ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」
長編投下の際の注意
・超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ!でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ?
・前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ・・・あの、お茶どうですかぁ?
・基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョン君の恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ
・当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ・・・けど、今はほとんど皆無。別に気にしないで。
・キョン君、過度な性的描写はやめようね〜、タンスにエロビデ隠してるの知ってるんだからね〜
・ageるのもいいけど元気すぎるのと一文字作文は控えたほうがいいと思うのね
・要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな。
・自分で投下した長編はなるべく自分で編集すること、わかった!?
それじゃ、さっさと投下しなさいっ!いい?あたしを退屈させたら死刑だからねっ!
DAT保管庫
http://haruhiss.xxxxxxxx.jp/ 新まとめサイト
http://www11.atwiki.jp/xgvuw6/
/ノ´: /: : : : : : : : : : : : : :i: : : ::i: ::ヽ: : : : : :\ \
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|: : : :{: : |: : : :,斗ァ''フ" /" // \ヽ|: : i : : ::| . ’ ’、 ′ ’ . ・
|:i: : :i: : :l r彡"´ " / }: :ノ : : ::| 、′・. ’ ; ’、 ’、′‘
l: i: : { : : l | __,.. / ''ェ;___,ェ; /: : : : /∧ ’、′・ ’、.・”; ”
. ',ヽ: : : : ヽl ,r==="  ̄ ̄ ./: : : :ノ/ l . ’、′ ’、 (;;ノ;; (′‘ ・.′”
\\: : : \ ! /, r '´ }: : :ヽl ’、′・ ( (´;^`⌒)∴⌒`.・ ” ;
|: : : { `ー > /{ * }: : ヽl . 、 ’、 ’・ 、´⌒,;y'⌒((´;;;;;ノ、"'人
|:/: : { __ i/ ヽ ./: { }:_:: : : : l 、(⌒ ;;;:;´'从 ;' ;:;;) ;⌒ ;; :) )、 ヽ
. //: : : :{ "iヽ { :ヽ、 ⌒ /:__ : { / ノ: : : : :.'., _( ´;`ヾ,;⌒)´ 从⌒ ;) `⌒ )⌒:`.・ ヽ ,
l/: : : : : :} r−┘、: ::r`vr‐ - ´|: : : | _」_{./ ./: : : : : : : '., :::::. :::
>>2 ::::)."::⌒) ;;:::)::ノ ヽ/
/: : : : : : : { `ヽ、 ヽ.L._ヽ. レ'V__ ヽ/: : : : : : : : : :'., ノ ...;:;_) ...::ノ ソ ...::ノ
/: : : : : : : : r ト *|ヽ/ ノ ヽ.'、 / { (___ 〕r、_: : : : : : : '.,
: : : : : : : : :∧.l.} }〔 ´ / ヽG=ニ:|( ./r'/rく: : : : : : : : :',
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:27:59.39 ID:3SPSsCGd0
きんも〜っ☆
以下 大量に乙
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:28:39.84 ID:t93i1aoIO
>>1
乙!
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:29:15.01 ID:Jrfhcj5Z0
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:29:41.62 ID:cnWkHWrxO
9 :
【時のパズル】:2006/09/22(金) 22:31:47.97 ID:4cvUFiv40
>>1乙。
わざわざ新スレまで待っていてもらってすいませんでした。
今回は1レス目から目から飛ばしていきます。(今まで)かかったな小物め!
残り第8章と終章と???の三つ。飛ばしていきます。
今回は、今までの伏線回収のそうざらい一回目です。
前回までのお話
http://www11.atwiki.jp/xgvuw6/pages/1086.html 前スレ
>>475から、Interludeも入れるなら
>>499です。
前回第7章なのに、タイトルに第6章って書いてました。ハズカシス
今回はあえて、何レスかは書きません。でも、普通に投下すると間違いなく、バーボン、バイサル喰らうので支援wktkしてくれると助かります。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:32:21.32 ID:ni1/3NUw0
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:33:15.91 ID:rwWBXNew0
>>9 超wktk!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
まとめwikiで今までの全部見せて貰ったが面白かったお、マジwktk
12 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:34:02.26 ID:4cvUFiv40
【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】
第8章 『一人きりの日曜、戻ってきた土曜』
「い……い、いいやあああぁあぁぁあぁああああ!!!!!!!!!」
広場にあたしの悲鳴が、響き渡る。キョンが倒れている。ぴくりともしていない、腹部に銃弾を喰らったせいだ。
古泉君は、撃たれたキョンを見て、呆然としている。そして、キョンに発砲した『犯人』が、こちらを向いた。
「……なんだ、ハルにゃんもいたのかい?これは手間が省けたね」
……その犯人『鶴屋さん』は、こっちを見て笑っていた。状況が把握出来ず、あたしは、固まっていた。一体何がどうなってるのよ?
「今まで、事故に見せかけたりさ。古泉君のせいにしようとしたり、面倒な事してたけどさ……。上手くいかなくて困ってたんだ……」
鶴屋さんが、ぶつぶつ呟きながら広場の中心へと、向かって来る。片手に拳銃を握りながら。
「……それにしてもさ」
そして、この凄惨な場面に似つかわしくない、いつも通りの笑顔で鶴屋さんは『言った』。
「ほんと、あの時ハルにゃんが死んでれば、『キョン君も死なずに』済んだのにね」
その言葉をあたしの脳が理解した瞬間、固まったままだったあたしの体が、意思とは関係なく動き出した。
「……ッッこぉんのぉぉぉおおおおーーーー!!!」
あたしは、鶴屋さんに突進する。許さない……この人だけは……鶴屋さんだけは……許さない!今のあたしは、それだけを考えていた。
あたしの突然の行動に驚いた鶴屋さんが、手にしていた銃口をあたしに向ける。しかし、そんな事も今のあたしには関係ない。あたしは更に距離を詰めた。
そして、残り数メートル……。
「―――いけませんっ、涼宮さん!!」
そう誰かの声が聞こえたと同時に、あたしは、なにかに突き飛ばされた。そして……
『ズドォンッ!』
次の瞬間、再び『凶弾』が放たれた。
あたしが、地面に倒れこむ寸前に見た光景は、あたしに体当たりしていた古泉君の姿だった……。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:34:31.03 ID:cnWkHWrxO
wktk
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:34:49.77 ID:jNXZmLAz0
wktk
15 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:35:26.97 ID:4cvUFiv40
頭が割れるように痛む。あたしは地面に倒れていた。どうやら、古泉君に突き飛ばされた後、頭をぶつけたようだ。
真っ暗だ。さっきまで、まだぼんやりと太陽が残っていたのに……。意識を失っていたのだろうか?
あたしは、起き上がろうとしたが、体が動かない。
……なに?
そして、ようやく気が付いた。『なにか』いる……。あたしの上にのしかかり、あたしの動きを封じている『なにか』が。
パンッ
顔を叩かれた。それで、ようやく、あたしははっきりとその『なにか』を確認する事ができた。
「どうしたのかな?逃げれるもんなら逃げてみなよ」
今、あたしの上に覆いかぶさり、ナイフを振り上げている人物。……この声は……『あいつ』だ。
それに気付いた瞬間、あたしの頭には、さき程の怒りが再びぶり返した。
人の良い振りをし、あたしたちに近づいてきた……ゆっくりと麻薬のように……。
信じていたのに……!あたしを殺そうとした。古泉君を利用した。そして……そして……キョンを撃った―――――!!
『絶対に許さないっ!!』
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:35:46.24 ID:ymFlWfyfO
わくてか
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:35:48.86 ID:cnWkHWrxO
支援
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:36:30.44 ID:0oDBvgPf0
紫煙
19 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:36:37.01 ID:4cvUFiv40
「鶴屋さんっ!あんた、よっくもぉお!!」
あたしの突然の罵声に、あたしの上にいた覆いかぶさっていた物『鶴屋さんは』驚いて、顔を上げた。
その顔には、顔を隠すためだろう。銀行強盗がつけているようなマスクが付いていた。
腕の拘束が緩んだ。動かせる。
『腕が使える』
あたしは不意に思い出し、鶴屋さんのがら空きの脇の下に、掌底を叩き込んだ。ここは、急所の一つだ。
「っがふっ!」
覆いかぶさっていた体が、離れる。
『膝が使える』
そして、立ち上がる勢いのまま、目の前にある顔に向けて、膝蹴りを喰らわした。
「ぐぎゃっ!」
浅い。でも、十分過ぎる威力があったようだ。さっきとは、逆に今度は鶴屋さんが仰向けに倒れた。あたしは、自由になった。
あたしは完全に立ち上がり、素早く周りを確認した。キョンを探したのだ。
鶴屋さんが発砲した『凶弾』に当たり、倒れていた筈のキョンを。しかし、その姿が見当たらない。
代わりにあったのは、すぐ横に落ちていた本屋の買い物袋だけだった。あたしが買った物だ。
と、いうことは今は……。
「……ぅう……」
呻き声が聞こえた。鶴屋さんが、上体を起き上がらせようとしている。
しかし、それよりも先にあたしは袋を手に取り、一目散に公園を後にした。
今は、『日曜日』。あたしは、また跳んだんだ。キョンは無事だ。『今』は、まだ……!
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:36:50.89 ID:cnWkHWrxO
支援
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:37:17.75 ID:0oDBvgPf0
まっぺん、試演
22 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:37:38.43 ID:4cvUFiv40
「お帰りハルヒ、どうしたの?そんなに息を切らせて?」
家に到着すると、母さんが居間から顔を出し聞いてきた。
「はぁ…はぁ……ちょっと……はぁ……走って帰ってきたから……」
そう返事をし、あたしはすぐに二階の自分の部屋に入った。そして、部屋に入るなり、あたしはベッドに倒れこんだ。
息も絶え絶えにして、枕を掴み、シーツに噛み付きながら、あたしは震えていた。
あたしは、『鶴屋さん』に習った護身術で『鶴屋さん』から身を護る事ができた。……皮肉なものだ。
でも、そんな事はどうでもいい。そんな事より、今はキョンの事を考えないといけない。
キョンは、土曜日あの公園で撃たれる。鶴屋さんによってだ。腹部に命中したようだけど、死ぬかもしれないのだ。
あたしは、どうしたらいい?キョンを助けるためには、どうすればいいの?
今のうちにキョンに伝えようか?いや、それは無駄だ。時間を再構成させる云々じゃない。
『今』のキョンが、信じてくれる筈がないからだ。水曜日のキョンでも、あたしを信じてくれなかったんだ。
日曜日になんて、信じてくれるわけない。少なくても、木曜日以降の事情を理解したキョンでないといけない。そのキョンじゃないと……あたしの味方にはなってくれない。
あたしの味方……。そうだ、キョンはあたしの味方になったから撃たれたんだ。
キョンが撃たれてしまったのは、あたしの責任だ。あたしが、キョンに頼ったりしたから、あんな事に……。
なら、なんとしてもキョンを助けなければいけない。これまで、何度となくキョンはあたしを助けてくれたんだ。なら、今度はあたしがキョンを助ける番だ。
そう、だからだ。キョンを助けるためだからこそ、あたしは日曜日に戻ってこれたんだ。
命の危険が待ち受ける日曜日に。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:37:46.03 ID:6yPZBsFHO
リアルタイムきたー
支援!
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:38:44.57 ID:ymFlWfyfO
わくてか
支援
26 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:39:23.65 ID:4cvUFiv40
でも、その方法はどうすればいい?時間を置いて、相手に情報を伝える。少なくても木曜日以降になるまで……。
「……! 手紙よ!」
そうだ、あの犯人探しをするために使った手紙。あれと同じ事をやればいいんだ。
「でも……誰に出したらいいの?」
手紙を出す人物。必要な時期が来るまで、手紙を黙って保管してくれる人物だ。
三通の手紙を預かってもらっていた人物である鶴屋さんは、問題外だ。
キョンはさっき言ったように、木曜日になるまでに手紙を手にしても意味がない。キョンから相談されて、協力してくれた有希も同様だ。
古泉君……駄目だ。古泉君は、鶴屋さんに利用されていたようだ。なんらかの監視や制約を受けていたと見たほうがいい。
それなら、他に誰がいる……?あたしが信頼できて、尚且つ約束の時間まで、手紙を黙って保管してくれる人物は?
そして、あたしは一人の少女を思い浮かべた。
「……みくるちゃん」
そうだ。あの子がいた。一つ年上のあたしたちSOS団の仲間。みくるちゃんなら、きっと助けてくれる。
……でも。あたしは、鶴屋さんを思い出した。信頼してたのに、裏切られた。もしかしたら、みくるちゃんも裏切るかもしれない。
……いえ、みくるちゃんはそんな事しないわ。あの子はそんな器用な事が出来る子じゃない、なにより……。
「団長が、団員を信じないでどうすんのよ……!」
「……四通目」
これを出してしまったら、もしかしたら過去が再構成されてしまうかもしれない。
この『四通目』は、キョンに『真犯人』と『キョンが撃たれた事』を告げるためのものだ。
これを書けば、時間が再構成されるのは間違いなかった。
あたしたちが、この一週間必死になって避けていた時間の再構成。それを、あたしはやろうとしている。
この手紙を出せば、時間は再構成される。土曜日だけではない。『土曜日にキョンが撃たれた』からこそ、あたしは日曜日にいるんだ。
土曜日に撃たれたキョンがいなくなれば、ここにいる『日曜日のあたし』も変わってしまうだろう。
そうすれば、キョンは土曜日に犯人と対峙するという、危険な事も止める筈だ。でもそうすると、あたしのタイムリープは解除されなくなるかもしれない。
でも、構わない。キョンが撃たれる未来、そんな未来がなくなるのならば、構わない。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:39:26.71 ID:cnWkHWrxO
支援
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:39:30.72 ID:BgFzffHF0
スレの最初からこれかww
支援いたす
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:40:00.19 ID:0oDBvgPf0
前スレ1000行きました。
無念。
>>1000なら嫁にハルヒのコスプレさせる
今晩は見送ります。。。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:40:14.36 ID:ni1/3NUw0
支援
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:40:35.96 ID:IFK0md5R0
支援
32 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:40:41.65 ID:4cvUFiv40
あたしは、起き上がって机の引き出しからレターセットを取り出した。
手紙を書くためだ。でも、そこで、ふと思いついた。そもそも四通目の手紙を出さなくても、三通の手紙を用意しなければ未来は変わるのではないか?
……いや、駄目だ。キョンたちはただ手紙を受け取るだけではいけない。事情を木曜日までは知らないといけないんだ。
この手紙は、そこに組み込まれたものである。木曜日以降ののキョンをたちは事情を知らなければいけないんだ。
ならば、あの三通の手紙も用意しないといけない。恐らく、これを手にした鶴屋さんは、内容を改竄したんだろう。古泉君が疑われたのも、きっとそのせいだ。
だが、やるしかない。あたしは、忌々しく思いながらも階下へ降り、タウンページで鶴屋さん宅の住所をメモし、それをレターセットと切手と共に鞄にしまった。
ついでに、忘れないうちに月曜日の時間割も鞄に詰め込んでおいた。
そして、四通目の手紙を書くため、あたしは、まず、宛名にみくるちゃんの名前と住所を書き込んだ。
それと、差出人の所には【木曜日を過ぎたら、何も聞かずに、すぐ俺に渡してください『キョン』】と、他の三通とは違う文を書き記した。
便箋を取り出し、あたしは文面の作成に取り掛かった。どう書くべきだろうか……。
あたしは少し考えて、日曜日の事を書いた。鶴屋さんがあたしを襲った事、それがタイムリープの原因になったこと。
月曜日に頭が痛かったのも、そのせいだという事。そして、あたしが無事逃げ延びた事。
そして、あたしは土曜日の事を書き込み始めた。
キョンが古泉君を犯人と勘違いして、公園に呼びだした事。古泉君は無実であった事。二人の推理は鶴屋さんによって操作されたものだった事。
そして……キョンが腹部を撃たれた事。
『鶴屋さんは、とても残忍で、容赦のない人よ。お願いだから古泉君を呼び出すのは止めて、必ず彼女も来る事になるわ。
あたしの事は心配しなくても大丈夫。二人のお陰で、この一週間で色々学べたし、時間が再構成されたとしても、一人でなんとかしてみせるわ。
だから、逃げて。キョンは死んじゃいけないの、お願い。もう一度言うわ、お願い死なないで。』
あたしはペンを置いた。『手紙』を折りたたみ、封筒に入れて、切手を貼り付けた。
そして、すぐに家に近くのポストに投函しに行った。今はもう真夜中だ。回収に来るのは月曜日になる。
その後、みくるちゃんの家に届き、木曜日か金曜日には、キョンの元に届く事になるだろう。
あたしは、存在しない『四通目』を書いた。手紙も出した。時間は再構成される筈だ。でも、それは、どのように変化を起こすのだろう?
ひょっとして、もう再構成は始まっているのか?だとしたら、『明日』はいつになるのだろうか?
二人がいれば、疑問に答えてくれたかもしれないけど、ここにはいない。あたし一人しかいないんだ。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:41:07.90 ID:Jrfhcj5Z0
支援
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:42:35.19 ID:IFK0md5R0
wktk
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:42:39.15 ID:cnWkHWrxO
支援
37 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:42:44.21 ID:4cvUFiv40
その後、夕ご飯と入浴をすませた。お風呂に入ったお陰で、後頭部のたんこぶは熱を持ち、痛みをましたように思える。
『訓練』を受けた後のあたしなら受身も取る事ができただろうが、押し倒された『時点』のあたしは受身の『う』の字も知らなかったのだから、仕方がない。
でも、その衝撃がなければ、タイムリープ現象は、発現しなかったかもしれない。
だとしたら、それはきっと幸運な事だったんだろう。タイムリープがなければ、あたしはきっと鶴屋さんの凶刃の餌食になっていたんだから。
最初は、疎ましいと思っていたこの現象だけど、タイムリープは、あたしを助けてくれたんだ。
しかし、この頭の痛みはどうにかならないのかしらね?これでは、眠りたくても、眠れないではないか。
あたしは、タイムリープをするためにベッドの中に潜り込んでいたが、あまりもの頭痛で眠るどころではなかった。
実際、眠らなくても、このまま月曜日を終わらせれば、勝手にリープするんだろうけど、いつまでもこの痛みに付き合うのも嫌だった。
仕方がない。そう思いあたしは、階下に降りた。
「ねえ、親父。お酒一杯もらえない?」
あたしは、居間で晩酌していた親父に酒をねだった。睡眠剤代わりにする為だ。
しかし、親父もその横にいた母さんも激しく難色を示した。
「ハ、ハルヒ!?なにを言ってるんだ?」
「そ、そうよ!?お、お酒なんてハルヒにはまだ早いわよ!?」
? 二人の様子はなんだかおかしかった。どうしたのかしらね?
「大丈夫よ。ちょっと寝付けないから、薬代わりにしたかっただけだから」
「で、でもねハルヒ……」
尚も、二人は難色を示していたので、あたしは我慢できなくなり、テーブルに置いてある。親父の飲みかけのグラスを掠め取った。
「「ああ!?」」
そして、あたしはそれを一気に飲み干した。一気飲みしたからだろうか、急激に血行が良くなってきて、逆に痛みがました。
「もう、こんなもんじゃ足りないわね」
そう言って、あたしは固まっている二人を余所に浴びるように、酒を飲んだ。
そうして、ボトルを一本開けたぐらいで、ようやくあたしはトロンとしてきた。
「ハ、ハルヒ?もういいんじゃないか?」
「そうよ、明日も学校でしょ?もう寝ましょ?ね?いい子だから」
二人は明らかになにか焦っているようだったが、あたしも早く寝たかったから、それに黙って頷いた。
二人がなんとなく、ほっとしてるような顔をしていたのは勘違いだろう。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:42:58.86 ID:ymFlWfyfO
支援
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:43:17.03 ID:0oDBvgPf0
Work Taker, Schoen!!
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:44:03.87 ID:BgFzffHF0
もうwktk
wktk
42 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:44:20.53 ID:4cvUFiv40
そうして、ベッドに潜り込んだあたしは、意識が離れる前に考えた。
あたしの『明日』は、『いつ』になるのかしらね?時間が再構成されるとは、一体どのような事が起きるのだろうか?
再び、あたしはこれまで過ごした一週間を繰り返す事になるのかしら?それとも、『再構成された後の土曜日』に、直接リープするのか?
あたしにはわからないし、また、そんな事どうでもいい。ただ、キョンが撃たれるという未来さえ変わってくれれば……。
お願いキョン……無事でいてね――――
ただそれだけを願って、あたしは目を閉じた。
目を開く。夕暮れに染まる空。ここは公園だ。と、いう事はあたしは『土曜日』の夕方に戻ってきたのか。再び、リープしたんだ。
それに気付いて、あたしは遅まきながら周囲を確認した。
そこには……。
すべて、同じだった。目の前に広がる光景は、なにもかも、『跳ぶ前』と変っていなかった。
少し離れたところに、『跳ぶ前』とまったく同じ体勢でキョンが倒れていた。
「……だ、大丈夫ですか?涼宮さん?」
真横には、息を荒くさせた古泉君がいた。見れば、その肩は真っ赤に染まっていた。
そして……。
「まったく君はどれだけの人を巻き込めば気が済むんだい?」
そして……銃を手にしたままの鶴屋さんも『跳ぶ前』と同じように立っていた。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:44:41.11 ID:cnWkHWrxO
支援
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:44:50.11 ID:ymFlWfyfO
支援支援支援支援支援支援支援
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:45:36.84 ID:YLAP7W8C0
復活の支援コイズム
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:45:37.25 ID:BgFzffHF0
wktkwktk
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:45:49.68 ID:cnWkHWrxO
支援
48 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:46:08.80 ID:4cvUFiv40
「……な、なんで……?」
あたしは、掠れた声で呟いた。
あたしは日曜日確かに、『四通目』の手紙を確かに出した。なのに、なんで?
手紙は届かなかったの?それとも、やはり『自然の復元力』のようなものが存在し、時間の再構成を妨げ、修正したのか。
キョンは、絶対に撃たれる羽目だったの?
「……嘘でしょ」
「嘘じゃないっさ、現実だよ」
鶴屋さんが、あたしの呟きに答える。見れば、少し距離が離れている。飛びつかれないように、距離をとったのだろう。
「ハルにゃんには手こずらせられたけどね、もう助けてくれる人はいないよ。キョン君はあの通りだし。古泉君も、もう動けないだろ?」
確かに、そうだ。もうあたしには、この状況を打破する手立てなんて残されていない。
「鶴屋さん……なんでこんな事を」
「…………」
しばらく、静寂が続いた。そして、ようやく鶴屋さんが話し始める。
「…………十四人」
「え?」
「十四人、なんの数だかわかるかい?」
「…………?」
「わからないだろうね。まあ、当然だよね。これは、君のせいで命を落とした部下の人数だよ」
「……な」
な、なにを言ってるのよ?
「鶴屋さん、それはっ!」
古泉君が、鶴屋さんを制止する。でも、なんの話をしてるのよ?あたしが殺した?
「うるさいよっ、古泉君!その女は知る必要があるんだよ!自分が生きてるだけで、災厄を撒き散らし続ける害悪だって事をね!」
「…………」
古泉君が黙る。その銃口を己へと向けられたからだ。
古泉ーぃっ!!シエン
wktk
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:47:03.34 ID:cnWkHWrxO
支援
支援
53 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:47:36.35 ID:4cvUFiv40
「いい?涼宮ハルヒ。さっき話したのは、事実だよ。君は知らないんだろうけどね。君は、その力を使って、十四人もの人間を殺したんだ。
あたしだって最初は我慢したさ……これは仕方がないことなんだって。ハルにゃんもわざとやってるわけじゃないって納得……ううん、ごまかし続けていた」
鶴屋さんが、延々と喋り続ける。そして、不意にその声の質が下がった。
「でも……でも、お前は……あたしの親友まで殺した……!幼い時から一緒だった……。高校に上り、別々の学校に別れても友達だった……あたしの親友を……。
機関が出来て、あたしは上司として、あの子は、部下として助け合っていた。でも……でも……そんな彼女も、お前のせいで死んだんだよ……!」
鶴屋さんが、怨念を込めたような声をそのまま叩きつけてくる。
「だから、あたしは決意した。こんな不幸のレールなんて壊してやるって。……だから、ハルにゃんを殺す事にしたんだよ」
そして、話は確信へと近づいていった。
「最初はさ、日曜日だったね。あの日、ここで君を殺そうとした。でも、逃げられちゃった。あたしは焦った。計画が失敗した。ばれたってね。
でも、月曜日・火曜日と君を観察し続けていたけど、特に変った様子はなかった。あたしは、思った勘違いだったのかなってね。
誰もあたしの事を口にしない、ならもう一度、そう思って水曜日『美術室』から植木鉢を落とした。避けられちゃったけどね」
「……でも、あの手紙には」
「そう、なにをハルにゃんがしたのかはわからないけど、あの手紙には水曜日の事が書いてあった。標的の仲間から手紙が来たんだよ?明けるに決まってるじゃないか」
「……じゃあ」
「そう、内容は変えさせてもらったよ。そんな事一日もあれば、楽勝だったよ。筆跡をまねて捏造するなんてね」
「じゃあ……じゃあ、古泉君が屋上に居たていうのも嘘なのね?」
「それは違うよ。あたしが変えたのは『美術部』の一枚だけさ。彼はその時間、ほんとに屋上にいたんだよ。機関への定期連絡をするためにね」
「機関?」
まただ、さっきも同じ言葉が出てきた。
「もちろん、あたしはそんな事は知らなかった。でも、あの手紙を見て、気付いた。そこで、あたしは考えたのさ。……古泉君を影武者に仕立ててやろうってね。
運のいいことに、古泉君は日曜日に閉鎖空間で傷を負って、学校を休んでいたし、代役には持って来いだったよ」
更に語り続ける。
「そして、手紙を改竄する事を思いついた。運よくそれが出来る立場に、あたしはいたからね。そして、金曜日バイクで撥ねてやろうと思ったけど、これも失敗だったよ。
高校生に見せかけないといけないと思ったから、車は止めてたんだけどね。今、思えば車にしておけばよかったと思うよ」
「僕はそんな事、まったく気が付きませんでしたけどね……」
古泉君が口を挟む。鶴屋さんは古泉君の方をちらりと見る。
「それは、そうだよ。そうなるように、あたしが仕向けたんだからね。あたしは、上層部の一人だよ?下っ端の部下の一人や二人に、偽の情報を持たせて、行動させるなんて朝飯前だよ。
涼宮ハルヒの命を狙っているものがいる。だから、対象にばれないように、影から監視し続けろってね」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:47:41.36 ID:0nKYqemA0
支援
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:47:58.48 ID:YLAP7W8C0
俺のターン、ドロー!
俺はキョンを生贄に古泉を召還!
アッー!
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:48:31.31 ID:ymFlWfyfO
支援支援支援だよ
「……お陰で、僕にはアリバイもなくなり、まんまと容疑者へと仕立て上げられたという事ですか……」
「そ?よく考えてるでしょ?でも、いつハルにゃんたちの前に、古泉君が飛び出すんじゃないかって、正直気が気じゃなかったよ。古泉君は、少々SOS団に肩入れしすぎてたからね」
「…………」
「そして、金曜の夜。駅前に呼び出された。……これは、あたしにとっても一つの賭けだった。もしかしたら罠かもしれないって、思ってたからね」
そして、不意におかしそうに笑い出した。
「でもさ、あっはははははっ!まったく気付いてないんだもん!正直笑っちゃったよ?こんな事なら、みくるを利用しなくてもよかったってね!」
その言葉に、あたしは驚いた。もしかして、みくるちゃんは共犯者だったの?手紙がキョンに届かなかったかもしれないのは、そのせいだったの?
「みくるちゃんも?みくるちゃんも共犯者だったの?」
「ん?……ふふふっ、みくるは違うよ。みくるはなにも知らない、利用しただけさ。ただ、みくるには、あたしのアリバイを証明するのに近くにいてもらいたかったからさ」
「アリバイ?」
「そうさ。いくら古泉君を身代わりに仕立て上げようと、あたしに辿り着かないとは言い切れないだろ?だから、みくるには計画を思いついた水曜日から、あたしの家に泊まらせておいたのさ。
お泊り会と称してね。同じ仲間から、その時間にあたしが家にいたという証言があれば、あたしが犯人だなんて、夢にも思わないでしょ?ま、あたしも家から出るために、そっくりさんを探したりで大変だったけどさ」
そうか……そう言えば金曜日の夜、鶴屋さんがそんな事を言っていた。あの場にみくるちゃんを連れてきたのは、そのためだったんだ。
「正直、みくるを騙すって事だけは、ちょっとだけ気が引けたけどね」
「じゃあ、なんで護身術をあたしに教える事に、了承なんてしたのよ?」
そうだ、確かにおかしい。自分の首を絞める事をなぜ、標的のあたしに教えたのだろうか?
「それも簡単だよ。油断させるためさ。あたしが、協力者だって思わせれば、まさか、自分を狙う犯人だなんて思わないだろ?
そうすれば、あたしが近くにいても油断してくれるからね。ほんとに、めがっさ上手く行き過ぎて、逆に怖いくらいだったよ」
そんな……あの『稽古』にも、そんな裏があったなんて。
「そして、ほんの少しの間だけ、人の良い先輩の振りをしようと思ったんだけどね。比較的早くチャンスが巡って来たんだよ」
「チャンスですって?」
「そうチャンスだよ。キョン君から、今日犯人と対決するって聞いたのさ。あたしは、古泉君に連絡入れられた事で少しだけ焦ったけど、気付いてないようだったからさ、利用させてもらったんだ。
まさか、こんなに早く邪魔者を葬れるチャンスが来るとは思わなかったよ」
そうか、あの更衣室から聞こえていた会話は、やっぱりその事だったんだ。
「古泉君に罪を擦り付けようにもさ。話したらばれちゃうだろ?だから、一度にあたしの邪魔をする奴らを一掃するチャンスだったんだよ。
彼らさえ、始末してしまえば、もうハルにゃんを助けてくれる人はいないからね。ま、大物も一緒に喰らい付いてたけど」
そうして、鶴屋さんは銃口をあたしに向けた。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:49:55.09 ID:BgFzffHF0
ここは支援かと
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:50:09.30 ID:ni1/3NUw0
しえーん!!
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:50:26.35 ID:ymFlWfyfO
支援
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:51:08.77 ID:cN5jDouG0
今追いついた
もとネタ知らないんで激しくwktk
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:51:14.91 ID:aULNQl+00
市電
支援だッ
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:51:26.02 ID:YLAP7W8C0
支 ●<ヤッホー 援
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:51:31.38 ID:0oDBvgPf0
shien!しえん!湧く手か!
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:51:46.71 ID:0nKYqemA0
支援したいが
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:51:58.77 ID:cnWkHWrxO
支援
「長々と話したけど、これで終わりだね。なんで水曜日にあんな手紙を用意出来たのか、それだけは分からなかったけど、もう関係ないし、別にいいよ。
最後に、武道場であたしが、言い掛けて止めた言葉を教えてあげるよ。……『君子危うきに近寄らず』世の中には、絶対に勝てない相手もいるんだよ。
そんな人の前に、のこのこと出てきちゃ駄目って事さ。今度はしくじらないよ。そのために、わざわざ『これ(銃)』まで用意したんだからね」
完敗だ……。この人は、裏の裏まで考えていたんだ。緻密な計画を立てて、あたしの命を狙ってたんだ。あたしたち三人は、鶴屋さんに負けたのだ。
「ハルにゃんには、手こずらせられたけどさ、これで終わりだよ。葬式ぐらいは出してあげるからね?安心していいよ」
そうして、鶴屋さんは引き金に指をかけた。
あ……また……跳ぶ……。
あたしが、そう思った瞬間。
『終わったのは、あなたのほう』
不意に声が聞こえ、有希が現れた。手にもってるのは……銃?
突然の乱入者に鶴屋さんは動揺し、あたしに向けていた銃口を有希に移そうとした、それより一瞬早く有希は、『発砲』した。
『プシュンッ』
鶴屋さんの銃とは違って、その銃は本当に弾が出たのかと疑うぐらい音がしなかった。サイレンサーが付いているんだろう。
そして……。
鶴屋さんが、その『銃弾』によって、『倒れた』。
「大丈夫?ごめんなさい……証拠を掴むぎりぎりまで、助けるのを見逃していた」
有希が、安否を謝罪と共に、訊いてくる。
「……え、ええ。それは構わないけど……でも、殺しちゃったの?」
あたしの、質問に有希は手に持ったシルバーボディーの『銃』を持ち上げて、短く言った。
「麻酔銃。しばらく目覚めないけど、死んではいない」
じゃあ、眠っているだけなのか。よく耳を澄ませてみれば、寝息も聞こえてくる。あたしを殺そうとした鶴屋さんだけど、死んでいないとわかって、なぜか少しだけほっとした。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:52:16.68 ID:C6TxqP4y0
私怨
70 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:52:49.35 ID:4cvUFiv40
「キョン君!キョン君!しっかりしてくださぁ〜〜い!!」
突然の泣き声に驚き、また次の瞬間思い出した。一番大事なことを、キョンはどうなったの?
あたしは、キョンの傍に駆け寄った。
「キョン!」
キョンの横にみくるちゃんがいたけど、そんな事を気にしている余裕はなかった。
「キョン!キョン、ねぇ!目を開けなさいよっ!」
あたしは、ぴくりともしないキョンの体をぐらぐらと揺さぶった。
「落ち着いて」
あたしの横に立った。有希が言った。落ち着けですって!?キョンが……キョンが撃たれたっていうのに!
「大丈夫、彼は気絶しているだけ」
「は?何を言ってるのよ?だって……だってお腹を撃たれたのよ!?」
「腹部だから大丈夫。現に、血は出ていない」
本当だ。目を凝らし見てみると確かにYシャツに銃弾が命中した跡があるのに、そこからは血が全く出ていなかった。
「今、起こす」
そう言って有希は、キョンの上体を起こし、背中に回って、活を入れた。
「うっ……」
キョンの口から、呻き声が漏れた。良かった、生きている。キョンは生きている……!
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:53:33.49 ID:cnWkHWrxO
支援
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:53:51.23 ID:BgFzffHF0
なぜ血がでないんだー支援
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:54:10.41 ID:YLAP7W8C0
キョンの腹筋がすごかったんじゃね!?支援
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:54:19.64 ID:cnWkHWrxO
支援
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:54:18.18 ID:TQsMHu0o0
まだ支援いるかな
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:54:25.36 ID:0nKYqemA0
オリバー乙
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:54:28.31 ID:YO3Ybuto0
おいついた 支援
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:54:49.69 ID:cN5jDouG0
支援
79 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:54:50.32 ID:4cvUFiv40
キョンは、頭を振り、そして、ゆっくりと目を開いた。
「……うまくいったんだな……」
目を開き、辺りを見回したキョンは、本当に安心したように呟いた。
あたしは、キョンの無事に安堵し、そのあまりの嬉しさに抱きつこうとした。
「キョ… 「キョンくぅ〜〜〜〜〜んっっ!!」 ンぐっ!?」
抱きつこうとしたその時、あたしよりも『先に』みくるちゃんがキョンに抱きついた。
「あ、朝比奈さん!?」
キョンは、いきなりのびっくり展開に慌てふためいている。
「良かったです!良かったですぅ!わたしキョン君が撃たれた解きは、どうしようってぇ〜……」
みくるちゃんが、その可愛い顔を笑顔を涙でぼろぼろにしながら、キョンに抱きついている。
正直、あたしもさっきまでこみ上げてくるものがあったんだけど、このショックですっかり引っ込んでしまった。
ま、いいわ。あたしには『涙』なんて、似合わないしね。
そうして、しばらく無言でその様子を見ていたあたしだが、なんかどんどんむかついてきた……。
「…………っとに!いつまでいちゃついてんのよっ!」
そう言って、あたしは背中からみくるちゃんをむりやり引き剥がした。
「きゃっ!?」
「いたっ!」
ついでに、キョンの顔を一発はたいてやった。
「ってぇ〜……ハルヒ、お前なにすんだよ?俺は怪我人なんだぞ?」
恨みがましくあたしを見詰めるキョンにあたしは言ってやった。。
「ふ〜んだっ!怪我人なら、怪我人らしくしてなさいよ!なによっ、いつまでもデレデレしちゃって!」
「デレデレって……お前なあ……」
「まあまあ、いいじゃないですか?」
キョンがあたしに反論しようと、口を開いた時、今まで黙っていたままだった古泉君が発言した。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:55:02.28 ID:BgFzffHF0
オリバーかwww納得支援
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:55:04.33 ID:cnWkHWrxO
支援
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:55:32.36 ID:YO3Ybuto0
支援
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:55:45.00 ID:cN5jDouG0
支援
84 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:55:49.59 ID:4cvUFiv40
「こ、古泉君!?大丈夫だったの!?」
……いけないすっかり忘れていた。古泉君もキョンと同じで、鶴屋さんに撃たれていたのだ。
しかもキョンとは違って、その肩からは夥しい量の赤色の液体が伝っていた。明らかに、彼の方がやばそうだ。
「ええ、まあ、命には別状ありません。応急処置として、止血もしましたし」
そう言われ、古泉君を見てみると、上着を脱ぎ捨ててシャツを破って傷口の止血をしたのだろう、ところどころ赤くなった布が巻いていた。
「でも、病院に行かないといけないでしょうがね」
そう言って古泉君は苦笑いした。
「悪かったな古泉。危険な橋を渡らせちまって」
キョンが言う。
「いえ、それはあなたも同じじゃないですか、お互い様ですよ。気にしないで下さい」
そう言って、古泉君はフォローした。
「警察と救急車を呼ぶ」
そう言って、有希が携帯電話を古泉君に手渡した。
「僕がやるんですか?一応怪我人なんですが……わかりました。呼びますよ」
そう言ってなんだか色々諦めたような顔をして、古泉君は電話した。
「――呼びましたよ。それじゃあ涼宮さんと長門さんは、彼と一緒に行ってください」
携帯電話を有希に返し終わり、古泉君が言った。
「いいのか?古泉」
「ええ、ここは僕と朝比奈さんに任してください。ね、朝比奈さん?」
「え?あ、は、はい!任せてくださぁい」
突然話を振られたみくるちゃんは、驚きながらも了承した。
「ほんとうにいいの?古泉君、みくるちゃん?」
「ええ、今はまだお二方共々混乱していますでしょう?だから、今日は帰ってください。僕たちでなんとかします」
「……でも」
古泉君は、怪我もしてるのに……。
「だ、大丈夫ですっ、涼宮さん。わ、わたしも手伝いますからっ!」
みくるちゃんがそう言ってくる。二人は、あたしたちを気遣って言ってくれてるんだ。なら素直に、甘える事にしよう。
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:55:59.18 ID:cnWkHWrxO
支援
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:56:30.31 ID:oR7xatRj0
キョン「オレの腹筋はホンモノのヤリじゃなきゃ通らねぇ……」
古泉「そ、そこまで鍛えるのですか!?」
ブンッ!
ギューンッ!
ドンッ!
古泉は殴られ、吹っ飛び、壁に打ち付けられた。
古泉「し……支援……」
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:57:04.27 ID:cnWkHWrxO
支援
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:57:11.09 ID:yxIp3nc9O
支援だっぜ
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:57:31.41 ID:0nKYqemA0
支援
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:57:44.91 ID:YO3Ybuto0
支援
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:57:50.74 ID:cnWkHWrxO
支援
92 :
【時のパズル】第8章>>86それはジャックだろwwwww:2006/09/22(金) 22:57:51.36 ID:4cvUFiv40
「立てる?キョン?」
「……ああ」
そう言って立ち上がろうとしたキョンは、立ち上がろうとした瞬間、口を歪ませた。血は出てなかったけど、やっぱりダメージを受けていたんだ。
「大丈夫!?キョンも病院に行った方が……!」
「大丈夫だ。ただの打撲だろうからな」
そう言って、キョンは苦しいだろうが、なんとか一人で立ち上がった。
しかし、すぐによろめいた。
「キョン!」
あたしは、すぐにキョンの肩に手を回した、支えてやるためだ。
「……大丈夫だ、ハルヒ」
そんなつらそうな顔をしてなにが大丈夫だ!キョンはそんなことを言う。だから、
「うっさいわねっ、ふらふらしてるくせにかっこ付けてんじゃないわよ!」
思ってることを、そのまま言ってやった。
「じゃあ、行くわね」
「待って」
有希が止めてくる。
「どうしたのよ?」
「レコーダーはどうしたの?」
「あ、いけない。飛び出した時に落としたままだったわ」
「おいおい……」
キョンがやれやれとでも言いたげに、首を振る。
「わ、悪かったわよ。有希、ちょっとお願い」
あたしは、有希にキョンの支えをお願いして茂みに落ちたレコーダーを回収した。録音ボタンが、動き続けていたままだったので、スイッチを切った。
「それじゃあ、僕に」
そう申し出た古泉君にあたしは、イヤホンを外してICレコーダーを渡した。
「お願いね」
「ええ、承りました。さあ、早く行ってください。逃げられなくなりますよ」
鶴屋さんをちらりと見て言った古泉君の言葉に頷き、あたしは再びキョンに肩を貸し、三人で『公園』から出て行った。
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:58:15.28 ID:nQtSpazrO
支援
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:58:19.73 ID:ymFlWfyfO
支援するニダ
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:58:26.11 ID:YLAP7W8C0
キョン「オレのアナル筋はホンモノのヤリじゃなきゃ通らねぇ……」
古泉「そ、そこまで鍛えるのですか!?」
ズンッ!
ブツンッ!
ドンッ!
古泉は殴られ、吹っ飛び、壁に打ち付けられた。
古泉「し……支援……」
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:58:40.71 ID:YO3Ybuto0
シエル
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:58:52.38 ID:cnWkHWrxO
支援
98 :
【時のパズル】第8章:2006/09/22(金) 22:59:02.03 ID:4cvUFiv40
公園を出て、どこに向かうのか訊ねるあたしに、有希はキョンの家を指定した。
「あたしの家の方が近いわよ?」
「彼は怪我をしている。治療するには自分の家の方が落ち着ける筈」
納得出来るような、出来ないような事を言うが、キョンが自宅を指定したのであたしたちはキョンの家に行く事にした。
あたしたちは通りがかったタクシーを捕まえ、一路キョンの家に向かった。
発進した後、少しして遠くの方からサイレンの音が近づいてくるのがわかった。
タクシーの中で、キョンが聞いてきた。
「で、ハルヒ?日曜日はすべて終わらせてきたんだろうな?」
「ええ。でも、わからないことだらけよ」
「それは、家に着いたらゆっくり教えてやるさ。それよりも、ようやくゲームセットだ。お前の日常もこれで元通りだ」
「……ほんとに?」
「ああ。そもそもタイムリープを起こした原因を壊したんだ。空白もすべてなくなったし、もう跳べる『時間』もない。これで終わりだ」
「……そっか」
「ああ、お疲れ様だったな。ハルヒ」
「ううん、こちらこそ」
そうして、あたしたちを乗せたタクシーは走る。キョンの家に、安息を求めるために。
第8章 了。
支援
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:59:53.31 ID:cnWkHWrxO
支援
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 22:59:59.27 ID:YLAP7W8C0
支援”!
