1 :
作者に代わってスレ立て代行:
代理
2 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:46:06.81 ID:4/EN2i210
3 :
ex17落とさないでね:2006/11/11(土) 23:47:30.06 ID:V1+WrBK2O
>>1、
>>2オッテュ!!!
今回は二本立てか・・・酒飲みながら楽しませて貰うZE!!!
4 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:48:01.20 ID:4/EN2i210
第13話
これほど会議室に入るのが嫌だと思ったのは何時以来のことだろうか?
初めて任務を失敗した時に呼び出された時? それとも異動辞令をもらった時?
まあ以前の経験と違うのは、今回呼び出されるのは全て自分のせいだと自覚していることだが。
クーはゆっくりと会議室のドアをノックした。
「どうぞ」という声が中から返ってきた。
川 ゚ -゚) 「失礼します」
クーはひとつ息を吐いて、中に入った。
会議室の中は、朝早いというのに人で埋まっていた。
この組織の人間、政府の役人、アドバイザー、様々な人物が席につき、それぞれ目の下に隈をつくった顔をこちらに向けていた。
みんな寝られなかったと見える。当たり前だろう。昨日あんなことがあったんだから。
5 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:49:07.47 ID:4/EN2i210
狐「とりあえず、席に座ってくれ」
川 ゚ –゚) 「はい」
クーは素直に席に座った。
皆からの視線、特に役人然とした政府関係者の厳しい視線が感じられ、居心地が悪い。
けど逃げ出すわけにもいかない。ここが正念場だ。
狐「さて、詳しいことを聞かせてもらえるかな?」
いつもの明るい調子の声で狐は言う。
だが、その瞳の奥に正体不明の鋭さがあると思うのは気のせいではないのだろう。
クーは立ち上がり、ゆっくりと言葉を噛み締めるように話を始めた。
川 ゚ -゚) 「詳細は報告書に書いてあるとおりです」
数十枚に及ぶ報告書を手に取り、会議室にいる全員に向けて指し示した。
6 :
ex17落とさないでね:2006/11/11(土) 23:49:44.77 ID:V1+WrBK2O
紫煙
7 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:51:07.17 ID:4/EN2i210
川 ゚ -゚) 「『影』の討伐を行おうとしていた際、原因不明の『影』の消失現象に出くわしました。
これは以前から観測されていたことであり、詳しい説明は省きます。
また、工場付近に近づいた時から通信が不能となっていました。おそらくジャミングをかけられていたと思われます」
「そこで退いていればいいものを……」
役人顔の男が憎々しそうに呟いたのは、聞かなかったことにした。
川 ゚ -゚) 「『影』の消失現場に入った所で、正体不明の敵からの銃撃を受けました。
おそらく敵は『赤坂』に所属するギコという男だと思われます。
その後、銃撃を避けていくにつれてブーン君の姿をロスト。
それから戦闘を継続していましたが、敵は早々に撤退。ブーン君と合流しようとしましたが、彼の姿は工場のどこにもありませんでした」
狐「で、今の状況、というわけか……」
沈黙が会議室の中に降り立った。誰も彼もが資料に目を通すだけで、発言をしようともしない。
それだけ深刻な状況なのだから仕方のない。
8 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:53:01.56 ID:4/EN2i210
あの時、ギコは「時間だ」という呟きを残して不自然なほど素早く逃げていってしまった。
不審に思ったものの、これでブーンと合流できると安心した。が、甘かった。
ブーンはどこにもいなかった。
まるでその存在を消されたかのように、その工場から姿を消していた。
しかも、だ。おそらくブーンは誰かと戦っていたはずなのにその痕跡すら残っていなかったのだ。
見つけたのは、壁に不自然に空いていた刀傷と思われる跡だけ。
おそらく投擲武器が刺さった跡だ。
ということは、ブーンはその使い手にやられて、そのまま連れ去られたとするのが妥当な判断。
そういうことを一瞬で判断できる自分を、その時ほど恨んだことはなかった。
9 :
ex17落とさないでね:2006/11/11(土) 23:53:25.31 ID:V1+WrBK2O
☆
10 :
ex17落とさないでね:2006/11/11(土) 23:54:12.67 ID:g3/nMZsuO
wktk
11 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:54:57.47 ID:4/EN2i210
川 ゚ –゚) 「ブーン君を連れ去ったのは誰なのかはわかっていません。
あの場にギコがいたとことから『赤坂』が行った可能性が1番高いため、現在ぃょぅに探りを入れてもらっているところです。
報告、以上」
狐「うん、よくわかったよ」
「にしても、これはまずい状況ですな」
と苦い顔をして言ったのは、この組織のご意見番であるご老人。
「そんな当たり前のことをいちいち言わないでください。もし他国の組織が捕獲したとなると、パワーバランスが」
とのたまったのは、政府関係者。
次々と発言していく出席者達。収集がつかなくなりそうだ。
12 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:57:12.22 ID:4/EN2i210
と、役人顔の男が立ち上がる。
彼は以前からこの組織に関して否定的であり、予算の無駄遣いだと常々言っている男だ。よく覚えている。
役人顔の男「だいたいクー君に彼を任せてよかったのか、以前から疑問だったんですよ。
『人の子』は日本にとって、いや世界にとって重要な人物です。
前にも言いましたが、やはり政府関係者、防衛庁辺りにでも任せておいた方がよかったんですよ。
所長の推薦があってこれまで渋々認めていましたがね。
なのに、この事態だ。これだから1度裏切った人間は信用できな――」
狐「黙れ」
狐の冷徹な声が響いた途端、しんと会議室が一瞬にして静寂に包まれた。
役人顔の男が呆然とした表情で立ち尽くしている。
狐「それは関係のないことだ。それ以上言うなら、政府に意見陳述書を提出させてもらう」
狐は、それだけでも人を殺せるような厳しい視線を役人顔の男に向ける。
男は観念したのか、たじたじと椅子に座り、すねた子供のような表情で報告書へと視線を逃がした。
狐「……問題はこれからのことです」
いつもの調子に戻った狐は、報告書を掲げて言った。
13 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/11(土) 23:59:11.42 ID:4/EN2i210
狐「あまり時間はかけられません。ブーン君が行方不明となると、これからの世界情勢はどうなるかわからない。
各部署は情報収集と彼の捜索に全ての時間を割くように。それと、公安と警察の力も貸してもらいます。いいですね?」
有無を言わさない表情で政府関係者達へと視線を移す狐。
めがねをかけた役人顔の男達はただうなずくしかできなかったのだった。
狐「それでは、『VIP』関係者は自分の部署に戻り、これからの指示を待つこと。残りは公安・警察との連携を確かめるため、会議室に残ってください。
以上」
クー、モナー、そして他の『VIP』の所属する者は全員立ち上がり、その場から退出。
廊下に出た途端、ぐんと肩に疲労がのしかかったような気がして、クーはふらりと身体をよろけさせた。
14 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:01:56.12 ID:62RqceFl0
( ´∀`)「ちょ、クー。大丈夫かモナ?」
川 ゚ -゚) 「あ、ああ……大丈夫だ。少し寝ていないだけだ」
( ´∀`)「働きすぎだモナ。少しは休まないと、いつか倒れてしまうモナ」
川 ゚ -゚) 「そうだな……」
けどそんなことは言ってられないだろう?
