伊藤忠商事が、タイ最大の財閥グループと組んで、中国最大の国有複合企業、「中国中信集団(CITIC)」の傘下企業に合わせて1兆円強を出資し、資本業務提携する方向が明らかになった。
日本企業の対中出資としては過去最大となるが、中国経済の失速や不動産バブル崩壊などリスクもあるなかで、大きな賭けとなりそうだ。
伊藤忠とタイのチャロン・ポカパン(CP)グループが出資するのは、中国中信集団傘下で香港市場に上場する「中国中信」。傘下に金融や不動産、資源開発、建設など約20社の企業を抱える。
伊藤忠は5000億円余りを出資し、伊藤忠とCPで株式の約20%を握ることとなる。
日本企業の対中出資額だけでなく、日本の総合商社の出資額も、中国の国有企業への外国企業の出資額もいずれも過去最大という異例の巨額投資が実現するのは、習近平指導部の強い意向があってのものだ。
日中関係の悪化を受けて、日本から中国への直接投資実行額は2年連続で減少。2014年は前年比38・8%減の43億3000万ドル(約5050億円)となり、天安門事件のあった1989年を上回る下落率となった。
習指導部としては、日本をはじめとする海外企業の対中投資を再び増やす呼び水としたいうえ、政権が掲げる国有企業改革の目玉になると考え、今回の出資を後押ししてきた。
昨年11月の安倍晋三首相と習主席の首脳会談を経て、伊藤忠側に決断を迫っていたという。
伊藤忠は丹羽宇一郎前会長が中国大使を務めるなど中国政府と関係が深く、タイのCPグループも習政権と近いとされる。
中国中信は伊藤忠などの出資を受けて、中国での不動産開発やインフラ事業などを強化するという。
ただ、中国経済は不動産バブルの崩壊や影の銀行、経済成長率の低下など問題が山積しており、巨額出資が実を結ぶかは未知数の部分もある。
伊藤忠は20日午前、中国中信への出資について「CPグループと共同でCITICグループへの投資、及び三者での業務提携を検討しており、決定したら速やかに開示する」とのコメントを出した。
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