乙過ぎ!
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:00:14.94 ID:oR7xatRj0
乙!
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:00:31.68 ID:BgFzffHF0
お疲れ!!
これは何章まであるんだい?
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:00:34.30 ID:0nKYqemA0
乙!!!
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:00:34.36 ID:t93i1aoIO
おぉつ!
意外な結末だった
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:00:36.06 ID:ymFlWfyfO
乙ニダー!
乙!
wktkが止まらないww
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:01:08.28 ID:ni1/3NUw0
めがっさ乙!!
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:01:23.37 ID:nQtSpazrO
乙!!
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:01:23.02 ID:cnWkHWrxO
乙!
かなり意外だったな…
おつおつ!今日気になって原作買って読んだけど、展開が違くてwktkだっぜ!
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:03:00.24 ID:cN5jDouG0
激 し く G J ! ! ! ! ! ! ! ! !
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:03:26.41 ID:Jrfhcj5Z0
また食い入るように読んでしまったぜ
115 :
【時のパズル】:2006/09/22(金) 23:03:31.83 ID:4cvUFiv40
まだだ……まだ、終わらんよ……。
終章15分後に投下開始。
伏線回収編2。って言ってもこれで伏線回収はおしまいだけど。
そして、物語は幕に向かって……
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:04:01.24 ID:cnWkHWrxO
wktk
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:04:15.67 ID:oR7xatRj0
>>115 うほっwwwおいしすぎwww
wktk
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:04:15.97 ID:t93i1aoIO
wktk!
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:04:23.64 ID:0nKYqemA0
>>115 ktkr!!!!! 今日は最高だ!!!
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:04:24.78 ID:BgFzffHF0
次でラストか
wktk保守
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:04:55.46 ID:YO3Ybuto0
wktk
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:04:58.45 ID:cRhiRCsa0
終章ってのもさびしいな…
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:06:38.47 ID:oR7xatRj0
そういや、その投下が終わったら、次は俺でいい?
俺もちょい長くなりそうだから。
早く回収編見たいwktk
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:06:45.26 ID:TQsMHu0o0
+(0゚・∀・) + ワクテカ +
wktk
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:07:05.00 ID:YLAP7W8C0
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:07:12.22 ID:cnWkHWrxO
楽しい週末を迎えれそうだぜ。
かなりwktk
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:07:17.46 ID:PwAJ3EMHO
乙です!
wktk
乙!
全然先が読めなくて良かった
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:08:50.49 ID:7B2/tm0HO
鶴屋家はただのスポンサーであって機関の一員ではないよ
つまり機関には鶴屋さんの部下なんていないはずなんだけど?
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:09:01.34 ID:0nKYqemA0
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:09:34.38 ID:CV8KEiuQO
wktk
133 :
【時のパズル】:2006/09/22(金) 23:10:10.32 ID:4cvUFiv40
>>130 分かってたけど、動機が上手く思い浮かばなかったから…。鶴屋さん、責任感強そうだし
乙
今日の投下は無理そうだな……寝るかノシ
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:10:49.66 ID:0nKYqemA0
>>130 確かに鶴屋家は機関とはノータッチだが、
今回の目的の為に関わってきたと考えるのが吉
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:11:42.46 ID:JVMLmn7j0
>>130 まぁ、何だ。
固 い 事 は 言 う な !
今日書かれた方々、乙!
で、これからの更新分、wktk
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:12:57.00 ID:6UxdlX+j0
>>130 原作では、古泉がそう言ってるだけでそれが真実なのかは不明。
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:13:56.14 ID:U7Ril3QyO
一度睡魔に負けたがやっと追い付いた
続きにwktk
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:13:59.06 ID:GmBAT5vsO
もう機関の何人かを実弾ばらまいて買収したってことでいいじゃない
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:15:46.86 ID:7B2/tm0HO
いや知ってたんなら別にいいんだ
最近鶴屋さんが機関の一員になってるSSをよく見るから
みんな勘違いしてるのかなぁ〜と思ってさ
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:17:28.11 ID:0nKYqemA0
>>140 まあ、よく考えると鶴屋さんってご都合主義的なところあるわな
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:17:33.09 ID:t93i1aoIO
さぁ!
そろそろ投下ジャマイカ!?
wktk!
143 :
【時のパズル】終章 ちょっと短めだけど:2006/09/22(金) 23:18:11.65 ID:4cvUFiv40
【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】
終章 『まだ終わらない』
キョンの家に到着したあたしたちは、勘定を済ませて(あたしとキョンは財布を持っていなかったので、有希が払ってくれた)門を潜った。
「もういいぞ」
玄関に辿り着き、キョンは肩を支えていたあたしに、そう言ってきた。
「なに言ってんのよ」
「あいつには、余計な心配かけさせたくないんだ。大丈夫、部屋に行くだけだろ。一人でも問題ないさ」
「…………」
『あいつ』とは、妹ちゃんの事だろう。あたしもキョンの気遣いがわかったから、黙って回していた腕を解いた。
「でも、きつかったら意地張らないですぐに言うのよ?」
「ああ」
そうして、あたしたちはドアを開いた。
「ただいま」
「あ、キョン君おかえり〜」
部屋の奥から妹ちゃんの声が聞こえてくる。ぱたぱたと近づいてくる音もする。
「あれ?」
妹ちゃんは、キョンの横にいるあたしと有希にも気付いたようだ。その顔がだんだんと緩んでくる。
「わぁ〜ハルにゃんと有希も来てたの?なに?なに?今日はSOS団の活動なの?」
「そんなとこだ」
キョンが答え、玄関から上がる。お腹が痛むだろうに、ぐっと堪えてなんでもない風を装っていた。
「そうなんだ!ねぇ、キョン君。わたしも一緒に遊んでもいいでしょー?」
「駄目です。お遊びじゃないんだから、お前はシャミセンとでも遊んでなさい、貸してやるから」
「ぶ〜、キョン君のいじわるっ!」
そう言って、妹ちゃんは居間の奥に消えてしまった……
「ハルにゃんと有希はゆっくりしていってねー」
と思ったら、ひょっこり顔を出して言ってきた。
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:19:42.32 ID:0nKYqemA0
支援
>>137 それはない 古泉が嘘をつく必要性がないし
何よりも鶴屋さんはフルネームわからないからな
機関の人間はみんなフルネームがでている
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:20:20.98 ID:cnWkHWrxO
支援
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:20:29.89 ID:oR7xatRj0
支援
148 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:20:46.64 ID:4cvUFiv40
なんとか、キョンは階段を上り終え、ようやくあたしたちはキョンの部屋に来た。
? なんだろう……?キョンの部屋には何回か入ったけど、つい最近入ったような気がする。既視感(デジャブ)ってやつかしらね?
「手当てする、見せて」
立ち尽くしていたあたしを余所に、有希がキョンの手当てを始めた。
「いいよ、道具を貸してくれ。自分でやるよ」
「駄目」
有希が譲らないと分かったのだろう。キョンも仕方なしに、ブレザー、Yシャツの順に上着を脱いだ。
さすがにTシャツは脱がなかったけど、シャツをめくり上げるとキョンのお腹には、さらしがぎちぎちと巻いてあった。
そうして、それを解くと光を放つ物が見えた。なんだろう?そう思ってあたしが覗き込むとそこには薄い鉄板のようなものが貼り付けてあった。
「それは?」
「特殊合金で作った鉄板」
有希が答える。そうして、ようやくさらしを巻き取り終え、鉄板だけになったよく見ると、真ん中の少し横に銃弾がめり込んでいた。
さらしを貫通して、その位置で止まったのだろう。そして、留め金を外し、鉄板を取ると、銃弾がめり込んでいた部位は赤黒く腫れ上がっていた。
「ひどい……」
あたしは、思わずそう呟く。有希が軽くそれに触れてみた。
「ッッ!!」
とても痛そうだ。
「すぐに治療する。大丈夫、内出血により腫れ上がっているけれど、これならすぐに直る。骨や臓器は損傷していない。ただの打撲」
有希が素早く、的確に診断する。そして、どこから出したのか、救急道具が入った袋を取り出し、中から無臭の湿布と真新しい包帯を取り出した。
そうして、有希は湿布を貼り付け、どこか手馴れた動きで包帯を巻いた。
「……ちょっときついぞ」
「少しぐらいきつい方がいい」
そうして、キョンの治療が終わった。
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:21:14.94 ID:Dq+sbSsOO
支援なんてしてあげないからねっ
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:21:28.95 ID:gw1hH1OxO
支援はいいけど援助はだめ?
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:22:11.23 ID:cnWkHWrxO
支援
152 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:22:29.89 ID:4cvUFiv40
「じゃあ、説明する事にするか」
「もういいの?」
まだ、キョンは傷が痛むだろう。説明は訊きたかったけど、一応、確認してみた。
「ああ。話をするぐらいなら、なんでもないからな」
「わかったわ」
多少は、苦しいのだろうけど、キョンはそれを隠そうとしているんだ、野暮な事は言わない事にしよう。
「それで、なにから訊きたいんだ?」
「なにって……全部よ。わかんない事全部!」
「全部ね……なにから話すかな……」
「取りあえず、鶴屋さんが真犯人だってキョンには分かってたんでしょ?それは、どうしてよ?」
あたしは、一番気になっていた事を、まず聞いた。
『……うまくいったんだな……』キョンは目覚めた時こう言っていた。つまり、鶴屋さんが犯人だと気付いていたという事だ。
「それなんだがな……実は今日の途中まではわからなかったんだ」
「どういう事よ?」
「……ああ、実はな―――」
そう言って、キョンはまず脱ぎ捨てたブレザーを引き寄せ、ポケットから一通の封筒を取り出して見せた。
「これを見て気付いたんだ」
「それは……」
見覚えのある封筒。それは、あたしがキョンを助けるために、みくるちゃんに出した『四通目』の手紙だった。
「今日の訓練中。朝比奈さんが俺を訊ねてきただろう?」
あたしは、思い出す。そういえば、そんな事もあった。
「あの時、この手紙を渡されてな。それで気付く事が出来たんだ」
「……でも」
「ん?」
「どうして、それを今日キョンに渡したのよ?」
そうだ。その手紙には【木曜日を過ぎたら、何も聞かずに、すぐ俺に渡してください『キョン』】と書き記しておいたんだ。
普通は、木曜日。遅くても、金曜日には渡していてくれた筈である。
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:23:13.12 ID:U7Ril3QyO
支援
支援
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:23:26.49 ID:cnWkHWrxO
支援
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:23:34.58 ID:0oDBvgPf0
おれもwktk!試演する!
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:23:39.74 ID:ni1/3NUw0
支援
158 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:24:02.63 ID:4cvUFiv40
「ああ、その事か……。金曜日の事を思い出してみろ」
「金曜日?」
あたしは、思い出してみる。そうすると……あ。
「そうだ。朝比奈さんは、水曜日から金曜日まで鶴屋さんの家に泊まっていたんだ。だから、家には不在だったんだよ」
「そうか、だから気付くのが遅れたのね」
「ああ。朝比奈さんの話では、火曜日にはまだ、ポストになかったそうだから、水曜日に入ったんだろう。だから、水曜日から家を空けていた朝比奈さんは、その手紙に気がつけなかったんだ」
「そうだったのね。でも、鶴屋さんもほんとタイミングの悪い時に、そんなことを計画したわね」
「逆だよハルヒ」
「逆?」
「そうだ。水曜日から金曜日のお泊り会。これが、最善のタイミングだったんだ」
「どういう事よ?」
これは、朝比奈さんから聞いた話だけど、とキョンは付け加えて、
「鶴屋さんは、朝比奈さんに手紙の事を話したらしいんだ」
「手紙って『四通目』を?」
「違う。その前の三通についてだ。朝比奈さんに、俺たちの事を知っているか確認したそうなんだ。おそらく同じSOS団の仲間になら、なんらかの情報を聞きだせると思っていたんだろう。
もちろん、朝比奈さんはそんな手紙の事は知らないかった。それが、よかったんだ」
あたしは、黙って訊く。
「いいか?もし、この手紙が『火曜日』に届いてたとする。もちろん、朝比奈さんは不審に思うだろう。俺たちの事情を知らないんだからな。
もちろん、鶴屋さんが犯人だなんて、あの時点では想像すらしてない筈だ。手紙の内容も勿論分からないだろう。そんな時に、もし鶴屋さんが、似た文面の封筒を朝比奈さんに見せていたらどうなっていたと思う?」
「…………」
あたしは、キョンの説明を聞き、その場合に起こりうる事を想像し、背筋が寒くなってきた。
「そして、木曜日にこの手紙を見つけた場合、俺に直接知らさせてくれる可能性の方が勿論高いが、高確率で『四通目』があった事は、鶴屋さんの耳にも入っただろう。
つまり、『水曜日から金曜日の夜』までは、絶対に手紙を受け取ってはいけない期間だったんだよ」
あたしは血の気が引いていた。鶴屋さんが、結果として水曜日から金曜日にみくるちゃんを拘束してくれたからよかったものの。もし、失敗していればあたしたちは全員死んでいたかもしれないのだ。
「鶴屋さんは、自分の罪を偽装するために朝比奈さんを『利用』した。だが、結果としてそれが自分の首を絞める結果になったんだ」
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:24:17.74 ID:0nKYqemA0
いい時間帯にやってくれるよな 支援
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:25:26.79 ID:Dq+sbSsOO
なるほど支援
161 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:25:27.79 ID:4cvUFiv40
でも、あたしには一つ分からない事があった。
「鶴屋さんが、犯人だと気付いた方法はわかったわ。でも、なんでキョンは古泉君と対峙したのよ?あたしは、止めてって、書いた筈よ。どうして逃げなかったのよ?」
「時間を再構成させて、それでもなおハルヒを助ける自信が俺にはなかったんだよ」
あたしは、ようやく分かった。
キョンはあたしの手紙によって、『撃たれる事』が、『撃たれる前』に分かっていたんだ。つまり、『予備知識』を持っていたんだ。
キョンが手紙を読んだ事により回避したとするならば、そこで時間は再構成されてしまった筈だ。
だから、あえてキョンは『撃たれる事』を前提として、自分の身を護るための手段を考えたんだ。
「じゃあ、途中で有希が帰ったのは……」
「そうだ。俺の体を護るための物を調達してもらっていた。そして、俺がハルヒを家に送って、一時間待たせていたのはそれを身に付け、策を練るためだ。時間ぎりぎりだったからな、焦ったよ」
「それにしたって……」
いくら、あたしの手紙で、腹部に銃弾が当たる事が分かってたとしても、有希が調達した『防具』がそれを防いでくれる保証はなかった筈だ。
現に、キョンは、かなりのダメージを受けている。
それなのに、なんで?
そうすると、キョンは罰が悪そうな顔をして言った。
「さすがに、恐怖はあったし、気が引けた、逃げようとも思った。でも、ハルヒに逃げるなって言った俺が逃げるなんて、かっこ悪いまね出来なかったからさ」
「……ばか」
「そうだな。俺もそう思うよ」
あたしは、なんてキョンに言っていいか分からなかった。あの対峙の前、あたしはキョンを非難した『所詮、他人事だ』と。
なのに、キョンはあの時にはもう『撃たれる事』を知っていた。
たとえ、『予備知識』があったとはいえ、それも絶対ではない。本当に死んでしまう危険性もあったのに、キョンはやってくれたんだ。
時間を再構成させないために、あたしを助けるために、『逃げよう』としていた、あたしのために。
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:25:42.94 ID:cnWkHWrxO
支援
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:26:03.59 ID:oR7xatRj0
支援
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:26:44.33 ID:YO3Ybuto0
支援
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:26:55.79 ID:aULNQl+00
紫電
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:27:08.49 ID:cnWkHWrxO
支援
167 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:27:22.89 ID:4cvUFiv40
「…………」
黙っていたあたしを見てキョンは言ってくれた。
「気にすんな、ハルヒ。俺が自分で選択した事なんだからな」
「……でも」
「それより、まだ話してない事があるんだ。そっちの話でも訊けよ、な?」
「……わかったわ。それでまだ、話してない事って?」
「古泉の事だ」
古泉君……そうだ。キョンたちが、最初に犯人だと疑っていた人物だ。
「さっきも話した通り、朝比奈さんが『四通目』を渡してくれるまで、俺たちは古泉を犯人として疑っていた」
「うん」
「録音したものを聞かせた時、言ったよな、『武道場から出て行った一回目に録音したもの』だって」
確かに、そんなことを言っていた。
「つまり、その電話の時点では俺たちは古泉と対決する為の準備をしていたんだ。正直、運が良かった」
「なにが良かったのよ?」
「電話の仕方さ。俺は、ハルヒを襲ったのは古泉だとは一度も言わなかったんだ。ただ、ハルヒに何かが起きているのを知っているな?それだけを言ったんだ」
「別に変なとこはないと思うけど……」
「古泉は、上司……おそらく鶴屋さんに命じられてハルヒを陰で観察していた筈だ」
その通りだ。キョンが気絶している間に、鶴屋さんが喋っていた。
「だから、ハルヒを観察していることが、何故俺に知られたのか、わからなかったんだろう。そこで、もし俺がお前が殺そうとしているなんて言われたら、はったりを言ってると思われて話に応じてくれなかったかもしれない」
なるほどね。
「確かに運が良かったわね」
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:27:32.01 ID:mqIKZoXQ0
支援するッ!!
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:27:41.61 ID:nQtSpazrO
支援
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:28:28.04 ID:9Y8GOkQY0
本当に面白いなw
ささいなことだけどwikiに写す前に
>>53の誤字だけ直してほしいかも・・・
171 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:28:36.64 ID:4cvUFiv40
そこであたしは、更に一つの事が疑問に残った。
「ねえ?キョン?古泉君は、キョンが電話した時点では犯人が鶴屋さんだとは、知らなかったのよね?」
「そうだ」
「なのに、あの対峙の時、古泉君はなんで事情を知ってるようだったのよ?」
キョンはにやりと笑った。
「それも朝比奈さんのお陰さ」
みくるちゃん?まだ。なにかしてくれてたんだろうか?
「『四通目』を読んだ直後、俺は武道場に戻ってきて、長門を呼んだ。そこで、朝比奈さんが言ったんだよ。『わたしにも手伝わせてください』ってな」
「ええ」
「俺たちは正直迷った。もしかしたら、鶴屋さんに感づかれる事になるかもしれない。だが、『予備知識』によると『古泉と対峙する事』は『規定事項』だった。
それを守るためには、どうしても後一人は協力者が必要だった。だから、教える事にしたんだ」
「協力者が必要?なんでよ?」
「いいから、最後まで聞け。俺たちがしないといけない事は『対峙する事』だ。ならば、敵じゃないとわかった古泉とどうやって『対峙する事』を演出したらいいのか、と考えたんだ」
「演出?」
「そうだ。古泉に俺達が書いたシナリオをどうしても教えないといけなかったんだ。けど、俺と長門だけでは、時間が絶対的に足りなかった。長門には俺の『防具』と場所の警戒。
俺は、鶴屋さんから目を離すわけにはいかなかったからな。そこで、朝比奈さんが言ってくれたんだよ。『わたしが古泉君に教えます』ってな。勿論、電話での連絡なんて駄目だ。
盗聴される危険性があったからな。現に、その状態にあったと古泉も言ってたそうだ。だから、尚更直接出向いて事情を説明する人物が必要だった。」
「それが、みくるちゃんだって事ね?」
「そうだ。あの人がいたから、なんとかなったんだ。俺は結局最後まで古泉と連絡取れなかったから、あれはアドリブだったんだぞ?」
「そうなの?」
「ああ、要点だけは決めてたけど、それ以外は即興だ」
「へー、あんた結構演技も上手いのね」
キョンは、少し照れていた。
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:28:56.67 ID:cnWkHWrxO
支援
173 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:29:11.59 ID:4cvUFiv40
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:29:43.46 ID:oR7xatRj0
支援
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:29:50.35 ID:mqIKZoXQ0
(゚д゚ )みくるが役に立ってる
176 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:30:25.46 ID:4cvUFiv40
「で、次なんだけど」
「まだ、あるのか?」
「ええ、こうなったらすべて訊いてやるわよ。あんたあたしが、『日曜日』に跳ぶ前にあたしが、『殺される』か『殺されない』か、分からないだなんて、よくも嘘言ったわねね?」
そうだ、キョンは『予備知識』により、『日曜日』のあたしが助かる事を知っていたのだ。それなのに、わざと矛盾した事を言って、あたしを混乱させた。
普段なら、気付いてたかもしれないが、『あの時』は、古泉君が犯人だと聞かされたショックで鵜呑みにしてしまったのだ。
「なんだ、そんな事か……わかるだろハルヒ?お前が、『四通目』を書く。このことをお前に知らせるわけにはいかなかったんだよ。『予備知識』は、持たせられないんだ。
それなのに、俺が『無事だった』っていうのはおかしいだろ?殺されないのは、わかってただろうけど。、何もなかった事を知られるのはまずかったんだよ」
「それにしたって、やり方があったんじゃない?古泉君が犯人だって嘘まで付くし」
それが、『予備知識』によって、必要な事だとは分かっていたが、到底納得は出来なかった。あたしが、頬を膨らませて不満を顕にしていると。
キョンは悪戯を考え付いた子供のような顔で言った。
「オーラスも近かったからな、仕方がなかったんだ。分かってくれ。それに昔から言うだろ?『敵を騙すには、まず味方から』って」
「じゃあ、最後の質問よ」
「ようやくか」
「なんであそこに鶴屋さんが現れるって核心が持てたのよ?」
「それか。いいか?鶴屋さんは古泉を犯人に仕立て上げようとした。そこまではいいな?」
「ええ」
「だが、古泉は勿論そんな事はしていないし、犯人が鶴屋さんである事も知らなかった。だから、俺が古泉に問い詰めたらまずいと思い、陰から探らせてたんだ。
しかし、土曜日に俺が古泉と対決するという。これは、俺が武道場でわざと教えた。 鶴屋さんにその後の事後処理を手伝ってもらいたいという事と、俺と古泉二人っきりで行うという、嘘を織り交ぜてな。
鶴屋さんは、もちろん焦った。『そんな事は危ないからやめろ』と、俺を止めてきたが、ひょっとしたら半ば本気だったのかもな。
だけど、俺の意思が固いと思ったんだろう。そして、決めたのさ『俺も殺そう』ってな、多分、その場にいた古泉ごとだ。」
あの短い時間で、そんな駆け引きをしていたのか、まったく驚かされる。
「そして、練習後、朝比奈さんが教え古泉に事情を話し終わった後、古泉に確認の連絡があったんだとよ。ほんとにタッチの差だったってわけだ」
もう一度やれと言われても無理だろうな、と付け加えて、ようやくこの長い質問タイムは終わりを告げた。
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:30:29.08 ID:YO3Ybuto0
支援
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:30:42.25 ID:9Y8GOkQY0
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:30:43.16 ID:cnWkHWrxO
支援
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:31:37.22 ID:mqIKZoXQ0
紫煙
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:31:47.28 ID:0oDBvgPf0
もっと!支援を!
182 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:32:28.85 ID:4cvUFiv40
「キョン君〜電話だよー」
そう喋りながら妹ちゃんが階段を駆け上ってきた。キョンは慌てて、さらしと鉄板の上に制服を被せて隠した。
バタンッ、勢いよく扉を開けて、妹ちゃんは入ってきた。片手には電話の子機を持っている。
「はい、キョン君」
「誰からだ?」
「古泉君だって、なんか携帯に電話しても繋がらなかったからって」
「……そういや鞄に入れっぱなしだったな。さんきゅ、出てっていいぞ」
「えー?ここにいてもいいでしょ?」
「だーめ、人の邪魔をするのは、めーなの」
そう言って、キョンは妹ちゃんを追い出し電話に出た。
「もしもし……ああ、大丈夫だったか?……そうか。…………分かった。……ああ、大丈夫だ。……なんとかしてみるよ……。ああ、わざわざありがとな……」
電話は比較的早く切れた。
「古泉君、なんだって?」
「ああ、怪我は無事に治りそうだって事だ」
「そう、よかった」
「……それと、鶴屋さんの事だ」
「……それで?」
「ああ、目を覚ましたらしいんだがな。どうも鶴屋さんには解離性同一性障害のけがあったらしくてな」
「解離性同一性障害?」
「ああ、俺もよくわからないんだが、二重人格のようなものらしい。それにより、凶暴になったり、よく分からない事を喋ったり、狂言癖があったそうなんだ」
「……そうなの。じゃあ……」
「ああ、断定はできないけどな。お前を狙っていたのもその衝動によるものなのかもしれない」
「…………」
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:33:00.68 ID:oR7xatRj0
支援
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:33:06.11 ID:cnWkHWrxO
支援
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:33:32.82 ID:0nKYqemA0
支援
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:34:12.87 ID:cnWkHWrxO
支援
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:34:27.88 ID:mqIKZoXQ0
私怨
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:34:31.07 ID:PwAJ3EMHO
支援
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:34:31.85 ID:YO3Ybuto0
支援
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:34:58.21 ID:lKKPRwXQO
191 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:35:09.54 ID:4cvUFiv40
二重人格。あたしが、タイムリープを起こして、最初に考え付いた事だ。鶴屋さんは、実際にそんな物を持ち合わせていたと言う。
二重人格と思っていた二日間。それだけでも、苦しいのに鶴屋さんはずっと苦しんでいたんだろう。
そして、タガが外れてしまったんだろう。そう思うと、あたしは鶴屋さんを恨めなくなってしまった。
「安心しろハルヒ」
キョンが言ってきた。
「幸い、これが初犯らしいし、お前を殺そうとしたのも未遂だ。俺自身もな」
だから、証言で、弁護してやればいいんだよ。
「ああ、俺たちに警察が詳しい話が聞きたいって言ってるんだとよ。後日、訊ねに来るらしいからばっちり理由を考えようぜ」
キョンがそう言う。
「そうね。鶴屋さんは、SOS団の名誉顧問だしね。きっと罪を軽くしてみせるわ!」
実は、もうあたしは思い出していた。キョンは気付いていないけど、タイムリープは『まだ終わっていない』のだ。今からその準備をしないといけないわね。
「電話終わったでしょ?子機戻してきてあげるわよ」
「別にいいぞ?」
「いいのよ。ついでになんか飲み物も持ってきてあげるわ」
そう言い残し、あたしは階下に降りていった。さあ、早くしないとね。
「妹ちゃん?」
居間でテレビを見ていた妹ちゃんを呼ぶ。
「どうしたの、ハルにゃん?」
「えっとね、これどこにおけばいいのかしら?」
電話の子機を見せた。
「わざわざいいのに。ごめんねハルにゃん」
「いいのよ、それより飲み物を入れたいの。手伝ってちょうだい?」
「うん!」
192 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:35:18.87 ID:GmBAT5vsO
支援
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:35:19.35 ID:U7Ril3QyO
支援
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:35:22.45 ID:CV8KEiuQO
しえん
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:35:54.27 ID:cN5jDouG0
紫電改
196 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:36:31.63 ID:oR7xatRj0
支援
197 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:36:35.18 ID:4cvUFiv40
「有希?どうしたのよ?」
あたしは、平静を装って訊ねる。
「ちょっと出掛けてくる」
「出掛けるって、どこによ?」
「わたしの家。彼の鞄を取ってくる」
「そ、そう。わかったわ。いってらっしゃい」
有希はコクリと僅かにだけ頭を動かし、玄関に向かった。そして、振り返り言った。
「まだ、終わっていない。でも、あなたたちなら大丈夫……ごゆっくり」
「…………」
あたしの目の錯覚かは分からないけど、有希がにやりと黒い笑みを見せた気がする。いや、錯覚ね。そう思っていた方がいいわ、うん。
それにしても……。
「あの子、どこまで知ってるのかしらね?」
「ね、ハルにゃん」
二人で並んでお茶の準備をしている時、妹ちゃんが訊ねてきた。
「なあに?」
「そろそろキョン君とは、付き合わないの?」
あたしは、なんと答えるか少し迷ったが、こう答えることにした。
「実はね、一週間ぐらい前から付き合ってるのよ」
「!? 本当!?」
「……ええ」
「わぁ〜よかったね!」
「あ、ありがとね」
あたしは、そう答えた。これで、もう逃げられないわね。
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:36:39.18 ID:PwAJ3EMHO
『めーなの』
(゚д゚)
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:36:44.59 ID:cnWkHWrxO
支援
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:37:04.87 ID:U7Ril3QyO
支援する!
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:37:30.57 ID:9Y8GOkQY0
支援
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:37:31.52 ID:cN5jDouG0
試演
203 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:37:36.06 ID:4cvUFiv40
二人分のカップをお盆に載せる。それを運ぶ前に、あたしは妹ちゃんに頼んだ。
「クッションとか座布団があったら、貸してくれない?」
「いいけど……なにに使うの?」
「ちょっとね」
「?」
妹ちゃんは、首を捻っていた。
キョンは、机に向かってペンを持ち、なにかを考えてるようだった。
「お待たせ、なにしてるのよ?」
「警察に説明するためのことを、順序良くまとめようと思ってな」
「で、どうなのよ?」
「難しいな、やっぱり」
「そうでしょうね。有希が戻ったら三人でやりましょう」
「そうだな。おっ、ありがとな」
キョンは、カップを受け取りながら言う。
あたしは、キョンの横に座って、一つ深呼吸して、決心する。
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:37:50.50 ID:cnWkHWrxO
支援
205 :
【時のパズル】終章:2006/09/22(金) 23:38:06.82 ID:4cvUFiv40
「ね、キョン?」
「なんだ?」
「今回のタイムリープは、もう終わったのよね?」
「そうだぞ。さっきも言っただろ」
「でもさ、もしまたあたしが怖い事があったら再発するんじゃないの?」
「そしたら、また相談しに来いよ。今度はいつでも助けてやるよ」
「でもね、怖い事が起こってからじゃ遅いかもしれないじゃない」
「? なにが言いたいんだ?」
キョンは、本当にわからないようだ。はぁ…しょうがない、この男の鈍感が今に始まったことじゃない。こっちから言ってあげるわ。
「にっぶいわね〜。だから、これからも一生あんたは、あたしから目を離すなって言ってんのよ!」
「…………」
キョンはあたしの方をじっと見たまま黙ったままだ。恥ずかしいんだから、さっさと答えなさいよ!
「わ、わかったの!?」
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:38:31.34 ID:Dq+sbSsOO
wktk!!
支援
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:38:34.27 ID:nQtSpazrO
支援
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:38:40.57 ID:cN5jDouG0
試演
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:38:47.78 ID:cnWkHWrxO
支援
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:38:54.45 ID:oR7xatRj0
すぅぃいいいいいいいいぅぅぇえええええええんんんん!
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:39:05.93 ID:mqIKZoXQ0
支援だああああああああ
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:39:18.80 ID:Dq+sbSsOO
だが断る支援
そうして、ようやくキョンは視線を緩ませ、笑いながら言った。
「わかったよ、危なっかしい団長さんの横をこれからも歩かせてもらうよ」
「だから……団長とか、そんなじゃなくて」
「ハルヒ……分かってるよ」
「ふん、疑わしいもんね」
「……じゃあ、どうしろってんだ?」
「そうね、証拠を見せてもらおうかしら?」
「証拠?」
「ええ」
そう言って、あたしは目を閉じた。キョンの息を呑む声が聞こえるが、あたしは微動だにしない。
体中が熱い、きっと顔は真っ赤だろう。恥ずかしさに堪えながらあたしは待つ。
そうして、ようやくキョンが立ち上がった気配を感じながら、高まり続ける鼓動の音と、熱くなった体温を抑えて。
ただあたしは、『その瞬間』を待った。
終章 了。
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:39:30.51 ID:nQtSpazrO
支援
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:39:32.58 ID:YO3Ybuto0
うわわわわわわわわわわわわわわわ
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:39:36.45 ID:aULNQl+00
膵炎
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:39:44.36 ID:0nKYqemA0
いや、前から疑問に思ってることが……
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:39:45.99 ID:ZrYSAtVj0
やっと追いついた支援
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:40:40.32 ID:nQtSpazrO
乙!!
ハラハラドキドキwktk
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:40:52.60 ID:PwAJ3EMHO
乙です〜!
222 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:40:57.27 ID:cnWkHWrxO
GJ!!
素晴らしい!
本当にお疲れ様でした。
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:41:05.11 ID:oR7xatRj0
乙!!
【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】-Last Piece-
-Last Piece- 『時のパズル』
-Last Piece- 涼宮ハルヒの場合
どだだだだだっ、あたしは階段を転げ落ちていった。お尻を何度も打ち付けて、ようやくクッションの上で止まった。
「……いったいわねぇー」
「ど、どうしたの?」
物音に驚いたのだろう妹ちゃんが、クッションの中に埋まっているあたしをみてぽかんと口を開けている。
なにをしているのか、わからないんだろう。
「ねえ、ハルにゃん?なにしてるの?」
……さて、どう答えたらいいのかしらね。あたしが首を捻っていると、
「ハルヒが最近凝ってる遊びだよ」
キョンが現れた。部屋から降りてきたのだろう。
「遊び?」
「そう、『階段落ちゲーム』って言ってな。階段の一番上から落ちて、どこまで転がれるか試すゲームだよ。危ないから止めろって、いつも言ってるんだけどな」
「そうなの?ハルにゃん」
「……え、ええ」
キョンの考えた言い訳に多少顔をひくひくさせて、あたしは答えた。
「危ないから、止めた方がいいよ?」
「う、うん。そうするわ」
恥ずかしい、後で覚えてなさいよ、キョン!
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:41:23.89 ID:U7Ril3QyO
支援でしょでしょ?
乙です!!
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:41:50.30 ID:t93i1aoIO
おひょ〜い!
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:42:15.11 ID:cN5jDouG0
うおおおおおおおおGッッッッJっっっっ!!!!
キョンがあたしの横に立つ。
「怪我はないみたいだな」
足元のクッションを見て、少し笑いながら言った。
「おかえりハルヒ」
キョンは手を差し伸べ、
「ただいまキョン」
あたしは、その手を掴んで立ち上がった。
あたしは、あたしに出来る最高の笑顔をキョンに見せてあげた。
これで、タイムリープ現象は終わった。あたしの時間は元通りになった。
もしかしたら、また、あたしの時間は狂ってしまうかもしれない。
でも、大丈夫。
今度は、最初から『キョン』がいてくれるから……あたしはどんな時間だって乗り越えられる―――――
230 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:42:49.15 ID:cnWkHWrxO
続くのかwww
支援
231 :
【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】-Last Piece-:2006/09/22(金) 23:43:17.95 ID:4cvUFiv40
-Last Piece- キョンの場合
俺はハルヒに一つ嘘を付いた。鶴屋さんの事だ。あの時の古泉からの電話は実は、ハルヒをごまかしてくれという内容が含まれていた。
幸い、ネタは古泉が提供してくれた『二重人格』この事件でハルヒが最初に恐れていた事だ。だから、記憶にも新しかったのだろう。
比較的、疑いもせず信じてくれた。
もちろん鶴屋さんにそんな症状はない。あの人はハルヒに秘密を守る、それだけのために犠牲になってしまったんだ……。
警察での証言と言うのも、機関によるハルヒに怪しまれないための『カモフラージュ』らしい。
ハルヒはこれからいくつの試練を迎える事になるのだろうか?十四人、これがハルヒのせいで死んだ人の数らしい。
身内どころか、学校のやつの『死』さえ、俺は体験した事がない。だから、その恨みは正直、想像がつかない。
でも、もし俺はハルヒを『殺されたら』どうにかなってしまうだろう。
それが、復讐に向かうのかは、分からないけれど―――――。
とにかく、誰かに恨みを買う存在なんだ。だけど、それはあいつが望んだわけじゃない。
だったら、俺たちぐらいは『ハルヒの味方』でいてあげよう。俺たち、SOS団は結局誰も裏切らなかった。
今回の事件では強い絆を確認できた。俺たちは大丈夫。
それよりも……。
「俺はいつまでこの嘘を付き続けなくちゃいけないんだろうねぇ?」
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:43:30.97 ID:t93i1aoIO
乙!
そして最高にGJ!
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:44:26.23 ID:mqIKZoXQ0
まだ続くか?
234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:45:08.73 ID:U7Ril3QyO
GJ!!
そして乙!
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:45:10.37 ID:cN5jDouG0
何なんだこの作者はwwwwややこしすぎwwww
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:45:12.64 ID:PwAJ3EMHO
GJ〜!!!!!!!!!!!!
237 :
【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】-Last Piece-:2006/09/22(金) 23:45:11.47 ID:4cvUFiv40
-Last Piece- 長門有希の場合
「力が戻った」
自宅に向かう道を歩いていた。長門有希が呟く。
この一週間出来なかった情報統合思念体との交信が復活した。
タイムリープ現象が、終わったのだろう。
彼はやってくれた。いや、『二人』はやってくれた。日常を取り戻してくれたんだ。
これで心配する事は、もうない。後は、わたしの家から彼の鞄を取ってきて、また、彼の家に行く事だけだ。
力が戻った今なら、彼の怪我も一瞬で直して上げられるし、彼女……鶴屋さんも助けてあげる事ができる。
「……でも」
長門有希は、歩くペースを落とした。長門有希は、考える。
彼は、今頃涼宮ハルヒと、いちゃついている筈だ。ちょっと、むかつく。 エラー
エラー発生でも、構わない。これは、嫉妬が起こした、ちょっとしたお茶目な悪戯なのだから。
だから、彼にはもう少しだけお灸をそえてやらないと、いけない。
「いい気味」
普通の人間になる。それも悪くない。長門有希は、また、少しだけ成長した。
それは、もうクリスマスを数日後に控えた寒い冬の夜のことだった。
【時のパズル〜迷い込んだ少女〜】
FIN
238 :
【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】〜おわりのあとがき〜:2006/09/22(金) 23:46:06.17 ID:4cvUFiv40
製作期間一週間、総投下量約240KB【時のパズル〜迷いこんだ少女〜】
今までお付き合い下さってありがとうございます。
この話は、日曜から始まる一週間の話です。ですから、一週間で完結してみせる!と決意して書いた作品です。
9月15日に序章を投下して、今日で丁度一週間です。まあ、今は23日ですけど。書きあがったのは22日なんで、勘弁してくださいorz
今回、作品を作るにあたって何個か決めたルールを書いておきます。
@ハルヒのタイムリープ以外の特殊能力を封じる。(宇宙人・未来人・超能力者の力が消えた一週間にしました)
ですから、長門は知恵以外は特別なとこは無いようにしたつもりです。
水曜日に文芸部室の会話を聞いていたのは、盗聴機でしたってことでwwww
A実は最初から決まっていた鶴屋さんの黒幕説。
原作通りに最後までやると飽きられるし。正直俺も書いてて飽きる。
原作では、犯人と言えるのが中田ぐらいしかいなかったので、この作品ではまさか、この人が!?みたいな人を犯人にしました。
ですから、古泉、古泉言ってた時は正直、おかしくて堪らなかったwwwwwwwwSOS団の絆は永久に不滅です。
Bまさかのみくる大活躍
影が薄い、不人気そんなみくるですが、俺は大好きです。ハルヒと長門の次に。
黒みくるも書いたり、しましたし、みくるは絶対にどこかで鍵になる人物にしようとして、伏線を仕組んでました。
どうだったでしょうか。みっみっみらくる みっくるんるん♪
CInterludeの挿入について
ハルヒワールドでの主役は、キョン。だから、キョンが目立つとこも作ろうと思い、書きました。
嘘です、長門喋らせたかっただけです。
Dプロットは最初から決めておく。『初志貫徹』
というわけで、今までお付き合いありがとうございました。これから、しばらくはまた管理人に戻り、たまに話を書くぐらいの頻度に戻ります。
最後にもう一度、wktkしてくれた方、支援してくれた方、ROMってた方、待ってくれた作者様、勿論読んでくれた皆様方、そして、プリンスレありがとうございました。
乙!!
GJwwwwww
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:46:50.30 ID:Jrfhcj5Z0
>>238 狂おしいほどグッジョブなんだぜ?
241 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:46:50.54 ID:cnWkHWrxO
うぉぉぉぉぉぉGJ!
素晴らしい作品をありがとう!
お疲れ様でした!
242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:47:30.45 ID:oR7xatRj0
乙!グッジョバ!
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:47:37.46 ID:ZpP/voja0
gj
すごくおもしろかった。
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:47:45.99 ID:GmBAT5vsO
乙!長いのにモチベーションを落とさず楽しめたよ
おかげで寝れなかったぜw
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:48:04.73 ID:mqIKZoXQ0
>>238 GJだあああああああああああああ
もう一回読み返してこよ
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:48:11.74 ID:RO89BGPi0
ぐううううううううっぢょおおおおおおぶ!!!!!!!
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:48:11.88 ID:nQtSpazrO
GJ!!!
本当にお疲れ様でっ!!
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:48:25.25 ID:ni1/3NUw0
乙!!!!!!GJ!!!!!
そしてお疲れ様でした
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:48:50.87 ID:cN5jDouG0
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:49:23.78 ID:0nKYqemA0
GJ!!!
だが、なぜハルヒの能力は制限されたんだ?
長門と古泉とみくるはいいとしてもちょっとそれだけは気にかかる
すげぇ・・・すごすぎる・・・GJ!
てかそのみくるの格付けは好きと言うのか?wwwwwww
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:49:25.48 ID:t93i1aoIO
今度こそ本当に乙!
GJ!
これからは次回作を考えつつまとめサイトを頑張れ!
253 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:49:55.85 ID:VBbnLbPW0
お疲れ様!!!そしてただただGJ!!!!!
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:50:16.58 ID:CV8KEiuQO
GJ!!!!!!!!!!
お疲れ様でした!!!!!!
乙!!GJ!!
できれば古泉とみくるのエピローグも見たかったぜwwwそれでも乙!!
256 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:50:37.43 ID:oR7xatRj0
1週間で240KBとかwwwやりすぎだwwww
俺は20日でやっと100KBちょいだぞwwww
257 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:50:47.59 ID:K0e8zH4UO
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:50:48.86 ID:F3m2nHL30
1週間お疲れさま!!
GJだったよ!!!
一週間もかけたのかw
10秒しか考えないでレスしてる俺とは大違いだな
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:50:57.77 ID:YLAP7W8C0
おつかれさま!
コイズムコイズムしすぎたwww
261 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:51:07.41 ID:cnWkHWrxO
フフフ…次の作品も待っていますよ…
あえて言おう。
次の作品wktk!!
