「グーグルのモバイル基本ソフト(OS)『アンドロイド(Android)』は影響力が強すぎて、我が国のテクノロジー企業の技術開発を阻害している」
と中国当局が米グーグルを強く批判しているという。
英ロイター通信や米ウォールストリート・ジャーナルなどによると、グーグルを非難しているのは
中国工業情報省(Ministry of Industry Information Technology)の研究機関、電信研究院(Academy of Telecommunication Research)。
ネットにも公開された報告書の中で電信研究院は、「中国におけるモバイルOSの研究開発はあまりにもアンドロイドに依存している」とし、
グーグルがこのOSをコントロールしていることから、一部の中国企業は不公平な立場に置かれているとしている。
さらに「アンドロイドは誰でも自由に利用できるオープンソースのソフトウエアでありながら、中核技術はグーグルに厳しく管理されている」
「グーグルは独自のOSを開発する中国企業にアンドロイドの最新技術の提供を遅らせるなどして、差別的行為を行っている」などと付け加えている。
報告書によると、2010年に12.6%だった中国スマートフォン市場におけるアンドロイドのシェアは2011年に58.6%と半数を超え、昨年は86.4%にまで達した。
アンドロイドはアイフォーンの8.6%、ウィンドウズフォンの1.2%を大きく引き離しており、同国市場を支配しているOSと言えそうだ。
世界市場では、韓国サムスン電子のアンドロイド端末が大きなシェアを持つ。
だが多くの中国メーカーも同様にアンドロイドを採用し、グーグルへの依存度を高めている。
中国当局がこの状況を危惧していることから、今後グーグルとの緊張が高まりそうだとメディアは報じている。
グーグルは3年前にも中国と衝突している。同社は中国からのサイバー攻撃や、当局から強要されているネット検索の検閲が耐えられないとして、
同国本土で提供していたサービスを停止。サーバーを中国本土とは法制度が異なる特別行政区の香港に移し、香港経由で本土向けサービスを始めた。
しかしそれ以来グーグルのサービスは時折、中国本土からアクセスできなくなった。
こうしたことから当時30%あったグーグルの検索サービスシェアは、昨年末に15%にまで低下した。
ロイターによると、今回の報告書はグーグルに対する何らかの方針や規制措置の必要性について言及していない。
だが、アンドロイドに規制がかかる日が近いことを示唆している可能性があるという。
その根拠の1つと伝えられているのが昨年の出来事だ。昨年9月、
中国のアリババ(阿里巴巴)グループが開発したモバイルOS「Aliyun(阿里雲)」を搭載するスマートフォンを台湾のエイサーが中国で発売する予定だったが、
製品の発売を前に突如計画が中止された。
アリババ・グループはその理由について、「エイサーに対しグーグルが圧力をかけたため」と説明した。
後になって分かったグーグルの主張は、
「アリババ・グループのOSはアンドロイドをベースに作られ、改変された派生OS。そのせいでアンドロイドと互換性がなくなった」というものだった。
グーグルはエイサーなど、アンドロイド端末を開発するメーカーに対し、派生OSを使わないよう義務づけている。
グーグルの収益源であるオンラインサービスやアプリが動かなくなるという事態を避けるためだ。
一方、アリババ・グループは「そもそも我が社のOSは独自開発したもの。アンドロイドとは互換性がないのは当然で、その必要もない」
と、グーグルと正反対の主張をしている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37305 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37305?page=2