1990年代から中国経済が大きく発展してきた中、世界的金融危機により、日米両国の経済は相対的に落ち込んでいる。
こういう状況下で、「日米の企業は科学技術分野の競争力を失いつつ、中国に超されてしまうではないか」と憂慮する見方が浮上した。
一方、米国の有名シンクタンクの最新報告書はこの懸念を一掃した。科学技術と企業の実力に関して、両国は依然として中国よりずっと優勢であるとして、
「日米は中国を恐れる必要はまったくない」との見方を示した。米国の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が伝えた。
この見方を示した米戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies,CSIS)は中国の有名大手企業五社、
華為技術、尚徳太陽、聯想集団、上汽集団、中国南車集団の競争力を個別に分析した上、中国国際競争力に関する報告書をまとめた。
報告書の作成者の一人、同シンクタンクのプロジェクト副主任ナサンニアル・アロンス氏は、「日米のこのような心配はまったく根拠がない」と述べた。
同氏はこれらの中国大手企業の実力をそれぞれ分析した。
「中国の最も競争力と改革理念を持つ企業」と評価されている世界第1位の通信機器メーカー「華為技術有限公司(ファーウェイ・テクノロジーズ Huawei Technologies Co)」について、
その未来の競争力を決める要因は、技術開発力ではなく、国際社会が毛嫌いする中国軍部との不透明な裏関係だと指摘、
「これ以上の海外事業展開は難しいであろう」と冷ややかにみている。
現実はまさにその通りだ。華為技術などの中国通信機器メーカーは安全保障上の懸念から米への参入を排除され、却下された経緯がある。
また、世界最大手の太陽光電池・太陽光発電システム製造メーカー「無錫尚コ太陽能電力有限公司(サンテックパワーsuntech power)」について、
その分析を担当したアロンス氏は、「同社の成功のカギは地元政府による強力な財的援助だった。だが、いまは巨額な負債を抱えており経営危機に陥っている」と説明した。
欧米諸国が中国政府による補助金とダンピングなどの理由で、中国の同業メーカーを排除していることをも挙げ、
「尚コ太陽の今後の発展は非常に困難になるだろう」との見通しを示した。
世界第2のPCメーカー「聯想集団(レノボ、Lenovo)」への評価はやや高い。
「その成功は重大な技術革新によるものではなく、適正な技術に合う市場を見つけたからだ。その一番の特徴は、顧客の要望に沿った個別サービスを提供すること」。
「これは日米の企業が学ぶべきことだ」
中国自動車最大手の「上汽集団」への評価は厳しかった。ドイツのフォルクス・ワーゲン、米国のゼネラル・モーターズなどの世界大手自動車メーカーと提携して、
多数の合弁会社を設立した同社だが、「最初の目的は外国の技術を得るためだったが、25年、いや、30年経ったいまでも、自社技術を有するどころか、ほとんど技術を持っていない」
同社の技術開発への投資は同氏のこの見解を裏付けている。2011年では、その投資額は年間売上高のわずか0.1%にとどまっている。
それと対照的に、日本のホンダや、米国のフォードは年間売上高の10%を技術開発に投じている。
CSISのこの最新報告書は、上記の中国企業五社の成功は、当局の産業政策による賜物だと指摘した。
1980年代から、中国当局は経済の国際競争力を強化するため、多くの産業政策を制定し、積極的に実行してきた。すなわち、国家資本主義を築いてきた。
CSISの中国研究部の元主任、米ペプシコのチャールズ・フリーマン副会長はその問題点を指摘した。
「中国の国家資本主義は確かに一部の産業の発展を促進した。しかし、その弊害も見えてきた。政府主導は追いつく段階では有効かもしれないだが、
その過程を過ぎると、役に立たなくなる。市場という『見えない手』が決定作用を果たすからだ。これは私たちが垣間見えた中国国家資本主義の限界である」
CSISのもう一人の専門家ジェームズ.ルイス氏はさらに厳しい見方を示した。「中国の企業改革の障害は、政治体制そのものだ」、
「政府が特定の業界に投資して発展させようとしても、その製品には市場がない。通常なら、市場がない生産を行うはずがない。これは中国の産業活動の一大問題だ」。
同氏は中国の国家主導型の産業発展は、誤った資源配分と生産能力の過剰などの問題を引き起こしたと述べた。
ペプシコのフリーマン副会長の言葉はもっと辛口だった。「中国は国際競争力のあるグローバル企業を育成したいならば、市場主導という経済理論に従うしかない」
http://www.epochtimes.jp/jp/2013/02/html/d33226.html