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:51:13.06 ID:JVMLmn7j0
乙!!!
GJ!!!!!!
…と言うか、何気に消失直前の話…。
イイ!!!
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:52:18.28 ID:Dq+sbSsOO
お疲れ様
原作を参考にしたとしてもよくこの期間で書けたなw
感動した!
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:52:27.00 ID:0nKYqemA0
>>257 いやそれでいいんだが、ここまでプロット作っといてそれはないだろと思ったわけよ
266 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:52:44.76 ID:YLAP7W8C0
次の作品は涼宮ハルヒの嫉妬マスク・・・
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:53:54.08 ID:wzyZk3JIO
>>238 乙wwwwww一週間授業聞かずにここ見てたわwwwwww
268 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:54:20.13 ID:ZrYSAtVj0
乙!!
おかげでこの一週間
ずっとwktkしてられたYO。
・・・また期待している
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:54:53.30 ID:U7Ril3QyO
どうしてこんなにGJなんだぜ!?
マジで乙!
GGGGGGGGJ!素晴らしい作品をありがとう!
鶴屋さんバロスw
271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:56:27.76 ID:oR7xatRj0
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:57:11.79 ID:0nKYqemA0
273 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:57:27.43 ID:CV8KEiuQO
wktk!
274 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:57:32.92 ID:JVMLmn7j0
wktk
275 :
◆PHWwSU2JSI :2006/09/22(金) 23:57:53.22 ID:oR7xatRj0
276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:57:58.19 ID:nQtSpazrO
wktk!!!
277 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:58:20.62 ID:Jrfhcj5Z0
278 :
長門"有希"の憂鬱T ◆PHWwSU2JSI :2006/09/22(金) 23:58:55.06 ID:oR7xatRj0
第10話『長門"有希"の憂鬱T』
サンタクロースをいつまで信じていたか、
などというたわいも無い世間話にもならないくらいのどーでもいいような話だが、
それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかというと
これは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった。
小さい頃、俺は未来人・宇宙人・超能力者や、
またはそれに準ずる何かの存在を認めたかった。
だが、いつまで経っても俺の目の前には出てこない。
もしかしたら存在しないんじゃないかという、
俺の中の疑問の答えが「存在しない」になった頃、つまり俺が中学を卒業する頃には、
俺はもうテレビが組むようなUFO特番などはそう熱心に見なくなっていた。
いるワケねー……でもちょっとは居て欲しい、
みたいな最大公約数的な事を考えるくらいにまで成長したって事さ。
学校に着いた。
すると俺と他の俺と同じクラスの奴等はすぐさま体育館へと連行された。
例によって例のごとく、声が活き活きとしている校長が出す、
強制睡眠音波にやられかけている俺は、眠りそうになるのを必死に我慢する。
それにしても、なんでどこの学校の校長もこんなに長いこと話をするのが得意なんだ?
長い話をするのが好きなのか?
好きものこそ得意なれ、とかそんな感じのことわざが
あったような気がしないでもないが、校長はそれにあてはまるんだろうな。
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/22(金) 23:59:59.20 ID:CV8KEiuQO
支援
280 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:00:11.71 ID:CjWkLtii0
いつの間にか校長が出していた音波にやられ、
すっかり熟睡していた俺は閉会の言葉を聞いて起きた。
みんなが教室へ移動する。俺もそれに着いて行く。
教室に入ると担任らしき人物があいさつをした。
岡部という名前らしい。どうやらハンドボールに相当熱が入っているようだ。
次に、もはや社交辞令と言っても過言ではない自己紹介が始まった。
それぞれが自分の名前を言い、何の変哲も無いような趣味やらなんやらの一言を言って終わる。
もちろん俺もそれに乗じたさ。
こういうのってさりげなく緊張するよな。
ただ、自分の名前を言って、テキトーに何か言って、それで終わりだ。
俺の順番も終わり、後は聞くだけか。
極々一般常識から考えるとフツーな自己紹介を聞いていたら、
なんだか無機質な声が聞こえてきた。
「長門有希」
おいおい、名前だけかよ。無表情だしなんか無機質なやつだな。
しかし、次のセリフで俺の考えは180度変わったと言っていいだろう。
「ただの人間に興味はない。
異世界人、未来人、超能力者がいたら、わたしのところに来て」
それだけ言うと、すぐ席に座ってしまった。
……は?もしかしてこいつあれか?電波な人か?
偶然だったが、そいつは俺の左隣の席だったので
後の奴の自己紹介を聞くことなんかそっちのけで長門有希さんとやらに話しかける。
281 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:00:49.78 ID:CjWkLtii0
「なぁ……さっきの自己紹介のアレ、どこまで本気だったんだ?」
呼びかけの言葉で俺に気づいた長門有希は、首だけ俺の方を向いた。
「なに」
いや、だから異世界人がどうとか
「……あなたは異世界人……?」
……違うけどさ。
「……」
……いや、なんでもない。
「そう」
なぜかこいつからは感情が感じられないのだが……。
機械人間か、と思うくらいに……。
俺は結局それから1週間ほどは長門有希とは一言も喋らなかった。
あ、一度だけ消しゴム拾ってくれたな。
昼休みに一人で弁当を食うのも別に苦痛とまではいかないが、
さすがに寂しいものがあるので誰か友達と弁当を食う。
その友達と言うのは俺が中学のとき比較的仲が良かった国木田と、
たまたま席が近かった谷口という奴である。
長門有希の話題が出たのはその時である。
「お前、あいつが自己紹介をした直後、話しかけたな」
「あいつ……?あいつって誰だ?」
「長門有希、だ」
「あぁ。そうだな」
「何かワケも分からんうちに会話が終了してたろ」
あぁ、確かに言われて見ればそうだな。とりあえずうなずく。
282 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:01:26.27 ID:CjWkLtii0
「もしあいつに気があるんなら、悪いことは言わん、やめとけ」
「なんでだ?」
俺は気があるわけでもないのに聞き返す。
「あいつの無表情・無感情っぷりは常軌を逸しているからな」
「まぁ……確かにそうだな。それだけか?」
「あぁ……それだけだな」
それで俺の会話は終了した。あとは谷口と国木田の漫才みたいな談話を聞いて、
うなずいたり相槌うったり笑っていただけだ。
一方、俺が絶賛注目中の長門有希は、
見た目が(少なくとも俺の目には)可愛いと言うだけで何も知らない女子が寄ってきている。
しかし、その女子らも長門有希の無表情の餌食に……。
「ねぇ、昨日の9時からのドラマ見た?」
「見てない」
「何見てたの?」
「見てない」
「何してたの?」
「読書」
長門有希はただ弁当を食べたいだけなのにな。
あれじゃ逆に可哀想だ。
「趣味は何なの?」
「……静かにして」
「……」
話しかけていた女子らはシュン、としてしまった。
そりゃそうだろうな。本人達は良かれと思ってやったことだろう。
283 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:01:30.44 ID:gDgAH4rE0
支援
284 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:02:14.54 ID:MM9Kw+yyO
支援
285 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:02:19.97 ID:CjWkLtii0
さて、俺がその長門有希の存在の奇抜さについて知ったのはそれからしばらく後のことだった。
しかしながら、このころから徐々にそれの片鱗を見せていた。
俺は一刻も早くそれに気づくべきだったのだろうな。
と言うわけで片鱗その1。
休み時間に読む本が毎回変わる。
いったいどのくらいのスピードで読めば、
10分そこらの休み時間で一冊の本を読み終わるんだ?
俺の休み時間はたいてい、自分の席に座ったまま休めるという状況に甘んじて、
その名の通り机に突っ伏して休んでいるわけだが、
長門有希がページを捲くる音が相当な数聞こえる訳だ。結構なスピードで。
本当に読んでるのか?文庫本だぞ?ざっと見て200ページくらいはまずあるよな?
しかも読んでる本がいつもSF小説と来たもんだから、
休み時間のこいつの頭の中には宇宙が広がりまくってることだろうよ。
さらには俺が以前、休み時間に話しかけてみたところ、
読書中のため見事に無視されてしまった。
一言くらい返してくれてもいいのにな。
続いて、片鱗その2。
授業中は常に俺をじろじろ見ている。
やめてくれ、いったい俺が何をしたって言うんだ?
首ごと俺のほうを見ている。
しかし、俺が長門有希の方を振り向くと、すぐ前に向きなおす。
……なぜ?
試しに授業中、逆に俺がずっと見ていると、
長門有希の視線は時々、こっちを気にしているようにちょろっと見てくる。
そしてすぐさま視線を元の位置へと戻す。
いや、本当になんで俺を見ているんだろうか?
いっそ話しかけてくれればいいのにな。俺はビックリするだろうけど。
286 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:02:51.01 ID:CjWkLtii0
片鱗その3。
学校が終わるとすぐさまどこかへ行く。
いったいどこに言ってるんだろうか?
しかし俺には長門有希をストーカーする勇気など無いので、
どこに行ってるかは知らん。本人に聞こうにも話が切り出せない。
片鱗その4。
弁当の量がハンパ無く多い。
俺の弁当の2、3倍はあるぞ?
いったい体のどこにそんなにたくさん入るんだ?
ていうか、そんなにたくさん食ってるのに、
全然太る気配さえしないのはなんでだろうな。
片鱗その5。
俺が体育の時間に谷口の朝倉話を聞きながら観察した。
長門有希のブルマ姿は可愛い。
……じゃなくてだな、運動能力がズバ抜けて凄い。
見た感じひ弱そうなのにな。
……今度の体育の時間にもう一度じっくり観察せねば。
いや、別にやらしい目で見る気は無いぞ?……建前では、な。
まぁ、今では朝のあいさつくらいは交わすような仲(これが"仲"と言えるかは断言できん)に
なったのである。俺だけがなったつもりなだけかも知れんが。
そんなこんなでいつのまにやらもう5月。
ちなみに月が替わる直前、席替えをした。
俺は窓際の最後列から2番目というなかなかのポジショニングをゲットした。
……長門有希はその後ろだった。
287 :
【時のパズル】:2006/09/23(土) 00:03:10.68 ID:MwA0D1Vl0
みなさん沢山のGJありがとうございます。
最後の伏線、涼宮ハルヒの消失に繋がるための、長門の心境の変化。どうでしたか?
ちなみに、ハルヒが自分の力がなくなっていた理由は、インタールード1で言っていた。ハルヒが自分の力に自覚したことにあります。
だから、逆にあたしにはタイムリープ能力【だけ】が、使えるようになったと錯覚したわけです。
ハルヒは意外と乗せられ易いタイプなので、自分でコレで終わったと思ったから、タイムリープ能力も消えた。
これが、俺が考えてた理由です。わかりにくくてすいません。
288 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:03:36.39 ID:CjWkLtii0
すでに去ってしまったゴールデンウィークは、
家族とばあちゃん家に行くという、まさに平々凡々な結果に自分でもなぜか落胆し、
ゴールデンウィーク明けの1日目の登校の強制ハイキングロードを満喫しつつ
面白いことは無いかと必死になって探していた俺なのであった。
しかし、本当につまらないな。
何か面白いことが道端にでも落ちてないか……?
「よう、キョン」
谷口だ。
「お前、ゴールデンウィーク何した?」
……ここから先の会話は省かせてもらう。
なぜなら、俺の過ごし方と谷口の中身の浅い恋愛話を喋っていただけなので、
別にあってもなくてもどうでもいいのだ。
教室に入ると、長門有希はとっくに俺の隣の席で読書を始めており、
すでにもう1時間目の準備は済ませました、とでも言っているようだ。
……たぶん、俺は魔が差してしまったんだろうな。
朝から面白いことは無いか、とか考えていたからだ。
いつもの俺なら、「おはよう」とかあいさつして、
長門有希は無言でうなづくだけなのにな。
俺は長門有希にこんな質問を投げかけた。
「何読んでんだ?」
長門有希は本の背表紙をこちらに向け、本の上からチラッと俺の顔を見た。
どうやらまたもやSF小説のようだ。
いつもと違うのはそれが文庫本ではなく、ハードカバーの本だったということだった。
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:04:01.03 ID:bv24sUYcO
支援
290 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:04:06.91 ID:CjWkLtii0
面白い?
「ユニーク」
どういうとこが?
「全部」
……本が好きなんだな。
「わりと」
そうか……。
「……」
ほんの少しだけ間を空けて答える長門有希。
会話の途中で眼鏡の耳にかけるところに繋がる部分を少しだけ上に戻した。
なんか可愛らしいな、この眼鏡をひょい、と上げる仕草は。
そんな仕草にちょっとだけ俺はやられたんだろうな。
またもや言ってはならないような、そんな雰囲気の言葉を投げかけてしまった。
いや、投げたと言ったほうがいいか?
「案外、可愛いんだな」
「……そう」
長門有希の頬がほんの少し……そう、ほんの少しだけ、赤くなる。
それからだったか。
俺が長門有希のことを「長門」と呼び捨てにしだしたのは。
291 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:04:38.61 ID:CjWkLtii0
休み時間に谷口が話しかけてくる。
「おい、キョン。お前どんな魔法を使ったんだ?」
「魔法ってなんだ?」
「俺、あいつがあんな表情したの初めて見たぞ」
後ろからひょっこり国木田が現れた。
「昔からキョンは変な女が好きだからねぇ」
おい、誤解を招くようなことを言うな。長門が俺の後ろだって事を知らんのか。
そもそも、まだ好きじゃねぇ………と思う。
「そもそも、だ。お前にだけあいつがすこしずつ感情を開きつつあるのが気に食わん」
「そうか?」
「どちらかというとキョンも変な人間にカテゴライズされるからじゃないかな」
「知るか」
「あたしも聞きたいな」
朝倉涼子だ。このクラスの委員長で、谷口曰く、
「クラス一……いやッ!学年一だッ!!あのッ!美しさッ!」
谷口が本当にこんなことを喋ったのかどうかは覚えていないが、
形容するならこんな感じの勢いだった。息が荒くなるくらいだったな。
確かに朝倉は綺麗だ。学年一と言われて素直に納得が出来るからな。
「あたしがいくら話しかけても、心を開いてくれないの。何かコツでもあるの?」
解らん。
「ふーん。でもあたし安心しちゃった。長門さんもあんな表情するなんてね」
おいおい、長門を何かと勘違いしてないか?
「長門さんは長門さんよ」
肯定の意見しか出せないような言葉を朝倉が言う。
その直後岡部が入ってくる。授業だ。
292 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:05:31.58 ID:CjWkLtii0
授業中、やはり今日も今日とてこちらをジロジロ見つめてくる長門。
授業が終わった。なんとなく話しかけてみる。
「何か面白いことないか?」
「……」
無言だが確かに俺の話は聞いてくれてるようだ。
本は机に置いて、俺だけを見ている。なんか気恥ずかしい。
こいつは人やものを見るという点では物凄い能力を発揮するな。
「実は俺、小さい頃はまだ、長門が自己紹介で言ったようなやつらがいると信じてたんだ」
「……いる」
「そうかもな。実際には隠れてるだけで、探したら出てくるかもな」
「そう」
「いたら面白そうだよな」
「……ユニーク」
こんな感じで俺らの休み時間の会話は終わった。
もしかしたらこの会話がネタフリだったのかも知れないな。
次の授業中に長門が急に俺の服を引っ張った。
俺は椅子ごと後ろに倒れかけ、長門の机で頭を打った。
293 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:05:48.22 ID:eSfJKgrp0
支援はいるかい?
294 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:06:28.77 ID:CjWkLtii0
「痛ぇっ!」
俺は立ち上がり、長門のほうを見る。
「……強すぎた……ごめんなさい」
「……まぁ、いい」
「……いいこと」
「それがどうしたんだ?」
「……思いついた」
長門は俺を見上げる形で言った。
「部活を……つくる」
俺は黙って席に座る。
そろそろ先生が何か言いたそうだった気がするからな。
「そうか」
「そう」
授業が終わるなり、長門は俺に「着いて来て」といって俺を教室から連れ出した。
階段の踊り場に着く。ここらしいな。
「わたしたちで部活をつくる」
なんでだ?
「あなたが退屈そうにしていたから」
それだけか?
「……わたしも退屈」
……そうか。
支援団体
296 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:07:14.09 ID:d/8xd52x0
情報統合支援隊
297 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:07:34.57 ID:Dyigwdn2O
支援
298 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:07:43.12 ID:MM9Kw+yyO
支援
299 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:08:11.47 ID:o/L6pBZn0
300 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:09:38.86 ID:Dyigwdn2O
支援
301 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:09:46.54 ID:CjWkLtii0
ばいさるくらったwww
――――――――――――――――
―――昼休み。
俺はまた「着いて来て」などと言われてほいほい着いていった。
着いたのは文芸部室。
「ここはわたしが文芸部として使っている部室」
「ここを使うのか?」
「そう」
ていうか、長門、お前文芸部員だったのか。
「他に部員は?」
「いない」
「……そうか」
結局いつの間にか俺もその新しい部活の部員になってるようだ。
仕方が無いか。俺が望んだことを長門は叶えてくれようとしているのである。
―――放課後。
俺は今度は「先に行ってて」と言われ、一人寂しく教室で待っている状態だ。
何もすることが無いので本でも読もう。
……面白そうな本……っと。
302 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:10:16.30 ID:d/8xd52x0
支援
303 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:10:17.58 ID:CjWkLtii0
―――!俺の直感にピンと来た。
この本は……なんだろう、なぜか不思議な感じがする本だ。
題名は……「ハイペリオン」……か……。
パララ、とページを捲くってみる。
何かがひらりと地面に落ちた。
なんだろう、何かの紙か?……栞だ。
何か文字が書いてある。
『わたしはキョンがすき』
なんだこりゃ。……イタズラか?
俺は地面に落ちた栞を拾い――――
改変される以前の記憶を取り戻した。
……なぜだ?
有希はなぜこんな世界を望んだんだ?
有希がまるでハルヒみたいじゃねぇか。
……そういうことか?!
304 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:10:48.86 ID:CjWkLtii0
有希は「涼宮ハルヒは存在させる」と言った。
それは、自分の中に存在させる……というか、
有希がハルヒになる、とでも言ったほうがいいのか?
つまりだな、有希はハルヒの能力を手に入れた代わりに、
インターフェイスとしての力を失ったということだ。
記憶も無いらしい。
……とりあえずこの世界では長門有希は一人しか居ないわけだから、
「有希」じゃなくて「長門」と呼ぶか。
なんかそっちのほうがしっくり来るしな。
……で、なんで栞で記憶を取り戻せたんだ?
元の世界の長門の仕業か?
……そうか。そうだったのか。
長門は最後に「し、お、り」と言ったのか。
でもなんで栞なんだ?
俺はそれを思い出すと同時に長門との別れをも思い出す。
涙が出てくる。……長門……。
しかし、栞が入っているということは誰かの読みかけということなので、(たぶん有希……だな)
栞を元の位置に戻し、本を閉じる。
その本を本棚に直し、長机にかけてあるパイプ椅子に腰をかけると、
部室に何も無い事が妙に懐かしく感じられた。
305 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:11:00.94 ID:Dyigwdn2O
支援
306 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:11:26.66 ID:CjWkLtii0
俺は窓辺に目をやる。
元の世界の長門がいつも本を読んでいた場所だ。
今は椅子すら置いていない。
あそこで本を読んでいる長門の姿はもう見れないのか……?
俺はまた少し涙ぐんだが、足音が聞こえたのであわてて袖で拭く。
どうやらこの世界ではまだ何も知らないフリをしていたほうが良いようだ。
そっちの方が都合良さそうだし、そもそも、
真実を言っても誰も振り向いてくれないだろう。
振り向いてくれるのは……古泉くらいか。
朝比奈さんは……。
いや、いいんだよ。あのお方は萌え専用のSOS団マスコットキャラなのだ。
それだけで十分だ。文句言う奴は俺が殴ってやる。
長門が朝比奈さんを連れてやってくる。
「……誰だ?その人?」
朝比奈さんではないか。
まさか長門が連れてくるとはな。
朝比奈さんはすごく怯えている。
307 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:11:41.44 ID:d/8xd52x0
支援
308 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:11:58.39 ID:CjWkLtii0
「朝比奈みくる」
「なぜ連れてきた?」
「可愛いから」
「……は?」
「わたしは萌えというものを重要視している」
「……え?」
「いわゆる一つの萌え要素。朝比奈みくるのこの顔。胸。どれをとっても萌えとしか思えない」
うむ……しかしだな、とうとうお前の口からそんな言葉が聞ける時代になったんだな。
俺は心底驚いた。
長門が急に萌えとか言い出した。そして次に開いた口から出た言葉は、
「……うらやましい」
長門は自分の胸と見比べて、
何を思ったか、朝比奈さんの、それはもう大きな胸を背後から揉み始めた。
「うきゃっ!や、やめてください!長門さん!」
「……やめない」
「きゃぁああ〜っ!」
「……うらやましい」
俺はというと無言でただ、立ち尽くしているだけだった。
長門、ごめん。なんか鼻血出そうだ。
「そのへんにしてやれ、長門」
俺は長門を朝比奈さんから引き剥がす。
「あなたもどう」
「ひぐっ?!」
朝比奈さんが俺から30cmほど遠さがる。
この反応、懐かしいな。
「遠慮しとく」
どうやら安心したようだ。
309 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:12:21.76 ID:bv24sUYcO
支援
310 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:12:29.07 ID:CjWkLtii0
「あなたはこの部活に入部するべき」
「えぇ……?」
「朝比奈さんは何か部活をもうやってるんじゃないか?長門」
確か書道部……だったか。
「えぇ、わたしは書道部に所属……って……あ……」
なんだろうか、この「あ」は。
「分かりました……書道部は抜けてこの部活に入部します」
いったい何が分かったんだろうか。
「いいんですか?まだ名前も決まってないような部活ですよ?」
「……名前なら今決めた」
「……どんな名前だ?」
俺と朝比奈さんのゴクリ、と唾を飲む音が聞こえる……気がする。
「その名も」
「KYON団」
……はぁ?
なぜ俺の名前なんだ?
そしてこれはネーミングセンスの無さが光りすぎている。
なぜKYON団か、という内容の疑問を有希に投げつけると、
長門は淡々と説明してくれた。
311 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:12:33.56 ID:Dyigwdn2O
支援
312 :
『長門"有希"の憂鬱T』 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:13:01.52 ID:CjWkLtii0
K キョンとわたしたちが
Y 陽気で楽しい毎日を
O 送り続けるための
N 長門有希の
団
つまり、俺のためということもあってKYON団か。笑えん。
活動内容は未定らしい。
たぶん、宇宙人やらなんやらと遊びに行くことだろうな。
……あれ?そういえば長門って自己紹介の時、
宇宙人じゃなくて異世界人って言ったよな……?
……それにしても本当にネーミングセンス無いんだもんな。
なんだよ。キョン団って。
第10話『長門"有希"の憂鬱T』〜終〜
313 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:13:12.02 ID:bv24sUYcO
支援
314 :
第10話次回予告 ◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:13:32.20 ID:CjWkLtii0
キョン「次回予告!
謎の転校生までもを引き込むKYON団!」(古泉かよ)
有希「これがわたしの望んだ世界」
キョン「お前、ハルヒに憧れてたのか?」
有希「……教えない」
キョン「それにしても何か忘れているような……」
有希「思い出さないでいい」
キョン「……なんだろうか」
有希「第11話『長門"有希"の憂鬱U』」
キョン「乞うご期待!」
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:14:22.21 ID:Dyigwdn2O
支援
316 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:14:32.10 ID:mtJEqtkx0
317 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:15:03.20 ID:JtFmP3ETO
おKwwww
前回までのシリアスさが飛んでったwwww
318 :
◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:15:21.15 ID:CjWkLtii0
続いてこの話の廃案を。
けっこう頑張って書いたのに、どうやってもつまらんから廃案にした。
319 :
◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:15:58.98 ID:CjWkLtii0
10話 If Story
〜もしも長門がハルヒっぽくじゃなく、キョンがハルヒっぽくなっていたら〜
サンタクロースをいつまで信じていたか、
などというたわいも無い世間話にもならないくらいのどーでもいいような話だが、
それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかというと
これは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった。
……なんつーのは嘘ピョンで、
俺は今でもサンタの存在は信じているし、実際に世界の各国にいるだろうと思う。
この不況な日本のサンタは、きっと日本有数の資本家だろうが、そんな金持ちはそうそういない。
もしそんな金持ちだとしたら世間でも少々騒がれているだろう。
だが、そんな人物は今、騒がれていない。
では、なぜそんなに子供へのプレゼントを持っているのだろうか。
それは魔法でプレゼントを作っているからなのだ。
しかも、ソリをトナカイの引かせて空を飛ぶと来たからには、
魔法でも使えなければならないだろう。
つまり、だ。
俺が声を大にして主張したい説は『サンタクロースは魔法使い説』だ。
しかし―――それを確認しようにも、もう出来ないのだ。
サンタは俺の説が当たっていたので、来なくなったようだ。
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:16:41.26 ID:Dyigwdn2O
乙!
なんか俺が考えてた作品と微妙に被ってて驚いた。
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:17:23.61 ID:d/8xd52x0
支援
322 :
◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:17:41.36 ID:CjWkLtii0
そう、あれは俺がまだ小学校の5年生の時。
俺はこの説を自ら考え、そしてそれを確認しようと
夜中まで待っていたわけだが、全然来ない。
とうとう夜は明け、窓から日が差してきた。
朝だ。サンタは来なかった。
俺はそのとき悟った。サンタは真実を知ってしまった子供の前ではその姿を現さない、と。
魔法使いサンタは真相を暴かれたくないのだ。
さて、そんな俺だが未来人・宇宙人・超能力者の類の奴等の存在も認めているか、
と問われたならば、俺は嫌々ながらも「ノー」と答えざるを得ないだろう。
なぜかって?それはそいつらの存在を証明するものが一切無いからだ。
サンタクロースにはある。彼は俺や友達たちにプレゼントを渡してくれた。
しかしその点、未来人・宇宙人・超能力者はどうだろうか?
未来人は?
……何にも情報が無い。よって存在せず。
宇宙人は?
……テレビの特番では本物のように表現してあるが、
あれらは全てニセ者だ。もし本物ならばテレビに映るようなことはしないだろう。
超能力者……も宇宙人と似たような理由で認めん。
これらの仮定により、俺の脳内会議では最終結論としては
「未来人・宇宙人・超能力者は存在しない」と決まった。
だが、その存在を認めていないながらも、
俺はふら〜っと未来人・宇宙人・超能力者かまたはそれらに準ずる何者かが、
目の前に現れてくれないかと切に願う。
323 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:18:52.81 ID:Dyigwdn2O
今日は忙しいwww
支援
324 :
◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:19:09.81 ID:CjWkLtii0
いやな、これでも随分大人になったほうだと思うぞ?
俺は小学生まではまるでアイツのように日夜どこかに隠れてやしないか、と探し回ったものだ。
ここいら一帯にはそれらしい落し物や傷跡は無かった。ちくしょう。
……?アイツ?アイツって……誰だ?
まぁ、いい。そのうち分かるだろう。
そんなことを頭の片隅でぼんやりと考えているうちに、高校についた。
こんなに立地条件が悪いながらも、それなりに人は来るんだな。
俺は、ほどよい緊張とともに活き活きとして喋っている校長の話を聞き流しつつ、考えていた。
さすがにここまで人が多いと、一人ずつくらいは未来人・宇宙人・超能力者がいるんじゃないか?
1年だけではない。2、3年も含めてだ。
そう考えるとすこしは希望がわいてくる。
だが、世界はそんなに甘くないことは分かりきっている。
中学のときは、せっかく一人ずつ訊いて回ったのに、
未来人・宇宙人・超能力者などは一人もいなかった。
教室へと集団でぞろぞろと移動する。
ほう、ここが俺のクラスか。お、よく見たら国木田もいるじゃねぇか。
そこで担任らしき教師が入ってくる。
……名前は岡部らしい。
なんかハンドボールがなんやかんや言っていたが、よく分からん。
325 :
◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:19:45.34 ID:CjWkLtii0
自己紹介だ。そろそろ俺の番がやってくる。
「――中学出身の―――だ。キョンとでも呼んでくれ。」
俺はみんなと同じような、あたかも一般人のような自己紹介をする。
……と思うか?俺は続けて言ってやった。
「ただの人間には興味はあんまり無い。
宇宙人、未来人、超能力者がいたら、俺のところに来てくれ。以上」
クラス中の人間が、まるで豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしている。
……このクラスには、いないか……。
と、思ったが、無表情で俺を見続ける奴がいた。
もしかして、と思い、立ったままそいつを見続ける。
目の端に写った担任がそわそわしてきたので、俺は座った。
そしてそいつの番になった。
そいつは席を立つ。
「長門有希」
それだけ言い、席にすわる。
こいつ……できる……ッ!
すまん……続かん
最初はこの案だったんだが、どうもやりにくくて。
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:20:20.79 ID:Dyigwdn2O
支援
327 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:20:42.30 ID:d/8xd52x0
支援支援
328 :
◆PHWwSU2JSI :2006/09/23(土) 00:21:06.60 ID:CjWkLtii0
ちなみに座席表をうんぬん見て考えてたら思いついた。
1年5組からハルヒがいなくなって長門が入ったらキョンの隣じゃないか、と。そっからは早かった
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:21:44.39 ID:Dyigwdn2O
乙。
携帯が熱々だ。
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:23:49.99 ID:JtFmP3ETO
乙ww
正直キョンがハルヒはいまいちだなwwww
331 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:26:04.61 ID:CjWkLtii0
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:28:24.21 ID:JtFmP3ETO
ただ長門のやつにはこっからの展開に期待してるww
うまく展開したら俺はお前を神と呼びますぜwwww
333 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:35:52.23 ID:fvQxw9/l0
うむ・・・
キョンがハルヒだったら
たんなる痛いヤツでしかねぇなwwww
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:36:09.04 ID:hxp64KcmO
乙!
保守
「ただの人間には興味はあんまり無い。
宇宙人、未来人、超能力者がいたら、俺のところに来てくれ。以上」
シーン…………
ちょwww外したwwwww視線がいてぇwwwwwwwwww
「……ごめん。気にしないでくれ。あは…あっはっはっはっは……」
こんな感じか?
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:42:03.65 ID:CjWkLtii0
wiki……わかんねぇ……削除って管理人さんしかできないのか?
#またまたまた告白しない話です。今回はちょっと甘めの日常系です。
#ちょっと欲張りすぎて12レスもの長さになっちゃいましたが、お許しを。
月曜日の憂鬱といえば、まぁ朝起きた瞬間が最高だろう。その後はそうでもなかったりする。ハイキングコースを歩く時間になれば、さて今週は何が起こるのかと逆に期待している自分を発見するからだ。
まあこれは先週見つかった宝物の影響もあるのだろう。しかし、恋の感覚を忘れるとは、俺もどうにかしちまってたんだろうね。
しかも、相手がハルヒだったなんてのは笑えない冗談だな。谷口あたりが聞いたらなんていうかね。まあびっくり仰天することは間違いないだろうが。
教室の扉を空けると、ハルヒがこっちむいてにやりと笑った。恥ずかしくて反射的に教室の扉を閉めたくなる。なんでハルヒから逃げたくなるんだろうか。
そんなことを考えながらも、自席へ向かう。ハルヒの視線が熱く感じられて困る。
「おはよ、キョン」ハルヒが笑顔であいさつしてくる。その視線が、俺の宝物を刺激して身をひるがえしたくなる。
「よう。ハルヒ」ハルヒと視線を会わせるのが恥ずかしい。無理やり視線を会わせると、きらきらと光る水面のような瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚える。あわてて視線を逸らした。
「照れてるんでしょ?」ハルヒがそっと耳打ちした。「なんか恥ずかしいんでしょ?」
「なんで分かるんだ?」俺は驚いてハルヒに聞いた。
「バレバレだから」ハルヒは得意げに言う。「あたしにも覚えがあるしね」
「すまん」
「謝る必要はないわよ」ハルヒはやさしい微笑みを浮かべている。「なんでか分からないけど、意識しすぎちゃうのよね」
「ま、なるべく意識し過ぎないようにしてるつもりなんだがな」
「意識するあまりツンツンしちゃうツンデレもあるらしいわよ」
「へえ」
「二人っきりだと逆につっけんどんになるってパターンね」
「ほう」
「いまのキョンね」
「勘弁してくれよ」耳が痛いぜ。
「そうじゃなくていまの状態を正しく認識すべきなの」ハルヒの声が甘く聞こえてしまう。「間違った認識は間違った行動を生むの」
「確かにそうだな」
「間違った行動は、いい結果にならないの。悪い結果がほしい?」
「いや」
「だったら落ち着いて考えなさい」ハルヒは真面目な顔で言う。「相談には乗るから」
「わかった」
何か思いつけば、授業中であろうともシャーペンで俺を呼ぶハルヒだが、今日はおとなしかった。あえてそうしているのかもしれない。
しっかり休み時間はどこかにいってしまい、それまで感じていなかったはずの寂しさと向き合う羽目になってしまった。これも宝物の副産物か。
昼休みに国木田や谷口と弁当を囲んだが、俺の異変は奴らにまで届いていた。
「どうしたキョンよ。涼宮がいねえとさびしいと思うようになっちまったか?」谷口がウィンナーを箸でつまみながら言った。
「なにいってんだ」
「そうだよ。それは前からで今に始まったことじゃないよ」国木田は笑顔でろくでもないことをいいやがる。
「いやあキョンもいよいよ涼宮を意識しだしたとはねえ」
「そうじゃねえって」
「ま、隠さなくても判るぜえ。授業終わった後、涼宮のいない席を見て、ため息ついてんの俺は見逃してねえぞ」
見逃せよ、それぐらい。タケノコを必要以上に咀嚼してごまかしを図る。
「いいじゃん、涼宮さんはキョンには優しいんだし、お似合いだよ、最初から」
「そうそう。付き合っちまえばいいんだよ、お前らはよ」谷口がいかにも楽しそうにいう。「お似合いだぜ」
「単にあの猛獣に鈴をつけてこいと言っているように聞こえるぜ」
二人のニヤニヤ笑いだけが残った。ああ、やってらんねえ。
「ふうん、そんなことがあったの」ハルヒは夕陽に顔を赤く染めていた。
「ああ、恥ずかしいったらありゃしねえぜ」俺はぼんやりとハルヒを見つめている。
二人、部活の帰り道だ。いや今日は全員集まった。そしてなぜか俺はハルヒを家まで送り届けるべく、一緒に歩いている。
そういう決め事をした覚えはない。ただあのときからそういうルールになったようだ。もっとも分かったのは、ハルヒにキッと睨まれてからだが。
「ま、それはそれでいいんじゃないの?」
「どこが」
「なんだかんだで認めてるってことでしょ。それはそれで流しとけばいいじゃない」
「そりゃそうなんだがな。落ちつかねえのさ」
「あたしがいてもいなくても落ちつかないのは同じでしょう?」ハルヒは面白そうに笑う。「ま、この一週間過ぎればキョンも落ち着くって」
「ならいいがな」
火曜日が月曜日と違うのは自分がわりと元気なことだろうか。授業にもそれなりに身が入るし、頭の働きも冴えていると自分では思う。
ハルヒを意識し過ぎることはなくなった。どう折り合いをつけたのか自分でも判らない。単に一晩寝たら大丈夫になった。単純だな、俺は。
珍しく3時間目の休み時間にハルヒが席にいる。
「ふーん、悪くなさそうねえ」ハルヒは人の顔をじろじろみながら言った。「大分緊張がとれてるみたいね」
「まあな」
「割りと早いわね。あたしなんか結構かかったってのに」
「そうか?」
「そう。夢見るまでね」ハルヒはあわてて打ち消した。「あ、や、なんでもない」
閉鎖空間前のごたごたを言っているのだろうか。まああれは夢ということになっていて、自分でも夢なのか現実なのか結論は出せていない。古泉によれば、この世界はあのとき出来た可能性もあるらしい。そんな気がしなくもないな。
「あ、そうだ。今日、昼休み部室でミーティングやるから」ハルヒは少し大きめの声でいう。
「なんの?」
「夏に向けて」ハルヒはしれっという。「なんかイベントやりましょう」
「わかった」また急すぎる話だが、まあハルヒらしいといえばそれまでだ。それに嫌はねえしな。
昼休み。国木田と谷口にミーティングがあるから弁当は部室で食うと声をかける。
二人はなに勘ぐる事もなく、判ったと返事をした。
ハルヒの姿はすでにない。購買でパンでも買ってるのだろう。
部室に行くとなぜか火にかけたヤカンを眺めているハルヒしかいなかった。
俺は長テーブルの指定席に弁当をおいた。その向かい、いつもは古泉がすわっている側に、可愛い弁当箱がおかれている。ハルヒのだろうか。
「なにやってんだ?」俺はヤカンを眺め続けるハルヒに言った。
「ああ、温度見てたのよ」良く見ればヤカンには温度計が差してあった。「もういいわ」そういって火を止めた。
ハルヒは手際よくポットの中身を流しに空けて、軽く水で洗う。そんなハルヒの姿を見たことがないので、軽くおどろき、そして見とれていた。
ハルヒはタオルで手を拭くと、急須に茶葉を入れた。やかんを軽く持ち上げ、ゆっくりと湯を注ぎ込んだ。
「手慣れたもんだな」
「みくるちゃんがいつもやってるの見てるからね。難しいもんじゃないし」
「たいしたもんだよ、おまえは」
「お茶の準備も出来たし、そろそろ食べましょ」
ハルヒは湯飲みを二つ長テーブルにおくと、急須からお茶を注いだ。よい茶の香りが立ちのぼった。
「ところでみんなは?」
「こないわよ。言ってないし」
「ミーティングじゃないのか?」
「あ、それ単なる言い訳」ハルヒは湯飲みを俺の側に置きながら言う。「二人でお弁当食べましょなんて、あそこじゃ恥ずかしくて言えないわよ」
「そりゃそうだな」思わず笑ってしまう。
「ま、屋上とかで食べるのもアリらしいけどね」
「いまの時期はいいかもな」
「恥ずかしすぎるって」ハルヒは湯飲みをもって俺の向かいに座った。弁当の包みを解き始める。
「ま、適当な言い訳でっちあげて、たまにはそうするのもいいんじゃねえか?」
「まったく恥ずかしいことを平気で言うのね」ハルヒは顔を赤らめながら言う。「気がしれないわ」
ハルヒは弁当の蓋を空けた。ほう鳥の唐揚げがうまそうだな。それを俺の一口コロッケと換えないか?
