1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 12:58:45.03 ID:0km3tM0a0
苛立ちながら辺りを調べてみるがそれらしいものは無い。
しかし牛肉の臭いは確実に強まっている。
テーブルやソファーをひっくり返すが何も無い。
がっくりとうなだれた。全身が汗びっしょりと濡れその一滴が
首筋から頬につたい床に落ちた。
ふと落ちた汗を人差し指で拭って取ったそれは・・・・ローションだった。
つづく
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 13:02:51.00 ID:iiJRDo+s0
そのローションはテラテラと光りごま油の匂いがした。
つづく
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 13:07:21.33 ID:iiJRDo+s0
そういや昨日は焼肉だったっけ・・・
いや一昨日だったっけ?
あれ?わかんない・・・?
思い出せない・・・焼肉した事すらはっきりしない・・・
どうやら牛肉臭は記憶を消し去る作用があるようだぞ。
つづく
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 13:10:18.80 ID:iiJRDo+s0
そもそもこの臭いは牛なのか?
ふと外を見ると玉虫色のヤンキー車が金切り声を上げながら走り去っていく。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:10:16.84 ID:iiJRDo+s0
揚げパンを頬張りファブリーズを買いに行く準備をする。
さすがにこの臭いは耐えられなくなってきた。
蓑虫型の寝巻きを脱ぎ捨てハゲ散らかった頭をそっと撫でる。
「雨が・・・近いな・・・」
この季節はいつもそうだ。
この頭にこの湿度は酷だ。
いたわってやりたい。いたわってやりたい。そう願う。
しかし願うだけでは抜けてゆく毛を繋ぎ止める事はできない。
願うくらいなら、ごま油まみれの頭髪をさっさとシャンプーすればよい。
ふふ。っと小さく笑う。
あぁ丈夫な毛が欲しい。丈夫な毛が欲しい。
シャワーの蛇口をひねり熱い雨に飛び込んだ。
つづく
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:10:48.25 ID:iiJRDo+s0
熱い雨は自分が想像していたものより熱湯であった。
あわてて飛び出した時、肘をどこかにおもいっきりぶつけた。
熱さと、痛さと、牛肉とごま油臭で風呂場は修羅場だった。
この修羅場で自分がどんな顔してるのか気になり湯気でくもった鏡を手でふき取るとそこには
つづく
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:11:26.07 ID:iiJRDo+s0
そこにいたのは今にも泣きそうな顔して海の藻屑のようなものを頭に乗せた薄汚い男だった。
鏡を見る前に目いっぱい決め込んだ表情も子供が泣く一歩手前の顔にしか見えず
雨に打たれたヤサ男を決めたポーズも打ち上げられたドザエモンにしか見えなかった。
髪をかきあげ「こうすれば良くね?」と無理して声に出してみる。
何も良くない。鏡なんていらない。見なきゃよかった・・・
つづく
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:11:51.66 ID:iiJRDo+s0
自分はモテると思っていた。
いや、正確には今でもモテると思っている。ただモテようとする努力に飽きただけだ。
わかるやつにだけはオレの魅力がわかってるはずだ。
ただ自分の事モテるなんて思ってるのがバレたら何かとめんどくさいから言わないだけなのだ。
同じ階に住むOLはきっとオレの事が好きだろう。
エレバーターでよく一緒になるのがなによりの証拠だ。
つづく
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:12:21.20 ID:iiJRDo+s0
3日連続でエレバーターで一緒になった時は、もしかしたら彼女はオレを待ち伏せしているんじゃないか?と疑ったが
この彼女の純粋な想いに応えるべく翌日からオレが待ち伏せてあげた。
「おはよう。今日は天気が良くて気持ちいいね。」
「おかえり。仕事お疲れ。あしたもガンバロー!」
やさしく声をかけてやる。
照れくさそうにうつむく姿をオレやさしく見つめてあげた。
つづく
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:17:31.33 ID:iiJRDo+s0
シャワーを浴び終え携帯電話をそっと覗く。
目を離した隙にメールや着信があるかもしれない。
シャワー上がりの日課だ。
メールは来ていない。チラッと時計に目をやる
こんなへんな時間メールなんかこないよなぁ。
心配症な自分が少しかわいく見える。
つづく
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:21:57.58 ID:iiJRDo+s0
洗濯したがまだ生乾き状態のトレーナーに袖を通す。
どうせもうすぐ雨だ。濡れてしまうなら最初から濡れていたほうがいい。
犠牲はすくないほうが良いに決まってる。
こういうどうでも良い事までしっかり考えてしまうオレはやはり社長とかが向いてる気がする。
つづく
