この学校で無事でいるのはクー位しか思いつかず、
そのクーがしぃに電話したのだとしたら、是非自分もあって話がしたいとブーンは思ったのだ。

(*゚ー゚)「内藤君。クーは死んだよ」
( ^ω^)「……死んだ?」

あのクーがどうしたら死ねるというのか。そして何故それをしぃが知っているのか。
ブーンは情報を欲する。
452黒豆(八粒):2006/12/15(金) 23:04:09.29 ID:czMPnG720
何か難しくていまいち背景描写がわかんね
453 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:04:11.87 ID:lpA65W140
(;^ω^)「……死んだなんて」
(*゚ー゚)「本当だよ。クーはツンとじゃれ合って死んだよ。自分のお話に憧れたまま」
(;^ω^)「……ツンと? じゃあツンを殺したのは……」
(*゚ー゚)「勿論」

それだけ言ってしぃは頷いた。しかしブーンはまるで納得が出来ない。
何故あのクーがツンと戦って、そしてツンを殺すまでに至ったのか。
なにより何故クーが死んだのか。まるで理解が出来ない。

(*゚ー゚)「でも勝負はツンの勝ちって感じだったかなぁ。結果は引き分けだったけど」
(;^ω^)「でもツンは……」
(*゚ー゚)「いやぁ中々頑張ってたよ。あんな使い方あるんだなって。攻撃ではなかったけどさ」
(;^ω^)「…………」
(*゚ー゚)「勿論ボクはただ見てただけでどっちの肩も持たなかったよ? ちょこっと会場は弄ったけどね」

そういって目を細めると、白い歯をちらつかせてしぃは無邪気に笑った。

( ^ω^)「ツンが……」

あれっぽっちの力でツンがあのクーに1人立ち向かったと言うのか。
どうしてそんなことが出来たのだろうか。そしてブーンは唐突に孤独を感じ始める。
454 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:05:40.55 ID:lpA65W140
――ツンは戦っていた。あんな頼りない力だけで、1人負けじと戦っていた。
ドクオだってそうだ。完全に不利とわかっていながら立ち向かって、最後には引き分けにまで
持ち込んだのだ。
その時、僕は何をしていただろうか。ただ彼らに頼り、逃げ、震え、既に死んでいる者にすら
無様に泣き喚いていた。ただそれだけだ。

( ^ω^)「僕は……」

――今日だけで何度自己嫌悪に陥ったか判らない。
仲間が居たと思っていた。弱い力を持つ仲間が居たと思っていた。けれどそれは違った。
弱い力を持っていながらツン達は果敢に戦い、知恵を絞って、決して弱いままに落ち着かなかった。
結局弱いのは僕だけだったのだ。そんな僕を庇って……

 ブーンは孤独と情けなさで心臓が潰れそうだった。
そしてそれを何とかしようとする気力も全く湧いてこなかった。
1人、また1人とブーンの目の前から友が去っていくのをただ感じていた。

(*゚ー゚)「すっかり自分の世界入っちゃったし……。じゃあね」

そう言ってしぃは軽い足取りで音楽室から出て行ってしまった。その様子を2人言葉も無く
眺め、完全に姿が消えてから唸り声の混じった溜息を吐いた。
455 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:08:25.94 ID:lpA65W140
( ゚∀゚)「ちぇっ、しぃのやつうまく逃げたな」
( ^ω^)「……」
( ゚∀゚)「なぁ、ブーン」
( ^ω^)「……誰だお?」
( ゚∀゚)「?」
( ^ω^)「ジョルジュ、ショボンは……」

静かにジョルジュは頷く。

( ^ω^)「じゃあ誰なんだお」
( ゚∀゚)「は? 何がだよ」
( ^ω^)「しぃが会いに行ったのは誰なんだお」

頭の中で消えて行った人たちを確認すると、誰も残っていなかったのだ。
それじゃあしぃは今誰と話し、誰に会いに行ったと言うのか。ブーンの心がざわめき始める。

(;^ω^)「ジョルジュ、まだ隠してることとか無いのかお」
( ゚∀゚)「別にねぇよ」
(;^ω^)「本当かお!?」
( ゚∀゚)「しつけぇな!」

と言うことはしぃは死人に会いに行ったとでも言うのか。あらゆる可能性をブーンは考え続ける。

( ^ω^)「死人……?」

そう呟いた瞬間、静かな空間へとどこか遠くの銃声が響いてきた。
456猪(入れ歯):2006/12/15(金) 23:09:16.57 ID:XVex6Wua0
支援
457初夢(アフリカのシマウマだった):2006/12/15(金) 23:09:42.27 ID:sthfTqE+0
あぁああぁん誰だか気になって眠れないよぉぉぅぉう
458お年玉(なし):2006/12/15(金) 23:10:11.09 ID:SWmtDMmN0
ジョルジュの姉貴登場?
459黒豆(四粒):2006/12/15(金) 23:10:30.93 ID:5U+3tLPyO
自殺?
460 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:10:33.59 ID:lpA65W140
(;^ω^)「!」
(;゚∀゚)「!」

その音に2人はしばらく凍りついたまま出口の方を眺めていた。
音の聞こえ方からして、どうやら下の階で何かが起こったようだった。
しばらくそうした後、無言のままゆっくり扉のへと近づいていき、思い切って廊下を確認した。
するとどういうことなのか、廊下にはずっと血の跡が続いており、途切れる事無く遠くの方まで
延びていたのだ。

(;゚∀゚)「……」
(;^ω^)「……」

二人顔を見合わせこれからどうしたものかと思案をめぐらせる。

(;゚∀゚)「これって……どういうことだと思う?」
(;^ω^)「さっぱり……」

 ひんやりとした空気が流れる廊下を、2人は導かれるままにその血の跡を辿り始めた。
血の跡は所々で弾けたり曲がったりしながらその形を変えつつ階段へと続き、階下へと
延びていた。角を曲がる度に訪れる恐怖が頭をかき乱し、体を冷たくしていく。

 そして電気の点いていない階下に着くなりジョルジュがスイッチに手を伸ばし、廊下に明かりが
点された。ずっと向こうまで続く血の道の果て、そこに何かがあるのが見えた。遠くにあるせいで
何かは分からないがそれを確かめようと2人は恐る恐る歩いていく。
461書初め(女優になるんだ):2006/12/15(金) 23:11:15.62 ID:UuYVfUY80
wktk
462 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:11:53.43 ID:lpA65W140
 1歩1歩確実に歩を進めつつ、時々後ろに何か居ないか確認もする。窓に映る自分の姿に
驚くこともあれば足元で虫が動くだけで心臓がキュッと縮まるのを感じる。
そして、段々と近づくにつれてその形がはっきりとしてくる。

(;゚∀゚)「なぁ……」
(;^ω^)「……お」

 どうやらそれは人だった。それもさっきまで一緒に居たはずの。何が起きたのか分からないが
横たわるしぃの足が、確かに確認できたのだ。服が同じなのだから違いないだろうとさらに近づき
そして、その表情を覗き込んだ。

(|||゚ω゚)「ッ……」
(;゚∀゚)「……」

バラバラになった人を見ると言うのは確かに辛いことだろうと思うが、完全に人間のまま
命を終えているそれを見ることも辛いことだった。凄まじい表情で眉間にシワを寄せたしぃの
目や口はこれ以上ないくらいに開き、顔は不自然なほど真っ青で、何より異質だったのが
鼻や口から溢れる真っ赤な血液だった。それは文字通り溢れていて、吐血したとか言うレベル
ではなく、まるで流し込まれたかのようであった。

(|||゚ω゚)「あぁ……あぁぁぁぁ……」

あまりの光景にブーンは立っていられなくなり力なく床に尻餅をついた。
一方のジョルジュはブーンとは対照的に冷静な様子で、しぃの首にそっと触れる。

( ゚∀゚)「……」
(;^ω^)「……ジョルジュ?」
( ゚∀゚)「……死んでる」
(;^ω^)「……」
463巫女と初詣:2006/12/15(金) 23:12:58.89 ID:gzYnFOeD0
ジョルジュwwwwwwwwwwwwwwww
464 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:13:09.61 ID:lpA65W140
――そうだ。もし生きていたら何か手が施せたかも知れない。それなのに腰を抜かしてただ
うろたえていた自分は何なのだろうか。本当に自分は一体何の役に立つのか、居る意味は、
自分が居る意味はあるのか――いい加減自己嫌悪もしすぎてそれ自体に嫌悪感を感じた。

( ゚∀゚)「……そうか」
(;^ω^)「?」
( ゚∀゚)「……お前か」

 その言葉に気付いて前を見ると、しぃの口から血の柱が立ち上っていた。何と言う光景だろうか。
CGを見ているような不思議な感覚に囚われていると、血の柱は至る所から枝分かれし、
どんどんと伸び、複雑に絡み合っていく。その形はどこかで見たことがある形、そして見たことの無い形。
それは大の字に延びた血管、そう、まるで血管だけで形作られた人間だった。

