グーグルは今週、同社が香港で運営する検索サイト上である新機能を発表した。この機能は中国当局による検索
サービス中断を引き起こす可能性のある、政治などに関連する慎重な扱いが必要なキーワードを認識するものだ。
例えば、中国のユーザーが中国語で「にんじん」(中国の胡錦濤国家主席の名字「胡」と同じ文字が含まれる)を
検索すると、黄色のドロップダウンで「中国本土で『胡』の検索を行うと、グーグルへの接続が一時的に切断される
可能性があることがわかっています。この切断にグーグルは関与していません」というメッセージが表示される。
グーグルはブログ上で先月31日、中国のユーザーが同社のサービスに接続しにくい状態にあることを認め、検索の
失敗が同社のサイトの一時的停止を招いている可能性があると述べた。グーグルはこのコメントの中で検閲に言及
しておらず、中国当局が原因であるとも明言していない。
グーグルは「ユーザーは『このページは利用できません』や『接続がリセットされました』などのエラーメッセージを繰り返し
受け取っている」と述べた。
グーグルはユーザーに警告メッセージを送ることで「中国本土での検索事情が改善される」ことを願っているとしている。
グーグルはおよそ2年前に検閲を巡って中国当局と対立。それ以来、中国本土では検索を含めたグーグルのサービスが
不安定になっていた。グーグルの広報担当者はさらにコメントすることは差し控えた。
http://jp.wsj.com/var/plain_site/storage/images/media/cgoogle13/10633939-1-eng-US/CGOOGLE_image_Col3wide.jpg 画像: 胡錦濤国家主席の名字「胡」と同じ文字が含まれる「にんじん」を検索すると、「中国本土で『胡』の検索を行うと、
グーグルへの接続が一時的に切断される可能性があることがわかっています。この切断にグーグルは関与していません」
というメッセージが表示される。
中国当局者はインターネット規制について明らかにしておらず、政府が規制している検索ワードは国家機密とされている。
グーグルはコメントの中で、警告を表示するキーワードは中国で最もよく使われる35万の検索ワードを検討した結果、確認
されたものであり、公式リストに基づくものではないと述べた。
中国外務省の劉為民報道官は今月1日の記者会見で、「中国には5億人以上のインターネットユーザーがおり、多くの
情報にアクセスしている。他国と同じように、中国も法律に従って、インターネットを管理している」と述べた。
インターネットに詳しい専門家によると、中国が規制している検索ワードには政府の指導者の名前や盲目の人権活動家、
陳光誠氏などの著名な反体制活動家の名前、さらに1989年の天安門事件に関係する言葉が含まれているという。
インターネット業界の専門家によると、中国はいくつかの方法でインターネットの検閲を行っている。海外のサイトにはフィルタ
リング技術を利用して、好ましくないキーワードを含むウェブページへの接続を制限する。また、フェイスブックやユーチューブ、
ツイッターのようにサイト全体への接続が遮断されることもある。
中国国内のサイトについては、サイトの運営者が政府の要請に従わない場合、当局が権力を行使してサイトを閉鎖する。
中国の検索サービス「百度(バイドゥ)」や新浪が運営するポータル(玄関)サイトなどのサイトは規則や規制によって検索結果が
表示されないときにはユーザーにその旨を通知している。しかし、どの検索ワードが検閲を受けたかは明らかにしていない。
グーグルの今回の動きは2010年初め以降、同社が中国のインターネット規制に関連した対抗措置の中で最も重要な措置
といえる。グーグルは2010年初め、中国の検閲政策に従わないことを表明し、同社の中国向け検索サービス「Google.cn」および
中国支社を閉鎖する可能性を明らかにした。最終的にグーグルは中国支社を維持したが、検索などのサービスは中国本土の
規則に従う必要のない香港に移した。
(
>>2以降につづく)
THE WALL STREET JOURNAL: 2012年 6月 2日 14:23
http://jp.wsj.com/IT/node_453407?mod=WSJFeatures (
>>1からつづき)
しかし、中国本土のユーザーに対して、グーグルの検索サイトや同社の電子メールサービス「Gmail(ジーメール)」などのその他の
サービスは政府のフィルタリングシステムによって頻繁に中断されている。
その結果、グーグルは中国での市場シェアを失い続けている。中国の調査会社「易観国際(Analysys International)の推計に
よると、中国での検索による収益でみると、今年第1四半期のグーグルのシェアは17%となり、2009年第4四半期の36%から縮小
している。グーグル幹部はこれまで、収益は依然として伸びていると説明してきた。これに対して、第1四半期の百度のシェアは
79%だった。
それにもかかわらず、グーグルは中国国内での事業の拡大を継続、検閲を受けていない同社の携帯電話向けの基本ソフト(OS)
「アンドロイド」関連のサービスを含め、電子商取引などの製品を担当するエンジニアや営業担当者の雇用を進めている。
アナリストによると、今回の措置でグーグルのこれまでの努力が台無しになる可能性がある。
中国のメディアやインターネットを調査するDanwei.comのディレクター、ジェレミー・ゴールドコーン氏は「(グーグルの措置は)中国の
インターネット当局が敵対的と受け取ってもおかしくない」と述べた。
31日の段階で、中国の多くのインターネットユーザーはグーグルの措置に困惑しているようだ。
中国版ツイッターとも言われるミニブログサービス「新浪微博」上では、Chester_Hahnと名乗るあるユーザーは「グーグルも要注意の
キーワードを『調和』させ始めたのか」と投稿した。中国では、「調和」は検閲をやゆするときに使われることが多い。
冷やかしの声も聞こえる。Xi Gangを名乗るユーザーは「グーグルよ、また誰かのミニスカートをめくろうとしているな!悪いやつだ」と
書き込んだ。Jiu Xianと名乗るユーザーは「あわれなニンジンよ。おまえは微妙な問題とは何の関係もないのに攻撃される。名字が
われわれの愛すべき国家主席と同じ「胡」だなんて、なんて不運なんだ」
(以上)