そう口に出してしまいそうになったクーは、しかしくるりと進行方向を変えて早足で歩き出した。
これからもっと辛いことが待ち受けているのだ。こんな会議なんかよりももっと辛くて、心にのしかかること。
早めに済ませたい。
( ´∀`)「どこに行くんだモナ?」
川 ゚ -゚) 「……事情説明に。彼らにな」
( ´∀`)「そうかモナ……」
モナーはそれ以上何も言わず、その巨体を翻して離れていった。
そうだな。こうやって何も言わないでいてくれた方が助かる。優しい男だ、こいつは。
15 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:03:57.11 ID:62RqceFl0
厳しい顔で歩を進めるクーは、ひとつの部屋の前に立ち止まった。
ブーン、ショボン、ドクオ達の共同部屋。
きっと3人がこの部屋にいる。ブーンの友達であり、最も大事な仲間である彼らが。
大きく息を吸い込み、吐く。
よし、行こう。
ノックをして部屋に入ると予想通り彼らがいた。
それぞれ暗い顔で椅子に座り込んだまま動かなかった。
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
ξ゚─゚)ξ「……」
少しだけ顔をあげてこちらを見る3人。
きっと一晩中ブーンのことを心配していたのだろう。
いや、それとも朝になっても戻っていないブーンに気付いて、スタッフの誰かに聞いたけれども満足な答えが返ってこず、
失意のままこの部屋にへたり込んでいたのだろうか?
そんな疲れが顔ににじみ出ている。
16 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 00:05:03.49 ID:7ht6+nnsO
wktk
17 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:06:02.68 ID:62RqceFl0
(´・ω・`)「……クーさん、ブーンは?」
そのショボンの言葉を皮切りに、クーは手短に事の事情を話した。
昨日仕事で、正体不明の人物に襲われたこと。
自分とブーンは途中ではぐれてしまい、敵との交戦が終わった後になって探しても見つからなかったこと。
『赤坂』を中心に情報をかき集めているが、彼に関する情報はひとつも入らないこと。
そのひとつひとつを静かに聞いていた3人。
話し終えた時にはそれぞれ絶望に伏した表情で顔を俯けていた。
ξ゚听)ξ「そ、それじゃあ、ブーンが生きてるのかさえわからないですか?」
川 ゚ -゚) 「……そうだ」
ξ゚听)ξ「そんな……」
顔を手で覆うツン。
それを悲痛な思いで眺めていたクーは「すまない」と気休めにもならない謝罪を口にした。
18 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:07:58.64 ID:62RqceFl0
(‘A`)「ざけんなよ!」
ドクオがいきなり、胸倉を掴んできた。
彼の顔と声は怒りに満ち、手は震えている。
抵抗する気すら起こらず、クーは彼のなすがままにした。
('A`)「あんた達が守るんじゃなかったのかよ! あいつが大事だって言うんなら、どうしてもっと……もっと!」
川 ゚ -゚) 「……すまない」
('A`)「っ!このやろう!」
ドクオが握りこぶしを作って、腕を振りかぶる。
クーは目を瞑らず、一切を受け入れようと歯を食いしばった。
19 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:09:57.64 ID:62RqceFl0
だが、その拳は止まった。
止めたのはショボンだった。
(´・ω・`)「やめなよ、ドクオ」
('A`)「なんでだよ……ブーンがいなくなったのは!」
(´・ω・`)「ブーンが戦うと言った時から、こういうことがあるかもしれないと思っていただろ? 僕達も、ブーン自身も。
彼女を責めるのは見当違いだ。僕達は自分達で決めて、自分達で受け止めていたはず」
ショボンは落ち着いた口調で話しているが、その右手は握りこぶしが震えているのをクーは見逃さなかった。
そして、ますます己の罪悪感にさいなまれた。
(‘A`)「そんなの……そんなのわかってるさ! けどな! やりきれねえんだよ!」
胸倉を掴んでいた手を離し、ドクオは壁に手をつく。
('A`)「どうしてブーンなんだ!? どうして俺たちは何もできねえんだ!? こんな……こんな……!」
「くそぅ!」とドクオが壁を殴った。
自分の手の爪で掌から血を流し、手の甲は殴った衝撃で内出血している。
だがドクオはそんなことを気にもかけず、ただ俯いて「くそぅ……」と悲痛な叫びをあげていた。
20 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:12:02.26 ID:62RqceFl0
いたたまれず、クーは頭をさげて「すまなかった……」と最後に言葉を残し、部屋を出た。
誰もそれを止めることはなく、今はそれがありがたいとさえ思えた。
部屋を出たクーは、しかし歩き出そうとはせず、ドアの前で立ち止まっていた。
扉を挟んだ向こうから女の子の泣き声が聞こえる。悲壮な泣き声。おそらく涙で頬をぬらしているのだろう。
クーは扉にもたれかかって握りこぶしを作り、壁にたたきつけた。
ダン!という音が廊下に響く。
川 ゚ -゚) (何をしているんだ私は……!)
歯軋りして拳を更に硬くする。
ふがいない自分への罰。それでいて贖罪。
あれほどブーンを守ると決めたのに。
あれほど仲間を失わないと決めていたのに。
どうして、どうしてだ? どうして繰り返してしまう?
人は己の業から逃れることなどできないということなのか?
21 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:13:53.79 ID:62RqceFl0
川 ゚ -゚) (私は強くなったのではないのか……?)
哀れで弱い自分があまりにもふがいない。
クーは顔を下げ、ただひたすら硬い握りこぶしを作った。
(*゚−゚)「クーさん……」
川 ゚ -゚) 「しぃ……それにつーか」
横に目を向けると、しぃとつーの姉妹がいた。
しぃは心配そうな顔でこちらを見つめ、つーは焦点の合わない目でぼーっと無表情のまま車椅子に座っている。
クーは、ふとつーの目を見てみたが、彼女から視線が返ってはこなかった。
22 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:15:48.85 ID:62RqceFl0
つーは基本的に妹のしぃ以外の人間と話をしようとはしない。
記憶力が大幅に欠如しており、思考能力も低下しているつーは、たとえ誰かを覚えようとしても覚えられないし、覚えたいという欲求すら持てないのだ。
最近はブーンという存在を覚えて話をすることが多くなったようだが、
昔からの知り合いである自分を見てもまったく反応を見せないその様は、やはり精神が正常とは言い難い。
そんな彼女を見たクーはいっそう自分のふがいなさを再認識させられ、自然と自嘲の笑みを浮かべた。
(*゚−゚)「聞きました。ブーンさんが……」
川 ゚ ー゚)「ああ、笑ってくれていいぞ。またやってしまったのだからな。無力な人間だ、私は」
いじわるな言葉だと分かっていた。しぃが笑うわけはないし、自分を責めてくることもないだろう。
だから、これは自暴自棄になった馬鹿な自分に向けて言った言葉だ。同じ道をたどることしかできない自分への……
23 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:18:31.49 ID:62RqceFl0
「あははは」
突然、明るい笑い声が廊下中に響き渡った。
川 ゚ –゚) 「……つー?」
(*゚−゚)「お姉ちゃん?」
(*゚∀゚)「あはははは!」
それはつーだった。
大口を開け、腹を手で押さえて大声で笑っている。
底抜けに明るい笑い。無邪気で子供のような残酷さをもった笑い。
長い間それは止まらず、クーとしぃはそれを呆然とした表情で眺めていた。
(*゚∀゚)「ねえねえ、天気が曇りの時の太陽ってぇ、何してるんだろうねぇ」
(*゚ー゚)「お姉ちゃん、何を言ってるの?」
24 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:20:29.40 ID:62RqceFl0
つーは笑いながら喋る。笑い声はまだ廊下に響いている。
(*゚∀゚)「曇りの時もちゃんと光ってるのかなぁ? けど、こっちからは見えないもんねぇ。
もし太陽が見たいならぁ、もっと光ってもらうかぁ、風が雲を飛ばしちゃうのを待つしかないよねぇ」
川 ゚ -゚) 「……」
クーは呆然とその話に聞き入った。
なんだ? つーは何が言いたいんだ? いつもの妄言なのか?
