【タイ】旧日本兵とのつながり守る タイ北部に「友好記念館」 歴史を学ぶ観光地に[12/16]

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 タイ北部の西端にあるメホンソン県に「タイ日友好記念館」が完成、今月にも開館式典が行われる。
一見、日本とは何の関係もなさそうな辺境の地だが、ここは太平洋戦争中に旧日本軍が進駐し、
ビルマ(現ミャンマー)戦線への中継地となった。地元の人たちは半世紀以上も前のそんなつながりを大切に守り継いでいる。 (バンコク進藤卓也)


戦時中の日本兵と地元住民との暮らしぶりを再現した模型(写真は同館提供)

タイのメホンソン県に新しく完成した「タイ日友好記念館」(写真は同館提供)
 記念館は、以前あった戦争博物館が老朽化し手狭になったため新築したもので、「歴史を学ぶ観光地として整備したい」との地元の要望を受け、
タイ政府が2千万バーツ(約5400万円)を出資した。

 展示室は大きく四つ。この地域に住むカレン族やモン族など少数民族を取り上げた部屋と、
昔使われていたてんびんはかりや竹かご、楽器、一年の祭事といった地域の文化・風習を紹介する部屋がある。

 残りの2部屋は戦争にゆかりのある資料の展示室。旧日本軍が進駐したルートの地図をはじめ、
寺の境内に構えた司令部や病院の写真や、日本兵が地元の子どもたちと遊んだり農作業を手伝ったりする写真、
戦時中の暮らしぶりを再現した模型などを掲示。また、銃剣や鉄かぶと、軍用コート、飯ごう、お守りなど、
兵隊たちが残していった品々も展示している。

 メホンソンは進撃地であると同時に、ビルマ戦線で敗退した日本兵が命からがらたどり着いた地としても知られる。
傷ついた兵たちを地元の人たちは親身になって看病、介護した。

また、今年8月に86歳で亡くなったこの地区に住むゲーオさんと日本兵との悲恋は、小説や映画を通じてタイ人の誰もが知る恋物語になっている。

 これらの経緯もあって旧日本兵やゆかりの人たちが少しでもメホンソン地域の人たちに恩返しをしたいと、
今でも個人で資金を出したり財団を作ったりして奨学金制度を設け、子どもたちの就学を支援する活動が続くなど、
深くて友好的なつながりを保っている。

 記念館のガイドを務めるジャンジラーさん(24)は、「この地に来た日本の兵隊たちは、地元の人ととても良い関係をつくっていたことが分かります。
戦争は人がたくさん亡くなる悲しいことだけど、そんな中でも人と人との心の通い合いがあったことを、この記念館で触れてもらいたい」と話している。

= 西日本新聞朝刊=2012年12月16日
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/339174