江蘇省徐州市内で23日午前10時ごろ、道路を走行中のワゴン車が火災を起こした。運転手は女性
で、粉末消火器を使って火を消そうとしている時、車両後部に積んでいた塩酸入りポリタンク
が爆発した。中国徐州新網が報じた。
事故が発生したのは、西三環路泉山捨屯の中国農業銀行の支店近く。車両の前部から炎が噴き
出したので運転手は急いで停車して外に飛び出し、周囲に向って大声で「車から火が出た」と
叫んだ。近くににいた通行人らはワゴン車からあわてて離れ、約10メートルの距離の場所で見
守った。
運転手は積んでいた粉末消火器で火を消そうとした。農業銀行からも保安員2人が駆けつけ、
消火作業を手伝った。
消火作業をしている時、車両後部に積んでいたポリ容器が爆発した。運転手によると、容器に
は塩酸を入れていた。爆発で後部座席の左右のドアと車両後部の窓ガラスが外に吹き飛んだ。
消火活動をしていた3人は車両の前側にいたので、塩酸を浴びることはなかった。プラスチック
やゴムが焦げる臭いに塩酸独特の強烈な臭気が加わり、周囲にただよった。
約10分後に消防が到着して火を消したが、ワゴン車は全焼した。消防士が塩酸が入っていた容器
をワゴン車の外に出した。容器は発泡樹脂の不定形のかたまりのようになり、残っていた塩酸
が白煙を出しつづけた。消防士によると、高温になったため塩酸入りの容器内の圧力が高まり、
爆発したとみられる。
塩酸などの危険物を運送する場合には、専用の容器を使い、車両に必要な消火器具を備えておく
決まりがあるが、ワゴン車の運転手は規則を守っていなかったと見られる。同事故による死傷者
は伝えられていない。
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◆解説◆
塩酸は、常温常圧では気体である物質の塩化水素を水に溶かしたもの。温度が上昇すると
塩化水素は水に溶けにくくなり、気体に戻る。密閉容器に入れていた場合、内部圧力が急激に
高まる。
塩酸を浴びた場合、できるだけ早く大量の水で洗い流すことで、けがを最小限に食い止め
ることができる。塩酸は十分に薄まった場合、溶液中に残っている塩化水素が蒸発するので、
危険はほとんどなくなる。
他の強い酸やアルカリ性物質を浴びた場合も、応急処置としては「できるだけ早く大量の
水で洗い流す」ことが一般的だ。ただし硫酸や硝酸、水酸化ナトリウムなどは溶けている物質
が蒸発しないので、薄まってもさらに念いりに水で流した方がよい。酸やアルカリが残ってい
ると水が蒸発することで濃度が高まり、被害をさらに大きくする場合がある。
アルカリ性の水酸化ナトリウム水溶液などは蛋白質(たんぱくしつ)を変質させるので、
かなり薄まっていても目に入った場合には視力が大幅に低下するなどの障害が残る場合がある。
(編集担当:如月隼人)
サーチナ 2011/08/24
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0824&f=national_0824_171.shtml