2000年以上前、中国の古典的医学書「黄帝内経」は、肥満を「脂肪分の多い肉類と精製された穀物」の食べ過ぎが
引き起こす病気としていた。一世代前までは、上流階層以外の全ての人にとって、そのような食生活は想像を超えた
贅沢だった。
しかし、それ以来、中国人の胴回りは憂慮すべきペースで膨張してきた。
成人人口の4分の1以上、数にしておよそ3億5000万人が過体重か肥満だ(6000万人以上が後者の範疇に入る)。
どんなに少なく見積もっても、この数字は栄養不足人口の2倍に上る。
所得の増加と食生活の多様化に伴い、脂肪分の多い食品と炭酸飲料の摂取量がかなり増えている。現在の食事に
含まれる油脂類と肉類の量は1980年代の2倍以上に上る。
・成人の糖尿病発症率はほぼ米国並み
これにより、心臓病(現在、死因の3分の1以上を占める)と、それほど目立たない糖尿病の急増の両面で健康被害が
生じている。肥満と密接に関係する糖尿病の患者数は、過去30年間で10倍以上に増えた。最近の国家統計によると、
中国の成年人口の11.6%が糖尿病を発症しており、肥満率がはるかに高い米国とほぼ同水準となっている。
悲惨な飢饉がまだ生きている人の記憶に残るなか、中国人が脂肪と糖分を多く含む食事を好むようになったことに
意外感はない。中国栄養学会の範志紅氏は、大躍進時代の飢饉と文化大革命時代の食糧不足を生き抜いた世代は、
とにかく「昔の暗黒時代」の粗い穀物を食べることを止めたがり、糖尿病の発症に加担する精製された穀類や小麦粉を
好むようになったと言う。
北京協和医院で糖尿病を専門とする医師、向紅丁氏は「手遅れになる前に、今、おいしいものを食べる方がいいと
考える人もいる」と話している。60歳以上の中国人の2割近くが糖尿病を患っており、その比率は国民平均の2倍に上る。
実のところ、裕福になるにつれて中国人の食事量が増えているわけではない。1日当たりの平均摂取カロリーは
過去10年間で若干減少しており、2001年は2100キロカロリーだったものが、現在は2000キロカロリー強となっている。
この数字は、あまり体を動かすことのない生活様式が食生活の変化と同じくらい国民の健康を蝕んでいる可能性を示している。
急速な都市化は、体力的にあまりきつくない製造業の仕事に就くために田畑を後にする人が増えていることを意味している。
一方、都市部では、徒歩と自転車での移動が、自動車の運転と公共交通での座ったままの移動に取って代わられた。
最近の調査では、都市部の住民のうち定期的に運動している人は10%に満たないことが分かった。
裕福な沿岸部の都市では、小児肥満が著しく増えている。夏休みになると、親は丸々と太った小皇帝たちを全国各地に
続々できた減量キャンプに送り込む。
試験を重視する教育システムも状況を悪化させている。学校は毎日最低でも運動の時間を1時間確保することを
義務付けられているが、日常的に体育の授業がつぶされ、他の科目に充てられている。
医療雑誌「ランセット」はこの5月、中国人男児の6.9%が肥満で、その割合が成人男性のほぼ2倍になっていることを
示す研究成果を公表した。
・都市部より農村部の方が危険?
恐らく、最も意外な都市化の影響は、中国農村部では都市部以上に速く肥満が拡大していることだろう。
都市部周縁の世帯は特に肥満に陥りやすい。開発のために農地を売り、土地を失った農家は今、一日中何もせず、
脂っこい食物を食べて過ごしている。2012年には公衆衛生の専門家が、北京周辺の村落の糖尿病発症率がじきに
北京を上回るかもしれないと警告した。
同じ2012年、中国衛生部の報告書は、2005年から2010年にかけて、農村部の幼児は都市部の幼児より急速に
体重過多ないし肥満になったことを示していた。しかし、栄養不足が消えたわけではない。農村部における低体重、
発育不全の児童の割合は依然、都市部の割合の3〜4倍だ。
これは、農村部には栄養不足と栄養過多が同時に存在していることを意味している。不足するよりは過多の方がいい。
しかし2010年には250億ドル、つまり健康予算の13%を糖尿病に対する支出が占めており、栄養過多はやはり、
中国にはできない贅沢なのだ。
The Economist JBプレス 2014.06.19(木)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40989
下水油にメラミン乳製品、釣らなくても捕れる川に浮いた魚と鉄砲無しで勝手に地べたに落ちた鳥、頭が2つあるお得な豚、中国人が『じょ・・・じょうじ』って言い出しても驚かんね