「いいわよ」ハルヒは箸で鳥の唐揚げをつまんだ。「ほれ、あーん」
「恥ずかしいことは平気でするんだな」ハルヒが満面の笑顔で差し出す鳥の唐揚げを見つめながら言う。まあ誰も見てないし、断る理由もないしな。俺は鳥の唐揚げにかぶりついた。うまい。素直にそう思う。
「コロッケちょうだい」ハルヒが甘えるように言う。顔真っ赤だぞ。
一口コロッケを箸でつまんでハルヒに差し出した。おずおずといった感じでハルヒは身を乗り出し、それを口にした。
「おいしいわね、これ」
「昨日の晩の残りというところに切なさはあるがな。唐揚げは今朝揚げたのか?」
「さすがにそんな時間ないわよ」ハルヒはご飯を口に運んでいる。「昨日よ、昨日。ま、残り物ではあったけどね」
そんなこんなでお互いに餌付けしあっていると、弁当はあっけなく空になった。
食った気がしないのだが、違う意味でお腹一杯だな。
ハルヒのいれたお茶をすする。ちょうど良い温度で非常にまろやかでおいしかった。
週の真ん中水曜日。一言でいえば月曜日についで憂鬱な日に思える。いっそ水曜日と土日を休みにするってのはどうかね。随分ゆとりが生まれると思うぞ。
「そうねえ」と昨日の帰り道ハルヒはすこし考えるような目をした。「でも、あたしは学校あってもいいと思うけど」
「ほう。その心は?」
「キョンに会えるからってなんでもない」あわてて否定する姿が可愛いね。
「まあ水曜日休みになれば、部活も減るしな。団長としてはそれも痛いよな」
「そうよ、そうなのよ」と必要以上にうなずくハルヒが記憶に残っている。
「おーい、キョンあぶねえぞ」谷口ののんびりした声に我に返った。
今日の体育はプールの清掃だった。水不足の影響でプール開きが遅れていたが、来週からに開始できる見込みになった。
そこでたまたま体育の授業があった我がクラスにプール掃除が回ってきた。昼飯あとの腹ごなしにはちょうどいいね。
突然、冷たい水を浴びてしまう。全身びしょぬれだ。まわりを見ると、俺以外、誰もいない。振り返ればデッキブラシをもってにやにや笑っている谷口と目が合った。谷口の隣にいる国木田は、あっけにとられたような表情を浮かべ、俺の背後を見ている。
振り返ると、水道ホースをもったハルヒがいた。ニヤニヤ笑っているころを見ると、故意か。故意の仕業か。
「何回も涼宮さん叫んでたのに、キョンがどかないから」国木田によれば俺のせいらしい。「涼宮さん、怒っちゃって」
「バカキョン、何度言えば聞こえんのよ!!!」ハルヒは大口を開けて叫んでいる。「まったくだらしないわね、早く着替えてらっしゃい!」
ハルヒは体操服に裸足だった。なんかマニアックな趣があるねなどと思っている場合ではない。言われた通り濡れ鼠であり、いくら季節が夏になろうとしている今でも油断していれば風邪を引きかねない。とっとと着替えるか。
俺は谷口にデッキブラシを預けると、着替えるためにプールを後にした。
ふと、空をみると入道雲が出ていた。もうすぐ夏だな。
体操着袋にはこんなこともあろうかと、スポーツタオルを一本忍ばせておいてある。ずぶぬれとなった体操服の上を脱ぐ。ついでにTシャツも脱ぐ。
ぬれたものをまず体操着袋に仕舞ったあと、体操服の下も仕舞う。こっちは濡れてない。つまりパンツも無事だった。
スポーツタオルで体を拭き、カッターシャツを素肌の上に羽織る。なんか気持ち悪いのだが、Tシャツの替えはないのでしょうがない。
着替えている内にチャイムがなり、みなぞろぞろ戻ってきた。やられたねと何人ものクラスメートに慰めの言葉をかけられた。さすがに相手が相手だけにみな俺に同情してくれる。ま、俺が悪いんだがな。
女子も返ってきた。ハルヒは仏頂面で戻ってきた。なんか言われたのかもしれないが、言われなくてもそういう表情をしてるかもしれない。
「めずらしく、涼宮さんしょげてたの」とある女子が言ってきた。「だから、あんまり言わないであげてね」
ほう、珍しいな。まずしょげてるハルヒ。そしてハルヒをかばう女子たちという構図が。
まあなんだかんだいってハルヒもある程度のコミュニケーションを取るようになってきたのだろう。いい傾向だ。
しかし、ハルヒはそれ以降、なにもしゃべらなかった。
部活もハルヒはおとなしくしていた。なにも話さず、PCでサイト巡回を続けている。
それが珍しいという訳ではないから、誰も気にしていない。
俺は古泉と人生ゲームに興じ、大差をつけて勝利した。はは、いかなるボードゲームでも古泉になら勝てる自信があるぜ。
長門が本をぱたりと閉じれば本日の活動も終わりだ。集団下校となる。
ハルヒはいつものように朝比奈さんを相手におしゃべりをしているし、別に気にはしていないように見えた。最後に俺を睨みつけることも忘れていない。
二人の帰り道、雰囲気はいつもと変わらない。
「なんか面白いもんあったか?」
ハルヒは今日見つけたという人体発火現象についてぺらぺらと説明を始めた。いつものハルヒであり、しばし名調子に聞き惚れた。
途中で、鼻がむずむずして俺はおおきなくしゃみをしてしまった。ハルヒが驚いたような顔で見つめる。
「だ、大丈夫?」
「ああ、誰か噂してんだろ」
「それならいいけど、今日はあたたかくして早めに寝なさいね」
「そうするよ。・・・・・・今日は悪かったな」
「ふん、なんのことかしらね」そういいながらハルヒは華やかな笑顔を見せた。
「あれは俺の不注意だったからな」
「ああ、あれ?そうよ。みんな男子がだらけてるってぶつぶついってたから、ちょうどいい薬だって、女の子は喜んでたわ」
「とんだケガの功名ってか」
「そうね」ハルヒの顔がふと真剣になった。「でもホント、今日は早く寝なさいね」
「判ってるって」
「風邪でも引いたら、死刑だからね」ハルヒは矛盾したことを言って笑った。
俺にとって実は木曜日が一番憂鬱かもしれない。一番週の中で精神的になにか重いのが木曜日だからだ。
今日は朝から体が重かった。窓開けて寝ちまったんで体が冷えたのかと思っていたし、朝飯食えばなんでもなくなったので、学校にやってきた。
調子が悪くなったのは、2時間目の休み時間だ。ハルヒがそれを指摘した。
「なんか、あんた顔色悪そうに見えるけど?」
「確かに、なんか調子わるんだよな」
ハルヒはなんのためらいもなく、俺の額に手を当てた。ハルヒの大きな目がさらに大きくなって、こんなことを叫んでいた。
「ちょっとすごい熱!」
それからは大騒ぎだった。むやみやたらと騒ぐな、ハルヒと思ったが、逆の立場だったら俺も騒いでしまうかもしれんな。
結果、俺は保健室の布団で寝ることになった。熱は37℃台後半。もうちょっと上がれば不思議と体が動くのだが、このくらいが一番俺にとって厳しい。
とりあえず風邪薬を飲んでおとなしくしてなさいというのが保健医の見立てであり、おとなしくそれに従っているところだ。
うつらうつらしていると、幾何図形のような変な夢を見た。何度も何度も同じ図形を見ては目覚める。悪夢だった。
チャイムの音で目覚めると、ぼんやりと光る白いカーテンが目に入った。誰かもいないようで、時計を見れば昼休みになっている。熱が下がったように感じた。
まあここで動けばまたダウンしかねないこと間違いないだろうし、あと2時間もすれば授業は終わる。それから帰ってもいいだろう。
保健室の扉が静かに開く音がした。誰かが部屋に入ってきた。カーテンがゆっくり空けられた。ハルヒだった。
「あら、起きてたの」
「チャイムで目が覚めた」
「ふうん」
「その手にもってるのはなんだ?」
「あんたのお弁当。そんでお茶買ってきたわ」
「おまえはなんか食べたのか?」
「あんたのお弁当、半分もらおうかと思ってね」
「起きなくてもいいわよ、食べさせてあげるから」
以前なら断固拒否するところではあるが、今の俺にはそれも受け入れる用意がある。おとなしく俺は寝たままでいる。まあ気恥ずかしいがな。
ハルヒはベッドの脇の丸いすに座った。
お茶2本をサイドテーブルに置き、ひざの上に弁当を広げる、おかずを箸でつまむと、俺の口までもってきた。「はい、あーんして」
ハルヒは自分の分を口にいれると、今度はご飯を俺に食べさせた。うーん、脇からみると雛に餌をやる親鳥のようだな、ハルヒは。
弁当はあっという間に空になった。今の俺には半分で十分だった。
「お茶も飲む?」ハルヒが聞いた。俺gうなずくと満足そうにハルヒはペットボトルのキャップを空ける。
「口移し?自分で飲む?」
「自分で飲むよ。風邪移るぞ」
「箸一本だから移ったかもね。」
「考えろよ。おまえらしくもない」
「えー看病してもらえるんじゃないのぉ?」ハルヒがわざとらしい口調で言う。「大丈夫よ。あたし箸なめたりしてないから」
そういう問題じゃねえだろうと思いつつ、ハルヒからペットボトルを受け取った。寝たままはさすがに飲めないので、体を起こしてペットボトルのお茶を飲む。
とても喉が乾いていたことに気づく。あっと言う間にお茶を飲み干した。
「もう一本あるから大丈夫よ」ハルヒは優しい笑顔でいう。
「すまんな。ありがとう」
「いいってことよ」ハルヒはあわてて手を振る。「団長の責務だしね」
「それだけ?」
「ばーか」ハルヒは視線をそらしながらいう。「分かってる癖に」
「言ってもいなし、言われてもないぞ」
「そういうのはね、時と場所を選ばないとだめなの」ハルヒは妙に熱っぽい目で俺を見た。まさか、もう移っちゃったんじゃねえだろうな。「それは今じゃないの」
「そうか」
「ま、いまは体を休めて早く元気になんなさーい」ハルヒはにぎやかな笑顔を浮かべていった。「あとで迎えに来るから、それまで寝てなさい」
「ああ」
「じゃね」
俺は体をを横たえ目を閉じた。そのままあっけなく眠りに落ちた。
金曜日は一週間で一番華やかな日だと思う。単純に明日から休みと思えば頑張れるというものだ。だから、クラスの皆もなにか違う印象を受ける。
昨日はダウンした俺だが、今日は元気100倍である。昨日はハルヒに付き添われて帰った俺だがな。心配そうなハルヒの顔がいまでも瞼に焼き付いている。
いまは放課後であり、SOS団の部室に俺はいる。ハルヒは掃除当番であるため、まだ部室には現われていない。
「元気になられたのですね」古泉が笑顔を見せた。といっても、こいつの場合は裏でなにを考えているのか分からないが。「いや、よかった」
「すまんな。心配かけて」
「いやはや涼宮さんが青い顔で僕のところにやってきて『今日の部活ないから』といったときは肝を冷やしましたよ」
「そうなのか」
「わざわざ僕の教室まできましたからね。どうも朝比奈さんや長門さんのところにも行ったようですよ」
「それは知らなかったな」
「もしあなたが入院でもしようものなら、どうなることやらと思いましたよ」
「そんなに大騒ぎすることはないだろう?」
「いえいえ、もしあなたが目覚めないとすれば、きっと涼宮さんは寝袋持参であなたのところに駆けつけますよ」
「まさか」
古泉はなにかいいたげであったが、爆音と共に開いた扉からハルヒが入ってきたことで、言葉を飲み込んだようだった。
ハルヒは凜としている。心持ちあごをあげ、気の強そうな顔をさらに強調しているようだ。胸を張りしっかりとした足取りで団長席に向かう。
黄色いリボン付カチューシャは凜とした中にやわらかさを与えるアクセントになっている。
ハルヒはどちらかといえば、無表情でPCの電源をいれると、サイト巡回を始める。
かすかな笑い声に振り向くと、古泉がにやけ顔を笑顔に変えていた。
「なにがおかしいんだ?」俺は長テーブルに身を乗り出す。
「じっと涼宮さんをご覧だからですよ。なかなか分かりやすいですね」
「なにが分かりやすいんだ?」
次は朝比奈さんが登場した。おくれてすみませ〜んという柔らかな声が耳に優しい。ふと表情をみると、やすらかな笑顔を浮かべている。いや、心が癒されるね。
「あ、キョン君、元気になったんですね〜涼宮さんが心配して」
「みくるちゃん?余計なことはいわなくていいの」ハルヒは仏頂面でいう。
346 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:49:56.67 ID:MwA0D1Vl0
寝る前支援
そういえば長門がいないなと思ったら、朝比奈さんのすぐ後にきた。ドアがすーと空いたと思ったら、長門がいた。
ひょっとしたら浮かんでるのではないかと思うぐらい静かに自らの指定席に歩いて行った。
指定席に座ると、カバンから文庫本を取り出した。仮面の告白? 三島ですか。粋な宇宙人ですね。
「はぁい、キョン君、お茶です」朝比奈さんが湯飲みを置いてくれた。おやと思うと、朝比奈さんは瞬間的に着替えたようで、今日はゴスロリドレスをお召しになっている。
うーん、いつものメイドドレスの方が可愛いと思うんですが。
古泉がモノポリーをもってにこにこしている。なるほど、試して見るかね。
俺がモノポリーで不動産王になったころ、長門が本を閉じた。下校時間になった。
いつもの通りの集団下校を経て、いつものとおりハルヒに睨まれて二人の下校が始まった。
「病み上がりなんだから、ちょっとは精つけた方がいいわ」ハルヒの提案により、街に出ることが決定した。決定は覆らないので、家に電話をかけ、晩飯はいらないと伝えなければならない。
電車に乗って降りた。というのも、ハルヒは考え事をしているのか、言葉少なく、話しかけても上の空だったからだ。
街に繰り出してどこにいこうというのだろうか。ハルヒはなにやら印刷物を手にしている。
「どこにいくんだ?」
「漢方の薬膳出すとこ。ネットで調べたの」
ハルヒはそれ以上何も言わず、俺を伴って『薬膳をだすとこ』を探し、それを見つけた。
「ま、ここには滋養強壮にきくっていうからね」ハルヒはにやっと笑って俺に説明した。「水浴びたぐらいで熱出すようじゃあ、SOS団員は勤まらないわ」
「精をつけろって意味がやっと分かったぜ」
「ま、おいしいって評判らしいし」ハルヒはやわらかい笑顔でいう。「ちゃんと食べて元気になりましょう」
ハルヒはやってきた店員に印刷物を見せた。それがなにかのチケットでもあるのだろう。店員はその印刷物を回収し、ペコリとお辞儀をして去って行った。
薬膳はおいしかった。ハルヒも俺も満足した。
「今度はみんなでくるのもいいんじゃねえか?」
「そうね、明日はここでご飯食べるのもいいかもね」ハルヒもうなずいた。
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:53:09.06 ID:kBDWt5eQ0
前スレのdatないかしらと聞きつつ支援
349 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 00:58:44.79 ID:kBDWt5eQ0
誰もいないヨカン
テリーマン「俺もいるぜ!」
また電車に乗った。金曜日でもあるからか、そこそこの人が乗っている。
俺らは戸口に立って、会話を楽しんだ。
表情が豊かで、本当に可愛いな、ハルヒは。
「ちょっとそれ、バカにしてない?」
「してねえよ。可愛いと思ったからそう言ってるんだ」
「まったく、ちょっと前まであたしに興味ないって感じだったのに」
「興味ねえなら、声もかけねえって」
「そうかもしんないけど」
「ま、あの時声かけてなかったら今はねえよ」
「ホントね。でも、なんでキョンはあたしに声かけたの?」
「さぁなぁ。まあこんな可愛い子ならお近づきになっとくのも悪くないって思ったがな」
「やっぱヘコんだ?」
「俺はドMじゃねえからな。ツンツンされればヘコむぜ」
「そうよねえ。でも、あんときはしょうがなかったの」
「ま、そう理解してるから心配すんな」
「うーキョンの癖に偉そうっ」ハルヒははしゃいだ表情でおどけている。
車窓からは光と闇の領域争いが進行中だ。時間が時間なので、圧倒的に闇が優勢なのだが、負けずに光も頑張っているという状況だ。
「ま、ハルヒには感謝してるぜ」俺は言った。
「感謝の念が足りないんじゃないのぉ?」とハルヒが顔を近づけてくる。やめろ、そういうことをすると先走りそうだ。
「そうか。これで勘弁してくれ」
俺はハルヒの頭に手をおくと、髪を何度かなでてやった。仕上げにぽんぽんと叩いた。ハルヒは顔を赤くして、呆然としているようだ。
「それは『いいこ、いいこ』じゃないのよぉ」ハルヒは嬉しさと恥ずかしさの交じり合った変な表情になっている。「ホントにもぉ」
電車が目的地に到着した。俺はハルヒとホームに降り立った。人影がまばらで、まるで深夜のように感じる。
352 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:00:49.28 ID:JtFmP3ETO
支援少なくてバイさるくらったんじゃね?
と不安支援
353 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:02:26.53 ID:C78yJDjv0
震電
354 :
志:2006/09/23(土) 01:02:48.24 ID:ukyJr6GL0
気にする必要は無い
それはもともとそういうもの
墓石は墓にある石以外の何者でもない
墓石は笑わないし、飛びもしない
ならば
これはいったいなんだというのだろう
ばかな話。墓石が泳いでしまうのなら、それは果たして墓石なのか
それとも
たとえ違ってしまっても
そう望んでいたのなら
――――それでもいいのだろうか
『ハイアーザンザスノウ』
[プロローグ]
「感謝の念ってのは、しっかり表さないとだめよ」まだハルヒはこだわっていた。
「どうすりゃいいんだよ」
「それは自分で考えなさいよぉ」ハルヒは急にそっぽを向いた。ホント、可愛いね、ハルヒは。そう思うと、破壊衝動にも似た感情が沸き上がってくる。理性とか、他人の目とか、そういうしがらみを一切越えていこうとする。
「どうしたの?」俺はきょとんとするハルヒの肩に手をかけた。「え?」
そっとハルヒの目をしばらく見つめる。ハルヒの目に、かすかな期待を感じ、そっと背中を押されてしまう。
こういうときは男よりも女の方が大胆になるのだろう。その証拠にハルヒはさきほどまで大きく開いていた目をそっと閉じた。俺の手にハルヒの肩を通じて緊張が流れ込む。俺の方が緊張するっての。
堅く閉じられた瞳の裏に、ハルヒはなにを見ているのだろうか。
そう思いながら、俺はハルヒの唇をそっと奪った。
ハルヒの手がそっと俺の背中に回る。ぎゅっと強く抱き締められてしまう。ああ、あの時はここまではしなかったよな、きっと。と割りと冷静な自分がおかしい。
そっと唇を放すと、ハルヒは俺の胸に顔をうずめた。ハルヒの吐息が熱く感じる。「ばーか、ばーか、ばーか」ハルヒが小声で訴えた。
「どうした?」
「いきなりキスするなんて反則でしょう?」ハルヒの瞳は少し濡れているように見える。「告白もしてない相手になんてことするのかしら」
「時と場合を選べっていって拒否ったのはハルヒだろう?」俺はハルヒの髪をなでながら言った。ハルヒは悔しそうな顔をして、また俺の胸に顔をうずめた。
「明日はぜーったい許してやんないんだから」ハルヒは胸の中で悔しがっている。
「望むところだ」俺は答えた。
俺は空を仰ぎ、明日が晴れることを心から祈った。
おしまい
356 :
志:2006/09/23(土) 01:04:03.65 ID:ukyJr6GL0
―――――前略、毎度毎度のことではあるが 冬休みを間近に控えた物悲しい秋の午後、俺はSOS団部室に向かっていた。
もはや何故向かうのかという言葉も、
疑問から蛇足へと進化しないままレベルアップを果たすほどの回数で俺はここに来ているわけだが。
窓から見える野球部の面々も、夏が終わりどこか気の抜けたような それでいて声を張り上げて練習をしている。
ご苦労さんなこった。馬鹿にする気はないが毎日毎日飽きないんだろうか?
俺が見る分には、昨日も一週間前もまったく同じ練習をしていた気がする。
――――と、ここまで考えた時点で 俺はヤツらと同じように毎日ここを通っていることに気づき、
そしてまた部室についたこともあって思考を停止した。
コンコンッ
このノックだって慣れたもんさ。
最初はうまく音のならない日もあったが、今では指の関節で完全にドアをとらえて澄んだ音をはじき出す。
たったこれだけのことでも毎日やってるとな、気になるもんなんだよ。
登校中にバスや電車を乗り継いだことのあるヤツはわかるだろう。日課をスムーズにやりとげることの微妙な達成感を。
だが少なくとも、ノックの音についてはこれで征服しちまったわけだし。
また新たな暇つぶしの項目を探さないといけないのはめんどくさいわけだが。
とりあえず、目眩めくご奉仕メイド型未来人 朝比奈さんの「はぁい」という前頭葉を溶かして俺の理性を根本から殺しつくすような声が、
そしてまぁこっちについてはどうでもいいことこの上ないが「どうぞ」というにやけたいい男の声も聞こえないことから考えるに、
今部室の中にいるのは長門だけのようだな。
ハルヒがいて、なおかつ声を潜めてるかそれとも新しい日常への侵略行為でも考えてる可能性を
まったくもってこれっぽっちも考えることなく俺は部室のドアを開けた。
いようがいまいが どうせ巻き込まれるときは三毛猫が雌である確率ぐらいの確率で受難するんだ。
んなこと考えたってしょうがないさ。
357 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:04:07.50 ID:icgyeRcnO
私怨
紫煙
359 :
志:2006/09/23(土) 01:04:52.72 ID:ukyJr6GL0
「よぉ 長門、お前1人か?」
案の定、部室には寡黙な読破戦士、長門が部室の一部のごとく座って本を読んでいた。
この存在感の無さと落ち着き アイツに爪の垢でも煎じてやればいいんだろうにな。何度も言うが黙ってりゃいいんだハルヒは。
俺のかけた言葉に ドーム球場の天井開閉じみた動きで首を動かし、こっちを向いてコクリとうなずいた。
いつも思うんだがコンタクト用ヒューマノイドインターフェイスとやらには音を立てちゃいけないきまりでもあるのか?
いや、訂正しよう。特にいつもは思って無いな。こいつだって自分から言葉を発するし、
最近じゃあ状況だけじゃなく感想まで言えるようになってきた。
このままいけば来年の今頃には気さくな冗談でも言えるようになってるかもしれん。
・・・・・いや、挨拶ぐらいがちょうどいいか。
さて、そんなことを考えながらその変のパイプ椅子を適当にひっつかみ、
いつもの位置に座った俺なのだが。
なんともまぁ、見事にやることがないのである。
薄桃色のマイナスイオン、朝比奈さんが居てくれれば視線で愛でた上に 慎ましやかな会話なんかもできただろうし、
古泉がいたらいたで、一応なりともボードゲームが退屈に暇つぶしでもできたんだ。毎回勝つのでそろそろ飽きてきたころだが。
いろいろあった文化祭も終わり、自由意志局地大型台風発生機たる我等が団長も、
ここ最近は特にドラスティックな行動も無く、それなりに無害に日々をすごしてくれている。
ここまで言って、つまりはそろそろ何か起こりそうなんじゃないかとヒヤヒヤしているわけだが。
360 :
志:2006/09/23(土) 01:05:43.30 ID:ukyJr6GL0
まだ冬ではないとはいえ、そろそろ年末に足を突っ込み始める頃なわけで、
俺としては残り少ない今年の間に、殺されかけたり、突如異世界で目覚めたり、3年前に行きませんかと言われたりの超常現象的な事態は簡便こうむりたいわけである。
人生ほどほどに平穏が1番なのさ。たぶんこの学校規模なら 俺ほど平穏って言葉のありがたみをわかってる人間は居ないだろう。
思えばこの半年間。とんでも無い体験の連続だったな・・・・
コンコン
コンコン
控えめのノックの音が部室に響いた。
今部室にいるのは俺と長門だけ。
そして団員の中でノックをするのは基本的に朝比奈さんだけだ。
ここまで言えば答えなんぞ太陽の昇ってくる方向より明らかだろう。
「開いてます、どうぞー」
――――あぁ、思えば俺はいろんな体験をしてきたさ。
一番最初の「事件」と呼べるものは、長門の家に呼び出されて延々電波話を聞かされたこと。
今思えば全部本当だったわけだが。アイツは嘘をつかないしな。
361 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:05:43.73 ID:C78yJDjv0
夜中にこんな甘ーいモノ受けたら虫歯になっちゃいますぅ
362 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:05:58.03 ID:hxp64KcmO
乙&支援
363 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:06:13.45 ID:CjWkLtii0
支援わすれてたすまんorz
>>355 甘い!乙!GJ!
364 :
志:2006/09/23(土) 01:06:52.60 ID:ukyJr6GL0
ガチャ
次は朝比奈さんの告白。私は未来人ですと語ってくれたこと。あの日は俺の思い出の10ページ分ぐらいを占領し続けています。
そして古泉の独白。僕は超能力者なんです。今は力を使えませんがという信じる要素皆無のもんだったがな。
そして、まぁ――――あの「事件」だ。
思えばあれが本当の始まりだった気がする。
あそこから「事件」という語彙の危機的レベルが跳ね上がった。
キィッ・・・
――――というか、そろそろ勘弁してくれないもんだろうか。
実に3回目の会合。運命の赤い糸も血で染まってるんじゃないかと疑いたいね。
「こんにちは、キョン君。長門さん」
さて長門よ、まずその本から目を離して、
そして俺に朝倉のことを話してくれ。
できるだけ詳しく安全にな。
[プロローグ 終]
365 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:07:00.92 ID:o/L6pBZn0
366 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:07:35.69 ID:JtFmP3ETO
投下ラッシュキタ━(゚∀゚)━!
支援!
368 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:10:25.79 ID:Dyigwdn2O
乙!
甘いな…
支援
369 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:11:44.15 ID:o/L6pBZn0
370 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:12:36.82 ID:MO5OOv8P0
371 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:14:24.36 ID:Tv9g/Edc0
さいたまで桜が咲いたらしいね
372 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:18:35.14 ID:bv24sUYcO
373 :
初恋 ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:21:21.28 ID:3rZzXeTd0
こんばんは。
何か凄い投下ラッシュみたいですね。
一時の勢いが戻ってきたかのようで嬉しい限りです。
この流れに乗って自分も投下したいと思います。
8レス分くらいです。
ちなみにトリップを変えてみました。
前回入力ミスでパスを晒してしまったのでorz
374 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:21:58.06 ID:yTK2zCPX0
375 :
初恋(33) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:22:31.88 ID:3rZzXeTd0
俺は目の前の状況をしばらくの間、正確に認識出来ないでいた。
なぜここにハルヒ達がいるんだ?まさか・・・
「アンタの今日1日の行動はしっかり監視させてもらったわ」
得意げに語るハルヒ。
やはり・・・つけられていたのか・・・。
どうりで昨日は随分あっさりと俺の欠席を容認したはずだ。
最初から俺の欠席理由が嘘だと気付いてやがったのか。
まさに俺はハルヒの策略にまんまとハメられてしまったのだ。
「神聖なるSOS団の活動をサボって、しかもバレバレな嘘をついてまで、
そこまでして優先した用事がまさか年上女との密会だったのはね」
ハルヒはニヤニヤとした表情ではあるが、言葉の端々に怒気を孕んでいるようにも思えた。
朝比奈さんはオドオドと、そんなハルヒと俺の顔を交互に見ている。
どうしたらいいかわからないっていう感じの表情だ。
長門の視線は冷たい・・・絶対零度だ。怒ってるのか?
そしてなぜか足元には真っ二つに引き裂かれたタウンページの残骸が・・・。
古泉はやや焦りを浮かべた表情だ。ハルヒの機嫌とこれから起こるやも知れぬ修羅場を危惧しているのであろうか。
「で、あの女は誰?」
ハルヒが問いかける。
さて、ここでまた嘘を重ねるほど俺も馬鹿ではない。
動揺しきった今の俺ではどんな嘘を並べたところで見抜かれてしまうだろう。
ここは正直に答えるしか手はない。
「あの人は俺の従姉妹のねーちゃんだ。訳あって最近この街に越してきたらしい」
動揺が口調に現れてしまわぬよう、精一杯の冷静を装い、答える。
「ふーん、あの『初恋』のおねーさんね」
『初恋』の部分をやけに強調するハルヒ。
376 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:22:38.73 ID:bv24sUYcO
シエーン(・∀・)
378 :
初恋(34) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:23:17.23 ID:3rZzXeTd0
「で、アンタはその『初恋』のおねーさんと、今日はどんな用事があったわけ?
見ていた限り、随分と話も弾んでいたみたいだけど?」
ここも正直に答えるしかない。
「ねーちゃんはまだ越してきたばかりでな。この街の地理に詳しくない。
そこで一昨日偶然にもねーちゃんと5年振りに会った俺が、案内役を買って出たってわけさ。
それと『随分と話も弾んでいた』ふうに見えたとのことだがな、
何しろそこは5年振りの再会なわけだし、お互いに積もる話があるのが普通だろう?」
そんな俺の答えにもハルヒは納得しない。
「だったら最初からそう言えばよかったじゃない。わざわざあたし達に嘘をつく必要があったの?」
うぐっ・・・なかなかに耳の痛い指摘である。
「それはだな・・・昨日不本意にもあんな話をさせられちまった後だったからな。
そんな昨日の今日でねーちゃんと出かける予定だなんて言えば、変な誤解をされるのは目に見えている。
だからとっさに嘘をついちまった。それについては悪いと思っている」
『あんな話』とは勿論、俺の初恋の相手がねーちゃんだったという話である。
俺が正直に謝罪の意を示したのが面白くなかったのか、ハルヒは「ふーん」と言った後、数刻黙りこくっていたかと思うと、
いやらしい、意地悪っ子のような目つきで俺を睨み、言葉を続けた。
「本当かしらね〜?実はキョン、アンタ満更でもなかったでしょ。
昨日は『未練はない』とか『過去の話』とか言っておきながら、
5年振りに再会して一段とキレイになってたポニーテールの『初恋』のおねーさんに、
胸をときめかせてたりしたんじゃないの?もしくはもう付き合ってるとか?」
『ドキッ!!!』
その台詞を聞いた瞬間――俺は心臓がマジで飛び跳ねたような錯覚を受けた。
顔も一瞬にして赤くなっていたに違いない。
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:23:42.41 ID:bv24sUYcO
支援
380 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:23:47.07 ID:MO5OOv8P0
紫煙
381 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:24:03.00 ID:6NwSlIG+O
保守
382 :
初恋(35) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:24:03.69 ID:3rZzXeTd0
「あら?図星だった?」
そんな俺の様子を見て、追い討ちをかけてくるハルヒ。
コイツ本気で俺を亡き者にするつもりか?
「そ、そんなわけないだろっ!」
目に見えて焦りまくる俺を尻目に、ハルヒは「フン」と鼻を鳴らし、
「冗談に決まってるじゃない。キョンがあんなキレイなオトナの女性と釣り合うわけないでしょ」
と、のたまう。それは確かにそうかもしれないが・・・。
「初恋の人だか何だか知らないけど、相当重症の精神病にかかっちゃてるみたいね」
出た。ハルヒの十八番、『恋愛=精神疾患』理論だ。
これで、
『お前が感じている感情は精神疾患の一種だ。治し方は俺が知っている俺に任せろ』
とでも言ってくれればまだマシだったのだが、ハルヒは更にキツイお言葉を投げてきた。
「アンタ、あの女に遊ばれてんのよ。そんなのにも気付かない?
私が見るに、あのオンナ相当手馴れてるわよ。
星の数ほどのオトコを色気で騙しては、飽きるとすぐにポイしてきた――そんな感じね。
アンタも騙されてるのよ。あーいうのをまさに天性の遊女って言うのかもしれないわね」
それを聞いた瞬間、俺は全身の血の気がさーっと引いていくのを感じた。
アタマに血が上ったのではない。引いたのだ。
そして次に俺が発した台詞は――恐ろしいくらいに感情のない、冷たい口調で吐き出されていた。
383 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:24:47.20 ID:bv24sUYcO
支援
384 :
初恋(36) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:24:49.22 ID:3rZzXeTd0
「あのな、確かに俺はねーちゃんとは釣り合わない。
顔がいいわけでもない、頭がいいわけでもない、金もない、
男として人に誇れるものなんて何も持ち合わせちゃいない。しかも嘘までつくときてる。
ねーちゃんもこんな俺を隣に連れて歩くだなんて、実はムチャクチャ恥ずかしかったかもしれない。
そんな俺を馬鹿にするならいくらでもしてくれて構わない。死刑にするならいくらでもしてくれて構わない――」
「べ、別にそこまで言ってるわけじゃ・・・」
ハルヒは言葉を濁す。
「でもな。ねーちゃんを悪く言うのだけはやめてくれ。あの人はそんな人間じゃない。
それに、オマエにねーちゃんの何がわかるって言うんだ。何も知らない癖に勝手なことを言わないでくれ。
俺は自分がいくら悪く言われようが何とも思わん。だけどねーちゃんが悪く言われるのだけは我慢ならん。
今回の件は全て俺の責任だ。パトロールをサボったのも、嘘をついたのも俺の責任だ。悪いと思ってる。
・・・・・・だからその代わり、ねーちゃんを悪く言うのだけはやめてくれ」
俺の口から、氷のように冷たく、しかしその中にはどんな高性能のハードディスクにも
収まりきれないほどの容量を持っている、そんな言葉が吐き出された。
数刻前までは、情けないほどの狼狽を見せていた俺の突然の豹変振りに、
ハルヒはじめ、朝比奈さんも古泉も唖然とした表情を浮かべている。
あの長門でさえもその瞳の色を微妙に変えた。
俺のこの機械的な心情の吐露は、どんな大きな怒り、喜び、悲しみを持った叫びよりも
物言わぬ石のような沈黙に覆い尽くされた闇夜の空間に、深々と響き渡ったようであった。
そしてすぐにまた、街頭の光に群がる虫達の羽音まで聞こえてくるような静けさが俺達を支配する。
385 :
初恋(37) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:25:34.08 ID:3rZzXeTd0
そんな沈黙を破ったのはハルヒだった。
「わ、わかってるじゃないのよ!
そうよ!今回の件は全てアンタに責任があるわ!
罰として明日の市内探索パトロールではアンタが交通費から昼食代まで・・・
とにかくあたし達全員の分、全額出すこと!」
俺は黙りこくっていた。それを無言の肯定と受け取ったのか、
「それじゃあ明日は9時に駅前に集合!
遅れてきたら死刑だからね!以上!今日は解散!」
そう言い残し、ハルヒは闇夜に消えていった。
意外に思ったのは、ハルヒが俺の台詞に対し激高しなかったことだ。
俺がここまで楯突いてきたんだ。てっきりハルヒは烈火のごとく怒り出すと思ったのだが・・・。
実際、先の沈黙の間、古泉が恐々とした表情を浮かべていた。
ハルヒの余りの怒りにより、またあらぬ事態が発生することを危惧していたのだろう。
そうなったらまたあの灰色空間に派遣される運命だしな。
「改めて、嘘ついたりして悪かった」
俺は再度、残った3人に謝罪の意を示す。
「そんな・・・キョンくんに謝ってもらうようなことは・・・何もないですよ」
朝比奈さんが控えめに俺に声をかける。
古泉と長門は黙ったままだ。
386 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:25:58.59 ID:eSfJKgrp0
支援
387 :
初恋(38) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:26:35.56 ID:3rZzXeTd0
そして残ったメンツも、自然消滅的な流れで解散となった。
朝比奈さんと古泉は最後まで複雑そうにしていた。
長門は・・・正直よくわからない。今日に限ってはアイツの感情は殆ど俺には読み取れなかった。
さて、俺もそろそろ帰るか・・・。
自転車を転がし、歩き始めたその時、俺は何かに服を引っ張られているような錯覚を覚えた。
正確に言うと錯覚ではない、実際に誰かに引っ張られている?
そしてその『誰か』正体は・・・長門だった。背後から俺の服をチョンとつまみ、佇んでいる。
「長門・・・帰ったんじゃないのか?」
確かに長門は朝比奈さんと古泉に付き従うように闇夜の中へ消えていったはずだ。
それがなぜかいつの間にやら俺の背後にいる。ちょっとしたホラーだぜ。
「あなたのことが心配で、戻ってきた」
「心配?」
「今日のあなたからは、あなたを構成する情報の不規則な起伏が、終始観測された」
「俺を構成する情報?何だそれは?」
「あなたが理解しやすい言葉で言えば、『感情』と言うのが最も適切」
「つまり今日の俺は『感情』的にどこかおかしかったってことか?」
「そう。不規則な起伏が終始観測された。こんなケースはこれまでには皆無だった」
長門の言わんとすることを正確に掴むことは難しいが、要は俺が今日1日中何かしらの動揺をしていたってことか。
長門は更に言葉を続ける。
「そして、ついさっき。涼宮ハルヒの発した言葉に対するあなたの『感情』の起伏、
その反応の値はこの1年間で最高値を記録している」
388 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:26:54.73 ID:icgyeRcnO
>>355 GJ!
甘いの大好きです〜
続き
ますよね?
wktk
389 :
初恋(39) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:27:15.46 ID:3rZzXeTd0
ああ、アレか。確かに口調は冷静だったがあの時の俺の心の中はこれでもかっていうくらい掻き乱されていたからな。
「その原因が何なのかは正確にはわからない。ただあなたが涼宮ハルヒが発したあの女性に関する言動、
そして『初恋』という単語に過敏に反応していたことは把握出来た」
「そうなのか」
「そう。私にはあなた達の言う『初恋』という単語の意味や、
あなたがあの女性に対して抱いている『感情』の詳細は理解出来ない。
だからこそ、あなたが心配」
そう言いながら長門は、俺の目をまじまじと見つめている。
「そうか、そんな心配をかけちまったか。すまなかったな長門よ」
「別に、いい」
「ただな、その『感情』とやらだが正直俺にもよくわからない。
なんでハルヒの言葉にあんな反応をしたのか、それ以前に俺が今ねーちゃんに対してどんな気持ちを抱いているのか、
正直まだ俺自身にもイマイチ判断がつかないんだ」
「そう」
「だからな、お前を安心させてやれるような言葉をかけることも出来ない。情けない話だがな。
すまんな、長門」
「別に、いい」
「ただな、俺にもわからないその『感情』とやらだが。
俺はな、長門、お前にもいつかきっとわかるもんだと思うぞ?
根拠はないが、何となくそんな気がするんだ」
長門は答えなかった。そして、
「また明日」
と一言残し、今度こそ闇の中へ消えていった。
しかし、長門を心配させるほど今日の俺は異常だったのか・・・。
俺はそんな今日の自分を省みつつ、1人帰路についた・・・。
支援
391 :
初恋(40) ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:28:31.48 ID:3rZzXeTd0
家に着くなり、部屋へ直行し、ベットに倒れこむ。
今日はとてつもなく疲れた。
ねーちゃんとのデートでは緊張しっぱなしで気を緩める暇も無かったし、
その後のあの背筋の凍るような修羅場寸前のハルヒとのやり取り、
そして長門の言葉。
長門は、俺の『感情』が揺れ動いていると言った。
そしてそれに最も密接な関わりを持つ『初恋』というキーワード・・・。
俺は今日のデートでの楽しそうなねーちゃん、
そして別れる寸前のあの悲しそうなねーちゃん、
というねーちゃんの2つの対照的な姿を思い出していた。
楽しそうなねーちゃんを見ていると俺の心も弾み、
悲しそうなねーちゃんを見ていると俺も悲しくなった。
今まで認めたくはなかったその気持ちに、俺は気付きかけていた。
俺は――ねーちゃんにまた魅かれはじめているのかも知れない、という気持ちにな。
時刻はまだ10時を少し回ったところであったが、
身体的な疲れと精神的な疲れ、その両方に今日1日で完全に侵されていた俺は、
気付かぬ内に眠りに落ちてしまっていた。
392 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:29:33.37 ID:MO5OOv8P0
支援
393 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:29:50.01 ID:eSfJKgrp0
終わりかな?
394 :
初恋 ◆rDAy9jYT0M :2006/09/23(土) 01:30:22.15 ID:3rZzXeTd0
以上です。
今回は最後の方で頑張って長門さんにかなり喋ってもらいました。
長門の描写は正直難しいです・・・。
同じくみくるも・・・。
キョンや古泉はそれに比べて書きやすいことwww
395 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:32:18.25 ID:yTK2zCPX0
>>394 乙! そしてGJ!!
続きにwktkしてしようがない。
396 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:32:56.95 ID:o/L6pBZn0
ここ2、3日ラッシュが続いてるけど
・・・どれもレベルが高い
レベルが高すぎる…
398 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:39:50.09 ID:Dyigwdn2O
乙!
続きwktk
399 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:47:28.44 ID:bv24sUYcO
続き気になる…
素晴らしい!
400 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:51:58.93 ID:MwA0D1Vl0
寝る前に歌の整理してたら、みくるのキャラソンのタイトルが時のパズルだった。いや、偶然ですよ?
402 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:55:17.78 ID:o/L6pBZn0
保守
403 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:55:29.91 ID:HIOEyJwp0
>>400 ハルヒの能力について追求するのはやめときますwwww
『時のパズル』は狙ったと思ってたのだが・・・違ったのね。
面白かったからおkです。
きっと今回ので文章のレベルが上がったと思うので、次はもっとすごいの期待しときます
404 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 01:58:06.40 ID:MwA0D1Vl0
>>403 一応ハルヒの能力についての作中での考えは
>>287です。
納得できないかもしれないですけど勘弁してください。
405 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:07:23.75 ID:JtFmP3ETO
「初恋」かなりイイ!
GJ!
俺の作品がタダの恥ずかしい駄作に思えて来るわ
回りのレベルが高すぎて……orz
406 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:07:40.17 ID:Dyigwdn2O
いやいや、十分楽しめたので俺は気にしませんよ。
次の作品期待してますよ。
407 :
403:2006/09/23(土) 02:14:12.32 ID:HIOEyJwp0
>>278は読んでますよ。引用すみません
いい作品だったから、次はもっといい作品になるようにいちゃもんつけるのも必要かなと
全員GJだけだったら進歩しませんからね
408 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:16:08.05 ID:HIOEyJwp0
409 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:17:44.16 ID:MwA0D1Vl0
>>407 わざわざ、すいません。批判される事は、褒められる事以上に、伸びる事の原材料になると思います。
また、おかしいところに気付いたらいつでも言ってください。
それでは、今日は寝ます。
410 :
志:2006/09/23(土) 02:19:27.80 ID:ukyJr6GL0
『ハイアーザンザスノウ』
[第1章]
ハッキリ言おう。これは事件だ。
俺が今まで出会ったのは2回。正確な意味では2回じゃないんだが、
おそらくこの回数に間違いは無いだろう。
1回目は教室でクラスメートとして。
2回目は教室でクラスメートとして。
1回目の教室と2回目の教室の間には世界なんつー隔たりがあるわけで、この言い方は混乱しか呼ばないわけだが。
さもありなん、何せ今1番混乱してるのは俺だ。
世間的には外国に転校して、事実的には消滅したはずのお前。
ついでに言えばそのあと蘇って、蘇った事実ごと消えた。
そのついでに言うなら、その2回とも俺はコイツのナイフで死に掛かってるわけだ。
俺は黙して語らずの姿勢を貫く長門を横目に、というか盾にでもしそうな勢いで。
コタツをはさんで向かいに座った朝倉をにらんでいる。
411 :
志:2006/09/23(土) 02:20:04.62 ID:ukyJr6GL0
ここまでのことをかいつまんで説明しよう。また話がさかのぼるのは面倒だろうからな。俺が。
教室に突然来訪した異邦人、朝倉涼子。
特に反応をしてくれない長門に不安を覚えつつも、見つかっちゃまずい。特にハルヒには絶対に見つかるわけにはいかないので、
場所を変えて、長門のマンションに行こうと提案した。
朝倉は何か言いたげな含みある微笑(あえて言うなら可愛げな微笑だった)を浮かべながら随い、
長門も反応も無いなりに、本を閉じて立ち上がったのでそのまま移動することになった。
ハッキリ言ってここにくるまでの大変だったことと言ったら、新撰組の襲撃を恐れる池田屋主人の気分だったさ。
とにかく俺と朝倉の間に長門がくるように、常に気を張りながら、
なおかつ特に何もできないなりに朝倉の一挙手一投足を監視しつつ、俺の精神と集中力が問題を投げ出す寸前に長門の部屋についたわけだ。
そして今の状況に至る。
3人でスイッチの入ってないコタツに入ってむっつりと(してるのは俺だけで、朝倉は微笑みを、長門はいつもの無表情をうかべている)にらみ合っている。
「・・・・で、結局お前はなんなんだ?」
「なんなんだ、は酷いんじゃないかなぁ。
確かに的確な表現と着眼点ではあるんだけどね」
なんなんだ以外に聞きようがあるとしたら、もう少し言葉を選ぶさ。
でもな朝倉。人じゃないものが消えて、またふいに出てきたらお前はなんて質問できるというんだ。
仮にできたとしても質問の内容自体は大差無いはずさ。
412 :
志:2006/09/23(土) 02:21:01.82 ID:ukyJr6GL0
「そうだなぁ・・・・
うん、わかりやすくするとね、急進派であるところの私の操り主が大きく意見を変えたの。
その結果、長門さんのところと和解・・・・というか抑える理由がなくなったの。害が無いと判断されたから」
とつとつと語り始める朝倉。
ちょっと待て、つまりお前のところの親玉が俺を殺すのを止めて、長門の親玉と敵対するのを止めたから謹慎が解けたってのか?
そんな簡単にいくのか。というか変わるもんなら俺に襲い掛かる前に思い直してもらいたかったね。
情報統合思念体とやらも大した事無いな。無論皮肉だ。
「朝倉涼子は、ほぼ以前の形態をもって再構成された。
・・・・・しかしその存在の目的が、なんら危害を加えないために問題視されていない」
長門が裏付けるように続けた。もともと仲が悪いわけじゃないんだろうか?この2人は。
というか仲がよかったりというのもどの程度何がおこなわれたらなのか想像がつかないわけだが。
「・・・・つまり、朝倉は危害を加えない。安全だから戻ってきた。ってことか?」
「・・・・・・そう」
長門は、一瞬だがためらいというか、なんとも言えない苦味を1ミリ秒以下で味わったような顔をしていた。
しかし今もっとも気になるのはそこじゃあない。
413 :
志:2006/09/23(土) 02:21:36.49 ID:ukyJr6GL0
「で、今度は何のためにきたんだ?