( ゚∀゚)「ドクオ……なんだな」
(;^ω^)「……ドクオ? ジョルジュ……でも……」
( ゚∀゚)「こいつ……まだ認めちゃいないんだよ。自分が死んだって」
(;^ω^)「そんなことがあるかお……それにドクオの体はまだあそこに……」
( ゚∀゚)「さぁな。でも俺にはコイツがドクオに見えるぜ」

言われ、改めて見たその血管人間の口元の血管がたわんだ気がしたのは、ブーンの気のせい
だったのか。それを合図にビチャ、と重力に逆らえなくなった血液がしぃの顔に降りかかった。
465おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:13:33.98 ID:bsMFZRsf0
一瞬ジョルジュが死んでるのかと思ったwww
466VIP皇帝:2006/12/15(金) 23:14:23.92 ID:sthfTqE+0
うわぁドクオ最強じゃん
認めなければ死なないなんて
467 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:14:52.57 ID:lpA65W140
(;^ω^)「う……」

飛び散る血液を咄嗟に腕で防ぐブーン。そしてそれとは対照的に一点を見つめながら
まるで気にせず全身に飛沫を浴びるジョルジュが居た。

( ゚∀゚)「よくやったよ、ドクオ……」
( ^ω^)「……よくやったってのは少し言いづらいけど、でもドクオは僕達を護ろうとしてくれたのかお」
( ゚∀゚)「いやいや、よくやったよ、お前は本当に良くやったよドクオ……」
( ^ω^)「ジョルジュ……でも僕はそこまでは……」
( ゚∀゚)「はは、はははははは! やった! やったぞ! まさかこんな……くく……ははははは!」
( ^ω^)「…………ぇ?」
( ゚∀゚)「いやぁ、こいつがどうにも予想外に強い力を手に入れたもんだから焦った焦った!
     あんなバカみたいな力、いつ俺が居なくなっても良いようにされるか分かったもんじゃ
     ないからな。いやぁ、ドクオ〜よくやったぜ、お前はよぉ〜」

――この男は何を言っているのか。
ブーンはその言葉の意味を必死に考える。
なんでこの男は笑っているのかと。
誰かにこの状況を説明して欲しかった。
468巫女と初詣:2006/12/15(金) 23:15:09.08 ID:gzYnFOeD0
想像したらこの上なく気持ち悪いな
469 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:15:42.36 ID:lpA65W140
( ゚∀゚)「いやぁ……くくく……これでまた姉ちゃんが喜ぶ」
(;^ω^)「ジョルジュ……さっきから何を言ってるんだお」
( ゚∀゚)「また1人姉ちゃんを苦しめた奴が死んだんだ。人を蔑むことしか知らないこいつらが
     また死んだんだ。ざまあみろ。俺はこの力を姉ちゃんから授かった日からこれが使命
     だったんだ」
( ^ω^)「…………」
( ゚∀゚)「互いに殺しあうなんて無様だよなぁ! やっぱりこいつらは生かしておいて良い事なんて
     無いぜ。あぁ〜姉ちゃん……」
( ^ω^)「皆死んだんだお?」
( ゚∀゚)「あぁ! あぁ! 死んだ! ひっひっひぁは! ぁはっ! あははははは!」
( ^ω^)「……死んだんだお?」
( ゚∀゚)「あぁ、これだろ?」

そう言って笑いながら爪先でしぃの顔を蹴るジョルジュを見て、ブーンは目を眼球が飛び出さん
ばかりに見開いた。
そして一度ブルリと肩を震わせると両手を突き出し、唸り、ジョルジュに飛び掛った。
470 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:16:32.53 ID:lpA65W140
( ゚ω゚)「……」
(|||゚∀゚)「……く……ぁ……」

馬乗りになり、力の限りジョルジュの首を締め続けるブーン。親指の爪が喉に食い込み、
ジョルジュの口からは言葉ではない水分と空気が作る音が漏れている。
しかし、ブーンはただジョルジュの顔を見ながら手に力を込め続ける。

( ゚ω゚)「…………」
(||| ∀ )「……p……gp……h……」

ぐるり、とジョルジュの目が上へ。
それでもブーンの筋張った手は固定されたまま全く動く様子は無い。

( ゚ω゚)「……お?」
(  ∀ )「……」

パチパチと目の前で何かが光り、ブーンは正気を取り戻した。
取り戻してすぐに両腕に軽い筋肉痛を感じ、そこへ目をやった。
そしてジョルジュの首を未だ締め付ける自分の手に気が付いた。
471おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:16:34.04 ID:bsMFZRsf0
不覚にもジョルジュのセリフがジョジョっぽくきこえた
472初夢(アフリカのシマウマだった):2006/12/15(金) 23:17:46.27 ID:sthfTqE+0
こぉれは・・・・・
473お年玉(なし):2006/12/15(金) 23:18:34.65 ID:SWmtDMmN0
………
474おみくじ(いいのこいっ):2006/12/15(金) 23:18:46.15 ID:izTK+Bqr0
そろそろラストなのか…?
475 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:18:53.96 ID:lpA65W140
(;゚ω゚)「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」

慌てて離した瞬間の肉の感触と、紫色に残る内出血の跡がブーンのした事を如実に語りかけていた。
自分の命を守るわけでもなく、能動的にブーンは人を殺した。その事実がブーンの頭を何度も
殴りつけてくる。世界はいろいろな色にフラッシュしたかと思うと真っ黒になる。
そして元気なジョルジュの笑顔と先ほど見た苦しそうな死に顔が交互に現れては消えるのだ。

(;゚ω゚)「僕はやってないお……ジョルジュは死んでないお……名案だお」

あまりの余裕の無さから思いついたままに言葉を直接発しているため、ブーンの独り言は酷く
乱れていた。そしてガクガクと震える手でポケットからナイフを取り出す。

(;゚ω゚)「ジョルジュは死んでないお! 僕はナイフで切っても死ななぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

叫びながらを高々と上げられたナイフは、躊躇われること無くもう片方の手首へと勢いよく
振り下ろされ、殴りつけるようにその手首に襲い掛かる。
476初夢(またバイトか):2006/12/15(金) 23:19:50.84 ID:GV9wQ3nF0
これは!!!????
477黒豆(八粒):2006/12/15(金) 23:20:09.17 ID:czMPnG720
おお しんでしまうとは なさけない
478 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:20:15.48 ID:lpA65W140
(;^ω^)「……ふ、ふふふ、ふふふふふふふふあははははははははははははは」

ブーンの手首は未だ繋がったままであった。つまり、ジョルジュはまだ死んではいない。
その事実にブーンは必要以上にハイになり全身のありとあらゆる所を突き刺し、切りつけ、
そしてそれでも切れないことを確認してナイフを床に投げつけた。

――未遂までは行ってしまったが、まぁ仕方が無い。この状況なら誰だってこれ位は
してしまうはずだ。僕は誰も殺しちゃいない。僕には何の罪も無い。彼は罪人だったし――

    「酷い顔ね」

突然横から声がしてブーンは飛び跳ねるようにして体ごとそちらを向いた。

('、`*川「前の情けない顔のほうが可愛かったわよ」
( ^ω^)「…………」

居るはずの無い人物を見てブーンは言葉を失う。一瞬にして夢の世界に飛んでしまったような
錯覚を覚え、また自分の凶行を見られてしまったのではという心配が沸々と湧き出した。
――こんなにも死体があるのだから殺してしまおうか。
しかしそれではジョルジュの意味が無い、とブーンは思いとどまる。
479黒豆(四粒):2006/12/15(金) 23:20:58.42 ID:5U+3tLPyO
ドクオ、赤屍みたいだな
480 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:21:28.10 ID:lpA65W140
('、`*川「……悪い眼ね。やっと狡さを憶えた? でも、ちょっと遅かったわね」
( ^ω^)「……見たのかお?」
('、`*川「違う。あなたが潔白を捨てるのが遅かったのよ。弱い人は狡くならなきゃ駄目よ」

そう言って彼女は長い袖に隠れたままの手で、生地越しにブーンの足元のナイフをそっと拾った。
刺される。そう思い後ずさりしたブーンだったが、そんなのにはまるで興味が無いといわんばかりに
彼女はジョルジュの元へと歩み寄っていく。

('、`*川「内藤君、知ってる?」

ぐったりと倒れているジョルジュの脇にしゃがむと彼女は背中越しにそう聞いてきた。

( ^ω^)「何がだお」
('、`*川「その力、開花させた人が亡くなると失われるの」
( ^ω^)「それ位知って――」

自分で言ってて冷たい空気がヒヤリと首筋を刺激した気がした。
481おみくじ(いいのこいっ):2006/12/15(金) 23:21:55.77 ID:izTK+Bqr0
最高にハイって奴だぜええぇぇぇぇぇ!!
482 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:22:27.96 ID:lpA65W140
(;^ω^)「……」
('、`*川「でもね、事実はなくならないの。例えばドクオはもう生き返らないし彼らが壊した
      壁なんかも直らないわ。私のお腹の傷もね」

完全には理解していなかったが、漠然とこれから自分にとって不利なことが起こるイメージが
浮かび、ブーンはそれを止めようとする。
しかし脱力仕切った足に力が入らず立ち上がりさえ出来ない。

