県が外国人学校10校に交付している経常費補助を廃止し、
生徒の世帯収入に応じて授業料を支援する学費補助制度に切り替える方針を県議会に示した。
黒岩祐治知事は「一つの有力な案。議論していきたい」と述べ、慎重に成案に仕上げていく姿勢を示している。
実現すれば、ことし2月の北朝鮮の核実験を受け、
県が補助金を打ち切っている朝鮮学校5校の児童生徒も学費補助の対象となる。
どの外国人学校の児童生徒も差別的に扱わない最善の支援方法とは何か−。
2014年度予算編成に向けて前向きに議論を進めてほしい。
見直しは「国際情勢に関わらず外国人学校の子どもたちが教育を受ける機会を安定的に確保することが目的」
とし、支援対象を学校から子どもに転換するものだ。朝鮮学校の補助金打ち切りにみられるように、
学校が母国・民族との関係を想起されやすいことを理由に挙げている。
知事は「たまたま北朝鮮が問題となったが、情勢の変化によっては他の学校に影響が出る」と述べ、
制度自体見直しが必要との認識を示す。
本紙は、朝鮮学校の補助金を打ち切った知事の判断に関し、
教育の場に政治を持ち込んだことを問題視してきた。
新制度も学校支援が国際情勢で左右されるのを半ば容認している点で疑問点がないわけではない。
だが、何より大事なのは早急に打開策が求められる深刻な現実があるということだ。
補助金打ち切りが2年、3年と長期化すれば、朝鮮学校は授業料の引き上げを余儀なくされ、
授業料を払えずに通えなくなる児童生徒も出かねない。
北朝鮮の犯した罪を子どもに負わせ、そこまで追い込んでいいわけがない。
知事は「補助金を打ち切った後も生徒に罪はないという思いがずっとあった。
この理念を形にしたいと思い、できた案だ」と述べた。
自らの政策判断が招く事態を放置せず、一つの案をまとめた点は評価したい。
経常費補助がなくなれば、授業料引き上げで補おうとする学校もあるだろう。
高収入世帯は学費補助の対象とならず、負担が増えるかもしれない。
外国人学校には丁寧に理解を求める姿勢が欠かせない。
人種や民族、思想信条にかかわらず、子どもが学ぶ権利は保障されなければならない。
多文化共生社会を掲げる神奈川の名に恥じない学費補助制度に仕上げてほしい。
http://news.kanaloco.jp/editorial/article/1312280002/