上海で借りているアパートの契約が切れるのを機に引っ 越しをすることにした。新しい大家夫妻は40代前半で、
二 人とも鉄鋼大手のエンジニアだという。物件を決め、仲介 してくれた不動産屋で契約を交わし、部屋の説明を受ける ために、
大家のクルマで向かうことになった。シボレーの 真っ白なSUVである。家に帰って調べてみると、25万元 (約412万円)の値が付いていた。
私の借りたアパートは 1919年に建てられた古い集合住宅の一室だが、不動産屋の 見立てによると、「買えば1平米8万元は下らない」とい う。すなわち平米あたり115万円、坪なら380万円である。
大家夫妻は上海市内に別に自宅を持っていて、私の借りた 部屋は、現在中学2年生の息子が、都心部の進学校を受験で きるよう戸籍を移すために昨年購入したのだという。
このコラムで私は毎回、中国人、とりわけ私の住む上海 の市民たちが使っている家電や通信機器などを取り上げて はあれこれ書いているわけだが、
改めて毎回思うのは、 「収入の割りに、いいものをたくさん買うよなあ。どこか らそんなにお金が出てくるのか」ということである。
額面の給料だけでは計り知れない
世界銀行による購買力平価の推計などを勘案すると、中 国の国内総生産(GDP)は2014年中に米国を抜いて世界一 の経済大国になるとのこと。
国としての経済的な実力が強 大であるのは間違いない。ただし、である。上海の最低賃 金は1820元(約3万円)に過ぎない。
もちろん平均賃金は それよりも高く、最近は大卒のホワイトカラーで手取り 7000元(約11万5000円)といったところだといわれる。
私が上海に暮らし始めた2001年、最初に働いた国営雑誌 社にいた大卒一年目の女の子の給料は900元(約2万4000 円)だった。
この10年あまりで随分上がったとはいえ、彼 ら彼女らの購買力は、額面の給料をはるかに上回っている ように感じるのである。
ここで言う彼ら彼女らとは、利権 の周囲にいる共産党幹部の子弟や富裕層のことではなく、 サラリーマンなど一般の庶民のことである。
そこで今回 は、中国人の旺盛な消費の原資となるカネの出所の一端に 触れてみることにする。
持ち家政策という錬金術
まずは不動産である。中国では1990年代、当時の政権が 打ち出した持ち家政策により、上海では50??70平米程度の 国営企業や公務員の社宅の一室を社員らに買い取らせた。
1990年代後半、招かれておじゃました上海の刑事さんの都 心部にある自宅も社宅を買い取ったもので、
確か50平米で 10万元(約165万円)だったと言っていた。当時の物価水 準からすれば決して安い買い物ではなかったわけだが、
そ の後の不動産高騰で、今では10??30倍ほどになっている。 こうした人たちの中には、夫と妻がそれぞれの職場から1軒 ずつ社宅を買ったという人もいるので、
両親の分も含めて 一家族で4軒、この時代に格安で住宅を手に入れたという ケースも少なくない。
また、2010年の上海万博にともなう都市の再開発で、都 心部にある古い住宅群は軒並み取り壊された。
この際、理 不尽な条件で強制的に立ち退かされた人々も少なくないよ うだが、甘い汁を吸った庶民もたくさんいる。
親族の住宅 が再開発にかかると分かると、あの手この手を使って、伯 父叔母にいとこにはとこ、
果ては家系図をたどらないと分 からないような遠い遠い親戚までその家に暮らしていたよ うに操作し、立ち退き料をせしめたという話をいくつか聞 いた。
続きはソースで
日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140514/264579/?ST=world