厨っぽいラノベ風SSを書くスレ

このエントリーをはてなブックマークに追加
1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
書け
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:21:39 ID:1HEtL2nQ0
その幻想をぶち壊す!!!
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:25:58 ID:1HEtL2nQ0
のとの
4綾部あや ◆AYAYOvpoRs :2005/12/26(月) 23:28:06 ID:dWxQzBPU0 BE:69077164-
世界がどうのこうのなんだよ・・・
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:30:55 ID:51C5wUby0
取り敢えず主人公が何の理由も無くあらゆる女キャラから好意を持たれるのはデフォね
いくら性格や言動がアレだろうと「実は優しい」「結構いいところがある」
という不思議補正+主人公特権でハーレム状態
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:33:54 ID:51C5wUby0
当たり前だが速攻で過疎ったな
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:35:53 ID:1HEtL2nQ0
終わりのクロニクルテラアツスwwwww
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:37:32 ID:1HEtL2nQ0
>>6
漏れが粘着する
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:41:54 ID:51C5wUby0
じゃあ俺も意地でもage続ける
10富沢ルーサー ◆TASHIROO7s :2005/12/26(月) 23:42:14 ID:1HEtL2nQ0
⌒(ё)⌒(--^)
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:44:25 ID:1HEtL2nQ0
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:46:33 ID:51C5wUby0
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:47:17 ID:RDNGrlwl0
その刹那、ポチがそっと呟いた

   -ワンワンワンワンワーン・・・
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:49:23 ID:51C5wUby0
実はそのポチは地獄の番犬ケルベロスの魂を受け継いでいた
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:53:24 ID:1HEtL2nQ0
ここにポチの飼い主―――気高きケルベロスに言わせれば『盟主』のそれと同義である―――、一人の少女がいる。
16VIPPER共有コテ誕生:2005/12/26(月) 23:57:33 ID:1HEtL2nQ0
(--^) 名無しの変わりにこのコテ使って書き込もう

富沢ルーサー#L_=|Soqd
よく使うAA→(--^)
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/26(月) 23:58:59 ID:51C5wUby0
その少女の名こそはプリシラ。
『死獣操のプリシラ』との二つ名で恐れられる凄腕のハンターである。
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:00:15 ID:IAFzmZIF0
嘘である
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:00:25 ID:xIm5Z25E0
香ばしくなってきたwww
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:01:45 ID:1smSdUTN0
>>19
お前も厨臭い文章たれ流せwwwwwww
最強設定とか即死級特殊能力大歓迎wwwwwwwwwwww
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:10:08 ID:xIm5Z25E0
ほす
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:13:11 ID:1smSdUTN0
じゃあ主人公の名前は神無月冬真で
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:15:58 ID:xIm5Z25E0
>>22
把握したwwww
設定プリーズwwwwww
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:20:05 ID:xIm5Z25E0
>>22でシャナ並みに厨臭いの書く
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:23:29 ID:xIm5Z25E0
だが思い浮かばない
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:31:21 ID:xIm5Z25E0
「―――無理―――貴方は私に勝てない」
どこまでも細く―――しかし芯の通った声だった。
静寂と闇の野を一閃し、確かにその声は彼―――神無月冬馬の元へ届いていた。
彼の双眸には一人の少女と巨大な闇が在った。
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:32:21 ID:xIm5Z25E0
駄目orz恥ずかしすぎwwww
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:33:58 ID:xIm5Z25E0
>>1どこ?
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:37:49 ID:xIm5Z25E0
>>1いないのかよwwwwww
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:43:44 ID:kMIVaXXg0
ドゴオオオオン!!!!
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 00:55:11 ID:1smSdUTN0
ごめん腹痛いんでうんこしてた
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 01:27:59 ID:4w36o7GyO
「シェリダンーーー」

僕の眼前に立つ男は、マヌカンを彷彿とさせる笑みに貌を固定したまま、言った。
「シェリダン・レ・ファニュは知っているかね?( ・∀・)」
「わかりませんお。ていうかあんた誰ですかお( ^ω^)」
素直に答える。わからない事はわからないと言うべきだ。
「私はモララーと言う。ではブラム・ストーカーは?」
「知りませんお」
僕が答えると、男…モララーの端正な顔立ちと白磁の様な白さを兼ね備えた顔に、痙攣が走った。
「ブラム・ストーカーを知らないとは、嘆かわしいな。では」
モララーはにぃ、と僅かに唇を歪めーーーー


「ドラキュラは知っているかね?」
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 01:53:47 ID:4w36o7GyO
いつもの様に高校へ通い、いつもの様に授業を受け、いつもの様に下校し、いつもの様に友人達ーーお世辞にも多いとは言えないーーと遊ぶ。
筈だった、筈だったのに。


いつもの帰り道を、僕は友人のギコと歩いていた。
彼は僕とは違い、いや、違うなんてもんじゃない、対照的にと言うべきか。
ともかく対照的に、明るく、勉強もスポーツも出来、交友範囲も広く、それでいて人格者。
一つ欠点が有るとすれば、後頭部。
まるで猫耳の様な癖毛が二本有るのだ。
周りは可愛いとはやし立てるが、本人はいたく気にして居るのか、いつも帽子やパーカーのフードを被り、それを隠している。

二人で街中を歩いていると、ふとギコが足を止めた。
「内藤(゜Д゜)」
「何だお( ^ω^)」

一応笑顔で返しておくが、僕は何か厭な物を感じていた。
ギコの表情は真剣そのものといった物だったからだ。

「頼みがある」
「奢れとか女の子紹介してくれとかなら無理だお」
「いや、初めから期待してない」
訂正、彼の欠点はもう一つ有った。オブラートに包んだ物の言い方が出来ない。
「ちょっと…傷ついたお」
「茶化すな。真面目な話だ、本当に一生のお願いなんだ」
「保証人にはなれないお」
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 02:08:24 ID:4w36o7GyO
「だから!真面目に聞け!!(#゜Д゜)」

これ以上からかうのは不味いかもしれない。既にギコのこめかみには、薄く青筋が浮かんでいる。
「わ、わかったお。聞くお(; ^ω^)」
僕が苦笑しつつ言うと、ギコは小さく溜め息をついた。
「お前な、そんなんだから友達少ないんだよ」
またしても心に刺さる一言だった。悪気が有って言っていない分、尚更破壊力が高い。
「用事があるなら早めに言って欲しいお」
これ以上の精神的ダメージは避けたかった。
後少しで僕の脆弱な精神は彼に破壊されてしまう。
「その前に、一つ約束して欲しい事が有る」
「約束?」
「まぁ…立ち話も何だから、ちょっと落ち着いて話せる場所がいいか」
ギコはキョロキョロと辺りを見回し、とある建物に視線を定めた。
「漫喫でいいか。行こう」
「金無いお」
「俺が払うから気にするな」
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 02:20:24 ID:IAFzmZIF0
「いや、俺が払うよ」
「いーや俺が払うよ」
「いやいや、俺が払うよ」
「いや、俺が払うお」
「「どうぞどうぞ」」
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 02:33:52 ID:4w36o7GyO
「約束って何だお」
僕が椅子に座り、ギコも座る。
僕の質問には答えず、ギコは店内を見回す。
連られて僕も見回せば店内の客は数人ほど。店内スペースと比較すれば、ガラガラだった。余り繁盛していないのだろうか。
ギコはコーヒーを二つ注文し、押し黙る。押し黙り続けている。
「お待たせいたしました」
金属音を思わせる耳障りな声。
女性店員が二つ、コーヒーを持って来た。
その声が余りに印象的だったからだろうか、僕はギコから店員に目をやった。
栗色の長髪にハーフの様な西欧系の顔立ち。そして何より目を引いたのがーーーー
病的に白い肌と、真っ赤に充血した両目。
「…何か?」
「い、いえ。何でも無いですお」
幾ら特徴的だったとは言え、人の顔を凝視したのは失礼だった。
「そうですか。ごゆっくり」
そう言って、女性店員は身を翻し奥へ消えていく。
こちらに背を向ける直前、ギコを見て唇を笑う様に歪めた様に見えたのは、気のせいだろう。多分。

「そろそろ話してほしいお」
無言のまま、ギコは運ばれて来たコーヒーに口を付ける。
ソーサーにカップを置き、静かな店内にカチャリ、と金属音が響いた。
「一、これから俺が話す事を信用する事。二、それに従う事。出来るか?」
「それは内容次第だお。死んでくれって言われたら死ななきゃならなくなるお」
「死なせない為の頼みだよ」
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 02:44:43 ID:IAFzmZIF0
そんで岩みたいなのが落ちてきて俺たち死んじゃったんだ・・・

                  -fin-
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 02:50:57 ID:4w36o7GyO
「死なせない為って…なんだお」
「いいから、約束出来るか出来ないか。答えてくれ」
気付いた。ギコの視線が普段とはまるで違う。
真面目な表情や目をしているギコは飽きる程見てきたが、今のそれは次元が違う。
文字通り射抜く様な、視線だけで僕の肉体も精神も穿つ様な。
「約束、するお」
半ばギコの迫力に押される様にして、承諾してしまう。
ここらへんに僕の精神の脆弱さと薄弱が顕著に表れている。
きっとカツアゲや押し売りに遭遇したら、全財産から臓器に至るまで毟り取られてしまうかもしれない。
「いいか、本当に本当に本っ…当に頼むぞ」
「わかったお」
この際腹を括ってしまう事にした。
いくら何でも、某北の国の独裁者を暗殺してこいとかそんな馬鹿げた頼みでは無い筈だ。
そこまで行かなくてもヤの付く職業の人達に喧嘩売って来いとかでも無い……と思う。
きっと違う。
そうだ、コーヒーを飲んで落ち着こう。
リラックスしていないからこんな馬鹿げた妄想が浮かぶんだ。
冷静に考えれば、せいぜい教科書貸してくれとか、告白するからお膳立て頼むとかの日常的な物が………


「一両日中にこの街は戦場になる。だから、この街から出て行ってくれ」
僕の手から、カップが滑り落ちた。
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 03:08:45 ID:4w36o7GyO
「はぁ?」
語尾に口癖の「お」が付けられない。
それ程までに、ギコの言葉は僕の耐震強度0の精神を揺さぶった。
戦場?この街が?戦場って事は何かと何かが戦うわけで。
ええと此処は日本だから、自衛隊か在日の米軍vs北かな?
いや北とは限らないぞ、足の有る物は椅子以外何でも食べる国かも知れない。
いやいや北方領土問題絡みで、対戦相手はハラショーでダズヴェダーニャな国か?