太陽? 雲? 風? 光る?
まさか太陽とは……
(*゚∀゚)「けどぉ、風が雲を吹き飛ばしてもぉ、そこに太陽がなかったら意味がないよねぇ。
だからぁ、明日太陽がどこに出るのかぁ、明日の人に聞かないといけないよねぇ」
(*゚ー゚)「お、お姉ちゃん……1度部屋に戻ろうか」
(*゚∀゚)「あはははは!」
そこからまた笑い続けるつー。
しぃは車椅子を押して彼女を部屋へと連れて行こうとする。
25 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:22:53.61 ID:62RqceFl0
クーは彼女の言葉を何度も吟味して、しばらくの間立ち尽くしていた。
だがやがてハッ!と気がつき、車椅子を押すしぃの手を止めて、つーの前にしゃがみこんだ。
川 ゚ -゚) 「ブーンのいる場所を彼女に聞けということか?」
(*゚∀゚)「あはははははははは!」
つーは答えない。ただ笑い続けるだけ。
川 ゚ -゚) 「彼女に予言してもらい、未来のブーンがいる場所を教えてもらう。
そこに先回りして助ける。そうことか!?」
つーはけらけらと笑い、次には歌を口ずさみ始めた。
アンパンマンの歌だった。
26 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 00:23:43.13 ID:ga3Sq3iIO
27 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:24:57.19 ID:62RqceFl0
(*゚ー゚)「クーさん……」
川 ゚ -゚) 「とりあえず……彼女の所に行こうと思う。それで少しは事態が解決してくれるのなら」
(*゚ー゚)「え? 直接行くんですか?」
川 ゚ -゚) 「仕方あるまい。こちらからの接触は基本的に不可能だからな。直接訪ねるほかない」
(*゚ー゚)「そうでしたね……」
川 ゚ -゚) 「それほど遠くはない。すぐに帰ってくるさ」
クーは立ち上がり、まだ歌を歌い続けるつーを見た。
非常に楽しそうだ。さきほどまでの無表情が嘘のようだった。
川 ゚ -゚) 「つーは……回復しているのかもしれないな」
(*゚ー゚)「はい……以前よりは話をしてくれるようになってますし」
これもまたブーンという少年が現れたからなのだろうか?
彼が来て以来、様々なことが起こっている。
けど彼の存在が事態を良い方向へと導いてくれる。そう信じたい。
風よー 光よー 正義の祈りー
あわれ獅子丸ー ライオン丸にー
支援
川 ゚ -゚) (にしても……つーに言われるまでこんな簡単なことに気付かないとは、私はまったくどうにかしてる)
ふっと自嘲的な笑みを浮かべるクー。
川 ゚ -゚) 「では、行ってくる」
(*゚ー゚)「はい。所長には私から言っておきます」
川 ゚ -゚) 「頼む」
歩き出そうとしたところで、唐突に後ろの扉が開いた。
中から出てきたのは、何やら大荷物を抱えているブーンの友達3人――ドクオ、ショボン、ツン。
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
ξ゚−゚)ξ「……」
彼らの姿を見て、すぐにクーは事情を察した。
川 ゚ -゚) 「……行くか?」
小さく頷く3人。
クーはふっと小さく笑った。
それは先程のような自嘲の笑みではなく、希望と優しさに溢れた笑みだった。
第13話 完
30 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:29:22.23 ID:62RqceFl0
よし、続けて第14話いきます
支援してくれる方感謝!
>>26 まさか描いてくれる人がいるとは思わず、感動しすぎて一瞬呆然としたぜwww
では投下↓
31 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 00:30:42.49 ID:7ht6+nnsO
wktk
32 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:31:09.31 ID:62RqceFl0
第14話
目覚めたのは広いベッドの上だった。
( ⊃ω^)「お……?」
ここがどこなのかは分からなかった。
暗くて何も見えなくて、それでいて広くてやわらかい白いベッドの上で自分は寝ていた。
どこだ? そして自分はいったい?
身体を動かしてみようとして、動けないことに気付いた。指1本動かせない。
まただ。またあの金縛り。
ということは……
('A`)「よう」
いきなり横で声がしたので、目だけ動かしてその姿を確認する。
ドクオのひょろりとした痩躯がそこにはあり、ブーンは(ああ、そうか)と心の内で納得した。
33 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 00:32:22.52 ID:ga3Sq3iIO
>>30 本当はクーも描こうかとオモタけど・・・俺、絶望的に女描くの下手な事に気づいたw
14話wktk
34 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:33:04.36 ID:62RqceFl0
今度はドクオなのかお? 『従者』さん?
('A`)「ああ」
そうか。やっぱり従者か。
暗い部屋の中で従者の姿だけがはっきりと浮かび上がっていた。
にしても、ここはどこだ? 暗くてわからない。広いような気はするけど……
にしても、このドクオもどきも本物にそっくりだ。あの痩せ具合とか陰気な顔とか。
('A`)「なあ」
何?とブーンは声を出さず、頭の中だけで返した。
言葉は必要ないように感じた。
('A`)「迷ってるのか?」
迷ってる? 何を?
('A`)「戦うことを」
そう言われて、ブーンは返答に困った。
確かに迷っているといえば迷っている。
35 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:35:07.53 ID:62RqceFl0
兄者とかいうロープ使いに言われた言葉で、自分の心の奥底でくすぶっていた疑問にまた火がついた。
守るために相手の守るものを壊して良いのか? という疑問。
それは多分、頭の足らない自分がどれだけ考えても解決しない疑問なのだろう。
けど、無視することができないほど、火は明るく灯っていた。
('A`)「守ると決めたんじゃねえのか?」
( ^ω^)「……そうだお」
初めて声に出した。声に出した方がいいと感じたから。
('A`)「なら、迷う必要はねえじゃねえか」
( ^ω^)「けど、それが正しいことなのかが分からないんだお」
「ふーん」という興味のなさそうな声を返すドクオ。もとい、彼の姿をした『従者』。
36 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:37:12.12 ID:62RqceFl0
('A`)「ややこしいんだな」
( ^ω^)「……そういうもんだお」
('A`)「なら、守るのはやめるのか?」
( ^ω^)「それはダメだお」
('A`)「そうか」
そこで沈黙。
ブーンはもう一度辺りを見回していた。
指先1本も動かない今の状態では、周りの状況を確認するだけでも一苦労だ。
けど、やはり暗いだけで何も見えない。
というかこの暗さで『従者』の姿が見えること自体がおかしい。
人じゃないからか?
('A`)「……どうすんだ?」
ふと『従者』からそう問われて、ブーンはまた返答に困った。
37 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:39:34.06 ID:62RqceFl0
どうしたらいいんだろう? 正直言って、わからない。
これからも戦い続ければいいのだろうか? それとも、戦いをやめてひっそりと暮らした方がいいのだろうか?
自分からアクションを起こすべきなのか? それとも何かが起こるのを待つべきなのか?
