∞「哀しき獣」のナ・ホンジン監督「朝鮮族の姿に胸が痛み、映画化しようと思いました」
デビュー作「チェイサー」が日本でも大きな反響を呼んだナ・ホンジン監督が、待望の新作「哀しき
獣 THE YELLOW SEA」と共に来日した。
物語の発端の舞台は、中国国内の朝鮮族自治州。タクシー運転手を営むグナムは、顔役のミョン
からギャンブルで生じた借金帳消しのため、ある韓国人の殺害を頼まれる。出稼ぎに行ったまま音信
不通となった妻の後を追うように韓国に向かったグナムは、無事ターゲットを発見して接近するが、殺
害直前に発生した予想外の展開から想像を絶する闇の世界に引きずり込まれる。主演の2人は、グナ
ムにハ・ジョンウ、ミョンにキム・ユンソク。前作「チェイサー」と同じ顔合わせだ。
本作を撮ろうと思ったきっかけは、「チェイサー」の取材時に警察関係者から聞いた話。「朝鮮族の
人が関わった暴力事件が頻発したり、殺し屋として雇われる例などをよく聞きました。いったい朝鮮
族とはどういう人達なんだろうと気になり、彼らが住んでいる中国にも行きましたが、大人たちは金
儲けのために皆韓国に行き、残っているのは老人と子供ばかり。家族や社会が破綻した光景に胸
が痛くなり、ぜひこれを描こうと考えました」と、監督は語る。
ハ・ジョンウとキム・ユンソクの再起用については、「もちろん他にも一緒にやってみたい俳優さん
はいますが、この作品に限ってはハ・ジョンウさんとキム・ユンソクさんが最適だと思いました。粗筋
がある程度固まった段階で2人に電話をして、“あて書きをしても良いですか?”と聞いたら快諾して
くれました」と、嬉しそうな回答が。
韓国映画ファンはおなじみとはいえ、140分に及ぶ本作でも全編で血みどろのアクションシーンが
続くが、「前作の『チェイサー』で流れる血と今回の『悲しき獣』で流れる血は、同じ血でも違います。
『チェイサー』の血には無念の思いが込められていますが、『哀しき獣』の血は不吉な血です。物語
の元を正せば請負殺人があるので、当然暴力シーンは必要だと思いました」と、その必然性を説明。
韓国でも様々な見解が混在する事件の真相については、「この映画の物語は複雑ですが、見た人
がこういう複雑な過程の末、こんな結果になったんだなと思ってくれればそれで良いと考えていまし
た。実は、自分自身も時々こんがらがってしまうことがあるのですが(笑)」と、込められた意図を説明
する。
そんなナ・ホンジン監督の才能に注目したのがハリウッド。韓国映画として初めてハリウッドメジャー
(フォックスインターナショナル)の出資を受けたが、「『チェイサー』をとても気に入っていただいたの
で、今回はシノプシスを見ただけで出資が決まりました。最初は、リメイクする際にも監督を行うとい
う項目が契約書に入っていましたが、あまりにも辛くて大変な撮影だったので、もう1回やるのは無理
だと思ってお断りしました」というぜいたくな裏話も。
2012年の年明け早々に公開される日本では、原題の「黄海」が日本らしい情緒的な邦題になったが、
「最初に聞いた時には全く意味がわからず、日本の皆さんに聞いても『説明するのは難しい』とおっ
しゃるだけでしたが、『哀しき獣』の“き”のあたりや、あえて“哀”という字を使ったあたりが普通のタイト
ルとは違うと教えていただきました。今でもわからない部分がありますが、作品の内容を反映している
タイトルだと思います」と、率直にコメント。「日本の予告編やポスター、プログラムなどは映画の本質
を伝える素晴らしい出来栄えで、観客に対して親切ですし、とても感謝しています」と、日本公開への
期待を込めて嬉しそうに語った。(取材・文・写真:平井景)
「哀しき獣 THE YELLOW SEA」は、1月7日より新宿シネマート他全国ロードショー
ソース:ハリウッドチャンネル 2012/01/04
http://www.hollywood-ch.com/news/12010701.html?cut_page=1 画像:映画「哀しき獣 THE YELLOW SEA」のナ・ホンジン監督
http://www.hollywood-ch.com/images/upfile/news/u/185936.jpg 参考画像:映画『哀しき獣』ポスター・チラシ
http://s.cinematoday.jp/res/T0/01/10/T0011032p.jpg http://s.cinematoday.jp/res/T0/01/10/T0011032q1.jpg 参考動画:映画『哀しき獣』予告編
http://www.youtube.com/watch?v=R3oRqtFDjdI&feature=player_embedded