わざわざ目的なしに戻ってきたわけじゃ無いんだろ?」
「秘密。って言ってもいいんだけどね。
あまりあなたを不安にさせるのも、長門さん側の信用を失うことになるから良くないのよね。
・・・実はね。私、恋をしにきたの」
あまりの出来事に言葉を失った、なんて大げさなもんじゃない。
今俺が感じてるものを的確かつ具体的に表せる言葉がひとつだけある。
いや、もしかしたらもっとあるのかもしれんが、俺のつたないボキャブラリーにはこれしかなかったんだ。
ワケがわからん。
狐につままれたんならまだマシなほうだろう。
今の俺は目の前を飛び交うハエを手ではらったら、そのハエにやめなさいとえらく真摯な様子で言われたぐらい呆然としている。
たぶん今の俺からなら気づかれないうちに100CCぐらいは献血できるんじゃないだろうか。
・・・・・恋を『しにきた』という部分に対する哲学的かつ心理的な言及はこの際さて置いてもいい。
普段の俺ならその点に関して4分は話せる引用文と講釈を考えた上で「アホか」の一言で済ますが、
相手が統合思念体という人類をはるかに超越した能力と歴史を持つ存在であるため済ますわけには行かなかった。
正直な話、信用もできないしな。
「・・・・意味がわからん。
もう少しわかりやすく説明してくれ。あと長門。
もし朝倉の言葉に嘘があったら容赦なく言ってくれ、俺のために」
「今のところ、朝倉涼子の言葉に嘘は無い」
否定してくれればいいものを、長門はうっかりにも肯定してくれちまった。
414 :
志:2006/09/23(土) 02:22:10.45 ID:ukyJr6GL0
「あははは、そうね。わからないのもわかるわ。
でもね、人間でない私がわざわざ恋をするメリットがあるからこそ、私は今ここにいるのよ」
前置きはいいから早く内容について語ってくれないか。
理解不能のメーターはとっくに振り切っちまってるんだ。
「ふふ、そうね。
端的に説明するなら、私は今回、あなたのデータ収集を目的に動いてるの。
目的が涼宮さんでなく、さらにデータの収集のみにとどめる。
そして解析した後で長門さんの操り主にも共有するのよ。
・・・ね?無害な上に長門さんが許してくれるだけの理由でしょ?」
頭がどうにかなりそうだった。というのは言いすぎだろうか?
2回も俺に止めを刺そうとしたこのステキ眉毛は、俺のデータを集めるために戻ってきたと言ってやがる。
念のために長門に目配せをしてみると、ただコクリと頷くだけだった。
それだけで俺は理解した。朝倉が言ってる事に、なんら偽りの内容が含まれて居ないことを。
同時に驚愕した。長門・・・いや、長門の操り主とやらがそれを承諾したのだ。
俺は、たいした監視も無しにその気になれば一瞬で俺を殺せるであろう朝倉に調査されることになるわけだ。
少なくともこの瞬間、俺の脳裏に浮かんだ予想図では、物陰からコソコソとこちらを覗う朝倉涼子の姿が浮かんだ。
前科があるだけに恐ろしく怖い。恐ろしく怖いのだ。
頭痛が痛いってのが日本語的に間違いだろうが、今の俺にはそれ以外の形容詞は見当たらず、
もう少し現文の勉強をしておけばよかったなどと意味不明な現実逃避に浸っている次第だ。
長門は押し黙ったままどこでもないなりに近場の一点を見つめている。
と言ってもその一点が存在しないというモラトリアムなわけだが。
415 :
志:2006/09/23(土) 02:22:51.88 ID:ukyJr6GL0
今の俺には、不安と安心がある。
ひとつは、朝倉涼子が今後俺に付きまとうであろうこと。
ひとつは、押し黙った長門が、少なくとも危険だと俺に告げていないこと。
明日は木曜。今日は水曜。
朝倉はまたクラスに戻ってくるんだろうか?
だろうな。監視だろうが調査だろうが近いに越したことは無いだろうし。
不自然ではあるが元の鞘、ってヤツだ。
だがここで忘れてはいけないことがある。
『不自然』なんだ。
自然じゃないことを不自然と言う。
そして不自然は普通じゃないことがほとんどだ。
ここまで言えば俺の苦労も察してくれるだろう。
『普通じゃないこと』が大好物なヤツは朝倉涼子が戻ってくるであろうそのクラスにいるのだ。
そして俺は、なぜかアイツが喜んでるときに疲れる星のめぐりになっている。
なっていたんだ。どうせ今回もそうだろう。
なぁ長門。
もしお前が少しでも俺に心を開いてくれてるんなら。
俺を守っちゃくれないか?
どっちからとは言わんが。
[第1章 終]
416 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:29:38.19 ID:wjjDNXfW0
>>415 続きwktk
いいなあ、良作ラッシュだよ。
ところで質問初めて俺も投稿しようと思っているんだが
改行って決まった文字数でした方がいいの?
それとも句読点まで改行しない方がいいのか?
417 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:32:04.32 ID:JtFmP3ETO
>>415 朝倉の変化ぶりにwktk!
>>416 俺はなんとなく句読点ごとにやってる
まぁ読みやすけりゃおKww
418 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:32:56.56 ID:4xLRIoU20
>416
私は、全角40文字前後で、句読点が来た所で改行してます。
文の途中で強制改行するのが嫌なので。単なる個人的な趣味です。
419 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:36:39.28 ID:HIOEyJwp0
420 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:37:25.85 ID:wjjDNXfW0
なるほどサンクス
参考にさせてもらいます。
一晩寝かせて明日あたりうpします。
今時夏休みものってのもなんだが……
421 :
志:2006/09/23(土) 02:38:02.86 ID:ukyJr6GL0
本日以上にて。
まだ甘い汁は出てませんが悪しからず。
第2章からは内容も文字数もめがっさ増やして帰ってきます。
とりあえず、わかりにくいであろう部分解説。
時期→雪山前、文化祭後
ステキ眉毛→サンジに在らず。朝倉さん。
志→長門=萌え、ハルヒ=好き、朝倉さん=超越神。
>>416 画面が1280×1024だかとわかるかもしれませんが、強制改行は回避を目安に。
それ以下の画面比率だと改行される詰めの甘さが目立ちます。
422 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:38:49.18 ID:4xLRIoU20
>420
企画モノですね!?wktk!
423 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:40:32.32 ID:JtFmP3ETO
>>420 俺も夏休み物だww
お互い頑張ろうぜwwww
424 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:42:59.81 ID:fvQxw9/l0
>>421 唐突なスタートに戸惑ったが
とりあえず続きに期待wktk
425 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:43:54.08 ID:xilawps+0
なんかええのう・・・
個々最近の過疎がうそのようだ
426 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:49:55.97 ID:4xLRIoU20
>425
アレじゃないですか?秋ですから。
読書の秋、芸術の秋。
『文芸とは、読んで字のごとく、文で芸をすることだ。』
427 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:50:58.65 ID:k200KDXI0
´二ゝ─‐-─‐ヘ
. / ./∠ ──‐‐-.ヘ. ヽ、
/"..://´‐.T.丁¨ T ー 、 Y ',ヽ
/./ .:./:./ :.:./l:.! i.:. !:.:. ヾ..i:. !:.:ヽ
/ / .:./.:/ :.:./ !:!:. ハ:.: ',:.:.:. `!: l:.:.:ハ
/.:, イ.:;'.:.`:ト 、バ:.ヽ\.:ヽ,.:.:.:.:.!: !ヘ:.:ハ
/ / イ.:.!.:.!:.!, --ヽ、\ ゝ久_丈i:. ! ハ:.ハ
/:./ !.:.!.:.i.:f ィ´::ヾ ´f´::::ヽヾ :!ヽ l:.ハ
/:./ , !.:.!.:.iハ マ_;;;ノ , マ_;;ノ j:. j/ j:.:ハ
/:/∧,」 !.:.!.:.!ヘ "" r==ォ "" ,/:.イ!ハ┘:!ヾ
/!:.バ:.:.:| |.:.ハ.:V ゝ、 丶 / ィ/:./:.:i.:.:/^l:.! ヽ や ら な い か
!:i !.:.:.:.:.,.、-  ̄/ | l / | |` ┬-、 j/ j/
j/ j/ / ヽ. / ト-` 、ノ- | l l ヽ.
/ ∨ l |! | `> | i
/ |`二^> l. | | <__,| |
_| |.|-< \ i / ,イ____!/ \
.| {.| ` - 、 ,.---ァ^! | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
__{ ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________|
}/ -= ヽ__ - 'ヽ -‐ ,r'゙ l |
__f゙// ̄ ̄ _ -' |_____ ,. -  ̄ \____|
429 :
【時のパズル】:2006/09/23(土) 02:52:06.92 ID:MwA0D1Vl0
寝ると言って書き込んですいません。
終章の
>>191の最後の行と
>>192の最後の行に一文抜けてました。↓です。
居間を出ると、そこには有希が立っていた。
430 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 02:57:42.88 ID:JtFmP3ETO
431 :
429:2006/09/23(土) 02:59:59.63 ID:MwA0D1Vl0
432 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:02:59.09 ID:JtFmP3ETO
>>431 乙です!
ちなみにここだけの話、次回作のネタとかはある?
433 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:10:45.76 ID:MwA0D1Vl0
>>432 次回作というか、以前書いてその後、続き考えてない『Place』書かないとなぁって思ってる。
一日だけ未完ですけどWikiに載せときますよ。
434 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:15:56.86 ID:JtFmP3ETO
>>433 了解です。
チェックしときますんでww
さて、人が少なくなって来た所で残り2日分のSS書きながら保守しときますわ。
管理人さん、しっかりと睡眠取って下さいwwww
435 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:21:42.24 ID:yTK2zCPX0
>>433 『Place』もあんただったのか…!
もう続きは諦めかけてたよ。
wktkして待ってる!
436 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:22:14.83 ID:MO5OOv8P0
wktkしながら保守
437 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:22:17.57 ID:MwA0D1Vl0
ごめん、書いたメモ帳が見つからないや、……消してたかも。
438 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:25:17.52 ID:3rZzXeTd0
自分もそろそろwikiの編集の仕方覚えなきゃなあ・・・。
439 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:25:42.26 ID:MO5OOv8P0
440 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:28:17.01 ID:XNz9Aj6E0
441 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:32:00.25 ID:JtFmP3ETO
ちょwwww
今place読んでた→携帯なので途中で切れてた→PCサイト閲覧用に切り換えた→place消えてたwwww
なんだこのイジメorz
最近は毎日ここのスレが楽しみだ。
つまらん、現実はつまらん
443 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:40:59.69 ID:MwA0D1Vl0
見つけたけど、プロットもなしに書きなぐったやつで出来がひどいから、三十分ぐらい推敲してから載せとく。
ワープロモードで載せるから、改行が少ないけど勘弁してください。
444 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:44:06.42 ID:JtFmP3ETO
>>443 wktk!……だが休養して起きてからでもいいぞ?
445 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:47:19.18 ID:MwA0D1Vl0
んーじゃあ、少し仮眠して(朝の)六時ぐらいまでには載せときます。
446 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 03:48:38.03 ID:3rZzXeTd0
>>443の人が管理人さんだったと最近気付いた自分orz
その節は私の作品を編集してもらい、感謝してます。
次回作も楽しみにしてますよ!
447 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 04:06:15.41 ID:xilawps+0
ほしゅ
448 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 04:22:20.34 ID:FO+Id6g60
ぶーん
449 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 04:42:30.89 ID:fvQxw9/l0
保守
450 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 04:58:51.61 ID:hXE/uhAg0
ほす
451 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 05:05:56.09 ID:6VwK5lIMO
諸君おはよう(o^∇^o)ノ
久しぶりにきますた。
妊娠以来読んでナス‥‥‥
オヌヌメ作品教えてエロい人
おはよう。あとはまかせた。寝る
「キョンくん、早く起きないとイタズラするよー」
455 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 05:33:22.19 ID:dX7Mu2eg0
キョン「朝起きて顔を洗いに鏡の前にいくと、そこには額に肉と書かれた俺の姿が映っていた」
456 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 05:38:00.65 ID:fvQxw9/l0
「ちょwwwwwもうしてるしwwwwww」
457 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 05:48:43.58 ID:MwA0D1Vl0
昔の自分の作品見ると、どれだけ稚拙な文を書いていたか、よく分かるな。今でも、そうたいしたもん書いてるわけじゃないが。
「ちょっとキョン!あたしのアナルなめたでしょ!?」
「・・・す、すまん」
460 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 06:56:04.84 ID:dX7Mu2eg0
保守
何だこの良作ラッシュは!?俺の続きなんて載せられねぇw他板で修行でもしてくるかな
462 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 08:08:32.94 ID:iejFYIeeO
みくる「チャーハンうめぇwwwwww」
463 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 08:18:02.24 ID:iejFYIeeO
464 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 08:35:08.63 ID:bv24sUYcO
保守
465 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 08:46:27.26 ID:d/8xd52x0
保守
466 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:01:33.33 ID:+QOmKwuwO
保守
467 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:03:30.15 ID:UeFXBMs3O
>>457 最近問題なのは書いてる途中でうまくなっちゃうことかな
文のレベルがバラバラになって困るし、最初のを書き直したくなる
468 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:16:14.54 ID:Q/qsbbEYO
こっちは一文字作文あんま繋がらないんだよな
469 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:17:12.43 ID:X1SUI8yW0
471 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:20:05.50 ID:7erv098g0
472 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:32:58.70 ID:JtFmP3ETO
やっほう
気がついたら寝落ちしてた保守orz
473 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:45:14.05 ID:JtFmP3ETO
保守
474 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:55:23.72 ID:bv24sUYcO
保守
475 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 09:55:39.78 ID:YPm0kPG90
ほ
476 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:09:37.13 ID:JtFmP3ETO
人いないな…
必死に保守
477 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:12:29.76 ID:CjWkLtii0
>>467 それは確かにそうだが、俺はある意味戒めとして過去の自分の作品を読んでる。
長いこと書いてるとキョンの一人語りがうまくなる気がする。
478 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:13:09.66 ID:XhDswY540
>>476 そんなことしてるからメールがこないんです><
479 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:13:40.73 ID:ofVaQSf6O
二度寝の前に保守
480 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:17:26.91 ID:ofVaQSf6O
>>478 残念だったな、俺はこっちだ
そして保守
481 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:30:48.41 ID:UeFXBMs3O
>>477 確かにキョンの独白は書けば書くほどこなれてくるな。
原作が句読点をあまり使わなかったり、一つの文が長すぎるのは正直馴れない。
482 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:30:52.37 ID:JtFmP3ETO
今メール来たが無視して保守ww
483 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:37:02.65 ID:CjWkLtii0
>>481 句読点あんまり使わないんだ……初めて知った……もっとよく読むべきだな。
まぁでも1つの文が長いのは対処不可能だよな。
だってここは横書き形式だし。
484 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:50:18.48 ID:4xLRIoU20
>481
あのべらぼうに長い一文は、速記録とかに似てるのね。
講演とか電話の内容を録音して、そのまま書き出すとあれに近い形になるよ。
録音から起こしたものを少し読みやすく整えると……
はい、ガシガシ内容が詰め込まれた、長い一文のできあがり。
日本の古典もこんな形だね。
485 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:50:42.54 ID:JtFmP3ETO
保守?
486 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 10:53:07.11 ID:CjWkLtii0
>>484 そういやそうだな。
日本の古典の最初もあんな感じだな。
487 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 11:05:45.90 ID:gDgAH4rE0
今起きた保守
488 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 11:15:21.08 ID:uwU2IfjZ0
1人称の文だし長いほうがかえってリアルな希ガス。
ほ
490 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 11:31:25.63 ID:8eu4Z5T40
>>484 確かにそんな感じだ。
プロローグは本気出してたが、案外途中は気が抜けたのかリズムが悪いとこもある
この文無理やり入れただろって感じの
とにかくハルヒは喋りながら文を書くか、新しい話でも
491 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 11:44:31.15 ID:yTK2zCPX0
ゅしほ
492 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 11:45:06.98 ID:YSiDIVDu0
汽車汽車ほしゅほしゅ
493 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 11:45:18.84 ID:MM9Kw+yyO
保守
494 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 11:53:33.99 ID:JtFmP3ETO
保守っ
495 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:05:11.62 ID:mRpN0SxN0
保守
496 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 12:15:27.28 ID:4xLRIoU20
保守りながら短文を捏造中。
短文だったのが、なんか長引きそうです。
誰か私に、短文で要約する力をください。
497 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:25:19.91 ID:JtFmP3ETO
保守がてら保守ww
498 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:34:57.23 ID:8eu4Z5T40
とにかく保守
499 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:34:59.78 ID:MM9Kw+yyO
保守
500 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:37:13.93 ID:8eu4Z5T40
人いないみたいだからいる人はちょっと読んでみてくれない?
レスは一つだが、この調子で書いて読みやすいか見てくれ
501 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:38:35.09 ID:JtFmP3ETO
おK
来い!
502 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:41:19.91 ID:8eu4Z5T40
ハルヒの勢いが止まらない。
三月のホワイトデーでありもしないお金を這いずり回って探すがごとくといっても実際に探したわけではないが、
とにかく万年金欠の俺にとって日本経済の先行きより不透明なハルヒの行動による損失は
予想を遥かに超えていて語ることすら嫌になるというもので、
財布が空音を響かせていることによる俺の未来への損失はいくらばかりなのかと不安に思い、
俺は暗澹たる気分にならざるをえなかった。
普通、健全、通常と三拍子揃った高校生である俺にとってSOS団による悪行は目に余るものがあり、
しかしなぜか団長様は法に触れるようなことは犯さないのでそこについてはあえて言及しないでおこうと思ったところで
部室にあるパソコンが法的な根拠無く略奪された経緯を思い出し俺は言葉を失った。
それに伴う朝比奈さんの苦痛やら、
そこから発生したカマドウマも今ではいい思い出として語っていい時期に来ているのかもしれないが、
生死を彷徨うような大冒険だけは参加を控えさせていただきたい。
その後地球の磁場が逆転したかというほどの混乱した春休みを何とか乗り切り、
めまぐるしく展開していく日常のページを感覚だけで追い、
低空飛行を続けていた俺の成績でもなんとか進級することを許した学校側の寛大な処置に敬意を評していると、
その日はすでに始業式を迎えていた。
一年前と同様テンプレートでダルダルな入学式が行われ、
この学校にニューフェイスが加わりハルヒは目を輝かせて新入生を凝視していたが、
数日もするとまた陰鬱なオーラを後ろから発しながら窓の空から飛来するのだろうかUFOでも探すような遠い目をしていた。
ハルヒがストーカーのように俺の後ろの席についてくるのはなぜだろう、
ハルヒからするとついてくんなということらしいがお前少しは俺の気持ちも考えたらどうだ、
この一年で俺は完全にハルヒ率いる変態集団の一員とみなされ
奇異の目で見られてきた俺に教室での安息ぐらいくれてやってもいいだろうよ、
お前とは毎日部室で嫌って言うほど顔を合わせているじゃないか。
四月に入ると何のイベントも無くただ漠然と団活を過ごす日々を送ることになり、
朝比奈さんの入れてくれる甘露で口を潤わせながら
古泉ともう誰も分からんようなマニアックなボードゲームを引っ張り出してくるまでに暇を持て余した俺は
この安息の地を長引かせようとハルヒには何も口出ししないようにKGBの元スパイ並みに慎重な行動を心掛けた。
503 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:43:00.72 ID:8eu4Z5T40
あいつのことだから口出ししなくてもまた厄介ごとを持ってくるはずだし、
それの尻拭いをさせられるのも俺と相場が決まっている。
どこの相場かは知らんが俺はその相場に無期限の営業停止処分を検討するように抗議の文章を叩き付けたい。
そして今俺は古泉と一部のボードゲームマニアしかやらないような年代物のボードゲームをこなしつつ、
部室の片隅でこちらも年代物の置物のように風格すら漂わせる部室のアンティークドールこと長門を横目で見ながら、
朝比奈さんがお茶を持ってきてくれるのを心待ちにしている。
もう四月も中頃というか終わりに近づいていて麗らかな春の日差しに包まれた部室で俺は
なんとなく満たされない心を封印しようと封魔の呪文を心の中で十回ほど唱えたが、
あいにく心は封魔返しの呪文を心得ていたようで、やはり俺は満たされない心のままただなんとなく日々を過ごしていた。
正直にいうと俺はもっとドキドキするようなことがしたいのだ。
ハルヒが厄介ごとを持ち込んできた時はそれはそれで落胆するが、
それ以上に面白い体験をすることができるチャンスをたことになるということを俺は感覚的に分かっていて、
だからこうやって今日もハルヒがドアをぶち破って満面の笑みでのたまうのを待っているわけだ。
情けないね。結局俺はアクティブじゃなくて受身のままハルヒが持ってくるのを待ったまま
こうやってのほほんとした顔で日々を過ごしている未だに愚か者なのさ。
504 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:47:29.16 ID:JtFmP3ETO
俺はまずまず読みやすいとオモ
505 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:48:14.31 ID:MM9Kw+yyO
多少、展開が急だと思ったが、かなり読みやすい。
GJですよ!!
506 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 12:50:50.57 ID:8eu4Z5T40
展開が急なのはこれまだプロローグだからです……すみません
原作ってこんな感じだったかなっていう実験です
じゃあ、続き書いていきますわノシ
507 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 12:51:10.87 ID:4xLRIoU20
原作の雰囲気をよく表してると思います。
私の文は改行制限ぎりぎりまで文を詰め込んでいるので、
それで良いのだろうかと思うことはよくあります。
508 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 13:01:15.78 ID:JtFmP3ETO
保志
509 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 13:05:24.87 ID:CjWkLtii0
それにしても、よくこんなにうまく原作の雰囲気が漂わせられるな。
微妙に難しい言葉を使うのがコツか?
続きwktkして待っとりますぜ
510 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 13:16:19.26 ID:o/L6pBZn0
hosyu
511 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 13:26:14.61 ID:JtFmP3ETO
保守
512 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 13:32:05.28 ID:FQl4B3SQ0
>>506 非常によくできてると思うが、気になった点をあげさせてもらうと、
>朝比奈さんの入れてくれる甘露で口を潤わせながら 〜 KGBの元スパイ並みに慎重な行動を心掛けた。
ここの件はちょっと長すぎかなと思った。
どこか文の切れ目に読点を入れてもいいと思った。
あと一つ、
>ハルヒがストーカーのように俺の後ろの席についてくるのはなぜだろう、
これは余計かもしれないが、こうゆう区切れやすいところは素直に句点でも
いいかも。
まあ余計なお世話かもしれんが。文章がうまいだけに少し勿体無いと思った。
以上、俺的見解でした。
513 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 13:50:00.90 ID:MM9Kw+yyO
保守
514 :
502:2006/09/23(土) 13:53:20.85 ID:Hg9lSba/0
515 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:01:09.49 ID:Dyigwdn2O
保守
516 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:12:51.68 ID:bv24sUYcO
保守
517 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:19:45.27 ID:Bin+MqrW0
キョンの独白がここまでの長さになる事はあんまないと思うけど。
どこかに誰かのセリフが入る。
それと、徒に一文を長くすると、読みづらくなる。
その方がキョンっぽさが出しやすいとはいえ、さすがにこれはやりすぎじゃね?
518 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:23:26.04 ID:Hg9lSba/0
憂鬱の最初を見れば分かる。一人の時はやたらと長い
まだ人が入ってきてないからもう少し待ってくれ
人が入ってきたら、また書き方少し違うしな
という保守
519 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:27:26.07 ID:MwA0D1Vl0
ここに載せるだけのつもりなら問題ないのですが、まとめに載せた場合見る人のウィンドウによって改行がばらけます。
ですから、行数変換はなるべく句点のみで行った方がいいかもと言ってみる。
『Place』ですが、ほとんど手を加え直して、少し違ったものになっちゃった。
空気読まずすいません。お久しぶりですハニカミです。
9月からリアルの方が急に忙しくなってしまい、また随分とご無沙汰になってしまって
いるのですが、ようやっと最後まで書き終えられそうです。
まだ脱稿はしてませんが今ラスト数レスを書いているところなので今夜中には投下
出来るかと思います。ただ、きっちりと推敲してから投下したいので、一眠りの後推
敲してから投下する予定です。恐らくは20〜21時頃かなと。
前回に引き続きまた投下の間が空いてしまってるので、一応報告までにレスをさせ
て頂きました。勝手とは思いますが平にご容赦を。
というかラストシーン+エピローグだけで既に60レス超ってどういうことだろう。
俺は悪い夢でも見てるのか?
では、また今夜に。スレ汚し失礼しました。
>>502-503 ( ゚д゚)
( ゚д゚ )
521 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:31:58.11 ID:DQ89u+c60
ひさしぶり
522 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 14:35:07.37 ID:4xLRIoU20
>520
wktk
さて、自分のほうについて。正直、このオチは蛇足かなと思う。
でも、原作でもキョンは蛇足と知りながらも、一応オチは書いてるし。
いいや、付けちゃえ。
というわけで、本編が書き進まないかわりに番外編書いてました。
本編に合わせて、サブタイトルは英語表記。
番外編の英訳って、Extraでいいんだよね?
523 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:35:42.67 ID:Dyigwdn2O
ハニカミキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
wktk
524 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:38:11.97 ID:XHURYlU6O
ハニカミの中の神ktkr!!!!!!11
夜まで待てねえwwwwwwwwwwww
いやマジすんません夜まで待ってます
525 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:40:56.33 ID:x0v68Ypp0
ハニカミ来た\(^o^)/
でも夜10時からバイトだぜ/(^o^)\なんてこったい
スレ残ってないに今日の分の給料かけるわ\(^o^)/
526 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 14:43:33.51 ID:4xLRIoU20
夜に大型弾が投下されそうですね。
今のうちに小ネタ投下しますか。
ほかに投下する人がいなければ。
527 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:44:48.15 ID:MwA0D1Vl0
どうも
キョンとキョン制作者です。
現在進行形で書いてますが伏線が多すぎて自分で収集が付きませんorz
今日中に二章終わらせようとは頑張ってますんで他の投下wktkして待ってますノシ
529 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 14:58:58.62 ID:XHURYlU6O
今夜は投下の嵐の予感wwwwww
今のうちに寝るか
530 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 14:59:36.84 ID:4xLRIoU20
>527
いいサイト教えてもらって、ありがとうございます。
今のうちに投下しますね。
あ、寝ようとしてる方は、ごゆっくり。
531 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:03:45.07 ID:4xLRIoU20
長門有希の報告
Extra.2 長門有希の思惑
いろいろな事件やらごたごたやら、すべてが終わったあと。
俺の目の前には朝比奈さん(大)がいる。
そう。俺達は『すべてが終わった』後の、公園にいる。
「すべてが……終わりました。」
「……そうですね。」
静かに、これまでの数々の出来事に思いを馳せる。
「いろいろ……ありました。」
「そうね。私はあなたより更に長い時間を掛けているんだけどね。」
きっと、そうなのだろう。俺は一時的にとはいえ過去と行ったり来たりし、
3年ほどそのまま待つことになった時もあった。
更には、1万数千回も繰り返す夏の2週間、年換算で590年以上を過ごしたこともあった。
だが、これらは俺の意識の上では経過していないことになっていて、
見かけ上は、一繋がりの時の流れになっている。
これは俺も、朝比奈さん(大)も同様だ。
だが、朝比奈さん(大)にとってはそれだけではない。
少なくとも朝比奈さん(小)から朝比奈さん(大)になるだけの時間が、
目の前にいる朝比奈さん(大)には流れたのだ。感慨も一入だろう。
さて。そろそろ話を切り出そうか。
すべてが終わった後の、エピローグ。あるいは、解答編。
「朝比奈さん。それじゃあ、語ってくれるんですよね?
これまであなた達が裏で何をしてきたのか。すべての……解答編を。」
「そうね……すべてが終わったんだものね。それじゃあ、語りましょうか。真相を……」
「わたしも同席させてもらう。」
その時俺の後ろから声がした。朝比奈さん(大)は……驚愕していた。
振り返ると長門がいた。いたのだが……違う。何かが違う。何が違うって、いろいろ違う。
すまない。俺も正直混乱している。うまくまとめられる自信がないので、見たものをありのまま話すぜ。
長門が……2人いた。
532 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:04:43.77 ID:4xLRIoU20
2人の長門。
こいつは今この世に1人しか存在しないはずだ。
もちろん普通の人間なら、双子の存在を考えるだろう。
一部の普通でない人間や、事情を一部知る人間なら、『同型機』の存在を考えるだろう。
しかし俺は、ある事情から、こいつは正真正銘この世界に1個体しか存在しないことを知っている。
それが2人いるということは……間違いない。『異時間同位体』だ。
異時間同位体とは、分かりやすく言うと、朝比奈さん(大)と朝比奈さん(小)の関係だ。
同一時間平面上に同時に存在するはずがない、異時間同位体。
それが同一時間平面上に存在する光景は、実は結構目撃している。何より、俺自身もそんな状態になったことがある。
そして、振り返ったところにいたこいつ、この銀河を統括する情報統合思念体によって創られた、
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスであるところの長門有希もまた、
異時間同位体が同一時間平面上に存在するところを俺は目撃した。というか、そうなるようにした。
しかし、すごいな、俺。こんな難解な長文をすらすらと思い浮かべることが出来るようになったとは。
俺にもいろいろあったからな。
よし、それじゃあ、見たままの情景を語ろう。
長門有希が2人いる。2人は手をつないでいる。片方は俺が知っている、いつもの制服姿。
もう片方は、スーツと眼鏡で知的な雰囲気を醸し出している。
眼鏡のデザインは、以前に掛けていた飾りもそっけもないやつじゃない。
楕円形の、最近の主流な形だ。
そして眼鏡を掛け、スーツを着た方の長門は……大きくなっていた。少しだけ。長門(大)。ワショーイ。
以上だ。俺の混乱振りが言葉の端々から伝わったかもしれない。
とにかく、そんな光景が俺の前に展開されていたのだ。
最後の最後で、とんだサプライズかよ。どこの誰だ、こんなシナリオを書いた奴は。
これもハルヒの仕業なのか?それとも……長門(大)?お前なのか?
まったく。最後くらいは平和に美しく終わらせてほしいもんだ。
「やれやれ。」
もう何回言ったか分からないくらい言った、もはや俺の決まり文句を言い、俺は肩をすくめた。
まったく。本当にやれやれだぜ。
533 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:05:58.44 ID:4xLRIoU20
「さ、参事官……!なぜあなたがこの……この時間へ……!!」
朝比奈さん(大)が震える声で搾り出すように言った。『さんじかん』?なんだそりゃ。
「ここ…この時間での呼び名は、それではない。この時間での呼び名で呼んでほしい。」
長門(大)が静かに口を開く。
「え!?う、は、はい、……な……長門、さん……」
朝比奈さん(大)は、恐る恐る言った。
「そう、それでいい。」
あの〜、長門さん?あなたは何をしておいでなのでしょうか。
「わたしはわたしの異時間同位体に呼び出され、ここに連れて来られた。」
長門(小)が言った。どこか複雑な表情を浮かべているように見えた。
「朝比奈みくるがすべてを語ると聞いて、駆け付けた。」
長門(大)が静かに語る。
「わたしもあなたに言うことがある。」
朝比奈さん(大)は、なにやら緊張している。
「わたしの今の肩書きは、こう。」
そう言って長門(大)は、紙片を取り出した。栞風の名刺だった。
『総務省時空管理局付特務班時空湾曲対策担当
参事官 長門有希』
名刺には、こう書かれていた。総務省……国家公務員なのか?
「そう。朝比奈みくるは、私の部下の1人。」
なんと……俺はてっきり、朝比奈さんの上司は朝比奈さんだと思っていたが、
確かに朝比奈さん(小)の直属の上司は朝比奈さん(大)かもしれんが、更にその上、
朝比奈さん(大)の上司は誰か、考えたことなかったな、そういえば。
「えーと、朝比奈さん。その、『参事官』って、どれくらい上の人なんですか?」
「偉い人です。審議官級だけど局長待遇で……ええと、民間企業で言うところの役員クラスね。
送り迎えがある、って言えば、何となく想像が付くかしら?」
なるほど、そう考えれば合点がいく。朝比奈さん(両)が、長門(小)を苦手としていた理由が。
過去の存在とはいえ、すごく役職が上の者を相手に、先輩として振舞わなければならないのだ。
さぞやりにくかったことだろう。
534 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:07:00.18 ID:4xLRIoU20
ところで、もうお気づきかもしれないが、長門(小)が長門(大)になっていて、
そして朝比奈さん(大)と同じ時間平面上で上司として存在しているわけだ。
ということは、今この時間平面上にいる長門(大)もまた未来人……というか、
未来から来た宇宙人ということになる。
それでは、もともとこの時間平面上にいる……本当にそうなのか若干疑わしくなってきたが、
とりあえずそう仮定して、長門(小)との関係は一体?
「話せば長くなる。」
「構わん。話してくれ。もちろん余り長くなければ嬉しいがな。」
「そう。では、話す。こういうことになる……」
長門(大)は語りだした。いつぞやの呪文か、それ以上の早口で。
もはや何倍速か分からん……
「……ということ。わかった?」
「はっきり言おう。ぜんっぜん分からん。」
「それは残念。あなたが短くするようにと言ったから、1分以内に話し終えた。」
そう言って長門(大)は、にひっ、と……悪戯っぽく笑った。
長門(大)……おまえもそんなジョークが言えるようになったんだな。
「わたしも長い時間を過ごした。有機生命体として存在する以上、変化は起こる。」
長門(大)はにっこりと微笑みながら言った。笑顔が眩しいぜ、長門(大)よ。
「ありがとう。」
ふと見ると、朝比奈さん(大)も笑っている。長門達の横に移動していた。
長門(小)は、いつもの通り無表情。だが、俺にだけ分かる微細な長門(小)の表情の変化によると、
目の前の光景が信じられない様子だった。そりゃそうだろう。
もう1人の自分、未来から来た自分が、現在の自分とは違って、表情豊かに微笑んでいるのだから。
でもな、長門(小)。俺には分かるんだ。
そこにいる長門(大)は、間違いなく今のお前と地続き、未来のお前自身なんだ。
未来のお前は、知的な雰囲気を醸し出して、その雰囲気にぴったりの、
お前らしい笑い方ができるようになるんだ。
それとな、長門(大)。前にお前に言った言葉は撤回する。
眼鏡も良く似合うぞ、長門。
やほー
536 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 15:07:36.85 ID:yiaquJWn0
537 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:08:00.04 ID:4xLRIoU20
「はいはい、みなさん。積もる話もあるでしょうし、立ち話も何ですから、お茶にしませんか?
今の私にとってみれば、昔取った杵柄。腕によりを掛けて、この時間でお茶を淹れますよ。
あ、そうだ。せっかくだから、本格的にお茶を点てちゃいましょうか!」
「それなら、『この時間の』わたしの部屋がいい。気兼ねなく話が出来る。」
長門(小)が言った。もしかして、長門(小)を連れて来たのはこのためだったのか?長門(大)。
「それもあるけど、それだけではない。わたしは純粋に、過去のわたしと会いたかった。」
「それも既定事項なのか?」
「答えは……あなたの胸に。」
はぐらかされた。マジかよ。
「わたしは、あなたが点ててくれるお茶をまた飲みたいと思っていた。たのしみ。」
「わぁ、本当ですかぁ〜!?うれしいですぅ〜♪」
未来から来た2人は打ち解けた様子で談笑している。
「この時間のわたしも、顔には出していないが、本当はとても楽しみにしているはず。」
長門(大)は、目を細めて長門(小)の頭をくしゃくしゃと撫でた。
長門(小)は、無表情だがなんとなく満更でもない様な顔をしているように見えた。
仲の良い姉妹、そんな光景が俺の眼には見えた。
もし俺だったらどんな光景になるか想像して、やめた。きっとこうなるだろう。
2人して誰かさんに振り回され、全く同じ顔で、同じタイミングで、こう言うのだろう。
『やれやれ。』……情けないな、俺。
「ところでお2人さん。これだけは教えておいてくれませんかね。」
『?』
俺の言葉に、2人は揃って首を傾げる。……余りの美しさに、気が遠くなりそうだぜ。
「本当の……年齢と名前は?」
「それは……」
「……」
おー、長門(大)の三点リーダは初めて見るんじゃないか?
朝比奈さん(大)は、例の見る者すべてを恋に落としそうな天使のような笑顔で。
長門(大)は、見る者すべてを涅槃に誘いそうな慈愛に満ちた菩薩のような笑顔で。
『禁則事項(です)。』
俺の意識は、極楽浄土へ運ばれた。
538 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:09:00.88 ID:4xLRIoU20
………
……
…
「という、夢を見た。」
「そう。」
放課後の部室、彼は言った。他の団員達はまだ来ていない。
わたしと朝比奈みくるの異時間同位体。未来のわたしと朝比奈みくるの関係。
「ユニーク。」
「肝心な部分はさっぱり覚えてへんけど、何(なん)でか、お前らの表情だけははっきり覚えとぉで。」
「そう。」
「何(なん)でこんな夢見たんか分からへんけど、これだけは言わしてくれ。
長門。眼鏡掛けたお前も、めちゃめちゃ可愛かったで。」
「……」
わたしは立ち上がり、窓辺に立って窓に向き合った。彼に顔を見られないために。
別に照れているわけではない。この状況なら、あれができると思ったから。
そして、昨日構成した眼鏡を掛け、昨日やってみたことをしてみる。
問題はなさそうだ。眼鏡の意匠は、恐らく彼が夢で見たものに近いだろう。
「長門?」
彼が訝しがる。わたしは逸る気持ちを抑え、努めて平坦に言った。
「あなたが夢で見たもの。それは……」
わたしは振り返る。
昨日鏡の前で練習した、今出来る精一杯の、わたしらしいと思われる笑顔を浮かべながら。
「こんな顔?」
この日、彼は眼鏡属性に目覚めた。
539 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:09:43.90 ID:4xLRIoU20
>531-538
以上です。
540 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 15:13:57.99 ID:XHURYlU6O
>>539 寝るつもりだったが読ませてもらった!
GJ!!!!
ではノシ
541 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:14:26.74 ID:4xLRIoU20
原作で『宇宙人と未来人が仲良くお茶を点てている光景』というくだりを
読んだ時に受信した電波を、どうにかこうにか形にしてみました。
時空管理が総務省所管なのか……いつの時代にも総務部門はありそうなので、
こうしてみましたが。SFの素養はないので、適当な名前が思い付かなんだ。
夜の大型投下にwktk。
542 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 15:14:43.06 ID:q2/SKN4O0
543 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 15:15:37.77 ID:JtFmP3ETO
乙!
いい感じだ!
544 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 15:28:52.45 ID:gDgAH4rE0
保守
545 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 15:35:08.60 ID:Dyigwdn2O
乙!
546 :
現地語 ◆eHA9wZFEww :2006/09/23(土) 15:43:59.87 ID:4xLRIoU20
再配達の荷物待機中。いつになったら来るんだろう。
…食事に出ちゃおうかな
読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
一服の清涼剤、あるいは長門に萌える糧にでもなってくれれば幸いです。
保守
「キョン……キョン…」
何泣きながら寝てるんだこいつは。しかも俺の名前を呼びながらかよ。
まぁ、嬉しいんだが……
「どうして死んじゃったの……?」
ちょwwwまたかよwwwwwうぇwwっうぇ
また、キョンが殺されていく 予 感
550 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:10:41.93 ID:o/L6pBZn0
出かける前に保守
551 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:21:14.84 ID:bv24sUYcO
保守
552 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:33:44.15 ID:JtFmP3ETO
保守
553 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:43:34.17 ID:n3J+BFrg0
「キョン君……キョン君…」
何泣きながら寝てるんだこいつは気持ち悪い。
しかも俺の名前を呼びながらかよホモ。
鳥肌が立つ……
「どうして死んだのですか……?」
ちょwwwやめろwwwアナルだけは!アナルだけは!
554 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:47:38.57 ID:RN+uZFIY0
今、長編でベスト5を挙げろと言われたら
妊娠、不覚、10月8日、SSV、時のパズル (順不同)
なんだけど、みんなはどうかな?という保守
555 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:47:49.27 ID:n3J+BFrg0
それはある晴れた日のことだった。
ロッカーに整った文字で屋上に来てくださいと書かれていた。
俺は朝倉の件を思い出し、不安に飲み込まれそうになりながら屋上へ向かった。
そこには黄色いカチューシャをつけた髪はセミロングの……
「やぁ、来てくれましたかキョン君」
男がカチューシャとは趣味悪いな古泉。
556 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:48:42.94 ID:gDgAH4rE0
557 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:52:59.78 ID:n3J+BFrg0
「そんなことより大変なんです。」
…こいつが言うには朝起きたらカチューシャが着いていてしかも取れないらしい。
意味がわからん。いったいどういうことなんだ?
「涼宮さんが望んだこと…なんでしょうね」
ハルヒが?余計意味がわからん。なぜ古泉にカチューシャを付与させることを望むんだ。
俺はカチューシャ属性なんぞないぞ。
「でもこれ一度つけて見たかったんですよね。似合いますか?」
正直キモイです。
558 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:56:58.68 ID:SVzC6Z1p0
>>554 ベスト5か、俺としては
どれがお好み?、ツンデレ、彼氏が死んじゃった、
ちょっとだけお隣さん、土曜日は不思議、発見?(順不同)
ぐらいかな……アレ? 俺って作者に毒されてね?w
どれがとは言わないけど、誰か死んじゃう系の話は感動しても余り好きになれないかな
559 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:57:35.83 ID:AxRHon920
しかしここ数日急激に活性化したな
560 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 16:59:15.54 ID:RN+uZFIY0
>>556 そか、あんがと。
ちと選択がハルキョンに偏ってるかとも思ったが、イイ物はイイよな
>>558 おまいは俺以上に偏ってるとオモタwww
561 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:00:23.08 ID:Dyigwdn2O
大学が始まった頃から活性化だからなwww
普通逆じゃね?w
562 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:02:02.69 ID:dZkqDlwi0
現実逃避ってことだろ…
563 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:05:03.84 ID:n3J+BFrg0
話すだけなら直接呼びにこればいい。何故手紙で呼び出す必要がある?
「…?手紙で呼び出すことなんて一つしかないじゃないですか」
まさか…噂には聞いていたが本当に…やめてくれ!俺はそっちの気はないぞ!!
「実はあなたのことが…「待ちなさい古泉君!」」
そう言ってドアをブチ開けたのはハルヒだ。助かったよハルヒ!感謝す
「抜け駆けは許さないわ!キョンは渡さないんだから!」
あの、ハルヒさん?それはどういう…
「来なさいキョン!」
腕を引っ張られどうすることもできない俺は何も言わずその場を後にした。
その間、古泉はポカーンとこちらを見ていた。…このホモ。
「負けませんよ・・・見ててくださいアナゴさん!あ、カチューシャとれた。」
古泉はお天道さんに向かって叫んでいた。アナゴさん?