('、`*川「それにしてもそっくり……憎らしい子」
(;^ω^)「やめ……」

裁判官が木槌を叩くような動作がブーンの眼には映った。
そしてブーンの全身から黒く澱んだ血が噴出した。

(;゚ω゚)「あぁ……あぁぁぁ……ぁぁぁ……」

体中から急速に熱が逃げていき、凍えてしまうかと思うほどの寒さがブーンを襲う。
それと共に視界が朧になり、体の感覚が鈍くなっていく。
483かき初め(虚脱感):2006/12/15(金) 23:23:35.40 ID:UzOAutQd0
表現が生々しくてこっちまで痛いよ。
484 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:23:39.14 ID:lpA65W140
(|||´ω`)「……」

薄れ行く意識の中、ブーンの頭の中を巡っていたのはみんなの顔だった。
もし思考が正常な状態だったならば、皆が守ってくれた命が無くなっていくことに無念を
感じたかも知れない。
けれども今ブーンが感じていたのは解放されたと言う思いだった。
突然の出来事で自分が死ぬということを理解していなかった所為かも知れないが、
皆から背負った物、皆に背負わせた物、これから自分が背負っていく物、すべてから
開放されたな、と言う思いだった。
弟者やジョルジュに対するケジメも付いたかも知れないという、多少歪んだ自己満足も
抱えながらブーンは深くへ、深くへと落ちて行く。

('、`*川「同級生を次々に殺し、自殺。はい、ナイフと拳銃をどうぞ」

その声は最早ブーンには理解できなかった。



−終−
485凧(ひもなし):2006/12/15(金) 23:24:24.05 ID:ebNRQaQz0
これは超良作
486おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:24:35.83 ID:bsMFZRsf0
>>1
これは良作だな
487猪(スポーツマンタイプ):2006/12/15(金) 23:24:50.62 ID:+ARk3zVd0
おわりか・・・
488黒豆(一粒):2006/12/15(金) 23:24:52.63 ID:GK1ZroqGO
うわああああ!
乙!
489かき初め(二回目):2006/12/15(金) 23:25:34.20 ID:Ts8LmUIt0
koeeeeeeeeeeeyooooooooooooooo
490初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:25:37.44 ID:LLMAtKYzO
おつ………
491初夢(ホスト修行中):2006/12/15(金) 23:25:52.27 ID:CLjLTjEh0
乙!

最後のクーの台詞がいまいちわからなかったが・・・
492初夢(アフリカのシマウマだった):2006/12/15(金) 23:26:10.74 ID:sthfTqE+0
DEAD END
完。
493書初め(女優になるんだ):2006/12/15(金) 23:26:11.06 ID:UuYVfUY80
GJ

ちょっと判りにくい描写があったのが残念
494黒豆(八粒):2006/12/15(金) 23:26:40.84 ID:czMPnG720
ペガサスいつお腹怪我したんだ?
495おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:26:48.03 ID:bsMFZRsf0
ついでに
内藤⇒刃物の切れ味ゼロ
ドクオ⇒痛覚遮断⇒認知しなければ概念を遮断できる
クー⇒ナイフ生成⇒ナイフオンリーUBW
ツン⇒触れた武器拒絶⇒認知した武器拒絶
ショボン⇒負の媒体?やる気をそぐ、物体のスピードを下げるetc
シャキン⇒正の媒体?
しぃ⇒空間支配?
兄者⇒剣生成
弟者⇒弓矢生成&矢のコントロール
でいいのか?修正ヨロ
496お年玉(なし):2006/12/15(金) 23:27:01.17 ID:SWmtDMmN0
>(´<_` )「へぇ……どうしてまたショボンさんを行かせたんですか」
>( ゚∀゚)「話し相手は1人で十分だろ?」
>( ´_ゝ`)「話し相手……ねぇ」

ここが謎なのは俺だけか?
497愛のVIP戦士:2006/12/15(金) 23:27:31.07 ID:7Lkz31li0
498黒豆(一粒):2006/12/15(金) 23:28:10.22 ID:GK1ZroqGO
これはリアルの小説っぽいですね〜 好きだが、
499初夢(ろうそく熱い):2006/12/15(金) 23:28:52.08 ID:Ni5ytjErO
>>1
乙!
500おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:28:56.17 ID:bsMFZRsf0
>>496
兄者と弟者を使ってドクオ内藤の始末をしようとしたんじゃないの?
501おみくじ(いいのこいっ):2006/12/15(金) 23:29:06.42 ID:izTK+Bqr0
>>491
ドクオの姉じゃね?
502黒豆(百粒):2006/12/15(金) 23:29:13.16 ID:lD+H6cnd0
KOEEEEEEEEE!!!!!!!
ってかピアノもブーンは助からなかったよな・・・おマイの作品はバットオンリーかああああああああ!!!!!!!










でもGJ!!!!!
503猪(入れ歯):2006/12/15(金) 23:29:31.67 ID:XVex6Wua0
乙!!!!
504 ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 23:29:35.94 ID:lpA65W140
 以上です。我慢できる限り言い訳はしない。

 この作品を書くにあたって考えていたことは、1つに自分が最近感じている社会へ参加する
漠然とした不安と、もう1つに大人になってしまうと失ってしまう思想や表現を残しておきたい
と言うことでした。
 自分の今の力で果たして社会で生きていけるのかと言う不安を元に書き上げた結果、
死にました。もう駄目かもね。

 と、言うわけで最後まで読んでくださった方、保守、支援してくださった片、それからまとめの
オムライスさん、本当にありがとうございました。
505初夢(またバイトか):2006/12/15(金) 23:29:50.86 ID:GV9wQ3nF0
久々に勃起した
506猪(ギター):2006/12/15(金) 23:30:13.95 ID:wSUvR/v5O
>>494
俺も気になった
これらしい伏線あったっけ

ともあれ乙
507かき初め(虚脱感):2006/12/15(金) 23:30:24.78 ID:UzOAutQd0
これは鬱になる良作。
ドクオは結局どうなるのかな。あれは生きていると言えるのか?
508初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:30:32.92 ID:LLMAtKYzO
ところ何でドクオとペガサスはきょうだいなんだ?
ペガサスはジョルジュ姉いじめてたでおk?
509凧(ひもなし):2006/12/15(金) 23:31:03.76 ID:ebNRQaQz0
510初夢(ホスト修行中):2006/12/15(金) 23:31:10.15 ID:CLjLTjEh0
>>501
クーかと思ってたからわからなかったのか!thx!!
511味噌出汁:2006/12/15(金) 23:31:57.92 ID:XUXIGn9f0
ドクオの姉の行動がよく分からん・・・
512猪(甘党):2006/12/15(金) 23:32:14.08 ID:qAqXgR3I0
やべぇぇぇぇぇ鬱だぁぁぁっぁぁぁ
こわいよ・・・・
513凧(ひもなし):2006/12/15(金) 23:32:17.56 ID:ebNRQaQz0
>>508
パガサスはジョルジュの姉だろ?
514初夢(アフリカのシマウマだった):2006/12/15(金) 23:32:26.99 ID:sthfTqE+0
バッドエンドってホントいいなぁ。
ハッピーエンドより好き。
515初夢(こんなにもてていいの?):2006/12/15(金) 23:34:06.84 ID:DrZWgBYoO
>>496
話し抜かして相手と考えれば
相手は俺一人でじゅうぶんだろ
って意味じゃね
516:2006/12/15(金) 23:34:10.03 ID:lpA65W140
>>493
自分で難しい表現は〜なんて語っててやってしまうんですよね……。

>>494,>>506
ちょっと整理してみれば多分わかります。

>>495
ショボン兄弟は多分非常に判りにくかったと思います……。スピードは下げません。

>>496,>>500
そんな感じ

>>502
次こそは……('A`)



