日本政府:インドネシアに鉱石禁輸の撤回求める、WTO活用も視野に
6月12日(ブルームバーグ)
インドネシアが2014年以降に未加工の鉱石輸出の禁止を予定している問題で、
日本政府はインドネシア政府に撤回を求めていく考えだ。
産業育成に協力する方針を伝えるなど互いにメリットのある解決を目指すが、
一方的に禁輸を実施した場合には世界貿易機関(WTO)への提訴も検討する。
経済産業省の上田隆之・製造産業局長が11日、
ブルームバーグ・ニュースのインタビューで明らかにした。
上田局長は「一方的な輸出禁止は輸入国である日本の製錬産業の根幹に関わる。
輸出税についても輸出国の自由で行うようであれば日本からの投資にも影響がある。
日本政府としてはインドネシア政府に対していずれの措置も受け入れることは難しく、
引き続き撤回を求めていく」と述べた。
インドネシアは09年に施行した新鉱業法で14年から鉱石の輸出を禁止すると定めている。
今年2月には大臣令を発動し、
輸出禁止を5月からへと前倒しするとしたが税を課すことで輸出を認めるとした。
直前で禁輸の前倒しは回避されたものの、
14年以降は現地での製錬・加工が義務付けられている。
上田局長は「一方的に禁輸措置を取るのであればWTOの活用も含めて検討する」とした上で
「インドネシアの産業育成について必要な協力は行いたい。
話し合いにより双方がウィン・ウィンとなる関係を志向したい」と語った。
例えば、製錬関連での日本企業の投資を支援するなどして、
原料調達を継続できる解決策を見出したい考えだ。
上田局長は先月9日に都内でインドネシア経済調整庁のリザール・ルクマン次官と会談。
鉱物資源の輸出に関して定期的に協議することで合意し、
日本側のこうした方針を伝えて禁輸撤回を求めていくという。
インドネシアの鉱石禁輸で日本にとって影響が懸念されるのがニッケル鉱石。
ステンレス製造に欠かせないフェロニッケルの原料となり、
全体輸入量の約5割をインドネシアに依存しているためだ。
供給が途絶すれば製錬業界、
ステンレス業界など関連業界への影響が懸念される。
ニッケル取り扱いで商社最大手の三井物産・新金属部ステンレス原料室の中村俊男室長は
「インドネシアの資源国としての位置付けは高くすぐに代わるような国はない」と指摘。
「新鉱業法に対して現状と同じ形でどのように原料を確保していけるのか検討していく」と言う。
国際ニッケル研究会によると、10年のインドネシアのニッケル鉱石の生産量は世界全体の15%を占め、
ロシアに次ぎ世界2位。
そのため「インドネシアがだめだからといってすぐに右から左へというわけにはいかない」と
日本鉱業協会の山田政雄会長(DOWAホールディングス社長)も代替調達先の確保は容易ではないとの見方を示す。
経済成長を遂げる過程で新興国では自国の抱える資源を生かして製造業など国内産業を育てる狙いから
輸出規制や輸出税を課すといった資源ナショナリズムの動きが世界的に広がっている。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの清水孝太郎・主任研究員は
「単に鉱石を輸出するよりも付加価値の高い製造業まで自国で波及させようとする動きは
インドネシアに限らず大きな流れ。政府間の交渉によって日本から技術力や人材育成などを提供することで
安定的に資源調達ができるような関係を築くことが重要」と指摘する。
ソース
日本政府:インドネシアに鉱石禁輸の撤回求める、
WTO活用も視野に - Bloomberg
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5G1YI1A1I4H01.html