∞こう着状態の地方参政権運動(上)
∞新たな戦略の立て直しが必要
民団が1994年に最優先課題に掲げて取り組んでから18年の歳月が過ぎようとしている地方参政
権獲得運動。日本の政局が混乱する中で獲得運動は停滞状態にある。昨年からは在外選挙への
参加と並行する重要運動として推進されているが、運動の力点は在外選挙運動にシフトし、地方参
政権は影を潜めている状態だ。2月23日には民団中央大会が開かれ、新しい執行部体制がスター
トするが、地方参政権運動を今後どのように進めていくのか、民団にとって戦略の立て直しが求め
られている。
■転換点を迎える民団の地方参政権獲得運動
民団の地方参政権獲得運動は、1987年に「在日韓国人の権益に関する全国統一要望」(第6次)
活動の中で、日本社会の「住民」として地方自治体選挙への参加要求から始まった。1994年4月、
民団は名称・綱領・規約から「居留」を削除して在日韓国人として日本で定住することを宣言すると
同時に、「地方参政権」を権益擁護運動の総括として推進する。ここを起点にすれば、地方参政権
運動は18年間を経過した現時点で、昨年の野田首相の「参政権付与には慎重である」との国会答弁
で事実上、暗礁に乗り上げてしまっている状態にある。
現場で活動する団員らは消耗しているかのようだ。東日本大震災という未曽有の災害で民団の活
動が復興に集中してしまったにせよ、参政権の方では現時点で中間総括がしっかりと行われている
のかという指摘が出ている。
呂健二・民団中央本部地方参政権獲得運動本部本部長代行(本部長=鄭進中央本部団長)は「こ
れまで全国団長会議などで中間の総括はしている。全国から集まってくれた委員の方々の真摯な質
問や提案を、その都度文書にまとめて執行部にも報告している」と説明する。
しかし中央の指導層と現場では乖離があるようだ。地方参政権推進委員会に出席した団員は「ゼロ
からのスタートに戻った感じだ。私の地域でも地方参政権運動よりは、今年から始まる在外選挙に
力点がシフトしているようだ」と話す。事実、去年の団長団会議では、参政権運動の扱いに比べて、
明らかに在外選挙登録への取り組みに力点が置かれていた。本年1月1日付の「民団新聞」1面で
の中央団長新年辞では、一言も地方参政権に関して触れられてはいない。
この18年間、民団は参政権獲得に向けかつてないほどの労力・エネルギーを傾注してきた。地方
議会での意見書採択への取り組みや数々のシンポジウムの開催、そして各政党への請願活動と
多岐にわたり、法案審議の俎上に乗せる段階にまで至った。
しかし2001年の小泉政権の発足により運動は厳しい局面を迎えてゆく。国粋的な保守派議員
たちにより、法案審議は事実上、先送りに。加えて北韓による日本人拉致問題や核・ミサイル問題
の浮上、領土問題や歴史認識で日本世論も右傾化し、一部マスコミやネット上でのネガティブキャ
ンペーンが始まり、地方参政権運動はこう着状態に陥ることになる。
それらの動きに対して、民団は大規模集会やシンポジウムなどを開きつつ、特に国会議員への
ロビー活動に力量をより注いだ。2009年9月の衆議院選挙ではかつてないほどに選挙に携わり、
結果、民主党が衆院選に勝利し、永住外国人の地方参政権に賛同する鳩山政権が発足した。
地方参政権獲得実現目前の段階まで来たと思われたが、その後、民主党政権の迷走、そして東
日本大震災があり、与党民主党内の少なからぬ一部議員や自民党を始めとする反対派の動きも
あって、先の野田首相の答弁となってゆく。
法案成立を成し得なかった失望感もさることながら、日本の政局に翻弄され続けた団員たちの消
耗は大きい。これらの現場の状況や声にどれだけ中央の指導層が応えているかが問われている。
>>2以降に続く
ソース:統一日報 2012年02月01日 00:00
http://news.onekoreanews.net/detail.php?number=67150&thread=04 画像:2007年11月7日、東京・日比谷野外音楽堂で開かれた「永住外国人に地方参政権を!11・7全国決起大会」。
全国から5000人の団員らが集まった。
http://news.onekoreanews.net/wys2/file_attach/2012/02/01/1328102640-69.jpg 画像:昨年11月鳥取市内で開催された地方参政権シンポジウム
http://news.onekoreanews.net/wys2/file_attach/2012/02/01/1328102681-40.jpg