日本の茶道 (一)
漢字文化圏に属する中国 (
>>828、
>>831-832)、韓国 (
>>615,
>>781)、ベトナム
(
>>810) の茶道 (茶芸) は基本的に同一系統のものである。ここでは茶の香りと
味を愛でる。特に中国の茶芸では香りを愛でるときの三次元的な所作が優雅である。
上海の天山茶城を始め、中国のお茶屋さんによく立ち寄る。すぐ見本のお茶を
入れてくれるが、好喝 (ハオフー) と言う前に、好香 (ハオシャン) と言うと店の
人は大層喜んで、うちとけた雰囲気になる。
同じ漢字文化圏に属しながら日本はアジア大陸とは地続きでなく、茶道は中国、韓国、
ベトナムとは隔絶して、ガラパゴス的特異な進化 (退化) を遂げた。茶の香りや味は
どうでもよく、屑茶をすりつぶして粉末とする。茶葉の生産地をごまかす巧みなやりかた
である。抽出液ばかりでなく茶葉の全部を胃袋に流し込もうと言ういじきたない
やり方に見えるが、これはかって茶の葉が貴重品であった安土桃山時代を想起させ、
伝統の重みを感じさせる大事な手順である。
日本の茶道 (二)
亭主は茶席を設け、掛け軸や茶道具を誇示する。招かれた客は歯の浮くようなお世辞を
言ってそれらを褒めたたえる。亭主は所属する流派に伝授された二次元的作法に従い、
抹茶をさも重々しく御茶碗に入れる。別途鉄釜でお湯をわかし、昔百姓が田畑で振り回した
肥柄杓のミニチュアでお湯をくんで茶碗に注ぐ。それを竹を裂いてつくった道具 (茶筅) で
撹拌して泡立て、列席の客に回し飲みさせる。客は飲んだら茶碗を袱紗(ふくさ)で拭く
真似をする。袱紗は洗ってないものほど好しとする。洗うと布が縮むんで模様がいびつに
なるのでそれを恥とする。かくて末席の客になるほど罰ゲームの悲哀は増す (
>>724,
>>728,
>>773,
>>826,
>>925)。客は亭主や同席の客の所作に間違いがないか目を
凝らす。見つけてもそしらぬ顔をして、退席後尾ひれをつけて吹聴し、無上の喜びとする。
茶の湯の師匠はその流派に伝わる流儀を出し惜しみしながら弟子に教える。弟子は疑問を
挟まずにそれを必死で真似る。師匠は弟子に免状をちらつかせて高価な茶道具や着物を
売りつけ、裏収入とする。宗家は側近の家元へ流派に伝わる作法を伝え、側近の家元は
下位の家元へ、さらに末端の弟子へと伝授し、この逆方向に上納金が流れる。国税庁の
踏み込めない聖域である。
由緒ある骨董の鉄製茶釜で沸かそうが、ステンレスのポットに入れた物であろうがお湯は
H2Oに変わりはない。どうしても水の味にこだわるなら、純石英製のポット (貧乏人は
パイレックスのポット) で沸かすべきだ。