その後ハルヒに料理されたのは言うまでもない。さらば俺の青春ふぉーえばー
564 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:06:27.44 ID:n3J+BFrg0
という支援
565 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:07:12.44 ID:1pkyCfcv0
>>561 一番可能性高いパターン
1.レポor卒論でPCと御対面
2.しかし進まない作業
3.気晴らしに覗いてみる
4.何かいい感じに連載中
5.息抜きに俺もやるかで頑張っちゃう
6.本来の作業は停滞してるのにSSだけは進行する不思議な現象発生
…こんな感じだと思われる
566 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:11:23.50 ID:dZkqDlwi0
>6.本来の作業は停滞してるのにSSだけは進行する不思議な現象発生
それ息抜きの定理で実証済みだから不思議でもなんでもない
567 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:12:01.68 ID:RN+uZFIY0
>>565 脳内にいい文章が浮かんじゃうと、それを吐き出さない限り
作業が進まない気がするんだよなw
568 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:12:28.95 ID:Dyigwdn2O
569 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:19:29.88 ID:4xLRIoU20
>565
あるあるwww
昔よくあった。
…そう、もうある程度昔の話なんですね。
遠い目で保守。
>>554 SSV 朝倉涼子の終焉 10月8日 涼宮ハルヒの消失(偽) 悩みの種
順不同
他にもありすぎて選ぶのに30分ばかり(ry
571 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:32:19.55 ID:13YHZqpNO
保守
ところで古泉とキョンが生徒会側に行ってSOS団とサバゲーする話ってどれだっけ?
探してるんだけど見つからないんだ。
572 :
恋文の人:2006/09/23(土) 17:32:45.04 ID:kBDWt5eQ0
573 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:33:03.51 ID:z7Sy48vq0
574 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:33:39.48 ID:kBDWt5eQ0
新章:encounter
「彼女の言葉は、おそらく事実」
と、朝倉と入れ違いでやってきた長門に今の状況を説明すると、あっさり肯定した。
「なんとかミヨキチから朝倉を追い出すことはできないのか?」
朝倉自身はそれが「無理」と言っていたが、それは朝倉の言い分だ。実際に無理かどうかはわ
からない。もしかすると長門ならなんとかしてくれる……なんて淡い期待していたんだが。
「不可能」
初めて、長門の口から「不可能」って単語が出たように思う。こいつにもできないことがあっ
たとは、素直に驚いた。
「だが、方法はゼロではない」
いったんは落ち込んだ俺だったが、その言葉に色めきだつ。方法があるのなら、不可能とは言
わないだろ。
「どうすればいいんだ?」
尋ねると、長門は誰かに判断を仰ぐかのように視線を空中に彷徨わせてから俺に目を向けて、
まったく関係なことを口にした。
「わたしたちインターフェースは涼宮ハルヒの情報フレア発生が観測されてから作り出された。
故に朝倉涼子の行った既存有機生命体への人格情報結合は初めてのケース。その行動は極めて異
質であり、ひとつの可能性を秘めている」
「なんだって?」
「つまり──進化」
575 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:34:16.92 ID:kBDWt5eQ0
>>574 進化……進化か。そういや長門の──というよりも長門の親玉の目的は自律進化の可能性をハ
ルヒから探り出すことだったな。
「現状の朝倉涼子は、一般の地球人類と大差はない。他情報への干渉能力はなく、情報統合思念
体からも切り離されたスタンドアローンの存在。それは通常ではあり得ないこと。朝倉涼子が吉
村美代子と共生しているのは、彼女の意思で行った──進化」
ミヨキチの中に朝倉がいるとわかった時点で、おぼろげに考えていたことがある。
どうして朝倉がミヨキチを選んだのか、ということだ。
どうやら俺は、長門の親玉に「ハルヒにとってのカギ」とか思われているらしい。だから観察
対象に俺も含まれているとかなんとか、いつぞや長門が言っていたように思う。
そんな俺の交友関係なんて、長門は知らずとも親玉の方にはすべて筒抜けだろう。だから、朝
倉がミヨキチに取り憑いたのも、情報統合思念体の強硬派とかいう朝倉の親玉が少なからず関与
してるんじゃないか、と思っていた。
だが、違うらしい。すべて朝倉の独断で行った結果であり、ミヨキチが選ばれたのもただの偶
然と長門は言っている。……本当か?
「情報統合思念体は、朝倉涼子の行為に着目している」
「人に取り憑くことがか? そんなもの、いつぞやの原始的な情報生命体もやってただろ」
「だからこそ。朝倉涼子は、有機生命体と融合することで退化したと言える。けれどそこから新
たな可能性も考えられる。進化とは──」
長門はいったん言葉を句切り、頭の中で俺に話す言葉を推敲しているかのように間を空けた。
576 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:34:47.01 ID:kBDWt5eQ0
>>575 「周囲の環境変化の情報を蓄積し、その情報を次の世代が遺伝子レベルで適応変化させる行為。
情報生命体である情報統合思念体には、有機生命体で言う遺伝子が情報そのものである。故に、
進化の閉塞状態に陥っている情報統合思念体が新たな進化の道を開くには、一度蓄積した情報を
破棄──退化して別の進化ルートを辿ることも一つの手段と判断されている」
そういや朝倉は、ミヨキチに取り憑くのに三つの情報のうち、二つを失ったからできた……と
か言ってたな。ほぼ理解不能で八割ほど聞き流してたが。
「朝倉涼子の行為は、注目に値する」
「それはつまり……長門にとって、今の朝倉も観察対象に含まれるってことか?」
首を縦に振って首肯する長門に、俺は心内で頭を抱えた。
それが長門自身の判断じゃないことは、まぁ……わかっている。こいつもいろいろ俺たちを手
助けしてくれているが、宮仕えの立場だ。俺と親玉の意見が対立した場合、どちらの意見を優先
させるか?なんて話は、考えるだけ無駄だろう。
「だから……不可能って言いたいのか」
「そう」
回りくどい言い方だが、つまり朝倉とミヨキチを切り離すのは『可能』だが、それを実行する
のは『不可能』ってわけだ。長門にだって立場はある。無理強いは……できないよな。
「これだけは教えてくれ」
問いかける俺に、長門は視線だけを向けてくる。その無言を問いかけることへの許可と受け取
って、俺は尋ねる。
「朝倉は、何をしようとしてるんだ?」
577 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:35:16.94 ID:kBDWt5eQ0
>>576 しばしの無言。そして。
「感情のコントロール」
と、長門は答えになっていない答えを口にして、腰を上げた。
月曜日。学校やら会社やらが始まる一週間の始まりは、大多数の人間にとって気分も沈みがち
になる日であることは間違いない。俺なんか、足に一〇〇キロの鉄球をくくりつけられてマリア
ナ海溝に沈められてるくらい、落ち込んでるがな。
そんな鬱々とした気分を神様は察してくれたのか、登校中は谷口やら国木田なんかと顔を合わ
せることなく教室にたどり着いた。
教室には、すでにハルヒがいた。片肘を突いてボーッと窓の外を眺めている。それこそいつU
FOが窓の外を通過してもかまわないと言いたげに、凝視していた。いつもと変わらないハルヒの
姿だ。
それを見て、俺はややホッとする。どうやらミヨキチ──もとい朝倉は、この時点ではまだハ
ルヒに直接接触はしてないようだ。
気が気じゃなかった。
朝倉はハルヒの変化を求めている。俺の目の届かないところでハルヒにちょっかいをかけて、
非常識なことをされたらたまったもんじゃない。
「なに?」
俺の視線に気づいたのか、窓の外を眺めていたハルヒがこちらに顔を向けて訝しげな表情を浮
かべる。こいつには人の視線から質量を感じ取るセンサーがあるらしい。
578 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:35:48.06 ID:kBDWt5eQ0
>>577 「おはよう、ハルヒ」
「気味悪いわね、普通に朝の挨拶なんて。あんた、いつも言語障害にかかってるんじゃないかっ
てくらい素っ気ない挨拶しかしないのに」
どうして朝の挨拶ひとつにそこまで辛辣なコメントを言えるのか問いつめたい衝動に駆られ
たが、人間、一日に消費するエネルギー総量は決まってるんだ。無尽蔵にわき出るエネルギー源
を持ってるハルヒと一緒にしないでもらいたい。ハルヒの嫌味に肩をすくめて、俺は自分の席に
腰を下ろした。
「どうしたの? なんかちょっと変よ。悩み事?」
「いつも通りだろ? 気にするな」
「ふーん」
俺の言葉にハルヒは「ウソおっしゃい」と言わんばかりの視線を投げかけてくる。
「ま、悩み事があるなら相談に乗ってあげるわよ。あんたも一応団員だからね、特別価格で学食
一食分で聞いてあげるわ」
聞くだけで解決しないのかよ。そもそもおまえに相談して事態が好転するとはとても思えん。
さらに言わせてもらえば、外から持ち込まれた依頼は無料で、俺の悩み相談は有料とはどういう
了見だ。
「それはそうと、今日の放課後は今週一週間の活動内容を決める会議だからね。必ず出席するこ
と! 勝手に帰るんじゃないわよ」
「そんなの、今まで決めてたか?」
「最近、みんなたるんでるんだもの。ビシッと一週間の目標を決めておいた方が張り合いが出る
ってもんでしょ」
579 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:36:19.32 ID:kBDWt5eQ0
>>578 俺は朝倉のことでいっぱいいっぱいで、これ以上、張り合いのある一週間になんぞしたくない。
が、そうも言ってらんないわけだ、この団長様を前にすれば。
「わかったよ」
ため息混じりに、俺は頷いた。
午前中の授業を乗り越えて昼飯時。ときどきハルヒが「ちょっとキョン、今閃いたんだけど聞
いてよ」なんて言いながら背中をシャーペンでつついてきたが、それでもつつがなく乗り越えた
今、俺はそこでひとつ失敗していたことに気づいた。
鞄の中に弁当がない。どうやら忘れてきたらしい。健全で健康的な日本男児たるもの、昼飯抜
きで午後を過ごすのは、傭兵にカレー粉の支給がないのと同義だ。
財布を引っ張りだし、中身を確認。くっそぅ……被害は甚大だ。とても学食に駆け込むだけの
兵力は足りていない。誰かに金を借りようとも思ったが、損得勘定抜きで俺に慈愛の手を差し伸
べてくれる相手の心当たりがないことに愕然とした。
意外と俺、友だちに恵まれてないんじゃないか……?
まぁ、いい。ここは仕方がない。腹の中に何も詰め込まないのは危険と判断し、購買部でコッ
ペパンのひとつでも購入しよう。
そう思って購買部で物色していたそのとき。
「あら」
と、世にも珍しい珍獣を偶然発見したかのような驚きと戸惑いが混じり合った声が、俺に向け
られた。
580 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:37:30.61 ID:kBDWt5eQ0
>>579 女性の声である。俺を見て声を掛けてくる相手なんて、ハルヒか朝比奈さん、あるいは鶴屋さ
んくらいだが、珍獣を発見したような声を出すことはない。出されたら、それはそれでショック
に感じるのは俺が繊細だから、ということにしておいてほしい。
そこにいたのは誰であろう──生徒会の書記にして正体不明のTFEI、喜緑江美里さんだった。
さん付けなのは、立場的には上級生だから、と理解していただきたい。
「あ、ども」
「その節は大変お世話になりまして、とても感謝しております」
どこぞの貴婦人のように慎ましやかな微笑みとわずかに首を傾ける会釈を交えて、喜緑さんは
そう言う。それがカマドウマ事件のことか、それとも文芸誌作りのことか、はたまた別のことな
のか俺にはわからなかったが、とりあえず「はぁ、こちらこそ」と返事をしておいた。
「お昼はパンだけですか?」
「え? ああ、弁当を忘れてしまいまして。財布の中もついでに忘れたみたいで、パンくらいは
食っておこうかなと」
「まぁ、それは大変ですね。それでしたら」
と言いつつ、喜緑さんは自分の財布から千円札を取り出すと俺の胸ポケットに押し込んだ。
「え? あの」
「お貸しいたします」
「いやでも、いいですよ。悪いです」
「いえいえ、貴方にはいつもお世話になっておりますし、困っていらっしゃるのを見過ごすのは
気が引けてしまいます。少しくらいの恩返しをするのも道理かと思いますので。お返しいただけ
るのなら、長門さん経由でも構いませんから」
「そ、そうですか。それじゃお言葉に甘えて」
581 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:38:24.04 ID:kBDWt5eQ0
>>580 それほど親しい人ではないが、金がないのも事実だし、せっかくのご厚意を無下に断るのも失
礼というものか。俺は有り難くその申し出を受け入れることにした。したんだが……。
「あの、何で俺に声かけてきたんですか?」
長門ともつかず離れず、微妙な距離を保っている人だ。文芸誌作りの話が持ち上がらなければ、
俺には長門と同種だってことにさえ気づかなかったくらい距離を空けていたのに、ここで声を掛
けて来るのは意外だった。
「いえ、もう貴方はある程度のことをご存じのようですし、それに……今は大変そうに見えまし
たからつい……と言ったところでしょうか」
「はぁ……」
俺は弁当を忘れたくらいで、そんな悲愴な顔つきをしてたのか。情けないというかみっともな
いというか……切ない気分になるな。
「それでは、また」
会釈をして去っていく喜緑さんの後ろ姿に感謝しつつ、俺は学食へと向かうことにした。
喜緑さんの援助でなんとか乗り越えた昼休み。思えば学食で飯を食うなんてことは入学してか
ら初めてのことかもしれないと思いつつ、その味はハルヒが通うだけあってなかなかのものだっ
た。金に余裕があるときは、今度から通ってもいいかなとさえ思ったくらいだ。
ま、SOS団に所属している限り、俺の財布が潤うことなんてなさそうだがね。
582 :
朝倉涼子の面影〜恋文〜:2006/09/23(土) 17:38:55.53 ID:kBDWt5eQ0
>>581 ともかく、満たされた腹で満足しつつ午後の授業を受けている。五時間目の授業からハルヒは
寝息を立てているようだが、それで俺より成績がいいのは釈然としない。俺だって眠いさ。
いっそのこと教師に見つかって怒られろと毒電波を放ってみたが、こいつには不可視シールド
でもあるのか、さっぱり見つからない。俺の念力じゃ蚊とんぼさえ落とせないのは重々承知して
いるが、ここまで鉄壁だとイタズラでもしたくなるってもんだ。
もっとも、運命の神様は授業中に寝こけているハルヒじゃなく、俺にイタズラをしたいようだ。
六時間目の授業がそろそろ終盤を迎え、まもなく放課後という頃合いだったか。
バイブレーションモードにしておいた携帯が、俺のポケットの中でぶるぶる震えていた。
授業中に携帯を取り出すのは御法度だが、もしかすると緊急の用事かもしれない。ばーちゃん
が倒れたとか、おじさんが事故にあったとか、その手の話かもしれないだろ。
こっそり携帯を取り出してみる。電話ではなくメールだった。授業を受けてるふりをしつつ、
メールを開いてみると、ただ一文だけ『窓の外』と書かれてあった。
なんのこっちゃ?
イタズラか間違いか知らないが、意味もなく文面に釣られるように窓の外に目を向ける。
「げっ」
上でも中でもない。まさに下の下の存在がそこにいた。
弁当を忘れるとかちょっとしたハプニングはあったが、おおよそいつもと変わらぬ日常を過ご
していて、やや危機感が薄れていたらしい。それだけにショックはでかい。
ミヨキチ──というか朝倉が、何故か北高の中庭でランドセルを背中にランドセルを背中に俺
に向かって手を振っていた。だが驚いたのはそれだけじゃない。
何故か……どういうわけか、朝倉の隣には、俺の妹も一緒だった。
583 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:41:36.52 ID:MwA0D1Vl0
支援いるかな?
584 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:42:54.56 ID:eSfJKgrp0
終わりかな?
585 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:44:59.40 ID:MwA0D1Vl0
多分サルだろうね。10レス目だったし。
586 :
恋文の人:2006/09/23(土) 17:46:13.61 ID:1NKUVGX/O
やっぱり10レスでバイさるくらいますね
とりあえず今日はここまでです
それではまた〜 ノシ
587 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 17:48:31.22 ID:JtFmP3ETO
乙!
次からは支援する
今日は気付くのに遅れたorz
588 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 18:02:33.24 ID:GVCLeVbF0
保守
589 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 18:02:56.66 ID:4xLRIoU20
乙です!
10レスがラインですか……
590 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 18:03:06.47 ID:Dyigwdn2O
支援出来んかった…orz
しかし乙!
続きwktk
乙!
新しい発想で先が気になる
592 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 18:21:12.60 ID:uwU2IfjZ0
保守
593 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 18:28:15.71 ID:Dyigwdn2O
保守
594 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 18:34:11.12 ID:GFGDUqMj0
ほふ
596 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 19:01:02.99 ID:CjWkLtii0
古「……さっきの衝撃のせいで涼宮さんの最近まで
眠っていた力がまた出てきたようですね……」
森「涼宮ハルヒッ!復活ッ!!涼宮ハルヒ復活ッ!涼宮ハルヒ復活ッ!」
597 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 19:08:52.81 ID:CbVO9Nyn0
バイトに向けて仮眠する。おやすみ&保守
保守
あーそれっぽいねぇ
思い出がいっぱい の下にH2Oって書いてあるから
エロゲの曲かと思った……orz
ほしゅ
602 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 19:28:57.80 ID:gDgAH4rE0
保守
603 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 19:32:37.08 ID:bv24sUYcO
保守
>>596 おまい、さっき痴漢男のWEB漫画見てきただろw
ほしゅ
606 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 19:43:26.96 ID:Dyigwdn2O
ハニカミwktk保守
607 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 19:53:24.92 ID:XHURYlU6O
●<今夜のためにハニカミ一話から全部読んだ僕がホッシューレ!
608 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 19:53:30.31 ID:Dyigwdn2O
保守
609 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:03:21.78 ID:Dyigwdn2O
保守
610 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:05:17.56 ID:n3J+BFrg0
ハニカミってキョンx長門?
611 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:07:26.38 ID:Dyigwdn2O
そう。
恋愛強化週間でキョンと長門をくっつけようって話し。
612 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:13:21.37 ID:JtFmP3ETO
ちょww長門は俺のものwwww
613 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:14:30.06 ID:n3J+BFrg0
thx
なんか最近キョンx長門物って増えたなw
614 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:24:30.64 ID:n3J+BFrg0
そろそろハニカミくるんじゃね?保守
615 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:27:40.86 ID:3M1r+l+40
ハニカミwktk
616 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:35:56.86 ID:Dyigwdn2O
wktk保守
617 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:36:19.31 ID:JtFmP3ETO
wktk保守
618 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:44:44.16 ID:JtFmP3ETO
保守……まだ?
すんません、ハニカミです。
推敲に思ったより時間がかかってしまい投下時間が遅れそうです
21時台には投下できると思うので他に投下したい方がいらっしゃいましたら
お先に投下してください。申し訳ありません
620 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:51:22.24 ID:CjWkLtii0
wktkしてますぞ
「貧民は、一生保守してればいいんだよっ!」
622 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:55:05.29 ID:XHURYlU6O
電車と被るがテレビを消してハニカミに集中するぜ
623 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 20:57:37.35 ID:Dyigwdn2O
wktk
624 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:01:27.14 ID:n3J+BFrg0
ハニカミ>電車>ピカチュウ
625 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:06:48.73 ID:JtFmP3ETO
「プリンがなくなってる。」
「あたしじゃないわよ。」
「僕も違います。」
「じゃあ長門か朝比奈さんか……」
「長門さん!いまですっ!」
「攻撃対象の『キョン』の記憶を消去する。」
「うっ!………なんか忘れてる気がするが…まぁいいか。」
「長門さん。これ、約束のプリン半分ですっ。」
「………ありがとう。」
「あんた達何してんのよ?」
「演劇の練習ですっ!」
「………そう。」
「まぁいいわ、キョンも演技上手くなったわね。」
「俺………ジョン・スミス。キョンではない」
「「「「ちょwwww」」」」
って感じで世界破滅保守
626 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:09:46.79 ID:bv24sUYcO
ハニカミwktk!
627 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:18:23.24 ID:JtFmP3ETO
wk保守
628 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:26:41.84 ID:Dyigwdn2O
wktk保守
魂のルフランは分かった
歌ってんのは誰だ?
ちょwwwひどいミスwwwwwwww
数週間ぶりに今北産業
634 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:36:04.05 ID:JtFmP3ETO
635 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:37:10.98 ID:Dyigwdn2O
636 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:39:51.76 ID:n3J+BFrg0
>>634 IDみてジェットふもっふを想像しちまった・・・
637 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:40:57.04 ID:RXDIcfg00
キョン「ハルヒ お前の顔をつねりたい」
ハルヒ「へ? あんたバカ?」
キョン「俺は真剣なんだ 真面目に聞いてくれ!」
長門「私でよければ・・・・・」
古泉「おやおや、何やら楽しそうな事をしていますね」
朝比奈さん「え?え?何ですか」
キョン「長門、つねるぞ」
長門「・・・・・」
キョン「・・・・・」
ハルヒ「キョン、ちょっと体育館裏に来て」
キョン「何だ?」
ハルヒ「思う存分つねってあげるわよ・・・」
という流れで保守
638 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:44:29.52 ID:XHURYlU6O
639 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:45:55.62 ID:mq1Qhfn5O
キョンとハルヒがああなってこうなってアッー!で朝青龍なSS考えたけど散々既出な上にツマんなかったのでやっぱやめた
っていう保守
ハルヒが死ぬってSS書いたけどgdgdになったのでやっぱやめた
という保守
642 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:49:34.23 ID:n3J+BFrg0
ハニカミ見る前に風呂入って古泉してくる!!
保守
>古泉してくる!!
kwsk
書かなくていい
644 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:50:46.90 ID:JtFmP3ETO
ジェットふもっふが
保守
645 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 21:58:44.22 ID:Dyigwdn2O
保守
110
軋むような扉の閉まる音。元々殺風景であった治療室内は、殊更寂しくなったよ
うに感じられた。たった二人、その場からいなくなっただけだというのに、その空間
は異様なまでにがらんとしてしまったように思える。
中にいた古泉と朝比奈さんに席を外して貰い、今、このがらりとした手狭な部屋
には俺とハルヒ、そして長門の三人きりしかいない。
物言わぬ長門の姿に改めて動揺を隠しきれないのだろうハルヒが俯いたまま時
折擦れた喘ぎを漏らすのが、俺の心地を酷く落ち着かなくさせていた。
俺はゆっくり、深呼吸の要領で息を吸い、腹に力を込めて全身に活を入れる。
このままハルヒとともに陰鬱に沈むのはごめんだった。それに元より、今この場で
悲しみに浸る理由なんてのは――――俺にはないのだから。
俺は横たわる長門に近づき、その、眠っているだけのような顔を覗き込む。そして
もう一度ゆっくりと息を吸い込み、吐き出すとともに背中のハルヒへと言い放った。
「お前も、そんなとこに突っ立ってないでこっちに来たらどうだ」
案の定、返事はない。予想通りの無反応に、ついさっきも同じような状況で、同じ
ような台詞を吐いたな、なんてなことを考えながら、俺は再び口を開く。
「なあ、聞こえてるか?」
「聞こえてるわよ…」と、ハルヒ。酷く弱々しい声だ。
648 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:05:04.89 ID:g712awUv0
+(0`・ω・) + ワクテカ +
111
「なら、返事ぐらいしろよ」
ぞんざいな俺の返しにカッときたのか、ハルヒはじろりと俺を睨み付けると、
「…あんた、なんでそんな平気にしてられるの…?あんたには血も涙もないの!?」
一昔前まで冬眠中の爬虫類みたいに冷血だったお前には言われたくないな…、
なんて減らず口が頭をよぎるが、口に出すのは止めておく。今は、そんな冗談にも
ならないことを言うときではない。今、俺がその問いの答えとして語るべき言葉は、
ひとつだけだ。
それは、気づいた、とでも言うべきなんだろうか。それとも、思い出した、なのだろ
うか。どちらにせよ随分と余計な回り道をした気がする。…いや、余計ではないか。
こうしてたらたらと回り道をしたお陰で、俺はようやくそれと向き合えるようになった
のだから。
……答えなんて、初めから分かっていた筈なのにな。
「そりゃあ、俺がまだ諦めちゃいないからさ」
650 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:05:30.70 ID:gDgAH4rE0
支援
651 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:05:56.81 ID:XHURYlU6O
ktkr!!!!!!!1111
112
ハルヒは俺の言葉の真意を掴みかねているようで、目を白黒とさせて俺を見てい
た。僅かに、その顔に色が戻ったような気がするのは気のせいだろうか。
俺はそんなハルヒのツラを眺め、そして再び視線を長門に落とす。
「…綺麗な寝顔だよな。これで死んでるだなんて、俺には到底信じられそうにない」
恐らく、ハルヒはその台詞を現実を見ないガキの台詞と受け取ったのだろうな。
一瞬、輝きを取り戻したかに見えたその表情は、すぐさま失望の色に彩られる。
「…でも、死んでるんでしょ?」
その口から簡潔に放たれた言葉は、そんな、突き放すような冷たい響きを持って
いた。嫌な想像が現実のものになる感覚に、俺は歯噛みする。
やっぱり、こいつは認めちまっているのか。長門の……、死を。
「ああ。確かに心臓は止まってるし、体も冷たい。 ――――けどな」
事実、俺はガキかもしれない。諦めの悪いガキかもしれない。けれど。
「…けど、何よ」
詰まってしまった言葉の、その先を促すようにハルヒは問う。俺は暫し話す内容を
考え、そしてこう切り出した。
653 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:07:03.47 ID:g712awUv0
支援支援
654 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:07:23.57 ID:JtFmP3ETO
ktkr支援!
113
「なあ、ハルヒ。お前にとって、長門はどういう存在だ?」
「……は?」
一足飛びに変化する話に咄嗟についていけないのか、ハルヒは素っ頓狂な声を
上げた。しかし俺の表情から何らか読み取ったのか、怪訝だったその顔は次第、
真剣みを帯びていく。
「長門だけじゃない。古泉は、朝比奈さんは。今のお前にとって、どういう存在だ?」
その問いの意図するところは、多分、ハルヒにも分かっている筈だった。
例えば屋上からの道すがら、俺は殆ど嫌がらせにも近い速さでハルヒの手をぐい
ぐいと引っ張ってきた。だってのにとうとうこいつの口からは非難の言葉の一つも出
やしなかった。
つまり、ハルヒはどう考えても、今までに見たことないくらいの憂鬱に沈んでいるっ
てことで。そしてそれは、それだけ長門の死が与えたダメージってのが、こいつの中
で大きかったってことだよな?
先の、屋上で台詞に詰まってしまったときも同じことだ。理解はしていてもそれを
認めてしまうのが……、怖いんだ。恐らくはこいつにかつて、『そんな形容』で表さ
れる他人の存在なんてなかった筈だからな。
他人はあくまで他人であり、自分にとってそいつが面白いか否かだけがその価値
を測る判断材料。そしてこいつが面白いと思うような対象なんてのは所謂普通の世
間一般というものに在る訳がなく、つまるところ面白いことを求めてる自分と面白く
もなんともない他人―――――
656 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:07:29.27 ID:Dyigwdn2O
支援
657 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:07:58.90 ID:XHURYlU6O
>>646 ハニカミ7はありませんと出る('A`)
114
そんな鬱病一歩手前みたいな二極化した世界が少なくとも高校入学当初の、あの
退屈そうだった涼宮ハルヒの頭にはあったのだろう。
だが、どうだい。SOS団の活動を始めてからこの方のこいつは。そりゃあ、たまに
酷い浮き沈みはあるにしてもだ。毎日が楽しくて楽しくて仕方がない、そんな生き生
きとした顔をしているように俺には思えるのだがね。
勿論、自分の好き勝手なことが出来てそれが楽しいってのはあるのか知らんが、
けれど谷口らから伝え聞くこいつの中学時代の話によれば、当時も十分好き勝手
なことをしてたわけで。
しかしながら例えば、奇しくも俺が関わっちまったあの七夕の夜の校庭落書き事
件なんてのがあるが、あのときのハルヒの渋面は到底楽しいなんて感情が読み取
れるようなもんじゃなかった。
ならその表情の違いってのはどこから来るんだろうねと考えたとき、出てくる答え
なんてのは結局のところこれしかない。
その周囲に『そんな形容』で表される他人の存在が、あるか否か。
最初はそれこそただ適当に集めただけの団員。体を成せばそれで用済みの、云
わば数合わせのような存在だった。けれどその存在は、いつの間にかこいつの中
で大きくなり、そしてこいつは今更ながらにそれに気付き戸惑っている。
けどな、ハルヒ。戸惑うことなんてないんだよ。中学からこの方まともに人付き合
いもしてこなかったお前はもしかしたら忘れちまってるのかも知れないが。こんだ
け毎日顔をつき合わせてりゃそうならない方が不自然てもんなんだ。
659 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:09:03.43 ID:Dyigwdn2O
支援
115
なあ、ハルヒ。お前が恥ずかしくて言えないってんなら俺が代わりに言ってやる。
いやまあ、俺だって流石に口に出しては言えないが、せめて推し量ってやるくらい
のことはできるからな。
今のお前にとって長門は、朝比奈さんは、古泉は、『大切な仲間』って奴なのさ。
「俺は、信じたいんだ。……いや、信じてる。俺やお前が願う限り、みんなは絶対に
俺たちの前から消えたりしない」
そうさ。俺は信じてる。
お前にとってみんなが、今や掛け替えのない存在になっていることに。
今こいつが見せている悲痛な表情ってのが、一体何を物語っているかなんてのは、
敢えて言葉に出すまでもない分かりきったことだろう?
こいつは長門の死なんか望んじゃいない。今は勿論長門が倒れたあの瞬間も。
そもそもが、だ。こいつが涼宮ハルヒである限り一億分の一秒たりとも長門の死
を望むわけなんかないんだよ。
だから今のこの状況は、長門が死んじまった世界なんてのは、きっとなんかの間
違いって奴だ。それ以外に考えようなどない。
なあ、そうだろう?ハルヒ。
お前が流した涙はその理由になっていい筈さ―――――
116
だから俺は信じない。長門の親玉を消し、長門をこんな目に遭わせたのがお前だ
なんて絶対に。長門が倒れたあのときも。古泉に、ハルヒの仕業でしか有り得ない
と、そう言われたあのときも。捨て切れなかった疑念はやはり、正しかったんだと。
信じる。俺は、それを信じている。
ガキみたいだと笑わば笑え。だが俺は何があろうと絶対に認めねえぞ。仮にお前
が認めちまったってんなら、無理やりにでもその間違いを正させてやる。
「―――――だから、」
俺は言葉を区切り、ハルヒを見る。その自信を失った不安そうなツラは、いつもの
こいつを知っている奴なら我が目を疑うようなものだ。とてもじゃないが見れたもん
じゃないそのツラを、けれど、だからこそ俺は深く見据える。
確かにな、長門が倒れ伏せその体温がなく、返事どころか心音すら感じられない
という状況は、お前が絶望するには充分なのかも知れない。けれどお前はまだこの
現状に対して何もしちゃいないだろう?まだやれることはいくらだってあるだろうに。
泣き寝入りなんてらしくない。いつものお前なら医者の首根っこ引っ掴んで、「有希
を生き返らせなさい!五秒以内で!」くらいの横暴は言ってのける筈だろうが。
そうさ。お前はまだ何もしちゃいない。何もせず諦めて現状に甘んじるなんてのは
俺の役割だ。俺に任せとけばいい。そんな、どこにでもありふれた無気力さの対岸
にいるのがお前だった筈だ。
662 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:11:35.23 ID:Dyigwdn2O
支援
663 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:12:01.66 ID:m5W4zotfO
wiki重くて見れない('A`)
支援
117
だから俺は信じるのさ。
お前はこんなところで終わるような奴じゃない。
「信じてくれ、ハルヒ。 長門は、必ず戻ってくる」
このまま――――――終わる筈がない。
……どうしてだろう。たった二言三言話しただけであるのに、俺の口はからからに
渇いていた。ごくりと固い唾を飲み込んだ音は、もしかしたらハルヒにも聞こえてしま
ったかも知れない。
すっかり口を閉じてしまった後で、言葉が足りなかったかも知れないとか、もっと
論理的に話すべきだったとか、愚痴のような後悔が押し寄せてくる。
おいおい随分と俺は小心者だったんだな。なんてことを思うが、しかしこんな目で
睨まれたら誰だって後悔もしたくなるってもんだ。
そう、まるで親の仇を見るような殺気立った目で、ハルヒが俺を睨んでいた。
665 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:12:23.94 ID:gDgAH4rE0
支援
「一週間」読んだ。
楽しみにしてました。
やっぱ良かったです。ありがとう。
nextもwktkしてます。
667 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:12:57.68 ID:gDgAH4rE0
支援
668 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:13:01.27 ID:Dyigwdn2O
支援
118
「まったく…、おめでたいにも程があるわね…、」
怒りを押し殺したような声。…いや、『ような』じゃないな。ハルヒはまず間違いなく
怒っている。何故だ?とは思わない。むしろ至極当たり前のことか知れない。
そりゃそうさ。あんだけ言葉の足らないふわふわとした夢想論を、しかも上から目
線で語られて、こいつが黙ってハイそうですかなんて納得するわけがない。
「…信じる?…願う? そんなもんでなんとかなるなら、どうして今、有希は起きない
の? どうして、返事もしないの?」
ハルヒはつかつかとこちらに歩み寄り、左手で俺の胸倉を引っ掴む。捻り上げ、
自由な右手はぎりぎりと音がしそうなほどに固く、握り拳をつくっていた。
「答えなさいよ………、 ……答えろって言ってんでしょ!?」
叫ぶとともに大きく振り上げられた拳は、しかし次の瞬間、とすん、と。俺の胸に
力なく打ちつけられる。その衝撃は本当に、まったくもって小さなものだったが、そ
れでも―――――
「なんなのよバカキョン…!あたしがそう信じたって、どれだけ願ったって…、有希が
生き返るわけないじゃない……っ!!」
打ちつけた側であるハルヒの、その両目になみなみと溢れていた涙を零すには
充分すぎた。
670 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:13:36.21 ID:bQ2dumgW0
あぁ、('A`)
挟まってごめん。
支援
671 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:13:49.11 ID:JtFmP3ETO
ってかwikiの作品消えまくってないか?
672 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:14:36.56 ID:gDgAH4rE0
支援
119
ああ――――と。あまりにも慣れすぎて半ば忘れていた認識が頭をもたげ、思い
知らされるような心地で俺は真正面にそれを見据える。ぼろぼろと涙を零している、
その顔を。
そうだったよな、お前は。どうしようもなく自分勝手で自己本位で猪突猛進、周りの
迷惑とか考えなくて、宇宙人とか未来人とか超能力者とか異世界人とか、そんなも
のの存在を本気で信じているようなぶっとんだ奴だけど。
それでも常識的な部分が捨てきれない、そんな奴だったんだよな。
涙を流すに任せているハルヒの肩を両手で掴み、俺は言った。
「ハルヒ。 聞いて欲しいことがある。 …大切な話だ」
立ち位置やら体勢やらが似通っているからだろうか。デジャビュのように思い出す
のは、あのときのことだ。…いや、似通ってるのはそれだけではない。
「……なによ」
ハルヒの不機嫌そうな声も、融通の利かないこいつをなんとか宥めすかそうとして
いるという状況も、まるであのときと同じだった。
ひょっとすると、俺はこの時点で何か幻覚でも見させられていたのかも知れないな。
でなけりゃこの俺があんなこっ恥ずかしい真似が出来るわけがない。
……と、後になって湧き上がるのはそんな後悔のような感情ばかりであるが、しか
しながらこのときの俺にそれを危惧させるのは、果たして不可能に近かった。
wikiが全く見れないどころか削除されましたってでる。なじぇ?
支援
675 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:15:06.28 ID:XHURYlU6O
>>664 まぁ俺は6話までさっき読み直したから問題ないがなw
「存在しないか削除された」だって
朝倉「ニヤニヤwktk
676 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:15:19.55 ID:Dyigwdn2O
ケータイからは「ハニカミ」は6までしか表示されてなかった。
保守
677 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:15:56.82 ID:gDgAH4rE0
支援
120
簡単に言えば『ハイになっていた』という奴だろう。俺はそんなハイになった気分に
任せ、押さえつけるように掴んだハルヒの肩を軽く揺らし、その視線を俺の目に合わ
せさせる。丁度、互いに見つめ合うような形である。
ほんの数センチ先にあるハルヒの顔が、急に赤みを差したように思えるが、恐ら
く気のせいだ。泣き腫らした目元のせいでそう見えるだけだろう―――――と。
ちょっと引っかかるものはあったものの俺はそう思うことにして。
引っ叩かれるのを覚悟で、二の口を告げた。
「俺は、長門が好きだ」
まあ、まさかまたグーで殴られるとは思ってなかったわけだが。
ずがん、と脳髄が重い衝撃を受ける。しかしまた今日はよく殴られる日だ。俺は
そんなことを考えながら、けれど覚悟していたお陰か今度こそ無様に転げることな
く踏み止まることができた。
殴られた左頬はすぐにも熱をもって痛み出すかと思われたが、しかし今日一日で
幾度となく殴られたせいだろうか、最早痛みを通り越して感覚が麻痺している。それ
がちょっぴり恐ろしい。
ここが病院であったことに、俺は感謝すべきだったのかも知れないな。歯科医院
だったらもっとよかったような気もする。
679 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:16:46.24 ID:ZShSHxwzO
しぇん!!
680 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:17:18.89 ID:gDgAH4rE0
支援
681 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:17:28.80 ID:MAGBG9FD0
支援だが 長編キョンがなくなってた
682 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:17:52.88 ID:gDgAH4rE0
支援
683 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:18:02.63 ID:XHURYlU6O
てか携帯から一覧見た
荒らしだな多分
短編全部消えてた
684 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:18:20.46 ID:G31zXbiD0
時のパズル3まで読んで、いざ4を読もうとしたら
消えとるがな(;´Д`)
なして?
685 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:18:25.01 ID:JtFmP3ETO
支援
誰かwikiに何が起こったかkwsk
686 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:18:26.17 ID:MwA0D1Vl0
ハニカミ7さっきまで見れたんですが、見れなくなってますね。
削除されたようです。
ちなみに、俺がやったわけじゃないですよ。
687 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:18:32.34 ID:ZShSHxwzO
wikiがおかしくなってるけど、
ハニカミ応援中
688 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:18:35.79 ID:Dyigwdn2O
支援
689 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:19:12.92 ID:gDgAH4rE0
支援
690 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:19:35.46 ID:jhfq4JZz0
wikiの弱点……誰にでも編集可能なこと
692 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:20:17.86 ID:Dyigwdn2O
荒らしか…
ハニカミ支援
121
ともかく、たたらを踏んだものの転げることのなかった俺は、殴った反動そのまま
転進するハルヒの手をなんとか捕まえることができた。
「最低…っ!なんなのよ…!…この!離しなさいよ!」
「離さん。俺は確かに最低か知らんが泣いてる女の手を放せるほど腐っちゃいない」
ハルヒはぶんぶんと手を振って俺の手を離そうとする…だけでなく、俺の脛にげし
げしと、…いや、ずどんばきんと一発一発丁寧に腰の入ったローキックをお見舞い
してきやがった。
おいおい。いくらなんでもこういう状況で蹴りを入れるか?しかもすっげえ痛ぇし。
ハルヒの凶暴な反応に苦笑しかける己を抑えようと思ったが、無理だった。むや
みやたらとハイな気分も普通ならこの鮮烈な痛みで醒めるというものなのだろうが、
増して楽しくなってすらくる。
別に俺が特殊な趣味を持ってるってワケじゃない。だがこれで笑うなと言う方が
不条理ってもんだろう。この、身に有り余る横暴さ。
――――――そうだよ。それでこそ涼宮ハルヒだ。
694 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:20:28.41 ID:MAGBG9FD0
wikiの強み……誰でも編集できるところ
ウィキが変なんだが俺だけ?
696 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:21:13.96 ID:gDgAH4rE0
支援
697 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:21:16.53 ID:MAGBG9FD0
ま、今はハニカミを全力支援しようじゃないか
698 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:21:29.05 ID:G31zXbiD0
wikiの荒らしって通報できんのか。
つーか警察に突き出したい。
時のパズルの続き・・・・(;´Д`)
699 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:21:58.75 ID:Dyigwdn2O
支援
700 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:21:59.74 ID:m5W4zotfO
wikiのトップにerror127とでてるな
支援
122
「はーなーせ! 離せって言ってんで―――――ぅわぁっ!」
俺は笑みを浮かべながら、ぎっちりと掴んでいたハルヒの手をぐいっと引き寄せ、
勢いあまってぶつかってきたその華奢な体を抱きとめた。
「ちょっ…、ちょっとキョン何してんのよ! 離れなさい!離れろってば! …ぐぇ」
ハルヒの意に反し、俺は背中に回した腕でがっちりとホールドする。抱きとめてい
ると言うよりは『さば折り』のような形であるが、だからと言ってどうということはない
だろう。ハルヒが簡単に逃げられなくなった、という意味ではどっちも同じことだ。
「嫌だね。 離したらお前、逃げるだろうが」
「逃げないから! と…、とにかく離して! 痛いんだって!」
マジに痛そうな顔をするハルヒに俺は腕のホールドを解くと若干身を離すが、しか
し先程と同様、その両肩をがっちりと掴むのを忘れない。逃げないと言ったハルヒ
の顔はとても嘘を言ったようには思えなかったが、またいつ心変わりするか分から
ない。こいつを逃がさないようにする為には、これが最大限の譲歩という奴だ。
しかしこいつ、ますます顔が赤いように見えるが、吹きっ晒しの屋上にずっといた
せいで、風邪でもひいたんじゃなかろうか。俺がそう言ってやるとハルヒは、
「うっさいわね!」
と若干キレ気味で返してきた。折角心配してやってるのに。意味が分からん。
702 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:22:13.82 ID:MM9Kw+yyO
支援
703 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:22:27.59 ID:gDgAH4rE0
支援
123
しかし後々になって思うのは、恐らくこれが最後の分岐点だったのだろうというこ
とだ。つまり、ここで俺がもう少し冷静だったなら、あんな恥ずかしい真似はせずに
すんだかも知れない―――という論拠のない仮定の話である。
ただ少なくとも、あと2デシベルくらい俺のテンションが減衰していれば、俺はもう
ちょっと危険の少ない策を取っていただろうし、体が密着するくらいの距離になって
初めて気づく思春期の女子特有の甘い匂いなんぞに騙されたりはしなかった筈だ。
だが果たして、このときの俺はそこまで回る頭を持っていなかった。無理もない。
文化祭の、あの映画撮影を思い出す。部室でぶうたれていたハルヒに柄にもない
ことを言っちまったあのときと同じくらいに、いや、あのとき以上に―――――
俺は、最高にハイってヤツだった。
「ハルヒ、もう一度はっきりと言うぞ。俺は長門が好きだ」
ハルヒの目を正面から見据え、俺はもう一度同じ台詞を吐いた。何故かハルヒの
表情が悔しそうに歪み、その視線が斜め下を向くが、俺は気にせず言葉を続け、
「長門だけじゃない。朝比奈さんも好きだし、古泉もまあ、好きだな。それからアホ
の谷口も、国木田も、鶴屋さんも、みんな好きだ」
正面に捕らえたハルヒの瞳が、微かに、驚いたように震えたのが分かる。上目遣
いでこちらを見るその瞳は、「あんた…、何言ってんの?」……と、そう言っているか
に見えた。
705 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:23:21.29 ID:gDgAH4rE0
支援
706 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:23:25.66 ID:MAGBG9FD0
支援
707 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:23:28.24 ID:ZShSHxwzO
ハニカミの続きを待ってたんだよ!!