517凧(無印):2006/12/15(金) 23:35:11.65 ID:jBrEA3H10
ペニサスがジョルジュ刺す→記憶された傷跡が開く→ブーン死亡
ドクオ→>>464の最後にて力尽きる
腹の傷>>408
518初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:35:34.29 ID:LLMAtKYzO
>>513
>>37
ジョルジュの姉が実は生きてて(?)ドクオんちの養子になった?
519初夢(ろうそく熱い):2006/12/15(金) 23:35:40.68 ID:Ni5ytjErO
ところで、シャキンはどうなったの?
520おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:36:33.82 ID:bsMFZRsf0
>>519
しぃに殺されたんじゃない
521猪(甘党):2006/12/15(金) 23:37:27.67 ID:qAqXgR3I0
ていうかブーンはどうやって殺されたのかがよくわからん
522初夢(見るの忘れた):2006/12/15(金) 23:39:01.94 ID:r6irlknf0
>>521
ブーン力を信じて自分の体を切りまくる→ジョルジュ殺しを認識→力がなくなって傷口が開き始める
523おみくじ(いいのこいっ):2006/12/15(金) 23:39:07.11 ID:izTK+Bqr0
しぃは誰に会いに行ったんだ?
524シイタケ:2006/12/15(金) 23:39:33.88 ID:iZxVMpz20
ペニサスじゃね?
525初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:40:52.54 ID:LLMAtKYzO
>>521
それはジョルジュは生きてると確認するためにブーンが自分で自分を切りつけた傷を、能力開花させたジョルジュ殺すことで事実として蘇らせたんでしょ
526猪(甘党):2006/12/15(金) 23:41:23.39 ID:qAqXgR3I0
>>522
なるほど、どうもサンクス
527凧(無印):2006/12/15(金) 23:41:26.25 ID:jBrEA3H10
ブーンとジョルジュ姉が似ている
ペニサスはジョルジュに刺されている
ペニサスとドクオは姉弟
弟者が死んだのはわからん
528初夢(アフリカのシマウマだった):2006/12/15(金) 23:41:26.93 ID:sthfTqE+0
ムズカシィなぁ
529書初め(点滴必要):2006/12/15(金) 23:42:23.02 ID:96+LFEVs0
激しく乙
530おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:42:25.57 ID:bsMFZRsf0
>>527
鍵を解除して、解除された人は死ぬ
だと思う
531猪(ドラム):2006/12/15(金) 23:42:32.20 ID:ZVw8+8BWO
血だけになったら認知するとかしないとか
そういうことすらできないと思うのだがなんでドクオは力尽きたの?
532:2006/12/15(金) 23:42:47.56 ID:lpA65W140
すげぇ……いっつも「先読めたwwww」とか言われるからかなり判りにくくして書いたのに
普通にどんどん読み解かれてるよ……。
533初夢(見るの忘れた):2006/12/15(金) 23:43:37.60 ID:r6irlknf0
>>531
しぃ殺したからじゃね?
534おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:43:44.03 ID:bsMFZRsf0
>>531
そこはあれだ、メルヘンとかファンタジーだから


俺にもわかんないだけだけどね
535お年玉(なし):2006/12/15(金) 23:43:48.79 ID:SWmtDMmN0
遠いとこで銃声が聞こえたってのは、
しぃがペガサスを撃ったのか?
536初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:44:05.75 ID:LLMAtKYzO
>>531
魂じゃね
537おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:44:18.29 ID:bsMFZRsf0
>>535
ドクオをうったんだろ
538黒豆(三粒):2006/12/15(金) 23:44:25.20 ID:V0y2yoAjO


後半難しすぎて理解出来なくて読み飛ばしてばかりだった
読む力つけてからまとめで読み返すぜよ
539黒豆(四粒):2006/12/15(金) 23:45:36.30 ID:5U+3tLPyO
屋上ってしぃのせいでちょっと違う空間になってたんだよね?
フェンスとか無いしブーンが屋上に行ったとき違和感があるとか言ってたし
540おみくじ(いいのこいっ):2006/12/15(金) 23:47:04.85 ID:izTK+Bqr0
>>539
そういやクーが背中預けようとしたらフェンスなかったよな。
541黒豆(八粒):2006/12/15(金) 23:47:18.40 ID:czMPnG720
つかしぃの能力がいまいちわからないんだが
一定の空間内ならなんでもできるよ的な能力?
542おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:47:26.63 ID:bsMFZRsf0
>>539
YES、恐らくしぃはその空間を自由に作り変えられる能力があったと見た
強すぎじゃね?
543おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:48:33.63 ID:8XEDiIYq0
>>40
これ見るとどうなるんだ・・・説明できん
544猪(巨乳):2006/12/15(金) 23:49:11.50 ID:pjg52LPvO
>>40の血縁どうのこうのがわからないです><
545初夢(アフリカのシマウマだった):2006/12/15(金) 23:49:51.60 ID:sthfTqE+0
弟者が死んだのはアレじゃね?
なんかもうイヤになったんじゃね?そういう事言ってた気がする。
え?言ってなかった?
546味噌出汁:2006/12/15(金) 23:50:30.56 ID:XUXIGn9f0
何故ペニサスはブーンを殺す必要があったのかね?
547黒豆(三粒):2006/12/15(金) 23:50:32.63 ID:s9yRe08jO
てかペガサスって誰?
548お年玉(なし):2006/12/15(金) 23:51:12.43 ID:SWmtDMmN0
弟君は>>385の衝撃音とやらでポックリじゃね?
549猪(水着):2006/12/15(金) 23:51:55.18 ID:5mOx7AevO
最後に出てきた奴
550猪(ドラム):2006/12/15(金) 23:51:57.52 ID:ZVw8+8BWO
そもそも血だけじゃ動けないうえに五感も何一つない
>>534>>539でFAか
551おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:52:08.42 ID:bsMFZRsf0
>>544
ジョルジュとペニサスは血が繋がってる
ペニサスとドクオは繋がってない、ペニサス養子?
そこで酷い目にあってたか、ドクオの親などが前回の能力バトルの時に関係してて、ジョルジュ、ペニサスをフルボッコにしたから逆襲…

読解力なさ杉でスマン
552初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:52:37.76 ID:LLMAtKYzO
ペニサスの打ち間違いだな、予測変換だすまぬ
553猪(友達がvipper):2006/12/15(金) 23:52:49.13 ID:MbHKezUTO
弟者をやったのはしぃだろ?
罰ゲームって…
554凧(エンジニア):2006/12/15(金) 23:53:08.86 ID:Y7j7kMT50
結局ペニサスがジョルジュの本当の姉で、ドクオとは義兄弟ってこと?
555初夢(ろうそく熱い):2006/12/15(金) 23:53:21.29 ID:Bq2DfosXO
ttp://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/dog/1163547765/l50
このスレが今日中に>>1000いったら全裸で幼稚園に凸する
556凧(エンジニア):2006/12/15(金) 23:53:27.77 ID:KhJU/03H0
>>1が基地外だったのはよく分かった

1行も読んでないけど
557おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:53:57.27 ID:bsMFZRsf0
>>554
多分ね
つか1出てきて解説プリーズwww
558かき初め(二回目):2006/12/15(金) 23:54:07.55 ID:MbHKezUTO
ペニサスは相関図で腹部重傷だった奴やろ
559:2006/12/15(金) 23:55:38.37 ID:lpA65W140
>>557
いや、あんまり書いた本人が色々言うのもあれかなって……

何かあったらどうぞ。作品を壊さない程度の答えられる範囲で。
560凧(ひもなし):2006/12/15(金) 23:55:54.35 ID:ebNRQaQz0
じゃあペニサスは生き残りか。
なら復讐はジョルジュにだけでよかったんじゃね?
561初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:56:10.45 ID:LLMAtKYzO
ドックンとペニサスとジョルジュの関係あたりがひたすらわからぬ……
562VIP皇帝:2006/12/15(金) 23:56:16.72 ID:V0y2yoAjO
>>535
ペガサスって誰だよ
563猪(水着):2006/12/15(金) 23:56:22.06 ID:5mOx7AevO
名前見れなかったはず
564おみくじ(大吉):2006/12/15(金) 23:56:46.11 ID:bsMFZRsf0
>>559
とりあえずジョルジュとペニサスの復讐の動機が知りたかったり
565味噌出汁:2006/12/15(金) 23:58:00.89 ID:XUXIGn9f0
ドクオがバーコードバトラーだかを姉から幼稚園児の時に借りたって言ってたから
もうその時ペニサスはドクオの姉だったってことでしょ?
ってことは養子って線はないな
566お年玉(なし):2006/12/15(金) 23:58:30.37 ID:SWmtDMmN0
>>562
スマソ
ペニサスの存在を今日ここで知った。
勘違い
567初夢(アキバでびゅーしてきた):2006/12/15(金) 23:59:03.04 ID:LLMAtKYzO
>>565
血、繋がってないじゃん…
568美容師と初詣:2006/12/16(土) 00:01:08.12 ID:t0aq894KO
確かにジョルジュとペニサスの事が把握しづらい
以前夜道でしぃと会ってたのがペニサスなんだろうけど、
こんなことしなくてもジョルジュに復讐できなかったのか?
ジョルジュがゲームに参加してたのはもはや倫理感が欠如してたからなのか?
569美容師と初詣:2006/12/16(土) 00:04:02.07 ID:t0aq894KO
>>565
でも血、繋がってないじゃん…
と描写があったし…

昔から親交があったから養子になったとか?
570:2006/12/16(土) 00:05:02.59 ID:bM75Gg5c0
>>561
  ('A`)⇔('、`*川 義姉弟
( ゚∀゚)⇔怪談の人 姉弟

>>564,>>568
自分でもこんがらがってきた。ちょっと読み直してくる。
571猪(2ch中):2006/12/16(土) 00:05:58.54 ID:WWxXP9XJO
文章面白いけど最後のあたりで破綻しすぎだろ
すごい読みにくい
572おせち(150j):2006/12/16(土) 00:08:25.12 ID:MBICBv3N0
>>567>>569
いやペニサス=ジョルジュの姉の線はないってこと
573お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:08:26.08 ID:s2su8/xwO
夜しぃと会ってたのはジョルジュじゃね?「協力」とかいってたし。
ドックンとペニサスがきょうだいじゃなくて義きょうだいなのは何かの伏線かと思っていたのですが、何もありませんか?
574初夢(すべてが夢):2006/12/16(土) 00:10:16.73 ID:yU0DHctp0
ペニサスがジョルジュの姉ではないだろ。
新聞記事にジョルジュに刺された被害者って書いてある。

