中国からの漢方薬の原料生薬の輸入価格が、06〜10年の4年間で約1.6倍に高騰していることが8日、
業界団体「日本漢方生薬製剤協会」による初の調査で分かった。経済成長に伴う生活水準の向上で、中国
国内での漢方薬の服用量が急増、中国政府が生薬の元となる薬草の乱獲防止を理由に輸出制限している
ことが背景にある。【寺田剛】
日本は風邪から肩こり、アレルギー症状まで漢方薬を幅広く利用する漢方大国だが、生薬の8割強は中国からの
輸入。薬品業界では「ハイテク機器に欠かせないレアアース(希土類)のように中国が輸出規制を本格化すれば、
漢方薬不足や小売価格高騰につながりかねない」と懸念する声も出ている。
調査は同協会加盟全74社を対象に、使用量が多い30の生薬を中心に実施。その結果、漢方薬の7割に
使われるカンゾウ(甘草)が4年で約22%値上がりしたほか、シャクヤク(芍薬)が47%、ケイヒ(桂皮)が29%、
それぞれ高くなるなど全生薬の値上がりが確認された。加重平均すると価格が4年で1.64倍になった計算だが、
業界関係者は「足元では2倍を超えている」と指摘する。
中国政府は00年以降、薬草の乱獲による生産地の砂漠化を防ぐため、生薬の輸出に最低価格を導入する
など制限を強化。日本メーカーが08年度に使用した生薬は248品目(2万273トン)だが、うち113品目の
調達先は中国に限られており、年々強化される輸出制限が日本メーカーの生薬調達を直撃する形になっている。
野村総合研究所によると、国内の漢方薬市場は07年で1131億円(医薬品全体の1.8%)。健康意識の
高まりを背景に15年には2000億円に拡大する見通しだ。日本メーカーは、今のところ生薬の調達価格上昇分を
生産コスト削減でカバーし、漢方薬の値上げを回避しているが、どこまで耐えられるか。業界には「このままでは、
供給責任を果たせなくなる会社も出てくる」(メーカー大手)と危惧する声もある。
◇漢方薬
古医書の規定に基づき、有効な成分をもつ生薬を複数組み合わせてつくる。風邪の急性期に使う「葛根湯
(かっこんとう)」は、カッコンやカンゾウ、タイソウ、ケイヒなどの生薬が配合されている。また、虚弱体質に効果が
ある「抑肝散(よくかんさん)」はブクリョウが、胃炎や食欲不振に効く「六君子湯(りっくんしとう)」はハンゲなどが
それぞれ主成分で、カンゾウも配合されている。
毎日新聞: 2011年10月9日 8時58分(最終更新 10月9日 9時25分)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111009k0000e040001000c.html