>>2の続き
・あくまで二股外交を
ただ、中国から「朝貢」という言葉まで使われ、上から目線で要求されるようになったことに韓国人はショックを受けたのです。
あまりに中国に近づき過ぎて、米中間での外交バランスを欠いたからだ、という反省が韓国の外交当局にも生まれたのでしょう、
記事は以下のように結ばれています。
今からでも中国、日本との関係を立て直し、長期的な均衡外交戦略を打ち出すべきだ。100年前に朝鮮半島が直面した状況は、
決して過去の歴史として忘れるべきではない。
関係を立て直すべき対象に「日本」を挙げていますが、それは文脈の都合であって「日米など海洋勢力」と考えればいいと思います。
「100年前の状況」とは、今日は日本、あすは中国、次はロシア――と目まぐるしく頼る国を替えたあげく、失敗した朝鮮王朝を指します。
--この記事は、中国から「属国に戻れ」と脅されたのに、米国側に完全に戻ろうと主張しているわけではないのですね。
鈴置:そこが重要な点です。中国に大きく傾き過ぎた二股外交を、微修正しようというに過ぎないのです。記事はあくまで「均衡外交戦略」つまり
「二股外交」を貫こうと主張しています。
・韓国には上から目線が効果的
--それにしても「朝貢」などと、韓国人にとって不快な言葉を持ち出したら反発されて、中国にとって逆効果ではないでしょうか。
鈴置:中韓の役人の会談に同席したわけではありませんから、中国側発言の意図は分かりません。しかし、敢えて「朝貢」
を使った可能性もあると思います。
なぜなら中国人は「韓国人に対しては強圧的な姿勢で臨んだ方が効果がある」と信じているからです。彼らはしばしば「米国人や
日本人は韓国人に優し過ぎる。叱り飛ばさないから、あんな小国に舐められるのだ」と言います。
実際、中国人は韓国人に対しては上から目線で接することが多い。それに対し韓国人も不快感を持ちながらも、従ってしまうのが普通です。
「朝貢」記事に寄せられた韓国人読者の書き込みを見ても、それがよく分かります。掲載翌日の5月16日までに96本の書き込みがありました
(それ以外に7本が管理者によって削除)。多くが「無礼だ」「断交だ!」といった、中国に対する反発の表明でした。
中には傲慢な中国に対抗しようと訴えた書き込みもありました。しかし米国との同盟強化で乗り切ろうと主張した読者はたったの3人だけでした。
一方、15人が防衛力強化を訴えました。これには核武装論を含みます。ただ、同盟を欠いた「自主国防」だけで中国に対抗できないことは、
韓国人自身が一番知っています。核武装に関しても、米国も中国も韓国に許す可能性は限りなくゼロに近い。
(更に続く)