「聞いてるか?」
僕の脳内で極真空手名誉師範な大統領がウォッカの瓶を片手に日本人を殴り倒した所で、ギコが僕を現実に引き戻した。
「信じろって言うのが無理な話だとは自分でも思うが……、とにかく、逃げてくれ」
無理。
「無理だお」
動揺の余り、脳内の言葉がそのまま口に出てしまった。
「詳しい話も何にも聞かずに街を出ろと言われて、はいわかりました。とは誰も言わないお」
「従うって言っただろう……」
ギコが眉間に皺を寄せる。
「従うにも限度があるお。大体何と何が戦うんだお」
「化け物と化け物が」
「化け物と化け物が?戦う?何を言ってるのかさっぱりだお!」
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 03:30:29 ID:IAFzmZIF0
晒しage
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 03:33:58 ID:4w36o7GyO
「やっぱり見なきゃ信じない、か」
言って、ギコは鞄に左手を突っ込んだ。
ガサガサと衣擦れの音が聞こえ、数秒後、ギコの手が鞄から抜かれた。
その手には、小さなカッターナイフが握られていた。
「良く見てろよ」
チキチキとカッターの刃が昇り、蛍光灯の光が銀色の刃を黄色く照らす。
「何…する気だお」
「安心しろ、別にお前には何もしない」
ギコは左手にカッターを握ったまま、右手の甲をこちらに見せる。
白い、肌だった。
普段から割と積極的に外出するタイプにも関わらず、ギコの肌は異様に白かった。
まるで、先の女性店員の様に。
その白い右手の甲に、刃がゆっくりと近づいていく。
「ちょwwwギコってリスカする人なのかおwww」
止めようと手を伸ばした所で、ギコが刃先を僕に向けた。
「…黙って見てろ」
恫喝する様な低い声で言い、刃の軌道を戻す。
案の定、刃は甲にぴたりと押し付けられーーーギコが、刃を引いた。
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 03:35:55 ID:4w36o7GyO
「ほら」
何が「ほら」かわからない。
「良く切れるカッターだと言う事はわかったお」
「違う!」
怒鳴り、ギコがテーブルを叩く。
ギコが見せたかったのはカッターの切れ味では無い、それは僕にもわかっていた。
ただ、茶化しでもしないとおかしくなりそうだった。
現実を見てはいけないと、逃避しろ、と、僕の精神が告げていた。
「見えないのか?」
ギコが、右手の甲を僕に近づける。
見てしまった。認識して理解して記憶してしまった。
「傷が…治ってるお…」
口に、出してしまった。
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 04:11:46 ID:4w36o7GyO
「言っておくけど種も仕掛けも無い。化け物ってのはつまりーーー」
そこでギコは言葉を切り、一瞬躊躇う様な表情をしてみせた。
「こういうバケモノ。で、そいつらが戦うって事だ」
「そう、例えば彼のようなバケモノが」

ギコの声に、耳障りな声が被さる。
ふと店内を見渡すと、先程まで居た他の客は誰もいない。
居るのは、僕とギコと。
「こいつの」「私の」
ギコと言葉と、件の声が被さり合う。
「ようなバケモノと」
僕の向かいに座るギコ、そのギコ背後に立つ先の店員。
「……早かったな。確か予定では明日、と聞いていたんだが」
「たかだか百年で死ぬ人間や、まだ二十年も生きていない貴方とは時間の感覚が違うんですよ。数日の違いなど、数時間の違いも同じ」
淡々と店員は言う。
「そちらの方とは初対面ですね。自己紹介がまだでした。私はシィ、です。(*゜ー゜)」
女性店員は、微かに笑みを浮かべて僕に言う。
しかし、笑むと言うポジティブな行為にも関わらず、その笑みに暖かさは感じられない。
向けられた方が凍りつくような、凍りついた笑顔の様な印象を与える物だった。
「で、戦るのか?」
振り向かずにギコが問う。
「どうしましょうか。二対一というのは少し気が引けるのですが」
二対一?この人とギコと…僕?
無理だろ。僕じゃ戦力になんてならないし。どうみても戦力外です。
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 04:48:01 ID:4w36o7GyO
「あら?そちらの方は、どうしてそんな顔を?」
シィ、と名乗った女性が、僕を見て不思議そうな顔をした。
「僕は只の人間だお。はっきり言ってついてけないお」
「………」
僕が言うと、シィはポカンとした表情を浮かべた。
凡そ数秒程その表情を保ち。
「………ぷっ…」

「あははははははははははははははっ!」
吹き出して、笑った。
「人間!?あなたが!?冗談!何処から見たって私達と同じアスーーー」
シィはその先に言葉を繋げなかった。
ギコが、その顔面に裏拳を叩き込んだからだ。
殴り飛ばされたシィは、店内のテーブルや椅子に巻き込まれる様に床を転がり、仰向けに倒れた。
「余計な事を言うな」
ギコもシィも何言ってるんだ。『私達と同じ』?『余計な事』?僕は人間だ、人外なんかじゃない。
「ギコ、僕は」
「逃げろ」
僕の言葉を遮る様にギコが言った。
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 05:05:17 ID:4w36o7GyO
ギコの視線の先、床に倒れたシィが、ゆっくりと起き上がる。
「…………っ!!?」
僕は、絶句した。有り得ない、いや、有り得るのだが日常に於いては有り得ないモノが見えた。
むくりと起き上がったシィの顔面は、グチャグチャに潰れていた。
頬を突き破って何本もの歯が飛び出し、鼻は完全に潰れ、両の眼球は視神経を晒して頬の辺りまで垂れ下がり、顔は血に塗れていた。
「うっ……」
余りに凄惨な光景に、嘔吐感が込み上げる。
「そんなに効いて無い筈だ、シィ。カソウは止めろ」
僕の口内へ昇って来た胃液を無理やり飲み下した所で、隣に立つギコが無表情に言う。
「ふふ、バレてましたか」
凄まじい顔面のまま、シィがズタズタに切れた唇を歪めた。
一瞬その姿にノイズが走り、すう、とシィの姿が変化した。
その顔面には先の様な怪我は無く、殴られる前から僅かに変わった事と言えば、口と鼻から僅かに血が垂れているだけ。
それだけだった。目は飛び出していないし、鼻も潰れてなどいない。
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 05:35:45 ID:4w36o7GyO
「あっさりと見破らないで欲しいですね。私としては力作の[仮装]だったんですが」
ぱんぱんと埃を払い落とす様な動作をし、シィは平然と立ち上がる。
「お前のカソウは一度見てる。どうせこの店だってカソウだろう」
「よくもまぁ人の作品をズバズバと看破する人ですね。過度のマジレスは疎まれますよ?」
呆れた、と言わんばかりにシィが肩をすくめると同時に、店内の風景全体にノイズが走り、風景が一転した。

恐らくは元喫茶店だったであろう部屋。
埃だらけで薄汚れた床、壁、天井。
ボロボロになり、廃棄されて数年は経っていると思われる椅子やテーブル。
そして、僕達の座っていたテーブルには、受け皿に乗ったカップは無く、卓上に散らばるガラス片に乗った缶コーヒーが二本。
「どうでしたか、私の[仮想]喫茶店は?」
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 05:36:32 ID:4w36o7GyO
「相変わらず悪趣味なカソウだな。さっきのも、この店も」
ギコが、拳を握り締めたままシィに歩み寄っていく。
「内藤、事情が変わった。今すぐに家族を連れて街を出ろ」
「私はほんの少し遊ぶ程度で、まだ本気で殺り合うつもりは無かったんですが……」
対峙するギコとシィ。
「仕方ありませんね。[火葬]してあげましょう」
シィの両手に、青白い炎が灯る。
「…ギコはどうするんだお」
「さて、な。どうするかはこいつをブチのめしてから考えるさ。……行けっ!」
ギコの言葉に弾かれる様に、僕は店内を飛び出した。
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 05:37:14 ID:UrKWnYyIO
早朝からおつ
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 05:37:40 ID:4w36o7GyO
清々しいくらい誰も見てないのが自分でもワロス
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 05:41:02 ID:e3jHQjl80
確かにラノベっぽいwwwwwwwwwwww
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 05:42:41 ID:dGDbTsZZ0
そして、見たんだ・・・
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 06:04:11 ID:4w36o7GyO
「…あれ?」
家に着いてみると、家族が居なかった。
誰も居なかった。
居間に誰も居ないので、両親の寝室を見たが誰も居なかった。
両親の寝室に誰も居なかったので、トイレや浴室を見たが誰も居なかった。
トイレや浴室に誰も居なかったので、自室を見たが誰も居なかった。
誰も、居なかった。
なんとなく家を出た。
肌寒い夜だった。
寒さのせいか空は透き通り、満月がくっきりと浮かんでいた。
当てもなく住宅街をブラついていると、道の真ん中に一人の変人が立っていた。
何が変かと言えば外見が変だった。
長身、黒髪のオールバック、白目が存在しない真っ黒な目、黒の正装、黒いマント。
唯一黒く無いのは、異様に白い肌と紅い唇。
その変人は僕に気付くと、つかつかと歩み寄って来た。
満月がバックになるように図ったのかそれとも単なる偶然だったのかはわからないが、兎に角変人は満月をバックに、僕の前に立った。
余りにその動作が普通だった為、逃げるだとか抵抗するだとかといった反応が取れなかった。
そして開口一番。

「シェリダン・レ・ファニュは知っているかね(・∀・)?」
言動も変だった。
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 06:52:11 ID:4w36o7GyO
そして>>32に至る。

「ドラキュラなら知ってますお」
僕が言うなり、モララーは深く溜め息をついた。
「これほどストレートに言わなければならないとは」
露骨に落胆した表情で、モララーは俯いた。
「あの、何の用なんだお?」
ガバッと顔を上げ、モララーが口を開く。
「ベラ・ルゴシやクリストファー・リー、マックス・シュレックも知らんのだろう?」
「シュレックなら知って…「ファンシーな方のシュレックじゃないぞ。映画の題名じゃなく俳優の名前だ」
「そ、そうですかお」
変人だ、映画オタで吸血鬼のコスプレをした変人だ。
「…用、か。用は特に無いんだ、すまなかったね。用は用でも私用中の私用も良いところな用であって必要な用では無いんだ」
「そんなにヨーヨー言うとラッパーみたいだお」
「ふむ、吸血鬼ラッパー、斬新すぎる。斬新すぎてターゲットとなる層が狭すぎる。故に利益は見込めないな」
なんだか、妙な人だった。この人の周囲だけ異次元空間になってしまう様な、独特の空気を持つ人だった。
「もう、行ってもいいかお?」
「何処に行くと言うんだね?若者が夜遊びとは感心せんな」
「放っておいて欲しいお」
モララーを無視して、また歩き出ーーーそうとした所で、足が止まった。
……待て。
何か今の会話に違和感が有った。
夜遊び、だって?
ここは住宅街、それに僕は制服のまま。
『帰宅途中』には見えなかったのか?なぜ『夜遊び』としか言わなかった?

背後から、くつくつと忍び笑いが聞こえた。
「放浪したい気持ちはわかる。誰も居ない家に居た所で、虚しいだけだろうからな」
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 07:43:47 ID:4w36o7GyO
振り向くと、モララーは笑い続けていた。
「君に用が有ったんだよ。教えてあげたい事が有ってね」
如何にも上機嫌な、楽しそうな様子で、モララーは言う。
「君は我々と同じ人外だよ。それともう一つ……」
法悦とした笑みを浮かべながら、モララーは僕に歩み寄り、顔を近付ける。

「君の家族は、私が殺した」
「…………」
「どうして君が今まで普通に生活出来ていたのかは全くもって疑問としか言いようが無いな」
「…………」
「記憶操作でもされていたのか?そうそう、家族以外に近しい親戚も全員始末しておいたよ。これで君は俗世のしがらみから切り離されたわけだ」
「…………」
「おめでとう。晴れて人外の仲間入りだ。君がどんな能力を持っているかは知らないが、それはさて置き私は心から君を祝福するよ」
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 07:47:03 ID:4w36o7GyO
言い終えたモララーの両眼に、誰かの指が突き刺さった。

その指は、本来固いと言われている眼球を容易に貫いた。
「グッ…ギャ」
モララーが苦悶の声を上げる。指が血の糸を引きながら抜かれた。
モララーがうずくまり、次の瞬間にはその顔面に誰かの爪先がめり込んだ。
顔面から血を噴き出しながら倒れ込むモララー、その顔面を誰かの足が踏みつけた。
何度も何度も何度も踏みつけた。踏まれる度にぐちゃりと何かが潰れる様な音が響き、モララーの顔面が変形していった。
柔らかい物が潰れる音、液体が飛び散り路面に落ちる音、硬い物が割れた様な音が、住宅街に響き続けた。

数十回踏みつけられた所で、モララーの首から上は潰れたトマトの様になっていた。
所どころから覗く白い骨が赤黒い肉と絶妙にマッチせずにアクセントを添え、全くめでたくない紅白が完成していた。
ふと、足に違和感を感じた。
靴下に染み込んだ血がヌルヌルと嫌な感触をさせていた。
指も血と体液で濡れていた。
誰かの、では無く、どうやらモララーを殺ったのは僕の手と足だったようだ。
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 08:50:43 ID:4w36o7GyO
殺した、殺してしまった。
意外とショックは受けなかった。ただ、恐ろしい程、空虚だった。
何の感慨も沸かなかった。
確認していないとはいえど、家族を殺したと言った男を殺したのに、特に達成感や爽快感は無かった。
目の前に転がった惨殺死体を見ても、嘔吐感や嫌悪感は無かった。
殺したと自覚しても、何の罪悪感も無かった。
ただ、足元の骸を見ていると、無性にその血を舐めたくーーーー

「内藤」
突然の声に振り向くと、ギコが居た。
服の所々が破れ、焼け焦げた様な跡があった。頬や露出した腕にも、火傷の痕が有った。
「無事だったか!」
ギコが嬉しそうに走ってくる。
確かに僕は無事だけど、ギコは自身が無事どころかエラい事になっているのを自覚しているのだろうか。
と、ギコが僕の足下に転がる死体を見やる。
「………こいつから離れろっ!!」
「え?」
ギコが僕の襟をひっつかみ、自分の背後へ投げ出した。
投げ出された僕はと言えば、余りに急な事で体勢を立て直すどころか受け身も取れず路上を転がる。
「痛っ…何するん」ギコへ文句を言おうとした僕は、そこでまたも絶句した。

「良い殺しっぷりだったよ。内藤君」

半身を起こし、モララーが笑っていた。
「憤怒と悲壮と憎悪と殺意に満ちた、凄惨で冷徹で残忍で執拗で残虐な良い殺しっぷりだったよ。良い死を堪能出来た」
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 08:54:22 ID:4w36o7GyO
>>48
>>50
見てる人居たの!1!1??