わからない。全てが分からない。
( ´ω`)「……どうしたらいいんだお?」
質問に質問で返すなんて愚の骨頂だけど、そうすることしかできなかった。
しかし、『従者』は顔色ひとつ変えずに「それを決めるのはお前だよ」と答えた。
('A`)「俺は『従者』だ。ただついていくだけ。全部お前が決めろ」
( ´ω`)「厳しいお……」
('A`)「そういうもんさ」
ドクオの姿をした『従者』がおもむろに掌をブーンの額に当てた。
そして、いつものように睡魔が襲ってくる。今回は男の手だったので少し気持ち悪かったけど。
('A`)「お前と俺に人の祝福があらんことを……」
薄れゆく意識の中、ブーンはただ自分の大切なものだけを心に浮かべていた。
38 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 00:40:53.61 ID:6+C9veLGP
wktk
39 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 00:41:08.25 ID:ga3Sq3iIO
ほっしゅ
40 :
以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします:2006/11/12(日) 00:41:48.64 ID:OcvUXHE20
モキュテカ
41 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:41:56.81 ID:62RqceFl0
※
車を飛ばすこと3時間。
都内から出て他県へと入り、そのまた他の県に移動する。
3時間の間、車の窓から見える景色は、都会から田舎へとなだらかに変化していき、最終的にはある山のふもとに落ち着く。
○○県××山のふもと。道もろくに整備されておらず、ところどころに農家の畑や民家が点在している「いかにも」な田舎。
山々の森から鳥の鳴き声が聞こえ、空は雲を点在させながら真っ青な表情を見せている。
12月の中旬なので畑に農作物はなかったものの、日本独特の田舎の雰囲気を漂わせていた。
車から降りたクーは、その土地の空気を久しぶりに吸って、なんだか心が洗われるような心地がした。
42 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:43:59.04 ID:62RqceFl0
川 ゚ -゚) (ふむ……老後はこんな場所で過ごすのもいいだろうな)
そんなことをつれづれと思いながら、車は道端に放置しておき、ドクオ・ツン・ショボン達と共に歩き始めた。
ξ゚听)ξ「こんな所に予言者がいるんですか?」
川 ゚ -゚) 「ああ」
('A`)「まるっきりのど田舎じゃねえか……」
呆然と周りの景色を眺めている3人。
まあ、普通は驚くだろう。『VIP』にとって重要な人物が、こんな所に住んでいるなんて思いもよらないはず。
けど、この場所でなければならない理由が彼女にはあるのだ。
予言者として、どうしてもここにいなければならない。そんな理由が。
43 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:46:07.93 ID:62RqceFl0
川 ゚ -゚) 「ここからは歩きだ。けっこう長いからな。トイレに行きたい者は先に行け」
('A`)「遠足みたいっすよ、その台詞www」
(´・ω・`)「お菓子は300円まで、バナナはおやつじゃありません」
ξ゚听)ξ「遠足にしてはさびれた所にきたわね」
そんな軽口を叩きあいながら歩くこと30分。
あぜ道や原っぱの上を歩き通し、今度は山を登るようにして作られた長い階段を上る。
('A`)「ひーはー、ひーはー」
(´・ω・`)「ドクオ……体力がなさすぎるよ」
ξ゚听)ξ「私より体力ないってどんなよ……」
川 ゚ -゚) 「……」
体力のないドクオを置いとけぼりにするようにしつつ、クー、ツン、ショボンは階段を上りきった。
ξ゚听)ξ「……ここですか?」
川 ゚ -゚) 「ああ」
(´・ω・`)「だけど……ここって」
44 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:48:01.82 ID:62RqceFl0
呆然とした2人の後ろからドクオが青い顔して追いついてきた。
('A`)「ひーひー、ん、ん? なんだよここ、廃墟じゃねえか……あ〜、つかれた〜」
3人は再び呆然とした表情でその建物を眺めていた。
まあ、当たり前か。
目の前にあるのはまさしく『廃墟』の洋館なのだから。
川 ゚ -゚) 「……まあ気にするな」
(;'A`)「いやいや」
(´・ω・`)「これは甚だ意外だね」
ξ゚听)ξ「こんな所に……?」
その洋館はすさまじく大きい。それは確かだ。何十年前は何千万円という建設費をかけて建てられたことは容易に想像がつく。
左右対称に作られたヨーロッパの近代建築の象徴であるかのようなたたずまい。
真正面に玄関。所どころに窓があり、屋根裏もついているのだろう、天体観測用の天窓もついている。
しかし、それら全てがボロボロだった。窓は所どころ割れており、壁の一部は剥がれ、穴が空いているところもある。
亀裂は縦横無尽に走り、玄関のドアは閉められていない。というか壊れている。
まさしく『廃墟』だ。
45 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:50:12.06 ID:62RqceFl0
川 ゚ -゚) 「入るぞ」
ふっ、と笑ったクーは、とうの昔にたてつけの悪くなっている木目調の大きな扉を開いて洋館の中に入る。
ξ゚听)ξ「え? 呼び鈴とか鳴らさなくていいんですか?」
川 ゚ -゚) 「呼び鈴も壊れているし、鳴らす必要もない。私達が来ることは分かっているはずだ」
(´・ω・`)「?」
('A`)「?」
クーは勝手知ったる足取りで洋館の中を歩き回る。
中も外観と同様にひどいものだ。きちんと掃除されていればゴージャスな貴族の屋敷のようになっていただろうに。
今となってはねずみの巣のようなものだ。
玄関は吹き抜け式になっており、大きな階段を上った先にある2階の部屋の扉も見ることができるが、目指すのはそこじゃない。
階段の裏側の床。そこに小さな扉が付けてある。
46 :
以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします:2006/11/12(日) 00:52:12.73 ID:OcvUXHE20
廃墟の羊羹
47 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:52:54.61 ID:62RqceFl0
川 ゚ -゚) 「ここの梯子を下るんだ」
ξ゚听)ξ「地下があるんですか?」
川 ゚ -゚) 「私達が作った。彼女のためにな」
梯子をくだり、たどりついた先にあるのは巨大な鉄の扉。
錆びきったボロボロの鉄の扉だが、この先にあるものを封ずるには十分だった。
クーは鉄の扉の横にあったナンバー認証式のキーに自分のカードを差込む。
すぐにOKのサインが出て、扉が開き始めた。
鉄がきしむ音とこすり合わせる音が混在した爆音を立てながら、扉は最後まで開ききった。
そして、その場所は現れる。
真っ白で何もない空間が。
ξ゚听)ξ「なに……これ……」
(´・ω・`)「壁はやわらかい……マット?」
(‘A`)「なんだよここ……」
3人は3度目の呆然とした表情で部屋を眺める。
48 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:54:55.76 ID:62RqceFl0
まあこれも当たり前だろう。
目の前に広がるのは、ワンルームマンションの一室のような広さの部屋。
だが、壁は自傷防止用のマットで覆われ、最小限のもの以外はテレビすら置かれず、ほとんど間この鉄の扉で密室状態とされているこの部屋。
何年も前に『VIP』が作った特別『保護』施設だ。
川 ゚ -゚) 「……いるな」
常人が入れば3日と持たず精神が崩壊するようなこの部屋の中央に、ひとつのテーブルと椅子が置かれている。
その椅子に座って紅茶を優雅に飲んでいる女性に向かって、クーは頭を下げた。
川 ゚ -゚) 「お久しぶりです、マザー」
J(  ̄─ ̄)し「ええ、久しぶりです、クーさん」
その女性は、身振り手振りで久しぶりの再会を喜びながらも、その顔につけた鉄仮面のせいで表情を伺いしることはできなかった。
あでやかなカジュアルドレスを着込み、ふっくらとした体つきをしていながらも、顔には鉄仮面。
なかなかにシュールな姿だ。
49 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:56:26.18 ID:62RqceFl0
川 ゚ -゚) 「マザー、さっそくですがお話が……」
J(  ̄─ ̄)し「あらあら、せっかちねえクーさん。初めてのお客さんに挨拶ぐらいさせてもらってもいいでしょうに。
ねえ、ツンさん、ドクオさん、ショボンさん?」
ξ゚听)ξ「え……!」
(´・ω・`)「どうして僕達の名前を……」
驚いているツン達。
彼らのことをすっかり忘れていたクーは、慌てて彼らに説明をし始める。
川 ゚ -゚) 「彼女はこういう人なんだ。予言者、と言っただろう?
