【君を】素直クールな娘【感じたい】

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952偽者:2006/02/08(水) 01:50:24.66 ID:RCydXuxN0
「出来れば直接話したいんだけど。」

「仕方ない、私の家で良いのなら、来ても構わないが。」

初めての自宅への招待状。
だけども、それは僕の心に何の喜びも与えず、ただ淡々と了承した。

「突然どうしたんだ?」

カチャッと目の前に紅茶の入ったカップを置かれる。
初めての彼女の家、初めての彼女の部屋。
どれもこれも僕の心を突き動かすはずだった世界。
だけど、今は何も感じない、何も動じない。

「話があってさ。」

ズズッと紅茶を啜り、部屋を見渡す。
彼女らしいと言えば彼女らしい。
必要なもの意外取っ払った感が滲む出るその場所。
ある意味、殺風景とも取れた。

「で、話とは?」

彼女も紅茶を啜りながら、僕に問う。
その仕草はどこか大人っぽく、自分が小さな子供だと感じさせられ、遣る瀬無い気持ちを湧き立たせる。

「僕達ってさ、付き合ってるの?」

「なんだ、そんなことか。君から告白して来たんじゃないか。」
953偽者:2006/02/08(水) 01:51:12.06 ID:RCydXuxN0
「だったら、この台詞を使うのも問題無いか。」

言っている意味が解らない、と表情で語る。
どこまでも滑稽だ。
2人きりでいる彼女の部屋、そしてきょとんとした表情を初めて見せる彼女。
正に最初で最後という言葉がぴったり当て嵌まる。

「あのさ、別れよっか?」

どもることなくすんなりと口から出たその言葉。
言うタイミングとか流れを掴もうと必死にもならず、ただすんなりと出た。
それほど僕自身限界だったのだと、思わせた。

「それを言いに来たのか?」

こんなものだろうと理解していた。
僕のこの台詞に動じることなく、何時もの表情、何時もの口調、予想していた通りの全てのものが出揃っていた。

「うん、それだけ。」

「そうか。」

お互いに紅茶を啜り、沈黙する。
彼女が悪いのか、僕が悪いのか。
どっちでもありどっちでもない、そんな曖昧さが際立って居心地をどこまでも悪くさせる。

「なら、今日は忙しいんだ。悪いが」

それ以上、彼女の口から何時も通りの口調を聞くのも癇に障る気がしてならない。
続けて何か言おうとする彼女を遮り、一言だけ言って立ち上がる。
954偽者:2006/02/08(水) 01:51:35.13 ID:RCydXuxN0
「帰るね。」

もうこれで、彼女との全てが終わった。
きっと前みたいな友達としての関係にも戻れない。
これは多分とか、もしかしたら、何ていう予想しえることじゃない。
確信がある、自分の心がそう叫ぶ。

そして、それは確信から日常へと変化した。
学校の中で彼女と顔を合わすことはあっても、言葉を交わすことは一度も無い。
それは、1日1日積み重なれ、日常へと変化していた。
自然の理であり、おかしな点は何1つない。
だが、俺達のことを良く知る友人等は首を傾げ、喧嘩でもしたのかと聞いてくる。
別れたということを告げていないので当然だが、彼等にとって見ればそれは異常なことだったのか。
人が他人と接することなく日常を生きることがそんなに変なことだろうか?
苛立ちに似たものが心の中で芽を吹かせ、抗うように生きていた。
そんな僕を見て、友人等は戸惑うばかり。
そして、彼女を見て、友人等はまた戸惑うだけだった。

そんなある日の事。
彼女が風邪を引いて欠席した。
自分としてはもうどうでも良いことだったのだが、正直なところ気になることは気になった。
だが、それ以上でもそれ以下でもない。
心の中で境界線を造り、興味の無い素振りを見せた。自分に対して。
そんな僕の気持ちも露知らずと言う具合。
友人がある提案を持ち掛けた。