それはそれで書いててなんか恥ずかしくなってくるな
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 08:56:30 ID:c6udsTMI0
ずーっと傍観してた
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 09:29:34 ID:4w36o7GyO
確かに原型を留めない程に潰し尽くしたモララーの頭。
その頭は、何時の間にか傷一つ無い元の状態に戻っている。
「あぁ、誤解されると困るんだが、私の能力はシィのカソウとは違う。不死を装った[仮装]などと一緒にされては心外だ」
「黙れ」
ギコの拳が、モララーの顔面に炸裂した。
その一撃は、正に常識外れだった。速度では無く、威力が常識を外れていた。
何せ、モララーの頭が吹き飛んだのだから。
「な……」
文字通りの粉砕だった。肉と血と骨が霧状に吹き飛び、風に乗って消える。
「相変わらず短気だな。話の途中だ」
一瞬首の断面が見えたかと思った時には、既にモララーの頭部は完全に元通りになっていた。
ギコの傷の様に治った、という事なのだろうか。
にしても、頭が吹き飛ぶと同時に頭が元通りになるなんて、もはや治癒能力どうこうの話では無い。
「私の能力の見当は付いたかね?まぁ付こうが付くまいがどうにもならんのだが」
言って、モララーは身を翻す。
「待つお!」
「どの道、近い内にまた遭う事になる。その時も君が私を殺せるかは別の話だが」
振り向かずにつかつかと歩いていくモララー。
「ギコ、気の早い連中はもう始めている。祭りが長引くのは好ましく無いが、終わりが早すぎるのも考え物だ。精々死なないようにな」
闇に溶ける様に、モララーの姿は消えていった。
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 10:12:56 ID:4w36o7GyO
「その…なんていうか、気の毒だったな」
ベッドに腰を掛けたまま、ギコが言う。
ギコの家は殺風景だった。
家族は誰も居らず、家具は最小限。それもギコの肌に合わせた様に、壁から家具まで全て白で統一されていた。

あの後、呆然と路上に座り込んでいた僕に、ギコは『とりあえずウチに来い』と言った。
断る理由も特になく、むしろ訊きたい事が山ほど有った僕は、一も二も無くついていく事にした。
そして現在、僕はギコの自室に居る。

「悲しいけど、仕方ないお」
「……そうか」
そのまま心中を吐露した僕に、ギコは複雑な表情をしてみせた。
僕自身、自分の言動に驚いていた。
不死のバケモノだったとはいえ、躊躇う事無く人型の生物を殺害。
家族が皆殺しにされても尚、涙の一つも出ない。
現状が混乱と疑問と疑問だらけで、単に感情が麻痺しているのかもしれないが。
「まず…何から話すべきかな」
「人間じゃないって事は、じゃあ何なんだお」
単刀直入に訊いてみた。あんな超常現象を一日の間に体験しまくって、今更何を聞いても大して驚きはしないだろう。多分。
「……俺達はな、造られた生命なんだよ。いや、描かれた存在と言うのが正しいのかな」
「描かれた?」
「何百年も前に何処かの魔術師達が、戯れに描いた絵を元に具現化した生命、それが俺達だ」
「……そんな、の」
遥かに予想外だった。
何処かの企業家が聞いたら『想定の範囲外です』
何処かの教授が聞いたら『プラズマのせいです』
と言い出しそうな、荒唐無稽な話だった。
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 10:33:55 ID:4w36o7GyO
「人工生命。絵と言うよりかは、記号や文字を組み合わせた落書きに近い物だった」
淡々と、何の感情も表出させずにギコは続ける。
「出来上がったのは正にバケモノだった。ヒトより高い知能と身体能力を持ち、ヒトより永く生き、ヒトには無い力を持つモノ」
「………さっきのモララーは吸血鬼だって言ってたお」
「吸血鬼だよ。今日の映画や本に出る吸血鬼は、俺達がモチーフなんだから」
またエラい事を言い出した。
何処かの教授が聞いたら『ファー…プラズマ…ファー…』 と泡を吹いて失神しそうなブッ飛んだ話だった。
「人工生命、ヒトを超えている、兵器として使える、ってコンセプトだったらしい。出来る事なら、の話だったんだが」
「出来る事なら、が出来てしまった、と言う事かお」
「その通り。遊びで作ったらとんでも無いモノが誕生したって感じだったんだろうな」
「で、なんで吸血鬼なんだお」
「……一つは習性。自立した自律兵器として、人間を糧にする。
二つ目は性能。自立出来る高い知能と身体能力。永い寿命。これはヒトを超える生命を造り出すって目標も含んでたらしいが。
三つ目は繁殖力。生物兵器としてのな。生殖能力に加え、映画でお馴染みの伝染性。
四つ目が弱点。十字架やニンニク、銀や日光」
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 11:01:20 ID:c6udsTMI0
まだ続くんなら夕刻くらいまでは保守しといて欲しいな
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 11:13:25 ID:4w36o7GyO
「弱点って…克服出来なかったのかお?」
「第一世代には、件の物に対して激烈な拒絶反応が有った。
恐らくは、造った奴らが反逆を警戒して弱点を設定したんだろうな」
「万が一制御出来なくなった時に、かお」
「銀はともかく、十字架やニンニク、日光なら何処でも手に入るだろ?そんなので殺せたんだから楽な話だ」
「殺せ『た』?過去形になってるお」
「良いんだよ過去形で。第一世代や感染者はともかく、それ以降の混血・純血種には、弱点が発現しなかったんだから」

弱点が無い。ちょっと待て、それじゃあ。
「無敵じゃないかお。滅茶苦茶だお」
「いや、無敵かと言えばそうでも無い」
ギコが、先ほどの店内で切った手の甲を見せる。
傷痕さえ見当たらない、白い、白すぎる手。
「これがどうかしたのかお」
「さっきは綺麗にスパッといったな?でもな、こういうのだとーーー」
ギコが、突然自らの手に噛みついた。
僕が何かしらの反応をする間もなく、甲の肉がぶちりと喰い千切られ、血が白い床に滴り落ちる。
「こういう傷口だと」
前回の様に、僕に手の甲を見せる。
「治りが…遅いお?」
傷口がヒクヒクと蠢き、それこそ某液体型ターミネーターの様に、ゆっくりと復元されていく。
しかし、その速度は本当にゆっくりとした物で、先の切傷と比べれば治る速度は格段に遅い。
「綺麗に切れた傷ならともかく、粗い傷口だと、範囲や度合いによっては数分から数時間掛かる。
両親共に純血種の俺でさえこんな程度だ。映画みたいなエイリアン地味たモンじゃないって事さ」
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 11:17:58 ID:4w36o7GyO
>>62 保守以前に、このままだと夕刻までに終わるかどうかも怪しい
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 11:21:16 ID:c6udsTMI0
夕刻辺りまでこのスレがあったらいいなってことで
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 11:48:05 ID:4w36o7GyO
「じゃあ、首を吹き飛ばされたりしたら…」
僕の言葉に、ギコはこくりと頷く。
「うん、死ぬ。余裕で死ぬ。そりゃ人間を全般で上回ってるって言っても、『ブッチギリで超越の究極生命体』ってわけじゃない。
切断された部位は生えて来ないし、それ以前に大怪我した時に手当てしないと死ぬ。
他の生物に比べたらかなり死にづらいけど、死ぬ事は死ぬ」
「じゃあ、モララーのあれは何なんだお」
「それも今話そうとしてた所に含まれるな。俺がシィと殺りあった時、[カソウ]って言ったろ?」
カソウ。そう言えば、あの時も妙な事だらけだった。
グチャグチャの顔面が一瞬で普通…いや、少し怪我をした顔に変わり、店内が一瞬で廃墟と化し、シィと名乗った女の手から火が出た。
顔が変わる。店内が変わる。火。カソウ、カソウ、カソウ、カソウ……………。

「字だよ、字。仮の装いの[仮装]。仮に想定する[仮想]。火で葬る[火葬]。
俺達の元は文字と記号から造られた。
だからなのか、俺達純血種は文字、言葉に関する能力を身に付けてる。あの女の場合は、それがカソウ」
「なんで、日本語なんだお?外国語だとどうするんだお?読みが同じなのかお?」
僕の質問に、ギコはぽりぽりと頭を掻く。
「んー、多分無理だな。そもそも俺達を造った奴等に魔術を教えたのが、アジア人だって話だし。
名前は…ヒロ………悪い、忘れた」
忘れんなよ。ヒロシとかだったら嫌だな、なんとなく。
67富沢ルーサー ◆TASHIROO7s :2005/12/27(火) 11:58:03 ID:xIm5Z25E0
ちょwwwwwおもすれー(^ω^ )
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 12:13:50 ID:4w36o7GyO
「まぁ、とにかく日本語の読み、その変換が能力なわけだ」
そこまで言って、ギコは首を捻って何やら呟き出した。
「ヒロ…マロだったかな?ヒロヤ…ヒロユ…ヒロヨ…違うか。マロユじゃなくて…マロヤでも無かった気がするし……」
「もうヒロシでいいお。そんな事より、モララーのあれは何なのか知りたいお」
「あれは、再生だ」
「……それだけかお?」
拍子抜けした。再生能力って、火が出たりパンチで頭吹き飛ばすのに比べたら、随分と地味な気がするんだけど。
「極限まで不死に特化した能力。サイセイ、それだけだ」
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 12:40:31 ID:4w36o7GyO
「それだけなら、結構弱い気がするお」
「…わかってないな。さっき言ったろ?『頭を吹っ飛ばされたりなんかしたら、吸血鬼でも余裕で死ぬ』。
で、お前が言ったよな。『じゃああれはなんなんだ』。
頭を吹っ飛ばされても、勿論首を切り落とされても、一瞬で再生が終わる。それが、やつのサイセイ」
「じゃあ、跡か「『跡形も無く』消し飛ばせば良い、消滅させれば良いと思ったか?」
先手を取られた。そんなに単純な考えだったのだろうか。
「ほんとにお前は単純だな」
言われた、やっぱりギコの指摘はキツい。精神的にくる物がある。
「それで奴の存在を永遠に抹消出来るなら、俺がとっくにやってるよ。
あいつはな、サイセイであって[再生]だけじゃない。
例え消滅しても、[再製]されるんだよ。
例え核爆弾で跡形も無く吹っ飛ばそうが、一瞬後には元通りの姿で、その場所でニヤニヤ笑ってるんだ」
「それこそ…無茶苦茶だお」
アリかそんなの。なんか、こう、お約束を無視してないか。
ほら、〇〇に弱いとか、〇〇を攻撃すれば倒せるとか。再生速度が追いつかない様な攻撃をするとか。
そんな、核で吹き飛ばしても一瞬で復活とか。もう究極通り越して馬鹿だろソレ。
「不死性を持つ能力ってのは結構有るんだけどな、極限まで限界まで究極的に不死性だけを追求したのは、恐らくアレだけだ。
絶対死なない殺されない。欠けた部分は[再生]されて、存在丸ごと消滅しても[再製]される。完璧な不死、それがサイセイ」
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 12:46:43 ID:xIm5Z25E0
直視の魔眼使えばよいと思うお
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 13:16:35 ID:4w36o7GyO
「…ところで」
「ん?」
これを聞くのを忘れていた。
「なんで戦うんだお?」
「……今回は何だったかな」
今回、今回って事は前回が有るのか?考えたくも無いが次回も有るのか?
「ちょっと待ってろ。事情に詳しい奴呼ぶから」
鞄に手を突っ込んだギコが取り出したのは、携帯電話。
「あぁ、ちょっとウチ来てくれ。……どうせ暇してんだろ。わかった、わかったから怒るな!…場所?変わってないぞ。じゃな」
「…誰が来るんだお。ていうか何が来るんだお」
誰とは限らない。もしかするとこの展開から言えば、別の意味で人外が来る可能性も有る。地底人とか、宇宙人とか。
最早来客が人型で有る保証さえ無いのだ。ネッシーとかが来たら軽く泣ける。
ドアを開けたらそこにはネッシー。おはようからおやすみまで見つめるネッシー。
怖ぇ。
と、意味不明な妄想をしていた所でチャイムが鳴った。
無言でギコが部屋を出て行く。
出て行く時にきちんとドアを閉めていく辺り、微妙な真面目さを窺わせる。