彼女は未来を見る力を持っている。怖がらなくてもいい。悪い人ではないから」
J(  ̄─ ̄)し「あらあら、予言だなんてたいそうなものじゃありませんよ。ただ推測しているだけです」
50 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 00:58:46.52 ID:62RqceFl0
予言者『マザー』。
数年前の「ごたごた」の後から『VIP』に協力してもらっている『重要保護人物』。
そして、予言者。
彼女の予言は多岐にわたり、『人の子』が出現する場所を当てたのも彼女だし、『影』の出現場所を推測してくれたのも彼女だ。
彼女と再会したのは実に1年半ぶりのことだ。
これまでは彼女からの一方的なファックスを受け取るぐらいしか接点がなかった。(それでも十分な情報をもらっていたけど)
それは彼女が人と接するのを嫌がるからであり、
こんな山奥まで電話線が引かれていないからでもあり、
またこちらからもなるべく接触を避けていたからでもある。
なんにしろ、彼女の予言は自分達にとって不可欠なものだ。
それは十分「たいそうなもの」と言う資格がある。
51 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 00:59:45.16 ID:zW2ApnY+O
待ってましたwww
52 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:00:53.28 ID:62RqceFl0
ツン達は動揺しながらも、マザーに向かって頭を下げた。
ξ゚听)ξ「は、はじめまして」
('A`)「はじめまして」
(´・ω・`)「はじめまして」
J(  ̄─ ̄)し「はい、はじめまして。ああ、握手は結構ですよ。あなたたちの未来を見てしまうのは忍びないですから」
ショボンが律儀に握手しようとしたを所をマザーが止める。
3人が再び頭に?マークを浮かべたので、クーは重ねて説明した。
川 ゚ -゚) 「彼女は近くにいる人間や物の未来を無差別的に見てしまうんだ。見ようとしなくても、な」
(´・ω・`)「え? それじゃあ……」
J(  ̄─ ̄)し「ああ、今は大丈夫ですよ。こうやって鉄の仮面をつけていれば見えませんから。
ただ、直接触ってしまうとダメなので握手は遠慮しているんです」
川 ゚ -゚) 「こんな田舎のこんな部屋の中に住んでいるのもそれが原因だ。この部屋の壁には鉄が敷き詰められており、外とは完全に遮断されている。
しかしそれでも未来を見てしまうことは完全に阻止できない。どうしたって壁や床には触れてしまうからな。だからこのマットを敷いている」
クーは床に敷き詰めてある自傷防止用の白いマットを指差した。
53 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:03:12.75 ID:62RqceFl0
川 ゚ -゚) 「このマットは……」
J(  ̄─ ̄)し「未来を見過ぎて狂ってしまった時、自分を傷つけないためのもの。
あと、ある程度の遮断性もあります」
川 ゚ -゚) 「……こういう部屋でないと彼女は日常生活を送れないんだ」
ξ゚听)ξ「そんな……」
ツンが口を手で覆って、悲痛な声を出す。
マザーは近くにあったティーポットでお茶を淹れながら、明るい声でそれに答えた。
J(  ̄─ ̄)し「そんな声を出さないで、ツンさん。私は満足してます。
こうやって静かな生活を送ることが私の幸せですから。
以前都会に住んでいたこともありますが、それに比べたら遥かにマシですよ」
おそらくその仮面の下では幸せそうな微笑みを浮かべているのだろう。
それが感じられて、クーもまた微笑んだ。ツン達も納得がいかない表情をしつつも、安心したかのように息を吐いた。
J(  ̄─ ̄)し「昔クーさん達には迷惑をかけましたしね……今はしがない占い屋をやっています」
54 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:03:13.62 ID:uhRWsVpAO
wktk
55 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:05:19.11 ID:62RqceFl0
マザーは慣れた手つきで4人分の紅茶を淹れ終え、テーブルの上におく。
J(  ̄─ ̄)し「どうぞ」
クー達は椅子に座り、ありがたくそのお茶をいただいた。
おいしかった。少なくとも食堂の紅茶よりは。
川 ゚ -゚) 「で、マザー。聞きたいことがあるんですが……」
紅茶を飲み干しながら、クーは話を切り出した。
J(  ̄─ ̄)し「ええ、わかっています。『人の子』……ブーン君のことですね?」
川 ゚ -゚) 「……やはりマザーも彼が『人の子』だと?」
J(  ̄─ ̄)し「あなた達もそう思っているんでしょう?
彼は不思議な子です。私ですら、彼の未来をはっきりと見ることができない。
いえ、最近になって世界全体の未来にもやがかかっているのは、おそらく彼の存在があるからなのでしょう」
56 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:07:25.14 ID:62RqceFl0
川 ゚ –゚) 「もや? では、未来が見えないんですか?」
J(  ̄─ ̄)し「まだまだ薄いもやですが、広がりつつあります。きっと彼という不確定要素が発生したからなのでしょう。
私は『気』の流れを推測するだけ。それは川の流れを読むのと似ています。
しかしブーン君という『石』が川の中央に落とされることで、流れは複雑化し、さまざまな方向へと流れているのです」
クー達は黙って彼女を話に聞き入った。と同時に不安に思った。
マザーが未来を見ることができない……ということは、ブーンを救い出すことができないということに。
J(  ̄─ ̄)し「ああ、だけど安心してください。ブーン君の近い未来……非常に近い未来は見ることができました」
その瞬間、ツン達の間に希望の笑みが浮かんだ。
ξ゚听)ξ「じ、じゃあ居場所も!」
J(  ̄─ ̄)し「私が見ることのできるのは現在ではなく未来だけ……今の居場所はわかりません。
私が見たのは、今から3日後の昼、ブーン君が飛騨山脈の山奥にある何かの施設に収容される所だけでした」
(´・ω・`)「けっこう範囲が広いね……」
57 :
26:2006/11/12(日) 01:08:17.00 ID:ga3Sq3iIO
58 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:09:32.41 ID:62RqceFl0
J(  ̄─ ̄)し「詳しい場所はわかりません。しかし、ブーン君を連れていく人達には見覚えがありました。
あれはおそらく……ラウンジ教でしょう」
川 ゚ -゚) 「ラウンジ教……! そうか、やはりぃょぅの推測は正しかったのか」
狐達にことの次第を報告した会議の後で、ぃょぅはこんなことを電話で言っていた。
(=゚ω゚)ノ『もしかしたらラウンジ教かもしれないょぅ。
ブーン君が行方不明になった日、公安も【影】の出現地域を見張っていたという情報が入っているょぅ』
ラウンジ教ならば、対処方法はいくらでもある。
彼らの本部はわかっているし、そこにブーンがいる可能性も……!
もしそこにいなかったとしても、3日後には飛騨の施設に移されることが分かっているのだ。
その移動中を狙っても良い。
彼を救い出す方法などいくらでも……!