「はい、コレ。」

バサッと3枚ほどあるプリント用紙。
良く見れば、今日学校で渡されたプリントだった。
955偽者:2006/02/08(水) 01:51:56.34 ID:RCydXuxN0
「彼女のところに届けておいてよ、今日中には目を通した方が良いものだし。」

だが、そんな提案は受け入れられない。
彼女とはもう何もないし、何も造る気もないのだから。

「アンタ達、最近変だったし。これを仲直り出来る切っ掛けだと思ってさ。」

そう言われれば黙るしかない。
まだ別れたことを伝えていない。
ここで拒否すれば否応なしにそれを言わなければならないだろう、それだけはどうしても避けたいことだった。
有り得ないことではない、誰かと誰かが別れることなど。
だが、僕はどうしてもそれを誰かに伝えることは出来なかった。
奇しくも、彼女もそれは同じだったようで、まだ噂さえ立っていない。

「解った。」

渋々ながらもそれを了承し、最初で最後と思われた彼女の自宅へと足を運ぶ。


ピンポーン

インターホンの軽やかな音が耳へと響く。

「どちら様?」

彼女の母親らしき人物がひょっこりという効果音が似合いそうなぐらい現れる。

「あ、僕同じクラスメイトの・・・・」

そこでナイスアイデアを思いつく。
956偽者:2006/02/08(水) 01:52:21.99 ID:RCydXuxN0
ここで、彼女の母親にプリントを手渡してしまえば良いのではないか。
そうすれば、彼女とも顔を合わさず、言葉を交わす必要も無くなる。
心の中の自分が親指を立て、『ナーイスアイデア!』と喜んでいる。

「あ、あの子から聞いてるわ。もしかして、お見舞い?ちょっと待ってねー。」

だが、彼女の母親はそんなナイスアイデアの『ナ』の字も聞かず、家の中に消え、10分ほど経った後、僕を家の中へと招待してくれた。

「ゆっくりして行ってねー。」

彼女の部屋の前まで護送され、今更『帰ります。』なんて言えるわけもなく、諦めモードで扉のノブに手を掛ける。
先ほどまで親指を立てていた心の中の自分はコタツに入り、寝転びながらテレビを見ている。
要は諦めろと言うことだろう。

「・・・・やあ。」

「・・・・やあ。」

2人してぎこちない挨拶。
ベッドで寝転ぶ彼女は、はぁはぁと息遣いを荒くさせ風邪と必死に格闘している。
2度目の奇妙な沈黙がこの部屋を覆う。
前の時と、何も変わらない。

「ごほごほ。」

「・・・・風邪、大丈夫?」

辛そうに咳き込む彼女を見て、するりそう口から零れる。
そう、前のときと同じように。
957偽者:2006/02/08(水) 01:52:43.85 ID:RCydXuxN0
「ん・・・。まだ、大丈夫じゃないな・・・。」

「そっか・・・。」

言葉を紡げば紡ぐほど、沈黙が余計に重く感じる。
それを振り払うかのように、慌ててプリントへの話題を話す。

「これ、今日配られたプリント。今日目を通した方が良いってアイツが言ってたから持ってきたんだ。」

【だから自分の意思でここに来たんじゃないよ】。
残酷にも、自分で言っておきながらそう聞こえた。

「・・・・そうか・・・。」

ただでさえ、風邪を引いてツライんだ。
これ以上、僕がここに居て迷惑を掛けるわけにもいかない。
すっと立ち上がり部屋を後にしようとする。

「帰るのか?」

「うん。じゃあ、ね。」

ぎこちない笑顔を振り撒き、彼女への別れの挨拶。
そして、何時もよりも歩調を速め扉に手を掛けようとした。

「・・・・ふ・・ふふ・・・。」

その時、奇妙な笑い声が聞こえた。

「・・ふふふ・・・はは・・・あははは・・・!」
958偽者:2006/02/08(水) 01:53:05.65 ID:RCydXuxN0
最初は聞き間違いかと思うほど小さいものだったが、今ははっきりと耳に残る。
そしてその声の主は勿論、彼女だった。