「先客居るからな」
ドアの向こうから、ギコの声が聞こえた。
先客、とは僕の事なのだろう。それより日本語でギコが言った事が重要だ。
日本語が通じるという事は、会話が出来る。いきなり飛びかかって来る様な危険生命体では無いだろう。良かった。
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 13:18:57 ID:1a402dJJ0
ちょ
糞スレと思って覗いてみたらwwwwwwwwwwwww
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 13:30:56 ID:4dY1Ml7QO
いいね 続きが気になる
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 13:32:59 ID:1a402dJJ0
まあ続きが来る前にdatに沈んでも困るので無意味にage
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 13:39:15 ID:1a402dJJ0
ageるだけでもあれなんで俺も何か厨臭いの書いてみるか
主人公が特殊能力持ってるとか
やたら作中でマンセーされるとか
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 13:58:45 ID:4w36o7GyO
かちゃり、とドアが開いた。
入って来たのはーーーーー
「どうみてもアンドレ・ザ・ジャイアントです。(本当にむさ苦しいです勘弁して下さい)」
後半部分は声に出して居ない。出したら殴られる、確実に殴られる。
部屋に入って来たのは、アンドレ・ザ・ジャイアントだった。
服装も容貌もアンドレそのまんま。体格もアンドレ。
2m超で天パで筋骨隆々。
ネッシーよりマシかも知れないが切り裂きジャックの方がマシだった。
いや、切り裂きジャックの正体知らないんだけど。

困惑する僕を一瞥して、巨漢はベッドに登り、座った。

女の子座りだった。

「な、ナンダッテー!?」
驚く僕に対して、巨漢がようやく口を開いた。
「あら、何を驚いて……あぁ、成る程。これでこの格好はアレでしたね」
巨漢が、金属音の様な耳障りな声で言った。……あれ、この口調と声、何処かで。
「これなら違和感無いはず、です」
巨漢の体にノイズが走り、現れたのは。「シ、シィさん、だったかお?」
「シィで良いですよ(*゜ー゜)

カソウ。姿を仮装し店を仮想し、ギコを火葬しようとした女性店員、シィだった。
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 14:18:00 ID:4w36o7GyO
「カソウ、って奴ですかお?」
「ギコから聞いたんですか、そうですよね他に知る手段が有るとは思えませんし。はい、カソウの[仮装]です」
西欧系の端正な顔立ち。抑揚のない事務的な喋り方。営業スマイルの様な表層的な笑み。
人形、そんな印象を受けた。
「失礼な事聞いて良いですかお」
「どうぞ、答えるかは内容によりけりですが」
「…その姿も、仮装なんですかお?」
「いえ。二重の意味ですっぴんですが」
「そうですかお」
つまりはノーメイク、だそうだ。
「まだ聞きたい事が有りそうな顔をしてますね、どうぞ」

「なんでアンドレなんですかお?」
「サップの方が良かったですか?」
この人、いやヒトじゃないが人でいいや。この人天然なのだろうか?
「サップとかじゃなくて、何故に巨漢なのかと」
「巨漢に仮装しておけば、夜道の一人歩きも安心だからです」
存外、普通な理由だった。
「ホンマンは好きではありませんし、ヒョードル辺りだと有名すぎてマスコミとかが寄ってきますから」
「…格闘技好きなんで「好きです!」
強い意志を感じさせる一言だった。
唇の端に白い牙がちろりと見えているのが怖い。
今にも「サブミッション仕掛けさせてもらっても良いですか大丈夫ですよ折れても早く治りますからウフフ」とか言い出しそうでマジ怖い。
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 14:56:11 ID:4w36o7GyO
「『好きです』って…いつからウチは告白の名所になったんだ」
露骨に呆れた様子で、両手で盆を持ったギコが入って来た。
「格闘技の話ですが」
「聞こえてたよ」
言いながらギコが、部屋の中央に据えられたテーブルへ、カップを一つとコップを二つ置いた。
「ミルクティーで良かったか?」
シィをちらりと見て、ギコが言う。
「はい、どうも」
そっけない返答。
ギコがドアをぱたんと閉め、床に腰を下ろす。
「………」
「………」
「………」
誰も喋らないのかよ!何だこの無言空間!
「用事が有ると言われたから来たのですが」
「あぁ、…なんだっけ」
ギコもシィと同じで天然なのだろうか。心なしか、目の当たりが良く似ている様な。
いや、それは置いておこう。
「なんで戦うんですかお?」

「今回は……、割と真面目な理由でしたね」
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 14:57:25 ID:1a402dJJ0
書いたから貼っていい?
三分で貼り終えると思う
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 15:12:42 ID:4w36o7GyO
『今回は割と真面目な理由』ってなんだ。真面目じゃない理由で殺し合ったりするのか?
「人間に対する今後の方針についてです。意見が割れに割れたので、勝った勢力に向こう百年間、他勢力が従うと」
真面目な話だった。そうなると真面目じゃない方がますます気になるけど、それはとりあえず後にしよう。
「まず、
・人間と共存(人間を支配する形で)。これは各国の財界や政界のトップに立って支配、という形ですね。
・人間と共存(人間社会に混じって平民として平穏に暮らす)。これはギコ君なんかが典型例です。
・人間を支配(奴隷化)。これは武力で人間に勝利した後、人間を家畜・奴隷化するというわかりやすい過激派です。
・ぶっちゃけめんどい。これは方針無しで個人の好き勝手で良いんじゃないか、というタイプです。
他にも極々少数意見は有りますが、大別するとこのような形です、ね」

「あの」
「なんでしょうか」
「この街で戦うって事は、物凄い数の吸血鬼が」
「それは有りません。特にルールは有りませんが、戦力的に純血種しか期待出来ません。大抵は派閥別の純血種を少数連れてくるのが慣例と化しています」
「沢山連れてきたらどうなるんだお」

「それは厄介な相手から叩くのが基本になりますから。その派閥は、自然と他派閥から袋叩きに遭って脱落確定ですね。派閥丸ごと死滅する事も有り得ます」

「勝敗の判定はどうするんだお」
「相手に負けを認めさせるか、殺せば勝ちです。タイムリミット時に、脱落者が最も多い派閥が負けです」
脱落者が最も多い派閥が負け。つまり、数で押し切るより少数精鋭がベストなわけだ。
「不死身で負けを認めない相手が居たらどうするんですかお?」
にこり、と爽やかな笑みを浮かべ、シィが答えた。
「大抵はスルーされます。が、脱落させる必要が出てきた場合は、拷問して負けを宣言させるのが最近の主流です」
そんなトレンドは厭だ。
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 15:13:27 ID:4w36o7GyO
>>79
別に誰の許可もいらんですよ
82オマンコー:2005/12/27(火) 15:15:14 ID:1a402dJJ0
>>81
いや途中っぽいから割り込んだら悪いと思った
まあ見てる人もあんまいないだろうけど
見分けつきやすいようにコテいれて貼るな
83オマンコー:2005/12/27(火) 15:17:00 ID:1a402dJJ0
 日常という定義は実の所曖昧なもので、日常が具体的には何を指すのか、
 ということに関しては『その人の主観による』としか言いようが無い。
 例えば、会社に行って上司から小言を喰らって家に帰れば嫁からも小言を喰らう、
 というのが日常の人もいるだろうし、
 暗殺者なら人を殺す事が日常になるのだろう。
 他人から見て、それがいかに常軌を逸したものであったとしても、
 当人にとってそれが至極当然に繰り返されることならば
 それはルーチンワークとして生活のリズムに組み込まれ、日常となる。

 それに対して非日常とはどういうものであろうか?
 これもまた『その人の主観による』としか言いようが無いのだが、
 これにはあらゆる人に対して言える共通項がある。
 それは、日常ではないという事。
 その人にとって、イレギュラーな事態であるという事。
 まあそのイレギュラーな事態とやらも結局は『その人の主観による』のだが、
 日常を定義するよりはある程度輪郭を捉えやすいだろう

 前置きが長くなってしまった。
 と言うより、こんな前置きなんかに意味は何も無い。
 つまり何が言いたかったのかというと、
 今まで俺が日常と思っていたものは大多数の人にとっての非日常であったと言う事で、
 その非日常な日常すら、更なる異質な出来事によって、
 更なる非日常へと塗り替えられてしまったという事だ。
84オマンコー:2005/12/27(火) 15:18:06 ID:1a402dJJ0

 非日常、異質、異端、変質、異物、異常、イッツアハプニング。
 まともなものなど、何一つ出て来やしない。
 まともな神経など、何一つ役に立ちゃしない。
 無理が通って道理引っ込む、驚天動地の目白押し。
 横暴な屁理屈が矮小な小理屈を論破する、支離滅裂の大バーゲン。
 それがこれから俺が語る物語だ。

 『VIP町無差別連続猟奇殺人事件』。
 当時の俺にとっては非日常の出来事だったこと事件こそが、
 今思えば全ての始まりだった――


          *        *        *


「――だからぁ、今回の犯人は絶対人間じゃあねえって!」
 放課後、市立したらば高校2年4組の教室で、
 ギコが本日発売の週刊誌片手に口から泡を飛ばしつつ熱弁してきた。
 もう11月の終わり、紅葉も散ろうかという肌寒い季節にも関わらず、
 無意味にテンションの高い奴である。
 こいつの家ではきっと暖房がいらないことだろう。
 その分夏はクーラーが欠かせないのかもしれないが。
 などと考えながら俺は机に寝そべったままギコの話を聞き流す。
85オマンコー:2005/12/27(火) 15:19:02 ID:1a402dJJ0