クーは無意識に明るい表情をとった。
59 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:10:45.83 ID:OcvUXHE20
待機
川 ゚ -゚) 「ありがとうございます。これでなんとかなりそうです」
J(  ̄─ ̄)し「いえいえ、これが何かの役に立てばいいんですが」
(´・ω・`)「僕達にとっては救いの手みたいなものですよ」
ξ゚听)ξ「ありがとうございます!」
('A`)「よし! 善は急げだ! 早く帰ろうぜ!」
ドクオのそんな早足にツンが「待ちなさいよ。せめてお茶を飲んでからにしなさい」とツッコミを入れる。
部屋の中が少しだけ笑いに包まれた。
丁重にお礼を言い、クー達はその館を後にした。
最後、マザーはクーだけを呼び止めて、こんなことを言った。
J(  ̄─ ̄)し「おそらくこれが私の最後の予言になると思います。世界はもう私が理解するためにはあまりにも複雑化していますから。
あなたと会うのもこれが最後でしょう……名残惜しいですけど、仕方のないことです。
クーさん、気をつけてください。これからは私が見えない世界です。あなた達の意志が重要になります。
これまでは人の意志で未来を変えることなどできませんでしたが、これからは違います。人の意志が重要なのです。
これだけを覚えておいてください」
そんな暖かい言葉に、クーは頭を下げただけで応えた。言葉が出てこなかった。
まるで本当の『母』のようだった、彼女は。
61 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:11:54.64 ID:ga3Sq3iIO
飲みつつ、☆
※
マザーの洋館から、来た道を戻ること30分。
ドクオの体力が限界になって倒れそうなところを、クーとショボンが両側から担いで歩いたり、
ツンが赤い顔をしてモジモジと身を震わせ、「トイレか?」と聞くと一層赤い顔になったり、
ショボンが汗ひとつかかない顔をして歩いていたり(冬ではあるものの、けっこうな距離を歩いたのだが)、
そんなことをしながら、クー達は車に戻り、そして一路『VIP』へと戻るために出発した。
帰った後にやることは山ほどある。これからは一層寝不足になることだろう。
だが、それは嫌なことではない。自分から進んでやっていることなのだ。自分の意志が望んでいることなのだ。
ブーンを助けるために。これ以上繰り返さないために。
今自分がやるべきことを、やる。
63 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:15:30.52 ID:62RqceFl0
('A`)「クーさん、ブーンを助ける作戦……俺たちも混ぜてくれませんか?」
川 ゚ -゚) 「それは……」
(´・ω・`)「お願いします」
ξ゚听)ξ「サポートぐらいならやりますから!」
運転中、彼らが真剣な表情でそう言うのを聞いて、クーは一瞬迷った。
彼らもまた『自分がやるべきこと』をやろうとしているのだろう。
自分達の意志を貫き通そうとしているのだろう。
だが……
川 ゚ -゚) 「すまない。それはできない」
(´・ω・`)「どうしてですか?」
川 ゚ -゚) 「これからはもう普通の人間が関わるようなことじゃない。戦争だ。
たとえ君達が1週間ほど訓練をしていたとしても、なんとかなるようなレベルの状況じゃないんだ。
それに、君達がやることは別にある」
('A`)「なんですか?」
64 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:17:37.38 ID:62RqceFl0
クーは一息つき、後ろにも前にも車がないことを確認して、目線を後ろの3人に移した。
川 ゚ -゚) 「ブーン君が戻ってくるのを待つこと。そして、彼が戻ってきた時に迎え入れてあげること……
それは君達にしかできないことだ。兵士ではとてもじゃないができない」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
ハンドルを右に切りながら、クーは一呼吸置いて言った。
川 ゚ -゚) 「私達に任せてもらいたい。絶対に助けるから」
「はい」という言葉が返ってきたのは、それから数十秒経ってからのことだった。
65 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:17:45.51 ID:ga3Sq3iIO
王道フラグを余裕綽々にぶっ壊すクーにおっきしたwwwwwwwww
66 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:19:32.62 ID:62RqceFl0
少しくさい台詞だっただろうか? まあ、これが本心からの言葉だ。
……これでますます失敗は許されなくなった。
ツン達が役目を果たせるように、まず自分が頑張らないといけないのだ。
川 ゚ -゚) (……)
クーは長く続く高速道路の先を見つめた。
もう夕方に差し掛かりつつある空の色。
道路沿いの電灯が瞬き、車もほとんど通っていないこの道路の先には何があるのだろう?
それは自分の意志ひとつで決まるのかもしれない。
マザーの言葉が今になってさらに印象深いものになったような気がした。
第14話 完
67 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:21:59.74 ID:62RqceFl0
というわけで、今日はこれで終わり。
支援してくれた方、絵を描いてくれた方、夜遅くまで読んでくださった方、ありがとうございます!
感想やら質問やら……あります?
>>65 やっぱり王道フラグだったかな?
けど、実際1週間ぐらい訓練したからって、兵士にはなれないと思うしね。
68 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:23:54.63 ID:uhRWsVpAO
乙!
69 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:26:21.50 ID:62RqceFl0
次は……明日スレが残ってたら幕間を投下しようかなあ。
落ちてたら、火曜か水曜の夜に幕間と15話を連続投下することにします。
しかしなんだ……
ねみぃ!!!!
70 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:28:56.63 ID:ga3Sq3iIO
作者、乙!!!
三人組が日常以外のシーンに食い込んできてwktkすよ
・・・ただ、前スレで言ってた程話が動かなかったのは・・・かもな
この先の急展開に期待
71 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:29:45.22 ID:62RqceFl0
というわけで、今日はこれにて就寝。
見てくださった方々、ありがとうございます。
72 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 01:31:03.34 ID:62RqceFl0
>>70 最後にレス。
展開が動かないのは仕様です……というのは冗談で、どうにも進まないのは自分でも悩んでます。
一気に読むのは疲れると思うので、日を空けてまったりと読んでやってください
73 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:31:18.16 ID:ga3Sq3iIO
74 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 01:34:17.40 ID:pHCbzaMkO
おつ
おやすみ
75 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 02:17:02.86 ID:/i8Va2t3O
ほ
76 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 02:30:24.12 ID:ga3Sq3iIO
っ
77 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 03:41:18.09 ID:/i8Va2t3O
し
78 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 08:04:44.57 ID:ga3Sq3iIO
ゅ
79 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 09:35:51.10 ID:XzwFaeBQO
ほし
80 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 09:50:36.78 ID:7ht6+nnsO
ほ
81 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 09:52:07.45 ID:egGA5RgTO
っ
82 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 10:14:15.94 ID:HqS1qkuHO
(´・ω・')保守
83 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 11:00:51.75 ID:UtaByJxiO
まさか残ってるとは……ありがとうございます
今日はちょっと出かけますんで、夜残ってたら幕間投下したいと思います。
84 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 11:01:13.47 ID:7qzE8h5V0
\ 、 m'''',ヾミ、、 /
\、_,r Y Y ' 、 /';,''
、 ,\ヽ, | | y /、 ,;;,,'',
\、\::::::::::/, /,, ;;,
ヽ\ o 、 ,o / { ;;;;;;;,, < 【パーティ】?
丿 [ \|:::|/ ] >"'''''
>、.> U <,.<
ノ ! ! -=- ノ! ト-、
..''"L \\.".//_ | ゙` ]
VIP復活に際してネ実のスレを立てたので今後ともよろしく・・・
http://ex17.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1163256325/
85 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 11:04:43.37 ID:UtaByJxiO
あら、酉着いてなかったか
86 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 11:07:03.91 ID:gaUvVpABO
遅くても好いです!
期待してます!
87 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 11:17:33.81 ID:ga3Sq3iIO
把握した
今日はwktkしてる作品が多杉だぜ11111111111111111111
88 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 12:26:53.56 ID:HapbMI6vO
夜まで保守?