「あはははははは!!!」

ばっと振り返り、高笑いしているであろう彼女を見ようとする。
正直、何がそんなに可笑しいのか理解に苦しんだが、その理由が気になってしまっては人間として関わらないわけにはいかなかった。
だが、予想に反してそこには高笑いする彼女はいなかった。
いや、確かに高笑いしている、けれども、それだけじゃなかった。
ぽろぽろと大粒の涙を流している、それは、笑って出た涙じゃないと解るほどに。

「滑稽だ、滑稽すぎる。」

ふらりふらりとベッドから立ち上がり、ゆらりゆらりと足取りも覚束ない状態で歩き出す。

「大丈夫!?」

慌てて彼女に近寄り、肩に手を乗せる。

「触らないでくれ。」

瞬間、その手を払いのけられ、力なき瞳で見つめられる。

「友人に言われ、ここに来た・・・か。」

「滑稽だと思うだろ?何せ、期待していた自分がいるのだから。」

「また君から告白され、あの時の関係に戻れるかもしれないと思っていた自分がいるのだから。」

「正に道化師。あはははは!!」
959偽者:2006/02/08(水) 01:53:28.58 ID:RCydXuxN0
ゆらりゆらりと揺れながら、クローゼットの扉を開ける。
そこには慌てて隠したという雰囲気が丸出しの物の山。

「似合わぬだろうと隠した人形。」

彼女はそう言い、人形を僕に投げつける。
ぽすっと音にもならない音が、響く。

「女々しいと言われるだろう君に写真。」

「子供っぽいと思われるであろう漫画。」

「男っぽいと感じさせる玩具。」

淡々と述べては僕に1つ1つそれをぶつける。
カタン、ガシャン、と音を立て奇妙な演奏を奏でる。
痛くは無い、それほど強く投げられいないから。

「隠して隠して隠して隠して。」

「理想になろうとして、好みになろうとして、好かれようとして。」

何時しか投げるのも止め、物の山の前で女の子座りをする彼女。
背中からでも解る、はっきりと彼女は泣いている。

「それでも君は好きと言ってくれず、それでも君は私の顔色ばかり伺って、それでも君は何もしようとしない。」

「こんなに私は君のことが好きなのに、こんなに私は君のことを愛しているのに。」

「振られてしまった私は・・・、道化師だ。」
960偽者:2006/02/08(水) 01:53:50.39 ID:RCydXuxN0
「うー、疲れたー。」

「って、お前寝てただけじゃん。」

4時間目の授業もつい先ほど終わり、念願のランチタイム。
友人の抗議の声も何のその。
学校生活で5本の指に入るほどの楽しみな時間だ。

「さーて、食事にしましょー。」

「コラ。」

ぎくっ、と後ろを振り返れば、そこには彼女。

「君はまた授業中寝ていたな。」

目を瞑り、どこか重低音の声を出し怒りを強調させる彼女。

「あは、あはは・・・。昨日はちょっと寝るのが遅くて・・・。」

乾いた笑いで言い訳にもならない言い訳をする僕。

「何も勉学が全てではないが、弛んでいるぞ。」

「ご、ごめんなさい。」

すっ、とお弁当を差し出され「ありがとう。」と礼を述べそれを受け取ろうとする。

「次、寝ていたらもう造って来ないからな?」
961偽者:2006/02/08(水) 01:54:10.32 ID:RCydXuxN0
「うっ・・・・気をつけます。」