つまりブーンとジョルジュ姉が似てるってわけで。
共通点は何かって言うと作者の分身のような希ガス
575猪(巨乳):2006/12/16(土) 00:11:03.32 ID://nO/FSrO
伏線はろうと頑張ってるのがよくわかるけど、なんか無駄な設定が多いね
あと一人一人のキャラを描き切れてない感じがする。
でも表現は好きです。乙。
576初夢(すべてが夢):2006/12/16(土) 00:11:15.70 ID:yU0DHctp0
あ、間違ってたわ。
ブーンがジョルジュ姉の弟だと考えたらわかりやすい。
577猪(ほろよい):2006/12/16(土) 00:11:27.75 ID:t0aq894KO
>>573
そういやそうかも
でも最後の電話の様子だとこの件がらみで前から関わってはいたよな?
578猪(ドラム):2006/12/16(土) 00:13:15.63 ID:5P2CdUtN0
>>576
ジョルジュ姉の弟っつったらジョルジュじゃね?
579女教師と初詣:2006/12/16(土) 00:13:52.96 ID:Om8Pwh2z0
>>578
つまり!ジョルジュとブーンは血が繋がっていたんだよ!
580初夢(すべてが夢):2006/12/16(土) 00:14:02.05 ID:yU0DHctp0
普通に理論が破綻。整理

・ドクオとペニサスは義兄弟
・ジョルジュ姉が数年前の事件の原因。
・ペニサスはジョルジュに刺された>>新聞記事『腹部を刺され重体』より
・ブーンと似てるだれかがいる(恐らくジョルジュ姉)
581お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:14:05.39 ID:s2su8/xwO
>>576
ふつうにその考え方で、ペニサスはジョルジュを殺したかっただけでブーンはどっちでもよかったんじゃ?勝手に死んでラッキーくらいで。

罪のなすりつけと目撃者も消せることにもなるけど。
582:2006/12/16(土) 00:15:39.53 ID:bM75Gg5c0
>>571
感じてはいたけど書き直す力が無かった。正直長くしすぎたと思ってる。

>>575
伏線厨なもんで


そんなわけで多分皆が俺が設定したものよりも深くまで読もうとしてる気がする。
ざっと見た感じで

('、`*川が今回事を起したのは、普通に復習しても捕まっちゃうから。チャンス到来って感じ。
夜会ってたのは主要キャラじゃない。
バーコードバトラーは限りなく失敗に近い。
ブーンに似てる人なんて居ない。←地の文の説明が足りなかったかも
583初夢(すべてが夢):2006/12/16(土) 00:15:56.62 ID:yU0DHctp0
読み直し修正

・ドクオとペニサスは義兄弟
・ジョルジュ姉が数年前の事件の原因。
・ペニサスはジョルジュに刺された>>新聞記事『腹部を刺され重体』より
・ジョルジュとジョルジュ姉が似ている。
・ペニサスはジョルジュに復讐
・余波としてブーンは死亡。罪を擦り付けられ完
584お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:16:28.83 ID:s2su8/xwO
>>577
しぃの電話は本当にかかってきていたの?
着信もアラームだったり、またはしぃの「作り出した環境(音)」とかもありえそう
シャキンが兄者に電話してるふりしてたように、ふりなのかも
ジョルジュ「うまく逃げやがった」てセリフもあったし
585女教師と初詣:2006/12/16(土) 00:17:35.50 ID:Om8Pwh2z0
>>582
>>583
おーこれだとスッキリする
586美容師と初詣:2006/12/16(土) 00:22:49.70 ID:t0aq894KO
>>584
う〜んもうわからん

ジョルジュの魂胆や
ペニサスとしぃとかに関係があったならそのへん教えてくれよ作者〜
寝らんないよ
587初夢(すべてが夢):2006/12/16(土) 00:23:02.86 ID:yU0DHctp0
読み直し修正

兄者→血液形態ドクオに殺される
弟者→兄者が死んだことから自殺?知らんがな
しい→血液形態ドクオに殺される
ツン→クーに殺される
クー→しいに殺される
ショボン→ゲームに負け死亡。何をやりたかったのかは俺にはわからん
シャキン→しいに殺される
ジョルジュ→ペニサスに殺される。
ブーン→ジョルジュが死んだことによる余波で死亡
ペニサス→まんまと復讐を成功させ生存。

ペニサスはしいの上にいたっつーよりかはジョルジュ殺すことだけ目的の別行動っぽいね。
588年賀状(ユニクロからだけ):2006/12/16(土) 00:25:36.46 ID:szOR24cW0
今追いついた
>>1乙。気味が悪かったよ、良い意味で
589女教師と初詣:2006/12/16(土) 00:25:54.47 ID:Om8Pwh2z0
>>587
俺は
兄者⇒ドクオを真っ二つにするも心臓刺されて死亡
弟者⇒鍵を解除した時、解除されたら死ぬと仮定して、ブーンが鍵を解除したから死亡
ジョルジュ⇒ブーンに殺される

だと思った
それ以外は同意
590猪(ほろよい):2006/12/16(土) 00:26:50.36 ID:t0aq894KO
弟者はやっぱしぃじゃないの?
どうやったのかは知らないけど
591初夢(すべてが夢):2006/12/16(土) 00:27:49.03 ID:yU0DHctp0
>>589
ブーンが首絞めたときはギリ生き残ってるよ。だから手首も体も切れなかった。
でペニサスがジョルジュを殺したから事実がよみがえって出血して死亡。
他修正

兄者→ドクオ包丁で心臓刺され死亡
弟者→鍵を解除した時、解除されたら死ぬと仮定して、ブーンが鍵を解除したから死亡
しい→血液形態ドクオに殺される
ツン→クーに殺される
クー→しいに殺される
ショボン→ゲームに負け死亡。何をやりたかったのかは俺にはわからん
シャキン→しいに殺される
ジョルジュ→ペニサスに殺される。
ブーン→ジョルジュが死んだことによる余波で死亡
ペニサス→まんまと復讐を成功させ生存。

ペニサスはしいの上にいたっつーよりかはジョルジュ殺すことだけ目的の別行動っぽいね。
592猪(進化系):2006/12/16(土) 00:27:50.00 ID:lpsQxtHKO
弟者は鍵解除じゃなくて10分ルールによって死んだんじゃないの?
593お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:28:06.98 ID:s2su8/xwO
>>589のジョルジュについてがペニサスに殺されるに戻れば完全同意
594お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:29:57.39 ID:s2su8/xwO
>>592
あ、解除と10分ルールは別か
595:2006/12/16(土) 00:31:28.45 ID:bM75Gg5c0
>>586
なんか俺の底の浅さがばれそうで(ry

ネタバレ読みたくない人は逃げて








('、`*川と(*゚ー゚)はタッグ。準備室に行ったりしてたし。
('、`*川が(*゚ー゚)を呼び出し

( ゚∀゚)→力に気付く→ぽんぽん咲かせる→死なないように、強い奴らにだけ
      自分が死ぬと力が消えると明かす→弱い方に付く

 何故ぽんぽん咲かせたか→姉をいじめてた犯人は姉によって(中略)からいじめてた。
→あれ? つーことは俺がポンポン咲かせてって殺してけば(ry

弟者:地味に10分ルールで南無
596女教師と初詣:2006/12/16(土) 00:31:43.62 ID:Om8Pwh2z0
>>592
10分ルールだな完全に見落としてた
597女教師と初詣:2006/12/16(土) 00:34:42.15 ID:Om8Pwh2z0
>>595
とりあえず納得
と言うわけで改めて>>1
598猪(進化系):2006/12/16(土) 00:35:08.65 ID:lpsQxtHKO
>>1
とにかく乙でした

次回作の予定ありならいつまでもわくてかしてるよ
599猪(禁酒中):2006/12/16(土) 00:36:09.59 ID:tQgE4c41O
これは凄い
600布袋(ほてい):2006/12/16(土) 00:39:10.78 ID:DqOxwUjA0
映画化を期待あげ
601猪(甘党):2006/12/16(土) 00:40:12.37 ID:TEeNnq5tO
ジョルジュの姉は生きてる?
602美容師と初詣:2006/12/16(土) 00:41:00.83 ID:t0aq894KO
今更だけど読み返したらジョルジュについて把握した
と思ったら解説乙
お疲れさまでした

夜会ってたのはヤクの売人だったのか?
603:2006/12/16(土) 00:41:53.60 ID:bM75Gg5c0
>>598
 色々と原案はあるけど、多分次回作はないです。元々この話も書く気は
無くて、前作をヴィジュアルノベル化しようとしてハッピーエンド書いたりしてたときは
良かったんだけど、絵練習し始めたら不慣れからくるかける時間の違いに
ムカついてる間にこれが書きあがってた。
 だから今度は真面目に絵の練習に入るから少なくともしばらくは無いかと。