89 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 13:27:31.23 ID:ga3Sq3iIO
やってみるさ
90 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 13:32:29.13 ID:HqS1qkuHO
ほ
91 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 14:20:36.71 ID:oiW3YGEp0
うーむ。通して読んだが、gdgdになって最初の頃のクオリティが減ってねーか?
92 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 15:03:08.12 ID:323eNcRv0
ふゃ!
93 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 15:32:10.23 ID:HqS1qkuHO
保守
94 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 15:52:41.62 ID:jJHuOX4fO
ほ
95 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 16:43:46.50 ID:uotWULnCO
わ
96 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 17:14:18.82 ID:Ybnm+9EJ0
た
97 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 17:40:48.11 ID:HqS1qkuHO
保守
98 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 19:26:59.49 ID:/i8Va2t3O
ほしゅ
99 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 19:45:22.51 ID:jJHuOX4fO
ほ
100 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 20:37:12.92 ID:ga3Sq3iIO
101 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 21:34:36.64 ID:pHCbzaMkO
ほ
102 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 21:49:21.67 ID:XzwFaeBQO
ぽしゅ
103 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:10:44.72 ID:UtaByJxiO
まさか残ってるとは……感動した!(某首相風に)感謝!
幕間を、10時半から11時の間に投下しますね。
それまでしばしお待ちを……
104 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 22:16:14.01 ID:pHCbzaMkO
ktkr!!!
105 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 22:21:04.66 ID:XzwFaeBQO
wktk
106 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:44:37.09 ID:62RqceFl0
というわけで、幕間投下します。
そんなに展開が動くわけじゃない(というか意味不明な文)ので、まったりと読んでやってください。
107 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:45:31.86 ID:62RqceFl0
幕間「Before The Crossroad」
僕には親の記憶がない。
気がついた時には孤児院の部屋の中でひとりぼっちのまま座っていて、自分の周りには同じ歳ぐらいの子供しかいなかった。
それを疑問に思ったことなどない。それが当然なんだとずっと思っていた。
1番昔の記憶と言えば、小学校4,5年の頃に孤児院のみんなでクリスマスパーティをやったことだ。
荒巻院長やお手伝いさんや、今は就職してどこか遠くにいったお兄さんお姉さんや、親類に引き取られていった友達。
色々な人がクリスマスケーキの周りに座って、一斉にロウソクの炎を吹き消したことは覚えている。
あと覚えていることと言えば、ケーキがものすごくおいしかったことと、プレゼントに荒巻所長から漫画の本をもらったこと。
お金がなかった孤児院では、一冊の漫画本さえ貴重だった。みんなで回し読みした。
108 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:46:40.15 ID:62RqceFl0
僕がそんな生活に疑問を持ったのは中学校1年ぐらいの頃だっただろうか?
クラスメイトの悪餓鬼――ようはいじめっ子に、孤児院に住んでいることをからかわれるようになったのをきっかけに、
どうして自分には親がいないんだろう?と思い始めた。
他のみんなは授業参観とか運動会とかで親が応援に来てくれるのに、自分にはそれがいない。新巻院長は子供の世話で忙しいし、他の子供達だって学校があるんだ。
応援席から自分を応援してくれる人がいない。自分を見てくれる人もいない。
どうしてだろう? そう思った。
荒巻院長にそれとなく聞いてみると、院長は困った顔をして「時期がきたら話す」と言った。
けど、実際に彼の口から聞く前に、なんとなく予想はついていた。
自分は捨てられたんだろう、と。
実際、高校生になった時に「お前は赤ん坊の頃、孤児院の前に捨てられた」と聞いた。
109 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:48:16.68 ID:62RqceFl0
いじめっ子A「なあなあ、お前親いないんだろ? じゃあ捨て子じゃね? 気色わりいよなあ。親がいないなんてさあ」
いじめっ子B「捨て子〜、捨て子〜。くせえんだよ」
いじめっ子C「あっちいけよ、ばーか」
いじめっ子達はそんな風にちょっかいを出してくるし、
色々本やらテレビやらを見れば、「子供を捨てる親」というのはよく話題になっている。
だから、所長から真実を聞く前から、自分もまた「捨て子」なんだと認識せざるをえなかった。
それは認めよう。きっと僕は捨て子なんだ。別に反論はしない。
けど、それがどうしていじめられる原因になるのか、僕にはよく分からなかった。
中学2、3年の頃になると、いじめはますますエスカレートし始めた。
上履きが隠される、机に落書きなんてのは序の口。
トイレに閉じ込められて水をぶっ掛けられたり、
カバンを窓から放り投げられたり、
意味もないのに殴られたり。
そして行き着く先は「集団シカト」だ。
110 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 22:48:41.96 ID:7TaqIQQsO
111 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 22:49:32.92 ID:uhRWsVpAO
支援
112 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:50:22.34 ID:62RqceFl0
それはまるで僕がその場にいなくなったかのような感覚だった。
誰からも話しかけられず、誰もこちらには応えてくれない。空気のような存在。それが僕。
その時、僕は教室にはいなかった。誰からも認識されないということは、イコールそこにいないということなのだから。
それに対して僕は怖くなったし、悲しみもした。
けどそれ以前に不思議だった。
どうして「捨て子」だからいじめられるんだ?
僕はちゃんと生きている。僕はちゃんとそこにいる。
捨て子だから存在を否定されるなんて、おかしいじゃないか。
僕は自然と不登校になった。
中学3年の前半はほとんど学校に行ってない。学校に行っても、僕は行ってないことになってるんだ。
だから行く必要なんてないじゃないか。
孤児院にいれば、僕は僕として存在できる。そう思って、長い間学校には行かなかった。
荒巻院長や他のヘルパーさんは心配してくれるし、他の子供達も不安そうな顔をしてくれる。
それだけで僕には十分だ。だって僕が存在してる証拠が得られるんだから。
113 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 22:50:26.41 ID:MCDfRxl70
wktk
114 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:52:43.54 ID:62RqceFl0
今思えば、こんなのはただの詭弁に過ぎないと分かっている。
僕はただ辛いことから逃げたかっただけなんだろう。
けど、その時の僕にはそれが真実だった。
いじめっ子だって、ただ単に「捨て子」という物珍しさから、からかい半分でいじめていたに過ぎないのだろう。
まあ、だからいじめをやっていいというわけじゃないが。
何にしろ、いじめが始まった理由なんて些細なものであり、ただの偶然だった。
僕が「捨て子」であることがいじめっ子達にとって珍しかったから。ただそれだけ。
だから、いじめが終わる理由もまた些細なものであり、ただの偶然だった。
それは僕が荒巻院長や担任の先生の説得に応じて、2ヶ月ぶりの学校に登校した時のことだ。
登校中、偶然いじめっ子達に会ってしまった。
115 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:54:47.62 ID:62RqceFl0
いじめっ子A「お、お前かよ。なんだ、学校に行くのか?」
いじめっ子B「来るんじゃねえって行ったじゃねえかよ。くさいんだからよお」
いじめっ子C「ま、お前なんていてもいなくても変わんないけどな。ギャハハハ!」
彼らは相も変わらず、何が楽しいのか、からかいの言葉を口にしてくる。
いてもいなくても変わらないなら、別に学校に行ってもいいだろうに、という突っ込みは言わないことにした。
いじめっ子A「ほらよ。カバン貸せよ。今から燃やしてやるからよ」
いじめっ子B「それやばくね? こいつの親にバレたら損害賠償請求されるぜ? って、親いねえのかwww」
いじめっ子C「俺ライター持ってるから、点けてやるよwww」
やめてくれ、と叫ぶ前にカバンは燃やされてしまった。
まるで焚き火のようにゴーッと燃えたかと思うと、すぐに消える炎。僕の存在意義も一緒に消える。
116 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:56:54.44 ID:62RqceFl0
その時、僕は悲しみやら苦しみよりも、ただ呆れだけが先立っていた。
いじめっ子達が異世界にいる人達のように感じ、ただ呆然と立ち尽くして去っていく彼らを見送った。
カバンの燃えカスだけが残る道の上で、僕は1人、周りの世界を見渡してみた。
時々通りすがる通行人は、そそくさと僕を避けて通り過ぎていく。まるで僕なんか存在しないかのように。
そして僕もまた、周りの人間を、僕と同類の存在として見ることができなくなっていた。
僕は、自分が異次元の世界からやってきた未来人のような異質な存在に思えた。
ここはどこで、僕は誰?