こうやってまた彼女と話せる日が来るなんてなぁ・・・。

そう、あの時。
僕は彼女の本音を聞いた。
悲しくも、それは僕と同じ気持ち。

相手からの気持ちが伝わらず、好かれようと必死に自分を変えようと努力していたこと。
涙を流す彼女はとてもとても弱弱しく、あの時言った。

「お願いだ・・・、私と付き合ってくれ・・・。君が好きになるようにもっともっと努力するから・・・。」

彼女は僕と良く似ていた。
心の中がとても。
本当はそれをするのは自分の方だったのに、偽って、強がって、何もしないで逃げていた。

「ごめんね・・・ごめんね。」

それに気付いた僕は、とても愛おしい彼女を抱いていた。

「どうすれば、良い?どうすれば、もっと好いてくれる?」

震えるように、寂しげに僕の胸で囁く彼女。
だけど、僕はもう気付いていた。

「本当の君が好きだから、そのままの君でいてくれるのが一番。」

偽りの彼女が好きなんじゃない。
本当の彼女が好きだから、あの時、僕は演じた彼女に疑問を持っていたんだ。
962偽者:2006/02/08(水) 01:54:31.18 ID:RCydXuxN0
「・・・・でも、本当の私は我が侭だぞ?」

「それが好きなんだ。」

「本当の私はもっと本音を吐き出すぞ?」

「それも好きなんだ。」

「本当の私は・・・」

続けて言おうとする彼女の口を少しだけ塞ぎ、離れて一言だけ僕は言った。

「改めてお付き合いのほど宜しくお願いします。」



「まったく、頼むぞ。」

「うん、もう寝ないよ。」

薄っすらと笑顔を浮かべながら、僕を見つめる彼女。
僕達はお互いに恋していた。
だから僕等は相手に好かれようと必死だった。
だけど、僕等は【仮面】をつけてしまった、演じる仮面を。
その仮面に恋したわけじゃないのに、その仮面が好かれたわけじゃないのに。
本当の自分を受け入れられるのは難しいことだろう。
けれど、本当の自分を理解して、手と手を繋ぎあって歩むことが出来ればそれは至福としか言いようがない。
僕と彼女も、その至福の時を楽しんでいる。
本当の僕達で。
963偽者:2006/02/08(水) 01:56:47.37 ID:RCydXuxN0
だけど、不満と言うか困ったことがあるとすれば

「本当に頼むぞ。将来の夫となる人がそんなことでは将来できる私達の子供にも悪影響なんだから。」

本当の彼女は自分で言うよりも、素直に本音をぶちまけること。

そして、何より、僕が思っていた以上に愛おしい存在だということ。




それぐらいだ。



諸事情で投下しができない状況に。
こればかりは申し訳ないとしか言い様が無い。
964以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 02:00:28.85 ID:AQlgihI80
乙彼。興奮させていただいた
965以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 02:06:30.97 ID:xAKfFNc10
名作だ
感動した
966以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 02:16:19.69 ID:5Kw5/Unv0
>>963
感動した
展開がうまいな
14レスもあるのに引き込まれるように一気に読んでしまった
GJ!
967以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 02:28:40.56 ID:AKRI+oJ/0
GJwwwwwww
これはいいなwwwww
968以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 02:48:19.09 ID:K4gEzNy80
GJ!
ヤバい、ヤバいですよー
969以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 02:58:05.27 ID:hC66FVc00
(・∀・)イイ!!
970以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 03:23:39.83 ID:xAKfFNc10
971以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 03:24:08.61 ID:GdBNLwdw0
さて、俺も描こう
その前に少し寝よう
明日色鉛筆を買おう
>>963
素晴らしい
972以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 03:57:03.46 ID:Y65NfWyR0
見事なペルソナ乙であります
973以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 04:33:36.43 ID:GdBNLwdw0
寝れね
ほしゅ
974以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 04:44:03.44 ID:GifrUeGD0
保守代わりになるかどうかは分かりませんが

「…久し振りだな、男。」
「ん、久し振りっつーか、丁度一年ぶりだな『立春』…俺としちゃ会いたくなかったが。」
通称:『誕生日』と呼ばれる、パリッとした紺色のスーツを着たそいつに苦笑を浮かべながら返事を返す。