でも乙とかわくてかとか表現が好きだとか、嬉しすぎて涙が出るよね。
604お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:42:30.00 ID:s2su8/xwO
>>602
ギコ先生かしら
605:2006/12/16(土) 00:43:05.15 ID:bM75Gg5c0
>>602
( ゚д゚)ビンゴー。もしかして草の焼ける臭いっていう表現は一般的じゃなかったのか……?
606猪(ほろよい):2006/12/16(土) 00:43:23.26 ID:t0aq894KO
>>601
事件(生徒が狂う)後に飛び降り自?殺してるよ
607お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:44:19.16 ID:s2su8/xwO
>>603
ほんとにおつかれさまでした。おもしろかったです。
ただくどいんですがなぜドックンとペニサスがきょうだいなのかだけが(>_<)
608猪(進化系):2006/12/16(土) 00:44:32.91 ID:lpsQxtHKO
場面の切り替え方が上手いよね
609猪(カビ):2006/12/16(土) 00:45:23.23 ID:SMnacoHGO
(´・ω・`)「超良作だけど、よくある話じゃないか?」
610猪(ほろよい):2006/12/16(土) 00:45:35.65 ID:t0aq894KO
>>604
でもいやな空気だか匂いがしたとあったぜ?
空ビンの事とかも含めて売人だった事にさせてくれ
実はもう眠いんです><
611:2006/12/16(土) 00:46:25.99 ID:bM75Gg5c0
>>607
1つ理由を挙げるとするなら、('、`*川と( ゚∀゚)のパイプってのがあります。
612お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:47:27.26 ID:s2su8/xwO
>>610
おみごとなビンゴだそうです!
あってたのに違うこといっちゃってごめんなしあ…
613:2006/12/16(土) 00:48:14.03 ID:bM75Gg5c0
>>608
それすごい不安だった。

>>609
(`・ω・´)「よく言われるよ」

>>610
空瓶は市販薬です。咳止めと言われてピンと来る人は少ないかもしれませんが。
614お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 00:49:22.19 ID:s2su8/xwO
>>611
てことは便宜上(使い方あってるかしら)ドックンと義きょうだい、てことで伏線とかなぜドックンなのかとかはないんですね?
ありがとうございます!
615猪(ほろよい):2006/12/16(土) 00:50:33.54 ID:t0aq894KO
>>605
ああそうか草のやけるってそうか
そういやタバコの煙を紫にしてたね


終わりかたは俺が一番嫌いなタイプやったけど今まで四だブーン小説のなかでも、特に前半、文章がとても綺麗だと思ったよ
ほんとGJっした!
616猪(甘党):2006/12/16(土) 00:50:47.33 ID:TEeNnq5tO
>>606
ジョルジュ姉ってなんか壊されて数日後自殺したんだよね?
でもその前にジョルジュ姉はいじめてるやつらを殺したり大怪我させたはずだからいじめるやつらいなくなってるじゃん。
よくわからなす
617猪(カビ):2006/12/16(土) 00:52:30.65 ID:SMnacoHGO
(´・ω・`)「でも、鬼神のごとき更新速度とキャラの心情描写には“脱帽”せざるをえないんだ。



それじゃあ、次回作の構想に入ろうか」
618美容師と初詣:2006/12/16(土) 00:53:37.35 ID:t0aq894KO
なんか無駄にレス多くしてスマソ
>>612
いやいやそんな、空きビンは違ってたみたいだし…

うん、寝ます
お疲れさまでした…
619猪(カビ):2006/12/16(土) 00:54:56.55 ID:SMnacoHGO
(´・ω・`)「IDがSMでハードゲイなんだ」
620旦那と初詣:2006/12/16(土) 00:56:18.15 ID:39MKC0ty0
621VIP皇帝:2006/12/16(土) 00:57:07.72 ID:vp6oI22pO
普通に意味わかるんだが…全く意味わかってない人多すぎる
622美容師と初詣:2006/12/16(土) 00:57:20.94 ID:t0aq894KO
>>616
そういえばそうだ…
屋上で悪口言ってたのがペニサスで、直接リンチしてたわけではないのだろうか?

あうあう えあう
623猪(カビ):2006/12/16(土) 00:57:58.85 ID:SMnacoHGO
>>621
禿げ上がりつつ同意
624お年玉(がっぽり):2006/12/16(土) 00:59:14.72 ID:i+z5bE840
ペニサス誰?w
625猪(酒乱):2006/12/16(土) 01:00:32.89 ID:TEeNnq5tO
分かってる人ジョルジュ姉の一生をまとめてください><
626トリマーと初詣:2006/12/16(土) 01:00:42.86 ID:t0aq894KO
>>621 >>623
馬鹿だからしょうがないだろ!

ウワァーンヽ(`Д´)/
627おせち(3,000円):2006/12/16(土) 01:01:50.56 ID:O1t31PMN0
>>619
SMな子HG〜Oh!
628猪(カビ):2006/12/16(土) 01:05:47.80 ID:vp6oI22pO
>>
629猪(カビ):2006/12/16(土) 01:06:32.22 ID:vp6oI22pO
ミスって変なの書いちまったwww

>>626
ご め ん
630黒豆(二粒):2006/12/16(土) 01:06:37.21 ID:Jg73676t0
セリフからしてシャキンを殺したのはペニサスじゃまいか?
631お年玉(とられた):2006/12/16(土) 01:17:09.60 ID:s2su8/xwO
最後まで読んでからカーチャンとブーンのシーン見ると泣けてくるな
いい息子だったんだろうな…ブーン…それが殺人、自殺って…(なすりつけられたわけだけど)

作者さんまじおつ
632猪(赤):2006/12/16(土) 01:21:20.79 ID:nC+Bhnmf0
ピアノのログ見たいけど探しても無い
作者の文には俺をひきよせる魅力があるんだよな
633猪(右利き):2006/12/16(土) 01:38:52.00 ID:t12T2PsS0
ペニサスの動機がよくわかんないです(><)
634猪(青):2006/12/16(土) 01:41:54.00 ID:mxKS2bAI0
まとめらしいのでもっかいはっとく?
ttp://vip.main.jp/97-top.html
635猪(しいたけ目):2006/12/16(土) 01:48:20.88 ID:Xvl34nbiO
読み終えた後が複雑で分かりにくい
死に方はこれでおk?
ツン =クーに受けた傷で死亡
クー =しぃが殺害
ショボン =ゲームに負け死亡
シャキン =ゲームには勝ったがしぃにより殺害
兄者 =ドクオと差し違える
弟者 =10分ルールで死亡
しぃ =ドクオ(血液形態)により殺害
ブーン =ジョルジュの死亡により力が消失し死亡
ジョルジュ=ペニサスにより殺害

ペニサス<=>ジョルジュ=兄弟
ペニサス<=>ドクオ =義兄弟
636猪(友達がvipper):2006/12/16(土) 01:48:46.48 ID:aKpwrEPbO
未だにフラッシュを待ってるのは俺だけでいい。
637保母さんと初詣:2006/12/16(土) 01:51:04.99 ID:Om8Pwh2z0
>>635
ペニサス<=>ジョルジュ=兄弟は間違い

怪談『蝶のバレッタ』の少女がジョルジュの姉
638猪(しいたけ目):2006/12/16(土) 01:59:45.01 ID:Xvl34nbiO
>>637dクス。






ツン =クーに受けた傷で死亡
クー =しぃが殺害
ショボン =ゲームに負け死亡
シャキン =ゲームには勝ったがしぃにより殺害
兄者 =ドクオと差し違える
弟者 =10分ルールで死亡
しぃ =ドクオ(血液形態)により殺害
ブーン =ジョルジュの死亡により力が消失し死亡
ジョルジュ=ペニサスにより殺害

ペニサス<=>ドクオ =義姉弟

怪談『蝶のバレッタ』の少女=ジョルジュの姉
639お年玉(少々):2006/12/16(土) 02:03:01.64 ID:ZLb2dK8iO
ペニサスが何者なのかがわからん
他はみんな動機があったのに、ペニサスいきなりでてきて……わかんないです><
640美容師と初詣:2006/12/16(土) 02:14:33.85 ID:Om8Pwh2z0
>>639
確か、ジョルジュの姉が原因で能力が発現した際に、ジョルジュがペニサスの腹を刺して重症にさせたからジョルジュに復讐するためだったかなー
641おみくじ(既知):2006/12/16(土) 02:25:26.77 ID:WwvYJz890
なかなか面白かった。

お前らのお陰でイミフな所も解決したおw
642猪(委員長):2006/12/16(土) 02:32:04.06 ID:Xvl34nbiO
必死に読み直していたら>>40に軽く教えられたわ


ツン =クーに受けた傷で死亡
クー =しぃが殺害
ショボン =ゲームに負け焼死
シャキン =ゲームには勝ったがしぃにより殺害
兄者 =ドクオと差し違える
弟者 =10分ルールで死亡
しぃ =ドクオ(血液形態)により殺害
ブーン =ジョルジュの死亡により力が消失し死亡
ジョルジュ=ペニサスにより殺害

ペニサス<=>ドクオ =義姉弟

ジョルジュ<=>怪談『蝶のバレッタ』の少女=姉弟

ペニサス=相関図で出てきた腹部を刺された被害者。
加害者であるジョルジュ姉弟に復讐。
ブーンに犯人に仕立て上げ生存。
643猪(乱視):2006/12/16(土) 02:39:50.40 ID:EsvVUd/j0
今読み終えた、作者乙!!
644愛のVIP戦士:2006/12/16(土) 02:52:15.84 ID:weUN62wt0
ようやく読み終えたぜ・・・
前半のゆったり描写と後半のスピード感がギャップになって良かったw
後半までゆったりだったら、徹夜しちゃうとこだったぜ

つまり、今回の人物関係は↓と解釈する

ブーン、ドクオ、ショボン、ツン=巻き込まれた被害者で、過去の事件とは全く関係ない

兄者、弟者、シャキン=捨て駒として、ゲームに参加。兄者と弟者には甘美な誘惑で参加させ、シャキンにはゲームの全容すら知らせていなかった(ドッキリか何かと思わせていた。でもそれで火事起こすシャキンヒドスw)

クー=利害の一致で参加。兄者らと同じく捨て駒だが、このゲームの全容を大体把握していた可能性有り。(図書館入りびたりだったし、過去の事件も知っていたのかな・・・?)

