犯罪者でもないのに中学の頃の作文を晒されるスレ

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
『無題1』    長門有希

自分は幽霊だ、と言う少女に出会ったのはxxxxほど前のことだった。
私が彼女に名を問うと、彼女は「名前はありません」と答えた。「名前がないから、幽霊なのです。あなたも同じでしょう」そう言って少女は笑った。
そうだった。私も幽霊だったのだ。幽霊と会話できる存在がいるとしたら、その存在も幽霊なのである。今の私のように。
「それでは行きましょう」
彼女が言うので、私もついていく。少女の足取りは軽く、まるで生きているように見えた。どこへ行くのかと尋ねた私に、少女は足を止めて振り向いた。
「どこへでも行くことはできます。あなたの行きたい場所はどこですか?」
私はしばらく考え込んだ。私はどこに行こうとしていたのだろう。ここはどこだろう。なぜ私はここにいるのだろう。
ただ立ちつくす私は、少女の暗い瞳を見つめるしかなかった。
「xxxxへ行こうと思っていたのではないですか?」
解答を出したのは少女だった。その言葉を聞いてようやく、私は自分の役割を知った。そうだ。私はそこに行こうとしていたのだ。どうして忘れていたのだろう。こんなに重要な事柄を、私が生きて存在するその意義を。
忘れてはいけないことだったはずなのに。
「では、もういいですね」
少女は嬉しそうに微笑んだ。私は頷いて、彼女に感謝の言葉を述べた。
「さようなら」
少女は消えて、私は残された。彼女は彼女の場所へと戻ったのだろう。私が私の場所へ戻ろうとしているように。
空から白いものが落ちてきた。たくさんの、小さな、不安定な、水の結晶。それらは地表に落ちて消えゆく。
時空に溢れている奇蹟の一つだった。この世界には奇蹟がありふれている。私はずっと立ち止まっていた。時間の経過は意味をなさなくなっていた。
綿を連ねるような奇蹟は後から後から降り続く。
これを私の名前にしよう。
そう思い、思ったことで私は幽霊でなくなった。
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/05/18(木) 20:39:43.03 ID:FPvJrrzx0
2げっとおぉぉぉぉぉぉ
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
『無題2』 長門有希

その時まで、私は一人ではなかった。多くの私がいる。集合の中に私もいた。
氷のように共にいた仲間たちは、そのうち水のように広がり、ついには蒸気のように拡散した。
その蒸気の一粒子が私だった。
私はどこにでも行くことが出来た。様々な場所に行き、様々なものを見た。しかし私は学ばない。見るだけの行為、それだけが私に許された機能だ。
長い間、私はそうしていた。時間は無意味。偽りの世界ではすべての現象は意味を持たない。
しかし、やがて私は意味を見つけた。存在の証明。
物質と物質は引きつけ合う。それは正しいこと。私が引き寄せられたのも、それがカタチをもっていたからだ。
光と闇と矛盾と常識。私は出会い、それぞれと交わった。私にその機能はないが、そうしてもよいかもしれないことだった。
仮に許されるなら、私はそうするだろう。
待ち続ける私に、奇蹟は降りかかるだろうか。
ほんのちっぽけな奇蹟。