「だからそれはもう三日前からずーっと聞いてるモナ。
 てか人間じゃないって頭大丈夫モナか?
 ついにフィラリアが脳まで回ったかモナ?」
 自己紹介が遅れた。
 俺の名前はモナー。
 目の前にいるMMR候補生ギコとはまあ腐れ縁の幼馴染というやつである。

「狂ってなんかねえっつーの!
 お前だってこの町での殺人事件が普通のそれじゃねえって知ってんだろがよ!」
 ――まあ、それはそうだけれど。
 『VIP町無差別連続猟奇殺人事件』。
 この陵辱系エロゲにでも出てきそうなネーミングの事件は、
 つい一週間ほど前から起こったものだ。
 そして事件発生から今日までに、既に18名もの死者を出している。
 うち3名は通報を受けて駆けつけた警官。
 いくら軍隊ほど本格的な戦闘訓練を受けていないだろうとはいえ、
 拳銃を持った人間を三人も相手にして全て屠ってのけるなど、並大抵のことではない。
 死亡した人数を含めてそれだけでも凄まじいことではあるが、
 この事件が今までの犯罪史上類を見ない事件としてセンセーショナルに報道されているのは、
 被害者の死体が殆ど原型を留めていないことにある。
 あまりに凄惨な死に方故詳しくは報道されていないが、
 噂によると四肢がバラバラになっていたり頭がぐちゃぐちゃになっていたりと、
 それはもう燦々たる有様なのだそうだ。
 だからギコが犯人を化物の仕業と思い込むのもある種無理からぬことであり、
 実の所俺も半分はギコの意見に賛成である。
 何の罪も無い人間をそこまで無残に殺すなんて、少なくとも人間のやることじゃあない。
86オマンコー:2005/12/27(火) 15:20:24 ID:1a402dJJ0

「……てか、熱心に推理するのはいいモナけど、それでどうするモナ?
 犯人でも捕まえるつもりなのかモナ?」
「うぐッ……それは……まあ……」
 言葉を詰まらせるギコ。
 まあ、仕方が無い。
 俺達は所詮しがない学生。
 足りない頭で思案を巡らせたからといって何が出来るわけでもない。
 せいぜい帰り道に件の殺人鬼に襲われないように注意するくらいだ。
 餅は餅屋。
 そういったことは警察に任せるのが一般市民としてのあるべき姿だろう。

「おっと、そういや忘れるとこだったモナ。
 今日は進路調査の面談があったんだモナ。
 ちょっと行って来るモナ」
 そう言いながら俺は席を立った。
「んあ、そうか。
 んじゃ俺ぁ先に帰ってるぜ」
「それがいいモナ。最近物騒モナし」
「おめーも気をつけろよ。
 あんま遅くなるなよ?」
「大丈夫と思うモナ。
 先生も事件のことがあるから早めに切り上げてくれると思うモナから」
 片手を挙げてギコに別れの挨拶をしつつ、教室のドアを開けて出て行く。
 進路……か。
 進学するつもりはさらさら無いが、かといって特別にやりたい仕事があるわけでもない。
 とはいえフリーターやニートになるわけにもいかないのだろうけど、
 じっくり考えるにはそろそろ時間が無くなってきている。
87オマンコー:2005/12/27(火) 15:21:19 ID:1a402dJJ0

 そういえば。
 殺された人達にも、やっぱり未来に対する夢や目標があったのだろうか。
 不意に、そう考える。
 けれどそれで俺が亡くなってしまった人を救えるわけでもなく、
 ただ、俺の心に小さな痛みを残しただけだった。

       〜続く〜
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 15:43:22 ID:ESyK/iIC0
保守
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 16:04:10 ID:ESyK/iIC0
誰もいないのか?
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 16:10:17 ID:4w36o7GyO
>>89
書いてる最中に着信→談笑→前回画面表示→書いたの消えてる→書き始める(今ここ)
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 16:16:42 ID:ESyK/iIC0
いたこれ
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 16:41:06 ID:4w36o7GyO
「大体の事は把握したお。で、二人は知り合」
「「いとこ」」
「です」「だ」
ギコとシィが綺麗にハモった。
「じゃあ何で殺し合いなんか」
「「挨拶代わり」」
「ですよ」「だな」
またハモった。
というか、いとこ同士が挨拶代わりに殺し合うとか殺伐しすぎだろ。
「また不思議そうな顔してますね。いとこを見るのがそんなに珍しいのでしょうか」
違う、問題はそこじゃない。惜しくもなんとも無い。ていうか掠りもしてないじゃないか。
「普通は、挨拶代わりに殺し合いはしないお。そんなの挨拶代わりにするなら素直に挨拶するお」
「そうですか。殺し合いはそれ程珍しい事では無いのですが」
「シィなんか、初対面で俺の事灼き殺そうと殺してるしな」
「生意気な子供が居たので、ほんのり焦がして躾をしようかとしただけですよ。ギコこそあの時私の肋骨四本砕きましたよね」
「お互い様だろ」
「そうですね」
纏められた。
まるで日常の出来事で有るかのように纏められて締められた。
とりあえず聞けば聞くほど血生臭い話しか出てこなそうなので、話題を変える事にした。
「真面目じゃない理由で戦った時って、どんな理由だったんだお?」
ミルクティーを飲みつつ、シィが僕に目をやる。
「そうですね、例えば」
カップを揺らしながら、シィが言う。
「『食後に何を飲むか』とか」
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 17:03:42 ID:4w36o7GyO
「は?」

今、なんと。『食後に何を飲むか?』で殺し合い?
聞きました奥さん、こんなの三面記事でも嫌がって載せませんよ。
「あの時は、茶派と酒派と血派とその他に別れたんだっけな」
「内部分裂が起きて収集が付かなくなり、結局中止になりましたね。茶派が緑茶と紅茶派とハーブティーに分裂したり」
「血派は血液型別だったな。酒派が一番酷かった」
「ジャンルが只でさえ細かいのに、各ジャンルに分裂後に産地別に細分化しましたからね」
「日本酒がヤバかったな。都道府県別からメーカー別で貯蔵タンク別だった」
「原料別にも別れましたよ」
「一人しか居ない派閥がザラだったよな」

「孫自慢から始まった時、あれは老人達の怖さを思い知りましたね」
「長老会議中の発言が原因だったな」
「確か…大体のあらましはこうでしたね。
『ウチの孫が至高の可愛さでな』
『当家の孫こそ究極の愛らしさだ』
『究極とは素晴らしいですな。しかし家の孫は至高で有る故究極より高い次元にありますので』
『至高と来ましたか。さぞかし愛らしい御孫さんなんでしょうね。しかし究極には勝てませんよ』
『黙れスカルチノフ、てめぇの孫なんか只のデブじゃねえか』
『んだとコラ不細工ドクオが。貴様の孫もさぞかし不細工なんだろうな』
『ブチ殺すぞ万年肥満体が』
『良いだろう、三途の川の向こうの向こうまで送ってやる』
で、会議中に血しぶきと腐肉が舞い散る大喧嘩でしたか」
赤錆色にまみれたシルバー世代。おぞまし過ぎる。
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 17:31:03 ID:4w36o7GyO
「何かそろそろ嫌な予感がしてきたお。じゃ、じゃあ。何処を戦場にするかはどうやって決めてるんだお」
「籤だな」
ギコが即答した。
「それは以前です。八年前に籤とダーツになりました」
「あれ?今は違うのか」
「籤のみは姫がトウシで何かしら不正をする恐れが有りますからね。籤で選ばれた者が、超高速回転する地球儀にダーツで当てます」
何処かで聞いた様な選び方だった。
いや、そんな事よりもっとツッコむべき箇所が有る。
「………」
「どうしました?難しい顔をして」
「具合でも悪いのか」
「二人とも、ちょっと正座してよく聞くお」
「…正座ですか?……はい」
「どうした急に。…これでいいか?」
二人がベッドと床に正座したのを見届け、僕は息を吸い、コンディションを整える。
何せ相手は人外で筋金入りの天然二人だ。絶対に外す事無く、簡潔に、かつ効果的に突っ込まなくてはならないのだ。
よし、準備は整った。
これで決める――――


「お 前 ら ノ リ が 軽 す ぎ る お ! 1 1 1 !」


「そんな事言われても」
「なぁ。テンション低いとモチベーション下がるタイプだし」
「今時、クラシカルでステレオタイプな吸血鬼の方が珍しいですよ」
僕の渾身の突っ込みはあっさりと流され――――僕は、決定的な敗北を知った。
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 18:06:30 ID:4w36o7GyO
約一時間後。
時計に目をやると、何時の間にか短針は九時を回っていた。
「もうこんな時間ですか。早いですね」
僕の心中をそのまま代弁したかの様にシィが言い、ベッドから立ち上がる。
「帰るのか」
「家はこの街に無いのは知っているでしょう?」
「バカ、言うな」
「私も気付いてますよ。勿論貴方も気付かれている事に気付いてますよね?……シサツさん」

シィが、言って天井を見上げる。
僕も天井を見た瞬間―――――総毛立った。

「勿論気付いてるさ。何時まで素知らぬ振りを続けるのか見ものでね。
-=・=- -=・=- 」
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 18:08:54 ID:4w36o7GyO
天井に、巨大な眼が二つ、生えていた。
いや、生えていたと言うよりは、天井を二次元の顔として眼が現れた様な。
とにかく、真っ白な天井に、細く―――それでいて巨大な眼が出現していた。
「このまま俺を無視し続ける様なら、背を向けた瞬間に頭蓋と心臓を刺し貫いて殺してやろうかと思っていた」
「…相変わらず随分面白い冗談を仰るんですね」
シィが、天井へ向けて左手を翳す。
「何、そういきり立つなカソウ。堪え性の無いガキじゃあるまいし、まだ始めるつもりは無い」
「どうだか」
「今日は有力者を気紛れにシサツして回ってるだけだ」
「どちらのシサツですか?」
「気分次第でどちらでも、だ」
睨み合うシィとシサツと呼ばれた眼は、クスクスと笑い声を響かせて目を細める。
濃密な冷気とも熱気ともつかない何かが、室内に充満していくのを感じた。
これが、殺気と言うものなのだろうか。
口のパーツが無いのにあの眼はどうやって喋ってんだとかは、この際気にしないでおこう。
97珍々電車発射 ◆t0T.803Gj. :2005/12/27(火) 18:22:32 ID:SjUUhsRJ0
佐藤「キサマは田中」
田中「勝負だ」
ドカァ、田中が勝負だと言った瞬間佐藤のパンチが炸裂した。
田中「ぐおおおお何という痛さだ、まるで注射をする前、痛みに慣れるため
   腕をつねって痛みを別方向持って行く予定だったら実は
   腕をつねっていない方の腕が注射されるトコだったみたいな
   焦りのある恐ろしいパンチだ、そしてサメに食われることなんて
   ないのに意味無くサメに食われるイメージトレーニングをしているほど
   恐ろしいパンチだ、そしてまるでこのパンチの高速の速さは新幹線が自分の頬に
   突撃してくるみたいな恐ろしいパンチだ、そしてさらには(ry 〜完〜」
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 18:32:51 ID:4w36o7GyO
「あぁ楽しいな。楽しいよ、やはり殺し合いは同族相手が一番だ。最近の人間は道具が無ければ何も出来ん輩ばかりでいかん」
「愚痴ならスカルチノフ卿にでも言ったらどうです?」
「ふん、ろくに反応もしない死骸同然の老体に話掛けた所で、虚空に語り掛けるも同然だ」
「率直に言います、目障りですよ。用が無いなら消え失せてそのまま塵と化して下さい」
「…………確認だ、始まるのは?」

「9:44」

「宜しい。では、良い夜を――――なっ!」
目が瞬いた瞬間、シサツの眼球から赤い線が疾り、次いでシィの翳した手から青白い閃光と熱が発せられた。




「…な、何が?」
まだ晴れきっていない視界で室内を見る。
焦げ臭い匂いが鼻を突く。
先と変わらぬ姿勢のギコとシィ。あの眼は、何時の間にか消え失せていた。
「すみません、天井を焦がしてしまいました」
先と違うのはまず天井。目の在った辺りに、茶色い焦げ跡が、丁度目の形そのままに付いていた。
そして床。シィの周囲の床には、人差し指程度の直径の穴が空いていた。
直径こそ大したものでは無いが、深さはと言えば、どこまで貫いたのか想像も付かない程に、暗い穴だった。
最後に、シィの胸部。
「…っ!だ、大丈夫かお!?救急し」
中心からやや左寄り、心臓が存在する筈の部位に、赤黒い穴が穿たれていた。
「大丈夫です、ご心配無く」
殺気の感じられない笑みを浮かべるが早いか、穴にノイズが走り、傷が消え去った。
「仮装ですよ。当たってません。引っかかったのか、知っていてわざと退いたのかはわかりませんが」
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 19:02:08 ID:4w36o7GyO
シィがホテルへ帰った後、僕はギコの家に泊まる事にした。
それこそ夜道が怖いなんて阿呆な理由では無い。
ただ、家に帰りたくなかった。
あの、誰も居なくなった家には。

夕食をご馳走になり、風呂を借りた。

『先でいいぞ』とギコに言われたが、流石に家主より早く入るのはアレだと思ったので、一番風呂は辞退した。

そしてギコが入ってから数十分後。
「いーぞー」
入浴終了という事だろう。僕はタオルやら一式を持って風呂へ向かう。
廊下ですれ違う僕とギコ。
ギコはスウェットにシャツという如何にも楽そうな格好だった。
それは別にいい。問題はそこでは無い。
なぜ、頭が、タオルでグルグル巻きに?