しぇん
708 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:23:39.30 ID:Dyigwdn2O
支援
709 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:24:05.92 ID:MAGBG9FD0
支援
710 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:24:14.31 ID:JtFmP3ETO
支援
元に戻す方法ないのか?
124
それを見届けて、俺は末尾を結ぶ。
「―――――そこに、消えちまった朝倉を含めてもいい」
ハルヒの目が見開かれる。口も同様に、ぽかんと半開きになる。その表情は恐ら
く驚愕という形容で言い表されるものに違いない。
俺はそれを眺め、苦笑染みたため息をつく。
実を言えば、俺は自分でも自分の発言が理解できていなかった。このときの俺は
ただ思いつくままに言葉を吐き出していたに過ぎない。ましてあのときのことを再現
しようなどこれっぽっちも思っちゃいなかった。
だと言うにそんな台詞を吐いてしまったのは、ただ単に勢いに任せただけか、そ
れともデジャビュとともに思い出したあの忌々しい出来事がいつの間にか俺の言動
を支配していたのか。
どちらにせよ、最早俺に言葉を止めるつもりはない。ここまで来ちまったんだ。後
はもう、思いつくに任せ言葉を吐き出していくのみだ。
と、ヤケクソ気味に決意しながら、俺はもう一度笑いを漏らすようにため息をつく。
712 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:24:53.63 ID:gDgAH4rE0
支援
713 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:25:16.09 ID:Dyigwdn2O
支援
714 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:25:43.67 ID:gDgAH4rE0
支援
125
昨日までの俺は、きっとガキだったんだろうな。気恥ずかしさ、或いは己の臆病さ
に負けて、逃げに走っていた。だが不幸にもそれが間違いだったと気づいてしまい、
そのせいで俺は前よりずっとガキになった。
誰かを信じるということ。誰かと共にいたい思うこと。大切だと思うもの。大切だと
思う人。大切なものを大切だと大声で言えるのがガキの特権なら、俺はガキでいい。
思えば…、そうだな。俺が文字通りのガキの頃に憧れた、アニメ的特撮的マンガ
的ヒーローなんてのは、その戦う理由は数あれど、そういった大切なものを守る為
に戦ってたんじゃなかったっけか。そして俺は、そんなものになってみたいと本気で
思ってたんじゃなかったっけか。
まあ、俺にはそんな子供たちの憧憬の対象になるような宇宙的な知識もなければ
未来的技術力もないし、超能力なんてもっての他である。当たり前だ。俺はごくごく
普遍普通のイチ男子高校生なんだからな。
それに現実そんなものを持っている奴らがやってることなんてのは、正義の味方
なんて畏まったものでなく、夏休みの宿題みたいな観察日記なのである。これでは
夢を持つ方が馬鹿らしいってものだ。
いやいや、問題はそんなことじゃないな。分かってる。顔も知らない誰かの為に戦
うヒーローなんてのは、所詮虚構の中でしか存在できない有形無形の偶像で、現実
にあるのはその模造品のような偽善だけで、けれど元よりそんな献身的精神なんぞ
持ち合わせちゃいない俺には、その模造品にすらなれない。
管理人さんに頼るしかなさそうだな
支援
717 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:26:09.48 ID:JtFmP3ETO
支援
718 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:26:42.42 ID:MAGBG9FD0
支援
719 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:26:47.69 ID:Dyigwdn2O
支援
720 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:26:52.73 ID:XHURYlU6O
この怒り全てハニカミへの支援へ向けるぜっ
wktk
126
……いや、だからってどうということもないな。それならそれでいい。
俺が願うのは、世界平和だとかそんな大仰なもんじゃなくていい。俺の周りにいる
人だけでいい。俺が好きだと、大切だと思う人たちの幸せを、共に過ごす時間を守
りたい。それだけなのだから。
都合のいい話だとは分かってる。虫のいい話だと理解している。それは全と一を
天秤にかけて、一が勝る矛盾だ。
だがな、俺にはそれが精一杯なんだよ。俺にはお前と違って世界を相手に背負い
投げかませるような器量もなければ力もない、ただの一般人だ。情けない話だがそ
の願いを叶える為に俺に出来るのは、せいぜいお前を説得するくらいのことだしな。
ああ、そうだな。説得するしか出来ないってんなら、俺はお前が首を縦に振るまで
なんべんだって説得する。罵られようが声が枯れようが知ったことか。もしも説得な
んて言い草が気に食わんのなら、頼みということにしてやってもいい。プライドが鼻
につくってんなら地べたにでも這いつくばってやるよ。
だからさ、そんなちっぽけな願いくらい、叶えてくれたっていいだろう?
なあ、ハルヒ――――――――
「なあ、ハルヒ。俺は今日、色んなことを学んだよ。その中で、俺はこの世界が前よ
りかずっと好きになった」
笑みを崩さないまま、俺はハルヒのツラを正面に見据え、言う。いつもならあと数
歩は後ずさるだろう、軽く曲げた腕のリーチ分しかない距離も気にならない。
722 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:27:35.09 ID:ro3C/ZrV0
723 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:28:16.20 ID:gDgAH4rE0
支援
724 :
ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2006/09/23(土) 22:28:16.47 ID:MwA0D1Vl0
確認しましたけど、恐らく荒らしではない筈です。サーバーエラーの一種だとは思うんですが、俺は編集の際、管理者ページにも履歴を残さないようにするのは出来ないようにしてます。それなのに削除の後もありませんでした。
だから、多分鯖側の問題だと思います。
ページ一覧では削除前と同じページ数なので、そのうち直ると思うんですけど、ただerror 127がなにかわからないので、分かる人は教えてください。
127
俺を見るハルヒは何故か呆けたようなマヌケ面で、まるで今の俺の姿に別の何か
を重ねてみているような、そんな様子だった。
「でも、そこには長門がいて欲しい。朝比奈さんがいて欲しい。古泉がいて欲しい。
俺たちの周りにいる、みんながいて欲しい。 誰が欠けても嫌なんだよ。俺が好き
な世界には、みんなが必要なんだ」
そこで言葉を区切ったのは、息を吸い込むためだけではない。いくら思いつくまま
に言葉を発しているとは言え、流石にこの二の口を吐くのは躊躇いがあった。
だが、その躊躇いも一瞬さえもたず、俺は勢いに任せたまま結句を――――
「そして、その中心にはな、ハルヒ。お前がいる」
結んで、一瞬も経たない内に俺は激しい後悔に見舞われた。
何故だろうかね。言ってしまった後で、まるで夢から覚めたように急に現実に引き
戻されたわけさ。
726 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:28:39.19 ID:XHURYlU6O
私怨を支援に!
727 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:28:52.27 ID:Dyigwdn2O
支援
もしかして、消えたのって… 復 旧 不 可 能?
729 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:29:59.73 ID:gDgAH4rE0
支援
730 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:30:06.13 ID:G31zXbiD0
128
先程ハルヒに殴られてこの方のおかしなテンションが、サーッと音を立てて退場し
てゆく。即ち、「うわぁ、何言っちゃってんだよ俺」……と。
猛烈な気恥ずかしさが俺の身を震わせる。発熱していく右頬と、殴られたせいで
元から熱を持っていた左頬の温度が、コンマ秒足らずで等しくなった。それから幾
許もしない内に、もしかするとあれから今まで殴られた衝撃で頭をどうにかしていた
のだろうかと、そんなことを思ってしまうくらいには冷めた俺が戻ってくる。
だが、冷め切ってないのが問題だった。こういう中途半端が一番よくない。つーか
まずい。この状況でこのテンションは非常にまずい。
俺は身を切るような激しい恥辱に気が遠くなりそうになりながら、かつ自らの台詞
の青臭さに逆流しようとしている胃液を押さえ込みながら、なんとかフォローの言葉
を探し……、
「お、俺はさ。俺が好きな世界を、もっとお前にも好きになって欲しいんだよ」
フォローになってねえよ!つーかダメ押しだ!?
「だから…、俺を信じてくれ…?」
なんで疑問系なんだろうね。
…ダメだ。どう思考を巡らそうとドツボに嵌っていくような、膠着円盤が如き台詞し
か思い付かない。考えすぎとストレスで胃がきりきりと痛み出し、頭はどうにかなり
そうだ……。
732 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:30:20.23 ID:rTS7x8PuO
支援
733 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:30:43.39 ID:Dyigwdn2O
支援
734 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:31:03.86 ID:gDgAH4rE0
支援
735 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:31:17.09 ID:G31zXbiD0
129
なんだろう。今まで必死に作り上げてきたシリアスな雰囲気というものがガラガラ
と音を立てて崩れていっている気がする。いや、別にそれが問題ってわけじゃない
が、それにしたってこれはあまりに情けなさすぎる。
あー、どうしてこんなときに素に戻るかね。以前朝比奈さんや長門と、まあ現状ほ
どじゃないが似たようなシリアスな状況に置かれたときは、もう少しマシな対応がで
きた筈なんだが………、何故だ?
ともかく、この状況はまずい。何しろ俺はさっきからまともにハルヒの顔を見れて
いないのだ。息もかかるくらいに接近してるってのに顔以外に何を見るって話で、
しかもかあまりの窮地に吃驚したのか俺の両手は固まってしまっていて、ハルヒの
肩を掴んだまま、動かそうと思っても動かせないってのに。
前狼後虎。蛇に睨まれた何とやら。そんな心地でちらりちらり、俺はハルヒの顔を
伺い見る。なんでまたそんな自らを死地に追い込むような真似をしたのかは我がこ
とながらまったく不明だが、丁度ハルヒがこちらから顔を隠すように身を屈めた瞬間
だったようで、視線がぶつかるという最悪の事態は免れた。
…と、そこで一つ疑問が生じる。俺が目を逸らすのは分かるとして、ハルヒが顔を
背けるのは何故だ?また陰鬱な気分に囚われたか?いやいや、この状況でそれは
ないだろう。だとしたら……、そうか。こいつも俺と同じように恥ずかしがって―――
737 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:32:04.46 ID:ro3C/ZrV0
Wikiは良し悪しって感じだな
バックアップとっておかないと危険すぎる
738 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:32:12.98 ID:Dyigwdn2O
支援
739 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:32:18.83 ID:XHURYlU6O
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
740 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:32:25.81 ID:WRAV4O2I0
支援
130
なんて、そんなことがあるわけがなかった。
「…っく、…ぶふっ、……くく、……っ、………ぎゃーっはっはっは!!ぶひゃーっ!」
大爆笑である。
湾曲させていた体を瞬時に起こしたハルヒは、勢いあまって後ろにぶっ倒れそう
になるくらいに、それこそ俺の両手がその肩を掴んでいなかったら確実に倒れてた
だろうくらいに反り返り、天を仰いで爆笑という名の雄叫びを上げた。
噴き出されたつばきが雨のように俺たちに降り注ぐ。
あのなぁハルヒ、きたねえよ。
「…っく、……大真面目に何を言うのかと思ったら…、…ぷっ、あはははは!」
ハルヒは両腕で腹を抱え、抱腹絶倒をそのまま体現するような形で息も絶え絶え
呻き声を漏らし、時折思い出したように爆笑する。そんな様子にちょっぴりムカつい
てきた俺がその旨を伝えると、
「…いや、…だって、…っく、あんた自分で言った台詞反芻してみなさいよ。…っく、
あははは!…ぶっ、ぐふぉっ、ダメだ…、お腹…、お腹痛い……っ、ひっ」
……訂正。ちょっぴりではない。俺は今猛烈にムカついている。
742 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:33:30.21 ID:rTS7x8PuO
支援
743 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:33:51.47 ID:gDgAH4rE0
支援
131
「一応な。あれでもこっちは真剣だったんだ。そうやって茶化されるのは気分悪い」
「い、いや…、別に……、っ、茶化してるわけじゃなくて……、ブフィーッ!」
盛大に噴かれたしぶきが俺の顔面を真正面に捕らえ、ぐっしょりと濡らした。
それにしてもこのハルヒ、ノリノリである。ってふざけんな。
いっそこいつ、穴でも掘って埋めちまうか?だが埋める場所を探すのは苦労しそ
うだな。なにせハルヒである。的確な処理を行った後完膚なきまでに埋めたにせよ
周囲の生態系に及ぼす悪影響は常識では計り知れないだろう。
とかなんとか考えていると、ささくれ立った気分も少しは収まってきた。こんな根暗
な妄想で苛立ちを紛らわすなんざ我ながら情けないとは思うが、腹を立てたままで
いることによる精神的肉体的苦痛を思えば、その方がマシってものだ。
とは言えこのまま何も言わず黙っているのも癪である。だから、「茶化してるんじゃ
なかったら、なんだよ」と、そんな意図不明の問いに見せかけた減らず口を俺が吐
いたのは、まあ自然といえば自然だった。
ただ…、しかしなぁ…。こんな答えが返ってくると知っていたら、そんな言葉は吐か
なかったんだがね。まあ、それを言えばあの分岐点で選んじまった選択をやりなお
せたらという話なのだが。
745 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:34:20.77 ID:Dyigwdn2O
支援
746 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:34:45.40 ID:gDgAH4rE0
支援
747 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:34:50.26 ID:XHURYlU6O
>>741 その方がいいと思いますよ
今追加したら火に油
132
「だって…、さっきのあんた…、っ、『みんなだいすき』っ…、なんて、子供みたいなこ
と言ったかと思えばっ、…っぷ、…その舌の根も乾かない内にプロポーズ紛いの台
詞吐いてんだもん……っ。そりゃっ、笑う、でしょ……、ぷっ、あははははは!」
苦しそうに笑いながら途切れ途切れに紡がれたその言葉に、俺は絶句した。
なんだって?プロポーズ?ハルヒの意味不明の言動に、俺は先程吐いたばかり
の台詞を思い出そうとする。その作業途中、あれから時間なんて殆ど経っていない
ってのに過去の忌まわしい記憶を呼び起こすような苦痛を強いられたのは―――
――それはつまり、そういうことらしかった。
いやいやいや違うぞ確かにそうと受け取れなくはないかも知れないが俺はそんな
つもりで言ったんじゃないし第一いろんな手順とか段階とか一足飛びにしすぎだろ
そもそもなんで俺がお前にプロポーズなぞせにゃならんのだ先ずそこをはっきりさ
せて貰おうか。
と、やたらと早口になってしまった俺の弁解を聞いていたのかいないのか。いや
さこの距離だ。耳にはきっちり届いていたに違いないハルヒは、しかし「ようやく落
ち着いた」とばかりに呼吸を整える溜め息をふうと吐くと、穏やかにこう言った。
「なんていうのかな。 …そうね、あたしは今、すっごく嬉しいかも」
なんと言えばいいのだろう。そのときハルヒが見せたのは…そうだな。まるで台風
が過ぎ去った後の晴れ晴れとした空を見上げた時のような、満足げな表情だった。
749 :
ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2006/09/23(土) 22:35:39.22 ID:MwA0D1Vl0
取りあえず昨日までの全ページのバックアップは取っているんですけど、一から復旧だとしたら、何日掛かるか想像も出来ないですね。
750 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:36:30.96 ID:rTS7x8PuO
マジ荒らした奴誰だよ
751 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:36:33.81 ID:Dyigwdn2O
支援
752 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:36:45.87 ID:ZShSHxwzO
しえーん
753 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:37:00.14 ID:gDgAH4rE0
支援
133
それを目に収めた瞬間、これまで俺を包んでいた気恥ずかしさやら照れたような
感情、困惑やら焦りなんてのが、灰燼となって消え失せる。
どうしてかは分からん。これが毒気を抜かれるという奴なのか。はたまた呆気に
取られただけかも知れないが、まあ下らないことに執着してる自分が堪らなく馬鹿
らしくなったってことだけは紛れもない事実だった。
気づくと、俺はくつくつと声に出して笑っていた。ハルヒもつられてくつくつと笑う。
そして肩を掴んだままの俺の手に自らの手を添え、半歩ほど俺に近づく。
「ねえ、キョン」
なんだよ。
「あんたがみんなを好きで、一夫多妻制かつ同性愛支持者なのは分かったけどさ」
とんでもないことを言い出しやがる。
俺がそういう意味で言ったんじゃないってことはこいつも理解してるだろうに、それ
で敢えてそんなことを言うのだからまったく始末の悪いことこの上ないが、なんだか
否定するのも億劫な俺は、「ああ」と軽く相槌を打つ。
ハルヒは何が可笑しいのか、くすりと笑ってこんなことを言った。
「あたしは?あたしについては、何も言ってなかったわよね?」
755 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:38:11.76 ID:gDgAH4rE0
支援
756 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:38:18.94 ID:Dyigwdn2O
支援
757 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:38:48.66 ID:gDgAH4rE0
支援
758 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:38:53.07 ID:ZShSHxwzO
wktkがとまらない!!!
134
悪戯盛りの子どものようなその表情に、俺はなんて言葉を返せばいいのだろうね。
とりあえず、そらとぼけることにしようか。
「………いや?俺は言ったはずだが?」
ハルヒは格好だけ怒ったような素振りを見せながら、
「うそつき。とぼけようったってそうはいかないんだから」
「いーや、確かに言ったね。聞き漏らしたってんならそりゃお前の――――」
再びそらとぼけようとした俺の口を、何やら柔らかいものが塞ぐ。お陰で告げよう
とした言葉は尻切れである。
なんだろう。マシュマロというには硬いし、グミというには柔らかい。…そうだな、例
えばパスタ生地なんかの指標になる耳たぶくらいの固さってところだろうか。…いや、
それよりはもう少し柔らかいかも知れん――――
なんてな。いくらなんでもそのとぼけかたはない。理解しがたいことではあったが、
理解できないわけじゃあない。難儀なことであるのは事実だが、それを勝手に都合
よく曲解しちまうのは、はっきり言って最低だろう。
それに、実を言うとそんなに悪い気分でもない。
俺の口を塞いでいる柔らかいものは、深呼吸二つ分くらいの時間をそうして過ご
すとあっけなく離された。それを名残惜しく思ってしまったのは、恐らく俺の人生の
中で一二を争うだろう不覚だ。
こういうところだけは素直なのだから、我ながら困ったものだと言うべきか。
760 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:39:41.39 ID:Dyigwdn2O
支援
761 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:39:52.69 ID:JtFmP3ETO
支援
135
しかしながらそれ以上に困ったのは、次に何を言うべきかだった。
不用意な発言をすればこいつのことだ。今度こそ気絶し兼ねない容赦のない一撃
を見舞ってくるかも知れないし、たとえ手加減をしてくれたとして度重なる衝撃でぐら
ついている俺の奥歯は今度こそ彼方へと旅立っていくに違いない。
そんな戦々恐々とした気分を抱えながら、しかし俺は嗜めるように言ってやったさ。
「…あのなハルヒ。ものには順序ってのがあってだn――――」
またかよ。
呆れたような台詞を吐く俺の口を、再度柔らかいものが塞ぐ。今度は深呼吸一つ
と少しくらいですぐに離れた……と、文字通り目と鼻の先にあるハルヒの目が、じろ
りとこちらを睨んでいることに気づく。
なるほど。どうやら先の質問の答え以外はこうやって言葉の端から潰しちまうつも
りらしい。
なんというか、目的の為には手段を選ばないというか、手段のために目的を選ば
ないというか、相も変わらず突拍子のないことをする奴である。きっとこいつの思考
回路は、思いつきだけで出来てるんだろうな。
しかし、だ。この手法は意味があるのだろうか。この問答が延々とくり返されて得
をするのは、果たしてこの俺だろうに。
763 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:40:38.44 ID:I7rKA/Z8O
支援
764 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:41:25.11 ID:Dyigwdn2O
支援
136
長引かせられるだけ長引かせようか、そんな不埒なことを考えるが、やめておく。
煩悩をかき消すように、コホンと一つ、咳払いをした。
「あー…、そうだな。 …なんつーか、こういう状況でこういうこと言うのはマヌケだと
は理解してるんだが……」
そんな前置きをしたのは精神的逃げ道を作る為と発言の途中で笑っちまわない
よう心構えを改めようとした為なのだが、しかしどうにも俺の表情筋はその意に反し
て笑みの形を造ろうとばかりする。
まあ、無理もないか知れないな。
苦笑を隠そうとして隠せないまま、俺は言った。
「俺、実はポニーテール萌えなんだ」
にやり、ハルヒが不敵な笑みを見せる。
766 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:42:00.72 ID:ro3C/ZrV0
137
ハルヒも俺も、似たような表情を貼り付けた顔を見合わせていた。くつくつと笑い
ながら、ハルヒは「それで?」と返してくる。俺もまたその相槌に苦笑しながら言葉を
継ぐ。
「いつだったかのお前のポニーテールはそりゃもう反則なまでに似合ってたぞ」
ハルヒはふん、とそれを一笑に付し、「それ答えになってないわよ」と呟くと、ゆっく
り両の目を閉じて、つい、と上向き加減に顔を突き出す。
「そうかもな」と答えを返し、俺は――――
あのときは初めから目を閉じちまってたから分からなかったが、もしかしたらこい
つは、あんときもこんな顔をしてたのかな。と、そんなことを思いながら、俺はその
態度の割には小さな体に覆い被さるように体を曲げる。
そして三たび、俺の唇はその柔らかいものに―――――ハルヒの唇に、触れた。
768 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:42:50.57 ID:XHURYlU6O
769 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:43:09.34 ID:Dyigwdn2O
支援
770 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:44:37.47 ID:Dyigwdn2O
支援
771 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:44:42.29 ID:ZShSHxwzO
しっえっんっ
以上でラストシーン終わりです。これからエピローグを投下したいのですが
少しばかり疲れました。というかエピローグだけで今の分の2倍近くありやがりますので、
少々休憩させてください。23時くらいにまた投下開始します
773 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:45:43.66 ID:JtFmP3ETO
支援
774 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:46:20.16 ID:Dyigwdn2O
乙!
続きwktk
さて、WiKiはどうなるのか…
775 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:46:31.41 ID:JtFmP3ETO
776 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:46:33.26 ID:WRAV4O2I0
激しく乙!!
エピローグにwktk
777 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:46:47.72 ID:MAGBG9FD0
さてと明日速いし寝るか……
779 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:47:17.80 ID:XHURYlU6O
またスパーハカーか?w
781 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:51:39.44 ID:JtFmP3ETO
wiki見てぇ
直す人頑張れ!
最近原作より面白いんじゃないかとおもってきた
783 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:56:48.70 ID:TGKscglIO
支援wktk!
Wiki管理人さんいつもご苦労様ですm(__)m頑張って下さい。
784 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:57:00.85 ID:JtFmP3ETO
プリン!プリンーッ!
wktk保守
785 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 22:59:37.38 ID:Dyigwdn2O
wiki復旧を心から願う。
786 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:00:36.06 ID:CjWkLtii0
管理人に任せてるだけじゃ負担かけるだけだろ?
なんか俺等に出来ることを探すんだ
787 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:01:29.52 ID:hA61IWtTO
wiki頑張って
788 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:02:33.24 ID:JtFmP3ETO
助けたいが携帯だから……
保守と支援に命かけるwwww
789 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:06:44.60 ID:n3J+BFrg0
風呂古泉から戻って今追いついた
なんかWIKIが大変なことになってるらしいね・・・。
俺たちにできることってなんだろうできる限りのことはしたいです。
790 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:06:45.56 ID:CjWkLtii0
長編その他は生きてるな。
791 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:07:35.23 ID:n3J+BFrg0
長編・801・アナルは死んでるみたい。
792 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:08:31.85 ID:CjWkLtii0
というか、ほぼ全てを消すなんてマジで手作業か?
138
翌日。即ち最早そんなのもあったなぁと思ってしまうようなあの企画の期限であっ
た月曜日、ハルヒは何処ぞより手に入れた予知夢について書かれた本を読み耽っ
ていた。しかし半日で飽きたのだろう、放課後にはその本は長門に譲渡されること
となる。どんなことが書かれていたのか気になるな。今度借りてみようか。
まあ、しかしだ。なあ、ハルヒよ。興味の対象でない物事については深く考えない
というその性質はいい加減どうにかした方がいいと思うぞ?そんなんだから長門が
生き返ったことについても、『仮死性心停止睡眠症候群』なんて医学書のどこにも
載ってないような病気の存在と、胡散臭い古泉の説明を信じちまうんだよ。
「いいじゃないですか。涼宮さんにとっては病名やその症例がどんなものか、なんて
ことより長門さんが生き返った事実の方が重要なのですよ。終わりよければ、とね」
とは古泉の談だが、果たしてそんなことでいいのだろうか?どうも腑に落ちん。
ああ。腑に落ちない繋がりで思い出す。その日のハルヒが見せた、俺への態度
である。あんなことがあった翌日だってのに、いつもと何ら変わらない相変わらず
の手下……いや、下僕扱いだ。前より酷いか知れない。
別にそれがどうってわけではないのだが、やはりどうも腑に落ちん。もう少し何か
こう、あってもいいんじゃないか?と思ってしまうのは俺の修行が足らんのだろうか。
まあいいか。そうやって普通に接してくれた方が俺としては正直気が楽だし、その
態度から察するに、ハルヒもまたあのときのことは若さ故の過ちとしてなかったこと
にしようとしているのだろうし、俺はそれに一切の異論を挟むつもりはない。
なんだかんだありましたが元の鞘に納まりました、と。結局のところそれが一番な
のさ。
139
さてその月曜日であるが、放課後になると俺たちSOS団の面々は形ばかりの入
院中である長門の居する病室へと足を運んだ。
場所は違えどハルヒの行くところ、全ては支部になりにけり、というわけで「SOS団
緊急会議(番外編)」と銘打たれたその日の活動は長門の病室で行われることと相
成った。番外編の使い方が日本語として大きく間違ってる気がするが、敢えて疲れ
たくない俺は突っ込みはしない。
して、その議題であるが、勿論あの企画について。
ハルヒがいつものよく分からない理屈をなんやかやと持ち出し、古泉がいつもの
ように全肯定で相槌を打ち、朝比奈さんが話がよく分からないといった顔でぽーっ
としながら長門は相変わらずの無表情、頭を抱える俺。
結局、「先日色々とハプニングはありましたが都合この一週間で結論を出すには
充分な情報は得られたと言っていいでしょう。…結論、双方に友愛以上の感情なし。
なれば今後も友人として仲良く過ごすとよいでしょう。言っとくけど、これ特別裁量だ
からね」というのが団長の独断かつ満場一致で可決された。
これまた日本語として大きく間違っているしそもそも企画の趣旨は俺と長門に結
論を出させるんじゃなかったのか?つーか端から企画倒れなんだよ。なんてなこと
を思いながらも既に口を挟む気力もない俺は、自分が吐いたため息の数を数える
くらいしかできなかった。
計23回。この僅かな時間だけで23個もの幸せが俺から逃げていったわけだ。
なんともまあ、……憂鬱だ。
140
しかし、そんな憂鬱な気分を払拭するイベントがその日の内にやって来てくれたの
は身に余る僥倖というものだったか知れない。俺にも運が向いてきたのか、はたま
た今日一日の運は全てこの為だけに取って置かれていたのだろうか。
朝比奈さんが、帰りにちょっと二人でお話しませんか、と誘ってきたのだ。
無論断る理由もない俺は二つ返事でOKし、病院からの帰り道、ハルヒや古泉と
別れた後、朝比奈さんと再び合流。こうして二人いつだかの桜並木を歩いている。
夏至も過ぎ、夏の足音が聞こえ始める今日のよき日。並木は当然全て葉桜となっ
てしまっていたが、夕暮れ時を朝比奈さんと二人歩いているというシチュエーション
だけで満開の花びらが咲き誇る情景が目に浮かぶようだった。
「終わった今だから言えますけど…、」
並木沿いのベンチに隣り合って腰を下ろした後で、朝比奈さんはそう切り出した。
なんでも今回の事件について未来からの指示は一切なく、唯一長門が倒れた理
由だけは情報として与えられたものの、それ以外、つまりどうしてそんなことになっ
たかとかその後の対応策だとか、そういったものに関する指示や命令の類は一切
なかった――――たどたどしい説明を掻い摘むと、つまりそういうことらしかった。
だが、なんでまた朝比奈さんはそんなことを言い出したのだろう。その表情を鑑み
るに、それは今回に限ったことではないのだろう。だとしたら尚更それを俺に言う理
由が分からない。
796 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:10:54.80 ID:CjWkLtii0
支援
797 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:10:58.61 ID:n3J+BFrg0
支援
798 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:11:15.14 ID:WRAV4O2I0
エピローグktkr!
支援
141
俺は思わず馬鹿正直に、どうしてまたそんなことを俺に?なんて言いそうになり、
慌てて口を噤む。恐らくそれは俺が激情に任せ朝比奈さんにぶつけた発言のせい
に違いないのだ。
申し訳ない気分でいっぱいになるが、ここであのときの発言を蒸し返しても朝比奈
さんはまた落ち込むだけかも知れない。そう思い、俺は「そうだったんですか」とだけ
答えることにした。
朝比奈さんは「ええ」と頷き、微笑んでくれた。
それから暫く、二人とも黙ったままでいた。こうして無言でいると、夕暮れ時の環境
音―――雑多に混ざったの虫たちの鳴き声やら、遠くから聞こえる小学校のチャイ
ム、帰宅途中の子どもたちの声やらが、とてもよく響いているのが分かる。
なんとなく物寂しい気分になり、俺はぼーっと空へ向けていた視線を朝比奈さんの
方へと向けた。朝比奈さんは何故だろう、少し浮かない顔で膝の上で組んだ自分の
手を見つめている。そうして突然意を決したように顔を上げると、
「キョンくん、先週の月曜のこと、覚えてますか?」
と、そんなことを言った。
ええ、と頷きながら思い返す。まあ、今回のなんだかんだは結局のところ、あの日
俺が言っちまった不用意な発言から始まったのだから、忘れろというのが無理な話
だ。そのようなことを冗談っぽく俺が言うと、朝比奈さんは何故だかそわそわとした
様子でその身を揺らした。
800 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:12:50.31 ID:n3J+BFrg0
支援
142
「ごめんなさい…、キョンくん。本当はあのとき、あたしは止めようと思えば止められ
たの。 何度も何度も、止めようとしたんです。でも、」
と、そこで言葉を区切り、何やら頬を赤らめながらこちらをちらりちらり伺って、
「あたしも、キョンくんの本当の気持ちが知りたくて…、だから…、」
ああ、と思う。あの日、帰ろうとする朝比奈さんが言いかけた言葉は……、そうい
うことだったわけか。
朝比奈さんが俺にしたかった話ってのは、つまる所そのことだったらしい。そんな
可愛らしい謝罪をわざわざしてくれたことは勿論、その内容にも大きく胸を打たれた
俺は内心感涙に咽び泣きそうになりながら、しかし努めて平静な声で言った。
「いいんですよ。朝比奈さん。あのとき止めてたって何かが起きなかった保証はない。
色々ありましたけど今は元通り、それなら何も問題なしじゃないですか」
どういうわけか、きょとんとした顔の朝比奈さん。
「元通り…、ですか?」
「ええ」
そう。変わってることなんては長門が入院してるくらいのことで、それもまあ数日も
様子を見れば十分だろうし、ならばなんやかんやはあったにせよ、結局全ては元通
り……、そうじゃないんですか? 朝比奈さんは小さく笑う。
「ええ。元通り、じゃないですよ」
802 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:13:11.29 ID:31u8rBBR0
803 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:13:20.12 ID:n3J+BFrg0
帖
804 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:14:06.88 ID:JtFmP3ETO
命をかけて支援ww
143
朝比奈さんは戸惑う俺をよそに「…うん、そう」と一人納得するような呟きを漏らし、
そしてもう一度「元通り、じゃありません」と力強く断定した。
「今回のことで、きっとみんな、前よりもっともっとキョンくんのことを好きになったと
思います。そして、みんなのことも」
だから、元通りじゃないんです。そう付け加えて、朝比奈さんはうふ、と笑う。
「わたしも、もっともっと好きになっちゃいました。キョンくんのこと。涼宮さんのこと。
長門さんのこと。古泉くんのこと。鶴屋さんや、みんなのこと」
その言葉に、なんだか嫌な汗が背筋を伝う。ねえ、ひょっとして……朝比奈さん?
「も、もしかして…、聞いてたんですか……?」
「ええ、聞こえちゃいました」
やはり、朝比奈さんの台詞はあんときの俺の流用だったらしい。ぐあ、と呻き、小
さくかぶりを振る俺。
あのとき朝比奈さんがいたのは俺たちから扉一つ隔てただけのところで、普通に
考えて聞こえないわけはないのだが…、しかしそれを改めて確認させられてしまうと
堪らなく恥ずかしい。
って待てよ?つーことは俺がハルヒと致しちまったことも、もしかしたらばっちりと
知られちまっているのか?それに朝比奈さんに聞かれていたってことは古泉にも
聞かれていたっておかしくないわけで……、
成る程。確かに朝比奈さんの言うとおりだ。なんもかんも元通り、というわけには
いかなかったらしい……。
806 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:14:42.88 ID:WRAV4O2I0
しえん
807 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:14:53.17 ID:Dyigwdn2O
支援
144
しかし…、まずいぞ。これをこのまま放置するのは非常にまずい。
「いや、朝比奈さん、あれはですね……、なんというか、その、勢いに呑まれたと言
いますか……、雰囲気にやられたと言いますか……」
赤面しながらなんとか弁明をする俺だったがその努力も空しく、朝比奈さんはくす
くすと笑い、絶対に分かっていない顔で「ええ、分かってますよ。キョンくんの気持ち
はぜーんぶ」なんてことをおっしゃった。
どうやらこの場はもう、取り繕うことすら不可能になってしまったようである。まあ、
いいか、この誤解は後々訂正していけばいい……なんて、楽観的に思考を落ち着
け、俺はやれやれとため息をついた。
と、その頃には辺りもすっかり群青色に染まってしまい、そろそろ帰路へと着かな
ければ本格的に夜になりそうだ。朝比奈さんと俺は示し合わせたように立ち上がり、
並木道を抜け出す。とりあえず駅前までは一緒に歩こう、ということになった。
「なんだかあたし、未来に帰りたくなくなっちゃいました」
思い出したように朝比奈さんが言ったのは、もうすぐ駅前に着こうという頃合であ
る。俺が、帰らなければいいじゃないですか、なんて軽く答えると、横を歩く朝比奈
さんはふるふると首を振って、
809 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:15:29.50 ID:CjWkLtii0
この状況から「wikiの消失」SSが出てくるに1000ペリカ
810 :
ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2006/09/23(土) 23:15:34.75 ID:MwA0D1Vl0
もし荒らしが消したとしても、編集権限を俺のみに指定していたページ(管理人の業務連絡、パズルなど)まで消されてる。
そんな事出来るのか?
それとも、そんなにwikiのセキュリティは甘いのだろうか。
145
「ごめんなさい。今のは冗談。あたしは、いつか自分の時間に帰らなくちゃいけない。
それは仕方のないことだから」
朝比奈さんは柔らかな微笑みを俺に向ける。
「あたし、頑張ろうと思います。多分、上が何も教えてくれないのは、きっとあたしに
何かを知らせたらもっと事態が悪くなっちゃうって、そういう判断があるんだと思う」
いつだか、似たようなことを打ち明けられたのを思い出す。あの時と同様にその
不安を否定しようと口を開けたところで、しかし。言葉はなくとも息を呑んだ空気だ
けで分かってしまったみたいで、朝比奈さんはふるふる、と首を振ってくれた。
「もしかしたら…、そうじゃないのかもしれないけど、とりあえず、そう思うことにした
んです。 ………だから、もっともっと頑張らなきゃって」
あのときのような沈んだ空気が、今の朝比奈さんからは感じられなかった。むしろ
その顔は自信に満ち溢れているようにも見える。
朝比奈さんはととと、と駆け足で俺の前に歩み出ると振り返り、
「それに、あなたの好きな世界だもの。もっともっと楽しい世界になるんだろうなって。
そう思ったら、ガゼンやる気出てきちゃいました。だってそうでしょう?」
問いかけの形で言葉を切り、とても晴れやかな顔で笑う。そして、言った。
「あなたが好きだと言う現在を、あたしの帰る未来に繋げる為に、あたしは今、ここ
にいるんだから」
これは…
原 作 を 超 越 し た
813 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:17:30.32 ID:gDgAH4rE0
支援
814 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:17:43.12 ID:MO5OOv8P0
紫煙
815 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:18:05.97 ID:CjWkLtii0
>>810 俺も思った。
あきらかに人の手のなせる業じゃない気がするのだが……。
しかしいかんせん、消えてないところがまばらにあるからな。エラーで全てが消えたわけじゃないっぽい
146
今回は何もお手伝い出来ませんでしたけどね、などと言葉を繋ぎ、朝比奈さんは
ぺろりと舌を出す。その姿がいつになく頼もしく見えたのは俺の錯覚ではあるまい。
ひょっとしたらだが、こんなことを思う。今回もそうだが、朝比奈さんが大切なことを
何も知らされないままでいるというのは、知らせることによる未来にとっての不利益
がどうのとかそんな話じゃ元からなくて、その成長を望むちょっと未来の自分自身か
らの激励のメッセージなのではないか――――などと。
まあ、考えすぎかも知れないがな。
しかし、何もお手伝い出来なかったと朝比奈さんは言ったが、そんなことないって
俺は思うね。あのときこの人が俺を立ち戻らせてくれなかったら、俺はこうして再び
訪れようとしている日常へ帰ってくることは出来なかっただろうからな。
あのときの朝比奈さんの言葉は、禁則だとか未来からの指示だとかにとらわれな
い、この人の本心からの言葉だった。俺はそれに背中を押されただけだ。
それなのに俺って奴はよく分からん抽象論しか語れずただハルヒを怒らせただけ
で、その内に事態は勝手に収拾しちまった。つまるところ俺はいつものように流され
てただけに過ぎないわけだ。むしろ何も出来なかったのはこの俺だろう。
俺が自嘲気味にのたまうと、朝比奈さんはふるふると首を振ってそれを否定する。
「ううん。そんなことない。とってもかっこよかったですよ、キョンくん」
そう言ってふわりと髪を揺らし、にっこり、笑った。
「――――まるで、マンガのヒーローみたいに」
817 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:18:34.82 ID:I7rKA/Z8O
ってか原作のキョンはいつハニカミみたいに爆発してもおかしくないと思うんだがな
818 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:19:09.63 ID:Dyigwdn2O
支援
147
廊下でばったりと出くわした古泉に、少しお時間を頂けませんか、とそんなことを
言われたのは、そのまた翌日の昼休みのことだった。
「さて、涼宮さんが望めば世界は変わる。けれど涼宮さんが本心でそれを願わなけ
れば世界は変わらない。 つまり今回、涼宮さんの中で障害になったのはその心の
内にある『死んだ人間は生き返らない』という常識的な部分だったわけです」
草木生い茂る裏庭のログチェア。つい先週もこうして対面に座したそれに腰掛け
るなり、古泉はそんな唐突な切り出し方をした。
「それを見事、あなたは取り払った。恐らくは、あなたと涼宮さんが体験した―――
あの閉鎖空間を再現することでね」
古泉は人差し指をくるりと回す、という気障った仕草をしながらそう言って、ふふ、
と薄く笑った。素敵にムカつく笑顔である。
と言うかこいつはどっからその情報を仕入れてきたんだろうな。あの忌まわしい出
来事について俺は誰にも話しちゃいないし、ハルヒもまたあれを夢だと思っていただ
ろうから、そちらから漏れ出ることもまずないだろう。なれば当事者二人が漏らして
いないのだから、あれはけして表に出ることはない筈なのだが。
とは言えその話の出所を聞いたところで詮無いことであるし、一々反応するのも
下らない。俺がため息混じりに「それで?」とだけ返すと、古泉はくすりと笑い、
「つまり『夢が現実になるような世界なら、ひょっとしたら奇跡は起こるかもしれない』
……と、涼宮さんの思考は恐らくそのようなところに落ち着いたのでしょう。いやはや、
素晴らしい手際ですね。本当に見事という他にない」
820 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:20:41.66 ID:Dyigwdn2O
支援
821 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:20:42.44 ID:gDgAH4rE0
支援
822 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:21:10.50 ID:JtFmP3ETO
支援!