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:23:32.53 ID:iiJRDo+s0
自転車の空気が抜かれていた。3日前から。
つづく
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:27:27.04 ID:iiJRDo+s0
外は天気がよかった。
快晴である。
生乾きのトレーナーもすぐ乾くだろう。一石二鳥とはこういう事だ。
どんな天気でも生乾きのトレーナーは大丈夫。
全天候型トレーナーとでもいうのか。
思わず笑みがこぼれる。
正面から歩いてきた子供がオレの顔を見つめる。
何見てんだこのやろう
つづく
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:36:13.70 ID:iiJRDo+s0
オレは子供が好きだ。
自分の子供ならなおさらだろう。かわいがり過ぎて甘えた子になるのが心配。
そういう時はちゃんと叱ってやろう。
オレの子はオレの子だから当然物分りがいいはずだ。
つづく
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:37:31.36 ID:iiJRDo+s0
トレーナーを前後逆に着ていた。
どおりで首が苦しかったわけだ。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:37:56.97 ID:iiJRDo+s0
つづく
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:42:30.31 ID:iiJRDo+s0
自作の歌を口ずさみながら歩いているといつのまにかジットリ汗が。
トレーナーを着てきた事は間違いだった。
トレーナーを脱ぎ腰に巻きつけようとしたが届かなかったので首にフアっとかける。
つづく
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 14:58:15.82 ID:eTZZlIfH0
そのとき、初めて気が付いた。
牛肉の臭いは・・・自分のワキから臭ってくるのだった
驚いてさらに臭いをかいで見るとどうやら右側の腋から牛肉臭がするようだった。
恐る恐る左側の腋の臭いをかいで見ると・・・
つづく
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 15:04:56.67 ID:iiJRDo+s0
豚肉?
豚骨というか脂の膜にくるまったような臭いがする。
コッテリタイプのラーメン屋の換気扇の臭いだ。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 15:05:24.19 ID:iiJRDo+s0
つづく
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 15:08:50.15 ID:eTZZlIfH0
「うわあああああああああああああ!!!」
錯乱しながら今度は股間をまさぐってみる
無い。
有るべきはずの物がそこに存在しなかったのだった。
その代わりにべっとりと液が指先に絡み付いてきた。
恐る恐る臭いをかいでみた・・・・・・魚の臭いだった。
つづく
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 15:11:39.29 ID:iiJRDo+s0
とんでもねぇ!
オレは人間生鮮市場か?
誰がうまいこt(ry
オレ、女だったのか?ボクっこなのかオレなのに。
落着け・・・落着け・・・・
どこかにヒントがあるはずだ。
股間にはないどこかに・・・
つづく
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 15:22:14.22 ID:eTZZlIfH0
今になりようやく胸のふくらみに気づいたボクはそっと掌で包み込んでみる。
しっとりとした肌が掌に吸い付くように収まった。
椀状の乳房の先端の突起物を軽くつねって見ると痺れるような感覚が走った。
それに右の乳首から白いものが出てきた・・・・「乳!?」
・・・左側も試しに同じ事をしてみた
先と同じ感覚、しかし違ったのは今度は黒い液体だった。
「コーヒー・・・??」
つづく
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/06/19(月) 15:29:29.81 ID:iiJRDo+s0
黒い液体に濡れた指を恐る恐るなめてみた。
思わずウッとなる・・・っ
ボク、コーヒー苦手だったんだ。
右の乳首から出た白い液体をなめてみる。
あ、クリームシチュー・・・。
ボク、ランチタイムのセットのようだよ。
ボクの乳首から溢れるコーヒーとシチューにしゃぶりつくサラリーマン達を想像したら
立ってられなくなりへたりこんでしまった。
気付くと下半身は生暖かい液体で溢れていた。
つづく
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
周りにはボクを嘲笑する人達。
たすけて・・・たすけて・・・
もうイヤだ。もうイヤだ。
ハゲ散らかったボクっこを笑わないで笑わないで!
色んな臭いがする生ゴミ人間の事なんか気にしないで。
お願いだから・・・お願いだから・・・
気付くと朝だった。
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