ギコとすれ違った瞬間、居間へ歩いていく後ろ姿が視界に入る。
押さえきれない好奇心。
あの頭はどうなっているのか?
好奇心は猫を殺すと言うが、僕は猫では無いので躊躇わない。
退かない媚びない省みない。非核三原則ならぬ世紀末覇王三原則が、僕を突き動かす。
光る風を追い越さんばかりの速度で接近。
ギコが振り向くが、もう遅い。
僕の両手は、防護のタオルをあっさりと外した。
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 19:26:47 ID:4w36o7GyO
今にして思えば、それが本日の最後の災難を呼ぶ事になったのだ。

かぽっとタオルが外れ、そこに在ったのは。
「ね……」
「言うな」
「ねこ…」
「言うなって」
「猫耳ィィィィィイィィエアィィィィ!?」

「言うなぁぁぁぁぁっ!!!」
顔を真っ赤にして叫ぶギコ。
その後頭部には、猫耳っぽい癖毛、では無くどうみても実体の有る猫耳があった。
「ちょwww何これwww」
「……見ればわかるだろ。耳だよ耳」
ぶっきらぼうに言うギコ。相変わらず顔が赤い。
「ちょwww触っていいかおwwww?」
「やめろ…ちょっ!おい!」
ギコの抵抗も意に介せず、僕は暴走してしまったのだ。
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 19:30:06 ID:4w36o7GyO
「うっはwwwwテラフニフニスwwwうはwwうっはぁ何これwwwマジやべぇwwwww」
ヤバかった。ほんのりと温く、それでいて柔らかく、外側の体毛がサラサラでフワフワ。
「ちょ…やめ…んっ……くすぐったいんだよ…」
「うっはwwww猫耳ヤバスww最高wwもう持って帰るww」
「や…やめ…」
「猫耳少年wwwwwペタワロスwwwwww」

「…いい加減にしとけやボケェッ!!」
体重の乗った左ボディが、僕に突き刺さる。
「あんま人の事オモチャにしてっと!」
俯いた所へ右アッパー。
「細切れにしてセメント詰めにして封印すんぞ!!」
膝がかくんと折れた所で左フック。
「∧∧
(゜Д゜#)ゴルァァァァァァァァァ!!!」
止めと言わんばかりの右フック。
僕の記憶は、そこで途切れた。
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 19:31:21 ID:4w36o7GyO
AAズレたかな
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 19:58:18 ID:4w36o7GyO
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 19:58:49 ID:IAFzmZIF0
いやー




        ビックリするぐらいキモい
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 20:19:29 ID:4w36o7GyO
「おーい、生きてるか?」
気が付くと、ギコの部屋のソファーに寝ていた。
顔全体にひやりと冷感。
顔を触ってみると、氷の入った袋とタオルが当てられている事がわかった。
「悪かったな、殴っちまって」
隣に立つギコが、しゅんとした様子で言った。
頭はナイトキャップで覆われている。
「僕も調子に乗りすぎたお、ごめんお」
内心は後悔が半分に猫耳について小一時間追求したいのが半分。
後者を出すと確実に殺害されると本能が告げた為、前者の意志のみを出しておく。
「まぁ、次から気を付けてくれたらいいよ」
言って、ギコはベッドに片足を掛けた。
「ギコ」
「ん?」

「ギコの能力って、一体何なんだお?」
ギコは一瞬、きょとんとした顔をしてみせた。
それからふいに室内を見渡し、ある一点で視線を止める。
その先に有ったのはテーブル、の上に転がる一本の鉛筆。
「俺の能力は実にシンプル」
言いながら、ギコは右手に鉛筆を拾い上げる。
そのままスタスタと、部屋の隅に置かれた小さなゴミ箱へ歩いていく。
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 20:37:45 ID:4w36o7GyO
しゃがみ込み、鉛筆を握った手をゴミ箱の真上へ。
そのまま、手を握った。
鉛筆の上下の端が、ポロリとゴミ箱へ落ちる。
握り締めた手を開くと―――手の中から、殆ど粉末と化した木片が、砂時計の様に下のゴミ箱へ吸い込まれていく。
「耐久性や硬度を無視したハカイ。物理法則という戒を[破戒]し、あらゆる物を[破壊]する。それだけ」
手を払い、木片を完全に払い落とすギコ。
「その気になればダイヤだって角砂糖みたいに握り潰せるし叩き壊せる。人体も然り。シンプル、だろ?」
にこりと笑って、ベッドに潜るギコ。
猫耳の件を口に出していたら、僕も砂粒や霧の様になるまで破壊されて居たのだろうか。
肉・血・骨を霧状になるまで破壊され、肌・赤・白色の霧となって風に吹かれ消える僕。
想像するだけでぞっとさせられる。

「明日、AM9:44に開戦だ。タイムリミットは一週間、早めに寝とけよ」
言うが早いか、ギコのベッドから寝息が聞こえて来た。
有り得ないくらいの就寝速度だった。実は、破壊じゃなくて寝るのが能力なんじゃないだろうか。
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 20:57:55 ID:4w36o7GyO
身を起こすと、ソファーの脇に枕と毛布が並べられていた。
とりあえずタオルをテーブルに置き、その上に氷袋を。
少し顔が痛むが、僕も人外なら、まぁ朝には治って…いる、のか?
治っていると思いたい。

ふと、僕の能力とは何なのだろうと思った。
というか僕に能力なんて有るのか?まあ、ギコが寝てしまった以上考えても仕方ない。

ふと、生き残れるかと考えた。
逃げれば良いのだろうか。いや、あんな眼のような人外が街に何人も居るとすれば、逃亡中に見つかって殺されるのが関の山だろう。
これもギコが寝てしまった以上は考えても仕方ない。

ふと、僕の家族や今までに会った親戚達の顔が思い浮かんだ。
本当に殺されてしまったのだろうか?実はあれは嘘なのでは無いだろうか?
これもギコが寝てしまった以上は…仕方無くは無い。
今からでも、あのモララーを捕まえて―――
「妙な事考えて無いで寝ろ」
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:05:45 ID:9Kk65h8lO
普通に続き読みたいんだけどw
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:08:54 ID:4w36o7GyO
「…寝てなかったのかお」
「あんな殺気出されりゃ目も覚める。どうせモララー倒してどうのこうのって考えてたんだろ」
読まれてた。
「読まれてたとか思ったろ。お前みたいなタイプはわかりやすいんだよ」
「………」
「モララーはただで済ますつもりは無い。でも俺やシィだけじゃ奴に痛い目見せるには微妙な所だ。
内藤。その点お前は未知数だ。もしお前が奴をどうにか出来る能力を持ってるとしたら―――お前が必要になる」
「持ってなかったらどうするお?」
「その時はその時だ。考えても仕様がない事は考えるな。今は寝ろ」
ギコは布団を頭から被る。
「ギコ」
呼び掛けるも、既に寝息しか聞こえて来ない。
「…ありがとうだお( ^ω^)」
やはり、返事は無かった。
僕は部屋の電気を消し、ソファーに横になった。

明日、戦争が始まる。
享楽的な性格で凶悪的な能力を持つ異形のモノ達が、この街を戦場にする。
人を越えた人外達の祭典。

上等だ。せいぜい楽しんで、せいぜい生き残ってやる。
そしてあわよくば、いや必ず。
例え死んでもあの不死者に、死より恐ろしい地獄を見せてやる。

今は―――ただ――眠ろう。
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:30:19 ID:4w36o7GyO
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:44:27 ID:9Kk65h8lO
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:49:13 ID:WyQbjM2l0
続き期待保守age
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:52:09 ID:4dY1Ml7QO
案外続きが気になる
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:52:31 ID:xIm5Z25E0
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:54:30 ID:WyQbjM2l0
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 21:55:54 ID:4w36o7GyO
男は、必死で走り続けていた。
なぜこんな事になったのか。相手を老いぼれだと侮っていたのが原因だったのだろうか。
いや、そもそも侮らずに最初から全力で戦って居たら勝てたのか?
わからない、思考力が働かない。
「くそっ!!なんだってんだよ!!(;'w`)」
後ろから、厭な気配が近づいて来るのがわかる。
自分はこの街が戦場になった事をいち早く聞き、地元の人間達よりこの街の地理に精通した。
自分はまだ五十歳、相手は六百をとうに越える老体。
相手の体力に関しては日頃から良く知っていた。
下手な人間よりは上だが、こちら側を基準にすればそれはかなり劣っている。
老いぼれ、だった。
能力に関しては一切知る事が出来なかったが、如何な能力であろうと、身体・頭脳の若さを活用出来れば勝算は十分に有る。
最悪、能力次第ではヒットアンドアウェイだけでも勝利出来る。
と、思っていた。

自分の能力で、壁や障害物をすり抜けて逃げる。逃げて逃げて逃げ続ける。
確実に、自分はこの街の地理を頭脳に叩き込んだ。
椅子と机、白紙とペンと時間さえ用意されれば、そらで完璧な地図の複製を描き出せた程に。

だが、どうした事か今の自分はデタラメな逃走劇を続けて居た。
効率が悪いルートどころか、何故か同じ道を何度も走り続けている様な気さえしてくる。

『逃げろ』
『何、俺から逃げる必要は無い』
『お前が逃げるべき相手は―――』
『く、くくく。逃げても無駄だが、な。それは何処へ逃げてもついて回る。付くと言うべきか憑くと言うべきか』
嗄れた声が頭の中で何度も反響し、壊れたレコード宜しく繰り返し繰り返し再生される。
『純血種とはいえ下僕が主に逆らうという事が、どれ程の大罪か。身を持って、知れ』
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 22:10:32 ID:WyQbjM2l0
よく見たら朝からずっと書き続けてるのか
暇人め
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 22:17:49 ID:e7ttwjTn0
言葉遊びの特異能力設定といい
ほんのり香る801臭といい見事な厨ノベルだなw

