【シンガポール=吉村英輝】
フィリピンのアキノ大統領に対する辞任圧力が強まっている。イスラム武装勢力との交戦で警察官44人が死亡し、アキノ氏の対応のまずさに
批判が集中。今後の政権運営が空転を続ける事態も懸念されている。
「平和への道のりが簡単でないことを私たちはみな認識している」
フィリピンで1986年にマルコス独裁政権を打倒した「ピープルパワー(民衆の力)」政変から29年を迎えた25日、アキノ氏は記念式典でこう述べ、
マルコス氏の政敵で83年に暗殺された、父のベニグノ・アキノ元上院議員に言及しながら、イスラム武装勢力との和平実現を訴えた。
南部ミンダナオ島では先月、イスラム過激派の容疑者を追跡中の警察特殊部隊が、武装勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」と「遭遇」し
交戦となり、警官44人が死亡した。
警官の遺体の帰還式典を三菱自動車の工場開所式出席のため欠席して批判を浴びたアキノ氏は今月19日、遺族らと会談。だが、遺族は
「質問にきちんと答えず、笑ってすらいた」と反発し怒りを増幅させた。
アキノ氏の一連の「失態」を非難し、同氏の叔父や前アロヨ政権の幹部らは22日、辞任を要求する大規模デモを開始。クーデターによる
大統領暗殺情報も出回り、議会でガズミン国防相が「情報は得ているが、軍は関与していない」と答弁する一幕もあった。
アキノ政権は発足3年目の12年、MILFと和平の枠組みで合意、16年に同島内に新自治政府を設立する準備中だが、議会ではMILFへの
警戒が再び台頭し、法案審議が中断した。
マルコス独裁政権の反省から、大統領再選は禁止。アキノ氏は、来年6月までの任期中に、ミンダナオ和平を実現させて40年以上続いた紛争に
終止符を打ち、政権の“遺産”とする意向を強くしている。だが、今回の衝突で、世論とMILFの双方を納得させる和平法案の実現は困難になった。
ロイター通信は「アキノ氏は、残されたすべての政治的資産を犠牲にする危険を冒している」との専門家の見方を伝えた。
産経ニュース 2015.2.26 20:03
http://www.sankei.com/world/news/150226/wor1502260045-n1.html