【上海=土居倫之】鳥インフルエンザ「H7N9型」ウイルスの流行が中国景気の新たな減速リスクとして浮上してきた。
8日の中国株式市場では、鳥インフルの悪影響が懸念される航空会社や食品会社などの株価が大幅に値下がりし、
上海総合指数の下落率が一時2%を超えた。感染拡大で企業の生産活動にまで影響が広がれば、回復途上の中国景気に水を差しかねない。
市場全体の値動きを示す上海総合指数の終値は前営業日比0.62%安の2211と年初来安値を更新した。
2007年に付けた最高値から約3分の1の水準にとどまる。
8日に値下がりしたのは、鳥インフルの感染拡大が直接業績に打撃を与える航空や食品株など。
上海市に拠点を置く航空大手の中国東方航空や空港運営会社の上海国際空港の下落率は一時、5%を超えた。
市場関係者が意識するのは03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)だ。
世界保健機関(WHO)は香港や広東省への渡航延期を加盟国に勧告し、企業による中国への出張禁止や観光客の激減につながった。
食品関連では、アヒルを使う北京ダックの有名店、中国全聚徳集団の下落率が7%を超える場面があった。
食肉加工や飼料生産を手掛ける河北福成五豊食品は一時制限値幅の下限であるストップ安水準(10%安)まで下落する場面があった。
一方、医薬品関連は上昇が目立つ。抗ウイルス薬「タミフル」の中国国内での製造権を持つ上海医薬集団や
「中国衛生当局がまとめた治療法に自社薬品が認められた」と発表した石家荘以嶺薬業は株価が急騰。以嶺薬業はストップ高水準まで買われた。
【大連=森安健】大連商品取引所では8日、養鶏の飼料原料である大豆ミールとトウモロコシの先物価格が下落した。
取引開始と同時に大豆ミールの9月物が急落。一時、1トン3051元と年初来安値を更新した。
鳥インフルエンザで鶏の殺処分が進めば飼料需要が減退するとの見方が広がり、
インフルが発覚する直前の3月28日時点と比べると一時7.1%安くなった。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM08055_Y3A400C1FF2000/