続き期待ホス
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 22:18:25 ID:9Kk65h8lO
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 22:23:20 ID:WyQbjM2l0
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 22:28:41 ID:4w36o7GyO
そもそも始まりは、下克上だったのだ。
名実ともに途方も無く高いランクに君臨する我が主を殺す。
暗殺を装い、犯人役を仕立て、犯人の死体を手土産にして玉座に座る。
幸い主とは遠い親戚に当たるので、犯人を仕留めた功績を加味すれば、単なる直系に玉座を奪われて終わり、と言う可能性は低いだろう。
よしんば玉座を手に入れられずとも、それなりの地位に推挙される可能性は高い。
そして開戦前夜、男は下克上を決行した。

「(ち、畜生…何だってんだよ!!何なんだよこれは!!)」
結果は悲惨だった。人気の無い廃ビルに呼び出し、主を殺害せしめる予定だった。
主は無抵抗だった。男が懐から抜いた大型のアーミーナイフを見ても、何の反応も示さかった。
「(あれだ。あれが奴の能力に関係してる筈なんだ)」
首に刃を突き刺そうとした瞬間、蛍光灯が落下して来た。
主に向かって突き出した刃先に直撃し、刃は空を切った。
それだけでは無い。
刃に当たって飛散したガラス片は、男の両目に突き刺さった。
激痛に腕がぶれ、ナイフは壁に向かって直進。
刃は根元から折れ、ナイフは単なる柄と刃に分かれ、その機能を失った。
有り得る事では無かったのだ。
使ったナイフは特注。切れ味と耐久性を極限まで追求させた、文字通り目の玉が飛び出る様な金額の品だった。
そのナイフを作った者も尋常では無い。世界最高峰の刀工にオーダーした、世界最高性能と言っても過言では無い逸品。
いくら手元が狂ったとは言え、いくら人外の腕力で突いたとは言え。
たった一度コンクリートの壁如きを突いた程度で根本からへし折れるなど、万に一つ、いや億に一つたりとも有り得る話では無い。
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 22:42:59 ID:9AqKDGVw0
やべぇ香ばしい
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 22:51:57 ID:9Kk65h8lO
ほっ
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:00:53 ID:4w36o7GyO
不幸中の幸いと言うべきか、左目は失明を免れた様だった。
だが、それだけだ。
現状はと言えば暗殺失敗。武器は壊れ、片目の光を失う大怪我。
自滅、無様な自滅だった。
勿論まだ生きている、つまり死滅したわけでも破滅したわけでも無いのだから『自滅』と言うのは語弊が有るのかも知れないが。
ここで男は迷わず決断した。
弁解など不可能、仮に、いや奇跡的に許しを得た所で、失った片目と信用は戻らない。
良くて四肢の何れかを切断された上で、奴隷か見せ物扱いされて永い生を続けるだろう。
ならば、ここで己の頭脳と肉体と能力を持って、主を何としても殺害せしめるしか無い。
「(あの時だ。俺は、あの時許しを請うべきだったんだ)」

両手に、小さな炎を灯す。
あの女の[火葬]には遠く及ばないが、自分も多少なりとも火を操る事は出来る。
これで焼き殺して―――――
主の羽織る毛皮のコートに火を灯そうとした瞬間、主と目が合った。
哀れむような目だった。
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:01:50 ID:4w36o7GyO
「お前には、天運は無いな」
言って、主は薄笑いを浮かべた。
恐怖、怖気、戦慄。どう言い換えても良い。とにかく、怖くなった。
目の前の老人が、無性に怖くなったのだ。
身を翻し、走り出した。
頭脳に叩き込んだ、街から脱出する最短ルート。
そして、自分と違い障害物を通り抜ける事が出来ない追っ手を足止め出来る、距離を稼ぐのに最適なルート。
幾度も入念な下調べをし、慎重かつ執拗にシミュレートしたルート。
自分は、絶対に逃げ切れる。
あのワケのわからないバケモノから、逃げ切る事が出来る。
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:14:26 ID:WyQbjM2l0
保守
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:21:15 ID:9Kk65h8lO
ほっ
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:25:23 ID:WyQbjM2l0
今一盛り上がりに欠けるから月厨を呼ぼう
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:26:15 ID:4w36o7GyO
そして、現在。
男は迷走していた。
街から出られない。最適なルートが見い出せない。頭の中の地図が明確な像を描かない。
それ以前に、この街の地理が思い出せない。
「(何だ?俺の頭はどうなっちまったんだ?)」
考えろ。最適かつ最短なルートは?奴の能力は?俺は奴に何かされたのか?
此処は何処だ?奴は何処に居る?
考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ………

「(考え…られない?)」
思考力が、完全に麻痺していた。
もう自分が何処を走っているのかもわからず、ただ真っ直ぐに走り続ける。
あらゆる障害物を通り抜ける自分の能力を持ってすれば、真っ直ぐ走れば何時かは出られる。

走り続けて数十分が経った所で、男の疲労はピークに達していた。
「(何処か…や…休める…所……を…)」
人外と言えど、数十分にも渡って100m走のペースで走り続けるのは無理が有った。
結局の所、生来の身体能力プラス脳内麻薬が、体に無理を利かせていたに過ぎなかった。
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:38:21 ID:4w36o7GyO
「(公……園…)」
目の前がくらくらと揺らぎ、全身からは止めどなく汗が流れ、口の中には血の味が広がっていた。
公園外周に張り巡らされたフェンスにもたれかかりつつ、公園の入り口まで進んで行く。
「(水、みずが。みずが飲みたい)」
血の乾きでは無く、水の乾き。吸血鬼としてでは無く、生物としての乾き。
ふらふらと視線を彷徨わせると、噴水が目に入った。
噴水の奥には水飲み場も有ったのだが、最早男は、水ならばなんでも良いという激烈な乾きに支配されていた。

噴水に飛び込む。
人を超えた存在だの、いやそれ以前に人としての体裁さえかなぐり捨てた行動だった。

衛生面に明らかに問題が有るだろう噴水の水を飲み、目に入り込んだ水が傷口に染みるのも構わず、一心不乱に水を浴び続けた。

「酷い有り様だな。お前程の男が、これ程変わり果てた姿になるとは」

嫌と言う程、聞き覚えの有る声。
声の方向に振り向くと、ベンチに腰掛ける一人の老人。
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/27(火) 23:52:06 ID:4w36o7GyO
「何故、見つかったのか?大方そう考えているんだろうな」
主は、やはりあの哀れむ様な目で自分を見つめている。
「俺はお前を探してなどいない。俺は、ただずっと待って居ただけだ」
待って居た、だけ?それじゃあまるで、自分がここに誘導された様な言い方じゃないか。
「その様子だと、随分走り回ったらしいな。がむしゃらに、俺から逃れる為に」
哀れみを込めた視線を向けたまま、主が続ける。
「まぁ、そのトウカが幸いして、ここまで辿り着く事が出来たわけだ。[透過]が無ければ、お前はとっくに死んでいただろう。
あのビルを飛び出した辺りかそこら辺で、事故に遭うか」
わからない。この老人が何を言っているのか、まるでわからない。
「噴水に飛び込んだ時に心臓麻痺を起こさなかった、のは天運かも知れんがな。
とは言え。出鱈目に逃げ続けて『偶然』遭遇するとは、なんとも気の毒な話だ」
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 00:09:44 ID:I6EYm0yMO
「気の、毒?」
男の疑問に、老人はにたりと笑みを浮かべる。
「そうだ、気の毒な事だとは思わないか?
俺を狙ったナイフは『偶然』落ちて来た蛍光灯で狙いが逸れ、割れた蛍光灯が『偶然』目に刺さり、ナイフは『偶然』不良品だったのか簡単に折れた。
そして思考力を失って考えられなくなったお前は、出鱈目に走り続けた。
何の為か、この俺から逃げる為だ。
それが『偶然』立ち寄った公園で『偶然』ベンチに座って居た俺と『偶然』出会ってしまう。
気の毒だ……本当に気の毒だな?」
まさか、まさかこの男の能力は。
ふざけるな、そんな滅茶苦茶な能力が有ってたまるか。
こいつのペースに嵌るな、これ以上妙な事が起こる前に、こいつを焼き殺す。
「[灯火]か。しかし、あの程度の火力じゃあ無理、だな」
無理だと?何が無理だと言うんだ?
「お前は『偶然』水飲み場よりも噴水に目を付け、そこに飛び込んだ。つまり?」
火が出ない。全身がびしょ濡れの状態では、火が出せない。
自分の能力はトウカ。[灯火]は所詮灯火であり、カソウの女が使う[火葬]の火力には程遠い。
ギリギリ攻撃に使えるかどうか、といった火力。
「気の毒だ。全く気の毒な話だ」
能力には、頼れない。
ならば、身体能力でこいつを殺すしか。
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 00:36:41 ID:I6EYm0yMO
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 00:59:06 ID:I6EYm0yMO
「そして更に気の毒な事に、今この瞬間。お前は能力を使う事を考えなかった」
襲い掛かって来る男に、老人は手を振る。
別れの合図の様に。

老人の眼球へ、男の指が触れる寸前――――二人を、閃光が包み込んだ。

数秒後。
老人が鼻先ギリギリに停車した大型トラックの下を覗き込む。
「ますます酷い姿になったな。気の毒に」
老人が声を掛けたのは、トラックにひかれ、上半身と下半身が別れてしまった、自分の元下僕。
「あ"…あ"ん"だの……能力…は」
息も絶え絶えに、血の泡を吹きながら男が言う。
「先に言っておこう。ワロスマン、お前が俺に反逆したのはな、お前のせいじゃないんだ」
「な"………何を…言っで…」
老人の視線が、哀れみから悲壮感を漂わせた物に変わる。
「組織に置ける上司と部下は、ある種の親子にも例えられる。まして、お前に俺は『実の息子』の様に目を掛けて来た」
老人は深く溜め息をつくと、沈痛そうな面もちで続けた。
「それが仇になった。お前を不孝にしてしまったんだよ」
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 01:19:06 ID:I6EYm0yMO
血の泡をゴボゴボと吐き出しながら、複雑な表情で、瀕死の男が老人を見る。
「そうだ。わかっただろう、私の能力はフコウ。子を[不孝]にし、あらゆるモノを[不幸]にする」
「知ってだなら…な"…な"ん"で…俺…を…」
老人の表情が、ころりと哀から喜色満面の笑みに変わる。
「何でって、そりゃあ親心だな。お前に私の能力を跳ね退けるだけの忠誠心と天運が有るかを見たかった、以上だ」
老人の言葉に、男は血走った目を見開く。
「ド…ドクオ……あんたは…悪魔……だ」
男に対し、老人はわざとらしくゆっくりと頭を振ってみせる。
唇に手をやり、長い牙を見せて、一言。
「悪魔じゃない。悪魔じゃあないんだワロスマン。俺は吸血鬼、だよ('A`)」
ドクオを睨みつけたまま、唇を金魚の様に数回ぱくぱくとさせた後、ワロスマンは絶命した。
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 01:22:19 ID:I6EYm0yMO
ドクオはワロスマンの遺骸からふいと視線を逸らし、トラックの運転席へ向かう。
コン、コンとノックするも、反応は無い。タラップに足を掛け、窓から車内を見やる。
作業服を着た男が、運転席に突っ伏して震えていた。
緊張のせいか、罪悪感か、興奮状態なのか。
もう一度ノック。
運転手が、震えながら窓を開ける。
「す、すみま「あんたは気にする必要は無い」
運転手の言葉を遮る様にドクオが言う。
「あんたの車を何処かのいかれた男が乗っ取り、そのいかれた男はあんたの車で公園内を暴走した。
いかれた男はあんたの車を置き去りにして何処かに消え、あんたは『たった今』運転席に乗り込んだ。それで良いな?」
「そ、そんな事あるわけないじゃないか。俺は居眠りして人を……」
「あんたはたった今、盗まれた愛車を発見した。車は何も跳ねてもひいてもいない。わかったな」
有無を言わせぬ口調で運転手に言い、ドクオがタラップを降りる。
無造作にポケットから携帯を取り出し、数回ボタンを押し、耳に当てた。
「…ワロスマンが、[不幸]にも公園に突っ込んで来たトラックに跳ねられて死んだ。
気の毒だが、運が無かったとしか言いようが無いな。
運転手に過失は無いようだ。事故処理を頼む」
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 02:04:23 ID:I6EYm0yMO
ドクオは、公園を離れて深夜の繁華街を歩いていた。
特に目的が有るわけでは無い。敢えて言うなら単なる散歩。
「吸血鬼がこんな所に何か用事でも?」
不意に背後から聞こえた声にも、ドクオは驚く事無く、歩みを止めずに返事をする。
「用事なんか無いな。ただ、人間を見てるだけだ」
「人間を見てる?何のために?」
「人間が好きだからだな。好きなモノを見に来た」
「相変わらずの人間贔屓ね。その優しさを少しは同族に向けられないのかしら」
ドクオが足を止め、振り返る。
「お前達こそ人間に少しは情けを掛ける気にはならないのか?」
ドクオの眼前に立つ、金髪の少女が困った様な表情で返す。
「人間に情け?なんで?(´・ω・`)」
「前にも言っただろう、ショボーン。人間ありきの吸血鬼だ。人間は吸血鬼が居なくても困らないが」
「吸血鬼は人間が居ないと困る、でしょ?聞き飽きたよ。居れば良いなら養殖しちゃえばいいじゃない。人間が他の動物にしてるみたいに」
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 02:17:33 ID:I6EYm0yMO
「仮に、俺達より遥かに優れた存在が居たとする。そいつらは吸血鬼を喰らう側で、俺達は敵わないから喰われる側だ。で、そいつらがお前と同じ事を言ってたら?」
「殺すよ。ムカつくし」
「いや、だから敵わないと仮定してだな」
「そもそもピンポイントな物ならともかく、トータルバランスで私達を超える生物なんて居ないじゃない」
「いやだから仮定」
「仮定仮定ってうるさいなー。『ネガティブな考え方は健康にイクナイ!!』ってイクナイが言ってたよ」
「はぁ……わかった。お前を説得しようとした俺が馬鹿だったよ」
「ばーかばーか」
「目上の人にはちゃんと敬語を使え。口の聞き方がなっとらん」
「人じゃないよ」
「屁理屈を言うな」
「頑固親父は嫌われるよ」
「ガキは大人に嫌がられるぞ」
ドクオの言葉に反応し、ショボーンが顔をしかめる。
「いっつも会う度会う度に説教。ムカつくなぁ(´・ω・`)」
「こんな事でムカついてたら、大人になるとストレスで死ぬぞ('A`)」

