ソース(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111111/223791/ 円高・ウォン安の流れに加え、韓国が米国、EU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)を結んだことで、米欧市場における
日本企業の競争条件は韓国企業に大きく劣後することになった。ヒュンダイ、サムスン電子などに奪われつつある市場を取り戻す
ためには、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)参加は必要不可欠であると主張するのが、石川幸一・亜細亜大学アジア
研究所教授だ。
TPP反対派は安い外国製品が流入してくることの脅威ばかりを強調するが、将来アジア太平洋全域に広がる「ドミノ効果」が
期待されるTPPに入れば、アジアの成長市場の参入障壁を下げる効果は大きいと指摘する。
写真=石川 幸一(いしかわ・こういち)氏
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111111/223791/ph00.jpg 日本のFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)戦略で問題なのは、EU(欧州連合)、米国とFTAを結んだ韓国に大きく
劣後しているということだ。日本の自動車、電機産業にとってヒュンダイ、サムスン電子のような韓国企業は最大のライバルである。
円高・ウォン安の影響も大きく、日本企業は韓国との競争に負けつつある。そこでさらにFTAでも負けてしまうのは問題だ。
当面の課題として、米国、EUという大きな市場で、日韓の競争力の差をなくし、日本製品が韓国製品に負けないようにする
政策が必要だ。TPP反対論者は、TPPに入っても輸出は伸びないと主張しているが、もしTPPに入らなければ、韓国に奪われて
しまう市場を奪われないようにすることが必要だ。
■EU、中国、韓国も日本との交渉に積極的
TPP(環太平洋経済連携協定)に日本が取り組んでいくことで、EU(欧州連合)、中国、韓国が日本とのEPA交渉に積極的に
なってきたという副次的な効果も出てきている。TPP交渉に参加することが、これまでなかなか進まなかった他のFTA、EPAを推進
する要因にもなるのだ。
TPP交渉と平行して、日・EU、日中韓のEPA交渉にも臨むことだ。特に中国のような新興国、途上国では、知的財産権や投資
を保護するルールが十分整っていない場合が多い。中国の国営企業との競争条件が不利にならないようにすることなど、重要な
項目はたくさんある。
輸出面ではプラスになる。米国、オーストラリアと日本はEPAを結んでいない。ASEAN(東南アジア諸国連合)とのEPAでは例外
品目が多く、自由化率は80%台にとどまっている。日本はコメなど農産品、相手国は鉄鋼など工業製品を例外としており、関税が
なくなれば当然輸出は伸びる。
反対論者は、日本に外国企業や外国製品が入ってくることばかり考えているが、TPPに入れば、日本からの輸出のアクセスが
良くなる。日本から農産品を輸出しようとしても、東南アジアの新興国には意外と高い関税障壁が残っている。中国・ASEANの
FTAでは、タイはコメを関税撤廃の例外品目としている。慶應義塾大学の渡邊頼純教授によると、タイのスーパーでも日本の
イチゴを売っているそうだ。アジアの新興国市場の開拓余地は大きい。
(中略)
反対派はTPPではなく、2国間のFTAを推進すべきだと主張するが、日米FTAのほうが日本にとっては厳しい交渉になるだろう。
9カ国を相手とするTPP交渉なら出てこない2国間だけの問題、例えば保険や郵便貯金の問題を出してくる可能性はある。
しかし、米国にも弱みがある。米国の内国海運は、1920年商船法(ジョーンズ法)によって、(1)米国内の造船所で建造された、
(2)米国籍の、(3)米国民所有で、(4)米国人船員の乗り組む船舶――にしか認められていない。これが外国船舶の輸入、
参入障壁になっている。韓国はFTA交渉でこの点を突いて、米国にコメの例外措置を認めさせたようだ。日本政府にもこうした
したたかな交渉戦術が求められる。
貿易救済措置も日本に有利な面が大きい。米韓FTAには、反ダンピング(不当廉売)関税の事前通知・協議制度の規定が
入っている。これをTPPにも入れれば、米国が反ダンピング関税を乱発することを牽制するのにも役立つ。
(
>>2以降に続く)