◆アングル:北朝鮮労働者が中国で描く夢、サッカーシューズで世界進出
「いつかメッシにも履いてもらえたら」──。
北朝鮮と国境を接する中国・丹東市内の小さな工場では、
北朝鮮の労働者らが世界進出を夢見ながらサッカーシューズの製造に励んでいる。
韓国資本も入るこの工場では、北朝鮮からの労働者20人が手作りでシューズを製造し、
フル稼働が始まった7月以来、約1万足を販売。
うち半数は韓国で販売され、1足の値段は100ドル(約8000円)ほどだ。
「機械でも作れるが、手作りシューズは個人の好みにマッチするし、はき心地に優れる」。
ベテラン職人のChung Nam-chulさんは「自分たちも作ったシューズでプレーし、
いいものを選んでいる」と自信の表情を浮かべた。
平壌から派遣されたChungさんら労働者の一部は、朝鮮人民軍に所属する強豪サッカークラブ
「4.25体育団」のメンバーでもある。
工場内には「我々の技術。最高品質のサッカーシューズ」とのスローガンが掲げられ、
仕事ぶりは故金日成主席のバッジを身に着けたマネジャーらが監視。
ロイターの取材にも監督者が同行した。
核開発計画で厳しい制裁を科せられている北朝鮮。
外貨を獲得するため外国で働く北朝鮮労働者は現在6万─7万人いるとされ、
丹東の工場労働者はその氷山の一角だ。
<恵まれた暮らし>
国連の推計で子どもの3分の1が栄養失調とされる北朝鮮だが、
同国での一般市民の生活に比べ、丹東の労働者の暮らしぶりは裕福に映る。
韓国当局者によると、丹東の労働者の月給は200ドルだという。
2階建ての工場は、寮や食堂、娯楽室を完備。
専属シェフもおり、終業後の宴会には豚の三枚肉を使った料理が提供されることもあり、
そこでは韓国との統一がテーマの歌も歌われる。
1日8時間、週に5日働くという女性労働者のKwon Ok-kyungさんは、
日々の生活について「母国のテレビ番組も見れるし、金正恩元帥をたたえる歌も歌う」と説明。
労働者は1カ月に1度、国境の川を渡って北朝鮮にいる家族と面会し、
土産品を届けることも許されている。
ただ、海外で働くことをどう思うかKwonさんに質問すると、監督者から制止が入った。
脱北者の話では、こうして海外で働く労働者の家族は、彼らの帰国を保証する役割を
担っているという。
シューズ工場は元々、北朝鮮政府が提供した平壌の土地にあった。
しかし、2010年の韓国哨戒艦沈没事件をきっかけに丹東に移設。
その際、韓国の仁川市から41万5000ドルの投資を受けた。
仁川のサッカーチームの選手は、この工場が生産するシューズを使用している。
この小さなシューズ工場が、低迷する北朝鮮経済に大きなインパクトを与えることは
できないかもしれない。ただ、だからといって労働者が描く夢は小さくない。
「もし、メッシがここに来て我々のシューズを履いてくれたら最高だ」。
マネジャーの1人、Oh Sung-dongさんは期待を膨らます。
また、北朝鮮の対韓国経済協力窓口である民族経済協力連合会のJoo Chul-soo氏は
「数千人の労働者が平壌でサッカーシューズを製造すれば、
世界を席巻する日がくるかもしれない」と大きな夢を口にした。
写真:
http://jp.reuters.com/news/pictures/articleslideshow?articleId=JPTYE89T07020121030&channelName=topNews#a=1 ロイター 2012年10月30日18:00
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89T07020121030?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89T07020121030?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0