「ムカつく、ほんとムカつく。あーイライラするなぁほんと。…セッショク、しちゃってもいいのかな」

「お前がセッショクで俺を殺すのが先か、お前に[不幸]が降り懸かかって自滅するのが先か、試して見るか?」
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 02:49:39 ID:I6EYm0yMO
じわりと、老人と少女の間に殺気が滲み出る。
さて、どうした物か。
目前の少女、ショボーンは人類家畜派閥のメンバーの一人。
対する自分は、共存(非支配)派閥の実質的な中心人物。
直接的に顔を突き合わせる様な戦闘に於いて、この少女の持つ能力の殺傷能力は、自分を遥かに超える。
ショボーンのそれが直接的かつ確実性の高い能力であるのに対し、こちらの[不幸]は間接的かつ余りにもランダム性が高すぎる。
トウカ程度ならどうにでもなったが、ショボーンのセッショクは殺傷能力の桁が違う。
最悪、ショボーンに不幸が降り懸かる前に、避ける間も防ぐ間も無く即死させられる可能性が高い。
説得は失敗、戦闘は不利、こうなれば最後の手段に縋るしか他は無い。
「ショボーン」
「命乞いなら聞かないよ」
「フライドチキン」
「……っ!?」
あからさまに、ショボーンの肩がぴくりと揺れた。
「吉牛」
「ぐ……」
「ビッグマック、テリヤキチキンバーガー」
「うぅ…」
「御勝手屋羊羹」
「ううっ…」
「クリームソーダ」
「うぅ…う」

「フライドポテト。シェイクも付けよう」
「…な、何が、望み?」
勝った。思考形態もお子様なら、食い物に易々と釣られる辺りもお子様なのだ。
悪くいえばガキなのだが。
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 03:10:17 ID:zUcmu49l0
面白すれー
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 03:25:50 ID:I6EYm0yMO
資金力、これも大人の力なのだ。
正直情けないやり口だとは思うが、真正面から不利な戦いを挑んだり、あっさりと目先の利益を取る奴は未熟なのだ。
例えば、食い物にあっさりと買収され、俺の隣、車内後部座席で牛丼とフライドチキンを貪っている奴の様に。
きっとこいつが食い逃げをしたら
『ムシャムシャしてやった。反省はしていないオカワリマダー?』
とか言い出すのだろう。

「何見てるの?何か付いてる?(´・、ω・`)」
「タレが付いてる。口の周り、右側」
「……取れた?(´・"ω・`)」
なんで移動してるんだ。
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 03:30:05 ID:I6EYm0yMO
「取れてない。むしろ被害拡大した。これで拭け(;'A`)」
ハンカチを手渡すと、顔を拭ってショボーンは笑む。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末様。で、こちらの用件を聞いてもらおうか」
「モララーを殺せとかは無理だよ。セッショクしても再生するし(´・ω・`)」
「わかってる。お前の派閥のメンバーに関する、大体の情報をくれれば良い」
「……いいよっ」

これで、出だしは有利とまではいかなくとも、不利にはならない。
勝つのは、俺達の派閥だ。





「……そういえばモララーは何してるんだ?奴の事だから、大人しく開戦を待ってるとは思えないんだが」
「さっき来たメールで、眼が視察でアヒャを見つけたから、アヒャと殺し合って来るって」
「アヒャとモララーか…これはまた…とんでもない能力同士がカチ合ったもんだな」
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 03:57:33 ID:zUcmu49l0
吸血鬼の話の作者は学生?
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 04:14:45 ID:I6EYm0yMO
郊外の山林。
そこで二体の怪物が殺し合っていた。
片方は黒尽くめにオールバック、マントを羽織った如何にも吸血鬼然とした男、モララー。
モララーが眼前の相手に躍り掛かり、懐から取り出したナイフで、相手の心臓を刺し貫いた。
「これで何回目かな( ・∀・)」
ふと、刺し貫かれた相手が消失する。
「アヒャ!アヒャヒャヒャヒャッ!後ろだよヴァカ!」
轟音が響き、モララーの頭部が吹き飛ぶ。
どちゃり、と地に崩れ落ちるモララーの体。
それを満足そうに眺める女性。
その女性も、モララーと同じく黒に統一された服装だった。
しかし、ある意味モララーと同じかそれ以上に、その容貌は異質だった。
喪服姿に黒い長髪、肌だけがやはりモララーと同じ様に白く、眼が青い事を覗けば、服装から毛髪まで全て黒。

恍惚と狂気が入り混じった表情で、その女性は首を失ったモララーの体を蹴り上げる。
「アヒヒャヒャヒャャッ!死んだふりしてんじゃねーよクソが!どうせすぐ再生するんだろうが!」
笑いながら、女性は45口径のオートマチック拳銃をモララーの死体へ向け、容赦なく弾丸を叩き込む。
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 04:18:04 ID:I6EYm0yMO
>>143
どうみても冬休みを無為に消費しています
そもそも24時間ぶっ通しでSS書いてみようとか考えちゃう辺り、正に馬鹿ですよね
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 04:29:39 ID:zUcmu49l0
>>145
まあ頑張って描いてくれ、wktkして見てるよ
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 04:39:13 ID:I6EYm0yMO
「アヒャ!穴だらけにしちまうぞ!?さっさと起きろ退屈させんな死ね!!」
喪服の女性がトリガーを引く度、モララーの死骸が着弾の衝撃で波打ち、肉と血が飛び散った。

カチリと金属音。

「アヒャ、君は焦りすぎるな」
何時の間にか完全に肉体を復元したモララーが、起き上がり様にナイフを投擲。
アヒャと呼ばれた喪服姿の女性が、一本目を拳銃で叩き落とす。
二本目は左腕で受け、三本目は防ぎきれずに右足に突き刺さる。
痛みのせいか、アヒャの動きが僅かに止まり―――懐に潜り込んだモララーが、やはり何時の間にか右手に握ったマチェットを振り上げて。
「死にたまえ」
アヒャの首目掛け、横殴りに叩き付けた。
アヒャの首が宙を舞い、その顔面が地に落下して叩きつけられる…事は無かった。
首が地面に落下する寸前で、首も、首を失った肉体も消え失せていた。
「イナイイナーイ…」
モララーと鼻を突き合わせる様な距離で、先と変わらぬ容貌のまま、女性が狂った笑みを湛えていた。
「バアッ!!( ゜∀゜)」
アヒャ、と呼ばれた女性が、銃床でモララーの顔面を殴りつけた。
いや、殴りつけるなどいう物では無かった。
振りかぶり、全体重を乗せて、叩きつけたと言う様な一撃だった。
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 04:58:58 ID:I6EYm0yMO
人外の筋力を総動員した一撃に、肉片と血を飛び散らせながらモララーがのけぞる。
ベキリと乾いた音がしている辺り、首の骨が折れたのだろう。
「アヒャ!アッヒャヒャヒャ!!( ゜∀゜)」
アヒャが奇声を上げながら、倒れ込むモララーの顔面を鷲掴みにし、手近な木に叩き付ける。
一度、二度、三度、四度。
そこで、追撃が止んだ。
アヒャが止めたのでは無い、無傷となったモララーがその腕を掴み、アヒャの追撃を止めていた。
「死ぬにしても殺すにしても、君はペースが早すぎる」
説く様に言い、アヒャの頭部にモララーの右手が絡みついた。
そして、わかりやすい反撃。
自分がされた様に、アヒャの顔面を何度も木に叩きつける。
だが、その勢いはアヒャのした様に全力かつ高速で激突させ続けるといった物では無い。
むしろ逆、一定のリズムを刻む様に、一定の制限が有るかの様に、強くも無く弱くも無い力加減で、モララーはアヒャの顔面を叩きつけ続ける。
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 05:32:53 ID:zUcmu49l0
保守
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 06:05:21 ID:zUcmu49l0
保守
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 06:59:41 ID:zUcmu49l0
保守
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 07:00:13 ID:wbWXctXL0
スレタイに忠実
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 07:26:37 ID:zUcmu49l0
誰か保守頼む…眠い
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 07:39:12 ID:+9kDTjx00
こんな月厨くせぇスレは保守しません><
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 07:58:29 ID:6U2rRdemO
俺も保守なんてごめんだねッッ!
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 08:26:22 ID:zYh238fY0
まだあるとは予想外だな
これもなにかの縁だ、保守しとくか
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 09:02:47 ID:lYEY0q/tO
ほぁ
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 09:29:28 ID:5sVjgN9/0
厨が書くっぽい?
厨が読むっぽい?
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 10:04:18 ID:zYh238fY0
保守みたいな
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 10:15:40 ID:vn2C/cOy0
奈須きのこ乙
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 10:47:36 ID:lYEY0q/tO
茄子ときのこのそてー
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 11:05:59 ID:6U2rRdemO
海老とアサリのぱすたー
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 11:35:48 ID:6U2rRdemO
ほしゅ
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 11:58:45 ID:lYEY0q/tO
ほっしゃん。
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 12:45:33 ID:zYh238fY0
保守気味
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 12:45:54 ID:zYh238fY0
sageじゃ意味ないがな
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 12:53:13 ID:AIsMyf8Q0
あげてもさげても同じだぜ
最終書き込み時間で決まるはず
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 13:32:50 ID:CVyRsxJSO
その通り
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2005/12/28(水) 14:02:35 ID:IFST/j680
保守アゲ
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
agare