…『立春』というのは、俺がそいつに会う日をそのままそいつの愛称にしたものだ。
毎年会う度に思うのだが、もう少し色っぽい格好で出て来てくれてもいいと思う。

『誕生日』と呼ばれるこいつがやる事は、担当の人間が生まれた日に現れて、齢を一つ重ねさせるだけ。存在理由がそれだけというのもなかなか謎である。
人間みたいな外観をしちゃいるが人間ではない。それ以前に生物ですらない。
本人曰く、「妖精みたいなものだと思ってくれ。」だそうだ。

餓鬼の頃は『立春』に会える日が近づくとウキウキしてたものだが、正直ここ最近は億劫に感じていた。
特に、『立春』に会えばその時点で二十台半ばの仲間入りが確定してしまう今年は、会わずに済むなら会いたくなかった。
しかし、絶対に一年に一度会わなければならない。それが…


975以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 04:44:49.99 ID:GifrUeGD0
「規則だからな。諦めてくれ。」
俺の思考の先を読んだかの様な『立春』の言葉。ここ数年一言一句違わず言われた言葉。
「例外は…」
「死んだ時だけ…だろ。」
毎年毎年聞かされたせいで、嫌でも覚えてしまった言葉だ。

「ん、どうしたよ『立春』。」
俺の視線の先で『立春』は表情が乏しいながらも、恨めしそうな目つきで俺を睨んでいた。
「…ひどいな君は。」
外見が年頃の女性であるだけに、俺の心に少々罪悪感が芽生える。
「それを言って、男が心底嫌そうな表情でため息を吐くのが見たかったのに…一年に一度の私の楽しみを奪わないでくれ。」
なんて嫌な性格をしてやがる。せっかく芽生えた罪悪感が一瞬で枯れたぞ。

「まあ…死なれても困るのだがな。」
「何で?別に良いじゃん、人間死ぬ時は死ぬんだし、俺の場合生きてても良い事無さそうd」
―ガッ!言葉を言い終えぬ内に脳天に衝撃が走る。
976以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 04:46:08.26 ID:GifrUeGD0
「…痛いじゃないか。」
ちょっと涙出たじゃないか。
男が泣いていいのは、親しい人が死んだ時と箪笥の角で足の小指を強打した時だけなんだぞ。
そう言おうとして…俺は言葉を止めた。

「男が死ぬという事は…君を担当している私の存在意義の消滅を意味し、その結果…私という存在も消滅する。」
そう告げる『立春』は少しだけうつむき、涙を堪えているかの様に見えた。

「…ごめん。」
思わず、謝罪の言葉が漏れる。
「どうせ…俺が死んだら別の奴の担当になるんだろうな。って思ってた。ごめん。」
一年に一度だけしか会わないこいつと…まさか一蓮托生であったなんて夢にも思っていなかった。

「理解して頂けたなら幸いだ。ただ…」
うつむいたまま、『立春』は言葉を続ける。
「我々『誕生日』という存在は、君の様な人間がいて初めて存在しうる存在なんだ。
…私は、君の為だけに存在している。たとえ会うのは一年に一度であれど、私は男を誰よりも慕い、そして…君の可能性を信じている者だ。だから…後生だから、己の命を軽視するような台詞だけは吐かないで欲しい。」
「……はい。」
ただ一言、そう返す事しか出来なかった。
977以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 04:46:37.00 ID:GifrUeGD0
そして、少しの間沈黙が続いた後…
「そろそろ、始めようか。」
『立春』が沈黙を破った。
その言葉に対して、俺は無言で頷く。
毎年恒例の儀式。
大した事をする訳ではない、ただ齢を一つ重ねるだけだ。