僕は人間? それとも、あっちが人間?
『僕は「○○」である』の中の○○に当てはまる言葉が見つからない。
「僕は僕」? そんなのただのトートロジーだ。意味ない。
僕は、なんだ?
僕は僕のことが知りたい。
道端の上で、CPU使用率120%を超えたパソコンのように立ち止まっていた僕。
ここは……僕にとってどんな世界なんだろう?
117 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 22:57:42.48 ID:uhRWsVpAO
支援
118 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 22:59:13.89 ID:62RqceFl0
「ちょっと、そこのあんた」
突然、後ろから声をかけられて、僕はびくりと身体を震わせた。
壁の穴から声が出てきたように感じて、僕は驚きで何も応えることができず、ただゆっくりと後ろに振り返った。
ξ゚听)ξ「ねえ、聞こえてるの? あんた、こんな道端の上で何してるのよ」
巻き毛のセーラー服の少女。背が低いけど、目元がきつくて口調が荒い。
知っている顔だった。
確か、小学校で同じクラスだった……ツンさんだったっけ?
ξ゚听)ξ「あんた、小学校のとき一緒だったはずよね? 何してんのよ、こんな所で。
あれ? この黒い炭みたいなの、何?」
ああ、これは……元々はカバンだったけど、燃えて炭になったもの、かな。
ξ゚听)ξ「はあ? どうしてカバンが燃えて炭になるのよ。燃やしたの?」
ん〜、逆かな。
119 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 23:01:31.40 ID:62RqceFl0
ξ゚听)ξ「燃やされたってこと? 誰に?」
クラスメイト。
ξ゚听)ξ「何それ。まさか……」
ああ、気にしなくていいよ。君には関係のないことだから。
ξ゚听)ξ「え、けどねえ」
いいっていいって。君はちゃんと学校に行って。確か隣の学区の中学校だったっけ?
ξ゚听)ξ「そうだけど……ちょっと来なさい、話があるわ」
え? どうして? 気にしなくっていいってば。
ξ゚听)ξ「気にするわよ! いいから来なさい!」
ええ!?
支援
121 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 23:04:02.11 ID:62RqceFl0
僕はセーラー服姿のツンさんに拉致された。
行き着いた先はただの公園で、そこでいじめの話を色々聞かれて僕がそれに答えただけで、別にピンク色の世界が待っていたわけじゃない。
( ^ω^)「というわけだお……」
ξ゚听)ξ「ふーん……どうしてやり返さないのよ。悔しくないの?」
( ^ω^)「そりゃあ嫌だけど……どうでもいいお。どうせ僕はみんなとは違うんんだお。いてもいなくてもいい存在なんだお。というかいないんだお。今だって……」
ξ゚听)ξ「何言ってんのよ!」
ツンの目が険しくなる。
怒られる、と思ってブーンは身構えたが、反対に彼女の顔は急に悲しそうになった。
そして、少し笑みを浮かべて、
ξ゚听)ξ「私が見てるじゃない、あんたのこと。だったら、あんたはここにいるってことになるでしょ?」
という言葉をつむぐ。
それはなんだか久しぶりの感覚だった。
ツンと話していると、僕は実感できた。
僕はそこにいる、と。
122 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 23:06:04.93 ID:62RqceFl0
※
ツンと再会してから、僕の生活は一変した。
ツンと同じ中学校で、小学校の時に知り合いだったショボンやドクオと再会したり、
彼らがいじめっ子を退治してくれたり、
土日にはいつもツン達と遊びに行ったり、
いじめの主犯格じゃなかったクラスメイト達とも友達になれたり、
高校は一緒の所に行こうという話になって、ずっと不登校だった僕はめちゃくちゃ勉強しなくちゃならない羽目になったり、
けど、それが苦しくなくて、むしろ楽しかったり、
高校でも時々いじめは受けたけど、彼らが助けてくれたり、
色々あった。
色々ありすぎて、全部はちゃんと思い出せないくらいに。
123 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 23:07:56.04 ID:62RqceFl0
ただ、いつも実感していたことがある。
僕はそこにいる。
僕は生きている。
僕はみんなと同じ存在であり、少し違う所はあるけれども、本質的には同じ。
僕はちゃんと「居る」
それらはいつも僕の胸の中にあった。
124 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 23:09:21.88 ID:62RqceFl0
けど、相変わらず分からないことだってある。
僕は何なのか?
僕はいったい誰なのか?
僕は何をするべきなのか?
他人と僕はどうやって付き合えばいいのか?
そんなことばかり考えていた。
僕は僕のことが知りたいといつも考えていた。
こんなのは哲学者が考えることで、僕程度では答えなんて出ないのも分かっている。
というより無駄なことなのかもしれない。
それでも僕は考える。
答えが出ることを夢見て。
幕間 終わり
125 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 23:10:55.69 ID:XzwFaeBQO
乙。続きwktkしながら待ってるお
126 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 23:11:45.19 ID:62RqceFl0
というわけで、幕間終わり。
これ、第15話と一緒に読んだら色々とリンクしてるところがあるはずだったんですけどね。
第15話はまだできてない(´・ω・`)というか、スレが残るとは思わなかった(´・ω・`)
このスレで1度誰かが言ってたけど、gdgdになってるのかねえ、これは。
127 :
sage:2006/11/12(日) 23:14:02.08 ID:qSeo6PhR0
面白い
がんばってください
128 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 23:16:47.82 ID:uhRWsVpAO
乙
129 :
ex17落とさないでね:2006/11/12(日) 23:17:48.10 ID:pHCbzaMkO
乙
130 :
◆ILuHYVG0rg :2006/11/12(日) 23:25:31.48 ID:62RqceFl0
というわけで、今日はこれにて終わり。
このスレは落としてもらって結構ですので〜。では〜
131 :
ex17落とさないでね:2006/11/13(月) 00:36:08.80 ID:5jee+q9t0
>>126 ンナコター ナイノレス
∋ノハヽ∋oノハo∈
川o・-・) ( ´D`)
(U )⊃(U ⊃
∪∪彡 ∪∪彡
132 :
ex17落とさないでね:2006/11/13(月) 00:43:43.98 ID:DTXd/XP5O
ほ
133 :
ex17落とさないでね:2006/11/13(月) 02:23:26.25 ID:wTHQgAGNO
し
134 :
VIP足軽b:2006/11/13(月) 07:15:53.14 ID:VmbnUF3rO
ゅ
135 :
VIP足軽ktkr:2006/11/13(月) 09:59:35.96 ID:aACgCdcF0
>>126 gdgdゆーた張本人っす
今回の過去話は意味のあるストーリーだったと思うよ
136 :
VIP神父:2006/11/13(月) 10:32:42.13 ID:Bb1ftL3TO
ほ
137 :
VIP村人j:
ほ