<中国証券報>早春3月、江蘇省常熟市は、桃の花が咲き乱れ、植物の種を運ぶ白い綿毛が風
に吹かれる季節を迎える。しかし、楊憶(仮名)氏には、そのような美しい風情を楽しむゆとりは全く
ない。今月3日に「夜逃げ」した「美人社長」の行方を突き止めなければならないのだ。楊氏はその
女社長に1億元ほど貸している。28日、楊氏はその女社長が警察に逮捕されたことを知り、とりあ
えず胸をなでおろした。
常熟では、楊氏以外に20人以上が「美人社長」に金を貸していた。女社長が民間ローンで借りた
金は4億元を上回り、現地の銀行大手や中小金貸業者から借りた1億元あまりを加えると、債務額
は累計約6億元に上った。
◆盛んに行われた民間高利貸し
逮捕された「美人社長」は、蘇州凱維隆貿易有限公司の顧春芳社長。今年40歳で、すらりとした
体つきをしている。彼女に金を貸した債権者の多くは、「ブランド品で全身を固め、上品で気高く、
気前が良い」という印象を持っている。借金返済の目途が立たず夜逃げした顧社長は、27日夜
に上海で逮捕され、経済犯罪容疑で拘留された。
常熟市公安局の夏建剛副局長は29日、「顧社長は2003年以降、石炭関係の仕事で資金繰りが難
しくなり、現金が急ぎ必要となったため、年利25%から30%という高利で借金し始めた」と話した。
昨年末から今年初めにかけて、債権者の一部が返済の滞留問題に気づき、2月以降、顧社長に
しつこく借金を迫り、中には借金取り立て屋を雇う債権者もいた。
数人の債権者によると、顧社長は、以前は不動産プロジェクトに投資していたが、ここ数年は
石炭関連の商売をしていると自ら吹聴していたという。地元の発電所や北京の石炭国有企業と
取引があることから、25%から30%の利息を承諾の上、多くの債権者から金を借りていた。顧
社長は自分も含め少数の友人から借金していただけだと思い込んでいた債権者達は、政府の
発表したデータを見て、彼女の債務額が数億元に達している事実をようやく知ることとなった。
常熟警察は、顧春芳の行為が非法吸収公衆存款罪(無認可で資金を集める違法行為)にあたる
として、取り調べを進めている。また、常熟で起こった別の巨額民間貸借による「夜逃げ」事件も、
当事者の鯉魚門大酒楼・周思揚社長に対する捜査が進行中だ。
地元関係者によると、常熟では民間高利貸が盛んに行われている。鯉魚門大酒楼・周社長が
今年2月に「夜逃げ」し、昨年11月には常熟常盛農村小額貸款公司の顧冠華社長が飛び降り
自殺をするなど、民間貸借市場の行き詰まりが露呈し始めた。常熟に隣接している江陰市では、
昨年12月28日、某銀行の支店長が金を持ち逃げするという事件が起こった。無錫警察によると、
支店長が持ち逃げした金額は1億2600万元、民間高利貸から調達していた資金繰りが破綻した
ことが原因という。
◆ハイリターンに魅せられ湧き起こった「投資ブーム」
江陰と常熟はいずれも、「中国百強県」の上位にランクインしている。民間経済が非常に発達
した地域だが、原材料や労働力のコスト上昇や金融引き締め策などにより、労働集約型企業の
利潤率は年々低下している。ここ数年、民間融資・投資に携わる小額貸付業者は軒並み、実体
経済よりも儲けが多い状況が続いた。江陰・常熟地域における民間ローンの年利は、30%から
40%が普通で、多くの人は「金が金を生む」誘惑に逆らえず、次から次へと借金の世界に自ら
身を投じた。
それ以前の数年間、担保業者、少額貸付業者、質屋などの資金面でのハードルが比較的低か
ったことから、銀行幹部の中には、退職後、このような類の会社を設立する人が続いた。さらに、
「就業禁止」という制約を受けない元銀行幹部は、銀行時代に把握していた顧客関連情報や銀行
内部関係者から得た情報をもとに、資金集めや高利貸しで儲けている実態が明らかになった。
この状況から、銀行業管理の欠陥の一コマが垣間見られる。
>>2へ続きます
サーチナ 2012/03/30
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0330&f=business_0330_088.shtml