しぃ=ゲームの主催者で表のボス。クー殺害事実や、最後の展開からブーンに好意を寄せていた模様。ペニサスやジョルジュとの打ち合わせもあったので、過去についてもジョルジュから聞いていた可能性大
本人自身は享楽目的でジョルジュの力を受け入れたようだ。ゲーム開始直前にペニサスと会って計画を確認していたようなので、どちらかと言えばペニサス寄り。ただし、ペニサスの本当の正体まで知っていたかは不明

ジョルジュ=スパイ的存在。影でしぃたちを操っていた張本人。ただ、最後のブーンとのやり取りから、今回のゲームは不本意だったことが伺える
過去にとどめをさし損ねた、姉を自殺に追いやった人間(ペニサス)を探していたが、結局ペニサスの正体を見破られずに返り討ちにあった

ペニサス=ドクオの義姉になり、ジョルジュからの追跡を逃れていた。今回最大の謀略を企てた張本人。ゲームに関わったのは、自分を殺しにきたジョルジュを殺害するため。
ただ、ジョルジュ本人すらペニサスに懐柔されていた可能性有り(しぃがドクオに殺される直前のブーンとジョルジュとの会話から、ジョルジュがペニサスの存在を隠したがっていた可能性有り)
ゲーム開始直前にジョルジュ抜き(しぃと二人だけ)でゲームの打ち合わせをしていた時に、しぃを使ってジョルジュ殺害を企んでいたのかもしれない(と推測できる)
しぃとジョルジュをうまく使い分けたゲーム唯一の生存者


・・・と勝手に分析してみた
それにしても、ペニサスはどうやってゲームに参加させろと、しぃやジョルジュに頼んだのかねぇ。。。
645凧(エンジニア):2006/12/16(土) 02:53:13.89 ID:f63HjbwY0
義姉弟の設定にする意味がわかんね
646凧(エンジニア):2006/12/16(土) 02:54:39.09 ID:f63HjbwY0
>>644
義姉になりって言うけど、自分の意思でなれるもんなのけ?
647猪(メイド服):2006/12/16(土) 03:06:26.29 ID:weUN62wt0
>>646
ぶっちゃけ、ペニサスとジョルジュが学校で出会ったのは偶然だと思われ
ペニサスがジョルジュより早く相手の正体を見破ったのが、ジョルジュの運の尽きだった

義姉設定は、作者がストーリーを難解にさせるための、単なるオプションだったんじゃないか?たぶん
過去の事件でもジョルジュ姉弟が関わってるし。姉弟繋がりってことで
だからペニサスが意図的にドクオの家族に成りすましたってことではなくて、これも偶然に起こったことだと思う
648猪(ボーカル):2006/12/16(土) 03:31:17.54 ID:PabooikA0
おもしろかった、作者乙!
649猪(ドラム):2006/12/16(土) 04:07:22.61 ID:VY622umqO
まだ読んでるから保守
650猪(ばくち打ち):2006/12/16(土) 04:10:57.59 ID:Xvl34nbiO
>>613その咳止めを使う薬の材料ってこれか?
・パブロンゴールド咳止め薬
・新トニン咳止め薬
・エスファイトゴールド
・ワイン
651猪(しいたけ目):2006/12/16(土) 04:16:28.39 ID:MZs2ECvdO
おもすれーw
652お年玉(なし):2006/12/16(土) 04:29:03.89 ID:2tNB4iDmQ

   結   論

鍵取ってさっさと逃げろwww

653猪(メイド服):2006/12/16(土) 06:14:54.23 ID:VY622umqO
654:2006/12/16(土) 08:00:41.98 ID:bM75Gg5c0
>>650
方向は間違ってないです。そこまで明確じゃなくとも、「合法の楽しい範囲」が、咳止めに
入ってるコデインを使ったトリップ遊びだったっていうだけです。
655猪(ギャンブラー):2006/12/16(土) 08:12:32.44 ID:ToMo2icuO
バトロワな感じがしますた…ツンとドクオの最期に涙><

作者さん乙です
656おせち(5,000円):2006/12/16(土) 09:18:36.62 ID:aKpwrEPbO
誰か頭いいやつショボンの力を説明してくれ・・・わからん
657おせち(5,000円):2006/12/16(土) 09:46:56.36 ID:+aQFuwj9O
658猪(過敏):2006/12/16(土) 09:51:36.59 ID:fMSXAjI50
なんという残虐ゲームの数々・・・
作者は間違いなくsawに影響されてる・・・
659お年玉(落としちゃった!!):2006/12/16(土) 10:48:35.20 ID:GUm+9MOW0
シャキンはペニサスに銃で殺されてね?
クーはしぃがフェンス消したから死んだ。

>>656
多分、推測だがエネルギーを減少させる能力な希ガス
「落下エネルギー」を減少させたり
「電気エネルギー」を減少させたり
660以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/12/16(土) 11:08:07.97 ID:KcgTPN9p0
最終的に('、`*川だけ生き残ったの?
661猪(進化系):2006/12/16(土) 11:09:45.64 ID:fMSXAjI50
ていうか、昔の惨劇を現代で('、`*川が復讐しただけだろ、昔と同じ状態で
662猪(スポーツマンタイプ):2006/12/16(土) 11:27:20.20 ID:MHx41Shb0
今読み終えた。
作者に今度は最高のハッピーエンド作品希望
663おせち(10,000円):2006/12/16(土) 11:57:42.55 ID:VY622umqO
664家出娘と初詣:2006/12/16(土) 12:02:48.17 ID:RvtyJd6aO
ジョルジュはいつ屋上で嫌みを聞いたの?
665猪(甘党):2006/12/16(土) 12:03:25.09 ID:fMSXAjI50
自殺したと聞いて駆けつけた、みたいな
666おせち(15,000円):2006/12/16(土) 13:17:26.72 ID:aKpwrEPbO
>>659
はぁ〜なるほど。分かんないけどわかった
667おせち(30,000円):2006/12/16(土) 14:17:29.20 ID:VY622umqO
668猪(病気がち):2006/12/16(土) 14:35:15.81 ID:gsZdnSU5O
669おせち(30,000円):2006/12/16(土) 14:57:01.64 ID:VY622umqO
670猪(子持ち):2006/12/16(土) 15:17:44.33 ID:IEzW1QkfO
ペニサスはなんで復讐したかったの?
ジョルジュに刺されただけが理由?
671初夢(見るの忘れた):2006/12/16(土) 15:24:32.23 ID:FQ7BS3MH0
徹夜明けで読んだから脳が働かない…

>>でも結局逃げられた奴も居たんだけどなあの時俺まだ小さかったし。
奴=ペニサスでおk?

それとジョルジュは仲間が欲しかっただけでゲームは予想GUY?
672猪(子持ち):2006/12/16(土) 15:30:09.17 ID:IEzW1QkfO
>>671
奴はペニサスでFAらしいよ。腹部刺され重症って書いてあったやつ
673初夢(見るの忘れた):2006/12/16(土) 15:59:57.41 ID:FQ7BS3MH0
>>672
サンクス
674:2006/12/16(土) 16:17:44.23 ID:bM75Gg5c0
>>632
d。
ttp://up2.viploader.net/mini/src/viploader92578.zip

>>658
怖いの苦手なんです><;

>>662
ハッピーエンドって書き終わった後物足りなく感じて、なんか駄目なんだ……。

義姉弟の設定に物語を揺さぶるような伏線はありません。いろいろな所で引っかかる
ほんの小さなことを解消するくらいです。元々は血繋がってて、終わり方も別なのがありました。