823 :
ハニカミ epilogue with I ◆cznkhqbSlg :2006/09/23(土) 23:21:36.31 ID:ql0mIhUB0
148
「買いかぶるな。そこまで考えちゃいねえよ」
それにそんなのはお前の勝手な想像に過ぎんだろうが。俺がぶっきら棒に言葉
を返すと、古泉は再度、くすりと笑う。
「だとしても、ですよ。僕としては正直なところ、あの状況であなたに遺された手は…、
やはり全てを打ち明ける。つまり、『あの切り札』しかないと思っていましたので」
あの切り札…、ジョン・スミスのことか。あれは使っちまったら最後、全てが壊れ
かねない諸刃の剣だからな。ちょっとした綻びを直すにはでか過ぎる針だ。なるべ
くなら使いたくないんだよ。
「そうですね。であれば僕らは長門さんに感謝しなくてはなりません。彼女の機転が
なければ、それこそ手は『あの切り札』しか残っていなかったのですから」
舌も上手く回り上機嫌になってきたのか、古泉は大仰な手振りを加えながら言葉
を続ける。
「もし、仮に長門さんの肉体が消滅してしまっていたら。それを涼宮さんに見られて
しまったら。流石にその正体を隠し通すことは叶いません。つまり、全てを打ち明け
る他に長門さんを救う手立てがなくなるわけです。ですから長門さんは賭けに出た。
自分の肉体を残すことだけに力を注ぎ、あなたと涼宮さんを信じた」
自らの淀みない語りに満足したのだろう。古泉はテーブルに肘をつくと、指を組み
合わせこちらを見やる。
「まあ、それもあなたの尽力があればこそ。今になって言える結果論ではありますが」
824 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:22:05.40 ID:Dyigwdn2O
支援
825 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:22:06.73 ID:WRAV4O2I0
支援
149
苦笑しながらそんなお世辞のようなことを言ったのは、俺が不機嫌そうにしていた
からだろうか。長門ばかり褒められるのは気分が悪い――――であるとか、そんな
感じに俺の不機嫌な表情を理解したのかも知れない。だとしたら…、アホか古泉。
俺が不機嫌そう…、と言うか事実不機嫌であったのは、単に先日の出来事をやっ
かまれているようなこの状況が堪らなく不愉快だったから、それだけだ。
「しかし本当にあなたには驚かされます。或いはトリガーは涼宮さんの中の常識的
な部分と言うより…、」
そんな心地を知ってか知らずか、古泉は掌を上に向けてこちらに差し出すといっ
たジェスチャをしながら、話を一旦締めるようにこう続けた。
「もしかしたら、あなたそのものなのかもしれませんね」
丁度、タイミングよく午後一番の予鈴が鳴る。
「おや、少々長話をし過ぎてしまったようです。戻りましょう」
当前だが、その提案に異論はない。俺は昼休みの残り10分を最大限に活用すべ
く立ち上がり、その足を校舎へと向ける。そしていざ歩み出そうとしたところで、
「ああ、そうだ――――二つほど、謝らなければいけないことを思い出しました」
と、古泉がそんなことを言った。
150
「謝る?俺にか?」
顔だけをそちらへ向けて言ってやると、古泉は「他に誰がいると言うのですか?」
とでも言いたげな表情で、「ええ」と頷いて見せた。
「ひとつは…、あなたを騙していたこと。先日の喫茶店は覚えていますよね?」
まあ、一昨日の今日だ。忘れる道理がない。古泉は、「或いはあなたも気づいて
いたかも知れませんが…、」などと緩衝材を挟んでからこう告げた。
「あの日、あの場所にいた人間は全て『組織』に関わりのあるエキストラです。完全
貸切だったわけですよ。従業員含め、ね」
古泉の告白は…、まあ、なんとなくの予想はついていた内容だった。そうでもなけ
りゃこいつらがあの日厨房に隠れていたことに辻褄が合わないしな。そんなことを
思っていると古泉は急に真面目な顔を作り、
「…いくら涼宮さんに頼まれたとは言え。結果、今回のような事態を招いてしまった。
何より、あなたの気分を酷く害した」
一呼吸置いて、本当に申し訳ないことをしたと思っているのですよ、と続ける。
「そうかい」と、俺。
「許して頂けますか?」と爽やかに古泉。
許すも何もなぁ。結局のところ、こいつはいつものようにハルヒの我侭に付き合っ
てやってただけの話で、なら別に俺に詫びる必要はないだろうに。
828 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:23:39.63 ID:Dyigwdn2O
支援
829 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:24:11.49 ID:JtFmP3ETO
ツエソ
830 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:24:43.40 ID:MO5OOv8P0
支援
151
そりゃまあ、確かにあんときの気分は最悪だったか知らんが…、そんなのは必要
経費みたいなもの、もっと的確に表現すれば税金みたいなものだ。あいつと関わっ
ちまった時点で、俺にはそんなハルヒ税を支払う義務が生まれていたというわけさ。
或いはローン返済だろうか。ハルヒローン。なんだかアクション俳優を目指したけ
どダメでしたみたいな滑稽な響きを持つ単語だが、よくよく考えると空恐ろしい。
年に何十回あるか分からん返済期限は気まぐれで、かつ債権者たる俺には明か
されない。それでいて期限を一秒でも過ぎるとエライ目に遭う。そもそもが何を借り
たかもさっぱり分からないのだ。これほど恐ろしいものもあるまい。
まあ、地道に返済していくしかないんだろうな。こんな焦げ付いた不良債権、一生
かかって返せるかどうかも分からんが―――――
と、冗談交じりに言ってやった後で、
「だからお前が謝る必要はないな。いつもいつも、お前はよくやってると思うよ」
いろんな意味でな。皮肉たっぷりにそう続けると、古泉は初め何故だかぽかんと
口を空けていた。そして数秒の後にそれを崩すと、可笑しくて堪らないといった様子
でくつくつと笑い出す。
「なんだ?」
「…いえ、なんでもありませんよ。ただあなたの言い草が少々可笑しかったもので」
くつくつと笑い続ける古泉。冗談を言った手前笑ってもらえるのはありがたいが、
然程可笑しいことを言ったつもりでもない俺としては、そこまで笑われるのもなんだ
かなぁという気分である。
832 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:24:47.71 ID:rTS7x8PuO
支援
833 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:25:37.13 ID:Dyigwdn2O
支援
152
…まあ、いいさ。
俺は釈然としないものを感じながらも、「それで、もうひとつは?」と話を流した。
「あ、ええ。これは謝罪と言うよりはお願いに近いのですが…、」
古泉は取り繕うように表情を直し、言葉を繋ぐ。
「いつぞやの台詞をなかったことにさせて頂きたいのですよ。あれは失言でした」
「いつぞやのセリフ?何だっけ?」
覚えがなかった俺は簡潔に疑問を返す。本当に覚えがない。と言うかこいつの発
言を一々記憶するような無駄スペースは俺の脳にはない。
古泉は掌をひらりと翻すと、イヤに爽やかな笑みを俺に見せた。
「覚えてらっしゃらない?あなたに恋愛経験がない、というアレですよ」
そのツラと声色でアレとか言うな、気分が悪くなる。
「いや、中々どうして。あなたも隅に置けないではないですか。これは僕も認識を改
めた方が良さそうだ。ひょっとするとあなたのような男性の方が或いは…、とね」
「お前の言ってる意味がさっぱりわからん」
「おや、もしかして照れているのですか?」
俺が閉口したのを図星を指された為と判断したのか、古泉は、こいつにしては珍
しく、いつになく快活に高らかに、あっはっはと声を上げて笑った。
835 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:26:11.99 ID:MO5OOv8P0
支援
836 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:26:56.74 ID:Dyigwdn2O
支援
837 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:27:07.58 ID:JtFmP3ETO
支援!
153
さて、そうして古泉の論点のよく分からない事後説明を受け流し、午後の退屈な
授業をやり過ごした放課後、ハルヒ以下SOS団の面々と共に、俺は再び長門の見
舞いに行くこととなった。どうやら長門が入院している間、この個室がSOS団の活動
拠点となるようである。
ただ、SOS団の活動、と言ってもハルヒが何か剣呑なことを思いつかない限りそ
の内容は至って平和なもので、言ってしまえばただの暇つぶしだ。
パソコンも古泉のゲームコレクションもないこの病室はハルヒにとっていたく退屈
だったらしく、小一時間程で根負けすると「じっとしてるのはやっぱつまんないわね。
明日は何か遊び道具でも持ってきましょう」などと言い放ち、その鶴の一声で今日
はお開きとなった。
帰り際、看護士の代わりに「ここは遊び場じゃないんだぞ」と言ってやったのだが、
ハルヒは聞いていないようだった。やれやれと思うが、まあ流石に病院内で大声で
騒ぐほど常識のない奴じゃないだろうし、それ以上言うのは止めておいた。
………大丈夫、だよな?
して、その後。皆が散り散りに帰ったのを確認してから、俺はと言えば長門の病
室へと戻ってきていた。
コンコン、と扉をノックするものの返事はない。入るぞ、と告げてから中に入ると、
窓際に据え置かれたベッドの上に先程とまったく変わらない長門の姿があった。
ハルヒが用意したパジャマ(可愛らしくデフォルメされた乳牛が無数にプリントされ
ている、という個性的な柄である)を着込み、身を起こしクッションに背を預けた体制
で、ハードカバーの分厚い本を読んでいる。
839 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:27:33.87 ID:D7yUfOnU0
840 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:28:10.66 ID:Dyigwdn2O
支援
154
…しかし、こいつもまあ恐ろしく病院のベッドが似合う奴だな。色も白いし線も細い、
幼い頃から難病で長期入院しているのだと言われればそのまま信じてしまいそうだ。
と、長門がちらり、視線を手元の本から外し、こちらを一瞥する。
「よう、加減はどうだ?」
俺がつい一時間前にも言ったばかりの社交辞令的な言葉をかけると、長門はぱ
ちりと瞬きをして、
「平気。 ただ、この場所は少し落ち着かない」
それは、暗に早く退院させろと言っているのだろうか。だが俺としてはもう少し、せ
めて一週間は様子を見て欲しいところだった。
とは言え長門の親玉が復活したというのは聞いていたし、既に長門自身が全快
していることも知っている。従ってこの場合に見るのは長門の様子ではなく、ハルヒ
の様子なのだが。
「わかっている。涼宮ハルヒに不審を抱かせない為には、わたしはもう暫くここに逗
留しなければならない」
何故だろうか、そう言った長門の様子がまるで飼い主に遊んでもらえなくてシュン
としてる犬みたいに見える。まあ、気の迷いだな。
842 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:28:59.31 ID:MAGBG9FD0
843 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:29:09.41 ID:CjWkLtii0
>>838 ある程度以上の速さでスレを独占するとなるっぽい。
だからみんなの支援があればいける
844 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:29:22.01 ID:JtFmP3ETO
支援
155
して、俺がここへわざわざ戻ってきたのは、ひょっとすると長門も何かしら俺に話
があるんじゃなかろうかと思ったのと、俺としても長門に尋ねてみたいことがあった
為なのだが、どうやら前者は当たりだったようである。
ベッドの脇に放置したままになっていた椅子に近づき、長門の了承を得てからそ
れに座ると、長門は読んでいたハードカバーに栞を挟みこちらを見据え、
「わかった」
と一言。相変わらず話の下手な奴である。わかったって、何がだよ。その問いに
答える形で長門が語ったのは、恐らくは長門からあるのだとすればこういった類の
話だろうと思っていた想像に正解を告げるものだった。
「わたしに生じた障害、及び情報統合思念体の消失の起因するところが、わかった」
長門と長門の親玉を消そうとした奴が誰なのか…、既に長門は知っている。そし
て長門が「わかった」と言った以上、その『知っている』というのは『そうかも知れな
い』などという当て推量などではなく暦とした事実に他ならないのだ。
数秒の逡巡の後、俺はぐっと固唾を飲み込み、意を決して尋ねる。
「…やっぱり、ハルヒがやったのか?」
押し殺した声で問う俺に、しかし長門はきっちり一往復分だけ首を振り、涼やかな
声でそれを半分肯定、半分否定した。
「直接的な原因は涼宮ハルヒ。けれどそれは彼女の意思ではない」
846 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:29:45.76 ID:Dyigwdn2O
支援
847 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:30:28.76 ID:MO5OOv8P0
>>838 誰かが10レス目ぐらいで喰らったっていってたような・・・
848 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:30:41.40 ID:MM9Kw+yyO
支援
849 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:31:17.78 ID:Dyigwdn2O
支援
156
分かり難い返答だったが数秒を置いて理解する。同時に、俺は安堵の息をついた。
整理すると、長門の親玉を消したのはハルヒの力だが、それはハルヒの意思に
よるものではない。ということはつまるところ――――
「そう仕向けた奴がいるってことか」
「そう」
長門はあっけなく頷く。改めて安堵の息をつくと同時に、脳裏には新たな疑問が
浮かび上がるのを感じた。当然の疑問、即ち、「誰だ?」である。
それをそのまま言葉にして問いただすが、長門は答えない。何やら適切な言葉を
考えているようだった。
沈黙が静寂を生み、静寂はチッチッと鳴る時計の音を意識させる。
その音が十数回は聞こえた頃だろうか、ようやく口を開いた長門が発したのは、
俺の予想だにしなかった名前だった。
「朝倉涼子」
………は?
素っ頓狂な声が俺の口から漏れ出る。ある意味では懐かしく、しかし精神衛生上
あまり思い出したくないその名前。だがあいつはもうこの世にいない筈だろう。去年
の五月、他でもない長門が消したのだから。
なら、どうして、今ここで朝倉の名前が出てくるんだよ?
851 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:31:52.58 ID:MO5OOv8P0
支援
852 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:32:07.95 ID:I7rKA/Z8O
支援
853 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:32:33.23 ID:JtFmP3ETO
支援
854 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:33:01.64 ID:9Qv30/y50
支援
157
困惑する俺を見て、だろうか。長門は閉じた口を再度開き、先の言葉を訂正する。
「正確には、朝倉涼子の構成情報の残骸」
…………ゴメンな、長門。 言い直して貰ってもさっぱり分からん。
置いてけぼりを食らう俺を尻目に、長門は淡々と説明を開始する。
「朝倉涼子の残骸は去年の戦闘時以来わたしを構成する情報内に長く潜伏してい
た。気付けなかったのは情報統合思念体内の異なる派閥による情報操作によるも
の。それが突如障害となるほどに肥大したのも彼らの仕業。それを解消させなかっ
たのも同様――――」
長門が言うにはその派閥と言うのはかつてこいつが語った急進派とかいう奴の
ことらしかった。派閥があるとは言え情報統合思念体は全が一。故に主流派の行
動に多少なりと制限を設けることも可能であるらしい。
またインターフェースである長門は本来情報統合思念体からは完全ならずとも独
立した存在である為、帰属する主流派以外の派閥による操作等は受け付けない筈
だったのだが、急進派は長門を構成する情報内に混在したジャンク情報、即ち朝倉
の構成情報の残骸を媒介することでその制限を越境する。
856 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:33:06.09 ID:Dyigwdn2O
支援
857 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:33:49.88 ID:MM9Kw+yyO
支援
858 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:33:57.62 ID:MAGBG9FD0
支援
158
つまり内外両面からの情報操作により、あの戦闘以降今日に至るまで長門は朝
倉の情報の残骸が己の身の内にあったことに気づけなかった。というわけだ。
なるほど、トロイの木馬みたいなものか。そう言ってやると、長門はこくりと頷く。
「あの日、わたしの中で肥大していた朝倉涼子の残骸は涼宮ハルヒに乗り移った。
その時点よりわたしは障害から解放され、新たに宿主となった涼宮ハルヒの精神
は徐々に不安定化、今回の情報フレアを引き起こすに至った」
この頃になると、いくら長門の回りくどい説明でもその概要を素早く把握できるよ
うになっていた。
「つまり長門の中に潜んでいた朝倉がハルヒに乗り移り、ハルヒの力を勝手に使っ
ちまった――――と、そういうわけか」
俺が発したその台詞は何の気なしの、ただ情報を自分なりに事件を整理する為
の発言だったのだが、それを口にした瞬間無表情な長門の顔にミクロン単位の感
情が浮かんだ。
俺にしか分からないくらいの表情の動きだが、それは一般的な言葉で置き換えれ
ば『悲しみ』として表現されるものの筈だ。
……ああ、そうか。お前も以前、同じことをやっちまったわけだからな。
860 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:34:09.96 ID:I7rKA/Z8O
支援
861 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:34:30.06 ID:JtFmP3ETO
ガンガン投下しる
支援しまくるから
862 :
ハニカミ epilogue with Y ◆cznkhqbSlg :2006/09/23(土) 23:34:49.31 ID:ql0mIhUB0
159
「…スマン。無神経な発言だったな。忘れてくれるとありがたい」
「いい。気にしなくて、いい」
長門は首を振りそう言ってくれたが、俺はどんな顔をしていいのか分からなかった。
長門に申し訳ないことをした気持ちも勿論だが、それだけじゃなく。
何を血迷っているのかと思われるか知れないが、俺は朝倉を哀れんでいたのだ。
かつて長門が同じようにハルヒの力を使って世界を改竄したとき長門が叶えたの
は、普通の人間として生きたいというささやかな願いだった。…だが、今度の事件で
朝倉が望んだのは……、
「朝倉は…、自分を切り捨てたお前らを、恨んでたのかな……」
朝倉が望んだのは、仲間だった長門や自分自身を生んだ親を、この世界から消
し去ることだった…、のか?
だとしたら…、あんまりだ。あまりに、救いがなさ過ぎる。
長門は俺の感情を読み取るように、暫く、俺の顔を見つめていた。そして小さく首
を振り、言った。
「それは違う」
断定的な強い口調だった。
863 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:35:09.30 ID:MO5OOv8P0
支援
864 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:35:24.34 ID:I7rKA/Z8O
支援
865 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:35:32.45 ID:ro3C/ZrV0
支援
866 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:35:36.71 ID:JtFmP3ETO
支援
160
「あの存在に意思はなかった。朝倉涼子は既に消失している。あれは朝倉涼子で
はなく別の情報体。ただ涼宮ハルヒに近づきその能力を探ろうとする、それだけの
存在。通俗的な用語を用いて言い換えると―――」
長門は淡々と並べていた言葉を区切り、ぽつり、言い放つ。
「朝倉ウィルス」
ぐっ、と思わず呻く。耳に届いた一瞬に脳裏に浮かんだのはわらわらと血中を泳
ぐミニ朝倉の大群だ。それぞれが「死んで?」だとか、「ねえ、あきらめてよ」だとか
普通の朝倉より1オクターブは高い声できゃいきゃいと騒いでいる。
きっと「なにしてすか朝倉さん」などと自らの妄想に突っ込んだのが敗因だったに
違いない。堪えきれず、「ブフッ!」と小さく噴出してしまった。
やばい……。この想像はちょっと……、っく、面白すぎるだろ……。
「…っ、なら、なんでまたお前やお前の親玉を消そうとしたんだよ」
笑い転げようとする己をなんとか律し、捩れそうになる腹をなんとか抑えて、俺は
努めて落ち着いた声でそう言った。
にしても…、長門。いつもは冗談とも本気とも分からない、それでいて笑えない冗
談を言うお前が今日に限ってとんでもない爆弾用意しやがって……と、恨みがまし
い目で長門を見るも相変わらずの無表情である。
ひょっとしたら本気で言ってたのか?そんなことを思うが、確かめようもなかった。
868 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:35:49.54 ID:MwA0D1Vl0
約1日で1スレ消化。まるで全盛期の勢いに戻ったみたいだ。
869 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:35:51.99 ID:MM9Kw+yyO
支援
870 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:36:17.84 ID:ro3C/ZrV0
朝倉ウィルスwww
871 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:36:19.68 ID:Lm3e/pqd0
お前ら投稿すんのはOKだけどさ
ちゃんと誰かまとめサイトに写せや。
最近全然してねーじゃん。たるんどる
161
もしかしたら、待っていてくれたのだろうか。
「恐らくはわたしとの戦闘の際、わたしを敵性と判断した情報が残されていた為」
長門は俺が充分に落ち着いた頃合になってようやく、先の問いに淡々と答えてく
れた。続けざま、また淡々と言葉を繋ぐ。
「本来ならばあの情報体は情報統合思念体からわたしとわたしの属する主流派の
みを消し去るつもりだった。しかし涼宮ハルヒの力を制御し切れず、存在する全て
の情報思念を消失させたのだと推測される」
なるほどなぁ、と。確かに辻褄は合っているその説明に相槌は打ったものの、俺
にはどうしてか長門が嘘を言っているように思えてしまう。長門が俺に嘘をつく筈が
ない。それは分かっている。分かっているんだが……、どうしてなんだろうな。
「まあ、その急進派…だったか?そいつらもこれで懲りただろうな」
釈然としない思いを飲み込んで言った俺に、長門は微かに首を振った。
「急進派を含む情報統合思念体の大部分は、今回涼宮ハルヒによって引き起こさ
れた情報フレアに大いに満足している」
は?なんだそりゃ?てめぇらが消されかけたってのに懲りない野郎どもだな。それ
じゃ何か?また第二第三の朝倉が―――――長門は再び首を振る。
「多分、暫くは満足している」
なるほど。そういうことか。
162
それから俺たちは雑多なことを話して時間を潰した。この一週間の話だとか病院
食の味だとか、夏休みになったら何をするか、なんて益体もない話ばかりである。
別にそんな話をしたかったわけではなく、タイミングを逸したというかタイミングを
計っているというか、俺にはまだ長門に尋ねてみたいことが残っていて、それをど
う切り出したものか分からず、結果ずるずると居座っているのだ。
数十分か十数分か数分か…、いや、数十秒だろうな。話のタネも尽きたところで、
長門が脇に置いていたハードカバーを手にする。栞の位置でそれを開き、ぺらりぺ
らりとめくり始めた。
文章を目で追う横顔が、「今日はもう店じまい」という意思表示に感じられてならな
い。だが、どうしてもここで聞いておかないといけないようなそんな気がして、俺はな
んとか捻り出した問いかけをその横顔にぶつけた。
「なあ、長門。 朝倉はまだハルヒの体にいたりするのか?」
「いない。既に確認済み」
ハードカバーに目を落としたまま長門は答える。その答えに、少々疑問を感じる。
「確認しただけか?事が終わってからお前が何か対処してくれたんじゃないのか?」
それをそのまま言葉にして尋ねると、長門はやはりページをめくりながら、
「わたしが倒れたとき、つまり情報統合思念体が消失しようとしているとき、わたし
に対する急進派の妨害もまた消失した。その際涼宮ハルヒの観察を行ったがあの
情報体の存在は確認出来なかった。既に消えていたものと思われる」
「そう、か」
874 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:37:19.39 ID:MO5OOv8P0
支援
875 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:37:46.40 ID:WRAV4O2I0
支援
876 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:37:52.79 ID:JtFmP3ETO
まとめはトラブル中
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163
じっくり、長門の答えを頭の中で反芻する。出てきたのは、こんな答えだった。
「なあ、長門。俺はその存在はウィルスなんかじゃなく、やっぱり朝倉だったんじゃ
ないかと思う。ただ、思うように動けなかっただけのな」
あいつは、朝倉涼子は…、なんと言えばいいのか、二度も殺されかけた(二度目
は朝倉本人じゃないが)俺が言うのもなんなのだが、凄い奴だ。そりゃ長門の同類
なんだから凄いのは当たり前だが…、ちょっと、他の誰とも毛色が違うというか。
少なくとも暴走する前の朝倉は文武両道、でもそれをひけらかさない。誰にでも気
さくに、親身に接する根っからの委員長タイプで、まさに完璧超人だった。……そう
だな。物腰が柔らかい社交的ハルヒ、とでも言えばぴったりかも知れない。
そうなんだよな。ほんの少しだけど、あいつはハルヒに似てたんだ。
そんなあいつだ。プライドは人一倍だったろうと思う。あいつが暴走した理由にも、
まあ色んな思惑はあったにせよ、長門のバックアップという役不足に対する不満な
んてのもあったんじゃなかろうか。
だとしたらやはり、長門は嘘を言っている。
長門がウィルスと呼んだその存在は、朝倉涼子そのものだ。
長門の口調が僅かながら変化する前の発言を思い出す。本来、情報ナントカ体
からは完全ならずとも独立した存在である長門が急進派の情報制御下に落ちてし
まっていたのは、その身に取り込んだ朝倉を媒介とされていた為。
それが何を意味するのか。なんとなくだが、からくりが見えてきた気がする。
878 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:38:10.98 ID:MM9Kw+yyO
支援
879 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:38:25.50 ID:MO5OOv8P0
支援
880 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:38:25.69 ID:gDgAH4rE0
支援
881 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:38:47.36 ID:MAGBG9FD0
支援
882 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:38:50.01 ID:CjWkLtii0
支援
以下164から167までは本筋と一切関係ないキョンの推理なので読み飛ばして頂い
て何ら支障はありません。ぐだぐだと長いし本編に限って言えば完全に蛇足で、そ
の上要らない矛盾を抱え込んでおります。
ですが、どうしても書きたいので書きました。だって朝倉さん大好きなんだもの。
朝倉さんスキーじゃない方は163から168に飛んでも前後の繋がりはありますので、
ぱっぱと読み飛ばすことをお勧めします。
言い訳がましい勝手な言い分かと存じますが、よろしくお願い致します。
884 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:39:15.32 ID:U1WiqJu/0
支援
164
俺の思うところはこうだ。
ひょっとすると、ハルヒもまた長門と同様に、完全ではないにせよ急進派とやらの
制御化にあったのではないか。だとすれば今回のその情報フレアだかなんだかを
引き起こしたのは朝倉ではなく、その急進派である可能性も否定できなくなる。
筋書きはこう。急進派は長門や長門の親玉の派閥を消し去ってそのナントカ体
の実権を握ろうとしていた。しかし勢い余って失敗。自分たちまで消えてしまった。
この辺は長門の説明どおりだろう。
だが、これではあまりにお粗末だ。いつだか長門が語った「超越的な叡智」だとか
「蓄積された知識」の片鱗すら見せていない。ならば、ひょっとしたらと考える。
そしてつい先程の長門の言葉だ。時系列順に要約すると、
1.ナントカ体が消え始める。
2.長門への妨害が消える。
3.長門、ハルヒを観察するも、朝倉の存在は既になかった。
となる。もし、3.の時点で、或いは朝倉が消えると同時に急進派が消えていたな
らば話は別だが、そうでないなら。
ここで話を戻す。朝倉は急進派の情報操作の為の端末だった。ならば、例えば1.
の時点で朝倉が存命であったなら、それを消失させるような愚を、長門曰くの「超越
的な叡智」を持つナントカ体の一派である急進派が犯す筈はない。危機の最中は
勿論、それを脱した後もハルヒに取り付いた端末である朝倉は極めて有用な筈。
886 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:40:06.93 ID:iUJe3Y1Z0
>>868 サーバー側の人間でSQL使える奴なら多分直せると思うから
サーバーに問い合わせた方がいいかも(て言っても、もう問い合わせただろうけど)
支援
887 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:40:30.82 ID:JtFmP3ETO
支援
888 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:40:42.00 ID:MO5OOv8P0
支援
165
であれば、その急進派にも何らか妨害があったのだと考えるのが妥当ではない
だろうか。つまり急進派による改変の途中で何者かがそれを妨害、消失させる対
象を急進派を含むナントカ体全てに変更し、以降の制御が出来ないよう朝倉を消
した。そういうことだ。
もっともこの筋書きはその『何者か』が誰なのかがあやふやなままでは意味を持
たない。
まず、考えられるのは古泉の属する『組織』。だがこれは長門が倒れたときの古
泉の言葉を思い出すと否定できる。曰く、『一人の人間があの超自然的存在を細
部まで把握し切ってしまうだなんて』と。何かを完全に消すにはそれを完全に把握
していなくてはならない。当然の道理だ。
ならば朝比奈さんの属する未来人はどうか。上の古泉の発言があった際、朝比
奈さん自体はともかく、上はそれを把握できているような口ぶりだった。だが、彼ら
には朝倉という端末に接触し、それを操作する技術がない。
他に考えられるのはナントカ体の別の派閥となるが、それでは本末顛倒である。
彼らが彼ら自身の消失を望む理由はなく、或いはこれは防衛策の末のアクシデン
タルな結果で、彼らの意図しないものだっただけかも知れないが、それでは先述の
通り「超越的な叡智」もナントヤラである。
即ち、条件は3つ。
1.朝倉という端末を使えて、(手段の所持)
2.ナントカ体についてその存在を細部まで全てを把握し、(目標の理解)
3.ナントカ体が消えても困らない存在。(動機の無矛盾)
890 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:41:01.84 ID:gDgAH4rE0
支援
166
他に心当たりがあるとすればハルヒを取り巻く三すくみの頂点に立つ三者、その
それぞれに対しその存在が確認されている宇宙的、未来的、超能力的の三つの
敵対勢力だが…。しかし、彼らにもまた『組織』や未来人たちと同様、朝倉を接触
し操作し得る技術はないだろう。
宇宙的敵対勢力にだけはそれを行うだけの技術はあるのか知れないが、だが
それで行うのがナントカ体の消失だけ、というのはどうも解せない。雪山のときを
考えれば、もっとどうにもならないような事態にまで発展させていただろうとは容
易に想像がつく。
たとえ他の二者がその技術をもっていたとしても同様である。朝比奈さんをさらう
なんてラディカルなことを仕出かす連中だ。ナントカ体が消えた程度(これも勿論オ
オゴトだが)で済まされるわけがない。もっとオオゴトになっていてもおかしくない。
そもそもが彼らが妨害した『何者か』だとするなら、三すくみの他の二者が消え去
らなかったこと自体が大きな矛盾だ。
ならばハルヒか?いや、これも違うね。
まあ確かにあいつは頭をやられちゃいるがその出来はいいし、例えば古泉なら、
「涼宮さんなら或いは可能でしょう」なんてことを言うかも知れないが、いくらなんでも
無意識にナントカ体を全て把握するってのは不可能だろう。それにあいつは長門が
宇宙人だってことも、その親玉がどんなもんかも知らないんだ。無理に決まってる。
なら、その『何者か』は誰なのか。これまでそれに該当するだろう者たちが次々と
否定されているのだ。つまるところそんな奴はいない、ということなのか?
892 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:42:28.87 ID:JtFmP3ETO
支援
893 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:42:32.69 ID:ro3C/ZrV0
支援ー支援ー支援ー
894 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:42:39.47 ID:MO5OOv8P0
支援
895 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:42:37.51 ID:MM9Kw+yyO
支援
167
いやいや、違うさ。一人だけ、たった一人だけだ。三つの条件に当てはまり、急進
派の妨害が可能だった奴がいる。
――――――朝倉涼子、本人だ。
朝倉について三つの条件を考える。まず1.については問題ない。何せ本人だ。
これ以上なく巧みに扱えるだろう。
2.についても同様だが、長門や朝倉といったインターフェースがその親玉につい
てどこまでのことを知っているか、というのは少々疑問の残るところだ。
しかしあのとき急進派は朝倉に消失の対象である主流派の情報を送り続けてい
た筈だ。それを利用してその範囲をナントカ体全てに変更するのは、あのときの朝
倉には造作もないことだったろう。何せ万能の力がすぐ傍にあったわけだからな。
ただ、3.については勝手が違う。動機ってのは本人の口から語られない限り明
かされないもので、推理なんて出来はしない。出来るのは当て推量だけだ。だから、
ここからは俺の勝手な想像になる。
朝倉はほんの少しだがハルヒに似ている奴だった。そんな朝倉がたとえかつての
操り主だったとは言え、それこそ本当の端末、道具として扱われることを何の抵抗
もなく受け入れたのだと果たして言い切れるだろうか。そんな筈はないと俺は思う。
ただ、世界を創り替えられるくらいの力があって、それでやったことが親を消して
自分も消えることだなんて、あまりに切な過ぎるが……、それでも。俺は思いたい。
あいつが長門を完全に消さなかったのは、やっぱりハルヒに似ているあいつの、
ハルヒによく似た捻くれたお節介だったのではなかろうか――――と。
まあ、思いたいだけなんだが。
897 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:43:29.81 ID:JtFmP3ETO
支援
898 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:43:45.25 ID:MO5OOv8P0
支援
168
だが、そんな状況証拠だけで打ち立てた穴だらけの机上の空論は、勿論口には
出さない。それにこれは長門の話に嘘があったという仮定を前提にしたものだ。長
門が俺にそんな嘘をつく理由があるとは到底考えられない。長門の言っていること
は正しいのだ。
だから俺は黙ったまま先の言葉に対する長門の返しを待っていた。長門はぱら
ぱらとページをめくりながら、たっぷりと時間をかけて「そう」と一言。ハードカバー
に向けていた視線をこちらへ遣すと、
「あなたがそう思いたいならそう思うといい」
そう言って再びハードカバーに目を落とした。
「ああ。そうするよ」
見れば、窓の外はもう随分と薄暗い。だいぶ長居してしまったようだった。これ以
上居座るのも気が引けた俺は、さてと立ち上がり、踵を返そうとしたところで思い出
した。
そう言えば、大事なことを忘れていた。
「あ、そうそう。もうひとつ質問があったんだよ」
「なに」
900 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:44:37.84 ID:Dyigwdn2O
支援
901 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:44:42.30 ID:MM9Kw+yyO
支援
169
長門は再び目線を俺にくれる。何度も読書を中断させて悪いとは思ったが、致し
方あるまい。そもそも俺がここへ戻った理由の一つに、この質問をする為というも
のがあったのだ。このまま帰ってしまっては画竜点睛を欠くというものだろう。
それに、俺にとってその質問はあんな込み入った事後説明を聞くことなんかより、
遥かに大切な用事だったわけだしな。
何度も読書の邪魔してすまんな、と断ってから、俺はその質問を口にした。
「あのとき…、つっても分からんか。 お前が消えちまうかもしれないってときさ。
お前、笑ったよな? あんな状況だってのに、なんでまたお前笑ったんだ?」
あのとき、確かに長門は俺を見て、微笑んだ。見間違いでもなければ幻覚でもな
い。あれは長門の笑顔だった。改変された世界の長門が見せた笑顔とは違う、本
当の長門の笑顔だったのだと、俺は思う。
だから、知りたかった。自分が消えるかも知れないってときになってどうして、こい
つはあんな顔で笑ったのか、その答えを。
……だが、長門は黙ったきり答えなかった。返答に困っていると言うよりか、むし
ろ何を聞かれているのか分からない、そんな表情で俺を見ていた。
まあ、しょうがないのかも知れないな。自分の存在が消える瀬戸際だ。もしかした
らあのときのことは記憶にないのか。なら、残念だが、仕方がない。
覚えてないんならいいんだ、忘れてくれ。そんな台詞が口を衝いて出ようとしたとき、
黙っていた長門が口を開き、唐突に話し始める。
170
「わたしが機能を停止していたとき、わたしはとても興味深い体験をした」
長門はハードカバーをぱたりと閉じると、それを膝に置いてこう続ける。
「夢を、見た」
ぱちり、瞬いた両の目が、俺を捉えた。
「肉体以外の全情報を消失していた筈のわたしが何故そのような体験をしたのか、
またどうしてそのような体験をしたという記憶があるのかは、不定」
長門はそう断定し、「元よりわたしが夢を見ることはない。夢という概念は有機生
命体が睡眠時に行う記憶の整理に伴い、その記憶の断片が半休眠中の意識化に
現れる精神行為のことを指し、それは我々のような情報生命体にとって――――」
だとか、小難しい言葉を用いて延々自分が夢を見る理由がないことを説明すると、
「けれど。恐らくはそれが、先程の問いに対する解答と思われる」
と、末尾を結ぶ。どうやら、それで終いらしかった。
ううん、と唸る。どうにも哲学的な答えであるそれは、サルトルでもなければフーコ
ーでもない俺には少々どころかまったく理解できない。だが、それでいいかなと思う。
長門の目を見れば分かった。その答えはきっと、長門なりに俺の質問に対し真摯
に受け止め、考えて答えてくれたものに違いないのだ。
なら、理解は出来ずともそれでいいかなと思う。
904 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:45:42.44 ID:ro3C/ZrV0
四円
905 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:45:51.49 ID:JtFmP3ETO
支援
171
「そっか」
「そう」
呟いた相槌に、長門は律儀にも返してくる。
或いは俺はその簡潔なやり取りを最後に、そのまま帰っても良かったのかも知れ
ない。しかしいつまで経っても膝に落としたハードカバーを手に取ろうとしない長門を
見るにつけ、俺は本日最後の質問のつもりでこんな問いかけを口にした。
「夢の内容は、覚えているのか?」
長門の見る夢がどんなものか多少なりと興味があった、というのも勿論だが、そ
れ以上に。何故か、長門がその質問を待っているような、そんな錯覚を覚えたのだ。
「覚えている。でも」
長門は言葉を区切り、その目はぱちりと瞬く。
その「でも」という否定接続詞に続いた言葉に、俺は不謹慎ながらほんの少しだけ
笑ってしまった。それはその言葉があまりに長門らしくなかった為か、或いは俺は、
それが嬉しかったのかも知れなかった。
長門はいつものように必要最小限の大きさで口を動かし、俺にこう告げた。
「ひみつ」
907 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:46:19.72 ID:MO5OOv8P0
支援
908 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:46:30.20 ID:ro3C/ZrV0
紙片
909 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:46:41.51 ID:U1WiqJu/0
支援
910 :
ウィキ”管理”人 ◆9wIWhQmhwg :2006/09/23(土) 23:46:45.81 ID:MwA0D1Vl0
レンタルサーバーだからSQLを見れません。
サーバー側にやってもらう事になるから、しばらく直らないかも。
911 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:46:56.91 ID:JtFmP3ETO
支援
172
それから数日が過ぎ、今年もまた七月七日がやってきた。
誰の望み通りの結果なんだろうね、日に日に晴れ渡っていく夜空を見上げながら、
日に日に暗雲立ち込めていく憂鬱な気分を抱え、俺はその日を迎えたわけさ。
かつてただのおまじないイベントに過ぎなかった七夕がこうまで俺を陰鬱な気分に
させるに至ったのは、言うまでもなくハルヒのせいに他ならない。
別に昨年の七夕…、いや、四年前の七夕に自身が取った行動を後悔しているわ
けではない。あのときはああするしかなかったしな。
ただ、俺の奇矯な日常の全ての始まりが実はあの日にあったのだと知ってしまっ
た今年、七夕が近づくにつれ俺は今までの様々な事件やら出来事をどうしても思い
出してしまうのだ。もしあのときああしてなかったら、こんな事件やら出来事には遭
遇せんかっただろうなぁ、と。
そしてそんなとき思い出すのは限って疎ましい事件やら忌々しい出来事なのであ
る。これで憂鬱になるなというのが無理な話であった。
その元凶たるハルヒはと言うと、去年のメランコリー状態とは打って変わってむや
みやたらにハイテンションだった。去年はあんだけ煤けていた七夕当日にも長門の
退院祝いも兼ねた七夕パーティーを行うことに決めてしまったくらいだ。
どうやら風邪と同様に、憂鬱な気分も人に伝染せば直るものらしい。はた迷惑な。
しっかし期末考査も近いというに、そんなことをしていて大丈夫なのかねぇと赤色
の混じりかけた中間の答案を見返してため息をつくが、ハルヒの決定に異を唱えて
も無駄なことは、そのにこにこと喜色満面なツラを見れば分かりきったことだった。
913 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:47:24.67 ID:Dyigwdn2O
支援
914 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:47:27.01 ID:uwU2IfjZ0
今ちょうど追いついた 支援
915 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:47:41.37 ID:n3J+BFrg0
支援
173
放課後になり、教師の目を盗んで食材やら何やらを構内に運び込むと、俺たちは
一路SOS団の拠点である文芸部室に向かった。
粗方のものは前もって運び込み、備品の冷蔵庫内にしまっておいた為、荷物は鞄
等にしまうことが出来、これといって危険はなかった筈なのだが、それでも誰かに見
つかるかもと、どうにもワクワクとしてしまったのは我ながら青い。ランドセルを卒業
しても教師に隠れて何かをやるというのは、中々どうして抗い難い魅力があった。
ああ。ここ数日の、主に長門の病室でのSOS団の活動についても少しだけ語ろう。
ハルヒが出入り禁止を食らいました。以上。
……これ以上、何を語れと言うのか。あのヤロウ、あまつさえ人を共犯扱いだ。
車椅子は人を轢く為のものじゃないって俺は止めた筈なんだがな?脳みそか耳
か、或いはその両方が腐ってるんだな。多分。
結局ハルヒだけではなく俺たち全員が出入り禁止の宣告を受けたわけだが、懲り
ないハルヒは長門の個室を夜襲する算段を立て始めやがった。流石にどう止めよ
うか迷っていたのだが丁度長門の退院が決まり、俺は心底ほっとしたものだ。
本当ならもう二三日様子を見る予定だったのだが、恐らくは古泉が手を回してくれ
たのだろう。流石のあいつも最近のハルヒの高気圧振りにはついていけないようだ。
笑みに若干の疲れが見え隠れしている。
古泉同様毎日疲れっぱなしでこの数日は生きた心地がしなかった俺としては正直、
長門が帰ってきてくれたのが非常にありがたい。身内ならまだいいが、これ以上よ
そ様に迷惑をかけるのは俺の精神がもちそうになかった。
917 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:47:58.64 ID:MM9Kw+yyO
シエン
918 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:48:00.00 ID:JtFmP3ETO
919 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:48:17.02 ID:U1WiqJu/0
支援
174
して、七夕パーティーである。それも何故だか暖房器具が大量に揃った、七夕パ
ーティーである。窓辺に飾られた横断幕には本当にどうしてだろうなぁ、『ガマン大
会』なんて書かれているんだこれが。本当になんでかなぁ。
……いや、現実逃避は止めにするか。…受け入れよう。紛れもなく今年の七夕は、
ガマン大会なのだ。はぁ……、一生のうちで夏に鍋を囲む機会なんて都合何度ある
んだろうね。また谷口に笑われそうだ。
しかし前もって聞かされてたとは言え本当にやるとはなぁ。まあ、実を言えばあい
つがこれを言い出したときに本当にやるのか?と俺が問うた、それに対する返答を
聞いた時点で、諦めはついていたのだが。
宴も酣になると、流石のハルヒもぐったりとしてきて、俺は暫くぶりに馬鹿みたいな
テンションでない普通のハルヒを拝むことが出来た。なんでまた最近のこいつがあん
なハイテンションを持続してたのかは分からんが、出来ればそのまま大人しくしてて
欲しいね。俺の身が持たん。
921 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:48:50.59 ID:uwU2IfjZ0
試演
922 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:48:55.67 ID:XHURYlU6O
>>910 復旧後の追加更新で削られる管理人さんの睡眠時間を案じる俺ガイル
923 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:49:37.25 ID:uwU2IfjZ0
支援
175
暖房を止め窓を開けると、初夏の暑さもむしろ涼しいほどだった。朝比奈さんが
淹れてくれた水出しのお茶を飲みながら外から入ってくる風に身を委ね、暫くのん
びりと一服する。
周りを見ると皆同様に、のんびりと過ごしている。皆が皆、一様に大汗をかいて
いるという光景も、どこか滑稽で笑いを誘った。
そうしてひと段落着くと団長閣下の号令の下、本日のメインイベントが始められる。
今年も団長じきじきに採ってきた(正しくは学校裏の竹林から盗ってきた、だが)笹
竹に、それぞれの願いを吊るすのだ。
俺が昨年の今日に書いた内容は最早記憶の底であるが、確か16年後の自分に
向けた願いだったという趣旨は覚えている。
しかし気まぐれなハルヒのことである。「今年は今年の分の願いを書きなさい!」
と開口一番そう宣言した。やれやれ、あのとき披露したうんちくはなんだったのか
ねぇ。そう思いながら、俺は今年の分の願いを書いた。
まあ、俺としてはこの願いの持続期間は今年だけじゃなくてもいいんだがな。
925 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:49:48.15 ID:ro3C/ZrV0
バックアップってのは当然鯖側にってことだよな…
926 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:50:38.71 ID:uwU2IfjZ0
支援
927 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/09/23(土) 23:50:45.85 ID:CjWkLtii0
>>924 どおりで全然ハルヒが出てこないとオモタwwww
支援
鯖移転すればよくね?