【中・越】「アメリカとフランスは許せるが、中国だけは許さない」…中国を憎むこと千年以上!ベトナムの「怨念」[11/21]

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1もろこしφφ ★
(※抜粋です。全文はソース元でどうぞ)

■1000年の中国統治と5人の英雄

 国境に出かける前日、ハノイ市内の軍事博物館と歴史博物館を見学した。1000年以上にわたる中国支配をこれら博物館が
いかに説明しているかに興味があったからだ。

写真=ゴクエンの胸像
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 軍事博物館展示室の入り口正面にあったのは、何と939年に中国・南漢軍を撃退した英雄Ngo Quyen(ゴ・クエン、呉権)の
胸像だった。南漢と言えば、10世紀、唐滅亡後の五代十国時代に広東省・広西チワン族自治区・ベトナム北部を支配した地方
政権だ。ゴ・クエンは紀元前111年に現在のベトナムが漢朝に併合されて以来、1000年以上続いた中国の支配を終わらせた
ベトナム民族の大英雄である。当時中国側は大水軍をハノイに派遣した。中でも有名なのがBach Dang River(バクダン川、
白藤江)の戦いだ。ゴ・クエンは中国水軍との戦いに備え、潮の干満の影響を強く受けるバクダン川河口の川底に先端を鉄で
覆った数千本の木製杭を打ち込んだという。

写真=川の中に打ち込んだ杭
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 938年秋、ベトナム側は満潮時に河口から侵入を始めた南漢水軍をまんまと上流方向に誘い込んだ。その後潮が引き始め、
南漢水軍は水面から突き出た杭で動けなくなり大混乱に陥って全滅する。作戦を指揮したゴ・グエンは中国を撃退してベトナム
独立を回復し、呉王朝の初代国王に就任したそうだ。

 ハノイの軍事博物館にはこの種の民族英雄の胸像が少なくとも5つある。10世紀のNgo Quyen(対南漢)、11世紀 Ly Thuong Kiet
(宋代)、13世紀の Tran Hung Dao(元代)、15世紀のNguyen Trai(明代)、18世紀のQuang Trung(清代)、そして最後の英雄が
ホー・チミンということなのだろう。

 ゴ・クエンの川底に多数の杭を打ち込む戦術は13世紀に侵入した元の水軍に対しても使われ、中国側は再び全滅したそうだ。
侵略する側は戦史と戦術を忘れても、侵略された側は決して忘れないものである。13世紀末に使用された木製杭は今でも歴史
博物館と軍事博物館に誇らしげに展示されている。

■怨念と愛憎

 ベトナムと中国の関係は長く、悲しく、かつ微妙だ。紀元前2世紀末から10世紀前半まで1000年以上支配された歴史は消そう
としても消えるものではない。多くのベトナム人の心の中に深く刻み込まれていることだろう。

写真=バクダン川の決戦の地図
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 一方、19世紀以降のフランスの支配と米国との戦争では中国はベトナムを真摯に支援した。それでもケ小平は1979年、
「ベトナムに懲罰を与える」ため中越戦争を始めたという。あれほど支援したベトナムが中国の支援するポル・ポト政権を崩壊させた
ことに我慢がならなかったのだろう。一方、ベトナムからすれば、中国の対カンボジア支援こそが極めて反ベトナム的な行為だと感じた
に違いない。ベトナムは「中越戦争は侵略戦争だった」として中国側に正式な謝罪を求めているが、中国側は逆に「ベトナムの
対カンボジア軍事侵略によるものだ」として謝罪を一切拒否しているらしい。

 中国が過去1000年以上の支配につきベトナムに謝罪する日は果たして来るのだろうか。中越関係は積年の怨念の上に
積み上がった一種の愛憎関係だ。こう考えれば、南シナ海のワークショップで中国批判を繰り返したベトナム人出席者の気持ちも
理解できる。

 ちなみに、今回見学した軍事、歴史博物館のどちらにも1979年の中越戦争に関する展示だけはなかった。これは対中配慮
なのだろう。その一方で、ベトナム人は「アメリカとフランスは許せるが、中国だけは許さない」と言っているらしい。どうやら、中越関係
が近い将来好転する可能性はあまりなさそうだ。

 日本がベトナムのように中国と陸続きでなかったことを、日本人は神に感謝すべきである。

ソース(JBPRESS、宮家邦彦氏) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29684