ショボンの能力に関しては完璧に1人で暴走しました。
詳しく知ろうと思うと化学の教科書が必要です。なので、「機械が鈍った」とかで十分です。
675おみくじ(人吉):2006/12/16(土) 16:18:31.82 ID:tLk7Vfnv0
 ・また公開オナニーか
 ・物理法則を捻じ曲げる厨臭さは1ppmも許せない
 ・正義は強くなきゃいけない
 ・読み終わった後はすっきりしたい
 ・熱くなりたい
 ・下ネタ嫌い
 ・地の文とか糞だろ
676猪(病気がち):2006/12/16(土) 16:21:20.74 ID:xa3OfHPfO
いい時間潰しになった^^
>>1
677おせち(1d):2006/12/16(土) 17:30:25.69 ID:VY622umqO
678書初め(佳作):2006/12/16(土) 18:21:16.93 ID:nvqgmy/f0
今読み終えた
>>1
なんの救いもない話だけどたまにはこういうのもいいなwwwwww
679猪(もどき):2006/12/16(土) 18:27:13.98 ID:J6f8Kzre0
ジョルジュ姉力開花→いじめで自殺→ジョルジュ高校に行って自殺未遂、嫌味を聞いて殺害計画→ペニサス逃れる(腹部負傷)

ジョルジュ高校生→ブーン開花→ジョルジュ力に気付く→しらみつぶしに皆殺し計画(@)→咲き乱れる

ペニサス復讐計画→ペニサス「ジョルジュは開花マン」しぃ「キタコレ」

※これでいいのか・・・?@なんだが、皆殺し計画であってる?「人手は多いほうがいいだろ?」でひっかかる。

※「また1人姉ちゃんを苦しめた奴が死んだんだ。」なんだが、しぃいじめてなくねぇか?これはジョルジュ狂気で乱舞?
680黒豆(一粒):2006/12/16(土) 19:01:50.80 ID:+aQFuwj9O
681初夢(猿の夢):2006/12/16(土) 19:34:07.68 ID:FQ7BS3MH0
>>679
皆殺し計画は無いと思う

人手は多いほうがいいだろ?
ってのは、ただ姉のかたきを探すor殺す仲間のことかと
基本的に俺は>>644の人の考えと一緒

人を蔑むことしか知らないこいつらがまた死んだんだ。
から
姉ちゃんを苦しめた奴と同類の奴が死んだ
って勝手に解釈しました
682黒豆(二粒):2006/12/16(土) 20:16:01.56 ID:+aQFuwj9O
683巫女に初詣:2006/12/16(土) 20:36:12.85 ID:9Vfb17TL0
ピアノ見て本っっっ気で鬱になってたところで追い打ちかけられた…
バッドエンド耐性持ってない俺の心はもうダメかもわからんね
684猪(ボーカル):2006/12/16(土) 21:07:52.70 ID:gsZdnSU5O
685猪(ミニスカ):2006/12/16(土) 21:10:32.77 ID:nC+Bhnmf0
>>674
トンクスです><
686黒豆(一粒):2006/12/16(土) 21:11:17.98 ID:n+iUCKldO
これは読めば読むほど面白いな
687:2006/12/16(土) 21:22:37.11 ID:bM75Gg5c0
 ついに俺も600を超えるスレを立てたよ……カーチャン

 どうせあと何時間かで落ちるスレだし、出来たら1つだけ我が儘を聞いてもらいたい。
『〜だ。〜である。』じゃなくて『〜です。〜ます。』を使って重くて大人しい雰囲気の文を
書きたいと思ったんだけど、上手く書けない。
で、目の肥えてるここの人たちに「ここをこうしたら?」とか何かアドバイスを聞けたらな、
とそう思ったわけで……。

 試しにちょっくら2レス分くらい書くんで、何かお言葉が頂けたら嬉しいです。
総合だと話完結させなきゃ駄目だなぁって言う勝手な思い込みがあるんで……。
688黒豆(二粒):2006/12/16(土) 21:30:38.34 ID:+nBYUAJJO
ナレーションみたいに
状況をゆっくり把握して伝えるみたいな

なんて言うか




ナレーションみたいに
689猪(甘党):2006/12/16(土) 21:30:58.89 ID:4Fi/B7K30
>>687
撃たれっぱなしですがこんなやつでよければ
690:2006/12/16(土) 21:32:15.66 ID:bM75Gg5c0
 重苦しくも冷たい水の流れが二人の間に流れていました。
嘗て楽しかったこの場所に私は今日泣き顔で立っています。
いつも二人ここで見ていた綺羅星も今日に限っては一つも見えず、光を浴びない私の顔がどんどんと
憂慮の色へと変わっていくのです。

ξ゚听)ξ「かの空は、薄情だ」

そう涙ながらに悪態を吐く私を彼は優しく撫でてくれました。その掌から伝わってくる優しさが、
頭の天辺から鼻先をくすぐり、首筋を撫ぜて全身へと広がっていくのを覚えました。
それでも、身を切るような寒さが私のどうしようもない悲しみを余計に膨らましていくのを
しとしとと感じずには居られないのです。

( ^ω^)「もう、お帰りなさい」

彼はそう言って繋いでいた私の手を離そうとします。この今にも流れの途絶えそうな細流の
此方と彼方を結ぶ唯一の懸橋が今、朧になり霞んでいくのを感じ私は泣き喚きました。

ξ;;)ξ「イヤだ! イヤだ! さよならなんてするもんか!」

すると、私が駄々をこねる姿を見て彼は困ったような顔をして溜息を吐いたのです。
いいぞ、もしかしたらさよならが延びるかも知れない。
けれどもそう思った時、細流に一筋の細い薄氷が延びるのを、私は確かに見てしまったのです。
そして慌てて上げた視線の先には、もう彼は居ませんでした。
私の手に温もりだけを置いて、彼はとうとう行ってしまったのです。
691:2006/12/16(土) 21:33:19.41 ID:bM75Gg5c0
 パチ、と音を立てて目を開くと、薄暗い部屋の天井はまるで固められた積乱雲のように
見えました。ひんやりと冷たい朝露を含んだ香を鼻腔に溜めると、先ほどまでの暖かな
彼の囁きが耳元からさらさらと消えていくのを感じ、私は慌てて掬い上げようと手を
伸ばすのですが、一体どこに手を差し出したらいいか知らんと困り果ててしまうのでした。
遠くでそれを見た鴉が「馬鹿だなぁ」とささめいたのを聞くと、私は傍にあった盆を外へと抛り、
舌をこれでもかと引き出して赤ん目をしました。しかし、やはりそこには鴉など居るわけも無く、
私はただ一人寂しく虚無へと舌を出しただけなのでした。

 一人になって幾星霜を重ねたかは分かりませんが、今でもあの時の彼の困り顔が頭から
離れずに居ました。それが消えるまでの間いつものように、暫く床から何とはなしにただ雪の
降る庭を見ていました。そしてその雪は私の心にしんしんと積もり、溶け、涙へと変わるのです。

ξ゚−゚)ξ「……かの川はすっかりと凍ってしまいました」

私は奥歯を噛締め寂しさを紛らわせるために一人貴方に語りかけるのでした。

 誰も居ないこの真白な世界で私は一人貴方だけを思い続け、今ではすっかりと酒等を
嗜むほどにまで成長しました。嗜むとは言っても、この貴方の匂いがする清酒を盃に取り
一つ口を付けては、ふぅと溜息を吐くばかりで、露も呑めない私はただその匂いに一層
貴方が恋しくなるばかりなのです。

ξ;−;)ξ「何時になれば……雪融けは来るのでしょうか」

再び貴方に語りかけ、私は盃が傾くのも気にせずにさめざめと泣き出してしまうのでした。
692:2006/12/16(土) 21:36:34.55 ID:bM75Gg5c0
>>688
ナレーション……ですか、なるほど。今度からはナレーションを気にして聞いてみます。

>>689
とてつもなく、かなり、ありがたいです。
693猪(甘党):2006/12/16(土) 21:38:20.51 ID:4Fi/B7K30
個人的に。
絵本系の文体ですが、一人称だとなんとなく難しいところにでそうです
三人称、つまりナレーション意識してみてはどうでしょう。
人にすでに言われていることなうえに偉そうです。ごめんなさい
694:2006/12/16(土) 21:41:17.22 ID:bM75Gg5c0
>>693
あ、そうか、一人称でナレーションは無理だ。三人称だとまた違った感じに
なると言うわけですね。謝られても困りますwww
695黒豆(三粒):2006/12/16(土) 22:13:30.92 ID:+nBYUAJJO
>>694
彼らは冬を迎えるために食料の買い出しへと向かいました。
しかし彼らの身に災いが降り懸かることなどはだれもが気付くことはありませんでした。


みたいな('∀`)
696猪(ギター):2006/12/16(土) 22:17:10.63 ID:5PHwSO6PO
( ゚∀゚)の目的が姉の復習だって分かってるけどさ。
姉が在学してたのは何年も前でしょ?
なのに何でしぃとかに復讐してるの?
697:2006/12/16(土) 22:19:08.75 ID:bM75Gg5c0
>>695
はぁ〜……なるほど。確かにこれだと自然ですね。
参考にさせていただきます('∀`)
698黒豆(三粒):2006/12/16(土) 22:25:47.26 ID:+nBYUAJJO
>>697
N〇Kの歴史物とか動物奇想天外とか見てると勉強になるかもw
699黒豆(五粒):2006/12/16(土) 23:00:22.10 ID:VY622umqO
700書初め(遠山金さん):2006/12/16(土) 23:11:57.81 ID:aKaXL9oE0
読んだけど後味の悪さが女性作家っぽいな
701黒豆(四粒)
あ,ナレーションっぽくするとセリフが入ると変になる