「じゃあ…いくぞ。」
『立春』の掌が俺の胸に触れ、そのまま胸に吸い込まれる。
そして、引き出された掌に握られているのは俺の心臓。
その表面には『23』という数字が見える。
「…いつ見ても慣れないな…」
幾ら自分の心臓とはいえ、グロいものはグロい。
「何をブツブツと呟いている?」
「いや…別に…って何で笑ってるの?」
こちらを見上げる『立春』の顔は薄く笑っており、その手は愛しそうに俺の心臓を撫でていた。
「いやなに、君の心臓の感触を覚えておきたくてな。」
「…それよりも、さっさと済ませてくれないか?どうも自分の心臓を見るってのは良い気分がしないんでね。」
「良いではないか、年に一度なのだ、少しぐらい我侭を聞いてくれ。」
「…へいへい。」
…結局、儀式が終了したのはそれから暫くしてからだった。
978以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 04:47:07.77 ID:GifrUeGD0
「…あーあ、これで俺も24歳か。」
「ああ、これでめでたく男も24歳だ。『Happy birthday to man』とでも言うべきか?」
薄い笑みを浮かべて『立春』が告げる、毎年恒例いつもの台詞。
違うのは年齢の数字のみ。
「…ねえ。」
「…何だ?」
これもまた毎年恒例いつものやり取り。
「誕生日プレゼント代わりに裸Yシャツうpキボンヌ。」
「だが断る。」
このお願いもこの返事も毎年恒例。
お互いに成長が無いと思う。
だが、それで良い様な気もする。

「…そろそろ時間だな。」
『立春』の輪郭がぼやける。
時間が来たのだ。
「…みたいだな。それじゃまた来年。」
「ああ、楽しみに待ってるぞ。」
979以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 04:49:44.91 ID:GifrUeGD0
タイトルは「誕生日を素クールに擬人化」です。

20年後とか50年後も書く予定ですが…どうですかね?
980以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 05:50:12.77 ID:QXKTQ0cY0
期待保守
981以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 07:09:10.56 ID:uqLQpob5O
保守
982以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 07:42:04.49 ID:ZlpF8vq40
保守ついでに質問なんだけど
幸福の絶対値について語ってる素直クールのSSが載ってるサイトどっかに無かったっけ?
あったら、教えて
983以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 07:48:15.79 ID:xAKfFNc10
WikiのSS Part24の309
984以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 07:56:24.38 ID:ssLwgYVj0
お前すごいな
985以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 07:58:52.41 ID:ZlpF8vq40
>>983
さんくす
これ好きだわ
986以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:28:24.01 ID:2VkeK7Oe0
一日ぶりに保守
987以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:30:18.59 ID:jSEMrbu30
ヒント:検索

ところで次スレは>>980じゃ?
988以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:33:31.71 ID:xAKfFNc10
いいや、じつはそのあたりを読んでた
たまたま
989以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:43:37.30 ID:xAKfFNc10
980が立てないようなので立てた

【君と】素直クールな娘【一緒なら…】
http://ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1139355655/
990以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:45:56.69 ID:jSEMrbu30
>>989

Wikiのテンプレつかってくれてサンクス
991以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:47:54.34 ID:jSEMrbu30
さっさと埋めてしまおう
ksk
992以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:48:13.21 ID:jSEMrbu30
ksk
993以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:48:43.50 ID:jSEMrbu30
ksk
994以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:49:09.42 ID:jSEMrbu30
ksk
995以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:49:28.60 ID:jSEMrbu30
ksk
996以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:49:34.84 ID:2VkeK7Oe0
ksk
997以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:49:44.73 ID:jSEMrbu30
ksk
998以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:49:57.56 ID:2VkeK7Oe0
ksk
999以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:49:59.54 ID:jSEMrbu30
1000なら受験生全員合格
1000以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/02/08(水) 08:50:12.95 ID:2VkeK7Oe0
1000
10011001
 *     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +        このスレッドは1000を超えました。
     〈_} )   |                                次スレも…VIPクオリティ!!
        /    ! +    。     +    +     *         http://ex14.2ch.net/news4vip/
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
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